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特許7600160情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、および情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、および情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01D 9/00 20060101AFI20241209BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G01D9/00 A
H04L7/00 990
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022007611
(22)【出願日】2022-01-21
(65)【公開番号】P2023106719
(43)【公開日】2023-08-02
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長久保 咲絵
(72)【発明者】
【氏名】工藤 浩喜
(72)【発明者】
【氏名】田中 康之
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-80621(JP,A)
【文献】特開2012-98901(JP,A)
【文献】特開2021-131818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 9/00- 9/42
G08C 15/00-19/48
G01D 21/00-21/02
H04L 7/00- 7/10
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続される複数の通信装置の各々から、複数の前記通信装置の各々に搭載されたセンサによる計測結果であるセンサデータおよび前記センサデータの計測時刻である時刻情報を含む通信データを受信する送受信部と、
前記ネットワーク内で同時発生したイベントの前記センサデータであるイベントセンサデータを含む前記通信データを、イベント通信データとして特定する特定部と、
複数の前記通信装置の各々の前記イベント通信データに含まれる前記イベントセンサデータおよび前記時刻情報に基づいて、複数の前記通信装置間の時刻の遅延量を算出する算出部と、
前記通信データに含まれる前記センサデータの前記時刻情報を前記遅延量に基づいて補正する補正部と、
を備え
前記ネットワークはマルチホップネットワークであり、
前記通信データは、前記通信データの送信元の前記通信装置のホップ数を含み、
前記算出部は、
複数の前記通信装置間の各々ごとに、前記イベント通信データに含まれる前記時刻情報の時刻差を前記通信装置間の前記ホップ数の差で除算した1ホップ当たりの時刻差を算出し、
複数の前記通信装置間の各々ごとに算出された前記1ホップ当たりの時刻差から、前記マルチホップネットワークにおける1ホップ当たりの平均時刻差を算出し、
複数の前記通信装置の各々ごとに、前記通信装置の前記ホップ数に前記平均時刻差を乗算した乗算結果を、複数の前記通信装置の各々の前記遅延量として算出する、
情報処理装置。
【請求項2】
複数の前記通信装置を、予め定めた分類条件に基づいて1または複数のグループに分類する分類部、
を備え、
前記算出部は、
複数の前記グループの各々ごとに、前記グループに属する複数の前記通信装置間の前記遅延量を算出
前記分類条件は、
前記通信装置の設置環境情報、および、前記イベント通信データに含まれる前記イベントセンサデータに関するセンサ関連情報、の少なくとも一方が類似することを表し、
前記センサ関連情報は、
前記イベントセンサデータの相互相関関数、前記イベントセンサデータの分析結果情報、の少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
ネットワークに接続される複数の通信装置の各々から、複数の前記通信装置の各々に搭載されたセンサによる計測結果であるセンサデータおよび前記センサデータの計測時刻である時刻情報を含む通信データを受信する受信ステップと、
前記ネットワーク内で同時発生したイベントの前記センサデータであるイベントセンサデータを含む前記通信データを、イベント通信データとして特定する特定ステップと、
複数の前記通信装置の各々の前記イベント通信データに含まれる前記イベントセンサデータおよび前記時刻情報に基づいて、複数の前記通信装置間の時刻の遅延量を算出する算出ステップと、
前記通信データに含まれる前記センサデータの前記時刻情報を前記遅延量に基づいて補正する補正ステップと、
を含み、
前記ネットワークはマルチホップネットワークであり、
前記通信データは、前記通信データの送信元の前記通信装置のホップ数を含み、
前記算出ステップは、
複数の前記通信装置間の各々ごとに、前記イベント通信データに含まれる前記時刻情報の時刻差を前記通信装置間の前記ホップ数の差で除算した1ホップ当たりの時刻差を算出し、
複数の前記通信装置間の各々ごとに算出された前記1ホップ当たりの時刻差から、前記マルチホップネットワークにおける1ホップ当たりの平均時刻差を算出し、
複数の前記通信装置の各々ごとに、前記通信装置の前記ホップ数に前記平均時刻差を乗算した乗算結果を、複数の前記通信装置の各々の前記遅延量として算出する、
情報処理方法。
【請求項4】
ネットワークに接続される複数の通信装置の各々から、複数の前記通信装置の各々に搭載されたセンサによる計測結果であるセンサデータおよび前記センサデータの計測時刻である時刻情報を含む通信データを受信する受信ステップと、
前記ネットワーク内で同時発生したイベントの前記センサデータであるイベントセンサデータを含む前記通信データを、イベント通信データとして特定する特定ステップと、
複数の前記通信装置の各々の前記イベント通信データに含まれる前記イベントセンサデータおよび前記時刻情報に基づいて、複数の前記通信装置間の時刻の遅延量を算出する算出ステップと、
前記通信データに含まれる前記センサデータの前記時刻情報を前記遅延量に基づいて補正する補正ステップと、
をコンピュータに実行させるための情報処理プログラムであって、
前記ネットワークはマルチホップネットワークであり、
前記通信データは、前記通信データの送信元の前記通信装置のホップ数を含み、
前記算出ステップは、
複数の前記通信装置間の各々ごとに、前記イベント通信データに含まれる前記時刻情報の時刻差を前記通信装置間の前記ホップ数の差で除算した1ホップ当たりの時刻差を算出し、
複数の前記通信装置間の各々ごとに算出された前記1ホップ当たりの時刻差から、前記マルチホップネットワークにおける1ホップ当たりの平均時刻差を算出し、
複数の前記通信装置の各々ごとに、前記通信装置の前記ホップ数に前記平均時刻差を乗算した乗算結果を、複数の前記通信装置の各々の前記遅延量として算出する、
情報処理プログラム
【請求項5】
ネットワークに接続される複数の通信装置と、前記ネットワークに接続される情報処理装置と、を備えた情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
複数の前記通信装置の各々から、複数の前記通信装置の各々に搭載されたセンサによる計測結果であるセンサデータおよび前記センサデータの計測時刻である時刻情報を含む通信データを受信する送受信部と、
前記ネットワーク内で同時発生したイベントの前記センサデータであるイベントセンサデータを含む前記通信データを、イベント通信データとして特定する特定部と、
複数の前記通信装置の各々の前記イベント通信データに含まれる前記イベントセンサデータおよび前記時刻情報に基づいて、複数の前記通信装置間の時刻の遅延量を算出する算出部と、
前記通信データに含まれる前記センサデータの前記時刻情報を前記遅延量に基づいて補正する補正部と、
を備え
前記ネットワークはマルチホップネットワークであり、
前記通信データは、前記通信データの送信元の前記通信装置のホップ数を含み、
前記算出部は、
複数の前記通信装置間の各々ごとに、前記イベント通信データに含まれる前記時刻情報の時刻差を前記通信装置間の前記ホップ数の差で除算した1ホップ当たりの時刻差を算出し、
複数の前記通信装置間の各々ごとに算出された前記1ホップ当たりの時刻差から、前記マルチホップネットワークにおける1ホップ当たりの平均時刻差を算出し、
複数の前記通信装置の各々ごとに、前記通信装置の前記ホップ数に前記平均時刻差を乗算した乗算結果を、複数の前記通信装置の各々の前記遅延量として算出する、
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、および情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワークに接続された複数の通信装置の各々に搭載されたセンサのセンサデータを集約するシステムが知られている。しかしながら、通信装置の個体差、伝送遅延、通信頻度、中継数に応じた同期誤差、などによってセンサデータの時刻情報にずれが生じる場合がある。
【0003】
そこで、従来技術では、複数の通信装置の各々にGPS(Global Positioning System)を搭載したシステムが知られている。しかし、複数の通信装置の各々にGPSを搭載した構成とした場合、装置の大型化や複雑化を招く場合があった。また、従来技術では、集約装置から受信したセンシング開始信号の受信時刻との誤差を計算し、誤差に応じて補正した補正後の時刻情報を通信装置から集約装置へ送信する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、特許文献1では、集約装置と通信装置との間の伝送遅延が考慮されておらず、時刻情報のずれが解消されない場合があった。すなわち、従来技術では、ネットワークに接続される通信装置間の時刻情報のずれを容易に軽減することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/149103号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ネットワークに接続される通信装置間の時刻情報のずれを容易に軽減することができる、情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、および情報処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態の情報処理装置は、送受信部と、特定部と、算出部と、補正部と、を備える。送受信部は、ネットワークに接続される複数の通信装置の各々から、複数の前記通信装置の各々に搭載されたセンサによる計測結果であるセンサデータおよび前記センサデータの計測時刻である時刻情報を含む通信データを受信する。特定部は、前記ネットワーク内で同時発生したイベントの前記センサデータであるイベントセンサデータを含む前記通信データを、イベント通信データとして特定する。算出部は、複数の前記通信装置の各々の前記イベント通信データに含まれる前記イベントセンサデータおよび前記時刻情報に基づいて、複数の前記通信装置間の時刻の遅延量を算出する。補正部は、前記通信データに含まれる前記センサデータの前記時刻情報を前記遅延量に基づいて補正する。前記ネットワークはマルチホップネットワークであり、前記通信データは、前記通信データの送信元の前記通信装置のホップ数を含み、前記算出部は、複数の前記通信装置間の各々ごとに、前記イベント通信データに含まれる前記時刻情報の時刻差を前記通信装置間の前記ホップ数の差で除算した1ホップ当たりの時刻差を算出し、複数の前記通信装置間の各々ごとに算出された前記1ホップ当たりの時刻差から、前記マルチホップネットワークにおける1ホップ当たりの平均時刻差を算出し、複数の前記通信装置の各々ごとに、前記通信装置の前記ホップ数に前記平均時刻差を乗算した乗算結果を、複数の前記通信装置の各々の前記遅延量として算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】情報処理システムの模式図。
図2】通信システムの模式図。
図3】集約装置の機能的構成の図。
図4】通信データのデータ構成の模式図。
図5A】グループへの分類の説明図。
図5B】グループへの分類の説明図。
図5C】グループへの分類の説明図。
図6】遅延量の算出の説明図。
図7】遅延量の算出の説明図。
図8】遅延量DBのデータ構成の模式図。
図9】情報処理の流れのフローチャート。
図10】ハードウェア構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、および情報処理システムを詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施の形態の情報処理システム1の一例を示す模式図である。
【0010】
情報処理システム1は、通信システム2と、サーバ装置30と、を備える。
【0011】
通信システム2は、複数の通信装置10と集約装置20とを有する。集約装置20は、本発明の情報処理装置の一例である。複数の通信装置10と集約装置20とは、通信可能に接続されている。
【0012】
図1には、複数の通信装置10として、通信装置10A~通信装置10Pを一例として示す。通信システム2は、複数の通信装置10を備えた構成であればよく、通信装置10A~通信装置10Pの16個の通信装置10を備えた構成に限定されない。また、これらの通信装置10A~通信装置10Pを区別せずに説明する場合には、単に、通信装置10と称して説明する。
【0013】
複数の通信装置10と集約装置20とは通信可能に接続された形態であればよく、通信システム2のネットワークトポロジおよび通信方式は限定されない。例えば、通信システム2は、スター型、ツリー型、リング型、メッシュ型、などの何れのネットワークトポロジであってもよい。また、通信システム2の通信方式は、任意であり限定されない。例えば、通信システム2の通信方式には時分割多重方式が用いられるが、この通信方式に限定されない。
【0014】
本実施形態では、通信システム2は、集約装置20を根ノードとしたツリー型のネットワークトポロジであり、集約装置20に対して複数の通信装置10がツリー構造に無線接続されたマルチホップネットワークである形態を一例として説明する。
【0015】
図2は、通信システム2をネットワークトポロジの形態で示した模式図である。図2において、アルファベットは通信装置10を示し、根は根ノードである集約装置20を示す。矢印はデータの伝送経路を示す。矢印の元はデータの送信元である子ノードを示し、矢印の先はデータの送信先である親ノードを示す。親ノードは、自ノードよりホップ数が1小さいノードであり、自ノードの送信先ノードである。子ノードは、自ノードよりホップ数が1大きいノードである。図2には、ノード間を中継するトポロジーを示すが、通信システム2は、直接親ノードに通信するトポロジーで構成されてもよい。
【0016】
図1に戻り説明を続ける。
【0017】
サーバ装置30は、集約装置20とネットワークNWを介して通信可能に接続されている。図1には、情報処理システム1がサーバ装置30を含む形態を一例として示す。しかし、情報処理システム1は、通信システム2を少なくとも含む構成であればよく、サーバ装置30を含まない構成であってもよい。
【0018】
本実施形態では、複数の通信装置10の各々には、センサが搭載されている。センサは、該センサを搭載した通信装置10の環境を計測する装置である。センサは、例えば、振動、温度、湿度、風向、風量、照度、輝度、消費電流、消費電圧、水量、加速度、傾き、音、等の様々な環境を計測可能な機器であればよく、計測対象は限定されない。
【0019】
複数の通信装置10の各々は、各々に搭載されたセンサによる環境の計測結果であるセンサデータと、該センサデータの計測時刻である時刻情報と、を含む通信データを集約装置20へ送信する。複数の通信装置10の各々は、所定時間ごとに通信データを集約装置20へ送信してもよいし、予め定めた条件を満たした場合に通信データを集約装置20へ送信してもよい。予め定めた条件は、例えば、計測対象の環境が閾値以上の振動などの特定の環境を表した時、計測対象の環境が閾値以上の環境変化を表した時、などであるが、これらに限定されない。本実施形態では、複数の通信装置10の各々が、所定時間ごとに通信データを集約装置20へ向かってマルチホップ通信により送信する形態を一例として説明する。
【0020】
図3は、集約装置20の機能的構成の一例を示す図である。
【0021】
集約装置20は、通信部22と、UI(ユーザ・インターフェース)部24と、記憶部26と、制御部28と、を備える。通信部22、UI部24、記憶部26、および制御部28は、バス29等を介して通信可能に接続されている。
【0022】
通信部22は、複数の通信装置10とデータの送受信を行う。本実施形態では、通信部22は、複数の通信装置10と無線通信を行う。また、通信部22は、ネットワークNWを介してサーバ装置30とデータの送受信を行う。
【0023】
UI部24は、表示機能と、入力機能と、を有する。表示機能は、各種の情報を表示する。表示機能は、例えば、ディスプレイ、投影装置、などである。入力機能は、ユーザによる操作入力を受付ける。入力機能は、例えば、マウスおよびタッチパッドなどのポインティングデバイス、キーボード、などである。表示機能と入力機能とを一体的に構成したタッチパネルとしてもよい。なお、集約装置20は、UI部24を備えない構成であってもよい。
【0024】
記憶部26は、各種の情報を記憶する。本実施形態では、記憶部26は、通信データDB(データベース)26Aおよび遅延量DB26Bを記憶する。通信データDB26Aおよび遅延量DB26Bの詳細は後述する。
【0025】
UI部24および記憶部26は、有線または無線で制御部28に通信可能に接続された構成であればよい。UI部24および記憶部26の少なくとも一方と制御部28とをネットワークNW等を介して接続してもよい。また、UI部24および記憶部26の少なくとも一方は、集約装置20の外部に設けられていてもよい。また、UI部24、記憶部26、および制御部28に含まれる後述する1または複数の機能部の少なくとも1つを、ネットワークNW等を介して集約装置20に通信可能に接続された外部の情報処理装置に搭載した構成としてもよい。例えば、制御部28に含まれる後述する複数の機能部の少なくとも1つを、サーバ装置30に搭載した構成としてもよい。
【0026】
制御部28は、集約装置20において情報処理を実行する。制御部28は、送受信部28Aと、特定部28Bと、分類部28Cと、設定部28Dと、算出部28Eと、補正部28Fと、を備える。
【0027】
送受信部28A、特定部28B、分類部28C、設定部28D、算出部28E、および補正部28Fは、例えば、1または複数のプロセッサにより実現される。例えば上記各部は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよい。上記各部は、専用のICなどのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。上記各部は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2以上を実現してもよい。
【0028】
送受信部28Aは、複数の通信装置10の各々およびサーバ装置30と通信部22を介してデータの送受信を行う。詳細には、送受信部28Aは、複数の通信装置10の各々から通信データを受信する。
【0029】
通信データは、上述したように、通信装置10に搭載されたセンサによる計測結果であるセンサデータと、該センサデータの計測時刻である時刻情報と、を含む。送受信部28Aは、複数の通信装置10の各々から通信データを受信するごとに、受信した通信データを記憶部26の通信データDB26Aに登録する。なお、通信データDB26Aへの通信データの登録は、後述する補正部28Fによる時刻情報の補正が行われた後のタイミングであってもよい。
【0030】
図4は、通信データDB26Aのデータ構成の一例を示す模式図である。通信データDB26Aは、ノードIDと、設置環境情報と、通信データIDと、通信データと、を対応付けたデータベースである。なお、通信データDB26Aのデータ形式は、データベースに限定されない。また、通信データDB26Aは、少なくとも通信データを登録したデータベースであればよく、データ構成は図4に示す形態に限定されない。
【0031】
ノードIDは、通信データの送信元の通信装置10の識別情報である。言い換えると、ノードIDは、対応する通信データに含まれるセンサデータを計測したセンサの搭載された通信装置10の識別情報である。
【0032】
設置環境情報とは、対応するノードIDによって識別される通信装置10の設置環境を表す情報である。設置環境情報は、通信装置10間のセンサデータの時刻情報のずれに影響を与えうる、通信装置10の環境に関する情報であればよい。
【0033】
具体的には、設置環境情報は、例えば、通信装置10の設置場所情報、通信装置10の絶対位置情報、通信装置10のネットワーク環境情報、およびイベント発生源に対する通信装置10の相対位置情報、の少なくとも1つを含む情報である。
【0034】
通信装置10の設置場所情報は、通信装置10の設置場所の状態を表す情報である。設置場所の状態を表す情報は、例えば、通信装置10の設置場所の環境変動のしやすさ等を表す情報である。設置場所情報は、具体的には、例えば、通信装置10がビル等の建物に設置されている場合には、通信装置10の設置フロアの階などの情報によって表される。また、設置場所情報は、例えば、通信装置10の設置面の地盤の種類等を表す情報であってもよい。地盤の種類には、例えば、土、コンクリート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
通信装置10の絶対位置情報は、緯度経度高度などの世界座標によって表される通信装置10の位置情報である。通信装置10のネットワーク環境情報は、通信システム2における通信装置10のネットワーク環境を表す情報である。例えば、通信装置10のネットワーク環境情報は、通信装置10のホップ数、ツリー型のネットワークの分岐の直接的または間接的な親ノードを同一とする群、などによって表される。
【0036】
設置場所情報、絶対位置情報、およびネットワーク環境情報は、例えば、管理者等によるUI部24の操作指示などによって予め通信データDB26Aに登録されていればよい。
【0037】
相対位置情報は、通信システム2内で同時発生したイベントのイベント発生源に対する通信装置10の相対位置に関する情報である。例えば、イベントが地震である場合、相対位置情報は、地震の震源に対する通信装置10の相対位置または相対位置を特定可能な情報である。具体的には、例えば、イベントが地震である場合、相対位置情報は、地震の震源の緯度経度、地震の震源の深さ、地震の速度、震源距離、等を表す情報である。
【0038】
相対位置情報は、イベントの発生時に、後述する分類部28C等によって算出され、適宜更新されればよい(詳細後述)。
【0039】
イベントとは、通信システム2のネットワーク内で同時発生した現象である。同時発生とは、同時刻に発生したことを意味する。すなわち、本実施形態では、イベントは、通信システム2のネットワークであるマルチホップネットワーク内で同時発生した現象である。イベントは、例えば、地震、照明の点灯消灯、機器のオンオフ、等の現象である。本実施形態では、イベントが地震である場合を想定して説明する。なお、イベントは通信システム2のネットワーク内で同時発生する現象であればよく、地震に限定されない。
【0040】
通信データIDは、対応する通信データの識別情報である。
【0041】
通信データは、上述したように、対応するノードIDによって識別される通信装置10に搭載されたセンサの計測結果であるセンサデータ、該センサデータの計測時刻である時刻情報、を少なくとも含む。
【0042】
センサデータとは、センサによる環境の計測結果を表す情報である。センサデータは、例えば、地震動を計測した加速度情報、照明の輝度情報、通信装置10の起動および終了時の消費電流情報、などであるが、これらに限定されない。センサデータは、一定期間サンプリングした連続波形データでもあってもよく、また、1または複数の特徴量を選択的に抽出した情報であってもよい。特徴量には、例えば、センサデータの最大値および最小値の少なくとも一方等を用いればよい。
【0043】
通信データに含まれる時刻情報は、センサデータの計測時刻を表す情報である。センサデータの計測時刻である時刻情報は、具体的には、例えば、センサデータまたはセンサデータの特徴量をサンプリングしたサンプリングタイミングの時間情報である。
【0044】
上述したように、本実施形態では、イベントが地震である場合を想定して説明する。また、本実施形態では、センサデータはセンサによる一定期間の計測によって得られる加速度波形データ等のセンサ波形で表され、時刻情報は該センサ波形における複数のサンプリングタイミングの各々の時間情報である場合を一例として説明する。
【0045】
なお、通信データは、対応するノードIDによって識別される通信装置10の集約装置20からのホップ数を表す情報等の他の情報を更に含んでいてもよい。言い換えると、通信データは、該通信データの送信元の通信装置10のホップ数を含むものであってよい。
【0046】
図3に戻り説明を続ける。送受信部28Aは、複数の通信装置10の各々から通信データを受信するごとに、受信した通信データを通信データDB26Aに登録する。このため、通信データDB26Aには、複数の通信装置10の各々から受信した通信データが順次登録される。なお、本実施形態では、複数の通信装置10の各々からマルチホップ通信により1または複数の他の通信装置10を経由して通信データが集約装置20へ集約される場合がある。このため、送受信部28Aは、ホップ数1の通信装置10から受信したパケットに含まれる1または複数の通信装置10の各々の通信データを該パケットから読み取り、通信装置10の各々ごとに通信データDB26Aへ登録すればよい。また、上述したように、通信データDB26Aへの通信データの登録は、後述する補正部28Fによる時刻情報の補正が行われた後のタイミングであってもよい。
【0047】
特定部28Bは、通信システム2のネットワーク内で同時発生したイベントのセンサデータであるイベントセンサデータを含む通信データを、イベント通信データとして特定する。イベント通信データとは、通信システム2のネットワーク内で同時発生したイベントのセンサデータであるイベントセンサデータを含む通信データである。
【0048】
特定部28Bは、イベントが発生したか否かを判断する。例えば、特定部28Bは、集約装置20に設けられたイベント発生を検知するセンサによってイベントが検知されたときに、イベントが発生したと判断する。また、特定部28Bは、集約装置20の外部の情報処理装置からイベント発生の通知を受信したときに、イベントが発生したと判断してもよい。例えば、特定部28Bは、気象庁などの地震速報を発信する発信サーバ装置などからネットワークNW等を介してイベント発生の通知を受信したときに、イベントが発生したと判断してもよい。
【0049】
特定部28Bは、イベントが発生したと判断すると、イベントの計測結果のセンサデータであるイベントセンサデータを含む通信データを、イベント通信データとして特定する。
【0050】
例えば、特定部28Bは、通信装置10から所定時間ごとに順次受信する通信データの内、イベントが発生したと判断したタイミング以後に最も早く受信した通信データをイベント通信データとして特定する。具体的には、特定部28Bは、イベントが発生したと判断した後に複数の通信装置10の各々から最初に受信した通信データを、複数の通信装置10の各々のイベント通信データとして特定する。
【0051】
なお、特定部28Bは、複数の通信装置10の各々について、イベントが発生したと判断してから所定時間内に受信した通信データの内、最も早く受信した通信データを、複数の通信装置10の各々のイベント通信データとして特定してもよい。
【0052】
これらの処理により、特定部28Bは、通信システム2に含まれる少なくとも一部の複数の通信装置10の各々について、受信した通信データの内の特定のタイミングで受信した通信データを、イベント通信データとして特定する。上述したように、通信データには、センサデータおよび時刻情報が含まれる。本実施形態では、イベント通信データとして特定された通信データに含まれるセンサデータをイベントセンサデータと称して説明する。
【0053】
分類部28Cは、通信システム2に含まれる複数の通信装置10を、予め定めた分類条件に基づいて1または複数のグループに分類する。
【0054】
分類条件とは、通信システム2に含まれる複数の通信装置10を、通信装置10間のセンサデータの時刻情報のずれに影響を与えうる項目が類似する群ごとに複数のグループに分類するための条件である。分類条件は、例えば、通信装置10の設置環境情報、および、イベント通信データに含まれるイベントセンサデータに関するセンサ関連情報、の少なくとも一方が類似することを表す。
【0055】
通信装置10の設置環境情報が類似する、とは、通信装置10の設置場所情報、通信装置10の絶対位置情報、通信装置10のネットワーク環境情報、およびイベント発生源に対する通信装置10の相対位置情報、の少なくとも1つが類似することを意味する。
【0056】
図5Aは、グループGへの分類の一例の説明図である。分類条件が、通信装置10の設置場所情報が類似する群ごとに分類することを表す場合を想定する。また、設置場所情報が、建物40における通信装置10の設置フロアの階を表す情報である場合を想定する。また、例えば、通信装置10A、通信装置10D、および通信装置10Eが、建物40の4階に設置され、通信装置10B、通信装置10C、通信装置10G、および通信装置10Fが建物40の2階に設置されている場面を想定する。この場合、分類部28Cは、建物40の4階に設置されている通信装置10A、通信装置10D、および通信装置10Eを1つのグループGCに分類する。また、分類部28Cは、建物40の2階に配置されている通信装置10B、通信装置10C、通信装置10G、および通信装置10Fを1つのグループGDに分類する。グループGCおよびグループGDは、グループGの一例である。
【0057】
図5Bは、グループGへの分類の一例の説明図である。分類条件が、通信装置10のネットワーク環境情報が類似する群ごとに分類することを表す場合を想定する。この場合、例えば、分類部28Cは、通信システム2に含まれる複数の通信装置10の内、通信装置10Aと、該通信装置10Aを直接的または間接的に親ノードとする他の通信装置10である通信装置10C、通信装置10E、通信装置10G、通信装置10I、通信装置10L、通信装置10M、およびお通信装置10Oを、1つのグループGAに分類する。また、分類部28Cは、通信システム2に含まれる複数の通信装置10の内、例えば、通信装置10Bと、該通信装置10Bを直接的または間接的に親ノードとする他の通信装置10である通信装置10D、通信装置10F、通信装置10J、通信装置10H、通信装置10K、通信装置10N、および通信装置10Pを、1つのグループGBに分類する。グループGAおよびグループGBは、グループGの一例である。
【0058】
図5Cは、グループGへの分類の一例の説明図である。分類条件が、イベント発生源に対する通信装置10の相対位置情報が類似する群ごとに分類することを表す場合を想定する。また、特定部28Bで発生したと判断されたイベントが地震であった場合を想定する。この場合、分類部28Cは、地震の震源の緯度経度、震源の深さ、および複数の通信装置10の各々の絶対位置情報から、複数の通信装置10の各々の震源からの震源距離を算出する。分類部28Cは、集約装置20の外部の携帯端末や情報配信装置などの情報処理装置から、地震の震源の緯度経度、および震源の深さ等の情報を取得すればよい。そして、分類部28Cは、複数の通信装置10の各々毎に算出した震源距離の差が閾値以内の群ごとに通信装置10を分類することで、複数の通信装置10を複数のグループGに分類する。
【0059】
また、分類部28Cは、複数の通信装置10の各々ごとに算出した震源距離に、地震波の速度を乗算することで、各々の通信装置10への地震到来時刻を算出してもよい。例えば、分類部28Cは、予め記憶部26に記憶された地震波の速度を表す情報を読取ることで地震波の速度を取得してもよいし、管理者等によるUI部24の操作指示によって入力された地震波の速度を表す情報を該UI部24から取得してもよい。
【0060】
そして、分類部28Cは、複数の通信装置10を、地震到来時刻の差が予め定めた時間差以内の通信装置10のグループG毎に分類することで、複数の通信装置10を複数のグループGに分類してもよい。
【0061】
また、分類条件が、イベント通信データに含まれるイベントセンサデータに関するセンサ関連情報が類似する群ごとに分類することを表す場合を想定する。センサ関連情報とは、イベントセンサデータの相互相関関数、イベントセンサデータの分析結果情報、の少なくとも一方を含む情報である。
【0062】
この場合、分類部28Cは、複数の通信装置10の各々のイベント通信データに含まれるイベントセンサデータのセンサ波形の相互相関関数または相互相関関数の値の最も高い時刻の差が予め定めた範囲以内となる群ごとに複数の通信装置10を分類することで、複数の通信装置10を複数のグループGに分類してもよい。また、分類部28Cは、イベントセンサデータを機械学習により分析した分析結果情報の類似する群ごとに、複数の通信装置10を分類することで、複数の通信装置10を複数のグループGに分類してもよい。機械学習には、公知の機械学習アルゴリズムを用いればよい。
【0063】
なお、分類部28Cは、通信システム2に含まれる複数の通信装置10を1または複数のグループGに分類すればよく、分類条件等によっては、通信システム2に含まれる複数の通信装置10の全てを1つのグループGに分類してもよい。すなわち、分類部28Cは、通信システム2に含まれる複数の通信装置10を複数のグループGに分類しない形態であってもよい。
【0064】
図3に戻り説明を続ける。
【0065】
設定部28Dは、複数の通信装置10の内の基準となる基準通信装置を設定する。
【0066】
設定部28Dは、分類部28Cで分類されたグループGごとに、グループGに属する複数の通信装置10の内、基準となる1つの基準通信装置を設定する。
【0067】
例えば、設定部28Dは、グループGに属する複数の通信装置10の内、集約装置20との同期誤差の最も小さい通信装置10を基準通信装置として設定する。例えば、設定部28Dは、グループGに属する複数の通信装置10の内、最もホップ数の小さい通信装置10を基準通信装置として設定する。また、例えば、設定部28Dは、通信失敗回数の最も少ない通信装置10を基準通信装置として設定してもよい。また、設定部28Dは、ホップ数が小さく且つ通信失敗回数が最も少ない通信装置10を基準通信装置として設定してもよい。
【0068】
また、設定部28Dは、イベントの種類に応じて、グループGに属する複数の通信装置10の内、発生したイベントに対する環境変動の最も小さい設置環境に設置された通信装置10を基準通信装置として設定してもよい。
【0069】
また、集約装置20にもセンサを搭載した構成とし、設定部28Dは、集約装置20を基準通信装置として設定してもよい。また、設定部28Dは、グループGごとに設定した基準通信装置の内の1つを、通信システム2全体に対する1つの基準通信装置として設定してもよい。
【0070】
算出部28Eは、複数の通信装置10の各々のイベント通信データに含まれるイベントセンサデータおよび時刻情報に基づいて、複数の通信装置10間の時刻の遅延量を算出する。
【0071】
詳細には、算出部28Eは、分類部28Cによって分類された1または複数のグループGの各々ごとに、グループGに属する複数の通信装置10間の遅延量を算出する。
【0072】
例えば、算出部28Eは、設定部28Dによって設定された基準通信装置から受信したイベント通信データに含まれる時刻情報である基準時刻情報と、複数の通信装置10の各々から受信したイベント通信データに含まれる時刻情報と、の時刻差を遅延量として算出する。
【0073】
具体的には、算出部28Eは、分類部28Cによって分類されたグループGごとに、グループGに対して設定された基準通信装置のイベント通信データに含まれる時刻情報である基準時刻情報と、該グループGに属する複数の通信装置10の各々のイベント通信データに含まれる時刻情報と、の時刻差を、該複数の通信装置10の各々の時刻の遅延量として算出する。
【0074】
例えば、算出部28Eは、イベントセンサデータおよび時刻情報によって表される時刻とセンサ強度との関係を表す加速度波形データ等のセンサ波形を用いて、遅延量を算出する。詳細には、算出部28Eは、基準通信装置のセンサ波形と通信装置10のセンサ波形との波形形状が一致するタイミングの時刻のずれを、遅延量として算出する。具体的には、例えば、算出部28Eは、相互相関関数を用いて遅延量を算出する。
【0075】
図6は、遅延量Dの算出の一例の説明図である。例えば、通信装置10Aが基準通信装置として設定され、通信装置10Bの遅延量Dを算出する場面を想定して説明する。例えば、基準通信装置である通信装置10Aから受信したイベント通信データに含まれるイベントセンサデータおよび基準時刻情報によって表される時刻とセンサ強度との関係を表すセンサ波形50が、基準センサ波形50Aであった場合を想定する。また、通信装置10Gから受信したイベント通信データに含まれるイベントセンサデータおよび時刻情報によって表される時刻とセンサ強度との関係を表すセンサ波形50が、センサ波形50Gであった場合を想定する。
【0076】
この場合、算出部28Eは、基準センサ波形50Aとセンサ波形50Gとの相互相関関数52を算出する。そして、算出部28Eは、相互相関関数52の値の最も高い時刻から基準センサ波形50Aの起点までの期間である時刻差Tdを、基準通信装置である通信装置10Aに対する通信装置10Gの時刻の遅延量Dとして算出する。
【0077】
なお、算出部28Eは、基準センサ波形50Aのピークの時刻と、センサ波形50Gのピークの時刻と、の時刻差を、基準通信装置である通信装置10Aに対する通信装置10Gの時刻の遅延量Dとして算出してもよい。
【0078】
同様にして、算出部28Eは、分類部28Cによって分類されたグループGごとに、グループGごとに設定された基準通信装置のイベント通信データに含まれる時刻情報である基準時刻情報と、該グループGに属する複数の通信装置10の各々のイベント通信データに含まれる時刻情報と、の時刻差Tdを、該複数の通信装置10の各々の時刻の遅延量Dとして算出する。
【0079】
グループG毎に設定された基準通信装置に対する、該グループGに属する他の複数の通信装置10の各々の時刻の遅延量Dを算出することで、算出部28Eは、設置環境情報およびセンサ関連情報の少なくとも一方が類似するグループGごとに、複数の通信装置10の各々の時刻の遅延量Dを算出することができる。すなわち、算出部28Eは、グループGごとに複数の通信装置10の各々の時刻の遅延量Dを算出することで、より誤差の少ない高精度な遅延量Dを算出することができる。
【0080】
なお、上述したように、設定部28Dは、グループGごとに設定した基準通信装置の内の1つを、通信システム2全体に対する1つの基準通信装置として設定してもよい。また、上述したように、通信システム2に含まれる複数の通信装置10が複数のグループGに分類されなかった場合、通信システム2全体に対して1つの基準通信装置が設定されることとなる。
【0081】
この場合、算出部28Eは、通信システム2全体に対して1つ設定された基準通信装置に対する、他の複数の通信装置10の各々の時刻の遅延量Dを上記と同様にして算出すればよい。
【0082】
通信システム2全体に対して1つ設定された基準通信装置に対する、通信システム2に含まれる複数の通信装置10の各々の時刻の遅延量Dを算出することで、算出部28Eは、通信システム2の全体として時刻を一致させるための遅延量Dを複数の通信装置10の各々ごとに算出することができる。
【0083】
なお、算出部28Eは、通信装置10のホップ数を用いて集約装置20に対する時刻の遅延量Dを算出してもよい。
【0084】
図7は、遅延量Dの算出の一例の説明図である。例えば、通信システム2に含まれる全ての通信装置10の各々の集約装置20に対する時刻の遅延量Dを算出する場面を想定して説明する。図7には、一例として、ホップ数3の通信装置10G、ホップ数2の通信装置10E、およびホップ数1の通信装置10Aを示す。
【0085】
この場合、算出部28Eは、通信システム2に含まれる複数の通信装置10間の各々ごとに、イベント通信データに含まれる時刻情報の時刻差Tdを算出する。そして、設定部28Dは、複数の通信装置10の各々毎に算出した時刻差Tdを通信装置10間のホップ数の差で除算することで、1ホップ当たりの時刻差Td/Hを算出する。時刻差Tdの算出には、上述したように、相互相関関数の最も高い時刻から一方のセンサ波形の起点の時刻までの期間や、センサ波形50のピークの差等を用いればよい。
【0086】
例えば、通信装置10Aと通信装置10Gとの通信装置10間について説明する。この場合、算出部28Eは、通信装置10Aのイベント通信データに含まれる時刻情報と通信装置10Bのイベント通信データに含まれる時刻情報との時刻差Tdを、通信装置10Aと通信装置10Gとのホップ数の差である”2”で除算する。この計算により、算出部28Eは、通信装置10Aと通信装置10Gとの通信装置10間の、1ホップ当たりの時刻差Td/Hを算出する。
【0087】
そして、算出部28Eは、同様にして、通信システム2に含まれる複数の通信装置10について、組み合わせの異なる2つの通信装置10の対を複数生成する。そして、算出部28Eは、生成した複数の対の各々について、上記と同様にして、1ホップ当たりの時刻差Td/Hを算出する。
【0088】
そして、算出部28Eは、生成した複数の対の各々ごとに算出した1ホップ当たりの時刻差Td/Hの平均値を、通信システム2の全体の1ホップ当たりの平均時刻差Tad/Hとして算出する。
【0089】
そして、算出部28Eは、通信システム2に含まれる複数の通信装置10の各々について、上記1ホップ当たりの平均時刻差Tad/Hを通信装置10のホップ数に乗算した乗算結果を、複数の通信装置10の各々の時刻の遅延量Dとして算出する。
【0090】
このように、算出部28Eは、複数の通信装置10の各々の集約装置20に対する時刻の遅延量Dを算出してもよい。この場合、複数の通信装置10の内の一部の通信装置10について、特定部28Bがイベント通信データを特定できなかった場合であっても、通信システム2に含まれる全ての通信装置10の各々の集約装置20に対する時刻の遅延量Dを算出することができる。
【0091】
なお、算出部28Eは、分類部28Cによって分類されたグループGごとに、グループGに属する複数の通信装置10の各々のホップ数を用いて、上記と同様にして複数の通信装置10の各々の集約装置20に対する時刻の遅延量Dを算出してもよい。
【0092】
図3に戻り説明を続ける。算出部28Eは、複数の通信装置10の各々ごとに算出した遅延量Dを、遅延量DB26Bに登録する。
【0093】
図8は、遅延量DB26Bのデータ構成の一例を示す模式図である。遅延量DB26Bは、例えば、ノードIDと、遅延量Dと、を対応付けたデータベースである。遅延量DB26Bのデータ形式はデータベースに限定されない。
【0094】
算出部28Eは、新たなイベントが発生し、複数の通信装置10の各々ごとに新たな遅延量Dを算出するごとに、算出した遅延量Dを該遅延量Dに対応する通信装置10のノードIDに対応付けて遅延量DB26Bに登録する。
【0095】
なお、算出部28Eは、複数の通信装置10の各々ごとに、イベントが発生するごとに順次算出される遅延量Dを、ノードIDに対応付けて順次記憶してもよい。そして、算出部28Eは、新たに遅延量Dを算出するごとに、複数の通信装置10の各々について、過去に算出された遅延量Dとの平均値を、最新の遅延量Dとして遅延量DB26Bに登録してもよい。
【0096】
また、算出部28Eは、複数の通信装置10の各々ごとに、イベントが発生するごとに順次算出された遅延量Dについて、イベントの内容に応じた重み付けを行った後の平均値を、最新の遅延量Dとして遅延量DB26Bに登録してもよい。この場合、例えば、算出部28Eは、地震の場合は震度が大きいほど大きい重み付け値とすることや、通信装置10のホップ数が小さいときに得られた遅延量ほど大きい重み付け値としてもよい。
【0097】
図3に戻り説明を続ける。
【0098】
補正部28Fは、センサデータの時刻情報を遅延量Dに基づいて補正する。
【0099】
補正部28Fは、複数の通信装置10の各々から受信した通信データに含まれる時刻情報を、複数の通信装置10の各々毎に算出した遅延量Dを相殺する時刻となるように補正する。
【0100】
図6を用いて説明する。例えば、通信装置10Aが基準通信装置として設定され、通信装置10Aに対する通信装置10Bの時刻の遅延量Dが算出されている場面を想定して説明する。この場合、補正部28Fは、通信装置10Gから受信した通信データに含まれるセンサ波形50Gの起点の時刻が、基準センサ波形50Aの起点の時刻となるように、遅延量Dに応じて時刻情報を補正する。
【0101】
すなわち、補正部28Fは、複数の通信装置10の各々から受信した通信データに含まれる時刻情報によって表される時刻を、複数の通信装置10の各々の遅延量Dを相殺するように、遅延量Dに相当する時刻分ずらした時刻に補正する。
【0102】
そして、補正部28Fは、補正した時刻情報を含む通信データを通信データDB26Aに登録する。このため、通信データDB26Aには、時刻情報の補正された通信データが登録される。なお、送受信部28Aによって通信データが通信データDB26Aに登録されている場合には、補正部28Fは、通信データDB26Aにおける対応する通信データに含まれる時刻情報を補正後の時刻情報に更新すればよい。
【0103】
補正部28Fによる時刻情報の補正によって、複数の通信装置10の各々から受信した通信データに含まれる時刻情報が、基準通信装置として設定された通信装置10または集約装置20に搭載された時計機能によって計測される時刻を用いて補正される。
【0104】
このため、通信システム2のネットワークに接続される通信装置10間の時刻情報のずれが容易に補正される。
【0105】
次に、本実施形態の集約装置20で実行される情報処理の流れの一例を説明する。
【0106】
図9は、本実施形態の集約装置20で実行される情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0107】
特定部28Bは、通信システム2のネットワーク内でイベントが同時発生したか否かを判断する(ステップS100)。ステップS100で肯定判断すると(ステップS100:Yes)、ステップS102へ進む。
【0108】
ステップS102では、送受信部28Aが、複数の通信装置10の各々から通信データを受信する(ステップS102)。
【0109】
特定部28Bは、ステップS102で受信した通信データを、イベント通信データとして特定する(ステップS104)。
【0110】
分類部28Cは、通信システム2に含まれる複数の通信装置10を、予め定めた分類条件に基づいて1または複数のグループGに分類する(ステップS106)。上述したように、分類部28Cは、通信システム2に含まれる複数の通信装置10を、通信装置10の設置場所情報、通信装置10の絶対位置情報、通信装置10のネットワーク環境情報、およびイベント発生源に対する通信装置10の相対位置情報、の少なくとも1つが類似する群ごとに、1または複数のグループGに分類する。
【0111】
設定部28Dは、複数の通信装置10または集約装置20から基準となる基準通信装置を設定する(ステップS108)。例えば、設定部28Dは、ステップS106で分類されたグループGごとに、1つの基準通信装置を設定する。
【0112】
算出部28Eは、ステップS104で特定した複数の通信装置10の各々のイベント通信データに含まれるイベントセンサデータおよび時刻情報から、複数の通信装置10の各々の基準通信装置に対する時刻の遅延量Dを算出する(ステップS110)。
【0113】
算出部28Eは、ステップS110で複数の通信装置10の各々ごとに算出した遅延量Dを、通信装置10のノードIDに対応付けて遅延量DB26Bに記憶する(ステップS112)。
【0114】
補正部28Fは、センサデータの時刻情報を遅延量Dに基づいて補正する(ステップS114)。補正部28Fは、ステップS102で複数の通信装置10の各々から受信した通信データに含まれるセンサデータの時刻情報を、遅延量DB26Bにおける通信装置10のノードIDに対応する遅延量Dを用いて補正する。そして、ステップS118へ進む。
【0115】
一方、ステップS100で否定判断すると(ステップS100:No)、ステップS116へ進む。ステップS116では、送受信部28Aが、複数の通信装置10の各々から通信データを受信する(ステップS116)。そして、ステップS114へ進む。ステップS114では、補正部28Fは、ステップS116で複数の通信装置10の各々から受信した通信データに含まれるセンサデータの時刻情報を、遅延量DB26Bにおける各々の通信装置10のノードIDに対応する遅延量Dを用いて補正する。そして、ステップS118へ進む。
【0116】
ステップS118では、制御部28が、本情報処理を終了するか否かを判断する(ステップS118)。ステップS118で否定判断すると、上記ステップ100に戻る。ステップS118で肯定判断すると(ステップS118:Yes)、本ルーチンを終了する。
【0117】
以上説明したように、本実施形態の集約装置20は、送受信部28Aと、特定部28Bと、算出部28Eと、補正部28Fと、を備える。送受信部28Aは、ネットワークに接続される複数の通信装置10の各々から、複数の通信装置10の各々に搭載されたセンサによる計測結果であるセンサデータおよびセンサデータの計測時刻である時刻情報を含む通信データを受信する。特定部28Bは、ネットワーク内で同時発生したイベントのセンサデータであるイベントセンサデータを含む通信データを、イベント通信データとして特定する。算出部28Eは、複数の通信装置10の各々のイベント通信データに含まれるイベントセンサデータおよび時刻情報に基づいて、複数の通信装置10間の時刻の遅延量Dを算出する。補正部28Fは、通信データに含まれるセンサデータの時刻情報を遅延量Dに基づいて補正する。
【0118】
ここで、従来、センサデータを集約するシステムでは、通信装置の個体差、伝送遅延、通信頻度、中継数に応じた同期誤差、などによってセンサデータの時刻情報にずれが生じる場合があった。そこで、従来技術では、複数の通信装置の各々にGPSを搭載したシステムが知られている。しかし、複数の通信装置の各々にGPSを搭載した構成とした場合、装置の大型化、複雑化、省電力性能の低下、等を招く場合があった。また、従来技術では、集約装置から受信したセンシング開始信号の受信時刻との誤差を計算し、誤差に応じて補正した補正後の時刻情報を通信装置から集約装置へ送信する構成が開示されている。しかし、従来技術では、集約装置と通信装置との間の伝送遅延が考慮されておらず、時刻情報のずれが解消されない場合があった。すなわち、従来技術では、ネットワークに接続される通信装置間の時刻情報のずれを容易に軽減することは困難であった。
【0119】
一方、本実施形態の集約装置20では、通信システム2のネットワーク内で同時発生したイベントの計測結果であるイベントセンサデータを含むイベント通信データを特定し、複数の通信装置10の各々のイベント通信データに含まれるイベントセンサデータおよび時刻情報に基づいて、複数の通信装置10間の時刻の遅延量Dを算出する。そして、本実施の形態の通信装置10では、複数の通信装置10の各々ごとに算出した遅延量Dを用いて、複数の通信装置10の各々から受信した通信データに含まれるセンサデータの時刻情報を補正する。
【0120】
このように、本実施形態の集約装置20は、通信システム2のネットワーク内で同時発生したイベントの計測結果であるイベントセンサデータを含むイベント通信データを用いて、通信システム2に含まれる複数の通信装置10の各々から受信した通信データに含まれる時刻情報を補正する。
【0121】
このため、本実施形態の集約装置20は、簡易な構成で容易に通信装置10の時刻情報のずれを補正することができる。
【0122】
従って、本実施形態の集約装置20は、ネットワークに接続される通信装置10間の時刻情報のずれを容易に軽減することができる。
【0123】
また、本実施形態の集約装置20は、通信装置10のクロックの個体差や伝送遅延、通信頻度や中継数に応じて通信装置10間の時刻誤差が増加する環境であっても、イベント通信データを用いることで、センサデータの時刻情報のずれを容易に補正することができる。
【0124】
次に、本実施形態の通信装置10および集約装置20のハードウェア構成の一例を説明する。図10は、本実施形態の通信装置10および集約装置20の一例のハードウェア構成図である。
【0125】
本実施形態の通信装置10および集約装置20は、CPU86などの制御装置と、ROM(Read Only Memory)88やRAM(Random Access Memory)90やHDD(ハードディスクドライブ)92などの記憶装置と、通信機器などの各種機器とのインターフェースであるI/F部82と、各種情報を出力する出力部80と、ユーザによる操作を受付ける入力部94と、各部を接続するバス96とを備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0126】
本実施形態の通信装置10および集約装置20では、CPU86が、ROM88からプログラムをRAM90上に読み出して実行することにより、上記各部がコンピュータ上で実現される。
【0127】
なお、本実施形態の通信装置10および集約装置20で実行される上記各処理を実行するためのプログラムは、HDD92に記憶されていてもよい。また、本実施形態の通信装置10および集約装置20で実行される上記各処理を実行するためのプログラムは、ROM88に予め組み込まれて提供されていてもよい。
【0128】
また、本実施形態の通信装置10および集約装置20で実行される上記処理を実行するためのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、本実施形態の通信装置10および集約装置20で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、本実施形態の通信装置10および集約装置20で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0129】
なお、上記には、本発明の実施の形態および変形例を説明したが、上記実施の形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0130】
1 情報処理システム
2 通信システム
10 通信装置
20 集約装置
28A 送受信部
28B 特定部
28C 分類部
28D 設定部
28E 算出部
28F 補正部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10