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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】電池管理装置および電池管理方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6572 20140101AFI20241209BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241209BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241209BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20241209BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20241209BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20241209BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20241209BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241209BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20241209BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20241209BHJP
【FI】
H01M10/6572
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/647
H01M10/6551
H01M10/651
H01M10/48 301
H01M10/48 P
H01M10/643
H01M10/633
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022098757
(22)【出願日】2022-06-20
(65)【公開番号】P2024000154
(43)【公開日】2024-01-05
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 洋明
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-045549(JP,A)
【文献】特開2015-119605(JP,A)
【文献】特開2012-234734(JP,A)
【文献】特開2008-016230(JP,A)
【文献】特開2012-016078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/633
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6563
H01M 10/6572
H01M 10/647
H01M 10/6551
H01M 10/651
H01M 10/48
H01M 10/643
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルの温度をそれぞれ測定する複数の温度測定部と、
複数の前記電池セルの電気特性をそれぞれ測定する複数の電気特性測定部と、
複数の前記電池セルとそれぞれ熱的に接続された複数のペルチェ素子と、
複数の前記ペルチェ素子と熱的に接続された伝熱部材と、
複数の前記温度測定部と複数の前記電気特性測定部と複数の前記ペルチェ素子とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記温度測定部で測定された前記電池セルの温度が予め定められた上限温度以上であるか否かを判定する異常判定部と、
前記異常判定部の判定結果が是である場合に、全ての前記ペルチェ素子を駆動して、全ての前記電池セルから前記伝熱部材に向かって熱を送るように制御する制御部と、
前記異常判定部の判定結果が否である場合に、前記温度測定部で測定された前記電池セルの温度が予め定められた下限温度以上であるか否かを判定する第1判定部と、
前記電気特性測定部で測定された電気特性から求められる前記電池セルの充電状態(State of charge;SOC)が、予め定められた下限SOC以上であるか否かを判定する第2判定部と、
前記第1判定部および前記第2判定部の判定結果がいずれも是である場合に、前記ペルチェ素子を駆動して、前記電池セルから前記伝熱部材に向かって熱を送るように制御するセル温度制御部と、
を備える、電池管理装置。
【請求項2】
前記セル温度制御部は、前記第1判定部および前記第2判定部の少なくとも一方の判定結果が否である場合に、前記ペルチェ素子を駆動しないように構成されている、
請求項1に記載の電池管理装置。
【請求項3】
前記下限温度が、40±5℃の範囲に設定されている、
請求項1または2に記載の電池管理装置。
【請求項4】
前記下限SOCが、40±5%の範囲に設定されている、
請求項1または2に記載の電池管理装置。
【請求項5】
複数の電池セルの温度をそれぞれ測定する複数の温度測定部と、
複数の前記電池セルの電気特性をそれぞれ測定する複数の電気特性測定部と、
複数の前記電池セルとそれぞれ熱的に接続された複数のペルチェ素子と、
複数の前記ペルチェ素子と熱的に接続された伝熱部材と、
複数の前記温度測定部と複数の前記電気特性測定部と複数の前記ペルチェ素子とを制御する制御部と、
を備える電池管理装置を用いる電池管理方法であって、
前記温度測定部で測定された前記電池セルの温度が予め定められた上限温度以上であるか否かを判定する異常判定工程と、
前記異常判定工程の判定結果が是である場合に、全ての前記ペルチェ素子を駆動して、全ての前記電池セルから前記伝熱部材に向かって熱を送るように制御する工程と、
前記異常判定工程の判定結果が否である場合に、前記温度測定部で測定された前記電池セルの温度が予め定められた下限温度以上であるか否かを判定する第1判定工程と、
前記電気特性測定部で測定された電気特性に基づいて算出された充電状態(State of charge;SOC)が、予め定められた下限SOC以上であるか否かを判定する第2判定工程と、
前記第1判定工程および前記第2判定工程の判定結果がいずれも是である場合に、前記ペルチェ素子を駆動して、前記電池セルから前記伝熱部材に向かって熱を送るように制御する一方、前記第1判定工程および前記第2判定工程の少なくとも一方の判定結果が否である場合に、前記ペルチェ素子を駆動しないように構成されたセル温度制御工程と、
を含む、電池管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池管理装置および電池管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両駆動用電源等として、複数の電池セルを組み合わせた組電池が用いられている。電池セルは、例えば急速な充放電の繰り返しや環境温度の変化等によって、温度が高くなりすぎることがある。電池セルは、温度の高い状態で充放電効率が低下することがある。これに関連する従来技術文献として、特許文献1~3が挙げられる。例えば特許文献1には、電池セルが高温状態にあると判定された時に、ペルチェ素子を電池セルから吸熱するように制御すると共に、冷却ファンを起動して、電池セルの温度を下げることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-148189号公報
【文献】特開2015-119605号公報
【文献】国際公開2013-105152号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者の検討によれば、電池セルの寿命を考慮すると、上記技術には改善の余地があった。そこで、本発明は、電池セルの寿命を延ばすことができる電池管理装置および電池管理方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明により、電池セルの温度を測定する温度測定部と、上記電池セルの電気特性を測定する電気特性測定部と、上記電池セルと熱的に接続されたペルチェ素子と、上記ペルチェ素子と熱的に接続された伝熱部材と、上記温度測定部と上記電気特性測定部と上記ペルチェ素子とを制御する制御部と、を備える電池管理装置が提供される。上記制御部は、上記温度測定部で測定された上記電池セルの温度が予め定められた下限温度以上であるか否かを判定する第1判定部と、上記電気特性測定部で測定された電気特性から求められる上記電池セルの充電状態(State of charge;SOC)が、予め定められた下限SOC以上であるか否かを判定する第2判定部と、上記第1判定部および上記第2判定部の判定結果がいずれも是である場合に、上記ペルチェ素子を駆動して、上記電池セルから上記伝熱部材に向かって熱を送るように制御するセル温度制御部と、を備える。
【0006】
上記電池管理装置は、電池セルの温度およびSOCに基づいて、電池セルを冷却するか否かを決定するように構成されている。本発明者の検討によれば、電池セルは、高温かつ高SOCの状態が続くと、寿命性能が急激に低下する。そのため、電池セルの温度だけでなくSOCもあわせて考慮し冷却の必要性を決定することで、的確に電池セルの長寿命化が図れる。また、ペルチェ素子を用いることで、電池セルを迅速に冷却すると共に、軽量化かつ省スペース化を実現できる。
【0007】
ここに開示される電池管理装置の好適な一態様では、上記セル温度制御部は、上記第1判定部および上記第2判定部の少なくとも一方の判定結果が否である場合に、上記ペルチェ素子を駆動しないように構成されている。本発明者の検討によれば、電池セルの温度が低いあるいは電池セルのSOCが低い場合には、相対的に寿命性能の低下が小さい。このような場合にペルチェ素子を駆動しないことで、ペルチェ素子を駆動するためのエネルギーを低減できる。
【0008】
ここに開示される電池管理装置の好適な一態様では、上記電池セルが複数であり、複数の上記電池セルのそれぞれに、上記電気特性測定部と上記ペルチェ素子とが設けられている。組電池は、1つの電池セルの性能の低下が全体の電池特性に大きく影響し得る。したがって、ここに開示される技術を適用することが特に効果的である。
【0009】
ここに開示される電池管理装置の好適な一態様では、上記下限温度が、40±5℃の範囲に設定されている。ここに開示される電池管理装置の他の好適な一態様では、上記下限SOCが、40±5%の範囲に設定されている。これにより、より高いレベルで電池セルの寿命性能を向上できる。
【0010】
また、本発明により、電池セルの温度を測定する温度測定部と、上記電池セルの電気特性を測定する電気特性測定部と、上記電池セルと熱的に接続されたペルチェ素子と、上記ペルチェ素子と熱的に接続された伝熱部材と、上記温度測定部と上記電気特性測定部と上記ペルチェ素子とを制御する制御部と、を備える電池管理装置を用いる電池管理方法が提供される。この上記温度測定部で測定された上記電池セルの温度が予め定められた下限温度以上であるか否かを判定する第1判定工程と、上記電気特性測定部で測定された電気特性に基づいて算出された充電状態(State of charge;SOC)が、予め定められた下限SOC以上であるか否かを判定する第2判定工程と、上記第1判定工程および上記第2判定工程の判定結果がいずれも是である場合に、上記ペルチェ素子を駆動して、上記電池セルから上記伝熱部材に向かって熱を送るように制御する一方、上記第1判定工程および上記第2判定工程の少なくとも一方の判定結果が否である場合に、上記ペルチェ素子を駆動しないように構成されたセル温度制御工程と、を含む。これにより、的確に電池セルの長寿命化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る電池管理装置の模式的な側面図である。
図2図2は、制御装置の機能ブロック図である。
図3図3は、温度制御のプロセスの一例を示すフローチャートである。
図4図4は、一実施形態に係る冷却時の気流の流れを示す図1対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0013】
[電池管理装置]
図1は、一実施形態に係る電池管理装置10の模式的な側面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、U、Dは、左、右、上、下を表し、図面中の符号X、Yは、電池セル20の配列方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池管理装置10ないし電池セル20の設置形態を何ら限定するものではない。また、各図は模式図であり、必ずしも実際の実施品が忠実に反映されたものではない。以下では、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0014】
電池管理装置10は、1つまたは複数の電池セル20の温度を管理する装置である。電池セル20は、ここではハウジング22の内部に収容されている。電池セル20は、ここでは二次電池であり、例えばリチウムイオン電池である。なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0015】
電池セル20は、図示しない電極体と電解質とが外装体の内部に収容されて構成されている。電池セル20の構成は従来同様であってよく、何ら限定されない。外装体は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の熱伝導性の良い金属材料で構成されている。電池セル20は、ここでは外形が扁平かつ有底の直方体形状(角形)である。電池セル20は、平板状の底面20bと、底面20bから延びる側面20sと、図示しない正極端子および負極端子を有する。ただし、電池セル20の形状は角形に限定されず、円柱や袋状等の任意の形状であってよい。底面20bは、後述する第1伝熱板30と対向している。
【0016】
電池セル20は、ここでは複数である。複数の電池セル20は、幅広の側面20sが対向するように、配列方向Xに沿って配置されている。複数の電池セル20は、相互に電気的に接続され、組電池を構成している。複数の電池セル20は、ここでは金属製のバスバーを介して直列に接続されている。ただし、他の実施形態において、複数の電池セル20は並列に接続されていてもよい。
【0017】
本実施形態の電池管理装置10は、複数の第1伝熱板30と、複数のペルチェ素子40と(図2も参照)、第2伝熱板50と、複数の温度測定ユニット62(図2も参照)と、複数の電圧測定ユニット64(図2参照)と、制御装置70(図2参照)と、送風機80(図2も参照)と、を備えている。本実施形態において、第2伝熱板50はペルチェ素子に接続された伝熱部材の一例であり、温度測定ユニット62は電池セルの温度を測定する温度測定部の一例であり、電圧測定ユニット64は電池セルの電気特性を測定する電気特性測定部の一例である。
【0018】
複数の第1伝熱板30は、一方の面(図1の上面)が、複数の電池セル20(詳しくは、電池セル20の外装体)の底面20bにそれぞれ接触している。複数の第1伝熱板30は、電池セル20に接する面とは逆側の面(図1の下面)が、後述するペルチェ素子40に接触している。第1伝熱板30は、電池セル20の底面20bと略同じ大きさを有するシート状である。第1伝熱板30は、例えばアルミ箔等の熱伝導性に優れる素材からなっている。ただし、第1伝熱板30の材料は特に限定されない。また、第1伝熱板30は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0019】
複数のペルチェ素子40は、一方の面(図1の上面)が、複数の第1伝熱板30にそれぞれ接触し、他方の面(図1の下面)が、後述する第2伝熱板50に接触している。ペルチェ素子40は、ここでは第1伝熱板30を介して電池セル20と熱的に接続されている。ただし、ペルチェ素子40は、第1伝熱板30を介さずに直接、各電池セル20と熱的に接続されていてもよい。なお、本明細書において「熱的に接続」とは、両者の間で熱伝導可能であることを意味し、両者の間に第1伝熱板30等の介在物が介在するかどうかを問わない用語である。
【0020】
複数のペルチェ素子40は、それぞれ、電源41aを有する複数の制御回路41を備えている。複数の制御回路41は、制御装置70(図2参照)と電気的に接続され、複数のペルチェ素子40をそれぞれ制御するように構成されている。電源41aは、ここでは電圧を印加する向きを切り替え可能であり、ペルチェ素子40に対して第1の向きの電流、または、第1の向きとは逆方向の第2の向きの電流を選択的に流すことが可能なように構成されている。電源41aの電圧の印加向きは、後述するセル温度制御部76によって制御される。
【0021】
ペルチェ素子40は、電流を流すことにより、一方の端部から他方の端部に向かって熱を移動させることができる半導体素子である。ペルチェ素子40による熱の移動方向は、電流の向きを変えることで変更することができる。ペルチェ素子40による時間当たりの熱の移動量は一般にリニアではないが、電流に応じて変化する。なお、1つのペルチェ素子40とは、ここでは、同期して制御される1群のペルチェ素子40を意味し、物理的に分かれているかどうかを問わない用語である。
【0022】
ペルチェ素子40としては、従来公知のものを利用でき、特に限定されない。ペルチェ素子40は、例えば複数のP型半導体およびN型半導体を有している。P型半導体およびN型半導体のうちのいずれか一方から他方に電流を流すことにより、第1伝熱板30が吸熱する。これによって、第1伝熱板30から第2伝熱板50に熱が移動して、電池セル20を冷却することができる。
【0023】
第2伝熱板50は、複数のペルチェ素子40の他方の面(図1の下面)に熱的に接続されている。第2伝熱板50は、複数のペルチェ素子40を介して、複数の電池セル20の間を熱的に接続している。第2伝熱板50の数は、ここでは1つである。第2伝熱板50は、ここでは複数の電池セル20の底面20bの全体と概ね同じ面積を有する平板状の部材である。第2伝熱板50は、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等の熱伝導性に優れる素材からなっている。ただし、第2伝熱板50の材料は特に限定されない。第2伝熱板50は、放熱板の役割を担っている。このため、第2伝熱板50は、例えば熱を効率よく放出するラジエータ構造や放熱フィン等を有していてもよい。
【0024】
複数の温度測定ユニット62は、複数の電池セル20の温度をそれぞれ測定するためのものである。温度測定ユニット62は、例えば図示しない電極端子やバスバー等の金属部材、あるいは電池セル20の側面20s等に取り付けられている。温度測定ユニット62の構成は特に限定されない。温度測定ユニット62は、例えば測温抵抗体(サーミスタ)や熱電対等で構成されている。温度測定ユニット62は、制御装置70と電気的に接続されている。温度測定ユニット62の数は、ここでは電池セル20の数と同数である。ただし、温度測定ユニット62は、複数の電池セル20のうちの1つに取り付けられ、複数の電池セル20の代表値(代表温度)を測定するように配置されていてもよい。また、一部または全部の電池セル20の温度は、他の電池セル20の温度(例えば代表温度)や、その他の指標から推定される推定値であってもよい。
【0025】
複数の電圧測定ユニット64は、複数の電池セル20の電圧(端子間電圧)を測定するためのものである。電圧測定ユニット64は、例えば図示しない電極端子やバスバー等の金属部材に取り付けられている。電圧測定ユニット64の構成は特に限定されない。電圧測定ユニット64は、例えば、従来公知の電圧測定機能を有する電子部品(例えば電圧検知線)、電子機器等で構成されている。なお、ここでは電池セル20の電気特性として電圧を測定しているが、その他の電気特性であってもよい。例えば、他の実施形態において、電圧測定ユニット64にかえて電流測定ユニットを備えていてもよい。電圧測定ユニット64は、制御装置70と電気的に接続されている。電圧測定ユニット64の数は、ここでは電池セル20の数と同数である。
【0026】
送風機80は、第2伝熱板50ないしハウジング22の内部に風を送る装置である。送風機80は、例えば回転動作することによってハウジング22の吸気口22aから気体(空気)を取り込み、排気口22bから気体を排出する冷却ファンである。送風機80は、制御装置70と電気的に接続され、後述するペルチェ素子40が駆動する際に同時に駆動するように構成されていてもよい。ただし、送風機80は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。ハウジング22の内部は、典型的には、制御装置70と電気的に接続された図示しない恒温維持装置によって所定値以下の温度(例えば40℃以下)に維持されている。
【0027】
制御装置70は、BMU(Battery Monitoring Unit)を含んでいる。図2は、制御装置70の機能ブロック図である。制御装置70は、温度取得部71と、第1判定部72と、電圧取得部73と、SOC算出部74と、第2判定部75と、セル温度制御部76と、を備えている。
【0028】
温度取得部71は、複数の温度測定ユニット62を制御して電池セル20の温度Tを測定し、測定された温度Tを取得するように構成されている。第1判定部72は、温度取得部71で取得された温度Tが予め定められた温度(下限温度)以上であるか否かを判定するように構成されている。電圧取得部73は、複数の電圧測定ユニット64を制御して電池セル20の電圧を測定し、測定された電圧をそれぞれ取得するように構成されている。SOC算出部74には、電圧と充電状態(State of charge;SOC)とが対応付けられた「電圧-SOCチャート」が予め記憶されている。SOC算出部74は、電圧取得部73で取得された電圧を「電圧-SOCチャート」と対比して、電池セル20のSOCを算出するように構成されている。第2判定部75は、SOC算出部74で算出されたSOCが予め定められたSOC(下限SOC)以上であるか否かを判定するように構成されている。
【0029】
セル温度制御部76は、第1判定部72および第2判定部75の判定結果に基づいて制御回路41を駆動するように構成されている。詳しくは、セル温度制御部76は、第1判定部72で予め定められた下限温度よりも高温と判定され、かつ、第2判定部75で予め定められた下限SOCよりもSOCが高いと判定された場合に、該当する電池セル20に接続されているペルチェ素子40を、電池セル20から第2伝熱板50に向かって熱を送るように駆動する。これにより、電池セル20が冷却され、高温側の閾値である下限温度よりも電池セル20の温度が低くなる。一方、セル温度制御部76は、第1判定部72で予め定められた下限温度以下であると判定された場合、および、第2判定部75で予め定められた下限SOC以下であると判定された場合に、該当する電池セル20に接続されているペルチェ素子40を駆動させない。これにより、効率化が図れる。
【0030】
制御装置70の構成は特に限定されないが、例えばマイクロコンピュータを備えている。マイクロコンピュータは、例えば、外部機器からデータ等を受信するインターフェイス(I/F)と、プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えていてもよい。
【0031】
電池管理装置10は、各種用途に利用可能であるが、例えば、複数の電池セル20を含む組電池と共に、乗用車、トラック等の車両に好適に搭載できる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、電池セル20から供給される電力によって動作するモータのみを動力源とする電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)、あるいは、内燃機関と、電池セル20から供給される電力によって動作するモータと、を備えるハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)であってもよい。また、ハイブリッド車両は、外部電源によって電池セル20を充電可能なプラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)であってもよい。
【0032】
[電池管理方法]
図3は、電池管理装置10の温度制御のフローチャートである。なお、以下では、主に複数の電池セル20のうちの1つの電池セル20の温度制御について説明するが、他の電池セル20についても同様の制御がそれぞれ行われる。また、以下の温度制御において、「YES」は是と同義であり、「NO」は否と同義である。
【0033】
この温度制御を行うタイミングは特に制限されず、例えば所定のインターバルを介して定期的に行ってもよいし、随時行ってもよい。また、電池管理装置10が車両に搭載されている場合、例えば、ユーザが車両の動力源を始動させた際にこの温度制御を開始し、ユーザが車両の動力源を制動させた際にこの温度制御を終了するようにしてもよい。あるいは、ユーザが車両の動力源を制動させたまま放置している間も、定期的にあるいは随時、この温度制御を行ってもよい。
【0034】
本実施形態の温度制御では、まずステップS1において、温度取得部71によって、電池セル20の温度Tが温度測定ユニット62から取得される。次に、ステップS2では、第1判定部72によって、電池セル20の温度が予め定められた下限温度以上であるか否かが判定される。下限温度は、制御装置70に予め記憶されている。下限温度は、典型的には、恒温維持装置によって維持されているハウジング22の内部の温度と同じかそれよりも高い温度である。特に限定されるものではないが、電池セル20の寿命を向上する観点からは、下限温度が、概ね60℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下であるとよい。また、効率化の観点からは、下限温度が、概ね35℃以上であるとよい。下限温度は、40±5℃が特に好ましく、ここでは40℃に設定されている。本実施形態において、ステップS2は、第1判定工程の一例である。
【0035】
電池セル20の温度が下限温度未満である場合(ステップS2の結果がNOである場合)には、ステップS3のようにペルチェ素子40は駆動されずに制御を終了する。
【0036】
一方、電池セル20の温度が下限温度以上である場合(ステップS2の結果がYESである場合)には、ステップS4において、電圧取得部73によって、電池セル20の電圧が電圧測定ユニット64から取得される。次に、ステップS5では、SOC算出部74によって、電圧測定ユニット64から取得された電圧に基づいて、予め記憶されている電圧-SOCチャートから電池セル20のSOCが算出される。ただし、電圧測定ユニット64にかえて電流測定ユニットを備えている場合は、電流測定ユニットによって測定された電流の積算値からSOCを算出してもよい。
【0037】
続くステップS6では、第2判定部75によって、電池セル20のSOCが予め定められた下限SOC以上であるか否かが判定される。下限SOCは、制御装置70に予め記憶されている。特に限定されるものではないが、電池セル20の寿命を向上する観点からは、下限SOCが、概ね60%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下であるとよい。また、効率化の観点からは、下限SOCが、概ね30%以上、例えば35%以上であるとよい。下限SOCは、40±5%が特に好ましく、ここでは40%に設定されている。本実施形態において、ステップS6は、第2判定工程の一例である。
【0038】
電池セル20のSOCが下限SOC未満である場合(ステップS6の結果がNOである場合)には、例えば特許文献1に記載されるような従来の技術とは異なり、ステップS7のようにペルチェ素子40は駆動されずに制御を終了する。
【0039】
一方、電池セル20のSOCが下限SOC以上である場合(ステップS6の結果がYESである場合)には、ステップS8において、ペルチェ素子40は、電池セル20から第2伝熱板50に熱を移動するように駆動される。これにより、電池セル20が冷却される。ペルチェ素子40は、例えば温度測定ユニット62で測定される温度が下限温度未満となるまでペルチェ素子40を駆動させるように構成されていてもよいし、予め定められた一定の時間だけペルチェ素子40を駆動させるように構成されていてもよい。本実施形態において、ステップS8は、セル温度制御工程の一例である。
【0040】
本実施形態では、ステップS8において、さらに送風機80が駆動される。図4は、冷却時の気流の流れを示す図1対応図である。なお、図4では電池セル20、ハウジング22、送風機80以外の図示を省略している。図4に示すように、送風機80によってハウジング22の吸気口22aから取り込まれた空気は、高温の電池セル20ないし第2伝熱板50によって温められる。これによって、図4に矢印で示すような気流が生じる。その結果、ハウジング22内にこもった熱が放熱されて、効率的に電池セル20が冷却される。
【0041】
以上のような電池管理装置10によれば、例えば複数の電池セル20に温度やSOCのばらつきがある場合にも、各電池セル20のペルチェ素子40を個別に駆動させることができる。言い換えれば、ステップS2およびステップS6の結果がいずれも是と判定された電池セル20、すなわち高温かつ高SOCの状態にあり冷却が必要である電池セル20を選択的かつ効率的に冷却できる。また、低温および/または低SOCの状態にあり冷却が不要な電池セル20ではペルチェ素子40を駆動させることがないため、エネルギーの無駄を低減できる。したがって、効率的に電池セル20ないし組電池の長寿命化が図れる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0043】
例えば、上記した図3の実施形態では、ステップS1の後に続けてステップS2を行っていた。しかしこれには限定されない。変形例において、制御装置70は、温度取得部71で取得された温度Tが予め定められた異常温度(上限温度)以上であるか否かを判定するように構成された異常判定部をさらに有していてもよい。異常温度は、制御装置70に予め記憶されている。異常温度は、例えば内部短絡等、電池セル20に何らかの異常が生じていると考えられる温度である。特に限定されるものではないが、異常温度は、例えば70℃以上、80℃以上、90℃以上であってもよい。この場合、図3の温度制御では、ステップS1とステップS2との間に、異常判定部によって電池セル20の温度が異常温度(上限温度)以上か否かを判定するステップS1Aが介在していてもよい。そして、電池セル20の温度が異常温度(上限温度)未満である場合には、ステップS2を実行する一方、電池セル20の温度が異常温度以上である場合には、全ての電池セル20のペルチェ素子40を駆動して、全ての電池セル20を一気に冷却するようにしてもよい。
【0044】
例えば、上記した図3の実施形態では、ステップS2またはステップS6の判定結果がNOである場合(言い換えれば、第1判定部72および第2判定部75の少なくとも一方の判定結果が否である場合)に、ペルチェ素子40を駆動しないように構成されていた。しかしこれには限定されない。変形例において、ステップS2またはステップS6でNOと判定された電池セル20のペルチェ素子40を駆動させてもよい。この場合、ステップS8(セル温度制御部76)において、第2伝熱板50を介して複数の電池セル20の間で熱の移動をさせ、複数の電池セル20の温度を均等化するようにペルチェ素子40を駆動してもよい。具体的には、複数のペルチェ素子の伝熱方向を制御して、ステップS6でYESと判定された電池セル20については、上記した実施形態と同様に、ペルチェ素子40を電池セル20から第2伝熱板50に向かって熱を送るように駆動する一方、ステップS2またはステップS6でNOと判定された電池セル20については、ペルチェ素子40を第2伝熱板50から電池セル20に向かって熱を送るように駆動してもよい。
【0045】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:電池セルの温度を測定する温度測定部と、上記電池セルの電気特性を測定する電気特性測定部と、上記電池セルと熱的に接続されたペルチェ素子と、上記ペルチェ素子と熱的に接続された伝熱部材と、上記温度測定部と上記電気特性測定部と上記ペルチェ素子とを制御する制御部と、を備え、上記制御部は、上記温度測定部で測定された上記電池セルの温度が予め定められた下限温度以上であるか否かを判定する第1判定部と、上記電気特性測定部で測定された電気特性から求められる上記電池セルの充電状態(State of charge;SOC)が、予め定められた下限SOC以上であるか否かを判定する第2判定部と、上記第1判定部および上記第2判定部の判定結果がいずれも是である場合に、上記ペルチェ素子を駆動して、上記電池セルから上記伝熱部材に向かって熱を送るように制御するセル温度制御部と、を備える、電池管理装置。
項2:上記セル温度制御部は、上記第1判定部および上記第2判定部の少なくとも一方の判定結果が否である場合に、上記ペルチェ素子を駆動しないように構成されている、項1に記載の電池管理装置。
項3:上記電池セルが複数であり、複数の上記電池セルのそれぞれに、上記電気特性測定部と上記ペルチェ素子とが設けられている、項1または項2に記載の電池管理装置。
項4:上記下限温度が、40±5℃の範囲に設定されている、項1~項3のいずれか1つに記載の電池管理装置。
項5:上記下限SOCが、40±5%の範囲に設定されている、項1~項4のいずれか1つに記載の電池管理装置。
【符号の説明】
【0046】
10 電池管理装置
20 電池セル
30 第1伝熱板
40 ペルチェ素子
50 第2伝熱板
62 温度測定ユニット
64 電圧測定ユニット
70 制御装置
71 温度取得部
72 第1判定部
73 電圧取得部
75 第2判定部
76 セル温度制御部
図1
図2
図3
図4