(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/474 20210101AFI20241209BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20241209BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20241209BHJP
H01M 50/486 20210101ALI20241209BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20241209BHJP
【FI】
H01M50/474
H01M50/557
H01M50/533
H01M50/486
H01M50/477
(21)【出願番号】P 2022117265
(22)【出願日】2022-07-22
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】村田 一郎
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-134869(JP,A)
【文献】特開2011-048976(JP,A)
【文献】特開2019-110030(JP,A)
【文献】特開2014-187040(JP,A)
【文献】特開2022-074817(JP,A)
【文献】特開2021-077518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を有する電極体と、
前記電極体を収容する電池ケースと、
前記電池ケース内に配置され、前記正極又は前記負極と電気的に接続された集電部と、
前記電池ケース内で前記集電部と電気的に接続され、前記電池ケースに取り付けられた端子と、
前記電池ケースの内側の面と前記電極体との間に配置された樹脂部材と、
を備え、
前記樹脂部材は、第1貫通孔を有し、
前記集電部は、第2貫通孔を有し、
前記端子は、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔に挿通された軸部と、一端に前記集電部と接合された接合部と、を有し、
前記樹脂部材は、前記第1貫通孔の周縁に設けられた第1領域と、前記第1領域の外周側に設けられ、前記第1領域と一体的に形成された第2領域と、を有し、
前記第2領域は、アイゾット衝撃試験に基づく衝撃強さが前記第1領域よりも大きく、
前記第1領域を構成する第1材料は、前記第2領域を構成する第2材料よりも融点が高い、
電池。
【請求項2】
前記第1領域を構成する前記第1材料は、融点が200℃以上である、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第2領域のアイゾット衝撃試験に基づく衝撃強さが、30J/m以上である、
請求項
1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記第1領域と前記第2領域との境界部は、
前記樹脂部材の厚み方向に延びる領域と、
前記厚み方向に対して傾斜した方向に延びる領域と、
を有する、
請求項1または2に記載の電池。
【請求項5】
前記樹脂部材の全体を100質量%としたときに、前記第2領域の占める割合が60質量%以上である、
請求項1または2に記載の電池。
【請求項6】
前記樹脂部材は、
前記電池ケースの前記端子が取り付けられた面に沿って配置されたベース部と、
前記集電部の前記電極体側の面よりも前記電極体の側に突出した突出部と、
を含み、
前記ベース部に、前記第1貫通孔と、前記第1領域と、前記第2領域の一部と、が配置され、
前記突出部に、前記第2領域の一部が配置されている、
請求項1または2に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の典型的な構成では、電極を有する電極体と、電極体を収容する電池ケースと、電池ケース内に配置され電極と電気的に接続された集電部と、電池ケース内で集電部と電気的に接続され電池ケースに取り付けられた端子と、を備える。これに関連する従来技術文献として、特許文献1~4が挙げられる。例えば特許文献1には、電池ケースの封口板と集電部との間に配置される樹脂部材をさらに備え、端子が集電部および樹脂部材の各貫通孔に挿通されて封口板に機械的に固定(具体的には、かしめ固定)された電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-074817号公報
【文献】特許第5182568号公報
【文献】特開2021-77518号公報
【文献】特開2013-134869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高出力かつハイレートで充放電する電池は、通常の使用(充放電)に際しても、電池(特には電流の集中する端子付近)が発熱しやすい。また、端子を封口板に機械的に固定することに加えて、溶接等の治金的接合で端子と集電部とを接合することがある。このような場合は、端子と接する樹脂部材が熱影響によって焼けたり溶融したりすることを防止する必要がある。そのため一般に、樹脂部材は耐熱性の高い樹脂で構成されている。しかし、本発明者の検討によれば、耐熱性の高い樹脂で構成された樹脂部材は、背反として脆くなり、耐衝撃性が不足する。その結果、電池の使用時に樹脂部材に落下等の大きな衝撃や振動等が加わると、電極体が樹脂部材に衝突し、樹脂部材が割れる虞がある。ひいては、電極体が損傷して短絡することがありうる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、熱影響が生じにくく耐衝撃性の向上した樹脂部材を備えた電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、正極および負極を有する電極体と、上記電極体を収容する電池ケースと、上記電池ケース内に配置され、上記正極又は上記負極と電気的に接続された集電部と、上記電池ケース内で上記集電部と電気的に接続され、上記電池ケースに取り付けられた端子と、上記電池ケースの内側の面と上記電極体との間に配置された樹脂部材と、を備える電池が提供される。上記樹脂部材は、第1貫通孔を有する。上記集電部は、第2貫通孔を有する。上記端子は、上記第1貫通孔および上記第2貫通孔に挿通された軸部と、一端に上記集電部と接合された接合部と、を有する。上記樹脂部材は、上記第1貫通孔の周縁に設けられた第1領域と、上記第1領域の外周側に設けられ、上記第1領域と一体的に形成された第2領域と、を有する。上記第1領域を構成する第1材料は、上記第2領域を構成する第2材料よりも融点が高い。
【0007】
上記樹脂部材は、領域により材質が異なっている。すなわち、第1貫通孔の周縁に設けられた第1領域は、第2領域よりも融点が高い材料で構成されている。これにより、熱影響による樹脂部材の焼けや溶融を抑えられる。また、第1領域の外周側に設けられた第2領域は、第1領域よりも融点が低い材料で構成されている。これにより、第2領域が第1領域と同じ融点の材料で構成されている場合や、第2領域が第1領域よりも融点の高い材料で構成されている場合に比べて、相対的に樹脂部材の耐衝撃性を向上できる。したがって、電池の使用時に電極体が樹脂部材に衝突したとしても、樹脂部材が割れにくくなり、電極体が損傷することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図4】
図4は、
図1のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。
【
図5】
図5は、封口板に取り付けられた電極体群を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、正極第2集電部および負極第2集電部が取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図7は、捲回電極体の構成を示す模式図である。
【
図8】
図8は、封口板アッセンブリを模式的に示す斜視図である。
【
図12】
図12は、正極樹脂部材を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0010】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して正極と負極の間で電荷担体が移動することによって繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般をいう。電解質は、液状電解質(電解液)、ゲル状電解質、固体電解質のいずれであってもよい。二次電池は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する。
【0011】
<電池100>
図1は、電池100の斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図4は、
図1のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0012】
図2に示すように、電池100は、電池ケース10と、電極体群20と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部50と、負極集電部60と、正極樹脂部材70と、負極樹脂部材80と、を備えている。図示は省略するが、電池100は、ここではさらに電解液を備えている。電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。電池100は、ここに開示される正極樹脂部材70および/または負極樹脂部材80を備えることによって特徴付けられ、それ以外の構成は従来同様であってよい。正極端子30および負極端子40は、ここに開示される端子の一例である。正極樹脂部材70および負極樹脂部材80は、ここに開示される樹脂部材の一例である。
【0013】
電池ケース10は、電極体群20を収容する筐体である。電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。
図2に示すように、電池ケース10は、開口12hを有する外装体12と、開口12hを塞ぐ封口板(蓋体)14と、を備えている。
【0014】
外装体12は、
図1に示すように、略矩形状の底壁12aと、底壁12aの長辺から延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aの短辺から延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。底壁12aは、開口12hと対向している。短側壁12cの面積は、長側壁12bの面積よりも小さい。封口板14は、外装体12の開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。封口板14は、平面視において略矩形状である。電池ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。電池ケース10は、気密に封止(密閉)されている。
【0015】
封口板14には、
図2に示すように、注液孔15と、ガス排出弁17と、2つの端子引出孔18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後に電解液を注液するためのものである。注液孔15は、封止部材16により封止されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。端子引出孔18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子引出孔18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。端子引出孔18、19は、それぞれ、封口板14に取り付けられる前の(かしめ加工前の)の正極端子30および負極端子40を挿通可能な大きさの内径を有する。
【0016】
正極端子30および負極端子40は、それぞれ電池ケース10に取り付けられている。正極端子30および負極端子40は、電池ケース10を構成する封口板14に取り付けられていることが好ましい。正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方側(
図1、
図2の左側)に配置されている。負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方側(
図1、
図2の右側)に配置されている。
図1に示すように、正極端子30および負極端子40は、封口板14の外側の表面に露出している。
図2に示すように、正極端子30および負極端子40は、端子引出孔18、19を挿通して封口板14の内部から外部へと延びている。正極端子30および負極端子40は、封口板14の端子引出孔18、19を貫通していることが好ましい。正極端子30および負極端子40は、ここでは、かしめ加工により、封口板14の端子引出孔18、19を囲む周縁部分に、かしめられている。正極端子30および負極端子40の外装体12の側の端部(
図2の下端部)には、かしめ部30c、40cが形成されている。正極端子30および負極端子40は、端部にかしめ部30c、40cを有することが好ましい。
【0017】
図2に示すように、正極端子30は、電池ケース10の内部で、正極集電部50を介して電極体群20の正極22と電気的に接続されている。負極端子40は、電池ケース10の内部で、負極集電部60を介して電極体群20の負極24と電気的に接続されている。正極端子30は、正極樹脂部材70およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。負極端子40は、負極樹脂部材80およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。
【0018】
正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。負極端子40は、2つの導電部材が接合され一体化されて構成されていてもよい。例えば、負極集電部60と接続される部分が銅または銅合金からなり、封口板14の外側の表面に露出する部分がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなっていてもよい。
【0019】
図1に示すように、封口板14の外側の面には、板状の正極外部導電部材32および負極外部導電部材42が取り付けられている。正極外部導電部材32は、正極端子30と電気的に接続されている。負極外部導電部材42は、負極端子40と電気的に接続されている。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、複数の電池100を相互に電気的に接続する際に、バスバーが付設される部材である。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、外部樹脂部材92によって封口板14と絶縁されている。ただし、正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0020】
図5は、封口板14に取り付けられた電極体群20を模式的に示す斜視図である。電極体群20は、ここでは3つの電極体20a、20b、20cを有する。ただし、1つの電池ケース10の内部に配置される電極体の数は特に限定されず、2つ以上(複数)であってもよいし、1つであってもよい。電極体群20は、ここでは樹脂製シートからなる電極体ホルダ29(
図3参照)に覆われた状態で、電池ケース10の内部に配置されている。
【0021】
図6は、電極体20aを模式的に示す斜視図である。
図7は、電極体20aの構成を示す模式図である。なお、以下では電極体20aを例として詳しく説明するが、電極体20b、20cについても同様の構成とすることができる。
図7に示すように、電極体20aは、正極22および負極24を有する。電極体20aは、ここでは、帯状の正極22と帯状の負極24とが帯状のセパレータ26を介して積層され、捲回軸WLを中心として捲回されてなる扁平形状の捲回電極体である。
【0022】
電極体20aは、
図2、
図7からわかるように、捲回軸WLが長辺方向Yと平行になる向きで、電池ケース10の内部に配置されている。言い換えれば、電極体20aは、捲回軸WLが底壁12aと平行になり、短側壁12cと直交する向きで、電池ケース10の内部に配置されている。電極体20aの両端面(言い換えれば、正極22と負極24とが積層された積層面、
図7の長辺方向Yの両端面)は、短側壁12cと対向している。電池100は、電極体群20の左右に正極タブ群23と負極タブ群25とが位置する、所謂、横タブ構造である。ただし、電池100は、電極体群20の上下に正極タブ群23と負極タブ群25とが位置する、所謂、上タブ構造であってもよい。
【0023】
図3に示すように、電極体20aは、外装体12の底壁12aおよび封口板14と対向する一対の湾曲部20rと、一対の湾曲部20rを連結し、外装体12の長側壁12bに対向する平坦部20fと、を有する。ただし、電極体20aは、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の正極と、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の負極とが、絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。
【0024】
正極22は、
図7に示すように、正極集電体22cと、正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極集電体22cは、帯状である。正極集電体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極集電体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。
【0025】
正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部(
図7の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、それぞれ長辺方向Yの一方側(
図7の左側)に向かって突出している。複数の正極タブ22tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。複数の正極タブ22tは、正極22の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の正極タブ22tは、それぞれ台形状である。正極タブ22tは、ここでは正極集電体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。正極タブ22tは、正極集電体22cの正極活物質層22aおよび正極保護層22pが形成されていない部分(集電体露出部)である。ただし、正極タブ22tは、正極集電体22cとは別の部材であってもよい。また、正極タブ22tは、長辺方向Yの他方の端部(
図7の右端部)に設けられていてもよいし、長辺方向Yの両端部にそれぞれ設けられていてもよい。
【0026】
図4に示すように、複数の正極タブ22tは長辺方向Yの一方の端部(
図4の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成している。複数の正極タブ22tは、外方側の端が揃うように折り曲げられて湾曲している。複数の正極タブ22tは、折り曲げられ、正極端子30と電気的に接続されていることが好ましい。複数の正極タブ22tのサイズ(長辺方向Yの長さおよび長辺方向Yに直交する幅、
図7参照)は、正極集電部50に接続される状態を考慮し、例えばその形成位置等によって、適宜調整することができる。図示は省略するが、複数の正極タブ22tは、ここでは湾曲させたときに外方側の端が揃うように相互にサイズが異なっている。
図2に示すように、正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と電気的に接続されている。正極タブ群23には、後述する正極第2集電部52が付設されている。
【0027】
正極活物質層22aは、
図7に示すように、帯状の正極集電体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。正極活物質層22aの固形分全体を100質量%としたときに、正極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0028】
正極保護層22pは、
図7に示すように、長辺方向Yにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、ここでは正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部(
図7の左端部)に設けられている。ただし、正極保護層22pは、長辺方向Yの両端部に設けられていてもよい。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pの固形分全体を100質量%としたときに、無機フィラーは、概ね50質量%以上、典型的には70質量%以上、例えば80質量%以上を占めていてもよい。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材およびバインダは、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。
【0029】
負極24は、
図7に示すように、負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極集電体24cは、帯状である。負極集電体24cは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
【0030】
負極集電体24cの長辺方向Yの一方の端部(
図7の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、それぞれ長辺方向Yの一方側(
図7の右側)に向かって突出している。複数の負極タブ24tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。複数の負極タブ24tは、負極24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の負極タブ24tは、それぞれ台形状である。負極タブ24tは、ここでは負極集電体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。負極タブ24tは、ここでは、負極集電体24cの負極活物質層24aが形成されていない部分(集電体露出部)である。ただし、負極タブ24tは、負極集電体24cとは別の部材であってもよい。また、負極タブ24tは、長辺方向Yの他方の端部(
図7の左端部)に設けられていてもよいし、長辺方向Yの両端部にそれぞれ設けられていてもよい。
【0031】
図4に示すように、複数の負極タブ24tは長辺方向Yの一方の端部(
図4の右端部)で積層され、負極タブ群25を構成している。複数の負極タブ24tは、外方側の端が揃うように折り曲げられて湾曲している。複数の負極タブ24tは、折り曲げられ、負極端子40と電気的に接続されていることが好ましい。複数の負極タブ24tのサイズ(長辺方向Yの長さおよび長辺方向Yに直交する幅、
図7参照)は、負極集電部60に接続される状態を考慮し、例えばその形成位置等によって、適宜調整することができる。図示は省略するが、複数の負極タブ24tは、ここでは湾曲させたときに外方側の端が揃うように相互にサイズが異なっている。
図2に示すように、負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と電気的に接続されている。負極タブ群25には、後述する負極第2集電部62が付設されている。
【0032】
負極活物質層24aは、
図7に示すように、帯状の負極集電体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。負極活物質層24aの固形分全体を100質量%としたときに、負極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類を使用し得る。分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を使用し得る。
【0033】
セパレータ26は、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ26としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる多孔性の樹脂シートが好適である。なお、セパレータ26の表面には、無機フィラーを含む耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)が設けられていてもよい。無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、チタニア等を使用し得る。
【0034】
電解液は従来と同様でよく、特に制限はない。電解液は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水電解液である。非水系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解液は固体状(固体電解質)で、電極体群20と一体化されていてもよい。
【0035】
図8は、封口板アッセンブリ、すなわち封口板14に、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部50の正極第1集電部51と、負極集電部60の負極第1集電部61と、正極樹脂部材70と、負極樹脂部材80と、が取り付けられた合体物を模式的に示す斜視図である。
図9は、
図8の封口板14を裏返した斜視図である。
図9は、封口板14の外装体12の側(内側)の面を示している。
図10は、
図8のX-X線断面図であり、正極端子30の近傍を模式的に示す部分拡大断面図である。
図11は、かしめ加工前の各部材を模式的に示す
図10の分解図である。なお、
図10、
図11では、正極端子30の中心線CLを一点鎖線で示している。また、正極外部導電部材32および外部樹脂部材92の図示を省略している。
【0036】
正極集電部50は、電池ケース10の内部に配置されている。正極集電部50は、複数の正極タブ22tからなる正極タブ群23と、正極端子30と、を電気的に接続する導通経路を構成している。
図2に示すように、正極集電部50は、正極第1集電部51と、正極第2集電部52と、を備えている。正極第1集電部51は、ここに開示される集電部の一例である。正極第1集電部51および正極第2集電部52は、正極集電体22cと同じ金属種、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。
【0037】
図9に示すように、正極第1集電部51は、封口板14の内側の面に取り付けられている。正極第1集電部51は、第1部分51aと、第2部分51bと、を有する。正極第1集電部51は、一つの部材を例えばプレス加工等によって折り曲げることで構成されてもよく、複数の部材を溶接接合等によって一体化することで構成されてもよい。正極第1集電部51は、ここでは、かしめ加工によって、封口板14に固定されている。
【0038】
第1部分51aは、正極第1集電部51のうち、封口板14と電極体群20との間に配置される部位である。第1部分51aは、長辺方向Yに沿って延びている。第1部分51aは、封口板14の内側の表面に沿って水平に広がっている。封口板14と第1部分51aとの間には、正極樹脂部材70が配置されている。第1部分51aは、正極樹脂部材70によって封口板14と絶縁されている。第1部分51aは、ここでは、かしめ加工により、正極端子30と電気的に接続されている。
図11に示すように、第1部分51aにおいて、封口板14の端子引出孔18と対応する位置には、上下方向Zに貫通した貫通孔51hが形成されている。貫通孔51hは、封口板14の側(
図11の上方)に向かって縮径するテーパ状に形成されている。貫通孔51hには、正極端子30の軸部30aが挿通されている。軸部30aは、ここでは貫通孔51hを貫通している。ただし、軸部30aは貫通孔51hを完全に貫通していなくてもよい。貫通孔51hは、ここに開示される第2貫通孔の一例である。
【0039】
第2部分51bは、正極第1集電部51のうち、外装体12の短側壁12cと電極体群20との間に配置される部位である。第2部分51bは、第1部分51aの長辺方向Yの一方側の端(
図9の左端)から外装体12の短側壁12cに向かって延びている。第2部分51bは、上下方向Zに沿って延びている。
【0040】
図10に示すように、正極第1集電部51は、正極端子30のかしめ部30cと接合されている。かしめ部30cと正極第1集電部51との境界部分には、接合部30jが形成されている。正極端子30と正極第1集電部51との境界部分には、接合部30jが形成されていることが好ましい。接合部30jは、ここでは円環状である。接合部30jは、典型的には治金的な接合部であり、溶接接合部であることが好ましい。これにより、正極端子30と正極集電部50との電気的な接続を安定して保つことができ、導通信頼性を向上できる。
【0041】
正極第2集電部52は、
図5、
図6に示すように、外装体12の短側壁12cに沿って延びている。正極第2集電部52は、
図6に示すように、集電板接続部52aと、傾斜部52bと、タブ接合部52cと、を有する。集電板接続部52aは、正極第1集電部51と電気的に接続される部位である。集電板接続部52aは、上下方向Zに沿って延びている。集電板接続部52aは、電極体20a、20b、20cの捲回軸WLに対して略垂直に配置されている。集電板接続部52aには、その周囲よりも厚みが薄い凹部52dが設けられている。凹部52dには、短辺方向Xに貫通した貫通孔52eが設けられている。図示は省略するが、貫通孔52eには、正極第1集電部51との接合部が形成されている。接合部は、例えば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接によって形成された溶接接合部である。正極第2集電部52には、ヒューズを設けてもよい。
【0042】
タブ接合部52cは、正極タブ群23に付設され、複数の正極タブ22tと電気的に接続される部位である。
図5に示すように、タブ接合部52cは、上下方向Zに沿って延びている。タブ接合部52cは、電極体20a、20b、20cの捲回軸WLに対して略垂直に配置されている。タブ接合部52cの複数の正極タブ22tと接続される面は、外装体12の短側壁12cと略平行に配置されている。
図4に示すように、タブ接合部52cには、正極タブ群23との接合部Jが形成されている。接合部Jは、例えば、複数の正極タブ22tを重ねた状態で、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接によって形成された溶接接合部である。接合部Jは、複数の正極タブ22tを電極体20a、20b、20cの短辺方向Xの一方側に寄せて配置されている。これにより、複数の正極タブ22tをより好適に折り曲げて、
図4に示すような湾曲形状の正極タブ群23を安定して形成することができる。
【0043】
傾斜部52bは、集電板接続部52aの下端とタブ接合部52cの上端とを連結する部位である。傾斜部52bは、集電板接続部52aとタブ接合部52cとに対して傾斜している。傾斜部52bは、長辺方向Yにおいて、集電板接続部52aがタブ接合部52cよりも中央側に位置するように、集電板接続部52aとタブ接合部52cとを連結している。これにより、電極体群20の収容空間を広げて、電池100の高エネルギー密度化を図ることができる。傾斜部52bの下端(言い換えれば、外装体12の底壁12aの側の端部)は、正極タブ群23の下端よりも下方に位置することが好ましい。これにより、複数の正極タブ22tをより好適に折り曲げて、
図4に示すような湾曲形状の正極タブ群23を安定して形成することができる。
【0044】
負極集電部60は、電池ケース10の内部に配置されている。負極集電部60は、複数の負極タブ24tからなる負極タブ群25と、負極端子40と、を電気的に接続する導通経路を構成している。
図2に示すように、負極集電部60は、負極第1集電部61と、負極第2集電部62と、を備えている。負極第1集電部61は、ここに開示される集電部の一例である。負極第1集電部61および負極第2集電部62は、負極集電体24cと同じ金属種、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。負極第1集電部61および負極第2集電部62の構成は、正極集電部50の正極第1集電部51および正極第2集電部52と同等であってよい。
【0045】
図9に示すように、負極第1集電部61は、封口板14の内側の面に取り付けられている。負極第1集電部61は、第1部分61aと、第2部分61bと、を有する。封口板14と第1部分61aとの間には負極樹脂部材80が配置されている。第1部分61aは、負極樹脂部材80によって封口板14と絶縁されている。第1部分61aは、ここでは、かしめ加工により、負極端子40と電気的に接続されている。第1部分61aにおいて、封口板14の端子引出孔19に対応する位置には、上下方向Zに貫通した貫通孔61hが形成されている。負極第2集電部62は、
図6に示すように、負極第1集電部61と電気的に接続される集電板接続部62aと、傾斜部62bと、負極タブ群25に付設され、複数の負極タブ24tと電気的に接続されるタブ接合部62cと、を有する。集電板接続部62aは、タブ接合部62cと連結される凹部62dを有する。凹部62dには、短辺方向Xに貫通した貫通孔62eが設けられている。
【0046】
図示は省略するが、負極第1集電部61は、負極端子40のかしめ部40cと接合されている。かしめ部40cと負極第1集電部61との境界部分には、正極側と同様に、接合部(例えば溶接接合部)が形成されている。負極端子40と負極第1集電部61との境界部分には、接合部が形成されていることが好ましい。
【0047】
正極樹脂部材70は、
図2に示すように、電池ケース10の内部に配置されている。正極樹脂部材70は、上下方向Zにおいて、電池ケース10の内側の面(詳しくは、封口板14の内側の面)と、電極体群20との間に配置されている。
図9に示すように、正極樹脂部材70は、少なくとも電池ケース10と正極第1集電部51との間に配置され、封口板14と正極第1集電部51とを絶縁している。なお、以下では正極樹脂部材70を例として詳しく説明するが、負極樹脂部材80についても同様の構成とすることができる。
【0048】
図12は、正極樹脂部材70を模式的に示す斜視図である。
図13は、
図12のXIII-XIII線断面図である。なお、
図13では、各領域を区別しやすいように、ハッチングを省略している。
図12、
図13に示すように、正極樹脂部材70は、ベース部70aと、複数の突出部70bと、を有する。
図9に示すように、長辺方向Yにおいて、複数の突出部70bは、ベース部70aよりも封口板14の中央側(
図8の右側)に設けられている。
【0049】
ベース部70aは、
図10に示すように、上下方向Zにおいて、封口板14と、正極第1集電部51の第1部分51aと、の間に配置される部位である。ベース部70aは、正極第1集電部51の第1部分51aに沿って水平に広がっている。
図12に示すように、ベース部70aは、ここでは、上下方向Zに貫通した貫通孔70hと、短辺方向Xの両端に設けられた一対の長辺壁71と、長辺方向Yの一方の端部(
図12の左端部)に設けられた短辺壁72と、一対の凸部71pと、を有する。
【0050】
貫通孔70hは、
図11に示すように、封口板14の端子引出孔18と対応する位置に形成されている。貫通孔70hの周囲には、封口板14を載置するための段差70sが設けられている。貫通孔70hには、正極端子30の軸部30aとガスケット90の軸部90aとが挿通される。貫通孔70hは、ここに開示される第1貫通孔の一例である。正極樹脂部材70は、ここでは正極端子30がかしめ加工および溶接接合されることによって封口板14に固定されている。
図12に示すように、一対の長辺壁71は、長辺方向Yに沿ってそれぞれ帯状に延びている。一対の長辺壁71は、外装体12の長側壁12bに沿って配置されている。短辺壁72は、短辺方向Xに沿って帯状に延びている。短辺壁72は、一対の長辺壁71の一方側の端部(
図11の左端部)を連結している。
【0051】
凸部71pは、ここでは、正極樹脂部材70が所定の配置位置から移動する(ずれる)ことを抑制するための部位である。具体的には、正極樹脂部材70が、かしめられた部分を中心として、封口板14に平行な面内で回転することを抑制するための部位である。凸部71pは、封口板14の側から電極体群20に向かって突出している。一対の凸部71pは、正極第1集電部51の短辺方向Xの両端部を挟み込むように設けられている。
【0052】
突出部70bは、ベース部70aよりも電極体群20の側に突出している。突出部70bは、正極集電部50の第1部分51aの下面よりも電極体群20の側に突出している。このような突出部70bが設けられていると、電池ケース10内で、電極体群20(具体的には電極体20a、20b、20c)が封口板14に近づく方向に大きく移動しにくくなる。そのため、電極体群20が、損傷することを抑制することができる。
図2に示すように、突出部70bは、電極体群20の長辺方向Yの中央Mよりも正極タブ群23に近い側に配置されているとよい。言い換えれば、突出部70bは、電極体群20の長辺方向Yの長さをLaとしたときに、電極体群20の長辺方向Yの中央Mから0.25La以上離れた位置(外方側)に配置されていることが好ましい。
【0053】
図3に示すように、突出部70bの数は、ここでは電極体群20を構成する電極体20a、20b、20cの数と同数である。すなわち、3つである。突出部70bは、複数形成されることが好ましい。これにより、各電極体20a、20b、20cと突出部70bとをより確実に対向させることができる。突出部70bは、ここでは電極体群20を構成する各電極体20a、20b、20cの湾曲部20rと対向している。ただし、突出部70bの数は、電極体群20を構成する電極体の数と異なっていてもよく、例えば1つであってもよい。また、突出部70bは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0054】
図3に示すように、複数の突出部70bは、電池100の状態において、電極体群20を構成する電極体20a、20b、20cに当接していない。複数の突出部70bは、電極体20a、20b、20cと離間した位置に配置されている。上下方向Zにおいて、電極体20aの長さHaは、突出部70bの下端から外装体12の底壁12aまでの距離Hbよりも小さい(すなわち、Ha<Hb)。これにより、電池100の使用時に振動や衝撃等が加わっても、突出部70bと電極体20a、20b、20cとが擦れて電極体20a、20b、20cが損傷することを抑制できる。突出部70bと電極体20a、20b、20cとの最短距離SDは、概ね0.1mm以上であってもよい。ただし、他の実施形態において、封口板14が外装体12よりも上方となる向きに配置された状態において、突出部70bと電極体20a、20b、20cとは接していてもよい。
【0055】
突出部70bは、
図12に示すように、断面略コの字状に形成されている。突出部70bをこのような形状とすることにより、電池100の使用時に振動や衝撃等が加わって電極体20a、20b、20cが封口板14の側に移動しても、応力の集中を回避して、正極タブ群23にかかる負荷を効果的に軽減することができる。複数の突出部70bは、ここでは、それぞれ、一対の縦壁73と、下方横壁74と、を有する。
【0056】
一対の縦壁73は、長辺方向Yに沿って平行に延びている。一対の縦壁73は、電極体20a、20b、20cに向かって(言い換えれば、外装体12の底壁12aに向かって)、それぞれ斜め下方に延びている。一対の縦壁73は、電極体20a、20b、20cに向かって縮径するテーパ状に形成されている。下方横壁74は、長辺方向Yに沿って延びている。下方横壁74は、一対の縦壁73の下端、言い換えれば、電極体20a、20b、20c側の端部を連結している。下方横壁74は、突出部70bのなかで、電極体群20に最も近い部位である。短辺方向Xにおいて、下方横壁74の幅Tbは、電極体20a、20b、20cの幅Taの0.4倍以上であることが好ましく、0.55倍以上であることがより好ましい。下方横壁74は、ここでは電極体20a、20b、20cの側の面が平坦である。ただし、電極体20a、20b、20cの外面(上面)に沿った形状、例えば湾曲部20rに沿った曲線状としてもよい。
【0057】
図3に示すように、突出部70bの縦壁73と、電極体20a、20b、20cとで囲まれた領域、詳しくは、隣り合う突出部70bの縦壁73と、電極体20a、20b、20cの湾曲部20rと、で囲まれた領域は、ガス排出弁17に連通している。かかる領域は、電池ケース10内で発生したガス、例えば電極体20a、20b、20cの端面(
図7の長辺方向Yの端面)から発生したガスが、ガス排出弁17に向かって流れるガス流路空間Sとなる。ガス流路空間Sが確保されていることで、電池ケース10の内部(例えば電極体群20の内部)で発生したガスがガス排出弁17の方に移動しやすくなり、ガス排出弁17を円滑に作動させることができる。また、発生したガスをガス排出弁17から効率的に排出することができる。
【0058】
図12に示すように、短辺方向Xにおいて、隣り合う突出部70b同士は上方横壁76で相互に連結されている。上方横壁76は、長辺方向Yに沿って延びている。上方横壁76は、一対の縦壁73と平行に延びている。上方横壁76は、隣り合う突出部70bの縦壁73の封口板14の側の端(
図12の前後の端)を連結している。上方横壁76はベース部70aに連結している。
【0059】
正極樹脂部材70は、使用する電解液に対する耐性(耐電解液性)と電気絶縁性とを有する樹脂材料からなっている。正極樹脂部材70は、第1の材料からなる第1領域A1と、第2の材料からなる第2領域A2と、を有している。正極樹脂部材70は、ここでは第1領域A1と第2領域A2とからなっている。すなわち、正極樹脂部材70は、2つの異なる部材で構成されている。第1領域A1と第2領域A2とは一体的に形成されている。特に限定されるものではないが、第1領域A1と第2領域A2とは、2色成形、はめ込み、圧入、接着、および溶接のうちの少なくとも1つの方法で一体化されていることが好ましい。正極樹脂部材70は、一体成型品(例えば2色成形品)であることが好ましい。これにより、第1領域A1と第2領域A2とを別部材とする場合と比べて、使用する部材の数を削減することができ、低コスト化を実現することができる。また、より簡易に正極樹脂部材70を用意することができる。
【0060】
第1領域A1は、貫通孔70hの周縁に設けられている。第1領域A1は、ここではベース部70aの一部を構成している。一方、第2領域A2は、第1領域A1の外周側に設けられている。第2領域A2は、ベース部70aの第1領域A1以外の部分と、突出部70bの全体と、を構成している。言い換えれば、ベース部70aには、第1貫通孔70hと、第1領域A1と、第2領域A2の一部とが配置され、突出部70bには、第2領域A2の一部が配置されている。
【0061】
第1領域A1は、第2領域A2に比べて耐熱性が必要となる領域である。そのため、第1領域A1を構成する第1材料は、第2領域A2を構成する第2の材料よりも融点が高い。これにより、熱影響による正極樹脂部材70の焼けや溶融を抑えられる。第1の材料の融点は、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上が特に好ましい。通常、融点が高い材料ほど高価になるため、コストとのバランスを考慮して、第1の材料の融点は、例えば400℃以下、350℃以下、300℃以下であってもよい。
【0062】
第1の材料は、第2の材料よりも融点が高い限りにおいて特に限定されないが、好適例として、150℃以上の耐熱性を持つスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)が挙げられる。具体例として、ポリフェニレンサルファイド(PPS)や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)等のフッ素化樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。なかでも、コスト等の観点からは、PPS、PTFE、PFAが好ましく、PPSが特に好ましい。第1の材料は、ガラス転移点を有しない非晶性樹脂であってもよい。第1の材料は、ここではPPSである。第1の材料は、PPSを主成分(質量基準で最も含有割合の高い成分。)とし、エラストマーをさらに含んだ樹脂組成物であってもよい。表1に、主要な樹脂材料の性質を示す。
【0063】
【0064】
なお、ここでは貫通孔70hにガスケット90の軸部90aが挿通されている。そのため、第1領域A1はシール性を要求されない。また、第1領域A1は、電池100の使用時に振動や衝撃等が加わっても電極体群20と接触しない領域である。そのため、第1領域A1は耐衝撃性が低くてよい。
【0065】
第2領域A2は、第1領域A1に比べて耐衝撃性が必要となる領域である。第2領域A2は耐熱性が低くてよい。樹脂は通常、融点が低いほど柔軟で弾性変形しやすく、耐衝撃性にも優れる。そのため、第2領域A2を構成する第2の材料は、第1領域A1を構成する第1の材料よりも融点が低い。これにより、正極樹脂部材70の耐衝撃性を向上できる。したがって、電池100に落下等の衝撃が加わり、電極体群20が第2領域A2に衝突したとしても、正極樹脂部材70が割れにくくなる。また、正極樹脂部材70の割れを防止するために厚みを増やす必要もないので、第2領域A2の柔軟性を維持しやすい。
【0066】
第2の材料は、第1の材料との融点の差が、概ね50℃以上、例えば100℃以上、さらには150℃以上であるとよい。第2の材料の融点は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。第2の材料の融点は、例えば80℃以上、90℃以上、100℃以上であってもよい。第2の材料は、第1の材料よりも融点が低い限りにおいて特に限定されないが、好適例として、汎用プラスチックが挙げられる。具体例として、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。第2の材料は、ガラス転移点を有する結晶性樹脂であってもよい。第2の材料は、ここではPEである。汎用プラスチックは通常、スーパーエンプラに比べて安価であり、例えばスーパーエンプラに比べて材料費を1/10程度に抑えられる。そのため、低コスト化を実現できる。また、突出部70bのサイズを従来よりも長辺方向Yに長くして、電極体群20との受圧面積を安価に増大することもできる。
【0067】
第2領域A2は、衝撃強さが第1領域A1よりも大きいことが好ましい。これにより、電極体群20が第2領域A2に衝突したとしても正極樹脂部材70が一層割れにくくなる。第2領域A2の衝撃強さは、20J/m以上であることが好ましく、30J/m以上であることがより好ましく、例えば50J/m以上であってもよい。第2領域A2の衝撃強さは、第1領域A1の衝撃強さとの差が、10J/m以上であることが好ましく、20J/m以上であることがより好ましく、例えば50J/m以上であってもよい。なお、本明細書において、「衝撃強さ」とは、JIS K7110:1999 「アイゾット衝撃強さの試験方法」に準拠したアイゾット衝撃試験(アイゾットノッチ付き)に基づく値をいう。
【0068】
第2領域A2は、硬度が第1領域A1よりも小さいことが好ましい。これにより、電極体群20が第2領域A2に衝突したとしても正極樹脂部材70が一層割れにくくなる。第2領域A2の硬度は、50以下が好ましく、20以下がより好ましい。第2領域A2の硬度は、第1領域A1の硬度との差が、50以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましく、例えば100以上であってもよい。第1領域A1の硬度は、90以上であることが好ましく、例えば100~150である。なお、本明細書において、「硬度」とは、JIS K 7202に準拠した「ロックウェル硬さ試験(Rスケール)」に基づくロックウェル硬さ(記号:HRR、単位なし)をいう。
【0069】
平面視において、ベース部70aの面積を100%としたときに、第1領域A1の占める面積の割合は、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。平面視において、ベース部70aの面積を100%としたときに、第2領域A2の占める面積の割合は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。突出部70bには、第1領域A1を含まないことが好ましい。突出部70bは、第2領域A2からなることが好ましい。これにより、ここに開示される技術の効果をより高いレベルで発揮できる。
【0070】
第2領域A2は、低コスト化の観点等から、第1領域A1よりも大きな容積を占めていることが好ましい。特に限定されるものではないが、正極樹脂部材70の全体を100質量%としたときに、第2領域A2の占める割合は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上、例えば90質量%以上が特に好ましい。
【0071】
厚み方向(
図13の上下方向Z)の断面視において、第1領域A1は、貫通孔70hの側壁の全体を覆っていることが好ましい。すなわち、正極樹脂部材70のうち正極端子30(詳しくは軸部30a)と当接する部分全体に設けられていることが好ましい。
【0072】
図13に示すように、第1領域A1と第2領域A2との境界部(結合部)B、言い換えれば、第1の材料と第2の材料との接合界面には、隙間が無く、第1領域A1と第2領域A2とが連続的に形成されている。本実施形態では、境界部Bにおいて、第1領域A1と第2領域A2とが階段状(ステップ状)に組み合わされている。具体的には、正極樹脂部材70の厚み方向(
図13の上下方向Z)の断面視にて、第1領域A1が凸状部A1cを有し、第2領域A2が凹状部A2rを有し、境界部Bが凹凸形状を有している。第1領域A1と第2領域A2との境界部Bは筒状であり、厚み方向の中途部で、小径から大径、あるいは大径から小径へと変化していることが好ましい。
【0073】
このように、境界部Bは、厚み方向に延びる領域である筒部B1と、厚み方向に対して傾斜した方向に延びる領域である平面部B2と、を有することが好ましい。これにより、例えば第1の材料および/または第2の材料が、PP、PE、PPSのような結晶性樹脂であって、化学結合しにくい場合であっても、アンカー効果によって第1の材料と第2の材料とを物理的に結合させることが容易となる。また、境界部Bに亀裂等が生じて当該亀裂に電解液が浸み込んだとしても、封口板14から正極集電部50の第1部分51aまでの沿面距離を適切に確保して沿面放電を抑制することができる。
【0074】
すなわち、ここに開示される技術によれば、正極樹脂部材70は電極体20a、20b、20cと衝突したとしても、割れにくくなっている。したがって、電池容量確保のために正極樹脂部材70の厚みを薄くしても、封口板14と正極集電部50の第1部分51aとの間の沿面距離を適切に確保でき、沿面放電による漏電を防止できる。また、境界部Bで第1領域A1と第2領域A2とを階段状とすることにより、境界部Bが直線状である場合に比べて沿面距離を長く確保することができる。これにより、たとえ境界部Bに亀裂等が生じて第1領域A1と第2領域A2との間に隙間があいて当該亀裂に電解液が浸み込んだ場合であっても、漏電による容量低下を抑制できる。かかる効果を高いレベルで発揮する観点からは、厚み方向に直線の場合に比べ、沿面距離が1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上となるように、境界部Bを形成するとよい。
【0075】
さらに、一体成型(例えば2色成形)の際には、まず融点の高い第1の材料を一次成形して第1領域A1を形成し、次に、一次成形品を金型のようにして、融点の低い第2の材料を一次成形よりも低い温度で二次成形して第2領域A2を形成することがある。このとき、一次成形で第1領域A1に凸状部A1cが形成されていると、二次成形の際、凸状部A1cを囲むように境界部Bに第2の材料が流れ込みやすくなる。そのため、沿面距離が確保しやすく、さらに成形性も向上できる。
【0076】
負極樹脂部材80は、
図2に示すように、電極体群20の長辺方向Yの中央Mに対して、正極樹脂部材70と対称になるよう配置されている。負極樹脂部材80の構成は、正極樹脂部材70と同様であってよい。負極樹脂部材80は、ここでは正極樹脂部材70と同様に、封口板14と負極第1集電部61との間に配置されるベース部(図示せず)と、複数の突出部80b(
図9参照)と、を有する。電池100は、正極樹脂部材70および負極樹脂部材80をいずれも備えることが好ましい。これにより、電池100の使用時に振動や衝撃等が加わっても、電極体群20と封口板14とを、平行に(
図2の状態に)維持しやすくなる。
【0077】
<封口板アッセンブリの作製方法>
図8、
図9に示すような封口板アッセンブリは、封口板14に、正極端子30と、正極第1集電部51と、正極樹脂部材70と、負極端子40と、負極第1集電部61と、負極樹脂部材80と、を固定することで作製できる。正極端子30と正極第1集電部51と正極樹脂部材70とは、例えば、かしめ加工(リベッティング)によって封口板14に固定する。かしめ加工は、
図11に示すように、封口板14の外側の表面と正極端子30との間にガスケット90を挟み、さらに封口板14の内側の表面と正極第1集電部51との間に正極樹脂部材70を挟んで行われる。なお、ガスケット90の材質は、例えば正極樹脂部材70と同様であってもよい。
【0078】
詳しくは、かしめ加工前の正極端子30の軸部30aを、封口板14の上方から、ガスケット90の貫通孔90hと、封口板14の端子引出孔18と、正極樹脂部材70の貫通孔70hと、正極第1集電部51の貫通孔51hと、に順番に挿入して、封口板14の下方に突出させる。そして、上下方向Zに対して圧縮力が加わるように軸部30aの封口板14よりも下方に突出した部分をかしめる。これにより、正極端子30の先端部(
図2の下端部)に、かしめ部30cが形成される。このようなかしめ加工によって、ガスケット90と封口板14と正極樹脂部材70と正極第1集電部51とが封口板14に一体に固定されるとともに、端子引出孔18がシールされる。
【0079】
次に、かしめ部30cと正極第1集電部51とを治金的に接合する。これにより、正極端子30と正極第1集電部51との境界部分に接合部30jが形成される。接合部30jは、例えば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接によって形成される。これにより、導通信頼性を向上できる。
【0080】
また、負極端子40と、負極第1集電部61と、負極樹脂部材80とは、上記した正極側と同様に封口板14に固定することができる。これにより、負極端子40の先端部(
図2の下端部)に、かしめ部40cが形成される。また、負極端子40と負極第1集電部61との境界部分に接合部(図示せず)が形成される。
【0081】
<電池100の用途>
電池100は各種用途に利用可能であるが、使用時に振動や衝撃等の外力が加わり得る用途、例えば移動体(典型的には、乗用車、トラック等の車両)に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。電池100は、複数の電池100を所定の配列方向に複数個並べて、配列方向から拘束機構で荷重を加えてなる組電池としても好適に用いることができる。なお、正極樹脂部材70の突出部70bおよび/または負極樹脂部材80の突出部80bは、拘束機構で荷重を加えた状態においても、電極体20a、20b、20cと当接していないことが好ましい。
【0082】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0083】
<変形例> 例えば、上記した実施形態では、
図13に示すように、正極樹脂部材70の厚み方向(
図13の上下方向Z)の断面視にて、第1領域A1は、貫通孔70hの側壁の全体を覆っていた。また、第1領域A1が凸状部A1cを有し、第2領域A2が凹状部A2rを有し、境界部Bが凹凸形状であった。しかし、これには限定されない。第1領域A1は、貫通孔70hの側壁の全体を覆っていなくてもよい。また、境界部Bは、必ずしも凹凸形状を有している必要はなく、任意の形状とすることができる。
【0084】
図14(1)は、第1変形例に係る正極樹脂部材170の
図13対応図である。正極樹脂部材170は、第1の材料および/または第2の材料が、化学結合しやすい非晶性樹脂である場合の一好適例である。本変形例において、正極樹脂部材170は、第1領域A11と第2領域A12とで構成されている。第1領域A11は、厚み方向において、貫通孔70hの側壁の一部を覆っている。第2領域A12は、上記した実施形態とは異なり、貫通孔70hの周縁にまで張り出したリング状の凹部A12uを有している。第1領域A11は、凹部A12uの内部に配置されている。本変形例のような形状により、上記した実施形態と同様に、第1領域A11と第2領域A12との境界部B3に亀裂等が生じた場合であっても、沿面距離を適切に確保でき、沿面放電による漏電を防止できる。
【0085】
図14(2)は、第2変形例に係る正極樹脂部材270の
図13対応図である。正極樹脂部材270は、第1の材料および/または第2の材料が、化学結合しやすい非晶性樹脂である場合の一好適例である。本変形例において、正極樹脂部材270は、第1領域A21と第2領域A22とで構成されている。第1領域A
21と第2領域A
22との境界部B4は直線状であり、ここでは鉛直方向に延びている。例えば正極樹脂部材70の厚みが十分に厚い場合等には、本変形例のように境界部B4が直線状であってよい。
【0086】
図14(3)、(4)は、第3、第4変形例に係る正極樹脂部材370、470の
図13対応図である。正極樹脂部材370、470は、第1の材料および/または第2の材料が、化学結合しやすい非晶性樹脂である場合の一好適例である。本変形例において、正極樹脂部材370は、第1領域A31と第2領域A32とで構成され、正極樹脂部材470は、第1領域A41と第2領域A42とで構成されている。第1領域A31と第2領域A32との境界部B5ないし、第1領域A41と第2領域A42との境界部B6は、階段状(ステップ状)である。例えば正極樹脂部材370、470の搬送時や電池100の組み立て時に、第1領域A41と第2領域A42とが分離しない程度に十分に密着する場合は、本変形例のように凹凸形状を有していなくてもよい。
【0087】
図14(5)は、第
5変形例に係る正極樹脂部材570の
図13対応図である。本変形例において、正極樹脂部材570は、第1領域A51と第2領域A52とで構成されている。第1領域A51と第2領域A52との境界部B7は、凹凸形状である。境界部B7では、上記した実施形態とは逆に、第1領域A
51が凹状部A1rを有し、第2領域A
52が凸状部A2cを有している。例えば2色成形における二次成形の際、凹状部A1rに第2の材料が十分スムーズに流れ込む場合は、本変形例のように第1領域A
51の側が凹状部A1rを有していてもよい。
【0088】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:正極および負極を有する電極体と、上記電極体を収容する電池ケースと、上記電池ケース内に配置され、上記正極又は上記負極と電気的に接続された集電部と、上記電池ケース内で上記集電部と電気的に接続され、上記電池ケースに取り付けられた端子と、上記電池ケースの内側の面と上記電極体との間に配置された樹脂部材と、を備え、上記樹脂部材は、第1貫通孔を有し、上記集電部は、第2貫通孔を有し、上記端子は、上記第1貫通孔および上記第2貫通孔に挿通された軸部と、一端に上記集電部と接合された接合部と、を有し、上記樹脂部材は、上記第1貫通孔の周縁に設けられた第1領域と、上記第1領域の外周側に設けられ、上記第1領域と一体的に形成された第2領域と、を有し、上記第1領域を構成する第1材料は、上記第2領域を構成する第2材料よりも融点が高い、電池。
項2:上記第1領域を構成する上記第1材料は、融点が200℃以上である、項1に記載の電池。
項3:上記第2領域は、アイゾット衝撃試験に基づく衝撃強さが上記第1領域よりも大きい、項1または2に記載の電池。
項4:上記第2領域のアイゾット衝撃試験に基づく衝撃強さが、30J/m以上である、項1から3のいずれか1つに記載の電池。
項5:上記第1領域と上記第2領域との境界部は、上記樹脂部材の厚み方向に延びる領域と、上記厚み方向に対して傾斜した方向に延びる領域と、を有する、項1から4のいずれか1つに記載の電池。
項6:上記樹脂部材の全体を100質量%としたときに、上記第2領域の占める割合が60質量%以上である、項1から5のいずれか1つに記載の電池。
項7:上記樹脂部材は、上記電池ケースの上記端子が取り付けられた面に沿って配置されたベース部と、上記集電部の上記電極体側の面よりも上記電極体の側に突出した突出部と、を含み、上記ベース部に、上記第1貫通孔と、上記第1領域と、上記第2領域の一部と、が配置され、上記突出部に、上記第2領域の一部が配置されている項1から6のいずれか1つに記載の電池。
【符号の説明】
【0089】
10 電池ケース
20 電極体群
20a、20b、20c 電極体
30 正極端子(端子)
40 負極端子(端子)
50 正極集電部
51 正極第1集電部(集電部)
52 正極第2集電部
60 負極集電部
70、170、270、370、470、570 正極樹脂部材(樹脂部材)
A1 第1領域
A2 第2領域
70a ベース部
70b 突出部
70h 貫通孔
80 負極樹脂部材(樹脂部材)
100 電池