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特許7600189HF高電圧マルチレベルインバータを有する電気外科手術用発生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】HF高電圧マルチレベルインバータを有する電気外科手術用発生装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/483 20070101AFI20241209BHJP
【FI】
H02M7/483
【請求項の数】 28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022134138
(22)【出願日】2022-08-25
(65)【公開番号】P2023033229
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】63/237,397
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516236908
【氏名又は名称】オリンパス・ヴィンター・ウント・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OLYMPUS WINTER & IBE GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】デイクストラ,イェレ
(72)【発明者】
【氏名】フェージング,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ラミン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ディートリヒ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】プレツェヴォースキー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シーデル,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,ディミトリ
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0318915(US,A1)
【文献】特開2017-034737(JP,A)
【文献】特開2007-274829(JP,A)
【文献】特開2006-238628(JP,A)
【文献】特開平05-015158(JP,A)
【文献】特表2020-530756(JP,A)
【文献】特表2018-527049(JP,A)
【文献】特開2017-127639(JP,A)
【文献】特開2001-250665(JP,A)
【文献】実開昭59-025996(JP,U)
【文献】特開2013-188057(JP,A)
【文献】特開2002-112461(JP,A)
【文献】特開2014-060873(JP,A)
【文献】特開2012-223585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42 - 7/98
A61B 18/12 - 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科手術器具(16)に交流電圧を出力するように構成された電気外科手術用発生装置であって、
直流電圧源(2)と、
前記直流電圧源(2)から給電され、前記電気外科手術器具(16)の接続用の器具出力(14)に印加される高周波交流電圧であって、可変電圧及び可変周波数を有する前記高周波交流電圧を発生する高電圧インバータとを備え、
前記直流電圧源(2)は固定電圧源であり、
前記インバータは、マルチレベルインバータ(4)として構成され、制御装置(41)によって駆動されるカスケード接続された複数のインバータセル(5)とを備える、電気外科手術用発生装置。
【請求項2】
前記複数のインバータセル(5)は、前記複数のインバータセル(5)の各セル出力において電位デカップリングを有する、請求項1に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項3】
各トランス(6)が前記複数のインバータセル(5)の各セル出力においてその一次側と接続される、請求項2に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項4】
複数のトランス(6)の二次側は、前記各トランス(6)の二次電圧を加算するためにチェーン形式で接続される、請求項3に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項5】
前記加算された電圧は、電気外科手術器具(16)の接続のために、前記複数のインバータセル(5)を前記器具出力(14)に接続する出力線(13)を介して前記器具出力(14)に送電される、請求項4に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項6】
前記複数のトランス(6)のそれぞれが、電圧を昇圧するためのプリアンプとしてのトランスユニットを備え、
前記複数のトランス(6)は、前記各トランスユニットと構造的に一体化されるように構成される、請求項3に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項7】
前記各インバータセル(5)は、1つの電圧源(31)から給電される、請求項1~6のうちのいずれか1つに記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項8】
複数であって少なくとも2個のグループのインバータセル(5)が設けられ、
前記各グループのインバータは、1つの直流電圧源によって共同して給電される、請求項1~6のうちのいずれか1つに記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項9】
複数であって少なくとも2個のグループ(I,II)のインバータセル(5)が提供され、
前記各グループには、異なる値の直流電圧が給電され、
前記複数のグループのうちの1つのグループには、前記複数のグループのうちの別のグループの少なくとも2倍である直流電圧が給電される、請求項1~6のうちのいずれか1つに記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項10】
前記複数のグループの少なくとも1つに異なる電圧を給電するために、少なくとも1つのシオメトリックDC-DCコンバータ(42)が設けられる、請求項9に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項11】
前記DC-DCコンバータ(42)は双方向構成となるように構成される、請求項10に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項12】
前記複数のインバータセル(5)に給電するための直流電圧源は、ガルバニック結合される、請求項1~6のうちのいずれか1つに記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項13】
前記直流電圧源(2)に任意のDC-DCコンバータ(42)が接続される、請求項1~6のうちのいずれか1つに記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項14】
前記複数のインバータセル(5)はそれぞれ、その直流電圧源部に中性点クランプ(55、56)を有するタイプの構造、又はフローティングキャパシタ(57)を有するタイプの構造で構成される、請求項1~6のうちのいずれか1つに記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項15】
前記複数のインバータセル(5)は直列に接続され、前記各インバータセル(5)がH型ブリッジ構成である、請求項1~6のうちのいずれか1つに記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項16】
前記マルチレベルインバータ(4)を駆動するための基準信号を発生するように構成された、前記マルチレベルインバータのための制御信号発生装置(40)が設けられる、請求項1~6のうちのいずれか1つに記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項17】
記電気外科手術用発生装置(1)によって出力されるAC電圧は前記基準信号により定義され、前記基準信号により、前記出力されるAC電圧の波形は、所望により自由に設定可能である、請求項16に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項18】
前記制御信号発生装置(40)は、複数のインバータセル(5)が前記基準信号に応じた出力電圧を発生するように、前記複数のインバータセル(5)を駆動するように構成された制御装置(41)を駆動する、請求項16に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項19】
前記複数のインバータセル(5)は、可変周波数基準信号で駆動される、請求項1~6のうちのいずれか1つに記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項20】
前記複数のインバータセルを前記器具出力(14)に接続する出力線(13)上に出力トランス(7)が設けられ、
前記出力トランス(7)は、DC電流ブロッカとして前記器具出力(14)上のキャパシタ(17)と相互作用し、
前記出力トランス(7)は、主電圧増幅のための出力トランスユニットとして構成される、請求項1~6のうちのいずれか1つに記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項21】
前記複数のインバータセルを前記器具出力(14)に接続する出力線(13)において、少なくとも二次フィルタとして構成されるローパスフィルタ(8)が設けられ、
前記ローパスフィルタ(8’,8”)の2分割構成がさらに設けられる、請求項1~6のうちのいずれか1つに記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項22】
前記ローパスフィルタ(8)のための能動減衰装置が設けられる、請求項21に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項23】
前記能動減衰装置は帰還システムを備え、
前記帰還システム
前記ローパスフィルタ(8)を流れる第1の電流を検出する第1の電流センサ(83)と、
出力トランス(7)を流れる第2の電流を検出する第2の電流センサ(84)とを含み、
前記検出された第1及び第2の電流は前記マルチレベルインバータ(4)に帰還されることで、前記ローパスフィルタ(8)に能動減衰を与える、
請求項22に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項24】
前記能動減衰装置からの出力信号が前記マルチレベルインバータ(4)に作用し、
前記能動減衰装置からの出力信号は、複数のインバータセル(5)の駆動に結合される、請求項22に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項25】
前記マルチレベルインバータ(4)によって発生された少なくとも1つの別の交流電圧が印加される少なくとも1つの別の器具出力(14)が設けられる、請求項1~6のうちのいずれか1つに記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項26】
前記少なくとも1つの別の交流電圧は、前記電気外科手術器具(16)の接続のための前記器具出力(14)における高周波交流電圧よりも低い周波数を有しかつ超音波範囲にある、請求項25に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項27】
前記マルチレベルインバータ(4)を前記器具出力(14)と前記少なくとも1つの別の器具出力(14)のうちの1つに選択的に接続する少なくとも1つの切換装置(3)が設けられる、請求項25に記載の電気外科手術用発生装置。
【請求項28】
前記複数のインバータセル(5)は、前記複数のインバータセルの少なくとも一部分が前記少なくとも1つの別の器具出力(14)への接続のために設けられ、
前記複数のインバータセルの別の部分はさらに前記器具出力(14)に給電するように回路の観点から分割される、請求項26に記載の電気外科手術用発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気外科手術器具に高周波の交流電圧を出力する電気外科手術用発生装置に関する。前記電気外科手術用発生装置は、直流電圧源と、前記直流電圧源から給電され、高周波の交流電圧を発生し、電気外科手術器具の接続用の出力に印加する高電圧インバータとを備える。
【背景技術】
【0002】
電気外科手術では、高周波交流電流は、特に組織の切断やスライス、熱切除の意味での体組織の切除に使用される(電気メスとして知られているもの)。動作原理は、切断される組織を加熱することに基づいている。この利点は、切断と同時に、患部の血管を閉じることで出血を止めることも可能なことである(凝固)。このためには、かなりの電力が必要で、具体的には200kHz以上4000kHz以下、典型的には400kHz前後の周波数が必要とされる。この周波数では、体組織はオーミック抵抗のような挙動を示す。しかし、その比抵抗は組織の種類に強く依存し、筋肉、脂肪、骨などの比抵抗は互いに大きく異なり、具体的には1000分の1程度になる。このため、電気メスの負荷インピーダンスは、切断する組織によって、仮想的に短絡するほど速く、大きく変化することがある。このため、電気メスの発生装置とその高電圧源には、特別で独特な要件が課せられます。特に、数キロボルトの範囲の高電圧、及び典型的には200kHzから最大4MHzまでの広い範囲の高周波に適した高速電圧制御の必要性がある。
【0003】
組織やインピーダンスによって、電流は数ミリアンペアから数アンペアの間で変化し、具体的には非常に短時間に非常にダイナミックな方法で変化する。出力される交流電圧の波形は、連続した正弦波であり、もしくは最大20kHz程度の変調周波数で最大10%のクレストファクタで変調されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許第2514380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような独自の要求を満たすために、電気外科手術用発生装置は、電気外科手術用機器に電力を給電するためのインバータを備え、グリッドから整流された電流が異なる電圧で給電されるような構造になっているのが一般的である。インバータは、今度は、典型的には、LC共振回路を有する自由に振動するシングルエンド発生装置として構成される(先行技術に関する図13において、破線で強調されたブロック114を参照、これは、器具116に電力を給電するために電源装置112によって給電される)。この構造は、証明される(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、より最近では、電気外科手術器具がクロック式に駆動される変調モードの数が増えてきていることが重要である。そのようなモードの例は、図9aから図9eに含まれる。電気外科手術用発生装置は、従って、例えば組織を切断するための切断モードでは、例えば600ボルト(RMS値)の電圧を連続的に出力し(図9a)、凝固モードでは、最大4500Vのピーク電圧を有する変調高電圧を出力するが、小さなデューティサイクルで間隔を置く態様(図9e)であってもよい。ここでは、他のタイプの電圧/時間プロファイルを有する様々な別のモードが設定され得る(図9b~図9d参照)。小さなデューティサイクルと大きく速い電圧ジャンプを有するモードは、特に、電気外科手術用発生装置に高い要求を課す。並列共振回路を持つ電気外科手術器具では、必要な高周波を発生させることは可能であるが、いくつかのデメリットがある。まず、損失が大きいため効率が悪い。また、並列共振回路では大きな無効電流が発生するため、部品が大型化し、さらに低電力時の効率が悪化する。さらに、出力周波数は負荷に依存し、波高率も高く、高変調モードには不適当である。また、出力電圧のレギュレーションが比較的遅いため、負荷インピーダンスの変化に対するマッチングが悪くなるばかりである。
【0006】
その他の分野では、例えばオーディオアンプの場合、電力段として、デジタルアンプ技術に準拠した構造のインバータ、いわゆるD級アンプを提供することが知られている。しかし、このような構造は、出力周波数が低周波領域であるため、電気外科手術用発生装置のような高周波用途には使用されない。これは、電力半導体の切り替え時に発生する電力損失が、周波数に対して線形に、さらには電圧に対して二次関数的に増加するため、例えば6倍の周波数で、さらに6倍の電圧では、電力損失係数が(6=)216と許容できないほど増加することになるからである。これは、電力半導体の損失に関しても、効率面に関しても、正当化することはできない。
【0007】
本発明は、その動作挙動に関して、特に変調モードの場合に、冒頭で述べたタイプの電気外科手術用発生装置を改良するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による解決策は、独立請求項の特徴にある。有利な展開は、従属請求項の主題である。
【0009】
電気外科手術器具に高周波交流電圧を出力するように構成された電気外科手術用発生装置であって、前記電気外科手術用発生装置は、直流電圧源と、直流電圧源から給電されて、電気外科手術器具の接続のための出力に印加される可変電圧及び周波数を有する高周波交流電圧を発生する高電圧インバータとを備え、本発明によれば、インバータがマルチレベルインバータとして構成されて、制御デバイスにより駆動されるカスケード接続の複数のインバータセルを備える。
【0010】
本発明のコアとなる概念は、電気外科手術用発生装置が出力すべき高電圧と高周波を、複数のインバータセルに分割して出力するというものである。これにより、個々のインバータセルの電力半導体で発生するスイッチング損失が低減される。これは、電圧の低下による電力損失と、スイッチング周波数の低下による周波数損失の両方を意味する。特に電力損失は、カスケードのおかげで電圧に対して二次的に増加するので、本発明によるマルチレベルインバータでインバータセルのアンバランスな軽減を達成することが可能である。10個のインバータセルが設けられる場合、例えば、各インバータセルについて、電力損失の100分の1に相当する(1/10)のスイッチング手順のわずか10分の1がこの結果である。しかし、電圧や周波数の強さだけでなく、ダイナミックレンジの点でも利点がある。これは、インバータセルによって、出力交流電圧が変化、特に負荷インピーダンスのジャンプに迅速に適応することができるためである。このとき、波形は実質的に自由に選択することができる。このため、出力交流電圧は、インバータセルとその電力半導体に過負荷をかけることなく、急激で高い電圧ピークを含む大きな範囲で変調することも可能である。このため、特に高パルスモードでは、デューティサイクルが小さくても、無視できるほど小さいクレストファクタで安定した出力電圧を得ることができる。
【0011】
まず、使用されるいくつかの用語について説明する。
【0012】
電気外科手術用発生装置の分野では、「高周波」周波数は、典型的には、200kHz~4000kHzの範囲にあると理解される。任意に、有利な実施形態では、超音波範囲もカバーされ得る。超音波範囲は、20kHzから200kHzの間の周波数範囲を意味すると理解される。
【0013】
「高電圧」とは、典型的には、10kVまでの電圧、好ましくは5000Vまでの電圧を意味すると理解される。
【0014】
電気外科手術用発生装置によって提供される電力は、典型的には、1~500ワットの間の範囲である。負荷インピーダンスが大きく変化し、それに伴い出力電圧や出力電力が大きくかつ急激に変化することがある。
【0015】
マルチレベルインバータは、直流電圧から交流電圧を発生するインバータで、その出力にゼロ以外の2つ以上の電圧レベルを発生することができるものである。
【0016】
複数のインバータセルは、好都合なことに、それぞれ出力時に電位差のデカップリングを有する。本発明は、交流電圧が複数のインバータセルの出力に定義上存在するという事実をここで利用する。つまり、(入力で必要とされるような絶縁された個々の直流電圧源と比較して)少しの支出で、簡単で安価なトランスを使用して、インバータセルが最終的に出力する電圧の信頼できる電位分離を達成することが可能であるということである。デカップリングの観点かインバータセルの出力にトランスを設置することが望ましい。各インバータセルのトランスは、それぞれのインバータセルが最終的に出力する出力電圧が電位フリーであることを保証するものである。有利には、トランスは、それぞれのインバータセルの出力において、それぞれの一次側で接続される。トランスの二次側は、それぞれのトランスの二次電圧を合計するために連結され、合計された電圧は、出力線を介して電気外科手術器具の接続のための出力に流される。
【0017】
このため、全体としてスイッチング動作が改善されるとともに、支出も大幅に削減される。インバータセルの出力における変圧器の配置は、直流電圧を出力することがもはや不可能であることを意味するが、これは電気外科手術用発生装置の分野では、欠点-本発明も特定したように-ではなく、むしろ利点である。
【0018】
なぜなら、インバータ配置全体が直流電流を出力する本質的な能力(これは患者にとって危険である)を失うので、患者の安全性がこのように付加的に向上するからである。この点で、インバータセルの出力にある電位デカップリング、特に変圧器は、患者のための別の保護シールドとして機能する。
【0019】
複数のトランスは、好ましくは、電圧を昇圧するためのプリアンプとしてのトランスユニットをそれぞれ備える。このようにして、複数のインバータセルが出力する電圧を増幅することができ、同時に、出力線に流れる電流を減少させることができる。複数のトランスは、それぞれのトランスユニットと構造的に一体化されるように構成されることが特に好都合である。これにより、一方ではガルバニック絶縁、他方では電圧の増幅という2個の機能を、特に安価かつ省スペースで組み合わせることができる。
【0020】
複数のインバータセルは、好ましくは、それぞれの直流電圧源から給電される。複数の直流電圧源は、この場合、互いに絶縁されていてもよいし、電位の点で互いに分離されていてもよい。しかし、これは必要ではなく、むしろ、基準電位を介して連結されるように任意に設けられてもよい。このように、複数のインバータセルの入力における直流電圧源の複雑な電位差の絶縁は不要である。
【0021】
しかし、複数であって少なくとも2個のインバータセルのグループが設けられることもできる。それぞれのグループのインバータには、1つの直流電圧源が共同で給電される。このようにグループにまとめることで、直流電圧源を効率的に利用することができ、支出を抑えることができる。しかし、以下に説明するように、共通の電源によって他の利点も達成され得る。「グループ」とは、少なくとも1つのインバータセルから構成されることを意味する。
【0022】
複数の直流電圧源は、好都合なことに直流電圧源から共同で給電される。複数の直流電圧源は、特に直流リンク回路で構成され、例えば電源装置又は外部手段から直接直流が給電される。このように、インバータセル用に、分離された可能性のある直流電圧源を別々に設ける複雑な作業は、もはや必要ない。これにより、各インバータセルの動作に必要な直流電圧の給電が簡素化されるだけでなく、構造も大幅に簡素化される。また、構造も大幅に簡素化できる。なぜなら、マルチレベルインバータの動作中には、少なくとも1つのインバータセルで電力の流れ方向が反転する状態、すなわち直流電圧源に電力が逆流する状態が発生する可能性があるからである。このため、通常の直流電圧源よりも複雑な双方向直流電圧源と呼ばれるものが必要となる。直流電圧源が多数、例えばインバータ毎に1つずつ必要な場合、支出がかなりかさむ。しかし、本発明により、直流電圧源を分離する必要がなくなり、むしろそれらを一緒に切り替えることができるようになるので、インバータセルの1つを通して直流電圧源に逆流した電力は、順方向に規則的に電力が流れるインバータセルの別の1つにより補償される。このことは、インバータセルを組み合わせて複数のインバータセルのグループを形成する場合、より顕著になる。このため、最終的には電力の逆流がほとんど発生しないか、あるいは全く発生しないことになる。しかし、電力の逆流が発生する場合でも、従来のように多数の直流電圧源を双方向に構成するのではなく、1つの直流電圧源のみを双方向に構成すればよい。
【0023】
有利には、複数であって少なくとも2個のグループのインバータセルが設けられることである。ここで、これらのグループには、異なる値の直流電圧が給電される。ここで、好ましくは、複数のグループのうちの1つのグループには、複数のグループのうちの別のグループの少なくとも2倍である直流電圧が給電される。ここで、「グループ」とは、少なくとも1つのインバータセルから構成されることを意味すると理解されるべきである。複数のインバータセルのグループに異なる直流電圧を給電することで、同一数のインバータセルに全て同じ電圧を給電した場合と比較して、出力可能な電圧レベルの最大数を増加させることが可能である。これにより、出力される交流電圧の階調をより細かくすることができる。さらに、複数のインバータセルの駆動を工夫することであるイッチング回数をさらに減らし、電力損失を低減することができる。インバータセルのグループは3つ以上であることが好都合である。その場合、それらに給電される直流電圧の値は、それぞれのケースで異なっている。有利には、特に給電される異なる直流電圧が幾何学的な順序に従うように設けることができる。給電される直流電圧の分割は、好ましくは、1:3:9の比率を有し、その結果、3個のグループによる異なるレベルの可能な限り高い数を達成することができるようにする。
【0024】
この場合、有利には、各場合に、グループの少なくとも1つに異なる電圧を給電するための、少なくとも1つの特にレシオメトリックDC-DCコンバータが設けられる。こうして給電される直流電圧の比率は、直流電圧の絶対値が変動した場合にも一定に保たれる。DC-DCコンバータが双方向性であることが特に好都合で、例えば、12ボルトのDCを48ボルトのDCに、又はその逆に変換することが可能である。これにより、特にDC電源のある環境、例えば12ボルトの車載電源を持つ従来の車両や、強力な48ボルトの車載電源を持つ最新の車両で柔軟に使用することができる。双方向DC-DCコンバータは、12ボルトから48ボルトへの昇圧変換、又は48ボルトから12ボルトへの降圧変換を行うことができる。
【0025】
本発明は、このように、一見すると驚くほど単純に見える方策によって、直流電圧源に関してマルチレベルインバータで発生する困難、具体的にはその電位差とその双方向性(つまり消費電力能力を含む)を、簡単かつ好都合に一挙に解決することに成功したのである。
【0026】
複数のインバータセルの直流電圧源は、有利にはガルバニック結合されている。ガルバニック結合により、複数の直流電圧源の、複数のインバータセルへの接続が簡単で、全体として複雑でなくなる。このことは、特に、複数のインバータセルに給電するために単一電源を提供するという概念を実現することも可能である。電気外科手術用発生装置の直流リンク回路は、それぞれのケースで直流電圧源として好都合に動作する。これにより、概念的に単純かつ堅牢な構造を実現することができる。
【0027】
直流電圧源は、固定電圧源として構成されることが特に好都合であり、固定電圧レベルを有する直流リンク回路から構成されることが特に好都合である。特にレシオメトリックDC-DCコンバータは、任意でこれに接続することができる。このような固定電圧源は、電圧が変化する複雑な直流電圧を必要とし、それに応じて電圧が変化する直流リンク回路を必要とするタイプの構造と比較して、大幅な簡略化を可能にする。本発明では、固定値の直流電圧の電源(給電)で十分であり、本発明によるマルチレベルインバータは、数百ないし数千ボルトに及ぶ出力電圧範囲の残りの電圧調整のすべてを引き受ける。
【0028】
直流電圧源は、内部に設けてもよいし、外部に設けてもよい。直流電圧源は、電源グリッド、特に三相又は交流グリッドに接続するための電源装置として構成することもできるし、直流電圧を直接給電するように構成することもできる。最後のケースは、特に自動車(直流24ボルト、最近の自動車では直流48ボルト)又は直流(例えば直流48ボルト)で給電される他の環境でのモバイルアプリケーションに有利である。
【0029】
複数のインバータセルの構成に関して、本発明は1つのタイプの構造に限定されるものではない。従って、複数のインバータセルは、例えば、中性点クランプを有するタイプの構造、又はフローティングキャパシタを有するタイプの構造で構成され得る。中性点クランプを備えたセルは、特にクランプダイオードによる構成が便利であるという点で、比較的簡単な構成になっている。そのため、3レベルインバータでは2個のダイオードしか必要ありません。さらに多段化が可能で、その結果、より細かい階調が実現でき、各ダイオードの電圧負荷が軽減される。しかし、必要なダイオードの数はレベル数に対して二次関数的に増加するため、実用上の理由からレベル数に制限がある。この点では、フローティングキャパシタを用いた構造のタイプのインバータセルがより適している。これは、ダイオードを用いたものと同様の利点を持つが、必要なキャパシタの数はレベル数を増やしてもそれほど増加しない。しかし、インバータセルは直列に接続された構成が好ましい。特に、それぞれをH型ブリッジ構成とする。これにより、インバータセルの数を任意に設定することができ、その結果、各インバータセルにかかる電圧負荷は、インバータセルの数に反比例して減少する。これにより、電力半導体を介した電圧損失だけでなく、スイッチング損失も低減される。また、カスケード接続の場合、インバータセル1個あたりのスイッチング回数が減少し、これもスイッチング損失の低減に寄与する。
【0030】
マルチレベルインバータを複数のインバータセルで駆動するために、マルチレベルインバータを駆動するための基準信号を発生する制御信号発生装置を設けることが好都合である。これにより、出力される交流電圧の種類を正確に制御することが可能となり、特に異なるモードを設定することができる点で大きな利点がある。基準信号は、好都合には、電気外科手術用発生装置によって出力されるべき交流電圧のためのパターンであり、特に、振幅、周波数、波形及び/又はデューティサイクルに関するパターンである。ここで、波形は、好ましくは、所望のように自由に設定することが可能である。これは特に、複数のインバータセルによって発生される交流電圧の周波数、場合によっては波形も印象づけることを可能にする。有利には、制御信号発生装置は、複数のインバータセルを駆動するように構成されたインバータ制御装置を駆動し、複数のインバータセルが基準信号に従った出力電圧を発生するようにする。発生された交流電圧の振幅、波形及び/又はデューティサイクルは、さらに特に基準信号に従っている。
【0031】
さらに、複数のインバータセルが可変周波数で駆動されることが好都合である。これにより、基準信号を変更することによって、異なる要求に対してより速く直接的に反応することが可能になる。従って、複数のインバータセルによって発生される交流電圧の周波数は、電気外科手術器具によって処置される組織の要求に応じて、迅速に調整されることが可能である。また、このようにして、異なるタイプの変調の間で迅速かつ調和的に(高調波で)変更することも可能である。
【0032】
インバータ制御装置は、好ましくは高速制御装置として構成される。少なくとも150MHz、好ましくは200MHzの周波数でインバータセルの駆動信号を発生するように構成される。これにより、出力信号の歪みを最小限に抑えることが可能となる。このような高速で駆動信号を給電できるようにするため、インバータ制御装置は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)として構成されることが望ましい。
【0033】
電気外科手術用発生装置の出力線、特に出力ポートの領域には、都合よく出力変圧器が設けられる。これは、電気外科手術器具の接続のために出力されるAC電圧が、ユーザ及び患者を保護するために電位フリーであることをさらに確実にするために、ガルバニック絶縁デバイスとして機能する。出力変圧器は、特に、出力変圧器ユニットとして構成され、従って、主電圧増幅器として動作することができる。出力トランスの二次側の出力ポートには、直列キャパシタが追加で設けられることが好ましい。これは、直流電流遮断器(ブロッキングキャパシタ)として作用し、従って、有害な直流電流が電気外科手術器具に流れ込み、そこから患者に流れるのを防止する。
【0034】
有利には、出力線の端部に、ローパスフィルタが設けられ、これは、好ましくは、少なくとも二次フィルタ、特に、LCフィルタとして構成される。このローパスフィルタによって、複数のインバータセルの高いスイッチング周波数に起因する高周波干渉を除去することが可能になる。このフィルタは、共振ピークが出力交流電圧の最大周波数と複数のインバータセルの実効スイッチング周波数の間の領域にあるように構成するのが好都合である。この二次フィルタにより、電気外科手術用発生装置の出力における信号の十分な平滑化を達成することが可能となる。ローパスフィルタは、好ましくは、2個の部分(2段)で構成されてもよい。ここで、有利には、1段(1ステージ)が出力トランスの上流に設けられ、別の1段(1ステージ)が下流に設けられる。こうして、電源に近い平滑化の利点と、出力に近い平滑化の利点とが組み合わされ、最終的に実現される。
【0035】
一般にフィルタでは、制御信号の高周波成分やシステムの非線形性、負荷インピーダンスの(急激な)変化により、フィルタの共振周波数が励起される危険性がある。これを避けるために、能動減衰装置として好都合に構成された減衰装置が設けられる。これにより、ローパスフィルタの十分な減衰を実現することができ、具体的には、受動減衰対策に伴う出力信号の望ましくない電力損失が発生しない。通過帯域の上限周波数が高周波干渉を除去するのに十分高いという条件で、バンドパスフィルタもこの意味でローパスフィルタとして機能し得ることが指摘される。
【0036】
独立した保護に値する可能性がある特に有利な一実施形態によれば、能動減衰装置は、好ましくはローパスフィルタ上に少なくとも1つの電流センサを有する帰還システムから構成される。これがLCフィルタである場合、電流センサは、好都合にも、ローパスフィルタの出力ポート上に直列に設けられる。これにより、LCフィルタのキャパシタに実際に流れる電流を測定することで、能動減衰を行うことができる。これにより、従来の受動減衰の場合よりも、より正確にフィルタをチューニング(調整又は同調)することができるため、インパルス動作が大幅に改善される。また、他の変数(状態変数)を追加することで、さらに細かいフィルタのチューニングが可能になることが理解されるであろう。例として、この目的のために、出力における電流を決定するように構成された第2の電流センサを設けてもよい。帰還システムには、フィルタ及び/又は変圧器における(寄生している可能性のある)電流の流れを決定することが可能な横方向電流検出器を設けることが望ましい。特に、変圧器の上流と下流にそれぞれのセンサを設けることが好都合である。これにより、特に出力の変圧器において、寄生的な横方向のキャパシタンスによって引き起こされる電流損失を検出し、場合によっては補償することが可能になる。「横方向」とは、ここでは、出力線又は電気外科手術用発生装置の出力の2個のAC電圧導体間の電流の流れ又は静電容量を意味すると理解される。
【0037】
能動減衰装置は、出力信号でマルチレベルインバータに作用し、特に複数のインバータセルの駆動に結合されるように構成されることが好ましい。この場合、複数のインバータセルの駆動は、適切な補正信号で重ね合わされ、それによって、複数のインバータセルによって出力される電力に影響を与えることができる。このように、減衰装置からの出力信号は、電源に直接作用して、不要な振動や不要なインパルス動作の発生をある程度まで抑制することができる。技術的な観点からは、減衰装置からの出力信号が複数のインバータセルの駆動に印加され、インバータ駆動のための基準信号が修正され、そこから複数のインバータセルの電流弁のための適切に修正された駆動信号が決定されるというように、有利に達成される。このように、能動減衰装置によって、複数のインバータセルの駆動が動的に変更される。これにより、マルチレベルインバータの出力電圧は、減衰装置からの出力信号に依存する方法で制御される。
【0038】
本発明のさらに有利な実施形態では、好ましくは、別出力が設けられ、マルチレベルインバータは、さらに、別出力に印加される別のAC電圧を発生するように構成される。別のAC電圧は、好都合にも、電気外科手術器具の接続のための出力における高周波AC電圧よりも低い周波数を有する。この低い周波数は、好都合には、超音波範囲にある。電気外科手術用発生装置の使用スペクトルは、超音波外科手術器具も接続及び操作され得るので、このようにかなり拡大される。このことは、外科医にとって、この目的のために他の発生装置を設けて使用することなく、必要なときにごくわずかな労力で超音波手術器具に変更する可能性を開くものである。また、超音波と高周波とで同時に操作される器具を使用することも可能である。
【0039】
マルチレベルインバータを出力の1つに選択的に接続するように構成された少なくとも1つの切換装置を設けることが有利に行われる。これにより、外科医は、具体的には術中も含めて、出力を迅速かつ速やかに変更することができる。従って、その場で発見された条件に応じて、患者固有の要件に迅速かつ容易に手術器具を最適に適合させることが可能である。
【0040】
簡便には、複数のインバータセルは、マルチレベルインバータ上の回路の観点から分割される。ここで、複数のインバータセルの少なくとも一部分は、少なくとも一つの別出力に接続するために提供され、複数のインバータセルの別の部分は、さらに(第1の)出力に給電する。これにより、別出力を同時に操作することが可能となり、その結果、(第1の)出力で電気外科手術器具を、別出力で超音波外科器具を、ともに操作することが可能となるようにする。さらに、別出力のための独立した複数のインバータセルには、出力交流電圧の異なる周波数とは別に、別出力で出力される交流電圧を超音波外科手術器具の他の電圧又は電流要件に適合させることが可能になるという利点がある。従って、例えば大きく異なる内部抵抗を有するような異なる特性を有する超音波外手術科器具を安全かつ確実に駆動することも可能である。
【0041】
本発明は、有利な実施形態を参照して、例として以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】接続された電気外科手術器具を有する一例示的な実施形態による電気外科手術用発生装置の概略図である。
図2a】カスケード接続された複数のインバータセルを有する図1による電気外科手術用発生装置のマルチレベルインバータのための例示的実施形態のブロック図である。
図2b】カスケード接続された複数のインバータセルを有する図1による電気外科手術用発生装置のマルチレベルインバータのための例示的実施形態のブロック図である。
図3】複数のインバータセルのうちの2個の模式的な回路図である。
図4図3による2個のインバータセルのスイッチング素子の電圧及び信号プロファイルの図である。
図5】複数のカスケード接続されたインバータセルを有するマルチレベルインバータの例示的な回路図である。
図6a】インバータセルの代替実施形態の概略回路図である。
図6b】インバータセルの代替実施形態の概略回路図である。
図7】高抵抗負荷又は短絡の場合における帰還なしの出力における電圧プロファイルを示す図である。
図8】高抵抗負荷又は短絡の場合の帰還ありの出力における電圧プロファイルを示す。
図9】高周波手術における様々な電圧/時間プロファイルを示す説明図である。
図10】別の例示的な実施形態による電気外科手術用発生装置を示す概略図である。
図11】別の例示的な実施形態による電気外科手術用発生装置を示す概略図である。
図12図11による別の例示的な実施形態の変形例を示す概略図である。
図13】先行技術によるインバータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の1つの例示的な実施形態による電気外科手術用発生装置が、図1に示される。参照数字1によって全体が参照される電気外科手術用発生装置は、電気外科手術器具16のためのポート14を備えるハウジング11を備え;図示された例示的な実施形態において、これは電気メスである。これは、高電圧接続ケーブルの接続プラグ15を介して電気外科手術用発生装置1のポート14に接続される。電気外科手術器16に出力される電力は、電力制御装置12を介して変更することができる。
【0044】
電気外科手術用発生装置1に電力を給電するために、主電源接続ケーブル(図示せず)を介して、公共グリッドに接続することができ、そこから給電される直流電圧源2が設けられる。図示された例示的な実施形態における直流電圧源2は、高電圧源装置(High Voltage Power Supply-HVPS)である。それは整流器を備え、直流リンク回路20に直流電圧を給電し、その値は好ましくは固定であり、例えば48ボルトである。しかし、直流電圧の値が0~約400ボルトの間で可変であることは否定されるべきではない。ここで、直流電圧の絶対値は、特に、設定電力、電気外科手術器具16の種類及び/又はその負荷インピーダンスに依存し、これは、ひいては、処置される組織の種類に依存することがある。しかしながら、内部電源装置は必要ではなく、つまり、直流電圧源はまた、外部電源装置によって実施されてもよく、又は、例えば車両における24ボルト又は静止用途における48ボルトのような直接直流給電のために設けられる。
【0045】
インバータは、直流リンク回路20から給電され、給電された直流電圧から、数キロボルトの高電圧範囲の高周波交流電圧を、200kHz~4MHzの範囲の所定の周波数で発生させるものである。このインバータは、以下にさらに詳しく説明するように、マルチレベルインバータ4の構造形態で構成される。マルチレベルインバータ4によって発生されるべき高周波交流電圧の周波数及び波形は、この場合、制御信号発生装置40によって発生された基準信号に基づいてインバータ制御装置41によって予め定義される。マルチレベルインバータ4によって発生された高周波高電圧は、電圧を昇圧するための出力トランスユニットとして動作するローパスフィルタ8及び出力トランス7を経由し、直列に設けられたブロッキングキャパシタ17によって望ましくない直流電流成分に対して確保され、電気外科手術器具16に接続するためにUoutの形態でポート14において出力される。マルチレベルインバータ4によって発生され出力される高電圧の電圧及び電流は、さらに、複合電圧及び電流センサ18によって測定され、測定信号は処理ユニット19に伝送され、処理ユニットは出力電圧、電流及び電力に関する対応データを制御信号発生装置40への帰還として印加し、電気外科手術用発生装置1の動作制御装置10へ給電する。電力制御装置12はまた、動作制御装置10に接続される。動作制御装置10は、さらに、典型的には記憶された電圧/時間プロファイルであるモードとして知られる様々なものを設定するように構成される。ユーザがモードを選択するための選択スイッチ12’が設けられる。動作制御装置10はさらに、制御信号発生装置40と相互作用し、特に振幅、周波数、波形及びデューティサイクルに関して、出力すべき交流電圧のための基準信号を発生するように構成される。
【0046】
マルチレベルインバータ4は、インバータ制御装置41によって駆動される複数の直列接続されたインバータセル5から構成される。ここで、図2aを参照する。そこに図示される例示的な実施形態では、定義された直流電圧を有する直流電圧源が、インバータセル5の各々の入力(図面では左側に図示される)に接続される。それぞれのインバータセル5は、そこから交流電圧を発生し、それが交流電圧の形態でそれぞれのインバータセル5の出力(図面では右側に図示)に出力される。インバータセルの数は、特に限定されず、それ自体所望のものである。インバータセル5は、図2aにおいて、「5-1」、「5-2」~「5-5」の呼称で連続的に番号付けされる。ここで、番号5は一例であり、少なくとも2個のインバータセルを任意の数だけ設けてもよい。それぞれのインバータセル5の入力で印加される直流電圧は、任意に、バスバー50を介して電位的に結合される。それぞれのインバータセル5の出力で出力される交流電圧は、それに応じて「V_1」、「V_2」から「V_5」までと表記される。複数のインバータセル5の直列接続(チェーン形式の相互接続)により、それらの出力電圧は加算され、最終的に、全体の出力電圧として次式で表される。
【0047】
【数1】
【0048】
「N」個のバータセル5で達成できる電圧レベルの数は、この場合、少なくとも
2N+1
になる。インバータセル5の入力に印加される直流電圧「Vin_1」、「Vin_2」~「Vin_N」がすべて同じ値であると仮定した場合。このため、例えばインバータセル5の数が5個の場合、全体の出力電圧Voutに対して合計11個の電圧レベルが考えられることになる。
【0049】
同じ数のインバータセル5に少なくともグループ単位で異なる値の直流電圧を給電する場合、電圧レベルの数はかなり増加する可能性がある。そのような構成を図2a及び図2bに示す。そこでは、2個のインバータセルのグループが形成される。3個のインバータセル5-1、5-2~5-3を含む第1のグループIは、低い直流電圧、例では12Vの直流電圧源から給電される。そして、2個のインバータセル5-4、5-5を含む第2のグループIIは、より高い直流電圧、例えば48Vの別の直流電圧源から給電される。第1のグループIは低電圧インバータセルを含み、第2のグループIIは高電圧インバータセルを含む。直流電圧源が1つから2つになり、直流電圧源の出費が増える。しかし、その分、電圧段数が11段から23段と2倍以上と大幅に増える。このように実現できる電圧レベルの数は、次式で表される。
【0050】
2*(mHVc*r+nLVc)+1
【0051】
ここで、mHVcは、高直流電圧インバータセルの数(上記の例ではm=2)を表し、nLVcは、低直流電圧インバータセルの数(上記の例ではn=3)を表し、rは直流電圧の高い方と低い方の比率(上記の例ではr=4)を表する。
【0052】
ここで2個の電圧源は、電位的に互いに絶縁される必要はなく、図2aにバスバー50によって実装されるように、共通の基準電位を共有してもよい。これはまた、DC-DCコンバータ42、特にDC-DC降圧コンバータによって、例えばリンク回路20の直流電圧であってよい、より高い直流電圧からより低い直流電圧を発生することを可能にしている。本実施形態では、図2bに示されるように、4:1の伝送比を有するレシオメトリック電源用に構成されることになる。レシオメトリック電源によるこの構成の利点の1つは、高い方の直流電圧の変化又は変動が、次に低い方の直流電圧に比例して反映されること、すなわち相対的な階調が維持されることである。これにより、例えば従来は12Vのインバータセルをさらに起動することで出力電圧を12V上昇させていたが、48Vのインバータセルを起動し、3個の12Vインバータセルを休止させるという2通りの方法で、出力電圧を上昇させることができるようになった。
【0053】
個々のインバータセル5の構造とそれらの相互作用は、例として図3による概略回路図に示される。合計2個のインバータセル5-1及び5-2が、カスケード配置でそこに示されるが、これは、従ってまた、それらの相互接続を説明するためである。12ボルトの電源電圧Vinを有する共通の直流電圧源31は、画像の左側の端部に図示される。これには安定化キャパシタ33が割り当てられている。これらは、2個のインバータセル5-1、5-2に給電する。以下、まず、インバータセル5-1のスイッチングについて言及する。電流弁として動作する4つの電力スイッチを設け、H型ブリッジ構成で配置する。電力スイッチは、例えばIGBT、MOSFET、又はGaNFETとして構成された電力半導体スイッチである。電力スイッチ51,53は直列に接続されて第1のブランチを形成し、電力半導体52,54は同様に直列に接続されて第2のブランチを形成している。2個のブランチのセンタータップは、第1のトランス6-1の一次巻線61の両端に導出されて接続される。トランス6-1は、さらに二次巻線62を有し、電位差の絶縁に使用される。ここで、任意にさらに、電圧を前置増幅するための伝送比を有していてもよく;これは、図示された例では、1:1である。特に、前置増幅が意図されない場合、異なる伝送比、例えば1:1の伝送比が提供されてもよいことが指摘される。出力線13が二次巻線62に接続され、電気外科手術用発生装置1の出力14に接続される(場合によっては、図3には図示されていないローパスフィルタを経由する)。
【0054】
第1のブランチの2個の電力スイッチ51、53は、共通の信号C1.aによって駆動され、ここでこの信号は、反転された形で電力スイッチ53に伝送される。第2のブランチの2個の電力スイッチ52、54は、それに応じて同様に、共通の信号C1.bによって駆動される。ここで、この信号は反転して電源スイッチ52に伝送される。これは、C1.aのハイ信号の場合、電源スイッチ51をオン状態にし、電源スイッチ53をオフ状態にすること、すなわち第1の電源ブランチはトランス6-1の一次巻線61の上部接続に正電位を印加することを意味する。従って、C2.bのハイ信号の場合、第2の電源ブランチでは、電源スイッチ54がオン状態とされ、電源スイッチ52がオフ状態とされる。このようにして、第2の電源ブランチは、一次巻線61の下側接続部に負電位を印加する。C1.a又はC1.bのロー信号の場合、これはそれに応じて逆に印加され、すなわち一次巻線61における極性が逆転する。このようにして、インバータセル5-1によって交流電圧が発生され、トランス6-1の一次巻線61に印加される。
【0055】
第2のインバータセル5-2は、同一の構造を有し、第1のインバータセル5-1と同様にして直流電圧源31から給電される。従って、図中、同一の要素には同一の参照数字を用いている。これは、制御信号C2.a及びC2.bによって、上述した方法に対応するように駆動される。従って、それは同様に、その出力において、第2のトランス6-2の一次巻線61に印加される交流電圧を出力する。2個のインバータセル5-1,5-2は、同一の直流電圧源31から給電されるので、両者は電位的に接続される。つまり、インバータセル5-1、5-2が直接出力する交流電圧は、互いに電位的につながっているため、容易に加算することはできない。しかし、この出力交流電圧は、トランス6-1、6-2のそれぞれに給電されるため、トランス6-1、6-2が出力する交流電圧は、それぞれ無電位となり、容易に互いに加算して共通の出力電圧を与え、出力線13に印加することができる。
【0056】
それ自体既知のPWM制御によって例えばインバータ制御装置41によって発生されるような制御信号C1.a、C1.b、C2.a、C2.bの影響下での電力スイッチ51~54のスイッチング挙動は、図4に示される。図4aは、制御信号C1.a、C1.b、C2.a、C2.bの取得を示す。インバータ制御装置41は、制御信号の各々に対して1MHzの周波数を有する鋸歯状の搬送波信号を伝送し、これらは互いに90度ずつ等しく位相オフセットされる。これらの4つの搬送波信号は、図4aにおいて4つのオフセットされた鋸歯状プロファイルによって図解される。また、PWM変調に必要な変調信号も図示されており、この場合、200kHzの周波数を有する正弦波発振波形の基準信号によって形成される。インバータセル5-1、5-2のためのインバータ制御装置41によって出力されるような4つの制御信号C1.a、C1.b、C2.a、C2.bに対する変調から生じる信号シーケンスは、図4bに図示される。これらは、それぞれが1ビットのスイッチング状態しか知らない純粋な矩形波信号列である。これらの制御信号用信号列を用いて2個のインバータセル5-1、5-2の電力スイッチ51~54を上述の方法で駆動し、2個のインバータセル5-1、5-2がそれぞれ出力する電圧をトランス6-1、6-2で加算すると、出力14において最終的に図4cに示す電圧プロファイルとなる。このようにして、5つの電圧レベルを有するほぼ正弦波状の出力電圧が、4つの1ビット制御信号から発生される。
【0057】
マルチレベルインバータ4の例示的な回路図と、隣接する構成要素への接続が図5に示される。インバータセル5-1からインバータセル5-nまでによって例示される、その多重化されたインバータセルを有するマルチレベルインバータ4を見ることが可能である。それらは、それぞれの場合に発生する交流電圧を、それに割り当てられたトランス6-1~6-nの一次巻線61に印加する。この例示的な実施形態では、トランスは、その二次巻線62’が一次巻線61よりも高い巻数を有するように構成される。従って、それらは、複合トランス及びトランスユニットとして構成され、従って、電位デカップリングだけでなく、追加の電圧増幅も保証される。二次巻線62’は直列に接続され、それらの増幅された電圧が合計されて増加した全体電圧を与えるようになっている。全体の電圧は出力線13に出力され、その端部にローパスフィルタ8が設けられる。これは、二次フィルタとして構成され、インダクタ81とこれに直列に接続されたキャパシタ82とから構成される。トランス6-1~6-nの浮遊インダクタンスは、ローパスフィルタのインダクタ81のインダクタンスにも寄与し、おそらく少なくとも部分的に置き換わる可能性が指摘される。ローパスフィルタ8は、マルチレベルインバータ4のインバータセルの電力スイッチのスイッチング周波数に起因する発生交流電圧の干渉がフィルタリングされるように調整される。ローパスフィルタ8の出力は、出力トランス7の一次巻線71に印加され、二次巻線72に接続されたポート14のガルバニック絶縁をもたらす。さらに、ブロッキングキャパシタ17が設けられる。これは、外科手術器具16への直流電流成分の出力を防止するためのものである。
【0058】
ローパスフィルタ8は、能動減衰を備えて設けられる。これは、電流センサ83が入力で接続される帰還システム9を構成する。電流センサ83は、ローパスフィルタ8のキャパシタ82と同じ分岐に配置されており、従って、キャパシタ82を流れる電流を定義して検出する。電流を定義することにより、測定された電流に比例する適切な信号を、帰還システム9を介して帰還することができる。これにより、ローパスフィルタ8の所望の挙動に応じて選択される伝達関数が実装され、この伝達関数は現在アクティブに減衰される。最も単純なケースでは、伝達関数は、比例部材として構成されてもよい。帰還システム9からの出力信号は、制御信号発生装置40によって発生され、差動部材91の正入力に接続される基準信号を修正するために、差動部材91の負入力に切り替えられる。このように修正された基準信号は、差動部材91の出力で出力され、マルチレベルインバータ4の駆動信号としてインバータ制御装置41の入力に印加される。これにより、マルチレベルインバータ4の出力電圧は、帰還システム9に依存する形で制御されることが可能となる。望ましくない共振は、このように、すでにある程度防止することができる。出力変圧器7の一次側ポートに、又はブロッキングキャパシタ17と直列に配置され、従って、出力変圧器7を通る電流の流れを検出する電流センサ84をさらに代替的又は追加的に設けることができる。電流を定義することによって、測定された電流に比例する適切な信号が、同様に、帰還システム9を介して帰還されることが可能となる。帰還システムは、インダクタ81とブロッキングキャパシタ17によって形成されるLCフィルタの所望の挙動(現在では積極的に減衰される)に従って選択される(適切に拡張された)伝達関数を実行する。
【0059】
出力14における電圧及び電流プロファイルに対する帰還システム9の効果は、図7a、図7b及び図8a、図8bに示されており、いずれの場合も、マルチレベルインバータ4は、(図9eに示されるように)個々の正弦波振動からなるパルス状のAC電圧信号を発生する。図7aに図示した場合、出力の負荷は高抵抗(100kΩの領域)であると仮定している。これにより、マルチレベルインバータ4のインバータセル5によって発生される正弦波発振の出力電圧(破線)には、さらに共振発振が重畳される。これは、インダクタ81とキャパシタ82とで形成されるLCフィルタの共振周波数が、公知の次式に従って得られる。
【数2】
その結果、重ね合わされた出力信号が実線で示されている。曲線がかなり変形し、残響が顕著になっているのがわかる。図7bは、短絡の場合の補足図である。マルチレベルインバータ4のインバータセル5によって発生する(同一の)正弦波発振を再び見ることができる(破線)。これに加えて、出力14でブロッキングキャパシタ17と共振するフィルタインダクタ81から生じる共振発振が重なっている。この場合に生じる電流プロファイルは、出力14において実線で図示される。かなりの干渉発振が蓄積されることがわかる。
【0060】
同じケースが図8a及び図8bに示される。ここで、フィルタ8は帰還システム9によって減衰される。図8aは、再び高抵抗負荷の場合を示している。また、マルチレベルインバータ4のインバータセル5からの元の出力信号が、参照として破線で図示される。干渉を重ねた実際の出力信号は、電流センサ83からの測定信号を用いて帰還システム9を介して帰還され、差動部材91に作用してマルチレベルインバータ4へ伝送する信号を変化させる。この基準信号は、いわば狙ったように曲げられ、変更された基準信号が生じ、実際にインバータセル5を駆動するために、制御信号としてインバータ制御装置41に印加される。その結果、出力信号(平滑化されたプロファイルを示す破線参照)は、出力において重ね合わせられた振動が目標とする方法で打ち消されるように、目標とする方法で「曲げ」られる。マルチレベルインバータ4の、目標とする方法で「曲げられる」発生電圧と、フィルタ8の共振発振とから最終的に得られる実際の出力信号は、実線で図示される。図7aとの比較を通じて、実際の出力信号が実質的により調和的な正弦波発振であることが容易に理解される。
【0061】
帰還システム9を使用した短絡の場合も同様である。この場合を図8bに示す。制御信号発生装置40によって基準信号として発生された元の駆動信号が、再び破線で図示される。電流センサ84からの測定信号を用いて帰還システム9の効果の下で最終的に発生された修正された基準信号は、インバータセル5を駆動するために使用される。その結果得られる出力信号は、(平滑化後に)破線で図示される。電圧振幅に対して驚くほど小さいが、その理由は、望ましくない共振周波数がマルチレベルインバータ4によって発生される交流電圧の周波数に非常に近いところにあるためである。従って、インバータ制御装置41のための非常に小さな実際の駆動信号のみが必要とされる。出力14で生じる実際の電流プロファイルは、再び実線で図示される。図7aとの比較を通じて、実際の出力信号が実質的により調和的な正弦波振動であることが容易に見て取れる。図7bと比較すると、実際の正弦波発振がより正確に再現され(間隔は最大2μs)、寄生残響が効果的に抑制される(「リンギング」効果がない)ことが明確に分かるであろう。電流センサ84からの測定信号を用いた帰還により、出力14のブロッキングキャパシタ17を有する重要なLCフィルタ8にもかかわらず、かなり良好で低調波の正弦波出力信号が確保される。
【0062】
その結果、本発明によるマルチレベルインバータ4は、出力されるべきAC電圧プロファイルを細かく正確に事前定義するために使用することができる。特に基準信号によって駆動されるマルチレベルインバータ4は、特に変調された出力信号の場合を含む波形の完全な制御を与える。従って、図9aから図9eに示されるように、変調された出力信号を正確かつ再現可能な方法で発生することができる。一定のエネルギー出力を保証するために、本発明によるマルチレベルインバータ4は、さらに、短いスイッチオン時間にもかかわらず、より長いスイッチオン時間を有するモード又は連続モードと同じエネルギーが電気外科手術器具16に出力される程度に、より短いデューティサイクルで高変調モードにおいて出力電圧の値を増加させることが可能である。
【0063】
従って、本発明は、出力される高周波交流電圧をよりダイナミックに、より正確に制御することができ、具体的には、パルスモードにおいて、具体的には、パルスモードを含む。オプションの帰還のおかげで、モードは再びかなりより正確に保たれることが可能である。
【0064】
さらに、本発明は、H型ブリッジ構成を有するインバータセル5に限定されないことが指摘される。インバータセル5には、他のトポロジーを採用することも可能である。図6a及び図6bは、これらの例を示し、代替トポロジー、具体的には同様にそれぞれが4つのスイッチング素子51’~54’及び51”~54”を有することを説明するものである。従って、図6aは、ダイオード55、56を介した中性点クランプを有するタイプの構造を有するインバータセルの構成を示し、図6bは、フローティングキャパシタ57を有するタイプの構造を有するインバータセルの構成を示す。H型ブリッジ構成のインバータセルと同様に、これらは同様に、より高い数の電圧レベルを達成するためにカスケード接続されてもよい。
【0065】
図10は、図1による例示的な実施形態に対する代替的な例示的な実施形態を示す図である。同一又は同じタイプの要素は、同じ参照数字を使用して示される。代替の例示的な実施形態では、ローパスフィルタ8が2段構成を有するという点で本質的に異なっている。ローパスフィルタの第1段8’は、さらに、発生されたAC電圧を平滑化するために、マルチレベルインバータ4の出力に直接に設けられる。ローパスフィルタの第2段8”は、出力変圧器7の出力側に設けられる。このようにして、特に出力トランス7によって引き起こされる干渉を検出するためにも、出力の直前で別の平滑化が行われる。出力変圧器7の浮遊インダクタンスは、ローパスフィルタの第2段8”のインダクタ81のインダクタンスにも寄与し、場合によっては少なくとも部分的に置換する可能性があることが指摘される。
【0066】
図10による実施形態では、安全性を高めるために、二重ブロッキングキャパシタ17、17’が設けられる。このような二重の配置は、他の例示的な実施形態においても提供され得ることが理解される。
【0067】
帰還システムのための電流センサの好都合な代替配置も、図10によるこの例示的な実施形態の例を用いて説明される。これはまた、他の例示的な実施形態においても提供され得る。この場合、ローパスフィルタ8に対して、より正確には第1段8’の出力に直列に電流センサ18’が設けられる。組み合わされた電流及び電圧センサ18は、第2の電流センサとして機能する。これらの信号に基づいて、出力トランス7の入力側の電流の流れとともに、実際の出力電流(これは処理ユニット19を介して動作制御装置10に送信される)を測定することが可能である。また、横電流検出器も形成される。これは、ここで生じる電流差から、ローパスフィルタ(ここではローパスフィルタの第2段8”)のキャパシタ82を流れる電流の大きさを決定するためのものである。これを帰還システム9で取得し、マルチレベルインバータ4の駆動を変更することにより補償することができる。これにより、特に出力トランス7又はその段8’、8”を有するローパスフィルタ8の、他の方法では直接測定することができない寄生横容量によって生じる電流損失を検出し補償することも可能である。本発明による電気外科手術用発生装置の別の例示的な実施形態が図11に示される。これは、図1に示された例示的な実施形態に基づいているが、第2の出力14及び切換装置3を設ける点でこれと異なっている。マルチレベルインバータ4は前記切換装置の入力に接続され、出力線13はその出力の1つに接続され、ローパスフィルタ8及び出力トランス7を介して、電気外科手術器具16のための(第1の)出力14に接続される。第2の出力14は、第2の出力線13、第2のローパスフィルタ8及び第2の出力トランス7’を介して切換装置3の他方の出力に接続される。前記第2の出力には、第2の計器(図示せず)用の接続プラグ15が接続されてもよい。ここで、第2の器具は、特に、例えば超音波メスのような超音波外科器具であってもよい。図1に示す例示的な実施形態と同様に、出力14,14の各々に別の少なくとも1つのブロッキングキャパシタ17(図示せず)を設けられる。
【0068】
切換装置3は、マルチレベルインバータ4によって発生された交流電圧を、出力14において、そこに接続された器具、特に電気外科手術器具16に選択的に出力するか、又は出力14において、そこに接続された器具、特に超音波外科手術器具に選択的に出力するように構成される。同じ電気外科手術用発生装置1を使用して、外科医が望むように、例えば電気メスのような電気外科手術器具、又は例えば超音波解剖鋏のような超音波外科器具を使用することが、このように可能である。器具間の交換はかなり容易になり、術中に行われることさえある。このようにして、電気外科手術用発生装置の適用(アプリケーション)分野は、かなり拡大される。代替又は追加として、図12に示されるような1つの変形例では、複数のインバータセル5が回路的に分割されるように設けられることも可能である。この場合、複数のインバータセル5の少なくとも1つ(全てではない)は第2の出力14に接続され、例えば超音波周波数領域の交流電圧をこれに給電することができ、残りのインバータセル5-1~5-4は出力14に高周波の交流電圧を給電し続けることができる。それによって、2個の電気外科手術器具を並行して(異なるモードで含む)操作することも可能であり、あるいは、超音波と高周波の両方のエネルギーを使用する器具を操作することも容易に可能である。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13