(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】取得装置、取得方法および光学系の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01B 9/02015 20220101AFI20241209BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G01B9/02015
G01B11/02 G
(21)【出願番号】P 2022145622
(22)【出願日】2022-09-13
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】杉本 智洋
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-118066(JP,A)
【文献】特開2005-147703(JP,A)
【文献】特開2005-164267(JP,A)
【文献】特開2005-009977(JP,A)
【文献】特開2013-253915(JP,A)
【文献】特開2017-044565(JP,A)
【文献】特開2002-213926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/02- 9/02098
G01B 11/00-11/30
G01M 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指標が設けられた指標面を含むチャートを照明する第1光源と、
前記チャートから出射した指標光を被検光学系に入射させる測定光学系と、
前記被検光学系の複数の被検面で反射した前記指標光を、前記測定光学系を介して受光する撮像素子と、
前記撮像素子の受光面において前記指標光による前記チャートの像が基準位置に形成されるように、前記測定光学系と前記被検光学系との相対位置を調整する調整手段と、
第2光源を含み、該第2光源からの光を被検光と参照光に分割し、前記参照光と、第1の点から出射して前記複数の被検面で反射した後に前記測定光学系を介して第2の点に入射した前記被検光とを干渉させることで干渉信号を取得する干渉計と、
前記干渉信号に基づいて前記複数の被検面のうち隣り合う被検面の間隔を算出する演算手段と、を有し、
前記指標面、前記第1の点を含む面、前記第2の点を含む面のそれぞれと、前記受光面とは、前記測定光学系に対して互いに共役関係であることを特徴とする取得装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記干渉信号に基づいて前記複数の被検面までの各光路長を算出し、該光路長に基づいて前記複数の被検面のうち隣り合う被検面の間隔を算出することを特徴とする請求項1に記載の取得装置。
【請求項3】
前記測定光学系の光軸を測定軸とするとき、
前記調整手段は、前記測定軸に対して平行方向および垂直方向に、前記測定光学系と前記被検光学系との前記相対位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の取得装置。
【請求項4】
前記測定光学系の光軸を測定軸とし、前記指標光のうち前記測定軸上を伝搬する光線を射出する点を前記チャートの原点とするとき、
前記チャートに形成されたパターンは、前記原点に関して非対称であることを特徴とする請求項1に記載の取得装置。
【請求項5】
前記干渉計は、
前記参照光の光路長である参照光路長を変更する光路長変更手段を含み、
前記調整手段によって前記チャートの像が前記基準位置に形成されたのちに、前記光路長変更手段によって前記参照光路長を走査して得られる前記干渉信号を取得することを特徴とする請求項1に記載の取得装置。
【請求項6】
光路長基準面を備える基準板を前記測定光学系と前記被検光学系との間に更に有し、
前記干渉計は、前記参照光と前記光路長基準面で反射した前記被検光とを干渉させることで基準干渉信号を取得し、
前記演算手段は、前記基準干渉信号に基づいて前記光路長基準面の基準光路長を算出し、前記基準光路長を用いて前記複数の被検面までの前記各光路長を補正することを特徴とする請求項
2に記載の取得装置。
【請求項7】
前記第1光源は、前記第2光源の光の一部をファイバで導光することで得られる光源であることを特徴とする請求項1に記載の取得装置。
【請求項8】
前記基準位置において、前記チャートの原点の像の位置は、前記複数の被検面それぞれの曲率中心の位置と一致していることを特徴とする請求項1に記載の取得装置。
【請求項9】
指標が設けられた指標面を含むチャートを照明する照明ステップと、
前記チャートから射出した指標光を測定光学系を介して被検光学系に入射させ、前記被検光学系の複数の被検面で反射した前記指標光を、前記測定光学系を介して撮像素子で受光する撮像ステップと、
前記撮像素子の受光面において前記指標光による前記チャートの像が基準位置に形成されるように、前記測定光学系と前記被検光学系との相対位置を調整する調整ステップと、
第2光源からの光を被検光と参照光に分割し、前記参照光と、第1の点から出射して前記複数の被検面で反射した後に前記測定光学系を介して第2の点に入射した前記被検光とを干渉させることで干渉信号を取得する取得ステップと、
前記干渉信号に基づいて前記複数の被検面のうち隣り合う被検面の間隔を算出する演算ステップと、を有し、
前記調整ステップにおける調整は、
前記指標面、前記第1の点を含む面、前記第2の点を含む面のそれぞれと、前記撮像素子の前記受光面とが、前記測定光学系に対して互いに共役であるという関係のもとで行われることを特徴とする取得方法。
【請求項10】
請求項9に記載の取得方法を用いて前記被検光学系としての光学系の面間隔を取得するステップと、
前記面間隔の取得結果を用いて前記光学系を調整するステップと、を有することを特徴とする光学系の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系の被検面の間隔を取得する取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光学素子によって構成された光学系は、各光学素子の配置精度が光学性能に影響する。各光学素子が所望の位置に配置されているか調べるために、光学素子の面間隔を計測する技術が開発されている。
【0003】
特許文献1には、各被検面の反射スポットの位置ズレから算出した被検光学系の最適基準軸と所定の測定基準軸とが一致するように調整手段で調整し、面間隔を計測する装置が開示されている。特許文献2には、光角測定デバイスで測定された各被検面の曲率中心の位置または被検光学系を透過した光の位置から、被検光学系の光軸を一時的に決定し、その光軸と参照軸とが揃うように被検光学系を配置し、各被検面の位置を測定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-147703号公報
【文献】特開2012-118066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示された計測装置では、大きい偏心量の被検面が存在すると、面間隔測定および曲率中心位置測定において、その被検面から信号が得られない。
【0006】
本発明は、大きい偏心量の被検面が存在しても、被検面の間隔を高精度に取得することができる取得装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての取得装置は、指標が設けられた指標面を含むチャートを照明する第1光源と、前記チャートから出射した指標光を被検光学系に入射させる測定光学系と、前記被検光学系の複数の被検面で反射した前記指標光を、前記測定光学系を介して受光する撮像素子と、前記撮像素子の受光面において前記指標光による前記チャートの像が基準位置に形成されるように、前記測定光学系と前記被検光学系との相対位置を調整する調整手段と、第2光源を含み、該第2光源からの光を被検光と参照光に分割し、前記参照光と、第1の点から出射して前記複数の被検面で反射した後に前記測定光学系を介して第2の点に入射した前記被検光とを干渉させることで干渉信号を取得する干渉計と、前記干渉信号に基づいて前記複数の被検面のうち隣り合う被検面の間隔を算出する演算手段と、を有し、前記指標面、前記第1の点を含む面、前記第2の点を含む面のそれぞれと、前記受光面とは、前記測定光学系に対して互いに共役関係であることを特徴とする。
【0008】
本発明の他の側面としての取得方法は、指標が設けられた指標面を含むチャートを照明する照明ステップと、前記チャートから射出した指標光を測定光学系を介して被検光学系に入射させ、前記被検光学系の複数の被検面で反射した前記指標光を、前記測定光学系を介して撮像素子で受光する撮像ステップと、前記撮像素子の受光面において前記指標光による前記チャートの像が基準位置に形成されるように、前記測定光学系と前記被検光学系との相対位置を調整する調整ステップと、第2光源からの光を被検光と参照光に分割し、前記参照光と、第1の点から出射して前記複数の被検面で反射した後に前記測定光学系を介して第2の点に入射した前記被検光とを干渉させることで干渉信号を取得する取得ステップと、前記干渉信号に基づいて前記複数の被検面のうち隣り合う被検面の間隔を算出する演算ステップと、を有し、前記調整ステップにおける調整は、前記指標面、前記第1の点を含む面、前記第2の点を含む面のそれぞれと、前記撮像素子の前記受光面とが、前記測定光学系に対して互いに共役であるという関係のもとで行われることを特徴とする。
【0009】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大きい偏心量の被検面が存在しても、被検面の間隔を高精度に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の面間隔計測装置の構成を示す図である。
【
図2】実施例1における指標チャート、結像面チャートおよび撮像素子で撮像される像を示す図である。
【
図3】実施例1における被検光学系の面間隔の計測手順を示すフローチャートである。
【
図4】実施例2の面間隔計測装置の構成を示す図である。
【
図5】実施例2における指標チャート、射出点・入射点・測定軸の位置関係および撮像素子で撮像される像を示す図である。
【
図6】実施例3の面間隔計測装置の構成を示す図である。
【
図7】実施例4の面間隔計測装置の構成を示す図である。
【
図8】実施例5の面間隔計測装置の構成を示す図である。
【
図9】各実施例の面間隔計測装置を用いた光学系の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1に係る面間隔計測装置(取得装置)1の構成を示している。面間隔計測装置1は、照明光源(第1光源)11、指標チャート(チャート)40、測定光学系300、撮像素子90、ステージ(調整手段)150、干渉計400、コンピュータ(演算手段)100を有する。被検光学系60は、複数のレンズを組み合わせて構成された光学系である。面間隔計測装置1は、被検光学系60の複数の被検面(面数:N)の間隔を計測(取得)する。測定光学系300と被検光学系60の間には基準板120が配置されている。
【0014】
測定光学系300は、ビームスプリッタ35、コリメータレンズ50、対物レンズ55、結像面チャート80、結像レンズ52で構成されている。ビームスプリッタ35は、例えばペリクルビームスプリッタである。測定光学系300の光軸である測定軸1000は、
図1のZ軸と平行であり、コリメータレンズ50の光軸とほぼ一致している。対物レンズ55は、最も被検光学系60に近いレンズである。
【0015】
照明光源11(例えば、ハロゲンランプやLED)から射出された照明光290は、拡散板41で拡散して透過型の指標チャート40を照明する。
図2(A)は、本実施例における指標チャート40の模式図である。指標チャート40は、指標が設けられた指標面を含む。
図2(A)の白色部は、光が透過する領域を示している。指標チャート40は、
図1の指標チャート40の面40sが測定軸1000に垂直(つまり
図1のXY面に平行)で、かつ、
図2(A)の中心の白丸部が測定軸1000上にくるように配置されている。面40sは、指標が設けられた指標面である。測定軸1000上を伝搬する光線を射出する白丸部の位置を指標チャート40の原点とすると、指標チャート40に形成されたパターン(白三角部)は、原点に関して非対称となっている。
【0016】
指標チャート40は、指標チャート40の面40sから発散光(指標光)250を射出し、指標光250は測定光学系300に入射する。指標チャート40に形成されたパターン(
図2(A)の白三角部との白丸部)は互いに近傍(例えば1mm以下の距離)にあるため、
図1では、1点から発散した光のように描画している。
【0017】
測定光学系300に入射した指標光250は、ビームスプリッタ35を透過し、コリメータレンズ50を通って平行光となり、対物レンズ55で集光され、基準板120を透過して被検光学系60に入射する。対物レンズ55は、X、Y、Zのそれぞれの方向に動くステージ150上に設置されており、指標光250によって形成される指標チャート40の像(実像または虚像)の位置を調整することができる。ステージ150の位置は、コンピュータ100によって管理される。
【0018】
指標光250によって形成される指標チャート40の原点の像の位置(X,Y,Z)が、被検光学系60における第k(k=1、2、・・・、N)の被検面60k(測定対象面)の見かけの曲率中心の位置(Xc,Yc,Zc)と一致している場合を考える。この場合、指標光250は測定対象面60kで反射して入射光路とほぼ同じ光路を逆進する。つまり、測定対象面60kで反射した指標光250は、基準板120、対物レンズ55、コリメータレンズ50を透過し、ビームスプリッタ35に至る。ビームスプリッタ35において、指標光250の一部が反射し、結像面チャート80の面80s上に指標チャート40の像が結像される。結像面チャート80の面80s上の像は、結像レンズ52を介して撮像素子90の受光面90sに結像する。撮像素子90で撮像された画像はコンピュータ100に送られる。
【0019】
尚、測定対象面60k以外の被検面で反射した指標光250も撮像素子90に到達している。しかし、それら指標光250のほとんどは、測定光学系300においてケラれ、かつ、撮像素子90の面90s上で結像しないため無視できる。
【0020】
結像面チャート80には、
図2(B)のような基準線(破線)が描かれている。そのため、撮像素子90は、指標チャート40の像と基準線の像を同時に撮像する。
図2(C)は、指標チャート40の原点の像の位置(X,Y,Z)と測定対象面60kの見かけの曲率中心の位置(Xc,Yc,Zc)とが、X≠Xc、Y≠Yc、Z=Zcのとき、撮像素子90が撮像する像の例である。
図2(D)は、X=Xc、Y=Yc、Z=Zcのとき、撮像素子90が撮像する像である。
図2(D)は、平面ミラーをコリメータレンズ50と対物レンズ55の間に、XY面と平行になるように配置し、指標光250を平面ミラーで反射した際に観察される像と同じであり、このときの像の位置を基準位置とする。尚、
図2(C)および
図2(D)は、分かりやすいように、
図2(A)のパターンの配置と上下左右の向きを一致させた画像を表示している。実際は、撮像素子90の受光面90sの上下左右の向きとコンピュータ100における信号処理に依存して、上下左右の反転された画像が得られる。
【0021】
干渉計400は、低コヒーレンス光源(第2光源)10、ファイバ20、21、22、23、ファイバカプラ30、コリメータレンズ51、ミラー70(例えばリトロリフレクタ)、検出器91、ステージ(光路長変更手段、参照ステージ)151で構成される。本実施例の干渉計400は、マイケルソン干渉計である。低コヒーレンス光源10は、SLD(Super Luminescent Diode)光源やASE(Amplified Spontaneous Emission)光源などの広帯域光源である。低コヒーレンス光源10の光は、ファイバ20を通り、ファイバカプラ30において被検光200と参照光201に分割される。参照光はファイバ22を通って射出する。被検光は、ファイバ21を通って指標チャート40の面40sと同一平面上の点(本実施例では
図2(A)の白丸部)から発散して射出される。拡散板41と指標チャート40にはファイバ21を通すための穴があいており、ファイバ21のファイバ端21pは指標チャート40の面40s上に配置されている。
【0022】
ファイバ21のファイバ端(射出点(第1の点))21pから射出された被検光200は、測定光学系300に入射する。被検光200は、ビームスプリッタ35を透過し、コリメータレンズ50で平行光となり、対物レンズ55で集光され、基準板120を透過して被検光学系60に入射する。
【0023】
指標光250と同様に、被検光200の集光点(ファイバ端21pの実像または虚像)の位置が、測定対象面60kの見かけの曲率中心の位置と一致している場合、被検光200は測定対象面60kで反射して入射光路と同じ光路を逆進する。つまり、測定対象面60kで反射した被検光200は、基準板120、対物レンズ55、コリメータレンズ50、ビームスプリッタ35を透過してファイバ端(入射点(第2の点))21pに戻る。本実施例では被検光200の射出点と入射点は同一である。
【0024】
本実施例において、指標光250によって形成される指標チャート40の原点の像の位置と被検光200によって形成されるファイバ端21pの像の位置は一致している。つまり、測定光学系300に対して、指標チャートの面40s、ファイバ端(射出点と入射点)21pを含む面(本実施例では指標チャートの面40sと同一)のそれぞれと、撮像素子の受光面90sとが互いに共役関係となっている。本実施例では、結像面チャートの面80sとも共役関係である。
【0025】
尚、測定対象面60k以外の被検面で反射した被検光200の一部は、入射点21pに戻ってくる。しかし、それら被検光200のほとんどは、測定光学系300においてケラれ、かつ、入射点21pに集光しないため、入射点21pに戻る光量はわずかである。被検面以外に、基準板120の面(光路長基準面)120sで反射して入射点21pに戻る被検光200も存在する。光路長基準面120sは反射防止膜が塗布されておらず、かつ、平面なので、光路長基準面120sで反射した被検光200は、ある程度の光量が入射点21pに戻る。
【0026】
ファイバ端21pに戻った被検光200は、ファイバ21を再度通ってファイバカプラ30に至る。また、ファイバ22から射出された参照光201は、コリメータレンズ51で平行光となり、ミラー70で反射し、再度コリメータレンズ51、ファイバ22を通ってファイバカプラ30に至る。被検光200と参照光201は、ファイバカプラ30で干渉し、干渉光はファイバ23を通って検出器(例えばフォトダイオード)91で受光され、その信号がコンピュータ100に送られる。
【0027】
ミラー70は、
図1の矢印方向(Z方向)に動く参照ステージ151上に設置されており、参照ステージ151を動かすことで参照光201の光路長(参照光路長)を変化させることができる。干渉信号の包絡線は、被検光200の光路長と参照光201の光路長が等しいとき極大値をとる。参照ステージ151の位置の情報(例えば、不図示のエンコーダや測長器の出力値)は、コンピュータ100に送られる。
【0028】
コンピュータ100は干渉信号に基づいて測定対象面60kの光路長を算出する。測定対象面60k(k=1、2、・・・、N)を順次変えながら各被検面の光路長を算出し、被検光学系60の面間隔を算出する。
【0029】
図3は、実施例1における被検光学系60の面間隔の計測手順(取得手順)を示すフローチャートである。
【0030】
まず、ステップS10において、複数の被検面(面数:N)の中から測定対象面60k(第kの被検面)を選択する。測定対象面60kは、被検光学系60の第1面から第N面まで順番(光路長の順)に選択してもよいし、曲率中心位置の遠近の順に選択してもよい。また、各被検面に対して対物レンズ55を設置する位置の順に選択してもよいし、ランダムな順で選んでもよい。
【0031】
次に、ステップS20において、測定対象面60kにおける対物レンズ55の設計位置と参照ステージ151の設計位置を算出する。対物レンズ55の設計位置は、指標チャート40の原点の像の位置と測定対象面60kの見かけの曲率中心位置とが一致する状態における対物レンズ55のX、Y、Z位置(計算値)のことである。この値は、被検光学系60の設計値を用いて、近軸計算または光線追跡によって算出される。参照ステージ151の設計位置は、測定対象面60kで反射する被検光200の光路長と参照光201の光路長とが等しくなるときの参照ステージ151の位置であり、被検光学系60の設計値から算出される。
【0032】
そして、ステップS30において、撮像素子90の受光面90sにおいて指標チャート40の像が基準位置に形成されるように、対物レンズ55の位置をステージ150で調整する。このステップでは、まず、対物レンズ55を設計位置の近傍に配置し、撮像素子90の受光面90s上に指標チャート40の像が結像するように対物レンズ55のZ方向の位置を調整する。像が撮像素子90の視野から外れている場合は対物レンズ55のX、Y方向の調整も行う。このとき、測定対象面60kが偏心していると、
図2(C)のように、指標チャートの像が基準位置からずれた像が観察される。そこで、撮像素子90で観察される像が基準位置に形成されるように(
図2(D)のようになるように)、対物レンズ55のX、Y位置を調整する。
【0033】
続いて、ステップS40において、参照ステージ151によって参照光路長を走査して干渉信号を取得する。干渉信号は、参照ステージ151を駆動可能範囲すべて移動させて取得してもよいが、参照ステージ151の設計位置近傍の範囲だけ移動させて取得するほうが測定時間短縮につながる。
【0034】
そして、ステップS50において、干渉信号の包絡線が極大値をとるときの参照ステージ151の位置に基づいて、測定対象面60kの光路長を算出する。測定対象面60k以外の被検面で反射した被検光200もファイバ端21pに戻ってきているため、干渉信号の包絡線が極大値をとる箇所は複数存在する。どれが測定対象面60kの極大値か特定するには、ステップS20で算出した参照ステージ151の設計位置の情報を利用する。設計位置近傍の極大値が測定対象面60kの極大値である。または、測定対象面60kで反射した被検光200は入射点21pに集光しているため、他の被検面で反射した被検光200よりも強度が大きい。そこで、大きい極大値が測定対象面60kの極大値に相当すると判断してもよい。
【0035】
それから、ステップS60において、すべての被検面の光路長を測定(取得)したかどうか(面総数=N)チェックする。完了した場合は、フローはステップS70に移行し、未完了の場合はステップS10に戻る。
【0036】
最後に、ステップS70において、各被検面の光路長に基づいて被検面の間隔を算出する。このステップでは、まず、隣り合う被検面それぞれの光路長の値と、その被検面間の屈折率の情報を抽出する。屈折率の情報は被検光学系60の設計値でよい。そして、隣り合う被検面それぞれの光路長から光路長差を算出し、別途、屈折率の情報と低コヒーレンス光源10の中心波長λ0から群屈折率Ng(λ0)も算出する。群屈折率は以下の式(1)を用いて算出できる。
【0037】
Ng(λ0)=Np(λ0)-λ0(dNp(λ0)/dλ) ・・・(1)
ただし、Np(λ0)は波長λ0における位相屈折率、λは波長である。そして、算出した光路長差を群屈折率で除算することで面間隔が算出できる。被検面間隔が空気の場合は、群屈折率の除算を省略し、光路長差そのものを面間隔としてもよい。この計算をすべての被検面間において行う。以上で計測フローが完了する。
【0038】
通常、被検面が大きく偏心(例えば0.1mm~1mm)していると、その被検面による反射光が入射点21pに戻らないため光路長を測定できない。本実施例では、指標チャート40の面40s、射出点21pを含む面、入射点21pを含む面のそれぞれと、撮像素子90の受光面90sとが互いに共役関係になっている。この関係のもと、指標チャート40の像が基準位置に形成されるように、対物レンズ55と被検光学系60を相対的に移動(本実施例では被検光学系60は固定し対物レンズ55だけ移動)させる。この状態下では、測定対象面60kで反射した被検光200は、必然的に入射点21pに戻る。このため、各被検面の光路長を確実に測定することができ、大きな偏心量の被検面を有する被検光学系60の面間隔も計測が可能となる。
【0039】
本実施例では、
図2(A)のような原点に対して非対称なパターンの指標チャート40を使用した。これは、指標光250によって形成される指標チャート40の原点の像の位置が、被検面60kの曲率中心にあるのか、被検面60kの表面にあるのか判別するためである。もし指標チャート40のパターンが原点に対して対称の場合、指標チャート40の像が被検面60kの曲率中心位置に形成されている状態と、被検面60kの表面位置に形成されている状態とで同じ像が観察されるため、どちらの状態なのか見分けがつかない。一方、本実施例のような非対称パターンの指標チャート40を用いれば、指標チャート40の像が被検面60kの表面位置に形成されている場合、
図2(E)のような像(
図2(D)と比べて指標チャート40の像が原点に関して反転した像)が観察される。ステップS30において、対物レンズ55を設計位置近傍に配置した際に、他の被検面の表面に指標光200が集光し、撮像素子90上で指標チャート40の複数の像が観察されるときがある。そのとき、本実施例のような原点に対して非対称なパターンが効果を発揮する。
【0040】
本実施例では、指標チャート40に
図2(A)のような形状のチャートを用いたが、原点に対して非対称なパターンであれば任意の形状でよい。例えば、三角形の代わりに十字、丸、四角などを配置してもよい。
【0041】
本実施例では、被検面60kごとに光路長の測定を繰り返すため、全光路長を測定するのに時間がかかる。そのため、測定の最中に生じる、ファイバ20、21、22、23や測定光学系300内の熱膨張、光学素子のドリフトなどが無視できなくなることがある。その場合は、各被検面の干渉信号を取得する際に、光路長基準面120sの干渉信号(基準干渉信号)を同時に測定すればいい。基準干渉信号から算出した光路長基準面120sの光路長(基準光路長)も、熱膨張やドリフトの影響を受けた値となる。この基準光路長を用いて、測定対象面60kの光路長から熱膨張や光学素子のドリフトの影響を補正できる。本実施例では、基準板120の面120sを光路長基準面としたが、被検光学系60の第1面が平面に近い場合、第1面を光路長基準面として使用することもできる。
【0042】
本実施例では、指標光250と被検光200が同一平面上40sから射出される構成をとっている。しかし、指標光250と被検光200が射出される点は、厳密に同一平面上(同じZ座標)である必要は無く、例えば、結像する光の焦点深度程度乖離しても問題ない。指標光250と被検光200で波長が大きく異なる場合は、色収差も考慮して指標チャート40とファイバ端21pの位置を調整するのが望ましい。
【0043】
本実施例では、対物レンズ55をステージ150上に配置し、対物レンズ55と被検光学系60の相対位置を調整した。その代わりに、対物レンズ55を固定し、被検光学系60をステージ上に配置して被検光学系60の位置を調整してもよい。または、対物レンズ55と被検光学系60の両方ともが調整手段を有してもいい。もしくは、指標チャート40、測定光学系300、撮像素子90をすべてステージ上に配置し、それらの位置をまとめて動かすことで、対物レンズ55と被検光学系60の相対位置を調整してもよい。
【0044】
本実施例では、照明光源11と低コヒーレンス光源10の2つの光源を用いているが、照明光源11を低コヒーレンス光源10で代用してもよい。例えば、低コヒーレンス光源10の光の一部をファイバ等で照明光源11の箇所に導光すれば、照明光源11を取り除くことができる。
【0045】
本実施例では、指標チャート40から射出される指標光250がいろいろな方向に発散するように拡散板41を設置したが、指標チャート40の光透過部(本実施例では
図2(A)の白三角形部)のエッジで光が回折するので拡散板41は取り外してもよい。
【0046】
本実施例では、結像面チャート80に
図2(B)のような基準線を有するチャートを用いたが、任意の形状のチャートでもよい。または、結像面チャート80を取り除いてもよい。基準線は、撮像素子90で得られる画像を表示するディスプレイに直接描画してもよいし、画像データにオーバーレイして表示してもよい。
【0047】
本実施例では、ビームスプリッタ35としてペリクルビームスプリッタを用いたが、キューブ型ビームスプリッタ、ハーフミラーでもよい。
【0048】
本実施例では、結像面チャート80の面上80sに結像した指標チャート40の像を、結像レンズ52を介して撮像素子90で撮像した。その代わりに、結像面チャート80、結像レンズ52を取り除き、結像面チャート80の位置に撮像素子90を配置してもよい。
【0049】
本実施例では、光路長を計測する際に、ステージ151を駆動するTD-OCT(Time Domain-Optical Coherence Tomography)の原理を用いた。その代わりに、検出器91を分光器に交換したSD(Spectral Domain)-OCTや、光源10を波長掃引光源に交換したSS(Swept Source)-OCTを搭載することもできる。ただし、SD-OCTやSS-OCTでは、通常、測定可能な奥行き方向の範囲がTD-OCTより小さい(波長分解能に依存するため)。そのため、本実施例にSD-OCTやSS-OCTの原理を使用する際は、ミラー70の位置の移動または被検光学系60の位置の移動と組合せて使用する必要がある。
【実施例2】
【0050】
図4は、実施例2に係る面間隔計測装置2の構成を示している。面間隔計測装置2は、照明光源12、指標チャート40、測定光学系300、撮像素子90、ステージ(調整手段)150、干渉計400、コンピュータ(演算手段)100を有する。測定光学系300は、ビームスプリッタ36、39、コリメータレンズ50、対物レンズ55、結像レンズ52で構成されている。ビームスプリッタ39は、例えばダイクロイックミラーである。干渉計400は、低コヒーレンス光源10、ファイバ20~26、ファイバカプラ30、31、ビームスプリッタ37、コリメータレンズ51、ミラー75、差分検出器92、ステージ(光路長変更手段、参照ステージ)151で構成される。本実施例の干渉計400は、マッハツェンダ干渉計である。ミラー75は例えば平面ミラーである。
【0051】
照明光源12(例えば、半導体レーザ)から射出された光290は指標チャート40を照明する。
図5(A)は本実施例における指標チャート40の模式図である。指標チャート40は、指標チャート40の面40sから発散光(指標光)250を射出し、指標光250は測定光学系300に入射する。指標チャート40に形成されたにパターン(
図5(A)の白十字部)は互いに近傍にあるため、
図4では、1点から発散した光のように描画している。
【0052】
測定光学系300に入射した指標光250は、ビームスプリッタ36、39で反射し、コリメータレンズ50を通って平行光となり、対物レンズ55で集光されて被検光学系60に入射する。対物レンズ55は、X、Y、Zのそれぞれの方向に動くステージ150上に設置されており、指標チャート40の像の位置を調整することができる。ステージ150の位置は、コンピュータ100によって管理される。
【0053】
指標光250のうち測定軸1000上を伝搬する光線を射出する点を指標チャート40の原点とする。このとき、指標チャート40の原点の像の位置が、被検光学系60の測定対象面60kの曲率中心位置と一致している場合、指標光250は測定対象面60kで反射して入射光路とほぼ同じ光路を逆進する。測定対象面60kで反射した指標光250は、対物レンズ55、コリメータレンズ50、ビームスプリッタ39、36、結像レンズ52を介して撮像素子90の受光面90s上に結像する。撮像素子90で撮像された画像はコンピュータ100に送られる。
【0054】
低コヒーレンス光源10の光は、ファイバ20を通り、ファイバカプラ30において被検光200と参照光201に分割される。参照光201はファイバ22を通って射出される。被検光200は、ファイバ21を通ってファイバ端(射出点)21pから発散して射出される。射出点21pから射出された被検光200は、測定光学系300に入射する。被検光200は、ビームスプリッタ39を透過し、コリメータレンズ50で平行光となり、対物レンズ55で集光されて被検光学系60に入射する。
【0055】
指標光250と同様に、被検光200によって形成されるファイバ端21pの実像または虚像の位置が、測定対象面60kの曲率中心位置とほぼ一致している場合、被検光200は測定対象面60kで反射して入射光路とほぼ同じ光路を逆進する。測定対象面60kで反射した被検光200は、対物レンズ55、コリメータレンズ50、ビームスプリッタ39を透過してファイバ23のファイバ端(入射点)23pに入射する。
【0056】
図5(B)は、面21sにおける射出点21p、入射点23p、測定軸1000の位置関係である。実施例1では、射出点と入射点は、同じ位置にあり、かつ、測定軸1000上にあったが、本実施例では測定軸1000に関して対称の位置に存在する。
図5(C)は、指標チャート40の像が撮像素子90の受光面90s上の基準位置に形成されたときに、撮像素子90で撮像される像である。白丸は射出点21pの像および入射点23pの像を示している。
【0057】
ファイバ端23pに戻った被検光200は、ファイバ23を通ってファイバカプラ31に至る。また、ファイバ22から射出された参照光201は、ビームスプリッタ37を透過し、コリメータレンズ51で平行光となり、ミラー75で反射し、再度コリメータレンズ51を通り、ビームスプリッタ37で反射し、ファイバ24に入射する。ファイバ24に入射した参照光201は、ファイバ24を通ってファイバカプラ31に至る。被検光200と参照光201は、ファイバカプラ31で干渉し、干渉光はファイバ25、26を通って差分検出器(バランスディテクタ)92で受光され、その信号がコンピュータ100に送られる。
【0058】
ミラー75は、
図4の矢印方向(Y方向)に動く参照ステージ151上に設置されており、参照ステージ151を動かすことで参照光201の光路長を変化させることができる。参照ステージ151の位置の情報は、コンピュータ100に送られる。
【0059】
コンピュータ100は、干渉信号に基づき測定対象面60kの光路長を算出する。測定対象面60kを順次変えながら各被検面の光路長を算出し、被検面の間隔を算出する。
【0060】
本実施例において、指標チャート40の面40s、射出点21pを含む面21s、入射点23pを含む面21sのそれぞれと、撮像素子90の受光面90sとが、測定光学系300に対して互いに共役関係となっている。この関係のもと、
図5(C)のような基準位置に指標チャート40の像が形成されるように対物レンズ55の位置を調整すると、必然的に射出点21pから射出された被検光200は入射点23pに入射する。つまり、被検面60kに大きな偏心があったとしても被検面60kの光路長を測定することができる。
【実施例3】
【0061】
図6は、実施例3に係る面間隔計測装置3の構成を示している。面間隔計測装置3は、照明光源11、指標チャート40、測定光学系300、撮像素子90、ステージ(調整手段)150、干渉計400、コンピュータ(演算手段)100を有する。測定光学系300は、ビームスプリッタ35、コリメータレンズ50、53、対物レンズ55、ミラー76で構成されている。干渉計400は、低コヒーレンス光源10、サーキュレータ110、ファイバ20、21、22、23、24、25、ファイバカプラ30、コリメータレンズ51、ミラー75、差分検出器92、ステージ(光路長変更手段、参照ステージ)151で構成される。本実施例の干渉計400は、マイケルソン干渉計である。
【0062】
照明光源11から射出された光290は指標チャート40を照明し、指標チャート40の面40sから発散光(指標光)250を射出し、指標光250は測定光学系300に入射する。測定光学系300に入射した指標光250は、ビームスプリッタ35を透過し、コリメータレンズ50を通って平行光となる。指標光250のうち、光束中心付近の一部の光はミラー76によって遮られ、光束の周辺付近の一部の光は対物レンズ55で集光されて被検光学系60に入射する。対物レンズ55は、X、Y、Zのそれぞれの方向に動くステージ150上に設置されており、指標光250の集光点によって形成される指標チャート40の原点の像の位置(X,Y,Z)を調整することができる。ステージ150の位置は、コンピュータ100によって管理される。
【0063】
指標チャート40の原点の実像または虚像の位置が、被検光学系60の測定対象面60kの曲率中心位置と一致している場合、指標光250は測定対象面60kで反射して入射光路とほぼ同じ光路を逆進する。測定対象面60kで反射した指標光250は、対物レンズ55、コリメータレンズ50、ビームスプリッタ35を介して撮像素子90の受光面90s上に結像する。本実施例では、指標光250の光束中心光線がなく、周辺光線のみで形成される像(高周波成分のみの像)となるが、指標チャート40の像を形成するには十分である。撮像素子90で撮像された画像はコンピュータ100に送られる。
【0064】
低コヒーレンス光源10の光は、ファイバ20、サーキュレータ110、ファイバ23を通り、ファイバカプラ30において被検光200と参照光201に分割される。参照光201はファイバ22を通って射出される。被検光200はファイバ21を通ってファイバ端(射出点)21pから発散して射出される。射出点21pから射出された被検光200は、測定光学系300に入射する。被検光200は、コリメータレンズ53で平行光となり、ミラー76で反射し、対物レンズ55で集光されて被検光学系60に入射する。
【0065】
指標光250と同様に、被検光200によって形成される射出点21pの実像または虚像の位置が、測定対象面60kの曲率中心位置と一致している場合、被検光200は測定対象面60kで反射して入射光路と同じ光路を逆進する。測定対象面60kで反射した被検光200は、対物レンズ55、ミラー76、コリメータレンズ53を介してファイバ21のファイバ端(入射点)21pに戻る。
【0066】
ファイバ端21pに戻った被検光200は、ファイバ21を通ってファイバカプラ30に至る。また、ファイバ22から射出された参照光201は、コリメータレンズ51で平行光となり、ミラー75で反射し、再度コリメータレンズ51を通り、ファイバ22に入射し、ファイバ22を通ってファイバカプラ30に至る。被検光200と参照光201は、ファイバカプラ30で干渉し、干渉光の一方はファイバ24を通って差分検出器(バランスディテクタ)92に至る。干渉光の他方はファイバ23、サーキュレータ110、ファイバ25を通って差分検出器92に至る。差分検出器92で受光された干渉信号がコンピュータ100に送られる。
【0067】
ミラー75は、
図6の矢印方向(Z方向)に動く参照ステージ151上に設置されており、参照ステージ151を動かすことで参照光201の光路長を変化させることができる。参照ステージ151の位置の情報は、コンピュータ100に送られる。
【0068】
コンピュータ100は、干渉信号に基づき測定対象面60kの光路長を算出する。測定対象面60kを順次変えながら各被検面の光路長を算出し、被検面の間隔を算出する。
【0069】
本実施例において、指標チャート40の面40s、ファイバ端21p(射出点および入射点)を含む面21sのそれぞれと、撮像素子90の受光面90sとが、測定光学系300に対して互いに共役関係となっている。この関係のもと、指標チャート40の像が基準位置にくるように対物レンズ55を調整すると、必然的に射出点21pから射出された被検光200は入射点21pに入射する。つまり、被検面60kに大きな偏心があったとしても被検面60kの光路長を測定することができる。
【実施例4】
【0070】
図7は、実施例4に係る面間隔計測装置4の構成を示している。面間隔計測装置4は、照明光源13、指標チャート45、測定光学系300、撮像素子90、ステージ(調整手段)150、干渉計400、コンピュータ(演算手段)100を有する。測定光学系300は、ビームスプリッタ35、36、37、コリメータレンズ50、53、対物レンズ55、結像レンズ52で構成されている。干渉計400は、低コヒーレンス光源10、ファイバ20、21、22、23、24、25、ファイバカプラ30、31、ビームスプリッタ38、コリメータレンズ51、ミラー75、検出器91、ステージ(光路長変更手段、参照ステージ)151で構成される。本実施例の干渉計400は、マッハツェンダ干渉計である。
【0071】
照明光源13(例えば中空のリング照明LED)から射出された光290は反射型の指標チャート45を照明し、指標チャート45の面45sから発散光(指標光)250を射出し、指標光250は測定光学系300に入射する。測定光学系300に入射した指標光250は、ビームスプリッタ35で反射し、コリメータレンズ50を通って平行光となる。指標光250は対物レンズ55で集光され、ビームスプリッタ36と基準板120を透過し、被検光学系60に入射する。被検光学系60および基準板120は、X、Y、Zのそれぞれの方向に動くステージ150上に設置されており、対物レンズ55に対する被検光学系60の相対位置を調整することができる。ステージ150の位置は、コンピュータ100によって管理される。
【0072】
指標チャート45の原点の虚像が、測定対象面60kで反射した指標光250によって測定軸1000の負の無限の位置に形成される場合、指標光250は、平行光となって被検光学系60から射出される。被検光学系60から射出された指標光250は、基準板120を透過し、ビームスプリッタ36、37で反射し、結像レンズ52を介して撮像素子90の受光面90s上に結像する。撮像素子90で撮像された画像はコンピュータ100に送られる。
【0073】
低コヒーレンス光源10の光は、ファイバ20を通りファイバカプラ30において被検光200と参照光201に分割される。参照光201はファイバ22を通って射出される。被検光200はファイバ21を通ってファイバ端(射出点)21pから発散して射出される。射出点21pから射出された被検光200は、測定光学系300に入射する。被検光200は、コリメータレンズ50で平行光となり、対物レンズ55で集光され、ビームスプリッタ36、基準板120を透過して被検光学系60に入射する。
【0074】
指標光250と同様に、ファイバ端(射出点)21pの虚像が、測定対象面60kで反射した被検光200によって測定軸1000の負の無限の位置に形成される場合、被検光200は平行光となって被検光学系60から射出される。被検光学系60から射出された被検光200は、基準板120を透過し、ビームスプリッタ36で反射し、ビームスプリッタ37を透過し、コリメータレンズ53で集光され、ファイバ23のファイバ端(入射点)23pに入射する。
【0075】
ファイバ端23pに戻った被検光200は、ファイバ23を通ってファイバカプラ31に至る。また、ファイバ22から射出された参照光201は、ビームスプリッタ38を透過し、コリメータレンズ51で平行光となり、ミラー75で反射し、再度コリメータレンズ51を通り、ビームスプリッタ38で反射し、ファイバ24に入射する。ファイバ24に入射した参照光201は、ファイバ24を通ってファイバカプラ31に至る。被検光200と参照光201は、ファイバカプラ31で干渉し、干渉光はファイバ25を通って検出器91で受光され、その信号がコンピュータ100に送られる。
【0076】
ミラー75は、
図7の矢印方向(Z方向)に動く参照ステージ151上に設置されており、参照ステージ151を動かすことで参照光201の光路長を変化させることができる。参照ステージ151の位置の情報は、コンピュータ100に送られる。
【0077】
コンピュータ100は、干渉信号に基づき測定対象面60kの光路長を算出する。測定対象面60kを順次変えながら各被検面の光路長を算出し、被検面の間隔を算出する。
【0078】
本実施例において、指標チャート45の面45s、射出点21pを含む面21s、入射点23pを含む面23sのそれぞれと、撮像素子90の受光面90sとが、測定光学系300に対して互いに共役関係となっている。この関係のもと、指標チャート45の像が基準位置にくるように被検光学系60を調整すると、必然的に射出点21pから射出された被検光200は入射点23pに入射する。つまり、被検面60kに大きな偏心があったとしても被検面60kの光路長を測定することができる。
【0079】
本実施例では、対物レンズ55の代わりに被検光学系60の位置を調整することで、対物レンズ55と被検光学系60の相対位置を調整している。被検光学系60の位置を調整すると、測定対象面60kの光路長も被検光学系60の位置に応じて変化してしまう。そこで、被検光学系60と同じステージ150上に配置された基準板120の光路長基準面120sで反射した被検光200の基準光路長を利用して測定対象面60kの光路長を補正すればよい。各被検面において、基準光路長に対する測定対象面60kの光路長を算出すれば、被検光学系60の位置に依存しない面間隔計測が可能である。
【0080】
本実施例では、測定対象面60kで反射した指標光250や被検光200が、被検光学系60から平行光となって射出されるように被検光学系60の位置を調整している。しかし、射出光は平行光とは限らず、収束光、発散光でもよい。収束する像点、または、発散元の虚物点を固定し、それに応じて結像レンズ52と撮像素子90の位置、および、コリメータレンズ53とファイバ端23pの位置を配置する。そして、どの測定対象面60kに対しても同じ像点に収束、または同じ虚物点から発散するように、対物レンズ55と被検光学系60の相対位置を調整すれば、本実施例と同様の効果を有する面間隔計測装置が実現できる。
【実施例5】
【0081】
図8は、実施例5に係る面間隔計測装置5の構成を示している。面間隔計測装置5は、照明光源13、指標チャート45、測定光学系300、撮像素子90、ステージ(調整手段)150、干渉計400、コンピュータ(演算手段)100を有する。測定光学系300は、ビームスプリッタ36、37、コリメータレンズ50、53、対物レンズ55、結像レンズ52で構成されている。干渉計400は、低コヒーレンス光源10、ファイバ20、21、22、23、24、25、ファイバカプラ30、31、ビームスプリッタ38、コリメータレンズ51、ミラー75、検出器91、ステージ(光路長変更手段、参照ステージ)151で構成される。本実施例の干渉計400は、マッハツェンダ干渉計である。
【0082】
照明光源13から射出された光290は反射型の指標チャート45を照明し、指標チャート45の面45sから発散光(指標光)250を射出し、指標光250は測定光学系300に入射する。測定光学系300に入射した指標光250は、コリメータレンズ50を通って平行光となり、ビームスプリッタ36を透過して被検光学系60に入射する。測定対象面60kで反射した指標光250は、収束または発散して被検光学系60から射出され、ビームスプリッタ36で反射し、対物レンズ55に入射する。対物レンズ55は、X、Y、Zのそれぞれの方向に動くステージ150上に設置されており、被検光学系60に対する対物レンズ55の相対位置を調整することができる。ステージ150の位置は、コンピュータ100によって管理される。
【0083】
対物レンズ55を透過した指標光250が平行光となるように対物レンズ55の位置を調整すると、指標光250はビームスプリッタ37で反射し、結像レンズ52で撮像素子90の受光面90s上に結像する。撮像素子90で撮像された画像はコンピュータ100に送られる。
【0084】
低コヒーレンス光源10の光は、ファイバ20を通りファイバカプラ30において被検光200と参照光201に分割される。参照光201はファイバ22を通って射出される。被検光200はファイバ21を通ってファイバ端(射出点)21pから発散して射出される。射出点21pから射出された被検光200は、測定光学系300に入射する。被検光200は、コリメータレンズ50で平行光となり、ビームスプリッタ36を透過して被検光学系60に入射する。
【0085】
指標光250と同様に、測定対象面60kで反射した被検光200は、収束または発散して被検光学系60から射出され、ビームスプリッタ36で反射し、対物レンズ55を透過して平行光となる。被検光200は、ビームスプリッタ37を透過し、コリメータレンズ53で集光され、ファイバ23のファイバ端(入射点)23pに入射する。
【0086】
ファイバ端23pに戻った被検光200は、ファイバ23を通ってファイバカプラ31に至る。また、ファイバ22から射出された参照光201は、ビームスプリッタ38を透過し、コリメータレンズ51で平行光となり、ミラー75で反射し、再度コリメータレンズ51を通り、ビームスプリッタ38で反射し、ファイバ24に入射する。ファイバ24に入射した参照光201は、ファイバ24を通ってファイバカプラ31に至る。被検光200と参照光201は、ファイバカプラ31で干渉し、干渉光はファイバ25を通って検出器91で受光され、その信号がコンピュータ100に送られる。
【0087】
ミラー75は、
図8の矢印方向(Z方向)に動く参照ステージ151上に設置されており、参照ステージ151を動かすことで参照光201の光路長を変化させることができる。参照ステージ151の位置の情報は、コンピュータ100に送られる。
【0088】
コンピュータ100は、干渉信号に基づき測定対象面60kの光路長を算出する。測定対象面を順次変えながら各被検面の光路長を算出し、被検面の間隔を算出する。
【0089】
本実施例において、指標チャート45の面45s、射出点21pを含む面21s、入射点23pを含む面23sのそれぞれと、撮像素子90の受光面90sとが、測定光学系300に対して互いに共役関係となっている。この関係のもと、指標チャート45の像が基準位置にくるように対物レンズ55を調整すると、必然的に射出点21pから射出された被検光200は入射点23pに入射する。つまり、被検面60kに大きな偏心があったとしても被検面60kの光路長を測定することができる。
【実施例6】
【0090】
図9は、実施例6に係る光学系の製造方法を示すフローチャートである。実施例1~5で説明した面間隔計測装置1~5のいずれかを用いて計測された光学系の面間隔の結果を、光学系(被検光学系60)の製造方法にフィードバックすることが可能である。
【0091】
まずステップS101において、製造者は、複数の光学素子(レンズ等)を用いて光学系を組み立てて、各光学素子の位置を調整する。
【0092】
次にステップS102において、製造者は、組立調整された光学系の精度や性能を評価する。満足する評価結果が得られなければステップS103に移行し、NGとなった要因分析を行う。分析対象の1つとして光学素子の面間隔がある。この面間隔の計測に、面間隔計測装置1~5のいずれかを使用することができる。一方、満足する評価結果が得られた場合は、本製造方法による光学系の製造を終了する。
【0093】
ステップS103のNG要因分析だけでなく、ステップS101の光学素子の位置調整において面間隔の計測結果(取得結果)を活用することもできる。つまり、面間隔計測装置1~5のいずれかを用いて光学系の複数の光学素子の面間隔を計測(取得)し、その結果を用いて光学素子の位置調整を行うことができる。
【0094】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【0095】
各実施形態の開示は、以下の構成および方法を含む。
【0096】
(構成1)
指標が設けられた指標面を含むチャートを照明する第1光源と、
前記チャートから出射した指標光を被検光学系に入射させる測定光学系と、
前記被検光学系の複数の被検面で反射した前記指標光を、前記測定光学系を介して受光する撮像素子と、
前記撮像素子の受光面において前記指標光による前記チャートの像が基準位置に形成されるように、前記測定光学系と前記被検光学系との相対位置を調整する調整手段と、
第2光源を含み、該第2光源からの光を被検光と参照光に分割し、前記参照光と、第1の点から出射して前記複数の被検面で反射した後に前記測定光学系を介して第2の点に入射した前記被検光とを干渉させることで干渉信号を取得する干渉計と、
前記干渉信号に基づいて前記複数の被検面までの各光路長を算出し、該光路長に基づいて前記複数の被検面のうち隣り合う被検面の間隔を算出する演算手段と、を有し、
前記指標面、前記第1の点を含む面、前記第2の点を含む面のそれぞれと、前記受光面とは、前記測定光学系に対して互いに共役関係であることを特徴とする取得装置。
(構成2)
前記測定光学系の光軸を測定軸とするとき、
前記調整手段は、前記測定軸に対して平行方向および垂直方向に、前記測定光学系と前記被検光学系との前記相対位置を調整することを特徴とする構成1に記載の取得装置。
(構成3)
前記測定光学系の光軸を測定軸とし、前記指標光のうち前記測定軸上を伝搬する光線を射出する点を前記チャートの原点とするとき、
前記チャートに形成されたパターンは、前記原点に関して非対称であることを特徴とする構成1または2に記載の取得装置。
(構成4)
前記干渉計は、
前記参照光の光路長である参照光路長を変更する光路長変更手段を含み、
前記調整手段によって前記チャートの像が前記基準位置に形成されたのちに、前記光路長変更手段によって前記参照光路長を走査して得られる前記干渉信号を取得することを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の取得装置。
(構成5)
光路長基準面を備える基準板を前記測定光学系と前記被検光学系との間に更に有し、
前記干渉計は、前記参照光と前記光路長基準面で反射した前記被検光とを干渉させることで基準干渉信号を取得し、
前記演算手段は、前記基準干渉信号に基づいて前記光路長基準面の基準光路長を算出し、前記基準光路長を用いて前記複数の被検面までの前記各光路長を補正することを特徴とする構成1から4のいずれかに記載の取得装置。
(構成6)
前記第1光源は、前記第2光源の光の一部をファイバで導光することで得られる光源であることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載の取得装置。
(構成7)
前記基準位置において、前記チャートの原点の像の位置は、前記複数の被検面それぞれの曲率中心の位置と一致していることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載の取得装置。
(方法1)
指標が設けられた指標面を含むチャートを照明する照明ステップと、
前記チャートから射出した指標光を測定光学系を介して被検光学系に入射させ、前記被検光学系の複数の被検面で反射した前記指標光を、前記測定光学系を介して撮像素子で受光する撮像ステップと、
前記撮像素子の受光面において前記指標光による前記チャートの像が基準位置に形成されるように、前記測定光学系と前記被検光学系との相対位置を調整する調整ステップと、
第2光源からの光を被検光と参照光に分割し、前記参照光と、第1の点から出射して前記複数の被検面で反射した後に前記測定光学系を介して第2の点に入射した前記被検光とを干渉させることで干渉信号を取得する取得ステップと、
前記干渉信号に基づいて前記複数の被検面までの各光路長を算出し、該光路長に基づいて前記複数の被検面のうち隣り合う被検面の間隔を算出する演算ステップと、を有し、
前記調整ステップにおける調整は、
前記指標面、前記第1の点を含む面、前記第2の点を含む面のそれぞれと、前記撮像素子の前記受光面とが、前記測定光学系に対して互いに共役であるという関係のもとで行われることを特徴とする取得方法。
(方法2)
方法1に記載の取得方法を用いて前記被検光学系としての光学系の面間隔を取得するステップと、
前記面間隔の取得結果を用いて前記光学系を調整するステップと、を有することを特徴とする光学系の製造方法。
【符号の説明】
【0097】
取得装置 1,2,3,4,5
照明光源(第1光源) 11,12,13
指標チャート(チャート) 40,45
測定光学系 300
撮像素子 90
調整手段 150
干渉計 400
演算手段 100