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特許7600212電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/507 20210101AFI20241209BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20241209BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241209BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20241209BHJP
   H01M 50/358 20210101ALI20241209BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20241209BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20241209BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20241209BHJP
【FI】
H01M50/507
H01M50/342 101
H01M10/44 P
H01M50/35 101
H01M50/358
H01M50/209
H01M50/249
H01M50/503
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022511534
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2020047898
(87)【国際公開番号】W WO2021199534
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2020064060
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲村 卓思
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-4803(JP,A)
【文献】特開2018-18795(JP,A)
【文献】特開2018-18754(JP,A)
【文献】特開2015-97176(JP,A)
【文献】特開2015-138605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/30-50/392
H01M 10/44
H01M 50/249
H01M 50/209
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装缶の内圧上昇時に開弁するガス排出弁、及び電極端子を上面に形成した電池セルを、複数積層した電池積層体と、
前記電極端子同士を接続する複数のバスバーと、
前記バスバーを保持するバスバーホルダと、
前記バスバーホルダの上面に配置され、ガスダクトを画成するダクト板と、
を備え、
前記バスバーホルダは、複数のサブホルダに分割されており、
ダクト板は、前記サブホルダと結合される長穴を形成しており、
各サブホルダは、前記長穴と対応する位置に、該長穴よりも長い支持面と、前記支持面に開口された連結部を形成しており、
分割された前記複数のサブホルダを跨ぐように前記ダクト板を、前記支持面に載置した状態で、前記長穴を通じて前記連結部に結合して前記複数のサブホルダと前記ダクト板を連結してなる電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記サブホルダは、前記ガスダクト内にボスを形成しており、
前記ボスの上面に、前記支持面を形成してなる電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電源装置であって、
前記支持面の、前記連結部の周囲に、前記長穴に挿入される環状枠を突出させてなる電源装置。
上記構成により、環状枠を長穴に挿入して、長穴に沿って螺合部分を摺動させるガイドとして機能させることが可能となる。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電源装置であって、
前記ボスに、インサートナットを埋設してなる電源装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記支持面を、トラック状に形成してなる電源装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記サブホルダ同士を対向させた界面が、平面視において階段状に形成されてなる電源
装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記バスバーホルダは、前記サブホルダ同士を対向させた対向面の一方から、他方の対向面に向かって延出され、前記サブホルダ同士の隙間を閉塞するオーバーラップ部を形成してなる電源装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記バスバーが、
角柱状に延長されたバスバー本体と、
前記バスバー本体から延出され、前記電極端子と接続されるバスバー枝部と、
を備える電源装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記バスバーホルダが、PBTで形成されてなる電源装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記ダクト板が、SUS又は鉄製である電源装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一に記載の電源装置を備える車両であって、
前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える車両。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一に記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラとを備えており、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御する蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルを備える電池モジュールや電池パックなどの電源装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車など車両用の電源や、工場用、家庭用などの蓄電システムの電源などに利用されている(例えば特許文献1~3参照)。
【0003】
このような電源装置は、充放電可能な複数の電池セルを複数枚積層している。例えば図21の模式断面図に示すように、電源装置900は角型の外装缶の電池セル901を積層した電池積層体910の両側の端面に、それぞれエンドプレート903を配置し、エンドプレート903同士をバインドバー904で締結している。また角形の電池セル901は、その上面に正負の電極端子902を離間して設けている。隣接する電池セル901の電極端子902は、バスバーで接続される。一般にバスバーは、バスバーホルダ941で位置決め状態に保持される。このようなバスバーホルダ941はポリプロピレンなどの樹脂製のものが採用されている。
【0004】
さらに電池セル901は、異常時に外装缶の内部が高圧になると、開弁してガスを放出するガス排出弁901cが設けられている。ガス排出弁901cは、電池セル901の外装缶の上面において、例えば正負の電極端子902の間に形成される。このような電池セル901を多数積層した電源装置900において、いずれかの電池セルが熱暴走など、何らかの理由で内部が高圧になると、ガス排出弁901cから高温、高圧のガスが放出される。このため電池積層体910の上方には、ガスダクトが設けられている。ガスダクトは、例えば図20のバスバーホルダ941の上面に、ダクト板949を螺合して形成される。
【0005】
電池セルは、充放電を繰り返すと外装缶が膨張、収縮する。特に近年の高容量化の要求に伴い、二次電池セル一枚あたりの高容量化が進んでおり、この結果、膨張量も大きくなる傾向にある。このような二次電池セルを多数枚、積層して締結している電池積層体においては、各電池セルの膨張によって隣接する電池セル間で相互の位置ずれが発生するため、バスバーホルダ941で電極端子間の位置ずれを吸収する必要がある。例えば、樹脂ヒンジやバネ等利用して伸縮構造を形成し、電極端子間の位置ずれを吸収している。このような樹脂ヒンジやバネを作るためには、バスバーホルダは上述の通りポリプロピレンのような柔軟な樹脂で形成する必要がある。
【0006】
その一方で、電池セルの高容量化に伴い、セルが内部短絡した場合などに噴出したガスを安全に排出するため、電池積層体の上方にガスダクトを形成している。ガスダクトは、図20に示すようにバスバーホルダ941の上面に、ダクト板949を固定して形成される。
【0007】
しかしながら、バスバーホルダ941には上述の通り、電池セル901の膨張を吸収できる柔軟性が求められおり、一方では樹脂製のバスバーホルダ941にダクト板949を、高いガス圧に晒されても外れないようにボルト967で強固に固定する必要があり、高い剛性が求められる。このように、バスバーホルダ941には変形に対する柔軟性と、高い圧力に対する耐性という相反する特性が求められており、これらを両立させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6344362号公報
【文献】特許第6465196号公報
【文献】特許第5668555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一態様の目的の一は、電池セルを複数枚積層した電池積層体の全長が伸縮する事態に対応可能な電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様に係る電源装置は、外装缶の内圧上昇時に開弁するガス排出弁、及び電極端子を上面に形成した電池セルを、複数積層した電池積層体と、前記電極端子同士を接続する複数のバスバーと、前記バスバーを保持するバスバーホルダと、前記バスバーホルダの上面に配置され、ガスダクトを画成するダクト板と、を備え、前記バスバーホルダは、複数のサブホルダに分割されており、ダクト板は、前記サブホルダと結合される長穴を形成しており、各サブホルダは、前記長穴と対応する位置に、該長穴よりも長い支持面と、前記支持面に開口された連結部を形成しており、分割された前記複数のサブホルダを跨ぐように前記ダクト板を、前記支持面に載置した状態で、前記長穴を通じて前記連結部に結合して前記複数のサブホルダと前記ダクト板を連結している。
【発明の効果】
【0011】
本発明のある態様に係る電源装置によれば、バスバーホルダを複数に分割して、電池セルの積層方向への伸縮を吸収可能としつつ、伸縮しないダクト板に摺動自在に固定することで、連結状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係る要部拡大図付き電源装置を示す斜視図である。
図2図1に示す電源装置の分解斜視図である。
図3図2のカバー集合体において、バスバーホルダとダクト板を分離した分解斜視図である。
図4図3のバスバーホルダからバスバーを分離した分解斜視図である。
図5図4のバスバーホルダをサブホルダに分割した分解斜視図である。
図6図2のカバー集合体の平面図である。
図7図6においてダクト板を除いたバスバーホルダを示す要部拡大図付き平面図である。
図8図7においてバスバーを除いたバスバーホルダを示す要部拡大図付き平面図である。
図9図8のバスバーホルダをサブホルダに分割した要部拡大図付き平面図である。
図10図6のX-X線における模式断面図である。
図11】バスバーホルダの要部拡大分解斜視図である。
図12】変形例に係るダクト板とサブホルダの連結構造を示す模式断面図である。
図13A】他の変形例に係るダクト板とサブホルダの連結構造を示す模式断面図である。
図13B図13Aの状態から連結部を熱かしめした状態を示す模式断面図である。
図14A】さらに他の変形例に係るダクト板とサブホルダの連結に用いるブッシュナットを示す平面図である。
図14B図14Aのダクト板とサブホルダの連結構造を示す模式断面図である。
図15】さらに他の変形例に係るダクト板とサブホルダの連結構造を示す模式断面図である。
図16】実施形態2に係る電源装置のバスバーホルダを示す平面図である。
図17】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図18】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図19】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
図20】従来の電源装置を示す模式平面図である。
図21】従来の電源装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態は、以下の構成によって特定されてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る電源装置は、上記構成に加えて、前記サブホルダは、前記ガスダクト内にボスを形成しており、前記ボスの上面に、前記支持面を形成している。
【0015】
本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記支持面の、前記連結部の周囲に、前記長穴に挿入される環状枠を突出させている。上記構成により、環状枠を長穴に挿入して、長穴に沿って結合部分を摺動させるガイドとして機能させることが可能となる。
【0016】
また、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記ボスに、インサートナットを埋設している。
【0017】
さらに、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記支持面を、トラック状に形成している。
【0018】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記サブホルダ同士を対向させた界面が、平面視において階段状に形成されている。
【0019】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記バスバーホルダは、前記サブホルダ同士を対向させた対向面の一方から、他方の対向面に向かって延出され、前記サブホルダ同士の隙間を閉塞するオーバーラップ部を形成している。上記構成により、バスバーホルダをサブホルダに分割したことで生じる隙間から、万一いずれかの電池セルのガス排出弁からガスが放出されたとしても、ガスが隙間から漏れる事態をオーバーラップ部で抑制することができる。
【0020】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記バスバーが、角柱状に延長されたバスバー本体と、前記バスバー本体から延出され、前記電極端子と接続されるバスバー枝部とを備えている。
【0021】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記バスバーホルダが、PBTで形成されている。
【0022】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、上記いずれかの構成に加えて、前記ダクト板が、SUS又は鉄製である。
【0023】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動車両は、上記何れかの電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える。
【0024】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る蓄電装置は、上記何れかの電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラと備えて、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御する。
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0026】
実施形態に係る電源装置は、ハイブリッド車や電気自動車などの電動車両に搭載されて走行用モータに電力を供給する電源、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの発電電力を蓄電する電源、あるいは深夜電力を蓄電する電源など、種々の用途に使用され、とくに大電力、大電流の用途に好適な電源として使用される。以下の例では、電動車両の駆動用の電源装置に適用した実施形態について、説明する。
[実施形態1]
【0027】
本発明の実施形態1に係る電源装置100を、図1図2にそれぞれ示す。これらの図において、図1は実施形態1に係る電源装置100の要部拡大図付き分解斜視図、図2図1に示す電源装置100の分解斜視図を、それぞれ示している。
【0028】
これらの図に示す電源装置100は、複数の電池セル1を積層した電池積層体10と、この電池積層体10の両側端面を覆う一対のエンドプレート20と、エンドプレート20同士を締結する複数の締結部材15と、電池積層体10の上面に設けられたカバー集合体40を備える。
【0029】
締結部材15は、複数の電池セル1の積層方向に沿って延長された板状に形成される。この締結部材15は、電池積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されて、エンドプレート20同士を締結する。
(電池積層体10)
【0030】
電池積層体10は、図2に示すように、正負の電極端子2を備える複数の電池セル1と、これら複数の電池セル1の電極端子2に接続されて、複数の電池セル1を並列かつ直列に接続するバスバー50を備える。これらのバスバー50を介して複数の電池セル1を並列や直列に接続している。電池セル1は、充放電可能な二次電池である。電源装置100は、複数の電池セル1が並列に接続されて並列電池グループを構成すると共に、複数の並列電池グループが直列に接続されて、多数の電池セル1が並列かつ直列に接続される。図2に示す電源装置100は、複数の電池セル1を積層して電池積層体10を形成している。また電池積層体10の両端面には一対のエンドプレート20が配置される。このエンドプレート20同士に、締結部材15の端部を固定して、積層状態の電池セル1を押圧した状態に固定する。
(電池セル1)
【0031】
電池セル1は、図2に示すように、厚さに比べて幅が広い、言い換えると幅よりも薄い角形電池で、厚さ方向に積層されて電池積層体10としている。電池セル1は、例えば、リチウムイオン二次電池とすることができる。また、電池セルは、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等、充電できる全ての二次電池とすることもできる。電池セル1は、密閉構造の外装缶1aに正負の電極板を電解液と共に収容している。外装缶1aは、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属板を角形にプレス成形され、開口部を封口板1bで気密に密閉している。封口板1bは、角型の外装缶1aと同じアルミニウムやアルミニウム合金で、両端部に正負の電極端子2を固定している。さらに、封口板1bは、正負の電極端子2の間に、電池セル1のそれぞれ内部の圧力変化に応じて開弁する安全弁であるガス排出弁1cを設けている。
【0032】
複数の電池セル1は、各電池セル1の厚み方向が積層方向となるように積層されて電池積層体10を構成している。この際、積層数を通常よりも多めにすることで、電池積層体10の高出力化を図ることができる。斯かる場合、電池積層体10は積層方向に延長された長尺のものとなる。電池セル1は、正負の電極端子2を設けている端子面1Xを同一平面に配置して、複数の電池セル1を積層して電池積層体10としている。そして、電池積層体10の上面を、複数の電池セル1のガス排出弁1cを設けた面としている。
(電極端子2)
【0033】
電池セル1は、図2等に示すように天面である封口板1bを端子面1Xとして、この端子面1Xの両端部に正負の電極端子2を固定している。電極端子2は、突出部を円柱状としている。ただ、突出部は、必ずしも円柱状とする必要はなく、多角柱状又は楕円柱状とすることもできる。
【0034】
電池セル1の封口板1bに固定される正負の電極端子2の位置は、正極と負極が左右対称となる位置としている。これにより、図2に示すように、電池セル1を左右反転させて積層し、隣接して接近する正極と負極の電極端子2をバスバー50で接続することで、隣接する電池セル1同士を直列に接続できるようにしている。なお、本発明は、電池積層体を構成する電池セルの個数とその接続状態を特定しない。後述する他の実施形態も含めて、電池積層体を構成する電池セルの個数、及びその接続状態を種々に変更することもできる。
【0035】
複数の電池セル1は、各電池セル1の厚さ方向が積層方向となるように積層されて、電池積層体10を構成している。電池積層体10は、正負の電極端子2を設けている端子面1X、図2においては封口板1bが同一平面となるように、複数の電池セル1を積層している。
【0036】
電池積層体10は、隣接して積層される電池セル1同士の間に、絶縁スペーサ16を介在させてもよい。絶縁スペーサ16は、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状又はシート状に製作されている。絶縁スペーサ16は、電池セル1の対向面とほぼ等しい大きさのプレート状とする。この絶縁スペーサ16を互いに隣接する電池セル1の間に積層して、隣接する電池セル1同士を絶縁できる。なお、隣接する電池セル間に配置されるスペーサとしては、電池セルとスペーサの間に冷却気体の流路が形成される形状のスペーサを用いることもできる。また、電池セルの表面を絶縁材で被覆することもできる。例えばPET樹脂等のシュリンクフィルムで電池セルの電極端子部分を除く外装缶の表面を覆ってもよい。この場合は、絶縁スペーサを省略してもよい。また、複数の電池セルを多並列、多直列に接続する電源装置においては、互いに直列に接続される電池セル同士の間に絶縁スペーサを介在させて絶縁する一方、互いに並列に接続される電池セル同士においては、隣接する外装缶同士に電圧差が生じないので、これらの電池セルの間の絶縁スペーサを省略することもできる。
【0037】
さらに、図2に示す電源装置100は、電池積層体10の両端面にエンドプレート20を配置している。なおエンドプレート20と電池積層体10の間に端面スペーサ17を介在させて、これらを絶縁してもよい。端面スペーサ17も、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状又はシート状に製作できる。
【0038】
実施形態1に係る電源装置100は、複数の電池セル1が互いに積層される電池積層体10において、互いに隣接する複数の電池セル1の電極端子2同士をバスバー50で接続して、複数の電池セル1を並列かつ直列に接続する。
(エンドプレート20)
【0039】
エンドプレート20は、図2に示すように、電池積層体10の両端に配置されると共に、電池積層体10の両側面に沿って配置される左右一対の締結部材15を介して締結される。エンドプレート20は、電池積層体10の電池セル1の積層方向における両端であって、端面スペーサ17の外側に配置されて電池積層体10を両端から挟着している。
(締結部材15)
【0040】
締結部材15は、両端を電池積層体10の両端面に配置されたエンドプレート20に固定される。複数の締結部材15でもってエンドプレート20を固定し、もって電池積層体10を積層方向に締結している。各締結部材15は、図2等に示すように、電池積層体10の側面に沿う所定の幅と所定の厚さを有する金属製で、電池積層体10の両側面に対向して配置されている。この締結部材15には、鉄などの金属板、好ましくは、鋼板が使用できる。金属板からなる締結部材15は、プレス成形等により折曲加工されて所定の形状に形成される。
【0041】
締結部材15は、板状の締結主面15aの上下をコ字状に折曲して、折曲片15dを形成している。上下の折曲片15dは、電池積層体10の左右側面において、電池積層体10の上下面を隅部から覆う。この締結部材15は、締結主面15aに開口された複数の締結ねじ穴にそれぞれボルト15fを螺合し、エンドプレート20の外周面に固定している。なお、締結主面15aとエンドプレート20との固定は、必ずしもボルトを用いた螺合に限られず、ピンやリベット等としてもよい。
【0042】
多数の電池セル1を積層している電源装置100は、複数の電池セル1からなる電池積層体10の両端に配置されるエンドプレート20を締結部材15で連結することで、複数の電池セル1を拘束するように構成されている。複数の電池セル1を、高い剛性をもつエンドプレート20や締結部材15を介して拘束することで、充放電や劣化に伴う電池セル1の膨張、変形、相対移動、振動による誤動作などを抑制できる。
(絶縁シート30)
【0043】
また締結部材15と電池積層体10の間には、絶縁シート30が介在される。絶縁シート30は絶縁性を備える材質、例えば樹脂などで構成され、金属製の締結部材15と電池セル1との間を絶縁している。図2等に示す絶縁シート30は、電池積層体10の側面を覆う平板31と、この平板31の上下にそれぞれ設けられた折曲被覆部32とで構成される。折曲被覆部32は、締結部材15の折曲片15dを覆うように、平板31からコ字状に折曲した後、さらに折り返している。これにより折曲片15dは、上面から側面及び下面にかけて絶縁性の折曲被覆部で覆うことにより、電池セル1と締結部材15の意図しない導通を回避することができる。
【0044】
また折曲片15dは、折曲被覆部32を介して、電池積層体10の電池セル1の上面及び下面を押圧する。これにより、各電池セル1を上下方向から折曲片15dで押圧して高さ方向に保持し、振動や衝撃等が電池積層体10に印加されても、各電池セル1が上下方向に位置ずれしないように維持できる。
【0045】
なお、電池積層体や電池積層体の表面が絶縁されている場合、例えば電池セルが絶縁性のケースに収納されていたり、樹脂製の熱収縮性フィルムで覆われている場合、又は締結部材の表面に絶縁性の塗料やコーティングが施されている場合、あるいは締結部材が絶縁性の材質で構成されている場合等は、絶縁シートを不要とできる。また絶縁シート30も、電池積層体10の下面側で締結部材15の折曲片15dとの絶縁を考慮しなくてよい場合は、折曲被覆部32を上端側にのみ形成してもよい。例えば電池セルを熱収縮性フィルムで被覆している場合等が該当する。
(バスバーホルダ41)
【0046】
バスバー50は、バスバーホルダ41で保持される。バスバーホルダ41は、電池積層体10の上面に固定される。バスバーホルダ41を用いることで、複数のバスバー50を互いに絶縁し、かつ電池セル1の端子面1Xとバスバー50とを絶縁しながら、複数のバスバー50を電池積層体10の上面の定位置に配置できる。
(カバー集合体40)
【0047】
図2のカバー集合体40は、バスバーホルダ41とダクト板49で構成される。図2のカバー集合体40において、バスバーホルダ41とダクト板49を分離した分解斜視図を図3に、図3のバスバーホルダ41からさらにバスバー50を分離した状態を図4に、図4のバスバーホルダ41をサブホルダ42に分割した状態を図5に、それぞれ示す。また図6図2のカバー集合体40の平面図、図7図6においてダクト板49を除いたバスバーホルダ41を示す平面図、図8図7においてバスバー50を除いたバスバーホルダ41を示す平面図、図9図8のバスバーホルダ41をサブホルダ42に分割した平面図を、それぞれ示している。
(バスバー50)
【0048】
バスバー50は、図4図5の分解斜視図に示すように、バスバー本体51と、このバスバー本体51から延出され、電極端子2と接続されるバスバー枝部52とで構成される。バスバー本体51は、角柱状に延長された形状で、延長方向に沿って所定の間隔でバスバー枝部52を固定している。このバスバー本体51は、導電性に優れた金属製の棒体とする。好ましくは、バスバー枝部52を同じ材料、例えば銅製やアルミニウム製とする。角柱状として断面積を大きくすることで、導電率を向上できる。また正方形状とせず長方形状として高さを抑え、電源装置の大型化を回避している。
【0049】
バスバー枝部52は、金属板を裁断、加工して所定の形状に製造される。ここでは、角柱状のバスバー本体51の表面に沿うように、階段状に折曲している。これによってバスバー枝部52とバスバー本体51との接触面積を大きくして、接触抵抗を低減して高い導電性を維持できる。またバスバー枝部52をバスバー本体51の側面から突出させることで、電池セル1の電極端子2に対して当接させやすくなり、溶接作業の作業性を向上できる。
【0050】
バスバー枝部52を構成する金属板には、電気抵抗が小さく、軽量である金属、例えばアルミニウム板や銅板、あるいはこれらの合金が使用できる。ただ、バスバー枝部52の金属板は、電気抵抗が小さくて軽量である他の金属やこれらの合金も使用できる。
【0051】
なお、図4図5に示すバスバー50は、一例であり、必ずしもバスバー本体部51とバスバー枝52で構成されなくてもよい。典型的には、一枚の板材からなるバスバーなどが採用される。
(ガスダクト43)
【0052】
またカバー集合体40は、電池積層体10を構成する電池セル1のいずれかから、高温高圧のガスが排出された場合に、このガスを電源装置100の外部に排出するガス排出経路、すなわちガスダクト43を構成する。バスバーホルダ41は、図3の分解斜視図に示すように、延長方向に沿って中央にガスダクト43を形成し、左右にバスバー50を配置している。このような配置によって、電池積層体10の上面で、電極端子同士を接続するバスバー50を配置しながらガスの排出経路を確保できる。図6に示す例では、バスバーホルダ41は、中央に一対の壁部46を形成してガスダクト43を画成している。またガスダクト43の外側には、回路基板の出力線や信号線といったハーネス類を配置する通線部44を設けている。さらに通線部44の外側に、バスバー50を配置するバスバーガイド部45を形成している。このバスバーホルダ41は、絶縁性に優れた樹脂製とする。例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)製とする。
【0053】
壁部46は、壁部46同士で挟まれたバスバーホルダ41のダクト面48、及び上面を閉塞するダクト板49でもってガスダクト43を区画して、ガスが他の部位に流れ込むのを阻止して、安全に外部に排出するためのガス排出経路を画成している。またバスバーホルダ41のダクト面48には、複数のガス導入口48bが形成される。ガス導入口48bは、電池積層体10の各電池セル1のガス排出弁1cと対応する位置に形成される。
【0054】
なおバスバーホルダ41のダクト面48には、複数の邪魔板を設けてもよい。邪魔板は、ガスダクト43に排出されたガスの排出経路を長くして圧力を低下させ、温度を低下させて安全に排出する。
(ダクト板49)
【0055】
さらにバスバーホルダ41には、ダクト板49が固定される。図3の分解斜視図に示すように、左右の壁部46と、床面のダクト面48と、天面のダクト板49でもってガスダクト43が画成される。ダクト板49は、剛性を高めるため、板金製などの金属板とすることが好ましい。例えばSUSや鉄製とする。あるいはダクト板49をバスバーホルダ41と同じく、PBT製の絶縁性の樹脂製としてもよい。
(サブホルダ42)
【0056】
さらにバスバーホルダ41は、図5図7に示すように複数のサブホルダ42に分割されている。これにより、図8図9の平面図に示すように、電池セルが膨張して電池積層体10の全長が変化しても、これを吸収できる。
【0057】
図20に示す電源装置900のように、ダクト板949をバスバーホルダ941を分割したサブホルダ942の上面にボルト967でそのまま固定すると、バスバーホルダ941がダクト板949によって突っ張られ、サブホルダ942に分割して電池積層体910の伸縮を吸収するバスバーホルダ941の伸縮構造が機能しなくなってしまう。そこで、ダクト板をバスバーホルダに取り付けた状態でも、バスバーホルダの伸縮機能が損なわれないように、ダクト板とバスバーホルダの固定構造を工夫している。具体的には、図11の要部拡大分解斜視図に示すように、ダクト板49はボルト67でサブホルダ42に螺合される長穴49bを形成している。また各サブホルダ42は、長穴49bと対応する位置に、この長穴49bよりも長い支持面61を形成している。支持面61には連結部63としてネジ穴が開口されている。サブホルダ42は、ガスダクト43内にボス60を形成している。ボス60は天面をトラック形状とし、この天面を支持面61としている。
【0058】
そして分割された複数のサブホルダ42を跨ぐようにダクト板49を、支持面61に載置した状態で、長穴49bを通じて連結部であるネジ穴63にボルト67を螺合して、複数のサブホルダ42とダクト板49を連結している。このような構成により、バスバーホルダ41を複数に分割して電池セルの積層方向への伸縮を吸収可能としつつ、伸縮しないダクト板49に摺動自在に固定することで、連結状態を維持できる。
【0059】
ボス60は、天面の支持面61をトラック形状としている。この支持面61の中心に連結部63を形成している。また連結部63の周囲に、長穴49bに挿入される環状枠62を突出させることが好ましい。このような構成により、環状枠62を長穴49bに挿入して、長穴49bに沿って螺合部分を摺動させるガイドとして機能させることが可能となる。
【0060】
図10の模式断面図に示す例では、ボルト67を螺合するインサートナット64を、ボス60に埋設している。インサートナット64の上面を支持面61から突出させて、環状枠62としている。またボス60は図3図4図11等に示すように壁部46と一体的に設けることが好ましい。これにより、ボス60でもって壁部46の強度を高める効果も得られる。
【0061】
以上の例では、ダクト板49とサブホルダ42との結合を、長穴49bと連結部63であるネジ穴にボルト67を螺合する構成とした。ただ本発明は、ダクト板49とサブホルダ42との結合を、螺合に限定するものでなく、ダクト板をサブホルダに、多少の変位を許容する態様で結合する既知の構成を適宜採用できる。例えば、図12の分解斜視図に示すように、ボルトに代えて先端に矢尻を有するアンカー67Bを用いて、ダクト板49の長穴49b及びサブホルダ42Bの連結部63Bに刺入する。連結部63は、ネジ穴に代えて、アンカー67Bの矢尻を圧入できる開口としている。
【0062】
あるいは、かしめによる連結を用いてもよい。例えば図13Aの断面図に示すように、サブホルダ42Cの連結部63Cとして、樹脂製のボスを突出させておき、ダクト板49の長穴49bに下面側から挿入した後、ボスの先端面をヒータHT等で加熱、加圧して潰すことにより、図13Bに示すようにボスの先端を長穴49bよりも大きくして連結できる。
【0063】
あるいはまた、図14Aの平面図に示すようにブッシュナット67Dを用いてもよい。この場合、サブホルダ42Dの連結部63Dは、図14Bの断面図に示すようにピン状に形成する。そしてこのピンをダクト板49の長穴49bに下面から挿入した状態で、ピンの先端にブッシュナット67Dを係合し、ブッシュナット67Dとサブホルダ42Dでダクト板49を挟み込むように固定する。
【0064】
あるいはまた、図15の断面図に示すように、サブホルダ42Eの連結部63Eを爪状に形成してもよい。この場合も、爪状の連結部63Eを、ダクト板49の長穴49bの下面側から挿入して爪状を係止することで、爪状の連結部63Eでもってダクト板49を挟み込むように固定することができる。
【0065】
図3等の例では、分割されたサブホルダ42同士の接合界面は、階段状に形成している。これにより、接合界面でサブホルダ42同士を位置決めし易くなり、図6図7に示すようにバスバー50を配置するバスバーガイド部45同士をサブホルダ42間で直線状に連結できる。階段状に形成した接合界面は、図8に示すように一部のガス導入口48bを二分割するように形成される。
【0066】
またサブホルダ42同士の連結状態を維持するため、係止構造を設けてもよい。図8図9の例では、係止構造として、枠状65と、この枠状65に挿入されるピン66とで構成している。枠状65はトラック形状に形成して内部にスリットを設け、このスリット内にピン66を挿入して移動させることができる。スリットの内径は、ピン66の外径と一致させるか、マージンを加味してこれよりも若干大きく設計する。
【0067】
なお、サブホルダ42同士の移動量は僅かであるため、枠状65はサブホルダ42の全長に渡って設ける必要はなく、ピン66が移動する距離をカバーできる長さ分だけ設けてもよい。
(オーバーラップ部47)
【0068】
バスバーホルダ41をサブホルダ42に分割した接合界面において、万一いずれかの電池セルのガス排出弁が開弁してもサブホルダ42同士の接合界面からガスが漏れないように、接合界面をオーバーラップさせて隙間を防ぐことが好ましい。このためバスバーホルダ41は、サブホルダ42同士を対向させた対向面の一方から、他方の対向面に向かって延出されたオーバーラップ部47を形成している。オーバーラップ部47は、電池積層体が膨張してサブホルダ42同士が離間された場合に、サブホルダ42同士の隙間を閉塞する。
【0069】
図5の分解斜視図及び図11の要部拡大分解斜視図に示す例では、接合界面において、壁部46にオーバーラップ部47を形成している。オーバーラップ部47は、接合界面で当接する壁部46同士の一方で、壁部46の側面から延出されて、他方の壁部46の側面側に当接するように構成される。これによって、サブホルダ42同士を付き合わせた際にも、オーバーラップ部47はサブホルダ42同士の突き合わせを阻害することなく、壁部46の側面側に位置する。またサブホルダ42同士が離間された場合には、この隙間をオーバーラップ部47で塞ぐことが可能となる。
【0070】
オーバーラップ部47は、壁部46の内、ガスダクト43と面する側に設けることが好ましい。これによって、通線部44側に突出部分をなくし、ハーネス等の配置を阻害する事態を回避できる。ただオーバーラップ部を、壁部の内、ガスダクトの外側となる面側に設けてもよい。これによって、ガスの排出をオーバーラップ部の端面で阻害する事態を回避できる。
【0071】
またオーバーラップ部は、壁部のみならず、例えばガスダクトの底面側を構成するサブホルダのダクト面に設けてもよい。
[実施形態2]
【0072】
さらに、図8図9の例では接合界面を階段状としているが、本発明はサブホルダ同士の接合界面をこの形状に限定せず、他の形状としてもよい。例えば、図16に示す実施形態2に係る電源装置200のバスバーホルダ41Bでは、サブホルダ42B同士の接合界面を直線状としている。直線状の接合界面とすることで、サブホルダ42B同士が幅方向(図16において上下方向)に位置ずれする懸念があるが、上述した係止構造を設けることで、ガスダクト43B、通線部44B、バスバーガイド部45Bを直線状に維持したままサブホルダ42B同士の間隔を安定的に変化させることができる。
【0073】
また、以上の例ではバスバーホルダ41を2つのサブホルダ42に分割する例を説明したが、本発明はサブホルダの分割数を2個に限定せず、3個以上としてもよいことはいうまでもない。
【0074】
以上の電源装置100は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置100を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、電動車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置100を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置を構築した例として説明する。
(ハイブリッド車用電源装置)
【0075】
図17は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置100を搭載する例を示す。この図に示す電源装置100を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。なお、車両HVは、図17に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
(電気自動車用電源装置)
【0076】
また、図18は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置100を搭載する例を示す。この図に示す電源装置100を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
(蓄電装置用の電源装置)
【0077】
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。図19は、電源装置100の電池を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0078】
図19に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0079】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0080】
以上のような蓄電システムは、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置は、ハイブリッド車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源として好適に利用できる。例えばEV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置が挙げられる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0082】
100、200、900…電源装置
1…電池セル
1X…端子面
1a…外装缶
1b…封口板
1c…ガス排出弁
2…電極端子
10…電池積層体
15…締結部材;15a…締結主面;15d…折曲片
15f…ボルト
16…絶縁スペーサ
17…端面スペーサ
20…エンドプレート
30…絶縁シート;31…平板;32…折曲被覆部
40…カバー集合体
41、41B…バスバーホルダ
42、42B、42C、42D、42E…サブホルダ
43、43B…ガスダクト
44、44B…通線部
45、45B…バスバーガイド部
46…壁部
47…オーバーラップ部
48…ダクト面;48b…ガス導入口
49…ダクト板;49b…長穴
50…バスバー
51…バスバー本体
52…バスバー枝部
60…ボス
61…支持面
62…環状枠
63、63B、63C、63D、63E…連結部
64…インサートナット
65…枠状
66…ピン
67…ボルト;67B…アンカー;67D…ブッシュナット
81…建物
82…太陽電池
83…充電回路
84…充電スイッチ
85…DC/ACインバータ
86…負荷
87…放電スイッチ
88…電源コントローラ
91…車両本体
93…モータ
94…発電機
95…DC/ACインバータ
96…エンジン
97…車輪
98…充電プラグ
901…電池セル;901c…ガス排出弁
902…電極端子
903…エンドプレート
904…バインドバー
910…電池積層体
941…バスバーホルダ
942…サブホルダ
949…ダクト板
967…ボルト
HT…ヒータ
HV、EV…車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21