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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】自動車の自律走行開始のための方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 60/00 20200101AFI20241209BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
B60W60/00
B60W30/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022513977
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2020073484
(87)【国際公開番号】W WO2021047890
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】1909974
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサレス バウティスタ, ダビド
(72)【発明者】
【氏名】マハウト, イマン
(72)【発明者】
【氏名】ミラネス, ビンセント
(72)【発明者】
【氏名】ナヴァス マトス, フランシスコ マーティン
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184139(JP,A)
【文献】特開2018-122738(JP,A)
【文献】特開2018-036859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0184982(US,A1)
【文献】特開2011-042356(JP,A)
【文献】特開2008-302711(JP,A)
【文献】特開2007-331481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 60/00
B60W 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両(300)の自律走行のための方法であって、前記自動車両(300)が、
前記自動車両の速度がゼロもしくは実質的にゼロの状態または閾値、特に1km/hに等しい閾値以下の状態で、前記自動車両の操舵輪の向きを修正するステップを含む自律操縦走行モードと、
基準軌跡に沿って巡航するための自律巡航走行モードと、
を含み、前記方法が、
前記自律巡航走行モードでの走行が可能な操縦軌跡か否かを検証するステップ(120)と、
記検証するステップの結果に応じて、前記自動車両が前記自律操縦走行モードから前記自律巡航走行モードに自動的に切り替わる(150)ように構成された状態(130)に移行するか、または前記自動車両を手動で前記自律巡航走行モードに切り替えることができる(160)手動モード(140)に移行するステップとを含む、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記自律操縦走行モード及び前記自律巡航走行モードが排他的であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記自律操縦走行モードにおいて、前記自動車両が、10km/h未満あるいは5km/h未満の速度で走行もしくは移動すること、
を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記検証するステップは、
前記準軌跡を規定するステップと、
記自動車両の初期位置から前記基準軌跡を満たす操縦軌跡を規定するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
記検証するステップは、前記自動車両の将来予測位置が走行エリア内に位置するように実行されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
記自動車両が前記自律操縦走行モードから前記自律巡航走行モードに自動的に切り替わる(150)ことは、
前記自動車両の現在の位置、特に、現在の場所および/または現在の方位を決定または測定するステップと、
前記自動車両の前記現在の位置と基準軌跡を構成する位置とを比較するステップと、
前記自動車両の前記現在の位置が前記基準軌跡を構成する前記位置のうちの1つに対応する場合または対応すると考えられる場合に、前記自律操縦走行モードから前記自律巡航走行モードへと自動的に切り替えるステップと、
を含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
自動車両(300)の自律走行のためのシステム(200)であって、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実行するハードウェアおよび/またはソフトウェア要素(100、210、220)を備えた、システム(200)。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実行するハードウェアおよび/またはソフトウェア要素(200、100、210、220)を備えた自動車両(300)。
【請求項9】
電子制御ユニット(100)により読み取り可能な担体に記録され、前記電子制御ユニット(100)上での動作時に、請求項1から6のいずれか一項に記載の自律走行方法のステップを実行するプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
電子制御ユニット(100)により読み取り可能で、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実行するプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムが記録されたデータ記録担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の自律走行または自律制御のための方法に関する。また、本発明は、自動車の自律走行または自律制御のためのシステムに関する。また、本発明は、このような自律走行システム、または、このような自律走行方法を実装したハードウェアおよび/もしくはソフトウェア手段を備えた自動車に関する。本発明はさらに、担体に記録され、電子制御ユニットによる読み出しによって、自律走行方法のステップを実行可能なプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。また、本発明は、電子制御ユニットによる読み出しが可能であり、プログラム製品が記録されたデータ記録担体に関する。最後に、本発明は、コンピュータプログラム製品を含むデータ担体からの信号に関する。
【0002】
特に、本発明は、車両の走行速度が低い状況において、車両を取り巻く状況に関係なく自律モードで旅程を開始する自律走行のための精密な方法に関する。この解決手段は、発進時またはカーブにおける車両の整列不足の問題を解決する。この解決手段は、車両の自律性を大幅に向上させる。
【背景技術】
【0003】
自律走行自動車は、到着地点または走行終了地点の指定を除いて、車両ユーザが何もしなくても、移動軌跡をそれ自体で管理することができる。このため、自律走行車は一般的に、自律走行システムにより管理された誘導可能な自律走行モードを備える。
【0004】
自律走行モードは、軌跡に沿った車両の移動を可能にするさまざまなアクチュエータの制御を管理する。これらのアクチュエータは主に、自動車を駆動するパワーユニットと、自動車の操舵輪を適切に方向付け得るステアリングアクチュエータである。
【0005】
自律走行車は一般的に、自律巡航走行システムにより管理され、巡航速度(たとえば、30km/hあるいは50km/hを超える速度)で誘導可能な自律巡航走行モードを備える。このモードは、街中の幹線道路および郊外のハイウェイもしくはフリーウェイで使用される。自律巡航走行モードは、自律走行車が巡航速度に達した後にのみ起動される。したがって、車両の発進もしくは発車の場合、車両の路肩離れ(たとえば、縁石付近からの発進)の場合、または車両の路肩寄せ(たとえば、縁石付近での駐車)の場合、より一般的には、低速すなわち10km/h未満あるいは5km/h未満の速度での操縦の場合、車両を運転するのは運転者または遠隔操作者である。
【0006】
オンデマンドモビリティサービスは、個人をドアからドアへ移動させ、好きな場所に送迎する快適性を乗員に提供するように設計されている。ただし、これらのサービスでは、ユーザもしくは第三者の負傷または自律走行車、その他周囲の車両、もしくは周囲のインフラの物的損傷を回避しつつ、車両を縁石に十分近づけるため、特に路肩寄せまたは路肩離れ操縦時に、極めて精密な縦方向および横方向のコマンドを伴う自動操縦を管理可能な自律走行車を必要とする。これらの操縦は、極低速での縦方向および横方向の精密な測位データを要するため複雑である。これらの要件は、現在利用可能な自律走行システムでは満たされない。自律走行システムは実質的に、都市部以外の車道専用であり、車両が走行状態となってから起動可能である。一方、車両の静止または低速走行時に自律走行システムが起動されると、軌跡の管理が不十分となって、車両の移動に伴う負傷または損傷のリスクが大きくなる。
【0007】
自律的な低速操縦を良好に管理するには、精密な低速制御が最も重要である。具体的に、これらの操縦においては、小さな操舵半径が求められる一方、車両の動的なデータおよび現在の状態は無視される。
【0008】
速度ゼロまたは実質的にゼロで走行する車両の自律モードを起動した直後、不測の事態によって車両に支障が生じ、遠隔操作者に車両を制御させて問題を解決しなければならない場合がある。これらの問題は、車両の状態の(過度に)近似的な推定によって、たとえば方位、車輪の方向、または横方向の位置誤差が無視され得ることに起因する。このため、実現不可能と考えられる(たとえば、車両の能力を超えた)軌跡が計算される。
【0009】
言い換えると、ゼロまたは実質的にゼロの速度から巡航速度まで、車両は自律的ではない。その結果、特に車両が乗降口または縁石に到着して(路肩寄せして)乗員を降ろす場合および/または乗せる場合、車両が乗降口または縁石から発進する(路肩離れする)場合、あるいは複雑な操作を行う場合には、車両内の運転者あるいは遠隔操作者を呼び出せるようにする必要がある。
【0010】
文献US9645577号は、制約のある環境下で車両を自律的に誘導するように設計された誘導システムを開示している。このシステムは、最適と考えられるものを車両が選定できるように、異なる移動戦略としてさまざまな時空間軌跡解を生成する。戦略が決まると、それに従うために必要なコマンドが車両のアクチュエータに送られる。この解決手段の不都合な点として、低速では、特定のアクチュエータの現在の状態により、実現不可能な軌跡が選定される可能性もある。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、上記不都合を克服して、従来技術により知られる走行方法を改善する自律走行方法を提供することである。特に、本発明は、車両の低速走行時に実行される複雑な操縦を自律的に管理可能な自律走行車の生産を可能にする。
【0012】
この目的を達成するため、本発明は、自動車の自律操縦走行のための方法、特に、低速またはゼロ速度での自動車の自律操縦走行のための方法であって、車両の速度がゼロもしくは実質的にゼロの状態または閾値、特に1km/hに等しい閾値以下の状態で、車両の操舵輪の向きを修正するステップを含む、方法に関する。
【0013】
車両の操舵輪の向きを修正するステップは、
自律走行モードを起動するステップの直後、ならびに/または
自律モードにおいて、車両を操縦軌跡に沿って走行もしくは移動させるステップの前、
に実行可能である。
【0014】
また、本発明は、自動車の自律走行のための方法であって、
上記規定のような方法の実行を含む自律操縦走行モードと、
巡航軌跡に沿って巡航するための自律巡航走行モードと、
を含み、2つの自律走行モード(自律操縦走行モード及び自律巡航走行モード)が排他的である、方法に関する。
【0015】
自律操縦走行モードおよび自律巡航走行モードの演算論理が異なり、かつ/または、自律操縦走行モードにおいて、車両が10km/hあるいは5km/h未満の速度で走行もしくは移動し得る。
【0016】
この方法は、
基準巡航軌跡を規定するステップと、
特に車両の初期位置から基準巡航軌跡を満たす操縦軌跡を規定するステップ、特に、反復的におよび/またはシミュレーションにより規定するステップと、
を含んでいてもよい。
【0017】
この方法は、
車両の物理的操縦能力、ならびに/または
車両内および/もしくは車両付近の資産および/もしくは個人の安全、
に対して操縦軌跡を検証するステップを含んでいてもよい。
【0018】
この方法は、
車両の現在の位置、特に、現在の場所および/または現在の方位を決定または測定するステップと、
車両の現在の位置と基準巡航軌跡を構成する位置とを比較するステップと、
車両の現在の位置が基準巡航軌跡を構成する位置のうちの1つに対応する場合または対応すると考えられる場合に、自律操縦走行モードから自律巡航走行モードへと自動的に切り替えるステップと、
を含んでいてもよい。
【0019】
本発明はさらに、自動車の自律走行のためのシステムであって、上記規定のような方法を実行するハードウェアおよび/もしくはソフトウェア要素、特に、上記規定のような方法を実行するように設計されたハードウェア要素および/もしくはソフトウェア要素を備えた、システム、ならびに/または、本明細書において上述したような方法を実行する手段を備えたシステムに関する。
【0020】
本発明はさらに、上記規定のような方法を実行するハードウェアおよび/もしくはソフトウェア要素、特に、上記規定のような方法を実行するように設計されたハードウェア要素および/もしくはソフトウェア要素を備えた自動車、ならびに/または、上記規定のような方法を実行する手段を備えた車両に関する。
【0021】
本発明はさらに、電子制御ユニットにより読み取り可能な担体に記録され、電子制御ユニット上での動作時に、上記規定のような自律走行方法のステップを実行するプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品、あるいは、通信ネットワークからのダウンロードならびに/またはコンピュータによる読み取りおよび/もしくはコンピュータによる実行が可能なデータ担体への記録が可能で、コンピュータにより実行された場合に、上記規定のような方法をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【0022】
本発明はさらに、電子制御ユニットにより読み取り可能で、上記規定のような方法を実行するプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムが記録されたデータ記録担体、または、コンピュータにより読み取り可能で、コンピュータにより実行された場合に、上記規定のような方法をコンピュータに実行させる命令を含む記録担体に関する。
【0023】
本発明はさらに、上記規定のようなコンピュータプログラム製品を含むデータ担体からの信号に関する。
【0024】
本発明の上記目的、特徴、および利点については、限定を暗示することなく添付の図面と関連して与えられる特定の一実施形態に関する以下の説明において詳細に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】自律走行車の一実施形態の模式図である。
図2】自律走行車の自律走行のためのシステムの一実施形態の部分模式図である。
図3】自律走行車の自律走行のためのシステムの実施形態の別の部分模式図である。
図4】環状交差点の状況における自律走行システムの実施形態を備えた自律走行車の軌跡および同じ状況における自律走行システムの実施形態を備えていない自律走行車の軌跡を上方から示した図である。
図5a】環状交差点の状況における自律走行システムの実施形態を備えた自律走行車のハンドルの角度および同じ状況における自律走行システムの実施形態を備えていない自律走行車のハンドルの角度を示したグラフである。
図5b】環状交差点の状況における自律走行システムの実施形態を備えた自律走行車の速度および同じ状況における自律走行システムの実施形態を備えていない自律走行車の速度を示したグラフである。
図5c】環状交差点の状況における自律走行システムの実施形態を備えた自律走行車の横方向誤差および同じ状況における自律走行システムの実施形態を備えていない自律走行車の横方向誤差を示したグラフである。
図5d】環状交差点の状況における自律走行システムの実施形態を備えた自律走行車の方位誤差および同じ状況における自律走行システムの実施形態を備えていない自律走行車の方位誤差を示したグラフである。
図6】カーブの状況における自律走行システムの実施形態を備えた自律走行車の軌跡および同じ状況における自律走行システムの実施形態を備えていない自律走行車の軌跡を上方から示した図である。
図7a】カーブの状況における自律走行システムの実施形態を備えた自律走行車のハンドルの角度および同じ状況における自律走行システムの実施形態を備えていない自律走行車のハンドルの角度を示したグラフである。
図7b】カーブの状況における自律走行システムの実施形態を備えた自律走行車の速度および同じ状況における自律走行システムの実施形態を備えていない自律走行車の速度を示したグラフである。
図7c】カーブの状況における自律走行システムの実施形態を備えた自律走行車の横方向誤差および同じ状況における自律走行システムの実施形態を備えていない自律走行車の横方向誤差を示したグラフである。
図7d】カーブの状況における自律走行システムの実施形態を備えた自律走行車の方位誤差および同じ状況における自律走行システムの実施形態を備えていない自律走行車の方位誤差を示したグラフである。
図8】自律走行システムの実施形態のマンマシンインターフェースの一例を示した図である。
図9】自律走行方法を実行する一態様のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、車両300、特に自動車の一実施形態を模式的に示している。車両300は、たとえば自家用車、特定用途車、トラック、またはバスであってもよい。
【0027】
車両300は、自律走行システム200を備える。自律走行システムは、自律操縦走行モードを管理することができる。この自律操縦走行モードは、低速、特に路肩寄せ操縦または路肩離れ操縦等の複雑な操縦において、自動車の自律移動を管理することができる。また、自律走行システムは、第2の自律走行モードである自律巡航走行モードも管理できるのが好都合である。この自律巡航走行モードは、高速、特にハイウェイもしくはフリーウェイ上の郊外走行または都市環境における基幹交通路において、自動車の自律移動を管理することができる。
【0028】
自律走行システム200は、
コンピュータ100と、
一組のアクチュエータ220と、
車両の状態および周囲に関する情報を供給する一組の要素10、11、12、13、14、15と、
を備える。
【0029】
また、自律走行システム200は、マンマシンインターフェース210も備え得るのが好都合である。たとえば、マンマシンインターフェースは、自律的な操縦の実行可能性および/または車両のアクチュエータのコマンドを補正して軌跡を調整する方法をユーザ、乗員、または遠隔操作者に通知することができる。
【0030】
一組のアクチュエータは特に、ステアリングアクチュエータ221すなわち車両300の操舵輪の向きに関するアクチュエータと、車両300に動力を与える駆動ユニット222と、を含む。車両駆動ユニットは、燃焼機関型であってもよいし、ハイブリッド駆動ユニット型であってもよいし、電気モータ型であってもよい。
【0031】
車両の状態および周囲に関する情報を供給する一組の要素220は、
車線センサ10と、
障害物センサ11と、
操舵輪の操舵または向きに関するセンサ12と、
車両速度センサ13と、
車両位置センサ14と、
基準軌跡を供給するモジュール15と、
のうちの1つまたは複数を含んでいてもよい。
【0032】
センサのうちの1つまたは複数は、同等の情報を提供する要素により置き換え可能である(たとえば、推定器により置き換え可能である)。
【0033】
位置センサ14または位置推定器は、GPS座標等、車両の場所に関する情報と、たとえば車両の縦軸の向き等、車両の向きまたは車両の方位の情報と、を提供するため都合が良い。
【0034】
したがって、コンピュータ100は、
車両に搭載されたセンサからの情報(現在の速度ならびに現在のハンドル角度もしくは現在の操舵輪の向きの角度)、
車線の境界を定めるラインを検出可能なカメラもしくは他のデバイスからの情報、
任意の近距離障害物を検出するカメラ、レーダ、超音波デバイス、ライダーデバイス、もしくはこれらの組み合わせを含む任意の知覚システムからの情報、ならびに/または
車両の現在位置および方位ならびに車両がたどる一連の地点等の所与の基準軌跡を供給可能な車両測位システムからの情報、
を主要な入力として使用する。
【0035】
このすべての情報から、
利用可能な走行エリア(このエリアは、車両が操縦を自律的に開始する場合に超えない境界を表す。車両がこのエリアの外側にある場合は、衝突が発生した可能性を意味する。この情報は、車線センサもしくは検出器10ならびに障害物センサもしくは検出器11からの情報を結合することにより供給されるようになっていてもよい。この情報は、発車または発進検証モジュール1(以下参照)において後で使用することにより、操縦を許可または停止可能である)と、
車両の現在の状態(この現在の状態には、たとえばハンドルの現在の角度を測定することにより、操舵輪の現在の向きを含む。車両の操縦性を高めるには、車両の現在の方位のみならず、操舵輪の向きも重要な役割を果たす)と、
基準軌跡(この基準軌跡は、たとえば自律走行経路予測モジュールにより供給され、車両が未知の環境のためアシストモードにある場合は、遠隔操作者により供給される)と、
を計算可能である。
【0036】
コンピュータ100は、
自律操縦モードにおける操縦の実現可能性の決定ならびに/または車両が十分な安全条件で自律的に発進もしくは発車可能であるかの判定を行い得る発車または発進検証モジュール1と、
車両のアクチュエータを制御するコマンド、特に、車両駆動ユニットを制御するコマンドおよび車両の操舵輪を方向付けるアクチュエータを制御するコマンドのシミュレーションを行い得るコマンドシミュレーションモジュール2と、
特に自律操縦モードで操縦を実行しつつ、アクチュエータ制御コマンドを補正し得る軌跡追従モジュール3と、
を備える。
【0037】
図2に示すように、コマンドシミュレーションモジュール2の一実施形態は、
車両モデリングモジュール4と、
コマンドモデリングモジュール5と、
操舵モデリングモジュール6と、
を含む。
【0038】
図3に示すように、軌跡追従モジュール3の一実施形態は、
コマンド調節器30と、
初期操舵コマンド補正モジュール37と、
位置補正モジュール38と、
自律巡航走行モードモジュール39と、
を含む。
【0039】
軌跡追従モジュール3、より具体的に、コマンド調節器30は、
発車または発進検証情報31と、
操舵コマンドモデル情報32と、
車両操舵輪現在角度向き情報33と、
操舵コマンドモデル誤差情報34と、
車両横方向位置誤差情報35と、
車両方位または向き誤差情報36と、
に従った信号および/または情報を入力で受信する。
【0040】
自動車、特に自律走行システムおよび/またはコンピュータは、本発明の主題を構成する方法を実行可能または実行するように構成されたハードウェアおよび/またはソフトウェア手段を備える。
【0041】
ハードウェアおよび/またはソフトウェア手段は、ソフトウェアモジュールを備えていてもよい。
【0042】
以下、図9を参照して、自律走行方法の1つの実行モードを説明する。また、この実行モードは、車両の運転方法または自律走行システムの実行モードと見なすこともできる。ここでは、自律走行システムの運転方法の実行モードとして、この実行モードを詳しく説明する。
【0043】
車両は、1人または複数人の乗員が当該車両を出迎え、当該車両によって希望する目的地まで運ばれるために乗り込んだ後、最初は静止しているものと想定される。また、車両は、障害物が存在する環境にあるため、発進もしくは発車または路肩離れができるように複雑な操作を要するものと想定される。
【0044】
また、車両または自律走行システムは、基準軌跡を有するか、または基準軌跡を計算済みであるものと想定される。基準軌跡は、車線のラインに従って、または実質的に従って、車両が出発地点から到着地点まで移動できるようにする軌跡である。このため、車両は、基準軌跡に従う場合、車線の中央に位置するか、または実質的に中央に位置する。このような軌跡は、車両が縁石付近、中庭、または駐車場に駐車されている車両状態と不適合である。すなわち、このような状況において、車両の位置(場所および方位)は、基準軌跡により規定される位置のいずれにも対応しない。
【0045】
第1の段階110において、自律走行システムは、自律操縦走行モードで動作して、車両の状態、車両アクチュエータコマンド、および操縦軌跡をシミュレーションする。
【0046】
操縦軌跡は、車両がその初期状態(たとえば、縁石付近、中庭、または駐車場に駐車されている状態)から基準軌跡を満たし得る車両軌跡である。
【0047】
図1および図2に示すように、コマンドシミュレーションモジュール2には、さまざまな情報が供給される。これにより、車両の現在の状態に対応する車両の仮想モデルを生成可能である。車両モデルは、実車と同じ位置で生成されるが、基準軌跡に従うためのアクチュエータコマンド、特に、操舵輪を方向付けるアクチュエータのコマンドの計算を可能にする最低速度が割り当てられている。この車両モデルにおいては、アクチュエータを制御するために決定されたコマンドが操縦の正しい開始を可能にすること、または、アクチュエータコマンドが車両の物理的限界(たとえば、最大の右または左ロックを示すハンドル角度)に達したことを軌跡追従モジュール3が示す瞬間まで、操舵輪の向き(ひいては、ハンドルの位置)が絶えず補正される。
【0048】
この第1の段階110の実行モードのステップについては、以下により詳しく説明する。
【0049】
第1のステップにおいて、アクチュエータコマンドシミュレーションモジュール2、特に、車両モデリングモジュール4は、
操舵輪の向きに関する現在の情報(センサ12)(この情報は、自律走行システムが操舵輪の現在の向きを補正しない場合の車両軌跡のシミュレーションを可能にする)、
車両速度情報(センサ13)(この情報は、車両が完全または実質的に停止となっていることを確認する車載センサに由来していてもよい。たとえば、車両が巡航速度で走行している場合は、自律操縦走行モードが解除される。この場合は、基準軌跡に関する誤差を管理可能な自律巡航走行モードが起動されるようになっていてもよい)、
ローカルレベル(たとえば、カメラを用いて)またはグローバルレベル(たとえば、GPSに基づいて)で供給可能な車両測位情報(センサ13)(これは、車両の現在の位置およびその方位の把握を可能にする。これらの情報は当然のことながら、車両の操舵輪の向きと関連付けられる)、
前述の基準軌跡(この基準軌跡を供給するモジュール15に由来する)(このモジュールは、この基準軌跡を使用する自律巡航走行モードの実行を可能にするシステムの部分を構成していてもよい。あるいは、この基準軌跡は、車両アシスト中の場合に、遠隔操作者により送信されるようになっていてもよい)、
といった情報の全部または一部を入力として受信する。
【0050】
第2のステップにおいては、基準軌跡の使用により、車両モデリングモジュール4を用いて、車両の位置が仮想的に移動しないようにしつつ最低速度を車両に与えることにより、車両を仮想的にモデリングする。これは、モデル化された仮想車両が依然として同じ仮想位置にある(たとえば、経度、緯度、および方位の値が同一である)ことを意味する。
【0051】
第3のステップにおいて、コマンドモデリングモジュール5は、操舵輪の現在の向きと基準軌跡に従うために必要な向きとの間に存在する操舵輪の向きの誤差を補正する。その結果、コマンドモデリングモジュール5は、車両操舵輪の方向付けアクチュエータを制御するコマンドを生成する。
【0052】
第4のステップにおいては、第3のステップで生成された上記コマンドが操舵モデリングモジュール6に供給され、これに基づいて、仮想車両の位置を将来的に変化させることにより、車両の近傍で利用可能な走行エリアの境界に対する車両の位置(経度、緯度、および方位)の将来の値を確認することができる。そして、最後に生成されたコマンドにより、基準軌跡上の所望の地点への到達を可能にする操舵輪の仮想的な向きが得られるか、または、車輪の向きの角度に関して車両の物理的能力を超えないか、に関する確認がなされる。この確認がOKでない場合は、この方法が第3のステップに戻って、
第1のシナリオとして、最後に生成されたコマンドにより、基準軌跡上の所望の地点への到達を可能にする操舵輪の仮想的な向きが得られるか、または
第2のシナリオとして、生成されたコマンドにより、車両の車輪の角度向きに関して車両の物理的能力を超える、
まで、第3および第4のステップが反復的に繰り返される。
【0053】
したがって、この方法は、車両の物理的操縦能力に対して操縦軌跡を検証するステップを含む。
【0054】
第1のシナリオにおいて、この方法は、第2の段階120に進む。車両の車輪を方向付けるアクチュエータのコマンドの最後の値が保持される。
【0055】
第2のシナリオにおいて、自律走行システムは、操縦の実行を可能にするアクチュエータコマンドを発見できていない。その結果、自律走行システムは、車両のユーザまたは遠隔操作者にこの事実を通知する。この情報は、たとえばマンマシンインターフェース210を介して伝達される。
【0056】
したがって、この第1の段階において、この方法は、
基準巡航軌跡を規定または受信するステップと、
特に車両の初期位置から基準巡航軌跡を満たす操縦軌跡を規定するステップ、特に、反復的におよび/またはシミュレーションにより規定するステップと、
を含む。
【0057】
第2の段階120において、自律走行システムは、自律モードで複雑な操縦を実現可能であるか、または、車両内および車両近傍の外部環境における個人および資産に対する十分な安全レベルで操縦を実現可能であるか、をテストする。可能な場合、自律走行システムは、段階130を実行する。不可能な場合、自律走行システムは、段階140を実行する。このように、第2の段階120において、自律走行システムは、車両および(コマンドシミュレーションモジュール2によって)先に決定されたアクチュエータコマンドを評価することにより、車両が進む仮想軌跡を生成する。仮想軌跡は、安全な発進となるように(たとえば、車両の将来予測位置が走行エリアの内側となるように)、発車または発進検証モジュール1によって確認される。このため、操縦の最中における仮想車両の位置の将来の変化のシミュレーションに車両速度が用いられる。この速度は、パラメータ化可能であり、たとえば2m/sに固定される。
【0058】
自律走行システムは、(実現可能な操縦の有無が明確になるまで)特定の反復またはすべての反復をマンマシンインターフェースに表示および/または図示するよう命令し得るのが好都合である。自律走行システムは、当該自律走行システムの性能に関連する情報の表示(たとえば、最後に採用された仮想軌跡およびモジュール15により供給された基準軌跡の同時表示、または、車両の操舵輪の最後に計算された初期の向きおよび車両の操舵輪の現在の向きの同時表示)をマンマシンインターフェースに命令し得るのが好ましい。自律走行システムは、
安全な操縦または衝突のない操縦を自律的に実行するためのアクチュエータ制御が見つかったことを示す安全発進インジケータ、
自律経路発進警報インジケータ、および/または
手動/外部介入が必要であることをユーザおよび/または遠隔操作者に示すアシストインジケータ、
の表示をマンマシンインターフェースに命令し得るのが好ましい。
【0059】
したがって、この方法は、車両内および/または車両付近の資産および/または個人の安全に関して操縦軌跡を検証するステップを含む。
【0060】
段階130において、自律走行システムは、複雑な操縦を実行するように車両のアクチュエータを制御する実際のコマンドを生成して実行する。安全な発進の操縦が可能であるものと検証インジケータが示す場合、自律走行システムは、軌跡追従モジュール3を起動する。このモジュールは、コマンドシミュレーションモジュール2により決定され、決定された仮想軌跡に応じた操縦の実行を可能にする仮想コマンドを受信する。これにより、検証インジケータは、車両アクチュエータコマンドシミュレーションモジュール2の反復計算を停止して、最終シミュレーションによるアクチュエータコマンド値を採用する。次に、軌跡追従モジュール3によって、3ステップ手順が実行される。
最終シミュレーションによるアクチュエータコマンド(特に、操舵輪を方向付けるための最終シミュレーションによるアクチュエータコマンド)は、操縦の実行開始時にアクチュエータに適用される初期コマンドと考えられる。ただし、これらのコマンドは、車両が静止した状態すなわちゼロ速度の状態で適用される。ここで、自律走行システムは、車両がゼロ速度を維持しつつ有する必要がある初期操舵角度値または操舵輪の向きの初期値を規定する。このステップでは、操縦の実行開始に際して、操舵輪の仮想的な操舵コマンドと操舵輪の実際の操舵との間の差が最小となる。この差が所与の閾値を下回った場合には、自律走行システムが操縦を実行するとともに、車両がその旅程を自律的に開始可能となる。この段階が重要であるのは、車両が移動する前の不完全整列(たとえば、横方向の位置誤差、仮想軌跡に関して顕著な方位誤差、および/または操舵輪の向きの誤さを伴う車両)の補正が可能となって、操縦が正しい方向で開始可能となるためである。
不完全整列があっても車両がそれを細かく補正できるように、最低速度は固定される(たとえば、1km/hあるいは10km/h)。
車両がその初期位置を正しく補正し、自律巡航走行モードを起動可能な状態になったと考えられる瞬間を規定するため、角度誤差および/または横方向誤差の閾値が決定されて供給される。
【0061】
このような手順は、ユーザに十分受け入れられているため、驚きとはならない。
【0062】
この第3の段階130の実行モードのステップ(本明細書において前述)については、以下により詳しく説明する。
【0063】
第1のステップにおいて、軌跡追従モジュール3、特に、コマンド調節器30は、
発車または発進検証情報31(この情報は、安全な発進が可能であることを示す。また、自律的かつ安全に操縦を実行可能であることを示す)、
操舵コマンドモデル情報32(この情報は、第1の段階110の第3のステップの最後の反復において計算された、車両の操舵輪を方向付けるためのアクチュエータへの最後のコマンドを含む)、
車両操舵輪現在角度向き情報33、
操舵コマンドモデル誤差情報34(この情報は、車両の操舵輪の現在の向きと仮想車両の操舵輪の向きとの間の差を含む)、
車両横方向位置誤差情報35(この情報は、車両の重心位置から基準軌跡を分離する距離の値を含む)、
車両向きまたは方位誤差情報36(この情報は、車両の縦方向軸と基準軌跡の接線との間の角度の値を含む)、
といった情報の全部または一部を入力で受信する。
【0064】
これらの入力すべてにより、調節器30は、車両の状態に応じて、さまざまなコマンド動作を起動可能となる。
【0065】
これにより、第3の段階130の第1のステップにおいて、初期方向コマンド補正モジュール37は、操舵コマンドモデル誤差値34を最小化するタスクを有する。このため、第1の段階の終了時に決定された向きを実現するために車両の操舵輪の向きが補正されている限りは、車両にゼロまたは実質的にゼロの速度が課される。したがって、この方法は、車両の速度が、
ゼロ、
実質的にゼロ、または
閾値、特に、1km/hに等しい閾値以下、
である間に、車両の操舵輪の向きを修正するステップを含む。
【0066】
この車両の操舵輪の向きを修正するステップは、
自律走行モードの起動直後、および/または
自律モードにおいて、車両が操縦軌跡に沿って走行もしくは移動する前、
に実行される。
【0067】
誤差34の値が所定の閾値を下回ったら、調節器30は、モジュール37を解除するのが好都合である。
【0068】
次に、第3の段階130の第2のステップにおいて、調節器30は、位置補正モジュール38を起動する。このモジュール38は、所与の速度(たとえば、2m/sおよび/またはたとえば、第1の段階110において使用した速度に同一)を固定する。その結果、車両は、位置誤差を補正するように、特に、満たすべき基準軌跡の地点に対して存在する方位誤差および横方向位置誤差を補正するように、その駆動ユニットによって実際に移動する。したがって、操縦は、自律モードにて実行される。自律操縦走行モードにおいて、車両は、10km/hあるいは5km/hを下回る速度で駆動または移動するのが好ましい。車両位置誤差値は、常に測定および/または推定された後、所定の閾値(通常、横方向位置誤差の場合は30cm、方位誤差の場合は0.1ラジアン)それぞれと比較されるのが好ましい。位置誤差値がすべて、それぞれの所定の閾値を下回った場合、調節器30は、モジュール38を解除する。これで操縦は完了となる。
【0069】
次に、第3の段階130の第3のステップにおいて、調節器30は、自律巡航走行モードモジュール39を起動する。
【0070】
したがって、この方法は、
車両の現在の位置、特に、現在の場所(緯度、経度)および/または現在の方位を決定または測定するステップと、
車両の現在の位置と基準軌跡を構成する位置とを比較するステップと、
車両の現在の位置が基準軌跡を構成する位置のうちの1つに対応する場合または対応すると考えられる場合に、自律操縦走行モードから自律巡航走行モードへと自動的に切り替えるステップと、
を含む。
【0071】
このように、自律走行方法によれば、自律操縦走行モードから自律巡航走行モードへの自動的な遷移および/またはユーザ動作を伴わない遷移が可能となる。したがって、この方法は、
特に第3の段階130の第1のステップの実行を含む自律操縦走行モードと、
自律巡航走行モードと、
を含み、2つの自律走行モード(自律操縦走行モード及び自律巡航走行モード)が排他的である。
【0072】
自律操縦走行モードおよび自律巡航走行モードの演算ロジックが異なること、
自律操縦走行モードにおいて、車両が10km/hあるいは5km/hを下回る速度で駆動または移動すること、および/または
自律巡航走行モードにおいて、車両が正常に(妨害なく、特に、交通と関連した妨害なく)その車線の許可された制限速度と等しい速度または実質的に等しい速度で駆動または移動すること、
が好ましい。
【0073】
段階150において、自律走行システムは、自律巡航走行モードにより規定された軌跡上に車両が存在するかをテストし、存在する場合、自律走行システムは、自律操縦走行モードを抜け、この自律巡航走行モードへと自動的に切り替わる。
【0074】
段階140において、自律走行システムは、十分な基準で操縦の実行を可能にするアクチュエータコマンドを発見できていない。その結果、自律走行システムは、車両ユーザまたは操作者にこの事実を通知する。この情報は、たとえばマンマシンインターフェースを介して伝達される。その後、操縦を実現するため、車両のユーザまたは操作者、特に遠隔操作者によって、車両のアクチュエータの制御が実行される。
【0075】
段階160において、操縦が実行され、車両が移動し始めたら、自律巡航走行モードを起動可能である。この自律巡航走行モードは、ユーザまたは操作者の動作によって起動される。
【0076】
これにより、自律走行システムは、操縦の実行開始前に、車両の位置、アクチュエータの状態、および所望の軌跡間の不整合を認識して考慮可能となる。自律走行システムは、自律操縦モードに入っている場合および/または速度が低い場合に(必要に応じて)車両の応答を命令および修正することにより、車両の状態が軌跡と整合しない状態で発進した場合の危険な状況を検出および補正する。自律走行システムは、車両の状態を連続的に監視し、基準軌跡に対する比較によってその実現可能性を判断し、それに応じてアクチュエータ制御コマンドを修正することにより、軌跡の追従性を高めてリスクを低減する。
【0077】
上述の自律走行システムの実施形態は、コード化および本出願人所有の車両(ZOE(登録商標)ロボットタクシー)への組み込みを行い、テストを行ったところ、以下のような結果が得られた。
【0078】
このシステムは、車両の初期状態および向きが異なるトラックに関してテストを行った。その結果を、本発明を実施しない同じ車両で得られた結果に対して比較した。これらの結果は、車両の自律能力の大幅な改善を示している。
【0079】
図4は、使用車線(右側車線)上でのわずかな整列誤差および環状交差点進入付近でのハンドルの最大右ロックによって、基準軌跡に対する車両の初期状況が特徴付けられた第1の状況を示している。また、所望の軌跡TR1および道路の境界L1をそれぞれ示す。時間は、同じ表現に従って、ゼロ(出発地点)から25秒まで示している。曲線Bは、本発明を適用しない自律走行モードで得られた車両の軌跡を表し、曲線Aは、本明細書において上述した自律操縦走行システムを備えた自律走行モードで得られた車両の軌跡を表す。
【0080】
なお、曲線Bは、即座に車線から逸脱する。軌跡は、長い間にわたって車線から外れた状態であり、その後、所望の基準軌跡(環状交差点を回ってUターンする軌跡)に戻る。これに対して、曲線Aは、車線内を維持する。具体的には、本発明に係る解決手段によって、自動車が移動する前の何よりもまず、自動車の操舵輪が方向付けされる。これにより、車両は、同じ初期設定から、環状交差点に正しく進入可能となる。
【0081】
自律走行システムの優れた安定能力によって、車両は二度と不安定な状況に陥らないことに留意するのが重要である。横方向位置および方位の誤差が大きいのは、非最適状態の車両および関連するアクチュエータデータによって自律走行モードが初期化されていることに起因する。
【0082】
図5a、図5b、図5c、および図5dは、本明細書において上述した2つのテストにおける車両の性能を示している。
【0083】
図5aは、2つのテストの最中における初期値-430°からのハンドル角度の変化を示している。なお、車両が停止したままハンドルだけが動いている状態で、ハンドル角度A1が急速に不飽和値へと収束する(7秒前後)。なお、これに対して、本発明に係るシステムを備えていない場合(曲線B1)、車両は、明確なコマンドを実現するとともに基準軌跡に正確に従うため、ハンドルをさらに補正する必要がある。
【0084】
図5bは、2つのテストにおける速度の変化を示している。速度信号B2は、調節器がハンドル角度の修正を開始する前でも非ゼロであり、ナビゲーションシステムが与える速度に追従する。曲線A2では、本発明に係るシステムを備えるため、ハンドルが正しい角度に達してから発進となる。すなわち、本明細書において上述した方法に従い、まずは初期操舵コマンド補正モジュール37を起動した後、その他のモジュールを起動する条件を確認する。本例においては、自律巡航走行モードモジュール39を起動する条件が得られた瞬間から(たとえば、横方向誤差が0.3mを下回り、方位または向きの誤差が5°を下回る瞬間から)、ナビゲーション速度を直ちに超える(位置補正モジュール38は無視される)。
【0085】
図5cは、2つのテストにおける横方向誤差の変化を示している。本発明を実施した場合、環状交差点のような難しい状況でも、車両(曲線A3)は0.25m以下の横方向誤差を実現する一方、本発明を実施しなかった場合、車両(曲線B3)は車道に対して2.8mの横方向誤差を超える。方位誤差に関して同様の結果を図5dに示しており、本発明を用いた場合(曲線A4)は、車両が0.2ラジアン未満の方位誤差を維持する一方、本発明を用いない場合(曲線B4)は該当しない。
【0086】
第2のテストは、カーブの状況において取得した。2つのテストの車両発進条件は同じであって、所望の基準軌跡に対する方位誤差は40°前後、ハンドル角度は最大左ロック(480°前後)である。図6は、両例において車両が採用する軌跡(本明細書において上述した自律走行システムを搭載した車両の軌跡Cおよび本発明を搭載していない車両の軌跡D)、車線の境界L2、ならびに各車線の所望の基準軌跡TR2を示している。
【0087】
この場合は、両軌跡を示しているが、境界を越えずに(特に、対向交通の車線を占有せずに)実現可能なのは、軌跡Cのみである。軌跡Cは、本発明を実施するように装備された車両により実行される。ここで、軌跡Cは対向車線をまたぐことなく、所望の基準軌跡に向かって急速に収束し、11秒前後で正常な挙動に移行する。これに対して、軌跡Dは、本発明を実施せず、発進後15秒前後で安定する車両を表し、他方の車線を明確にまたいでいる。言い換えると、固定境界から逸脱している。
【0088】
図7a、図7b、図7c、および図7dは、本明細書において上述した2つのテストにおける車両の性能を示している。
【0089】
図7aは、2つのテストにおける初期値からのハンドル角度の変化を示している。本発明を実施して曲線C1に従う車両は、本発明を実施せずに曲線D1に従う車両よりも、不飽和挙動に向かって急速に収束することが明らかである。
【0090】
図7bは、2つのテストにおける速度の変化を示している。本発明を実施する車両の速度の曲線C2は、軌跡追従モジュール3が与えるコマンドに従う。すなわち、正しいハンドル角度に収束するためのゼロ速度が最初に適用され、2m/sの速度が次に適用され、最後に、第3の場所で、向きおよび横方向位置の誤差が所定の閾値を下回る場合、自律巡航走行モード39が起動される。これに対して、速度曲線D2は、2m/sまで急速に上昇する。このため、車両が安定状態に収束し得る十分な時間は残されない。
【0091】
図7cは、2つのテストの最中における横方向位置誤差の変化を示している。本発明を実施する車両に関する曲線C3によれば、初期化時の2m弱の初期誤差が補正され、その後も誤差は0.2mを超えないが、本発明を実施しない車両に関する曲線D3では、誤差が3m前後に達する。
【0092】
最後に、図7dは、2つのテストにおける方位誤差の変化を示している。本発明を実施する車両に関する曲線C4においては、初期誤差が急速に収束する一方、本発明を実施しない車両に関する曲線D4においては、誤差が増加した後、車両の正常な挙動に向かって収束する。
【0093】
マンマシンインターフェース210の一例の全体像を図8に示している。このインターフェースでは、操縦軌跡の実現可能性および所与の軌跡に適応するための補正を伴う車両の応答に関して、乗員または遠隔操作者に通知することができる。
【0094】
インターフェース210上では、初期位置および初期ハンドル角度で車両がたどる軌跡(所望の軌跡TR’および走行領域を含む地図上に示した軌跡A’)と本発明を実施しない場合に車両がたどる軌跡B’とが比較される。図示のように、仮想車両が車両の操舵輪の向きを補正した後、車両が移動する。ハンドルの現在の角度位置と同様に、仮想ハンドルの角度位置をインターフェース210上に示すことができる。
【0095】
発進検証モジュール1により確認された軌跡が実現可能である場合は、ランプ211等の指示211がインターフェース上に表示されるようになっていてもよい。
【0096】
発進検証モジュール1により確認された軌跡が実現不可能である場合は、ランプ212等の指示212がインターフェース上に表示されるようになっていてもよい。
【0097】
複数のテストの実行により考え得る軌跡が見つからなかった場合は、ランプ213等の指示213がインターフェース上に表示されるようになっていてもよい。
【0098】
したがって、このインターフェースは、複雑な操縦状況を車両が自律的に管理しようとする様子を示すことができる。
【0099】
本明細書において上述した解決手段の利点として、車両、特にロボットタクシー型の車両の能力が向上する。このような車両は、曲線ゾーンまたは自律巡航走行システムが供給する基準軌跡に対して横方向位置または向きに大きな誤差がある場合、発進が困難となる。また、上述の解決手段によれば、自律走行車による管理が複雑な操縦を表す路肩寄せ、路肩離れ、または遠隔操作操縦の管理が可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8
図9