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特許7600220直接制御及びロボット支援のハイブリッド手術システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】直接制御及びロボット支援のハイブリッド手術システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20241209BHJP
   A61B 90/50 20160101ALI20241209BHJP
【FI】
A61B34/30
A61B90/50
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022516366
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 CA2020051237
(87)【国際公開番号】W WO2021046658
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】62/900,471
(32)【優先日】2019-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522098792
【氏名又は名称】リボルブ サージカル インク.
【氏名又は名称原語表記】REVOLVE SURGICAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン,ピーター アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】フランシス,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】サーブ,ラミ
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/002215(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2019/0262089(US,A1)
【文献】特表2015-501729(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109091232(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30 - A61B 34/37
A61B 90/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接制御及びロボット支援のハイブリッド手術システムであって、
手術装置の重量の少なくとも一部を実質的にパッシブに支持するように構成された安定化装置であって、
前記手術装置の操作中に、患者に対して相対的に固定されるように構成されたベース部材と、
前記ベース部材に対して相対的に可動であって、細長シャフト及び遠位先端を有する前記手術装置を取り外し可能に受けるように構成された装置取付ユニットと、
を含む前記安定化装置と、
前記装置取付ユニットに結合されて、ユーザによって把持されるように構成されたハンドルであり、前記ベース部材に対して相対的な前記ハンドルの動きが、前記装置取付ユニットで受けられている前記手術装置の前記遠位先端の対応する動きをもたらすように構成された、前記ハンドルと、
前記手術装置のエンドエフェクタを駆動するように構成されたロボット支援システムであって、
前記ハンドルの少なくとも第1の属性を監視して、対応するセンサ信号を生成するように構成されたセンサアセンブリと、
前記センサアセンブリと通信可能にリンクされて前記センサ信号を受信し、対応するプライマリ制御信号を生成するコントローラと、
前記コントローラと通信可能にリンクされて前記プライマリ制御信号を受信する動力アクチュエーションユニットであって、前記装置取付ユニットで受けられている前記手術装置の前記エンドエフェクタを、前記プライマリ制御信号に基づいてアクチュエートするように構成されている前記動力アクチュエーションユニットと、
を含む前記ロボット支援システムと、
前記装置取付ユニット、前記ハンドル、及び前記手術装置のうちの少なくとも1つに付勢力をかけて、当該少なくとも1つ以上の質量の少なくとも一部をカウンタバランスするように構成されたカウンタバランシングシステムと、を備え、
前記カウンタバランシングシステムは、前記装置取付ユニットが並進軸に沿って並進する際に、前記装置取付ユニットの質量の少なくとも一部をカウンタバランスするための付勢力を前記装置取付ユニットにかけるように構成されるもの、又は、遠隔運動中心の周りで、前記装置取付ユニット、前記ハンドル、及び前記手術装置の少なくとも1つ以上の質量によって発生するトルクの少なくとも一部をカウンタバランスするための付勢力を前記装置取付ユニットにかけるように構成されるもの、の少なくとも1つである、
手術システム。
【請求項2】
前記安定化装置は、前記手術装置の動きを1つまたは複数の自由度における所定の可動範囲に制限するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記細長シャフトを有する前記手術装置は、前記エンドエフェクタを有する前記遠位先端を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記安定化装置に結合され、前記安定化装置から軸方向に間隔を隔てた自由端まで延びる直線トラックを含む直線並進装置を更に備え、前記装置取付ユニットが前記直線トラックに摺動可能に連結され、前記直線トラックに沿って並進可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記安定化装置は、
前記安定化装置のベースに回転可能に連結され、回転軸を中心に回転可能なハブと、
前記ハブに連結された平行四辺形構造と、
前記平行四辺形構造の可動端に連結され、ピボット軸を中心にピボット可能に前記平行四辺形構造の前記可動端を前記ハブに対して相対的に移動可能な並進装置であって、前記装置取付ユニットが前記平行四辺形構造に対して並進軸に沿って並進可能である、前記並進装置と、
を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記装置取付ユニットは、ユーザからの手動入力に応答して、前記ハイブリッド手術システムの使用中に駆動機構と係合することなく、前記ベース部材に対して相対的に移動可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記ハンドルが、少なくとも第1の自由度について前記装置取付ユニットに対して相対的に移動可能なグリップ部分を備え、前記第1の属性が、前記第1の自由度についての前記グリップ部分の向きを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記グリップ部分は、第2の自由度について前記装置取付ユニットに対して移動可能であり、前記センサアセンブリは、前記第2の自由度についての前記グリップ部分の向きを含む第2の属性を監視するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラおよび前記ハンドルに通信可能に接続されたコンパニオン手術装置をさらに備え、前記ハンドルは、前記コントローラを介して、前記装置取付ユニットおよび前記コンパニオン手術装置に結合された前記手術装置を制御するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムがコンパニオンモードにあるとき、前記コントローラは前記プライマリ制御信号を生成せず、それによって、前記ハンドルの動きは、前記装置取付ユニットで受けられている前記手術装置の前記エンドエフェクタを作動させない、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記ベース部材から間隔をおいて配置されたコンパニオンベース部材を更に備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記コンパニオン手術装置は、第2の遠隔運動中心を定義するように構成された安定化装置によって支持されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記コンパニオン手術装置は、内視鏡を備え、前記ハンドルは、前記コントローラを介して、前記内視鏡の位置を制御するように構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記ハンドルは、ピッチ軸、ロール軸、およびヨー軸を中心として前記装置取付ユニットに対して相対的に移動可能なグリップ部分を備え、
前記センサアセンブリは、前記ピッチ軸、前記ロール軸、および前記ヨー軸のそれぞれについての移動を検出するように構成され、
前記センサ信号は、マルチチャンネル信号を含み、
前記プライマリ制御信号は、対応するマルチチャネル制御信号を含み、
前記動力アクチュエーションユニットは、エフェクタピッチ軸、エフェクタロール軸、およびエフェクタヨー軸を中心とする前記エンドエフェクタの対応する動きを引き起こすように構成され、これによって、前記グリップ部分の動きは、前記ロボット支援システムを介して、前記エンドエフェクタの対応する動きに変換される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記動力アクチュエーションユニットは、前記エンドエフェクタが前記エフェクタピッチ軸、前記エフェクタロール軸、および前記エフェクタヨー軸を中心として駆動され得るように、前記手術装置上の対応する駆動ディスクとインタフェースするように構成された複数の回転可能なアクチュエーションディスクを備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記センサアセンブリは、前記ピッチ軸、前記ロール軸、および前記ヨー軸のうちの少なくとも1つを中心とする前記グリップ部分の向きを検出するための少なくとも1つのポテンショメータ又はエンコーダを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記ピッチ軸、前記ロール軸、および前記ヨー軸が共通の点で互いに交差する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記ハンドルは、前記コントローラに通信可能にリンクされた補助ユーザ入力装置を更に備え、前記コントローラは、前記補助ユーザ入力装置をトリガすることにより、前記エンドエフェクタに対する、対応する補助作用がトリガされるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記安定化装置は、前記装置取付ユニットと前記遠位先端が前記遠隔運動中心の両側にあって、前記安定化装置の使用中に前記細長シャフトが前記遠隔運動中心と交差するように、前記装置取付ユニットの動きを誘導するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記カウンタバランシングシステムは、直線トラックに沿って並進可能であって、前記装置取付ユニットに作用的に接続されているカウンタウエイトを含み、それによって、前記装置取付ユニットが並進すると、前記直線トラックに沿っての前記装置取付ユニットの並進を少なくとも部分的にカウンタバランスする、前記カウンタウエイトの反対方向の並進が引き起こされる、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全内容が参照によって本明細書に組み込まれている、2019年9月14日に出願された米国特許仮出願第62/900,471号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、その一態様では、ユーザ/外科医によって使用されている手術装置の重量の少なくとも一部を支持することに使用可能な装置を安定させ、それによって、手術装置の少なくとも一部の動きがユーザによって手動で駆動され、同時に手術装置の少なくとも一部の機能が動力アクチュエーションユニットによって駆動されることが可能な、直接制御及びロボット支援のハイブリッド手術システムに関する。
【背景技術】
【0003】
米国特許第10,639,066号(ヴィダル等(Vidal et al.))では、患者の体内に挿入される端部を有する介入装置の変位を制御するシステムであって、患者に対して固定された位置にベースを含むシステムが開示されている。第1の部分が弧状部材を有し、第1の軸(A1)を中心に旋回するようにベースにマウントされている。第2の部分が支持部材及び搬送部材を含む。支持部材は、第2の軸(A2)を中心に部分的に回転する。第3の部分が、保持部材と、並進軸(AT)に沿って支持部材上にマウントされた摺動部材と、を含む。保持部材は、摺動部材の並進によって介入装置が第3の軸(A3)に沿って並進するように配置される。第3の軸(A3)は、並進軸(AT)に対して平行であり且つオフセットしている。搬送部材が弧状部材の途中に配置されていると、第1の軸(A1)、第2の軸(A2)、及び第3の軸(A3)は直交する。
【0004】
米国特許第9,999,473号(マダニ等(Madhani et al.))では、最小侵襲手術のパフォーマンスを高める多関節手術器具が開示されている。この器具は、高度の器用さを備え、低摩擦であり、低慣性であり、良好な力反映を呈する。ケーブルとプーリのユニークな駆動システムが、摩擦を減らして力反映を強化するように働く。ユニークな手首機構が、標準的な腹腔鏡手術器具に比べて外科的な器用さを高めるように働く。このシステムは、必要とされるアクチュエータの数を減らして、完全に機能する最小サイズの多関節手術器具を実現するように最適化されている。
【0005】
米国特許公開第2008/0091066号では、外科医と、腹腔鏡カメラを保持し、且つ/又は、自動内視鏡アシスタントを制御する腹腔鏡手術用内視鏡システムとの間の改良されたインタフェースが開示されており、このインタフェースは、少なくとも1つの操作キーを有する少なくとも1つの無線送信器(12a)と、少なくとも1つの無線受信器(11)と、従来式手術器具空間的位置決めソフトウェアがロードされた少なくとも1つの従来式腹腔鏡コンピュータシステム(15)と、従来式自動アシスタント操縦ソフトウェア(従来式腹腔鏡システムにロードされて、内視鏡の動きが達成されるように、無線送信器の少なくとも1つのキーの押下に対する視覚的応答、並びに従来式自動アシスタント操縦ソフトウェアとのインタフェースを可能にするソフトウェア)と、少なくとも1つのビデオスクリーン(30)と、を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
腹部領域の手術(例えば、一般手術、婦人科手術、泌尿器科手術等)は、典型的には、手術部位にアクセスする為に大きく切開する開腹方式、又は複数箇所を小さく切開し、細長い器具を使用して手術部位の組織をマニピュレートする最小侵襲手術(MIS)方式のいずれかで行われる。(鍵穴手術又は腹腔鏡手術とも呼ばれる)MISは、患者にとっては、失血量が少ない、瘢痕が少ない、入院期間が短い等、様々な利点がある。しかしながら、多くの場合、MISアプローチは実施が非常に難しく、代わりに開腹方式が実施される。MISの困難さには幾つかの原因が関与するが、主たる困難さは手術器具の制限と適切な可視化の欠如とに由来する。手術器具はしばしば器用さに欠ける為、非常に狭い空間での細かい作業(縫合等)がしにくい。
【0007】
ロボット支援手術は、手術器具の器用さの向上、可視化の向上、モーションスケーリング、エルゴノミクスの向上等を含む多数の利点を提供することにより、困難なMIS手術を実施しやすくする。ロボティクスを手術に使うことは、インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社のダビンチ手術システム(da Vinci Surgical System)(dVSS)がFDA承認を取得した2000年以降、着実に増えている。dVSSは、2018年には全世界で100万件を超える手術で使用された。通常、ロボット支援手術システムは遠隔操作され、外科医はマスタコンソールに座り、外科医の手の動きが1つ以上のロボットアームによって再現され、そのロボットアームが患者を手術する。他の遠隔操作ロボット支援システムの例として、CMRサージカル(CMR Surgical)、トランスエンテリックス(TransEnterix)、チタンメディカル(Titan Medical)、メドトロニック(Medtronic)等の企業が開発又は市販している製品がある。
【0008】
現在利用可能な遠隔操作ロボット支援システムには幾つかの欠点がある。医療コミュニティの多数の人々が最も著しく主張するのは、ロボット支援手術が従来の最小侵襲手術との比較でコストに見合う価値があるとする臨床的証拠が不十分なことである。これらのロボットシステムは、初期コストが200万米ドルを超える場合があり、手術ごとのコストが従来の腹腔鏡手術よりも2000~6000ドル高くなる場合がある。別の大きな欠点は、外科医と患者との直接インタラクションがないことであり、これは外科医が手術中はマスタコンソールに座っている為であり、結果として、自然な触覚フィードバックが全く失われ、器具の誤った動きによる損傷のリスクが高まる。更に、現行の手術ロボットシステムは、図体が大きく、その複雑さ故に高価なメンテナンスを必要とし、従来の手術よりセットアップ時間がかかる為に手術時間が長くなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書の教示は、手動腹腔鏡手術及び遠隔操作ロボット支援手術システムの重要な特徴の少なくとも一部を組み合わせることを目標とする手術システムについて示す。より具体的には、本明細書の教示は、コンパクトな、カウンタバランスされる遠隔運動中心機構に関し、この機構は、交換可能な手術器具(例えば、手首手術器具及び/又は内視鏡等)が取り付けられることが可能であり、必要に応じて電動アクチュエーションが行われる。本システムは、好ましくは、取り付けられた手術装置の遠位端/遠位先端を外科医が手動で位置決めすることを可能にし、同時に、必要に応じて手術装置のエンドエフェクタの制御を(例えば、本システムの把持部上の外科医の手の方位を再現することによって手首エンドエフェクタの方位を駆動することにより)ロボット支援する。
【0010】
従って、本明細書に記載の教示により、ロボット支援手術の利点のうちの1つ以上(例えば、器用さが相対的に向上し、技術的複雑さが軽減される等)を実現することが可能である。この複雑さの軽減は、遠隔操作アプローチを減らす且つ/又は無くすことによって促進されうる。遠隔操作アプローチを減らす且つ/又は無くす代わりに、ロボット支援は腹腔鏡のような器具に直接組み込まれ、この器具は、手術台に直接取り付けられたり、天井やカートにマウントされたりしてよい機構によって支持される。実質的にロボット支援を手術器具に直接組み込むことにより、複雑さ、コスト、及びセットアップ時間を低減しながらも、自然な力フィードバックが得られる。
【0011】
本明細書に記載の教示の広い一態様によれば、エンドエフェクタを含む遠位先端から延びる細長シャフトを有する手術装置とともに使用される、直接制御及びロボット支援のハイブリッド手術システムが、手術装置の重量の少なくとも一部を支持するように構成されていて遠隔運動中心を定義している安定化装置を含んでよい。安定化装置は、患者に対して相対的に固定されるように構成されたベース部材を有してよく、ベース部材に対して相対的に可動であって、細長シャフト及び遠位先端を有する手術装置を取り外し可能に受けるように構成された装置取付ユニットを含んでよい。安定化装置は、装置取付ユニット及び遠位先端が遠隔運動中心の両側にあって、安定化装置の使用中に細長シャフトが遠隔運動中心と交差するように、装置取付ユニットの動きを制限するように構成されてよい。ハンドルが装置取付ユニットに機械的に取り付けられてよく、ユーザによって把持されるように構成されてよく、それによって、ユーザによる、ベース部材に対して相対的なハンドルの手動のデカルト動きが、装置取付ユニットで受けられている手術装置の遠位先端の対応するデカルト動きをもたらす。ロボット支援システムが手術装置のエンドエフェクタを駆動するように構成されてよく、ロボット支援システムは、ハンドルの少なくとも第1の属性を監視して、対応するセンサ信号を生成するように構成されたセンサアセンブリと、センサアセンブリと通信可能にリンクされてセンサ信号を受信し、対応するプライマリ制御信号を生成するコントローラと、コントローラと通信可能にリンクされてプライマリ制御信号を受信する動力アクチュエーションユニットであって、装置取付ユニットで受けられている手術装置のエンドエフェクタを、プライマリ制御信号に基づいてアクチュエートするように構成されている動力アクチュエーションユニットと、を含んでよい。
【0012】
安定化装置は更に、ベースに回転可能に接続されて回転軸を中心に回転可能なハブと、ハブに接続されて、曲率中心を中心に延びる弧状トラックと、曲率中心を通るピボット軸を中心に旋回可能であるように、弧状トラックに接続されていて、ハブに対して相対的に可動である直線並進装置と、を含んでよい。装置取付ユニットは、弧状トラックに対して相対的に、並進軸に沿って並進可能であってよい。
【0013】
回転軸と、ピボット軸と、並進軸に平行な装置軸とが交差することによって、安定化装置の遠隔運動中心が定義されてよい。装置取付ユニットは、手術装置が装置取付ユニットに取り付けられると、細長シャフトが装置軸に沿って延びて遠隔運動中心と交差するように構成されてよい。
【0014】
直線並進装置は、弧状トラックに接続された固定端から、軸方向に固定端から離れている自由端まで延びる直線トラックを含んでよく、装置取付ユニットは、直線トラックに摺動可能に接続されて、固定端と自由端との間を並進することが可能である。
【0015】
装置取付ユニットが並進軸に沿って並進する際に装置取付ユニットの質量の少なくとも一部をカウンタバランスする為の付勢力を装置取付ユニットにかけるように、並進カウンタバランシングシステムが構成されてよい。
【0016】
弧状トラックは、ピボット軸を中心に旋回可能であるように、ハブに可動に接続されてよい。直線並進装置は弧状トラックに不可動に接続されてよい。
【0017】
弧カウンタバランシングシステムが、ピボット軸を中心として働くトルクの少なくとも一部をカウンタバランスする為の付勢力を弧状トラックにかけるように構成された付勢装置を含んでよい。
【0018】
手術装置は、ハンドルとは無関係に、装置取付ユニットから取り外し可能であってよい。装置取付ユニットは、第2の手術装置を取り外し可能に受けるように構成されてよい。
【0019】
装置取付ユニットは、本システムの使用中にモータを関与させることなく、ユーザからの手動入力に対する応答として、ベース部材に対して相対的に可動であってよい。
【0020】
ハンドルは、少なくとも第1の自由度を中心として装置取付ユニットに対して相対的に可動な把持部を含んでよい。第1の属性は、第1の自由度を中心とする把持部の方位を含んでよい。
【0021】
把持部は又、第2及び第3の自由度を中心として装置取付ユニットに対して相対的に可動であってよい。センサアセンブリは、第2の自由度を中心とする把持部の方位を含む第2の属性と、第3の自由度を中心とする把持部の方位を含む第3の属性と、を監視するように構成されてよい。
【0022】
ハンドルは、ピッチ軸、ロール軸、及びヨー軸を中心として装置取付ユニットに対して相対的に可動な手首把持部を含んでよい。センサアセンブリは、ピッチ軸、ロール軸、及びヨー軸のそれぞれを中心とする動きを検出するように構成されてよい。センサ信号は多チャネル信号を含んでよい。プライマリ制御信号は、対応する多チャネル制御信号を含んでよい。動力アクチュエーションユニットは、エフェクタピッチ軸、エフェクタロール軸、及びエフェクタヨー軸を中心とするエンドエフェクタの対応する動きを引き起こすように構成されてよく、それによって、把持部の動きがロボット支援システムを介してエンドエフェクタの対応する動きに変換されてよい。
【0023】
動力アクチュエーションユニットは複数の回転可能アクチュエーションディスクを含んでよく、これらのアクチュエーションディスクは、手術装置上の対応する駆動ディスクとインタフェースするように構成されており、それによって、エンドエフェクタがエフェクタピッチ軸、エフェクタロール軸、及びエフェクタヨー軸を中心として駆動されることが可能である。
【0024】
センサアセンブリは、ピッチ軸、ロール軸、及びヨー軸のうちの少なくとも1つを中心とする把持部の方位/位置を検出する為の少なくとも1つのポテンショメータ又はエンコーダを含んでよい。
【0025】
ピッチ軸、ロール軸、及びヨー軸は共通の点で互いに交差してよい。
【0026】
ハンドルは更に、コントローラと通信可能にリンクされた補助ユーザ入力装置を含んでよい。コントローラは、補助ユーザ入力装置をトリガすることによって、エンドエフェクタに対する、対応する補助作用がトリガされるように構成されてよい。
【0027】
補助ユーザ入力装置は、スイッチ、ボタン、及びノブのうちの少なくとも1つを含んでよく、エンドエフェクタに対する補助作用は、焼灼、把持、潅注、及び吸引のうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0028】
並進カウンタバランシングシステムは、直線トラックに沿って並進可能であって装置取付ユニットに作用的に接続されているカウンタウエイトを含んでよく、それによって、装置取付ユニットが並進すると、直線トラックに沿っての装置取付ユニットの並進を少なくとも部分的にカウンタバランスする、カウンタウエイトの反対方向の並進が引き起こされる。
【0029】
装置取付ユニットは直線トラックの第1の側に取り付けられてよく、カウンタウエイトは直線トラックの、反対側の第2の側に取り付けられており、装置取付ユニットがある方向に並進すると、カウンタウエイトは逆の方向に並進して、装置取付ユニットをカウンタバランスする。
【0030】
手術装置が装置取付ユニットに取り付けられると、直線トラック、装置取付ユニット、ハンドル、手術装置、及びカウンタウエイトの組み合わせ直線質量中心が遠隔運動中心に対する基準位置に置かれてよい。装置取付ユニット及びカウンタウエイトが直線トラックに沿って並進しても、組み合わせ直線質量中心は基準位置にほぼとどまる。
【0031】
カウンタウエイトの質量は、装置取付ユニット、ハンドル、及び手術装置の合計質量にほぼ等しくてよい。
【0032】
弧状トラックの第1の端部の、ハブに対して相対的な角度位置が約0度から約90度にかけて変化するにつれて、遠隔運動中心を中心として働くトルクの大きさが増えてよく、付勢装置は、弧状トラックの第1の端部の、ハブに対して相対的な角度位置が約0度から約90度にかけて変化するにつれて付勢力の大きさが増えるように構成されてよい。
【0033】
弧状トラックの第1の端部の、ハブに対して相対的な角度位置が約0度から約90度にかけての途中にあるときには、付勢力の大きさはトルクの大きさにほぼ等しいままであってよい。
【0034】
装置取付ユニットは動力アクチュエーションユニットを含んでよく、それによって、動力アクチュエーションユニットは、装置取付ユニットと調和してベース部材に対して相対的に動くことが可能である。
【0035】
コントローラは、電気ケーブル及び無線通信プロトコルの少なくともいずれかにより、センサアセンブリと通信可能にリンクされてよい。
【0036】
装置取付ユニットは、手術装置が装置取付ユニットに取り付けられたときに細長シャフトの軸が並進軸と平行になるように構成されてよい。
【0037】
装置取付ユニットは、弧状トラックの、ハブに対して相対的な動きとは無関係に、直線トラックに沿って並進することが可能であってよい。
【0038】
ハブ、弧状トラック、及び装置取付ユニットは、モータを関与させることなく、ユーザからの手動入力に対する応答として動くことが可能であってよい。
【0039】
回転軸は、ベース部材が固定されている場合にはほぼ垂直であってよい。
【0040】
装置取付ユニットの、回転軸、ピボット軸、及び並進軸のうちの少なくとも1つを中心とする動きを阻止する為にブレーキ装置が選択的に係合可能であってよい。
【0041】
装置取付ユニットで受けられている手術装置の遠位先端にかかる力がハンドルに伝わって、ハンドルを把持しているユーザにパッシブ力フィードバックを提供するように、ハンドルが装置取付ユニットに機械的に取り付けられてよい。
【0042】
安定化装置は、ベースに回転可能に接続されて回転軸を中心に回転可能なハブと、ハブに接続された平行四辺形構造と、平行四辺形構造の可動端部に接続されて、ピボット軸を中心に旋回可能であるように、平行四辺形構造の可動端部とともにハブに対して相対的に可動である直線並進装置であって、装置取付ユニットは平行四辺形構造に対して相対的に並進軸に沿って並進することが可能である、直線並進装置と、を含んでよい。
【0043】
コンパニオン安定化装置が、コンパニオン手術装置の重量の少なくとも一部を支持するように構成されてよい。コンパニオン安定化装置は、患者に対して相対的に固定されるように構成されたコンパニオンベース部材を有してよく、コンパニオン装置取付ユニットを含んでよく、コンパニオン装置取付ユニットは、コンパニオンベース部材に対して相対的に可動であり、細長シャフト及び遠位先端を有するコンパニオン手術装置を取り外し可能に受けるように構成されている。ロボット支援システムは更に、コントローラと通信可能にリンクされたコンパニオン動力アクチュエーションユニットを含んでよい。本システムはコンパニオンモードにおいて選択的に動作可能であってよく、コンパニオンモードでは、コントローラはセンサ信号を受信し、対応するコンパニオン制御信号を生成し、コンパニオン動力アクチュエーションユニットは、コンパニオン制御信号に基づいてコンパニオン手術装置をアクチュエートしてよい。
【0044】
本システムがコンパニオンモードの場合にはコントローラはプライマリ制御信号を生成しなくてよく、それによって、ハンドルを動かしても、装置取付ユニットで受けられている手術装置のエンドエフェクタはアクチュエートされない。
【0045】
コンパニオン安定化装置は、第2の遠隔運動中心を定義することと、コンパニオン装置取付ユニットとコンパニオン手術装置の遠位先端とが第2の遠隔運動中心の両側にあって、コンパニオン安定化装置の使用中にコンパニオン装置の細長シャフトが第2の遠隔運動中心と交差してよいように、コンパニオン装置取付ユニットの動きを制限することと、を行うように構成されてよい。
【0046】
コンパニオンベース部材は、ベース部材から間隔を空けて配置されてよい。
【0047】
コンパニオン手術装置は内視鏡を含んでよい。
【0048】
本開示の実施形態を、添付図面を参照しながら説明していく。添付図面においては類似の参照符号は類似の要素を表す。添付図面は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】手術室に配備される手術システムの一例の全体像の概略図である。
図2】手術台に取り付けられた手術システムの一例の斜視図である。
図3】遠隔運動中心(RCM)機構の一例の概略図である。
図4】手術器具が取り付けられた、図3のRCM機構の概略図である。
図5図2の手術システムの一部の前面斜視図である。
図6】手術器具が取り付けられた、図5の手術システムの一部の前面斜視図である。
図7】手術器具が取り付けられた手術システムの一部の側面図である。
図8】手術システムの上面図である。
図9】乃至
図10】手術システムのハブを中心とする運動範囲の一例を示す上面図である。
図11】乃至
図12】手術システムの弧状トラックの一例の運動範囲の一例を示す側面図である。
図13】乃至
図14】手術システムの並進装置の運動範囲の一例を示す側面図である。
図15】手術システムの一部の拡大図である。
図16図15に示した手術システムの一部の、線16-16に沿って切り取った断面斜視図である。
図17】局所遠隔操作の制御方式の一例を示すフローチャートである。
図18a】手術システムの別の例の側面図である。
図18b図18aの手術システムの別の側面図である。
図18c図18aの手術システムの別の側面図である。
図19図18aの手術システムの断面図である。
図20】動力アクチュエーションユニットの一例の、線20-20に沿って切り取った部分切欠図である。
図21】外科医ハンドルの拡大図である。
図22】一代替外科医ハンドルの拡大図である。
図23】可動構成要素の質量中心がハイライトされている、手術システムの側面図である。
図24a】乃至
図24b】手術システムにおいて発生しうるトルクの全体像を示す概略図である。
図25】カウンタバランシングシステムの全体像を示す側面図である。
図26a】乃至
図26b】手術システムの並進カウンタバランスの一例を示す概略図である。
図27】手術システムの並進カウンタバランスの一例を示す側面図である。
図28図27の手術システムの並進カウンタバランスの一例の側面図である。
図29】手術システムのカウンタバランスシステムの一例を示す概略図である。
図30】乃至
図31】手術システムのばねカムカウンタバランスシステムの一例を示す断面図である。
図32】乃至
図33】手術システムのばねカムカウンタバランスシステムの一例を示す断面図である。
図34a】乃至
図34c】手術システムの使用時に発生する正弦波状トルクの一例である。
図35】動力アクチュエータがカウンタバランスシステムに使用されている手術システムの一例である。
図36】遠隔運動中心を形成する為に平行四辺形構造が安定化装置に使用されている手術システムの一例を示す。
図37】取り付けられた手術装置が内視鏡である手術システムの一例である。
図38】手術システムをコンパニオンモードで動作させる場合の制御方式の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下では、様々な装置又はプロセスを記載することにより、特許請求対象の各発明の例示的実施形態を示していく。以下に記載の実施形態はいずれも、いかなる特許請求対象発明も限定するものではなく、いかなる特許請求対象発明も、以下に記載のプロセス又は装置と異なるプロセス又は装置を包含してよい。特許請求対象発明は、以下に記載の任意の1つの装置又はプロセスの特徴の全てを有する装置又はプロセスに限定されず、或いは、以下に記載の装置のうちの複数の装置又は全ての装置に共通の特徴に限定されない。以下に記載の装置又はプロセスがいかなる特許請求対象発明の実施形態でもない可能性がある。以下に記載の装置又はプロセスの形で開示されている、本文書において特許請求されないいかなる発明も、別の保護的法律文書、例えば、継続特許出願の主題であってよく、本願出願者、本願発明者、又は本願所有者は、そのようないかなる発明も、本文書におけるその開示によって、放棄するものではなく、棄権するものではなく、公衆に提供するものではない。
【0051】
本明細書に記載の教示は、少なくともある程度は、装置取付ユニットを有する安定化装置を含む手術システムに関し、装置取付ユニットは、手術装置の使用中に手術装置の重量の少なくとも一部が安定化装置によって支持されるように、1つ以上の好ましくは互いに交換できる手術装置を受けることが可能である。本システムとともに使用される手術装置は、任意の適切なタイプの装置であってよく、何らかのタイプのアクティブ且つアクチュエート可能なエンドエフェクタを有する手術器具(手首エンドエフェクタを有する手術器具を含む)、比較的シンプル又は静的なエンドエフェクタを有する手術器具(吸引装置や開創器)、内視鏡又は他のカメラシステム又は視覚システム等を含んでよい。好ましくは、様々なタイミングで様々なタイプの手術装置を支持する為に一般的な安定化装置が使用されてよい。このことは、1つ、2つ、又はそれ以上の比較的標準化された安定化装置を様々なタイミングで様々な手術装置とともに使用(及び好ましくは再使用)すること
(例えば、1人の患者に近接して、内視鏡を支持する為に1つの安定化装置を使用し、手首エンドエフェクタを有する手術器具を支持する為に別の安定化装置を使用すること)を容易にするのに役立ちうる。
【0052】
安定化装置は、支持される手術装置が1、2、3、又はそれ以上の自由度に関して動くことを可能にするように構成されてよい。これにより、ユーザは、手術器具を、安定化装置を使用せずに動かす場合とほぼ同様に動かすことが可能になる。好ましくは、安定化装置は、(手術装置が取り付けられた場合に)手術装置の動きを、関係する自由度のうちの1つ以上において所定の運動範囲に制限することも可能であり、それによって、本明細書に記載のように遠隔運動中心の周囲での手術装置の動きを可能にできる。このことは、取り付けられた手術装置の重量の少なくとも一部を支持することに加えて、その手術装置の遠位先端の動きを所定の運動範囲内に誘導及び/又は制限することに役立ちうる。即ち、安定化装置の関節の構成は、取り付けられた手術装置の運動を最小侵襲アクセスの為のピボット点の周囲の運動範囲に制限することによって手術を容易にするように構成されることが好ましい。これは遠隔運動中心構成とも呼ばれる。外科医は、取り付けられた手術装置のエンドエフェクタの位置及び方位を、任意の適切なユーザ入力装置(例えば、本明細書に記載の例にあるユニットの一部である多自由度(DOF)ハンドル)で直接制御することが可能である。安定化装置は、運動装置全体が遠隔運動中心によって優先的に制限及び支持されている状態で、外科医が、手術器具の遠位先端の位置を、手動器具を制御する場合とほぼ同様に、外科医用ハンドルで制御できるように構成されることが好ましい。
【0053】
好ましくは、安定化装置は1つ以上の装置取付ユニットを含み、これは、2つ以上の異なる手術装置を安定化装置とともに使用できるように、手術装置を取り外し可能に受けるように構成されてよい。これは、異なるタイプの手術装置を使用すること、及び/又は同じタイプの手術装置の新品又は滅菌したものを次の手術で使用することを含んでよい。使用済みの手術装置は取り外されてよく、任意選択で、別のタイプの手術装置が同じ装置取付ユニットに取り付けられてよい。その場合、安定化装置又は装置取付ユニット自体を物質的に再構成することは不要である。
【0054】
任意選択で、手術システムはロボット支援システムを含んでもよく、ロボット支援システムは、エンドエフェクタ、又は他のそのような、手術装置上のアクチュエート可能なフィーチャを駆動、マニピュレート、及び他の形でアクチュエートするように構成されてよい。好ましくは、ロボット支援ユニットはセンサアセンブリを含んでよく、センサアセンブリは、適切なセンサを使用して少なくとも第1の属性又はユーザからの入力(例えば、ハンドルの位置、スイッチ又はボタンのトリガ、感圧センサにかかる圧力等)を監視することと、対応するセンサ信号を生成することと、を行うように構成されている。センサ信号は適切なコントローラ(コンピュータ、PLC、マイクロプロセッサ等であってよい)に供給されてよく、コントローラは、センサ信号を受信し、これに対応する、使用中の特定の手術装置に適合する制御信号又は出力信号を生成してよい。出力信号は適切な動力アクチュエーションユニットに供給される。動力アクチュエーションユニットは、コントローラに通信可能にリンクされており、使用中の手術装置を駆動するように構成されている。即ち、動力アクチュエーションユニットは、手術装置のエンドエフェクタを係合し、ユーザ入力に基づいて、好ましくは、ユーザからの入力を模倣して、対応するアクション/出力をエンドエフェクタに行わせるようにエンドエフェクタを駆動するように構成されている。
【0055】
幾つかの例では、使用される手術装置は、器用さを高めることが可能な手首エンドエフェクタを有する手術器具であってよく、手術中に、どのタイプの器具が必要かに応じて適宜ユニットに取り付けたりユニットから取り外したりすることが可能である。ロボット支援ユニットは、手術中に位置決めアームによって患者の上方に位置する。
【0056】
安定化装置ユニットの例として、コンパクトな多自由度関節機構があってよく、これは、取り付けられた手術器具の手首エンドエフェクタを保持し、安定化し、動力によりアクチュエートする。関節の構成は、運動を最小侵襲アクセス用ピボット点に制限することによって手術に特化されることが好ましく、これは遠隔運動中心構成とも呼ばれる。外科医は、取り付けられた手術器具のエンドエフェクタの位置及び方位を、ユニットの一部である多自由度(DOF)ハンドルで直接制御する。外科医は、運動が遠隔運動中心によって制限及び支持されている状態で、器具の遠位先端の位置を、手動器具を制御する場合と全く同じように、外科医用ハンドルで制御する。ユニットに組み込まれたロボット支援アクチュエーションシステムにより、外科医は、手の自然な動きを多DOF外科医用ハンドルによってキャプチャされて手術器具のエンドエフェクタの手首を制御することが可能になる。
【0057】
この構成により、外科医の手の運動は、マスタスレーブ遠隔操作システムを必要とせずに手首エンドエフェクタによって再現される。その為、本手術システムの複雑さ、従ってコストは、マスタスレーブ遠隔操作システムより低いことが可能である。
【0058】
任意選択で、手術システムはカウンタバランスシステムを含んでもよく、これは、手術装置の重量/質量を、手術装置の1、2、3、又はそれ以上の動き自由度に関してカウンタバランスすることに役立ちうる。本明細書では、カウンタバランシングは、手術システムの可動構成要素の重量の少なくとも一部を相殺することを意味するものと理解されてよく、これは、手術システムの構成要素を動かしている且つ/又はマニピュレートしているユーザ(又はアクチュエータ)にかかる負荷を軽減することに役立つ。即ち、本システムの可動構成要素が所与の回転軸を中心としてトルクをかける場合、又は所与の並進軸に沿って直線力をかける場合には、手術システムは、可動構成要素に作用する正味の力を減らすことに役立つように、所定の大きさを有する(例えば)トルク又は直線力を反対方向にかけるように構成されたカウンタバランスシステムを含んでよい。そしてユーザ(又は該当する場合はアクチュエータ)は、正味の力を加勢するだけで可動構成要素を所望の位置で静的保持することが可能である。可動構成要素に作用する正味の力がゼロ又はほぼゼロであれば、可動構成要素は完全に、即ち、ほぼ100%カウンタバランスしていると見なすことができ、それによって、ユーザにかかる正味の力はほぼゼロであり、可動構成要素は、ユーザの介入がなくても実質的に静止したままになることが可能である。
【0059】
本明細書に記載のシステムの所与の例が所与の運動軸を中心にして実現しうるカウンタバランシングの度合いの大きさは、可動システム構成要素によってかかる力のうちの約0%と約100%との間にあってよく(例えば、約0%の場合にはユーザは可動構成要素の全重量を感じ、約100%の場合にはユーザは可動構成要素の重量をほとんど感じない)、0%と100%との間の値に設定されてよい。例えば、実現されるカウンタバランスの大きさは、当該可動システム構成要素の重量の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、及び/又は少なくとも約90%以上であってよい。カウンタバランシングシステムは、好ましくは、(所与の関節/軸を中心として)可動構成要素の重量の少なくとも50%を加勢するように構成されてよく、より好ましくは、可動構成要素の重量の少なくとも75%、少なくとも85%、又は少なくとも90%を加勢するように構成されてよい。同様に、可動システム構成要素の重量のうちのユーザによって支持される大きさは、可動システム構成要素の全重量のうちの約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、及び/又は約10%より小さくてよい。
【0060】
例えば、カウンタバランスシステムは、好ましくは、手術装置が取り付けられた時点でほぼバランスするように構成されてよく、それによって、手術装置は、ユーザが力をかけていない場合にはほぼ定位置にとどまることになる。これにより、装置が位置決めされた後に、ユーザが装置を保持し続けない場合には装置がその位置にとどまることを可能にでき、そして装置は、ユーザが(例えば、再位置決めする為に)装置を再度把持するまで、ほぼハンズフリー装置として動作することが可能である。代替として、カウンタバランスシステムは、手術装置の重量の一部だけをカウンタバランスするように構成されてよい。例えば、本システムは、可視化の向上の為に、手術器具に加えて、内視鏡を保持及び安定化することに適しうる。
【0061】
カウンタバランスシステムは、任意選択で、適切なばね、付勢部材、ケーブル、カム、ギヤ等を使用し、モータ、空気圧又は液圧式システム、又は動力アクチュエータ、又は他のアクティブな駆動ユニットを必要とせずに医療装置の動きをバランスさせることが可能な、完全に(又は少なくとも実質的に)パッシブなシステムとして構成されてよい。これは、安定化装置の操作及び保守を簡略化することに役立ちうるとともに、望ましい手触り感をユーザに提供することが可能である。又、これは、高速作動センサの必要性を減らすこと、任意のそのようなモータに関する計算を駆動すること等に役立ちうる。好ましくは、ユーザがハンドルを放すか且つ/又は本システムに力をかけるのをやめても安定化装置及び安定化装置で支持されている全ての装置がその場所にとどまるように、カウンタバランシングシステムによってかけられる力は、手術装置によってかけられる力とほぼ一致することが可能である。これにより、ユーザが手術装置をほぼ同じ位置にとどめながらグリップを放すこと、例えば、腕を休めたり腕の位置を変えたりすることを可能にできる。
【0062】
代替として、カウンタバランシングシステムは、所望のカウンタバランシング力の一部又は全てを供給することが可能な1つ以上の動力アクチュエーション装置を含んでよい。例えば、本システムは、レベルが変化するトルクを使用中に供給することが可能な1つ以上のモータを含んでよく、例えば、与えられるモータトルク出力を可動構成要素の位置に基づいて変化させることが可能なシステムを有するモータを含んでよい。本システムは、サーボモータ、適切な逆駆動可能モータ等を含んでよい。
【0063】
任意選択で、本明細書に記載の目的に関してパッシブと見なされる安定化装置(例えば、その自由度の1つに関して運動を引き起こす駆動機構がない安定化装置)が、その自由度の1つ以上に関する動きを抑えること、及び任意選択で止める/ロックすることに役立ちうる1つ以上のブレーキ装置を含んでよい。そのようなロック機構を関与させることは、カウンタバランシング力の均一さが十分でない場合でも、且つ/又は安定化装置が所与の場所に保持されることを必要とされたときにぶつかったり他の形で接触されたりした場合でも、安定化装置及び手術装置が所望の位置/方位にとどまるようにすることに役立ちうる。ブレーキ装置は、任意の適切なタイプの装置(例えば、ラッチ、クラッチ、クリップ、ピン、クランプ、磁石等)を含んでよく、手動でトリガされてよく、或いは、任意の適切なシステム(例えば、機械式、電気式、液圧式、又は空気圧式の活性化システム)を使用して遠隔からトリガされてよい。
【0064】
任意選択で、本システムの関節のうちの1つ以上が、その絶対位置又は相対位置又はその両方の追跡の為にセンサ化されてよい。本システムの様々な関節の位置を追跡することは、機能性の向上の為に手術装置の遠位先端の位置/方位をかなり精密に追跡することを容易にすることに役立ちうる。
【0065】
本明細書に記載のシステムは又、任意選択で、手術部位とインタラクションしている手術器具を外科医が直接マニピュレートしているような、従来の腹腔鏡手術を連想させるタイプの触感フィードバックを提供することが可能であり、手術装置の遠位先端の位置の手応えを示す抵抗又は力があれば、安定化装置を介して機械的に且つほぼ直接的にハンドルに伝わり、ユーザによって体感される。
【0066】
規模の大きな手術システムであれば、本明細書に記載の装置取付ユニットを有する安定化装置を1つ以上含む場合があり、各安定化装置が手術器具等の手術装置を保持する。手術器具は、好ましくは、器用さを高めることが可能な手首エンドエフェクタを有し、手術中に、どのタイプの器具が必要かに応じて適宜安定化装置に取り付けたり安定化装置から取り外したりすることが可能である。装置取付ユニットは、手術中に安定化装置によって患者の上方に保持されてよい。外科医は、各装置取付ユニット及び取り付けられた器具を、手動器具を制御する場合のように直接的に制御することが可能である。記載のシステムの幾つかの利点として、器用な手首をマニピュレートできることが挙げられ、この手首は、エルゴノミクスがかなり向上しており、(例えば、安定化装置で支持されない)器具を全く手動でマニピュレートする場合に比べて疲労を軽減し、同時に又、完全ロボットシステムと同等レベルの精細な運動制御を実現する。
【0067】
本システムは、可視化の向上の為に、手術器具に加えて、内視鏡等の他の装置を保持及び安定化することに適しうる。本システムの各関節は、センサ化されて、機能性の向上の為に器具先端の精密な追跡を可能にできる。記載のシステムの利点として器用な手首が挙げられ、この手首は、エルゴノミクスが向上しており、手動器具に比べて疲労を軽減し、ロボットシステムと同等レベルの精細な運動制御を実現する。本発明は又、手術部位とインタラクションしている手術器具を外科医が直接マニピュレートしているような、従来の腹腔鏡手術を連想させる触感フィードバックを提供する。
【0068】
任意選択で、本明細書に記載のシステムは、プライマリモード及びコンパニオンモードの両方で動作するように構成されてよく、モード間での選択的な切り替えが可能であってよい。プライマリモードでは、ユーザは、システムハンドルを担当してよく、これを使用して、安定化システムの可動構成要素を物理的に操縦し、安定化システムに取り付けられた手術装置を電子的/ロボット的に駆動又は他の形で制御することが可能である。コンパニオンモードでは、本システムは、第2の安定化システム即ちコンパニオン安定化システムを含んでもよく、これは、ユーザが同じプライマリシステムハンドルを使用して与える入力に基づいて第2の手術装置即ちコンパニオン手術装置を支持及びアクチュエートすることが可能である。そのような例では、手術システムの制御系は、コントローラ及びハンドル監視センサを含んで、コントローラが、プライマリハンドル属性に関連する入力信号をセンサから受信するが、選択により、第1の/プライマリ手術装置をアクチュエートするプライマリ制御信号を生成する代わりに第2の/コンパニオン制御信号を生成し、これが第2の/コンパニオン動力アクチュエーションユニットに伝達されて、第2の/コンパニオン動力アクチュエーションユニットが第2の/コンパニオン手術装置をアクチュエートすることが可能であるように(例えば、スイッチ、音声コマンド等により)構成されてよい。これにより、ユーザが共通の物理ハンドルを使用して(任意選択で2つの別個の安定化システムで支持されている)2つの異なる手術装置を選択的に制御することを可能にできる。
【0069】
任意選択で、コンパニオン安定化装置は、プライマリ安定化装置から間隔を空けて配置されてよく、プライマリ安定化装置とは無関係に可動であってよい。プライマリ手術装置は(関節式エンドエフェクタを有する)手首手術器具を含んでよく、コンパニオン手術装置は、手術器具から間隔を空けて配置されて別個のコンパニオン安定化システムで支持されている内視鏡であってよい。そして外科医はプライマリハンドルを使用して、手術器具及びそのエンドエフェクタを動かし且つ制御し、その後、システムをそのコンパニオンモードに転換することが可能であり、コンパニオンモードでは、同じハンドルを使用して内視鏡を再配置したり別の形で内視鏡の動作パラメータを調節したりすることが可能である。内視鏡が再構成されると、システムは、ハンドルが再び局所手術器具を制御できるように、そのプライマリ動作モードに戻ることが可能である。
【0070】
図1を参照すると、ロボット支援手術システムの一例100が、手術室内にあるものとして概略的に示されている。この例では、外科医(「S」)が、手術台(「O」)に横たわっている患者(「P」)を手術している。この例のロボット支援手術システム100では、ロボット手術ユニットの一例104が安定化装置の一例を有し、この安定化装置は支持アーム102を含み、支持アーム102は、手術台Oの側部に取り付けられ、支持アーム102に取り付けられた装置取付ユニットを機械的に保持及び支持する。外科医Sは、立位又は座位で、各ロボット支援ユニットを、一体化された外科医ハンドル108及び110でマニピュレートして、取り付けられた手術装置を制御し、手術装置は、この例では、手術器具112及び114を含む。
【0071】
この例では、外科医はモニタ116上のライブビデオで手術部位を見ており、画像化は内視鏡カメラ118によって実現されており、内視鏡カメラ118は、この例では、やはり、第2のパッシブ支持アーム103で支持されている装置取付ユニット120に取り付けられていて、手術助手(「A」)が外科医ハンドル122でマニピュレートすることが可能である。一代替セットアップでは、内視鏡は、手術助手を必要とせずに外科医によって制御されてよい。他の例では、内視鏡が取り付けられているロボット支援ユニットは、手術部位の所望のビューを維持することを支援する為に手術器具108及び110の先端を(任意選択で、人の支援なしで)自動的に追跡するようにプログラムされてよい。
【0072】
内視鏡の制御は任意の適切な機構を使用して行われてよく、例えば、外科医が、個別ユニット108又は110のハンドル、フットペダル、手持ち装置、外科医の手の動きを内視鏡の動きに変換するグローブ型装置、音声コマンド、又はコンピュータプログラムによって生成されたコマンド等のいずれかを使用して制御してよい。外科医は、任意選択で、内視鏡画像を、モニタではなくヘッドマウントユニットで見てよく、或いは固定立体視システムで見てよい。外科医に提供される画像は2D又は3Dであってよく、3Dの場合には、立体視ゴーグルや3Dビューイングモニタ及び対応眼鏡等の、3D画像を見る方法が必要である。
【0073】
支持アーム102、103は、これらの例ではそれぞれが、取り付けられた装置取付ユニットを、患者の腹壁(又は他の場所)に挿入して手術部位に達する為の所望の位置及び方位に位置決めする複数の関節を含む。装置取付ユニットはそれぞれがそれぞれの直線並進装置に取り付けられ、直線並進装置は、この例では、パッシブ支持アーム102、103から延びる支持部材126、128、130を含む。装置取付ユニットが手術部位にアクセスする為の適切な位置についたら、任意選択で、支持アーム関節が機械式又は電子式のブレーキによって所定位置にロックされて、外科医又は手術助手が解放するまで、手術器具の挿入点を固定する。
【0074】
取り付けられた手術器具の遠位先端のデカルト位置決めは、外科医ハンドル(例えば、ハンドル108及び110)を制御する外科医によって手動で行われてよく、安定化装置の関節が外科医ハンドル108又は110と強固に結合されることによって可能になる。安定化装置の関節及び/又は対応する軸が、装置取付ユニットの挿入点を、遠隔運動中心(RCM)と呼ばれる構成に制限するように構成されている例では。
【0075】
この例で使用される取り付けられた手術器具(例えば、器具112又は114)は、少なくとも自由度3(例えば、ピッチ、ヨー、及びロールの各特性)を有する手首エンドエフェクタをそれぞれの先端に有することが好ましく、好ましくは、把持等の追加エンドエフェクタアクチュエーションを含んでよく、それによって外科医Sは、非手首器具の場合に比べて手術部位におけるマニピュレーションが増える。エンドエフェクタの多自由度を機械的に制御することは困難な場合がある為、装置取付ユニットは、手術器具の手首エンドエフェクタの方位を制御するように構成された動力アクチュエーションユニットを含むことが好ましい。
【0076】
例えば、手首器具を制御する為に、外科医ハンドル108又は110が多自由度をジョイスティック、グローブ、手首ハンドル等の形で有してもよく、それによって、外科医の手の動きがマトリックス変換及び/又は数学的演算により再現又は変換されて、動きがハンドルから器具先端のエンドエフェクタに変換されることが好ましい。外科医ハンドルは、他の補助又は代替の制御機構を含んでもよく、例えば、取り付けられた手術器具のより高度な機能性(例えば、特に吸引、潅注、又は焼灼の活性化、或いは内視鏡118の位置制御)の為の様々なボタン又はノブを含んでよく、但し外科医ハンドルはこれに限定されない。記載の構成により、外科医が外科医ハンドルによってキャプチャされた手の動きの再現によって器具の手首エンドエフェクタを制御することを可能にできる。この制御方式を本明細書では「局所遠隔操作」と呼ぶ。
【0077】
本明細書では、遠隔運動中心(RCM)は、一連の関節又は自由度が、機構(例えば、この例では安定化装置)が物理的に接続されていない単一点を中心に旋回する構成を意味するものと理解されたい。RCMは最小侵襲手術アクセスに使用されてよく、それは、RCMによって、手術器具が、固定されたままの体に単一点(本明細書では「ピボット点」と呼ぶ)から挿入されることが可能になり、同時に、手術器具の動きがこの制限内であることが可能になる為である。この構成は、手術器具が患者の体(たいていは腹壁)に挿入された点で動くのを抑え、それによって、軟組織損傷がこの場所又はその周囲に限定されるようにすることに役立ちうる。RCMは、機械式関節又はソフトウェアによる制限のいずれかにより達成可能である。ソフトウェアによるRCMを達成する為には、関節は、典型的には、アクチュエート又は駆動される。本明細書に記載のシステムは、あるタイプのありうる手術に関して記載しているが、最小侵襲アクセスが実現可能な手術であれば使用されてよく、最小侵襲アプローチで現在実施されている手術に限定されなくてよい。更に、本システムは、例えば、経口ロボット手術(TORS)の場合のように、遠隔運動中心が患者の外側に位置する場合に使用されてよい。
【0078】
図1に示したセットアップは3つのロボット手術ユニット104、106、及び120を含み、2つが手術器具を保持する為に使用されており、1つが内視鏡カメラを保持する為に使用されている。ある手術に使用される手術器具が取り付けられる装置取付ユニットの数は、他の要因に加えてスペースの制約及び実施中の手術を含む幾つかの要因に基づいて変更されてよい。スペースの制約は、手術台に対する安定化装置の占有面積から、且つ/又は、装置取付ユニット又は器具が手術中に使用されるときのそれらの間の衝突を避ける為に発生しうる。一代替セットアップでは、ロボット手術ユニット104、106、及び120は、手術台に接続可能な任意の適切なベース部材(例えば、ポールやブラケット)を使用して所望の位置で機械的に支持されてよく、或いは、ベース部材は、手術室の床の上の患者側カート、天井マウント、又は他のそのようなマウントハードウェアを含んでよい。手術タスクに応じて、手術中の任意の時点で、外科医又は手術助手が、手術器具112及び/又は114を、対応するロボット手術ユニット104及び/又は106から取り外して、ベッドサイドトレイ(「T」)にある別の手術器具124と交換することが可能である。
【0079】
図2は、手術システムの好ましい一実施形態100の詳細図を示す。この例では、安定化装置ベースは、取付点160で手術台に取り付けられた支持アーム102を含む。支持アーム102にロボット手術ユニット104が取り付けられており、ロボット手術ユニット104に手術器具112が取り外し可能に取り付けられる。この例ではロボット手術ユニット104及びその安定化装置によって機械的遠隔運動中心162が定義される。手術器具112のエンドエフェクタ164は、外科医が外科医ハンドル108を介してマニピュレートする。安定化装置を手術台に取り付ける方法は幾つかあってよく、例えば、クランプ機構、ボルト締めシステム等により取り付けられてよい。手術台は、支持アーム102の取り付けに特化された接続点又は接続方式を有するように製造されてよく、或いは、支持アームが任意の既存の手術台に取り付け可能であるように設計されてよい。
【0080】
図3は、ロボット手術ユニット104の関節190の好ましい構成を示しており、関節190は、取り付けられた手術器具のエンドエフェクタの位置制御に使用され、所望の遠隔運動中心を有効化及び定義することに役立つ一連の3つの関節を含む。この機構を本明細書では「RCM機構」と呼ぶ。RCM機構の第1の関節はハブであり、これは、この例では、回転軸又は旋回軸194を有する旋回関節192(本明細書では「旋回関節」と呼ぶ)を含む。第2の関節は、曲率中心を中心に延びる弧状トラックを含み、遠隔旋回関節(本明細書では「弧状関節」と呼ぶ)として記載されてよく、これは、この例では、ハブ192内に固定された運動キャリッジ198に対して相対的に動くことが可能な弧状トラック196を含み、これは、弧状トラック196の曲率中心を通る遠隔回転軸又はピボット軸200を形成する。遠隔回転軸200は、第1の旋回関節192の軸194と直交する。この例のRCM機構の第3の(最後の)関節は、弧状トラック196に取り付けられた直動関節202(本明細書では「直動関節」と呼ぶ)を有する直線並進装置を含む。直動関節202は、その並進軸204が軸194と軸200との交点を通るように配置される。各関節軸が複合的に交差することによって遠隔運動中心162が定義される。上述の関節群の構成により、取り付けられた手術器具が最小侵襲アクセスで患者の体に挿入されることが容易になりうる。
【0081】
この好ましい実施形態では、ハブ内の旋回関節は、RCM機構を形成する一連の関節のうちの第1の関節であり、その後に弧状関節及び直動関節が続く。この好ましい実施形態では、旋回関節は、ここまでの図で示したように、システム100の使用時に回転軸が少なくともほぼ直立しているように、即ち、回転軸が床に対して垂直であるように構成されている。他の実施形態では、旋回関節、弧状関節、及び直動関節の配置は、同じ又は同様のRCM運動を実現する別の配置であってよい。例えば、旋回関節は水平に配置されてよく、その旋回軸は床に平行であってよい。別の場合には、弧状トラック196がハブ192に固定されて、転がり要素を搭載するキャリッジ198が弧状トラック196に沿って動いてよい。この例では、直動関節202が可動キャリッジ198に固定されて遠隔運動中心が維持される。図4は、手術器具112が取り付けられた同じRCM機構190を示す。手術器具112は直動関節に取り付けられており、直動関節は、RCM機構を構成する3つの関節のうちの最後部の関節である。外科医は、外科医ハンドル108を介して手術器具112のエンドエフェクタ164をマニピュレートする。
【0082】
図5は、ロボット手術ユニット104の好ましい一実施形態を示しており、全てのロボット支援構成要素及びRCM機構を含むが、手術器具は明確さの為にイメージから省略している。図2も参照すると、この実施形態は、遠隔運動中心162と、外科医ハンドル108と、ハンドルコネクタ218と、器具インタフェース220及びアクチュエーションユニット222を含む装置取付ユニットと、直動トラック224を含む直線並進装置と、弧状トラック226と、旋回関節228を含むハブと、支持アーム102に固定される為の接続プレート232及びベース234を含むベース部材と、を含む。このシステムは又、直動カウンタバランシングシステム600の形の並進カウンタバランスシステムと、ばねカムカウンタバランシングシステム602の形の弧カウンタバランシングシステムと、を含む。
【0083】
この例では、外科医は、外科医ハンドル108を介してロボット手術ユニットを制御することが可能である。この好ましい実施形態では、外科医ハンドル108は、手術器具の手首エンドエフェクタをロボットでマニピュレートする為の、多自由度を有する、ジョイスティックのような装置で構成される。外科医ハンドルは、外科医ハンドル108の現在の方位を読み取る為の複数のセンサを搭載している。外科医ハンドル108は、ハンドルコネクタ218でアクチュエーションユニット222に強固に取り付けられており、ハンドルコネクタ218は中空であり、外科医ハンドル内のセンサとアクチュエーションユニットとの間を走る複数の電線を保持する。アクチュエーションユニット222は、取り付けられた手術器具のエンドエフェクタの制御及びアクチュエーションの為のモータ、モータドライバ、モータエンコーダ、及びマイクロコントローラを収容する。器具インタフェース220は、手術器具が取り付けられて、手術器具のエンドエフェクタのアクチュエーションの為の回転運動を手術器具に与える機構であり、アクチュエーションユニット222と同じ構成要素の一部である。手術器具は、器具インタフェースに容易に取り付けられるように、且つ器具インタフェースと容易に係合するように、且つ後で器具インタフェースから容易に取り外されるように設計される。
【0084】
この例では、アクチュエーションユニット222及び直動トラック224は、それぞれがRCM機構の直動関節の一部である。直動トラック224は、その、弧状トラック226に強固に取り付けられていることが好ましい第1の端部と、反対側の自由な第2の直線トラック端部との間を延びる直線トラック部材又はレール部材である。トラック224は、この直線トラックによって定義される並進軸に平行な軸がそれら以外の軸と交差するように(これはRCM点を定義することを支援する為に望ましい)少なくともほぼ直線であることが好ましい。完全な直線トラックから多少ずれていても、軸同士がずれたり、RCM点の機能性が阻害されたりしなければ、本明細書の教示の目的上、ほぼ直線であると見なされてよい。
【0085】
弧状トラック226がハブ内の旋回関節228を通ることによって、安定化装置のこの例の弧状関節が形成される。ベース234の背面に、支持アーム102への取り付けの為のマウントプレート232がある。ベース234内にばね質量カウンタバランシングシステム602が収容され、直動トラック224に沿って直動カウンタバランシングシステム600が設置される。
【0086】
図6は、装置取付ユニットに手術器具112が接続された手術システムを示す。この例では、手術器具112は、手術器具ベース250と、シャフト軸に沿ってベース250と遠位先端との間に延びる細長シャフト252と、遠位先端に設けられたエンドエフェクタ164と、を含む。この例では、手術器具は、手首構成のエンドエフェクタにおいて少なくとも自由度3を有し、これに加えて、把持部、はさみ等のアクチュエーションの為の第4の自由度を有する。エンドエフェクタ164は、器具ベース250での運動を細長シャフト252の下方のエンドエフェクタ164まで伝達する任意の数の方法(例えば、ケーブル、プッシュロッド、流体アクチュエーション等)で駆動されてよい。機械的手首エンドエフェクタは、複数の方法(例えば、ギヤ、プーリ、曲げ関節等)で実現可能である。安定化装置は、手術装置の支持、方向付け、及び位置合わせに役立ちうる、他の装置取付及び安定化フィーチャを含んでよい。この例では、弧状トラック226は、手術器具の細長シャフト252に対応するサイズの装置アパーチャ570を含む。カニューレが装置アパーチャ570にぴったり入って圧力嵌合で固定されてよく、カニューレは、安定化装置に接続されているときには手術器具をガイドすることに役立ちうる。カニューレは又、最小侵襲手術の為のアクセス点を提供することが可能である。カニューレは使い捨てであってよく、手術中に使用される器具に応じて様々なサイズのカニューレが使用されてよく、例えば、標準的な手術器具のシャフト径の5mm又は8mmにぴったり合うカニューレが使用されてよい。
【0087】
図7も参照すると、ハブ内の旋回関節228は、RCM機構を構成する一連の3つの関節の第1の関節であり、クレビス型の内側旋回部280及び外側旋回部282からなる。外側旋回部282は、関節の上部及び下部の両方において内側旋回部280を支持する。内側旋回部280は軸284を中心に自由に回転し、一方、外側旋回部282は固定されている。第2の関節は、弧状トラックによって形成されている遠隔旋回関節であり、これは弧状関節とも呼ばれ、遠隔運動中心162を中心に回転する。この弧状関節は、弧状トラック226と、内側旋回部280に収容されている転がり要素と、を含む。弧状トラック226、及びすぐ後ろに取り付けられた構成要素(直動トラック224及びアクチュエーションユニット222を含む)は、遠隔運動中心162を中心に、円弧/円286で示される円弧径で旋回する。直動関節は装置取付ユニットを含み、その動力アクチュエーションユニット222は、直線トラック224と係合可能な直線並進要素を含むように構成されており、それによって、装置取付ユニットは、弧状トラック226に固定された静止直動トラック224に沿って移動/並進することが可能である。器具が取り付けられると、細長シャフト252で定義されるシャフト軸254が直線トラック224の並進軸288に平行であり、且つ遠隔運動中心162と交差して、自由度3の遠隔運動中心機構が完成する。
【0088】
他の実施形態では、同じ全体関節構成を保ちながら、各関節によって生成される運動を実現する代替の機械的方式がありうる。例えば、外側旋回部280が関節の上部又は下部でのみ内側旋回部282に取り付けられていれば、旋回関節は、クレビス関節設計なしで実現可能である。別の実施形態では、弧状関節は、固定された弧状トラック226と、直動トラック224の遠位端に搭載された転がり要素と、により、転がり要素が弧状トラック226に沿って移動することを可能にすることによって実現可能である。別の実施形態では、弧状関節は、テレスコープ型の関節設計によって実現可能であり、この場合、内側旋回関節280に転がり要素を搭載することは不要である。例えば、テレスコープ型弧状関節は幾つかのリンクで構成されてよく、これらのリンクが互いに対して伸縮することによって所望の遠隔旋回運動が生成される。同様に、直動関節は、弧状トラック226上に転がり要素を含め、直動トラック224全体が軸288に沿って並進することを可能にすることによって実現可能である。この例では、アクチュエーションユニット222内の転がり要素はなくなり、代わりにアクチュエーションユニットは直動トラック224に強固に固定されることになる。別の例では、直動トラックは、弧状関節に関して上述したテレスコープ方式によって実現可能である。テレスコープ関節設計の一利点は、サイズが固定されたままの構成要素(例えば、弧状トラック226及び直動トラック224)がないことである。
【0089】
この実施形態では、安定化装置は純粋にパッシブであり、取り付けられた手術器具112のエンドエフェクタ164の位置決めシステムとして使用される。別の実施形態では、RCM機構の各関節は、関節データを連続的に記録する為にセンサ(例えば、ポテンショメータ又はエンコーダ)を搭載してよい。RCM機構は自由度3のシステムである為、そのようなシステムに対する解析運動モデルが存在し、エンドエフェクタ164の位置は、適切なコントローラが、そのようなセンサでキャプチャされた関節データを使用して計算することが可能である。器具のエンドエフェクタ164の位置は様々な様式で使用されてよく、例えば、手術中の器具のナビゲーション及び追跡、手術中の全ての器具データの記録、又は外科教育に使用されてよい。例えば、手術先端(即ち、経路長)の運動の無駄のなさ又は躍度(加速度の導関数)をリアルタイムで又は手術後に解析して、外科医のスキル及び/又は手術結果を見極めることが可能である。
【0090】
任意選択の代替実施形態では、3つのRCM関節のいずれか又は全てが適切なブレーキ装置(例えば、電子制御又は機械制御のブレーキ)を含んでよく、これは更なる機能性の為であり、例えば、より細やかな運動制御の為にいずれか又は全ての関節をアクティブにダンプする機能、手術部位から離れている組織に対する損傷を抑える為の仮想フィクスチャ、又は所与の手術タスク中に1つ以上の関節をロックする機能の為である。1つ以上の関節を選択的にロック及びロック解除する機能は、例えば、外科医が組織を特定の位置に保持することを可能にしたり、RCM機構が器具交換の間にその厳密な位置にとどまることを可能にしたりできる。上述の高度な機能性(例えば、関節のダンプ、関節のロック、又は仮想フィクスチャ)は、外科医が複数の方法で、例えば、外科医ハンドルに付いているボタン、スイッチ、ノブ等で、外科医の手が届くそばにあるタッチスクリーンで、又はフットペダルで制御することが可能である。一代替実施形態では、高度な機能性は手術助手によって活性化されてよい。一代替実施形態では、RCM関節のいずれか又は全てが、モータ等のアクチュエータを搭載することによって電動化されてよく、アクチュエータは、各関節に組み込まれて直接駆動を行ってよく、又は関節から離れて設置されて(例えば、ケーブル又はベルト又はギヤシステムを使用する)伝達システムで駆動されてよい。RCM機構の電動化と、センサ化(即ち、各関節へのセンサ追加)との組み合わせにより、より高度な機能性(例えば、アクティブ触覚フィードバック、完全遠隔操作(外科医がコンソールからロボットユニットを制御する)、又は半自律型又は完全自律型の手術タスク)が可能になる。
【0091】
安定化装置が使用される場合、ハブは、弧状トラック、直線並進装置、及びこれにマウントされた装置取付ユニットが回転軸284を中心に所定の運動範囲内で回転することを可能にしうる。この運動範囲は、任意の適切なストッパ又は他のそのようなハードウェアリミッタ又はソフトウェアリミッタにより任意の適切な運動範囲に制限されてよく、例えば、約45度以下、約90度以下、約180度以下、約270度以下、及び/又は約360度に制限されてよい。これは、手術装置の動き範囲を所望の使用範囲内に制限することに役立ちうるとともに、手術装置と手術室内の他の物体との衝突を防ぐことに役立ちうる。代替として、ハブは、回転軸284を中心に完全な360度以上にわたって自由に回転することを可能にでき、これは、使用時の回転運動範囲をほぼ無制限にすることに役立ちうる。例えば、図8は、手術器具が取り付けられたロボット手術ユニットの、第1の回転位置における上面図を示しており、一方、図9及び図10は、安定化装置の各部分が、RCM機構のハブ/旋回関節228及び回転軸284を中心にどのように回転しうるかの例を示している。
【0092】
同様に、旋回関節228及び弧状トラック226は、この説明的な例では、弧状トラック226がその湾曲/弧状円286の経路に沿って(且つピボット軸200/遠隔ピボット162を中心に)所望の運動範囲にわたって動くことを可能にするように構成されている。この例では、弧状トラック226(及びこれにマウントされた他の構成要素)の運動範囲は、これらがほぼ、弧状トラック226の長さに沿って弧状トラック226の両端部の間を動けることから、弧状トラック226の物理的広がり/構成によってほぼ制限されている。図示の例では、弧状トラック226は約45度の円弧長(例えば、弦及び角度)を有するが、他の例では、円弧長がこれより短くても長くてもよく、それによって、ピボット軸200を中心とする動き/移動の範囲が小さくも大きくもなりうる。例えば、図11及び図12は、この例の場合に、弧状関節の、弧状円286に沿っての運動、及び遠隔運動中心162を中心とする回転がどのように行われるかを示している。図11では、弧状トラック226が第1の限界位置の近くに位置しており、弧状トラック226の、直線並進装置に接続されている端部がハブに近接している。図12では、弧が逆に位置にあって、弧状トラックの反対側の第2の端部がハブに近接しており、弧状トラック226の、直線並進装置に接続されている端部がハブから離れて位置している。図示の例では、弧状トラック226の動きは、回転軸284を中心とするハブの回転と無関係である。
【0093】
安定化装置は又、直線並進軸(この例では軸288)に沿っての並進が、軸284を中心とする回転又はピボット軸200を中心とする旋回と無関係に行われうるように構成されることが好ましい。弧状トラック226の動きと同様に、図示の例では、装置取付ユニットの並進範囲は、装置取付ユニットがトラック224に沿って、その対向する固定端と自由端との間を摺動できることから、直線トラック224の物理的長さ/広がりにほぼ制限される。例えば、図13及び図14は、並進軸288に沿っての、装置取付ユニットの、安定化装置の他の部分に対して相対的な動きを示しており、図13ではアクチュエーションユニット222が機外位置即ち後退位置にあり(即ち、アクチュエーションユニット222がトラック224の自由端にあり)、図14では、アクチュエーションユニット222が機内位置即ち伸長位置にある(即ち、アクチュエーションユニット222が、弧状トラック226に近接する、トラック224の固定端にある)。
【0094】
安定化装置において使用されるハブは、ハブの回転軸を中心とする所望の回転を可能にしながら弧状トラック及び他のシステム構成要素を支持できる任意の適切なハードウェアを含んでよい。この例では、ハブは旋回関節228を含み、旋回関節228の詳細を図15~16に示す。図15及び16を参照すると、この例では、旋回関節228は、回転可能な内側旋回部280と、固定されている外側旋回関節282とを含むクレビス構成である。フランジ付きベアリング340及び342が、外側旋回部282の一部であるベアリングハウジング344及び346に圧入されている。Dプロファイルシャフト348及び350が、フランジ付きベアリング340及び342を通って、内側旋回部280の対応するハウジングに圧入されている。全てのシャフト及びベアリングが止めねじで固定されている。内側旋回部280は4つのV溝ローラ356を搭載し、これらが弧状トラック226の90度トラックプロファイル358と嵌合して、弧状トラック226が動くことを可能にしている。内側旋回関節280の壁のカットアウト360により、弧状トラック226が厳密な中心を通り、旋回関節及び弧状関節の軸を揃えることが可能になっている。図示のクレビス構成により、旋回関節の運動範囲がほぼ270度に制限される。一代替実施形態では、このように運動範囲が狭められることを解消することが可能であり、これは、例えば、クレビス関節の底部を無くすことによって行われる。
【0095】
図17は、安定化装置とともに使用可能なロボット支援システムの一例の概略図であり、このロボット支援システムは、外科医の手の動きを数学的変換によって手術器具の手首エンドエフェクタで再現するか手首エンドエフェクタに伝達すること(これを本明細書では局所遠隔操作と呼ぶ)によって、ロボット支援を提供するように動作可能であってよい。この例によれば、ロボット支援システムは、ハンドル(例えば、ハンドル108)のハンドル方位を記録するハンドルセンサ410(例えば、ポテンショメータ又はエンコーダ)を含んでよく、これらのセンサからの情報が、適切なセンサ信号の形式で適切なコントローラ(例えば、マイクロコントローラユニット412)に連続的にフィードされる。その後、マイクロコントローラユニット412は、外科医ハンドルの方位に基づいて必要なエンドエフェクタ手首方位を計算し、対応するコントローラ出力信号を生成して、コマンド/信号をモータコントローラ414に送信してよく、これを受けてモータコントローラ414は、適切なコマンド及び信号をモータ454に与えてよい。モータ454はそれぞれがモータエンコーダ418を有することが好ましく、モータエンコーダ418からの信号が、任意選択で、閉ループシステムの形で、モータコントローラ414経由でマイクロコントローラ412にフィードバックされてよい。モータ454は、ハンドルセンサ410の出力に基づいて手術器具のエンドエフェクタ420をアクチュエートして所望のエンドエフェクタ方位を形成することが可能である。この局所遠隔操作は、外科医が制御ループを閉じる「ヒューマンインザループ」システムと呼ばれてよい。例えば、図18a、18b、及び18cは、安定化装置の好ましい実施形態に対して実施された局所遠隔操作方法の一例を示しており、ここでは、外科医ハンドル108の方位が手術器具のエンドエフェクタ164によって再現される。この例は、ハンドル108の1つの自由度での同期と残りの自由度での動きとが、エンドエフェクタ164において同様に実施されることが可能であることを示している。
【0096】
更に図19を参照すると、この例では、外科医ハンドル108が手術システムの近位端に位置し、外科医の手で制御される。外科医ハンドル108は少なくとも自由度3を有し、好ましい実施形態では、これはヨー-ピッチ-ロール構成である。外科医ハンドルの各関節の角度は、センサ410(例えば、ポテンショメータ又はエンコーダ)で追跡される。外科医ハンドル108は、ハンドルコネクタ218でアクチュエーションユニット222に強固に接続されている。ハンドルコネクタ218は、任意の適切な構成を有してよく、この例では中空内部通路を含み、この通路は、外科医ハンドル108内にあるセンサ410から延びるワイヤを収容してよい。これらのワイヤはマイクロコントローラ412に接続されており、マイクロコントローラ412はアクチュエーションユニット222に収容されているか機外にある。マイクロコントローラ412は、外科医ハンドル108内にあるセンサ410の出力を読み取り、これらをモータコマンドに変換する。モータコマンドはモータコントローラ414に伝達される。モータコントローラ414もアクチュエーションユニット222に又は機外にあってよい。モータコントローラ414は、アクチュエーションユニット222に収容されている複数のモータ454(好ましい実施形態では少なくとも4つ)に指示を出す。モータ454の回転運動が取付インタフェース220を介して手術器具112に伝達され、ケーブル、プッシュロッド等により器具のシャフト252を通って手首エンドエフェクタ164まで運ばれる。
【0097】
アクチュエーションユニット222に延びる電力ケーブルによって電子回路及びモータの幾つか又は全てに電力が供給されてよく、且つ/又は、制御系の幾つかの態様は、1つ以上のバッテリ又は他の適切な電源で動作してよい。制御系の各構成要素は互いに通信可能にリンクされてよく、任意選択で、ワイヤを含む任意の適切な接続手段により他の外部機器に通信可能にリンクされてよい。一代替実施形態では、ハンドル内にあるハンドルセンサからのコマンドが、Bluetooth(商標)等の無線通信方法によりマイクロコントローラユニットに伝達されてよい。一代替実施形態では、制御電子回路(マイクロコントローラ及び/又はモータコントローラ)は、直動関節にかかる質量の軽減を支援する為に、支持アーム102を含むシステムのベース234に収容されてよく、ベース内の電子回路とアクチュエーションユニットのモータとの間は、電気ケーブルで接続されるか、Bluetooth(商標)又は別の無線通信プロトコルによる通信が行われる。
【0098】
装置取付ユニット及びその副構成要素は、1つ以上の異なるタイプの手術装置及び器具とともに働くように構成されてよく、これは、適切な取付/接続機構を有することにより、並びに任意選択で、手術装置上の構成要素と係合してこれを駆動することが可能な相補的駆動機構を有することにより行われてよい。図19を参照すると、器具インタフェース220及びアクチュエーションユニット222の断面が示されている。この例では、取付インタフェース220は、アクチュエーションユニット222の前面に設けられていて、モータ454によって駆動される4つの同一アクチュエーションディスク480を含む。これらのアクチュエーションディスク480が手術器具上の対応するディスクとインタフェースして回転運動を与え、これが伝達されてエンドエフェクタの運動になる。取付インタフェース220は、手術器具を摩擦嵌合により機械的に保持することが可能なガイドの形の係合部材を収容してよく、アクチュエーションディスク480が手術器具上の対応するディスクと確実に位置合わせされるようにする。任意選択で、アクチュエーションディスクは、ばね仕掛けで手術器具と係合したり手術器具から係合解除されたりしてよく、或いは、磁気結合、ギヤ結合、摩擦結合等により手術器具ディスクと結合されてよい。
【0099】
更に図20を参照すると、この例では、アクチュエーションディスク480はモータ454と接続されており、モータ454はモータマウント540を介してアクチュエーションユニット222と接続されており、モータマウント540は、この例では、2つのねじをモータのフェースプレートに接続する為の貫通穴を含む。モータ454はモータマウント540に強固に固定されることが好ましく、モータ454にはモータエンコーダ542が取り付けられてよい。モータ454はDプロファイルシャフトを有し、対応するDプロファイルホールがアクチュエーションディスク480上に設けられている。アクチュエーションディスク480は、モータシャフト544にゆるく嵌合して、直動的に摺動可能になることが好ましい。このゆるい嵌合は、アクチュエーションディスク480が摺動して、対応する器具ディスクと係合することに役立ちうる。アクチュエーションディスク480のバックフェースとモータフェースとの間にばね又は他の適切な付勢部材が設置されてよく、それによって、アクチュエーションディスク480を押して対応する器具ディスクと係合させる力が与えられる。アクチュエーションディスク480は、任意選択で、リトラクタプレートによって後退して器具ディスクから係合解除されてよい。リトラクタプレートは、引っ張られたときに、取り付けられている器具から4つのディスク480全てを同時に係合解除できることが好ましい。リトラクタプレートが解放されると、ディスク480は付勢部材によって直ちにそれらの係合位置に戻ることが可能である。
【0100】
更に図20を参照すると、装置取付ユニット、及びこれに含まれるアクチュエーションユニット222は、適切なキャリッジ、シャトル、スライダ、ローラ等を含む任意の適切な機構によってトラック224に可動にマウントされてよい。幾つかの実施形態では直線アクチュエーション機構が選択されてよく、これは、医療装置及び/又は装置取付ユニットに対して比較的大きな横力がかかりうる手術タスク中であっても、スラスト荷重に抗して、アクチュエーションユニット222を直動トラック224にしっかり固定されたままにすることに役立ちうる為である。
【0101】
安定化装置のハンドルは、ユーザが把持しやすいように構成されることが好ましく、且つ任意選択で、従来の手持ち器具のハンドルのデザインの幾つかの態様と似ているように構成されることが好ましく、それによって、手持ち器具の使用経験がある外科医にとってなじみのあるものになるであろう。図21を参照すると、外科医ハンドル108の一例が、ヨー-ピッチ-ロール構成で示されている。まず、軸518を有するヨー関節510が、軸520を有するピッチ関節512につながっており、これが、軸522を有するロール関節514につながっている。全ての軸が遠隔点524で交差して、球状手首構成が形成されている。外科医は、把持部516にある指ループでハンドルを把持する。把持部516は、取り付けられた手術器具に応じて、器具機能をアクチュエート/活性化する為の自由度の追加を可能にする。例えば、把持部516は、取り付けられた手術器具のエンドエフェクタの把持を開閉する運動を制御する為に使用されてよい。把持部は、更なる器具機能(例えば、エネルギ器具上の焼灼器)を活性化する更なるボタンを搭載してよい。各関節は、センサ(例えば、ポテンショメータ又はエンコーダ)を搭載し、外科医の手の邪魔にならないように電線をハンドルの中に引き回す為の中空リンクを有する。そして電線は、ハンドルコネクタ218(これも中空)の中をアクチュエーションユニット222まで引き回される。この好ましい実施形態で示したハンドルは「ジンバル」方式である。
【0102】
図22を参照すると、ハンドルの別の例1108が示されている。即ち、この例では、ハンドル108は、ヨー軸1518を中心に回転可能なヨー関節1510が、ピッチ軸1520を中心に可動なピッチ関節1512と、ロール軸1522を中心に可動なロール関節1514と、につながっている。ハンドル1108は全般的にハンドル108に似ており、類似のフィーチャは、1000というインデックスが付けられた類似の参照符号で識別される。この例では、ハンドル軸1518、1520、及び1522は共通の点1524で交差するように構成されており、これはハンドル1108の球状手首構成を実現することに役立ちうる。この例では、取り付けられた手術器具に応じて自由度を追加する為又は追加器具機能をアクチュエート/活性化する為のボタン1516が最後のロールリンクに埋め込まれている。例えば、ボタン1516は、取り付けられた手術器具のエンドエフェクタの把持を開閉する運動を制御する為、又は両極性焼灼器の送達を活性化する為に使用されてよい。ボタン1516は機械式スイッチ、容量性素子等であってよい。各関節は、任意選択でセンサ(例えば、ポテンショメータ又はエンコーダ)を搭載してよく、好ましくは、外科医の手の邪魔にならないように電線をハンドル1108の中に引き回す為の中空リンクを有するように構成されてよい。そして電線は、ハンドルコネクタ218(これも好ましくは中空)の中をアクチュエーションユニット222まで引き回される。
【0103】
ハンドル1108は、外科医の手の握り方がペンの保持方法によく似ている「ペン方式」の握りである。外科医ハンドルには、「ペン方式」に限定されない幾つかの代替実施形態がある。他の代替形態として、ハンドルより遠位又は近位に自由度3の関節があるピストル握り方式のハンドル、及び/又はユーザの手首の質量中心と同じ位置に仮想ピボット点があるハンドルが挙げられる。任意選択で、ハンドルは、自由度がより高い器具を制御する為に3を超える自由度を有してよい。更に別の実施形態では、高度な機能性(例えば、RCM機構に対して関節をロックすること、又はRCM機構の電子制御ダンプを調節すること)の為の追加センサを搭載してよい。別の実施形態では、ハンドルは、「デッドマンスイッチ」方式のセンサ(例えば、トリガ又は容量性タッチセンサ)を有してよく、これは、手術器具のエンドエフェクタが意図せずに動くことを防ぐ為に、外科医がハンドルを保持していない限り、RCM機構をロックするように働く。別の実施形態では、ハンドルは、本発明の文脈においては当然のことながら、ユーザの手の少なくとも一部をぴったり覆うグローブであってよい。
【0104】
ハンドルコネクタ1218は又、幾つかの代替実施形態を有してよく、例えば、再構成可能及び調節可能にされるべき機能、例えば、外科医ハンドル108とアクチュエーションユニット222との間に横方向オフセットを加える機能を有してよい。制御方法は完全にフライバイワイヤであり、ハンドルコネクタ(例えば、ケーブル)を通る機械的なアクチュエーションが行われない為、ハンドル108及び1108の設計に対する制限は少なくなる。外科医が典型的には、不自然な疲れる姿勢で器具を操作しなければならない特定の手術(例えば、前立腺切除術)の場合には、ハンドルが再構成可能又は調節可能であることがメリットになりうる。
【0105】
任意選択で、本明細書に記載のように、安定化装置における自由度及び/又は関節のうちの1つ以上が、適切なカウンタバランシング装置によりカウンタバランスされてよい。カウンタバランシング装置は、ユーザからの手動入力(例えば、ハンドル108上での押したり引いたりする入力)に対する応答として、モータ又は他の駆動機構を関与させることを必要とせずに、自由に動くことが可能なように、パッシブである(即ち、電動化されていない)ことが好ましい。このタイプのカウンタバランシングは、手術システムの実施形態によっては望ましい場合がある。これは、モータ、電子回路、センサ等のロボット/支援構成要素が手術システムにとってかなりの重量増となりうる為であり、従って、好ましい実施形態ではカウンタバランシングシステムが実施される。カウンタバランシングは、外科医が手術器具を定常位置で保持する為に必要とする全ての入力力を減らすこと、並びに場合によっては無くすこと又は最小化することに役立ちうる。システムをカウンタバランスするのに必要な力は、手術器具の質量及び位置の関数である。より具体的には、質量は、図23に示すように、X-Z平面内を動くことが可能な全ての構成要素を含み、これには、外科医ハンドル108、直動トラック224、弧状トラック226、アクチュエーションユニット222、及び取り付けられた手術器具112が含まれ、これらに限定されない。好ましくは、この例で示したように、安定化装置は、システムの使用時に旋回関節228の回転軸284がほぼ垂直(即ち、重力ベクトルに平行)であるようにセットアップされる。この配置では、安定化装置は、旋回関節228に関しては物質的なカウンタバランシングを全く必要とせず、弧状トラック226及び直動トラック224によって発生する重力だけがカウンタバランシングを必要とする。本明細書では質量中心(COM)という用語は、弧状関節又は直動関節に沿って動くことによってカウンタバランシングが必要になる全ての構成要素の質量の中心を意味する。COMは、図23では、簡潔にする為に、手術器具のベースと外科医ハンドルとの間に位置するものとして概略的に示したが、手術システムの様々な例では異なる位置にあってよい。
【0106】
この配置では、COMは、遠隔運動中心162を中心とするトルクを発生させ、このトルクは、手術器具及び関連付けられた構成要素が直動トラック224又は弧状トラック226に沿って動くにつれて変化する。図23に示したように、弧状トラック226に沿うCOMの角度をθとし、直動トラック224に沿って遠隔運動中心162から計測されたCOMの位置をxとする。簡略化されたシステム表現を示す図24aに示すように、発生するトルクは、COMから遠隔運動中心162の垂直軸までの横方向距離(「T」)と、関係する構成要素の質量に依存する力(「mg」)とに依存する。トルクはTとmgの積である。x又はθのいずれかが増えると、Tの長さも増えて、遠隔運動中心162を中心とするトルクが増える。θが90度に近づくとトルクは最大値に達し、このとき手術システムは完全に水平な姿勢であり、xは最大になる。図24bでは、特殊なケースとしてθが0度に設定されている。器具のCOMは遠隔運動中心162の真上の垂直方向にあり、T、即ち、COMと遠隔運動中心30の垂直軸との間の法線距離はゼロまで減少している。言い換えると、θが0度の場合には、弧状トラック226によって形成される関節は、必要とされるカウンタバランスに寄与しない。この配置では、遠隔運動中心162を中心として働くトルクは、弧状トラックの第1の端部の、ハブに対して相対的な角度位置、即ち、θが約0度から約90度まで変化するにつれて増える。任意選択で、本明細書に記載のように、カウンタバランシングシステムは付勢装置を含んでよく、付勢装置は、(重力負荷をカウンタバランスすることを支援する)付勢力の大きさが、弧状トラックの第1の端部の、ハブに対して相対的な角度位置が約0度から約90度まで変化するにつれて増えることが可能であり、それによって、弧状トラックの第1の端部の、ハブに対して相対的な角度位置が約0度から約90度までの途中にあるときに、付勢力がトルクTの大きさとほぼ同じままであるように(例えば、互いの約10%以内、約10~20%以内、任意選択で20%超以内であるように)構成される。遠隔運動中心162を中心とするトルクは発生しないが、直動トラック224に沿って動く構成要素は重力ベクトルと同一直線状にあり、カウンタバランシングを必要とする。
【0107】
図25は、手術システム100において実施できる適切なカウンタバランシングシステムの一例の概要を示す。図示の例の手術システムをカウンタバランスする為に、好ましい実施形態では、2つの別々のカウンタバランスが実装される。第1に、直動トラック224に沿って直動プーリ質量カウンタバランスシステム600が実装される。直動カウンタバランスシステム600に必要なカウンタバランスウエイトの質量は、直動トラック224に沿って動くことが可能な全ての構成要素(この例ではアクチュエーションユニット222、手術器具112、及び外科医ハンドル108を含む)の質量の合計に少なくともほぼ等しくなるように選択される。直動カウンタバランスシステムの機能は、(1)取り付けられた手術器具の直動運動(即ち、手術器具の挿入及び後退)をカウンタバランスすることの支援と(2)直動トラックに沿って動く全ての構成要素の質量中心をほぼ一定に保つことの支援との二部構成であることが好ましい。システム600を使用して、このほぼ一定の質量中心の実現を支援することは、弧状トラックに作用する第2のカウンタバランスシステム602の使用を促進することに役立つ。図示の例では、弧カウンタバランスシステム602は、主に安定化装置のベース234にあるケーブル駆動のばねカムカウンタバランスシステムである。第2のカウンタバランシングシステム602は、遠隔運動中心162を中心として発生するトルクを相殺することを支援するように設計されている。好ましい実施形態において実施されるこの二部構成のカウンタバランスアプローチは、本質的には、直動トラック224と弧状トラック226とで必要とされるカウンタバランシングを切り離すものであり、各システムの設計及び動作をシンプルにすることが可能である。
【0108】
図26a及び図26bを参照すると、直動並進カウンタバランスシステム600及びばねカム弧カウンタバランスシステム602の概略図が示されている。この図では、ハンドル及びアクチュエーションユニット等の直動構成要素(この図ではまとめてユニットMで表している)が直動トラック224に沿って動いたときに、直動プーリ質量カウンタバランスがCOMを比較的一定にすることに役立つ。好ましくは高密度材料で作られる(従って、必要な体積が小さい)十分に均等なカウンタバランス質量を「C」で表す。直動トラック224は、両端部にプーリの形のガイド部材(「P」)を搭載し、質量Mと質量Cはケーブルでつながっている。質量Mが直動トラック224に沿っていずれかの方向に動くと、質量Cが反対方向に動く。これらの質量は実質的に等しい為、直動トラック224に対して相対的なCOMの空間的位置はほぼ一定に保たれる。このことを図26bに示した。この図では、図26aでの質量M及び質量Cの位置と比較して、質量MがRCMに向かって動いており、質量Cが反対方向に動いているが、COMは同じ位置にとどまる。このようにCOMの位置が比較的固定されていることの結果として、並進構成要素によってRCMを中心に発生するトルクは、ほぼ一定レベルに保たれる。そしてこの発生トルクは、ばねカムカウンタバランスシステム602によってカウンタバランスされる。ばねカムカウンタバランスシステム602は、「Fc」で表された、ほぼ一定且つ均等であるが方向が判定であるトルクを、弧状トラック226に沿って延びるケーブルを介して発生させることが可能である。
【0109】
図27~28は、直動カウンタバランスシステム600の好ましい一実施形態を示す。この例では、キャリッジ650が、直動トラック224の裏側にある専用カウンタバランストラックに沿って動く。直線キャリッジ650はカウンタバランスウエイト680を保持し、カウンタバランスウエイト680は、直動トラック224上の全ての可動構成要素のウエイトと等しくなるようなサイズになっている。直動トラック224の両端部にガイド部材/プーリ656及び658がある。ケーブル660がキャリッジ650につながっており、プーリ656に巻き付いており、アクチュエーションユニット222で終端されている。第2のケーブル666がキャリッジ650の反対側の端部につながっており、プーリ658に巻き付いており、アクチュエーションユニット222の反対側の端部で終端されている。このケーブルシステムは、適切なケーブル張力を実現する為に、様々なシステム(例えば、ターンバックル、キャプスタン等)により、キャリッジ650及びアクチュエーションユニット222上の接続点でピンと張られて取り付けられてよい。
【0110】
更に図29を参照すると、COMは直動トラック224に沿って同じ位置にとどまり、従って、図29に示すように、一定のCOM半径を形成することが理解される。そしてばねカムカウンタバランスシステム602は、好ましくは、いかなる角度θに対してもこのトルクをほぼ相殺するように構成/較正されてよい。図示の例では、可撓引張部材(例えば、ワイヤ又はケーブル700)が弧状トラック226に沿って延び、(トラックの、直線並進装置と同じ端部にある)位置702で弧状トラック226の一端に取り付けられる。ケーブル700の反対側の端部はカム720に巻き付いてつながっている。カム720は、ベアリングで支持されているカムシャフト712に強固に取り付けられており、それによって、カム720及びカムシャフト712の両方が一体となって回転することが可能になっている。第2の引張部材(例えば、ケーブル722)がカム712に巻き付いてつながっており、ケーブル722の他方の端部が適切な付勢部材(例えば、引張ばね724、ゴムバンド等)につながっている。
【0111】
ケーブル700は、この配置では、カムとカムシャフトの径の比と同じ比で実質的に短くなっており、結果として出力ケーブル722が非常に短くなっている。ケーブル長が元のままであったならば、ばねの運動距離が弧状トラック226の弧長と同等でなければならないであろう。ケーブル長をケーブル722まで実質的に短くすることによって、実装するばねを非常に小さくすることが可能である。このことは、手術システムの全体サイズを小さくすることに役立ちうる。一代替実施形態では、定荷重ばねをカムに巻き付けることによって、カウンタバランシングに必要なトルクが印加される。一代替実施形態では、ケーブル長の短縮を実現する為にギヤボックスシステムが使用されてよい。
【0112】
この例のばねは、ケーブルシステムに作用する力(「Fspring」)を発生させ、弧状トラック226の端部において接線方向の力(「Fc」)を発生させる。カム、カムシャフト、及びばねは、Fcによって発生するトルクがmgによって発生するトルクと同じ大きさで反対向きであるように設計される。このバランスが保たれていれば、システムが完全にカウンタバランスされているとみなしてよい。
【0113】
図30~31は、ばねカムカウンタバランスシステム602の一例の内部動作を明らかにする為に、本システムのベース及びハブの断面を示す。本システムはケーブル700の形で引張部材を使用しており、ケーブル700は、接続点702で弧状トラック226の端部に取り付けられている。ケーブルシステムは間接的にばね726につながっており、ばね726は、関係する構成要素の質量によって遠隔運動中心を中心に発生するトルクをカウンタバランスする力を発生させる。
【0114】
この配置では、ケーブル700は、弧状トラック226上にあるケーブル取付点702に取り付けられている。ケーブル700は、旋回関節に入ると、内側旋回部280のハウジング内にあるガイド部材/プーリ706によって方向を垂直方向に変えられる。プーリ706は、好ましくは、ケーブル700のこの区間が回転軸284と平行であるように配置され、より好ましくは、ケーブル700のこの区間が回転軸284と同軸であって旋回関節/ハブの中心を通るように配置される。この配置は、弧カウンタバランスシステム602による、旋回関節軸284を中心とするトルクの発生を低減及び/又は防止することに役立ちうる。そしてケーブル700はDプロファイルシャフト348(これは中空であることが好ましい)を通り、外側旋回部282のハウジング内にある第2のガイド部材/プーリ708によって再び方向を変えられる。ケーブル700は、カム720上のケーブルガイドに巻き付けられ、カム720上で終端される。カム720はカムシャフト712に強固に接続される。第2のケーブル722がカムシャフト712に巻き付けられ、カムシャフト712上で終端されており、カムシャフト712は、ケーブル712をガイドすることに役立つケーブル溝を含む。ケーブル722の他方の端部は、引張ばね724につながっている。ばね724は調整可能なばねスタッド726に取り付けられており、ばねスタッド726はフレーム282に取り付けられている。調整可能なばねスタッド726は、システム内のケーブル張力が適正になるようにばねの位置を微調整することに使用される。好ましい実施形態では、十分なカウンタバランス力を発生させる為に2つのばね724が使用される。
【0115】
図30は、弧状トラックが完全に後退している場合(θが小さい)のシステムを示している。外科医がハンドルを下方に動かすにつれて、システムの質量によって発生するトルクが増える。弧状トラックが動くと、ケーブル700が伸びて、カム720への巻き付きが解除されていく。カム720及びカムシャフト712が回転すると、ケーブル722が巻き付いて実質的に短くなってばね724を引き寄せる。同じ回転によって同時に引き起こされるケーブル700の巻き付き解除及びケーブル722の巻き付きは、それぞれのケーブルをカム/カムシャフトに対して互いに逆にフィードすることによって達成される。図31は、弧状トラック226が完全に伸長している場合(θが大きい)の、結果としてばねが伸びている様子を示している。図32~33は、ケーブルシステム及び引張ばねの上面図を示す。
【0116】
カウンタバランシングシステムは、例えば、次のように動作することが可能である。外科医がハンドル108を垂直方向に下降させると、θが大きくなって、重力によって遠隔運動中心162を中心に発生するトルクが増える。これが起こると、弧状トラックに沿って上方に引き回されて旋回関節を通っているケーブル700がカム720に対してトルクを発生させてカム720を回転させ、更なるケーブルをフィードして弧長の増加に対処する。同時に、カム720が回転すると、これによって、カム720が固定されているカムシャフト712が回転する。カムシャフト712が回転すると、取り付けられたケーブル722が短くなってカムシャフト712に巻き付く。ケーブル722は、短くなるにつれてばね724を引き寄せる。要するに、θが大きくなるにつれて、ケーブルシステムはばねを伸ばす。ばね力によってケーブル700の張力が大きくなり、それによって、重力に起因し、関係する構成要素の質量によって発生するトルクに対して反対方向にトルクが発生する。逆に、外科医がハンドル108を反対方向に動かすと、θが小さくなって、ばね復元力によってカムシャフト712が反対方向に回転し、過剰なケーブル700がカム720に巻き付けられることが可能になる。手術システムが適切にカウンタバランスされる為には、いかなる角度θにおいても、カウンタバランスシステムによって発生するトルクと、構成要素の質量によって発生するトルクとが同等でなければならない。言い換えると、ばねによって発生するトルクと、関係するシステムの質量によって発生するトルクは等しいことが好ましい(又は互いの少なくとも約5%、10%、15%、20%、又は25%以内であることが好ましい)。
【0117】
図34a~34cは、遠隔運動中心を中心に発生するトルクの、角度θに対する特性を示す。器具の質量中心は遠隔運動中心162を中心に回転する為、発生するトルクは正弦波状に増える。発生するトルクは、θが0度のときにはゼロであり、θが90度のときには最大値に達する。理論的には、トルクは、θが90度のときのピークから、θが180度のときに再度ゼロに達するまで減り続ける。これはトルクが、質量中心から、遠隔運動中心162を通る垂直軸までの横方向距離の関数である為である。この、遠隔運動中心162を中心に発生する正弦波状トルクと一致させる為に、ばね724は、所定のバランシングカム特性を有する特定の巻き取りカム720を使用して、一致する正弦波状カウンタバランシング力を発生させなければならない。
【0118】
例えば、ケーブルが取り付けられ、回転して直線圧縮ばねを引き寄せる円形カムは線形トルクを発生させる。これは、カム径に基づくトルクアームが一定のままである限り、1度回転するごとにケーブル長が直線的に増える為である。カムのシャフトを中心に発生するトルクは、ばねを引き寄せる累積ケーブル長とケーブルからシャフトの中心までの瞬時モーメントアームとの両方の積である。従って、カムを中心に非線形トルクを発生させる場合には、これら2つの要因が考慮されてよい。この好ましい実施形態では、図43に示すように、累積ケーブル長とモーメントアームとの積によって、手術器具が弧状トラック224の周囲を動くときに発生する正弦波状トルクと一致する(又は少なくともほぼ一致する)正弦波状トルクが発生するようにカム720の外形が成形されている。
【0119】
記載のカウンタバランスシステムの代替実施形態では、ベースに搭載されるカウンタバランスシステムにばねシステムではなく質量を使用してよい。
【0120】
本明細書に記載の例では、並進装置の一部を成すものとして示された弧状トラック及び直線トラックは、自立していて、本システム及び安定化装置の使用中はその形態がほぼ一定のままである、実質的に剛体である固定長部材として示されている。この例では、これらのトラックの動き、及び/又はシステム構成要素の並進は、記載のように、可動なキャリッジ部材又はシャトル部材を使用してそれぞれのトラックの長さに沿って一体物を摺動又は並進させることによって達成される。そのような配置では、装置取付ユニットは、例えば、手術装置が後退して患者から離れたときに直線トラックの遠位端/自由端に隣接してよく、そして、手術装置が患者に向かって動くときには、装置取付ユニットは、トラックの自由端から離れて、直線トラックの、弧状トラックにつながっている固定端に向かって動いてよい。
【0121】
代替として、且つ任意選択で、これらのトラックの少なくとも1つが可変長であってよく、装置の使用中に長さが変化してよい。これにより、トラックに沿って並進させる代わりにこれらのトラックの長さ又は形態を変化させることによって、装置取付ユニットの動きが促進されうる。例えば、直線並進装置は、並進軸方向の長さが伸縮自在な直線支持部材を含んでよい。装置取付ユニットは、可変長支持物の遠位端に接続されてよく、そして、(直線トラックに沿って並進するのではなく)可変長支持物の遠位端自体が弧状支持部材に近づいたり離れたりするときに(並進軸に沿って)弧状支持部材に近づいたり離れたりしてよい。可変長支持物は、2つ以上のテレスコープ区間、圧縮可能且つ/又は伸長可能な区間、摺動部材又は入れ子部材等を有することを含めて任意の適切な構成を有してよい。弧状支持物も同様に、(例えば)後退して直線並進装置をハブに近づけたり、伸長して直線並進装置をハブから遠ざけたりすることが可能な可変長(例えば、可変弧長)を有するように構成されてよい。
【0122】
図35は、動力アクチュエータ(この例ではモータ460及び464)の使用によるカウンタバランシング方法の一例を示す。モータ464は、直線並進装置に付勢力を印加する為に、660と同様のケーブルに取り付けられる。可動構成要素の手動マニピュレーションを可能にする為に、モータは逆駆動可能であり、手動マニピュレーション中の位置に影響を及ぼすことなく構成要素の重量を補償するように、関節の位置に基づく特定のトルクをかける。モータ460は、弧状トラック関節を補償する、同様の機能を有する。この実施形態は、モータ位置を保つことにより関節の動きを制限する保持位置モードを可能にする。これが使用される可能性が高いのは、器具交換中、並びに装置が動いてはならない手術中の他の場合においてであろう。
【0123】
更に、安全性を強化しながらアクチュエータの負荷を軽減する為に、動力アクチュエータと組み合わせて非動力カウンタバランス機構が使用されてよい。そのような一例では、非動力カウンタバランス機構は、可動構成要素の重量の少なくとも一部をカウンタバランスする。動力アクチュエータがモータである場合には、これによってモータに要求されるトルクが軽減されることになる。動力アクチュエータは、自動位置決めが達成されるように個々の関節を駆動することが可能であり、或いは特定の位置を保つ為に使用されてよい。非動力カウンタバランス機構が可動構成要素の重量の効果をほぼ打ち消すようにすれば、電源故障時の安全性のレベルが高まるであろう。
【0124】
図36は手術システムの一代替例を示しており、ここでは、弧状トラックの代わりに、可動に接続された複数のリンケージ部材を有する平行四辺形構造260を含む一代替構造が使用されている。平行四辺形構造260の一方の端部は回転可能ハブにつながっており、もう一方の端部は並進装置(例えば、直線トラック224)につながってこれを支持している。平行四辺形構造260は、他の例に記載した弧状トラックの場合と同様に、手術装置ポートの遠隔回転軸を有効にできる。結果として得られる平行四辺形の軸は、図31に示した同様のケーブル及びばねをベースとするアプローチにより、又は図35に示したような動力アクチュエータにより、カウンタバランスされることが可能である。
【0125】
本明細書に記載のように、手術システムは、任意選択で、そのプライマリモードに加えてコンパニオンモードでも動作するように構成されてよい。例えば、図1に示したように手術システムが構成されている場合、手術システムは、3つのロボット手術ユニット104、106、及び120を、それぞれに対応する安定化装置とともに含んでよく、2つのユニット104及び106は手術器具を保持する為に使用されており、1つのユニット120は内視鏡カメラを保持するように構成されている。この配置では、外科医は両手をそれぞれ、2つの手首器具の為のハンドル108及び110に置いてよく、その外科医が更に、コンパニオン内視鏡ユニットを、好ましくは、動力アクチュエータで駆動可能な内視鏡ユニット安定化装置とともに制御できることが望ましい場合があり、その場合、外科医は、既に把持しているハンドルから内視鏡の位置を制御することが可能であり、位置決めの為の助手(又は他のユーザ)は不要であってよい。このタイプのコンパニオンモードを活性化することは、いずれかのハンドルにあるボタン又は他のそのような補助入力装置を押して、そのハンドルが物理的に取り付けられているローカルの手首エンドエフェクタの制御と、離れている内視鏡の位置決めの制御とを切り替えることによって行われてよい。
【0126】
このタイプのコンパニオンモードは、(外科医が両手をそれぞれの器具に置いている為に)制御の為に別個の入力機構(例えば、音声コマンド、フットペダル、又は頭部チルト)を必要とする場合がある従来のスタンドアロン電動内視鏡位置決め装置より好ましい場合がある。これに対して、本明細書に記載のシステムは、外科医が、プライマリ装置ハンドル上での自身の手の動きによってコンパニオン装置(例えば、内視鏡)の位置を制御することに役立ちうる。
【0127】
図37を参照すると、第2の/コンパニオン遠隔運動中心機構2104の一例に内視鏡2112が取り付けられており、内視鏡2112は、ベース2250、シャフト2162、及び遠位端2164からなる。内視鏡ベース2250は、第2の装置取付ユニット上の嵌合接続インタフェース2220に取り外し可能に取り付けられている。この例の安定化装置は、コンパニオン動力駆動システムを有する為、パッシブ装置ではなく、コンパニオン動力駆動システムは、別個のプライマリ安定化装置のコントローラ(例えば、コントローラ412)と通信可能にリンクされてよいモータ2456及び/又は他の適切な動力アクチュエータを含んでよい。この配置では、安定化装置の一部を動かして装置取付ユニット2220が動くことを支援する為に動力駆動システムが使用されてよく、内視鏡2112は、プライマリ制御ハンドル(例えば、ハンドル108及び1108)からの入力に対する応答として位置決めされてよい。図38は、コンパニオンモードを含む手術システムの制御系の一例の概略を示す。この構成では、本システムが(例えば、内視鏡の制御の為の)コンパニオンモードに切り替えられると、ハンドルセンサ410及びコントローラ412は、(任意選択で、エンコーダ2418を介して提供されるフィードバックにより)モータ2456を制御する別個のモータコントローラ2414に(ワイヤ、無線プロトコル等で)接続されて、(任意選択で、先端位置エンコーダ2164を介して提供されるフィードバックにより)内視鏡の先端の位置を制御することが可能である。内視鏡2112がその所望の位置に着いたら、本システムは、そのプライマリ動作モード、及び図17に示したような制御スキーム(又は他の適切なシステム)を使用することに戻ることが可能である。
【0128】
本明細書は例示的実施形態及び実施例への参照を含むが、限定の意味で解釈されることを意図していない。従って、当業者であれば、本明細書を参照することにより、それらの例示的実施形態の様々な修正形態、並びに本明細書に記載の発明の他の実施形態が明らかになるであろう。そこで、いかなるそのような修正形態又は実施形態も添付の特許請求項によって包含されることが企図されている。
【0129】
本明細書で参照されている全ての公表文献、特許、及び特許出願は、それぞれ個々の公表文献、特許、又は特許出願が参照により完全な形で具体的且つ個別に示されて組み込まれる場合と同程度に、参照により完全な形で組み込まれている。
〔付記1〕
エンドエフェクタを含む遠位先端から細長シャフトが延びる手術装置とともに使用される、直接制御及びロボット支援のハイブリッド手術システムであって、
a)前記手術装置の重量の少なくとも一部を支持するように構成されて、遠隔運動中心を定義する安定化装置であって、前記安定化装置は、患者に対して相対的に固定されるように構成されたベース部材を有し、前記ベース部材は、前記ベース部材に対して相対的に可動であって、細長シャフト及び遠位先端を有する手術装置を取り外し可能に受けるように構成された装置取付ユニットを含み、前記安定化装置は、前記装置取付ユニット及び前記遠位先端が前記遠隔運動中心の両側にあって、前記安定化装置の使用中に前記細長シャフトが前記遠隔運動中心と交差するように、前記装置取付ユニットの動きを制限するように構成されている、前記安定化装置と、
b)前記装置取付ユニットに機械的に取り付けられて、ユーザによって把持されるように構成されたハンドルであり、それによって、前記ユーザによる、前記ベース部材に対して相対的な前記ハンドルの手動のデカルト動きが、前記装置取付ユニットで受けられている前記手術装置の前記遠位先端の対応するデカルト動きをもたらす、前記ハンドルと、
c)前記手術装置の前記エンドエフェクタを駆動するように構成されたロボット支援システムであって、
i.前記ハンドルの少なくとも第1の属性を監視して、対応するセンサ信号を生成するように構成されたセンサアセンブリと、
ii.前記センサアセンブリと通信可能にリンクされて前記センサ信号を受信し、対応するプライマリ制御信号を生成するコントローラと、
iii.前記コントローラと通信可能にリンクされて前記プライマリ制御信号を受信する動力アクチュエーションユニットであって、前記装置取付ユニットで受けられている前記手術装置のエンドエフェクタを、前記プライマリ制御信号に基づいてアクチュエートするように構成されている前記動力アクチュエーションユニットと、
を含む前記ロボット支援システムと、
を含む手術システム。
〔付記2〕
前記安定化装置は更に、
a)前記ベースに回転可能に接続されて回転軸を中心に回転可能なハブと、
b)前記ハブに接続されて、曲率中心を中心に延びる弧状トラックと、
c)前記曲率中心を通るピボット軸を中心に旋回可能であるように、前記弧状トラックに接続されていて、前記ハブに対して相対的に可動である直線並進装置であって、前記装置取付ユニットは、前記弧状トラックに対して相対的に、並進軸に沿って並進可能である、前記直線並進装置と、
を含む、付記1に記載のシステム。
〔付記3〕
前記回転軸と、前記ピボット軸と、前記並進軸に平行な装置軸とが交差することによって、前記安定化装置の前記遠隔運動中心が定義され、前記装置取付ユニットは、前記手術装置が前記装置取付ユニットに取り付けられると、前記細長シャフトが前記装置軸に沿って延びて前記遠隔運動中心と交差するように構成されている、付記2に記載のシステム。
〔付記4〕
前記直線並進装置は、前記弧状トラックに接続された固定端から、軸方向に前記固定端から離れている自由端まで延びる直線トラックを含み、前記装置取付ユニットは、前記直線トラックに摺動可能に接続されて、前記固定端と前記自由端との間を並進することが可能である、付記2又は3に記載のシステム。
〔付記5〕
前記装置取付ユニットが前記並進軸に沿って並進する際に前記装置取付ユニットの質量の少なくとも一部をカウンタバランスする為の付勢力を前記装置取付ユニットにかけるように構成された並進カウンタバランシングシステムを更に含む、付記4に記載のシステム。
〔付記6〕
前記弧状トラックは、前記ピボット軸を中心に旋回可能であるように、前記ハブに可動に接続されており、前記直線並進装置は前記弧状トラックに不可動に接続されている、付記2~5のいずれか一項に記載のシステム。
〔付記7〕
前記ピボット軸を中心として働くトルクの少なくとも一部をカウンタバランスする為の付勢力を前記弧状トラックにかけるように構成された付勢装置を含む弧カウンタバランシングシステムを更に含む、付記2~6のいずれか一項に記載のシステム。
〔付記8〕
前記手術装置は、前記ハンドルとは無関係に、前記装置取付ユニットから取り外し可能であり、前記装置取付ユニットは、第2の手術装置を取り外し可能に受けるように構成されている、付記1~7のいずれか一項に記載のシステム。
〔付記9〕
前記装置取付ユニットは、前記システムの使用中にモータを関与させることなく、ユーザからの手動入力に対する応答として、前記ベース部材に対して相対的に可動である、付記1~8のいずれか一項に記載のシステム。
〔付記10〕
前記ハンドルは、少なくとも第1の自由度を中心として前記装置取付ユニットに対して相対的に可動な把持部を含み、前記第1の属性は、前記第1の自由度を中心とする前記把持部の方位を含む、付記1~9のいずれか一項に記載のシステム。
〔付記11〕
前記把持部は又、第2及び第3の自由度を中心として前記装置取付ユニットに対して相対的に可動であり、前記センサアセンブリは、前記第2の自由度を中心とする前記把持部の方位を含む第2の属性と、前記第3の自由度を中心とする前記把持部の方位を含む第3の属性と、を監視するように構成されている、付記10に記載のシステム。
〔付記12〕
前記ハンドルは、ピッチ軸、ロール軸、及びヨー軸を中心として装置取付ユニットに対して相対的に可動な手首把持部を含み、
a)前記センサアセンブリは、前記ピッチ軸、前記ロール軸、及び前記ヨー軸のそれぞれを中心とする動きを検出するように構成されており、
b)前記センサ信号は多チャネル信号を含み、
c)前記プライマリ制御信号は、対応する多チャネル制御信号を含み、
d)前記動力アクチュエーションユニットは、エフェクタピッチ軸、エフェクタロール軸、及びエフェクタヨー軸を中心とする前記エンドエフェクタの対応する動きを引き起こすように構成されており、それによって、前記把持部の動きが前記ロボット支援システムを介して前記エンドエフェクタの対応する動きに変換される、
付記1~9のいずれか一項に記載のシステム。
〔付記13〕
前記動力アクチュエーションユニットは複数の回転可能アクチュエーションディスクを含み、前記複数の回転可能アクチュエーションディスクは、前記手術装置上の対応する駆動ディスクとインタフェースするように構成されており、それによって、前記エンドエフェクタが前記エフェクタピッチ軸、前記エフェクタロール軸、及び前記エフェクタヨー軸を中心として駆動されることが可能である、付記12に記載のシステム。
〔付記14〕
前記センサアセンブリは、前記ピッチ軸、前記ロール軸、及び前記ヨー軸のうちの少なくとも1つを中心とする前記把持部の方位/位置を検出する為の少なくとも1つのポテンショメータ又はエンコーダを含む、付記13に記載のシステム。
〔付記15〕
前記ピッチ軸、前記ロール軸、及び前記ヨー軸は共通の点で互いに交差する、付記12~14のいずれか一項に記載のシステム。
〔付記16〕
前記ハンドルは更に、前記コントローラと通信可能にリンクされた補助ユーザ入力装置を含み、前記コントローラは、前記補助ユーザ入力装置をトリガすることによって、前記エンドエフェクタに対する、対応する補助作用がトリガされるように構成されている、付記1~15のいずれか一項に記載のシステム。
〔付記17〕
前記補助ユーザ入力装置は、スイッチ、ボタン、及びノブのうちの少なくとも1つを含み、前記エンドエフェクタに対する前記補助作用は、焼灼、把持、潅注、及び吸引のうちの少なくとも1つを含む、付記16に記載のシステム。
〔付記18〕
前記並進カウンタバランシングシステムは、前記直線トラックに沿って並進可能であって前記装置取付ユニットに作用的に接続されているカウンタウエイトを含み、それによって、前記装置取付ユニットが並進すると、前記直線トラックに沿っての前記装置取付ユニットの前記並進を少なくとも部分的にカウンタバランスする、前記カウンタウエイトの反対方向の並進が引き起こされる、付記5に記載のシステム。
〔付記19〕
前記装置取付ユニットは前記直線トラックの第1の側に取り付けられており、前記カウンタウエイトは前記直線トラックの、反対側の第2の側に取り付けられており、前記装置取付ユニットがある方向に並進すると、前記カウンタウエイトは逆の方向に並進して、前記装置取付ユニットをカウンタバランスする、付記18に記載のシステム。
〔付記20〕
前記手術装置が前記装置取付ユニットに取り付けられると、前記直線トラック、前記装置取付ユニット、前記ハンドル、前記手術装置、及び前記カウンタウエイトの組み合わせ直線質量中心が、前記遠隔運動中心に対する基準位置に置かれ、前記装置取付ユニット及び前記カウンタウエイトが前記直線トラックに沿って並進しても、前記組み合わせ直線質量中心は前記基準位置にほぼとどまる、付記19に記載のシステム。
〔付記21〕
前記カウンタウエイトの質量は、前記装置取付ユニット、前記ハンドル、及び前記手術装置の合計質量にほぼ等しい、付記19又は20に記載のシステム。
〔付記22〕
前記弧状トラックの第1の端部の、前記ハブに対して相対的な角度位置が約0度から約90度にかけて変化するにつれて、前記遠隔運動中心を中心として働くトルクの大きさが増え、前記付勢装置は、前記弧状トラックの第1の端部の、前記ハブに対して相対的な角度位置が約0度から約90度にかけて変化するにつれて前記付勢力の大きさが増えるように構成されている、付記7に記載のシステム。
〔付記23〕
前記弧状トラックの第1の端部の、前記ハブに対して相対的な角度位置が約0度から約90度にかけての途中にあるときには、前記付勢力の大きさは前記トルクの大きさにほぼ等しいままである、付記22に記載のシステム。
〔付記24〕
前記装置取付ユニットは前記動力アクチュエーションユニットを含み、それによって、前記動力アクチュエーションユニットは、前記装置取付ユニットと調和して前記ベース部材に対して相対的に動くことが可能である、付記1~23のいずれか一項に記載のシステム。
〔付記25〕
前記コントローラは、電気ケーブル及び無線通信プロトコルの少なくともいずれかにより、前記センサアセンブリと通信可能にリンクされている、付記24に記載のシステム。
〔付記26〕
前記装置取付ユニットは、前記手術装置が前記装置取付ユニットに取り付けられたときに前記細長シャフトの軸が前記並進軸と平行になるように構成されている、付記2に記載のシステム。
〔付記27〕
前記装置取付ユニットは、前記弧状トラックの、前記ハブに対して相対的な動きとは無関係に、前記直線トラックに沿って並進することが可能である、付記4に記載のシステム。
〔付記28〕
前記ハブ、前記弧状トラック、及び前記装置取付ユニットは、モータを関与させることなく、ユーザからの手動入力に対する応答として動くことが可能である、付記2に記載のシステム。
〔付記29〕
前記回転軸は、前記ベース部材が固定されている場合にはほぼ垂直である、付記2に記載のシステム。
〔付記30〕
前記装置取付ユニットの、前記回転軸、前記ピボット軸、及び前記並進軸のうちの少なくとも1つを中心とする動きを阻止する為に選択的に係合可能であるブレーキ装置を更に含む、付記2に記載のシステム。
〔付記31〕
前記装置取付ユニットで受けられている前記手術装置の遠位先端にかかる力が前記ハンドルに伝わって、前記ハンドルを把持している前記ユーザにパッシブ力フィードバックを提供するように、前記ハンドルが前記装置取付ユニットに機械的に取り付けられている、付記1~30のいずれか一項に記載のシステム。
〔付記32〕
前記安定化装置は更に、
a)前記ベースに回転可能に接続されて回転軸を中心に回転可能なハブと、
b)前記ハブに接続された平行四辺形構造と、
c)前記平行四辺形構造の可動端部に接続されて、ピボット軸を中心に旋回可能であるように、前記平行四辺形構造の前記可動端部とともに前記ハブに対して相対的に可動である直線並進装置であって、前記装置取付ユニットは前記平行四辺形構造に対して相対的に並進軸に沿って並進することが可能である、前記直線並進装置と、
を含む、付記1に記載のシステム。
〔付記33〕
コンパニオン手術装置の重量の少なくとも一部を支持するように構成されたコンパニオン安定化装置を更に含み、前記コンパニオン安定化装置は、患者に対して相対的に固定されるように構成されたコンパニオンベース部材を有し、コンパニオン装置取付ユニットを含み、前記コンパニオン装置取付ユニットは、前記コンパニオンベース部材に対して相対的に可動であり、細長シャフト及び遠位先端を有するコンパニオン手術装置を取り外し可能に受けるように構成されており、前記ロボット支援システムは更に、前記コントローラと通信可能にリンクされたコンパニオン動力駆動システムを含み、前記システムはコンパニオンモードにおいて選択的に動作可能であり、前記コンパニオンモードでは、
a)前記コントローラは前記センサ信号を受信し、対応するコンパニオン制御信号を生成し、
b)前記コンパニオン動力駆動システムは、前記コンパニオン制御信号に基づいて前記コンパニオン手術装置を動かす、
付記1~32のいずれか一項に記載のシステム。
〔付記34〕
前記システムが前記コンパニオンモードの場合には前記コントローラは前記プライマリ制御信号を生成せず、それによって、前記ハンドルを動かしても、前記装置取付ユニットで受けられている前記手術装置の前記エンドエフェクタはアクチュエートされない、付記33に記載のシステム。
〔付記35〕
前記コンパニオン安定化装置は、第2の遠隔運動中心を定義することと、前記コンパニオン装置取付ユニットと前記コンパニオン手術装置の前記遠位先端とが前記第2の遠隔運動中心の両側にあって、前記コンパニオン安定化装置の使用中に前記コンパニオン装置の前記細長シャフトが前記第2の遠隔運動中心と交差するように、前記コンパニオン装置取付ユニットの動きを制限することと、を行うように構成されている、付記33又は34に記載のシステム。
〔付記36〕
前記コンパニオンベース部材は前記ベース部材から間隔を空けて配置されている、付記33~35のいずれか一項に記載のシステム。
〔付記37〕
前記コンパニオン手術装置は内視鏡を含む、付記33~36のいずれか一項に記載のシステム。
図1
図2
図3
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図18b
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図26b
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