(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】免疫学的バイオマーカーを使用する高齢者における健康状態の特定
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20241209BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20241209BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20241209BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20241209BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20241209BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/536 D
G01N33/543 501A
C12Q1/02
C12N15/11 Z
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2022519515
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 SG2020050540
(87)【国際公開番号】W WO2021061048
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】10201908922U
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】522120668
【氏名又は名称】センジェニックス・コーポレーション・ピーティーイー・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・マイケル・ブラックバーン
(72)【発明者】
【氏名】アリフ・アンワル
(72)【発明者】
【氏名】ヌルル・エイチ・ルット
(72)【発明者】
【氏名】アニス・ラルビ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ニコラス・フェリクス・セクサス
(72)【発明者】
【氏名】バーネット・リー
(72)【発明者】
【氏名】ジーザス・フェリクス・バイタ・ヴァレンズエラ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・モンテローラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター・トン
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-528799(JP,A)
【文献】特表2014-516155(JP,A)
【文献】特表2005-516074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体から抽出した血清/血漿試料から高齢者の健康を判定するための方法であって、
(i)健康に特異的なバイオマーカーの存在について試料を検査する工程;
(ii)バイオマーカーの存在の検出に基づいて、対象が健康である、中程度に健康である、又は不健康であるかどうかを判定する工程;
を含む方法において、
それぞれのバイオマーカーが
、パネル中の一つの特定の抗原に対する自己抗体であり、前記パネルが抗原:AURKA、FEN1、GLRX3、PHLDA1、PPM1A、FKBP3、CD96及びMAPK13を含
むことを特徴とし、
健康が、不健康/中程度の健康についてのレベルと比較して低いレベルでのPHLDA1及びCD96の検出に対応し、中程度の健康が、健康/不健康についてのレベルと比較して低いレベルでのAURKA、FEN1の検出に対応し、不健康が、健康/中程度の健康についてのレベルと比較して高いレベルでのMAPK13、FKBP3、PPM1A及びGLRX3の検出に対応する、
方法。
【請求項2】
前記パネルが、
抗原:UBE2I、AAK1、YARS、ASPSCR1、CASP10、FHOD2、TCL1A及びMAP4のうちの1つ又は複数を更に含み、健康/不健康と比較して低いレベルでのCASP10及びAAK1の検出が中程度の健康に対応し、健康/中程度の健康と比較して高いレベルでのUBE2I、YARS、ASPSCR1、FHOD2、TCL1A、MAP4の検出が不健康に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料由来の自己抗体バイオマーカーが抗原に結合できるように、抗原が、ヒトから抽出された試料に曝露される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
抗原が、蛍光タグ化二次抗体で引き続いて曝露されることにより、抗原に結合した試料由来の任意の自己抗体の量の決定が可能となる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ヒトの健康状態が、抗原に特異的に結合する試料由来の自己抗体の相対量又は絶対量に対応する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各工程がin vitroで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1つ又は複数のバイオマーカーの上方制御/下方制御を検出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
抗原がビオチン化タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
各ビオチン化タンパク質が、タンパク質とインフレームで融合しているビオチンカルボキシルキャリアータンパク質フォールディングマーカーから形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ビオチン化タンパク質がストレプトアビジンコート基材に結合している、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
基材がハイドロゲル形成ポリマーベース層を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
個体から抽出された血清/血漿試料から高齢者の健康を判定するためのキットを製造する方法であって、
パネルの各抗原について、ビオチンカルボキシルキャリアータンパク質フォールディングマーカーを、抗原をコードする遺伝子とインフレームでクローニングし、生じたビオチン化抗原を発現させる工程;
ビオチン化抗原を1つ又は複数のストレプトアビジンコート基材のアドレス可能な位置に結合させ、それにより抗原アレイを形成する工程
を含み、
それによって、パネル上の抗原に結合する試料由来の自己抗体の量が、基材を試料に曝露し、応答を測定することによって決定できる、方法において、
抗原がUBE2I、AAK1、YARS、ASPSCR1、CASP10、FHOD2、TCL1A、MAP4、MAPK13、CD96、FKBP3、PPM1A、PHLDA1、GLRX3、FEN1及びAURKAを含むことを特徴とする、
方法。
【請求項13】
高齢者の健康を判定するための抗原のパネルを含む組成物であって、抗原がMAPK13、CD96、FKBP3、PPM1A、PHLDA1、GLRX3、FEN1及びAURKAを含み、任意選択でUBE2I、AAK1、YARS、ASPSCR1、CASP10、FHOD2、TCL1A及びMAP4のうちの1つ又は複数を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項14】
抗原がビオチン化タンパク質である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
患者由来の血清/血漿試料中の抗原にin vitroで結合する1つ又は複数の自己抗体バイオマーカーの量が、患者の健康状態を判定するために測定され得る、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
高齢者患者の健康状態を判定するための自己抗体バイオマーカーのパネルを含む組成物であって、
自己抗体バイオマーカーのレベルが患者由来の血清/血漿試料中で測定される、組成物において;
自己抗体バイオマーカー
のそれぞれが、
パネル中の一つの抗原に特異的な自己抗体であり、前記パネルは、少なくとも次の抗原:MAPK13、CD96、FKBP3、PPM1A、PHLDA1、GLRX3、FEN1及びAURK
Aを含むことを特徴とし;
次の抗原:UBE2I、AAK1、YARS、ASPSCR1、CASP10、FHOD2、TCL1A及びMAP4のうちの1つ又は複
数を任意選択で含む、
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者において健康状態及び/又は老化の軌跡(aging trajectory)を判定するための免疫学的バイオマーカー、特に自己抗体の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテオミクス研究の分野における技術の進歩にもかかわらず、臨床に進んだのは少数のバイオマーカーだけであり、90%のバイオマーカーは、タンパク質バイオマーカーである[1]。本明細書に記載の自己抗体バイオマーカーは、抗原に対する自己抗体であり、自己抗体は、個体自身のタンパク質のうちの1つ又は複数(「自己」抗原)に対する、個体によって産生される抗体である。バイオマーカーを診療実務に利用することができないいくつかの主な原因[2]は:
1)感受性及び特異性が低い
2)予後値/予測値が低い
3)臨床判断のために重要でない
4)元の主張が検証できない(偽発見)
ことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高齢者のケアの管理は、年齢よりも併存疾患の病歴(過去及び現在)の現在の健康状態への影響に依存する[3]。これらの併存疾患は、感染、がん又は慢性炎症性疾患に対処するために長年にわたり負荷を受けてきた免疫系にある一定のストレスを課している[4]。
【0005】
したがって本発明の目的は、高齢者の健康状態を評価するための自己抗体バイオマーカーのパネルの改善を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様では、個体から抽出された試料から個体の健康を判定するための方法であって、
(i)健康に特異的なバイオマーカーの存在について試料を検査する工程;
(ii)バイオマーカーの検出に基づいて、対象が健康である、中程度に健康である、又は不健康であるかどうかを判定する工程
を含む方法において、
バイオマーカーがAURKA、FEN1、GLRX3、PHLDA1、PPM1A、FKBP3、CD96及びMAPK13を含む抗原に対する自己抗体であることを特徴とする、
方法が提供される。
【0007】
一実施形態では、個体は高齢者、典型的には少なくとも60歳である。
【0008】
有利には、自己抗体バイオマーカーは、血漿-抗体レベルの分布を測定することにより高齢者の健康状態(健康、中程度及び不健康)の特徴付け(又は診断)において使用され得る。更に、これらの自己抗体バイオマーカーのサブセット、特に健康及び中程度に関連するものは、非伝染性疾患に対する保護的役割を有し得る。
【0009】
一実施形態では、試料は自己抗体バイオマーカーに対応する抗原のパネルを使用して検査される。典型的には、抗原は、ビオチン化タンパク質である。有利には、ビオチン化は、自己抗体バイオマーカーによる検出の精度を保証するために抗原がそれらの正しい形態にフォールドされることを保証する。
【0010】
一実施形態では抗原は、UBE2I、AAK1、YARS、ASPSCR1、CASP10、FHOD2、TCL1A及びMAP4を含む群から1つ又は複数を含み得る。
【0011】
すべての抗原が自己抗体応答を生成するとは限らず、1500種を超える検査された抗原の所与のコホートにおいて、どの抗原がそのようにするかの優先順位を予測することが可能でないことは注目されるべきであり、上に記載される16種の抗原に対する自己抗体だけが、健康及び老化状態を特定するためのバイオマーカーとして好適である。
【0012】
一実施形態では、各ビオチン化タンパク質は、インフレームでタンパク質と融合されるビオチンカルボキシルキャリアータンパク質(BCCP)フォールディングマーカーから形成される。
【0013】
さらなる実施形態では、ビオチン化タンパク質はストレプトアビジンコート基材に結合される。
【0014】
有利には、完全長タンパク質は、融合パートナーが正しくフォールドされる場合にin vivoでそれ自体がビオチン化されるBCCPフォールディンマーカーへの融合物として発現される。比較して、ミスフォールドされた融合パートナーは、BCCPがストレプトアビジン基材に付着できないように「アポ」(すなわち、非ビオチン化)形態のままであるようにする。したがって、正しくフォールドされた融合タンパク質だけがストレプトアビジン基材に、BCCPタグに付加されたビオチン部分を介して付着する。
【0015】
一実施形態では基材は、ガラススライド、バイオチップ、条片、スライド、ビーズ、マイクロタイタープレートウエル、表面プラズモン共鳴支持体、マイクロ流体デバイス、薄膜ポリマーベース層、ハイドロゲル形成ポリマーベース層又は抗体-抗原結合の検出のために好適な任意の他のデバイス若しくは技術を含む。
【0016】
一実施形態では基材は、試料由来の自己抗体バイオマーカーが抗原に結合できるように、ヒトから抽出された試料に曝露される。
【0017】
典型的には、試料は、エキソソーム、血液、血清、血漿、尿、唾液、羊水、脳脊髄液、母乳、精液又は胆汁のいずれか又は任意の組合せを含む。
【0018】
一実施形態では試料への曝露に続いて、基材が、蛍光タグ化二次抗体に曝露されることにより、パネル上の抗原に結合した試料由来の任意の自己抗体の量の決定が可能となる。典型的には、二次抗体は、抗ヒトIgGであるが、抗IgM、抗IgG1、抗IgG2、抗IgG3、抗IgG4又は抗IgA等の他の二次抗体が使用され得ることは理解される。
【0019】
一実施形態では、個体の健全さは、抗原に特異的に結合する試料由来の自己抗体の相対量又は絶対量に対応する。
【0020】
一実施形態では、方法はin vitroで実施される。
【0021】
一実施形態では、方法は、1つ又は複数のバイオマーカーの上方制御/下方制御を検出する工程を含む。
【0022】
本発明のさらなる態様では、高齢者から抽出された試料から高齢者の健康を判定するためのキットを製造する方法であって、
パネルの各抗原について、ビオチンカルボキシルキャリアータンパク質フォールディングマーカーを、抗原をコードする遺伝子とインフレームでクローニングし、生じたビオチン化抗原を発現させる工程;
ビオチン化抗原を1つ又は複数のストレプトアビジンコート基材のアドレス可能な位置に結合させ、それにより抗原アレイを形成する工程
を含み、
それによって、パネル上の抗原に結合する試料由来の自己抗体の量を、基材を試料に曝露し、応答を測定することにより決定できる方法において、
抗原がAURKA、FEN1、GLRX3、PHLDA1、PPM1A、FKBP3、CD96及びMAPK13を含むことを特徴とする、
方法が提供される。
【0023】
一実施形態では、抗原は、UBE2I、AAK1、YARS、ASPSCR1、CASP10、FHOD2、TCL1A及びMAP4を含む群から1つ又は複数を含み得る。
【0024】
本発明のさらなる態様では、本明細書に記載される抗原のパネルを含む組成物を個体から抽出された試料に曝露すること、及び抗原に結合する試料由来の自己抗体のレベルを決定することによって高齢者の健康を判定する方法が提供される。
【0025】
本発明のよりさらなる態様では、本明細書に記載される抗原のパネルを含む組成物を個体から抽出された試料にin vitroで曝露すること、及び抗原に結合する試料由来の自己抗体のレベルを決定することによって高齢者の健康を判定する方法が提供される。
【0026】
本発明のさらなる態様では、抗原がAURKA、FEN1、GLRX3、PHLDA1、PPM1A、FKBP3、CD96及びMAPK13を含むことを特徴とする、高齢者の健康を判定するための抗原のパネルを含む組成物が提供される。
【0027】
一実施形態では、抗原は、UBE2I、AAK1、YARS、ASPSCR1、CASP10、FHOD2、TCL1A及びMAP4を含む群から1つ又は複数を含み得る。
【0028】
一実施形態では、抗原は、ビオチン化タンパク質である。
【0029】
一実施形態では、患者由来の試料中の抗原にin vitroで結合する1つ又は複数の自己抗体バイオマーカーの量は、患者の健康状態を判定するために測定され得る。
【0030】
本発明のよりさらなる態様では、高齢患者の健康状態を判定するための自己抗体バイオマーカーのパネルを含む組成物であって、
1つ又は複数の自己抗体バイオマーカーのレベルが患者由来の試料中で測定される、組成物において、
1つ又は複数の自己抗体バイオマーカーが、次の抗原:AURKA、FEN1、GLRX3、PHLDA1、PPM1A、FKBP3、CD96及びMAPK13のうちの1つ又は複数に特異的な自己抗体から選択されることを特徴とする、
組成物が提供される。
【0031】
本発明の考えられる配置を例示する添付の図に関して本発明を更に記載することは好都合である。本発明の他の配置は可能であり、その結果として添付の図の詳細な事項は、本発明の先行する記載の普遍性に優先するとして理解されない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】大腸菌(E. coli)ビオチンカルボキシルキャリアータンパク質ドメインの構造を例示する図である。
【
図2】ベクターとして使用されるpPRO9プラスミドを例示する図である。
【
図3】細胞周期及び細胞死と関連するタンパク質を(A)チャート、(B)関連経路として例示する図である。
【
図4】クラスター分析を例示する図である:(A)tSNEクラスター分析による16種の抗原によって高齢者内で定義されたクラスターの表示[5];(B)各標的タンパク質についての抗体の発現密度;(C)各健康状態群に特異的な自己抗体。
【
図5A】コホート選択を例示する図である:研究において高齢者を選択及び分類するために使用されたワークフローを記載する模式図。
【
図5B】コホート選択を例示する図である:年齢及び性別による高齢者及び若年者の分布;ダン補正をしたクラスカル・ワリス検定(Kruskal-Wallis test with Dunn's correction)を用いて実施された統計分析。
【
図5C】コホート選択を例示する図である:高齢者の分類のために使用された臨床的変数の範囲。
【
図5D】コホート選択を例示する図である:6種の判定用臨床的パラメータに関する研究において選択された高齢者の特徴。
【発明を実施するための形態】
【0033】
材料及び方法
遺伝子合成及びクローニング。pPRO9プラスミド(下の
図2を参照されたい)は、標準的技術によって構築され、複数のクローニング部位が先行するc-mycタグ及びBCCPタンパク質ドメインからなる。合成遺伝子挿入物は、合成オリゴヌクレオチド及び/又はPCR産生物からアセンブルされた。断片は、SpeI及びNcoIクローニング部位を使用してpPRO9にクローニングされた。プラスミドDNAは、形質転換された細菌から精製され、UV分光法によって濃度決定された。最終構築物は、配列決定によって検証された。使用された制限部位内の配列一致は100%であった。5μgのプラスミド調製物は保存のために凍結乾燥された。
【0034】
組換えバキュロウイルスは、強いウイルスポリヘドリンプロモーターを保有するバクミドと一緒での目的のタンパク質のコード配列を保有するトランスファーベクターの、親ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞株IPLB-Sf-21-AEに由来するクローン単離体であるSf9細胞株への同時トランスフェクションを介して生成される。ウイルスシステムによって開始された相同組換えは、トランスフェクトされた細胞が培養インキュベーション数日以内でウイルス細胞変性効果(CPE)の徴候を示すようにする。観察された最も一般的なCPEは、平均細胞サイズの顕著な拡張、ウイルス後代増殖の結果であった。P0として周知のこれらのバキュロウイルスは、次に培養培地に放出され、高力価のP1ウイルス生成するようにウイルス増幅された。
【0035】
タンパク質発現。発現は、1ウエルあたりSf9細胞6x106個を含有する3ml培養物を使用して24ウエルブロックで実行された。組換えバキュロウイルス(>107pfu/ml)の高力価、低継代、ウイルス保存物はsf9昆虫細胞を感染させるために使用された。次に感染細胞は、それらが目的の組換えタンパク質を生成するように72時間培養された。細胞は、PBSを用いて洗浄され、緩衝液に懸濁され、必要に応じて溶解に備えてアリコート中、-80℃で凍結された。トランスファーベクター構築物及びタンパク質それ自体の性質に応じて、組換えタンパク質可溶化物は、培養細胞又は培養培地のいずれかから沈殿され得る。次に陽性組換えタンパク質は、SDS-PAGE及びストレプトアビジン-HRP抗体に対するウエスタンブロットを介して分析された。合計1557種のヒト抗原が本方法を使用してクローニング及び発現された。
【0036】
アレイ製作。HS(ハイドロゲル-ストレプトアビジン)スライドをSchottから購入し、ビオチン化タンパク質をプリントするために使用した。合計9ナノリットルの粗タンパク質可溶化物は、非接触ピエゾ圧力プリンティング技術を使用してHSスライドに4回反復でプリントされた。7.0から7.5の間のpHを有するプリント緩衝液が使用された。洗浄及びブロッキングを開始する前にスライドを遠心分離(200xg、5分間)によって乾燥させた。プリントされたアレイは、リン酸緩衝液中にBSA又はカゼイン(濃度:0.1mg/ml)を含有する溶液を用いてブロックされた。pHは、7.0から7.5の間に調整され、低温の溶液が使用された(4℃~20℃)。スライドは、洗浄の間で乾燥されず、光から保護された。それぞれ得られた「イムノームアレイ(Immunome array)」は、それぞれ4回反復でプリントされた合計1557種の抗原を含んでいた。
【0037】
実験手順。イムノームアレイを実行する重要な各実験工程は、操作者のバイアスを低減するために、全面的に点検、正確に記録及び手順におけるすべての工程を照合するための第2の訓練された人を必要とする。試料は、集められ、無作為化され、適宜アッセイラックに割り当てられた。次にこれらの試料は、実験準備が完了するまで-20℃で保存された。
【0038】
1.研究コホート
研究コホートは、2つの年齢群に分割された:若年対照個体(YC)及び高齢者。YC群(n=60)は、年齢18から27歳の中国民族の男性(n=34)及び女性(n=26)からなった。彼らは、報告された併存疾患及び積極的な医療処置を有さず臨床的に健康である。高齢者の選択は、60歳以上の中国民族の高齢者内で実施された。この最初の選択は、民族的バイアスを除外することによって本研究の分析力及び結果を向上させる。
【0039】
健康区分(健康、中程度及び不健康)への高齢者のさらなる選択は、6種の臨床的パラメータの組合せに基づいた(
図5A):
- 併存疾患(Commorb)5:眼疾患を除く併存疾患の合計数を反映する変数
- NADL:高齢者の日常生活の活動に影響を与える身体障害の合計数[7]
- Wo_sf1:全般的な生活の質を測定するパラメータ
- フレイル:体内及び体外のストレス要因に対して高齢者が漸進的に高度に脆弱になる臨床症候群。体力及び認知能力を考慮する多次元変数である[8]。
- MMSEtot:簡易知能評価スケールの合計スコア。これは、高齢者の認識能力の指標である[9]。
- GDStot:老年期うつ病尺度の合計スコア。これは、高齢者におけるうつ病を特定するために使用される自己申告制評価である[10]。
【0040】
高齢者の健康状態の特徴付けは、既に記載された6種のパラメータを考慮し、以下の群の選択をもたらした(
図5A):
- 健康な高齢者115名
- 中程度の健康状態を有する高齢者111名
- 不健康な高齢者114名
健康群間に年齢の顕著な差異はないが、各健康群により多くの女性が観察できて性差が観察できる(
図5B、
図5D)。
図5Dでは、太字数字は、特定の分類及びスコアについて個体のグレードを判定する。角括弧内の数字は、特定の形質を有する個体の数に対応する。ND:未判定。Ave:各健康群についてのすべての高齢者の平均年齢[6]。
【0041】
個体の全体的な再配分は、不健康な高齢者が併存疾患の蓄積、フレイル状態の増加並びにより高度のうつ病性状態及び生活の質の上昇と関連する認知低下を示すことを示した(
図5C、
図5D)。
【0042】
2.血清/血漿希釈
次に試料は、30分間融解するように+20℃に設定された振とうインキュベーターに置かれた。完全に融解したら、各試料はフルスピードで力強く3回ボルテックスされ、13,000gで微量遠心機を使用して3分間遠心沈殿させた。22.5μLの試料は、0.1% v/v Triton、0.1% w/v BSA、10% v/v PBSを含有する血清アッセイ緩衝液(SAB)(20℃)4.5mLにピペットで入れ、混合するために3回ボルテックスされた。上層の脂質層の下から血清が確実に採取されるが、沈降物が存在する場合はチューブの底に触らないように、吸引の際にチューブは傾けられた。この血清/血漿希釈工程は、クラスII生物学的安全キャビネットにおいて実行された。正しい試料が正しいチューブに加えられることを確実にするために適宜バッチ記録が記された。
【0043】
3.バイオマーカーアッセイ
アレイは、ピンセットを使用して保存緩衝液から取られ、200mLの冷SAB(4℃)を含有するスライドボックス及びラックに置かれ、シェーカーで50rpm、5分間振とうされた。スライドが完全に洗浄されたら、スライドは、アレイ側を上に、先に希釈された個体の血清を含むスライドハイブリダイゼーションチャンバーに置かれた。すべてのスライドは、関連バッチ記録にバーコードスキャナーを使用してスキャンされ、冷蔵されたシェーカーで50rpm、2時間、20℃でインキュベートされた。
【0044】
4.血清結合後のアレイ洗浄
次にタンパク質アレイスライドを個々の「パップジャー」中で30mL SABを用いて2回、スライド染色ボックス中で200mLのSAB緩衝液によって20分間、50rpmシェーカー上、室温でリンスされた。すべてのスライドは連続的に同じ向きで移された。
【0045】
5.Cy3抗IgGを用いたインキュベーション
レプリカイムノームアレイ上に配置された抗原への自己抗体の結合は、Cy3-ウサギ抗ヒトIgGを用いたインキュベーションによって検出された。アレイは、SAB緩衝液に1000倍希釈されたCy3-ウサギ抗ヒトIgG溶液の混合物を含有するハイブリダイゼーション溶液に2時間、50rpm、20℃で浸漬された。
【0046】
6.Cy3抗IgGとのインキュベーション後の洗浄
インキュベーション後、スライドは200mLのSAB緩衝液に、3回、5分間、50rpm、室温で漬けられた。過剰な緩衝液は、スライドを200mLの純水に数分間浸漬することによって除去された。次にスライドは2分間、240g、室温で乾燥された。次にスライドは、室温でスキャンまで(好ましくは、同日)保存された。ハイブリダイゼーションシグナルは、マイクロアレイレーザースキャナー(Agilentスキャナー)を10μm分解能で用いて測定された。蛍光強度は、製造者の説明書に従って検出され、それにより各スポットは、Agilent Feature Extractionソフトウェアを使用してプロットされる。
【0047】
スポットセグメンテーション 半自動QC工程は、実行可能な結果を作成するために実行された。マイクロアレイスキャナーからの出力は、raw .tiff形式画像ファイルである。アレイ上の各スポットの抽出及び定量化は、GenePix Pro 7ソフトウェア(Molecular Devices社)を使用して実施された。アレイについてのGAL(GenePix Array List)ファイルは、画像分析を用いて作成された。GenePix Pro 7は、データ抽出のためにアレイ上の各スポットの自動スポットグリッド化(gridding)及び整列を可能にする。データ抽出に続いて、各スポットについての数値情報;タンパク質ID、タンパク質名、フォアグラウンド強度、バックグラウンド強度等を含有するGenePix Results(.GPR)ファイルは、各スライドについて作成された。
【0048】
バイオインフォマティクス分析
1.画像分析:生データ抽出
画像分析の目的は、探索された各スポット内のすべてのピクセルの中央値強度を測定することによって血清試料に存在する自己抗体の量を評価することである。raw .tiff形式の画像ファイルは、各スライド、すなわち各試料について作成される。アレイ上の各スポットの自動抽出及び定量化は、アレイ上の探索された各スポットについての統計を出力するGenePix Pro 7ソフトウェア(Molecular Devices社)を使用して実施される。これは、スポット内のピクセル強度の平均及び中央値をその局所バックグラウンドと共に含む。各アレイについてのGAL(GenePix Array List)ファイルは、画像分析を助けるために作成される。このファイルは、すべての探索されたスポットの情報及びアレイ上のそれらの位置を含有する。データ抽出に続いて、GenePix結果(.GPR)ファイルは、各スライドについて作成され、各スポットについての情報;タンパク質ID、タンパク質名、フォアグラウンド強度、バックグラウンド強度等を含有する。実験から作成されたデータシートにおいて、各スポットについてのフォアグラウンド及びバックグラウンド強度の両方は、相対蛍光単位(RFU)で表される。
【0049】
2.データ取り扱い及び前処理
各スライドについてタンパク質及び対照プローブは、各スライドに4回反復-4アレイでスポットされる。次の工程は、データ分析に進む前にタンパク質アレイデータの質を検証するために実施された:
【0050】
工程1:
各スポットのフォアグラウンドシグナル強度からバックグラウンドシグナル強度を減算することによって各スポットについて正味の強度を算出する。各スポットについて、バックグラウンドシグナル強度は、スポットを中央にして、スポットの直径の3倍を有する円領域を使用して算出された。
【0051】
工程2:
RFU≦0を用いてレプリカスポットを除外した。
【0052】
工程3:
スキャナーの読み取り能力を超えている可能性がある(本発明者らのスキャナーの最大RFUは、65536RFUである)飽和ピクセルは、アレイのスポット内で見られるべきでない。したがって、ピクセルの>20%で飽和を示すスポットは、≦2のレプリカで生じている場合は除外された。飽和スポットがタンパク質又はプローブの3個以上のレプリカで生じた場合、これらのタンパク質/プローブは「SAT」とフラグが付けられ、下流の分析から除かれる。
【0053】
工程4:
1個だけのレプリカスポットが残った場合は正味の強度ゼロ。
【0054】
工程5:
各スライド上のレプリカスポット間の変動を決定するために変動係数の百分率(CV%)の算出。
【0055】
【0056】
2個以下のレプリカが残っており、CV%>20%のレプリカスポットのセットを「高CV」とフラグを付けた。これらのレプリカスポット(すなわち、タンパク質)の平均RFUは、下流の分析から除かれる。
【0057】
CV%>20%を有し、3個以上のレプリカスポットが残っているタンパク質/対照について、この高いCV%値を生じるレプリカスポットは除去された。これは、正味の強度の中央値と、レプリカスポットの各セットについての個々の正味の強度との間の標準偏差を算出することによって行われた。最も高い標準偏差を有するスポットは除外された。CV%値は、再算出され、工程は繰り返された。
【0058】
工程6:
残りのレプリカスポットについて正味の強度の平均の算出。
【0059】
工程7:
分位ベース及び合計強度ベースのモジュールの両方を使用するデータの複合正規化(composite normalization)。本方法は、異なる試料が、その中のフラグ化されたスポットの潜在的存在を考慮する一方で、それらの対照プローブの共通の根底となる分布を共有すると仮定する。イムノームアレイは、Cy3-標識ビオチン化BSA(Cy3-BSA)複製物をスライドにわたる陽性対照スポットとして使用する。このためそれは、任意の所与の研究についてのシグナル強度の正規化のためのハウスキーピングプローブと見なされる。
【0060】
分位モジュールは、Bolstadら、2003[11]によって記載されたアルゴリズムを採用する。この再編成は、任意のCy3BSA対照プローブにおける外れ値又はフラグ化スポットの検出及び取り扱いを可能にする。次に合計強度に基づくモジュールは、各試料についての倍率(scaling factor)を得るために実行された。本方法は、正規化後に陽性対照が、すべての試料にわたって共通の合計強度値を有するはずであると仮定している。この複合的方法は、試料にわたる標的生物学的活性を保存する一方で、それらの測定における変動からタンパク質アレイデータを正規化することを目的にしている。工程は次のとおりである:
【0061】
すべての試料にわたるすべてのcy3BSAの分位に基づく正規化
(i=スポット数及びj=試料数)
1.すべてのCy3-BSAをすべての試料、jにわたって、i X jマトリクスXにロードする。
2.Xsortを得るためにXの各カラムjにおけるスポット強度をソートする。
3.<Xi>を得るためにXsortの各列iにわたって平均を取る。
【0062】
強度に基づく正規化
1.各列iにわたる平均の合計を算出
【0063】
【0064】
2.各試料kについて、すべてのCy3-BSA対照の合計を算出
【0065】
【0066】
3.各試料kについて、
【0067】
【0068】
データ分析
1557種の自己抗体測定由来の蛍光シグナルは、すべてのパラメトリック分析に先立って正規性を確実にするために対数的に変換された。一元配置分散分析は、i)すべての群間(健康な高齢者、中程度の健康状態を有する高齢者、不健康な高齢者及び若年対照)、並びにii)高齢者間(健康、中程度及び不健康)、に対して1557種の自己抗体測定それぞれに実行され、それ以外と比較して少なくとも1つの群において顕著に異なっていた自己抗体を同定した(Table 1(表1))。0.05の初期P値閾値が有意性を示すために使用された。16種の抗原に対する自己抗体バイオマーカーが、
図3に示されるとおり、このようにして同定された:YARS[12]、UBE2I[13]、TCL1A[14]、PPM1A[15]、PHLDA1[16]、GLRX3[17]、FHOD2[18]、FEN1[19]、CASP10[20]、MAPK13[21]、MAP4[22]、FKBP3[23]、CD96[24]、AURKA[25]、ASPSCR1[26]及びAAK[27]。これら16種の抗原の内、AURKA、FEN1、GLRX3、PHLDA1、PPM1A、FKBP3、CD96及びMAPK13は、両方の分析において<0.02のP値を有することが見出された(全群間及び高齢者間)。
【0069】
【0070】
パスウェイエンリッチメント(pathway enrichment)分析は、16種の内の4種(PHLDA1、AURKA、FEN1及びUBE2I)が、老化過程において変化する細胞周期及びDNA修復経路に関与することを示した。
【0071】
16種の個々の自己抗体それぞれがそれだけでは健康状態の弱い予測因子だと考えて、tSNEを使用する次元縮小を、健康状態を識別する16種の自己抗体の集団的な能力を特定するために実行した。
図4Aに見られるとおり、tSNEを使用する次元縮小は、2 tSNEの次元が3種の健康群を識別することができたことを示している。16種の自己抗体の特異性は、
図4Bに示されている。
【0072】
それぞれの健康状態に特異的な自己抗体を同定するために、ウエルチ補正をした一連のt検定は16種すべての同定された自己抗体についてそれぞれの健康状態を、それ以外に対して検査するために使用された。自己抗体それぞれについて、3種の健康状態の内で最良のt検定結果は、健康状態についての自己抗体の選択として選択された。これは、PHLDA1及びCD96を健康な群に特異的であり、AURKA、FEN1、CASP10及びAAK1を中程度の群に特異的であり、それ以外を不健康な群に特異的であると特定した(
図4C)。健康及び中程度の自己抗体は、非伝染性疾患に対する保護的役割を有する可能性がある。平均RFUは、健康状態群のそれぞれについてt検定のP値と共に示され、目的の健康状態群をそれ以外に対して区別することにおける自己抗体の重要性を実証している。
【0073】
本発明は、上の記載及び欧州特許第1470229号のとおり目的のタンパク質をコードする遺伝子と共にインフレームでクローニングされるビオチンカルボキシルキャリアータンパク質(BCCP)フォールディングマーカーを利用する。大腸菌BCCPドメインの構造は、
図1に例示され、ここで残基77~156は、N及びC末端並びにビオチンリガーゼによってin vivoでリジン122に結合されている単一のビオチン成分を示して描かれている(座標ファイル1bdo)。
【0074】
BCCPは、タンパク質フォールディングマーカーとしてだけでなく、タンパク質溶解性促進物質としても作用する。BCCPは、目的のタンパク質のN又はC末端のいずれにも融合され得る。全長タンパク質は、タンパク質が正しくフォールドされた場合だけin vivoでビオチン化されるBCCPフォールディングマーカーとの融合物として発現される。逆にミスフォールドされたタンパク質は、宿主ビオチンリガーゼによってビオチン化され得ないようにBCCPのミスフォールディングを駆動する。そのためミスフォールドされたタンパク質は、ストレプトアビジンコート固体支持体に特異的に付着することができない。したがって、正しくフォールドされたタンパク質だけが、BCCPタグを介して固体支持体に付着するようになる。
【0075】
支持体の表面化学は、注意深く設計され、タンパク質スポット形態を保持し、アレイにわたって一貫したスポットサイズを確実にする三次元薄膜ポリマーベース層(ポリエチレングリコール;PEG)を使用し得る。PEG層は非特異的結合を抑制し、それにより他のプラットホームを使用して観察された高いバックグラウンドを低下させる。したがって、選択されたバイオマーカーを固定するために使用された固体支持体は、非特異的高分子吸着に抵抗するように設計され、非特異的バックグラウンド結合を最小化することによって優れた信号対雑音比及び低い検出限界(すなわち、感受性の改善)をもたらす。加えて、PEG層は、固定後に、配置されたタンパク質及びタンパク質複合体のフォールドされた構造及び機能も保存する。このことは、ヒト血清抗体がフォールドされていないタンパク質の露出した疎水性表面に非特異的に結合し、それによりフォールドされていないタンパク質のアレイ上での血清学的アッセイにおいて擬陽性を生じることが一般に公知であり、更にヒト自己抗体は典型的には非連続的エピトープ結合し、そのためフォールドされていないタンパク質又はミスフォールドされたタンパク質のアレイ上での血清学的アッセイは、自己抗体結合アッセイにおいて偽陰性も生じることから正確な診断のために重要である。
【0076】
ストレプトアビジンコート表面に結合したビオチン化タンパク質がごくわずかな解離しか示さず、それによりこの相互作用は、タンパク質を平面の表面に繋ぎとめるための優れた手段を提供し、タンパク質アレイ、SPR及びビーズに基づくアッセイ等の応用のために理想的である。小型のフォールドしたビオチン化80残基ドメインBCCPの使用は、例えばAviTag及びインテインベースタグを超える2つの重要な有利点を提供する。第1にBCCPドメインは、真核生物ビオチンリガーゼによって交差認識され、大腸菌ビオチンリガーゼを同時発現する必要なく酵母、昆虫及び哺乳動物細胞において効率的にビオチン化されるようにする。第2にBCCPのN及びC末端は、ビオチン化部位から50Å(
図1に示されるとおり)物理的に離れており、そのためBCCPドメインは、固体支持体表面から離れて組換えタンパク質を提示する柄であると考えられ、それにより固定化によるいずれの悪影響も最小化する。
【0077】
大部分の複合体タンパク質のBCCPフォールディングマーカー媒介発現の成功率は、98%を超える。したがって技術は、高度に並列化されたパイプラインに適用でき、機能的に検証されたタンパク質のハイスループットで高度に一貫した産生をもたらす。
【0078】
BCCPの添加は、in vivoビオチン化の程度を測定することによる融合タンパク質フォールディングのモニタリングを可能にする。これは、SDS-PAGE又はインサイツでのコロニー溶解及び試料の膜への移行に続く、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ等のストレプトアビジンコンジュゲートを使用するビオチン化タンパク質の検出を使用する、標準的なブロッティング手順によって測定され得る。更に、in vivoでBCCPドメインがビオチン化される事実は、ストレプトアビジン表面によって示される高親和性及び特異性によってタンパク質が、単一の工程で細胞性可溶化物から同時に精製及び固定化され得ることから、タンパク質アレイの製作のための多重タンパク質精製の際に特に有用である。
【0079】
図3は、細胞周期及び細胞死の工程によって特徴付けられる、高齢者においてタンパク質を区別することを例示している。(A)種々の高齢者の健康状態を区別する16種のタンパク質標的に関連するP値。YARSタンパク質に対する血清/血漿抗体の読み出し値だけが、高齢者とYC個体との間を区別しない(p>0.05)。(B)5種のタンパク質読み出し値は、エンリッチメントパスウェイ分析(String)により細胞周期(PHLDA1、AURKA、FEN1)、DNA修復(UBE2I、FEN1)及び翻訳(YARS)に繋がる経路に関して密接に関連していた。
【0080】
(参考文献)
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【配列表】