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特許7600239ツールホルダのためのクランピングデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】ツールホルダのためのクランピングデバイス
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/117 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
B23B31/117 601D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022536528
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2020085272
(87)【国際公開番号】W WO2021122220
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】19218651.8
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マトリック, グンナル
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-018614(JP,A)
【文献】特開2001-150211(JP,A)
【文献】特開平07-112307(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0002748(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールホルダシャンクをリリース可能に保持するためのクランピングデバイスであって、
前端(2a)と、後端(2b)と、前記前端(2a)を交差してそこから後方に伸長するボア(3)と、を有し、前記ツールホルダシャンク(61)を受容するための載置部位(10)が、前記ボア(3)の前端に提供されているハウジング(2)と、
前記ボア(3)の内部にスライド可能に載置されており、前記ボアにおいて、その縦方向軸(L)に沿って、前進したリリース位置と引き込まれたロッキング位置との間を往復移動可能となるようになっているドローバー(5)と、
その前端にて、前記ドローバー(5)の周りに配置されているかみ合い部材(20)であって、前記前進したリリース位置から前記引き込まれたロッキング位置への前記ドローバー(5)の動作の影響下で、前記ツールホルダシャンク(61)が、前記載置部位(10)に出入することを、前記かみ合い部材(20)が可能にする第1の位置から、前記かみ合い部材(20)が、前記ツールホルダシャンク(61)とのロッキングかみ合いにあり、それを前記ハウジング(2)に固定されたままにする第2の位置に移動可能であるかみ合い部材(20)と、
前記ハウジングの前記後端(2b)に向いているウェッジ面(46)と、第1の受圧面(41)と、を含む第1のウェッジ(40)と、
を含む、クランピングデバイス(1)であって、
前記第1のウェッジ(40)は、前記ハウジング(2)の周壁(14)を通して半径方向に伸長する第1のアパーチャ(45)にスライド可能に受容されており、前記第1のウェッジにおける前記第1の受圧面(41)は、前記ハウジング(2)から外に向いており、前記第1のウェッジにおける前記ウェッジ面(46)は、前記ハウジングの前記前端(2a)に向いている、前記ドローバーにおける第1のスライド面(16)と接触しており、前記第1のウェッジ(40)は、前記第1のアパーチャ(45)において半径方向に内向きに押された際に、前記ドローバー(5)を前記引き込まれたロッキング位置に向けて押すよう構成されており、
前記クランピングデバイス(1)は、前記周壁(14)を通して半径方向に伸長する第2のアパーチャ(55)にスライド可能に受容されている第2のウェッジ(50)を含み、前記第2のウェッジ(50)は、前記ハウジングの前記前端(2a)に向いており、前記ハウジングの前記後端(2b)に向いている、前記ドローバーにおける第2のスライド面(17)と接触している第2のウェッジ面(57)と、前記ハウジング(2)から外に向いている第2の受圧面(52)と、を含み、前記第2のウェッジ(50)は、前記第2のアパーチャ(55)において半径方向に内向きに押された際に、前記ドローバー(5)を前記前進したリリース位置に向けて押すよう構成されており、
前記クランピングデバイス(1)は、前記周壁(14)の周りに配置されており、そこにスライド可能に載置されており、前記ハウジング(2)に対して、前記ドローバー(5)の、前記前進したリリース位置から前記引き込まれたロッキング位置への動作を達成するために、第1の軸方向(D1)に、及び、前記ドローバー(5)の、前記引き込まれたロッキング位置から前記前進したリリース位置への動作を達成するために、反対の第2の軸方向(D2)に、軸方向に移動可能となるようになっている作動スリーブ(30)を含み、前記作動スリーブ(30)には、その内側において、前記第1の受圧面(41)と接触するために内に向いており、前記縦方向軸(L)までの半径方向の距離を有する第1の加圧面(31)と、前記第2の受圧面(52)と接触するために内に向いており、前記縦方向軸(L)までの半径方向の距離を有する第2の加圧面(32)と、が提供されており、
前記第1の加圧面(31)は、前記作動スリーブ(30)が前記第1の軸方向(D1)に動かされる際に、前記第1の受圧面(41)を押すことにより、前記第1のウェッジ(40)を、前記第1のアパーチャ(45)において半径方向に内向きに押すよう構成されており、
前記第2の加圧面(32)は、前記作動スリーブ(30)が前記第2の軸方向(D2)に動かされる際に、前記第2の受圧面(52)を押すことにより、前記第2のウェッジ(50)を、前記第2のアパーチャ(55)において半径方向に内向きに押すよう構成されていることを特徴とする、
クランピングデバイス(1)。
【請求項2】
前記ドローバー(5)が、前記作動スリーブ(30)と前記第1のウェッジ(40)との影響下で、前記引き込まれたロッキング位置に押し込まれている際に、前記作動スリーブ(30)は、セルフロッキングの軸方向の位置を前記周壁(14)の上に想定するよう構成されており、これにより、前記ドローバー(5)を前記引き込まれたロッキング位置に維持するようになっていることを特徴とする、請求項1に記載のクランピングデバイス。
【請求項3】
前記ドローバー(5)が、前記作動スリーブ(30)と前記第1のウェッジ(40)との影響下で、前記引き込まれたロッキング位置に押し込まれている際に、前記第1の加圧面(31)と前記第1の受圧面(41)は、前記第1のウェッジ(40)が前記作動スリーブ(30)を前記周壁(14)におけるセルフロッキングの軸方向の位置に維持するような角度αで、前記縦方向軸(L)に対して傾いていることを特徴とする、請求項2に記載のクランピングデバイス。
【請求項4】
前記第1のウェッジ(40)は、前記ハウジング(2)から外に向いている第3の受圧面(43)を含み、
前記作動スリーブ(30)には、その内側において、前記第3の受圧面(43)と接触するために内に向いている第3の加圧面(33)が提供されており、前記第3の加圧面(33)は、前記縦方向軸(L)までの半径方向の距離を有し、
前記第3の加圧面(33)と前記第3の受圧面(43)とは、前記縦方向軸(L)に対して、前記角度αより大きい角度βで傾いており、
前記第1及び第3の加圧面(31、33)と、前記第1及び第3の受圧面(41、43)と、は、それぞれ、前記作動スリーブ(30)と、前記第1のウェッジ(40)と、において連続して配置されており、前記第1の軸方向(D1)への前記作動スリーブ(30)の動作の後に、前記第3の加圧面(33)が、前記動作の第1のフェーズ中に、前記第3の受圧面(43)上をスライドしてこれを押すよう構成されており、前記第1の加圧面(31)が、前記動作の、それに続く第2のフェーズ中に、前記第1の受圧面(41)上をスライドしてこれを押すよう構成されていることを特徴とする、
請求項3に記載のクランピングデバイス。
【請求項5】
前記第1及び第3の加圧面(31、33)と、前記第1及び第3の受圧面(41、43)と、は、前記縦方向軸(L)に対して垂直な断面から見て湾曲していることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項6】
前記第1の加圧面(31)と前記第2の加圧面(32)とは、前記作動スリーブ(30)の軸方向に部分的に互いに重なっており、前記作動スリーブ(30)の周方向に互いに離れていることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項7】
前記第2の加圧面(32)は、前記作動スリーブ(30)の回転対称な内壁面(35)において形成されているリセス(34)に提供されていることを特徴とする、請求項6に記載のクランピングデバイス。
【請求項8】
前記クランピングデバイス(1)は、前記周壁(14)の周方向に間隔があけられている2つ以上の第1のウェッジ(40)であって、それぞれ、前記周壁(14)を通して半径方向に伸長する第1のアパーチャ(45)に受容されている第1のウェッジ(40)を含むことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項9】
前記第1のウェッジ(40)は、その数が3つであることを特徴とする、請求項8に記載のクランピングデバイス。
【請求項10】
前記第1のウェッジ(40)は、前記周壁(14)の周方向に等距離に分散されていることを特徴とする、請求項8又は請求項9に記載のクランピングデバイス。
【請求項11】
前記クランピングデバイス(1)は、前記周壁(14)の周方向に間隔があけられている2つ又はそれ以上のそのような第2のウェッジ(50)であって、それぞれ、前記周壁(14)を通して半径方向に伸長する第2のアパーチャ(55)に受容されている第2のウェッジ(50)を含むことを特徴とする、請求項8から請求項10のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項12】
前記第2のウェッジ(50)は、その数が3つであることを特徴とする、請求項11に記載のクランピングデバイス。
【請求項13】
前記第2のウェッジ(50)は、前記周壁(14)の周方向に等距離に分散されていることを特徴とする、請求項11又は請求項12に記載のクランピングデバイス。
【請求項14】
前記第1のウェッジ(40)と前記第2のウェッジ(50)とは、前記周壁(14)の周方向に見て交互に配置されており、前記第1のウェッジ(40)の各1つには、前記周壁(14)の周方向に見て、前記第2のウェッジ(50)の1つが続き、前記第2のウェッジ(50)の各1つには、前記周壁(14)の周方向に見て、前記第1のウェッジ(40)の1つが続くことを特徴とする、請求項11から請求項13のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【請求項15】
前記ハウジング(2)はマシンスピンドルであることを特徴とする、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のクランピングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツールホルダを工作機械に接続するために使用されることが意図されている、請求項1のプリアンブルに係るクランピングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
金属切削のための工作機械の分野内では、例えば、ドリル、ミリングツール、又は旋盤ツールの形態での、金属材料のワークピースを加工するために使用される切削ツールはしばしば、ツールホルダに固定される。これはその後、工作機械に載置されているクランピングデバイスに取り外し可能に固定されてよい。そのようなツールホルダのシャンクを、クランピングデバイスのハウジングに、そのハウジングに配置されているクランピングメカニズムを用いてクランプすることが、以前より知られている。ドリル及びミリングツールの形態での、切削ツール用のツールホルダは通常、スピンドルの形態での回転可能ハウジングにクランプされる一方で、旋盤ツール用のツールホルダは、回転不可能に配置されているハウジングにクランプされてよい。切削ツールの交換が必要な際に、ツールホルダは、クランピングデバイスのハウジングからリリースされ、別の切削ツールが付いた新たなツールホルダが、ハウジングにクランプされる。このタイプのクランピングデバイスは、例えば、工作機械に含まれるツールタレットの外縁に取り外し可能に固定されてよい。
【0003】
自動ツール交換作業に適合されているクランピングメカニズムを持つスピンドルを含むクランピングデバイスが、EP1468767B1から以前より知られている。EP1468767B1に係るクランピングデバイスでは、第1のドローバーの形態での作動部材が、スピンドルの内部にスライド可能に載置されており、これは、第2のドローバーの軸方向の変位を、それらのドローバー間に配置されている多くの協働ウェッジを含む力増幅メカニズムを介して達成するよう構成されている。スピンドルの内部のガススプリングは、2つのドローバーを引き込まれたロッキング位置に付勢するよう構成されている。ここでは、ツールホルダがスピンドルにクランプされている。油圧ピストンは、2つのドローバーの、ツールホルダがスピンドルからリリースされてよい前進したリリース位置への変位を達成するために、ガススプリングの後端にて、ピストンに作用するよう構成されていてよい。しかし、この以前より知られているクランピングデバイスは、比較的長い軸方向の広がりを有し、したがって、クランピングデバイスに対して利用可能な軸方向の空間が限られているツールタレットの外縁にて、ツールホルダが取り外し可能に固定されている際には、このタイプのクランピングデバイスを使用することには適していない。
【0004】
本発明の目的は、新しくて好ましいデザインを有し、工作機械のツールタレットとの使用に適している、上述するタイプのクランピングデバイスを提供することである。
【発明の概要】
【0005】
本発明によると、本目的は、請求項1に画定される特徴を有するクランピングデバイスを用いて達成される。
【0006】
本発明に係るクランピングデバイスは、
前端と、後端と、前端を交差してそこから後方に伸長するボアと、を有し、ツールホルダシャンクを受容するための載置部位が、ボアの前端に提供されているハウジングと、
ボアの内部にスライド可能に載置されており、ボアにおいて、その縦方向軸に沿って、前進したリリース位置と引き込まれたロッキング位置との間を往復移動可能となるようになっているドローバーと、
その前端にてドローバーの周りに配置されているかみ合い部材であって、前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置へのドローバーの動作の影響下で、ツールホルダシャンクが、ボアの載置部位に出入することを、かみ合い部材が可能にする第1の位置から、かみ合い部材が、ツールホルダシャンクとのロッキングかみ合いにあり、それをハウジングに固定されたままにする第2の位置に移動可能であるかみ合い部材と、
ハウジングの周壁を通して半径方向に伸長する第1のアパーチャにスライド可能に受容されている第1のウェッジであって、ハウジングの後端に向いており、ハウジングの前端に向いている、ドローバーにおける第1のスライド面と接触している第1のウェッジ面と、ハウジングから外に向いている第1の受圧面と、を含む第1のウェッジであって、第1のアパーチャにおいて半径方向に内向きに押された際に、ドローバーを引き込まれたロッキング位置に向けて押すよう構成されている第1のウェッジと、
周壁を通して半径方向に伸長する第2のアパーチャにスライド可能に受容されている第2のウェッジであって、ハウジングの前端に向いており、ハウジングの後端に向いている、ドローバーにおける第2のスライド面と接触している第2のウェッジ面と、ハウジングから外に向いている第2の受圧面と、を含む第2のウェッジであって、第2のアパーチャにおいて半径方向に内向きに押された際に、ドローバーを前進したリリース位置に向けて押すよう構成されている第2のウェッジと、
周壁の周りに配置されており、そこにスライド可能に載置されており、ハウジングに対して軸方向に、ドローバーの、前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置への動作を達成するために、第1の軸方向に、及び、ドローバーの、引き込まれたロッキング位置から前進したリリース位置への動作を達成するために、反対の第2の軸方向に、移動可能となるようになっている作動スリーブであって、その内側において、第1の受圧面と接触するために内に向いており、第1の軸方向に見て長くなる、縦方向軸までの半径方向の距離を有する第1の加圧面と、第2の受圧面と接触するために内に向いており、第2の軸方向に見て長くなる、縦方向軸までの半径方向の距離を有する第2の加圧面と、が提供されている作動スリーブと、
を含む。
【0007】
作動スリーブの第1の加圧面は、作動スリーブが第1の軸方向に動かされる際に、第1の受圧面を押すことにより、第1のウェッジを、第1のアパーチャにおいて半径方向に内向きに押すよう構成されている。作動スリーブの第2の加圧面は、作動スリーブが第2の軸方向に動かされる際に、第2の受圧面を押すことにより、第2のウェッジを、第2のアパーチャにおいて半径方向に内向きに押すよう構成されている。したがって、ドローバーは、前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置に、作動スリーブと第1のウェッジとの影響下で、第1の軸方向への作動スリーブの動作により、移動可能であり、ドローバーは、引き込まれたロッキング位置から前進したリリース位置に、作動スリーブと第2のウェッジとの影響下で、第2の軸方向への作動スリーブの動作により、移動可能である。
【0008】
作動スリーブの第1の加圧面は、第1の軸方向に長くなる、縦方向軸までの半径方向の距離を有するため、第1の軸方向への作動スリーブの動作は、第1の加圧面により、第1のウェッジにおける第1の受圧面に圧力を適用させることとなる。この圧力は、半径方向のコンポーネントを有することとなり、第1のウェッジが、半径方向に内向きに、縦方向軸に向かって押されるようになる。
【0009】
作動スリーブの第2の加圧面は、第2の軸方向に長くなる、縦方向軸までの半径方向の距離を有するため、第2の軸方向への作動スリーブの動作は、第2の加圧面により、第2のウェッジにおける第2の受圧面に圧力を適用させることとなる。この圧力は、半径方向のコンポーネントを有することとなり、第2のウェッジが、半径方向に内向きに、縦方向軸に向かって押されるようになる。
【0010】
ドローバーの軸方向の動作を制御するために、上述する作動スリーブを使用することにより、軸方向に多くの空間を占めるガススプリング又は同様のものは、ドローバーの軸方向の動作を制御するために必要なく、これは、クランピングデバイスを軸方向にコンパクトにすることができることを暗示する。クランピングデバイスはしたがって、ツールタレットでの使用に好適となる。さらに、ドローバーの軸方向の動作を2つの異なる方向に制御するための、別個のウェッジの使用は、第1のウェッジのデザインを最適化し、前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置へのドローバーの動作に関連付けられている特定の要件を満たすことができ、第2のウェッジのデザインを最適化し、引き込まれたロッキング位置から前進したリリース位置へのドローバーの反対の動作に関連付けられている特定の要件を満たすことができることを暗示する。
【0011】
クランピングデバイスの上述するハウジングは、回転可能スピンドルの形態を有してよい。これは、工作機械のツールタレットにおけるドライブメカニズムに接続されてよい、又は、これに接続可能であってよい。しかし、本発明のクランピングデバイスは、ツールタレットでの使用に限定されず、回転可能スピンドルの形態でのそのようなハウジングは、その代替として、工作機械のメインスピンドルを構成し得る、又は、いずれの中間ツールタレットなく、そのようなメインスピンドルに接続され得る。ハウジングが回転可能スピンドルの形態を有するのであれば、クランピングデバイスは、ドリリング若しくはミリングツール又は他のタイプの回転ツールが提供されているツールホルダをクランプするために使用されてよい。本発明のクランピングデバイスに含まれるハウジングは、そのさらなる代替として、回転不可能なハウジングであってよい。後者の場合では、クランピングデバイスは、旋盤ツール又は他のタイプの非回転ツールが提供されているツールホルダをクランプするために使用されてよい。
【0012】
本発明の1つの実施形態によると、ドローバーが、作動スリーブと第1のウェッジとの影響下で、引き込まれたロッキング位置に押し込まれている際に、作動スリーブは、セルフロッキングの軸方向の位置を、ハウジングの周壁の上に想定するよう構成されており、これにより、ドローバーを引き込まれたロッキング位置に維持するようになっている。これによって、作動スリーブは、アクチュエータからのいずれの外力を必要とすることなく、ドローバーを引き込まれたロッキング位置に維持できる。これは、ツール交換作業に関連して、作動スリーブが受ける必要があるものは、例えば、油圧又は空圧アクチュエータの形態でのアクチュエータからの外力のみであることを暗示する。
【0013】
本発明の別の実施形態によると、第1の加圧面と第1の受圧面とは、縦方向軸に対して、ドローバーが、作動スリーブと第1のウェッジとの影響下で、引き込まれたロッキング位置に押し込まれている際に、第1のウェッジが、作動スリーブを、周壁におけるセルフロッキングの軸方向の位置に維持するそのような角度αで傾いている。この場合では、第1の加圧面と第1の受圧面とは双方とも、ハウジングを通る縦方向の断面に見た際に、同じ方向に伸長する。角度αは、ドローバーが、ボアの内部を、引き込まれたロッキング位置に変位している際に、作動スリーブが、第1のウェッジに対してセルフロッキングの軸方向の位置となるよう、セルフロック閾値角度未満となるよう選ばれる。セルフロッキングの軸方向の位置を得るため、角度αは、十分小さくあるべき、つまり、セルフロック閾値角度未満であるべきである。セルフロッキングの軸方向の位置とは、軸方向の位置を指す。ここでは、第1のウェッジにおける第1の受圧面と作動スリーブにおける第1の加圧面との間の静止摩擦力が、縦方向軸に対して垂直な半径方向に、第1のウェッジに適用された力により引き起こされた、摩擦の面において対抗する力より大きい。したがって、セルフロッキングの軸方向の位置は、第1のウェッジにおける第1の受圧面と作動スリーブにおける第1の加圧面との間の摩擦の係数に依存する角度範囲内に得られる。この摩擦の係数は、使用される材料、表面コーティング、潤滑剤の使用など、各種のパラメータに依存する。したがって、セルフロック閾値角度は、そのようなパラメータによって決まる。当業者であれば、各特定のケースに適用するセルフロック閾値角度を、共通の一般知識、及び/又は、日常の実験、又は、特定の角度が、そのようなセルフロック閾値角度未満であるか否かの少なくとも予測又は査定を使用することにより、特定できるであろう。一般的に、セルフロック閾値角度を十分に下回り、これにより、セルフロッキング構成を確かなものとする角度αを選ぶことが好ましい。小さい角度αは、作動スリーブの比較的長い軸方向の変位が、ドローバーの比較的短い軸方向の変位をもたらすことを暗示するという事実のおかげで、小さい角度αを使用することのさらなる恩恵は、力を増幅する効果が達成されることである。しかし、小さすぎる角度αは非効率なものとなり、現実的には良好に機能しない場合がある。例えば、非常に小さい角度αは、それが、作動スリーブをセルフロッキングの軸方向の位置からリリースすることが難しいということを示す場合がある。角度αは、好適には、2°と10°との間にある。角度αがこの範囲内であれば、セルフロッキング効果、同様に、力を増幅する適切な効果が達成されてよい。
【0014】
本発明の別の実施形態は、
第1のウェッジは、ハウジングから外に向いている第3の受圧面を含み、
作動スリーブには、その内側において、第3の受圧面と接触するために内に向いている第3の加圧面が提供されており、第3の加圧面は、第1の軸方向に見て長くなる、縦方向軸までの半径方向の距離を有し、
第3の加圧面と第3の受圧面とは、縦方向軸に対して、角度αより大きい角度βで傾いており、
第1及び第3の加圧面と、第1及び第3の受圧面と、は、それぞれ、作動スリーブにおいて、第1のウェッジにおいて連続して配置されており、第1の軸方向への作動スリーブの動作の後に、第3の加圧面が、動作の第1のフェーズ中に、第1のウェッジにおける第3の受圧面上をスライドしてこれを押すよう構成されており、第1の加圧面が、動作の、それに続く第2のフェーズ中に、第1のウェッジにおける第1の受圧面上をスライドしてこれを押すよう構成されているようになっていることを特徴とする。
【0015】
これによって、ドローバーは、より大きな角度βの影響下で、クランピングの初期フェーズ中に軸方向に迅速に動かされてよい。この初期クランピングフェーズは、大きな力を必要としない。しかし、クランピングの最終フェーズ中には、ドローバーを短い距離だけ変位させるために、大きな力が必要となる。実際のクランピングが生じると、つまり、かみ合い部材が上述する第1の位置を想定すると、ドローバーが、軸方向に、より小さい角度αの影響下で動かされ、ドローバーの軸方向の動作が、作動スリーブの軸方向の動作と比較して、小さくなるようになり、これは、「パワーブースト」とも呼ばれる、力を増幅する効果をもたらす。角度βは、好適には、10°と75°との間、好ましくは、35°と65°との間にあり、これは、ドローバーの効率の良い初期的な軸方向の動作を提供する。ドローバーの初期的な軸方向の動作に対してきつい角度βを、そして、実際のクランピングに対して小さい角度αを使用することにより、作動スリーブ(及び、したがって、クランピングデバイス全体)を、軸方向に比較的短くすることができる一方で、力を増幅する効果が大きいセルフロッキングクランピングメカニズムを依然として提供する。
【0016】
本発明の別の実施形態によると、第1及び第3の加圧面と、第1及び第3の受圧面と、は、縦方向軸に対して垂直な断面に見られるように、曲線状になっている。これは、作動スリーブの製造を促進することとなる。
【0017】
本発明の別の実施形態によると、第1の加圧面と第2の加圧面とは、作動スリーブの軸方向に部分的に互いに重なっており、作動スリーブの周方向に互いに離れている。作動スリーブの長さが、これによって短くなってよい。さらに、第2の加圧面は、好適には、作動スリーブの回転対称な内壁面において形成されているリセスに提供されている。
【0018】
本発明の別の実施形態によると、クランピングデバイスは、周壁の周方向に間隔があけられている2つ又はそれ以上のそのような第1のウェッジであって、それぞれ、周壁を通して半径方向に伸長する第1のアパーチャに受容されている第1のウェッジを含む。クランピングデバイスはまた、周壁の周方向に間隔があけられている2つ又はそれ以上のそのような第2のウェッジであって、それぞれ、周壁を通して半径方向に伸長する第2のアパーチャに受容されている第2のウェッジをも含んでよい。第1のアパーチャと、関連付けられている第1のウェッジと、同様に、第2のアパーチャと、関連付けられている第2のウェッジと、は、好ましくは、周壁の周方向に等距離に分散されている。これによって、力が良好に分散する、バランスのよいクランピングデバイスが得られる。非常に多くのウェッジと、関連付けられているアパーチャと、は、しかし、各アパーチャがハウジングの強度を下げることとなるという事実のおかげで、好ましくない場合がある。3つの第1のウェッジと、3つの第2のウェッジと、関連付けられているアパーチャと、は、力の分散のレベルが適切でありながらも、ハウジングの十分な強度を依然として保つ、バランスのよいクランピングデバイスを与えることとなる。第1のウェッジと第2のウェッジとは、好適には、周壁の周方向に見て、交互に配置されている。ここでは、第1のウェッジの各1つには、周壁の周方向に見て、第2のウェッジの1つが続き、第2のウェッジの各1つには、周壁の周方向に見て、第1のウェッジの1つが続く。
【0019】
本発明に係るクランピングデバイスのさらに好適な特徴が、以下の説明と、従属請求項と、からわかるであろう。
【0020】
以下の添付の図面を参照して、例として示す、本発明の実施形態の具体的な説明が以下に続く。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ツールホルダが、クランピングデバイスのハウジングにクランプされている、本発明の1つの実施形態に係るクランピングデバイスの側面図である。
図2】クランピングデバイスのドローバーが、引き込まれたロッキング位置にあり、ツールホルダが、ハウジングにクランプされている、図1に示すクランピングデバイスとツールホルダとを通る縦方向の断面図である。
図3図1のクランピングデバイスの部分的切断斜視図である。
図4図2に対応する縦方向の断面図である。
図5】ドローバーが、前進したリリース位置にある、図1に示すクランピングデバイスとツールホルダとを通る縦方向の断面図である。
図6】ドローバーが、前進したリリース位置と引き込まれたロッキング位置との間の中間位置にある、図1に示すクランピングデバイスとツールホルダとを通る縦方向の断面図である。
図7図1のクランピングデバイスとツールホルダとの分解組立図である。
図8図1のクランピングデバイスとツールホルダとの別の方向からの分解組立図である。
図9図4の線IX-IXに係る断面図である。
図10図4の線X-Xに係る断面図である。
図11図4の線XI-XIに係る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の1つの実施形態に係るクランピングデバイス1を、図1から図10に示す。クランピングデバイス1は、ツールホルダ60(これらの図面に極めて模式的に示す)を、クランピングデバイスのハウジング2にリリース可能にクランプし、ツールホルダ60に固定されている切削ツール(図示せず)を用いてのワークピースの加工を可能にするよう構成されている。
【0023】
ハウジング2は、前端2aと、後端2bと、前端2aを交差してそこから後方に伸長するボア3と、を有する。したがって、ボア3は、ハウジングの前端2aにて、入口開口3a(図3を参照されたい)を有する。ハウジング2は、工作機械のツールタレットに、その後端にてハウジング2から伸長する接続部材4を介して接続可能である。
【0024】
ここに示す実施形態では、ハウジング2はマシンスピンドルの形態を有し、このスピンドル形状のハウジング2は、それを取り囲むケーシングに、ローリングベアリングを用いて回転可能に載置されてよい。この場合では、ハウジング2は、工作機械のツールタレットにおけるドライブメカニズムなどの、工作機械のドライブメカニズムに、接続部材4を介して、ハウジング2を、ドライブメカニズムにより回転駆動できるようにするために、接続可能であってよい。しかし、ハウジング2は、その代替として、回転不可能なハウジングとして設計されてよい。
【0025】
ドローバー5は、ハウジング2のボア3の内部にスライド可能に載置されており、ボア3において、その縦方向軸Lに沿って、前進したリリース位置(図5を参照されたい)と引き込まれたロッキング位置(図2及び図4を参照されたい)との間を往復移動可能となるようになっている。ドローバー5は、ボア3の入口開口3aに向いている前端と、反対側の後端と、を有する。ヘッド部位6とネック部位7とは、ドローバー5の前端に提供されている。ヘッド部位6は、ドローバーの縦方向に見て、ネック部位7の前に置かれており、ヘッド部位6は、ネック部位7に、ヘッド部位6において後方に向いている傾斜面8を介して接続されている。密封リング9が、ドローバー5とボア3の内面との間に配置されている。ここに示す例では、この密封リング9は、ドローバー5の外側の溝に受容されている。
【0026】
ドローバー5は、ハウジング2に対しての回転が防止されている。ここに示す実施形態では、2つの平面壁セクション5c、5d(図2及び図9を参照されたい)は、ドローバー5の向かい合う側の双方において、ネック部位7の背後に置かれているドローバーの一部位にて提供されており、それらの平面壁セクション5c、5dは、ボア3における平面3c、3dのそれぞれと、ドローバー5とハウジング2との間の相互の回転を防ぐために、スライディング接触にある。しかし、ドローバー5とハウジング2との間の相互の回転は、いずれの他の好適な様式にて防ぐことができるであろう。
【0027】
ツールホルダ60において載置シャンク61を受容するための載置部位10は、ボア3の前端に提供されている。この載置シャンク61はここでは、ツールホルダシャンクと呼ぶ。
【0028】
ここに示す実施形態では、ハウジング2は、ベース部12と、ベース部12に、ハウジングの前端2aにて載置されているエンドピース13と、を含む。エンドピース13は、上述するボア3の一部を形成する軸方向の貫通孔を持つスリーブの形態を有する。この場合では、上述する載置部位10は、エンドピース13の貫通孔内に置かれている。その代替として、ボア3を収容するハウジング2の一部は、上述するタイプのいずれのエンドピースなく、一体に形成され得る。
【0029】
ツールホルダシャンク61は、ボア3の載置部位10に、ハウジング2の前端2aにある入口開口3aを介して挿入可能である。ドローバーのヘッド部位6は、ツールホルダシャンク61におけるかみ合いボア62に受容されており、ツールホルダシャンクの管状壁63は、ヘッド部位6とエンドピース13の内面との間の空間に受容されている。ここに示す実施形態では、載置部位10は円錐形状であり、同様に形成されているツールホルダシャンク61を受容するよう適合されているいくらかの「三角形」又は多角形の、非円形の断面図形状を有する。この円錐形状は、ツールホルダシャンク61とハウジング2との間の、半径方向、同様に、軸方向への、遊びのない接続を確かなものとする一方で、この非円形の断面図は、ツールホルダシャンク61の、ハウジング2への回転不可能な固定を確かなものとする。しかし、載置部位10はまた、他のタイプのツールホルダシャンクを受容するためのいずれの他の適した形状をも有し得る。
【0030】
セグメントの形態でのかみ合い部材20は、ドローバー5の周りに、その前端に配置されている。前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置へのドローバー5の動作の影響下で、かみ合い部材20は、ツールホルダシャンク61が、ボア3の載置部位10に出入することを、かみ合い部材20が可能にする第1の位置(図5を参照されたい)から、かみ合い部材20が、ツールホルダシャンク61におけるかみ合いボア62において、かみ合い溝64とのロッキングかみ合いにあり、これにより、ツールホルダシャンク61をハウジング2に固定したままとする第2の位置(図2及び図4を参照されたい)に、移動可能である。
【0031】
ここに示す実施形態では、かみ合い部材20は、ドローバー5のネック部位7の周りに配置されており、ネック部位の周りに、ボア3に配置されており、ネック部位7を取り囲んでいるリテーナリング21と弾性Oリング22とを用いて保持されている。かみ合い部材20のそれぞれは、リテーナリング21における内溝においてかみ合っている、外に向いているフランジ部位23を有する。Oリング22は、かみ合い部材20のそれぞれの後端にて、外に向いている溝に受容されている。圧縮スプリング24がまた、ボア3に配置されており、これは、ドローバー5を取り囲むよう構成されている。圧縮スプリング24は、ドローバー5におけるショルダとリテーナリング21との間に載置されており、それは、リテーナリング21と、かみ合い部材20と、を前方に付勢するよう構成されている。ボア3の入口開口に向けてのリテーナリング21の前方への動作は、ボア3に提供されているショルダ25により制限されている。ここに示す例では、このショルダ25は、エンドピース13の後方に向いている端面により形成されている。
【0032】
その前端にて、かみ合い部材20のそれぞれには、かみ合い部材20が上述する第2の位置にある際に、ツールホルダシャンク61におけるかみ合い溝64とかみ合いにあるよう構成されている、外に向けられているかみ合いフランジ27が提供されている。ドローバー5が前進したリリース位置にある際に、かみ合い部材20の前端のそれぞれは、ドローバー5のヘッド部位6の背後に位置し、かみ合いフランジ27は、図5に示すように、ツールホルダシャンク61におけるかみ合い溝64とのかみ合いから外れている。ドローバー5がボア3においてその縦方向軸Lに沿って軸方向に後方に動かされると、ドローバーのヘッド部位6における傾斜面8が、かみ合い部材20の前端のそれぞれと接触することとなる。かみ合い部材20の前端のそれぞれは、この傾斜面8上をスライドして外向きに押され、かみ合い部材におけるかみ合いフランジ27が、ツールホルダシャンク61におけるかみ合い溝64とかみ合うようになる。その後、ツールホルダシャンク61は、ドローバー5により引かれ、上述する載置部位10にて、エンドピース13の内面と密着する。
【0033】
クランピングデバイス1は、ハウジング2の周壁14の周りに配置されており、この周壁14にスライド可能に載置されており、ハウジング2に対して縦方向軸Lに沿って軸方向に移動可能となるようになっている作動スリーブ30をさらに含む。作動スリーブ30は、ハウジング2に回転不可能に載置されている、つまり、周壁14に対しての回転が防止されている。ここに示す例では、ボール15(図7及び図8を参照されたい)が、作動スリーブ30とハウジング2との間に配置されている。ボール15は、周壁14の周方向に分散されており、ボール15のぞれぞれは、周壁14におけるリセスに部分的に、及び、作動スリーブ30における縦方向の溝38に部分的に収められている。ボール15は、周壁の外側におけるリセスに受容されることにより、周壁14に対して軸方向の位置に固定される。ボール15は、作動スリーブ30の内側における縦方向の溝38にスライド可能に受容されており、作動スリーブ30は、これにより、作動スリーブが周壁14に対して軸方向に動かされる際に、ボール15に対して軸方向に動くことができる。ボール15は、作動スリーブ30と周壁14との間の相互の回転を防ぐ。
【0034】
1つ又はそれ以上の第1のウェッジ40は、ハウジング2に載置されており、ハウジング2に対しての作動スリーブ30の第1の軸方向D1への軸方向の動作を、ドローバー5の、前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置への動作に伝達するよう構成されている。さらに、1つ又はそれ以上の第2のウェッジ50は、ハウジング2に載置されており、ハウジング2に対しての作動スリーブ30の反対の第2の軸方向D2への軸方向の動作を、ドローバー5の、引き込まれたロッキング位置から前進したリリース位置への動作に伝達するよう構成されている。ここに示す実施形態では、第1の軸方向D1は、ハウジング2の前端2aに向かう方向であり、第2の軸方向D2は、ハウジング2の後端2bに向かう方向である。したがって、この場合では、ドローバー5の、前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置への動作が、周壁14に沿う作動スリーブ30の前方への軸方向の動作により達成される一方で、ドローバー5の、引き込まれたロッキング位置から前進したリリース位置への動作が、周壁14に沿う作動スリーブ30の後方への軸方向の動作により達成される。しかし、その代替として、作動スリーブ30と、第1及び第2のウェッジ40、50と、は、ドローバー5の、前進したリリース位置から引き込まれたロッキング位置への動作が、周壁14に沿う作動スリーブ30の後方への軸方向の動作により達成される一方で、ドローバー5の、引き込まれたロッキング位置から前進したリリース位置への動作が、周壁14に沿う作動スリーブ30の前方への軸方向の動作により達成されるよう、協働するよう配置され得る。したがって、後者の場合では、第1の軸方向D1は、ハウジング2の後端2bに向かう方向であり、第2の軸方向D2は、ハウジング2の前端2aに向かう方向である。
【0035】
ここに示す実施形態では、クランピングデバイス1は、周壁14の周方向に間隔があけられている3つの第1のウェッジ40を含む。第1のウェッジ40のそれぞれは、周壁14を通して半径方向に伸長する第1のアパーチャ45のそれぞれにスライド可能に受容されている。第1のウェッジ40は、それらが、関連付けられている第1のアパーチャ45において半径方向に内向きに押された際に、ドローバー5を引き込まれたロッキング位置に向けて共に押すよう構成されている。
【0036】
クランピングデバイス1は、ハウジング2の周壁14において、対応する数の第1のアパーチャ45を通して伸長して配置されている、いずれの好適な数の第1のウェッジ40を含んでよい。第1のウェッジ40と、関連付けられている第1のアパーチャ45と、は、好ましくは、周壁14の周方向に等距離に分散されている。
【0037】
第1のウェッジ40のそれぞれは、ハウジング2の周壁14から外に向いている第1の受圧面41を含み、作動スリーブ30には、その内側において、第1のウェッジにおける第1の受圧面41と接触するために内に向いている第1の加圧面31が提供されている。第1の加圧面31のそれぞれは、上述する第1の軸方向D1に見て長くなる、縦方向軸Lまでの半径方向の距離を有する。第1の加圧面31は、作動スリーブ30が第1の軸方向D1に動かされる際に、第1のウェッジにおける第1の受圧面41を押すことにより、第1のウェッジ40を、第1のアパーチャ45において半径方向に内向きに押すよう構成されている。
【0038】
第1のウェッジ40のそれぞれはまた、ハウジング2の後端2bに向いており、ハウジングの前端2aに向いている、ドローバー5における第1のスライド面16と接触しているウェッジ面46をも含む。第1のウェッジ40が、作動スリーブ30により、第1のアパーチャ45において半径方向に内向きに押されると、第1のウェッジ40のそれぞれのウェッジ面46が、ドローバーにおいて対応する第1のスライド面16上をスライドしてこれを押し、これにより、ドローバー5を、引き込まれたロッキング位置に向けて移動させる。
【0039】
ここに示す実施形態では、第1のウェッジのそれぞれのウェッジ面46と、ドローバー5において関連付けられている第1のスライド面16と、は、平面として形成されている。これらは、縦方向軸Lに対して垂直な、ハウジング2を通る縦方向の断面に見られるように、縦方向軸Lに対して傾いている。この場合では、それらの表面16、46は、図10に示すように、縦方向軸Lに対して垂直な断面に見られるように、線形である。第1のウェッジのそれぞれのウェッジ面46と、ドローバー5において関連付けられている第1のスライド面16と、は、その代替として、縦方向軸Lに対して垂直な断面に見られるように、曲線状であってよい。後者の場合では、それらの表面16、46は平面ではない。そのさらなる代替として、それらの表面16、46の一つは、縦方向軸Lに対して垂直な、ハウジング2を通る縦方向の断面に見られるように、曲線状とすることができる。
【0040】
ドローバー5が、作動スリーブ30と第1のウェッジ40との影響下で、引き込まれたロッキング位置に押し込まれている際に、作動スリーブ30は、好ましくは、セルフロッキングの軸方向の位置を周壁14の上に想定するよう構成されており、これにより、作動スリーブ30が、ドローバー5を引き込まれたロッキング位置に維持できるようになっている。セルフロッキングの軸方向の位置では、作動スリーブ30と、作動スリーブ30と接触している、第1のウェッジ40及び/又は周壁14の各部と、の間の摩擦力が、作動スリーブが軸方向に、第2の軸方向D2に変位することを防ぐ。
【0041】
第1の加圧面31と第1の受圧面41とは、好ましくは、縦方向軸Lに対して、ドローバー5が、作動スリーブ30と第1のウェッジ40との影響下で、引き込まれたロッキング位置に押し込まれている際に、第1のウェッジ40が、作動スリーブ30を、周壁14におけるセルフロッキングの軸方向の位置に維持するそのような角度α(図4を参照されたい)により傾いている。
【0042】
ここに示す実施形態では、クランピングデバイス1は、周壁14の周方向に間隔があけられている3つの第2のウェッジ50を含む。第2のウェッジ50のそれぞれは、周壁14を通して半径方向に伸長する第2のアパーチャ55のそれぞれにスライド可能に受容されている。第2のウェッジ50は、それらが、関連付けられている第2のアパーチャ55において半径方向に内向きに押された際に、ドローバー5を前進したリリース位置に向けて共に押すよう構成されている。
【0043】
クランピングデバイス1は、ハウジング2の周壁14において、対応する数の第2のアパーチャ55を通して伸長して配置されている、いずれの好適な数の第2のウェッジ50を含んでよい。第2のウェッジ50と、関連付けられている第2のアパーチャ55と、は、好ましくは、周壁14の周方向に等距離に分散されている。
【0044】
第2のウェッジ50のそれぞれは、ハウジング2の周壁14から外に向いている第2の受圧面52を含み、作動スリーブ30には、その内側において、第2のウェッジにおける第2の受圧面52と接触するために内に向いている第2の加圧面32が提供されている。第2の加圧面32のそれぞれは、上述する第2の軸方向D2に見て長くなる、縦方向軸Lまでの半径方向の距離を有する。第2の加圧面32は、作動スリーブ30が第2の軸方向D2に動かされる際に、第2のウェッジにおける第2の受圧面52を押すことにより、第2のウェッジ50を、第2のアパーチャ55において半径方向に内向きに押すよう構成されている。
【0045】
第2のウェッジ50のそれぞれはまた、ハウジング2の前端2aに向いており、ハウジングの後端2bに向いている、ドローバー5における第2のスライド面17と接触しているウェッジ面57をも含む。第2のウェッジ50が、作動スリーブ30により、第2のアパーチャ55において半径方向に内向きに押されると、第2のウェッジ50のそれぞれのウェッジ面57が、ドローバーにおいて対応する第2のスライド面17上をスライドしてこれを押し、これにより、ドローバー5を、前進したロッキング位置に向けて移動させる。
【0046】
ここに示す実施形態では、第2のウェッジのそれぞれのウェッジ面57と、ドローバー5において関連付けられている第2のスライド面17と、は、平面として形成されている。これらは、縦方向軸Lに対して垂直な、ハウジング2を通る縦方向の断面に見られるように、縦方向軸Lに対して傾いている。この場合では、それらの表面17、57は、図11に示すように、縦方向軸Lに対して垂直な断面に見られるように、線形である。第2のウェッジのそれぞれのウェッジ面57と、ドローバー5において関連付けられている第2のスライド面17と、は、その代替として、縦方向軸Lに対して垂直な断面に見られるように、曲線状であってよい。後者の場合では、それらの表面17、57は平面ではない。そのさらなる代替として、それらの表面17、57の一つは、縦方向軸Lに対して垂直な、ハウジング2を通る縦方向の断面に見られるように、曲線状とすることができる。
【0047】
第1のウェッジ40のそれぞれはまた、ハウジング2の周壁14から外に向いている第3の受圧面43をも含んでよく、作動スリーブ30には、その内側において、第1のウェッジのそれぞれにおける第3の受圧面43と接触するために内に向いている第3の加圧面33が提供されている。第3の加圧面33は、第1の軸方向D1に見て長くなる、縦方向軸Lまでの半径方向の距離を有する。第3の加圧面33と第3の受圧面43とは、縦方向軸Lに対して、上述する角度αより大きい角度β(図6を参照されたい)により傾いている。第1及び第3の加圧面31、33と、第1及び第3の受圧面41、43と、は、それぞれ、作動スリーブ30と、第1のウェッジ40のそれぞれと、において連続して配置されており、第1の軸方向D1への作動スリーブ30の動作の後に、第3の加圧面33が、動作の初期の第1のフェーズ中に、関連付けられている第3の受圧面43上をスライドしてこれを押すよう構成されており、その後、第1の加圧面31が、動作の、それに続く第2のフェーズ中に、関連付けられている第1の受圧面41上をスライドしてこれらを押すよう構成されている。
【0048】
ここに示す実施形態では、作動スリーブ30における第3の加圧面33は、環状の回転対称な表面の形態を有する。この場合では、作動スリーブ30における第3の加圧面33は1つのみである。しかし、作動スリーブ30には、その代替として、第1のウェッジ40の数に対応する数の別個の第3の加圧面33が提供され得、第1のウェッジ40のそれぞれにおける第3の受圧面43は、作動スリーブ30におけるそれ自身の第3の加圧面33に関連付けられている。
【0049】
第1及び第3の加圧面31、33と、第1及び第3の受圧面41、43と、は、好適には、縦方向軸Lに対して垂直な断面に見られるように、曲線状である。また、第2の加圧面32と、第2の受圧面52と、は、縦方向軸Lに対して垂直な断面に見られるように、曲線状であってよい。しかし、加圧面31、32、33と受圧面41、52、43との1つ又はそれ以上が、その代替として、平面の形態を有してよく、その結果として、縦方向軸Lに対して垂直な断面に見られるように、線形であってよい。ここに示す実施形態では、第2の加圧面32のそれぞれは、作動スリーブ30の回転対称な内壁面35において形成されているリセス34に提供されている。さらに、ここに示す実施形態では、作動スリーブの内側における、この回転対称な内壁面35の部位39は円錐形状であり、第1の加圧面31は、この円錐形状の壁部位39の異なる部分において提供されている。
【0050】
第1のウェッジ40と第2のウェッジ50とは、好ましくは、周壁14の周方向に見て、交互に配置されており、ここでは、第1のウェッジ40の各1つには、周壁14の周方向に見て、第2のウェッジ50の1つが続き、第2のウェッジ50の各1つには、周壁14の周方向に見て、第1のウェッジ40の1つが続く。
【0051】
ここに示す実施形態では、第1の加圧面31と第2の加圧面32とは、作動スリーブ30の軸方向に部分的に互いに重なっており、それらは、作動スリーブ30の周方向に互いに離れている。
【0052】
第1及び第2のウェッジ40、50は、ハウジング2の周壁14において関連付けられている第1及び第2のアパーチャ45、55に回転不可能に受容されている、つまり、ウェッジのそれぞれは、関連付けられているアパーチャにおける回転が防止されている。ここに示す実施形態では、ウェッジ40、50のそれぞれと、周壁14において関連付けられているアパーチャ45、55と、は、円形断面形状を持つ相互接触面を有する。この場合では、ボール18(図10及び図11を参照されたい)は、ウェッジ40、50のそれぞれと、関連付けられているアパーチャ45、55の内面と、の間に配置されており、このボール18は、ウェッジのエンベロープ面におけるリセス48、58に部分的に、及び、アパーチャの内面における細長溝19に部分的に、収められている。ボール18は、そのエンベロープ面におけるリセス48、58に受容されることにより、関連付けられているウェッジ40、50に対して、その位置が固定されたままとなっている。ボール18は、関連付けられているアパーチャ45、55における細長溝19にスライド可能に受容されており、ウェッジ40、50は、これにより、関連付けられているアパーチャ45、55の軸方向に移動でき、同時に、ボール18は、ウェッジがアパーチャにおいて回転することを防いでいる。その代替として、ウェッジ40、50のエンベロープ面と、アパーチャ45、55の内面と、は、ウェッジが、関連付けられているアパーチャにおいて回転することを防ぐために、楕円断面形状などの、非円形の断面形状を有し得る。
【0053】
クランピングデバイス1はまた、第1及び第2の軸方向D1、D2への作動スリーブ30の動作を達成するために、1つ又はそれ以上の油圧又は空圧アクチュエータなどの追加的コンポーネントをも含んでよい。クランピングデバイス1の制御は、アクチュエータなどを用いて容易に自動化されてよい。したがって、本発明に係るクランピングデバイス1が、自動ツール交換作業での使用に好適となる。しかし、本発明に係るクランピングデバイス1はまた、手動操作に適合されてもよい。
【0054】
ツールホルダ60がハウジング2にクランプされる際に、図5に示すように、ドローバー5を前進したリリース位置にしたままで、ツールホルダシャンク61が、ボア3の載置部位10に挿入される。これによって、ドローバーのヘッド部位6は、ツールホルダシャンク61におけるかみ合いボア62に受容され、ツールホルダシャンク61におけるかみ合い溝64が、かみ合い部材20のかみ合いフランジ27の外側に置かれる。その後、作動スリーブ30は、第1の軸方向D1に、例えば、油圧又は空圧アクチュエータ用いて、又は、手動操作により、動かされる。作動スリーブ30のこの軸方向の動作の第1のフェーズ中、作動スリーブ30における第3の加圧面33が、第1のウェッジ40における第3の受圧面43上をスライドしてこれらを押す。これによって、第1のウェッジ40が半径方向に内向きに押されることとなり、ドローバー5が軸方向に、引き込まれたロッキング位置に向けて変位することとなる。第3の加圧面及び受圧面33、43の比較的きつい傾斜βで、第1のウェッジ40は初期的に、内向きにかなり速く移動することとなり、これは、ドローバー5の比較的迅速な変位をもたらす。比較的きつい角度βは、ドローバー5の初期変位に大きな力が必要でないため、好適である。第1及び第3の加圧面31、33と、第1及び第3の受圧面41、43と、は、第3の加圧面33が第3の受圧面43を通り、第1の加圧面31が第1の受圧面41に到達するような距離を、作動スリーブ30が動かされた際に、つまり、これらのそれぞれの表面間の遷移にて、ドローバー5が、ボア3におけるその最終的な引き込まれた位置にほぼ到達するよう配置されている。したがって、大きな力が有益である最終クランピングフェーズに対して、第1の加圧面及び受圧面31、41がアクティブとなっている。このフェーズでは、作動スリーブ30の比較的大きな動作が、第1のウェッジ40の非常に小さい半径方向の変位と、ドローバー5のさらにより小さい軸方向の変位と、をもたらし、これは、その結果として、力を増幅する効果を提供し、これにより、ドローバー5は、ツールホルダシャンク61を大きな力をもって引き、ハウジング2とのしっかりとしたかみ合いとすることを可能にする。さらに、第1の加圧面及び受圧面31、41の小さな傾斜αは、セルフロッキング効果を提供し、クランピングデバイスが、いずれの追加的なロッキング手段を必要とすることなく、クランプされた状態のままになることを確かにする。これによって、ドローバー5が引き込まれたロッキング位置に到達した際に、作動スリーブ30における力が解放されてよい。
【0055】
ツール交換作業が行われ、ツールホルダ60がハウジング2からリリースされる際には、作動スリーブ30が第2の軸方向D2に動かされる。作動スリーブ30が、第2の軸方向D2への十分な力を受けると、作動スリーブ30における第1の加圧面31と第1のウェッジ40における第1の受圧面41との間のセルフロッキング摩擦かみ合いが解放され、その後、作動スリーブ30は、ハウジング2に対して、第2の軸方向に移動可能となる。作動スリーブ30がこの方向に動かされると、作動スリーブ30における第2の加圧面32が、第2のウェッジ50における第2の受圧面52上をスライドしてこれらを押す。これによって、第2のウェッジ50が半径方向に内向きに押されることとなり、ドローバー5が軸方向に、前進したリリース位置に向けて変位することとなる。ドローバー5が前進したリリース位置に向けて動かされると、ドローバー5のヘッド部位6の外端が、ツールホルダシャンク61におけるかみ合いボア62における表面65にあたり、これにより、ツールホルダシャンク61をハウジング2から解放する。前進したリリース位置に向かうドローバー5の動作中、ドローバー5における第1のスライド面16が、第1のウェッジ40におけるウェッジ面46に押され、これにより、第1のウェッジ40を半径方向に外向きに押す。半径方向に外向きの第1のウェッジ40の動作は、作動スリーブ30の内側における環状の溝37に固定されているストップリング36により制限されている。
【0056】
本発明はもちろん、いかなる方法によっても上記の実施形態に制限されない。それどころか、その変形例に対する多くの可能性が、添付の特許請求の範囲に画定されるような、本発明の基本的な概念から逸脱することなく、当業者には明白となるであろう。
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