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特許7600245ヒト又はキメラMHCタンパク質複合体を有する遺伝子組換え非ヒト動物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】ヒト又はキメラMHCタンパク質複合体を有する遺伝子組換え非ヒト動物
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/0278 20240101AFI20241209BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241209BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241209BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20241209BHJP
   A01K 67/0271 20240101ALI20241209BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20241209BHJP
   C07K 14/74 20060101ALN20241209BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20241209BHJP
【FI】
A01K67/0278 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/12
G01N33/15 Z
A01K67/0271
C07K19/00
C07K14/74
C07K14/705
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2022542077
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 CN2021070967
(87)【国際公開番号】W WO2021139799
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202010028231.9
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521213200
【氏名又は名称】バイオサイトジェン ファーマシューティカルズ (ベイジン) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ユエレイ
(72)【発明者】
【氏名】グオ,チャオシェ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,メイリン
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ヤナン
(72)【発明者】
【氏名】バイ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ジアウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シャン,チェンチャン
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/056774(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/190922(WO,A1)
【文献】特表2016-510998(JP,A)
【文献】特表2014-532412(JP,A)
【文献】国際公開第2020/004622(WO,A1)
【文献】特表2015-504895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
A01K 67/027-67/0278
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β2ミクログロブリン(B2M)及びヒト又はヒト化主要組織適合複合体(MHC)α鎖を含む融合タンパク質を発現する遺伝子組換え非ヒト動物であって、
前記融合タンパク質は、ヒトB2Mタンパク質と、ヒトHLA-Aα1及びα2ドメイン及びマウスH2-D1α3ドメインを含むキメラMHCα鎖とを含むか、あるいは前記融合タンパク質は、ヒトB2Mタンパク質及びヒトHLA-Aタンパク質を含み、
前記ヒトHLA-Aは、ヒトHLA-A2.1であり、
内因性B2Mを発現しなく、
内因性B2Mの領域をコードする配列は、前記融合タンパク質をコードする配列と置換され、内因性B2Mの前記領域をコードする前記配列は、内因性B2M遺伝子のエクソン1、エクソン2及びエクソン3を含み、
前記融合タンパク質は、ヒトHLA-A2.1のシグナルペプチドをさらに含み、
マウスであ
B2M及び前記MHCα鎖は、互いに会合し、機能的MHCタンパク質複合体を形成することができ、前記タンパク質複合体は、非自己抗原を1つ以上の細胞の表面に提示することができる、遺伝子組換え非ヒト動物。
【請求項2】
前記動物のゲノムは、前記融合タンパク質をコードする配列を含む少なくとも1つの染色体を含む、請求項1に記載の動物。
【請求項3】
前記融合タンパク質をコードする前記配列は、前記少なくとも1つの染色体における内因性β2ミクログロブリン(B2M)遺伝子座で内因性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結される、請求項2に記載の動物。
【請求項4】
前記ヒトB2M及び前記ヒトHLA-Aは、リンカーペプチド配列を介して連結される、請求項1に記載の動物。
【請求項5】
前記ヒトB2Mは、配列番号4又は配列番号4のアミノ酸21~119の配列を有するB2Mのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項4に記載の動物。
【請求項6】
前記ヒトHLA-Aは、配列番号59又は配列番号59のアミノ酸22~362のアミノ酸配列を有するヒトHLA-Aのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項4又は5に記載の動物。
【請求項7】
前記融合タンパク質は、配列番号62のアミノ酸配列を有する前記融合タンパク質のアミノ酸配列に対して100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項4~6のいずれか一項に記載の動物。
【請求項8】
前記ヒトB2M及び前記キメラMHCα鎖は、リンカーペプチド配列を介して連結される、請求項1に記載の動物。
【請求項9】
前記キメラMHCα鎖は、内因性MHCα3ドメイン及び内因性MHC細胞質領域をさらに含む、請求項1に記載の動物。
【請求項10】
前記キメラMHCα鎖は、内因性MHCのα3ドメイン、Cペプチド、膜貫通領域及び細胞質領域を含む、請求項1に記載の動物。
【請求項11】
マウスであり、及び前記キメラMHCα鎖は、マウスH2-D1のα3ドメイン、Cペプチド、膜貫通領域及び細胞質領域を含む、請求項1に記載の動物。
【請求項12】
前記キメラMHCα鎖は、配列番号6のアミノ酸配列を有するマウスH2-D1のアミノ酸207~362に対して少なくとも90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の動物。
【請求項13】
前記融合タンパク質は、配列番号61又は配列番号63のアミノ酸配列を有する前記融合タンパク質のアミノ酸配列に対して100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の動物。
【請求項14】
前記ヒトHLA-A2.1のシグナルペプチドは、前記融合タンパク質のN末端にある、請求項1~13のいずれか一項に記載の動物。
【請求項15】
前記シグナルペプチドは、配列番号59のアミノ酸配列を有するヒトHLA-A2.1のアミノ酸1~21に対して少なくとも90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の動物。
【請求項16】
前記融合タンパク質をコードする前記配列に対してヘテロ接合性である、請求項1~15のいずれか一項に記載の動物。
【請求項17】
前記融合タンパク質をコードする前記配列に対してホモ接合性である、請求項1~15のいずれか一項に記載の動物。
【請求項18】
内因性MHCα鎖を発現しない、請求項1~17のいずれか一項に記載の動物。
【請求項19】
ヒトT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)は、前記提示された非自己抗原を認識し、且つ免疫応答を開始することができる、請求項1~18のいずれか一項に記載の動物。
【請求項20】
内因性T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)は、前記提示された非自己抗原を認識し、且つ免疫応答を開始することができる、請求項1~18のいずれか一項に記載の動物。
【請求項21】
C57BL/6バックグラウンドを有するマウスである、請求項1に記載の動物。
【請求項22】
免疫不全マウスである、請求項1~21のいずれか一項に記載の動物。
【請求項23】
前記動物の前記ゲノムは、前記動物の内因性CD132遺伝子における破壊を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の動物。
【請求項24】
NOD/scidマウス、NOD/scidヌードマウス又はB-NDGマウスである、請求項1~23のいずれか一項に記載の動物。
【請求項25】
追加的なヒト又はキメラタンパク質をコードする配列をさらに含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の動物。
【請求項26】
前記追加的なヒト又はキメラタンパク質は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、リンパ球活性化3(LAG-3)、B及びTリンパ球関連(BTLA)、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)、CD27、CD28、SIRPα、CD47、THPO、CD137、CD154、Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)、シグナル調節タンパク質α(SIRPα)又はTNF受容体スーパーファミリーメンバー4(OX40)である、請求項25に記載の動物。
【請求項27】
癌の治療のための薬剤又は薬剤の組み合わせの有効性を判定する方法であって、
腫瘍細胞を、請求項1~26のいずれか一項に記載の動物に移植し、それにより前記動物において1つ以上の腫瘍を形成することと;
前記薬剤又は前記薬剤の組み合わせを前記動物に投与することと;
前記腫瘍に対する阻害効果を判定することと
を含む方法。
【請求項28】
前記腫瘍細胞を前記動物に移植する前に、ヒト末梢血細胞(hPBMC)又はヒト造血幹細胞は、前記動物に注射される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記腫瘍細胞は、癌細胞株に由来する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記腫瘍細胞は、ヒト患者から得られた腫瘍サンプルに由来する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記阻害効果は、前記動物における腫瘍体積を測定することによって判定される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記腫瘍細胞は、メラノーマ細胞、肺癌細胞、原発性肺癌細胞、非小細胞肺癌(NSCLC)細胞、小細胞肺癌(SCLC)細胞、原発性胃癌細胞、膀胱癌細胞、乳癌細胞及び/又は前立腺癌細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
ヒト血液リンパ系を含む動物を作製する方法であって、ヒト造血細胞又はヒト末梢血細胞を含む細胞の集団を、請求項1~26のいずれか一項に記載の動物に移植することを含む方法。
【請求項34】
前記ヒト血液リンパ系は、造血幹細胞、骨髄前駆体細胞、骨髄系細胞、樹状細胞、単球、顆粒球、好中球、肥満細胞、リンパ球及び血小板からなる群から選択されるヒト細胞を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記移植前に前記動物を照射することをさらに含む、請求項33又は34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒト又はキメラ(例えば、ヒト化)主要組織適合複合体(MHC)タンパク質複合体を発現する遺伝子組換え動物及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主要組織適合複合体(MHC)クラスI及びクラスIIタンパク質は、免疫系の適応ブランチにおける中心的役割を果たす。両方のタンパク質クラスは、T細胞による認識のため、細胞表面上にペプチドを提示するタスクを共有する。免疫原性ペプチド-MHCクラスI(pMHCI)複合体は、有核細胞上に提示され、細胞傷害性CD8+T細胞によって認識される。それに対して、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞(DC)、マクロファージ又はB細胞)によるpMHCIIの提示は、CD4+T細胞を活性化し、エフェクター細胞の協調及び調節をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ヒトMHCタンパク質複合体は、高度に多型であり、動物のMHCと異なる。この差異は、薬剤開発におけるより高い失敗率をもたらすことがある。特に、インビボ薬理学的試験における通常の実験動物の使用から得られた試験結果は、ヒトにおける実際の病態及び細胞相互作用を反映しないことがあり、そのため、多くの臨床試験における結果は、動物実験結果と有意に異なり得る。ヒト免疫系により類似する免疫系をもたらし得る遺伝子改変動物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、ヒト又はキメラ(例えば、ヒト化)主要組織適合複合体(MHC)タンパク質複合体を発現する遺伝子組換え動物に関する。いくつかの実施形態では、動物は、(例えば、CD132遺伝子ノックアウトを有する)免疫不全動物モデルとして使用される。MHCがT細胞発現に関与することから、ヒト又はヒト化MHCは、再構築されたヒト免疫系を有する動物モデルにおけるT細胞発現にとってより良好な環境を提供し得る。
【0005】
一態様では、本開示は、β2ミクログロブリン(B2M)及びヒト又はヒト化主要組織適合複合体(MHC)分子(例えば、MHCα鎖)を含む融合タンパク質を発現する遺伝子組換え非ヒト動物に関する。
【0006】
いくつかの実施形態では、動物のゲノムは、融合タンパク質をコードする配列を含む少なくとも1つの染色体を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、ヒト又はヒト化B2Mタンパク質を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、MHC分子は、MHCクラスI又はMHCクラスIIα鎖である。
【0009】
いくつかの実施形態では、MHCα鎖は、ヒトHLA-Aタンパク質である。
【0010】
いくつかの実施形態では、MHCα鎖は、キメラMHCα鎖である。いくつかの実施形態では、MHCα鎖は、ヒトHLA-A/マウスH2-D1キメラ分子である。
【0011】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、ヒトB2Mタンパク質と、ヒトHLA-Aα1及び/又はα2ドメインを含むキメラMHCα鎖とを含む。いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、マウスH2-D1ドメイン(例えば、α1、α2及び/又はα3ドメイン)をさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、ヒトB2Mタンパク質及びヒトHLA-Aタンパク質を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードする配列は、少なくとも1つの染色体における内因性β2ミクログロブリン(B2M)遺伝子座で内因性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結される。
【0014】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードする配列は、少なくとも1つの染色体における内因性MHC遺伝子座で内因性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結される。
【0015】
いくつかの実施形態では、動物は、マウスであり、及びMHC分子をコードする配列は、少なくとも1つの染色体におけるマウスH2-D1遺伝子座で内因性調節エレメントに作動可能に連結される。
【0016】
いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aは、ヒトHLA-A2.1である。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aは、ヒトHLA-A10101である。
【0017】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、(a)ヒトB2M;及び(b)ヒトHLA-Aを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、ヒトB2M及びヒトHLA-Aは、リンカーペプチド配列を介して連結される。
【0019】
いくつかの実施形態では、ヒトB2Mは、配列番号4又は配列番号4のアミノ酸21~119に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0020】
いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aは、HLA-A2.1又はHLA-A10101である。
【0021】
いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aは、配列番号8、配列番号8のアミノ酸25~365、配列番号59又は配列番号59のアミノ酸22~362に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0022】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号62に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0023】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、(a)ヒトB2M;及び(b)キメラMHCα鎖を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、ヒトB2M及びキメラMHCα鎖は、リンカーペプチド配列を介して連結される。
【0025】
いくつかの実施形態では、ヒトB2Mは、配列番号4又は配列番号4のアミノ酸21~119に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0026】
いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、ヒトHLA-Aα1及びα2ドメインを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、ヒトHLA-Aα3ドメインをさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、内因性MHCα3ドメイン及び/又は内因性MHC細胞質領域をさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、配列番号8、配列番号8のアミノ酸25~206、配列番号59又は配列番号59のアミノ酸22~203に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、内因性MHCのα3ドメイン、Cペプチド、膜貫通領域及び細胞質領域を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、動物は、マウスであり、及びキメラMHCは、マウスH2-D1のα3ドメイン、Cペプチド、膜貫通領域及び細胞質領域を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、キメラMHCは、配列番号6のアミノ酸207~362に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、キメラMHCは、配列番号61又は配列番号63に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、(例えば、融合タンパク質のN末端において)ヒトHLA-A2.1のシグナルペプチドをさらに含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号59のアミノ酸1~21に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、動物は、ヒト若しくはヒト化MHCα鎖又は融合タンパク質をコードする配列に対してヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、動物は、ヒト若しくはヒト化MHCα鎖又は融合タンパク質をコードする配列に対してホモ接合性である。
【0037】
一態様では、本開示は、遺伝子組換え非ヒト動物であって、そのゲノムは、ヒトHLA-Aα1ドメイン、ヒトHLA-Aα2ドメイン及び内因性MHCα3ドメインを含むキメラMHCα鎖をコードする配列を含む少なくとも1つの染色体を含む、遺伝子組換え非ヒト動物に関する。
【0038】
いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖をコードする配列は、少なくとも1つの染色体における内因性MHC遺伝子座で内因性調節エレメントに作動可能に連結される。
【0039】
いくつかの実施形態では、動物のゲノムは、ヒトB2Mをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ヒトB2M及びキメラMHCα鎖は、互いに会合し、動物内で機能的MHCタンパク質複合体を形成することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、ヒトB2Mをコードする配列は、内因性B2M遺伝子座で内因性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結される。
【0041】
いくつかの実施形態では、動物は、マウスであり、及びキメラMHCα鎖をコードする配列は、マウスH2-D1遺伝子座で内因性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結される。
【0042】
いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aは、ヒトHLA-A2.1である。
【0043】
一態様では、本開示は、遺伝子組換え非ヒト動物であって、そのゲノムは、ヒトHLA-Aをコードする配列を含む少なくとも1つの染色体を含む、遺伝子組換え非ヒト動物に関する。
【0044】
いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aをコードする配列は、少なくとも1つの染色体における内因性MHC遺伝子座で内因性調節エレメントに作動可能に連結される。
【0045】
いくつかの実施形態では、動物のゲノムは、ヒトB2Mをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ヒトB2M及びヒトHLA-Aは、互いに会合し、動物内で機能的MHCタンパク質複合体を形成することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、ヒトB2Mをコードする配列は、内因性B2M遺伝子座で内因性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結される。
【0047】
いくつかの実施形態では、動物は、マウスであり、及びヒトHLA-Aをコードする配列は、マウスH2-D1遺伝子座で内因性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結される。
【0048】
いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aは、ヒトHLA-A2.1である。
【0049】
いくつかの実施形態では、動物は、内因性B2Mを発現しない。
【0050】
いくつかの実施形態では、動物は、内因性MHC分子(例えば、MHCα鎖)を発現しない。
【0051】
いくつかの実施形態では、B2M及びMHCα鎖は、互いに会合し、機能的MHCタンパク質複合体を形成することができる。いくつかの実施形態では、タンパク質複合体は、非自己抗原を1つ以上の細胞の表面に提示することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、ヒトT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)は、提示された非自己抗原を認識し、且つ免疫応答を開始することができる。いくつかの実施形態では、内因性T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)は、提示された非自己抗原を認識し、且つ免疫応答を開始することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、動物は、哺乳動物、例えばサル、齧歯類又はマウスである。いくつかの実施形態では、動物は、(例えば、C57BL/6バックグラウンドを有する)マウスである。
【0054】
いくつかの実施形態では、動物のゲノムは、動物の内因性CD132遺伝子における破壊を含む。いくつかの実施形態では、動物は、B-NDGマウス、NOD/scidマウス、NOD/scidヌードマウス又はB-NDGマウスである。いくつかの実施形態では、動物は、免疫不全マウスである。
【0055】
いくつかの実施形態では、動物は、追加的なヒト又はキメラタンパク質をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、追加的なヒト又はキメラタンパク質は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、リンパ球活性化3(LAG-3)、B及びTリンパ球関連(BTLA)、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)、CD27、CD28、SIRPα、CD47、THPO、CD137、CD154、Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)、シグナル調節タンパク質α(SIRPα)又はTNF受容体スーパーファミリーメンバー4(OX40)である。
【0056】
一態様では、本開示は、遺伝子組換え非ヒト動物を作製するための方法であって、動物の少なくとも1つの細胞において、内因性B2M遺伝子座で、内因性B2Mの領域をコードする配列を、ヒトB2Mをコードする配列又は本明細書に記載の融合タンパク質をコードする配列と置換することを含む方法に関する。
【0057】
いくつかの実施形態では、内因性B2Mの領域をコードする配列は、内因性B2M遺伝子のエクソン1、エクソン2及びエクソン3の全て又は一部を含む。
【0058】
一態様では、本開示は、遺伝子組換え非ヒト動物を作製するための方法であって、動物の少なくとも1つの細胞において、内因性MHC遺伝子座で、内因性MHC遺伝子の領域をコードする配列を、ヒトMHC遺伝子をコードする配列又は融合タンパク質をコードする配列と置換することを含む方法に関する。
【0059】
いくつかの実施形態では、内因性MHCの領域をコードする配列は、内因性MHC遺伝子のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及びエクソン8の全て又は一部を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、動物は、マウスであり、及び内因性MHCの領域をコードする配列は、マウスH2-D1遺伝子のエクソン1、エクソン2、エクソン3の全て又は一部を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードする配列は、以下のエレメント:(a)ヒトB2Mのエクソン1、エクソン2及び/又はエクソン3;(b)リンカーペプチド配列をコードする任意選択的な配列;及び(c)ヒトHLA-A2.1のエクソン2及び/又はエクソン3を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードする配列は、エレメント(c)の下流にある内因性MHCのエクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及び/又はエクソン8をさらに含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、動物は、マウスであり、及び融合タンパク質をコードする配列は、マウスH2-D1遺伝子の3’UTRをさらに含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号61、配列番号62、配列番号63又は配列番号64に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0064】
一態様では、本開示は、癌の治療のための薬剤又は薬剤の組み合わせの有効性を判定する方法であって、腫瘍細胞を、本明細書に記載の動物に移植し、それにより動物において1つ以上の腫瘍を形成することと;薬剤又は薬剤の組み合わせを動物に投与することと;腫瘍に対する阻害効果を判定することとを含む方法に関する。
【0065】
いくつかの実施形態では、腫瘍細胞を動物に移植する前に、ヒト末梢血細胞(hPBMC)又はヒト造血幹細胞は、動物に注射される。
【0066】
いくつかの実施形態では、腫瘍細胞は、癌細胞株に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞は、ヒト患者から得られた腫瘍サンプルに由来する。
【0067】
いくつかの実施形態では、阻害効果は、動物における腫瘍体積を測定することによって判定される。
【0068】
いくつかの実施形態では、腫瘍細胞は、メラノーマ細胞、肺癌細胞、原発性肺癌細胞、非小細胞肺癌(NSCLC)細胞、小細胞肺癌(SCLC)細胞、原発性胃癌細胞、膀胱癌細胞、乳癌細胞及び/又は前立腺癌細胞である。
【0069】
一態様では、本開示は、ヒト血液リンパ系を含む動物を作製する方法であって、ヒト造血細胞又はヒト末梢血細胞を含む細胞の集団を、本明細書に記載の動物に移植することを含む方法に関する。
【0070】
いくつかの実施形態では、ヒト血液リンパ系は、造血幹細胞、骨髄前駆体細胞、骨髄系細胞、樹状細胞、単球、顆粒球、好中球、肥満細胞、リンパ球及び血小板からなる群から選択されるヒト細胞を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、移植前に動物を照射することをさらに含む。
【0072】
一態様では、本開示は、β2ミクログロブリン(B2M)及びヒト又はヒト化主要組織適合複合体(MHC)分子を含む融合タンパク質に関する。
【0073】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の融合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0074】
一態様では、本開示は、アミノ酸配列を含むタンパク質に関する。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、以下:
(a)配列番号4、8、59、61、62、63又は64で示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号4、8、59、61、62、63又は64に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
(c)配列番号4、8、59、61、62、63又は64に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列;
(d)配列番号4、8、59、61、62、63又は64で示されるアミノ酸配列と10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1アミノ酸以下だけ異なるアミノ酸配列;及び
(e)配列番号4、8、59、61、62、63又は64で示されるアミノ酸配列に対して1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれを超えるアミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入を含むアミノ酸配列
の1つである。
【0075】
一態様では、本開示は、ヌクレオチド配列を含む核酸に関する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、以下:
(a)本明細書に記載のタンパク質をコードする配列;
(b)配列番号9、10、13、14、15、16、52、54又は65;
(c)配列番号9、10、13、14、15、16、52、54又は65に対して少なくとも90%同一である配列;及び
(d)配列番号9、10、13、14、15、16、52、54又は65に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である配列
の1つである。
【0076】
一態様では、本開示は、本明細書に記載のタンパク質及び/又は核酸を含む細胞に関する。一態様では、本開示は、本明細書に記載のタンパク質及び/又は核酸を含む動物に関する。
【0077】
一態様では、遺伝子組換え非ヒト動物であって、そのゲノムは、融合タンパク質(例えば、キメラポリペプチド)を発現する配列を含む少なくとも1つの染色体を含む、遺伝子組換え非ヒト動物が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、ヒトB2Mタンパク質の全て若しくは一部及び/又はヒトMHC分子(例えば、MHCα鎖)の全て若しくは一部を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、本開示に記載される融合タンパク質のいずれか1つである。
【0078】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、野生型ヒトMHC分子(例えば、HLA-A)のタンパク質活性(例えば、抗原提示)の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は100%を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードする配列は、少なくとも1つの染色体における内因性B2M遺伝子座で内因性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードする配列は、少なくとも1つの染色体における内因性MHC遺伝子座で内因性調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、動物は、マウスであり、及び融合タンパク質をコードする配列は、少なくとも1つの染色体におけるマウスH2-D1遺伝子座で内因性調節エレメントに作動可能に連結される。
【0080】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の破壊、欠失又は遺伝子修飾を含む非ヒト哺乳動物細胞に関する。
【0081】
いくつかの実施形態では、細胞は、Cas9 mRNA又はそのインビトロ転写物を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物細胞は、マウス細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、受精卵細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、胚細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、胚盤胞である。
【0083】
別の態様では、本開示は、非ヒト哺乳動物モデルが本明細書に記載の方法を通して得られることを特徴とする、腫瘍を有する非ヒト哺乳動物モデルに関する。
【0084】
本開示は、非ヒト哺乳動物又はその子孫或いは腫瘍を有する非ヒト哺乳動物に由来する細胞若しくは細胞株又はその初代細胞培養物にも関する。
【0085】
本開示は、非ヒト哺乳動物若しくはその子孫又は腫瘍を有する非ヒト哺乳動物に由来する組織、臓器若しくはその培養物にさらに関する。
【0086】
別の態様では、本開示は、腫瘍を有するときの非ヒト哺乳動物若しくはその子孫又は腫瘍を有する非ヒト哺乳動物に由来する腫瘍組織に関する。
【0087】
本開示は、非ヒト哺乳動物若しくはその子孫又は腫瘍を有する非ヒト哺乳動物の使用にさらに関し、動物モデルは、ヒト細胞の免疫プロセスに関する産物の発現、ヒト抗体の作製又は薬理学、免疫学、微生物学及び医学における研究のためのモデル系において、本明細書に記載の方法を通して作製される。
【0088】
本開示は、非ヒト哺乳動物若しくはその子孫又は腫瘍を有する非ヒト哺乳動物の使用にも関し、動物モデルは、ヒト細胞を含む免疫プロセスの動物実験疾患モデルの作製及び利用、病原体に関する試験又は新しい診断方法及び/若しくは治療方法の開発において、本明細書に記載の方法を通して作製される。
【0089】
別途定義されない限り、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。方法及び材料が本発明における使用のために本明細書に説明され;当技術分野で公知の他の好適な方法及び材料も使用可能である。材料、方法及び例は、あくまで例示目的であり、限定することを意図されていない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー及び他の参考文献は、その全体が参照により援用される。矛盾が生じる場合、定義を含む本明細書が優先することになる。
【0090】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0091】
免疫不全動物は、疾患の機序及びかかる疾患を治療する方法を試験するための不可欠な研究ツールである。免疫不全動物は、それらの免疫不全により異種細胞又は組織を容易に受け入れることができ、研究で広く使用されている。一般に使用される免疫不全動物として、例えば、NOD-PrkdcscidIL-2rγnul マウス、NOD-Rag1-/--IL2rg-/-(NRG)、Rag2-/--IL2rg-/-(RG)、NOD/SCID(NOD-Prkdcscid)及びNOD/SCIDヌードマウスが挙げられる。それらの中で、NOD-PrkdcscidIL-2rγnul マウスは、移植にとって最適なレシピエントマウスであり得る。これらマウスの一部は、例えば、Ito et al.“Current advances in humanized mouse models.”Cellular&molecular immunology 9.3(2012):208;及び米国特許出願公開第20190320631A1号明細書(それらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される)に詳述されている。
【0092】
T細胞は、自己MHCタンパク質に関連するが、外来MHCタンパク質に関連しない抗原を認識する。即ち、T細胞がMHC制限を示すことは、十分に確立されている。この制限は、胸腺におけるT細胞発生中のポジティブ選択のプロセスに起因する。このプロセスでは、自己MHCタンパク質によって提示された外来ペプチドを認識する能力がある未成熟T細胞が選択されて生存する一方、動物にとって有効とならない残りのものは、アポトーシスを受ける。したがって、MHC制限は、T細胞が胸腺において発生するときに顕在化する免疫系の後天的特性である。しかし、これらの免疫不全動物(例えば、NOD-PrkdcscidIL-2rγnul )では、免疫不全動物のMHCは、依然として内因性MHCである。ヒト細胞又は組織の移植後、ヒト由来免疫細胞は、免疫療法後又は病原体の感染後に動物の胸腺におけるヒトHLAによって媒介される制限プロセスを通過することができず、ヒトMHCの制限を反映することができない。したがって、場合により、移植されたヒトT及びB細胞は、これらの免疫不全動物における機能的成熟が十分ではない。
【0093】
本開示は、ヒト又はキメラ(例えば、ヒト化)主要組織適合複合体(MHC)タンパク質複合体を発現する遺伝子組換え動物及びその使用方法に関する。いくつかの実施形態では、動物は、(例えば、NOD-PrkdcscidIL-2rγnul 、NOD-Rag1-/--IL2rg-/-(NRG)、Rag2-/--IL2rg-/-(RG)又はNOD/SCID(NOD-Prkdcscid)バックグラウンドを有する)免疫不全動物である。ヒト又はヒト化MHCは、移植されたヒト免疫細胞(例えば、T細胞及びB細胞)が成熟するためのより適した環境をもたらし、特に、これらの動物は、ヒトに対する様々な治療法の有効性を判定するためのより駆動型のモデルを提供する。
【0094】
主要組織適合複合体
主要組織適合複合体(MHC)は、癌又はウイルス由来の抗原ペプチドを提示することによるT細胞免疫応答によって誘導される身体の防御機構において主要な役割を果たす。MHCは、クラスI又はクラスIIとして分類される。クラスIは、胚細胞及び赤血球を除く全ての体細胞内で発現される。MHCクラスIタンパク質複合体は、α鎖(アルファ鎖又は重鎖)及びβ2ミクログロブリン(B2M)として知られるより小さい鎖からなる。α鎖は、抗原ペプチドを保持する溝の形成に関連するα1及びα2ドメイン並びに細胞傷害性T細胞(CTL)表面上に発現される共受容体CD8分子への結合に関連するα3ドメインからなる。MHCクラスI分子と同様に、クラスII分子もヘテロ二量体であり、2つのペプチドα及びβ鎖を有する。
【0095】
ヒト及びマウスの両方は、MHCクラスI及びクラスII遺伝子を有する。ヒトでは、古典的クラスI遺伝子がHLA-A、HLA-B及びHLA-Cと称される一方、マウスでは、それらは、H-2K、H-2D及びH-2Lである。クラスI分子では、α鎖(重鎖としても公知である)は、多型であり、より小さい鎖B2M(軽鎖としても公知である)は、一般に、多型でない。α鎖は、3つのドメイン(α1、α2及びα3)を有する。通常、α鎖遺伝子のエクソン1は、リーダー配列をコードし、エクソン2及び3は、α1及びα2ドメインをコードし、エクソン4は、α3ドメインをコードし、エクソン5は、膜貫通ドメインをコードし、エクソン6及び7は、細胞質側末端をコードする。α鎖は、(Ig様ドメインに類似する)α1及びα2ドメイン、続いてβ2ミクログロブリンに類似するα3ドメインを含むペプチド結合間隙を形成する。
【0096】
クラスI MHCは、腫瘍細胞を含む全ての有核細胞上で発現される。それらは、詳細には、細胞の中でも特に、T及びBリンパ球、マクロファージ、樹状細胞及び好中球で発現され、CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に対する表面上にペプチド断片(典型的には8~10アミノ酸長)を提示するように機能する。CTLは、それ自体の膜結合TCRによって認識されるMHCI結合ペプチドを有する任意の細胞を殺傷するように専門化される。細胞が、(例えば、ウイルス、腫瘍又は他の非自己起源の)通常提示されない細胞タンパク質由来のペプチドを提示するとき、かかるペプチドがCTLによって認識されることで活性化されるようになり、ペプチドを提示する細胞を殺傷する。
【0097】
本開示は、ヒト又はキメラ(例えば、ヒト化)MHCタンパク質複合体、MHCクラスIポリペプチド又はB2Mを発現する遺伝子組換え動物に関する。本明細書で用いられるとき、用語「MHCI複合体」又は「MHCクラスI複合体」は、MHCIα鎖ポリペプチド及びB2Mポリペプチドによって形成された複合体を指す。いくつかの実施形態では、MHCIα鎖ポリペプチド及びB2Mポリペプチドは、一緒に融合される。用語「MHCIポリペプチド」又は「MHCクラスIポリペプチド」は、本明細書で用いられるとき、MHCIα鎖ポリペプチド単独を指す。
【0098】
β2ミクログロブリン(B2M)
上記で考察したように、野生型MHCクラスI分子は、2つのポリペプチド鎖、α及びβ2ミクログロブリン(B2M)からなるヘテロ二量体である(図1)。2つの鎖は、B2M及びα3ドメインの相互作用を介して非共有結合的に連結される。α鎖のみが多型であり、HLA遺伝子によってコードされる。B2Mサブユニットは、多型でなく、B2M遺伝子によってコードされる。α3ドメインは、原形質膜に及び、且つT細胞のCD8共受容体と相互作用する。α3-CD8相互作用がMHCI分子をその場所に保持する一方、細胞傷害性T細胞の表面上のT細胞受容体(TCR)は、そのα1-α2ヘテロ二量体リガンドに結合し、共役ペプチドの抗原性についてチェックする。α1及びα2ドメインは、折り畳み、ペプチドが結合するための溝を形成する。MHCクラスI分子は、主に8~10アミノ酸長であるペプチドに結合する。
【0099】
B2M(β2M、βミクログロブリン又はベータ2ミクログロブリンとして公知である)は、ほぼ全ての有核細胞並びに血清、尿及び滑液を含む大部分の生体液に存在する低分子タンパク質(約11,800ダルトン)である。ヒトβ2Mは、マウスタンパク質に対する70%のアミノ酸配列類似性を示し、それらは、いずれもシンテニー染色体上に位置する。B2Mの二次構造は、単一のジスルフィド架橋によって連結された2つのβシートに組織化され、免疫グロブリン(Ig)ドメインに典型的な古典的βサンドイッチを提示する7つのβ鎖からなる。B2Mは、膜貫通領域を有さず、主要組織適合複合体(MHC)クラスI及びクラスIIを含む他の適応免疫分子と共有する、定常な1つのIgスーパーファミリードメインと称される特徴的な分子構造を有する。2つの進化的保存されたトリプトファン(Trp)残基は、B2Mの正確な構造的フォールド及び機能にとって重要である。Trp60は、タンパク質ループの頂端で溶媒に曝露され、MHCIにおけるB2Mの会合を促進するのに決定的である。
【0100】
通常、B2Mは、他のポリペプチド鎖(α鎖)と非共有結合的に連結され、MHCI、新生児Fc受容体(FcRn)、表面抗原分類1(CD1)、ヒトヘモクロマトーシスタンパク質(HFE)、Qaなどを含むMHCI又はそのような構造を形成する。B2Mは、α鎖の3つ全てのドメインと広範に接触する。したがって、α鎖の立体構造は、B2Mの存在に高度に依存する。α1及びα2ドメインは、分子中で異なるが、α3ドメイン及びB2Mは、分子間相互作用が生じる場合、比較的保存される。B2Mとの接触ポイントのいくつかの残基は、MHCI又はそのような分子の中で共有される。さらに、α1及びα2ドメインとの相互作用は、天然抗原の存在下でのα3ドメイン及びB2Mの対会合にとって重要である。B2Mは、かかる分子から解離し、血清中に流出することができ、B2Mは、腎臓に輸送され、分解及び排泄される。88kDのタンパク質(カルネキシン)は、小胞体内部で新規に合成されたマウスMHCI分子と急速且つ量的に会合する。B2M及びペプチドの両方は、効率的なカルネキシンの解離及びそれに続くMHCIの輸送に必要とされる。
【0101】
B2Mは、MHCI又はそのような分子の三次構造を安定化し得る。それは、癌細胞における生存、増殖、アポトーシス、さらに転移といった機能的調節にも広範に関与する。
【0102】
B2M及びその機能の詳細な説明は、例えば、Li et al.,“The implication and significance of beta 2 microglobulin:A conservative multifunctional regulator.”Chinese medical journal 129.4(2016):448;Wang et al.,“Targeted Disruption of the β2-Microglobulin Gene Minimizes the Immunogenicity of Human Embryonic Stem Cells,”Stem cells translational medicine 4.10(2015):1234-1245(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される)に見出すことができる。
【0103】
ヒトゲノムにおいて、B2M遺伝子(遺伝子ID:567)の遺伝子座は、エクソン1、エクソン2、エクソン3及びエクソン4といった4つのエクソンを有する(図2)。B2Mタンパク質は、シグナルペプチドも有する。ヒトB2M mRNAにおけるヌクレオチド配列は、NM_004048.4(配列番号3)であり、ヒトB2Mにおけるアミノ酸配列は、NP_004039.1(配列番号4)である。ヒトB2Mのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列における各エクソン及び各領域の位置が以下に列記される。
【0104】
【表1】
【0105】
ヒトB2M遺伝子(遺伝子ID:567)は、ヒトゲノムの染色体15に位置し、NC_000015.10(GRCh38.p13(GCF_000001405.39))の44,711,487~44,718,877に位置する。転写物NM_004048.3に基づき、5’UTRは、44,711,517~44,711,546であり、エクソン1は、44,711,614~44,711,613であり、第1のイントロンは、44,711,614~44,715,422であり、エクソン2は、44,715,423~44,715,701であり、第2のイントロンは、44,715,702~44,716,328であり、エクソン3は、44,716,329~44,716,356であり、第3のイントロンは、44,716,357~44,717,606であり、エクソン4は、44,717,607~44,718,145であり、3’UTRは、44,716,343~44,716,356及び44,717,607~44,718,145である。ヒトB2M遺伝子座についての全ての関連情報は、遺伝子ID:567を有するNCBIウェブサイトにおいて見出すことができる(その全体が参照により本明細書に援用される)。
【0106】
マウスでは、B2M遺伝子座は、エクソン1、エクソン2、エクソン3及びエクソン4の4つのエクソンを有する(図2)。マウスB2Mタンパク質は、シグナルペプチドも有する。マウスB2M mRNAにおけるヌクレオチド配列は、NM_009735.3(配列番号1)であり、マウスB2Mにおけるアミノ酸配列は、NP_033865.2(配列番号2)である。マウスB2Mのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列における各エクソン及び各領域の位置が以下に列記される。
【0107】
【表2】
【0108】
マウスB2m遺伝子(遺伝子ID:12010)は、マウスゲノムの染色体2に位置し、NC_000068.7(GRCm38.p6(GCF_000001635.26))の122,147,686~122,153,083に位置する。転写物NM_009735.3に基づき、5’UTRは、122,147,686~122,147,736であり、エクソン1は、122,147,686~122,147,804であり、第1のイントロンは、122,147,805~122,150,872であり、エクソン2は、122,150,873~122,151,151であり、第2のイントロンは、122,151,152~122,151,646であり、エクソン3は、122,151,647~122,151,675であり、第3のイントロンは、122,151,676~122,152,650であり、エクソン4は、122,152,651~122,153,083であり、3’UTRは、122,151,661~122,153,083である。マウスB2m遺伝子座についての全ての関連情報は、遺伝子ID:12010を有するNCBIウェブサイトにおいて見出すことができる(その全体が参照により本明細書に援用される)。
【0109】
図23は、マウスB2Mアミノ酸配列(NP_033865.2;配列番号2)と、ヒトB2Mアミノ酸配列(NP_004039.1;配列番号4)との間の整列化を示す。したがって、ヒト及びマウスB2M間の対応するアミノ酸残基又は領域は、図23に見出すことができる。
【0110】
他種のB2M遺伝子、タンパク質及び遺伝子座も当技術分野で公知である。例えば、ラット(Rattus norvegicus)(ラット)におけるB2Mの遺伝子IDは、24223であり、アカゲザル(Macaca mulatta)(アカゲザル)におけるB2Mの遺伝子IDは、712428であり、ウマ(Equus caballus)(ウマ)におけるB2Mの遺伝子IDは、100034203であり、及びイノシシ(Sus scrofa)(ブタ)におけるB2Mの遺伝子IDは、397033である。これらの遺伝子についての関連情報(例えば、イントロン配列、エクソン配列、これらのタンパク質のアミノ酸残基)は、例えば、NCBIデータベース内に見出すことができる(その全体が参照により本明細書に援用される)。図24は、齧歯類B2Mアミノ酸配列(NP_036644.1;配列番号66)と、ヒトB2Mアミノ酸配列(NP_004039.1;配列番号4)との間の整列化を示す。したがって、ヒト及び齧歯類B2M間の対応するアミノ酸残基又は領域は、図24に見出すことができる。
【0111】
本開示は、ヒト又はキメラ(例えば、ヒト化)B2Mヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列を提供する。いくつかの実施形態では、マウスエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4及び/又はシグナルペプチドの全配列は、対応するヒト配列と置換される。いくつかの実施形態では、マウスエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4及び/又はシグナルペプチドの「領域」又は「部分」は、対応するヒト配列と置換される。用語「領域」又は「部分」は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、500若しくは600ヌクレオチド又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100若しくは110アミノ酸残基を指し得る。いくつかの実施形態では、「領域」又は「部分」は、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4又はシグナルペプチドに対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%同一であり得る。いくつかの実施形態では、マウスエクソン1、エクソン2、エクソン3及び/又はエクソン4の領域、一部又は全配列(例えば、エクソン1の一部、エクソン2及びエクソン3の一部)は、ヒトエクソン1、エクソン2、エクソン3及び/又はエクソン4の領域、一部又は全配列(例えば、エクソン1の一部、エクソン2及びエクソン3の一部)の配列と置換される。
【0112】
いくつかの実施形態では、本開示は、遺伝子組換え非ヒト動物であって、そのゲノムは、キメラ(例えば、ヒト化)B2Mヌクレオチド配列を含む、遺伝子組換え非ヒト動物に関する。いくつかの実施形態では、キメラ(例えば、ヒト化)B2Mヌクレオチド配列は、シグナルペプチドを含むB2Mタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシグナルペプチドは、配列番号2のアミノ酸1~22に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシグナルペプチドは、配列番号4のアミノ酸1~22に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である。いくつかの実施形態では、ヒト化タンパク質は、配列番号2のアミノ酸1~119又は23~119に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を有する。いくつかの実施形態では、ヒト化タンパク質は、配列番号4のアミノ酸1~119、23~119又は21~119に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を有する。
【0113】
いくつかの実施形態では、本開示は、キメラ(例えば、ヒト化)B2Mヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列も提供し、いくつかの実施形態では、配列の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%は、マウスB2M mRNA配列(例えば、配列番号1)、マウスB2Mアミノ酸配列(例えば、配列番号2)又はその一部(エクソン1の一部、エクソン2及びエクソン3の一部)に同一であるか又はそれに由来し;またいくつかの実施形態では、配列の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%は、ヒトB2M mRNA配列(例えば、配列番号3)、ヒトB2Mアミノ酸配列(例えば、配列番号4)又はその一部(例えば、エクソン1の一部、エクソン2及びエクソン3の一部)に同一であるか又はそれに由来する。
【0114】
いくつかの実施形態では、マウスB2Mの領域(例えば、配列番号2のアミノ酸1~119)をコードする配列が置換される。いくつかの実施形態では、配列は、ヒトB2Mの対応する領域(例えば、ヒトB2M(配列番号4)のアミノ酸1~119)をコードする配列と置換される。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、プロモーター又は調節エレメント、例えば内因性マウスB2Mプロモーター、誘導性プロモーター、エンハンサー及び/又はマウス若しくはヒト調節エレメントに作動可能に連結される。
【0116】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、全マウスB2Mヌクレオチド配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4又はNM_009735.3(配列番号1))と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0117】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、全マウスB2Mヌクレオチド配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4又はNM_009735.3(配列番号1))と同じである少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0118】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、全ヒトB2Mヌクレオチド配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4又はNM_004048.4(配列番号3))と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0119】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、全ヒトB2Mヌクレオチド配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4又はNM_004048.4(配列番号3))と同じである少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、全マウスB2Mアミノ酸配列又はその一部(例えば、NM_009735.3(配列番号1)のエクソン1、エクソン2、エクソン3及び/若しくはエクソン4によってコードされるアミノ酸;又はNP_033865.2(配列番号2))と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100アミノ酸残基、例えば隣接又は非隣接アミノ酸残基)を有する。
【0121】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、全マウスB2Mアミノ酸配列又はその一部(例えば、NM_009735.3(配列番号1)のエクソン1、エクソン2、エクソン3及び/若しくはエクソン4によってコードされるアミノ酸;又はNP_033865.2(配列番号2))と同じである少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100アミノ酸残基、例えば隣接又は非隣接アミノ酸残基)を有する。
【0122】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、全ヒトB2Mアミノ酸配列又はその一部(例えば、NM_004048.4(配列番号3)のエクソン1、エクソン2、エクソン3及び/若しくはエクソン4によってコードされるアミノ酸;又はNP_004039.1(配列番号4))と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100アミノ酸残基、例えば隣接又は非隣接アミノ酸残基)を有する。
【0123】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、全ヒトB2Mアミノ酸配列又はその一部(例えば、NM_004048.4(配列番号3)のエクソン1、エクソン2、エクソン3及び/若しくはエクソン4によってコードされるアミノ酸;又はNP_004039.1(配列番号4))と同じである少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100アミノ酸残基、例えば隣接又は非隣接アミノ酸残基)を有する。
【0124】
ヒト白血球抗原(HLA)
MHCクラスI分子に対応するヒト白血球抗原(HLA)は、例えば、HLA-A、HLA-B及びHLA-Cを含む。MHCクラスII分子に対応するヒトHLAは、例えば、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DO、HLA-DQ及びHLA-DRを含む。
【0125】
ヒトHLA-Aは、多くの血清型グループ、例えばHLA-A1及びHLA-A02を有し得る。HLA-A1(A1)の場合、血清型は、HLA-Aα鎖のα1サブセットの抗体認識により決定される。A1の場合、α鎖は、HLA-A01対立遺伝子グループによってコードされ、β鎖は、B2M遺伝子座によってコードされる。このグループは、現在、A0101(A01:01:01:01)が主流となっている。HLA-A02(HLA-A2)の場合、血清型は、HLA-Aα鎖のα2ドメインの抗体認識により決定される。A02の場合、α鎖は、HLA-A02遺伝子によってコードされ、β鎖は、B2M遺伝子座によってコードされる。HLA-A2のサブタイプは、HLA-A2.1である。HLA命名法の詳細は、例えば、Marsh,S.G.et al.,“Nomenclature for factors of the HLA system,2010.”Tissue antigens 75.4(2010):291(その全体が参照により本明細書に援用される)に見出すことができる。
【0126】
ヒトゲノムにおいて、典型的なHLA-A遺伝子座は、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及びエクソン8の8つのエクソンを有する(図3)。HLA-Aタンパク質は、シグナルペプチド、細胞外領域、膜貫通領域及び細胞質領域も有する。さらに、細胞外領域は、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン及びCペプチドを含む。ヒトHLA-A0101 mRNAにおけるヌクレオチド配列は、NM_001242758.1(配列番号7)であり、ヒトHLA-A0101におけるアミノ酸配列は、NP_001229687.1(配列番号8)である。さらに、ヒトHLA-A2.1におけるヌクレオチド配列は、AF055066.1の核酸95493~99436(配列番号54)であり、ヒトHLA-A2.1におけるアミノ酸配列は、AAC24825.1(配列番号59)である。ヒトHLA-Aヌクレオチド配列及びアミノ酸配列における各エクソン及び各領域の位置が以下に列記される。
【0127】
【表3】
【0128】
ヒトMHCクラスI領域(GenBank ID:AF055066.1)は、ヒトゲノムの染色体6に位置する。ヒトHLA-A2.1遺伝子は、AF055066.1の95493~99436に位置する。AF055066.1に基づき、エクソン1は、99566~99629であり、第1のイントロンは、99436~99565であり、エクソン2は、99166~99435であり、第2のイントロンは、98925~99165であり、エクソン3は、98649~98924であり、第3のイントロンは、98049~98648であり、エクソン4は、97773~98048であり、第4のイントロンは、97674~97772であり、エクソン5は、97557~97673であり、第5のイントロンは、97119~97556であり、エクソン6は、97086~97118であり、第6のイントロンは、97085~96944であり、エクソン7は、96896~96943であり、第7のイントロンは、96727~96895であり、エクソン8は、96726~96322であり、3’UTRは、96721~96322である。ヒトHLA-A2.1遺伝子座についての全ての関連情報は、GenBank ID:AF055066.1を有するNCBIウェブサイトにおいて見出すことができる(その全体が参照により本明細書に援用される)。
【0129】
マウスでは、H-2K、H-2D及びH-2Lは、MHCクラスI遺伝子である。特に、H2-D1遺伝子座は、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及びエクソン8の8つのエクソンを有する(図3)。(MHCクラスIα鎖をコードする)マウスH2-D1タンパク質は、シグナルペプチド、細胞外領域、膜貫通領域及び細胞質領域も有する。詳細には、細胞外領域は、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン及びCペプチドを含む。マウスH2-D1 mRNAにおけるヌクレオチド配列は、NM_010380.3(配列番号5)であり、マウスH2-D1におけるアミノ酸配列は、NP_034510.3(配列番号6)である。マウスH2-D1ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列における各エクソン及び各領域の位置が以下に列記される。
【0130】
【表4】
【0131】
マウスH2-D1遺伝子(遺伝子ID:14964;MGI:95896)は、マウスゲノムの染色体17に位置し、NC_000083.7(GRCm39(GCF_000001635.27))の35482070~35486473に位置する。転写物NM_010380.3に基づき、5’UTRは、35,262,730~35,263,113であり、エクソン1は、35,262,730~35,263,186であり、第1のイントロンは、35,263,187~35,263,378であり、エクソン2は、35,263,379~35,263,648であり、第2のイントロンは、35,263,649~35,263,838であり、エクソン3は、35,263,839~35,264,114であり、第3のイントロンは、35,264,115~35,265,783であり、エクソン4は、35,265,784~35,266,059であり、第4のイントロンは、35,266,060~35,266,186であり、エクソン5は、35,266,187~35,266,303であり、第5のイントロンは、35,266,304~35,266,481であり、エクソン6は、35,266,482~35,266,514であり、第6のイントロンは、35,266,515~35,266,687であり、エクソン7は、35,266,688~35,266,726であり、第7のイントロンは、35,266,727~35,266,865であり、エクソン8は、35,266,866~35,267,499であり、3’UTRは、35,266,871~35,267,499である。マウスH2-D1遺伝子座についての全ての関連情報は、遺伝子ID:14964を有するNCBIウェブサイトにおいて見出すことができる(その全体が参照により本明細書に援用される)。
【0132】
図25は、マウスH2-D1アミノ酸配列(NP_034510.3;配列番号6)と、ヒトHLA-A2.1アミノ酸配列(AAC24825.1;配列番号59)との間の整列化を示す。したがって、ヒトHLA-A2.1とマウスH2-D1との間の対応するアミノ酸残基又は領域は、図25に見出すことができる。
【0133】
図26は、マウスH2-D1アミノ酸配列(NP_034510.3;配列番号6)と、ヒトHLA-A0101アミノ酸配列(NP_001229687.1;配列番号8)との間の整列化を示す。したがって、ヒトHLA-A0101とマウスH2-D1との間の対応するアミノ酸残基又は領域は、図26に見出すことができる。
【0134】
他種のMHC分子の遺伝子、タンパク質及び遺伝子座についても当技術分野で公知である。例えば、これらの遺伝子についての遺伝子ID及び関連情報(例えば、イントロン配列、エクソン配列、これらのタンパク質のアミノ酸残基)は、例えば、NCBIデータベース(その全体が参照により本明細書に援用される)に見出すことができる。
【0135】
本開示は、ヒト又はキメラ(例えば、ヒト化)MHC分子(例えば、MHCクラスIα鎖)ヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列を提供する。本開示は、ヒト若しくはキメラ(例えば、ヒト化)HLA-Aタンパク質複合体及び/又はHLA-Aポリペプチドを発現する遺伝子組換え動物にも関する。本明細書で用いられるとき、用語「HLA-A複合体」又は「HLA-Aタンパク質複合体」は、HLA-Aα鎖ポリペプチド及びB2Mポリペプチドによって形成される複合体を指す。いくつかの実施形態では、HLA-Aα鎖ポリペプチド及びB2Mポリペプチドは、一緒に融合される。用語「HLA-A」又は「HLA-Aポリペプチド」は、本明細書で用いられるとき、HLA-Aα鎖ポリペプチドを指す。
【0136】
いくつかの実施形態では、マウスH2-D1のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、シグナルペプチド、細胞外領域(例えば、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン及び/又はCペプチド)、膜貫通領域及び/又は細胞質領域の全配列は、対応するヒト配列と置換される。いくつかの実施形態では、マウスH2-D1のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、シグナルペプチド、細胞外領域(例えば、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン及び/又はCペプチド)、膜貫通領域及び/又は細胞質領域の「領域」又は「部分」は、対応するヒト配列と置換される。用語「領域」又は「部分」は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、500若しくは600ヌクレオチド又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350若しくは360アミノ酸残基を指し得る。いくつかの実施形態では、「領域」又は「部分」は、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、シグナルペプチド、細胞外領域(例えば、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン及び/又はCペプチド)、膜貫通領域及び/又は細胞質領域に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%同一であり得る。いくつかの実施形態では、マウスH2-D1のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及び/又はエクソン8(例えば、エクソン1、エクソン2及びエクソン3)の領域、一部又は全配列は、ヒトHLA-Aのエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及び/又はエクソン8(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3)配列の領域、一部又は全配列と置換される。
【0137】
いくつかの実施形態では、本開示は、遺伝子組換え非ヒト動物であって、そのゲノムは、キメラ(例えば、ヒト化)MHC分子(例えば、ヒトHLA/マウスH2-D1)ヌクレオチド配列を含む、遺伝子組換え非ヒト動物に関する。いくつかの実施形態では、キメラ(例えば、ヒト化)MHC分子のヌクレオチド配列は、細胞外領域、膜貫通領域、細胞質領域及びシグナルペプチドを含むMHC分子のタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、細胞外領域は、ヒトHLA-A(例えば、HLA-A0101又はHLA-A2.1)細胞外領域の全て又は一部を含む。例えば、本明細書に記載の細胞外領域は、ヒトHLA-A細胞外領域(例えば、配列番号8のアミノ酸25~308又は配列番号59のアミノ酸22~305)に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通領域は、ヒトHLA-A(例えば、HLA-A0101又はHLA-A2.1)膜貫通領域の全て又は一部を含む。例えば、膜貫通領域は、ヒトHLA膜貫通領域(例えば、配列番号8のアミノ酸309~332又は配列番号59のアミノ酸306~329)に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である。いくつかの実施形態では、細胞質領域は、ヒトHLA-A(例えば、HLA-A0101又はHLA-A2.1)細胞質領域の全て又は一部を含む。例えば、細胞質領域は、ヒトHLA細胞外領域(例えば、配列番号8のアミノ酸333~365又は配列番号59のアミノ酸330~362)に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である。
【0138】
いくつかの実施形態では、キメラ(例えば、ヒト化)MHC分子のヌクレオチド配列は、シグナルペプチドを含むMHC分子のタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシグナルペプチドは、配列番号6のアミノ酸1~24に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシグナルペプチドは、配列番号8のアミノ酸1~24又は配列番号59のアミノ酸1~21に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である。
【0139】
いくつかの実施形態では、本開示は、キメラ(例えば、ヒト化)MHC分子のヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列も提供し、いくつかの実施形態では、配列の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%は、マウスH2-D1 mRNA配列(例えば、配列番号5)、マウスH2-D1アミノ酸配列(例えば、配列番号6)又はその一部(例えば、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及びエクソン8の一部)に対して同一であるか又はそれに由来し;またいくつかの実施形態では、配列の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%は、ヒトHLA-A分子のmRNA配列(例えば、配列番号7)、ヒトHLA-Aアミノ酸配列(例えば、配列番号8又は配列番号59)又はその一部(例えば、エクソン1の一部、エクソン2及びエクソン3)に対して同一であるか又はそれに由来する。
【0140】
いくつかの実施形態では、マウスH2-D1の領域(例えば、配列番号6のアミノ酸1~206又は25~206)をコードする配列が置換される。いくつかの実施形態では、配列は、ヒトHLA-Aの対応する領域(例えば、ヒトHLA-A0101(配列番号8)のアミノ酸1~206若しくは25~206;又はヒトHLA-A2.1(配列番号59)のアミノ酸1~203若しくは22~203)をコードする配列と置換される。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、プロモーター又は調節エレメント、例えば内因性マウスH2-D1プロモーター、誘導性プロモーター、エンハンサー及び/又はマウス若しくはヒト調節エレメントに作動可能に連結される。
【0142】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、全マウスH2-D1ヌクレオチド配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8又はNM_010380.3(配列番号5))と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0143】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、全マウスH2-D1ヌクレオチド配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8又はNM_010380.3(配列番号5))と同じである少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0144】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、全ヒトHLA-Aヌクレオチド配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8又はNM_001242758.1(配列番号7))と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0145】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、全ヒトHLA-Aヌクレオチド配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8又はNM_001242758.1(配列番号7))と同じである少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0146】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、全マウスH2-D1アミノ酸配列又はその一部(例えば、NM_010380.3(配列番号5)のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及び/若しくはエクソン8によってコードされるアミノ酸;又はNP_034510.3(配列番号6))と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100アミノ酸残基、例えば隣接又は非隣接アミノ酸残基)を有する。
【0147】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、全マウスH2-D1アミノ酸配列又はその一部(例えば、NM_010380.3(配列番号5)のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及び/若しくはエクソン8によってコードされるアミノ酸;又はNP_034510.3(配列番号6))と同じである少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100アミノ酸残基、例えば隣接又は非隣接アミノ酸残基)を有する。
【0148】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、全ヒトHLA-Aアミノ酸配列又はその一部(例えば、NM_001242758.1(配列番号)のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及び/若しくはエクソン8によってコードされるアミノ酸;NP_001229687.1(配列番号8);又はAAC24825.1(配列番号59))と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100アミノ酸残基、例えば隣接又は非隣接アミノ酸残基)を有する。
【0149】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、全ヒトHLA-Aアミノ酸配列又はその一部(例えば、NM_001242758.1(配列番号)のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及び/若しくはエクソン8によってコードされるアミノ酸;NP_001229687.1(配列番号8);又はAAC24825.1(配列番号59))と同じである少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100アミノ酸残基、例えば隣接又は非隣接アミノ酸残基)を有する。
【0150】
本開示は、ヒト化マウスのB2M又はMHC分子のゲノムDNA配列にさらに関する。DNA配列は、その転写によって得られたmRNAの逆転写によって得られ、配列番号9、10、13、14、15、16、52、54又は65で示される配列に対して相同なDNA配列に一致するか又は相補的である。
【0151】
本開示は、配列番号4、8、59、61、62、63又は64で示される配列と少なくとも90%の相同性を有するか又は少なくとも90%同一であり、且つタンパク質活性を有するアミノ酸配列も提供する。いくつかの実施形態では、配列番号4、8、59、61、62、63又は64で示される配列との相同性は、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、前述の相同性は、少なくとも約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約80%又は約85%である。
【0152】
いくつかの実施形態では、配列番号4、8、59、61、62、63又は64で示される配列との百分率同一性は、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、前述の百分率同一性は、少なくとも約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約80%又は約85%である。
【0153】
本開示は、配列番号9、10、13、14、15、16、52、54又は65で示される配列に対して少なくとも90%の相同性を有するか又は少なくとも90%同一であり、且つタンパク質活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列も提供する。いくつかの実施形態では、配列番号9、10、13、14、15、16、52、54又は65で示される配列との相同性は、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、前述の相同性は、少なくとも約50%、約55%、約60%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約80%又は約85%である。
【0154】
いくつかの実施形態では、配列番号9、10、13、14、15、16、52、54又は65で示される配列との百分率同一性は、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、前述の百分率同一性は、少なくとも約50%、約55%、約60%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約80%又は約85%である。
【0155】
本開示は、本明細書に記載の任意のヌクレオチド配列に対して少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である核酸配列及び本明細書に記載の任意のアミノ酸配列に対して少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるアミノ酸配列も提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される任意のペプチドをコードするヌクレオチド配列又は本明細書に記載の任意のヌクレオチド配列によってコードされる任意のアミノ酸配列に関する。いくつかの実施形態では、核酸配列は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、150、200、250、300、350、400、500又は600ヌクレオチドより少ない。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200アミノ酸残基より少ない。
【0156】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、(i)アミノ酸配列を含むか;又は(ii)アミノ酸配列からなり、アミノ酸配列は、本明細書に記載の配列のいずれか1つである。
【0157】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、(i)核酸配列を含むか;又は(ii)核酸配列からなり、核酸配列は、本明細書に記載の配列のいずれか1つである。
【0158】
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するため、配列は、最適な比較を目的として整列される(例えば、最適な整列化のため、第1及び第2のアミノ酸又は核酸配列の一方又は両方にギャップが導入され得、非相同性配列は、比較を目的として無視され得る)。次に、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第1の配列内のある位置が、第2の配列内の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドで占有されるとき、分子は、その位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適な整列化のために導入される必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一位置の数の関数である。例えば、配列の比較及び2つの配列間のパーセント同一性の決定は、12のギャップペナルティ、4のギャップ延長ペナルティ及び5のフレームシフトギャップペナルティでのBlossum 62スコアリングマトリックスを用いて達成され得る。
【0159】
類似する物理化学的特性が保存された残基、例えばロイシン及びイソロイシンの百分率(パーセント相同性)も、配列類似性を評価するために使用可能である。類似する物理化学的特性を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。相同性百分率は、多くの場合、同一性百分率より高い。
【0160】
本明細書に記載のヌクレオチド配列を含む細胞、組織及び動物(例えば、マウス)並びに内因性非ヒトB2M又はMHC遺伝子座からヒト又はキメラ(例えば、ヒト化)MHCを発現する細胞、組織及び動物(例えば、マウス)も提供される。
【0161】
遺伝子組換え動物
本明細書で用いられるとき、用語「遺伝子組換え非ヒト動物」は、修飾配列(例えば、内因性B2M遺伝子の本明細書に記載の融合タンパク質をコードする配列若しくは本明細書に記載のヒト化B2Mをコードする配列による置換及び/又は動物のゲノムの少なくとも1つの染色体における内因性MHC遺伝子の置換(例えば、MHCクラスIα鎖)の本明細書に記載の融合タンパク質をコードする配列若しくは本明細書に記載のヒト化MHC遺伝子をコードする配列によるもの)を有する非ヒト動物を指す。いくつかの実施形態では、少なくとも1つ以上の細胞、例えば遺伝子組換え非ヒト動物の細胞の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%は、そのゲノム中に修飾配列を有する。修飾配列を有する細胞は、種々の細胞、例えば内因性細胞、体細胞、免疫細胞、T細胞、B細胞、胚細胞、胚盤胞又は内因性腫瘍細胞であり得る。いくつかの実施形態では、ヒト若しくはヒト化B2M及び/又はヒト若しくはヒト化MHC分子遺伝子(例えば、MHCクラスIα鎖)を内因性B2M又はMHC遺伝子座に含む遺伝子組換え非ヒト動物が提供される。動物は、一般に、その修飾を子孫に、即ち生殖系列伝達を通して渡すことができる。
【0162】
本明細書で用いられるとき、用語「ヒト化される」などは、起源が非ヒトであり、一部が、対応するヒト分子の対応する部分で、修飾(例えば、ヒト化)分子が、その生物学的機能を保持し、且つ/又は保持された生物学的機能を果たす構造を維持するように置換されている場合の分子(例えば、核酸、タンパク質など)を指す。ヒト化分子は、ヒト分子をコードする核酸配列を含むヌクレオチド(又はその一部)によってコードされる場合、ヒト分子に由来すると考えられ得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換え非ヒト動物は、内因性B2M(例えば、マウスB2M)を発現しない。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え非ヒト動物は、機能的内因性B2M(例えば、マウスB2M)を発現しない。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え非ヒト動物は、内因性MHC分子(例えば、マウスH2-D1)を発現しない。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え非ヒト動物は、機能的内因性MHC分子(例えば、マウスH2-D1)又は機能的内因性MHCタンパク質複合体を発現しない。
【0164】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子組換え非ヒト動物は、免疫不全である。いくつかの実施形態では、動物は、NOD-PrkdcscidIL-2rγnul 、NOD-Rag1-/--IL2rg-/-(NRG)、Rag2-/--IL2rg-/-(RG)又はNOD/SCID(NOD-Prkdcscid)バックグラウンドを有する。
【0165】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、マウス)は、破壊された内因性B2M遺伝子を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、マウス)は、機能不全内因性B2Mタンパク質(例えば、マウスB2M)を発現する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、マウス)は、破壊された内因性MHC遺伝子を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、マウス)は、機能不全内因性MHC分子(例えば、マウスH2-D1)又は機能不全内因性MHCタンパク質複合体を発現する。
【0166】
本明細書で用いられるとき、用語「白血球(leukocytes)」又は「白血球(white blood cells)」は、T細胞(CD3+)、B細胞(CD19+)、骨髄系細胞(CD33+)、NK細胞(CD56+)、顆粒球(CD66b+)及び単球(CD14+)を含む。全ての白血球は、それらを無核赤血球(RBC)及び血小板から識別する核を有する。白血球共通抗原(LCA)としても公知のCD45は、白血球における細胞表面マーカーである。リンパ球は、白血球のサブタイプである。リンパ球は、(細胞媒介性の細胞傷害性自然免疫において機能する)ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞及びB細胞を含む。骨髄系細胞は、白血球のサブタイプである。骨髄系細胞は、単球及び顆粒球を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換え非ヒト動物は、マウスである。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え非ヒト動物は、B-NDGマウスである。B-NDGマウスの詳細は、例えば、PCT/中国特許出願公開第2018/079365号明細書;米国特許第10820580B2号明細書(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される)に見出すことができる。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物は、NSGマウス又はNOGマウスである。NSGマウス及びNODマウスの詳細な説明は、例えば、Ishikawa et al.“Development of functional human blood and immune systems in NOD/SCID/IL2 receptor γ chainnull mice.”Blood 106.5(2005):1565-1573;Katano et al.“NOD-Rag2null IL-2Rγnull mice:an alternative to NOG mice for generation of humanized mice.”Experimental animals 63.3(2014):321-330(これらの両方は、全体が参照により本明細書に援用される)に見出すことができる。
【0168】
一態様では、遺伝子組換え非ヒト動物(例えば、マウス)は、ヒト免疫系を発生するためにヒト造血幹細胞を移植される。
【0169】
一態様では、遺伝子組換え動物は、ヒト免疫系を発生するためにヒト造血幹細胞を移植される。いくつかの実施形態では、動物におけるヒト白血球(又はCD45+細胞)の平均百分率は、動物における(例えば赤血球の溶解後の血液からの)全生細胞の少なくとも又はおよそ10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%又は50%である。いくつかの実施形態では、動物におけるヒト白血球(又はCD45+細胞)の平均百分率は、B-NDGバックグラウンドを有する動物(例えば、B-NDGマウス)の場合より少なくとも又はおよそ50%、80%、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍又は20倍高く、B-NDGバックグラウンドを有する動物は、ヒト免疫系を発生するため、照射され、次にヒト造血幹細胞を移植される。いくつかの実施形態では、ヒト白血球(又はCD45+細胞)の平均百分率は、移植されてから少なくとも若しくはおよそ12週後、少なくとも若しくはおよそ16週後、少なくとも若しくはおよそ20週後、少なくとも若しくはおよそ24週後、少なくとも若しくはおよそ26週後、少なくとも若しくはおよそ28週後又は少なくとも若しくはおよそ30週後に決定される。
【0170】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物(例えば、マウス)における再構築の成功率は、少なくとも又はおよそ20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%である。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物(例えば、マウス)における再構築の成功率は、B-NDGバックグラウンドを有する動物(例えば、B-NDGマウス)の場合よりも少なくとも又はおよそ10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、50倍又は100倍高い。成功率は、再構築が成功した免疫系(hCD45+細胞百分率≧赤血球の溶解後の血液からの全生細胞の25%)を有するマウスの数を生存マウスの総数で除することにより計算される。いくつかの実施形態では、成功率は、ヒト免疫系を発生するために動物(例えば、マウス)にヒト細胞(例えば造血幹細胞)を移植されてから少なくとも又はおよそ16週後、少なくとも又はおよそ20週後、少なくとも又はおよそ24週後、少なくとも又はおよそ26週後、少なくとも又はおよそ28週後又は少なくとも又はおよそ30週後に決定される。いくつかの実施形態では、移植から少なくとも又はおよそ16週後、動物における再構築の成功率は、少なくとも又はおよそ50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%(例えば80%)である。いくつかの実施形態では、移植から少なくとも又はおよそ20週後、動物における再構築の成功率は、少なくとも又はおよそ50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%(例えば80%)である。
【0171】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物(例えば、マウス)の生存率は、移植の約100日後、約120日後、約140日後、約160日後又は約180日後、少なくとも又はおよそ20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%である。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物(例えば、マウス)の生存率は、移植の約100日後、約120日後、約140日後、約160日後又は約180日後、B-NDGバックグラウンドを有する動物(例えば、B-NDGマウス)の場合よりも少なくとも又はおよそ10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、2倍、3倍、5倍又は10倍高い。
【0172】
遺伝子組換え非ヒト動物は、様々な他の動物、例えばラット、ウサギ、ブタ、ウシ(例えば、雌ウシ、雄ウシ、水牛)、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、マーモセット、アカゲザル)でもあり得る。好適な遺伝子組換え可能なES細胞が容易に入手できない場合の非ヒト動物では、遺伝子修飾を含む非ヒト動物を作製するための他の方法が使用される。かかる方法は、例えば、非ES細胞ゲノム(例えば、線維芽細胞又は人工多能性細胞)を修飾することと、核移植を用いて、修飾ゲノムを好適な細胞、例えば卵母細胞に導入することと、修飾細胞(例えば修飾卵母細胞)を非ヒト動物中において好適な条件下で妊娠させ、胚を形成することとを含む。これらの方法は、当技術分野で公知であり、例えばA.Nagy,et al.,“Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual(Third Edition),”Cold Spring Harbor Laboratory Press,2003(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0173】
一態様では、動物は、例えば、トビネズミ(Dipodoidea)上科又はネズミ(Muroidea)上科の哺乳動物である。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物は、齧歯類である。齧歯類は、マウス、ラット及びハムスターから選択され得る。いくつかの実施形態では、齧歯類は、ネズミ(Muroidea)上科から選択される。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物は、ヨルマウス科(Calomyscidae)(例えば、マウス様ハムスター)、キヌゲネズミ科(Cricetidae)(例えば、ハムスター、NewWorldラット及びマウス、ハタネズミ)、ネズミ科(Muridae)(真性マウス及びラット、スナネズミ、トゲマウス、クレステッドラット)、アシナガマウス科(Nesomyidae)(キノボリマウス、イワマウス、ウィズテイルドラット、マダガスカルラット及びマウス)、トゲヤマネ科(Platacanthomyidae)(例えば、トゲヤマネ(spiny dormice))及びメクラネズミ科(Spalacidae)(例えば、デバネズミ、タケネズミ及びモグラネズミ(zokors))から選択される科から得られる。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え齧歯類は、真性マウス又はラット(ネズミ科(Muridae))、スナネズミ、トゲマウス及びクレステッドラットから選択される。一実施形態では、非ヒト動物は、マウスである。
【0174】
いくつかの実施形態では、動物は、BALB/c,A、A/He、A/J、A/WySN、AKR、AKR/A、AKR/J、AKR/N、TA1、TA2、RF、SWR、C3H、C57BR、SJL、C57L、DBA/2、KM、NIH、ICR、CFW、FACA、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、C57BL/Ola、C57BL、C58、CBA/Br、CBA/Ca、CBA/J、CBA/st及びCBA/Hから選択される株のマウスである。いくつかの実施形態では、マウスは、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/SvIm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2である株からなる群から選択される129株である。これらのマウスは、例えば、Festing et al.,Revised nomenclature for strain 129mice,Mammalian Genome10:836(1999);Auerbach et al.,Establishment and Chimera Analysis of 129/SvEv- and C57BL/6-Derived Mouse Embryonic Stem Cell Lines(2000)(これらの両方は、全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えマウスは、129株とC57BL/6株との混合である。いくつかの実施形態では、マウスは、129株の混合又はBL/6株の混合である。いくつかの実施形態では、マウスは、BALB株、例えばBALB/c株である。いくつかの実施形態では、マウスは、BALB株と別の株との混合である。いくつかの実施形態では、マウスは、ハイブリッド株(例えば、50%BALB/c-50%12954/Sv;又は50%C57BL/6-50%129)から得られる。
【0175】
いくつかの実施形態では、動物は、ラットである。ラットは、ウィスターラット、LEA株、スプラーグドーリー株、フィッシャー株、F344、F6及びDark Agoutiから選択され得る。いくつかの実施形態では、ラット株は、ウィスター、LEA、スプラーグドーリー、フィッシャー、F344、F6及びDark Agoutiからなる群から選択される2種以上の株の混合である。
【0176】
動物は、ヒト又はヒト化B2M及び/又はMHC分子(例えば、MHCクラスIα鎖)を発現する動物が作製されるという特定の目的に適した1つ以上の他の遺伝子修飾及び/又は他の修飾を有し得る。例えば、異種移植片(例えば、ヒト癌又は腫瘍)を維持するのに適したマウスは、非ヒト動物の免疫系を全体的又は部分的に損なうか、不活化するか又は破壊するといった1つ以上の修飾を有し得る。非ヒト動物の免疫系の損傷、不活化又は破壊は、例えば、造血細胞及び/又は免疫細胞の化学的手段(例えば、毒素の投与)、物理的手段(例えば、動物の照射)及び/又は遺伝子修飾(例えば、1つ以上の遺伝子のノックアウト)による破壊を含み得る。
【0177】
かかるマウスの非限定例として、例えば、NODマウス、SCIDマウス、NOD/SCIDマウス、ヌードマウス、NOD/SCIDヌードマウス、NOD-Rag1-/--IL2rg-/-(NRG)マウス、Rag2-/--IL2rg-/-(RG)マウス、B-NDG(NOD-PrkdcscidIL-2rγnull)マウス並びにRag1及び/又はRag2ノックアウトマウスが挙げられる。いくつかの実施形態では、これらのマウスは、1つ以上の免疫細胞型を破壊するため、任意選択的に照射され得るか又は他に治療され得る。したがって、様々な実施形態では、遺伝子組換えマウスは、内因性非ヒトB2M又はMHC遺伝子座で1つ以上の突然変異を含み得るように提供され、非ヒト動物の免疫系(又は免疫系の1つ以上の細胞型)を全体的又は部分的に損なうか、不活化するか又は破壊するといった修飾をさらに含む。いくつかの実施形態では、修飾は、例えば、NODマウス、SCIDマウス、NOD/SCIDマウス、B-NDG(NOD-PrkdcscidIL-2rγnull)マウス、ヌードマウス、Rag1及び/又はRag2ノックアウトマウス並びにこれらの組み合わせをもたらす修飾からなる群から選択される。これらの遺伝子組換え動物は、例えば、米国特許出願公開第20150106961号明細書及びPCT/中国特許出願公開第2018/079365号明細書(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0178】
本明細書に記載の修飾(例えば、破壊、突然変異)を含み得る遺伝子組換え細胞(例えば、ES細胞、体細胞)も提供されるが、多くの実施形態では、遺伝子組換え非ヒト動物は、動物の生殖系列における内因性B2M及び/又はMHC遺伝子座の修飾を含む。
【0179】
さらに、遺伝子組換え動物は、内因性B2M及び/又はMHC遺伝子の修飾(例えば、置換)に対してホモ接合性であり得る。いくつかの実施形態では、動物は、内因性B2M及び/又はMHC遺伝子の修飾(例えば、置換)に対してヘテロ接合性であり得る。
【0180】
一態様では、本開示は、遺伝子組換え非ヒト動物であって、そのゲノムは、動物の内因性CD132遺伝子における破壊を含む、遺伝子組換え非ヒト動物に関し、内因性CD132遺伝子の破壊は、内因性CD132遺伝子のエクソン2の欠失を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、内因性CD132遺伝子の破壊は、内因性CD132遺伝子のエクソン1の欠失をさらに含む。いくつかの実施形態では、内因性CD132遺伝子の破壊は、内因性CD132遺伝子のエクソン1の部分的欠失を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、内因性CD132遺伝子の破壊は、内因性CD132遺伝子のエクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及びエクソン8からなる群から選択される1つ以上のエクソン又はエクソンの一部の欠失をさらに含む。いくつかの実施形態では、内因性CD132遺伝子の破壊は、内因性CD132遺伝子のエクソン1~8の欠失を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、内因性CD132遺伝子の破壊は、内因性CD132遺伝子のイントロン1、イントロン2、イントロン3、イントロン4、イントロン5、イントロン6及びイントロン7からなる群から選択される1つ以上のイントロン又はイントロンの一部の欠失をさらに含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、破壊は、エクソン1における150を超えるヌクレオチドの欠失;イントロン1、エクソン2、イントロン2、エクソン3、イントロン3、エクソン4、イントロン4、エクソン5、イントロン5、エクソン6、イントロン6、エクソン7、イントロン7の全体の欠失;及びエクソン8における250を超えるヌクレオチドの欠失からなる。
【0185】
いくつかの実施形態では、動物は、内因性CD132遺伝子の破壊に対してホモ接合性である。いくつかの実施形態では、動物は、内因性CD132遺伝子の破壊に対してヘテロ接合性である。
【0186】
いくつかの実施形態では、破壊は、機能的CD132タンパク質の発現を妨げる。
【0187】
いくつかの実施形態では、内因性CD132遺伝子座での残りのエクソン配列の長さは、内因性CD132遺伝子の全てのエクソン配列の全長の30%未満である。いくつかの実施形態では、内因性CD132遺伝子座での残りの配列の長さは、内因性CD132遺伝子の全配列の全長の15%未満である。
【0188】
別の態様では、本開示は、遺伝子組換え非ヒト動物に関し、動物のゲノムは、動物の内因性CD132遺伝子座でCD132遺伝子のエクソン2を有しない。
【0189】
いくつかの実施形態では、動物のゲノムは、エクソン1、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及びエクソン8からなる群から選択される1つ以上のエクソン又はエクソンの一部を有しない。いくつかの実施形態では、動物のゲノムは、イントロン1、イントロン2、イントロン3、イントロン4、イントロン5、イントロン6及びイントロン7からなる群から選択される1つ以上のイントロン又はイントロンの一部を有しない。
【0190】
一態様では、本開示は、CD132ノックアウト非ヒト動物も提供し、動物のゲノムは、内因性CD132遺伝子座で5’から3’に、(a)第1のDNA配列;任意選択的に、(b)外因性配列を含む第2のDNA配列;(c)第3のDNA配列を含み、第1のDNA配列、任意選択的な第2のDNA配列及び第3のDNA配列は、連結され、第1のDNA配列は、イントロン1の上流に位置する内因性CD132遺伝子配列を含み、第2のDNA配列は、0ヌクレオチド~300ヌクレオチドの長さを有し得、及び第3のDNA配列は、イントロン7の下流に位置する内因性CD132遺伝子配列を含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、第1のDNA配列は、(5’から3’に)10~100ヌクレオチド(例えば、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100ヌクレオチド)の長さを有する配列を含み、配列の長さは、CD132遺伝子のエクソン1における最初のヌクレオチドから第1のDNA配列の最終のヌクレオチドにかけての長さを指す。
【0192】
いくつかの実施形態では、第1のDNA配列は、内因性CD132遺伝子のエクソン1から少なくとも10ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第1のDNA配列は、内因性CD132遺伝子のエクソン1から最大で100ヌクレオチドを有する。
【0193】
いくつかの実施形態では、第3のDNA配列は、(5’から3’に)200~600ヌクレオチド(例えば、約200、約250、約300、約350、約400、約450、約500、約550、約600ヌクレオチド)の長さを有する配列を含み、配列の長さは、第3のDNA配列における最初のヌクレオチドから内因性CD132遺伝子のエクソン8における最終のヌクレオチドにかけての長さを指す。
【0194】
いくつかの実施形態では、第3のDNA配列は、内因性CD132遺伝子のエクソン8から少なくとも300ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第3のDNA配列は、内因性CD132遺伝子のエクソン8から最大で400ヌクレオチドを有する。
【0195】
一態様では、本開示は、(1)内因性CD132遺伝子のエクソン1又は内因性CD132遺伝子のエクソン1の上流における標的配列に結合する、ジンクフィンガータンパク質、TALエフェクタードメイン又は単一ガイドRNA(sgRNA)DNA結合ドメインを含む第1のヌクレアーゼ、及び(2)内因性CD132遺伝子のエクソン8における配列に結合する、ジンクフィンガータンパク質、TALエフェクタードメイン又は単一ガイドRNA(sgRNA)DNA結合ドメインを含む第2のヌクレアーゼを使用することにより内因性CD132遺伝子の1つ以上のエクソンをノックアウトすることを含む方法によって作製される遺伝子組換え非ヒト動物にも関する。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)である。いくつかの実施形態では、動物は、機能的CD132タンパク質を発現しない。いくつかの実施形態では、動物は、機能的インターロイキン2受容体を発現しない。
【0196】
一態様では、本開示は、遺伝子組換えマウス又はその子孫であって、そのゲノムは、マウスの内因性CD132遺伝子の破壊を含む、遺伝子組換えマウス又はその子孫に関し、内因性CD132遺伝子の破壊は、エクソン1における150を超えるヌクレオチドの欠失;イントロン1、エクソン2、イントロン2、エクソン3、イントロン3、エクソン4、イントロン4、エクソン5、イントロン5、エクソン6、イントロン6、エクソン7、イントロン7の全体の欠失;及びエクソン8における250を超えるヌクレオチドの欠失を含む。いくつかの実施形態では、動物は、NSGマウス、NOGマウス又はNOD/scidマウスと比較して、外因性細胞の増強された移植能力を有する。
【0197】
本開示は、本明細書に記載の方法を通して作製される非ヒト哺乳動物にさらに関する。いくつかの実施形態では、そのゲノムは、ヒト遺伝子を有する。
【0198】
さらに、本開示は、非ヒト哺乳動物モデルが本明細書に記載の方法を通して得られることを特徴とする、腫瘍を有する非ヒト哺乳動物モデルにも関する。いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物は、齧歯類(例えば、マウス)である。
【0199】
本開示は、非ヒト哺乳動物又はその子孫或いは腫瘍を有する非ヒト哺乳動物に由来する細胞若しくは細胞株又はその一次細胞培養;非ヒト哺乳動物若しくはその子孫又は腫瘍を有する非ヒト哺乳動物に由来する組織、臓器若しくはその培養物;及び腫瘍を有するときの非ヒト哺乳動物若しくはその子孫又は腫瘍を有する非ヒト哺乳動物に由来する腫瘍組織にさらに関する。
【0200】
本開示は、本明細書に記載の方法のいずれかにより作製される非ヒト哺乳類も提供する。いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物が提供され;遺伝子組換え動物は、動物のゲノムにおけるB2M及び/又はMHC遺伝子の修飾(例えば、置換)を有する。
【0201】
上記の非ヒト哺乳類における遺伝子、分子及び挙動分析が実施され得る。本開示は、同じ又は他の遺伝子型と交配された本開示によって提供される非ヒト哺乳動物により作製される子孫にも関する。
【0202】
本開示は、非ヒト哺乳動物又はその子孫に由来する細胞株又は一次細胞培養物も提供する。細胞培養に基づくモデルは、例えば、以下の方法により調製可能である。細胞培養物は、非ヒト哺乳動物からの単離を通して得ることができ、代わりに、細胞は、同じ構築物を用いて確立された細胞培養及び細胞トランスフェクション技術から得ることができる。B2M及び/又はMHC遺伝子の修飾は、種々の方法により検出可能である。
【0203】
さらに、(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)又はサザンブロッティング及び原位置ハイブリダイゼーションを用いるmRNA定量化手法を含む)RNAレベルでの方法及び(組織化学、イムノブロット分析及びインビトロ結合試験を含む)タンパク質レベルでの方法を含む、DNAの発現を検出するために使用可能である分析法が多く存在する。分析方法を用いて、定量的測定を完遂することができる。例えば、野生型遺伝子及び修飾配列の転写レベルは、RT-PCR及びハイブリダイゼーション法、例えばリボヌクレアーゼ保護、サザンブロット解析、RNAドット分析(RNAドット)の分析を用いて測定可能である。ヒトタンパク質の存在を評価するため、免疫組織化学的染色、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット解析も使用可能である。
【0204】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物におけるヒト若しくはヒト化MHCタンパク質複合体、ヒト若しくはヒト化B2M、ヒト若しくはヒト化MHC遺伝子(例えば、MHCクラスIα鎖)及び/又は融合タンパク質の発現は、例えば、特定の誘導物質又は抑制物質の添加により制御可能である。いくつかの実施形態では、特定の誘導物質は、Tet-Off系/Tet-On系又はタモキシフェン系から選択される。
【0205】
融合タンパク質
一態様では、本開示は、好ましくは、N末端からC末端に、
(a)ヒトB2M(シグナルペプチドの存在下又は不在下);
(b)任意選択的なリンカーペプチド配列;及び
(c)ヒトMHCα鎖(シグナルペプチドの存在下又は不在下)
を含む融合タンパク質を発現する遺伝子組換え非ヒト動物に関する。
【0206】
いくつかの実施形態では、ヒトMHCα鎖は、ヒトHLA-A、HLA-B又はHLA-Cα鎖である。いくつかの実施形態では、ヒトB2Mは、シグナルペプチド(例えば、配列番号4のアミノ酸1~22)を有しない。いくつかの実施形態では、ヒトB2Mは、配列番号4のアミノ酸1~119、23~119又は21~119に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aは、シグナルペプチド(例えば、配列番号8のアミノ酸1~24又は配列番号59のアミノ酸1~21)を有しない。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aは、シグナルペプチドを有する。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aは、HLA-A0101である。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aは、配列番号8のアミノ酸1~365又は25~365に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aは、HLA-A2.1である。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aは、配列番号59のアミノ酸1~362又は22~362に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0207】
一態様では、本開示は、好ましくは、N末端からC末端に、
(a)ヒトB2M(シグナルペプチドの存在下又は不在下);
(b)リンカーペプチド配列(任意選択);及び
(c)キメラMHCα鎖(シグナルペプチドの存在下又は不在下)
を含む融合タンパク質を発現する遺伝子組換え非ヒト動物に関する。
【0208】
いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、キメラHLA-A、HLA-B又はHLA-Cα鎖である。いくつかの実施形態では、ヒトB2Mは、シグナルペプチド(例えば、配列番号4のアミノ酸1~22)を有しない。いくつかの実施形態では、ヒトB2Mは、配列番号4のアミノ酸1~119、23~119又は21~119に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0209】
いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、キメラ細胞外領域、内因性膜貫通領域及び内因性細胞質領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ細胞外領域は、ヒトHLA-Aα1ドメイン(例えば、ヒトHLA-A0101α1ドメイン又はヒトHLA-A2.1α1ドメイン)、ヒトHLA-Aα2ドメイン(例えば、ヒトHLA-A0101α2ドメイン又はヒトHLA-A2.1α2ドメイン)及び内因性MHCα鎖α3ドメイン(例えば、マウスH2-D1α3ドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、シグナルペプチド(例えば、配列番号8のアミノ酸1~24又は配列番号59のアミノ酸1~21)を含まない。いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、配列番号8のアミノ酸25~114又は配列番号59のアミノ酸22~111に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるヒトHLA-Aα1ドメインを含む。いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、配列番号8のアミノ酸115~206又は配列番号59のアミノ酸112~203に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるヒトHLA-Aα2ドメインを含む。いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、配列番号8のアミノ酸25~206若しくは1~206;又は配列番号59のアミノ酸22~203若しくは1~203に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるヒトHLA-Aα1及びα2ドメインを含む。いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、配列番号6のアミノ酸207~298に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一である内因性MHCα鎖α3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、配列番号6のアミノ酸299~309に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一である内因性MHCα鎖のCペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、配列番号6のアミノ酸310~331に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一である内因性MHCα鎖の膜貫通領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、配列番号6のアミノ酸332~362に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一である内因性MHCα鎖の細胞質領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラMHCα鎖は、配列番号6のアミノ酸207~362に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一である、内因性MHCα鎖α3ドメイン、内因性Cペプチド、内因性膜貫通領域及び内因性細胞質領域を含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、ヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、配列の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%は、ヒトB2M mRNA配列(例えば、NM_004048.3(配列番号3))又はその一部(例えば、エクソン1の一部、エクソン2及びエクソン3の一部)に同一であるか又は由来する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、アミノ酸配列を含む.いくつかの実施形態では、アミノ酸配列の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%は、ヒトB2Mアミノ酸配列(例えば、NP_000563.1(配列番号4))又はその一部(例えば、配列番号4のアミノ酸1~119、23~119又は21~119)に同一であるか又は由来する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、cDNA配列である。
【0211】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、ヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、配列の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%は、ヒトHLA-AのDNA又はmRNA配列(例えば、AF055066.1の核酸95493~99436(配列番号54);又はNM_001242758.1(配列番号7))又はその一部(例えば、配列番号7のエクソン2及びエクソン3)に同一であるか又は由来する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%は、ヒトHLA-Aアミノ酸配列(例えば、AAC24825.1(配列番号59)又はNP_001229687.1(配列番号8))又はその一部(例えば、配列番号8のアミノ酸1~206若しくは25~206;又は配列番号59のアミノ酸1~203若しくは22~203)に同一であるか又は由来する。
【0212】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、ヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、配列の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%は、内因性MHCα鎖mRNA配列(例えば、マウスH2-D1 mRNA配列NM_010380.3(配列番号5))又はその一部(例えば、配列番号5のエクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及びエクソン8)に同一であるか又は由来する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%は、内因性MHCα鎖アミノ酸配列(例えば、マウスH2-D1アミノ酸配列NP_034510.3(配列番号6))又はその一部(例えば、配列番号6のアミノ酸207~362)に同一であるか又は由来する。
【0213】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、ヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、好ましくは、ヌクレオチド配列の3’末端に、内因性MHCα鎖mRNA配列の3’UTR(例えば、マウスH2-D1 mRNA配列NM_010380.3(配列番号5)の3’UTR)をさらに含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、動物のゲノムは、融合タンパク質をコードする配列を含む少なくとも1つの染色体を含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードする配列は、プロモーター又は調節エレメント、例えば内因性B2M(例えば、マウスB2M)プロモーター、誘導性プロモーター、エンハンサー及び/又はマウス若しくはヒト調節エレメントに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードする配列は、プロモーター又は調節エレメント、例えば内因性マウスH2-D1プロモーター、誘導性プロモーター、エンハンサー及び/又はマウス若しくはヒト調節エレメントに作動可能に連結される。
【0215】
いくつかの実施形態では、内因性B2M遺伝子座の全て又は一部(例えば、マウスB2M遺伝子座のエクソン1の一部、エクソン2及びエクソン3の一部)は、融合タンパク質をコードする配列と置換される。いくつかの実施形態では、置換された配列は、内因性B2M遺伝子の全コード領域である。いくつかの実施形態では、置換された配列は、マウスB2Mの領域(例えば、配列番号2のアミノ酸1~119又は23~119)をコードする。いくつかの実施形態では、内因性MHCα鎖遺伝子座の全て又は一部(例えば、マウスH2-D1遺伝子座のエクソン1の一部、エクソン2及びエクソン3の一部)は、融合タンパク質をコードする配列と置換される。いくつかの実施形態では、置換された領域は、内因性MHCα鎖遺伝子(例えば、マウスH2-D1遺伝子)の全コード領域である。いくつかの実施形態では、置換された配列は、マウスH2-D1の領域(例えば、配列番号6のアミノ酸1~206又は25~206)をコードする。
【0216】
いくつかの実施形態では、内因性B2M遺伝子の全て又は一部がノックアウトされる。いくつかの実施形態では、内因性MHCα鎖遺伝子(例えば、マウスH2-D1遺伝子)の全て又は一部がノックアウトされる。
【0217】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質をコードする組換え配列は、内因性B2M又はMHCα鎖遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、内因性B2M又はMHCα鎖遺伝子のコード領域は、挿入された組換え配列に後続する停止コドン及びポリAシグナルの存在に起因して転写又は翻訳されない。
【0218】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、全ヒトB2Mヌクレオチド配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4又はNM_004048.4(配列番号3))と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0219】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、全ヒトB2Mヌクレオチド配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4又はNM_004048.4(配列番号3))と同じである少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0220】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、全ヒトHLA-Aヌクレオチド配列又はその一部(例えば、NM_001242758.1(配列番号7)のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8又はAF055066.1の核酸95493~99436(配列番号54))と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0221】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、全ヒトHLA-Aヌクレオチド配列又はその一部(例えば、NM_001242758.1(配列番号7)のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8又はAF055066.1の核酸95493~99436(配列番号54))と同じである少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0222】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、全マウスH2-D1ヌクレオチド配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8又はNM_010380.3(配列番号5))と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0223】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、全マウスH2-D1ヌクレオチド配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8又はNM_010380.3(配列番号5))と同じである少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0224】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質のアミノ酸配列は、全ヒトB2Mアミノ酸配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4若しくはNM_004048.4(配列番号3)によってコードされるアミノ酸;又はNP_004039.1(配列番号4))と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100アミノ酸、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0225】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質のアミノ酸配列は、全ヒトB2Mアミノ酸配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4若しくはNM_004048.4(配列番号3)によってコードされるアミノ酸;又はNP_004039.1(配列番号4))と同じである少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100アミノ酸、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0226】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質のアミノ酸配列は、全ヒトHLA-Aアミノ酸配列又はその一部(例えば、NM_001242758.1(配列番号7)のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8若しくはAF055066.1の核酸95493~99436(配列番号54)によってコードされるアミノ酸;NP_001229687.1(配列番号8);又はAAC24825.1(配列番号59))と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100アミノ酸、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0227】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質のアミノ酸配列は、全ヒトHLA-Aアミノ酸配列又はその一部(例えば、NM_001242758.1(配列番号7)のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8若しくはAF055066.1の核酸95493~99436(配列番号54)によってコードされるアミノ酸;NP_001229687.1(配列番号8);又はAAC24825.1(配列番号59))と同じである少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100アミノ酸、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0228】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質のアミノ酸配列は、全マウスH2-D1アミノ酸配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8若しくはNM_010380.3(配列番号5)によってコードされるアミノ酸;又はNP_034510.3(配列番号6))と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100アミノ酸、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0229】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質のアミノ酸配列は、全マウスH2-D1アミノ酸配列又はその一部(例えば、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8若しくはNM_010380.3(配列番号5)によってコードされるアミノ酸;又はNP_034510.3(配列番号6))と同じである少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は100アミノ酸、例えば隣接又は非隣接ヌクレオチド)を有する。
【0230】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、
a)配列番号4、8、59、61、62、63若しくは64で示されるアミノ酸配列;
b)配列番号4、8、59、61、62、63又は64で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するか又はそれに対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
c)配列番号4、8、59、61、62、63若しくは64で示されるアミノ酸をコードするヌクレオチド配列に低ストリンジェンシー条件下又は高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズ可能である核酸配列によってコードされるアミノ酸配列;
d)配列番号4、8、59、61、62、63若しくは64で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の相同性を有するか、又は少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列;
e)配列番号4、8、59、61、62、63若しくは64で示されるアミノ酸配列と、10、9、8、7、6、5、4、3、2アミノ酸以下若しくは1アミノ酸以下だけ異なるアミノ酸配列;又は
f)配列番号4、8、59、61、62、63若しくは64で示されるアミノ酸配列に対する1つ以上のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0231】
本開示は、
a)配列番号9、10、13、14、15、16、52、54若しくは65で示されるとおりの核酸配列又はヒト化マウスB2M若しくはMHCα鎖の相同性B2M若しくはMHCα鎖アミノ酸配列をコードする核酸配列;
b)配列番号9、10、13、14、15、16、52、54若しくは65で示されるとおりのヌクレオチド配列に低ストリンジェンシー条件下又は高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズ可能である核酸配列;
c)配列番号9、10、13、14、15、16、52、54若しくは65で示されるとおりのヌクレオチド配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の相同性を有するか、又は少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である核酸配列;
d)配列番号4、8、59、61、62、63又は64で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するか又は少なくとも90%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列;
e)配列番号4、8、59、61、62、63若しくは64で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の相同性を有するか、又はそれに対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列;
f)配列番号4、8、59、61、62、63若しくは64で示されるアミノ酸配列と、10、9、8、7、6、5、4、3、2アミノ酸以下若しくは1アミノ酸以下だけ異なるアミノ酸配列をコードする核酸配列;及び/又は
g)配列番号4、8、59、61、62、63若しくは64で示されるアミノ酸配列に対する1つ以上のアミノ酸の置換、欠失及び/若しくは挿入を含むアミノ酸配列をコードする核酸配列
からなる群から選択され得る核酸(例えばDNA又はRNA)配列にも関する。
【0232】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、融合タンパク質のN末端にヒトMHCα鎖のシグナルペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ヒトMHCα鎖のシグナルペプチドは、ヒトHLA-A(例えば、HLA-A0101又はHLA-A2.1)のシグナルペプチドである。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aのシグナルペプチドは、配列番号8のアミノ酸1~24又は配列番号59のアミノ酸1~21に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aのシグナルペプチドは、配列番号13に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一である配列によってコードされる。
【0233】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、融合タンパク質のN末端に内因性MHC分子(例えば、マウスH2-D1遺伝子)のシグナルペプチドを含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号6のアミノ酸1~24に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0234】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、融合タンパク質のN末端にヒト又は内因性B2Mシグナルペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ヒト又は内因性B2Mシグナルペプチドは、配列番号4のアミノ酸1~20又は配列番号2のアミノ酸1~20に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0235】
いくつかの実施形態では、ヒトB2Mは、リンカーペプチド配列の存在下又は不在下でヒトMHCα鎖に融合される。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列は、任意選択的であり、即ち、一緒に連結された2つの領域は、ペプチド結合により直接的に連結され得る。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列は、少なくとも又はおよそ5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40又は50アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列は、少なくとも又はおよそ4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、20、25、30又は40グリシン残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列は、少なくとも又はおよそ1、2、3、4、5、6、7又は8セリン残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列は、グリシン及びセリン残基の両方を含むか又はそれらからなる。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列は、任意の配列番号67に対して少なくとも又はおよそ70%、少なくとも又はおよそ75%、少なくとも又はおよそ80%、少なくとも又はおよそ85%、少なくとも又はおよそ90%、少なくとも又はおよそ95%、少なくとも又はおよそ99%又は100%同一である配列を含むか又はそれからなる。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列は、GGGGS(配列番号68)の少なくとも1、2、3、4、5、6、7又は8リピートを含む。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40又は50アミノ酸残基以下を有する。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列は、配列番号51に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一である配列によってコードされる。
【0236】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化MHCタンパク質複合体を発現する遺伝子組換え非ヒト動物は、内因性B2M(例えば、マウスB2M)を正常レベルで発現する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化MHCタンパク質複合体を発現する遺伝子組換え非ヒト動物は、内因性B2M(例えば、マウスB2M)を、減少レベル(例えば、遺伝子修飾を有しない動物の場合と比較して、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満又は50%未満)で発現した。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化MHCタンパク質複合体を発現する遺伝子組換え非ヒト動物は、内因性B2M(例えば、マウスB2M)を発現しない。
【0237】
ベクター
本開示は、ヒト化MHCタンパク質複合体の動物モデルを構築するためのベクターも提供する。いくつかの実施形態では、ベクターは、sgRNA配列を含む。いくつかの実施形態では、sgRNA配列は、(例えば、本明細書に記載の非ヒト動物の)B2M遺伝子を標的にし、sgRNAは、改変されるべきB2M遺伝子の標的配列に対して特有であり、5’-NNN(20)-NGG3’又は5’-CCN-N(20)-3’の配列配置規則を満たす。いくつかの実施形態では、マウスB2M遺伝子におけるsgRNAの標的化部位は、マウスB2M遺伝子のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、イントロン1、イントロン2、イントロン3、エクソン1の上流又はエクソン4の下流に位置する。いくつかの実施形態では、マウスB2M遺伝子におけるsgRNAの標的化部位は、エクソン1又はイントロン1に位置する。いくつかの実施形態では、マウスB2M遺伝子におけるsgRNAの標的化部位は、エクソン3又はイントロン3に位置する。
【0238】
いくつかの実施形態では、sgRNA配列は、マウスB2M遺伝子のエクソン1又はイントロン1内の標的化部位を認識する。いくつかの実施形態では、エクソン1又はイントロン1内の標的化部位は、配列番号17~23で示される。いくつかの実施形態では、エクソン1又はイントロン1内の標的化部位は、配列番号19で示される。いくつかの実施形態では、sgRNA配列は、マウスB2M遺伝子のエクソン3又はイントロン3内の標的化部位を認識する。いくつかの実施形態では、エクソン3又はイントロン3内の標的化部位は、配列番号24~31で示される。いくつかの実施形態では、エクソン3又はイントロン3内の標的化部位は、配列番号30で示される。いくつかの実施形態では、sgRNA配列は、配列番号32及び配列番号34;配列番号33及び配列番号35;配列番号36及び配列番号38;又は配列番号37及び配列番号39で示される配列を有する二本鎖DNA分子によってコードされる。
【0239】
いくつかの実施形態では、本開示は、sgRNA配列を含むプラスミド構築物(例えば、pT7-sgRNA)及び/又は構築物を含む細胞に関する。
【0240】
いくつかの実施形態では、本開示は、5’相同性アーム及び3’相同性アームを含む標的化ベクターに関する。いくつかの実施形態では、5’相同性アームは、エクソン1の上流及びエクソン1の全て又は一部に及ぶ配列を含む。いくつかの実施形態では、3’相同性アームは、イントロン3、エクソン4及びエクソン4の下流の全て又は一部に及ぶ配列を含む。
【0241】
いくつかの実施形態では、5’相同性アームは、配列番号11に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、3’相同性アームは、配列番号12に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、5’相同性アームは、NCBI参照配列NC_000068.7の122146329~122147737に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、3’相同性アームは、NCBI参照配列NC_000068.7の122152171~122153513に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97.5%又は100%同一である配列を含む。
【0242】
いくつかの実施形態では、標的化ベクターは、5’及び3’相同性アーム間のヌクレオチド配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、本明細書に記載の融合タンパク質の全て又は一部をコードする配列(例えば、cDNA配列)を含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、好ましくは、5’末端から3’末端に、ヒトHLA-A2.1シグナルペプチドをコードする配列、ヒトB2Mをコードする配列、本明細書に記載のリンカーペプチド配列をコードする配列、ヒトHLA-A2.1の一部をコードする配列及びマウスH2-D1の一部をコードする配列を含むか又はそれからなる。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-A2.1シグナルペプチドをコードする配列は、配列番号13に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97.5%又は100%同一である。いくつかの実施形態では、ヒトB2Mをコードする配列は、配列番号14に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97.5%又は100%同一である。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列をコードする配列は、配列番号51に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97.5%又は100%同一である。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-A2.1の一部をコードする配列は、配列番号15に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97.5%又は100%同一である。いくつかの実施形態では、マウスH2-D1の一部をコードする配列は、配列番号16に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97.5%又は100%同一である。
【0243】
いくつかの実施形態では、5’相同性アームは、配列番号60に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、3’相同性アームは、配列番号53に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、5’相同性アームは、NCBI参照配列NC_000068.7の122146329~122147737に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、5’相同性アームは、NCBI参照配列NC_000068.7の、122147015位でのGからTへの突然変異、122147108位及び122147591位でのCからTへの突然変異を含む。いくつかの実施形態では、3’相同性アームは、NCBI参照配列NC_000068.7の122152171~122153513に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97.5%、99%又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、3’相同性アームは、NCBI参照配列NC_000068.7内において、122152258位での突然変異(GからA)、122152391位での突然変異(GからA)、122152771位での突然変異(AからG)、122153104位での突然変異(TからC)及び122153148位での突然変異(AからC);並びに122152788位での欠失(Aの欠失)を含む。
【0244】
いくつかの実施形態では、標的化ベクターは、5’及び3’相同性アーム間のヌクレオチド配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、本明細書に記載の融合タンパク質の全て又は一部をコードする配列(例えば、cDNA配列)を含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、好ましくは、5’末端から3’末端に、ヒトHLA-A2.1シグナルペプチドをコードする配列、ヒトB2Mをコードする配列、本明細書に記載のリンカーペプチド配列をコードする配列及びヒトHLA-A2.1をコードする配列を含むか又はそれからなる。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-A2.1シグナルペプチドをコードする配列は、配列番号13に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97.5%又は100%同一である。いくつかの実施形態では、ヒトB2Mをコードする配列は、配列番号14に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97.5%又は100%同一である。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列をコードする配列は、配列番号51に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97.5%又は100%同一である。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-A2.1をコードする配列は、配列番号54に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97.5%又は100%同一である。いくつかの実施形態では、5’及び3’相同性アーム間のヌクレオチド配列は、配列番号65に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97.5%又は100%同一である。
【0245】
加えて、本開示は、前述の標的化ベクターのいずれか1つ及び本明細書に記載のsgRNA構築物の1つ以上のインビトロ転写物を有する非ヒト哺乳動物細胞にさらに関する。いくつかの実施形態では、細胞は、Cas9 mRNA又はそのインビトロ転写物を含む。
【0246】
いくつかの実施形態では、細胞内の遺伝子は、ヘテロ接合性である。いくつかの実施形態では、細胞内の遺伝子は、ホモ接合性である。
【0247】
いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物細胞は、マウス細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、受精卵細胞である。
【0248】
いくつかの実施形態では、sgRNA配列を含むベクターを調製するための方法であって、(a)フォワードオリゴヌクレオチド配列及びリバースオリゴヌクレオチド配列を使用して得られるsgRNA配列であって、本明細書に記載の非ヒト動物B2M遺伝子を標的にし、sgRNAは、改変されるべき標的B2M遺伝子に対して特有であり、且つ5’-NNN(20)-NGG3’又は5’-CCN-N(20)-3’の配列配置規則を満たす、sgRNA配列を提供するステップと;(b)T7プロモーター及びsgRNAスキャフォールド(例えば、配列番号40に対して少なくとも80%同一である)を有するDNA断片を合成し、次いでDNA断片をEcoRI及びBamHI消化後に骨格ベクターにライゲートし、及び配列決定による検証後、pT7-sgRNAベクターを得るステップと;(c)ステップ(a)で得られたフォワードオリゴヌクレオチド及びリバースオリゴヌクレオチドを変性及びアニーリングし、ステップ(b)に記載のpT7-sgRNAベクターにライゲート可能である二本鎖を形成するステップと;(d)ステップ(c)でアニールされた二本鎖sgRNAオリゴヌクレオチドをpT7-sgRNAベクターとライゲートし、スクリーニングすることでsgRNAベクターを得るステップとを含む方法が本明細書で提供される。
【0249】
遺伝子組換え動物を作製する方法
遺伝子組換え動物は、例えば、非相同末端結合(NHEJ)、相同組換え(HR)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)-Casシステムを含む、当技術分野で公知であるいくつかの技術により作製可能である。いくつかの実施形態では、相同組換えが使用される。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物を作製するため、CRISPR-Cas9ゲノム編集が使用される。これらのゲノム編集技術の多くは、当技術分野で公知であり、例えばYin et al.,“Delivery technologies for genome editing,”Nature Reviews Drug Discovery 16.6(2017):387-399(その全体が参照により援用される)に記載されている。さらに、他の多くの方法が提供され、ゲノム編集、例えば遺伝子組換え核の除核卵母細胞へのマイクロインジェクション及び除核卵母細胞と別の遺伝子組換え細胞との融合において使用可能である。
【0250】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、動物の少なくとも1つの細胞において、内因性B2M又はMHC遺伝子座で、内因性B2M又はMHCα鎖の領域をコードする配列を、本明細書に記載の融合タンパク質をコードする配列と置換することを提供する。いくつかの実施形態では、置換は、胚細胞、体細胞、胚盤胞又は線維芽細胞などで生じる。体細胞又は線維芽細胞の核は、除核卵母細胞内に挿入され得る。
【0251】
図9及び図18は、マウスB2M遺伝子座でのMHCタンパク質複合体のヒト化方法を示す。図9及び図18では、標的化方法は、5’相同性アーム、融合タンパク質をコードする配列及び3’相同性アームを含むベクターを含む。方法は、内因性B2M遺伝子配列を、融合タンパク質をコードする配列と相同組換えにより置換することを含み得る。いくつかの実施形態では、(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN又はCRISPRによる)標的部位の上流及び下流での切断は、DNA二本鎖切断をもたらし得、内因性B2M遺伝子配列を、融合タンパク質をコードする配列と置換するために相同組換えが使用される。
【0252】
いくつかの実施形態では、5’末端標的化部位及び3’末端標的化部位間の配列がノックアウトされる。いくつかの実施形態では、5’末端標的化部位及び3’末端標的化部位間の配列が置換される。いくつかの実施形態では、置換された配列は、マウスB2M遺伝子のエクソン1又はイントロン1内から開始する。いくつかの実施形態では、置換された配列は、マウスB2M遺伝子のエクソン3又はイントロン3内で終結する。
【0253】
したがって、いくつかの実施形態では、遺伝子組換えヒト化動物を作製するための方法は、内因性B2M遺伝子座(又は部位)において、内因性B2Mの領域をコードする配列をコードする核酸を、本明細書に記載の融合タンパク質をコードする配列と置換するステップを含み得る。配列は、内因性B2M遺伝子のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4の領域(例えば、一部又は全部の領域)を含み得る。いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードする配列は、ヒトB2M遺伝子のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4の領域(例えば、一部又は全部の領域)並びに内因性又はヒトMHCα鎖遺伝子のエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7及びエクソン8の領域(例えば、一部又は全部の領域)を含む。いくつかの実施形態では、内因性B2M遺伝子座は、マウスB2M遺伝子のエクソン1の一部、エクソン2及びエクソン3の一部(例えば、配列番号2のアミノ酸1~119をコードする配列)である。
【0254】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質を発現するためにマウスのB2M遺伝子座を修飾する方法は、内因性マウスB2M遺伝子座でマウスB2Mをコードするヌクレオチド配列を、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列と置換し、それによりヒトB2M及びヒト又はキメラMHCα鎖を含む融合タンパク質をコードする配列を作製するステップを含み得る。
【0255】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヌクレオチド配列は、互いに重複しない(例えば、5’相同性アーム、A断片(又はBNDG-A断片)及び/又は3’相同性アームは、重複しない)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアミノ酸配列は、互いに重複しない。
【0256】
ジンクフィンガータンパク質、TALエフェクタードメイン又は単一ガイドRNA(sgRNA)DNA結合ドメインは、内因性(例えば、マウス)B2M遺伝子座のエクソン1内、エクソン2内、エクソン3内、エクソン4内、イントロン1内、イントロン2内及び/又はイントロン3内の領域を標的にするように設計され得る。例えば、配列番号17~23の標的化配列は、内因性(例えば、マウス)B2M遺伝子座のエクソン1又はイントロン1に位置し;配列番号24~31の標的化配列は、内因性(例えば、マウス)B2M遺伝子座のエクソン3又はイントロン3に位置する。ジンクフィンガータンパク質、TALエフェクタードメイン又は単一ガイドRNA(sgRNA)DNA結合ドメインが標的配列に結合した後、ヌクレアーゼは、ゲノムDNAを切断する。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)である。
【0257】
したがって、ヒト若しくはヒト化MHCタンパク質複合体、ヒト若しくはヒト化B2M及び/又はヒト若しくはヒト化MHC分子を発現するマウスを作製する方法は、マウス胚性幹細胞を、内因性B2M又はMHC遺伝子を標的にする遺伝子編集システムにより形質転換し、それにより形質転換された胚性幹細胞を作製するステップと;形質転換された胚性幹細胞をマウス胚盤胞に導入するステップと;マウス胚盤胞を偽妊娠雌マウスに移植するステップと;胚盤胞が胎児発生から満期出産までを経ることを可能にするステップとの1つ以上を含み得る。
【0258】
いくつかの実施形態では、形質転換された胚細胞は、代わりに、偽妊娠雌マウスに直接的に移植され、胚細胞は、胎児発生を経る。
【0259】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集システムは、ジンクフィンガータンパク質、TALエフェクタードメイン又は単一ガイドRNA(sgRNA)DNA結合ドメインを含み得る。
【0260】
本開示は、ヒト若しくはヒト化MHCタンパク質複合体、ヒト若しくはヒト化B2M及び/又はヒト若しくはヒト化MHC分子を発現する動物モデルを確立するための方法であって、
(a)細胞(例えば、受精卵細胞)に、本明細書に記載の方法に基づく遺伝子修飾を提供するステップと;
(b)液体培地中で細胞を培養するステップと;
(c)培養された細胞をレシピエント雌非ヒト哺乳動物の卵管又は子宮に移植し、雌非ヒト哺乳動物の子宮内で細胞が発現することを可能にするステップと;
(d)ステップ(c)における妊娠雌の遺伝子組換えヒト化非ヒト哺乳動物の子孫における生殖系列伝達を同定するステップと
を含む方法をさらに提供する。
【0261】
いくつかの実施形態では、前述の方法における非ヒト哺乳動物は、マウス(例えば、C57BL/6マウス、NOD/scidマウス、NOD/scidヌードマウス又はB-NDGマウス)である。いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物は、B-NDG(NOD-PrkdcscidIL-2rγnull)マウスである。いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物は、NOD/scidマウスである。
【0262】
B-NDGマウスにおいて、(一般に「SCID」又は「重症複合免疫不全」として知られる)Prkdcscidの突然変異が非肥満糖尿病(NOD)バックグラウンドに対して導入されている。SCID突然変異に対してホモ接合性の動物は、T及びB細胞リンパ球の発現を損なっている。NODバックグラウンドは、ナチュラルキラー(NK)細胞機能の欠損をさらにもたらす。IL-2rγnullは、マウスCD132遺伝子における特定のノックアウト改変を指す。詳細は、例えば、PCT/中国特許出願公開第2018/079365号明細書(その全体が参照により本明細書に援用される)に見出すことができる。
【0263】
いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳動物は、B-NDGマウスである。B-NDGマウスは、マウスにおける染色体11上のFOXN1遺伝子の破壊をさらに有する。
【0264】
いくつかの実施形態では、上記の方法における受精卵は、NOD/scid受精卵、NOD/scidヌード受精卵又はB-NDG受精卵である。本明細書に記載の方法においても使用可能である他の受精卵として、限定はされないが、C57BL/6受精卵、FVB/N受精卵、BALB/c受精卵、DBA/1受精卵及びDBA/2受精卵が挙げられる。
【0265】
受精卵は、任意の非ヒト動物、例えば本明細書に記載の任意の非ヒト動物に由来し得る。いくつかの実施形態では、受精卵細胞は、齧歯類に由来する。遺伝子構築物は、DNAのマイクロインジェクションにより、受精卵に導入され得る。例えば、マイクロインジェクション後に受精卵を培養することを通して、培養された受精卵は、偽妊娠非ヒト動物に移植可能であり、及び非ヒト哺乳動物の出生により、上記方法において言及された非ヒト哺乳動物が作製される。
【0266】
本明細書に記載の遺伝子組換え動物(例えば、マウス)は、いくつかの利点を有し得る。例えば、遺伝子組換えマウスは、戻し交配を必要とせず、そのため、当技術分野で公知の他のいくつかの免疫不全マウスと比較して、比較的より純粋なバックグラウンド(例えば、B-NDG)を有する。純粋なバックグラウンドは、一貫した実験結果を得るために有利である。
【0267】
遺伝子組換え動物を使用する方法
ヒト又はヒト化MHCタンパク質複合体を発現する遺伝子組換え動物は、限定はされないが、ヒト血液リンパ系動物モデルを確立することと、ヒト疾患及び障害に対する治療薬を開発することと、動物モデルにおけるこれらの治療薬の有効性を評価することとを含む種々の使用を提供し得る。
【0268】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物は、ヒト血液リンパ系を確立するために使用可能である。方法は、ヒト造血細胞(CD34+細胞)又はヒト末梢血細胞を含む細胞の集団を本明細書に記載の遺伝子組換え動物に移植することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、移植前に動物を照射するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、照射するステップは、移植前に必要とされない。遺伝子組換え動物におけるヒト血液リンパ系は、様々なヒト細胞、例えば造血幹細胞、骨髄前駆体細胞、骨髄系細胞、樹状細胞、単球、顆粒球、好中球、肥満細胞、リンパ球及び血小板を含み得る。
【0269】
(例えば、ヒト又はヒト化MHCタンパク質複合体を発現する)本明細書に記載の遺伝子組換え動物は、ヒト血液リンパ系を確立するための優れた動物モデルでもある。いくつかの実施形態では、ヒト免疫系を発生するため、ヒト造血幹細胞又はヒト末梢血細胞を移植された後の動物は、以下の特徴:
(a)ヒト白血球(又はCD45+細胞)の百分率が、動物における(赤血球の溶解後の)血液からの全生細胞の少なくとも又はおよそ10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%又は50%であること;
(b)ヒトT細胞(又はCD3+細胞)の百分率が、動物におけるヒト白血球(又はCD45+細胞)の少なくとも又はおよそ1%、2%、3%、4%、5%、8%、10%、15%、20%、30%、40%又は50%であること;
(c)ヒトB細胞(又はCD19+細胞)の百分率が、動物におけるヒト白血球(又はCD45+細胞)の少なくとも又はおよそ30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%又は80%であること;
(d)ヒトNK細胞(又はCD56+細胞)の百分率が、動物におけるヒト白血球(又はCD45+細胞)の少なくとも又はおよそ1%、2%、3%、4%、5%、8%又は10%であること、
(e)ヒト骨髄系細胞(又はCD33+細胞)の百分率が、動物におけるヒト白血球(又はCD45+細胞)の少なくとも又はおよそ2%、5%、8%、10%、15%又は20%であること;
(f)ヒト単球(又はCD14+細胞)の百分率が、動物におけるヒト骨髄系細胞(又はCD33+細胞)の少なくとも又はおよそ50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%であること;及び
(g)ヒト顆粒球(又はCD66b+細胞)の百分率が、動物におけるヒト骨髄系細胞(又はCD33+細胞)の少なくとも又はおよそ1%、2%、3%、4%、5%、8%、10%、15%、20%、25%又は30%であること
の1つ以上を有する。
【0270】
いくつかの実施形態では、ヒト免疫系を発生するため、動物(マウス)にヒト造血幹細胞を移植されてから少なくとも又はおよそ4週、少なくとも又はおよそ8週、少なくとも又はおよそ12週、少なくとも又はおよそ16週、少なくとも又はおよそ20週、少なくとも又はおよそ24週、少なくとも又はおよそ26週、少なくとも又はおよそ28週、少なくとも又はおよそ30週の経過後、1つ以上の特徴が決定される。
【0271】
いくつかの実施形態では、動物は、NSGマウス、NOGマウス、NOD/scidマウス又はB-NDGマウスと比較して、外因性細胞の増強された移植能力を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の動物モデルは、ヒト血液リンパ系を確立するためのより優れた(例えば、より高い生存率を有するか;全生細胞中の白血球のより高い百分率を有するか;又は再構築のより高い成功率を有する)動物モデルである。NSGマウス、NODマウス及びB-NDGの詳細な説明は、例えば、Ishikawa et al.“Development of functional human blood and immune systems in NOD/SCID/IL2 receptor γ chainnull mice.”Blood 106.5(2005):1565-1573;Katano et al.“NOD-Rag2null IL-2Rγnull mice:an alternative to NOG mice for generation of humanized mice.”Experimental animals 63.3(2014):321-330;米国特許出願公開第20190320631A1号明細書(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される)に見出すことができる。
【0272】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物は、癌の治療のための薬剤又は薬剤の組み合わせの有効性を判定するために使用され得る。方法は、腫瘍細胞を、本明細書に記載の動物に移植することと、薬剤又は薬剤の組み合わせを動物に投与することと、腫瘍に対する阻害効果を判定することとを含む。
【0273】
いくつかの実施形態では、腫瘍細胞は、ヒト患者から得られた腫瘍サンプルに由来する。これらの動物モデルは、患者由来異種移植片(PDX)モデルとしても知られる。PDXモデルは、癌の進行及び治療の試験のために、癌の自然増殖に類似する環境を創出するために使用されることが多い。PDXモデル内の患者腫瘍サンプルは、患者の原発性腫瘍部位に見出される酸素、栄養素及びホルモンレベルを再現する生理学的に関連する腫瘍微小環境下で増殖する。さらに、移植された腫瘍組織は、患者に見出される遺伝的及びエピジェネティック異常を維持し、異種移植片組織は、周囲のヒト間質を含むように患者から切除され得る。結果として、PDXモデルは、多くの場合、腫瘍サンプルを提供する実患者において認められるとおり、抗癌剤に対する類似の応答を示し得る。
【0274】
遺伝子組換え免疫不全動物(例えば、B-NDGバックグラウンドを有するマウス)は、機能的T細胞又はB細胞を有しない一方、動物は、機能的な食細胞、例えば好中球、好酸球(乳酸菌)、好塩基球又は単球を依然として有する。マクロファージは、単球由来であり得、細胞片、外来物質、微生物、癌細胞を貪食及び消化し得る。したがって、本明細書に記載の遺伝子組換え動物は、薬剤(例えば、抗CD47抗体、抗IL6抗体、抗IL15抗体又は抗SIRPα抗体)の食作用に対する効果及び薬剤の腫瘍細胞の増殖を阻害する効果を判定するために使用可能である。
【0275】
いくつかの実施形態では、ヒト造血系の発生のため、ヒト末梢血細胞(hPBMC)又はヒト造血幹細胞が動物に注射される。本明細書に記載の遺伝子組換え動物は、ヒト造血系における薬剤の効果及び薬剤の腫瘍細胞増殖又は腫瘍増殖を阻害する効果を判定するために使用可能である。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、薬剤のヒト免疫細胞(例えば、ヒトT細胞、B細胞又はNK細胞)に対する効果、例えば薬剤がT細胞を刺激し得るか又はT細胞を阻害し得るか、薬剤が免疫応答を上方制御し得るか又は免疫応答を下方制御し得るかも判定するように設計される。いくつかの実施形態では、遺伝子組換え動物は、対象における疾患、例えば癌又は自己免疫疾患を治療するための治療薬の有効用量を決定するために使用可能である。
【0276】
いくつかの実施形態では、様々な癌を治療するため、被験薬又は被験薬の組み合わせが設計される。本明細書で用いられるとき、用語「癌(cancer)」は、自律的増殖能力、即ち急速に増殖する細胞増殖を特徴とする異常な状態又は病態を有する細胞を指す。この用語は、癌性増殖又は発癌性プロセス、転移性組織又は悪性に形質転換された細胞、組織若しくは臓器といった全てのタイプを、侵襲性の病理組織学的タイプ又は状態と無関係に含むことを意味する。用語「腫瘍」は、本明細書で用いられるとき、癌性細胞、例えば癌性細胞の集団を指す。本明細書に記載の方法を用いて治療又は診断可能な癌は、例えば、肺、乳房、甲状腺、リンパ系、胃腸管及び泌尿生殖器を冒す様々な臓器系の悪性腫瘍並びに大部分の結腸癌、腎細胞癌、前立腺癌及び/又は精巣腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸の癌及び食道の癌などの悪性腫瘍を含む腺癌を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬剤は、対象における癌を治療又は診断するように設計される。用語「癌(carcinoma)」は、当技術分野で認められており、呼吸器系癌、胃腸系癌、泌尿生殖器系癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌及びメラノーマを含む、上皮又は内分泌組織の悪性腫瘍を指す。いくつかの実施形態では、癌は、腎癌又はメラノーマである。例示的な癌は、子宮頸部、肺、前立腺、乳房、頭頸部、結腸及び卵巣の組織から形成するものを含む。この用語は、癌肉腫も含み、例えば癌性及び肉腫性組織からなる悪性腫瘍を含む。「腺癌」は、腺組織に由来するか、又は腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する場合の癌を指す。用語「肉腫」は、当技術分野で認められており、間葉誘導系の悪性腫瘍を指す。
【0277】
いくつかの実施形態では、被験薬は、メラノーマ、原発性肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、原発性胃癌、膀胱癌、乳癌及び/又は前立腺癌を治療するように設計される。
【0278】
いくつかの実施形態では、注射される腫瘍細胞は、ヒト腫瘍細胞である。いくつかの実施形態では、注射される腫瘍細胞は、メラノーマ細胞、原発性肺癌細胞、非小細胞肺癌(NSCLC)細胞、小細胞肺癌(SCLC)細胞、原発性胃癌細胞、膀胱癌細胞、乳癌細胞及び/又は前立腺癌細胞である。
【0279】
腫瘍に対する阻害効果は、当技術分野で公知の任意の方法によっても判定され得る。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞は、ルシフェラーゼ遺伝子により標識され得る。したがって、動物における腫瘍細胞の数又は腫瘍のサイズは、インビボでの画像処理システム(例えば、蛍光の強度)により判定され得る。いくつかの実施形態では、腫瘍に対する阻害効果は、動物における腫瘍体積を測定し、且つ/又は腫瘍(体積)阻害率(TGITV)を決定することによっても判定され得る。腫瘍増殖阻害率は、式TGITV(%)=(1-TVt/TVc)×100(式中、TVt及びTVcは、治療群及び対照群の平均腫瘍体積(又は重量)である)を用いて計算可能である。
【0280】
いくつかの実施形態では、被験薬は、パクリタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、ペメトレキセド、5-FU、ゲムシタビン、オキサリプラチン、ドセタキセル及びカペシタビンからなる群から選択される1種以上の薬剤であり得る。
【0281】
いくつかの実施形態では、被験薬は、抗体、例えばCSF2、IL3、CSF1、IL15、CD47、PD-1、CTLA-4、LAG-3、TIM-3、BTLA、PD-L1、4-1BB、CD27、CD28、CD47、TIGIT、CD27、GITR又はOX40に結合する抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体である。
【0282】
本開示は、ヒト細胞の免疫プロセス、ヒト抗体の作製又は薬理学、免疫学、微生物学及び医学における研究のためのモデル系に関する産物の発現における、本明細書に記載の方法を通して作製された動物モデルの使用にも関する。
【0283】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒト細胞を含む免疫プロセスの動物実験疾患モデルの作製及び利用、病原体に関する試験又は新しい診断方法及び/若しくは治療方法の開発における、本明細書に記載の方法を通して作製された動物モデルの使用を提供する。
【0284】
大部分の免疫不全マウス(例えば、B-NDGマウス)では、MHCタンパク質複合体は、(例えば、マウスH2分子を含む)マウス内因性MHCタンパク質複合体である。ヒト細胞又は組織の移植後、ヒト由来細胞(例えば、ヒト造血細胞又はヒト末梢血細胞)は、ヒトMHC制限抗原認識を得ることができない。さらに、ヒトMHC制限免疫応答は、免疫不全マウスにおける免疫療法又は特定病原体による感染後に評価され得ない。さらに、移植されたヒトT及びBリンパ球は、免疫不全マウスにおいて十分機能的に成熟し得ない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化MHCタンパク質複合体を発現する遺伝子組換え非ヒト動物は、ヒト細胞(例えば、ヒト造血細胞又はヒト末梢血細胞)又は組織を移植された後、MHC制限効果を、ヒト化MHCタンパク質複合体を発現しない(同じバックグラウンドを有する)対照マウスの場合と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%改善し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化MHCタンパク質複合体を発現する遺伝子組換え非ヒト動物は、ヒト細胞(例えば、ヒト造血細胞又はヒト末梢血細胞)又は組織を移植された後、ヒトT細胞及び/又はB細胞の成熟を、ヒト化MHCタンパク質複合体を発現しない(同じバックグラウンドを有する)対照マウスの場合と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%改善し得る。
【0285】
したがって、一態様では、本明細書に記載の遺伝子組換え動物は、細胞療法(例えば、T細胞に基づく細胞療法)の有効性を評価するのに特に適する。いくつかの実施形態では、本開示は、TCR-T、CAR-T及び/又は他の免疫療法(例えば、T細胞養子移入療法)のインビボ有効性を検証するための方法を提供する。例えば、方法は、ヒト腫瘍細胞を、本明細書に記載の動物に移植することと、免疫療法(例えば、ヒトCAR-T療法)を、ヒト腫瘍細胞を有する動物に適用することとを含む。CAR-T療法の有効性は、判定及び評価可能である。いくつかの実施形態では、動物は、本明細書に記載の方法によって調製された非ヒト動物、本明細書に記載の非ヒト動物、本明細書に記載の方法によって作製された二重若しくは多重ヒト化非ヒト動物(又はその子孫)、ヒト化MHCタンパク質複合体を発現する非ヒト動物又は本明細書に記載の腫瘍保有若しくは炎症性動物モデルから選択される。いくつかの実施形態では、TCR-T、CAR-T及び/又は他の免疫療法により、本明細書に記載の疾患を治療することができる。いくつかの実施形態では、TCR-T、CAR-T及び/又は他の免疫療法は、本明細書に記載の疾患(例えば癌)を治療するための評価方法を提供する。
【0286】
さらなる遺伝子修飾を有する動物モデル
本開示は、いくつかの追加的な修飾(例えば、ヒト若しくはキメラ遺伝子又は追加的な遺伝子のノックアウト)を伴う本明細書に記載の遺伝子組換え動物モデルを作製するための方法にさらに関する。
【0287】
いくつかの実施形態では、動物は、ヒト又はヒト化MHCタンパク質複合体をコードする配列及び追加的なヒト又はキメラタンパク質をコードする配列を含み得る。いくつかの実施形態では、追加的なヒト又はキメラタンパク質は、コロニー刺激因子2(CSF2)、IL3、コロニー刺激因子1(CSF1)、IL15、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、TNF受容体スーパーファミリーメンバー9(4-1BB又はCD137)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、LAG-3、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、B及びTリンパ球関連(BTLA)、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)、CD27、CD28、シグナル調節タンパク質α(SIRPα)、CD47、トロンボポエチン(THPO)、Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)又はTNF受容体スーパーファミリーメンバー4(TNFRSF4;又はOX40)であり得る。
【0288】
いくつかの実施形態では、動物は、ヒト又はヒト化MHCタンパク質複合体をコードする配列及び他のいくつかの内因性遺伝子での破壊(例えば、CD132、β2ミクログロブリン(B2m)又はフォークヘッドボックスN1(Foxn1))を含み得る。いくつかの実施形態では、動物は、KITに突然変異を有する。KITに突然変異を有する遺伝子組換え非ヒト動物は、例えば、PCT/中国特許出願公開第2020/113608号明細書(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0289】
2つ以上のヒト又はキメラ遺伝子(例えば、ヒト化遺伝子)を有する遺伝子組換え動物モデルを作製する方法は、
(a)本明細書に記載の融合タンパク質をコードする配列を導入する方法を使用し、遺伝子組換え非ヒト動物を得るステップと;
(b)遺伝子組換え非ヒト動物を別の遺伝子組換え非ヒト動物と交配させ、次に子孫をスクリーニングし、2つ以上のヒト又はキメラ遺伝子を有する遺伝子組換え非ヒト動物を得るステップと
を含み得る。
【0290】
いくつかの実施形態では、方法のステップ(b)において、遺伝子組換え動物は、ヒト又はキメラCSF2、IL3、CSF1、IL15、PD-1、CTLA-4、LAG-3、TIM-3、BTLA、PD-L1、4-1BB、CD27、CD28、SIRPα、CD47、THPO、TIGIT、GITR又はOX40を有する遺伝子組換え非ヒト動物と交配され得る。これらの遺伝子組換え非ヒト動物の一部は、例えば、PCT/中国特許出願公開第2017/090320号明細書、PCT/中国特許出願公開第2017/099577号明細書、PCT/中国特許出願公開第2017/099575号明細書、PCT/中国特許出願公開第2017/099576号明細書、PCT/中国特許出願公開第2017/099574号明細書、PCT/中国特許出願公開第2017/106024号明細書、PCT/中国特許出願公開第2020/125489号明細書、PCT/中国特許出願公開第2020/142546号明細書、中国特許出願公開第111172190A号明細書、中国特許出願公開第111118019A号明細書及び中国特許出願公開第111073907A号明細書(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0291】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子修飾は、ヒト又はキメラCSF2、IL3、CSF1、IL15、PD-1、CTLA-4、LAG-3、BTLA、TIM-3、PD-L1、4-1BB、CD27、CD28、SIRPα、CD47、THPO、TIGIT、GITR又はOX40遺伝子を有する遺伝子組換え動物に対して直接的に実施され得る。
【0292】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子修飾は、B2mノックアウトマウス又はFoxn1ノックアウトマウスに対して直接的に実施され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の遺伝子修飾は、B-NDGマウスに対して直接的に実施され得る。
【0293】
これらのタンパク質が異なる機構を含み得ることから、そのこれらタンパク質の2つ以上を標的にする併用療法は、より有効な治療であり得る。事実、多くの関連する臨床試験が進行中であり、良好な効果を示している。
【0294】
併用療法の有効性を判定するため、MHCタンパク質複合体ヒト化動物モデル及び/又は追加的な遺伝子修飾を有するMHCタンパク質複合体ヒト化動物モデルが使用可能である。
【0295】
いくつかの実施形態では、薬剤の組み合わせは、パクリタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、ペメトレキセド、5-FU、ゲムシタビン、オキサリプラチン、ドセタキセル及びカペシタビンからなる群から選択される1種以上の薬剤を含み得る。
【0296】
いくつかの実施形態では、薬剤の組み合わせは、カンポテシン、ドキソルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、アドリアマイシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ビスルファン、ニトロスレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン(プリコマイシン)、マイトマイシン、エトポシド、ベラムピル、ポドフィロトキシン、タモキシフェン、タキソール、トランス白金、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びメトトレキサートからなる群から選択される1種以上の薬剤を含み得る。
【0297】
いくつかの実施形態では、薬剤の組み合わせは、CSF2、IL3、CSF1、IL15、PD-1、CTLA-4、LAG-3、BTLA、TIM-3、PD-L1、4-1BB、CD27、CD28、SIRPα、CD47、THPO、TIGIT、GITR及び/又はOX40に結合する1種以上の抗体を含み得る。
【0298】
代替的に又は追加的に、方法は、対象に対して手術を実施し、癌の少なくとも一部を除去し、例えば対象からの腫瘍の一部又は全部を除去することも含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0299】
図1】HLA-Aの三次元図式的構造である。
図2】マウスB2M遺伝子座及びヒトB2M遺伝子座を示す概略図である。
図3】マウスH2-D1遺伝子座及びヒトHLA-A遺伝子座を示す概略図である。
図4】ヒト化マウスB2M遺伝子座を示す概略図である。マウスB2M遺伝子コード領域は、ヒトB2Mタンパク質、ヒトHLA-A2.1タンパク質の一部及びマウスH2-D1タンパク質の一部をコードする核酸配列と置換される。
図5】ヒト化マウスB2M遺伝子座を示す概略図である。マウスB2M遺伝子コード領域は、ヒトB2M遺伝子のコード領域と置換される。
図6】ヒト化マウスH2-D1遺伝子座を示す概略図である。マウスH2-D1遺伝子の一部は、ヒトHLA-A2.1タンパク質の一部をコードする核酸配列と置換される。
図7】ヒト化マウスH2-D1遺伝子座を示す概略図である。マウスH2-D1遺伝子の一部は、ヒトB2Mタンパク質及びヒトHLA-A2.1タンパク質の一部をコードする核酸配列と置換される。
図8】ヒト化マウスB2M遺伝子座を示す概略図である。マウスB2M遺伝子コード領域は、ヒトHLA-A2.1のシグナルペプチド、ヒトB2Mタンパク質、ヒトHLA-A2.1タンパク質の一部及びマウスH2-D1タンパク質の一部をコードする核酸配列と置換された。
図9】マウスB2M遺伝子座での標的化方法の概略図を示す。
図10A-10B】図10AはsgRNA1~sgRNA7(sg1~sg7)における活性試験結果を示す。PCは、陽性対照である。Con.は、陰性対照である。Blankは、ブランク対照である。図10BはsgRNA9~sgRNA15(sg9~sg15)における活性試験結果を示す。PCは、陽性対照である。Con.は、陰性対照である。Blankは、ブランク対照である。
図11A-11B】図11AはプライマーL-GT-F及びL-GT-RによるF0世代マウスの5’末端のPCR検出結果を示す。Mは、マーカーである。HOは、水対照である。WTは、野生型対照である。PCは、陽性対照である。F0-01、F0-02、F0-03、F0-04、F0-05、F0-06、F0-07、F0-08、F0-09及びF0-10は、マウス番号である。図11BはプライマーR-GT-F及びR-GT-RによるF0世代マウスの3’末端のPCR検出結果を示す。Mは、マーカーである。HOは、水対照である。WTは、野生型対照である。PCは、陽性対照である。F0-01、F0-02、F0-03、F0-04、F0-05、F0-06、F0-07、F0-08、F0-09及びF0-10は、マウス番号である。
図12A-12B】図12AはプライマーL-GT-F及びL-GT-RによるF1世代マウスの5’末端のPCR検出結果を示す。Mは、マーカーである。HOは、水対照である。WTは、野生型対照である。PCは、陽性対照である。F1-01、F1-02、F1-03、F1-04、F1-05、F1-06及びF1-07は、陽性マウス番号である。図12BはプライマーR-GT-F及びR-GT-RによるF1世代マウスの3’末端のPCR検出結果を示す。Mは、マーカーである。HOは、水対照である。WTは、野生型対照である。PCは、陽性対照である。F1-01、F1-02、F1-03、F1-04、F1-05、F1-06及びF1-07は、陽性マウス番号である。
図13】P1又はP2プローブによるF1世代マウスのサザンブロット解析結果を示す。Mは、マーカーである。WTは、野生型対照である。F1-01、F1-02、F1-03、F1-04、F1-05、F1-06及びF1-07は、マウス番号である。
図14A-14H】図14Aは非刺激野生型C57BL/6マウスからの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗マウスB2M抗体mβ2M PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図14Bは非刺激MHCヒト化ホモ接合性マウス(H/H)からの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗マウスB2M抗体mβ2M PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図14Cは抗マウスCD3抗体によって刺激された野生型C57BL/6マウスからの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗マウスB2M抗体mβ2M PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図14Dは抗マウスCD3抗体によって刺激されたMHCヒト化ホモ接合性マウス(H/H)からの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗マウスB2M抗体mβ2M PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図14Eは非刺激野生型C57BL/6マウスからの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗ヒトB2M抗体hβ2M PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図14Fは非刺激MHCヒト化ホモ接合性マウス(H/H)からの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗ヒトB2M抗体hβ2M PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図14Gは抗マウスCD3抗体によって刺激された野生型C57BL/6マウスからの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗ヒトB2M抗体hβ2M PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図14Hは抗マウスCD3抗体によって刺激されたMHCヒト化ホモ接合性マウス(H/H)からの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗ヒトB2M抗体hβ2M PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。
図14I-14P】図14Iは非刺激野生型C57BL/6マウスからの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗マウスH-2Kb/H-2Db抗体及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図14Jは非刺激MHCヒト化ホモ接合性マウス(H/H)からの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗マウスH-2Kb/H-2Db抗体及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図14Kは抗マウスCD3抗体によって刺激された野生型C57BL/6マウスからの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗マウスH-2Kb/H-2Db抗体及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図14Lは抗マウスCD3抗体によって刺激されたMHCヒト化ホモ接合性マウス(H/H)からの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗マウスH-2Kb/H-2Db抗体及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図14Mは非刺激野生型C57BL/6マウスからの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗ヒトHLA-A2抗体hHLA-A2 PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図14Nは非刺激MHCヒト化ホモ接合性マウス(H/H)からの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗ヒトHLA-A2抗体hHLA-A2 PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図14Oは抗マウスCD3抗体によって刺激された野生型C57BL/6マウスからの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗ヒトHLA-A2抗体hHLA-A2 PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図14Pは抗マウスCD3抗体によって刺激されたMHCヒト化ホモ接合性マウス(H/H)からの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗ヒトHLA-A2抗体hHLA-A2 PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。
図15A-15F】図15Aは野生型C57BL/6マウス脾臓細胞における白血球のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。白血球の比は、88.6%であった。図15BはMHCヒト化ホモ接合性マウス(H/H)脾臓細胞における白血球のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。白血球の比は、96.5%であった。図15Cは野生型C57BL/6マウス白血球におけるT細胞及びB細胞のフローサイトメトリー結果を示す。T細胞及びB細胞は、マウスT細胞表面抗体mTCRB-APC-Cy7及び抗マウスCD19抗体mCD19-PEの各々で染色された。図15DはMHCヒト化ホモ接合性マウス(H/H)白血球におけるT細胞及びB細胞のフローサイトメトリー結果を示す。T細胞及びB細胞は、マウスT細胞表面抗体mTCRB-APC-Cy7及び抗マウスCD19抗体mCD19-PEの各々で染色された。図15Eは野生型C57BL/6マウスT細胞におけるCD4+T細胞及びCD8+T細胞のフローサイトメトリー結果を示す。CD4+T細胞及びCD8+T細胞は、抗マウスCD4抗体mCD4-BV421及び抗マウスmCD8a抗体mCD8a-BV711の各々で染色された。図15FはMHCヒト化ホモ接合性マウス(H/H)T細胞におけるCD4+T細胞及びCD8+T細胞のフローサイトメトリー結果を示す。CD4+T細胞及びCD8+T細胞は、抗マウスCD4抗体mCD4-BV421及び抗マウスmCD8a抗体mCD8a-BV711の各々で染色された。
図16】SIRPαノックアウトマウスからのPCR結果を示す。Mは、マーカーである。WTは、野生型対照である。HOは、水対照である。数字1~10は、陽性マウス番号である。
図17】ヒト化マウスB2M遺伝子座を示す概略図である。マウスB2M遺伝子コード領域は、ヒトHLA-A2.1のシグナルペプチド、ヒトB2Mタンパク質及びヒトHLA-A2.1タンパク質をコードする核酸配列と置換された。
図18】マウスB2M遺伝子座での標的化方法の概略図を示す。
図19A-19B】図19AはプライマーL-GT-F及びBNDG-L-GT-RによるF0世代マウスの5’末端のPCR検出結果を示す。Mは、マーカーである。HOは、水対照である。WTは、野生型対照である。PCは、陽性対照である。BNDG-F0-01、BNDG-F0-02、BNDG-F0-03、BNDG-F0-04、BNDG-F0-05及びBNDG-F0-06は、マウス番号である。図19BはプライマーBNDG-R-GT-F及びR-GT-RによるF0世代マウスの3’末端のPCR検出結果を示す。Mは、マーカーである。HOは、水対照である。WTは、野生型対照である。PCは、陽性対照である。BNDG-F0-01、BNDG-F0-02、BNDG-F0-03、BNDG-F0-04、BNDG-F0-05及びBNDG-F0-06は、マウス番号である。
図20A-20B】図20AはプライマーL-GT-F及びBNDG-L-GT-RによるF1世代マウスの5’末端のPCR検出結果を示す。Mは、マーカーである。HOは水対照である。WTは、野生型対照である。PCは、陽性対照である。BNDG-F0-01及びBNDG-F0-02は、マウス番号である。図20BはプライマーBNDG-R-GT-F及びR-GT-RによるF1世代マウスの3’末端のPCR検出結果を示す。Mは、マーカーである。HOは水対照である。WTは、野生型対照である。PCは、陽性対照である。BNDG-F0-01及びBNDG-F0-02は、マウス番号である。
図21】BNDG-P1又はBNDG-P2プローブによるF1世代マウスのサザンブロット解析結果を示す。Mは、マーカーである。WTは、野生型対照である。BNDG-F0-01及びBNDG-F0-02は、マウス番号である。
図22A-22D】図22AはB-NDGマウスからの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗マウスB2M抗体mβ2M PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図22BはB-NDGバックグラウンドのMHCヒト化ヘテロ接合性マウス(H/+)からの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗マウスB2M抗体mβ2M PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図22CはB-NDGマウスからの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗ヒトB2M抗体hβ2M PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図22DはB-NDGバックグラウンドのMHCヒト化ヘテロ接合性マウス(H/+)からの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗ヒトB2M抗体hβ2M PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。
図22E-22H】図22EはB-NDGマウスからの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗マウスH-2Kb/H-2Db抗体及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図22FはB-NDGバックグラウンドのMHCヒト化ヘテロ接合性マウス(H/+)からの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗マウスH-2Kb/H-2Db抗体及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図22GはB-NDGマウスからの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗ヒトHLA-A2抗体hHLA-A2 PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。図22HはB-NDGバックグラウンドのMHCヒト化ヘテロ接合性マウス(H/+)からの脾臓細胞のフローサイトメトリー結果を示す。脾臓細胞は、抗ヒトHLA-A2抗体hHLA-A2 PE及び抗マウスCD45抗体mCD45 APCで染色された。
図23】マウスB2Mアミノ酸配列(NP_033865.2;配列番号2)とヒトB2Mアミノ酸配列(NP_004039.1;配列番号4)との間の整列化を示す。
図24】ラットB2Mアミノ酸配列(NP_036644.1;配列番号66)とヒトB2Mアミノ酸配列(NP_004039.1;配列番号4)との間の整列化を示す。
図25】マウスH2-D1アミノ酸配列(NP_034510.3;配列番号6)とヒトHLA-A2.1アミノ酸配列(AAC24825.1;配列番号59)との間の整列化を示す。
図26】マウスH2-D1アミノ酸配列(NP_034510.3;配列番号6)とヒトHLA-A0101アミノ酸配列(NP_001229687.1;配列番号8)との間の整列化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0300】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明され、それは、特許請求の範囲において記載される本発明の範囲を限定しない。
【実施例
【0301】
材料及び方法
以下の実施例では、以下の材料を使用した。
【0302】
NOD-PrkdcscidIL-2rgnull(B-NDG)マウスは、Beijing Biocytogen Co.,Ltd.から入手した。カタログ番号は、B-CM-001又はB-CM-002である。
【0303】
UCAキットは、Beijing Biocytogen Co.,Ltd.から入手した。カタログ番号は、BCG-DX-001である。
【0304】
Ambion(商標)インビトロ転写キットは、Ambion,Inc.から購入した。カタログ番号は、AM1354である。
【0305】
Cas9 mRNAは、SIGMAから入手した。カタログ番号は、CAS9MRNA-1EAである。
【0306】
PE抗ヒトβ2ミクログロブリン抗体(hβ2M PE)は、BioLegendから購入した。カタログ番号は、316305である。
【0307】
PE抗マウスβ2ミクログロブリン抗体(mβ2M PE)は、BioLegendから購入した。カタログ番号は、154503である。
【0308】
PE抗ヒトHLA-A2抗体(hHLA-A2 PE)は、BioLegendから購入した。カタログ番号は、343305である。
【0309】
PE抗マウスH-2K/H-2D抗体(H-2Kb/H-2Db PE)は、BioLegendから購入した。カタログ番号は、114607である。
【0310】
FITC抗マウスCD19抗体(mCD19FITC)は、BioLegendから購入した。カタログ番号は、115506である。
【0311】
精製抗マウスCD16/32抗体は、BioLegendから購入した。カタログ番号は、101302である。
【0312】
APC抗mCD45(mCD45APC)は、BioLegendから購入した。カタログ番号は、559864である。
【0313】
APC/Cy7抗マウスTCRβ鎖抗体(mTCRβ APC/Cy7)は、BioLegendから購入した。カタログ番号は、109220である。
【0314】
Alexa Fluor(登録商標)488抗マウスCD3抗体(mCD3 Alexa Flour 488)は、Biolegendから購入した。カタログ番号は、100210である。
【0315】
PE抗マウスCD19抗体(mCD19 PE)は、Biolegendから購入した。カタログ番号は、115508である。
【0316】
Brilliant Violet 421(商標)抗マウスCD4抗体(mCD4 BV421)は、BioLegendから購入した。カタログ番号は、100438である。
【0317】
Brilliant Violet 711(商標)抗マウスCD8a抗体(mCD8a BV711)は、BioLegendから購入した。カタログ番号は、100747である。
【0318】
BamHI、BglII、EcoNI及びSspI制限酵素は、NEBから購入した。カタログ番号は、それぞれR3136、R0144、R0521及びR3132である。
【0319】
実施例1:MHCヒト化マウスの作製
非ヒト動物(例えば、マウス)のゲノムは、ヒトB2M及びHLA-A2.1タンパク質の全て又は一部をコードする核酸配列を含むように修飾され得、遺伝子組換え非ヒト動物がヒト又はヒト化B2M及びHLA-A2.1タンパク質を発現し得る。マウスB2M遺伝子(NCBI遺伝子ID:12010、一次供給源:MGI:88127、UniProt ID:P01887)は、マウスゲノムの染色体2(NC_000068.7の122,147,686~122,153,083)に位置する。転写物配列NM_009735.3を配列番号1で示し、対応するタンパク質配列NP_033865.2を配列番号2で示す。ヒトB2M遺伝子(NCBI遺伝子ID:567、一次供給源:HGNC:914、UniProt ID:P61769)は、ヒトゲノムの染色体15(NC_000015.10の44,711,487~44,718,877)に位置する。転写物配列NM_004048.3を配列番号3で示し、対応するタンパク質配列NP_004039.1を配列番号4で示す。マウス及びヒトB2M遺伝子座を図2に示す。
【0320】
マウスH2-D1遺伝子(NCBI遺伝子ID:14964、一次供給源:MGI:95896、UniProt ID:P01899)は、マウスゲノムの染色体17に位置する。転写物配列NM_010380.3を配列番号5で示し、対応するタンパク質配列NP_034510.3を配列番号6で示す。ヒトHLA-A遺伝子(NCBI遺伝子ID:3105、一次供給源:HGNC:4931、UniProt ID:P04439)は、ヒトゲノムの染色体6に位置する。転写物配列NM_001242758.1を配列番号7で示し、対応するタンパク質配列NP_001229687.1を配列番号8で示す。マウスH2-D1遺伝子座及びヒトHLA-A遺伝子座を図3に示す。
【0321】
ヒト又はヒト化MHC分子を発現するトランスジェニックマウスを得るため、様々な方法を用いることができる。例えば、マウス内因性B2M遺伝子及び内因性H2-D1遺伝子は、不活化可能であり、ヒトB2M;ヒトHLA-A2.1のシグナルペプチド及び細胞外領域の一部(例えば、配列番号59のアミノ酸1~203);マウスH2-D1の細胞外領域の一部(アルファ3領域及びCペプチド)、膜貫通領域及び細胞質領域(例えば、配列番号6のアミノ酸207~362)を含むポリペプチド配列をコードする核酸配列をマウスゲノムにノックインすることができる。
【0322】
さらに、マウスB2M及び/又はマウスH2-D1遺伝子座に対して、異なる修飾及び組み合わせを用いることができる。
【0323】
例えば、マウス内因性B2M遺伝子座は、以下のようにヒト化することができる。図4に示すとおり、マウス内因性B2M遺伝子のエクソン1内のヒトB2M;ヒトHLA-A2.1のシグナルペプチド、アルファ1及びアルファ2領域(例えば、ヒトHLA-A2.1エクソン1~3によってコードされるAAC24825.1(配列番号59)のアミノ酸1~203);マウスH2-D1のアルファ3領域、Cペプチド、膜貫通領域及び細胞質領域(例えば、マウスH2-D1のエクソン4~8によってコードされるNP_034510.3(配列番号6)のアミノ酸207~362)を含むポリペプチドをコードする核酸配列は、マウス内因性B2M遺伝子のエクソン1~3に及ぶ配列を置換するために使用することができる。
【0324】
異なる方法として、マウス内因性B2M遺伝子は、直接的にヒト化することができる。図5に示すとおり、マウスB2M遺伝子のコード領域は、ヒトB2M遺伝子のコード領域と置換することができる。一方で、ヒトHLA-A2.1のシグナルペプチド、アルファ1及びアルファ2領域;マウスH2-D1のアルファ3領域、Cペプチド、膜貫通領域及び細胞質領域を含むポリペプチド(配列番号64)をコードする配列は、トランスジェニック技術によりマウスゲノムにノックインすることができる。代わりに、図6に示すとおり、マウス内因性H2-D1遺伝子座で、ヒトHLA-A2.1のシグナルペプチド、アルファ1及びアルファ領域を含むポリペプチドをコードする配列を使用し、シグナルペプチド、アルファ1及びアルファ2領域をコードするマウスH2-D1遺伝子の対応する配列を置換することができる。マウスB2M遺伝子及びH2-D1遺伝子の各々をヒト化するとき、二重遺伝子ヒト化マウスは、1ステップ又は多ステップの標的化方法により調製することができる。単一遺伝子ヒト化マウスを別々に調製し、繁殖などの方法を通して二重遺伝子ヒト化マウスを得ることも可能である。得られた二重遺伝子ヒト化マウスは、ヒトB2Mタンパク質及びヒト化MHCα鎖タンパク質をインビボで同時に発現することができる。
【0325】
異なる方法として、マウス内因性B2M遺伝子は、ノックアウトすることができる。一方で、図7に示すとおり、マウス内因性H2-D1遺伝子座で、ヒトB2M;ヒトHLA-A2.1のシグナルペプチド、アルファ1及びアルファ2領域を含むポリペプチド(配列番号63)をコードする配列を使用し、マウスH2-D1のシグナルペプチド、アルファ1及びアルファ2領域をコードする配列を置換することができる。
【0326】
以下の実験では、図4に示すヒト化方法を使用し、ヒト化MHC分子を有するトランスジェニックマウスを作製した。マウス細胞を修飾するため、遺伝子編集技術を用いることができる。内因性マウスB2M遺伝子座は、ヒトB2Mタンパク質、ヒトHLA-A2.1タンパク質の一部及びマウスH2-D1タンパク質の一部をコードする配列にノックインすることができ、それによりマウスB2M遺伝子コード領域を破壊することもできる。作製したヒト化マウスは、ヒトB2Mタンパク質;ヒトHLA-A2.1タンパク質(NCBI参照配列:AAC24825.1、配列番号59)のアルファ1及びアルファ2領域;マウスH2-D1タンパク質のアルファ3領域、Cペプチド、膜貫通領域及び細胞質領域を有するヒト化MHC分子をインビボで発現することができる。ヒトHLA-A2.1タンパク質部分は、マウスH2-D1タンパク質部分に直接的に接続され、ヒト化マウスは、内因性B2Mタンパク質を発現しない。さらに、ヒトHLA-A2.1タンパク質の正確な発現を保証するため、ヒトHLA-A2.1タンパク質のシグナルペプチドをコードする配列をヒトB2Mコード領域の前に挿入することができる。ヒト化マウスB2M遺伝子座の概略図を図8に示す。ヒト化B2M、HLA-A2.1及びH2-D1遺伝子から転写されたmRNA配列を配列番号9で示し、(修飾部分のみの)ヒト化B2M遺伝子座のDNA配列を配列番号10で示す。
【0327】
ヒトB2Mが複数のアイソフォーム又は転写物を有すると仮定すると、本明細書に記載の方法は、他のアイソフォーム又は転写物に適用することができる。
【0328】
CRISPR/Casシステムを遺伝子編集に適用し、標的化方法を図9に示す。標的化ベクターは、マウスB2M遺伝子の上流及び下流の相同性アーム配列並びにヒトB2Mタンパク質、ヒトHLA-A2.1タンパク質の一部及びマウスH2-D1タンパク質の一部をコードする「A断片」を有するように設計した。上流の相同性アーム配列(5’相同性アーム、配列番号11)は、NCBI参照配列NC_000068.7の核酸122146329~122147737に同一である。下流の相同性アーム配列(3’相同性アーム、配列番号12)は、NCBI参照配列NC_000068.7の核酸122152171~122153513に同一である。「A断片」は、以下のポリペプチド:ヒトHLA-A2.1のシグナルペプチド;ヒトB2M;フレキシブルリンカーポリペプチド配列;ヒトHLA-A2.1タンパク質の一部;及びマウスH2-D1タンパク質の一部をコードする5’末端から3’末端にかけての配列を有する。具体的には、ヒトHLA-A2.1のシグナルペプチドをコードする配列(配列番号13)は、GenBank参照配列AF055066.1の核酸99567~99638に同一である。ヒトB2Mをコードする配列(配列番号14)は、NCBI参照配列NM_004048.3の核酸91~387に同一である。フレキシブルリンカーポリペプチド配列は、45bpの配列5’-GGAGGTGGCGGATCCGGCGGAGGCGGCTCGGGTGGCGGCGGCTCT-3’(配列番号51)によってコードされる(GGGGS)(配列番号67)リンカーである。ヒトHLA-A2.1タンパク質の一部は、GenBank参照配列AF055066.1の核酸98606~99435に同一である配列(配列番号15)によってコードされる。マウスH2-D1タンパク質の一部は、NCBI参照配列NC_000083.6の核酸35266871~35267765に同一である配列(配列番号16)によってコードされる。トランスジェニックマウスにおいて発現されるタンパク質を配列番号61で示す。しかし、フレキシブルリンカーポリペプチド配列の存在に起因して、タンパク質は、ヒトB2M及びHLA-A2.1タンパク質の機能ドメインを有し得る。
【0329】
標的化ベクターは、例えば制限酵素消化/ライゲーション又は遺伝子合成により構築した。構築した標的化ベクター配列は、制限酵素消化により予備的に検証し、次に配列決定により検証した。検証した標的化ベクターを後続の実験に使用した。
【0330】
標的配列は、sgRNAの標的化特異性及びCas9誘導切断の効率にとって重要である。5’末端の標的化部位(sgRNA1~sgRNA7)及び3’末端の標的化部位(sgRNA8~sgRNA15)を認識する特定のsgRNA配列を設計し、合成した。5’末端の標的化部位は、マウスB2M遺伝子の第1のエクソン内又は第1のイントロン内に位置する。3’末端の標的化部位は、マウスB2M遺伝子の第3のエクソン又は第3のイントロン上に位置する。B2M遺伝子座上の各sgRNAの標的化部位配列は、以下のとおりである:
sgRNA1標的化部位(配列番号17):5’-CCTGGCCAATCCCGTCGGGAAGG-3’
sgRNA2標的化部位(配列番号18):5’-CCGTCAGCACACTCGCAAACAGG-3’
sgRNA3標的化部位(配列番号19):5’-GTTCTCCTTCCCGACGGGATTGG-3’
sgRNA4標的化部位(配列番号20):5’-ACTCTGGATAGCATACAGGCCGG-3’
sgRNA5標的化部位(配列番号21):5’-CTGGTGCTTGTCTCACTGACCGG-3’
sgRNA6標的化部位(配列番号22):5’-GGGGAAAGAGGCACTCACTCTGG-3’
sgRNA7標的化部位(配列番号23):5’-GACAAGCACCAGAAAGACCAGGG-3’
sgRNA8標的化部位(配列番号24):5’-CTGGAGGCTTCCGGACACTCAGG-3’
sgRNA9標的化部位(配列番号25):5’-TGATCAAGCATCATGATGGTAGG-3’
sgRNA10標的化部位(配列番号26):5’-AGGAGCGTGAGAGGGAACGTGGG-3’
sgRNA11標的化部位(配列番号27):5’-GAGGAACGTAGCCATGTCACTGG-3’
sgRNA12標的化部位(配列番号28):5’-CATGTCACTGGCCCTCTAAAGGG-3’
sgRNA13標的化部位(配列番号29):5’-CATGTGATCAAGCATCATGATGG-3’
sgRNA14標的化部位(配列番号30):5’-ACCCGCAGAGCTCTGTCACTCGG-3’
sgRNA15標的化部位(配列番号31):5’-CTCTGTCACTCGGCTCCTCTGGG-3’。
【0331】
UCAキットを使用し、sgRNAの活性を検出した。結果は、sgRNAが異なる活性を有することを示した。結果を表5及び図10A~10Bに示す。後続の実験のためにsgRNA3及びsgRNA14を選択した。フォワードオリゴヌクレオチド及びリバースオリゴヌクレオチドを得るため、オリゴヌクレオチドを5’末端及び相補鎖に付加した(配列については、表6を参照されたい)。アニーリング後、産物をそれぞれpT7-sgRNAプラスミドにライゲートし(プラスミドは最初にBbsIで線状化した)、発現ベクターPT7-B2M-HLA-A2.1-3及びpT7-B2M-HLA-A2.1-14を得た。
【0332】
【表5】
【0333】
【表6】
【0334】
T7プロモーター及びsgRNAスキャフォールド(配列番号40)を有するDNA断片を含むpT7-sgRNAベクターを合成し、制限酵素消化(EcoRI及びBamHI)後、骨格ベクター(Takara、カタログ番号:3299)にライゲートした。得られたプラスミドを配列決定により確認した。
【0335】
pT7-B2M-HLA-A2.1-3及びpT7-B2M-HLA-A2.1-14プラスミドの予備混合したCas9 mRNA、標的化ベクター、インビトロ転写産物を、(製品使用説明書に提供される方法に従い、転写を実施するためのAmbionインビトロ転写キットを使用して)C57BL/6マウス受精卵の細胞質又は核にマイクロインジェクション装置により注射した。胚マイクロインジェクションは、例えば、A.Nagy,et al.,“Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual(Third Edition),”Cold Spring Harbor Laboratory Press,2003に記載の方法に従って実施した。次に、注射した受精卵を短時間培養するための培地に移し、次にレシピエントマウスの輸卵管に移植し、遺伝子組換えマウス(F0世代)を作製した。マウス集団を交雑及び自己繁殖によりさらに拡大し、ヒト又はヒト化B2M及びHLA-A2.1遺伝子を有する安定なマウス系統を確立した。
【0336】
実験を実施し、F0世代マウスの体細胞遺伝子型を同定した。例えば、F0世代マウスのマウステールゲノムDNAを使用し、PCR分析を実施した。F0マウスの一部についてのPCR分析結果を図11A~11Bに示す。5’末端プライマー検出結果及び3’末端プライマー検出結果を踏まえて、F0-01からF0-10にかけて付番したマウス10匹の全てが陽性マウスであった。
【0337】
以下のプライマーをPCRに使用した:
5’末端プライマー:
L-GT-F(配列番号41):5’-GAATGTGTGCCTCCTCTCAGTTTCC-3’
L-GT-R(配列番号42):5’-TCCTTCCCGTTCTCCAGGTATCTGC-3’
3’末端プライマー:
R-GT-F(配列番号43):5’-GCGGCTACTACAACCAGAGCGAG-3’
R-GT-R(配列番号44):5’-TCCAGCAATAAGAACCAGTCCCTAGCT-3’。
【0338】
プライマーL-GT-Fは、5’相同性アームの左側に位置する。R-GT-Rは、3’相同性アームの右側に位置する。L-GT-R及びR-GT-Fの両方は、ヒト配列上に位置する。
【0339】
陽性F0世代のMHCヒト化マウスを野生型マウスとともに繁殖させ、F1世代マウスを作製した。F1世代マウスの遺伝子型同定のため、同じ方法(例えば、PCR)を使用した。図12A~12Bに示すとおり、F1-01、F1-02、F1-03、F1-04、F1-05、F1-06及びF1-07に付番したマウス7匹が陽性マウスとして同定された。陽性F1世代マウス7匹をサザンブロットによりさらに分析し、ランダム挿入が導入されるか否かを確認した。具体的には、マウステールゲノムDNAを抽出し、BamHI又はBglII制限酵素で消化し、膜に移し、次にプローブとハイブリダイズした。プローブP1及びP2の各々は、5’相同性アームの上流領域及び3’相同性アーム上に位置する。サザンブロットアッセイで使用したプローブを下表に列記する。
【0340】
【表7】
【0341】
プローブは、以下のプライマー:
P1-F(配列番号45):5’-ATGAGGTCTTTTTGTGGGCAGAGCA-3’
P1-R(配列番号46):5’-CTCCCTACGGCCACATCACCATTAC-3’
P2-F(配列番号47):5’-TAACTTCATGTAAGGCACCGTCAC-3’
P2-R(配列番号48):5’-TCCAGACCTCACCATCAAATGAG-3’
を使用して合成した。
【0342】
サザンブロットの検出結果を図13に示す。P1及びP2プローブによるハイブリダイゼーション結果を踏まえて、F1世代マウス7匹が陽性ヘテロ接合体であることが確認され、ランダム挿入は、検出されなかった。これは、上記の方法を使用することで、ランダム挿入がなく安定に継代可能である遺伝子組換えMHC遺伝子ヒト化マウスを作製できることを示す。
【0343】
F1世代における陽性として同定されたヘテロ接合性マウスを互いに繁殖させることで、F2世代のMHCヒト化ホモ接合性マウス(H/H)を得ることができる。
【0344】
陽性マウスにおけるヒトB2Mタンパク質及びHLA-A2.1タンパク質の発現をELISAにより確認した。具体的には、本明細書に記載の方法により調製した野生型C57BL/6雌マウス(6週齢)1匹及びMHCヒト化ホモ接合性雌マウス(6週齢)1匹を選択し、各マウスに7.5μg(体積:200μl)の抗マウスCD3抗体を腹腔内注射した。24時間後、マウスを屠殺し、次に脾臓細胞を収集した。抗マウスB2M抗体mβ2M PE、抗マウスH-2Kb/H-2Db抗体、抗ヒトB2M抗体hβ2M PE又は抗ヒトHLA-A2抗体hHLA-A2 PEを抗マウスCD45抗体mCD45 APCと一緒に脾臓細胞染色に使用した。染色した細胞をフローサイトメトリー分析にかけた結果を図14A~14Pに示す。細胞を抗マウスCD3抗体により刺激したか否かと無関係に、マウスB2M発現細胞のみがC57BL/6マウスにおいて検出され(図14A及び14C)、ヒト又はヒト化B2M発現細胞はC57BL/6マウスにおいて検出されなかった(図14E及び14G)。ヒトB2Mを発現する細胞(図14F及び14H)及びHLA-A2.1を発現する細胞(図14N及び14P)は、MHCヒト化ホモ接合性マウスに限り検出された。しかし、マウスB2Mを発現する細胞は、MHCヒト化ホモ接合性マウスにおいて検出されなかった(図14B及び14D)。さらに、マウスH2-D1コード配列がノックアウトされなかったことから、マウスH2-D1を発現する少数の細胞がMHCヒト化ホモ接合性マウスにおいて検出された(図14G及び14L)。
【0345】
F2世代のMHCヒト化ホモ接合性マウスにおけるB細胞及びT細胞の分化が野生型マウスの場合に一致したか否かを確認するため、マウスリンパ球サブセットをフローサイトメトリーにより分析した。具体的には、野生型C57BL/6雄マウス(16週齢)1匹及びMHCヒト化ホモ接合性雄マウス(13週齢)1匹をそれぞれ選択した。脾臓細胞を収集し、抗マウスCD45抗体mCD45 APCを細胞染色及びフローサイトメトリー検出に使用した。図15A~15Bに示すとおり、野生型C57BL/6マウス及びMHCヒト化ホモ接合性マウスにおける白血球の比は、それぞれ88.6%及び96.5%であった。その後、マウスT細胞表面抗体mTCRB-APC-Cy7及び抗マウスCD19抗体mCD19-PEを使用し、T細胞及びB細胞を各々染色し、フローサイトメトリー分析にかけた。結果は、野生型C57BL/6マウスにおけるT細胞及びB細胞がそれぞれ23.8%及び61.4%である(図15C)一方、ヒト化MHCホモ接合性マウスにおけるT細胞及びB細胞がそれぞれ27.7%及び61.8%である(図15D)ことを示した。さらに、抗マウスCD4抗体mCD4-BV421及び抗マウスmCD8a抗体mCD8a-BV711を細胞染色に使用し、染色した細胞をフローサイトメトリー分析にかけた。図15E~15Fに示すとおり、野生型C57BL/6マウス及びMHCヒト化ホモ接合性マウスにおけるCD4+T細胞及びCD8+T細胞の比は、同等であった。
【0346】
要するに、上記の結果は、MHCヒト化マウスにおけるリンパ球サブセットの発現が野生型C57BL/6マウスの場合に類似することを示した。さらに、結果は、MHCヒト化マウスにおけるT細胞及びB細胞の分化がB2M及びHLA-A2.1遺伝子のヒト化による影響を受けないことを示した。
【0347】
Cas9の切断がDNA二本鎖破壊をもたらし、且つ相同組換え修復が挿入/欠失突然変異をもたらす場合があることから、本明細書に記載の方法を用いてB2M遺伝子ノックアウトマウスを得ることが可能である。プライマー対は、遺伝子ノックアウトマウスを検出するように設計した。野生型マウスは、PCRバンドを有しない必要があり、ノックアウトマウスは、約682bpで1つのPCRバンドを有する必要がある。図16に示すとおり、1~10に付番したマウスは、B2M遺伝子ノックアウトマウスとして同定された。一方のPCRプライマーが5’標的化部位の左側に位置し、他方のPCRプライマーが3’標的化部位の右側に位置した。プライマーを以下に示す:
配列番号49:5’-GAATAAATGAAGGCGGTCCCAGGCT-3’
配列番号50:5’-AGGTGAGTTCTGGCTCCACCATTTG-3’。
【0348】
実施例2.重症免疫不全を有するMHCヒト化マウス
実施例1に記載のヒト化方法に加えて、MHC分子のより高度なヒト化を伴うマウスも設計することができる。さらに、ヒト化MHC分子を有する免疫不全マウスは、免疫系疾患、例えば糖尿病及び移植拒絶の病態形成機序並びに医薬品開発の研究にとって有効な実験動物モデルを提供するように設計することができる。本実施例では、B-NDGバックグラウンドマウスを使用し、MHC分子のより高度なヒト化を実施した。具体的には、遺伝子編集技術を使用し、B-NDGマウスを修飾した。内因性マウスB2M遺伝子座をヒトB2Mタンパク質及びHLA-A2.1タンパク質をコードする配列にノックインし、さらにマウスB2M遺伝子コード領域を破壊した。作製されたヒト化マウスは、ヒトB2Mタンパク質及びヒトHLA-A2.1タンパク質を有するヒト化MHC分子をインビボで発現し得る。ヒト化マウスは、内因性B2Mタンパク質を発現しなかった。さらに、ヒトHLA-A2.1タンパク質の正確な発現を保証するため、ヒトHLA-A2.1タンパク質のシグナルペプチドをコードする配列をヒトB2Mコード領域の前に挿入した。ヒト化マウスB2M遺伝子座の概略図を図17に示す。ヒト化B2M及びHLA-A2.1遺伝子から転写されたmRNA配列を配列番号52で示す。トランスジェニックマウスによって発現されたタンパク質を配列番号62で示す。しかし、フレキシブルリンカーポリペプチド配列の存在に起因して、タンパク質は、ヒトB2Mタンパク質及びヒトHLA-A2.1タンパク質の機能ドメインを有し得る。
【0349】
ヒトB2M遺伝子が複数のアイソフォーム又は転写物を有すると仮定すると、本明細書に記載の方法は、他のアイソフォーム又は転写物に適用可能である。
【0350】
さらに、標的化方法の概略図を図18に示す。標的化ベクターは、5’相同性アーム(配列番号60)がNCBI参照番号NC_000068.7の核酸122146329~122147737と99%の相同性を有し、122147015位(GからT)、122147108位(CからT)及び122147591位(CからT)で突然変異を有し;3’相同性アーム(配列番号53)がNCBI参照番号NC_000068.7の核酸122152171~122153513と99%の相同性を有し、122152258位(GからA)、122152391位(GからA)、122152771位(AからG)、122153104位(TからC)及び122153148位(AからC)で突然変異;及び122152788位で欠失(Aの欠失)を有することを除き、実施例1で使用した標的化ベクターと類似し;且つBNDG-A断片(配列番号65)は、実施例1における「A断片」と類似するが、全長ヒトHLA-A2.1タンパク質をコードする配列を有する。全長ヒトHLA-A2.1タンパク質をコードする配列(配列番号54)は、GenBank参照配列AF055066.1の核酸95493~99436に同一である。BNDG-A断片は、マウスH2-D1タンパク質をコードする配列を全く有しない。
【0351】
標的化ベクターは、例えば、制限酵素消化/ライゲーション又は遺伝子合成により構築した。構築された標的化ベクター配列は、制限酵素消化により予備的に検証し、次に配列決定により検証した。検証された標的化ベクターを後続の実験(例えば、マイクロインジェクション)に使用した。使用したsgRNAは、実施例1で使用したsgRNAと同じであった。
【0352】
具体的には、pT7-B2M-HLA-A2.1-3及びpT7-B2M-HLA-A2.1-14プラスミドの予備混合したCas9 mRNA、標的化ベクター、インビトロ転写産物を、(製品使用説明書に提供される方法に従い、転写を実施するためのAmbionインビトロ転写キットを使用して)B-NDGマウス受精卵の細胞質又は核にマイクロインジェクション装置により注射した。胚マイクロインジェクションは、例えば、A.Nagy,et al.,“Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual(Third Edition),”Cold Spring Harbor Laboratory Press,2003に記載の方法に従って実施した。次に、注射した受精卵を短時間培養するための培地に移し、次にレシピエントマウスの輸卵管に移植し、遺伝子組換えマウス(F0世代)を作製した。マウス集団を交雑及び自己繁殖によりさらに拡大し、ヒトB2M及びHLA-A2.1遺伝子を有する安定なB-NDGバックグラウンドマウス系統を確立した。
【0353】
実験を実施し、B-NDGバックグラウンドを有するF0世代マウスの体細胞遺伝子型を同定した。例えば、F0世代マウスのマウステールゲノムDNAを使用し、PCR分析を実施した。F0マウスの一部についてのPCR分析結果を図19A~19Bに示す。5’末端プライマー検出結果及び3’末端プライマー検出結果を踏まえて、BNDG-F0-01からBNDG-F0-06にかけて付番したマウス6匹の全てが陽性マウスであった。
【0354】
以下のプライマーをPCRに使用した:
5’末端プライマー:
L-GT-F(配列番号41):5’-GAATGTGTGCCTCCTCTCAGTTTCC-3’
BNDG-L-GT-R(配列番号55):5’-CAGCTCCAAAGAGAACCAGGCCAG-3’
3’末端プライマー:
BNDG-R-GT-F(配列番号56):5’-TACCCTGCGGAGATCACACTGACC-3’
R-GT-R(配列番号44):5’-TCCAGCAATAAGAACCAGTCCCTAGCT-3’。
【0355】
陽性F0世代のMHCヒト化マウスを野生型マウスとともに繁殖させ、F1世代マウスを作製した。F1世代マウスの遺伝子型同定のため、同じ方法(例えば、PCR)を使用した。図20A~20Bに示すとおり、BNDG-F1-01及びBNDG-F1-02に付番したマウス2匹が陽性マウスと同定された。陽性F1世代マウス2匹をサザンブロットによりさらに分析し、ランダム挿入が導入されるか否か確認した。具体的には、マウステールゲノムDNAを抽出し、EcoNI又はSspI制限酵素で消化し、膜に移し、次にプローブとハイブリダイズした。プローブBNDG-P1及びBNDG-P2は、5’相同性アームの上流領域及び3’相同性アームにそれぞれ位置する。サザンブロットアッセイで使用したプローブを下表に列記する。
【0356】
【表8】
【0357】
プローブは、以下のプライマー:
BNDG-P1-F(配列番号57):5’-TTCTGATGCTCCTTCCTTCCGTGC-3’
BNDG-P1-R(配列番号58):5’-TTCTCTGTGCTCAGTGTTCCCTGC-3’
BNDG-P2-F(配列番号47):5’-TAACTTCATGTAAGGCACCGTCAC-3’
BNDG-P2-R(配列番号48):5’-TCCAGACCTCACCATCAAATGAG-3’
を使用して合成した。
【0358】
サザンブロットの検出結果を図21に示す。BNDG-P1及びBNDG-P2プローブによるハイブリダイゼーション結果を踏まえて、BNDG-F1-01及びBNDG-F1-02に付番したF1世代マウス2匹が陽性ヘテロ接合体であることを確認し、ランダム挿入は検出されなかった。これは、上記の方法を使用し、ランダム挿入がなく安定に継代され得る、B-NDGバックグラウンドを有する遺伝子組換えMHC遺伝子ヒト化マウスを作製できることを示す。
【0359】
(B-NDGバックグラウンドを有する)陽性マウスにおけるヒトB2Mタンパク質及びHLA-A2.1タンパク質の発現をフローサイトメトリーにより確認した。具体的には、本明細書に記載の方法により調製したB-NDG雌マウス(6週齢)1匹及びMHCヒト化ヘテロ接合性雌マウス(6週齢)1匹を屠殺し、次に脾臓細胞を収集した。抗マウスB2M抗体mβ2M PE、抗マウスH-2Kb/H-2Db抗体、抗ヒトB2M抗体hβ2M PE又は抗ヒトHLA-A2抗体hHLA-A2 PEを、抗マウスCD45抗体mCD45 APCと一緒に、脾臓細胞染色に使用した。染色した細胞をフローサイトメトリー分析にかけた結果を図22A~22Hに示す。結果は、B-NDGマウス及びB-NDGバックグラウンドMHCヒト化ヘテロ接合性マウスにおいて、マウスB2Mを発現する細胞(図22A及び22B)及びマウスH2-D1を発現する細胞(図22E及び22F)が検出されることを示した。しかし、ヒトB2Mタンパク質を発現する細胞(図22D)及びヒトHLA-A2タンパク質を発現する細胞(図22H)は、B-NDGバックグラウンドを有するヒト化MHCマウスに限って検出された。ヒトB2Mタンパク質を発現する細胞(図22C)及びヒトHLA-A2タンパク質を発現する細胞(図22G)は、B-NDGマウスにおいて検出されなかった。
【0360】
実施例3.胚性幹細胞に基づく方法
非ヒト哺乳類は、限定はされないが、胚性幹細胞(ES)に基づく遺伝子相同組換え技術、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)技術、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)技術、ホーミングエンドヌクレアーゼ(megakable塩基リボザイム)又は他の分子生物学技術を含む、他の遺伝子編集システム及び手法を通しても調製することができる。本実施例において、通常のES細胞の遺伝子相同組換え技術は、他の方法によりMHCヒト化マウスをどのように得るかを説明するための例として使用する。
【0361】
本明細書に記載の方法の遺伝子編集方法及びMHCヒト化マウスにおける修飾されたB2M遺伝子座(図8~9)によると、標的化方法は、異なる標的化ベクターを用いて設計することができる。目的の1つが、マウスB2M遺伝子コード領域のコード領域を破壊することと、ヒトB2Mタンパク質、ヒトHLA-A2.1タンパク質の一部及びマウスH2-D1タンパク質の一部をコードする核酸配列をマウスB2M遺伝子座にノックインすることという事実を踏まえて、5’相同性アーム、3’相同性アーム及びヒト化遺伝子断片を有する標的化ベクターを設計する。ベクターは、陽性クローンのスクリーニングのための耐性遺伝子、例えばネオマイシンホスホトランスフェラーゼコード配列Neoも有し得る。耐性遺伝子の両側に、同じ方向性の2つの部位特異的組換え系、例えばFrt又はLoxPを付加することができる。さらに、陰性スクリーニングマーカーを有するコード遺伝子、例えばジフテリア毒素Aサブユニットコード遺伝子(DTA)を組換えベクター3’相同性アームの下流に構築することができる。ベクター構築は、当技術分野で公知の方法、例えば制限酵素消化及びライゲーションを用いて実施することができる。次に、正確な配列を有する組換えベクターをマウス胚性幹細胞にトランスフェクトし、次に組換えベクターを陽性クローンのスクリーニング遺伝子によりスクリーニングすることができる。次に、組換えベクターをトランスフェクトした細胞を陽性クローンのマーカー遺伝子の使用によりスクリーニングし、DNA組換えの同定にサザンブロットを使用することができる。選択された正確な陽性クローンの場合、陽性クローン細胞(黒色マウス)を単離した胚盤胞(白色マウス)に、書籍A.Nagy,et al.,“Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual(Third Edition),”Cold Spring Harbor Laboratory Press,2003に記載の方法に従い、マイクロインジェクションにより注射する。注射後に形成され、得られたキメラ胚盤胞を短時間培養のための培地に移し、次にレシピエントマウス(白色マウス)の卵管に移植し、F0世代キメラマウス(黒色及び白色)を作製する。次に、正確な遺伝子組換えを有するF0世代キメラマウスを、マウステールゲノムDNAを抽出することにより選択し、その後の繁殖及び同定のため、PCR分析する。F0世代キメラマウスを野生型マウスと交配することにより、F1世代マウスを得る。テールゲノムDNAの抽出及びPCR分析により、安定に継代され得る陽性F1世代ヘテロ接合性マウスを選択する。次に、F1ヘテロ接合性マウスを互いに繁殖させ、遺伝子組換え陽性F2世代ホモ接合性マウスを得る。さらに、F1ヘテロ接合性マウスをFlp又はCreマウスと繁殖させ、陽性クローンのスクリーニングマーカー遺伝子(Neoなど)を除去することもでき、次にこれらのマウスを互いに繁殖させることにより、ヒト化ホモ接合性マウスを得ることができる。得られたF1ヘテロ接合性マウス又はF2ホモ接合性マウスの遺伝子型を同定し、表現型を検出する方法は、上記の実施例で使用された方法に類似する。
【0362】
他の実施形態
本発明がその詳細な説明と併せて説明されている一方、前述の説明は、貼付の請求項の範囲によって定義される本発明の範囲を例示し、限定しないことが意図されることが理解されるべきである。他の態様、利点及び修飾は、以下の請求項の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A-10B】
図11A-11B】
図12A-12B】
図13
図14A-14H】
図14I-14P】
図15A-15F】
図16
図17
図18
図19A-19B】
図20A-20B】
図21
図22A-22D】
図22E-22H】
図23
図24
図25
図26
【配列表】
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