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特許7600248自律型搬送車の走行制御方法、自律型搬送車および搬送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】自律型搬送車の走行制御方法、自律型搬送車および搬送システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20241209BHJP
【FI】
G05D1/43
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022546833
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2020033689
(87)【国際公開番号】W WO2022049743
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】水井 健太
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-139549(JP,A)
【文献】実開昭49-29246(JP,U)
【文献】特開2002-122458(JP,A)
【文献】特開2016-217144(JP,A)
【文献】特許第6362418(JP,B2)
【文献】特開2020-67702(JP,A)
【文献】特開2020-118586(JP,A)
【文献】特開平8-40037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車をけん引して自律走行する自律型搬送車の走行制御方法であって、
前記台車の状態を取得するステップと、
前記台車の状態に基づいて、搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢を検出するステップと、
前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢に基づいて、前記搬送車本体の走行速度を制御するステップと、を備え、
前記搬送車本体または前記台車は、前記搬送車本体と前記台車とを連結する連結部を含み、
前記搬送車本体は、前記連結部を駆動する駆動部を含み、
前記搬送車本体による前記台車のけん引時に、前記駆動部により前記連結部を駆動することにより、慣性による前記台車の動きを打ち消すように、水平面内における前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢を制御するステップをさらに備える、自律型搬送車の走行制御方法。
【請求項2】
前記台車の状態を取得するステップは、前記台車の特徴点の状態を取得するステップを含み、
前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢を検出するステップは、前記台車の特徴点の状態に基づいて、前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢を検出するステップを含む、請求項1に記載の自律型搬送車の走行制御方法。
【請求項3】
前記台車の特徴点は、前記台車に設けられたマーカを含む、請求項2に記載の自律型搬送車の走行制御方法。
【請求項4】
前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢は、前記搬送車本体に対する前記台車の傾斜角度の情報を含み、
前記搬送車本体の走行速度を制御するステップは、前記搬送車本体に対する前記台車の傾斜角度の情報に基づいて、前記搬送車本体の走行速度を制御するステップを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の自律型搬送車の走行制御方法。
【請求項5】
前記搬送車本体の走行速度を制御するステップは、水平面内における前記搬送車本体に対する前記台車の傾斜角度の情報に基づいて、前記搬送車本体が減速するように、前記搬送車本体の走行速度を制御するステップを含む、請求項4に記載の自律型搬送車の走行制御方法。
【請求項6】
前記搬送車本体の走行速度を制御するステップは、鉛直面内における前記搬送車本体に対する前記台車の傾斜角度の情報に基づいて、前記搬送車本体が停止するように、前記搬送車本体の走行速度を制御するステップを含む、請求項4または5に記載の自律型搬送車の走行制御方法。
【請求項7】
鉛直面内における前記搬送車本体の傾斜角度の情報を取得するステップをさらに備え、
前記搬送車本体の走行速度を制御するステップは、鉛直面内における前記搬送車本体に対する前記台車の傾斜角度の情報と、鉛直面内における前記搬送車本体の傾斜角度の情報とに基づいて、前記搬送車本体が停止するように、前記搬送車本体の走行速度を制御するステップを含む、請求項6に記載の自律型搬送車の走行制御方法。
【請求項8】
前記搬送車本体の走行速度を制御するステップは、前記台車の形状、前記台車の重量、および、前記台車の重心位置のうちの少なくとも1つを考慮して、前記搬送車本体の走行速度を制御するステップを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の自律型搬送車の走行制御方法。
【請求項9】
水平面内における前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢を制御するステップは、前記搬送車本体の旋回時に、前記駆動部により前記連結部を駆動することにより、慣性による前記台車の動きを打ち消すように、水平面内における前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢を制御するステップを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の自律型搬送車の走行制御方法。
【請求項10】
前記搬送車本体は、前記連結部の移動を制限するストッパをさらに含み、
水平面内における前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢を制御するステップは、前記ストッパにより制限された角度範囲内において、前記駆動部により前記連結部を駆動することにより、水平面内における前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢を制御するステップを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の自律型搬送車の走行制御方法。
【請求項11】
前記搬送車本体の走行速度を制御するステップは、
前記搬送車本体の走行速度の制御による、前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢の補正に要した補正時間を取得するステップと、
前記補正時間と基準補正時間との比較に基づいて、走行の異常を検出するステップと、を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の自律型搬送車の走行制御方法。
【請求項12】
前記搬送車本体の走行速度を制御するステップは、前記補正時間に基づいて、前記基準補正時間を学習するステップをさらに含む、請求項11に記載の自律型搬送車の走行制御方法。
【請求項13】
前記基準補正時間を学習するステップは、前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢、前記搬送車本体の走行速度、前記台車の重量、または、前記搬送車本体の進行方向ごとに、前記基準補正時間を学習するステップを含む、請求項12に記載の自律型搬送車の走行制御方法。
【請求項14】
前記台車の状態に基づいて、前記搬送車本体と前記台車との連結時に、前記搬送車本体を前記台車との連結位置に移動させるステップをさらに備える、請求項1~13のいずれか1項に記載の自律型搬送車の走行制御方法。
【請求項15】
台車をけん引して自律走行する自律型搬送車であって、
前記台車の状態を取得する状態取得部と、
前記状態取得部により取得された前記台車の状態に基づいて、搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢を検出するとともに、前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢に基づいて、前記搬送車本体の走行速度を制御する制御部と、を備え、
前記搬送車本体または前記台車は、前記搬送車本体と前記台車とを連結する連結部を含み、
前記搬送車本体は、前記連結部を駆動する駆動部を含み、
前記制御部は、前記搬送車本体による前記台車のけん引時に、前記駆動部により前記連結部を駆動することにより、慣性による前記台車の動きを打ち消すように、水平面内における前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢を制御する、自律型搬送車。
【請求項16】
前記状態取得部は、前記台車の特徴点の状態を取得するように構成されており、
前記制御部は、前記状態取得部により取得された前記台車の特徴点の状態に基づいて、前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢を検出するように構成されている、請求項15に記載の自律型搬送車。
【請求項17】
台車と、
前記台車をけん引して自律走行する自律型搬送車と、
前記自律型搬送車に指令を送信する制御装置と、を備え、
前記自律型搬送車は、
前記台車の状態を取得する状態取得部と、
前記状態取得部により取得された前記台車の状態に基づいて、搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢を検出するとともに、前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢に基づいて、前記搬送車本体の走行速度を制御する搬送車制御部と、を含み、
前記搬送車本体または前記台車は、前記搬送車本体と前記台車とを連結する連結部を含み、
前記搬送車本体は、前記連結部を駆動する駆動部を含み、
前記搬送車制御部は、前記搬送車本体による前記台車のけん引時に、前記駆動部により前記連結部を駆動することにより、慣性による前記台車の動きを打ち消すように、水平面内における前記搬送車本体に対する前記台車の相対姿勢を制御する、搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自律型搬送車の走行制御方法、自律型搬送車および搬送システムに関し、特に、台車をけん引して自律走行する自律型搬送車の走行制御方法、自律型搬送車およびその搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台車をけん引して自律走行する自律型搬送車が知られている。このような方法は、たとえば、特許第6362418号公報に開示されている。
【0003】
上記特許第6362418号公報には、台車をけん引して自律走行する自律型搬送車が開示されている。この自律型搬送車は、曲がり角などの屈曲箇所を走行する際、台車の切り離しと、台車との再連結とを行うことにより、曲がり角などの屈曲箇所の走行を効率的に行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6362418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許第6362418号公報に記載された自律型搬送車では、曲がり角などの屈曲箇所で、台車の切り離しと、台車との再連結とを行うため、屈曲箇所の移動に時間がかかり、製造工場などで使用する場合には、生産性が低下するという不都合がある。そこで、自律型搬送車と台車とを切り離さずに自律型搬送車により台車をけん引した状態で、屈曲箇所を走行することが考えられる。
【0006】
しかしながら、この場合には、台車の非けん引時と同様の高い走行速度で、台車をけん引した状態の自律型搬送車が屈曲個所を走行すると、屈曲箇所で台車が大きく振れて、台車が転倒する可能性がある。そこで、自律型搬送車による台車のけん引時には、自律型搬送車の走行速度を一律に低下させることが考えられる。
【0007】
しかしながら、この場合には、屈曲個所での台車の転倒を抑制することができる一方、自律型搬送車の走行速度の低下に起因して生産性が低下する。このため、自律型搬送車(搬送車本体)による台車のけん引時に、屈曲個所での台車の転倒を抑制しつつ、生産性を高めることが困難であるという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、搬送車本体による台車のけん引時に、屈曲個所での台車の転倒を抑制しつつ、生産性を高めることが可能な自律型搬送車の走行制御方法、自律型搬送車および搬送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の第1の局面による自律型搬送車の走行制御方法は、台車をけん引して自律走行する自律型搬送車の走行制御方法であって、台車の状態を取得するステップと、台車の状態に基づいて、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を検出するステップと、搬送車本体に対する台車の相対姿勢に基づいて、搬送車本体の走行速度を制御するステップと、を備え、搬送車本体または台車は、搬送車本体と台車とを連結する連結部を含み、搬送車本体は、連結部を駆動する駆動部を含み、搬送車本体による台車のけん引時に、駆動部により連結部を駆動することにより、慣性による台車の動きを打ち消すように、水平面内における搬送車本体に対する台車の相対姿勢を制御するステップをさらに備える。
【0010】
この発明の第1の局面による自律型搬送車の走行制御方法では、上記のように、台車の状態に基づいて、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を検出するステップと、搬送車本体に対する台車の相対姿勢に基づいて、搬送車本体の走行速度を制御するステップと、を設ける。これにより、曲がり角などの屈曲箇所の移動時に搬送車本体に対する台車の相対姿勢の変化が発生した場合に、搬送車本体に対する台車の相対姿勢の変化に応じて、搬送車本体の走行速度を適切に変化させることができる。その結果、搬送車本体による台車のけん引時に搬送車本体の走行速度を一律に低下させる場合と異なり、不必要な走行速度の低下が発生しない。これにより、搬送車本体による台車のけん引時に、屈曲個所での台車の転倒を抑制しつつ、生産性を高めることができる。また、搬送車本体による台車のけん引時に台車の姿勢に異常が発生した場合に、搬送車本体の走行速度を適切に変化させることもできる。これによっても、搬送車本体による台車のけん引時の台車の転倒を抑制することができる。
また、上記第1の局面による自律型搬送車の走行制御方法において、搬送車本体または台車は、搬送車本体と台車とを連結する連結部を含み、搬送車本体は、連結部を駆動する駆動部を含み、搬送車本体による台車のけん引時に、駆動部により連結部を駆動することにより、水平面内における搬送車本体に対する台車の相対姿勢を制御するステップをさらに備える。このように構成すれば、水平面内における搬送車本体に対する台車の相対姿勢を制御しつつ、搬送車本体を走行させることができる。その結果、水平面内における搬送車本体に対する台車の相対姿勢を制御できない場合に比べて、搬送車本体の走行の安定性を高めることができる。
【0011】
上記第1の局面による自律型搬送車の走行制御方法において、好ましくは、台車の状態を取得するステップは、台車の特徴点の状態を取得するステップを含み、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を検出するステップは、台車の特徴点の状態に基づいて、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を検出するステップを含む。このように構成すれば、単に台車の特徴点の状態を取得するだけで、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を簡単に検出することができる。また、台車に姿勢を検出するセンサなどを設ける必要がないので、台車を簡易な構造にしながら台車の相対姿勢を検出することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、台車の特徴点は、台車に設けられたマーカを含む。このように構成すれば、台車の角部などの形状を特徴点として利用する場合と異なり、専用のマーカを利用して、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を検出することができる。その結果、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を精度よく検出することができる。
【0013】
上記第1の局面による自律型搬送車の走行制御方法において、好ましくは、搬送車本体に対する台車の相対姿勢は、搬送車本体に対する台車の傾斜角度の情報を含み、搬送車本体の走行速度を制御するステップは、搬送車本体に対する台車の傾斜角度の情報に基づいて、搬送車本体の走行速度を制御するステップを含む。このように構成すれば、搬送車本体に対する台車の傾斜角度の情報に基づいて、搬送車本体の走行速度を精度よく制御することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、搬送車本体の走行速度を制御するステップは、水平面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度の情報に基づいて、搬送車本体が減速するように、搬送車本体の走行速度を制御するステップを含む。このように構成すれば、曲がり角などの屈曲箇所の移動時に、水平面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度に変化が発生した場合に、水平面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度の変化に応じて、搬送車本体の走行速度を適切に減速させることができる。その結果、屈曲箇所の移動時に、搬送車本体の走行速度を精度よく制御することができる。
【0015】
上記搬送車本体に対する台車の相対姿勢が搬送車本体に対する台車の傾斜角度の情報を含む構成において、好ましくは、搬送車本体の走行速度を制御するステップは、鉛直面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度の情報に基づいて、搬送車本体が停止するように、搬送車本体の走行速度を制御するステップを含む。このように構成すれば、たとえば台車の車輪の異常に起因して台車の姿勢に異常が発生し、鉛直面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度に変化が発生した場合に、搬送車本体を停止させることができる。これにより、搬送車本体による台車のけん引時の台車の転倒を抑制することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、鉛直面内における搬送車本体の傾斜角度の情報を取得するステップをさらに備え、搬送車本体の走行速度を制御するステップは、鉛直面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度の情報と、鉛直面内における搬送車本体の傾斜角度の情報とに基づいて、搬送車本体が停止するように、搬送車本体の走行速度を制御するステップを含む。このように構成すれば、鉛直面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度だけでなく、鉛直面内における搬送車本体の傾斜角度にも基づいて、搬送車本体を停止する制御を行うことができる。その結果、搬送車本体を停止する制御を精度よく行うことができる。
【0017】
上記第1の局面による自律型搬送車の走行制御方法において、好ましくは、搬送車本体の走行速度を制御するステップは、台車の形状、台車の重量、および、台車の重心位置のうちの少なくとも1つを考慮して、搬送車本体の走行速度を制御するステップを含む。このように構成すれば、台車の種類によって異なる台車の形状、台車の重量、および、台車の重心位置のうちの少なくとも1つを考慮して、搬送車本体の走行速度を制御することができる。その結果、台車の種類に応じて、搬送車本体の走行速度を適切に制御することができる。
【0019】
上記第1の局面による自律型搬送車の走行制御方法において、好ましくは、水平面内における搬送車本体に対する台車の相対姿勢を制御するステップは、搬送車本体の旋回時に、駆動部により連結部を駆動することにより、慣性による台車の動きを打ち消すように、水平面内における搬送車本体に対する台車の相対姿勢を制御するステップを含む。このように構成すれば、搬送車本体の旋回時に、慣性により台車が振られるように動くことを抑制することができる。その結果、搬送車本体の旋回時に、台車をコンパクトに動かすことができる。これにより、狭い屈曲箇所での旋回および折り返しなどの走行動作を容易に行うことができる。
【0020】
上記第1の局面による自律型搬送車の走行制御方法において、好ましくは、搬送車本体は、連結部の移動を制限するストッパをさらに含み、水平面内における搬送車本体に対する台車の相対姿勢を制御するステップは、ストッパにより制限された角度範囲内において、駆動部により連結部を駆動することにより、水平面内における搬送車本体に対する台車の相対姿勢を制御するステップを含む。このように構成すれば、駆動部による連結部の駆動時に、ストッパに接触しないように、連結部を駆動することができる。その結果、駆動部による連結部の駆動時に、連結部とストッパとが接触することに起因して、連結部とストッパとの両方に負荷がかかることを抑制することができる。また、ストッパを設けることにより、連結部の移動を制限することができる。その結果、連結部の移動を制限することにより、台車の移動を所定の範囲に制限することができる。
【0021】
上記第1の局面による自律型搬送車の走行制御方法において、好ましくは、搬送車本体の走行速度を制御するステップは、搬送車本体の走行速度の制御による、搬送車本体に対する台車の相対姿勢の補正に要した補正時間を取得するステップと、補正時間と基準補正時間との比較に基づいて、走行の異常を検出するステップと、を含む。このように構成すれば、床面の異常および台車の車輪の異常などの異常に起因した走行の異常を検出することができる。その結果、走行の異常を検出した場合、走行の異常を迅速に解消することができる。
【0022】
この場合、好ましくは、搬送車本体の走行速度を制御するステップは、補正時間に基づいて、基準補正時間を学習するステップをさらに含む。このように構成すれば、学習により基準補正時間を更新することができる。その結果、更新した基準補正時間により、走行の異常をより精度よく検出することができる。
【0023】
上記基準補正時間を学習する構成において、好ましくは、基準補正時間を学習するステップは、搬送車本体に対する台車の相対姿勢、搬送車本体の走行速度、台車の重量、または、搬送車本体の進行方向ごとに、基準補正時間を学習するステップを含む。このように構成すれば、場合分けして基準補正時間を学習することができる。その結果、場合分けした基準補正時間により、個々の場合に応じて、走行の異常をより一層精度よく検出することができる。
【0024】
上記第1の局面による自律型搬送車の走行制御方法において、好ましくは、台車の状態に基づいて、搬送車本体と台車との連結時に、搬送車本体を台車との連結位置に移動させるステップをさらに備える。このように構成すれば、搬送車本体と台車とを自動連結することができる。その結果、搬送車本体と台車との連結から、搬送車本体による台車のけん引走行までを自動化することができる。
【0025】
この発明の第2の局面による自律型搬送車は、台車をけん引して自律走行する自律型搬送車であって、台車の状態を取得する状態取得部と、状態取得部により取得された台車の状態に基づいて、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を検出するとともに、搬送車本体に対する台車の相対姿勢に基づいて、搬送車本体の走行速度を制御する制御部と、を備え、搬送車本体または台車は、搬送車本体と台車とを連結する連結部を含み、搬送車本体は、連結部を駆動する駆動部を含み、制御部は、搬送車本体による台車のけん引時に、駆動部により連結部を駆動することにより、慣性による台車の動きを打ち消すように、水平面内における搬送車本体に対する台車の相対姿勢を制御する。
【0026】
この発明の第2の局面による自律型搬送車では、上記のように、状態取得部により取得された台車の状態に基づいて、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を検出するとともに、搬送車本体に対する台車の相対姿勢に基づいて、搬送車本体の走行速度を制御する制御部を設ける。これにより、曲がり角などの屈曲箇所の移動時に搬送車本体に対する台車の相対姿勢の変化が発生した場合に、搬送車本体に対する台車の相対姿勢の変化に応じて、搬送車本体の走行速度を適切に変化させることができる。その結果、搬送車本体による台車のけん引時に搬送車本体の走行速度を一律に低下させる場合と異なり、不必要な走行速度の低下が発生しない。これにより、搬送車本体による台車のけん引時に、屈曲個所での台車の転倒を抑制しつつ、生産性を高めることが可能な自律型搬送車を提供することができる。また、搬送車本体による台車のけん引時に台車の姿勢に異常が発生した場合に、台車の姿勢の異常に起因した搬送車本体に対する台車の相対姿勢の変化に応じて、搬送車本体の走行速度を適切に変化させることもできる。これによっても、搬送車本体による台車のけん引時の台車の転倒を抑制することができる。
【0027】
上記第2の局面による自律型搬送車において、好ましくは、状態取得部は、台車の特徴点の状態を取得するように構成されており、制御部は、状態取得部により取得された台車の特徴点の状態に基づいて、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を検出するように構成されている。このように構成すれば、単に台車の特徴点の状態を取得するだけで、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を簡単に検出することができる。また、台車に姿勢を検出するセンサなどを設ける必要がないので、台車を簡易な構造にしながら台車の相対姿勢を検出することができる。
【0028】
この発明の第3の局面による搬送システムは、台車と、台車をけん引して自律走行する自律型搬送車と、自律型搬送車に指令を送信する制御装置と、を備え、自律型搬送車は、台車の状態を取得する状態取得部と、状態取得部により取得された台車の状態に基づいて、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を検出するとともに、搬送車本体に対する台車の相対姿勢に基づいて、搬送車本体の走行速度を制御する搬送車制御部と、を含み、搬送車本体または台車は、搬送車本体と台車とを連結する連結部を含み、搬送車本体は、連結部を駆動する駆動部を含み、搬送車制御部は、搬送車本体による台車のけん引時に、駆動部により連結部を駆動することにより、慣性による台車の動きを打ち消すように、水平面内における搬送車本体に対する台車の相対姿勢を制御する。
【0029】
この発明の第3の局面による搬送システムでは、上記のように、状態取得部により取得された台車の状態に基づいて、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を検出するとともに、搬送車本体に対する台車の相対姿勢に基づいて、搬送車本体の走行速度を制御する搬送車制御部を設ける。これにより、曲がり角などの屈曲箇所の移動時に搬送車本体に対する台車の相対姿勢の変化が発生した場合に、搬送車本体に対する台車の相対姿勢の変化に応じて、搬送車本体の走行速度を適切に変化させることができる。その結果、搬送車本体による台車のけん引時に搬送車本体の走行速度を一律に低下させる場合と異なり、不必要な走行速度の低下が発生しない。これにより、搬送車本体による台車のけん引時に、屈曲個所での台車の転倒を抑制しつつ、生産性を高めることが可能な搬送システムを提供することができる。また、搬送車本体による台車のけん引時に台車の姿勢に異常が発生した場合に、台車の姿勢の異常に起因した搬送車本体に対する台車の相対姿勢の変化に応じて、搬送車本体の走行速度を適切に変化させることもできる。これによっても、搬送車本体による台車のけん引時の台車の転倒を抑制することができる。
【0030】
上記第3の局面による搬送システムにおいて、好ましくは、状態取得部は、台車の特徴点の状態を取得するように構成されており、搬送車制御部は、状態取得部により取得された台車の特徴点の状態に基づいて、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を検出するように構成されている。このように構成すれば、単に台車の特徴点の状態を取得するだけで、搬送車本体に対する台車の相対姿勢を簡単に検出することができる。また、台車に姿勢を検出するセンサなどを設ける必要がないので、台車を簡易な構造にしながら台車の相対姿勢を検出することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、上記のように、搬送車本体による台車のけん引時に、屈曲個所での台車の転倒を抑制しつつ、生産性を高めることが可能な自律型搬送車の走行制御方法、自律型搬送車および搬送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】一実施形態による搬送システムを示すブロック図である。
図2】一実施形態によるサーバを示すブロック図である。
図3】一実施形態による自律型搬送車を示すブロック図である。
図4】一実施形態による台車の特徴点の状態の取得を説明するための模式図である。
図5】一実施形態による台車の特徴点を示す模式図である。
図6】一実施形態による台車を真直ぐけん引している状態、台車を水平面内において傾いてけん引している状態、および、台車を円直面内において傾いてけん引している状態を説明するための模式図である。
図7】一実施形態による連結部の駆動制御を説明するための模式図である。
図8】一実施形態による走行速度制御時の補正時間を説明するための模式図である。
図9】一実施形態による走行速度制御時のエリアを説明するための模式図である。
図10】一実施形態による自律型搬送車の自動連結制御を説明するための図である。
図11】一実施形態による自律型搬送車の自動連結処理を説明するためのフローチャートである。
図12】一実施形態による自律型搬送車の速度制御処理を説明するためのフローチャートである。
図13図1の続きのフローチャートである。
図14】一実施形態による自律型搬送車の走行停止処理を説明するためのフローチャートである。
図15】一実施形態による自律型搬送車の連結部制御処理を説明するためのフローチャートである。
図16】一実施形態の変形例による台車の特徴点の状態の取得を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
(基板製造システムの構成)
図1を参照して、本発明の実施形態による搬送システム100の構成について説明する。
【0035】
本実施形態による搬送システム100は、製造工場において用いられるシステムである。搬送システム100が用いられる製造工場は、特に限られないが、たとえば、プリント基板に電子部品を実装することにより、基板を製造する基板製造工場であり得る。搬送システム100は、図1に示すように、サーバ10と、自律型搬送車20と、台車30と、を備えている。なお、図1では、自律型搬送車20と台車30とが1つずつ図示されているが、実際の製造工場においては、自律型搬送車20と台車30とは、複数ずつ設けられている。また、サーバ10は、請求の範囲の「制御装置」の一例である。
【0036】
(サーバの構成)
図1に示すように、サーバ10は、自律型搬送車20に指令を送信するように構成されている。サーバ10は、たとえば、パーソナルコンピュータにより構成されている。図2に示すように、サーバ10は、制御部11と、記憶部12と、表示部13と、操作部14と、通信部15と、を備えている。
【0037】
制御部11は、サーバ10の各部を制御する制御回路である。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを含んでいる。制御部11は、製造計画およびユーザの入力などに基づいて、自律型搬送車20に指令を送信する制御を行うように構成されている。記憶部12は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な記憶媒体を含み、各種の情報を記憶可能に構成されている。記憶部12には、製造計画の情報、自律型搬送車20の情報、および、台車30の情報などが記憶される。
【0038】
表示部13は、たとえば液晶表示部を含み、各種の情報を表示可能に構成されている。操作部14は、マウスおよびキーボードなどの入力部を含み、ユーザの入力操作を受付可能に構成されている。通信部15は、自律型搬送車20との間で情報を送受信可能に構成されている。通信部15は、無線通信するための無線通信部である。サーバ10は、ネットワークを介して、自律型搬送車20と通信可能に接続されている。
【0039】
(自律型搬送車の構成)
次に、自律型搬送車20の構成について説明する。
【0040】
自律型搬送車20は、台車30をけん引して自律走行するように構成されている。具体的には、自律型搬送車20は、台車30をけん引して自律走行することにより、製造工場において使用される物品を搬送するように構成されている。
【0041】
図3および図4に示すように、自律型搬送車20は、複数(4つ)の駆動輪20aと、複数(4つ)の駆動輪モータ20bと、駆動輪制御部20cと、連結部20dと、連結部モータ20eと、一対のストッパ20fとを備えている。また、自律型搬送車20は、制御部21と、撮像部22と、通信部23と、バッテリ24と、傾きセンサ25と、記憶部26とを備えている。これらの構成は、搬送車本体27に設けられている。なお、図3では、便宜上、複数(4つ)の駆動輪20aと、複数(4つ)の駆動輪モータ20bとを1つずつ図示している。また、制御部21は、請求の範囲の「搬送車制御部」の一例である。また、連結部モータ20eは、請求の範囲の「駆動部」の一例である。また、撮像部22は、請求の範囲の「状態取得部」の一例である。
【0042】
複数の駆動輪20aは、搬送車本体27を走行させるように構成されている。複数の駆動輪20aは、搬送車本体27を直進または旋回させることが可能なように構成されている。複数の駆動輪20aは、搬送車本体27の左右にそれぞれ2つずつ設けられている。複数の駆動輪モータ20bは、複数の駆動輪20aを駆動するように構成されている。複数の駆動輪モータ20bは、複数の駆動輪20aに対応するように設けられている。駆動輪制御部20cは、制御部21からの指令に基づいて、複数の駆動輪モータ20bを制御して、複数の駆動輪20aによる搬送車本体27の走行方向および走行速度を制御するように構成されている。
【0043】
連結部20dは、搬送車本体27と台車30とを連結する連結部材である。連結部20dは、搬送車本体27側の連結箇所を回転中心として、上下方向(Z方向)に延びる回転軸線C周りに回転可能に、搬送車本体27と台車30とを連結するように構成されている。連結部モータ20eは、連結部20dを駆動するように構成されている。連結部モータ20eは、制御部21からの指令に基づいて、回転軸線C周りに連結部20dを回転させるように構成されている。一対のストッパ20fは、連結部20dの移動を制限するように構成されている。一対のストッパ20fは、連結部20dの両側に設けられている。一対のストッパ20fは、連結部20dを挟んで、V字状に設けられている。
【0044】
制御部21は、自律型搬送車20の各部を制御するように構成されている。制御部21は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを含んでいる。制御部21は、駆動輪制御部20cを介して駆動輪モータ20bを制御して、自律型搬送車20の自律走行を制御するように構成されている。
【0045】
また、制御部21は、サーバ10からの指令に基づいて、自律型搬送車20を目的地まで自律走行させるように構成されている。たとえば、制御部21は、サーバ10からの指令に基づいて、台車30の待機位置まで自律型搬送車20を自律走行させる。また、たとえば、制御部21は、サーバ10からの指令に基づいて、台車30をけん引した状態で、搬送対象の物品が格納された倉庫まで自律型搬送車20を自律走行させる。また、たとえば、制御部21は、サーバ10からの指令に基づいて、搬送対象の物品を収容した台車30をけん引した状態で、物品の搬送位置まで自律型搬送車20を自律走行させる。
【0046】
撮像部22は、台車30の状態を取得するように構成されている。具体的には、撮像部22は、台車30の特徴点31の状態を取得するように構成されている。撮像部22は、台車30の特徴点31を撮像することにより、台車30の特徴点31の状態を撮像結果として取得するように構成されている。撮像部22は、カメラを含んでいる。撮像部22は、台車30の特徴点31を撮像可能な位置に設けられている。撮像部22は、搬送車本体27の台車30側の部分に設けられている。
【0047】
通信部23は、サーバ10との間で情報を送受信可能に構成されている。通信部23は、無線通信するための無線通信部である。自律型搬送車20は、ネットワークを介して、サーバ10と通信可能に接続されている。バッテリ24は、自律型搬送車20の各部に電力を供給するように構成されている。バッテリ24は、充電可能な電池を含んでいる。バッテリ24の電力により、自律型搬送車20は、自律走行する。傾きセンサ25は、自律型搬送車20の鉛直面内における傾斜角度を取得して、制御部21に送信するように構成されている。傾きセンサ25は、たとえば、ジャイロセンサを含んでいる。記憶部26は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な記憶媒体を含み、各種の情報を記憶可能に構成されている。記憶部26には、自律型搬送車20の情報、および、台車30の情報などが記憶される。
【0048】
(台車の構成)
次に、台車30の構成について説明する。
【0049】
台車30は、製造工場において使用される物品を収容するように構成されている。図4に示すように、台車30は、特徴点31と、収容部32と、複数(4つ)の車輪33とを備えている。
【0050】
特徴点31は、台車30に設けられたマーカを含んでいる。マーカは、特に限られないが、たとえば、板金により形成可能である。また、特徴点31は、自律型搬送車20の撮像部22により撮像可能な位置に設けられている。特徴点31は、台車30の自律型搬送車20側の部分に設けられている。図5に示すように、特徴点31には、模様が付されている。特徴点31の模様は、特徴点31が板金製である場合、レーザにより形成可能である。特徴点31の模様は、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢の変化に応じて、自律型搬送車20から見た形状が変化するように構成されている。また、特徴点31の模様は、台車30の識別情報を含む2次元コードにより構成されている。自律型搬送車20の制御部21は、撮像部22による特徴点31の撮像結果に基づいて、台車30の識別情報を取得可能である。また、自律型搬送車20の制御部21は、台車30の識別情報に基づいて、サーバ10から、台車30の形状、台車30の重量、および、台車30の重心位置などの台車30の情報を取得可能である。
【0051】
図4に示すように、収容部32は、物品を収容可能に構成されている。収容部32は、凹状に形成されている。複数の車輪33は、自律型搬送車20によるけん引により台車30を走行させるように構成されている。複数の車輪33は、自在輪として設けられている。複数の車輪33は、台車30の左右にそれぞれ2つずつ設けられている。
【0052】
(搬送車本体の走行速度の制御)
次に、搬送車本体27の走行速度の制御について説明する。
【0053】
ここで、本実施形態では、図6に示すように、制御部21は、撮像部22により取得された台車30の状態に基づいて、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を検出するとともに、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢に基づいて、搬送車本体27の走行速度を制御するように構成されている。具体的には、制御部21は、撮像部22により取得された台車30の特徴点31の状態に基づいて、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を検出するように構成されている。
【0054】
搬送車本体27により台車30が真直ぐけん引されている状態では、撮像結果において中央に特徴点31が位置するとともに、特徴点31が傾かずに映る。また、台車30が水平面内において傾いた状態で搬送車本体27によりけん引されている状態では、特徴点31が撮像結果において中央からずれた位置に位置するとともに、特徴点31が奥行方向に傾いて映る。また、台車30が鉛直面内において傾いた状態で搬送車本体27によりけん引されている状態では、特徴点31が撮像結果において中央に位置するとともに、特徴点31が奥行方向に直交する面内において傾いて映る。これらの特徴点31の状態の変化を利用して、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を検出可能である。なお、図6では、理解の容易化のため、台車30が鉛直面内において傾いた状態を誇張して図示している。
【0055】
搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢は、搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度の情報を含んでいる。具体的には、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢は、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度γの情報と、鉛直面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度θの情報とを含んでいる。
【0056】
制御部21は、搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度の情報に基づいて、搬送車本体27の走行速度を制御するように構成されている。具体的には、制御部21は、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度γの情報に基づいて、搬送車本体27が減速するように、搬送車本体27の走行速度を制御するように構成されている。より具体的には、制御部21は、以下の式(1)により、搬送車本体27の走行速度を制御するように構成されている。制御部21は、以下の式(1)により、傾斜角度γが大きくなるにつれて、走行速度が小さくなるように、搬送車本体27の走行速度を制御するように構成されている。
Vc=V×{1-k×sin(γ)} ・・・(1)
ここで、
Vc:補正速度
V:通常速度
k:補正係数
γ:水平面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度
である。
【0057】
通常速度Vおよび補正係数kは、実験などにより予め決定しておくことができる。通常速度Vは、特に限られないが、たとえば、2m/s程度であり得る。また、補正係数kは、特に限られないが、たとえば、補正速度Vcが1m/s以下になる程度の値であり得る。また、通常速度Vは、搬送車本体27により台車30が真直ぐけん引されている状態の搬送車本体27の走行速度である。
【0058】
また、制御部21は、鉛直面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度θの情報に基づいて、搬送車本体27が停止するように、搬送車本体27の走行速度を制御するように構成されている。具体的には、制御部21は、鉛直面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度θの情報と、傾きセンサ25により取得した鉛直面内における搬送車本体27の傾斜角度δの情報とに基づいて、搬送車本体27が停止するように、搬送車本体27の走行速度を制御するように構成されている。
【0059】
まず、制御部21は、傾斜角度θと、傾斜角度δとの差分(θ-δ)を、鉛直面内における台車30の真の傾斜角度θtとして取得する。そして、制御部21は、真の傾斜角度θtが基準角度(しきい値)を超えるか否かを検出する。制御部21は、真の傾斜角度θtが基準角度を超えることを検出した場合、搬送車本体27が停止するように、搬送車本体27の走行速度を制御する。この際、制御部21は、搬送車本体27が徐々に減速して停止するように、搬送車本体27の走行速度を制御する。また、制御部21は、真の傾斜角度θtが基準角度を超えないことを検出した場合、搬送車本体27の走行を継続する制御を行う。なお、基準角度は、実験などにより予め決定しておくことができる。
【0060】
また、本実施形態では、制御部21は、台車30の形状、台車30の重量、および、台車30の重心位置のうちの少なくとも1つを考慮して、搬送車本体27の走行速度を制御するように構成されている。たとえば、制御部21は、台車30の形状を考慮して、台車30の幅が大きい場合、幅が小さい台車30の場合に比べて、搬送車本体27の走行速度を小さくする。同様に、制御部21は、台車30の形状を考慮して、台車30の幅が小さい場合、幅が大きい台車30の場合に比べて、搬送車本体27の走行速度を大きくする。
【0061】
また、たとえば、制御部21は、台車30の重量を考慮して、台車30の重量が大きい場合、重量が小さい台車30の場合に比べて、搬送車本体27の走行速度を小さくする。同様に、制御部21は、台車30の重量を考慮して、台車30の重量が小さい場合、重量が大きい台車30の場合に比べて、搬送車本体27の走行速度を大きくする。
【0062】
また、たとえば、制御部21は、台車30の重心位置を考慮して、台車30の重心位置が左側にある場合、右回りに旋回する場合に比べて、左回りに旋回する場合の搬送車本体27の走行速度を小さくする。同様に、制御部21は、台車30の重心位置を考慮して、台車30の重心位置が右側にある場合、左回りに旋回する場合に比べて、右回りに旋回する場合の搬送車本体27の走行速度を小さくする。
【0063】
(連結部の駆動制御)
次に、連結部20dの駆動制御について説明する。
【0064】
図7に示すように、制御部21は、搬送車本体27による台車30のけん引時に、連結部モータ20eにより連結部20dを駆動(回転)することにより、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を制御するように構成されている。具体的には、制御部21は、搬送車本体27の旋回時に、連結部モータ20eにより連結部20dを駆動(回転)することにより、慣性による台車30の動きを打ち消すように、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を制御するように構成されている。
【0065】
ここで、搬送車本体27の旋回時に台車30に働く慣性力は、以下の式(2)により表すことができる。
Fj=m×a ・・・(2)
ここで、
Fj:台車に働く慣性力
m:台車の重量
a:台車の回転方向の加速度
である。
【0066】
重量mとしては、物品搬送中の場合には、台車30の重量と物品の重量との合計の重量を用い、物品搬送中でない場合には、台車30の重量を用いる。台車30の重量は、台車30の識別情報に基づいて、サーバ10から取得可能である。また、物品の重量は、サーバ10からの指令の内容(タスクの内容)に基づいて、物品を特定して、その重量を取得可能である。加速度aは、搬送車本体27の旋回速度から換算テーブルを用いて取得可能である。あるいは、加速度aは、撮像部22により取得した台車30の特徴点31の状態の時間変化から取得可能である。
【0067】
また、台車30に働く動摩擦力は、以下の式(3)により表すことができる。
F=μ×m×g ・・・(3)
ここで、
F:台車に働く動摩擦力
μ:動摩擦係数
m:台車の重量
g:重力加速度
である。
【0068】
動摩擦係数μは、ユーザが床面の動作摩擦係数を入力することにより、取得可能である。重量mは、上記式(2)の場合と同様に、取得可能である。重力加速度gは、既知の値として取得可能である。
【0069】
搬送車本体27の旋回時には、台車30は、上記式(2)で求まる慣性力Fjと、上記式(3)で求まる動摩擦力Fとによって決定される力によって、回転方向に振られてしまう。このため、制御部21は、慣性力Fgと動摩擦力Fとの差分(Fg-F)に対して、この差分を打ち消すような連結部20dの駆動方向(慣性が働くのとは反対方向)と駆動距離(駆動角度)とを決定する。そして、制御部21は、決定した駆動方向に、決定した駆動距離(駆動角度)だけ回転するように、連結部モータ20eにより連結部20dを駆動する制御を行う。
【0070】
また、本実施形態では、制御部21は、ストッパ20fにより制限された角度範囲内において、連結部モータ20eにより連結部20dを駆動(回転)することにより、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を制御するように構成されている。制御部21は、連結部20dがストッパ20fに接触しない範囲内において、連結部モータ20eにより連結部20dを駆動(回転)するように構成されている。
【0071】
(走行速度制御時の補正時間)
次に、搬送車本体27の走行速度制御時の補正時間について説明する。
【0072】
図8に示すように、制御部21は、搬送車本体27の走行速度の制御による、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢の補正に要した補正時間Tを取得するように構成されている。また、制御部21は、補正時間Tと基準補正時間との比較に基づいて、走行の異常を検出するように構成されている。具体的には、制御部21は、以下の式(4)により、走行の異常を検出するように構成されている。制御部21は、補正時間Tが以下の式(4)により定められた正常範囲を外れる(下回るまたは上回る)場合、走行の異常を検出するように構成されている。
Te-α<T<Te+α ・・・(4)
ここで、
Te:基準補正時間
T:補正時間
α:定数
である。
【0073】
基準補正時間Teおよび補正時間Tについては、後述する。定数αは、実験などにより予め決定しておくことができる。
【0074】
また、図9に示すように、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢の補正には、複数(図9では、4つ)のエリアAが設定されている。複数のエリアAは、互いに異なる傾斜角度γの範囲として設定されている。たとえば、エリア1が、傾斜角度γが0度以上5度未満の範囲、エリア2が、傾斜角度γが5度以上10度未満の範囲、エリア3が、傾斜角度γが10度以上15度未満の範囲、エリア4が、傾斜角度γが15度以上20度未満の範囲として、設定されている。
【0075】
制御部21は、エリアAが直前のエリアAから異なるエリアAに移行した場合、搬送車本体27の走行速度を変更する制御を行うように構成されている。また、制御部21は、エリアAが直前のエリアAから異なるエリアAに移行するまでの時間を、補正時間Tとして取得して記憶部26に記憶するように構成されている。
【0076】
また、本実施形態では、制御部21は、補正時間Tに基づいて、基準補正時間Teを学習するように構成されている。具体的には、制御部21は、以下の式(5)により、基準補正時間Teを学習して更新するように構成されている。制御部21は、以下の式(5)により、基準補正時間Teを、複数の補正時間Tの平均値として学習して更新するように構成されている。制御部21は、以下の式(5)により、基準補正時間Teを、補正が完了すると予想される予想補正完了時間として取得するように構成されている。
Te=ΣTn/n ・・・(5)
ここで、
Te:基準補正時間
Tn:n番目に取得した補正時間
n:補正時間の番号
である。
【0077】
また、本実施形態では、制御部21は、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢(エリアA)、搬送車本体27の走行速度、台車30の重量、または、搬送車本体27の進行方向ごとに、基準補正時間Teを学習するように構成されている。このため、制御部21は、エリアAが直前のエリアAから異なるエリアAに移行した際、エリアA(傾斜角度γ)、搬送車本体27の走行速度、台車30の重量、および、搬送車本体27の進行方向(右旋回、または、左旋回のいずれであるか)を、補正時間Tと対応付けて記憶部26に記憶するように構成されている。これにより、エリアA、搬送車本体27の走行速度、台車30の重量、または、搬送車本体27の進行方向ごとに場合分けされた、補正時間Tが取得される。また、エリアA、搬送車本体27の走行速度、台車30の重量、または、搬送車本体27の進行方向ごとに場合分けされた、基準補正時間Teが学習される。
【0078】
また、制御部21は、補正時間Tに基づいて、上記式(1)の補正係数kを学習するように構成されている。具体的には、制御部21は、予め決められた範囲の乱数として、補正係数kを取得するように構成されている。また、制御部21は、補正時間Tがより小さい結果になった補正係数kの値を中心として、補正係数kの乱数の範囲を学習して更新するように構成されている。これにより、補正係数kの乱数の範囲を、適切な範囲に収束させることが可能である。
【0079】
(自律型搬送車の自動連結制御)
次に、自律型搬送車20の自動連結制御について説明する。
【0080】
図10に示すように、制御部21は、撮像部22により取得された台車30の状態に基づいて、搬送車本体27と台車30との連結時に、搬送車本体27を台車30との連結位置に移動させるように構成されている。具体的には、制御部21は、撮像部22により取得された台車30の特徴点31の状態に基づいて、搬送車本体27と台車30との連結時に、搬送車本体27を台車30との連結位置に移動させるように構成されている。
【0081】
制御部21は、撮像部22により撮像することにより、台車30の特徴点31の状態を認識するように構成されている。そして、制御部21は、台車30の特徴点31の状態を目印として、搬送車本体27を未連結の台車30に接近させるように構成されている。そして、制御部21は、搬送車本体27を台車30との連結位置まで移動させると、連結部20dにより、搬送車本体27と台車30とを連結する制御を行うように構成されている。そして、制御部21は、連結部20dにより連結した台車30をけん引して、自律走行するように構成されている。
【0082】
(自律型搬送車の自動連結処理)
次に、本実施形態の自律型搬送車20の自動連結処理をフローチャートに基づいて説明する。なお、フローチャートの各処理は、制御部21により行われる。
【0083】
図11に示すように、まず、ステップS101において、サーバ10から台車30のけん引指令を受信したか否かが検出される。台車30のけん引指令は、台車30に積載する物品の情報を含んでいる。台車30のけん引指令を受信していないことが検出された場合、ステップS101の処理を繰り返す。また、台車30のけん引指令を受信したことが検出された場合、ステップS102に進む。
【0084】
そして、ステップS102において、サーバ10により指示された指示位置に搬送車本体27が移動される。
【0085】
そして、ステップS103において、撮像部22により撮像させることにより、台車30の特徴点31が認識される。
【0086】
そして、ステップS104において、台車30の特徴点31に基づいて、台車30の情報(台車30の形状、台車30の重量、および、台車30の重心位置など)が取得される。具体的には、ステップS104では、台車30の特徴点31から、台車30の識別情報が取得される。そして、台車30の識別情報に基づいて、サーバ10から台車30の情報が取得される。
【0087】
そして、ステップS105において、台車30の特徴点31を目印に搬送車本体27が台車30に接近される。
【0088】
そして、ステップS106において、搬送車本体27が台車30との連結位置まで移動したか否かが検出される。搬送車本体27が台車30との連結位置まで移動していないことが検出された場合、ステップS106の処理が繰り返される。また、搬送車本体27が台車30との連結位置まで移動したことが検出された場合、ステップS107に進む。
【0089】
そして、ステップS107において、搬送車本体27と台車30とが連結部20dにより連結される。そして、ステップS107では、搬送車本体27による台車30のけん引走行が開始される。その後、自動連結処理が終了される。
【0090】
(自律型搬送車の速度制御処理)
次に、本実施形態の自律型搬送車20の速度制御処理をフローチャートに基づいて説明する。なお、フローチャートの各処理は、制御部21により行われる。
【0091】
図12に示すように、まず、ステップS111において、撮像部22により撮像されることにより、台車30の特徴点31の状態が取得される。
【0092】
そして、ステップS112において、台車30の特徴点31の状態に基づいて、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢が検出される。ステップS112では、台車30の特徴点31の状態に基づいて、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度γが検出される。
【0093】
そして、ステップS113において、エリアAが1番目のエリアA(台車30が真直ぐけん引されている状態のエリアA)であるか否かが検出される。エリアAが1番目のエリアAであることが検出された場合、ステップS114に進む。
【0094】
そして、ステップS114において、搬送車本体27の走行速度が通常速度に設定される。
【0095】
そして、ステップS115において、搬送終了であるか否かが検出される。搬送終了であることが検出された場合、速度制御処理が終了される。また、搬送終了でないことが検出された場合、ステップS111に戻る。
【0096】
また、ステップS113において、エリアAが1番目のエリアAでないことが検出された場合、ステップS116に進む。
【0097】
そして、ステップS116において、エリアAが直前のエリアAと異なるエリアAであるか否かが検出される。エリアAが直前のエリアAと異なるエリアAでないことが検出された場合、ステップS115に進み、上記と同様の処理が行われる。また、エリアAが直前のエリアAと異なるエリアAであることが検出された場合、ステップS117に進む。
【0098】
そして、図13に示すように、ステップS117において、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度γに応じて、搬送車本体27の走行速度が補正される。ステップS117では、上記式(1)により、搬送車本体27の走行速度が補正される。
【0099】
そして、ステップS118において、補正時間Tが記憶部26に記憶される。また、ステップS118では、エリアA(傾斜角度γ)、搬送車本体27の走行速度、台車30の重量、および、搬送車本体27の進行方向が、補正時間Tと対応付けて記憶部26に記憶される。
【0100】
そして、ステップS119において、補正時間Tと基準補正時間Teとが比較される。
【0101】
そして、ステップS120において、上記式(4)により、補正時間Tが正常範囲であるか否かが検出される。補正時間Tが正常範囲であることが検出された場合、ステップS121に進む。
【0102】
そして、ステップS121において、補正時間Tに基づいて、上記式(5)により、基準補正時間Teが学習されて更新される。そして、ステップS115に進み、上記と同様の処理が行われる。
【0103】
また、ステップS120において、補正時間Tが正常範囲でないことが検出された場合、ステップS122に進む。
【0104】
そして、ステップS122において、異常通知が行われる。ステップS122では、たとえば、サーバ10に異常通知が行われる。そして、サーバ10の表示部13に、異常が表示される。その後、速度制御処理が終了される。
【0105】
(自律型搬送車の走行停止処理)
次に、本実施形態の自律型搬送車20の走行停止処理をフローチャートに基づいて説明する。なお、フローチャートの各処理は、制御部21により行われる。
【0106】
図14に示すように、まず、ステップS131において、撮像部22により撮像されることにより、台車30の特徴点31の状態が取得される。
【0107】
そして、ステップS132において、台車30の特徴点31の状態に基づいて、鉛直面内における搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢が検出される。ステップS132では、台車30の特徴点31の状態に基づいて、鉛直面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度θが検出される。
【0108】
そして、ステップS133において、傾きセンサ25により、鉛直面内における搬送車本体27の傾斜角度δが検出される。
【0109】
そして、ステップS134において、台車30の真の傾斜角度θt(=θ-δ)が異常であるか否かが検出される。台車30の真の傾斜角度θtが異常でないことが検出された場合、ステップS135に進む。
【0110】
そして、ステップS135において、搬送終了であるか否かが検出される。搬送終了であることが検出された場合、走行停止処理が終了される。また、搬送終了でないことが検出された場合、ステップS131に戻る。
【0111】
また、ステップS134において、台車30の真の傾斜角度θtが異常であることが検出された場合、ステップS136に進む。
【0112】
そして、ステップS136において、搬送車本体27の走行が停止される。ステップS13では、搬送車本体27を徐々に減速させるとともに、搬送車本体27の走行が停止される。
【0113】
そして、ステップS137において、異常通知が行われる。ステップS137では、たとえば、サーバ10に異常通知が行われる。そして、サーバ10の表示部13に、異常が表示される。その後、走行停止処理が終了される。
【0114】
(自律型搬送車の連結部制御処理)
次に、本実施形態の自律型搬送車20の連結部制御処理をフローチャートに基づいて説明する。なお、フローチャートの各処理は、制御部21により行われる。
【0115】
図15に示すように、まず、ステップS141において、撮像部22により撮像されることにより、台車30の特徴点31の状態が取得される。
【0116】
そして、ステップS142において、台車30の特徴点31の状態に基づいて、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢が検出される。ステップS142では、台車30の特徴点31の状態に基づいて、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度γが検出される。
【0117】
そして、ステップS143において、エリアAが1番目のエリアA(台車30が真直ぐけん引されている状態のエリアA)であるか否かが検出される。エリアAが1番目のエリアAであることが検出された場合、ステップS144に進む。
【0118】
そして、ステップS144において、搬送終了であるか否かが検出される。搬送終了であることが検出された場合、連結部制御処理が終了される。また、搬送終了でないことが検出された場合、ステップS141に戻る。
【0119】
また、ステップS143において、エリアAが1番目のエリアAでないことが検出された場合、ステップS145に進む。
【0120】
そして、ステップS145において、上記式(2)により台車30に働く慣性力Fjが取得されるとともに、上記式(3)により台車30に働く動摩擦力Fが取得される。
【0121】
そして、ステップS146において、慣性力Fjと、動摩擦力Fとに基づいて、慣性による台車30の動きを打ち消すように、連結部モータ20eにより連結部20dが駆動(回転)される。そして、ステップS144に進み、上記と同様の処理が行われる。
【0122】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0123】
本実施形態では、上記のように、自律型搬送車20の走行制御方法に、台車30の状態に基づいて、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を検出するステップと、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢に基づいて、搬送車本体27の走行速度を制御するステップと、を設ける。これにより、曲がり角などの屈曲箇所の移動時に搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢の変化が発生した場合に、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢の変化に応じて、搬送車本体27の走行速度を適切に変化させることができる。その結果、搬送車本体27による台車30のけん引時に搬送車本体27の走行速度を一律に低下させる場合と異なり、不必要な走行速度の低下が発生しない。これにより、搬送車本体27による台車30のけん引時に、屈曲個所での台車30の転倒を抑制しつつ、生産性を高めることができる。また、搬送車本体27による台車30のけん引時に台車30の姿勢に異常が発生した場合に、搬送車本体27の走行速度を適切に変化させることもできる。これによっても、搬送車本体27による台車30のけん引時の台車30の転倒を抑制することができる。
【0124】
また、本実施形態では、上記のように、台車30の状態を取得するステップは、台車30の特徴点31の状態を取得するステップを含む。また、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を検出するステップは、台車30の特徴点31の状態に基づいて、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を検出するステップを含む。これにより、単に台車30の特徴点31の状態を取得するだけで、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を簡単に検出することができる。また、台車30に姿勢を検出するセンサなどを設ける必要がないので、台車30を簡易な構造にしながら台車30の相対姿勢を検出することができる。
【0125】
また、本実施形態では、上記のように、台車30の特徴点31は、台車30に設けられたマーカを含む。これにより、台車30の角部などの形状を特徴点31として利用する場合と異なり、専用のマーカを利用して、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を検出することができる。その結果、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を精度よく検出することができる。
【0126】
また、本実施形態では、上記のように、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢は、搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度の情報を含む。また、搬送車本体27の走行速度を制御するステップは、搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度の情報に基づいて、搬送車本体27の走行速度を制御するステップを含む。これにより、搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度の情報に基づいて、搬送車本体27の走行速度を精度よく制御することができる。
【0127】
また、本実施形態では、上記のように、搬送車本体27の走行速度を制御するステップは、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度γの情報に基づいて、搬送車本体27が減速するように、搬送車本体27の走行速度を制御するステップを含む。これにより、曲がり角などの屈曲箇所の移動時に、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度γに変化が発生した場合に、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度γの変化に応じて、搬送車本体27の走行速度を適切に減速させることができる。その結果、屈曲箇所の移動時に、搬送車本体27の走行速度を精度よく制御することができる。
【0128】
また、本実施形態では、上記のように、搬送車本体27の走行速度を制御するステップは、鉛直面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度θの情報に基づいて、搬送車本体27が停止するように、搬送車本体27の走行速度を制御するステップを含む。これにより、たとえば台車30の車輪33の異常に起因して台車30の姿勢に異常が発生し、鉛直面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度θに変化が発生した場合に、搬送車本体27を停止させることができる。これにより、搬送車本体27による台車30のけん引時の台車30の転倒を抑制することができる。
【0129】
また、本実施形態では、上記のように、自律型搬送車20の走行制御方法は、鉛直面内における搬送車本体27の傾斜角度δの情報を取得するステップを備える。また、搬送車本体27の走行速度を制御するステップは、鉛直面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度θの情報と、鉛直面内における搬送車本体27の傾斜角度δの情報とに基づいて、搬送車本体27が停止するように、搬送車本体27の走行速度を制御するステップを含む。これにより、鉛直面内における搬送車本体27に対する台車30の傾斜角度θだけでなく、鉛直面内における搬送車本体27の傾斜角度δにも基づいて、搬送車本体27を停止する制御を行うことができる。その結果、搬送車本体27を停止する制御を精度よく行うことができる。
【0130】
また、本実施形態では、上記のように、搬送車本体27の走行速度を制御するステップは、台車30の形状、台車30の重量、および、台車30の重心位置のうちの少なくとも1つを考慮して、搬送車本体27の走行速度を制御するステップを含む。これにより、台車30の種類によって異なる台車30の形状、台車30の重量、および、台車30の重心位置のうちの少なくとも1つを考慮して、搬送車本体27の走行速度を制御することができる。その結果、台車30の種類に応じて、搬送車本体27の走行速度を適切に制御することができる。
【0131】
また、本実施形態では、上記のように、搬送車本体27は、搬送車本体27と台車30とを連結する連結部20dを含む。また、搬送車本体27は、連結部20dを駆動する連結部モータ20eを含む。また、自律型搬送車20の走行制御方法は、搬送車本体27による台車30のけん引時に、連結部モータ20eにより連結部20dを駆動することにより、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を制御するステップを備える。これにより、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を制御しつつ、搬送車本体27を走行させることができる。その結果、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を制御できない場合に比べて、搬送車本体27の走行の安定性を高めることができる。
【0132】
また、本実施形態では、上記のように、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を制御するステップは、搬送車本体27の旋回時に、連結部モータ20eにより連結部20dを駆動することにより、慣性による台車30の動きを打ち消すように、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を制御するステップを含む。これにより、搬送車本体27の旋回時に、慣性により台車30が振られるように動くことを抑制することができる。その結果、搬送車本体27の旋回時に、台車30をコンパクトに動かすことができる。これにより、狭い屈曲箇所での旋回および折り返しなどの走行動作を容易に行うことができる。
【0133】
また、本実施形態では、上記のように、搬送車本体27は、連結部20dの移動を制限するストッパ20fを含む。また、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を制御するステップは、ストッパ20fにより制限された角度範囲内において、連結部モータ20eにより連結部20dを駆動することにより、水平面内における搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢を制御するステップを含む。これにより、連結部モータ20eによる連結部20dの駆動時に、ストッパ20fに接触しないように、連結部20dを駆動することができる。その結果、連結部モータ20eによる連結部20dの駆動時に、連結部20dとストッパ20fとが接触することに起因して、連結部20dとストッパ20fとの両方に負荷がかかることを抑制することができる。また、ストッパ20fを設けることにより、連結部20dの移動を制限することができる。その結果、連結部20dの移動を制限することにより、台車30の移動を所定の範囲に制限することができる。
【0134】
また、本実施形態では、上記のように、搬送車本体27の走行速度を制御するステップは、搬送車本体27の走行速度の制御による、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢の補正に要した補正時間Tを取得するステップと、補正時間Tと基準補正時間Teとの比較に基づいて、走行の異常を検出するステップと、を含む。これにより、床面の異常および台車30の車輪の異常などの異常に起因した走行の異常を検出することができる。その結果、走行の異常を検出した場合、走行の異常を迅速に解消することができる。
【0135】
また、本実施形態では、上記のように、搬送車本体27の走行速度を制御するステップは、補正時間Tに基づいて、基準補正時間Teを学習するステップを含む。これにより、学習により基準補正時間Teを更新することができる。その結果、更新した基準補正時間Teにより、走行の異常をより精度よく検出することができる。
【0136】
また、本実施形態では、上記のように、基準補正時間Teを学習するステップは、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢、搬送車本体27の走行速度、台車30の重量、または、搬送車本体27の進行方向ごとに、基準補正時間Teを学習するステップを含む。これにより、場合分けして基準補正時間Teを学習することができる。その結果、場合分けした基準補正時間Teにより、個々の場合に応じて、走行の異常をより一層精度よく検出することができる。
【0137】
また、本実施形態では、上記のように、自律型搬送車20の走行制御方法は、台車30の状態に基づいて、搬送車本体27と台車30との連結時に、搬送車本体27を台車30との連結位置に移動させるステップを備える。これにより、搬送車本体27と台車30とを自動連結することができる。その結果、搬送車本体27と台車30との連結から、搬送車本体27による台車30のけん引走行までを自動化することができる。
【0138】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0139】
たとえば、上記実施形態では、自律型搬送車が、4つの駆動輪を備えている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、自律型搬送車が、4つ以外の複数の駆動輪を備えていてもよい。また、自律型搬送車が、駆動輪に加えて、自在輪を備えていてもよい。
【0140】
また、上記実施形態では、自律型搬送車が、撮像部を、本発明の状態取得部として備えている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、自律型搬送車が、レーザを用いた3次元形状計測部などの撮像部以外を、状態取得部として備えていてもよい。この場合、特徴点の模様を、凹凸などの3次元形状により形成すればよい。
【0141】
また、上記実施形態では、撮像部(状態取得部)と、特徴点とが、1つずつ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、状態取得部と、特徴点とが、複数ずつ設けられていてもよい。図16に示す変形例では、自律型搬送車20に、複数(2つ)の撮像部22が設けられている。また、台車30に、複数(2つ)の特徴点31が設けられている。この場合、複数の特徴点31の状態を取得することができるので、複数の特徴点31の状態に基づいて、搬送車本体27に対する台車30の相対姿勢をより精度よく検出することができる。
【0142】
また、上記実施形態では、特徴点が、台車に設けられたマーカを含んでいる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、特徴点が、台車の角部などの特徴的な形状部分を含んでいてもよい。
【0143】
また、上記実施形態では、水平面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度に対する搬送車本体の走行速度の制御と、鉛直面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度に対する搬送車本体の走行速度の制御と、を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、水平面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度に対する搬送車本体の走行速度の制御と、鉛直面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度に対する搬送車本体の走行速度の制御とのうちのいずれか一方のみを行ってもよい。
【0144】
また、上記実施形態では、鉛直面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度の情報と、鉛直面内における搬送車本体の傾斜角度の情報とに基づいて、搬送車本体を停止させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、鉛直面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度の情報のみに基づいて、搬送車本体を停止させてもよい。
【0145】
また、上記実施形態では、台車の形状、台車の重量、および、台車の重心位置のうちの少なくとも1つを考慮して、搬送車本体の走行速度を制御する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、搬送車本体の走行速度の制御において、台車の形状、台車の重量、および、台車の重心位置を考慮しなくてもよい。
【0146】
また、上記実施形態では、自律型搬送車が、連結部を備えている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、台車が、連結部を備えていてもよい。
【0147】
また、上記実施形態では、自律型搬送車が、連結部モータを備えている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、自律型搬送車が、連結部モータを備えていなくてもよい。
【0148】
また、上記実施形態では、自律型搬送車が、一対(2つ)のストッパを備えている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、自律型搬送車が、1つまたは2つ以外の複数のストッパを備えていてもよい。また、自律型搬送車が、ストッパを備えていなくてもよい。
【0149】
また、上記実施形態では、補正時間を取得するとともに、補正時間に基づいて、走行の異常を検出する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補正時間を取得しなくてもよい。
【0150】
また、上記実施形態では、補正時間に基づいて、基準補正時間を学習する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、基準補正時間が、固定の値であってもよい。
【0151】
また、上記実施形態では、台車の状態に基づいて、搬送車本体と台車との連結時に、搬送車本体を台車との連結位置に移動させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、台車の状態に基づいて、搬送車本体と台車との連結時に、搬送車本体を台車との連結位置に移動させなくてもよい。
【0152】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御処理を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0153】
10 サーバ(制御装置)
20 自律型搬送車
20d 連結部
20e 連結部モータ(駆動部)
20f ストッパ
21 制御部(搬送車制御部)
22 撮像部(状態取得部)
27 搬送車本体
30 台車
31 特徴点
100 搬送システム
T 補正時間
Te 基準補正時間
γ 水平面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度
δ 鉛直面内における搬送車本体の傾斜角度
θ 鉛直面内における搬送車本体に対する台車の傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16