(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】車両用の制動装置に用いられるハウジング装置およびプランジャ、制動装置ならびに制動装置を作動させるための方法
(51)【国際特許分類】
B60T 7/02 20060101AFI20241209BHJP
B60T 13/40 20060101ALI20241209BHJP
B60T 11/10 20060101ALI20241209BHJP
B60T 8/171 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
B60T7/02 D
B60T13/40 Z
B60T11/10
B60T8/171 Z
(21)【出願番号】P 2022570579
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(86)【国際出願番号】 EP2021061269
(87)【国際公開番号】W WO2021233659
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】102020113523.8
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フリートベアト レーター
(72)【発明者】
【氏名】ティロ シュマウダー
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-521310(JP,A)
【文献】特開2019-132754(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0190324(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0267221(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00-7/10
B60T 13/00-13/74
B60T 10/00-11/34
B60T 7/12-8/1769
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)用の制動装置(105)に用いられるハウジング装置(110)であって、該ハウジング装置(110)は、
運転者による操作により内部で線形に可動のプランジャ(115)を収容するためのピストン室(117)と、
前記ピストン室(117)から分離されたセンサ室(120)であって、前記ピストン室(117)内での前記プランジャ(115)の位置および/または運動を認識して、前記車両(100)の制動動作を生じさせるように構成されたセンサユニット(125)を備えたセンサ室(120)と
を有し、
前記ピストン室(117)は、
前記ピストン室(117)の、前記センサ室(120)と反対側の側壁(175)に開口した圧縮空気接続開口(170)を有する、
ハウジング装置(110)。
【請求項2】
前記センサユニット(125)は、前記プランジャ(115)を起点とした磁場を検出して、前記プランジャ(115)の前記位置および/または前記運動を認識するように構成された少なくとも1つのホールセンサおよび/またはリードスイッチを備える、請求項1記載のハウジング装置(110)。
【請求項3】
前記ピストン室(117)は、前記プランジャ(115)のプランジャピストン区分(130)を収容するためのプランジャ開口(145)を有し、前記センサ室(120)は、前記ピストン室(117)の、前記プランジャ開口(145)に近い方の端部に配置されている、請求項1または2記載のハウジング装置(110)。
【請求項4】
前記ピストン室(117)と前記センサ室(120)とは、分離壁(155)によって流体に関してかつ/または気密に互いに分離されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のハウジング装置(110)。
【請求項5】
前記分離壁(155)の壁厚さは、前記ハウジング装置(110)のハウジング区分(157)の、前記分離壁(155)に隣接したハウジング壁厚さよりも小さく、かつ/または前記分離壁(155)は、非強磁性の材料を含む、請求項4記載のハウジング装置(110)。
【請求項6】
前記センサ室(120)は、前記ハウジング装置(110)の外壁を構成しかつ/または取外し可能に構成されたカバー(160)を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のハウジング装置(110)。
【請求項7】
制動装置(105)用のプランジャ(115)であって、該プランジャ(115)は、請求項1から
6までのいずれか1項記載のハウジング装置(110)の前記ピストン室(117)内に配置されているかまたは配置可能であり、該ピストン室(117)内での前記プランジャ(115)の前記位置および/または前記運動を規定するための発生器要素(127)を有し、前記プランジャ(115)は、運転者によって操作するためのプランジャピストン区分(130)、制御ピストン区分(135)、および前記プランジャピストン区分(130)と前記制御ピストン区分(135)との間に配置されたピストンばね(140)を有する、プランジャ(115)。
【請求項8】
前記発生器要素(127)は、前記プランジャピストン区分(130)の外壁に配置されており、かつ/または磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石を有する、請求項
7記載のプランジャ(115)。
【請求項9】
請求項1から
6までのいずれか1項記載のハウジング装置(110)と、該ハウジング装置(110)内に配置されているかまたは配置可能である、請求項
7または
8記載のプランジャ(115)とを備えた制動装置(105)。
【請求項10】
請求項
9記載の制動装置(105)を作動させるための方法(400)であって、該方法(400)は、
前記ピストン室(117)内での前記プランジャ(115)の位置または運動を認識するステップ(405)と、
前記認識するステップ(405)において認識された前記位置または前記運動を利用して、前記車両(100)の制動動作を生じさせるように構成されたセンサ信号(305)を出力するステップ(410)と
を含む、方法(400)。
【請求項11】
請求項
10記載の方法(400)の前記認識するステップ(405)および前記出力するステップ(410)を前記センサユニット(125)において実施しかつ/または制御するように構成されているデバイス(165)。
【請求項12】
請求項
10記載の方法(400)を実施しかつ/または制御するように構成されているコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項
12記載のコンピュータプログラムが記憶されている機械可読の記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本アプローチは、車両用の制動装置に用いられるハウジング装置、制動装置に用いられるピストン、ハウジング装置およびピストンを備えた制動装置ならびに制動装置を作動させるための方法に関する。
【0002】
独国特許出願公開第102014112014号明細書には、車両の常用ブレーキ装置を制御するための方法と、このような常用ブレーキ装置用の常用ブレーキ弁装置とが記載されている。
【0003】
この背景を前にして、本アプローチの課題は、車両用の制動装置に用いられる改良されたハウジング装置と、制動装置に用いられる改良されたピストンと、改良されたハウジング装置および改良されたピストンを備えた制動装置と、最後、制動装置を作動させるための改良された方法とを提供することである。
【0004】
この課題は、装置請求項1の特徴を有するハウジング装置、請求項8記載のピストン、請求項10記載の制動装置、請求項11記載の方法、請求項12記載のデバイスおよび請求項13記載のコンピュータプログラムによって解決される。
【0005】
提案された本アプローチにより得ることができる利点は、制動装置の作動期間を増大させることができることにある。
【0006】
車両用の制動装置に用いられるハウジング装置は、ピストン室と、センサ室と、センサユニットとを有している。ピストン室は、運転者による操作によってプランジャ・ばねセットを介してピストン室内で線形に可動であるピストンを収容するように構成されている。センサ室は、ピストン室から分離されていて、センサ室内に配置されたセンサユニットを有している。このセンサユニットは、ピストン室内でのプランジャの位置および付加的または代替的には運動を認識して、車両の制動動作を生じさせるように構成されている。
【0007】
プランジャ・ピストンセットは、運転者の制動意思を表示するための運転者の操作、例えば手動での押圧または足操作によってピストン室内で可動である。運転者の操作の強度に応じて、つまり、これにより生じるピストンの線形運動に応じて、運転者による所望の制動強度を認識することができる。センサユニットは、この運動、つまり、プランジャのストロークを検出するように構成されている。本明細書に提案されたハウジング装置は、互いに分離されたピストン用の室とセンサユニット用の室とを有しているので、有利には、ピストンの運動によってセンサユニットに影響は与えられない。したがって、例えばピストンの動作中、センサユニットの機能に損傷を与える恐れがある潤滑グリースが、ピストン室からセンサユニットに到達しなくなる。したがって、このセンサユニットの耐久性または動作期間を増大させることができる。
【0008】
センサユニットは、プランジャを起点とした磁場を検出して、プランジャの位置および付加的または代替的には運動を認識するように構成された少なくとも1つのホールセンサおよび付加的または代替的にはリードスイッチを備えていてよい。したがって、プランジャの位置および付加的または代替的には運動の、非接触式であるにもかかわらず、正確な認識が可能となる。
【0009】
ピストン室は、ピストンのプランジャピストン区分を収容するためのプランジャ開口を有していてよく、センサ室は、ピストン室の、プランジャ開口に近い方の端部に配置されていてよい。プランジャピストン区分とは、運転者によって制動意思の表示のために操作される、つまり、ピストン室内に押圧されるピストンの区分を意味している。プランジャ開口は、ピストン室の上側に配置されていてよい。プランジャ開口は、ピストン室の上側またはピストン室のハウジングカバーを貫く貫通開口であってよい。この場合、操作を可能にするために、プランジャピストン区分のプランジャが、プランジャ開口を通ってピストン室を越えて突出していてよい。センサ室は、ハウジング装置の、上側に対して横方向に延在する側壁に配置されていてよく、これによって、プランジャピストン区分の線形運動を側方から認識することができる。センサ室は、ピストン室の内部に配置されていてもよいし、ピストン室の外部に配置されていてもよい。
【0010】
例えば、ピストン室とセンサ室とは、分離壁によって流体に関して互いに分離されていてよい。また、ピストン室とセンサ室とは、分離壁によって気密に互いに分離されていてもよい。したがって、ピストン室とセンサ室との間での液体、グリースまたは空気のオーバフローを阻止することができる。
【0011】
分離壁の壁厚さは、ハウジング装置のハウジング区分の、分離壁に隣接したハウジング壁厚さよりも小さく構成されていてよく、付加的または代替的には、分離壁は、非強磁性の材料を含んでいてよい。したがって、プランジャを起点とした磁場の力線を分離壁を通して検出することができる。
【0012】
さらに、センサ室が、一実施形態によれば、ハウジング装置の外壁を構成しかつ付加的または代替的には取外し可能に構成されたカバーを有していると有利である。したがって、センサ室内のセンサユニットまたは別の電子装置の取出しまたは交換が迅速かつ簡単に可能となる。
【0013】
ピストン室は、特に、このピストン室の、センサ室と反対側の側壁に開口していてよい圧縮空気接続開口を有していてよい。このような圧縮空気接続開口は、車両の制動動作を運転者による操作なしでも可能にするように働くことができる。このために、圧縮空気接続開口は、例えば、ピストン室の、センサ室と反対側の側壁の実質的に中央、例えば、ピストンのピストンばねが配置されていてよい領域の実質的に中央に開口していてよい。したがって、圧縮空気操作の際、プランジャが圧縮空気によって運動させられることを阻止することができ、側壁にセンサ室用の構成スペースが十分に残されている。特に圧縮空気接続開口を有する実施形態では、センサ室を、有利には気密にピストン室から分離することができる。したがって、センサユニットを圧縮空気に対して防護することができ、センサ室のカバーに対する付加的な強化が不要となる。
【0014】
さらに、制動装置用のプランジャであって、このプランジャは、前述したハウジング装置のピストン室内に配置されているかまたは配置可能であり、このピストン室内でのプランジャの位置および付加的または代替的には運動を規定するための発生器要素を有しており、特に、ピストンは、運転者によって操作するためのプランジャピストン区分、制御ピストン区分、および付加的または代替的にはプランジャピストン区分と制御ピストン区分との間に配置されたピストンばねを有している、プランジャが提案される。このようなピストンは、ハウジング装置と共に使用するために適している。プランジャの発生器要素は、プランジャピストン区分の外壁に配置されていてよく、付加的または代替的には、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石を有していてよい。したがって、ハウジング装置を通る磁場の前述した検出が可能となる。磁石は、センサ室に臨むようにプランジャピストン区分に配置されていてよい。
【0015】
制動装置は、前述した複数の変化形態のうちの1つの変化形態で構成されたハウジング装置と、このハウジング装置内に配置されているかまたは配置可能である、前述した複数の変化形態のうちの1つの変化形態で構成されたプランジャとを有している。制動装置は、車両用のフットブレーキ装置またはハンドブレーキ装置であってよい。
【0016】
前述した複数の制動装置のうちの1つの制動装置を作動させるための方法は、
ピストン室内でのプランジャの位置または運動を認識するステップと、
認識するステップにおいて認識された位置または運動を利用して、車両の制動動作を生じさせるように構成されセンサ信号を出力するステップと
を有している。
【0017】
この方法は、例えば制御装置に設けられた、例えばソフトウェアもしくはハードウェアまたはソフトウェアとハードウェアとの混合形態に実装されていてよい。
【0018】
本明細書に提案された本アプローチは、さらに、デバイスであって、本明細書に提案された方法の変化形態のステップを相応の装置において実施、制御もしくは実現するように構成されたデバイスを提供する。デバイスの形態の本アプローチのこの実施変化形態によっても、本アプローチの根底にある課題を迅速かつ効率よく解決することができる。
【0019】
このために、デバイスは、信号またはデータを処理するための少なくとも1つの計算ユニット、信号またはデータを記憶するための少なくとも1つの記憶ユニット、センサからのセンサ信号を読み取るかまたはデータ信号または制御信号をアクチュエータに出力するための、センサまたはアクチュエータに対する少なくとも1つのインタフェース、および/または通信プロトコルに埋め込まれたデータを読み取るかまたは出力するための少なくとも1つの通信インタフェースを有していてよい。計算ユニットは、例えば信号プロセッサ、マイクロコントローラまたはこれに類するものであってよい。記憶ユニットは、フラッシュメモリ、EPROMまたは磁気記憶ユニットであってよい。通信インタフェースは、データを無線式にかつ/または有線接続により読み取るかまたは出力するように構成されてよい。この場合、有線接続によるデータを読み取るかまたは出力することができる通信インタフェースは、こういったデータを、例えば電気的または光学的に相応のデータ伝送線路から読み取ることができるかまたは相応のデータ伝送線路に出力することができる。
【0020】
デバイスとは、本明細書では、センサ信号を処理し、このセンサ信号に応じて制御信号および/またはデータ信号を出力する電気的な装置と解することができる。デバイスは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアにより構成されていてよいインタフェースを有していてよい。ハードウェアによる構成では、インタフェースは、例えば、デバイスの種々異なる機能を含む、いわゆるシステムASICの一部であってよい。しかしながら、インタフェースが固有の集積回路であるかまたは少なくとも部分的に個別の構成要素から成っていることも可能である。ソフトウェアによる構成では、インタフェースはソフトウェアモジュールであってよい。このソフトウェアモジュールは、例えば、別のソフトウェアモジュールに並んでマイクロコントローラに存在している。
【0021】
有利な構成では、デバイスによって、車両の制動動作を生じさせるためのセンサ信号の制御が行われる。このためには、デバイスが、例えば、ピストン室内でのプランジャの位置または運動を認識してよく、認識された位置または運動を利用してセンサ信号を出力してよい。制御はアクチュエータ、例えば、位置または運動を認識するためのセンサユニットおよびセンサ信号を出力するための出力装置を介して行われる。
【0022】
本明細書に提案された本アプローチの複数の実施例を、図面に関連した以下の説明において詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】ハウジング装置とピストンとを有する一実施例による制動装置を備えた車両の横断面図である。
【
図4】一実施例による制動装置を作動させるための方法の流れ図である。
【0024】
本アプローチの有利な実施例の以下の説明では、それぞれ異なる図面に示した似通った形式で作用する要素に対して、同じまたは類似の符号を使用している。なお、これらの要素を繰り返し説明することは省略する。
【0025】
図1には、ハウジング装置110とプランジャ115とを有する一実施例による制動装置105を備えた車両100の横断面図が示してある。
【0026】
単なる一例として、制動装置105は、本実施例によれば、車両100にまたは車両100内に収容されており、かつ/または足で操作するためのフットブレーキ装置として構成されている。代替的な実施例によれば、制動装置105はハンドブレーキ装置として構成されている。制動装置105は、ハウジング装置110とプランジャ115とを有している。このプランジャ115は、
図1に示した制動装置105の作動準備状態においてハウジング装置110内に収容されている。制動装置105は、本実施例によれば、制動装置105が操作されない休止状態で示してある。
【0027】
ハウジング装置110は、ピストン室117と、センサ室120と、センサユニット125とを有している。ピストン室117は、運転者による操作によってピストン室117内で線形に可動であるプランジャ115を収容するように構成されている。センサ室120は、ピストン室117から分離されていて、センサ室120内に配置されたセンサユニット125を有している。このセンサユニット125は、ピストン室117内でのプランジャ115の位置および/または運動を認識して、車両100の制動動作を生じさせるように構成されている。
【0028】
以下に説明するハウジング装置110および/またはプランジャ115の詳細は任意選択的なものである。
【0029】
プランジャ115は、本実施例によれば、ピストン室117内に収容されていて、ピストン室117内でのプランジャ115の位置および/または運動を規定するための発生器要素127を有している。本実施例によれば、プランジャ115は、運転者によって操作するためのプランジャピストン区分130、制御ピストン区分135、および/またはプランジャピストン区分130と制御ピストン区分135との間に配置されたピストンばね140を有している。発生器要素127は、本実施例によれば、プランジャピストン区分130の外壁に配置されており、かつ/または磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石を有している。この磁石は、本実施例によれば、センサ室120に臨むようにプランジャピストン区分130に配置されている。
【0030】
センサユニット125は、プランジャ115を起点とした磁場を検出して、プランジャ115の位置および/または運動を認識するように構成された少なくとも1つのホールセンサおよび/またはリードスイッチを備えている。ピストン室117は、本実施例によれば、プランジャ115のプランジャピストン区分130を収容するためのプランジャ開口145を有している。センサ室120は、ピストン室117の、プランジャ開口145に近い方の端部に配置されている。プランジャピストン区分130のプランジャ150は、本実施例によれば、ピストン室117から突出しており、これによって、運転者によるプランジャ115の操作が可能となる。プランジャ開口145は、本実施例によれば、ピストン室117の上側152に配置されており、かつ/またはセンサ室120は、本実施例によれば、ハウジング装置110の、上側152に対して横方向に延びる側壁153に配置されている。ピストン室117とセンサ室120とは、本実施例によれば、分離壁155によって流体に関して互いに分離されている。この分離壁155の壁厚さは、本実施例によれば、ハウジング装置110のハウジング区分157の、分離壁155に隣接したハウジング壁厚さよりも小さく、かつ/または分離壁155は非強磁性の材料を含んでいる。センサ室120は、本実施例によれば、電子装置カバーの形態のカバー160を有している。このカバー160は、ハウジング装置110の外壁を構成しており、かつ/または取外し可能に構成されている。本実施例によれば、カバー160は、センサ室120の、分離壁155と反対側の壁を構成している。センサユニット125は、本実施例によれば、同じくセンサ室120内に配置された、電子装置と呼ばれることもあるデバイス165の一部である。本実施例によれば、ピストン室117は圧縮空気接続開口170を有している。この圧縮空気接続開口170は、本実施例によれば、ピストン室117の、センサ室120および/または側壁153と反対側の側壁175に開口している。圧縮空気接続開口170は、本実施例によれば、反対側の側壁175の実質的に中央、つまり、ピストン室117の、プランジャ115のピストンばね140が配置された領域の実質的に中央に開口している。
【0031】
以下に、制動装置105およびハウジング装置110の詳細をもう一度より正確に説明する。
【0032】
制動装置105はハウジング装置110を有している。このハウジング装置110内には、プランジャ115の、ハウジング装置110のハウジングカバー180のカバー開口の形態のプランジャ開口145を通って突出したプランジャ150を備えたプランジャピストン区分130が、軸線方向可動に収容されている。プランジャ150は、一実施例によれば、上方から、つまり、ハウジング装置110の外側に配置された端部から、フットブレーキプレートの形態の常用ブレーキ操作機構に結合されている。したがって、運転者がフットブレーキプレートを操作すると、プランジャ150がプランジャ開口145内に押圧され、プランジャピストン区分130が操作力によって下向きに運動させられる。プランジャピストン区分130は、本実施例によれば、好ましくは、例えば圧縮ばねとして構成されたピストンばね140を介して、ピストン室117内に同じく軸線方向可動に支持された制御ピストン区分135に操作力を伝達する。
【0033】
本明細書に提案された制動装置105は、空間分離検出式のフットブレーキモジュールと呼ばれることもある。本明細書に提案された本アプローチの課題は、フットブレーキモジュールにおいて、「電子装置室」と呼ばれることもあるセンサ室120を、「ピストン作業室」と呼ばれることもあるピストン室117から分離し、それにもかかわらず、運転者によりピストン作業室内で生じたストローク/運動を検出することにある。
【0034】
ピストン作業室内に突出していて、そこで機械的に操作される機械的なレバーを備えた、場合により電子装置室内に位置決め可能なポテンショメータ、またはピストン作業室内に存在するプランジャに機械的に取り付けられていて、電子装置室内に突出した発生器要素を備えた、電子装置室内のボードに配置されたホールセンサ、またはピストン作業室内に位置決めされていて、電子装置室内に位置特定されたボードに直接接触接続されているかもしくは平形コネクタを介して接触接続されたコイルを備えた可能な誘導型のセンサと異なり、本明細書に提案されたハウジング装置110のセンサユニット125は、プランジャ115の位置および/または運動を、有利には、プランジャ115に機械的に接触することなしに、つまり、非接触式に検出する。したがって、ピストン室117内に存在するグリースと、耐用年数にわたって発生する摩耗片とが電子装置に接触することがなくなる。更なる利点は、プランジャ115を運転者の意思に左右されずに運動させるべく、ピストン室117に圧縮空気接続開口170を介して圧縮空気が供給される電子調圧式のフットブレーキモジュールにおいて、本明細書に提案されたハウジング装置110では、センサ室120内の電子装置に圧縮空気が供給されず、ひいては、圧縮空気内に存在する媒体も接触しないことにある。
【0035】
つまり、本発明の根本的な思想は、検知する要素の形態のセンサユニット125を発生器要素127から空間的に分離し、それにもかかわらず、機能を保証することにある。
【0036】
まとめると、本明細書に提案されたハウジング装置110は、以下の利点を実現する。
【0037】
・ ボードまたは評価電子装置を備えていてよいセンサユニット125が、ピストン室117内に存在するグリース、発生する機械的な摩耗片および場合により発生する凝縮物に対して防護されている。
【0038】
・ ピストンを運転者の意思に左右されずに運動させるべく、ピストン作業室/電子装置室に圧縮空気が供給される電子調圧式のフットブレーキモジュールでは、1つには、電子装置に圧縮空気が供給されず、圧縮空気内に存在する媒体も接触せず、もう1つには、発生する圧力に耐えるために、カバー160の付加的な強化または付加的な構成部材の使用が不要となる。
【0039】
本実施例によれば、プランジャ115は磁石を有している。この磁石は、発生器要素127として働きかつ/またはピストン室117内でプランジャピストン区分130に配置されている。このプランジャピストン区分130に設けられた磁石は、運動またはストロークの形態の運転者の意思に直接従動する。ピストン室117は、発生器要素127の力線がセンサ室120内にも発生させられるようにするために、発生器要素127の領域で最小限の要求に減じられた壁厚さによってセンサ室120から分離されている。ハウジング装置110のハウジング材料および/または相応に減じられた壁厚さを有する分離壁155は、本実施例によれば、アルミニウムおよび/またはプラスチックで形成されている。センサユニット125は、本実施例によれば、ホールチップおよび/またはリードスイッチを備えている。このホールチップおよび/またはリードスイッチは、センサ室120内のデバイス165または別の支持要素に位置決めされていて、この場合、こういった力線を利用し、これによって、ストロークまたは運動の形態の運転者の意思が検出され、かつ/またはスイッチが操作される。代替的な実施例によれば、分離壁155の減じられた壁厚さは、同一のハウジングにおいて実現されているのではなく、ピストン室117とセンサ室120との間でハウジング内に組み付けられた別体の構成部材としても実現されている。
【0040】
概して、プランジャ150、プランジャピストン区分130および/またはプランジャ115は、1つの(例えば一体化された)構成部材として形成されていてもよい(ただし必須ではない)。この場合、下側の部分(この構成ではプランジャピストン区分130)が、発生器要素または磁石型検出器として働く。
【0041】
図2には、一実施例による制動装置105の横断面図が示してある。この実施例は、
図1に基づき説明した制動装置105の実施例であってよいものの、制動装置105が、本実施例によれば、圧縮空気200が供給された状態で図示してあるという違いがある。プランジャピストン区分130ならびに発生器要素127の位置は、
図1に示した制動装置105の休止状態に対して不変である。これに対して、制御ピストン区分135が、圧縮空気操作によってプランジャピストン区分130からさらに離れる方向に運動させられている。分離壁155は、本実施例によれば、ピストン室117をセンサ室120から気密に分離し、これによって、圧縮空気操作時にセンサ室120内に圧縮空気200が侵入しないように構成されている。
【0042】
図3には、一実施例による制動装置105の横断面図が示してある。この実施例は、
図1または
図2に基づき説明した制動装置105の実施例であってよいものの、制動装置105が、本実施例によれば、運転者の足操作300により操作された状態で図示してあるという違いがある。プランジャピストン区分130ならびに発生器要素127の位置が、
図1に示した制動装置105の休止状態に比べて下向きに運動させられて配置されている。制御ピストン区分135もピストンばね140を介してさらに下向きに運動させられている。
【0043】
センサユニット125は、本実施例によれば、ピストン室117内でのプランジャ115の位置または運動を認識する。センサユニット125のほかに、デバイス165は、本実施例によれば、認識された位置または運動を利用して、この認識された位置または運動を表すセンサ信号305を出力するように構成された出力装置を有している。この出力装置はセンサ信号305を、本実施例によれば、車両の制動機構310に出力する。この制動機構310は、センサ信号305を利用して制動動作を実施するように構成されている。
【0044】
図4には、一実施例による制動装置を作動させるための方法400の流れ図が示してある。制動装置は、
図1~
図3のうちの1つに基づき説明した1つの制動装置であってよい。
【0045】
方法400は、認識するステップ405と、出力するステップ410とを有している。認識するステップ405では、ピストン室内でのピストンの位置または運動が認識される。出力するステップ410では、認識するステップ405において認識された位置または運動を利用してセンサ信号が出力される。このセンサ信号は、車両の制動動作を生じさせるように構成されている。
【0046】
本明細書に提案された方法ステップは繰り返し実施されてよく、また、記載した順序と異なる順序で実施されてよい。
【0047】
一実施例が、第1の特徴と第2の特徴との間で「および/または(かつ/または)」結合を含む場合、このことは、その実施例が、一実施形態によれば、第1の特徴も第2の特徴も有しており、別の実施形態によれば、第1の特徴だけまたは第2の特徴だけを有しているように読む必要がある。
【符号の説明】
【0048】
100 車両
105 制動装置
110 ハウジング装置
115 プランジャ
117 ピストン室
120 センサ室
125 センサユニット
127 発生器要素
130 プランジャピストン区分
135 制御ピストン区分
140 ピストンばね
145 プランジャ開口
150 プランジャ
152 上側
153 側壁
155 分離壁
157 ハウジング区分
160 カバー
165 デバイス
170 圧縮空気接続開口
175 反対側の側壁
180 ハウジングカバー
200 圧縮空気
300 足操作
305 センサ信号
310 制動機構
400 制動装置を作動させるための方法
405 認識するステップ
410 出力するステップ