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特許7600269自動挿入及び後退を伴うシフトヘッド挿入器デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】自動挿入及び後退を伴うシフトヘッド挿入器デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
A61M5/158 500Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022572299
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 US2021034181
(87)【国際公開番号】W WO2021242813
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/031,044
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】カーター,メアリー テリーサ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン フーフェル,ルイーズ エマ
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-538751(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0243302(US,A1)
【文献】特開2010-046204(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0099521(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入器デバイスであって、
ハウジングと、
アクチュエータと、
カニューレを含む注入ヘッドと、
前記注入ヘッドに取り外し可能に結合されたプッシュプレートと、
導入針を含む針アセンブリと、
前記プッシュプレートに係合しており且つ前記針アセンブリに解放可能に係合している、シフトプレートであって、付勢部材が前記プッシュプレートから離間するように付勢する、シフトプレートと、
挿入機構であって、前記アクチュエータの動きに応じて、前記注入ヘッド、前記プッシュプレート、前記シフトプレート、及び前記針アセンブリを、前記カニューレ及び前記導入針が前記ハウジング内に位置付けられる収納構成から、前記カニューレ及び前記導入針が前記ハウジングから延びる挿入構成へと自動的に移動させるように構成された、挿入機構と、
後退機構であって、前記付勢部材に打ち勝って前記シフトプレートを前記プッシュプレートに向かって移動させて、前記針アセンブリを解放する、前記挿入機構に応じて、前記針アセンブリを、前記挿入構成から、前記導入針が前記ハウジング内に位置付けられる後退構成へと自動的に移動させるように構成された、後退機構と、を備えており、
前記後退機構が、前記ハウジングに対する前記プッシュプレートの場所とは無関係に、前記針アセンブリを前記後退構成に移動させるように構成されている、挿入器デバイス。
【請求項2】
前記挿入機構が、挿入ばねであり、前記後退機構が、後退ばねである、請求項1に記載の挿入器デバイス。
【請求項3】
前記挿入ばねが、前記後退ばねを取り囲む、請求項2に記載の挿入器デバイス。
【請求項4】
前記収納構成では、前記挿入ばねと前記後退ばねとの両方に負荷がかかり、
前記挿入構成では、前記挿入ばねには負荷がかからず、前記後退ばねには負荷がかかり、
前記後退構成では、前記挿入ばねと前記後退ばねとの両方に負荷がかからない、請求項2に記載の挿入器デバイス。
【請求項5】
記収納構成では、前記針アセンブリは前記シフトプレートと前記プッシュプレートとの間に捕らえられ、
前記挿入構成では、前記針アセンブリは前記シフトプレートと前記プッシュプレートとの間に捕らえられ、
前記挿入構成と前記後退構成との間の中間構成では、前記シフトプレートは前記針アセンブリを前記プッシュプレートから解放する、請求項1に記載の挿入器デバイス。
【請求項6】
前記付勢部材が、少なくとも1つの可撓性部材を含み、前記可撓性部材が、前記挿入構成において上向きに付勢され、前記中間構成において前記シフトプレートの下で下向きに押し付けられる、請求項5に記載の挿入器デバイス。
【請求項7】
ヘッドロックを更に備え、前記ヘッドロックが、前記収納構成及び前記挿入構成において前記注入ヘッドを前記プッシュプレートに結合し、前記中間構成において前記注入ヘッドを前記プッシュプレートから解放する、請求項5に記載の挿入器デバイス。
【請求項8】
ヘッドロックを更に備え、前記ヘッドロックが、前記収納構成において前記注入ヘッドを前記プッシュプレートに結合し、前記後退構成の前に前記注入ヘッドを前記プッシュプレートから解放する、請求項1に記載の挿入器デバイス。
【請求項9】
パッチモダリティで前記注入ヘッドとともに使用するように構成されたホルダを更に備え、前記ホルダが、前記アクチュエータの動きに応じて、前記ハウジングから解放されるように構成されている、請求項1に記載の挿入器デバイス。
【請求項10】
前記アクチュエータを支持するキャリッジを更に備え、前記キャリッジが、前記収納構成において前記シフトプレートを拘束し、前記挿入構成において前記シフトプレートを解放する、請求項5に記載の挿入器デバイス。
【請求項11】
前記収納構成と前記挿入構成との間で、前記キャリッジが、前記ハウジングに対して水平に移動し、前記シフトプレート、前記注入ヘッド、前記プッシュプレート、及び前記針アセンブリが、前記ハウジングに対して垂直に移動する、請求項10に記載の挿入器デバイス。
【請求項12】
前記キャリッジの移動を防止するロック構成と、前記キャリッジの移動を可能にするロック解除構成と、を有する安全アセンブリを更に備える、請求項10に記載の挿入器デバイス。
【請求項13】
前記キャリッジが、戻しばねを含み、前記ハウジングが、戻し壁を含み、前記戻し壁が、前記戻しばねと係合して、前記キャリッジを前記シフトプレートに向かって付勢する、請求項12に記載の挿入器デバイス。
【請求項14】
前記ロック構成では、前記安全アセンブリは前記ハウジングの下に延び、
前記ロック解除構成では、前記安全アセンブリは前記ハウジング内と前記キャリッジの上に押し込まれる、請求項13に記載の挿入器デバイス。
【請求項15】
前記針アセンブリが、少なくとも1つのスナップアームを含み、前記シフトプレートが、前記挿入構成において前記少なくとも1つのスナップアームを前記プッシュプレートと係合するように保持し、前記中間構成において前記少なくとも1つのスナップアームを前記プッシュプレートから解放する、請求項5に記載の挿入器デバイス。
【請求項16】
前記プッシュプレートが、前記ハウジングに対する垂直方向の動きを拘束され、前記シフトプレートが、前記プッシュプレートに対する垂直方向の動きを拘束される、請求項1に記載の挿入器デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物注入システムに関し、より具体的には、患者の皮下空間にカニューレを挿入するために使用できる挿入器デバイス、及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
注入セットは、患者の皮下空間に薬剤を送達するために使用される。注入セットのヘッドアセンブリは、皮下組織の正しい深さまで挿入する必要があるステンレス鋼の針又は柔らかいカニューレの形態の流体経路を有する。柔らかいカニューレを挿入するには、ステンレス製の導入針が使用される。導入針は、組織に穴を開けてカニューレを進入できるようにし、挿入時にカニューレに剛性を与える。挿入後、導入針は、取り除かれる。
【0003】
導入針の挿抜は、患者が手動で行うか、又は挿入器によって自動化され得る、別個のステップを構成する。ほとんどの市販の挿入器は、導入針の挿入を自動化している。挿入後、導入針は、典型的には、手動で引き抜かれる。
【0004】
別の重要な考慮事項は、挿入中に構成要素が移動することである。ほとんどの挿入器は、「シフトヘッド」デバイス1000であり、流体経路1602が、注入ヘッド1601に不可逆的に結合され、一体化した注入ヘッドアセンブリ1600(図1)として挿入プロセス中に、注入ヘッド1601とともに移動する。対照的に、他の挿入器は、「シフト流体経路」デバイス2000であり、流体経路2602が、注入ヘッド2601から分離して開始し、挿入プロセス中に注入ヘッド2601に向かって前進し、注入ヘッド2601に接合する(図2)。
【0005】
流体経路1602が注入ヘッドアセンブリ1600の一体部分である「シフトヘッド」デバイス1000(図1)は、注入ヘッドアセンブリ1600全体が単一の部分として移動し、スナップ又はラッチを必要としないため、機械的に堅牢である。注入ヘッドアセンブリ1600全体をシフトさせることは、水が浸入する可能性がある構成要素間に隙間がないことも意味する。水の浸入をなくすことで、感染リスクが軽減される。対照的に、「シフト流体経路」デバイス2000(図2)の場合、注入ヘッド2601及び付着パッチは、患者がデバイス2000を自身の皮膚に配置するときに最初に皮膚に適用される。患者又は患者の介護者がデバイス2000を起動すると、流体経路2602が皮膚に向かってシフトし、注入ヘッド2601にラッチされる。大きな付着パッチ及び注入ヘッド2601は、最初は皮膚に取り付けられるため、「シフト流体経路」デバイス2000はより小さく、かつよりコンパクトにすることができる。ただし、必要な構成要素の数の増加と動的インターフェースにより、機械的な複雑さが増す。流体経路2602の注入ヘッド2601へのラッチも、挿入部位近くの望ましくない裂け目を最小限に抑えるように制御しなければならない。流体経路2602を捕らえるクリップもまた、流体経路2602が、正しく捕らえられたとしても、クリップ内でわずかにぐらつき、不快感を引き起こす可能性があり得るように、ある程度の許容範囲を持たなければならない。全体として、「シフトヘッド」デバイス1000は、「シフト流体経路」デバイス2000よりもいくつかの利点を提示する。
【0006】
患者の負担を最小限に抑え、使用者のミスを減らし、可能な限り無痛の挿入体験を提供するために、導入針の自動挿入及び自動後退の両方を提供する挿入器デバイスを有することが望ましい。更に、機械的堅牢性を確保するために、流体経路ではなく注入ヘッドアセンブリ全体をシフトさせる挿入器デバイスを有することが望ましい。したがって、本発明の目的は、注入ヘッドアセンブリ全体をシフトさせながら、導入針の自動挿入及び自動後退の両方を提供する挿入器デバイスを提供することである。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、自動挿入機構を有する挿入器デバイスに関し、自動挿入機構は、注入ヘッド及び針アセンブリを、収納構成から、注入ヘッドのカニューレ及び針アセンブリの導入針が患者の皮膚に挿入される挿入構成へとシフトさせる。挿入器デバイスはまた、自動後退機構を含み、自動後退機構は、針アセンブリを、導入針が患者の皮膚から取り除かれる後退構成へと自動的にシフトさせる。
【0008】
本開示の例示的な実施形態によれば、挿入器デバイスであって、ハウジングと、アクチュエータと、カニューレを含む注入ヘッドと、注入ヘッドに取り外し可能に結合されたプッシュプレートと、導入針を含む針アセンブリと、挿入機構であって、アクチュエータの動きに応じて、注入ヘッド、プッシュプレート、及び針アセンブリを、カニューレ及び導入針がハウジング内に位置付けられる収納構成から、カニューレ及び導入針がハウジングから延びる挿入構成へと自動的に移動させるように構成された、挿入機構と、後退機構であって、針アセンブリを、挿入構成から、導入針がハウジング内に位置付けられる後退構成へと自動的に移動させるように構成された、後退機構と、を含む、挿入器デバイスが開示される。
【0009】
本開示の別の例示的な実施形態によれば、挿入器デバイスであって、ハウジングと、アクチュエータと、カニューレを含む注入ヘッドと、注入ヘッドに取り外し可能に結合されたプッシュプレートと、導入針を含む針アセンブリと、自動挿入機構と、シフトプレートであって、収納構成であって、自動挿入機構が、注入ヘッド及び針アセンブリがハウジング内に位置付けられた状態で、シフトプレートに対して負荷がかかる、収納構成と、挿入構成であって、自動挿入機構が、シフトプレート、注入ヘッド、プッシュプレート、及び針アセンブリをハウジングに対して移動させ、カニューレ及び導入針がハウジングから延びる、挿入構成と、中間構成であって、自動挿入機構が、注入ヘッド、プッシュプレート、及び針アセンブリに対してシフトプレートを移動させる、中間構成と、を有する、シフトプレートと、を含む、挿入器デバイスが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の上述及び他の特徴及び利点、並びにそれらを達成する様式は、本発明の実施形態の以下の説明を添付の図面と併せて参照することによってより明らかになり、またよりよく理解されよう。
【0011】
図1】注入セットヘッドをシフトさせる挿入器デバイスの従来例の模式図である。
図2】カニューレをシフトさせる挿入器デバイスの従来例の模式図である。
図3】本挿入器の一実施形態の分解図である。
図4図3の挿入器デバイスの下部ハウジングの斜視図である。
図5図3の挿入器デバイスの上部ハウジングの斜視図である。
図6図3の挿入器デバイスのキャリッジの斜視図である。
図7図3の挿入器デバイスの針アセンブリの斜視図である。
図8図3の挿入器デバイスのシフトプレートの斜視図である。
図9図3の挿入器デバイスのプッシュプレートの斜視図である。
図10図3の挿入器デバイスの注入ヘッドアセンブリの斜視図である。
図11図3の挿入器デバイスの安全アセンブリの斜視図である。
図12】安全アセンブリがロック構成にある、収納構成にある図3の挿入器デバイスの断面図であり、断面は方向Lに沿って取られている。
図13】安全アセンブリがロック構成にある、収納構成にある図3の挿入器デバイスの部分斜視図である。
図14】安全アセンブリがロック解除構成にある、トリガ構成にある図3の挿入器デバイスの部分斜視図である。
図15】針の挿入直前のトリガ構成にある図3の挿入器デバイスの断面図であり、断面は方向Lに平行である。
図16図15に見られるのと同じトリガ構成にある図3の挿入器デバイスの断面図であり、断面は方向Wに沿って取られている。
図17】針の挿入後であるが後退前の挿入構成にある図3の挿入器デバイスの断面図であり、断面は方向Lに平行である。
図18図17に見られるのと同じ挿入構成にある図3の挿入器デバイスの断面図であり、断面は方向Wに沿って取られている。
図19】ロック位置にあるヘッドロックを示す、挿入構成にある図3の挿入器デバイスの部分断面斜視図である。
図20】ロック解除位置にあるヘッドロックを示す、中間構成にある図3の挿入器デバイスの部分断面斜視図である。
図21】後退直前の中間構成にある図3の挿入器デバイスの断面図であり、断面は方向Lに平行である。
図22図21に見られるものと同じ中間構成にある図3の挿入器デバイスの断面図であり、断面は方向Wに沿って取られている。
図23】後退構成にある図3の挿入器デバイスの断面図であり、断面は方向Lに平行である。
図24図23に見られるのと同じ後退構成にある図3の挿入器デバイスの断面図であり、断面は方向Wに沿って取られている。
図25】上部ハウジングが取り外された図3の挿入器デバイスの上面斜視図である。
図26】ハウジングガイドを示す、図3の挿入器デバイスの断面図であり、断面は方向Lに沿って取られる。
図27】ハウジングガイドを示す、図3の挿入器デバイスの断面図であり、断面は方向Wに平行である。
図28】ホルダを含む本挿入器デバイスの実施形態の分解図である。
図29図28の挿入器デバイスの断面図であり、断面は方向Lに沿って取れられている。
図30図28の挿入器デバイスの部分断面図であり、ロック構成にある、キャリッジ、クリップホルダ、及びホルダを示す。
図31図28の挿入器デバイスの部分断面図であり、ロック解除状態における、キャリッジ、クリップホルダ、及びホルダを示す。
【0012】
複数の図面全体を通して、対応する参照符号は、対応する部品を示す。本明細書に記載される例示は、本発明の例示的な実施形態を示し、かかる例示は、いかなる態様でも本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の原理の理解を促進するために、ここで、図面に例示された実施形態を参照し、特定の言語を使用して、これを説明する。しかしながら、これによって本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されるであろう。記載される実施形態における任意の改変及び更なる修正、並びに本明細書に開示される本発明の原理の更なる適用は、本発明に関わる当業者に通常起こるように企図される。本発明の一実施形態が非常に詳細に示されているが、明確にするために、本発明に関係のないいくつかの特徴が示されていないことは当業者には明らかであろう。
【0014】
本開示の例示的な挿入器デバイス10を図3に示す。挿入器デバイス10は、軸Lに沿って測定された長さ及び軸Wに沿って測定された幅を有する。図3の挿入器デバイス10は、上部ハウジング120及び下部ハウジング130を含むハウジング100と、ボタン201の形態のアクチュエータとしての機能を兼ねるキャリッジ200と、針アセンブリ300と、シフトプレート400と、プッシュプレート500と、注入ヘッドアセンブリ600と、安全アセンブリ700と、を含む。使用中、挿入器デバイス10は、針アセンブリ300の自動挿入及び自動後退の両方を提供する。挿入器デバイス10は、カニューレ602を患者の皮膚に挿入するために注入ヘッドアセンブリ600をシフトさせることによって、針アセンブリ300を自動的に挿入及び後退させる。次いで、カニューレ602は、薬剤(図示せず)を患者の皮膚に送達するために使用される。挿入器デバイス10の各要素は、以下で更に説明される。
【0015】
下部ハウジング130を図4に示し、上部ハウジング120を図5に示す。下部ハウジング130及び上部ハウジング120は、ハウジングインターフェース108に沿って結合されて、挿入器デバイス10の他の要素を保持する。図示の実施形態では、下部ハウジング130は、スナップ110を含み、上部ハウジング120は、対応するラッチ111を含むが、この構成は変化し得る。
【0016】
図4は、操作チャネル117と、複数のガイドスロット、実例としてガイドスロット102A、102B、102C、102Dとを含む下部ハウジング130を示している。ガイドスロット102A、102B、102C、102Dは、操作チャネル117を取り囲む壁の溝又は切り欠きによって画定される。ガイドスロット102A、102B、102C、102Dは、ガイドスロット102A及び102Bが挿入器デバイス10の後側に向かって位置し、かつガイドスロット102C及び102Dが挿入器デバイス10の前側に向かって位置するように、操作チャネル117の円周に沿って離間される。
【0017】
図4に示されるように、下部ハウジング130は、シフトプレートキャッチ118も含む。シフトプレートキャッチ118は、操作チャネル117の上端付近に配置される。シフトプレートキャッチ118は、操作チャネル117を取り囲む壁から操作チャネル117の中心に向かって内向きに水平に延びる。使用中、シフトプレートキャッチ118は、シフトプレート400の一部分をキャッチし、挿入器デバイス10(図21)の作動後に後退するのを防止するように構成されている。挿入器デバイス10の動作については、以下で更に議論される。
【0018】
更に図4を参照すると、下部ハウジング130は、安全アセンブリ700(図3)を受容するように構成された安全シート127を更に含む。安全シート127は、下部ハウジング130の底部に細長い開口を含み、下部ハウジング130内に上向きに延びるにつれて広がる。
【0019】
図5は、中央コア103及びガイドスロット104A、104Bを含む上部ハウジング120を示している。中央コア103は、垂直に下向きに延び、針アセンブリ300(図3)の垂直方向の動きのみを案内及び促進するように構成されている。ガイドスロット104A、104Bは、垂直に下向きに延び、プッシュプレート500(図3)をスライド可能に受容するように構成されている。
【0020】
図5に示されるように、上部ハウジング120は、キャリッジ200(図3)を収容するように構成されている。上部ハウジング120は、ボタン開口129を含み、ボタン開口129は、キャリッジ200のボタン201が上部ハウジング120から部分的に外に伸び、ボタン開口129に更に押し込まれることを可能にするようにサイズ決定及び構成されている。上部ハウジング120は、後部キャリッジ戻し壁101も含む。
【0021】
更に図5を参照すると、上部ハウジング120は、キャリッジスロット125も含む。キャリッジスロット125は、上部ハウジング120の内壁に沿って配置される。キャリッジスロット125は、上部ハウジング120内に水平に延び、挿入器デバイス10の作動に関与する押圧及び弾性運動を通して、キャリッジ200を吊り下げ、かつスライド可能に保持するように構成されている。キャリッジスロット125は、挿入器デバイス10(図3)の長さLに沿ってキャリッジ200に実質的に真っ直ぐな水平スライド経路を提供するのに十分遠くまで上部ハウジング120内に水平に延びる。
【0022】
更に図5を参照すると、上部ハウジング120は、安全アセンブリ700(図3)を支持するように構成された安全支柱126を含む。安全支柱126は、上部ハウジング120から垂直に下向きに延びるにつれて広がり、下部ハウジング130(図4)の上述の安全シート127と協働する。安全アセンブリ700の動作については、以下で更に議論される。
【0023】
図6は、挿入器デバイス10のキャリッジ200を示している。キャリッジ200のボタン201は、上部ハウジング120(図5)のボタン開口129内に延びる。ボタン201は、患者の指又は親指に人間工学的に適合するように機能的に成形されている。キャリッジ200は成形品であってもよいため、ボタン201は、ハウジング100(図3)に押し込まれると、キャリッジ200全体をシフトさせるように構成されている。図6に示すように、キャリッジはタブ204も含む。タブ204は、ボタン201が押されて上部ハウジング120内にシフトすると、上部ハウジング120(図5)のボタンキャッチ109と係合するように構成されている。このようにして、タブ204は、ボタン201の動きを制限し、挿入器デバイス10の他の機構に干渉するまでボタン201が上部ハウジング120に押し込まれないようにする。図6は、キャリッジ200のキャリッジ戻しばね202も示している。キャリッジ戻しばね202は、カンチレバーアーム、又は当技術分野で知られている任意の他の付勢システムとすることができる。キャリッジ戻しばね202は、ボタン201のキャリッジ200の反対側に配置され、上部ハウジング120(図5)の後部キャリッジ戻し壁101と係合するように構成されている。
【0024】
図6に示すように、キャリッジ200は、1つ以上の安全キャッチ203及び1つ以上のシフトプレートキャッチ205(そのうちの1つは見えないように隠されている)も含む。図6は、安全キャッチ203が、キャリッジ200から内向きに延びる段付きフランジであることを示している。図6はまた、シフトプレートキャッチ205が、キャリッジ200から内向きにボタン201に向かって前方に延びる平坦部分205Aと、同じくキャリッジ200から内向きに垂直上向きに延びる垂直部分205Bと、を含むことを示している。
【0025】
更に図6を参照すると、キャリッジ200は、レール207A及び207Bも含む。レール207A及び207Bは、上部ハウジング120(図5)のキャリッジスロット125内にスライド可能に受容される。レール207A及び207B並びにキャリッジスロット125は、キャリッジ200がハウジング100(図3)の長さLに沿って水平にシフトして挿入器デバイス10を起動することが可能になるようにしながら、キャリッジ200が挿入器デバイス10の任意の他の機構と干渉しないように、ハウジング100内にキャリッジ200を吊るすように構成されている。
【0026】
図7は、挿入器デバイス10の針アセンブリ300を示している。針アセンブリ300は、3つの主要構成要素、すなわち針ヘッド301、針ヘッド301を通って延びる導入針304、及び針ヘッド301を支持する針ハブ305から構成される。図7では、針ハブ305は、直径が実質的に均一であり、針ハブ305の長さに沿って下方に延びる円形スロット302を有するように示されている。円形スロット302は、上部ハウジング120(図5)の中央コア103を受容するようにサイズ決定及び構成されている。円形スロット302の頂部で、針ハブ305はまた、半径方向外向きに延びる肩部314を有する。肩部314から垂直に下方に延びるのは、スナップアーム306である。各スナップアーム306は、内側プッシュプレートリップ307及び外側シフトプレートリップ308を含む。スナップアーム306は、半可撓性で弾力性があるように構成されている。図7に示すように、針ハブ305は、円形スロット302の周りの肩部314の下側に配置されたばねキャッチ309を含む。ばねキャッチ309は、針ハブ305から半径方向外向きに延び、針ハブ305の円周にまたがることができ、又は針ハブ305の円周の周りに間隔を空けて配置された個別の延長部であることができる。最後に、針ハブ305は、針ヘッド把持部311も含む。針ヘッド把持部311は、アーム312を含み、アーム312は更に下向きに延び、組み立てを助けるために半可撓性で弾力性がある。アーム312の端部には、針ヘッド301と係合して挿入及び後退中に針ヘッド301を保持するように構成されたキャッチ313がある。
【0027】
図7に示されるように、針ヘッド301及び導入針304は、針ヘッド把持部311によって所定の位置に水平に保持される。針ヘッド把持部311は、把持スロット303を通して針ヘッド301と係合する。把持スロット303は、キャッチ313を受容するようにサイズ決定及び構成されている。針ヘッド301の上面は、組み立て中に針ヘッド301がアーム312の間の空間に押し上げられるように傾斜している。針ヘッド301がアーム312に押し込まれると、アーム312が外側に曲がり、次いでスナップキャッチ313が把持スロット303の所定の位置にスナップする。
【0028】
図8は、挿入器デバイス10のシフトプレート400を示している。図8が示すように、シフトプレート400は、実質的に円形の構成要素であり、シフトプレート400の両側から突出するタブ401を含む。シフトプレート400は、針ハブキャッチ402も含む。針ハブキャッチ402は、シフトプレート400から半径方向内向きに延びてプラットフォームを形成する。シフトプレート400の底部は、底部プラットフォーム403を形成する(図15も参照)。底部プラットフォーム403は、シフトプレート400の周り全体に広がっている。底部プラットフォーム403のすぐ上には、U字型のキャビティであるばね受容スロット404があり、その底部は底部プラットフォーム403の反対側である。
【0029】
更に図8を参照すると、シフトプレート400は、ヘッドロック係合アーム405も含む。ヘッドロック係合アーム405は、シフトプレート400から半径方向内向きに延び、その最内端に傾斜ウェッジ406を含む。ヘッドロック係合アーム405の下には、ヘッドロック係合アーム405の下でシフトプレート400から半径方向内向きに延びる傾斜受け407(図19も参照)と、ヘッドロック受容スロット408がある。図8は、シフトプレート400の保持クリップ409も示している。保持クリップ409は半可撓性であり、シフトプレート400が完全に下に移動するまで内向きに付勢されるように構成され、その時点で保持クリップ409が解放されて下部ハウジング130(図4)のシフトプレートキャッチ118の下にスナップし、シフトプレート400の位置をロックする。垂直移動のみを促進し、挿入器デバイス10の動作による横移動又は水平移動を阻止するために、シフトプレート400は、ガイドレール411A、411B、411C、411Dも含む。
【0030】
図9は、挿入器デバイス10のプッシュプレート500を示している。プッシュプレート500は、針ハブキャッチ501を含む。針ハブキャッチ501は、針ハブ305(図7)のスナップアーム306と係合して、針ハブキャッチ501と針ハブキャッチ402(図8)との間でスナップアーム306を挟む。図9に示すように、プッシュプレート500は、1つ以上の付勢アーム502も含む。付勢アーム502は、プッシュプレート500の底面に沿って配置され、上向きに付勢されるが、下向きに押されるように構成されている。本実施形態の付勢アーム502は、カンチレバーアームであるが、代わりに、ばね、又は当技術分野で知られている任意の他の付勢手段であってもよい。図16を一時的に参照すると、プッシュプレート500はまた、注入ヘッドキャビティ508及び針ヘッド開口507を含む。注入ヘッドキャビティ508は、注入ヘッドアセンブリ600を受容するように構成されたプッシュプレート500の下側の丸みを帯びたキャビティである。針ヘッド開口507は、注入ヘッドキャビティ508の頂部にある開口であり、針ヘッド301がプッシュプレート500の上に置かれている間、針304がプッシュプレート500を越えて延びることを可能にする。
【0031】
図9に戻ると、垂直移動のみを促進し、水平移動又はぐらつきを阻止するために、プッシュプレート500はまた、下部ハウジング(図4)の対応するガイドスロット102A、102B、102C、102Dに受容されるようにサイズ決定及び構成された外向きガイドレール504A、504B、504C、504Dを含む。ガイドレール504A、504B、504C、504Dはまた、シフトプレート400(図8)の対応するガイドレール411A、411B、411C、411Dを受容するようにサイズ決定及び構成された内向きガイドスロット505A、505B、505C、505Dを含む。プッシュプレート500は更に、垂直上向きに延び、上部ハウジング120(図5)の対応するガイドスロット104A、104B内にスライド可能に受容されるガイドポスト506A、506Bを含む。
【0032】
図12は、挿入器デバイス10の後退ばね112の形態の後退機構と、挿入ばね113の形態の自動挿入機構とを示している。後退ばね112は、針ハブ305の周りに配置され、その下端でプッシュプレート500の注入ヘッドキャビティ508の上面と係合し、その上端でばねキャッチ309と係合する(図16)。挿入ばね113は、その下端でシフトプレート400のばね受容スロット404の周囲及びその中に配置され、その上端で上部ハウジング120の上面と係合する。
【0033】
図10は、挿入器デバイス10の注入ヘッドアセンブリ600を示している。注入ヘッドアセンブリ600は、注入ヘッド601、カニューレ602、及び針キャビティ605から構成される。注入ヘッド601は、注入ヘッドアセンブリ600の本体であり、プッシュプレート500の注入ヘッドキャビティ508内に受容されるように成形及び構成されている(図12)。針キャビティ605は、導入針304(図12)を受容するように成形及び構成された注入ヘッド601内の孔であり、導入針304が注入ヘッド601全体を通ってカニューレ602内へと延びることを可能にする。カニューレ602は、挿入中に導入針304を受容し、患者の皮膚内に延びて薬物を投与する柔軟な細い管である。注入ヘッド601はまた、ヘッドロック612をスライド可能に受容するようにサイズ決定及び構成されたチャネル603を含む。チャネル603は、チャネル603の少なくとも上部境界上のリップ604によって画定され、以下で更に説明するように、リップ604は、挿入器デバイス10の挿入動作が完了するまで注入ヘッドアセンブリ600を吊り下げてプッシュプレート500に取り付けるように構成される。
【0034】
更に図10を参照すると、ヘッドロック612は、前向き注入ヘッドロックアーム613と、後ろ向きプッシュプレート係合アーム615と、注入ヘッドロックアーム613とプッシュプレート係合アーム615とを接続するブラケット614とを含む。注入ヘッドロックアーム613は、チャネル603内に延び、リップ604と係合する。更に後述するように、プッシュプレート係合アーム615は、プッシュプレート500(図9)内に延び、そこにロックして、注入ヘッドアセンブリをロックする。プッシュプレート係合アーム615は、傾斜面616を含み、シフトプレート400(図8)の係合及びヘッドロック612のロック解除を容易にする。
【0035】
図11は、挿入器デバイス10の偶発的な作動を阻止するように構成された、挿入器デバイス10の安全アセンブリ700を示している。安全アセンブリ700は、上部ハウジング120(図5)の安全支柱126内に配置されたばね701と、安全装置702(図13及び14も参照)とを含む。安全装置702は、上部ハウジング120(図5)の安全支柱126内に部分的に配置され、下部ハウジング130(図4)の安全シート127を通って延びる長い垂直ロッド703から構成される。ロッド703は、上端近くにタブ704を含み、更に後述するように、側壁705は、安全キャッチ203と係合し、キャリッジ200(図6)の水平移動を防止することによってボタン201の偶発的な押下を防止する。ロッド703はまた、ハウジング100内に安全アセンブリ700を保持するために、ハウジング100の安全シート127上に吊り下げられて静止する縦リブ706を含む(図12)。
【0036】
ここで、挿入器デバイス10の動作を、図12~27を参照して説明する。
【0037】
最初に、図12及び13に示されるように、挿入器デバイス10は、安全装置702がキャリッジ200の平行移動を妨害するロック構成にある安全アセンブリ700を備えた収納構成で提供される。ロッド703の下端は、ハウジング100の下に突出し、ロッド703の上端のタブ704は、キャリッジ200の安全キャッチ203と係合して、キャリッジ200の水平移動を防止する。同様に、シフトプレート400のタブ401は、キャリッジ200のシフトプレートキャッチ205と係合し、シフトプレート400、プッシュプレート500、針アセンブリ300、及び注入ヘッドアセンブリ600を所定の位置に保持し、挿入ばね113を圧縮する。この収納構成では、針アセンブリ300は持ち上げられ、ハウジング100内に隠され、患者又は患者の介護者との接触を防止する。また、キャリッジ戻しばね202は、上部ハウジング120のキャリッジ戻し壁101と係合して、公差によるボタン201のたるみを防止し、ユーザにより高い品質の感触を提供する。
【0038】
次に図14を参照すると、患者の皮膚に接触するなどして安全装置702が方向A1(図13)に押し上げられたロック解除構成の安全装置アセンブリ700が示されている。この押し動作により、タブ704の壁705が安全キャッチ203から解放され、キャリッジ200をA2方向(図13)に後方に平行移動させることができるようにする。図14はまた、ボタン201の押下に応じて、キャリッジ200が方向A2に平行移動されたトリガ構成の挿入器デバイス10を示している。このトリガ動作により、シフトプレート400のタブ401がキャリッジ200のシフトプレートキャッチ205との干渉から解放され、シフトプレート400、プッシュプレート500、針アセンブリ300、及び注入ヘッドアセンブリ600が挿入ばね113の影響下で垂直方向下向きに平行移動できるようになる(図15~18)。キャリッジ200のボタン201が押されると、キャリッジ戻しばね202が上部ハウジング120のキャリッジ戻し壁101に対して圧縮され、ボタン201(図示せず)を離した後に、キャリッジ200を初期位置に戻すための戻し力が撓みによって提供される。
【0039】
次に図15及び16を参照すると、挿入器デバイス10は、キャリッジ200が平行移動した直後であるが、挿入が始まる前のトリガ構成にあることが示されている。針ハブ305、シフトプレート400、及びプッシュプレート500は、図16に示すように、シフトプレート400とプッシュプレート500との間に挟まれる針ハブ305上のスナップアーム306を介して一緒に保持される。内向きプッシュプレートリップ307は、プッシュプレート500の針ハブキャッチ501と係合する。外向きシフトプレートリップ308は、シフトプレート400の針ハブキャッチ402と係合する。シフトプレート400とプッシュプレート500との間の針ハブ305のこの挟み込みは、これらの構成要素を一緒にキャリッジ200の上にロックする。このロックはまた、針ハブ305が、挿入完了前に後退するのを防止する。
【0040】
次に図17及び18を参照すると、挿入器デバイス10が挿入構成にあることが示されている。挿入ばね113は、プッシュプレート500、シフトプレート400、針アセンブリ300、及び注入ヘッドアセンブリ600を一緒にキャリッジ200を通過して下向きに押す。この下向きの移動は、プッシュプレート500が、注入ヘッド601が適用されている表面(典型的には患者の身体の挿入部位)に達するまで続く。この挿入構成では、導入針304及びカニューレ602は、ハウジング100から患者の皮膚内に突出し、注入ヘッド601は患者の皮膚に接触して付着する。付勢アーム502は、距離Dだけシフトプレート400を瞬間的に保持し続けるので、針ハブ305のスナップアーム306は、シフトプレート400とプッシュプレート500との間に挟まれたままになり、それによって、スナップアーム306が外向きに跳ねて針アセンブリ300を解放することが防止される。プッシュプレート500は、ハウジング100と相互作用して、挿入構成においてロックされたままであり得る。
【0041】
次に図21及び22を参照すると、挿入器デバイス10が中間構成にあることが示されている。シフトプレート400がプッシュプレート500に対して距離D(図17)にわたって下向きに平行移動し続けると、挿入ばね113がプッシュプレート500の付勢アーム502の力に打ち勝ち、シフトプレート400を押し付けてプッシュプレート500に達する。この相対的な移動の間、シフトプレート400は針アセンブリ300を通過し続け、針アセンブリ300は針ハブ305のスナップアーム306のロックを解除し、スナップアーム306が上向き及び外向きに方向A4に自由に撓むようになり、それによって針アセンブリ300を他の構成要素から解放する。次に、後退ばね112は自由になり、以下で更に説明するように、針アセンブリ300を方向A5に上向きに駆動する。シフトプレート400及びプッシュプレート500は、挿入ばね113からの継続的な力、及び/又はシフトプレート400の保持クリップ409と下部ハウジング130のシフトプレートキャッチ118との間の相互作用に基づいて、この中間構成に保持され得る。
【0042】
有利には、シフトプレート400は、シフトプレート400とプッシュプレート500との相対的な移動のみに基づいて、プッシュプレート500の最終位置に関係なく、導入針304の後退を引き起こし得る。例えば、プッシュプレート500が、ハウジング100の底面に到達することなく、挿入構成において皮膚の隆起上に静止したとしても、シフトプレート400は、中間構成に到達すると、下向きに移動し続け、導入針304を解放する。付勢アーム502はまた、プッシュプレート500に対するシフトプレート400の衝撃を弱めるのに役立ち得る。付勢アーム502の剛性は、シフトプレート400とプッシュプレート500との間のこの相対的な移動を制御するために(例えば、カンチレバー梁を太く又は細くすることによって)調整され得る。シフトプレート400のこれらの利点にもかかわらず、例えば、特定の実施形態においてシフトプレート400を排除し、プッシュプレート500の位置に基づいて針アセンブリ300を解放することも、本開示の範囲内である。
【0043】
図19及び20に示されるように、シフトプレート400は、ヘッドロック612と相互作用して、注入ヘッド601を挿入器デバイス10から解放する。シフトプレート400の傾斜ウェッジ406は、シフトプレート400が図19の挿入構成から図20の中間構成に下方にシフトされると、ヘッドロック612と係合する。この係合により、ヘッドロック612が後方にシフトプレート400に向かってA3方向に引っ張られる。最後に、シフトプレート400が図20の中間構成において底に達すると、ヘッドロック612は、ヘッドロック612に適合するようにサイズ決定されたヘッドロック受容スロット408内に受容される。傾斜ウェッジ406の最終的な下降位置は、ヘッドロック612を後方位置に保持し、ヘッドロック612の自由な移動を防止する。
【0044】
図23及び24は、針ハブ305及び導入針304が後退ばね112の作用によってハウジング100内に後退された後の、後退構成にある挿入器デバイス10を示している。この後退構成では、挿入器デバイス10は、患者の皮膚から快適に持ち上げられ得る。上述のように、注入ヘッド601が患者の皮膚に付着され、かつヘッドロック612が注入ヘッド601から分離された状態で、注入ヘッド601及びカニューレ602は、挿入器デバイス10から分離され、患者の皮膚に付着されたままである。
【0045】
挿入器デバイス10は、導入針304が患者の皮膚の表面に対して垂直かつ直角に、回転運動、水平運動、又はぐらつきを最小限に抑えて、確実に組織に入り、患者の快適さを保証するように設計され得る。図25には、プッシュプレート500(図9も参照)上の対応するガイドレール504A、504B、504C、504Dと相互作用する下部ハウジング130上のガイドスロット102A、102B、102C、102D(図4も参照)と、シフトプレート400(図8も参照)上の対応するガイドレール411A、411B、411C、411Dと相互作用するガイドスロット505A、505B、505C、505Dと、を含む、様々な位置合わせ特徴が示されている。これらの位置合わせ特徴は、注入ヘッドアセンブリ600の垂直方向の平行移動全体の間、互いに係合する。図26及び27には、針ハブ305が同心に着座する上部ハウジング120の中央コア103と、プッシュプレート500のガイドポスト506A、506Bと相互作用する上部ハウジング120のガイドスロット104A、104Bと、を含む、追加の位置合わせ特徴が示されている。
【0046】
別の例示的な挿入器デバイス10’を図28~31に示す。挿入器デバイス10’は、以下に説明することを除いて、同様の参照番号が同様の要素を識別する、上述の挿入器デバイス10と同様である。
【0047】
挿入器デバイス10’は、注入ヘッド601’の導入針304’及び/又はカニューレ602’を患者の皮下空間に挿入するように構成され、任意選択のホルダ607’の適用も可能にする。ホルダ607’は、注入ヘッド601’とともに、又はホルダ607’の位置を制御するために、前に挿入された注入ヘッド601’をプッシュプレート500’と位置合わせすることにより、その後のステップにおいて、適用され得る。挿入器デバイス10’は、2020年3月20日に出願された国際出願PCT/US第2020/023825号に記載されているように、ポンプ又はボーラス注射器(図示せず)などの薬物送達デバイスを、ホルダ607’に結合されたパッチモダリティ又はホルダ607’なしのテザーモダリティのいずれかで交換可能に装着できるようにするシステムの一部であり、その開示は参照によりその全体が明示的に本明細書に組み込まれる。
【0048】
組み立てられた挿入器デバイス10’の断面が図29に示されている。ハウジング100’は、ホルダ607’が入れ子になるように成形及びサイズ決定されたホルダ受け606’を含む。ホルダ607’は、患者の皮膚に付着するように構成された付着裏当て609’を含む。
【0049】
図30及び31に示すように、ハウジング100’は、ホルダスナップ107’も含む。ホルダスナップ107’は、ハウジング100’の後部に向かって位置する。ホルダスナップ107’は、ハウジング100’の半可撓性な延長部であり、ホルダ607’のスナップ受け611’とスナップ嵌めロックで可逆的に係合する。図30の収納構成では、スナップブロッカ206’は、ホルダスナップ107’に直接隣接して配置され、したがってホルダスナップ107’をスナップ受け611’と接触させ、ホルダ607’の移動を妨げる。ホルダスナップ107’は、ボタン201’を押すと、スナップ受け611’とのスナップ嵌め係合から解放されるように構成される。ボタン201’が押され、キャリッジ200’が図31のトリガ構成に平行移動すると、スナップブロッカ206’も平行移動してホルダスナップ107’と干渉しなくなり、したがってホルダスナップ107’をスナップ受け611’から解放することができる。好ましい実施形態では、ホルダスナップ107’は軽い保持力しか持たないので、皮膚上のホルダ607’の付着裏当て609’(図29)の力は、ホルダ607’を挿入器デバイス10’から引き抜くのに十分である。
【0050】
上記開示の更なる実施形態及び変形が可能である。例えば、図示の挿入器デバイス10は、2つの圧縮ばね112、113を使用して、導入針304の挿入及び後退を駆動する。しかしながら、別の原動力が想定される場合もある。例えば、いくつかの実施形態では、圧縮ばね112、113を組み合わせて二重巻きばねにすることができる。他の実施形態では、圧縮ばね112、113が取り除かれ、スコッチヨーク、スライダクランク、ねじりばね、又はカム系機構が、導入針304の挿入及び後退のためのエネルギーを蓄えるために使用され得る。
【0051】
同様に、これまで説明してきた実施形態は、安全アセンブリ700を使用しており、この安全アセンブリ700は、挿入器デバイス10を患者の身体に適用することによって解放される。この動作により、安全装置702が押し上げられ、キャリッジ200の前方への移動が可能になる。しかしながら、安全アセンブリ700は、別の形態をとり得る。これは、ボタン又はスライド機構によって、又は当技術分野で知られている様々な他の機械的機構のいずれかによって達成され得る。一実施形態では、安全装置は使用されない。
【0052】
本発明は例示的な設計を有するものとして記載されてきたが、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内で更に修正することができる。したがって、本出願は、本発明の一般的原理を用いた本発明の任意の変形、使用、又は適応を網羅することが意図される。更に、本出願は、本発明が関係し、添付の特許請求の範囲の制限内にある、当該技術分野で既知の又は慣習的な実施の範囲内に入るものとして、本開示からのそのような逸脱を網羅することを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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