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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022576938
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002448
(87)【国際公開番号】W WO2022157975
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃大朗
(72)【発明者】
【氏名】塩田 裕亮
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/048966(WO,A1)
【文献】米国特許第05358505(US,A)
【文献】特開2005-094552(JP,A)
【文献】特開2006-333995(JP,A)
【文献】米国特許第05069664(US,A)
【文献】特開2012-179102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0228176(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12-18/16
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースと、
前記シースに挿入され、導電性を有し高周波電流が通電されるロッドと、
記ロッドの周囲に設けられた超音波発振部と、
前記ロッドに前記高周波電流を通電させる金属製の操作ワイヤと、
を備え、
前記超音波発振部は、
前記ロッドが貫通する圧電素子と、
前記ロッドに接続され、前記圧電素子の先端側に配置された第一フランジと、
前記ロッドに接続され、前記圧電素子の基端側に配置された第二フランジと、
を有し、
前記圧電素子は、前記第一フランジと、前記第二フランジと、に挟まれており、
前記圧電素子は、
前記ロッドの周囲に設けられた筒形状の圧電体と、
前記圧電体の内面に沿って取り付けられた第一電極と、
前記圧電体の外面に沿って取り付けられた第二電極と、
を有し、
前記ロッドは前記超音波発振部を貫通しており、前記ロッドの先端部は前記高周波電流を出力するモノポーラ電極を有し、前記第二フランジから突出した前記ロッドの基端部を前記操作ワイヤに連結させたことを特徴とする、
内視鏡用処置具。
【請求項2】
前記圧電素子は、筒状に形成されている、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記第一フランジは、筒状に形成されており、
前記第二フランジは、筒状に形成されており、
前記第一フランジの外径は、前記ロッドの外径より大きく、
前記第二フランジの外径は、前記ロッドの外径より大きい、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項4】
前記第一フランジは、前記ロッドと一体形成されている、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項5】
前記第一フランジは、前記ロッドに取付加工されている、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項6】
前記第二フランジは、前記ロッドと一体形成されている、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項7】
前記第二フランジは、前記ロッドに取付加工されている、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項8】
前記ロッドは、導電性を有し、前記高周波電流が通電される、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項9】
前記圧電素子は、第一絶縁部材により前記ロッドと絶縁されている、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項10】
前記第一フランジおよび前記第二フランジは、第二絶縁部材により前記圧電素子と絶縁されている、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項11】
前記第一フランジは、第三絶縁部材により先端側が覆われている、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項12】
前記ロッドは、長手方向に沿って延びる送水管路を有する、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項13】
前記圧電素子を径方向に超音波振動させて、ポアソン効果を利用して長手軸方向に超音波振動を前記ロッドに伝える
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項14】
前記圧電素子は、第一絶縁部材により前記ロッドと絶縁されており、
前記圧電素子の前記第一電極と前記ロッドとの間に前記第一絶縁部材が配設されている、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項15】
前記ロッドから前記高周波電流が出力される際に、前記圧電素子から超音波振動が出力可能である、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療において、高周波ナイフなどの切開・剥離用の内視鏡用処置具が使用されている。特許文献1には、高周波電流を通電させた電極により組織の切開・剥離を行う高周波ナイフが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】中国特許出願公開第111202485号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1等に記載された従来の高周波ナイフは、切開・剥離などの処置を行う際に高周波ナイフに血管が張り付くことがある。その場合、動かした高周波ナイフが血管を傷つけることにより出血が生じる。
【0005】
上記事情を踏まえ、本発明は、切開・剥離などの処置を行う際に出血が生じにくい内視鏡用処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る内視鏡用処置具は、シースと、前記シースに挿入され、導電性を有し高周波電流が通電されるロッドと、記ロッドの周囲に設けられた超音波発振部と、前記ロッドに前記高周波電流を通電させる金属製の操作ワイヤと、を備え、前記超音波発振部は、前記ロッドが貫通する圧電素子と、前記ロッドに接続され、前記圧電素子の先端側に配置された第一フランジと、前記ロッドに接続され、前記圧電素子の基端側に配置された第二フランジと、を有し、前記圧電素子は、前記第一フランジと、前記第二フランジと、に挟まれており、前記圧電素子は、前記ロッドの周囲に設けられた筒形状の圧電体と、前記圧電体の内面に沿って取り付けられた第一電極と、前記圧電体の外面に沿って取り付けられた第二電極と、を有し、前記ロッドは前記超音波発振部を貫通しており、前記ロッドの先端部は前記高周波電流を出力するモノポーラ電極を有し、前記第二フランジから突出した前記ロッドの基端部を前記操作ワイヤに連結させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の内視鏡用処置具によれば、切開・剥離などの処置を行う際に出血が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態に係る内視鏡処置システムの全体図である。
図2】同内視鏡処置システムの処置具を示す全体図である。
図3】同処置具の先端部の斜視図である。
図4】同処置具の先端部の断面図である。
図5】同処置具の圧電素子の斜視図である。
図6】長手方向における振動の定在波を示す図である。
図7】同処置具の使用手順を示すフローチャートである。
図8】同処置具の超音波発振部の変形例を示す斜視図である。
図9】同処置具の第一フランジの変形例を示す断面図である。
図10】第一フレキシブル配線の経路の変形例を示す断面図である。
図11】第二フランジの変形例を示す断面図である。
図12】本発明の第二実施形態に係る処置具を示す全体図である。
図13】同処置具の先端部の斜視図である。
図14】同処置具の先端部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る内視鏡処置システム300について、図1から図7を参照して説明する。図1は本実施形態に係る内視鏡処置システム300の全体図である。
【0010】
[内視鏡処置システム300]
内視鏡処置システム300は、図1に示すように、内視鏡200と処置具100とを備えている。処置具100は、内視鏡200に挿入して使用される。
【0011】
[内視鏡200]
内視鏡200は、公知の軟性内視鏡であり、先端から体内に挿入される挿入部202と、挿入部202の基端に取り付けられた操作部207と、を備える。
【0012】
挿入部202は、撮像部203と、湾曲部204と、軟性部205と、を有する。挿入部202の先端から、撮像部203、湾曲部204および軟性部205の順でそれぞれが配されている。挿入部202の内部には、処置具100を挿入するためのチャンネル206が設けられている。挿入部202の先端には、チャンネル206の先端開口部206aが設けられている。
【0013】
撮像部203は、例えばCCDやCMOSなどの撮像素子を備えており、処置対象となる部位を撮像可能である。撮像部203は、処置具100がチャンネル206の先端開口部206aから突出している状態において、処置具100のロッド2を撮像することができる。
【0014】
湾曲部204は、操作者による操作部207の操作に従って湾曲する。軟性部205は、可撓性を有する管状の部位である。
【0015】
操作部207は、軟性部205に接続されている。操作部207は、グリップ208と、入力部209と、チャンネル206の基端開口部206bと、ユニバーサルコード210と、を有する。グリップ208は、操作者によって把持される部位である。入力部209は、湾曲部204を湾曲動作させるための操作入力を受け付ける。ユニバーサルコード210は、撮像部203が撮像した画像を外部に出力する。ユニバーサルコード210は、プロセッサなどを備えた画像処理装置を経由して、液晶ディスプレイなどの表示装置に接続される。
【0016】
[処置具100]
図2は、処置具100を示す全体図である。
処置具(内視鏡用処置具)100は、シース1と、ロッド2と、超音波発振部3と、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。以降の説明において、処置具100の長手方向Aにおいて、患者の体内に挿入される側を「先端側(A1)」、操作部5側を「基端側(A2)」という。
【0017】
シース1は、可撓性および絶縁性を有し、先端1aから基端1bまで延びる長尺な部材である。シース1は、内視鏡200のチャンネル206に挿入可能な外径を有する。図1に示すように、シース1がチャンネル206に挿入された状態において、シース1の先端1aは、チャンネル206の先端開口部206aから突没可能である。
【0018】
図3は、処置具100の先端部の斜視図である。
ロッド2は、金属製の略丸棒状の部材であり、シース1の先端1aから突出して設けられている。ロッド2は、導電性を有し、高周波電流が通電される。ロッド2は、ロッド本体20と、電極部21と、を有する。
【0019】
図4は、処置具100の先端部の断面図である。
ロッド2は、長手方向Aに沿って超音波発振部3を貫通している。ロッド2の長手方向Aにおける中心軸O2は、シース1の長手方向Aにおける中心軸O1と略一致している。
【0020】
ロッド本体20は、金属製の丸棒状の部材である。ロッド本体20の基端には操作ワイヤ4が取り付けられている。ロッド本体20は、操作部5と接続された操作ワイヤ4から供給される高周波電流を電極部21に供給する。
【0021】
電極部21は、ロッド本体20の先端に設けられた円板状の導電部材である。長手方向Aに沿った方向から見た正面視において、電極部21の外周は、ロッド本体20の外周と同心円状に形成されている。図4に示すように、電極部21の長手方向Aに対して垂直な径方向Rの長さL1は、ロッド本体20の径方向Rの長さL2よりも長い。
【0022】
操作ワイヤ4からロッド2に高周波電流が供給されると、電極部21およびロッド本体20の突出部は、高周波電流を生体組織へ出力するモノポーラ電極として機能する。
【0023】
超音波発振部3は、シース1の先端1aにおいてロッド2の周囲に設けられた超音波を発振する部材である。超音波発振部3は、シース1の内部に設けられており、シース1の内周面1cと接している。超音波発振部3は、圧電素子30と、第一フランジ34と、第二フランジ35と、第一絶縁部材36と、第二絶縁部材37と、第三絶縁部材38と、熱収縮チューブ39と、を有する。
【0024】
図5は、圧電素子30の斜視図である。
圧電素子30は、電圧を力に変換する圧電効果を利用した受動素子である。圧電素子30は、空洞Hを内部に有する円筒形状である。圧電素子30は、圧電体31と、第一電極32と、第二電極33と、を有する。
【0025】
圧電体31は、円筒形状であり、例えばセラミックスや単結晶素材で形成されている。圧電体31には、図4に示すように、内面31iに沿って第一電極32が取り付けられている。圧電体31には、外面31oに沿って第二電極33が取り付けられている。
【0026】
圧電体31は、第一電極32および第二電極33から交流電流が印加されることで振動する。圧電体31は、分極方向が内面31iと外面31oとを結ぶ径方向R(厚み方向)となる。圧電体31は、分極方向が内面31iと外面31oとを結ぶ径方向Rとなるため、圧電効果により径方向Rに振動する。
【0027】
図4に示すように、ロッド2は、圧電素子30の空洞Hを貫通している。圧電素子30とロッド2との間には第一絶縁部材36が設けられており、ロッド2の供給される高周波電流は圧電素子30に流れない。また、圧電素子30の先端側および基端側には第二絶縁部材37が設けられている。
【0028】
図5に示すように、第一電極32は、第一フレキシブル配線32aを経由して、第一ワイヤ32bに接続されている。第一フレキシブル配線32aは、柔軟性を有する平板状の配線基板である。第一ワイヤ32bは、シース1の内部空間1sを挿通して操作部5まで延びており、図示しない超音波駆動装置に接続されている。第一フレキシブル配線32aおよび第一ワイヤ32bは、表面に絶縁コーティングが施されている。
【0029】
第一電極32と第一フレキシブル配線32aは一体に形成されていてもよい。この構成によって部品の接合工程が減るので組み立ての効率が向上する。
【0030】
第二電極33は、第二フレキシブル配線33aを経由して、第二ワイヤ33bに接続されている。第二フレキシブル配線33aは、柔軟性を有する平板状の配線基板である。第二ワイヤ33bは、シース1の内部空間1sを挿通して操作部5まで延びており、図示しない超音波駆動装置に接続されている。第二フレキシブル配線33aおよび第二ワイヤ33bは、表面に絶縁コーティングが施されている。
【0031】
第二電極33と第二フレキシブル配線33aは一体に形成されていてもよい。この構成によって部品の接合工程が減るので組み立ての効率が向上する。
【0032】
図4に示すように、第一フランジ34は、金属製の円筒形状の部材であり、圧電素子30の先端側に設けられている。第一フランジ34の外径(径方向Rの長さ)は、ロッド2の外径(径方向Rの長さ)L2よりも長い。第一フランジ34の先端側は、第三絶縁部材38により覆われている。第一フランジ34は、第二絶縁部材37により圧電素子30と絶縁されている。
【0033】
第一フランジ34は、ロッド2と一体形成されている。なお、第一フランジ34とロッド2とは別々に形成されていてもよい。その場合、第一フランジ34はロッド2に対して接着、ネジ締め、圧入、焼き嵌めなどにより取付加工される。
【0034】
第二フランジ35は、金属製の円筒形状の部材であり、圧電素子30の先端側に設けられている。第二フランジ35の外径(径方向Rの長さ)は、ロッド2の外径(径方向Rの長さ)L2よりも長い。第二フランジ35は、第二絶縁部材37により圧電素子30と絶縁されている。
【0035】
第二フランジ35は、ロッド本体20の外周部に設けられた外ネジ20sに螺合するネジ締めにより取り付けられている。第二フランジ35は、ロッド2に対して接着、圧入、焼き嵌めなどにより取付加工されていてもよい。なお、第二フランジ35とロッド2とは一体形成されていてもよい。
【0036】
第二フランジ35には、長手方向Aに貫通する貫通孔35hが形成されている。第一フレキシブル配線32aは、貫通孔35hを挿通して基端側に延びている。一方、第二フレキシブル配線33aは、第二フランジ35の外側を通過して基端側に延びている。第一フレキシブル配線32aおよび第二フレキシブル配線33aは、外周部が絶縁コーティングされているため、第二フランジ35と電気的に接続されない。
【0037】
圧電体31に圧電効果により径方向Rの振動が発生すると、ポアソン効果により長手方向Aにも振動が発生する。第一フランジ34および第二フランジ35は、第二絶縁部材37を経由して圧電素子30を挟み込んでいる。第一フランジ34および第二フランジ35は、圧電素子30が生成する長手方向Aにおける超音波振動を増幅させる。
【0038】
図6は、長手方向Aにおける振動の定在波SWを示す図である。
圧電素子30の先端および圧電素子30の基端が定在波SWの腹SW1(振幅が最も大きくなる部分)となるように、印加される交流電流の周波数や圧電素子30の寸法が調整されていることが好ましい。これらの調整を行うことで、長手方向Aにおける振動をより増幅させることができる。
【0039】
第一フランジ34の先端および第二フランジ35の基端が定在波SWの節SW2(振幅が最も小さくなる部分)となるように、第一フランジ34および第二フランジ35の寸法と材質や、ロッド2の寸法と材質が調整されていることが好ましい。これらの調整を行うことで、長手方向Aにおける振動をより増幅させることができる。なお、長手方向Aにおける振動の定在波SWは、図6に示したものに限定されない。
【0040】
第一フランジ34はロッド2と一体形成されているため、圧電素子30から伝達される長手方向Aにおける振動を効率よくロッド2に伝達することができる。第一フランジ34がロッド2と別々に形成されている場合であっても、第一フランジ34は、例えばロッド2と材質が同じであれば、長手方向Aにおける振動を効率よくロッド2に伝達することができる。
【0041】
長手方向Aにおける振動を基端側よりも先端側に伝達する観点から、第二フランジ35は、第一フランジ34と比較して音響インピーダンスの差が小さい部材であることが望ましい。
【0042】
図4に示すように、熱収縮チューブ39は、圧電素子30、第一フランジ34および第二フランジ35の外周部に熱収縮により取り付けられたチューブである。熱収縮チューブ39は、シース1の内周面1cに接しているため、圧電素子30、第一フランジ34および第二フランジ35はシース1の内部を前後に摺動できない。
【0043】
操作ワイヤ4は、金属製のワイヤであり、シース1の内部空間1sを挿通している。操作ワイヤ4の先端はロッド2に接続され、操作ワイヤ4の基端は操作部5に接続されている。操作ワイヤ4は、コイルワイヤ41と、インナーチューブ42と、を有する。コイルワイヤ41はインナーチューブ42に挿通されている。インナーチューブ42は、可撓性および絶縁性を有する。
【0044】
操作部5は、図1および図2に示すように、操作部本体51と、スライダ52と、給電コネクタ53と、を有する。
【0045】
操作部本体51の先端部は、シース1の基端1bと接続されている。操作部本体51は、操作ワイヤ4が挿通可能な内部空間を有している。操作ワイヤ4は、シース1の内部空間および操作部本体51の内部空間を通過してスライダ52まで延びている。
【0046】
スライダ52は、操作部本体51に対して長手方向Aに沿って移動可能に取り付けられている。スライダ52には、操作ワイヤ4の基端部が接続されている。術者がスライダ52を操作部本体51に対して相対的に進退させることにより、操作ワイヤ4およびロッド2が進退する。スライダ52には給電コネクタ53が固定されている。
【0047】
給電コネクタ53は、図示しない高周波電源装置に接続可能であり、操作ワイヤ4の基端部と電気的かつ物理的に接続されている。給電コネクタ53は、高周波電源装置から供給された高周波電流を、操作ワイヤ4およびロッド2を経由して電極部21に供給可能である。
【0048】
[内視鏡処置システム300の使用方法]
次に、本実施形態の内視鏡処置システム300を用いた手技(内視鏡処置システム300の使用方法)について説明する。具体的には、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療における病変部の切開・剥離処置および止血処置について説明する。
【0049】
準備作業として、術者は、公知の方法により病変部を特定し、病変部を膨隆させる。具体的には、術者は内視鏡200の挿入部202を消化管(例えば、食道、胃、十二指腸、大腸)内に挿入し、内視鏡の撮像部203で得られる画像を観察しながら病変部を特定する。次に、術者は公知の粘膜下局注針を挿入部202のチャンネル206に挿通し、粘膜下局注針により局注用の液体(局注液)を注入し病変部を膨隆させる。局注液を注入後、粘膜下局注針をチャンネル206から抜去する。
【0050】
術者は処置具100をチャンネル206に挿入し、挿入部202の先端開口部206aからシース1の先端1aを突出させる。術者は、操作部5のスライダ52を操作部本体51に対して相対的に前進させ、ロッド2を突出させる。
【0051】
図7は、処置具100の使用手順を示すフローチャートである。
術者は、ステップS11において、超音波駆動装置を操作して圧電素子30から超音波振動を発生させる。
【0052】
次に、術者は、ステップS12において、高周波電源装置を操作してロッド2から高周波電流を生体組織へ出力する。ステップS12の前にステップS11が実施されるため、ロッド2から高周波電流が出力する前に圧電素子30から超音波振動が発生する。なお、ロッド2から高周波電流が出力する前に圧電素子30から超音波振動が発生するのであれば、術者はステップS11とステップS12を同時に実施してもよく、順序を入れ替えて実施してもよい。
【0053】
術者は、ステップS13において、切開・剥離処置や止血処置を行う。術者は、ロッド2を前進させ、高周波電流を通電させた状態で電極部21を移動させて病変部の粘膜を切開する。また、術者は、ロッド2を前進させ、高周波電流を通電させた状態で、切開した病変部の粘膜を持ち上げて粘膜下層を露出させながら、切開した病変部の粘膜下層を剥離する。
【0054】
ロッド2から高周波電流を出力して病変部を切開・剥離するとき、圧電素子30が発生させる長手方向Aにおける振動により、ロッド2は振動する。そのため、切開・剥離するロッド2に生体組織は張り付きにくい。その結果、切開・剥離を行う際において、ロッド2が血管を傷つけることにより出血が生じてしまうことを好適に防止できる。
【0055】
切開・剥離処置において出血した場合、術者は止血処置を行う。術者は、ロッド2に高周波電流を流してロッド2を熱する。術者は、熱したロッド2により出血した出血箇所を焼灼して止血する。
【0056】
ロッド2から熱エネルギーを出力して出血箇所を焼灼して止血するとき、圧電素子30が発生させる長手方向Aにおける振動により、ロッド2は振動する。そのため、止血するロッド2に生体組織は張り付きにくい。その結果、止血を行う際に血管を傷つけることにより、さらに出血が生じてしまうことを好適に防止できる。
【0057】
術者は、必要に応じて上述の動作(処置)を継続し、最終的に病変部を切除し、ESDの手技を終了する。
【0058】
術者は、ステップS14において、高周波電源装置を操作してロッド2から高周波電流の出力を停止させる。
【0059】
術者は、ステップS15において、超音波駆動装置を操作して圧電素子30から超音波振動の出力を停止させる。ステップS15の前にステップS14が実施されるため、ロッド2から高周波電流の出力が停止した後に圧電素子30から超音波振動の出力が停止する。なお、ロッド2から高周波電流の出力が停止した後に圧電素子30から超音波振動の出力が停止するのであれば、術者はステップS14とステップS15を同時に実施してもよく、順序を入れ替えて実施してもよい。
【0060】
上記のフローにて手技を行えば、ロッド2から高周波電流が出力されるときは、常に圧電素子30から超音波振動が出力されている。術者がロッド2から出力される高周波電流や熱エネルギーを使用して処置するとき、処置により血管を傷つけてしまい出血が生じてしまうことを好適に防止できる。
【0061】
内視鏡処置システム300は、上記のフローのように高周波電流と超音波振動の出力と停止を制御する制御装置をさらに有してもよい。例えば、術者による一個のスイッチ操作に基づいて、制御装置が高周波電流と超音波振動の出力と停止を制御してもよい。
【0062】
本実施形態に係る処置具100によれば、ロッド2により切開・剥離などの処置を行う際に、ロッド2を超音波振動させることにより、ロッド2に生体組織が張り付くことを防止できる。そのため、切開・剥離などの処置を行う際にロッド2が血管を傷つけることにより出血が生じてしまうことを好適に防止できる。
【0063】
本実施形態に係る処置具100によれば、圧電素子30は、圧電体31と第一電極32と第二電極33とが径方向Rに重ねて配置されている。そのため、これらを長手方向Aに重ねて配置する場合と比較して、圧電素子30を細径化および小型化することができる。
【0064】
本実施形態に係る処置具100によれば、長手方向Aにおける超音波振動は、圧電体31と第一電極32と第二電極33とを長手方向Aに重ねて配置する場合と比較して、小さくなる。しかしながら、第一フランジ34および第二フランジ35が、圧電素子30が生成する長手方向Aにおける超音波振動を処置に十分なレベルに増幅させることができる。
【0065】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0066】
(変形例1-1)
上記実施形態において、超音波発振部3は円筒形状である。しかしながら、超音波発振部3の形状はこれに限定されない。シース1が内視鏡200のチャンネル206に挿入可能であれば、超音波発振部3の形状は限定されない。図8は、超音波発振部3の変形例である超音波発振部3Aを示す斜視図である。超音波発振部3Aは、超音波発振部3と比較して、形状のみが異なる。超音波発振部3Aは、長手方向Aから見た正面視において、外周が矩形である筒状に形成されている。
【0067】
(変形例1-2)
上記実施形態において、第一フランジ34は円筒形状の部材である。しかしながら、第一フランジ34の形状はこれに限定されない。図9は、第一フランジ34の変形例である第一フランジ34Aを示す断面図である。第一フランジ34Aは、先端側に外径が基端側から先端側に向かって小さくなるテーパ面34tを有する。第一フランジ34Aのテーパ面34tの形状を調整することにより、長手方向Aにおける超音波振動の変成比を最適化できる。
【0068】
(変形例1-3)
上記実施形態において、第一フレキシブル配線32aは、第二フランジ35に形成された貫通孔35hを挿通して基端側に延びている。しかしながら、第一フレキシブル配線32aの経路はこれに限定されない。図10は、第一フレキシブル配線32aの経路の変形例を示す断面図である。図10に示す第一フレキシブル配線32aは、第二フランジ35を貫通せず、第二フランジ35に沿って屈曲しながら第二フランジ35の外側を通過して基端側に延びている。
【0069】
(変形例1-4)
上記実施形態において、第二フランジ35には第一フレキシブル配線32aが挿通する貫通孔35hが形成されている。しかしながら、第一フレキシブル配線32aが第二フランジ35を通過する態様はこれに限定されない。図11は、第二フランジ35の変形例である第二フランジ35Bを示す断面図である。第二フランジ35Bは、先端側フランジ35Baと基端側フランジ35Bbとを有する。先端側フランジ35Baおよび基端側フランジ35Bbは、金属製の円筒形状の部材である。先端側フランジ35Baは、基端側フランジ35Bbの先端側に配置されている。基端側フランジ35Bbは、ロッド本体20の外周部に設けられた外ネジ20sに螺合して取り付けられている。第一フレキシブル配線32aは、先端側フランジ35Baの内側を通過する。さらに、第一フレキシブル配線32aは、基端側フランジ35Bbに沿って屈曲しながら基端側フランジ35Bbの外側を通過して基端側に延びている。
【0070】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態に係る処置具100Bについて、図12から図14を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0071】
[処置具100B]
図12は、処置具100Bを示す全体図である。
処置具100Bは、第一実施形態の処置具100と同様に、内視鏡200とともに内視鏡処置システムとして使用される。シース1と、ロッド2Bと、超音波発振部3と、操作ワイヤ4Bと、操作部5Bと、を備える。以降の説明において、処置具100Bの長手方向Aにおいて、患者の体内に挿入される側を「先端側(A1)」、操作部5B側を「基端側(A2)」という。
【0072】
図13は、処置具100Bの先端部の斜視図である。
ロッド2Bは、金属製の略丸棒状の部材であり、シース1の先端1aから突出して設けられている。ロッド2Bは、ロッド本体20Bと、電極部21Bと、を有する。
【0073】
図14は、処置具100Bの先端部の断面図である。
ロッド本体20Bおよび電極部21Bは、長手方向Aに沿って延びる第一送水管路22を有することを除いて、第一実施形態のロッド本体20および電極部21と同様である。第一送水管路22は、電極部21Bに形成された先端開口22aに連通している。
【0074】
操作ワイヤ4Bは、コイルワイヤ41の内部に第二送水管路43が形成されていることを除いて、第一実施形態の操作ワイヤ4と同様である。第二送水管路43は、第一送水管路22の基端に連結されている。
【0075】
操作部5Bは、液体供給口54が操作部本体51に形成されていることを除いて、第一実施形態の操作部5と同様である。液体供給口54は、第二送水管路43の基端に連結されている。液体供給口54から供給した液体は、第二送水管路43および第一送水管路22を通過して先端開口22aから放出される。
【0076】
本実施形態に係る処置具100Bによれば、ロッド2Bにより切開・剥離などの処置を行う際に、ロッド2Bを振動させることにより、ロッド2Bに生体組織が張り付くことを防止できる。そのため、切開・剥離などの処置を行う際にロッド2Bが血管を傷つけることにより出血が生じてしまうことを好適に防止できる。
【0077】
本実施形態に係る処置具100Bによれば、局注用の液体(局注液)を液体供給口54から供給して病変部を膨隆させることができる。他の処置具を挿入部202のチャンネル206に入れ替えることなく、切開・剥離処置と局注処置とを繰り返し実施できる。
【0078】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、止血処理に使用される内視鏡用処置具に適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
300 内視鏡処置システム
200 内視鏡
100,100B 処置具(内視鏡用処置具)
1,1B,1D シース
2,2B ロッド
20,20B ロッド本体
21,21B 電極部
22 第一送水管路
22a 先端開口
3,3A 超音波発振部
30 圧電素子
31 圧電体
31i 内面
31o 外面
32 第一電極
32a 第一フレキシブル配線
32b 第一ワイヤ
33 第二電極
33a 第二フレキシブル配線
33b 第二ワイヤ
34,34A 第一フランジ
35,35B 第二フランジ
4,4B 操作ワイヤ
5,5B 操作部
図1
図2
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