(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】位置検出装置、レンズモジュール、撮像装置、および測距装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20241209BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20241209BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20241209BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20241209BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20241209BHJP
【FI】
G01D5/245 110M
G01D5/245 110B
G01B7/00 102M
G02B7/04 E
G03B5/00 J
G03B30/00
(21)【出願番号】P 2023063041
(22)【出願日】2023-04-07
【審査請求日】2023-06-06
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔡 永福
(72)【発明者】
【氏名】原田 健太郎
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-276262(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142522(WO,A1)
【文献】特開2007-051953(JP,A)
【文献】特開2012-112897(JP,A)
【文献】特開2022-051418(JP,A)
【文献】特開平02-268216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 ~ 5/252
G01B 7/00
G02B 7/04
G03B 5/00
G03B 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサと、
第1軸方向において前記磁気センサと離間して対向するように配置され、前記第1軸方向に隣り合うN極およびS極をそれぞれ複数含む第1の多極磁石を有し、前記磁気センサに及ぶ第1の磁場を発生する第1の磁場発生部と
を備え、
前記磁気センサと前記第1の磁場発生部とは、前記第1軸方向と直交する第2軸方向に相対的に移動可能に設けられ、
前記第1軸方向および前記第2軸方向の双方と直交する第3軸方向における前記磁気センサの中心位置は、前記第1の多極磁石の前記第3軸方向の中心位置、と異なって
おり、
前記磁気センサの少なくとも一部と前記第1の多極磁石の少なくとも一部とが、前記第1軸方向において対向するように重なり合っており、
前記第1軸方向において隣り合う前記N極と前記S極との境界は、前記第1軸方向と直交する第1平面に沿って延在しており、
前記磁気センサは、前記第1平面に沿って広がっており、前記第2軸方向に沿った第2軸方向磁場成分と前記第3軸方向に沿った第3軸方向磁場成分とを含む検出信号対象磁場の方向に対応した検出信号を生成する
位置検出装置。
【請求項2】
前記磁気センサは、前記第1の多極磁石と対向する第1の対向面を有し、
前記第1の多極磁石は、前記磁気センサと対向する第2の対向面を有し、
前記第1の対向面および前記第2の対向面は、いずれも前記第1平面に平行である
請求項1記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記第1の多極磁石の前記第1軸方向の寸法は、前記第1の多極磁石の前記第3軸方向の寸法よりも小さい
請求項1記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第2軸方向は、前記第3軸方向に沿った回転中心軸を中心として回転する方向である
請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記第2軸方向は、前記第1軸方向に沿った回転中心軸を中心として回転する方向である
請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記第1の多極磁石は、前記第3軸方向と直交する第1平面において湾曲した形状を有する
請求項4記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記第1の多極磁石は、全体として略直方体状の外形を有する
請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記第1の多極磁石は、前記第1軸方向と直交する第2平面において湾曲した形状を有する
請求項5記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記第1の多極磁石は、複数の前記N極として第1のN極および第2のN極を含むと共に複数の前記S極として第1のS極および第2のS極を含み、
前記第1のN極と前記第1のS極とが前記第1軸方向に隣り合って配置され、
前記第2のN極と前記第2のS極とが前記第1軸方向に隣り合って配置され、
前記第1のN極と前記第2のS極とが前記第2軸方向に隣り合って配置され、
前記第2のN極と前記第1のS極とが前記第2軸方向に隣り合って配置されている
請求項1記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記第1の多極磁石は、
前記第1軸方向に沿った第1の方向に着磁された第1領域部分と、
前記第1軸方向に沿った前記第1の方向と反対の第2の方向に着磁された第2領域部分と
を含む
請求項1記載の位置検出装置。
【請求項11】
前記第1の多極磁石は、前記第1領域部分と前記第2領域部分との間に、ニュートラルゾーンをさらに含む
請求項
10記載の位置検出装置。
【請求項12】
前記ニュートラルゾーンは前記第2軸方向と直交する第3平面に沿って延在している
請求項
11記載の位置検出装置。
【請求項13】
前記第1の多極磁石は前記第2軸方向に沿った長手方向を有している
請求項1記載の位置検出装置。
【請求項14】
前記磁気センサと前記第1の多極磁石とは、前記第1軸方向において互いに重なり合う状態を維持しつつ、前記第2軸方向に沿って相対的に移動可能に設けられている
請求項1記載の位置検出装置。
【請求項15】
第2の磁場を発生する第2の磁場発生部をさらに備え、
前記第1の磁場発生部は、前記第2の磁場により、前記磁気センサおよび前記第2の磁場発生部に対し前記第2軸方向に沿って移動可能に設けられている
請求項1記載の位置検出装置。
【請求項16】
磁気センサと、
第1軸方向において前記磁気センサと離間して対向するように配置され、前記第1軸方向に沿って隣り合うN極およびS極をそれぞれ複数含む第1の多極磁石を有し、前記磁気センサに及ぶ第1の磁場を発生する第1の磁場発生部と、
第2の磁場を発生する第2の磁場発生部と、
レンズと
を備え、
前記磁気センサおよび前記第2の磁場発生部と前記第1の磁場発生部および前記レンズとは、前記第1軸方向と直交する第2軸方向に沿って相対的に移動可能に設けられ、
前記第1軸方向および前記第2軸方向の双方と直交する第3軸方向における前記磁気センサの中心位置は、前記第1の多極磁石の前記第3軸方向の中心位置、と異なって
おり、
前記磁気センサの少なくとも一部と前記第1の多極磁石の少なくとも一部とが、前記第1軸方向において対向するように重なり合っており、
前記第1軸方向において隣り合う前記N極と前記S極との境界は、前記第1軸方向と直交する第1平面に沿って延在しており、
前記磁気センサは、前記第1平面に沿って広がっており、前記第2軸方向に沿った第2軸方向磁場成分と前記第3軸方向に沿った第3軸方向磁場成分とを含む検出信号対象磁場の方向に対応した検出信号を生成する
レンズモジュール。
【請求項17】
撮像素子と、
レンズモジュールと
を備え、
前記レンズモジュールは、
磁気センサと、
第1軸方向において前記磁気センサと離間して対向するように配置され、前記第1軸方向に沿って隣り合うN極およびS極をそれぞれ複数含む第1の多極磁石を有し、前記磁気センサに及ぶ第1の磁場を発生する第1の磁場発生部と、
第2の磁場を発生する第2の磁場発生部と、
レンズと
を備え、
前記磁気センサおよび前記第2の磁場発生部と前記第1の磁場発生部および前記レンズとは、前記第1軸方向と直交する第2軸方向に沿って相対的に移動可能に設けられ、
前記第1軸方向および前記第2軸方向の双方と直交する第3軸方向における前記磁気センサの中心位置は、前記第1の多極磁石の前記第3軸方向の中心位置、と異なって
おり、
前記磁気センサの少なくとも一部と前記第1の多極磁石の少なくとも一部とが、前記第1軸方向において対向するように重なり合っており、
前記第1軸方向において隣り合う前記N極と前記S極との境界は、前記第1軸方向と直交する第1平面に沿って延在しており、
前記磁気センサは、前記第1平面に沿って広がっており、前記第2軸方向に沿った第2軸方向磁場成分と前記第3軸方向に沿った第3軸方向磁場成分とを含む検出信号対象磁場の方向に対応した検出信号を生成する
撮像装置。
【請求項18】
照射した光を検出することによって対象物までの距離を測定する測距装置であって、
前記光の進行方向を変化させると共に回転するように構成された光学素子と、
磁気センサと、
第1軸方向において前記磁気センサと離間して対向するように配置され、前記第1軸方向に沿って隣り合うN極およびS極をそれぞれ複数含む
第1の多極磁石を有し、前記磁気センサに及ぶ磁場を発生する磁場発生部と
を備え、
前記磁気センサと前記磁場発生部とは、前記第1軸方向と直交する第2軸方向に相対的に移動可能に設けられ、
前記磁場発生部は、前記光学素子と連動して回転軸を中心として前記第2軸方向に回転するように構成され、
前記第1軸方向および前記第2軸方向の双方と直交する第3軸方向における前記磁気セ
ンサの中心位置は、前記第1の多極磁石の前記第3軸方向の中心位置、と異なって
おり、
前記磁気センサの少なくとも一部と前記第1の多極磁石の少なくとも一部とが、前記第1軸方向において対向するように重なり合っており、
前記第1軸方向において隣り合う前記N極と前記S極との境界は、前記第1軸方向と直交する第1平面に沿って延在しており、
前記磁気センサは、前記第1平面に沿って広がっており、前記第2軸方向に沿った第2軸方向磁場成分と前記第3軸方向に沿った第3軸方向磁場成分とを含む検出信号対象磁場の方向に対応した検出信号を生成する
測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサを備えた位置検出装置、レンズモジュール、撮像装置、および測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、磁気センサを用いた位置検出装置が提案されている。本出願人は、例えば位置検出装置を備えたカメラモジュールを提案している(例えば特許文献1参照)。このカメラモジュールでは、位置検出装置が、焦点合わせを行う際に移動するレンズの位置検出を行うようになっている。また、特許文献2には、レンズ保持部材の移動位置を検知する位置検知磁石と磁気検知部材とを有するレンズ駆動装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-082445号公報
【文献】国際公開第2018/051729号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気センサを用いた位置検出装置に対しては、より高い位置検出精度を有することが求められている。
【0005】
高い位置検出精度を発現することのできる位置検出装置、レンズモジュール、撮像装置、および測距装置を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の一実施態様としての位置検出装置は、磁気センサと、第1の磁場発生部とを備える。第1の磁場発生部は、第1軸方向において磁気センサと離間して対向するように配置され、第1軸方向に隣り合うN極およびS極をそれぞれ複数含む第1の多極磁石を有し、磁気センサに及ぶ第1の磁場を発生する。磁気センサと第1の磁場発生部とは、第1軸方向と直交する第2軸方向に相対的に移動可能に設けられている。第1軸方向および第2軸方向の双方と直交する第3軸方向における磁気センサの中心位置は、第1の多極磁石の第3軸方向の中心位置と異なっている。
【0007】
本技術の一実施態様としてのレンズモジュールは、磁気センサと、第1の磁場発生部と、第2の磁場発生部と、レンズとを備える。第1の磁場発生部は、第1軸方向において磁気センサと離間して対向するように配置され、第1軸方向に沿って隣り合うN極およびS極をそれぞれ複数含む第1の多極磁石を有し、磁気センサに及ぶ第1の磁場を発生する。第2の磁場発生部は、第2の磁場を発生する。磁気センサおよび第2の磁場発生部と第1の磁場発生部およびレンズとは、第1軸方向と直交する第2軸方向に沿って相対的に移動可能に設けられている。第1軸方向および第2軸方向の双方と直交する第3軸方向における磁気センサの中心位置は、第1の多極磁石の第3軸方向の中心位置と異なっている。
【0008】
本技術の一実施態様としての撮像装置は、撮像素子と、レンズモジュールとを備える。レンズモジュールは、磁気センサと、第1の磁場発生部と、第2の磁場発生部と、レンズとを備える。第1の磁場発生部は、第1軸方向において磁気センサと離間して対向するように配置され、第1軸方向に沿って隣り合うN極およびS極をそれぞれ複数含む第1の多極磁石を有し、磁気センサに及ぶ第1の磁場を発生する。第2の磁場発生部は、第2の磁場を発生する。磁気センサおよび第2の磁場発生部と第1の磁場発生部およびレンズとは、第1軸方向と直交する第2軸方向に沿って相対的に移動可能に設けられている。第1軸方向および第2軸方向の双方と直交する第3軸方向における磁気センサの中心位置は、第1の多極磁石の第3軸方向の中心位置と異なっている。
【0009】
本技術の一実施態様としての測距装置は、照射した光を検出することによって対象物までの距離を測定する。測距装置は、光学素子と、磁気センサと、磁場発生部とを備える。光学素子は、光の進行方向を変化させると共に回転するように構成されている。磁場発生部は、第1軸方向において磁気センサと離間して対向するように配置され、第1軸方向に沿って隣り合うN極およびS極をそれぞれ複数含む多極磁石を有し、磁気センサに及ぶ磁場を発生する。磁気センサと磁場発生部とは、第1軸方向と直交する第2軸方向に相対的に移動可能に設けられている。磁場発生部は、光学素子と連動して回転軸を中心として第2軸方向に回転するように構成されている。第1軸方向および第2軸方向の双方と直交する第3軸方向における磁気センサの中心位置は、第1の多極磁石の第3軸方向の中心位置と異なっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本技術の一実施の形態に係る位置検出装置を含むレンズモジュールを備えた撮像装置の全体構成例を表す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した撮像装置の内部を模式的に表す側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した撮像装置の内部を模式的に表す正面図である。
【
図4A】
図4Aは、
図1に示した位置検出装置の構成例を拡大して表す斜視図である。
【
図4B】
図4Bは、
図1に示した第1磁石と磁気センサとの位置関係を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、
図1に示した磁気センサに付与される第1の磁場および第2の磁場を模式的に表す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1に示した位置検出装置における磁気センサの回路構成を表す回路図である。
【
図9】
図9は、
図1に示した磁気センサから得られる出力電圧特性を表す特性図である。
【
図11A】
図11Aは、
図1に示した撮像装置において、第1磁石の移動に伴う磁気センサに付与される磁場の強度の変化を表す特性図である。
【
図11B】
図11Bは、
図1に示した撮像装置において、第1磁石の移動に伴う磁気センサから得られる出力電圧の変化を表す特性図である。
【
図11C】
図11Cは、第1の磁石のストローク量に対する第1磁石と第2磁石との合成磁場の角度の変化を表す特性図である。
【
図12A】
図12Aは、一参考例としての磁石を有する位置検出装置の構成例を拡大して表す斜視図である。
【
図12B】
図12Bは、
図12Aに示した参考例としての位置検出装置における、磁石と磁気センサとの位置関係を説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、
図1に示した位置検出装置における直線性誤差を説明する説明図である。
【
図14】
図14は、本技術の一実施の形態に係る測距装置の全体構成を表す斜視図である。
【
図15】
図15は、
図14に示した測距装置に搭載される位置検出装置の全体構成を表す斜視図である。
【
図17A】
図17Aは、一参考例としての位置検出装置の一部を拡大して表す拡大斜視図である。
【
図18】
図18は、
図14に示した測距装置に搭載される変形例としての位置検出装置の一部を拡大して表す拡大斜視図である。
【
図19】
図19は、一参考例としての位置検出装置の一部を拡大して表す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
多極磁石および磁気センサを有する位置検出装置を有するレンズモジュールを備えた撮像装置の例。
2.第2の実施の形態
位置検出装置を備えた測距装置の例
3.変形例
【0012】
<1.第1の実施の形態>
[撮像装置100の構成]
最初に、
図1から
図3を参照して、本発明における第1の実施の形態としての撮像装置100の構成について説明する。
【0013】
図1は、撮像装置100の全体構成例を表す斜視図である。
図2は、側方から眺めた撮像装置100の内部を模式的に示す説明図である。
図3は、被写体側から眺めた撮像装置100の内部を模式的に示す説明図である。なお、
図1~
図3では、撮像装置100の各構成要素の寸法および配置位置は必ずしも一致していない。また、
図1~
図3に示した撮像装置100は例示であって、本実施の形態は、撮像装置100を構成する各構成要素、ならびにそれらの寸法、形状および配置位置は
図1~
図3に示したものに限定されない。
【0014】
撮像装置100は、例えば、光学式手振れ補正機構とオートフォーカス機構とを備えたスマートフォン用のカメラの一部を構成する。撮像装置100は、例えば、CMOS等を用いて画像を取得する撮像素子としてのイメージセンサ200と、被写体からの光をイメージセンサ200に導くレンズモジュール300とを備えている。
【0015】
[レンズモジュール300の構成]
レンズモジュール300は、本技術の一実施の形態に係る位置検出装置1と、駆動装置3と、レンズ5と、筐体6と、基板7とを有している。位置検出装置1は、磁気式の位置検出装置であり、被写体から入射した光(以下、単に入射光)がイメージセンサ200の撮像面に結像するように、入射光の焦点合わせを自動的に行う際にレンズ5の位置を検出する機構である。駆動装置3は、入射光の焦点合わせを行うためにレンズ5を駆動する機構である。筐体6は、位置検出装置1および駆動装置3などを収容し、それらを保護するようになっている。基板7は、上面7Aを有している。なお、
図2では筐体6を省略している。
【0016】
ここで、
図1~
図3にそれぞれ示したように、X軸、Y軸およびZ軸を定義する。X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交している。本実施の形態では、X軸が基板7の上面7Aに対し垂直であり、Y軸およびZ軸は、いずれも、基板7の上面7Aに対して平行である。さらに、本実施の形態では、+X方向を上方向とし、-X方向を下方向とする。また、本実施の形態における+Z方向および-Z方向、すなわち、Z軸に平行な方向が本技術の一実施の形態の「第1軸方向」に対応する一具体例である。本実施の形態における+X方向および-X方向、すなわち、X軸に平行な方向が本技術の一実施の形態の「第2軸方向」に対応する一具体例である。さらに、本実施の形態における+Y方向および-Y方向、すなわち、Y軸に平行な方向が本技術の一実施の形態の「第3軸方向」に対応する一具体例である。
【0017】
(レンズ5)
レンズ5は、その光軸方向がX軸と一致するような姿勢で、基板7の上面7Aの上方に配置されている。また、
図2に示したように、基板7は、レンズ5を通過した光を通過させる開口部7Kを有している。
図2に示したように、レンズモジュール300は、レンズ5と基板7の開口部7Kとを順次通過した被写体からの光がイメージセンサ200に入射されるように、イメージセンサ200に対して位置合わせされている。
【0018】
(位置検出装置1)
次に、本実施の形態に係る位置検出装置1について詳細に説明する。
【0019】
位置検出装置1は、第1の保持部材14(
図2参照)と、第2の保持部材15と、複数のワイヤ16と、複数のスプリング17とを有している。第1の保持部材14は、第1磁石10(後出)およびレンズ5を保持するものである。第1の保持部材14は、例えば、その内部にレンズ5を装着できるように構成された筒状の形状を有している。なお、位置検出装置1は、ワイヤ16およびスプリング17を有しなくともよい。
【0020】
第1の保持部材14は、第2の保持部材15に対しレンズ5の光軸方向、すなわちX軸方向に沿って移動可能に設けられている。本実施の形態では、第2の保持部材15は、例えばその内部にレンズ5と第1の保持部材14とを収容できるように構成された箱型の形状を有している。複数のスプリング17は、第1の保持部材14と第2の保持部材15とを接続し、第1の保持部材14が第2の保持部材15に対してX軸方向に移動できるように、第1の保持部材14を支持している。
【0021】
第2の保持部材15は、基板7の上面7Aの上方において、基板7に対してY軸方向およびZ軸方向の双方に移動可能に設けられている。複数のワイヤ16は、基板7と第2の保持部材15とを接続しつつ、第2の保持部材15が基板7に対してY軸方向およびZ軸方向に移動できるように第2の保持部材15を支持している。基板7に対する第2の保持部材15の相対的な位置が変化すると、基板7に対する第1の保持部材14の相対的な位置も変化する。
【0022】
位置検出装置1は、第1の磁場MF1を発生する第1の磁場発生部としての第1磁石10と、磁気センサ20とをさらに有している。したがって、第1の磁場MF1は第1磁石10が形成する磁場である。第1の磁場MF1には、X軸方向に沿った磁場成分HsxとY軸方向に沿った磁場成分Hsyとが含まれる。第1磁石10は、第1の保持部材14により保持され、第2の磁場MF2を発生する第2の磁場発生部としての第2磁石31,32に対する相対的な位置が変化可能に設けられている。また、磁気センサ20と第1磁石10とは、Z軸方向において互いに重なり合う状態を維持しつつ、X軸方向に沿って相対的に移動可能に設けられている。第1磁石10は、例えばX軸方向を長手方向とする略直方体形状の外観を有している。第1磁石10は、第1の磁性材料を主成分としている。第1の磁性材料としては、例えばNdFeBなどのネオジム系磁石材料が挙げられる。一実施の形態において、第1の磁性材料は、グレードN48SHのNdFeBでありうる。あるいは、第1の磁性材料としてSmCoを用いてもよい。第1磁石10は、レンズ5を保持する第1の保持部材14の位置検出を行うための第1の磁場MF1を発生する位置検出用磁石である。
【0023】
また、第1磁石10は、Y軸方向において第2磁石31と第2磁石32との間に位置するように、第1の保持部材14に固定されている。すなわち、第1磁石10は、第1の保持部材14によって保持されている。第1の保持部材14に対する第2の保持部材15の相対的な位置がX軸方向に沿って変化すると、第1磁石10に対する第2磁石31,32の相対的な位置もX軸方向に沿って変化するようになっている。
【0024】
磁気センサ20は、それが配置された所定の検出位置における検出対象磁場としての合成磁場MFを検出し、合成磁場MFの方向に対応した検出信号を生成する。磁気センサ20は、Y軸方向において第2磁石31と第2磁石32との間に位置すると共に、Z軸方向において第1磁石10を挟んでレンズ5と反対側に位置している。磁気センサ20は、第2磁石31,32と共に第2の保持部材15に固定されている。したがって、第1磁石10は、磁気センサ20に対してX軸方向へ移動可能に構成されている。
【0025】
本実施の形態では、所定の検出位置は、磁気センサ20が配置されている位置である。前述のように、第2の磁場発生部としての第2磁石31,32の位置に対する第1の磁場発生部としての第1磁石10のX軸方向の位置が変化すると、上記所定の検出位置と第1磁石10との間の距離が変化する。検出対象磁場は、検出位置における第1の磁場MF1と第2の磁場MF2との合成磁場MFである。磁気センサは第1磁場発生部に近いため、合成磁場MFは主に第1の磁場MF1に由来する。配置によって、第2の磁場MF2がほぼ0になるケースも考えられる。磁気センサ20は、合成磁場MFの方向に対応した検出信号を生成し、第1磁石10の位置の変化、すなわち、レンズ5の位置の変化を検出可能である。
【0026】
図4Aは、位置検出装置1における第1磁石10および磁気センサ20を拡大して表す斜視図である。
図4Bは、磁気センサ20および第1磁石10を-X方向に眺めた状態の一例を表す模式図である。なお、上述したように、第1磁石10は、磁気センサ20に対してX軸方向に移動可能に設けられている。
図4Aおよび
図4Bに示したように、第1磁石10は、例えばZ軸方向において磁気センサ20と離間して対向するように配置されている。第1磁石10は、複数のN極11N,12Nおよび複数のS極11S,12Sを含む多極磁石である。ここで、N極11NとS極11SとはZ軸方向に隣り合っている。また、N極12NとS極12SとはZ軸方向に隣り合っている。第1磁石10は、例えば第1領域部分11と、第2領域部分12と、ニュートラルゾーン13とを含んでいる。第1領域部分11は、例えば-Z方向に着磁されており、第2領域部分12は、-Z方向と反対の+Z方向に着磁されている。ニュートラルゾーン13は、X軸方向において第1領域部分11と第2領域部分12との間に挟まれている。
図4Aにおいて、第1領域部分11および第2領域部分12に描かれた矢印は、それぞれ、第1領域部分11および第2領域部分12の磁場の方向を表している。第1領域部分11と第2領域部分12とは、第1磁石10の移動方向であるX軸方向において、ニュートラルゾーン13を挟んで隣り合っている。第1領域部分11は、Z軸方向に沿って隣り合うN極11NとS極11Sとを含んでいる。第2領域部分12は、Z軸方向に沿って隣り合うN極12NとS極12Sとを含んでいる。ここで、N極11NとS極12SとがX軸方向においてニュートラルゾーン13を挟んで隣り合うように配置され、N極12NとS極11SとがX軸方向においてニュートラルゾーン13を挟んで隣り合うように配置されている。
【0027】
ニュートラルゾーン13は、例えばYZ面内に沿って延在している。ニュートラルゾーン13は、第1磁石10において着磁されていない無着磁部分である。
【0028】
図4Aおよび
図4Bに示したように、Z軸方向に隣り合うN極11NとS極11Sとの境界11K、およびZ軸方向に隣り合うN極12NとS極12Sとの境界12Kは、いずれも例えばX-Y平面に沿って広がっている。ここで、Y軸方向における磁気センサ20の中心位置P20は、第1磁石10のY軸方向の中心位置P10と異なっている。
図4Bでは、中心位置P20が中心位置P10に対して+Y方向にずれている場合を例示しているが、中心位置P20が中心位置P10に対して-Y方向にずれていてもよい。
【0029】
一実施の形態において、第1磁石10のZ軸方向の長さ10Zは、第1磁石10のY軸方向の長さ10Yよりも小さくてもよい。また、磁気センサ20の少なくとも一部と第1磁石10の少なくとも一部とが、Z軸方向において重なり合っていてもよい。そのような構成を選択することにより、位置検出装置1の小型化および軽量化を図りつつ、効果的に第1の磁場MF1を磁気センサ20に及ぼすことができる。
【0030】
(駆動装置3)
次に、本実施の形態に係る駆動装置3について詳細に説明する。
【0031】
駆動装置3は、第2の磁場MF2を発生する第2の磁場発生部として、互いに異なる位置に離間して配置された2つの第2磁石31,32を有している。第2磁石31,32は、第2の保持部材15に固定されている。したがって第2磁石31,32は、磁気センサ20に対して移動しないようになっている。第1の磁場発生部としての第1磁石10は、磁気センサ20と、第2の磁場発生部としての第2磁石31,32に対しX軸方向に沿って移動可能に設けられている。
【0032】
図1~
図3に示したように、第2磁石31は、レンズ5から見て+Y方向に位置している。第2磁石32は、レンズ5から見て-Y方向に位置している。すなわち、駆動装置3では、例えば基板7の上面7Aに沿った正方形あるいは長方形の領域を形成する4辺のうちの対向する2辺に第2磁石31および第2磁石32がそれぞれ配置されている。
【0033】
第2磁石31および第2磁石32は、例えばZ軸方向を長手方向とする略直方体形状を有している。第2磁石31と第2磁石32とは、Z軸方向と直交するY軸方向においてレンズ5を挟んで対向するように配置されている。第2の磁場MF2は、第2磁石31および第2磁石32がそれぞれ発生する磁場が合成された磁場であり、X軸方向に沿った磁場成分HdxとY軸方向に沿った磁場成分Hdyとが含まれる。第2磁石31および第2磁石32は、第2の磁性材料を主成分としている。第2の磁性材料としては、例えばNdFeBなどのネオジム系磁石材料が挙げられる。一実施の形態において、第2の磁性材料は、グレードN48HのNdFeBでありうる。第2磁石31および第2磁石32は、第2の保持部材15に固定されている。すなわち、第2の磁場発生部は、第2の保持部材15によって保持されている。第2磁石31および第2磁石32は、レンズ5を保持する第1の保持部材14をZ軸に沿って移動させる駆動力を発生する駆動用磁石である。さらに、第2磁石31および第2磁石32は、磁気センサ20にバイアス磁界を印加するためのバイアス磁石であってもよい。
【0034】
図5Aは、駆動装置3のうちの第2磁石31の近傍を拡大して表す斜視図である。
図5Bは、駆動装置3のうちの第2磁石32の近傍を拡大して表す斜視図である。
図5Aおよび
図5Bに示したように、第2磁石31および第2磁石32は、いずれも、例えば多極磁石であってもよい。
【0035】
図5Aに示したように、第2磁石31は、例えば+Y方向に着磁された第1領域部分311と、-Y方向に着磁された第2領域部分312と、第1領域部分311と第2領域部分312との間に挟まれたニュートラルゾーン313とを含んでいる。
図5Aにおいて、第1領域部分311および第2領域部分312に描かれた矢印は、それぞれ、第1領域部分311および第2領域部分312の磁化の方向を表している。第1領域部分311および第2領域部分312は、それぞれ、例えばZ軸方向を長手方向とする略直方体状を有している。第1領域部分311と第2領域部分312とは、X軸方向においてニュートラルゾーン313を挟んで隣り合っている。第1領域部分311は、Y軸方向に沿って隣り合うN極311NとS極311Sとを含んでいる。第2領域部分312は、Y軸方向に沿って隣り合うN極312NとS極312Sとを含んでいる。ここで、N極311NとS極312SとがX軸方向においてニュートラルゾーン313を挟んで隣り合うように配置され、N極312NとS極311SとがX軸方向においてニュートラルゾーン313を挟んで隣り合うように配置されている。
【0036】
図5Bに示したように、第2磁石32は、例えば-Y方向に着磁された第1領域部分321と、+Y方向に着磁された第2領域部分322と、第1領域部分321と第2領域部分322との間に挟まれたニュートラルゾーン323とを含んでいる。
図5Bにおいて、第1領域部分321および第2領域部分322に描かれた矢印は、それぞれ、第1領域部分321および第2領域部分322の磁化の方向を表している。第1領域部分321および第2領域部分322は、それぞれ、例えばZ軸方向を長手方向とする略直方体状を有している。第1領域部分321と第2領域部分322とは、X軸方向においてニュートラルゾーン323を挟んで隣り合っている。第1領域部分321は、Y軸方向に沿って隣り合うN極321NとS極321Sとを含んでいる。第2領域部分322は、Y軸方向に沿って隣り合うN極322NとS極322Sとを含んでいる。ここで、N極321NとS極322SとがX軸方向においてニュートラルゾーン323を挟んで隣り合うように配置され、N極322NとS極321SとがX軸方向においてニュートラルゾーン323を挟んで隣り合うように配置されている。
【0037】
駆動装置3は、第2磁石31,32に加えて、コイル41,42,45,46をさらに有している。
【0038】
図1および
図2に示したように、コイル41は、第2磁石31と基板7との間に配置されており、コイル42は、第2磁石32と基板7との間に配置されている。また、コイル45は、第2磁石31とレンズ5との間に配置されており、コイル46は、第2磁石32とレンズ5との間に配置されている。コイル41,42は、それぞれ基板7に固定されている。コイル45,46は、それぞれ第1の保持部材14に固定されている。
【0039】
コイル41には、主に、第2磁石31から発生する磁場が印加される。コイル42には、主に、第2磁石32から発生する磁場が印加される。
【0040】
また、
図2に示したように、コイル45は、第2磁石31の第1領域部分311に沿って延びる第1の導体部45Aと、第2磁石31の第2領域部分312に沿って延びる第2の導体部45Bとを含んでいる。また、コイル46は、
図2に示したように、第2磁石32の第1領域部分321に沿って延びる第1の導体部46Aと、第2磁石32の第2領域部分322に沿って延びる第2の導体部46Bとを含んでいる。
【0041】
図6Aは、駆動装置3の第2磁石31およびコイル45を拡大して表す側面図である。また、
図6Bは、駆動装置3の第2磁石32およびコイル46を拡大して表す側面図である。
図6Aに示したように、コイル45の第1の導体部45Aには、主に、第2磁石31の第1領域部分311から発生する磁場の+Y方向の成分が印加される。コイル45の第2の導体部45Bには、主に、第2磁石31の第2領域部分312から発生する磁場の-Y方向の成分が印加される。
図6Bに示したように、コイル46の第1の導体部46Aには、主に、第2磁石32の第1領域部分321から発生する磁場の-Y方向の成分が印加される。コイル46の第2の導体部46Bには、主に、第2磁石32の第2領域部分322から発生する磁場の+Y方向の成分が印加される。
【0042】
図6Aおよび
図6Bに示したように、駆動装置3は、磁気センサ30Aおよび磁気センサ30Bをさらに有している。磁気センサ30A,30Bは、手振れの影響を低減するためにレンズ5の位置を変化させる際に用いられる。
【0043】
コイル41の内側に位置する磁気センサ30Aは、第2磁石31から発生する磁場を検出し、第2磁石31の位置に対応した信号を生成するようになっている。コイル42の内側に位置する磁気センサ30Bは、第2磁石32から発生する磁場を検出し、第2磁石32の位置に対応した信号を生成するようになっている。磁気センサ30A,30Bは、例えば、磁気抵抗効果素子やホール素子等の磁場を検出する素子によって構成することができる。なお、駆動装置3は、コイル41の内側に位置する磁気センサ30Aまたはコイル42の内側に位置する磁気センサ30Bのいずれか一方のみを有するようにしてもよい。
【0044】
図7は、位置検出装置1を示す部分斜視図である。
図7において、符号MF1を付した矢印は、磁気センサ20に及ぶ第1の磁場MF1を表している。上述したように、第1の磁場MF1は、X軸方向に沿った磁場成分HsxとY軸方向に沿った磁場成分Hsyとを含んでいる。
【0045】
次に、
図8を参照して、磁気センサ20の構成について説明する。
図8は、磁気センサ20の構成を示す回路図である。本実施の形態では、磁気センサ20は、検出対象磁場である合成磁場MFの方向に対応した検出信号として、合成磁場MFの方向が基準方向に対してなす角度に対応した検出信号を生成するように構成されている。
【0046】
図8に示したように、磁気センサ20は、ホイートストンブリッジ回路21を有している。ホイートストンブリッジ回路21は、電源ポートVと、グランドポートGと、2つの出力ポートE1,E2と、直列に接続された第1の抵抗部R1および第2の抵抗部R2と、直列に接続された第3の抵抗部R3および第4の抵抗部R4とを含んでいる。第1の抵抗部R1の第1端部および第3の抵抗部R3の第1端部は、それぞれ電源ポートVに接続されている。第1の抵抗部R1の第2端部は、第2の抵抗部R2の第1端部と出力ポートE1とにそれぞれ接続されている。第3の抵抗部R3の第2端部は、第4の抵抗部R4の第1端部と出力ポートE2とにそれぞれ接続されている。第2の抵抗部R2の第2端部および第4の抵抗部R4の第2端部は、それぞれグランドポートGに接続されている。電源ポートVには、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートGはグランドに接続される。出力ポートE1,E2は、それぞれ制御部4(
図1)に接続されている。
【0047】
本実施の形態では、第1~第4の抵抗部R1~R4の各々は、直列に接続された複数の磁気抵抗効果素子(MR素子)を含んでいる。複数のMR素子の各々は、例えばスピンバルブ型のMR素子であってもよい。このスピンバルブ型のMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、検出対象磁場の方向に応じて磁化の方向が変化する磁性層である自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。スピンバルブ型のMR素子は、トンネル磁気抵抗効果素子(TMR素子)でもよいし、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)でもよい。TMR素子では、非磁性層はトンネルバリア層である。GMR素子では、非磁性層は非磁性導電層である。スピンバルブ型のMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。
図8において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表し、白抜きの矢印は、MR素子における自由層の磁化の方向を表している。
【0048】
図8に示したように、第1の抵抗部R1にそれぞれ含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化方向(以下、単に第1の抵抗部R1のピン方向という)と、第2の抵抗部R2にそれぞれ含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化方向(以下、単に第2の抵抗部R2のピン方向という)とは、互いに逆向きである。また、第3の抵抗部R3にそれぞれ含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化方向(以下、単に第3の抵抗部R3のピン方向という)と、第4の抵抗部R4にそれぞれ含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化方向(以下、単に第4の抵抗部R4のピン方向という)とは、互いに逆向きである。さらに、第1の抵抗部R1のピン方向および第2の抵抗部R2のピン方向は、第3の抵抗部R3のピン方向および第4の抵抗部R4のピン方向と直交している。したがって、例えば
図9に示したように、出力ポートE1に出力される電圧Vout1が基準方向に対する合成磁場MFの方向のなす角度θに応じて変化する余弦曲線を描くとき、出力ポートE2に出力される電圧Vout2は角度θに応じて変化する正弦曲線を描くこととなる。すなわち、電圧Vout1と電圧Vout2とは、角度θについて互いに90°の位相差を有する。出力ポートE1,E2の電位差に対応する信号を検出信号として差分検出器から出力する。その検出信号は、出力ポートE1の電位と、出力ポートE2の電位と、出力ポートE1,E2の電位差に依存する。その検出信号は、検出対象磁場である合成磁場MFの方向に応じて変化する。
【0049】
なお、複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
【0050】
ここで、
図10を参照して、第1~第4の抵抗部R1~R4の構成の一例について説明する。
図10は、
図8に示した磁気センサ20における1つの抵抗部の一部を示す斜視図である。この例では、1つの抵抗部は、複数の下部電極162と、複数の磁気抵抗効果(MR)素子150と、複数の上部電極163とを有している。複数の下部電極162は図示しない基板上に配置されている。個々の下部電極162は細長い形状を有している。下部電極162の長手方向に隣接する2つの下部電極162の間には、間隙が形成されている。
図10に示したように、下部電極162の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR素子150が配置されている。MR素子150は、例えば、下部電極162側から順に積層された磁化自由層151と非磁性層152と磁化固定層153と反強磁性層154とを含んでいる。磁化自由層151は、下部電極162に電気的に接続されている。反強磁性層154は、反強磁性材料を含んで構成され、磁化固定層153との間で交換結合を生じさせて磁化固定層153の磁化の方向を固定する。複数の上部電極163は、複数のMR素子150の上に配置されている。個々の上部電極163は細長い形状を有し、下部電極162の長手方向に隣接する2つの下部電極162上に配置されて隣接する2つのMR素子150の反強磁性層154同士を電気的に接続する。このような構成により、
図10に示した抵抗部は、複数の下部電極162と複数の上部電極163とによって直列に接続された複数のMR素子150を有している。なお、MR素子150における磁化自由層151、非磁性層152、磁化固定層153および反強磁性層154の配置は、
図10に示した配置とは上下が反対でもよい。
【0051】
次に、
図1から
図6Bを参照して、駆動装置3の動作について説明する。はじめに、光学式手振れ補正機構とオートフォーカス機構について簡単に説明する。駆動装置3は、光学式手振れ補正機構およびオートフォーカス機構の一部を構成する。駆動装置3、光学式手振れ補正機構およびオートフォーカス機構は、撮像装置100の外部に設けられた制御部4(
図1参照)によって制御される。制御部4は、例えば、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)及びCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される回路を有する。
【0052】
光学式手振れ補正機構は、例えば、撮像装置100の外部のジャイロセンサ等によって手振れを検出できるように構成されている。光学式手振れ補正機構が手振れを検出すると、制御部4は、手振れの態様に応じて基板7に対するレンズ5の相対的な位置が変化するように、駆動装置3を制御する。これにより、レンズ5の絶対的な位置を安定化させて、手振れの影響を低減することができる。なお、基板7に対するレンズ5の相対的な位置は、手振れの態様に応じて、Y軸に平行な方向またはZ軸に平行な方向に変化する。
【0053】
オートフォーカス機構は、例えば、イメージセンサ200またはオートフォーカスセンサ等によって、被写体に焦点が合った状態を検出できるように構成されている。制御部4は、被写体に焦点が合った状態になるように、駆動装置3によって、基板7に対するレンズ5の相対的な位置をX軸に沿って変化させる。これにより、自動的に被写体に対する焦点合わせを行うことができる。
【0054】
次に、光学式手振れ補正機構に関連する駆動装置3の動作について説明する。制御部4によってコイル41,42に電流が流されると、第2磁石31,32から発生する磁場とコイル41,42から発生する磁場との相互作用によって、第2磁石31,32が固定された第2の保持部材15は、Y軸に沿って移動する。その結果、レンズ5も、Y軸に沿って移動する。制御部4は、磁気センサ30A,30Bによって生成される第2磁石31,32の位置に対応した信号を測定することによって、レンズ5の位置を検出する。
【0055】
次に、オートフォーカス機構に関連する駆動装置3の動作について説明する。基板7に対するレンズ5の相対的な位置をX軸に沿って移動させる場合、制御部4は、第1の導体部45Aにおいて+Y方向の電流が流れ、第2の導体部45Bにおいて-Y方向の電流が流れるようにコイル45に電流を流す。制御部4は、さらに第1の導体部46Aに-Y方向の電流が流れ、第2の導体部46Bに+Y方向の電流が流れるようにコイル46に電流を流す。これらの電流と第2磁石31,32から発生する磁場によって、コイル45の第1の導体部45Aおよび第2の導体部45Bとコイル46の第1の導体部46Aおよび第2の導体部46Bとに、+X方向のローレンツ力が作用する。これにより、コイル45,46が固定された第1の保持部材14は、+X方向に移動することとなる。その結果、レンズ5も、+X方向に移動する。
【0056】
基板7に対するレンズ5の相対的な位置を-X方向に移動させる場合には、制御部4は、コイル45,46に、+X方向に移動させる場合とは逆方向の電流を流す。
【0057】
[撮像装置100の作用効果]
次に、本実施の形態に係る位置検出装置1、およびそれを備えた撮像装置100の作用および効果について説明する。本実施の形態に係る位置検出装置1は、レンズ5の位置を検出するために用いられる。本実施の形態では、基板7に対するレンズ5の相対的な位置が変化する場合、基板7および第2の保持部材15に対する第1の保持部材14の相対的な位置も変化する。前述のように、第1の保持部材14は第1の磁場発生部としての第1磁石10と、レンズ5とを保持し、第2の保持部材15は第2の磁場発生部としての第2磁石31,32と、磁気センサ20とを保持している。したがって、上述のようにレンズ5の相対的な位置が変化すると、第2磁石31,32および磁気センサ20に対する第1磁石10の相対的な位置が変化する。本実施の形態では、第2磁石31,32および磁気センサ20に対する第1磁石10の相対的な位置の変化の方向は、レンズ5の光軸方向すなわちX軸に平行な方向である。
【0058】
第2磁石31,32および磁気センサ20に対する第1磁石10の相対的な位置が変化する一方で、磁気センサ20に対する第2磁石31,32の相対的な位置は変化しない。そのため、第2磁石31,32および磁気センサ20に対する第1磁石10の相対的な位置が変化すると、第2の磁場MF2の強度および方向は変化しないが、第1の磁場MF1の強度および方向は変化する。第1の磁場MF1の強度および方向が変化すると、合成磁場MFの方向および強度も変化し、それに伴い、磁気センサ20が生成する検出信号の値も変化する。すなわち、磁気センサ20が生成する検出信号の値は、基板7に対する第1磁石10の相対的な位置に依存して変化する。制御部4は、X軸方向に沿った磁場成分HsxおよびY軸方向に沿った磁場成分Hsyなどに伴い変動する磁気センサ20の検出信号から演算処理を行うことにより合成磁場MFの方向の角度θを求めるようになっている。基板7に対する第1磁石10の相対位置は、基板7に対するレンズ5の相対的な位置を表すものである。
【0059】
先に述べたように、磁気センサ20は、例えば第1~第4の抵抗部R1~R4を含むホイートストンブリッジ回路21を有しており、第1~第4の抵抗部R1~R4における各ピン方向が互いに反平行もしくは互いに直交する方向となっている。このため、磁気センサ20は、例えば合成磁場MFのうちの、X軸方向の磁場HxおよびY軸方向の磁場Hyを検出することができるようになっている。
【0060】
合成磁場MFの方向の角度θは、以下の式(1)により定義される。
θ=arctan2(Hsx+Hdx,Hsy+Hdy) …(1)
ただし、Hsxは第1の磁場MF1のうちのX軸方向に沿った磁場成分であり、Hdxは第2の磁場MF2のうちのX軸方向に沿った磁場成分であり、Hsyは第1の磁場MF1のうちのY軸方向に沿った磁場成分であり、Hdyは第2の磁場MF2のうちのY軸方向に沿った磁場成分である。
【0061】
ここで、磁気センサ20に及ぶ磁場成分Hdxおよび磁場成分Hdyは、磁気センサ20に及ぶ磁場成分Hsxおよび磁場成分Hsyに比べて極めて弱い。よって、合成磁場MFの方向の角度θを求めるにあたり磁場成分Hdxおよび磁場成分Hdyは実質的に無視できるので、磁気センサ20に及ぶ合成磁場MFの方向の角度θは、式(2)で表すことができる。
θ≒arctan2(Hsx,Hsy) …(2)
【0062】
すなわち、角度θは磁場成分Hsxおよび磁場成分Hsyによって変動する。
【0063】
撮像装置100では、磁気センサ20に対し第1磁石10がX軸方向に沿って移動するのに伴い、例えば
図11Aに示したように変化するX軸方向に沿った磁場成分HsxおよびY軸方向に沿った磁場成分Hsyを含む第1の磁場MF1が磁気センサ20に付与される。このとき、磁気センサ20では、
図11Bに示したように変化する電圧Vout1,Vout2がそれぞれ検出される。
図11Aでは、横軸が基準位置に対する第1磁石10の位置(ストローク量)[μm]を表し、縦軸が磁気センサ20において検出される磁場強度[mT]を表している。また、
図11Bでは、横軸が基準位置に対する第1磁石10の位置(ストローク量)[μm]を表し、縦軸が磁気センサ20から出力される電圧[mV/V]を表している。制御部4では、電圧Vout1および電圧Vout2を、それぞれ合成磁場MFの方向の角度θについての余弦曲線(V×cosθ+V/2)および正弦曲線(V×sinθ+V/2)として取り扱い、θ[deg.]=arctan(T×(V×sinθ)/(V×cosθ))にしたがって、第1磁石10のX軸方向の位置に応じて変化する角度θを算出する(
図11C参照)。
図11Cでは、横軸がX軸方向における、基準位置に対する第1磁石10の位置(ストローク量)[μm]を表し、縦軸が角度θ[deg.]を表している。
図11Cに示したように、第1磁石10のストローク量に対し、角度θがほぼ線形に変化する。よって、角度θを求めることにより、第1磁石10のX軸方向の位置(ストローク量)が一義的に決まる。なお、上式における定数Tは、線形性を高めるための補正因子である。
【0064】
このように、本実施の形態の位置検出装置1によれば、磁気センサ20に対してZ軸方向に離間して対向しつつX軸方向に移動可能な第1磁石10を多極磁石としている。このため、位相差(例えば90°の位相差)を有するX軸方向の磁場成分HsxおよびY軸方向の磁場成分Hsyを磁気センサ20に対して付与することができる。さらに、位置検出装置1では、Y軸方向における磁気センサ20の中心位置P20が、第1磁石10のY軸方向の中心位置P10と異なるようにしている。このため、磁気センサ20に対して磁場成分Hsxが十分に付与されることとなる。したがって、本実施の形態の位置検出装置1によれば、磁気センサ20において検出される磁場成分Hsxおよび磁場成分Hsyを用いて、第1磁石10のストローク量に応じた合成磁場MFの角度θを高い精度で検出することができる。
【0065】
ここで、磁場成分Hsxの強度および磁場成分Hsyの強度はそれぞれ第1磁石10と磁気センサ20との距離に応じて変動する。しかしながら、磁場成分Hsxの強度に対応する電圧Vout1および磁場成分Hsyの強度に対応する電圧Vout2との比を用いた角度演算により角度θを求めるようにすることで、角度θに対する第1磁石10と磁気センサ20との距離の変動の影響を低減することができる。また、位置検出装置1では、磁場成分Hsxの強度に対応する電圧Vout1および磁場成分Hsyの強度に対応する電圧Vout2との比を用いた角度演算により合成磁場MFの角度θを求めるようにしているので、環境温度の変化に伴う第1磁石10のストローク量の検出精度の低下を抑制することもできる。一般的に、温度の上下に伴い、磁石の形成する磁場の強度も変動するが、第1磁石10における磁場成分Hsxの強度の温度依存性と第1磁石10における磁場成分Hsyの強度の温度依存性とは、一致する。このため、磁場成分Hsxの強度と磁場成分Hsyの強度との比を利用することにより、算出される角度θは環境温度によらず、ほぼ一定となるからである。よって、位置検出装置1によれば、磁場成分Hsxおよび磁場成分Hsyから算出される角度θから、第1磁石10のストローク量を正確に求めることができる。
【0066】
次に、本技術の技術的意義を明確にするため、参考例として、第1磁石10の代わりに、
図12Aおよび
図12Bに示したようにY軸方向に着磁された領域部分を複数有する磁石110を用い、磁石110のストローク量を求めるようにした位置検出装置101について説明する。なお、この参考例の位置検出装置101の構成は、第1磁石10の代わりに磁石110を用いることを除き、他は本実施の形態の位置検出装置1と同じ構成である。
図12Aは、参考例としての位置検出装置101を模式的に表す斜視図であり、本実施の形態の位置検出装置1を表す
図4Aに対応する。また、
図12Bは、参考例としての位置検出装置101を模式的に表す上面図であり、本実施の形態の位置検出装置1を表す
図4Bに対応する。磁石110は、第1領域部分111と、第2領域部分112と、ニュートラルゾーン113とを含んでいる。第1領域部分111は、+Y方向に着磁されており、Y軸方向に隣り合うN極111NとS極111Sとを含んでいる。第2領域部分112は、-Y方向に着磁されており、Y軸方向に隣り合うN極112NとS極112Sとを含んでいる。ニュートラルゾーン113は、X軸方向において、第1領域部分111と第2領域部分112との間に挟まれている。また、磁石110では、N極111NとS極112SとがX軸方向においてニュートラルゾーン113を挟んで隣り合うように配置され、N極112NとS極111SとがX軸方向においてニュートラルゾーン113を挟んで隣り合うように配置されている。さらに磁石110は、Y軸方向に長さ110Yを有し、Z軸方向に長さ110Zを有している。長さ110Yは、第1磁石10の長さ10Yと等しく、長さ110Zは、第1磁石10の長さ10Zと等しい。また、磁石110は、磁気センサ20とZ軸方向に対向している。磁石110と磁気センサ20との距離は、第1磁石10と磁気センサ20との距離と等しいものとする。さらに、Y軸方向における中心位置P110に対する中心位置P20のずれ量は、Y軸方向における中心位置P10に対する中心位置P20のずれ量と等しいものとする。
【0067】
表1は、
図1などに示した位置検出装置1における第1磁石10と磁気センサ20との位置ずれに伴う直線性誤差(Linearity Error)[%]についてシミュレーションにより求めた結果を表している。なお、表1において、Y軸方向のオフセット量[mm]が+0.1もしくは+0.2であるとは、第1磁石10に対する磁気センサ20の所定の基準位置を0[mm]としたとき、磁気センサ20が第1磁石10に対してその基準位置から+Y方向に0.1mmもしくは0.2mmだけ移動した位置にあることを意味する。また、Y軸方向のオフセット量[mm]が-0.1もしくは-0.2であるとは、第1磁石10に対する磁気センサ20の所定の基準位置を0[mm]としたとき、磁気センサ20が第1磁石10に対してその基準位置から-Y方向に0.1mmもしくは0.2mmだけ移動した位置にあることを意味する。同様に、表1において、Z軸方向のオフセット量[mm]が+0.1もしくは+0.2であるとは、第1磁石10に対する磁気センサ20の所定の基準位置を0[mm]としたとき、磁気センサ20が第1磁石10に対してその基準位置から+Z方向に0.1mmもしくは0.2mmだけ移動した位置にあることを意味する。Z軸方向のオフセット量[mm]が-0.1もしくは-0.2であるとは、第1磁石10に対する磁気センサ20の所定の基準位置を0[mm]としたとき、磁気センサ20が第1磁石10に対してその基準位置から-Z方向に0.1mmもしくは0.2mmだけ移動した位置にあることを意味する。
【0068】
直線性誤差[%]は、下記の式(3)から求められる。
直線性誤差[%]=(ΔV/Vrange)×100 ……(3)
ここで、ΔVは、
図13に示したように、磁気センサ20に対する第1磁石10のX軸方向の移動範囲のうち、磁気センサ20の出力Vが最小値Vminとなる位置P1から、磁気センサ20の出力Vが最大値Vmaxとなる位置P2までの磁気センサ20の出力Vの変化曲線Cと、変化曲線Cを直線近似した直線Lとの差分である。また、Vrangeは、最大値Vmaxと最小値Vminとの差分である。このようにして算出される直線性誤差[%]は、数値が低いほど測定誤差が小さいことを表す。
【0069】
【0070】
また、表2は、
図12Aおよび
図12Bに示した位置検出装置101における磁石110と磁気センサ20との位置ずれに伴う直線性誤差 [%]についてシミュレーションにより求めた結果を表している。表2の意味するところは表1と同じである。
【0071】
【0072】
表1と表2とを比較すると、位置検出装置1のほうが位置検出装置101よりも直線性誤差が小さいことがわかる。特に、Y軸方向のオフセット量[mm]の絶対値が大きくなるほど、位置検出装置101では直線性誤差が大きくなる傾向が見られる。
【0073】
このように、本実施の形態では、Z軸方向において磁気センサ20と離間して対向する第1磁石10が、Z軸方向に隣り合うN極およびS極をそれぞれ複数含む多極磁石であることから、より高い位置検出精度を発現することができる。
【0074】
<2.第2の実施の形態>
[測距装置401の構成]
続いて、
図14から
図16Bを参照して、本技術における第2の実施の形態としての測距装置401の構成について説明する。上記第1の実施の形態では、位置検出装置を、レンズモジュールを備えた撮像装置に適用するようにした例を説明したが、本技術の一実施形態の位置検出装置は、以下に説明する測距装置にも適用することができる。
【0075】
図14は、本実施の形態に係る測距装置401を示す斜視図である。
【0076】
図14に示した測距装置401は、照射した光を検出することによって対象物までの距離を測定する装置であり、例えば車載用のLIDAR(Light Detection And Ranging)の一部を構成する。測距装置401は、例えば光電ユニット411と、光学素子412とを備えている。
【0077】
光電ユニット411は、光411LAを照射する光学素子411Aと、対象物からの反射光411LBを検出する検出素子411Bとを含んでいる。光学素子412は、例えば、支持体413によって支持されたミラーである。光学素子412は、光411LAおよび反射光411LBの各々の進行方向を変化させるように、光学素子411Aの出射面に対して傾斜している。また、光学素子412は、駆動装置によって、所定の回転軸401Jを中心として回転するように構成されている。
【0078】
[位置検出装置1Aの構成]
測距装置401は、さらに、光学素子412の回転位置を検出するための位置検出装置1Aを備えている。
図15は、位置検出装置1Aの外観を表す概略斜視図である。位置検出装置1Aは、磁気式の位置検出装置であり、第1の実施の形態で説明した磁気センサ20と、磁場発生器403とを備えている。磁場発生器403は、光学素子412と連動して、所定の回転軸を中心として回転するように構成されている。磁場発生器403は、光学素子412と同じ回転軸401Jを中心として回転してもよいし、光学素子412とは異なる回転軸を中心として回転してもよい。本実施の形態では、便宜上、光学素子412と磁場発生器403とは、同じ回転軸401Jを中心として回転するものとする。
【0079】
磁場発生器403は、複数組のN極とS極とが回転軸401Jの周りに交互に配列された磁気スケール(回転スケール)である。
【0080】
磁場発生器403は、回転軸401Jに平行な一方向の端に位置する端面403Aを有している。複数組のN極とS極とが、端面403Aに沿って設けられている。
図15では、理解を容易にするために、例えばN極にハッチングを付している。磁気センサ20は、端面403Aに対向するように配置されている。基準位置、例えば磁気センサ20が配置された位置における磁場成分の強度は、磁場発生器403の回転に伴って変化する。
【0081】
図16Aは、磁場発生器403に搭載された磁石10Aと、その近傍に配置される磁気センサ20との位置関係を表す斜視図である。
図16Bは、磁石10Aと、磁気センサ20とのr-θ平面での位置関係を表す平面図である。磁石10Aは、磁場発生器403の端面403Aに沿って環状に設けられている。なお、
図16Aおよび
図16Bでは、磁石10Aの一部を拡大して表している。また、
図16Aおよび
図16Bにおいて、Z軸方向は回転軸401Jの延在方向であり、θ方向は、磁場発生器403の回転方向であり、r方向は、環状をなす磁石10Aの径方向である。なお、r方向において、磁気センサ20の中心位置CP20は、磁石10Aの中心位置CP10よりも外側(回転軸401Jから遠い位置)にある。
【0082】
磁石10Aは、磁気センサ20に対してθ方向に回転移動可能に設けられている。
図16Aに示したように、磁石10Aは、Z軸方向において磁気センサ20と離間して対向するように配置されている。磁石10Aは、Z軸方向と直交するr-θ平面において湾曲した形状を有する。磁石10Aは、複数のN極11N,12Nおよび複数のS極11S,12Sを含む多極磁石である。ここで、N極11NとS極11SとはZ軸方向に隣り合っている。また、N極12NとS極12SとはZ軸方向に隣り合っている。磁石10Aは、第1領域部分11と、第2領域部分12と、ニュートラルゾーン13とを含んでいる。第1領域部分11は、例えば-Z方向に着磁されており、第2領域部分12は、-Z方向と反対の+Z方向に着磁されている。ニュートラルゾーン13は、θ方向において第1領域部分11と第2領域部分12との間に挟まれている。第1領域部分11と第2領域部分12とは、磁石10Aの回転移動方向であるθ方向において、ニュートラルゾーン13を挟んで隣り合っている。第1領域部分11は、Z軸方向に沿って隣り合うN極11NとS極11Sとを含んでいる。第2領域部分12は、Z軸方向に沿って隣り合うN極12NとS極12Sとを含んでいる。ここで、N極11NとS極12Sとがθ方向においてニュートラルゾーン13を挟んで隣り合うように配置され、N極12NとS極11Sとがθ方向においてニュートラルゾーン13を挟んで隣り合うように配置されている。
【0083】
このような構成の測距装置401では、磁気センサ20が生成する検出信号に基づいて、光学素子412の回転位置と対応関係を有する出力を生成する。なお、光学素子412の回転位置は、磁場発生器403の回転位置と対応関係を有している。
【0084】
表3は、
図16Aおよび
図16Bに示した位置検出装置1Aにおける磁石10Aと磁気センサ20との位置ずれに伴う直線性誤差(Linearity Error)[%]についてシミュレーションにより求めた結果を表している。
【0085】
【0086】
また、表4は、
図17Aおよび
図17Bに示した参考例としての位置検出装置101Aにおける磁石110Aと磁気センサ20との位置ずれに伴う直線性誤差 [%]についてシミュレーションにより求めた結果を表している。
図17Aは、参考例としての磁石110Aと、その近傍に配置される磁気センサ20との位置関係を表す斜視図である。
図17Bは、磁石110Aと、磁気センサ20とのr-θ平面での位置関係を表す平面図である。
図17Aおよび
図17Bの位置検出装置101Aでは、位置検出装置1Aと同様に、磁気センサ20に対し、磁石110Aが、Z軸方向に延びる回転軸を中心としてθ方向に回転するように構成されている。また、位置検出装置1Aと同様に、磁石110Aと磁気センサ20とがZ軸方向に対向している。しかしながら、磁石110Aは、N極111N,112NとS極111S,112Sとが、磁石110Aの径方向であるr方向に隣り合っている。すなわち、磁石110Aの着磁方向がr方向であるのに対し、磁石110Aと磁気センサ20との対向方向がZ軸方向であり、両者が一致していない。なお、位置検出装置101Aでは、r方向において、磁気センサ20の中心位置CP20は、磁石110Aの中心位置CP110よりも外側(回転軸401Jから遠い位置)にある。
【0087】
【0088】
表3と表4とを比較すると、位置検出装置1Aのほうが位置検出装置101Aよりも直線性誤差が小さいことがわかる。特に、Y軸方向のオフセット量[mm]の絶対値が大きくなるほど、位置検出装置101Aでは直線性誤差が大きくなる傾向が見られる。
【0089】
[変形例としての位置検出装置1Bの構成例]
なお、
図15などに示した位置検出装置1Aでは、磁石10Aが回転する回転軸401Jに沿って磁石10Aと磁気センサ20とが対向配置されるようにしたが、本技術はこれに限定されるものではない。例えば、
図18に示した変形例としての磁石10Bを有する位置検出装置1Bのように、環状の磁石10Bの径方向であるr方向において磁石10Bと磁気センサ20とが対向配置されるようにしてもよい。但し、この場合、磁石10Bの着磁方向もr方向となっている。すなわち、第1領域部分11ではN極11NとS極11Sとがr方向に隣り合っており、第2領域部分12ではN極12NとS極12Sとがr方向に隣り合っている。磁石10Bは、Z軸方向と直交するr-θ平面において湾曲した形状を有する。
【0090】
表5は、
図18に示した位置検出装置1Bにおける磁石10Bと磁気センサ20との位置ずれに伴う直線性誤差(Linearity Error)[%]についてシミュレーションにより求めた結果を表している。
【0091】
【0092】
また、表6は、
図19に示した位置検出装置101Bにおける磁石110Bと磁気センサ20との位置ずれに伴う直線性誤差 [%]についてシミュレーションにより求めた結果を表している。
図19の位置検出装置101Bでは、位置検出装置1Bと同様に、磁気センサ20に対し、磁石110Bが、Z軸方向に延びる回転軸を中心としてθ方向に回転するように構成されている。また、位置検出装置1Bと同様に、磁石110Bと磁気センサ20とがr軸方向に対向している。しかしながら、磁石110Bは、N極111N,112NとS極111S,112Sとが、磁石110Bの回転軸方向であるZ軸方向に隣り合っている。すなわち、磁石110Bの着磁方向がZ軸方向であるのに対し、磁石110Bと磁気センサ20との対向方向がr方向であり、両者が一致していない。
【0093】
【0094】
表5と表6とを比較すると、位置検出装置1Bのほうが位置検出装置101Bよりも直線性誤差が小さいことがわかる。特に、Y軸方向のオフセット量[mm]の絶対値が大きくなるほど、位置検出装置101Bでは直線性誤差が大きくなる傾向が見られる。
【0095】
<2.変形例>
以上、実施の形態を挙げて本技術を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、磁気センサにおいて4つの抵抗部を用いてフルブリッジ回路を形成するようにしたが、本発明では、例えば2つの抵抗部を用いてハーフブリッジ回路を形成するようにしてもよい。また、複数の磁気抵抗効果素子の形状および寸法は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、抵抗部は、例えば磁気検出素子を含んでいてもよい。磁気検出素子は、磁界を検知する機能を有する素子であればよく、スピンバルブ型のMR素子に限らず、異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)や、ホール素子等(例えば平面ホール素子や垂直ホール素子)をも含む概念である。一般に、平面ホール素子は基板に対して垂直な感度軸を有する傾向があり、磁気抵抗効果素子や垂直ホール素子は基板に対して平行な感度軸を有する傾向があるが、本技術の一実施形態においては、基板、または、Z軸と直交する平面に対して平行な感度軸を有する磁気検出素子を用いることが好ましい。また、各構成要素の寸法や各構成要素のレイアウトなどは例示であってこれに限定されるものではない。
【0096】
また、本技術の一実施形態の位置検出装置は、レンズの位置検出を行うための装置に限定されるものではなく、レンズ以外の他の物体の空間上の位置検出を行うものであってもよい。
【0097】
また、上記第1の実施の形態では、第1磁石10が、2つの領域部分(第1領域部分11および第2領域部分12)を含むようにしたが、本技術の一実施形態の第1の多極磁石はこれに限定されるものではなく、例えば3以上の領域部分を含むようにしてもよい。
【0098】
なお、直交とは、幾何学的に厳密に90°である概念に加え、90°から製造誤差程度、例えば±5°程度の誤差を含む概念である。
【0099】
本技術の一実施態様としての位置検出装置、レンズモジュール、撮像装置、および測距装置によれば、高い位置検出精度を発現することができる。
【0100】
本実施態様における符号と構成要素との対応関係を以下にまとめて示す。
【符号の説明】
【0101】
100…撮像装置、200…イメージセンサ、300…レンズモジュール、401…測距装置、1,1A,1B…位置検出装置、3…駆動装置、4…制御部、5…レンズ、6…筐体、7…基板、7a…上面、7K…開口部、11…第1領域部分、12…第2領域部分、13…ニュートラルゾーン、31…第1磁石、32…第2磁石、14…第1の保持部材、15…第2の保持部材、16…ワイヤ、17…スプリング、20,30…磁気センサ、41~46…コイル、150…MR素子、162…下部電極、163…上部電極、151…磁化自由層、152…非磁性層、153…磁化固定層、154…反強磁性層、MF1…第1の磁場、MF2…第2の磁場、MF…合成磁場。