(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20241209BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20241209BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
B41J2/175 153
B41J2/18
B41J2/01 307
(21)【出願番号】P 2023072228
(22)【出願日】2023-04-26
(62)【分割の表示】P 2018065236の分割
【原出願日】2018-03-29
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 哲治
(72)【発明者】
【氏名】木田 朗
(72)【発明者】
【氏名】甲野藤 淳
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-150740(JP,A)
【文献】特開2006-205690(JP,A)
【文献】特開平10-235892(JP,A)
【文献】特開2010-173241(JP,A)
【文献】特開2009-274261(JP,A)
【文献】特開2015-128882(JP,A)
【文献】特開平09-216376(JP,A)
【文献】特開2010-162871(JP,A)
【文献】特開2017-047547(JP,A)
【文献】特開2007-112130(JP,A)
【文献】特開2015-112842(JP,A)
【文献】特開2000-141687(JP,A)
【文献】特開2018-099858(JP,A)
【文献】特開2003-001848(JP,A)
【文献】特表2011-520664(JP,A)
【文献】国際公開第2016/111147(WO,A1)
【文献】特開平08-132640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドへ供給されるインクを貯留するタンクと、
前記タンクから前記記録ヘッドへインクを供給するための第1接続部と、
前記記録ヘッドからインクを回収するための第2接続部と、
前記第1接続部と共に移動可能な軸部と、
前記記録ヘッドを保持し鉛直方向に移動するヘッドホルダと、
を備え、
前記記録ヘッドは、前記第1接続部と接続可能な第1ヘッドジョイントと、前記第2接続部と接続可能な第2ヘッドジョイントと、前記軸部の一端と係合可能な係合部と、を有し、
前記軸部が前記係合部と係合することによって、前記第1ヘッドジョイントと前記第1接続部とが接続されて前記タンクから前記記録ヘッドへのインクの供給が可能となることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第2ヘッドジョイントと前記第2接続部とが接続されて前記記録ヘッドから前記タンクへのインクの回収が可能となることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記タンクと前記記録ヘッドとの間でインクを循環することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドは、インクを吐出する吐出口が記録媒体の幅に相当する長さに亘って配列されているフルラインタイプのインクジェット記録ヘッドであることを特徴とする
請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記タンクから前記記録ヘッドへインクを供給するための第1チューブと、
前記記録ヘッドからインクを回収するための第2チューブと、を備え、
前記第1チューブは前記第1接続部に接続され、前記第2チューブは前記第2接続部に接続されることを特徴とする
請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザによって記録ヘッドを交換することが可能なインクジェット記録装置が提供されている。特許文献1には、記録装置に記録ヘッドを装着した状態で、この記録ヘッドに対し、インクを供給するためのジョイント部をユーザが接続する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成においては、ジョイント部に配されたガイドピンと記録ヘッドに配されたガイド穴を目視で確認しながら、ユーザが手作業でこれらを結合する必要があり、ユーザの負担が大きい。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものである。よって、その目的とするところは、記録装置に対する記録ヘッドの接続を確実に実行することが可能なインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明は、インクを吐出する記録ヘッドへ供給されるインクを貯留するタンクと、前記タンクから前記記録ヘッドへインクを供給するための第1接続部と、前記記録ヘッドからインクを回収するための第2接続部と、前記第1接続部と共に移動可能な軸部と、前記記録ヘッドを保持し鉛直方向に移動するヘッドホルダと、を備え、前記記録ヘッドは、前記第1接続部と接続可能な第1ヘッドジョイントと、前記第2接続部と接続可能な第2ヘッドジョイントと、前記軸部の一端と係合可能な係合部と、を有し、前記軸部が前記係合部と係合することによって、前記第1ヘッドジョイントと前記第1接続部とが接続されて前記タンクから前記記録ヘッドへのインクの供給が可能となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、記録装置に対する記録ヘッドの接続を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】第1カセットから給送された記録媒体の搬送経路図
【
図5】第2カセットから給送された記録媒体の搬送経路図
【
図6】記録媒体の裏面に記録動作を行う場合の搬送経路図
【
図10】記録ヘッドとジョイントユニットの接続部を示す図
【
図11】ヘッドホルダにおける記録ヘッドとジョイントユニットを示す図
【
図13】ジョイントユニットの位置とセンサの検知位置を示す図
【
図14】リフトプレートとリフトプレートカバーの拡大図
【
図15】ジョイントユニットの相対位置に対する各部材の状態を示す図
【
図16】ジョイントユニットの昇降シーケンスを示すフローチャート
【
図17】記録ヘッド装着確認シーケンスのフローチャート
【
図18】ヘッド解除確認シーケンスのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態で使用するインクジェット記録装置1(以下、記録装置1)の内部構成図である。図において、x方向は水平方向、y方向(紙面垂直方向)は後述する記録ヘッド80において吐出口が配列される方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
【0010】
記録装置1は、プリント部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3で個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFで自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、本実施形態はプリント部2とスキャナ部3を併せ持った複合機であるが、スキャナ部3を備えない形態であってもよい。
図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
【0011】
プリント部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際にはいずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
【0012】
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19およびフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、ヘッドユニット8の上流側および下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送ローラ7の下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、ヘッドユニット8の下流側に配される搬送ローラ7及び排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
【0013】
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
【0014】
本実施形態のヘッドユニット8は、後述するヘッドホルダ20に記録ヘッド80が装着されて構成される。記録ヘッド80はフルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドであり、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、
図1におけるy方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ複数配列されている。ヘッドユニット8が待機位置にあるとき、ヘッドユニット8(記録ヘッド80)の吐出口面8aは、
図1のように鉛直下方を向きキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するようにヘッドユニット8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、ヘッドユニット8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。ヘッドユニット8の待機位置から記録位置への移動については、後に詳しく説明する。
【0015】
インクタンクユニット14は、ヘッドユニット8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14とヘッドユニット8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド80内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態では循環型のインク供給系を採用しており、インク供給ユニット15は記録ヘッド80へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド80から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
【0016】
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド80に対するメンテナンス動作を行う。
【0017】
図2は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリント部2を統括するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
【0018】
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
【0019】
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナ部3に送信する。
【0020】
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
【0021】
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、プリント部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。ヘッドユニット8が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介してヘッドユニット8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して
図1に示す給送ユニット6A、6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。プリントコントローラ202の指示に従って、記録媒体Sの搬送動作に連動してヘッドユニット8による記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
【0022】
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じてヘッドユニット8の向きや位置を変更する。また、ヘッドキャリッジ制御部208は、ヘッドユニット8と、ヘッドユニット8にインクを接続するためのジョイントユニット30(
図2では不図示)との接続制御も行う。具体的には、ジョイントユニット30を昇降させるための昇降モータ37と、ジョイントユニット30の上下位置を確認するための第1センサ21、第2センサ22を有し、これらセンサの検出結果に基づいて昇降モータ37を駆動する。ヘッドユニット8とジョイントユニット30との接続制御については、後に詳しく説明する。
【0023】
インク供給制御部209は、ヘッドユニット8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、ヘッドユニット8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
【0024】
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えばコントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザによってADFに搭載された原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、ヘッドユニット8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
【0025】
図3は、記録装置1が記録状態にあるときを示す。
図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10がヘッドユニット8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。本実施形態において、プラテン9の平面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置におけるヘッドユニット8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
【0026】
ヘッドユニット8を
図1に示す待機位置から
図3に示す記録位置に移動する際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を
図3に示す退避位置まで降下させる。これにより、ヘッドユニット8の吐出口面8aは、キャップ部材10aと離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いてヘッドユニット8の鉛直方向の高さを調整しながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。記録動作が完了し、ヘッドユニット8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
【0027】
次に、プリント部2における記録媒体Sの搬送経路について説明する。記録コマンドが入力されると、プリントコントローラ202は、まず、メンテナンス制御部210およびヘッドキャリッジ制御部208を用いて、ヘッドユニット8を
図3に示す記録位置に移動する。その後、プリントコントローラ202は搬送制御部207を用い、記録コマンドに従って第1給送ユニット6Aおよび第2給送ユニット6Bのいずれかを駆動し、記録媒体Sを給送する。
【0028】
図4(a)~(c)は、第1カセット5Aに収容されているA4サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第1カセット5A内の1番上に積載された記録媒体Sは、第1給送ユニット6Aによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9とヘッドユニット8の間の記録領域Pに向けて搬送される。
図4(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、第1給送ユニット6Aに給送されて記録領域Pに到達する間に、水平方向(x方向)から、水平方向に対して約45度傾いた方向に変更される。
【0029】
記録領域Pでは、記録ヘッド80に設けられた複数の吐出口から記録媒体Sに向けてインクが吐出される。インクが付与される領域の記録媒体Sは、プラテン9によってその背面が支持されており、吐出口面8aと記録媒体Sの距離が一定に保たれている。インクが付与された後の記録媒体Sは、搬送ローラ7と拍車7bに案内されながら、先端が右に傾いているフラッパ11の左側を通り、ガイド18に沿って記録装置1の鉛直方向上方へ搬送される。
図4(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、水平方向に対し約45度傾いた記録領域Pの位置から、搬送ローラ7と拍車7bによって鉛直方向上方に変更されている。
【0030】
記録媒体Sは、鉛直方向上方に搬送された後、排出ローラ12と拍車7bによって排出トレイ13に排出される。
図4(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。排出された記録媒体Sは、ヘッドユニット8によって画像が記録された面を下にした状態で、排出トレイ13上に保持される。
【0031】
図5(a)~(c)は、第2カセット5Bに収容されているA3サイズの記録媒体Sが給送されるときの搬送経路を示す図である。第2カセット5B内の1番上に積載された記録媒体Sは、第2給送ユニット6Bによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9とヘッドユニット8の間の記録領域Pに向けて搬送される。
【0032】
図5(a)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。第2給送ユニット6Bに給送されて記録領域Pに到達するまでの搬送経路には、複数の搬送ローラ7とピンチローラ7aおよびインナーガイド19が配されることで、記録媒体SはS字上に湾曲されてプラテン9まで搬送される。
【0033】
その後の搬送経路は、
図4(b)および(c)で示したA4サイズの記録媒体Sの場合と同様である。
図5(b)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。
図5(c)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
【0034】
図6(a)~(d)は、A4サイズの記録媒体Sの裏面(第2面)に対して記録動作(両面記録)を行う場合の搬送経路を示す。両面記録を行う場合、第1面(表面)を記録した後に第2面(裏面)に記録動作を行う。第1面を記録する際の搬送工程は
図4(a)~(c)と同様であるので、ここでは説明を省略する。以後、
図4(c)以後の搬送工程について説明する。
【0035】
ヘッドユニット8による第1面への記録動作が完了し、記録媒体Sの後端がフラッパ11を通過すると、プリントコントローラ202は、搬送ローラ7を逆回転させて記録媒体Sを記録装置1の内部へ搬送する。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータによってその先端が左側に傾くように制御されるため、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)はフラッパ11の右側を通過して鉛直方向下方へ搬送される。
図6(a)は、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)が、フラッパ11の右側を通過する状態を示す。
【0036】
その後記録媒体Sは、インナーガイド19の湾曲した外周面に沿って搬送され、再びヘッドユニット8とプラテン9の間の記録領域Pに搬送される。この際、ヘッドユニット8の吐出口面8aに、記録媒体Sの第2面が対向する。
図6(b)は、第2面の記録動作のために、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。
【0037】
その後の搬送経路は、
図4(b)および(c)で示した第1面記録の場合と同様である。
図6(c)は、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータにより先端が右側に傾いた位置に移動するように制御される。
図6(d)は、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
【0038】
次に、ヘッドユニット8に対するメンテナンス動作について説明する。
図1でも説明したように、本実施形態のメンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17とを備え、所定のタイミングにこれらを作動させてメンテナンス動作を行う。
【0039】
図7は、記録装置1がメンテナンス状態のときの図である。ヘッドユニット8を
図1に示す待機位置から
図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、ヘッドユニット8を鉛直方向において上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から
図7における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドユニット8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0040】
一方、ヘッドユニット8を
図3に示す記録位置から
図7に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、ヘッドユニット8を45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後プリントコントローラ202は、ヘッドユニット8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0041】
次に、記録ヘッド80を記録装置1に装着するための構成について説明する。記録ヘッド80を記録装置1に装着したり取り外したりする際、ヘッドユニット8は、
図7で示したメンテナンス位置よりも数センチ程度高い位置に移動する。
【0042】
図8は、記録装置1に設けられている、記録ヘッド80を装着するためのヘッドホルダ20を示す図である。ヘッドホルダ20は、内部が空洞のy方向に延在する筐体であり、記録ヘッド80はヘッドホルダ20の側面から+y方向に挿入されることによって装置本体に装着される。ヘッドホルダ20の奥側には、挿入される記録ヘッド80と電気的に接続するための接続部(
図8では不図示)と、流体的に接続するためのジョイントユニット30が、配されている。
【0043】
図9(a)および(b)は、ヘッドホルダ20に記録ヘッド80を挿入する様子を示す図である。記録装置1に新たな記録ヘッド80を装着する場合、ユーザは空のヘッドホルダ20に対し記録ヘッド80を+y方向に挿入する。記録ヘッド80の挿入方向先端にはヘッド側電気接続部84が配されており、ヘッドホルダ20の内側にはヘッド側電気接続部84と対向する位置にホルダ側電気接続部23が配されている。このため、ユーザが、記録ヘッド80をヘッドホルダ20に挿入しy方向にスライドさせると、これらが結合し、記録ヘッド80は記録装置1に対し電気的に接続される。この間、記録ヘッド80とインク供給ユニット15を接続するためのジョイントユニット30は、記録ヘッド80がスライドする領域に対し+z方向に退避している。そのため、ジョイントユニット30によって記録ヘッド80のスライド移動が妨げられない。
【0044】
図10(a)および(b)は、記録ヘッド80とジョイントユニット30の接続の様子を示す図である。
図10(a)はジョイントユニット30を、同図(b)は記録ヘッド80におけるジョイントユニット30との接続領域を示している。記録ヘッド80の接続領域は、記録ヘッド80において、吐出口面8aが形成されている面の裏側であって、挿入方向の奥側(+y方向側)に配されている。
【0045】
ジョイントユニット30は、記録ヘッド80に対しインクを供給するための供給ジョイント部32と記録ヘッド80からインクを回収するための回収ジョイント部33を有する。ジョイントユニット30は、支持部となるホルダプレート31(
図11参照)に固定されている。ホルダプレート31のほぼ中央には、記録ヘッド80と接続する際に使用される軸部を貫通させるための穴31aが設けられている。
【0046】
一方、記録ヘッド80には、
図10(b)に示すように、インクを授受するためのヘッドジョイント(以下、ニードル82と言う)と、位置決めピン83が設けられている。供給ジョイント部32と接続するニードル82も、回収ジョイント部33と接続するニードル82も、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色分ずつ用意されている。また、位置決めピン83は、供給ジョイント部32および回収ジョイント部33のそれぞれについて、2本ずつ用意されている。
【0047】
ジョイントユニット30の記録ヘッド80との接続面には、ニードル82に対応する位置にニードルジョイント34が、位置決めピン83に対応する位置にピンガイド35がそれぞれ配されている。ピンガイド35に対する位置決めピン83の挿入に案内され、8つのニードル82が8つのニードルジョイント34とそれぞれ接続されることによって、記録装置1(インク供給ユニット15)と記録ヘッド80の接続が実現される。このように、記録ヘッド80とジョイントユニット30の接続の方向(z方向)は、記録ヘッド8を記録装置1に装着する方向(y方向)とは交差する方向になっている。なお、
図10(a)では供給ジョイント部32および回収ジョイント部33にチューブ39が接続された状態を示したが、他の図においては、便宜上、チューブ39は省略する。
【0048】
図11は、ヘッドホルダ20において、記録ヘッド80とジョイントユニット30が接続された状態を示す断面図である。ホルダプレート31は、ほぼ中央に位置する穴31aにスクリュー軸36を貫通した状態でこれを回転可能に支持している。スクリュー軸36は、上部に第1のネジ部36aが下部に第2のネジ部36bがそれぞれ設けられている。第1のネジ部36aはリフトプレート40のナット穴40aに係合可能であり、第2のネジ部36bは記録ヘッド80側の係合部となるヘッドナット81と係合可能である。
図11では、第1のネジ部36aはナット穴40aと係合せず、第2のネジ部36bがヘッドナット81に係合した状態を示している。
【0049】
ホルダプレート31には、上述した供給ジョイント部32と回収ジョイント部33のほか、駆動源となる昇降モータ37と、昇降モータ37の駆動力をスクリュー軸36に伝達するためのギア列38が取り付けられている。昇降モータ37は、
図2で示したプリントコントローラ202の指示のもと、ヘッドキャリッジ制御部208によって制御される。すなわち、ヘッドキャリッジ制御部208は昇降モータ37の回転方向を切替えることによって、ジョイントユニット30全体をスクリュー軸36の軸方向に昇降させ、記録ヘッド80とジョイントユニット30の接続および離間を制御することができる。
【0050】
図12(a)および(b)は、ヘッドホルダ20におけるジョイントユニット30の昇降の様子を示す図である。
図12(a)は、ジョイントユニット30が記録ヘッド80から離間した状態を示している。
図12(b)はジョイントユニット30が記録ヘッド80と接続した状態を示している。
【0051】
図12(a)の離間状態において、スクリュー軸36は上位に保持されており、その上端はリフトプレート40より突出している。第1のネジ部36aはリフトプレート40のナット穴40aに係合し、第2のネジ部36bはヘッドナット81から離間している。このため、供給ジョイント部32および回収ジョイント部33のニードルジョイント34は、記録ヘッド80のニードル82と離間しており、記録ヘッド80は記録装置1と接続されていない。本実施形態において、ユーザによるヘッドホルダ20に対する記録ヘッド80の着脱は、この離間状態で行われる。
【0052】
図12(b)の接続状態において、スクリュー軸36は下位に保持されており、第1のネジ部36aはリフトプレート40より下方に抜けた状態となっている。すなわち、第1のネジ部36aはリフトプレート40のナット穴40aに係合しておらず、第2のネジ部36bのみがヘッドナット81に突入し係合している。このときニードルジョイント34は、記録ヘッド80のニードル82と結合するため、記録ヘッド80と記録装置1が接続可能となる。
【0053】
本実施形態では、このような離間状態と接続状態を、昇降モータ37を用いて自動的に切り替えている。よって、記録ヘッド80と記録装置1の接続とその解除を、従来のようにユーザの手を煩わせることなくスムーズに行うことができる。
【0054】
ところで、離間状態から接続状態に移行する際、プリントコントローラ202は、ヘッド側電気接続部84とホルダ側電気接続部23の間の通電を確認した上で上記移行を行っている。但し、電気接点が静電気などの影響を受けると、プリントコントローラ202は記録ヘッド80が装着されていなくても、記録ヘッド80が装着されたと誤検知してしまうおそれがある。そして、この状態でジョイントユニット30を降下してしまうと、第1のネジ部36aがナット穴40aから外れたタイミングでスクリュー軸36がヘッドホルダ20の底面に落下し、ヘッドホルダを破損してしまうおそれが生じる。
【0055】
また、記録ヘッド80が装着されたと誤検知した状態で供給ジョイント部32からインクの供給を開始してしまうと、供給されたインクで装置内部が汚染されてしまう。特に、フルラインタイプのインクジェット記録装置においては、吐出口が高密度に配された記録ヘッドに対して安定したインク供給を行うために、インクを加圧供給することがある。本実施形態の記録装置1も、不図示のポンプによってインク供給ユニット15に配されるサブタンクから記録ヘッド80へインクを加圧供給する形態を採用しており、インクの水頭差を利用した供給形態よりもインクの漏洩や汚染の懸念が大きい。
【0056】
すなわち、静電気などの影響を考えると、通電の有無のみで記録ヘッド80が実際に装着されたか否かを確実に判断することは、信頼性の点から見て好ましくない。よって、本実施形態では、ジョイントユニット30の上下位置を検知するためのセンサを更に用意し、ジョイントユニット30の昇降が必要以上に行われないように制御する。
【0057】
図13(a)~(d)は、ヘッドホルダ20内における、ジョイントユニット30の位置とセンサの検知位置との関係を段階的に説明するための図である。ホルダプレート31の側面には、上下方向に所定の幅を有するリフトフラグ31bが、ホルダプレート31の外側に突出するように取り付けられている。このため、リフトフラグ31bは、スクリュー軸36の回転に伴ってホルダプレート31と共に上下方向に移動可能である。一方、ヘッドホルダ20の内側であってリフトフラグ31bが通過する経路の途中には、第1センサ21と第2センサ22が上下方向に所定の距離をおいて配されている。
【0058】
第1センサ21と第2センサ22は発光部と受光部を有する光学センサである。リフトフラグ31bがセンサから外れた位置にあるとき、発光部から発せられた光は受光部で受光される。リフトフラグ31bがセンサに対応する位置にあるとき、発光部から発せられた光はリフトフラグ31bで遮断され受光部に受光されない。ヘッドキャリッジ制御部208は、このような第1センサにおける受光の有無(Open/Close)と、第2センサにおける受光の有無(Open/Close)の組み合わせによって、ジョイントユニット30の上下位置を判断する。
【0059】
リフトプレート40の更に上面には、リフトプレート40をカバーするリフトプレートカバー41が載せられヘッドホルダ20にビス止めされている。但し、リフトプレート40とリフトプレートカバー41は互いに固定されておらず、リフトプレート40は、ヘッドホルダ20に対しxy方向にもz方向にも多少移動できるようになっている。通常状態において、リフトプレート40とリフトプレートカバー41の間には若干の隙間Gが形成されている(
図14(a)参照)。
【0060】
図13(a)は、
図12(a)と同様の離間状態を示している。スクリュー軸36の下端はヘッドナット81から離れた上方にあり、ニードルジョイント34およびピンガイド35は、記録ヘッド80のニードル82および位置決めピン83からそれぞれ離間している。リフトフラグ31bは第1センサ21よりも上位にあり、第1センサ21も第2センサ22も検出結果はOpen(非遮断)を示す。
【0061】
ヘッドキャリッジ制御部208が昇降モータ37を順方向に駆動すると、スクリュー軸36は第1のネジ部36aがナット穴40aと係合しながら降下し、これに伴ってジョイントユニット30全体も徐々に降下する。この降下を暫く継続すると、やがてスクリュー軸36の第2のネジ部36bはヘッドナット81に突入する。
【0062】
第2のネジ部36bとヘッドナット81が係合すると、スクリュー軸36はリフトプレート40と記録ヘッド80の両方と係合する状態になる。そして、第1のネジ部36aとナット穴40aにおけるネジ結合と位相が合うまで、第2のネジ部36bはxy平面内の位置合わせを行いながらヘッドナット81と係合しつつヘッドナット81から上向きの抗力を受ける。この上向きの抗力をスクリュー軸36が受けることで、リフトプレート40を上方へ持ち上げる力が働く。
【0063】
図14(a)および(b)は、上記状態を詳細に説明するための拡大図である。通常状態にあるとき、リフトプレート40とリフトプレートカバー41との間には
図14(a)に示すような隙間Gが存在する。一方、スクリュー軸36がヘッドナット81から抗力を受けると、リフトプレート40が持ち上げられて隙間Gが狭まり、
図14(b)に示すようにリフトプレート40がリフトプレートカバー41に接触する場合もある。このように、リフトプレート40とリフトプレートカバー41の間に隙間Gを設けることで、ヘッドナット81から受ける抗力が他の部材に付与されるのを抑制することができる。
【0064】
その後、第2のネジ部36bとヘッドナット81とのネジ結合が、第1のネジ部36aとナット穴40aにおけるネジ結合の位相と合うと、スクリュー軸36は再び降下し始める。このときスクリュー軸36はヘッドナット81から抗力を受けないため、リフトプレート40は再び
図14(a)の位置に戻る。さらにスクリュー軸36が降下すると、第1のネジ部36aがナット穴40aより下方へ抜けることで第1のネジ部36aとナット穴40aの係合が解除される。すなわちスクリュー軸36は、リフトプレート40との係合が解除され、記録ヘッド80とのみ係合する状態となる。
【0065】
このように、第1のネジ部36aと第2のネジ部36bは、スクリュー軸36がリフトプレート40及び記録ヘッド80の両方と係合する状態が形成されるように、所定距離離れた位置関係でスクリュー軸36に設けられている。これにより、ジョイントユニット30をヘッドホルダ20と係合した状態から、記録ヘッド80と係合する状態へスムーズに移動させることができる。また、隙間Gの大きさは、スクリュー軸36においてリフトプレート40及び記録ヘッド80の両方と係合する領域(長さ)と対応するように、予め設定されている。
【0066】
なお、記録ヘッド80からジョイントユニット30を離間させる際にも、スクリュー軸36はヘッドナット81から抗力を受けることとなる。すなわち、第1のネジ部36aとナット穴40aにおけるネジ結合の位相が、第2のネジ部36bとヘッドナット81におけるネジ結合の位相と合うまでの間、スクリュー軸36はヘッドナット81から抗力を受けてリフトプレート40を持ち上げる。いずれにしても、リフトプレート40とリフトプレートカバー41との間に適切な大きさの隙間Gを予め設けておくことにより、ジョイントユニット30の昇降をスムーズに行うことができる。
【0067】
また、既に説明したように、リフトプレート40はヘッドホルダ20に対してxy方向にも移動可能な領域を有している。このため、ジョイントユニット30全体が、昇降するスクリュー軸36の位置合わせに追従して移動することができる。
【0068】
図13の説明に戻る。
図13(b)は、ジョイントユニット30が更に降下し、リフトフラグ31bの下端が第1センサ21を遮断した状態を示している。このとき、第1センサ21の検出値はClose(遮断)、第2センサ22の検出値はOpen(非遮断)を示す。そして、スクリュー軸36の第2のネジ部36bはヘッドナット81と係合し、第1のネジ部36aはリフトプレート40のナット穴40aに係合している。
【0069】
図13(c)は、ジョイントユニット30が更に降下し、第1センサ21も第2センサ22もリフトフラグ31bによって遮断された状態を示している。
図13(b)から
図13(c)までの間に、記録ヘッド80の位置決めピン83はジョイントユニット30のピンガイド35に徐々に進入し、記録ヘッド80のニードル82はジョイントユニット30のニードルジョイント34に徐々に進入して行く。そして、
図13(c)の状態において、位置決めピン83とピンガイド35、およびニードル82とニードルジョイント34のそれぞれは完全に接続される。
【0070】
このとき、第1センサ21と第2センサ22の検出値は、共にClose(遮断)を示す。プリントコントローラ202は、これらセンサの検出値に基づいて、記録ヘッド80は記録装置1と接続されたと判断することができる。
【0071】
図13(d)は、記録ヘッド80がヘッドホルダ20に装着されていない状態でジョイントユニット30が降下し、オーバーランしてしまった状態を示している。リフトフラグ31bの上端は第1センサ21の位置を通過しているため、第1センサ21の検出値はOpen(非遮断)となる。すなわち、プリントコントローラ202は、これらセンサの検出結果に基づいて、記録ヘッド80がヘッドホルダ20に対して正常に装着されていないことを推定することができる。
【0072】
図15は、記録ヘッド80に対するジョイントユニット30の相対位置と、それぞれの位置に対応するスクリュー軸36の係合状態及びセンサの検出結果を示す図である。プリントコントローラ202は第1センサ21と第2センサ22の検出結果の組み合わせに基づいて、ジョイントユニット30の位置や、記録ヘッド80とジョイントユニット30の接続状態を判断することが出来る。また、第1センサ21の検出値がOpen、第2センサ22の検出値がCloseである場合には、記録ヘッド80が正常に装着されていないことを推定することができる。
【0073】
図16は、プリントコントローラ202がヘッドキャリッジ制御部208を用いて実行する、ジョイントユニット30の昇降シーケンスを示すフローチャートである。本処理は、例えば記録ヘッド80の交換時のように、記録ヘッド80とジョイントユニット30との接続または離間が必要となった場合に、ユーザの指示またはプリントコントローラ202の判断によって開始される。
【0074】
本処理が開始されると、プリントコントローラ202は、まずS101において、ジョイントフラグ(FLG)の値を確認する。ジョイントフラグとは、ジョイントユニット30と記録ヘッド80との接続の動向を指定するフラグであり、接続動作を行う場合はFLG=1、離間動作を行う場合はFLG=2が設定される。また、どちらでもないときはFLG=0が設定され、例えば記録装置1の出荷時にはFLG=0が設定されている。
【0075】
S101でFLG=1の場合、プリントコントローラ202はジョイントユニット30と記録ヘッド80の接続動作を実行するためにS102に進む。FLG=2の場合、プリントコントローラ202はジョイントユニット30と記録ヘッド80の離間動作を実行するためにS108に進む。FLG=0の場合、プリントコントローラ202はジョイントユニット30の昇降は必要ないと判断し、S114で所定のエラー処理を行った後、本処理を終了する。
【0076】
ジョイントユニット30と記録ヘッド80の接続動作を行う場合、プリントコントローラ202はS102において第2センサ22の検出結果を確認する。第2センサ22の検出結果がOpenを示す場合、プリントコントローラ202は、現状態からジョイントユニット30を降下可能と判断し、S105に進む。
【0077】
一方、S101でFLG=1である(接続動作が指定された)にも関わらず、S102で第2センサ22の検出結果がCloseである場合は、前回の接続または離間の動作中に電源が切断されるなど、前回の動作が正常に行われなかった状況が懸念される。よって、プリントコントローラ202は、状態をリセットするためにジョイントユニット30を一度上昇させる。すなわち、プリントコントローラ202はS103に進み、昇降モータ37を逆方向に回転させてジョイントユニット30を所定量上昇させる。そして、S104において第2センサ22の検出結果がOpenであることが確認されると、ジョイントユニット30を降下させるためにS105に進む。
【0078】
S105において、プリントコントローラ202は、昇降モータ37を順方向に回転させてジョイントユニット30を所定量降下させる。そして、S106において第1センサ21および第2センサ22の検出結果が共にCloseであることを確認すると、プリントコントローラ202は、S107に進み記録ヘッド80とジョイントユニット30が接続されたことを意味する接続フラグを立てる。
【0079】
一方、S104にて第2センサ22の検出結果がCloseであった場合、また、S106において第1センサ21と第2センサ22のうち少なくとも一方の検出結果がOpenであった場合、ジョイントユニット30の昇降は正常に行われなかったことを意味する。よって、プリントコントローラ202は、S114にて所定のエラー処理を行った後、本処理を終了する。
【0080】
次に、S101においてFLG=2が確認された離間動作の場合について説明する。離間動作の場合、ヘッドキャリッジ制御部208はS108において、第1センサ21の検出結果を確認する。第1センサ21の検出結果がCloseの場合、プリントコントローラ202は、現状態からジョイントユニット30を上昇可能と判断し、S111に進む。
【0081】
一方、FLG=2である(離間動作が指定された)にも関わらず、S108で第1センサ21の検出結果がOpenである場合は、前回の接続または離間の動作が正常に行われなかった状況や、スクリュー軸36が脱落している状況が懸念される。よって、プリントコントローラ202は、状態をリセットするためにジョイントユニット30を一度降下させる。すなわち、ヘッドキャリッジ制御部208はS109において、昇降モータ37を順方向に回転させてジョイントユニット30を所定量降下させる。そして、S110において第1センサ21の検出結果がCloseであることが確認されると、プリントコントローラ202はジョイントユニット30を上昇させるためにS111に進む。
【0082】
S111において、プリントコントローラ202は、昇降モータ37を逆方向に回転させてジョイントユニット30を所定量上昇させる。そして、S112において第1センサ21および第2センサ22の検出結果が共にOpenであることを確認すると、プリントコントローラ202は、記録ヘッド80とジョイントユニット30とが離間されたことを意味する離間フラグを立てる。
【0083】
一方、S110において第1センサ21の検出結果がOpenであった場合、また、S112において第1センサ21と第2センサ22のうち少なくとも一方の検出結果がCloseであった場合、ジョイントユニット30の昇降は正常に行われていないことになる。よって、プリントコントローラ202は、S114にて所定のエラー処理を行った後、本処理を終了する。
【0084】
以上説明したように、本実施形態のプリントコントローラ202は、第1センサ21および第2センサ22の検出結果を確認しながら昇降モータ37の回転方向および回転量を制御している。このため、記録ヘッド80とジョイントユニット30との接続および離間をユーザの手を煩わせることなく、確実に行うことが可能となる。
【0085】
図17は、ユーザが記録ヘッド80をヘッドホルダ20に装着した後に、プリントコントローラ202が実行する記録ヘッド装着確認シーケンスのフローチャートである。本処理は、ユーザが、
図9(a)および(b)で示した手順に従って、記録ヘッド80をヘッドホルダ20に装着した後、ユーザの指示またはプリントコントローラ202の判断によって開始される。
【0086】
本処理が開始されると、プリントコントローラ202は、S11において、ヘッドキャリッジ制御部208を介して、ホルダ側電気接続部23とヘッド側電気接続部84との間の通電を確認する。通電が確認された場合、プリントコントローラ202は、記録ヘッド80は記録装置1に対して電気的に接続されたと判断しS12に進む。
【0087】
S12において、プリントコントローラ202はジョイントフラグを1に設定し(FLG=1)、続くS13において
図16で説明したジョイントユニット昇降シーケンスを実行する。ジョイントフラグが1に設定されているため、
図16のジョイントユニット昇降シーケンスではS102に進み、流体的な接続動作が正常に行われた場合にはS107で接続フラグが立てられる。
【0088】
上記ジョイントユニット昇降シーケンスが終了すると、プリントコントローラ202は、S14に進み、接続フラグ(S107)が立てられているか否かを確認する。接続フラグが確認できた場合、記録ヘッド80と記録装置1は電気的にも機械的にも接続されたとみなすことができるため、プリントコントローラ202はS15に進み、記録ヘッド80に対するインクの循環を許可する。すなわち、記録ヘッド80に対するインク供給ユニット15からのインクの供給および記録ヘッド80からインク供給ユニット15へ向けたインクの回収を許可する。
【0089】
一方、S11において通電が確認できなかった場合、またS14において接続フラグが確認できなかった場合、プリントコントローラ202はS16に進み、記録ヘッド80の装着が失敗したことをユーザに通知するなど所定のエラー処理を行う。以上で本処理は終了する。
【0090】
図18は、プリントコントローラ202が実行するヘッド離間確認シーケンスのフローチャートである。本処理は、現在装着されている記録ヘッド80を記録装置1から外す場合などに、ユーザの指示またはプリントコントローラ202の判断によって開始される。
【0091】
本処理が開始されると、プリントコントローラ202は、S21において、ジョイントフラグを2に設定する(FLG=2)。続いてS22に進み、プリントコントローラ202は、
図16で説明したジョイントユニット昇降シーケンスを実行する。ジョイントフラグが2に設定されているため、
図16のジョイントユニット昇降シーケンスではS108に進み、離間動作が正常に行われた場合にはS113で離間フラグが立てられる。
【0092】
上記ジョイントユニット昇降シーケンスが終了すると、プリントコントローラ202は、S23に進み、離間フラグ(S113)が立てられているか否かを確認する。離間フラグが確認できた場合、プリントコントローラ202はS24にて、記録ヘッドの取り外しを許可するための所定の処理を行い、本処理を終了する。
【0093】
一方、S23において離間フラグが確認できなかった場合、プリントコントローラ202はS25に進み、記録ヘッド80の接続解除が失敗したことをユーザに通知するなどの所定のエラー処理を行った後、本処理を終了する。
【0094】
以上説明したように、本実施形態によれば、記録装置と記録ヘッドの接続および離間をユーザに負担をかけることなく確実に行うことができる。
【0095】
なお、以上では循環型のインク供給系を用いたインクジェット記録装置を例に説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。インクタンクから記録ヘッドにインクを供給するためのジョイントユニットを備えた構成であれば良く、記録ヘッドからインクを回収する構成は必須ではない。
【0096】
更に、以上ではヘッドホルダ20に装着された記録ヘッド80に対し、ジョイントユニット30を鉛直上方から接続する形態で説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものでもない。例えば、ジョイントユニット30は記録ヘッド80に対し水平方向に接続される形態であっても良い。
【0097】
この場合、スクリュー軸36は水平方向に移動し、第1センサと第2センサは水平方向に並列されることになる。また、スクリュー軸の進行方向に重力が作用しないため、リフトホルダを記録ヘッドに向かう方向に付勢するばね手段などが用意されていることが好ましい。
【0098】
更に、以上ではフルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドを用いて説明してきたが、本発明はこのような構成に限定されるものでもない。記録ヘッドは、シリアルタイプであっても良い。また、ブラックインクのみを用いたモノクロヘッドであってもよいし、ライトシアンインクやライトマゼンタインクなど、更に多くの種類のインクを吐出可能な記録ヘッドであっても良い。
【0099】
いずれにしても、記録ヘッドをインクタンクとは独立して着脱可能なインクジェット記録装置であれば、記録ヘッドの着脱の度に記録ヘッドと記録装置の接続は必要となり、本発明を有効に機能させることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 インクジェット記録装置
8 ヘッドユニット
14 インクタンクユニット
30 ジョイントユニット
31 ホルダプレート(支持部)
34 ニードルジョイント(接続部)
36 スクリュー軸(軸部)
37 昇降モータ(駆動源)
80 記録ヘッド
81 ヘッドナット(係合部)
82 ニードル(ヘッドジョイント)