(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】インソール、履物
(51)【国際特許分類】
A43B 17/00 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
A43B17/00 Z
(21)【出願番号】P 2023082256
(22)【出願日】2023-05-18
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】512176288
【氏名又は名称】株式会社メディカサトウ
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【氏名又は名称】大川 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 青児
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-083307(JP,U)
【文献】特開2008-284067(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1522129(CN,A)
【文献】国際公開第2023/282221(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 17/00~17/18
A43B 13/14~13/18
A43B 7/00~ 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の履物の
各々の内底に敷設される
左右一対のインソールであって、
前記左右一対のインソールの各々は、
着用されたときに足裏に接する程度の弾性を有する薄板状で、
少なくとも着用者の踵に対応する領域から外足側を前方に延びる外足側領域と、前記外足側領域の内側に延在する内足側領域と、を一体的に有し、
平面視において、本インソールの前縁は、第1指のMP関節および第2指のMP関節よりも後側に位置し、第4指のMP関節および第5指のMP関節よりも前側に位置するインソール。
【請求項2】
平面視において、前記前縁は、第4指のDIP関節および第5指のDIP関節よりも後側に位置する、請求項1に記載のインソール。
【請求項3】
第1指のMP関節および第2指のMP関節の動きを妨げず、第4指のMP関節の動きを抑制する、請求項2に記載のインソール。
【請求項4】
第5指のMP関節およびPIP関節の動きを抑制し、第5指のDIP関節の動きを妨げない、請求項3に記載のインソール。
【請求項5】
第3指のMP関節の動きを抑制し、第3指のPIP関節の動きを妨げない、請求項4に記載のインソール。
【請求項6】
請求項1に記載のインソールが内底に敷設される履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物の内底に敷設されるインソール、およびこのインソールを有する履物に関する。
【背景技術】
【0002】
履物に装着され、人の足裏とアウトソールの間に介在するインソールが知られている。例えば、特許文献1には、足裏と接する板状体と、板状体の下部に配されるプレートと、プレートの湾曲を支持する湾曲支持体とを備えるインソールが開示されている。プレートは、湾曲させると反発弾性を生じる剛性を備える。湾曲支持体は、カーボンプレートにて形成され、プレートの湾曲を支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、人の足裏を支持するインソールについて以下の認識を得た。特許文献1に記載のインソールのように、足の横アーチに対応する領域で左右方向に平坦なインソールでは、内足側と外足側の荷重の内外バランスがとりにくく、姿勢を安定させることが難しい。この状態が長く続くと、使用者は、不安定な姿勢による疲労や体幹の歪みなどの問題を引き起こす可能性がある。
【0005】
これらから、発明者は、特許文献1に記載のインソールには、内足側と外足側の荷重の内外バランスをとり易くする観点で改善すべき余地があることを認識した。
【0006】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたもので、母趾球に体重がかかるようにして内足側と外足側の荷重の内外バランスがとり易いインソールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のインソールは、左右の履物の各々の内底に敷設される左右一対のインソールであって、左右一対のインソールの各々は、着用されたときに足裏に接する程度の弾性を有する薄板状で、少なくとも着用者の踵に対応する領域から外足側を前方に延びる外足側領域と、外足側領域の内側に延在する内足側領域と、を一体的に有する。平面視において、本インソールの前縁は、第1指のMP関節および第2指のMP関節よりも後側に位置し、第4指のMP関節および第5指のMP関節よりも前側に位置する。
【0008】
本発明の別の態様もまたインソールである。このインソールは、履物の内底に敷設されるインソールであって、着用されたときに足裏に接する程度の弾性を有する薄板状で、少なくとも着用者の土踏まずから踵に亘る領域に対応する後部領域と、小趾球に対応する外側領域とを一体的に有し、母趾球に対応する領域が切り欠かれている。
【0009】
本発明の別の態様は履物である。この履物は、上記のインソールが内底に敷設される。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、母趾球に体重がかかるようにして内足側と外足側の荷重の内外バランスがとり易いインソールを提供し、使用者の疲労や体幹の歪みなどを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態のインソールが適用された履物を示す図である。
【
図2】実1実施形態のインソールと足の指骨との関係を示す平面図である。
【
図3】第2実施形態のインソールが適用された履物を示す図である。
【
図4】第2実施形態のインソールと足の指骨との関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明者は、特許文献1に記載のインソールのように、足の横アーチに対応する領域で左右方向に平坦なインソールを有する履物を長時間使用したとき、疲労や体幹の歪みなどが起きやすいことを把握した。これは、左右平坦なインソールでは、内足側と外足側の荷重の内外バランスがとりにくく、姿勢を安定させることが難しいためと考えられる。つまり、使用者は、無意識のうちにバランスをとるために筋力を使用し続けることによって疲労が溜まり、さらに長期間の使用により体幹の歪みを引き起こすものと考えられる。
【0014】
これに対応して、発明者は、母趾球に体重がかかるようにすることによって、足裏の内外バランスがとりやすくなるとの知見を得、この知見に基づいて足裏の内外バランスをとりやすいインソールを案出した。以下、実施形態を参照して、本発明のインソールについて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定も制限もされない。
【0015】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0016】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0017】
なお、以下の説明において、「平行」、「垂直」は、完全な平行、垂直だけではなく、誤差の範囲で平行、垂直からずれている場合も含むものとする。また、「略」は、おおよその範囲で同一であるという意味である。
【0018】
[第1実施形態]
以下、
図1、
図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るインソール10を説明する。
図1は、インソール10が適用された履物100を示す側面図である。
図2は、インソール10と足の指骨との関係を示す平面図である。この図は、右足を上から視た図である。一例として、履物100は、靴であり、足4を覆う空間を包囲するアッパー94と、上面に内底92が設けられたアウトソール96とを有し、内底92に敷設されたインソール10を有する。
【0019】
図1に示すように、インソール10は、履物100の内底92に敷設されるインソールであって、中敷きとして機能する。インソール10は、着用されたときに足裏40に接する程度の弾性を有する薄板状を呈する。インソール10は、足裏40に直接触れるものであってもよいし、インソール10と足裏40との間に靴下やインソール10よりも薄い敷物が介在してもよい。例えば、インソール10は、母趾球41、小趾球42、踵47の一部または全部に接触するものであってもよい。例えば、インソール10の厚みは、0.5mm以上であってもよいし、6mm以下であってもよい。
【0020】
以下、着用された状態における身体の上下に対応する方向を上下方向といい、身体の前後に対応する方向を前後方向といい、身体の左右に対応する方向を左右方向ということがある。また、左右方向において内足側を内側、外足側を外側ということがある。また、着用時に足裏に面する面を主面といい、その反対側を反主面ということがある。この方向の表記はインソール10の使用姿勢を制限するものではなく、インソール10は、必要に応じて任意の姿勢で使用されうる。
【0021】
インソール10を、足の指骨との関係から説明する。以下、特に断らない限り、平面視におけるインソール10と足4の指骨の位置関係を説明する。
図2は、インソール10と足の指骨との関係を示す平面図である。インソール10は、少なくとも着用者の踵47に対応する領域から外足側を前方に延びる外足側領域19と、外足側領域19の内側に延在する内足側領域18と、を一体的に有する。
【0022】
インソール10の前縁15は、内足側領域18の前縁151と、外足側領域19の前縁153と、前縁151と前縁153の間の中間縁152とを含む。インソール10の前縁15は、第1指のMP関節J11および第2指のMP関節J21よりも後側に位置する。換言すると、内足側領域18の前縁151は、第1指のMP関節J11および第2指のMP関節J21よりも後側に位置する。本実施形態では、前縁151は、第1中足骨体B11および第2中足骨体B21と重なる。この構成により、第1指のMP関節J11および第2指のMP関節J21の上下可動幅が確保され、母趾球に体重がかかるようにして内足側と外足側の荷重の内外バランスの改善が期待できる。
【0023】
インソール10の前縁15は、第4指のMP関節J41および第5指のMP関節J51よりも前側に位置する。換言すると、外足側領域19の前縁153は、第4指のMP関節J41および第5指のMP関節J51よりも前側に位置する。本実施形態では、前縁153は、第4基節骨B42または第4中節骨B43に重なり、第5基節骨B52または第5末節骨B53に重なる。この構成により、第4指のMP関節J41および第5指のMP関節J51の上下可動幅が制限され、荷重の内外バランスの一層の改善が期待できる。
【0024】
本実施形態では、前縁15は、第3基節骨B32に重なる。この構成により、第3指のMP関節J31の上下可動幅が制限され、荷重の内外バランスの一層の改善が期待できる。
【0025】
本実施形態のインソール10では、外足側領域19の前縁153は、第4指のDIP関節J43および第5指のDIP関節J53よりも後側に位置する。この場合、前縁153が、DIP関節J43、J52よりも前側に位置する場合に比べて第4指および第5指の制限が緩和され、荷重の内外バランスの一層の改善が期待できる。
【0026】
本実施形態のインソール10は、第1指のMP関節J11および第2指のMP関節J21の動きを妨げず、第4指のMP関節J41の動きを抑制する。なお、関節の動きを妨げないとは、インソールによってはその関節の動きが抑制されないことである。この場合、MP関節J11、J21が抑制され、MP関節J41が非抑制の場合に比べて、荷重の内外バランスの一層の改善が期待できる。
【0027】
本実施形態のインソール10は、第5指のMP関節J51およびPIP関節J52の動きを抑制し、第5指のDIP関節J53の動きを妨げない。この場合、MP関節J51およびPIP関節J52が非抑制の場合に比べて、荷重の内外バランスの一層の改善が期待できる。
【0028】
本実施形態のインソール10は、第3指のMP関節J31の動きを抑制し、第3指のPIP関節J32の動きを妨げない。この場合、MP関節J31が非抑制でPIP関節J32が抑制される場合に比べて、荷重の内外バランスの一層の改善が期待できる。
【0029】
以上が第1実施形態の説明である。
【0030】
[第2実施形態]
以下、
図3、
図4を参照して、本発明の第2実施形態に係るインソール10を説明する。
図3は、第2実施形態のインソール10が適用された履物100を示す側面図であり、
図1に対応する。
図4は、第2実施形態のインソール10と足の指骨との関係を示す平面図であり、
図2に対応する。この図は、右足を上から視た図である。第2実施形態のインソール10は、第1実施形態のインソール10に対して、前縁15の形状が異なる点で相違し、他の構成は同様である。よって相違点を重点的に説明し、重複する説明を省略する。
【0031】
第2実施形態のインソール10は、履物100の内底92に敷設されるインソールであって、着用されたときに足裏40に接する程度の弾性を有する薄板状で、少なくとも着用者の土踏まず49から踵47に亘る領域に対応する後部領域12と、小趾球42に対応する外側領域13とを一体的に有し、母趾球41に対応する内側領域14が切り欠かれている。
【0032】
この構成によれば、母趾球に体重がかかるようにして内足側と外足側の荷重の内外バランスがとり易いインソールを提供し、使用者の疲労や体幹の歪みなどを軽減できる。
【0033】
外側領域13は、着用時に小趾球42が接する部分および当該部分から外側に亘る領域を含む。内側領域14は、着用時に母趾球41が接する部分および当該部分から内側に亘る領域を含む。「一体的な形状」は、複数の部位に分けて製造され、連結により一体化された形状であってもよいし、全体として一体に製造されたシームレスな1ピース形状であってもよい。
【0034】
インソール10は、着用時に足裏40の指46(特に第3~第5指)に接する部分を含んでいる。インソール10は、インソール10が左右3等分された最も内側の領域で、且つ、前後3等分された最も前側の領域を含む領域が内側領域14として切りかかれてもよい。
【0035】
インソール10の前縁15は、内足側領域18の前縁151と、外足側領域19の前縁153と、前縁151と前縁153の間の中間縁152とを含む。例えば、中間縁152は、外側領域13と内側領域14との境界線であり、第2指のMP関節J21と、第4指のMP関節J41との間を上下に略直線状に延びる。前縁151は、中間縁152から連続して内側に向かって弧状に延びる。例えば、前縁151は、第1中足骨の前後中心よりも後側を通る。
図4では、前縁151は、第1中足骨の骨底近傍を通る。
【0036】
以上が第2実施形態の説明である。
【0037】
以上、本発明のいくつかの実施形態をもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0038】
[変形例]
以下、変形例について説明する。変形例の説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0039】
実施形態の説明では、履物100が靴である例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、履物100は、草履、サンダル、下駄など、足にはくものであればよい。
【0040】
実施形態の説明では、インソール10が単独で使用される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、インソール10は靴下、足袋、ソックスなど、足にはくものに組み込まれてもよい。
【0041】
実施形態の説明では、中間縁152が第2指のMP関節J21と、第4指のMP関節J41との間に延びる例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、中間縁152は、第3指の指骨に沿って上下に延びる部分を含んでもよい。
【0042】
これらの変形例は、実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0043】
前述の各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0044】
10 インソール、 12 後部領域、 13 外側領域、 14 内側領域、 15、 151、153 前縁、 18 内足側領域、 19 外足側領域、 B32 第3基節骨、 J32 PIP関節、 40 足裏、 41 母趾球、 42 小趾球、 B43 第4中節骨、 46 指、 47 踵、 92 内底、 B11 第1中足骨体、 J11、J21、J31、J41、J51 MP関節、 J52 PIP関節、 J43、J53 DIP関節、B21 第2中足骨体、 B42 第4基節骨、 B52 第5基節骨、 B53 第5末節骨、 100 履物。