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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】歯列矯正用器具
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/12 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
A61C7/12
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023133665
(22)【出願日】2023-08-18
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】523229894
【氏名又は名称】木内 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100167184
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】木内 一弘
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2023-0013342(KR,A)
【文献】米国特許第06595774(US,B1)
【文献】特許第6601991(JP,B1)
【文献】国際公開第2020/045790(WO,A1)
【文献】中国実用新案第203468765(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第103505293(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1565802(KR,B1)
【文献】特許第6082727(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2010/0216084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隙間を狭くする前後の歯を接近させる力が作用する環を有するループ部を有し、ブラケットを用いて口腔内に配置されるアーチワイヤと、
前記ループ部よりも奥側の歯槽部に配置されるアンカーと、
前記ループ部と前記アンカーとを接続し、前記ループ部を前記アンカー側に引っ張る引張部材と、
を有し、
前記ループ内部には前記引張部材の前記ループ部内での移動を規制するフックが設けられていることを特徴とする歯列矯正用器具。
【請求項2】
前記ループ部は、1重の環を有している請求項1に記載の歯列矯正用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯列矯正用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
歯並びや、歯牙突出及び/または歯槽骨突出による上下顎前突を矯正する方法が知られている。例えば各歯の表面である歯冠に歯列矯正用ブラケットをそれぞれ装着し、隣接する各歯矯正用ブラケットに取り付けたアーチワイヤの機械的なテンション力(押圧、引き戻し、捩り等の復元力)を各歯に与え、適正な歯列状態へと各歯の位置を徐々に移動させる矯正方法が知られている。歯列矯正用ブラケットを介して対象歯に矯正のための力を作用させている。このような対象歯の移動には、ループメカニクスがあることが臨床的に知られている。
【0003】
また、歯列矯正用器具の発明が知られている。例えば、線材を3回巻、または4回巻された略筒状の巻回部、該巻回部の接線方向であって一の方向に引き出された第1の引出部、前記巻回部の接線方向であって前記第1の引出部と反対方向である他の方向に引き出された第2の引出部を有するループ部と、前記第1の引出部の軸心、及び前記第2の引出部の軸心のそれぞれと同一軸心上に連接された本線部と、を備える歯列矯正用アーチワイヤが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6305666号公報
【文献】特許第6082727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ループメカニクスにおいて一方の歯(専ら奥側の歯)を土台にしてもう一方の歯(専ら前側の歯)を奥側に引っ張って移動させるような構造の場合、奥側の歯も影響を受けて前側に移動する場合がある。例えば上顎前突を歯列矯正する場合に奥側の歯が影響を受けて前側に移動すると隙間は埋まるが、前側の歯の移動が不十分となり、効果が薄い場合がある。
1つの側面では、本発明は、所望の歯を簡便に効率よく移動させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、開示の歯列矯正用器具が提供される。この歯列矯正用器具は、ループ部を有し、ブラケットを用いて口腔内に配置されるアーチワイヤと、ループ部よりも奥側の歯槽部に配置されるアンカーと、ループ部とアンカーとを接続し、ループ部をアンカー側に引っ張る引張部材と、を有している。
【発明の効果】
【0007】
1態様では、所望の歯を簡便に効率よく移動できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態の歯列矯正用器具を説明する図である。
図2】実施の形態の歯列矯正用器具の効果の一例を説明する図である。
図3】ボーイングエフェクトを説明する図である。
図4】実施の形態の歯列矯正用器具の効果の一例を説明する図である。
図5】変形例の歯列矯正用器具を説明する図である。
図6】変形例の歯列矯正用器具を着用した結果の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態の歯列矯正用器具を、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
以下の図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲等に限定されない。
実施の形態において単数形で表される要素は、文面で明らかに示されている場合を除き、複数形を含むものとする。
<実施の形態>
図1は、実施の形態の歯列矯正用器具を示す図である。図1において紙面右側を前側と言い、紙面左側を奥側と言う。
実施の形態の歯列矯正用器具100は、アーチワイヤ1とアンカー2と引張部材3とを有している。
【0011】
本実施の形態の歯列矯正用器具100は、歯20と歯21との間に存在した歯(図示せず)を抜歯した後に歯列に取り付けることで、その隙間Sに歯21を移動させることにより、上顎前突等を改善する機能を有している。
【0012】
アーチワイヤ1は、ループ部11を有し、ブラケット4を用いて口腔内に配置される。ブラケット4は、各歯(例えば歯20、21)の表面にそれぞれ取り付けられる。
【0013】
アーチワイヤ1の材料としては例えば金属が挙げられる。ブラケット4の構成材料としては、例えばステンレス鋼、セラミックス、ポリカーボネート等の樹脂等が挙げられる。
【0014】
本実施の形態のループ部11は、1重の環11aを有している。環11aを設けることにより環11aは、ねじりコイルばねのように作用し、巻き込む方向(内側に曲げる)に力が作用する。
【0015】
環11aを設けることにより、歯20と歯21との間のアーチワイヤ1の長さが長くなる。従って、弾力(レジリエンス)が大きくなって歯21を奥側に移動させる力が大きくなるので好ましい。環11aは2重以上でもよいが1重のものが好ましい。環11aを有していてなくてもよい。ループ部11にはフック11bが奥歯側に設けられている。
アンカー2は、ループ部11よりも奥側の歯槽部に配置される。アンカーの素材や配置方法については従来公知の方法を用いることができる。
【0016】
引張部材3は、フック11bとアンカー2とを接続し、ループ部11をアンカー2側に引っ張る。引張部材3の構成材料としては特に限定されないが、例えば金属や樹脂等が挙げられる。
【0017】
一般的なクローズワイヤー(隙間を閉じるワイヤー)は、ワイヤーを引っ張るために引っ掛ける箇所が必要になる。このため、フックをワイヤーに鑞着したり、後ろを曲げたりする技工等作業が必要になる(特に前の歯だけ動かしたいときは、フックをワイヤーに鑞着したり、何らかの形で接合しないといけない)。これに対し、本実施の形態では、引張部材3をフック11bに配置することにより、ループ部11内での引張部材3の移動が規制され、引張部材3による安定した牽引が、技工操作等を経ないで実現できる。
図2は、実施の形態の歯列矯正用器具を着用した結果の一例を説明する図である。
歯列矯正用器具100を着用することで、ループ部11の前側の歯と後ろ側の歯を接近させる力がはたらく。
【0018】
歯列矯正用器具100を着用し続けることにより、図1に比べて歯20と歯21との間の隙間Sを狭くすることができる。またアンカー2および引張部材3により歯20の前方への移動が規制されループ部11よりも前側の歯(例えば歯22、23)のみが全体的に後方に移動することにより、上顎前突等を改善することができる。
【0019】
以上述べたように、実施の形態の歯列矯正用器具100は、ループ部11を有し、ブラケット4を用いて口腔内に配置されるアーチワイヤ1と、ループ部11よりも奥側の歯茎(歯槽部)に配置されるアンカー2と、ループ部11とアンカー2とを接続し、ループ部11をアンカー2側に引っ張る引張部材3と、を有する。従って、ループ部11よりも奥側の歯20は移動させずに所望の歯(例えば歯21、22、23)を簡便に効率よく奥側に移動できる。
【0020】
例えば、特許第6305666号の図1(a)に示すような、アーチワイヤを前後の歯で固定する方法に比べて所望の歯(例えば歯21、22、23)を簡便に効率よく奥側に移動できる。
図3は、ボーイングエフェクトを説明する図である。
なお、図3では歯列を模式的に示している。
【0021】
アーチワイヤを前後の歯で固定する場合(従来技術)、図3に示すように、ボーイングエフェクト(前歯部を後方に移動する際、牽引力にワイヤーが負けて前歯部がたわんで下方向に垂れ下がり、前方のかみ合わせが深くなると共に、奥歯の咬み合わせも不十分になってしまう現象)が発生する場合がある。
図4は、実施の形態の歯列矯正用器具の効果の一例を説明する図である。
なお、図4では歯列を模式的に示している。
【0022】
本実施の形態の歯列矯正用器具100によれば、引張部材3をフック11bに配置することにより、ループ部11よりも前側の歯(例えば歯22、23)を図3中、時計回り回転させるモーメントMがはたらくため、引張部材3による牽引においても歯22、23のたわみを抑制してボーイングエフェクトを抑制することができる。
【0023】
また、ループ部11には引張部材3のループ部11内での移動を規制するフック11bが設けられている。これにより、引張部材3による安定した牽引を実現できる。
<変形例>
【0024】
なお、本実施の形態では、歯列矯正器具100は、歯の外側に配置した。しかしこれに限らず舌側矯正(マルチブラケット装置を舌側(歯の裏側)に装着する構造)にも適用することができる。
図5は、変形例の歯列矯正用器具を説明する図である。
なお、図5では咬合面から歯列を模式的に示している。図5において紙面上側が前歯側であり、紙面下側が奥歯側である。
図5に示す歯列矯正用器具100aは、舌側矯正に適用したものである。
【0025】
歯列矯正用器具100aは、アーチワイヤ31とアンカー32と引張部材33とを有している。アーチワイヤ31とアンカー32と引張部材33の構造や構成材料は、それぞれアーチワイヤ1とアンカー2と引張部材3と同じものを使用することができる。例えば、アーチワイヤ31は、ループ部11と同様の構造や構成材料をなすループ部311を有している。アンカー32は例えば歯の裏側の歯槽部に配置される。
図6は、変形例の歯列矯正用器具を着用した結果の一例を説明する図である。
【0026】
変形例の歯列矯正用器具100aを着用し続けることにより、図5に比べて歯40と歯41との間の隙間Sを狭くすることができる。またループ部311よりも前側の歯(例えば歯41~44)が全体的に奥側に移動することにより、前突を改善することができる。
【0027】
以上、本発明の歯列矯正用器具を、図示の実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や工程が付加されていてもよい。
また、本発明は、前述した各実施の形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
100、100a 歯列矯正用器具
1 アーチワイヤ
11 ループ部
11a 環
11b フック
2 アンカー
3 引張部材
4 ブラケット
20~23 歯
【要約】
【課題】所望の歯を効率よく移動させること。
【解決手段】歯列矯正用器具100は、ループ部11を有し、ブラケット4を用いて口腔内に配置されるアーチワイヤ1と、ループ部11よりも奥側の歯槽部に配置されるアンカー2と、ループ部11とアンカー2とを接続し、ループ部11をアンカー2側に引っ張る引張部材3と、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6