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特許7600354エレベータ群管理装置およびエレベータ群管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】エレベータ群管理装置およびエレベータ群管理方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20241209BHJP
   B66B 1/18 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
B66B1/14 F
B66B1/18 N
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023207758
(22)【出願日】2023-12-08
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】箱田 将和
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/049328(WO,A1)
【文献】特開2013-067497(JP,A)
【文献】特開2013-234050(JP,A)
【文献】特開2019-151464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00- 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のエレベータを群管理し、
利用者ごとに予め登録された、乗りかごへの同乗を回避したい対象を示す回避情報を、利用者別回避情報として記憶する登録情報記憶部と、
前記複数台のエレベータごとに、乗りかご内の状況を示すかご内情報を取得する号機情報取得部と、
前記複数台のエレベータの乗場呼びが登録されると、前記乗場呼びの登録操作を行った利用者の識別情報を取得する乗場情報取得部と、
前記乗場情報取得部が取得した識別情報に対応する利用者の回避情報を、前記登録情報記憶部から取得する登録情報取得部と、
前記号機情報取得部が取得したかご内情報に基づいて、前記複数台のエレベータごとに、前記登録情報取得部が取得した回避情報で示される対象が乗りかご内にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記対象が乗りかご内にあると判定したエレベータ以外のエレベータを、前記乗場呼びに応答させるエレベータとして割り当てる割当制御部と、を備え
前記号機情報取得部は、前記複数台のエレベータの乗りかごごとのかご内情報として、各乗りかご内を撮影した撮像情報および各乗りかご内で収音した音情報を取得する、エレベータ群管理装置。
【請求項2】
複数台のエレベータを群管理し、
利用者ごとに予め登録された、乗りかごへの同乗を回避したい対象を示す回避情報を、利用者別回避情報として記憶する登録情報記憶部と、
前記複数台のエレベータごとに、乗りかご内の状況を示すかご内情報を取得する号機情報取得部と、
前記複数台のエレベータの乗場呼びが登録されると、前記乗場呼びの登録操作を行った利用者の識別情報を取得する乗場情報取得部と、
前記乗場情報取得部が取得した識別情報に対応する利用者の回避情報を、前記登録情報記憶部から取得する登録情報取得部と、
前記号機情報取得部が取得したかご内情報に基づいて、前記複数台のエレベータごとに、前記登録情報取得部が取得した回避情報で示される対象が乗りかご内にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記対象が乗りかご内にあると判定したエレベータ以外のエレベータを、前記乗場呼びに応答させるエレベータとして割り当てる割当制御部と、を備え
前記乗場情報取得部は、前記乗場呼びの登録操作を行った利用者の表情を示す表情情報と、前記乗場呼びの登録操作が行われた乗場における前記乗場呼びの登録操作を行った利用者以外の待ち利用者の有無を示す待ち利用者有無情報を取得し、
前記号機情報取得部は、複数台のエレベータにおいて登録されたかご呼びの情報を取得し、
前記乗場情報取得部が取得した表情情報に基づいて、前記乗場呼びの登録操作を行った利用者が急いでいると認識し、前記待ち利用者有無情報に基づいて、前記乗場に前記乗場呼びの登録操作を行った利用者以外の待ち利用者がいないと判定し、且つ、前記号機情報取得部が、前記乗場呼びに割り当てられたエレベータにおいて前記乗場呼びの発生階を行先階とするかご呼びが登録されていないと判定すると、この割り当てられたエレベータの乗りかごが前記乗場呼びの発生階に着床したときの乗りかごの戸開時間を短縮させる動作指示部をさらに備える、エレベータ群管理装置。
【請求項3】
複数台のエレベータを群管理し、
利用者ごとに予め登録された、乗りかごへの同乗を回避したい対象を示す回避情報を、利用者別回避情報として記憶する登録情報記憶部と、
前記複数台のエレベータごとに、乗りかご内の状況を示すかご内情報を取得する号機情報取得部と、
前記複数台のエレベータの乗場呼びが登録されると、前記乗場呼びの登録操作を行った利用者の識別情報を取得する乗場情報取得部と、
前記乗場情報取得部が取得した識別情報に対応する利用者の回避情報を、前記登録情報記憶部から取得する登録情報取得部と、
前記号機情報取得部が取得したかご内情報に基づいて、前記複数台のエレベータごとに、前記登録情報取得部が取得した回避情報で示される対象が乗りかご内にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記対象が乗りかご内にあると判定したエレベータ以外のエレベータを、前記乗場呼びに応答させるエレベータとして割り当てる割当制御部と、を備え
前記登録情報記憶部は、前記複数台のエレベータの全利用者を対象として予め登録された、乗りかごへの同乗を回避したい対象を示す全利用者回避情報をさらに記憶し、
前記判定部は、前記号機情報取得部が取得したかご内情報に基づいて、前記割当制御部が前記乗場呼びに割り当てたエレベータの乗りかごに、前記全利用者回避情報で示される対象があるか否かを判定し、
前記割当制御部は、前記乗場呼びに割り当てたエレベータの乗りかごに、前記全利用者回避情報で示される対象があると前記判定部が判定したときに、前記乗場呼びの登録操作を行った利用者がこの判定結果を認識して同乗を回避する意思を示す操作を行ったことを検知すると、前記乗場呼びに応答させるエレベータを変更する、エレベータ群管理装置。
【請求項4】
複数台のエレベータを群管理し、
利用者ごとに予め登録された、乗りかごへの同乗を回避したい対象を示す回避情報を、利用者別回避情報として記憶する登録情報記憶部と、
前記複数台のエレベータごとに、乗りかご内の状況を示すかご内情報を取得する号機情報取得部と、
前記複数台のエレベータの乗場呼びが登録されると、前記乗場呼びの登録操作を行った利用者の識別情報を取得する乗場情報取得部と、
前記乗場情報取得部が取得した識別情報に対応する利用者の回避情報を、前記登録情報記憶部から取得する登録情報取得部と、
前記号機情報取得部が取得したかご内情報に基づいて、前記複数台のエレベータごとに、前記登録情報取得部が取得した回避情報で示される対象が乗りかご内にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記対象が乗りかご内にあると判定したエレベータ以外のエレベータを、前記乗場呼びに応答させるエレベータとして割り当てる割当制御部と、を備え
前記判定部は、前記乗場呼びの発生階に乗場呼びの登録操作を行った利用者が複数いる場合には、前記登録情報取得部が取得した利用者別回避情報で示される対象が乗りかご内にあるか否かの判定を実行しない、エレベータ群管理装置。
【請求項5】
複数台のエレベータを群管理し、
利用者ごとに予め登録された、乗りかごへの同乗を回避したい対象を示す回避情報を、利用者別回避情報として記憶する登録情報記憶部と、
前記複数台のエレベータごとに、乗りかご内の状況を示すかご内情報を取得する号機情報取得部と、
前記複数台のエレベータの乗場呼びが登録されると、前記乗場呼びの登録操作を行った利用者の識別情報を取得する乗場情報取得部と、
前記乗場情報取得部が取得した識別情報に対応する利用者の回避情報を、前記登録情報記憶部から取得する登録情報取得部と、
前記号機情報取得部が取得したかご内情報に基づいて、前記複数台のエレベータごとに、前記登録情報取得部が取得した回避情報で示される対象が乗りかご内にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記対象が乗りかご内にあると判定したエレベータ以外のエレベータを、前記乗場呼びに応答させるエレベータとして割り当てる割当制御部と、を備え
前記乗場呼びは、乗場行先階登録装置で利用者により実行された行先階を指定する操作の情報とともに登録され、
前記判定部は、前記乗場行先階登録装置で実行された操作の情報と、前記乗場情報取得部が取得した前記識別情報とから前記乗場呼び登録操作を行った利用者ごとの行先方向を判別し、
前記割当制御部は、前記判定部が判別した行先方向に基づいて、前記乗場呼び登録操作を行った利用者ごとに、それぞれの回避対象が乗りかご内にあると判定したエレベータ以外のエレベータを、対応する乗場呼びに応答させるエレベータとして割り当てる、エレベータ群管理装置。
【請求項6】
前記登録情報記憶部は、前記複数台のエレベータの利用者ごとの回避対象の情報として、所定のステータスにある回避対象の情報を記憶し、
登録情報取得部は、前記乗場情報取得部が取得した利用者の識別情報に対応する、所定のステータスにある回避対象の情報を前記登録情報記憶部から取得し、
前記判定部は、前記号機情報取得部が取得したかご内情報に基づいて、前記複数台のエレベータの乗りかごごとに、前記登録情報取得部が取得した情報に対応する、所定のステータスにある回避対象がかご内にあるか否かを判定し、
前記割当制御部は、前記判定部が所定のステータスにある回避対象がかご内にあると判定したエレベータ以外のエレベータを、前記乗場呼びに応答させるエレベータとして割り当てる、請求項1~5いずれか1項に記載のエレベータ群管理装置。
【請求項7】
前記複数台のエレベータそれぞれについて、乗場呼びが発生してから乗りかごが前記乗場呼びの発生階に着床して戸開するまでの待ち時間の予測値を算出する待ち時間算出部をさらに備え、
前記割当制御部は、前記待ち時間算出部が算出した待ち時間の予測値が所定値未満のエレベータのうち、最も待ち時間が短いエレベータを、前記乗場呼びに応答するエレベータとして割り当てる割り当て制御を行う、請求項1~5いずれか1項に記載のエレベータ群管理装置。
【請求項8】
前記乗場情報取得部は、前記乗場呼びの発生階を撮影した撮像情報を解析した情報に基づいて前記乗場呼び登録操作を行った利用者の識別情報を取得するかまたは、前記乗場呼びの発生階に設置された近距離無線通信器を介して、前記乗場呼び登録操作を行った利用者が携帯する利用者端末からこの利用者の識別情報を取得する、請求項1~5いずれか1項に記載のエレベータ群管理装置。
【請求項9】
複数台のエレベータを群管理し、
利用者ごとに予め登録された、乗りかごへの同乗を回避したい対象を示す回避情報を、利用者別回避情報として記憶する登録情報記憶部を備えたエレベータ群管理装置が、
前記複数台のエレベータの乗場呼びが登録されると、前記乗場呼びの登録操作を行った利用者の識別情報を取得し、取得した識別情報に対応する利用者の回避情報を、前記登録情報記憶部から取得し、
前記複数台のエレベータごとに乗りかご内の状況を示すかご内情報として、各乗りかご内を撮影した撮像情報および各乗りかご内で収音した音情報を取得し、取得したかご内情報に基づいて、取得した回避情報で示される対象が乗りかご内にあるか否かを前記複数台のエレベータごとに判定
前記対象が乗りかご内にあると判定したエレベータ以外のエレベータを、前記乗場呼びに応答させるエレベータとして割り当てる、エレベータ群管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ群管理装置およびエレベータ群管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの利用者によっては、乗りかごへの同乗を回避したい対象を有している場合がある。例えば、乳児が泣くことや幼児が騒ぐことに対しては多くの利用者は理解しつつも、感染症に対する懸念が広がる中では、乗りかごのような密室空間において同乗を回避したいと考える利用者もいる。また、動物に関するアレルギー疾患を有する利用者は、ペットとの同乗を回避したいと考える。
【0003】
そのため、利用者が乗場呼び登録の操作を行い、これに応答して乗りかごが戸開したときに、この利用者が同乗を回避したい対象、例えば泣いている乳児、騒いでいる子供、またはペット等が乗りかご内にいた場合には、この利用者は乗車せずにこの乗りかごの出発を見送り、再度乗場呼び登録の操作を行って次に着床する乗りかごを待つことになる。
【0004】
このような事態が発生すると、利用者が複数回、乗場呼び登録の操作を行うことになるため利用者にとって不都合となるとともに、エレベータの運転効率も低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-151464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに鑑み、例えば、ペットとの同乗を回避したい利用者と、ペット同伴者との同乗を効率良く回避するために、これらの利用者のいずれかがエレベータの利用時に専用のボタン操作を行うことで、これらの利用者が同乗しないように乗りかごの運転を制御する技術がある。
【0007】
しかし、この技術を用いる場合、ペットとの同乗を回避したい利用者またはペット同伴者のいずれかがエレベータの利用の都度、専用ボタンを操作しなければならず、利用者にとって手間がかかるという問題があった。また、利用者がボタンの操作をし忘れると、同乗を回避できない場合があるという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、エレベータの乗りかごへの同乗を回避したい対象を有している利用者が、確実かつ容易にこの対象との同乗を回避してエレベータを利用することができるようにエレベータを制御する、エレベータ群管理装置およびエレベータ群管理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータ制御装置は、第1登録情報記憶部と第1登録情報取得部と第1判定部と動作制御部とを備える。第1登録情報記憶部は、利用者ごとに予め登録された、乗りかごへの同乗を回避したい対象を示す回避情報を記憶する。第1登録情報取得部は、乗場呼び登録操作を行った利用者の回避情報を、第1登録情報記憶部から取得する。第1判定部は、取得した回避情報で示される対象が乗りかご内にあるか否かを判定する。動作制御部は、乗りかご内に回避情報で示される対象があると判定すると、乗りかごを、乗場呼びの発生階を通過して走行させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成を示す全体図である。
図2】第1実施形態によるエレベータ制御装置に通信可能に接続された利用者端末に表示された回避情報の登録操作画面の一例である。
図3】第1実施形態によるエレベータ制御装置が、登録利用者の回避情報を用いてエレベータ制御を実行する際の動作を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態によるエレベータ群管理装置を用いたエレベータシステムの構成を示す全体図である。
図5】第2実施形態によるエレベータ群管理装置が、登録利用者の回避情報を用いて割当処理を実行する際の動作を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態によるエレベータ群管理装置が、全利用者回避情報を用いて割当処理を実行する際の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《第1実施形態》
〈第1実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成〉
図1は、本実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステム1の構成を示す全体図である。エレベータシステム1は、建物内の昇降路10-1の上部に設置された巻き上げ機11と、巻き上げ機11に掛け渡されたロープ12と、ロープ12の一端に吊り下げられた乗りかご13と、昇降路10-1の上部に設置されたエレベータ制御装置14とを備える。乗りかご13とエレベータ制御装置14とはテールコード15を介して接続される。乗りかご13内には、かご内カメラ装置131、かご内収音装置132、およびかご内操作盤133が設置される。
【0012】
かご内カメラ装置131は、例えば乗りかご13内の幕板または天井に設置され、乗りかご13内を撮影する。かご内収音装置132は、乗りかご13内の音を収音する。かご内操作盤133は、利用者がかご呼び登録操作を行うための行先階登録ボタン(図示せず)を有する。
【0013】
また、エレベータシステム1は、乗場20-1に設置された乗場呼び登録装置21-1と、乗場カメラ装置22-1と、画像解析装置23-1と、無線通信器24-1とを備える。乗場呼び登録装置21-1、画像解析装置23-1、および無線通信器24-1は、それぞれ信号線25-1、26-1、および27-1を介してエレベータ制御装置14に接続される。図1においては建物内の1つの乗場20-1のみを示しているが、他階の乗場も同様に構成可能である。
【0014】
乗場カメラ装置22-1は乗場20-1を撮影する。画像解析装置23-1は、乗場カメラ装置22-1が撮影した撮像情報を解析して、乗場呼び登録操作を行った利用者の識別情報および表情を示す情報等を取得する。無線通信器24-1は、例えば近距離無線通信により乗場20-1内の通信機器との無線通信を行う。
【0015】
また、エレベータシステム1は、エレベータシステム1を利用する利用者X1が携帯する利用者端末30-1と無線通信器24-1を介して無線通信可能に接続される。利用者端末30-1は、エレベータシステム1との情報の送受信を行うためのアプリケーションAPを搭載する。利用者端末30-1は、このアプリケーションAPを利用して、利用者X1の操作に基づいてエレベータ制御装置14にこの利用者X1の回避情報を登録する処理を行う。また利用者端末30-1は、エレベータ制御装置14から送信された情報を出力する。
【0016】
エレベータ制御装置14は、呼び登録部141と、第1登録情報記憶部142と、第1CPU143とを有する。呼び登録部141は、利用者が乗場呼び登録装置21-1で行った乗場呼び登録操作に基づく乗場呼びの情報、およびかご内操作盤133で行ったかご呼び登録操作に基づくかご呼びの情報を登録する。第1登録情報記憶部142は、エレベータの利用者ごとに予め登録された、乗りかご13への同乗を回避したい対象を示す回避情報を、利用者別回避情報として記憶する。
【0017】
第1CPU143は、例えば汎用のマイクロコンピュータが備えるCPU(中央処理装置)であって、所定のエレベータ制御プログラムをインストールして実行することにより、以下に示す1又は2以上の情報処理部を構成する。第1CPU143は、かご情報取得部143aと、第1乗場情報取得部143bと、第1登録情報取得部143cと、第1判定部143dと、動作制御部143eと、第1待ち時間算出部143fとを有する。
【0018】
かご情報取得部143aは、テールコード15を介して、乗りかご13内のかご内カメラ装置131、かご内収音装置132、およびかご内操作盤133で取得された情報を、かご内の状況を示すかご内情報として取得する。第1乗場情報取得部143bは、画像解析装置23-1から、乗場20-1で乗場呼びの登録操作を行った利用者の識別情報、表情を示す情報等を取得する。
【0019】
第1登録情報取得部143cは、第1乗場情報取得部143bが取得した識別情報に対応する利用者の回避情報を、第1登録情報記憶部142から取得する。第1判定部143dは、かご情報取得部143aが取得したかご内情報に基づいて、第1登録情報取得部143cが取得した回避情報で示される対象が乗りかご13内にあるか否かを判定する。
【0020】
動作制御部143eは、第1判定部143dが、乗りかご13内に回避情報で示される対象があると判定すると、乗りかご13を、乗場呼びの発生階を通過して走行させる。第1待ち時間算出部143fは、乗場呼びが発生してから乗りかご13が乗場呼びの発生階に着床して戸開するまでの時間である待ち時間の予測値を算出する。
【0021】
〈第1実施形態によるエレベータシステムの動作〉
本実施形態によるエレベータシステム1を利用者X1が利用するときの動作について、説明する。本実施形態において画像解析装置23-1は、エレベータシステム1の利用者として予め登録された利用者(以下、「登録利用者」と記載する)の顔情報を、この登録利用者の識別情報と紐づけて保持する。利用者X1はエレベータシステム1の登録利用者である。
【0022】
利用者X1は、利用者端末30-1でアプリケーションAPを利用して、利用者X1が乗りかご13への同乗を回避したい対象を示す回避情報をエレベータ制御装置14に登録する操作を行う。
【0023】
アプリケーションAPは、乗りかご13への同乗を回避したい対象の情報として「赤子」および「幼児」の情報を予め保持している。またアプリケーションAPは、所定のステータスにある回避対象の情報として、「泣いている赤子」および「騒いでいる幼児」の情報を保持している。
【0024】
図2は、アプリケーションAPにより利用者端末30-1に表示された回避情報の登録操作画面P1の一例である。登録操作画面P1は、予め保持した情報に基づいて、「赤子」と同乗することに同意する(Yes)かまたは同意せず回避する(No)かを選択させるための選択エリア31と、「泣いている赤子」と同乗することに同意する(Yes)かまたは同意せず回避する(No)かを選択させるための選択エリア32とを有する。選択エリア31は常に選択操作可能であり、選択エリア32は、選択エリア31で「Yes」を選択したときに選択操作可能になる。ここでは、利用者X1により選択エリア31で「Yes」が選択され、これにより選択操作可能になった選択エリア32で「No」が選択されている。つまり利用者X1は、赤子と同乗することには同意するが、泣いている赤子とは同乗を回避することを選択している。
【0025】
また、登録操作画面P1は、予め保持した情報に基づいて、「幼児」と同乗することに同意する(Yes)かまたは同意せず回避する(No)かを選択させるための選択エリア33と、「騒いでいる幼児」と同乗することに同意する(Yes)かまたは同意せず回避する(No)かを選択させるための選択エリア34とを有する。選択エリア33は常に選択操作可能であり、選択エリア34は、選択エリア33で「Yes」を選択したときに選択操作可能になる。ここでは、利用者X1により選択エリア33で「No」が選択され、これにより選択エリア34は選択操作不可能になっている。つまり利用者X1は、幼児の状態であるステータスに関わらず、幼児と同乗することに同意しないことを選択している。
【0026】
利用者X1が、このように選択した情報を登録する操作を行うと、この情報が利用者X1の回避情報として第1登録情報記憶部142に記憶される。
【0027】
図3は、本実施形態によるエレベータシステム1のエレベータ制御装置14が、登録利用者の回避情報を用いてエレベータ制御を実行する際の動作を示すフローチャートである。初期状態においては、エレベータ制御装置14の動作制御部143eは、呼び登録部141に乗場呼びまたはかご呼びが登録された際に、サービス性能を優先した応答処理を実行するように設定されている。つまり動作制御部143eは、乗場にいる待ち利用者の待ち時間がなるべく短くなるように、乗りかご13の動作を制御する。
【0028】
また、エレベータシステム1の稼動中、乗場カメラ装置22-1は乗場20-1を撮影し、画像解析装置23-1は乗場カメラ装置22-1が撮影した撮像情報を解析して、乗場呼び登録操作を行った利用者がいるか否かを監視している。画像解析装置23-1は、感情認識AIを用いて、撮像情報から乗場呼び登録操作を行った利用者の感情を認識してもよい。
【0029】
また、かご内カメラ装置131は乗りかご13内を撮影し、撮像情報をエレベータ制御装置14に送信する。また、かご内収音装置132は乗りかご13内の音を収音し、取得した音情報をエレベータ制御装置14に送信する。エレベータ制御装置14では、かご内カメラ装置131から送信された撮像情報およびかご内収音装置132から送信された音情報をかご情報取得部143aが取得する。かご情報取得部143aは、かご内カメラ装置131が撮影した撮像情報を解析して乗りかご13内にいる人物の年齢を予測したり、感情認識AIを用いて、乗りかご13内の子供、その親等の感情を認識したりしてもよい。
【0030】
利用者X1が乗場20-1に入場して乗場呼び登録装置21-1で乗場呼び登録操作を行うと、この操作情報がエレベータ制御装置14に送信される。エレベータ制御装置14では、乗場呼び登録装置21-1から送信された乗場呼び登録操作の情報に基づいて、呼び登録部141に乗場呼びが登録される(S1の「YES」)。
【0031】
また、利用者X1が乗場呼び登録操作を行うと、画像解析装置23-1が、乗場カメラ装置22-1が撮影した撮像情報を解析することで乗場呼び登録操作を行った利用者がいることを検知する。画像解析装置23-1は、乗場呼び登録操作を行った利用者がいることを検知すると、この利用者の顔部分の画像情報と保持している顔情報とを照合することで顔認証を行い、この利用者が登録利用者であるか否かを判定する。ここでは画像解析装置23-1は、乗場呼び登録操作を行った利用者X1が登録利用者であると判定し、この利用者X1の識別情報をエレベータ制御装置14に送信する。
【0032】
エレベータ制御装置14では、画像解析装置23-1から送信された利用者X1の識別情報を第1乗場情報取得部143bが取得する(S2の「YES」)。第1乗場情報取得部143bは、利用者X1の識別情報を取得すると、登録利用者である利用者X1により乗場呼び登録が行われたことを認識する。
【0033】
ここで第1乗場情報取得部143bは、乗場20-1に関し、乗場呼び登録を行った2人以上の登録利用者の識別情報を取得したか否かを判定する(S3)。ここでは第1乗場情報取得部143bは、利用者X1のみ、つまり1人の登録利用者の識別情報のみを取得したと判定する(S3の「NO」)。第1乗場情報取得部143bは、1人の登録利用者の識別情報のみを取得したと判定すると、この利用者X1の識別情報を第1登録情報取得部143cに送出する。
【0034】
第1登録情報取得部143cは、第1乗場情報取得部143bが取得した識別情報に対応する利用者X1の回避情報を、第1登録情報記憶部142から取得する(S4)。ここでは、第1登録情報取得部143cは、利用者X1の回避情報として、回避対象が「泣いている赤子」および「幼児」(騒いでいるか否かのステータスに関わらない)であることを示す情報を取得する。
【0035】
第1判定部143dは、かご情報取得部143aが取得した撮像情報および音情報に基づいて、第1登録情報取得部143cが取得した回避情報で示される回避対象が乗りかご13内に存在するか否かを判定する(S5)。
【0036】
例えば第1判定部143dは、乗りかご13内の撮像情報を解析して乗りかご13内に赤子がいることを認識し、乗りかご13内の音情報の大きさ(デシベル)等に基づいてこの赤子が泣いていることを認識すると、乗りかご13内に「泣いている赤子」が存在すると判定する。また第1判定部143dは、乗りかご13内の撮像情報を解析して乗りかご13内に幼児がいることを認識すると、乗りかご13内に「幼児」が存在すると判定する。第1判定部143dは、これらのいずれかが乗りかご13内に存在すると判定すると、乗りかご13内に利用者X1の回避対象が存在すると判定する(S5の「YES」)。
【0037】
第1判定部143dが、乗りかご13内に利用者X1の回避対象が存在すると判定すると、動作制御部143eは、第1待ち時間算出部143fが算出した、乗場呼び登録の発生階を乗りかご13が通過したときの待ち時間の予測値が予め設定された閾値(例えば、「1分」)以上でなければ(S7の「NO」)、乗りかご13を、乗場呼び登録の発生階、つまり乗場20-1の階床を通過して走行させる(S7)。この閾値は、予め管理者が設定してもよいし、各利用者が許容する待ち時間として、回避情報を登録する際に設定してもよい。
【0038】
動作制御部143eは、乗りかご13を乗場20-1の階床を通過させると、無線通信器24-1を介して利用者端末30-1に、乗りかご13内に回避対象が存在するため乗場20-1を通過した旨を示す通知情報を送信する(S8)。利用者端末30-1は、エレベータ制御装置14から取得した通知情報を表示または音声にて出力する。利用者X1は、出力された通知情報を認識して、乗りかご13が乗場20-1を通過した要因を確認することができる。
【0039】
その後、ステップS3に戻り、乗場20-1に関して2人以上の登録利用者の識別情報を取得していなければ、利用者X1の回避情報で示される回避対象が乗りかご13内に存在しないと判定される(S5の「NO」)かまたは、待ち時間の予測値が所定値以上になると判定される(S6の「YES」)まで、ステップS3~S8の処理が繰り返される。
【0040】
ステップS2において、エレベータ制御装置14が画像解析装置23-1から利用者X1の識別情報を取得しなかったときには(S2の「NO」)、第1乗場情報取得部143bは、登録利用者以外の利用者により乗場呼び登録が行われたと認識する。この場合、動作制御部143eは、通常の応答処理、つまりサービス性能を優先した乗場呼びへの応答処理を実行する(S9)。
【0041】
またステップS3において、第1乗場情報取得部143bが、乗場呼び登録を行った2人以上の登録利用者の識別情報を取得したと判定した場合、例えば乗場20-1において上方向の乗場呼びと下方向の乗場呼びとの2つの乗場呼びが登録されて双方が未応答の状態であり、上方向の乗場呼び登録操作を行った登録利用者および下方向の乗場呼び登録操作を行った登録利用者の双方の識別情報を取得した場合には、第1判定部143dは、利用者の回避対象が乗りかご13に存在するか否かの判定処理は行わない。
【0042】
2人の登録利用者が異なる方向の乗場呼び登録操作を行った場合、第1乗場情報取得部143bは、乗りかご13の現在の進行方向に対応する乗場呼び登録操作を行った登録利用者がいずれであるかを撮像情報から特定することが困難である。そのため、この2人の回避情報の内容が異なる場合、例えば1人の登録利用者の回避情報では赤子との同乗を許容する内容が登録されており、他方の登録利用者の回避情報では赤子との同乗を回避する内容が登録されている場合、第1判定部143dは、乗りかご13を通過させるべきか否かを適切に判定することができない。このような場合、動作制御部143eは、この乗場呼びに対して通常の呼び応答処理を実行する(S9)。
【0043】
またステップS5において、第1登録情報取得部143cが取得した回避情報で示される回避対象が乗りかご13内に存在しないと判定したときには(S5の「NO」)、動作制御部143eは、この乗場呼びに対して通常の呼び応答処理を実行する(S9)。
【0044】
またステップS6において、第1判定部143dが、待ち時間の予測値が所定値以上であると判定したときには(S6の「YES」)、動作制御部143eは、この乗場呼びに対して通常の呼び応答処理を実行する(S9)。このように処理を行うことにより、利用者の利便性が著しく低下することを回避することができる。
【0045】
以上の第1実施形態によれば、エレベータの乗りかごへの同乗を回避したい対象を有している利用者が、エレベータの利用時に特別な操作を必要とせずに、確実かつ容易にこの対象との同乗を回避してエレベータを利用することができるようにすることができる。また、このように制御することで、無駄な乗場呼びの発生を低減させることができ、効率良くエレベータの運転を行うことができる。
【0046】
上述した第1実施形態において、乗場カメラ装置22-1で撮影された撮像情報をエレベータ制御装置14が取得し、エレベータ制御装置14が乗場呼び登録操作を行った利用者の顔認証処理を行ってもよい。この場合、エレベータ制御装置14が登録利用者の顔情報を予め保持する。
【0047】
上述した第1実施形態では、乗場カメラ装置22-1が撮影した撮像情報を画像解析装置23-1が解析して乗場呼び登録操作を行った利用者の識別情報を取得し、画像解析装置23-1がエレベータ制御装置14にこの識別情報を送信する場合について説明した。しかしこれには限定されず、エレベータ制御装置14は、乗場呼びの発生階に設置された近距離無線通信器(図示せず)を介して、乗場呼び登録操作を行った利用者が携帯する利用者端末から利用者の識別情報を取得してもよい。
【0048】
《第2実施形態》
〈第2実施形態によるエレベータ群管理装置を用いたエレベータシステムの構成〉
図4は、本実施形態によるエレベータ群管理装置を用いたエレベータシステム2の構成を示す全体図である。エレベータシステム2は、複数台のエレベータであるA号機エレベータ100AおよびB号機エレベータ100Bと、エレベータ100Aおよび100Bを群管理するエレベータ群管理装置40とを備える。本実施形態においては、エレベータ群管理装置40が群管理するエレベータが2台である場合について説明するが、これには限定されず、3台以上であってもよい。
【0049】
A号機エレベータ100Aは、建物内の昇降路10-2の上部に設置された巻き上げ機11Aと、巻き上げ機11Aに掛け渡されたロープ12Aと、ロープ12Aの一端に吊り下げられた乗りかご13Aと、昇降路10-2の上部に設置されたA号機制御装置14Aとを備える。乗りかご13AとA号機制御装置14Aとはテールコード15Aを介して接続される。乗りかご13A内には、かご内カメラ装置131A、かご内収音装置132A、およびかご内操作盤133Aが設置される。
【0050】
B号機エレベータ100Bは、A号機エレベータ100Aと同様の構成を有する。
【0051】
また、エレベータシステム1は、乗場20-2に設置された乗場呼び登録装置21-2と、乗場カメラ装置22-2と、画像解析装置23-2と、無線通信器24-2とを備える。乗場呼び登録装置21-2、画像解析装置23-2、および無線通信器24-2は、それぞれ信号線25-2、26-2、および27-2を介してエレベータ群管理装置40に接続される。また、乗場呼び登録装置21-2の近傍には、通過ボタン28が設置される。通過ボタン28は、信号線29を介してエレベータ群管理装置40に接続される。図4においては建物内の1つの乗場20-2のみを示しているが、他階の乗場も同様に構成可能である。
【0052】
乗場カメラ装置22-2は乗場20-2を撮影する。画像解析装置23-2は、乗場カメラ装置22-2が撮影した撮像情報を解析して、乗場呼び登録操作を行った利用者の識別情報および表情を示す情報等を取得する。無線通信器24-2は、例えば近距離無線通信により乗場20-2内の通信機器との無線通信を行う。通過ボタン28は、利用者が乗りかご13Aまたは13Bを、乗場20-2の階床を通過させることを要求する意思を示すためのボタンである。
【0053】
また、エレベータシステム2は、エレベータシステム2を利用する利用者X2が携帯する利用者端末30-2と、無線通信器24-1を介して無線通信可能に接続される。利用者端末30-2は、エレベータシステム2との情報の送受信を行うためのアプリケーションAPを搭載する。利用者端末30-2は、このアプリケーションAPを利用して、利用者X2の操作に基づいてエレベータ群管理装置40にこの利用者X2の回避情報を登録する処理を行う。また利用者端末30-2は、エレベータ群管理装置40から送信された情報を出力する。
【0054】
エレベータ群管理装置40は、乗場呼び登録部41と、第2登録情報記憶部42と、第2CPU43とを有する。乗場呼び登録部41は、利用者が乗場呼び登録装置21-2で行った乗場呼び登録操作に基づく乗場呼びの情報を登録する。
【0055】
第2登録情報記憶部42は、登録利用者が乗りかご13A、13Bへの同乗を回避したい対象を示す回避情報を、利用者別回避情報として記憶する。また第2登録情報記憶部42は、登録利用者であるか否かに関わらず、エレベータシステム2の全利用者を対象として予め登録された、乗りかご13A、13Bへの同乗を回避したい対象を示す全利用者回避情報を記憶する。全利用者回避情報は、一般的に乗りかごへの同乗を回避したいと考える人が多い対象、例えば赤子、子供、ペット等である。
【0056】
第2CPU43は、例えば汎用のマイクロコンピュータが備えるCPU(中央処理装置)であって、所定のエレベータ制御プログラムをインストールして実行することにより、以下に示す1又は2以上の情報処理部を構成する。第2CPU43は、号機情報取得部431と、第2乗場情報取得部432と、第2登録情報取得部433と、第2判定部434と、第2待ち時間算出部435と、割当制御部436と、動作指示部437とを有する。
【0057】
号機情報取得部431は、A号機制御装置14AからA号機エレベータ100Aの動作情報を取得するとともに、B号機制御装置14BからB号機エレベータ100Bの動作情報を取得する。第2乗場情報取得部432は、画像解析装置23-1から、乗場20-1で乗場呼びの登録操作を行った利用者の識別情報、表情を示す情報等を取得する。
【0058】
第2登録情報取得部433は、第2乗場情報取得部432が取得した識別情報に対応する利用者の回避情報を、第2登録情報記憶部42から取得する。また第2登録情報取得部433は、乗場呼びの登録操作が行われたことを検知すると、第2登録情報記憶部42から全利用者回避情報を取得する。
【0059】
第2判定部434は、号機情報取得部431が取得したA号機エレベータ100AおよびB号機エレベータ100Bの情報に基づいて、第2登録情報取得部433が取得した回避情報で示される対象が乗りかご13A、13B内にあるか否かを判定する。
【0060】
第2待ち時間算出部435は、乗場呼びが発生してから乗りかご13A、13Bそれぞれが乗場呼びの発生階に着床して戸開するまでの時間である待ち時間の予測値を算出する。
【0061】
割当制御部436は、号機情報取得部431が取得した情報および第2判定部434で判定された結果に基づいて、乗場呼び登録部41に登録された乗場呼びに応答させるエレベータを割り当てる割当処理を実行する。
【0062】
動作指示部437は、割当制御部436が割り当てたエレベータの情報に基づいて、利用者に報知する通知情報を生成して利用者端末30-2に送信する。
【0063】
〈第2実施形態によるエレベータシステムの動作〉
本実施形態によるエレベータシステム2を、エレベータシステム2の登録利用者である利用者X2が利用するときの動作について説明する。本実施形態において画像解析装置23-2は、第1実施形態と同様に、エレベータシステム2の登録利用者の顔情報を、この登録利用者の識別情報と紐づけて保持する。
【0064】
利用者X2は、利用者端末30-2でアプリケーションAPを利用して、利用者X2が乗りかご13A、13Bへの同乗を回避したい対象を示す回避情報をエレベータ群管理装置40に登録する操作を行う。回避情報を登録する処理は、第1実施形態で説明した処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0065】
図5は、本実施形態によるエレベータ群管理装置40が、登録利用者の回避情報を用いて割当処理を実行する際の動作を示すフローチャートである。初期状態においては、エレベータ群管理装置40の割当制御部436は、乗場呼び登録部41に乗場呼びが登録された際に、サービス性能を優先した割当処理を実行するように設定されている。つまり割当制御部436は、乗場にいる待ち利用者の待ち時間がなるべく短くなるように、割当制御を行う。
【0066】
また、エレベータシステム2の稼動中、乗場カメラ装置22-2は乗場20-2を撮影し、画像解析装置23-2は乗場カメラ装置22-2が撮影した撮像情報を解析して、乗場呼び登録操作を行った利用者がいるか否かを監視している。
【0067】
また、かご内カメラ装置131A、131Bはそれぞれ乗りかご13A、13B内を撮影し、撮像情報を制御装置14A、14Bを介してエレベータ群管理装置40に送信する。また、かご内収音装置132A、132Bはそれぞれ乗りかご13A、13B内の音を収音し、取得した音情報を制御装置14A、14Bを介してエレベータ群管理装置40に送信する。エレベータ群管理装置40では、かご内カメラ装置131A、131Bから送信された撮像情報およびかご内収音装置132A、132Bから送信された音情報を号機情報取得部431が取得する。
【0068】
利用者X2が乗場20-2に入場して乗場呼び登録装置21-2で乗場呼び登録操作を行うと、この操作情報がエレベータ群管理装置40に送信される。エレベータ群管理装置40では、乗場呼び登録装置21-2から送信された乗場呼び登録操作の情報に基づいて、乗場呼び登録部41に乗場呼びが登録される(S11の「YES」)。
【0069】
また、利用者X2が乗場呼び登録操作を行うと、画像解析装置23-2が、乗場カメラ装置22-2が撮影した撮像情報を解析することで乗場呼び登録操作を行った利用者がいることを検知する。画像解析装置23-2は、乗場呼び登録操作を行った利用者がいることを検知すると、第1実施形態で説明した場合と同様に顔認証を行い、乗場呼び登録操作を行った利用者X2が登録利用者であると判定し、この利用者X2の識別情報をエレベータ群管理装置40に送信する。
【0070】
エレベータ群管理装置40では、画像解析装置23-2から送信された利用者X2の識別情報を第2乗場情報取得部432が取得する(S12の「YES」)。第2乗場情報取得部432は、利用者X2の識別情報を取得すると、登録利用者である利用者X2により乗場呼び登録が行われたことを認識する。
【0071】
ここで第2乗場情報取得部432は、乗場20-2に関し、乗場呼び登録を行った2人以上の登録利用者の識別情報を取得したか否かを判定する(S13)。ここでは第2乗場情報取得部432は、利用者X2のみ、つまり1人の登録利用者の識別情報のみを取得したと判定する(S13の「NO」)。第2乗場情報取得部432は、1人の登録利用者の識別情報のみを取得したと判定すると、この利用者X2の識別情報を第2登録情報取得部433に送出する。
【0072】
第2登録情報取得部433は、第2乗場情報取得部432が取得した識別情報に対応する利用者X2の回避情報を、第2登録情報記憶部42から取得する(S14)。ここでは、第2登録情報取得部433は、利用者X2の回避情報として、回避対象が「泣いている赤子」および「幼児」(騒いでいるか否かのステータスに関わらない)であることを示す情報を取得する。
【0073】
第2判定部434は、号機情報取得部431が取得した撮像情報および音情報に基づいて、号機ごとに、第1実施形態で説明した場合と同様に第2登録情報取得部433が取得した回避情報で示される回避対象が乗りかご13A、13B内に存在するか否かを判定する(S15)。
【0074】
割当制御部436は、第2判定部434による判定結果に基づいて、すべての乗りかご、つまり乗りかご13Aおよび13Bの双方に利用者X2の回避対象が存在するか否かを判定する(S16)。ここで、乗りかご13Aおよび13Bの少なくともいずれかには利用者X2の回避対象が存在しない場合には(S16の「NO」)、割当制御部436は、回避対象が存在しない号機に関する待ち時間の予測値を第2待ち時間算出部435から取得する。
【0075】
割当制御部436は、第2待ち時間算出部435から取得した情報に基づいて、回避対象が存在しない号機すべての待ち時間の予測値が、所定値(例えば、「1分」)以上であるか否かを判定する(S17)。割当制御部436は、回避対象が存在しない号機の中に待ち時間の予測値が所定値未満の号機があると判定した場合には(S17の「NO」)、その中で待ち時間が最も短い号機を乗場呼びに割り当てる(S18)。
【0076】
ステップS12において、エレベータ群管理装置40が画像解析装置23-2から利用者X2の識別情報を取得しなかったときには(S12の「NO」)、第2乗場情報取得部432は、登録利用者以外の利用者により乗場呼び登録が行われたと認識する。この場合、第1判定部143dは利用者の回避対象が乗りかご13に存在するか否かの判定処理は行わず、割当制御部436は、通常の割当制御、つまりサービス性能を優先して乗場呼びへの割当処理を実行する。(S19)。
【0077】
またステップS13において第2乗場情報取得部432が、乗場呼び登録を行った2人以上の登録利用者の識別情報を取得したと判定した場合(S13の「YES」)、ステップS16において割当制御部436が乗りかご13Aおよび13Bの双方に利用者X2の回避対象が存在すると判定した場合(S16の「YES」)、またはステップS17において割当制御部436が、回避対象が存在しない号機すべての待ち時間の予測値が所定値以上であると判定した場合(S17の「YES」)も、割当制御部436は通常の割当処理を実行する(S19)。
【0078】
次に、エレベータシステム2の他の動作例として、全利用者回避情報を用いて割当処理を実行するときの動作について説明する。図6は、エレベータ群管理装置40が、全利用者回避情報を用いて割当処理を実行する際の動作を示すフローチャートである。この処理は、上述したように登録利用者の回避情報を用いて割当処理を実行した際に、ステップS19において通常の割当処理に替えて実行してもよい。
【0079】
エレベータ群管理装置40に登録していない利用者X3が入場して乗場呼び登録装置21-2で乗場呼び登録操作を行うと、この操作に基づいて乗場呼び登録部41に乗場呼びが登録される(S21の「YES」)。
【0080】
また、利用者X3が乗場呼び登録操作を行うと、画像解析装置23-2が、乗場カメラ装置22-2が撮影した撮像情報を解析することで乗場呼び登録操作を行った利用者がいることを検知する。画像解析装置23-2は、乗場呼び登録操作を行った利用者がいることを検知すると、登録利用者であるか否かに関わらず、乗場呼び登録操作を行った利用者がいることをエレベータ群管理装置40に通知する。
【0081】
エレベータ群管理装置40では、画像解析装置23-2から送信された通知を第2乗場情報取得部432が取得し、第2登録情報取得部433に送出する。第2登録情報取得部433は、取得した通知に基づいて、第2登録情報記憶部42から全利用者回避情報を取得する。
【0082】
第2判定部434は、号機情報取得部431が取得した撮像情報および音情報に基づいて、号機ごとに、全利用者回避情報として登録された回避対象が乗りかご13Aまたは13B内に存在するか否かを判定する(S22)。
【0083】
割当制御部436は、第2判定部434による判定結果に基づいて、通常の割当制御によりこの乗場呼びに割り当てられるエレベータの乗りかご内にこの全利用者に関する回避対象が存在するか否かを判定する(S23)。この乗場呼びに割り当てられるエレベータの乗りかご内にこの回避対象が存在する場合には(S23の「YES」)、割当制御部436はさらに、すべての号機の乗りかご、つまり乗りかご13Aおよび13Bの双方に全利用者に関する回避対象が存在するか否かを判定する(S24)。
【0084】
ここで、割当制御部436は、乗りかご13Aおよび13Bの少なくともいずれかには全利用者に関する回避対象が存在しないと判定した場合には(S24の「NO」)、第2待ち時間算出部435から、通常の割当制御によりこの乗場呼びに割り当てるエレベータの乗りかごが乗場呼び登録の発生階を通過した場合における利用者X3の予想待ち時間を取得する。
【0085】
動作指示部437は、回避対象が存在している乗りかごが到着予定である旨と、通過ボタン28を操作した場合の予想待ち時間を報知するアナウンス情報を、乗場20-1に設置されたスピーカ装置(図示せず)から出力させる(S25)。
【0086】
アナウンス情報を出力させたことにより、利用者X3が通過ボタン28を押下すると、この押下操作の情報がエレベータ群管理装置40に送信される。エレベータ群管理装置40では、通過ボタン28の操作情報を割当制御部436が取得する。
【0087】
割当制御部436は、通過ボタン28の操作情報を取得すると(S26の「YES」)、利用者X3が回避対象との同乗を回避するために乗りかごを通過させる意思を示したことを検知し、全利用者に関する回避対象が存在しない号機の中で待ち時間が最も短い号機を乗場呼びに割り当てる(S27)。
【0088】
ステップS23において、割当制御部436が、通常の割当制御によりこの乗場呼びに割り当てられるエレベータの乗りかご内にこの全利用者に関する回避対象が存在しないと判定した場合(S23の「NO」)、ステップS24において、すべての号機の乗りかご内に全利用者に関する回避対象が存在すると判定した場合(S24の「YES」)、またはステップS26において、通過ボタン28の操作情報を所定時間内に取得しなかったとき(S26の「NO」)には、割当制御部436は通常の割当処理を実行する(S28)。
【0089】
上述した、登録利用者の回避情報を用いた割当処理と、全利用者回避情報を用いた割当処理とは、同時に実行してもよいし、登録利用者による乗場呼びが登録されていないときにのみ、全利用者回避情報を用いた割当処理を行ってもよい。
【0090】
以上の第2実施形態によれば、エレベータの乗りかごへの同乗を回避したい対象を有している利用者が複数台のエレベータのいずれかを利用する際に、特別な操作を必要とせずに、確実かつ容易にこの対象との同乗を回避してエレベータを利用することができるように、エレベータの群管理を行うことができる。また、このように制御することで、無駄な乗場呼びの発生を低減させることができ、効率良く複数エレベータの群管理を行うことができる。また、一般的に乗りかごへの同乗を回避したいと考える人が多い対象に関しては、エレベータ群管理装置40に事前登録していない利用者に対しても同乗するかしないかを選択させることができる。
【0091】
上述した第2実施形態において、乗場カメラ装置22-2で撮影された撮像情報をエレベータ群管理装置40が取得し、エレベータ群管理装置40が乗場呼び登録操作を行った利用者の顔認証処理を行ってもよい。この場合、エレベータ群管理装置40が登録利用者の顔情報を予め保持する。
【0092】
また上述した第2実施形態において、エレベータ群管理装置40は、乗場呼びの登録操作を行った利用者が急いでいることを認識したときに、この利用者がいる乗場における乗りかごの戸開閉時間を短縮させてもよい。
【0093】
この場合、第2乗場情報取得部432は、画像解析装置23-2から、乗場呼びの登録操作を行った利用者の表情を示す表情情報と、乗場呼びの登録操作が行われた乗場における乗場呼びの登録操作を行った利用者以外の待ち利用者の有無を示す待ち利用者有無情報を取得する。また、号機情報取得部431は、複数台のエレベータそれぞれにおいて登録されたかご呼びの情報を取得する。
【0094】
そして、動作指示部437は、第2乗場情報取得部432が取得した表情情報に基づいて乗場呼びの登録操作を行った利用者が急いでいると認識し、待ち利用者有無情報に基づいて、乗場に乗場呼びの登録操作を行った利用者以外の待ち利用者がいないと判定し、且つ、号機情報取得部431が乗場呼びに割り当てたエレベータにおいて乗場呼びの発生階を行先階とするかご呼びが登録されていないと判定すると、この割り当てたエレベータの乗りかごが乗場呼びの発生階に着床したときの乗りかごの戸開時間を短縮させる。
【0095】
このように処理を行うことで、急いでいる利用者がなるべく短時間で階床移動が可能になるように、乗りかごを動作させることができる。
【0096】
また上述した第2実施形態では、乗場カメラ装置22-2が撮影した撮像情報を画像解析装置23-2が解析して乗場呼び登録操作を行った利用者の識別情報を取得し、画像解析装置23-2がエレベータ群管理装置40にこの識別情報を送信する場合について説明した。しかしこれには限定されず、エレベータ群管理装置40は、乗場呼びの発生階に設置された近距離無線通信器(図示せず)を介して、乗場呼び登録操作を行った利用者が携帯する利用者端末から利用者の識別情報を取得してもよい。
【0097】
また上述した第2実施形態において、乗場呼び登録装置21-2を、利用者が行先階を指定して乗場呼び登録操作を行う乗場行先階登録装置で構成してもよい。この場合、エレベータ群管理装置40の第2判定部434は、2人以上の登録利用者の識別情報を取得しても、乗場行先階登録装置の操作情報と画像解析装置23-2による撮像情報の解析情報とから、利用者ごとの行先方向を判別することができる。そのため、割当制御部436は、乗場呼び登録操作を行った利用者ごとに判別した行先方向に基づいて、それぞれの回避対象が乗りかご内にあると判定したエレベータ以外のエレベータを、対応する乗場呼びに応答させるエレベータとして割り当てる。これにより、それぞれの各利用者がそれぞれの回避対象との同乗を回避するように、割当制御を行うことができる。
【0098】
また、乗場呼び登録装置21-2を乗場行先階登録装置で構成し、利用者がエレベータを利用する際に、利用者が所持する利用者端末等を乗場行先階登録装置にかざすことで、利用者端末に保持された行先階の情報をエレベータ群管理装置40に送信して乗場呼びを登録してもよい。この場合、利用者端末に予め利用者が同乗を回避したい回避対象の情報を記憶させておき、利用者が乗場行先階登録装置にかざしたときに、この回避対象の情報もエレベータ群管理装置に送信するようにしてもよい。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
1,2…エレベータシステム、10-1,10-2…昇降路、11,11A,11B…巻き上げ機、12,12A,12B…ロープ、14,14A,14B…エレベータ制御装置、15,15A,15B…テールコード、20-1,20-2…乗場、21-1,21-2…乗場呼び登録装置、22-1,22-2…乗場カメラ装置、23-1,23-2…画像解析装置、24-1,24-2…無線通信器、25-1,25-2,26-1,26-2,27-1、27-2,29…信号線、28…通過ボタン、30-1,30-2…利用者端末、31~34…選択エリア、40…エレベータ群管理装置、41…乗場呼び登録部、42…第2登録情報記憶部、43…第2CPU、100A…A号機エレベータ、100B…B号機エレベータ、131,131A,131B…かご内カメラ装置、132,132A,132B…かご内収音装置、133,133A,133B…かご内操作盤、141…呼び登録部、142…第1登録情報記憶部、143…第1CPU、143a…かご情報取得部、143b…第1乗場情報取得部、143c…第1登録情報取得部、143d…第1判定部、143e…動作制御部、143f…第1待ち時間算出部、431…号機情報取得部、432…第2乗場情報取得部、433…第2登録情報取得部、434…第2判定部、435…第2待ち時間算出部、436…割当制御部、437…動作指示部
【要約】
【課題】エレベータの乗りかごへの同乗を回避したい対象を有している利用者が、確実かつ容易にこの対象との同乗を回避してエレベータを利用することができるようにエレベータを制御するエレベータ制御装置を提供する。
【解決手段】実施形態によればエレベータ制御装置は、第1登録情報記憶部と第1登録情報取得部と第1判定部と動作制御部とを備える。第1登録情報記憶部は、利用者ごとに予め登録された、乗りかごへの同乗を回避したい対象を示す回避情報を記憶する。第1登録情報取得部は、乗場呼び登録操作を行った利用者の回避情報を、第1登録情報記憶部から取得する。第1判定部は、取得した回避情報で示される対象が乗りかご内にあるか否かを判定する。動作制御部は、乗りかご内に回避情報で示される対象があると判定すると、乗りかごを、乗場呼びの発生階を通過して走行させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6