IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディー・シー ダイアグノスティックス コンセプト ウー・ゲー(ハフトゥングスベシュレンクト)の特許一覧

<>
  • 特許-体液を保管するための容器 図1
  • 特許-体液を保管するための容器 図2
  • 特許-体液を保管するための容器 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】体液を保管するための容器
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/154 20060101AFI20241209BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20241209BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20241209BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20241209BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
A61B5/154 100
A61J1/05 313N
A61J1/05 311
G01N1/10 N
B32B1/08
B32B27/34
【請求項の数】 1
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023210373
(22)【出願日】2023-12-13
(62)【分割の表示】P 2021544842の分割
【原出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2024028971
(43)【公開日】2024-03-05
【審査請求日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】102019102597.4
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521339061
【氏名又は名称】ディー・シー ダイアグノスティックス コンセプト ウー・ゲー(ハフトゥングスベシュレンクト)
【氏名又は名称原語表記】DC Diagnostics Concept UG (haftungsbeschraenkt)
【住所又は居所原語表記】An den Wurmquellen 1, 52076 Aachen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ナグレ ヤグムル
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-209298(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101779959(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0362458(US,A1)
【文献】特開2001-79065(JP,A)
【文献】特開昭62-2949(JP,A)
【文献】国際公開第2016/177354(WO,A1)
【文献】特開平9-51889(JP,A)
【文献】特開2011-158480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/154
A61J 1/05
G01N 1/10
B32B 1/08
B32B 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を保管するための容器(1’)、特に、前記体液を収容するための内部空間(4)と、前記内部空間(4)を取り囲む壁(5)とを有する採血管(2)であって、前記容器(1’)の前記内部空間(4)に面した前記壁(5)の表面が接触面(6)を形成し、前記接触面(6)の少なくとも一部にコーティングが施されている、容器(1’)において、前記コーティングが、組換えDNA技術を用いて製造され、かつ、電気的に中性でタンパク質をはじく、または電荷を帯びたエラスチン-ポリペプチドコンストラクトから構成されたポリペプチドベースのブロックコポリペプチドを含むことを特徴とする、容器(1’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論
本発明は、第一に、体液を保管するための容器、特に、体液を収容するための内部空間と、内部空間を取り囲む壁とを有する採血管であって、容器の内部空間に面した壁の表面が接触面を形成し、接触面の少なくとも一部にプライマーコーティングが施されており、プライマーコーティングは、アジド基および官能基を有するパーフルオロフェニルアジド(PFPA)の形態のフッ素化カップリング剤から形成されている、容器に関する。
【0002】
さらに本発明は、体液を保管するための容器の接触面をコーティングする方法に関する。
【0003】
従来技術
診断プロセスでは、血液やその他の体液(血管外液(EVF))中の定量的なバイオマーカーの濃度や活性、および細胞や粒子の形態を病歴と合わせて特徴づけることで、臨床診断上の判断を下すことができる。信頼性の高い意思決定を行うための前提条件は、血管から採取した後の血液やEVFの分析前の安定化、および分析までの生体外での貯蔵を可能な限り高度に行うことである。現在、体液から採取されたサンプルは、実際に分析されるまでガラス管やプラスチック管(通常はポリプロピレン(PP)製)に保管されている。ここで、体液が患者の身体から出た後、これらの体液、特に血液のすべての成分に数多くの変質プロセスが起こる。管内では、採取された体液が管の壁に接触することで、特にタンパク質の吸着、細胞の接着、および体液の凝固が生じる。数多くの異なる成分、(例えば血液中での)その濃度および活性を安定させるために、例えばEDTA、クエン酸塩、またはヘパリンといった添加剤を管に加えるのが通常の手順である。しかし、すべてのバイオマーカーにすべての添加剤が適しているわけではないため、治療を行う医師は、疑われる疾患に応じて特別な管を選択する必要がある。さらに、容器内での保持時間、耐熱性、またはさらには光への露出時間も非常に限られており、これを超えた場合にも同様に誤った分析結果になるおそれがある。また、例えばEDTA、クエン酸塩、またはヘパリンといった添加剤は、単に血液凝固を阻害することしかできない。その他の多くの劣化プロセスの態様を防ぐことは不可能である。
【0004】
体液を保管するための容器は、欧州特許第1199104号明細書に示されている。ここでは、採血管の接触面への血液成分の付着を低減するポリプロピレン製の採血管が開示されている。適切なコーティング材料は、親水性ポリマーであるポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリスチレンスルホン酸塩およびその共重合体、ならびにこれらの組み合わせである。これらの親水性ポリマーを吹付けプロセスや浸漬プロセスによって採血管の内側に施与し、その後、空気やオーブンで乾燥させた後、放射線によって架橋させる。また、採血管には、血液凝固を促進または抑制する添加剤が含まれ得る。
【0005】
米国特許5,830,539号明細書には、基質を官能化させてコーティングする方法が開示されている。このコーティングは、基質の生体適合性を高めるのに適しているとされている。この場合、第1の官能化試薬を基質に施与し、それによって基質への共有結合がニトレンの付加により生じるとされている。このために、第1の官能化試薬は、アジド基と、例えば活性エステルなどの第1の官能化基とを有し、その際、アジド基は、基質と反応することが予定され、一方で第1の官能化基は、第2の官能化試薬と第1の官能化試薬との結合を可能にする。第2の官能化試薬も同様に、例えば酵素、抗体、診断薬、または治療薬などの基質に結合する官能化基を有する。したがって、このようにしてコーティングされた基質は、例えば酵素、ホルモン、抗体、核酸、ペプチド、またはアミノ酸などの生物学的および内因性の物質の結合を生じさせる。好ましい官能化試薬として、N-ヒドロキシスクシンイミド-活性エステル-官能化パーフルオロフェニルアジド(NHS-PFPAs)が予定されている。
【0006】
しかし、NHSによるパーフルオロフェニルアジドの誘導体化は、NHSの水分感受性ゆえに、液体媒体、特に血液やEVFでの使用には適さないことが、既知の容器の欠点であることが判明した。特に、このような誘導体化されたパーフルオロフェニルアジドには、適切な安定化が必要である。
【0007】
課題
本発明の課題は、体液を保管するための代替的な容器であって、容器の接触面への第2のコーティングの結合を向上させるプライマーコーティングを特徴とする容器を開発することである。
【0008】
この課題が、本発明による方法についても同様に解決されることが望ましい。
【0009】
解決策
冒頭に記載した体液を保管するための容器から出発して、プライマーコーティングの官能基にポリ(N-ビニルアミン-co-N-ビニルアセトアミド)から構成される共重合体が結合されていることにより、上記課題が解決される。
【0010】
血液や血管外液と接触する接触面の疎水性に関しては、このようなコーティングが特に有利である。なぜならば、代表的な接触面である例えばポリプロピレン製の接触面は、その化学的に不活性な特性ゆえに採血管の材料としては良好に適しているが、この物質は疎水性であるためこれをコーティングする際には困難が伴うためである。特に、水溶液や水性物質の施与は、表面が完全に濡れないため、より困難になる。そのため、血液や他の体液の劣化プロセスを防ぐ水性化学物質の結合が阻害される。
【0011】
フェニルアジドは、その高い反応効率、速いキネティクス、優れた貯蔵安定性、および調製の簡便さゆえに、最も有効性が認められているカップリング剤に属する。ここで、フッ素化フェニルアジド、特にパーフルオロフェニルアジド(PFPA)が、ヘテロ二官能性架橋剤として作用する。パーフルオロフェニルアジドは光親和性カップリング試薬であり、表面修飾だけでなくポリマーの架橋や結合も可能である。パーフルオロフェニルアジドは、ペンタフルオロ安息香酸メチルエステルにアジ化ナトリウム(NaN)を付加して誘導体化することで調製した。パーフルオロフェニルアジドは、その官能基が炭素-水素結合、アンモニウム-水素結合、または炭素-炭素結合と反応するため、広範囲の分子や材料とのカップリングを効率的にかつ高い再現性をもって利用することができ、したがって非常に汎用性が高い。
【0012】
その魅力的なヘテロ二官能性により、パーフルオロフェニルアジドは、容器の接触面および第2のコーティングのための接着促進剤およびカップリング剤として作用する。一方で、フッ素化フェニルアジドは、そのアジド基により、管壁と安定した共有結合を形成することができる。他方で、フッ素化フェニルアジドの基質反応性官能基「-R」によって、統計的共重合体のカスタマイズされた結合が可能となり、その際、この共重合体は、本発明によればポリ(N-ビニルアミン-co-N-ビニルアセトアミド)からなる。その際、パーフルオロフェニルアジドは、既知のプライマーコーティングとは対照的に、それ以上誘導体化されない。
【0013】
したがって、本発明による容器の特別な利点は、プライマーコーティングが、一方では容器の接触面に結合し、他方ではさらなるコーティングに対する結合性を形成することができる点にあり、これにより、血液の成分や血管外の体液に対する変質プロセスが防止される。要約すると、パーフルオロフェニルアジドおよびその官能基の反応性により、カップリング反応を選択的かつ連続的に行い、その際に性質の異なる分子や表面物質を結合させることができる。ここで、本発明によるプライマーコーティングには、既知のプライマーコーティングとは対照的に、生物学的および内因性物質の結合をまさに阻止して、生物学的および内因性物質のいかなる付着や吸着をも防ぐ効果がある。
【0014】
ここで、採血管の接触面へのパーフルオロフェニルアジドの結合は、特にパーフルオロフェニルアジドのアジド基によって可能であり、このアジド基を適切に処理して活性化させることで、容器の表面と不可逆的な化学結合を形成することができる。さらに、共重合体のアミノ基が化学反応で酸加水分解される。適切な化学物質を加えて共重合体のアミノ基を官能化させることができ、これにより、これは第2のコーティングのための部位選択的な結合部位、いわゆるアンカーポイントとして利用される。そのため、第2の層を、有利にもこの場合に容器の接触面に対する物質の濡れ性に関して困難が生じることなく、事前のプライマーコーティングに特に容易に施与することができる。全体として、第2のコーティングを容器の不活性な壁に恒久的に結合させることができる。
【0015】
本発明によるプライマーコーティングは、パーフルオロフェニルアジドの官能基が、統計的共重合体、すなわちポリ(N-ビニルアミン-co-N-ビニルアセトアミド)から形成されている点で特に有利である。実験では、このような共重合体が、パーフルオロフェニルアジドのフェニル環を安定化させ、かつパーフルオロフェニルアジドの過剰な求電子性を抑制するのに特に適しており、そのため、パーフルオロフェニルアジドの望ましくない化学反応が抑制されることが判明した。ここで、ポリアミドポリマー自体は、血液や血管外液と相互作用を生じない。
【0016】
容器の好ましい実施形態によれば、容器が、プラスチック、有利にはポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、またはガラスから形成されていることが提供される。前述の材料は、一般的に医療分野で使用されており、これまでのところ、製造コストが低いため使い捨て製品の製造に特に有効であることが判明している。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、容器が、PEG/PEO-PPO共重合体、ポリ-(3-メタクリロイルアミノプロピル)-(2-カルボキシエチル)-ジメチルアンモニウムカルボキシベタインメチルアクリルアミド(pCBMAA-1)、またはポリペプチドベースのブロックコポリペプチドを含む第2のコーティングを有し、第2のコーティングが、プライマーコーティングと結合されていることが提供される。
【0018】
第2のコーティングは、血液や血管外液に直に接触するが、化学反応を生じない。有利にも、このことによって、実験室での分析の前に検査対象の体液が変質して、血液や体液中の実際の組成から量や質が逸脱するのを防ぐことができる。
【0019】
PEG/PEO-PPO共重合体は、有利には、星型の6本鎖ポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシド(PEGまたはPEO)を、ポリマーの結晶化を防ぐために特定のプロピレンオキシド(PPO)で修飾したものから構成されている。本発明の有利な実施形態によれば、ここでは、共重合体が、そのイソシアネート基によってプライマーコーティングのアミノ基に結合し得ることが提供される。
【0020】
ポリ-(3-メタクリロイルアミノプロピル)-(2-カルボキシエチル)-ジメチルアンモニウムカルボキシベタインメチルアクリルアミド(pCBMAA-1)は、電気的に中性であり、双性イオン性であり、コスモトロピックである。プライマーコーティングとの結合は、ラジカル重合によって行われる。有利には、電子移動反応(SET-LRP、Single-Electron Transfer Living Radical Polymerization、単電子移動リビングラジカル重合)が用いられる。
【0021】
ポリペプチドベースのブロックコポリペプチドは、組換えDNA技術を用いて製造される。有利にはこれは、電気的に中性でタンパク質をはじくエラスチン-ポリペプチドコンストラクトから構成されている。ポリペプチドコンストラクトは電荷を帯びており、電荷選択性に応じて、プライマーコーティング(負電荷)またはプラズマ処理表面(正電荷)へのコンストラクトの結合を生じさせる。同様に、双性イオン性のポリペプチドベースのブロックコポリペプチドや、電気的に中性のコンストラクトも考えられる。
【0022】
有利には、容器は、体液を容器内に気密封止するために、有利にはポリエチレン(PE)からなる封止蓋または封止キャップを有する。また、封止キャップに、体液を容器に入れるために針で穿刺できる膜を設けることも考えられる。患者の静脈から採血する際には、容器を減圧状態とすることが有利である。これにより、チューブを介して容器に挿入された針と接続されている針を患者の静脈に刺した後、負圧によって容器内に血液を引き込むことができる。あるいは、容器にはピストンを備えたピストンロッドが内部空間内に配置されており、このピストンの動きによって体液が容器内に引き込まれる。有利には、封止蓋はポリエチレン(PE)製であり、ピストンロッドはポリスチレン(PS)製である。
【0023】
本発明による容器の好ましい実施形態では、封止蓋にも同様に第2のコーティングが施されている。前述のピストンについても同様である。
【0024】
冒頭で挙げられた課題は、体液を保管するための容器の接触面をコーティングする方法に基づき、2つのプロセスステップによって解決される。第1のプロセスステップは、アジド基および官能基を有するパーフルオロフェニルアジドを容器の接触面に施与するステップを含み、その際、プライマーコーティングは、アジド基および官能基を有するパーフルオロフェニルアジド(PFPA)から形成されている。第2のプロセスステップは、パーフルオロフェニルアジドを処理するステップを含み、これによりパーフルオロフェニルアジドのアジド基が容器の接触面と結合し、これによって接触面と分離不可能な状態で結合したコーティングが生成される。
【0025】
本発明による容器と同様に、この方法の利点は、第2のコーティングの結合に特に良好に適したプライマーコーティングが創作されることにある。この場合、第2のコーティングによって、容器内の体液の望ましくない変質プロセスが阻止される。この挙動は、容器内の体液の高い安定化を確実なものとし、したがって正しい臨床上の判断(診断または治療上の判断)を行えるようにするための前提条件をもたらすという点で望ましい。
【0026】
有利には、容器の接触面へのプライマーコーティングの付着性を向上させるための活性化ステップが設けられており、その際、この活性化ステップは、有利には第1のプロセスステップの前に行われ、かつ/またはプライマーコーティングへの第2のコーティングの付着性を向上させるための活性化ステップが設けられており、その際、この活性化ステップは、有利には第2のプロセスステップの後に行われる。
【0027】
有利には、少なくとも1つの活性化ステップは、紫外線またはプラズマ処理によって行われ、その際、プラズマは、希ガス、有利にはアルゴン、または酸素から形成されている。このプラズマ処理により、ポリプロピレンの最外層の制御された分解が生じる。その結果、ゼータ電位がマイナスになり、プライマーコーティングの付着性がさらに向上する。この挙動は、これによって、施与する溶液中のパーフルオロフェニルの濃度を低下させることができるという点で望ましい。
【0028】
電気的に正に帯電したポリペプチドを有するエラスチン-ポリペプチドコンストラクトからなるポリペプチドベースのブロックコポリペプチドは、プラズマ処理された層に特に良好に結合することが判明した。電気的に正に帯電したポリペプチド成分を有する双性イオン性のポリペプチドベースのブロックコポリペプチドについても同様である。一方で、電気的に負に帯電したポリペプチドを有するエラスチン-ポリペプチドコンストラクトからなるポリペプチドベースのブロックコポリペプチドは、プライマーコーティングに特に良好に結合する。
【0029】
さらに、プラズマ処理によって求核性の基が形成され、これは第2のコーティングに関して特に有利である。その結果、第2のコーティングは、事前のプライマーコーティングがなくても、容器の接触面に特に良好に結合することができる。
【0030】
有利には、第1のプロセスステップは、パーフルオロフェニルアジドを容器に導入するか、またはパーフルオロフェニルアジドを容器内に吹き込むことによって行われる。
【0031】
この化学物質は、液状で存在してもよいし、その水溶性に基づいて水溶液に加工してもよい。この化学物質を容器に充填して、容器の接触面を各物質で濡らすことが有利である。次いで、余分な液体を注ぎ出して容器から取り除く。また、吹付プロセスによって接触面に化学物質を付与することも考えられる。いずれにしても、容器の接触面が化学物質で完全に濡れることが保証される。
【0032】
本発明による方法の好ましい実施形態では、第2のプロセスステップを、エネルギー線、有利には紫外線、レーザー光線、または電子線によって行うことが提供される。
【0033】
ここでは、紫外線照射によってアジド基を官能化させることで、プライマーコーティングとコーティングされる容器の壁との間の結合が開始される。紫外線照射によりアジド基が活性化されると、アジド基は容器の壁との結合部位で共有結合を形成する。光活性化すると、アジド基は非常に反応性の高いラジカル中間体を生成し、この中間体が、その後、隣接する表面分子と安定した共有結合を形成することができる。
【0034】
本発明による容器に関して述べた利点は、上述の方法によっても同様に達成される。
【0035】
本発明によれば、第2のコーティングも同様に、事前のプライマーコーティングなしで容器の接触面に施与してこれに結合させることができることが提供される。このような実施形態では、接触面をプラズマ処理することで結合を向上させることができる。いずれの場合も、前述のいずれかの物質が容器の接触面に接触すると、負に帯電した求核基が形成され、それによって接触面との安定した結合が形成される。
【0036】
容器の接触面に第2のコーティングを直接結合させることで、有利にも容器をワンステップでコーティングすることができる。また、このような容器を製造するためのコストも削減できる。
【0037】
例示的な実施形態:
上述した本発明につき、以下に、図面に示されている例示的な実施形態を参照して詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明による採血管の立体図。
図2図1の採血管の垂直断面図。
図3】プライマーコーティングの構造式を示す図。
【0039】
図1は、患者の血液サンプルを保管するための採血管2の形態の本発明による第1の容器1を示しており、この容器はポリプロピレン製であり、血液サンプルを安定化させるためにプライマーコーティングおよび第2のコーティングが施されている。さらに、採血管2は、一方の端部に封止蓋3を備えている。封止蓋3により採血管2を気密封止することで、確実な保管を保証するとともに、起こり得る血液と環境との相互作用が防止される。
【0040】
図2は、図1に示す採血管2の垂直断面図を示す。内部空間4に面した採血管2の壁5は、血液と採血管2の壁5との間に接触面6を形成している。接触面6には、アジド基9および官能基10を有するパーフルオロフェニルアジド(PFPA)からなるプライマーコーティング7が施されており、官能基10には、ポリ(N-ビニルアミン-co-N-ビニルアセトアミド)から構成される共重合体が結合している。さらに、採血管2は、プライマーコーティング7に隣接してこれと結合している第2のコーティング8を有している。
【0041】
第1のプロセスステップに従ってパーフルオロフェニルアジドを採血管2の接触面6に施与するために、このパーフルオロフェニルアジドを濃度5~10mg/mLの水溶液として採血管2に入れる。当然のことながら、パーフルオロフェニルアジドは、溶液中に他の濃度で存在してもよい。いずれにしても、パーフルオロフェニルアジドの疎水性によって与えられる、ポリプロピレンに対するパーフルオロフェニルアジドの高い親和性に基づいて、この溶液は採血管2の接触面6を濡らす。採血管2内に余剰液として溜まったパーフルオロフェニルアジドの残部を、採血管2から除去する。
【0042】
第2のプロセスステップでは、施与した溶液を紫外線によって採血管2に結合させる。その際、パーフルオロフェニルアジドは、そのアジド基9が容器1の接触面6と不可逆的に結合するように活性化される。これは、特にNからN°へのラジカル化により可能である。化学反応で共重合体のホルムアミド基を酸加水分解させる。
【0043】
次いで、採血管2に第2のコーティング8を施与する。このコーティングは、PEG-PPOブロック共重合体からなる。このPEG-PPO共重合体は、6本鎖の星型ポリエチレングリコール(PEG)と、ポリマーの結晶化を防ぐための特定のプロピレンオキシド(PPO)修飾体とから構成されている。この共重合体は、水溶液としても存在する。この共重合体の施与を、第1のプロセスステップと同様に行う。この場合、このPEG-PPO共重合体のイソシアネート基が、プライマーコーティング7のアミノ基13に結合する。この結合を強化するために、採血管2の内壁5をさらに紫外線で処理する。また、プラズマ処理で強化することも考えられる。
【0044】
図2に示されているコーティング7,8の層厚は、明確にするために誇張されているため、縮尺どおりに図示されたものではない。
【0045】
図3は、アジド基9および官能基10を含むプライマーコーティング7の構造式を示す。ここで、パーフルオロフェニルアジドのアジド基9が容器1の壁5に結合する。パーフルオロフェニルアジドの官能基10に共重合体11のポリ(N-ビニルアミン-co-N-ビニルアセトアミド)が結合することで、パーフルオロフェニルアジドの官能基12は共重合体11を包含している。共重合体11により提供されるアミノ基13は、ここでは第2のコーティング8へのアンカーポイントとして機能する。
【符号の説明】
【0046】
1 容器
2 採血管
3 封止蓋
4 内部空間
5 壁
6 接触面
7 プライマーコーティング
8 第2のコーティング
9 アジド基
10 官能基
11 共重合体
12 官能基
13 アミノ基
図1
図2
図3