(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】光学素子および照明装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20241209BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20241209BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20241209BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20241209BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20241209BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20241209BHJP
F21Y 103/00 20160101ALN20241209BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241209BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20241209BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20241209BHJP
【FI】
G02F1/13 505
F21S2/00 340
F21S2/00 350
F21V9/40 400
G02F1/1343
G02F1/1347
F21Y101:00 100
F21Y103:00
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2023500578
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021046385
(87)【国際公開番号】W WO2022176360
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2021024716
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】黒川 多惠
(72)【発明者】
【氏名】小糸 健夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸次朗
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0196318(US,A1)
【文献】特開2003-045204(JP,A)
【文献】特表2010-525388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1343
G02F 1/1347
F21V 9/40
G02B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に第1の偏光軸を有する第1の偏光成分および前記第1の方向と交差する第2の方向に第2の偏光軸を有する第2の偏光成分を含む光が入射する第1の液晶セルと、前記第1の液晶セルを通過した後の前記光が入射するように前記第1の液晶セルに積層された第2の液晶セルと、を含む光学素子であって、
前記
第1の液晶セルおよび前記第2の液晶セルの各々は、
第1の基板と、
前記第1の基板の上において、前記第1の方向に
交互に配置され、各々が前記第2の方向に延在する第1の透明電極
および第2の透明電
極と、
前記第1の透明電極および前記第2の透明電極を覆い、前記第1の方向に配向方向を有する第1の配向膜と、
第2の基板と、
前記第2の基板の上において、前
記第2の方向に
交互に配置され、各々が前記第1の方向に延在する第3の透明電極
および第4の透明電
極と、
前記第3の透明電極および前記第4の透明電極を覆い、前記第2の方向に配向方向を有する第2の配向膜と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の液晶層と、を含み、
前記液晶層内の液晶分子は、前記第1の配向膜の前記配向方向および前記第2の配向膜の前記配向方向にしたがい、長軸が前記第1の基板側から前記第2の基板側に向かって前記第1の方向から前記第2の方向に変化するように配向され、
前記
第1の液晶セルの前記第2の基板と、前記
第2の液晶セルの前記第1の基板とが隣接
し、
前記第1の液晶セルおよび前記第2の液晶セルの各々の前記第1の透明電極乃至前記第4の透明電極に電位が印加されないオフ状態では、
前記第1の液晶セルおよび前記第2の液晶セルの各々において、前記光が前記第1の基板から前記第2の基板に向かって前記液晶層を通過するとき、前記第1の偏光軸および前記第2の偏光軸がそれぞれ前記第2の偏光軸および前記第1の偏光軸に変化するように、前記第1の偏光成分および前記第2の偏光成分の各々の偏光軸が変化し、
前記第1の液晶セルおよび前記第2の液晶セルの各々の前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に電位差が生じているオン状態では、
前記第1の液晶セルにおいて、前記光が前記第1の基板から前記第2の基板に向かって前記液晶層を通過するとき、前記第1の偏光軸および前記第2の偏光軸がそれぞれ前記第2の偏光軸および前記第1の偏光軸に変化するように前記第1の偏光成分および前記第2の偏光成分の各々の偏光軸が変化するともに、前記第1の偏光成分が前記第1の基板側で前記第1の方向に拡散され、
前記第2の液晶セルにおいて、前記光が前記第1の基板から前記第2の基板に向かって前記液晶層を通過するとき、前記第1の偏光軸および前記第2の偏光軸がそれぞれ前記第2の偏光軸および前記第1の偏光軸に変化するように前記第1の偏光成分および前記第2の偏光成分の各々の偏光軸が変化するとともに、前記第2の偏光成分が前記第1の基板側で前記第1の方向に拡散される、光学素子。
【請求項2】
前記第2の方向は、前記第1の方向と直交する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第1の基板と前記第2の基板との間の基板間距離dと、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との第1のピッチp1とは、d/p1≧1を満たす、請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
d/p1≧2を満たす、請求項3に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第1のピッチp1と、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間の第1の電極間距離b1とは、p1/2≦b1を満たす、請求項3または請求項4に記載の光学素子。
【請求項6】
前記基板間距離dと、前記第3の透明電極と前記第4の透明電極との第2のピッチp2は、d/p2≧1を満たす、請求項3乃至請求項5のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
d/p2≧2を満たす、請求項6に記載の光学素子。
【請求項8】
前記第2のピッチp2と、前記第3の透明電極と前記第4の透明電極との間の第2の電極間距離b2とは、p2/2≦b2を満たす、請求項6または請求項7に記載の光学素子。
【請求項9】
前記
第1の液晶セルの前記第2の基板と、前記
第2の液晶セルの前記第1の基板とは、光学弾性樹脂層を介して隣接する、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項10】
前記第1の透明電極、前記第2の透明電極、前記第3の透明電極、および前記第4の透明電極には、それぞれ、異なる電圧を印加される、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項11】
平面視において、
前記
第1の液晶セルの前記第1の透明電極と前記
第2の液晶セルの前記第1の透明電極とが延在方向にわたって重畳し、
前記
第1の液晶セルの前記第2の透明電極と前記
第2の液晶セルの前記第2の透明電極とが延在方向にわたって重畳し、
前記
第1の液晶セルの前記第3の透明電極と前記
第2の液晶セルの前記第3の透明電極とが延在方向にわたって重畳し、
前記
第1の液晶セルの前記第4の透明電極と前記
第2の液晶セルの前記第4の透明電極とが延在方向にわたって重畳している、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項12】
平面視において、
前記
第1の液晶セルの前記第1の透明電極と前記
第2の液晶セルの前記第1の透明電極とが延在方向にわたって略一致するように重畳し、
前記
第1の液晶セルの前記第2の透明電極と前記
第2の液晶セルの前記第2の透明電極とが延在方向にわたって略一致するように重畳し、
前記
第1の液晶セルの前記第3の透明電極と前記
第2の液晶セルの前記第3の透明電極とが延在方向にわたって略一致するように重畳し、
前記
第1の液晶セルの前記第4の透明電極と前記
第2の液晶セルの前記第4の透明電極とが延在方向にわたって略一致するように重畳している、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項13】
光源と、
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の光学素子と、を含む、照明装置。
【請求項14】
さらに、前記光源と前記光学素子との間に凸レンズを含む、請求項13に記載の照明装置。
【請求項15】
さらに、前記光源から照射された光を前記光学素子に入射させるように反射させる反射器を含む、請求項13または請求項14に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、配光を制御することができる光学素子に関する。また、本発明の一実施形態は、配光を制御することができる光学素子を含む照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶に印加する電圧を調整し、液晶の屈折率が変化することを利用した光学素子、いわゆる液晶レンズが知られている。また、光源および液晶レンズを用いた照明装置の開発が進められている(例えば、特許文献1、特許文献2、または特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-317879号公報
【文献】特開2010-230887号公報
【文献】特開2014-160277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1または特許文献2に記載された照明装置では、液晶レンズを利用し、光の拡がる分布、すなわち光の配光角を制御して集光することを目的としているに過ぎない。換言すれば、特許文献1または特許文献2に記載された照明装置では、光の配光パターンが同心円状に限られていた。また、特許文献3に記載されたビーム成形デバイスは、液晶に印加する電極のパターンを変えて配光パターンを変化させるなど、光の配向パターンのバリエーションを得るためには、複雑な構成を有する液晶セルが必要とされ、量産性に乏しかった。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑み、光の配光または配光パターンを制御することができる光学素子を提供することを目的の一つとする。また、本発明の一実施形態は、光の配光または配光パターンを制御することができる照明装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る光学素子は、積層された2つの液晶セルを含む光学素子であって、2つの液晶セルの各々は、第1の方向に第1の透明電極と第2の透明電極とが交互に配置された第1の基板と、第1の方向と交差する第2の方向に第3の透明電極と第4の透明電極とが交互に配置された第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間の液晶と、を含み、2つの液晶セルの一方の液晶セルの第2の基板と、2つの液晶セルの他方の液晶セルの第1の基板とが隣接する。
【0007】
また、本発明の一実施形態に係る照明装置は、光源と、前記光学素子と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光学素子の模式的な斜視図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係る光学素子の模式的な断面図である。
【
図2B】本発明の一実施形態に係る光学素子の模式的な断面図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る光学素子において、第1の基板上の第1の透明電極および第2の透明電極の配置を示す模式的な平面図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る光学素子において、第2の基板上の第3の透明電極および第4の透明電極の配置を示す模式的な平面図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る光学素子において、液晶層の液晶の配向を示す模式的な断面図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る光学素子において、液晶層の液晶の配向を示す模式的な断面図である。
【
図5A】本発明の一実施形態に係る光学素子において、電圧が印加されたときにおける液晶層の液晶分子の配向を示す模式的な斜視図である。
【
図5B】本発明の一実施形態に係る光学素子において、電圧が印加されたときにおける液晶層の液晶分子の配向を示す模式的な断面図である。
【
図5C】本発明の一実施形態に係る光学素子において、電圧が印加されたときにおける液晶層の液晶分子の配向を示す模式的な断面図である。
【
図6A】本発明の一実施形態に係る光学素子による光の配光の制御を説明する模式的な断面図である。
【
図6B】本発明の一実施形態に係る光学素子による光の配光の制御を説明する模式的な断面図である。
【
図7A】本発明の一実施形態に係る光学素子に含まれる各透明電極に印加する電圧を示すタイミングチャートである。
【
図7B】本発明の一実施形態に係る光学素子において、各透明電極に
図7Aに示す電位を印加して得られた光の配光パターンの写真である。
【
図8A】本発明の一実施形態に係る光学素子に含まれる各透明電極に印加する電圧を示すタイミングチャートである。
【
図8B】本発明の一実施形態に係る光学素子において、各透明電極に
図8Aに示す電位を印加して得られた光の配光パターンの写真である。
【
図9A】本発明の一実施形態に係る光学素子に含まれる各透明電極に印加する電圧を示すタイミングチャートである。
【
図9B】本発明の一実施形態に係る光学素子において、各透明電極に
図9Aに示す電位を印加して得られた光の配光パターンの写真である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る光学素子に含まれる各透明電極に印加する電圧を示すタイミングチャートである。
【
図11】本発明の一実施形態に係る光学素子の液晶セルにおいて、d/pに対する正面相対輝度を示すグラフである。
【
図12】本発明の一実施形態に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態において、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その技術的思想の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0010】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、図示の形状そのものが本発明の解釈を限定するものではない。また、図面において、明細書中で既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、別図であっても同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
【0011】
ある一つの膜を加工して複数の構造体を形成した場合、各々の構造体は異なる機能、役割を有する場合があり、また各々の構造体はそれが形成される下地が異なる場合がある。しかしながらこれら複数の構造体は、同一の工程で同一層として形成された膜に由来するものであり、同一の材料を有する。従って、これら複数の膜は同一層に存在しているものと定義する。
【0012】
ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接して、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0013】
<第1実施形態>
図1~
図11を参照して、本発明の一実施形態に係る光学素子10について説明する。
【0014】
[1.光学素子の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る光学素子10の模式的な斜視図である。
図1に示すように、光学素子10は、第1の液晶セル110、第2の液晶セル120、および光学弾性樹脂層130を含む。光学弾性樹脂層130は、第1の液晶セル110と第2の液晶セル120との間に設けられている。すなわち、第1の液晶セル110と第2の液晶セル120とは、光学弾性樹脂層130を間に挟んでz軸方向に積層されている。
【0015】
光学弾性樹脂層130は、第1の液晶セル110と第2の液晶セル120とを接着し、固定することができる。光学弾性樹脂層130としては、光学弾性樹脂、例えば、透光性を有したアクリル樹脂を含む接着材を用いることができる。
【0016】
図2Aおよび
図2Bは、本発明の一実施形態に係る光学素子10の模式的な断面図である。具体的には、
図2Aは、
図1に示すA1-A2線に沿って切断されたzx面内の模式的な断面図であり、
図2Bは、
図1に示すB1-B2線に沿って切断されたyz面内の模式的な断面図である。なお、以下では、x軸方向およびy軸方向を、それぞれ、第1の方向および第2の方向として記載する場合がある。
【0017】
第1の液晶セル110は、第1の基板111-1、第2の基板111-2、第1の透明電極112-1、第2の透明電極112-2、第3の透明電極112-3、第4の透明電極112-4、液晶層113、第1の配向膜114-1、第2の配向膜114-2、およびシール材115を含む。第2の液晶セル120は、第1の基板121-1、第2の基板121-2、第1の透明電極122-1、第2の透明電極122-2、第3の透明電極122-3、第4の透明電極122-4、液晶層123、第1の配向膜124-1、第2の配向膜124-2、およびシール材125を含む。
【0018】
光学素子10は2つの液晶セルを有するが、2つの液晶セルはその構成が同一であることが好ましい。そのため、以下では、第1の液晶セル110の構成のみを説明し、便宜上、第2の液晶セル120の構成の説明は省略する場合がある。
【0019】
第1の基板111-1上には、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2が設けられている。また、第1の透明電極112-1、第2の透明電極112-2、および第1の基板111-1の表面を覆う第1の配向膜114-1が設けられている。
【0020】
第2の基板111-2上には、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4が設けられている。また、第3の透明電極112-3、第4の透明電極112-4、および第2の基板111-2の表面を覆う第2の配向膜114-2が設けられている。
【0021】
第1の基板111-1と第2の基板111-2とは、第1の基板111-1上の第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2と、第2の基板111-2上の第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4とが対向するように配置されている。
【0022】
また、第1の基板111-1および第2の基板111-2の各々の周辺部には、シール材115が配置されている。すなわち、第1の基板111-1と第2の基板111-2とは、シール材115を介して接着されている。また、第1の基板111-1(より具体的には、第1の配向膜114-1)、第2の基板111-2(より具体的には、第2の配向膜114-2)、およびシール材115で囲まれた空間には、液晶が封入され、液晶層113が形成されている。
【0023】
第1の基板111-1および第2の基板111-2の各々として、例えば、ガラス基板、石英基板、またはサファイア基板などの透光性を有する剛性基板が用いられる。また、第1の基板111-1および第2の基板111-2の各々として、例えば、ポリイミド樹脂基板、アクリル樹脂基板、シロキサン樹脂基板、またはフッ素樹脂基板などの透光性を有する可撓性基板を用いる構成も採用可能である。
【0024】
第1の透明電極112-1、第2の透明電極112-2、第3の透明電極112-3、および第4の透明電極112-4の各々は、液晶層113に電界を形成するための電極として機能する。第1の透明電極112-1、第2の透明電極112-2、第3の透明電極112-3、および第4の透明電極112-4の各々として、例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO)またはインジウム・亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料が用いられる。
【0025】
液晶層113は、液晶分子の配向状態に応じて、透過する光を屈折し、または透過する光の偏光状態を変化させることができる。液晶層113の液晶として、例えば、ネマティック液晶などを用いることができる。液晶は、本実施形態においてはポジ型を採用しているが、液晶分子の初期の配向方向などを変更することによりネガ型を採用する構成も可能である。また、液晶には、液晶分子にねじれを付与するカイラル剤が含まれていることが好ましい。
【0026】
第1の配向膜114-1および第2の配向膜114-2の各々は、液晶層113内の液晶分子を所定の方向に配列する。第1の配向膜114-1および第2の配向膜114-2の各々は、例えば、ポリイミド樹脂などを用いることができる。なお、第1の配向膜114-1および第2の配向膜114-2の各々は、ラビング法または光配向法などの配向処理によって配向特性が付与されてもよい。ラビング法は、配向膜の表面を一方向に擦る方法である。また、光配向法は、配向膜に直線偏光の紫外線を照射する方法である。
【0027】
シール材115は、第1の基板111-1と第2の基板111-2とを接着し、固定する。シール材115として、例えば、エポキシ樹脂接着材またはアクリル樹脂接着材などを用いることができる。接着材は、紫外線硬化型であってもよく、熱硬化型であってもよい。
【0028】
詳細は後述するが、光学素子10は、2つの液晶セル(第1の液晶セル110および第2の液晶セル120)を含むことにより、無偏光の光の配光を制御し、配光パターンを形成することができる。そのため、各基板の外側表面には、例えば、液晶表示素子の表裏面に設けられるような一対の偏光板を設ける必要はない。
【0029】
[2.透明電極の配置]
図3Aおよび
図3Bを参照して、第1の透明電極112-1、第2の透明電極112-2、第3の透明電極112-3、および第4の透明電極112-4の各々の配置について詳細に説明する。
【0030】
図3Aは、本発明の一実施形態に係る光学素子10において、第1の基板111-1上の第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の配置を示す模式的な平面図である。また、
図3Bは、本発明の一実施形態に係る光学素子10において、第2の基板111-2上の第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4の配置を示す模式的な平面図である。なお、
図3Aおよび
図3Bの各々には、第1の液晶層115-1側から眺めた各透明電極の配置が示されている。
【0031】
図3Aに示すように、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の各々は、x軸方向に第1の幅a
1を有し、y軸方向に延在している。また、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2とは、x軸方向に第1の電極間距離b
1を有し、交互に配置されている。すなわち、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2とは、第1のピッチp
1を有し、p
1=a
1+b
1を満たす。また、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2は、それぞれ、第1の基板111-1上に形成された第1の配線116-1および第2の配線116-2と電気的に接続されている。第1の配線116-1は、第1の透明電極112-1の下に形成されていてもよく、第1の透明電極112-1の上に形成されていてもよい。この場合、第1の配線116-1が金属によって形成されていてもよい。また、第1の配線116-1は、第1の透明電極112-1と同じ層に形成されていてもよい。第2の配線116-2も同様である。
【0032】
第1の配向膜114-1は、x軸方向に配向処理が行われている。この場合、液晶層113を構成する液晶分子のうち、第1の基板111-1側の液晶分子の長軸は、無電界状態ではx軸方向に沿って配向する。すなわち、第1の配向膜114-1の配向方向(x軸方向)と第1の透明電極112-1または第2の透明電極112-2の延在方向(y軸方向)とは、直交している。なお、配向処理としては、ラビングまたは光配向による配向処理が挙げられる。また、第1の配向膜114-1および第2の配向膜114-2の配向方向は、互いのなす角が直交していればよく、それぞれの配向方向は、第1の配向膜114-1または第2の配向膜114-2が設けられる透明電極の延在方向と直角以外の角度で交差していてもよい。
【0033】
図3Bに示すように、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4の各々は、y軸方向に第2の幅a
2を有し、x軸方向に延在している。また、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4とは、y軸方向に第2の電極間距離b
2を有し、交互に配置されている。すなわち、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4とは、第2のピッチp
2を有し、p
2=a
2+b
2を満たす。また、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4は、それぞれ、第2の基板111-2上に形成された第3の配線116-3および第4の配線116-4と電気的に接続されている。第3の配線116-3および第4の配線116-4は、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4の下に形成されていてもよく、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4の上に形成されていてもよい。この場合、第3の配線116-3および第4の配線116-4が金属によって形成されていてもよい。また、第3の配線116-3および第4の配線116-4は、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4と同じ層に形成されていてもよい。
【0034】
第2の配向膜114-2は、y軸方向に配向処理が行われている。この場合、液晶層113を構成する液晶分子のうち、第2の基板111-2側の液晶分子の長軸は、無電界状態ではy軸方向に沿って配向する。すなわち、第2の配向膜114-2の配向方向(y軸方向)と第3の透明電極112-3または第4の透明電極112-4の延在方向(x軸方向)とは、直交している。
【0035】
なお、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2は、第1の基板111-1上に、第1のピッチp1を有した櫛歯状パターンで形成されているということもできる。同様に、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4は、第2の基板111-2上に、第2のピッチp2を有した櫛歯状パターンで形成されているということもできる。
【0036】
第1の液晶セル110において、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2と、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4とは、液晶層113を介して対向している。ここで、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の延在する方向(y軸方向)は、第3の透明電極112-3および第4の透明電極の延在する方向(x軸方向)と直交している。換言すると、第1の基板111-1上に形成される櫛歯状の電極パターンと、第2の基板上に形成される櫛歯状の電極パターンとは、平面視で互いに直交している。また、第1の基板111-1には、第5の配線116-5および第6の配線116-6が形成されている。第1の基板111-1と第2の基板111-2とが貼り合わされると、第3の配線116-3および第4の配線116-4は、それぞれ、第1の基板111-1に設けられる第5の配線116-5および第6の配線116-6と電気的に接続される。第3の配線116-3と第5の配線116-5との電気的な接続および第4の配線116-4と第6の配線116-6との電気的な接続は、例えば、銀ペーストまたは導電粒子(金属を被覆した粒子を含む。)などを用いて行うことができる。
【0037】
なお、本実施形態では、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2とが交互に配置された第1の方向と、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4とが交互に配置された第2の方向とは、直交しているが、これらは交差していればよく、交差角度は90度以外でも構わない。また、第1の基板111-1の第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2と、第2の基板の第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4とが交差することで、後述するように、各透明電極に印加する電圧を制御して液晶層113の液晶の配向を制御することができる。これにより、光の配向または配光パターンを制御することができる。
【0038】
第1の基板111-1または第2の基板111-2上には、これらの間隔を保持するフォトスペーサが形成されている(図示省略)。
【0039】
第1の配線116-1、第2の配線116-2、第3の配線116-3、第4の配線116-4、第5の配線116-5、および第6の配線116-6の各々として、例えば、アルミニウムもしくモリブデンなどの金属材料またはインジウム・スズ酸化物(ITO)もしくはインジウム・亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料を用いることができる。なお、第1の配線116-1、第2の配線116-2、第5の配線116-5、および第6の配線116-6の各々には、外部装置と接続するための端子が設けられていてもよい。
【0040】
第1の配線116-1、第2の配線116-2、第5の配線116-5(または第3の配線116-3)、および第6の配線116-6(または第4の配線116-4)は、互いに電気的に絶縁されている。したがって、第1の液晶セル110では、第1の透明電極112-1、第2の透明電極112-2、第3の透明電極112-3、および第4の透明電極112-4のそれぞれに異なる電圧を印加することで、液晶層113の液晶分子の配向を制御することができる。
【0041】
[3.液晶の配向の制御]
図4Aおよび
図4Bを参照して、液晶層113の液晶の配向について詳細に説明する。
【0042】
図4Aおよび
図4Bは、本発明の一実施形態に係る光学素子10において、液晶層113の液晶分子の配向を示す模式的な断面図である。
図4Aおよび
図4Bは、それぞれ、
図2Aおよび
図2Bに示す第1の液晶セル110の断面図の一部に対応するものである。
【0043】
図4Aおよび
図4Bに示すように、第1の基板111-1と第2の基板111-2とは、基板間距離dを有するように貼り合わされている。また、第1の基板111-1の第1の配向膜114-1および第2の基板111-2の第2の配向膜114-2は、それぞれ、x軸方向およびy軸方向に配向処理が行われている。そのため、液晶層113において、第1の基板111-1側の液晶分子は、透明電極に電圧を印加しない状態では、長軸がx軸方向に沿って配向する(
図4Aおよび
図4Bでは、便宜上、紙面左右方向に配向する液晶分子の配向方向を矢印の記号を用いて示す。)。すなわち、第1の基板111-1側の液晶分子の配向方向は、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2の延在方向に対して直交している。また、第2の基板111-2側の液晶分子は、透明電極に電圧を印加しない状態では、長軸がy軸方向に沿って配向する(
図4Aおよび
図4Bでは、便宜上、紙面法線方向に配向する液晶分子の配向方向を丸印の中にバツを付した記号を用いて示す。)。すなわち、第2の基板111-2側の液晶分子の配向方向は、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4の延在方向に対して直交している。したがって、液晶層113の液晶分子は、z軸方向において、第1の基板111-1から第2の基板111-2に向かうにつれて90度ねじれた状態で配向している。より具体的には、
図4Aにおいては、第1の基板111-1側の液晶分子は、第1の配向膜114-1の配向方向に沿ってx軸方向(紙面左右方向)に長軸を向けた状態で配向されている。また、第2の基板111-2側の液晶分子は、第2の配向膜114-2の配向方向に沿ってy軸方向(紙面法線方向)に長軸を向けた状態で配向されている。また、これらの間にある液晶分子は、第1の基板111-1から第2の基板111-2に向かうにつれて徐々に長軸の向きをx軸方向からy軸方向に変化させている。
【0044】
続いて、
図5A~
図5Cを参照して、電圧が印加されたときにおける液晶層113の液晶の配向について詳細に説明する。
【0045】
図5Aは、本発明の一実施形態に係る光学素子10において、電圧が印加されたときにおける液晶層113の液晶分子の配向を示す模式的な斜視図である。また、
図5Bおよび
図5Cは、本発明の一実施形態に係る光学素子10において、電圧が印加されたときにおける液晶層113の液晶分子の配向を示す模式的な断面図である。
図5Aにおいては、便宜上、第1の配向膜114-1および第2の配向膜114-2が省略されている。また、
図5Bおよび
図5Cでは、
図4Aおよび
図4Bと同様に、第1の配向膜114-1および第2の配向膜114-2の配向方向を、矢印または丸印の中にバツを付した記号を用いて図示している。
【0046】
図5A~
図5Cにおいては、第1の透明電極112-1および第3の透明電極112-3にLow電位が印加され、第2の透明電極112-2および第4の透明電極112-4にHigh電位が印加されている(
図5A~
図5Cでは、便宜上、Low電位およびHigh電位を、それぞれ、「-」および「+」の記号を用いて図示している。)。すなわち、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間および第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間には、電位差が生じている。この場合、第1の基板111-1側の液晶分子は、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間に生じる電界(電位分布)にしたがって配向する。すなわち、第1の基板111-1側の液晶分子の長軸は、第1の透明電極112-1から第2の透明電極112-2へ向かう方向に沿って配向する。同様に、第2の基板111-2側の液晶分子は、第3の透明電極112-3から第4の透明電極112-4へ向かう方向に沿って配向する。なお、以下では、同一基板上で隣接する透明電極間に生じる電界を横電界と言う場合がある。
【0047】
さらに、液晶分子の配向について詳細に説明する。第1の基板111-1側の液晶分子は、無電界状態ではx軸方向に配向しているが、当該液晶分子の配向は、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間の横電界の向きと同じである。そのため、平面視において第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間のほぼ中央に位置する液晶分子は、当該横電界によっても配向がほとんど変化しない。また、中央よりも第1の透明電極112-1または第2の透明電極112-2に近い液晶分子は、横電界に対応してz軸方向に傾き(チルト)を有して配向する。そのため、
図5Bに示すように、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間の横電界の影響によって、第1の基板111-1側の液晶分子は、全体として、隣接する透明電極間ごとに第1の基板111-1からみて第1の透明電極112-1から第2の透明電極112-2へ向かう凸の円弧状に配向する。同様に、第2の基板111-2側の液晶分子は、y軸方向に配向しているが、当該液晶分子の配向は、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間の横電界の向きと同じである。そのため、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間のほぼ中央に位置する液晶分子は、当該横電界によっても配向がほとんど変化しない。また、中央よりも第3の透明電極112-3または第4の透明電極112-4に近い液晶分子は、z軸方向に傾き(チルト)を有して配向する。そのため、
図5Cに示すように、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間の横電界の影響によって、第2の基板111-2側の液晶分子は、全体として、隣接する透明電極間ごとに第2の基板111-2からみて第3の透明電極112-3から第4の透明電極112-4へ向かう凸の円弧状に配向する。したがって、液晶層113に入射した光は、第1の基板111-1側または第2の基板111-2側の凸の円弧状に配向された液晶分子の屈折率分布にしたがって拡散されることになる。
【0048】
第1の基板111-1と第2の基板111-2とは、十分に離れた基板間距離dを有しているため、第1の基板111-1の第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間の横電界は、第2の基板111-2側の液晶分子の配向に対して影響を及ぼさない、または、無視できるほどに小さい。同様に、第2の基板111-2の第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間の横電界は、第1の基板111-1側の液晶分子の配向に対して影響を及ぼさない、または、無視できるほどに小さい。
【0049】
なお、本明細書において、第1の基板111-1側の液晶層113(または、液晶分子)とは、第1の基板111-1の表面からd/2までの液晶層(または、液晶分子)をいう。同様に、第2の基板111-2側の液晶層113(または、液晶分子)とは、第2の基板111-2の表面からd/2までの液晶層(または、液晶分子)をいう。
【0050】
第1の液晶セル110では、第1の透明電極112-1、第2の透明電極112-2、第3の透明電極112-3、および第4の透明電極のそれぞれに印加される電圧を制御することにより、液晶層113の液晶分子の配向を変化させることができる。液晶分子の配向の変化に伴い、液晶層113の屈折率分布が変化する。そのため、第1の液晶セル110は、透過する光を拡散することができる。光学素子10は、第1の液晶セル110の液晶層113および第2の液晶セル120の液晶層123の屈折率分布の変化を利用し、光学素子10を透過する光の配光または配光パターンを制御することができる。
【0051】
[5.光学素子による配光または配向パターンの制御]
図6Aおよび
図6Bを参照して、光学素子10による光の配光または配光パターンの制御について詳細に説明する。
【0052】
図6Aおよび
図6Bは、本発明の一実施形態に係る光学素子10による光の配光の制御を説明する模式的な断面図である。
図6Aおよび
図6Bに示す光学素子10は、
図2Aに示す第1の液晶セル110および第2の液晶セル120の断面図の一部に対応するものである。
図6Aに示す光学素子10では、いずれの透明電極にも電位が印可されていない。また、
図6Bに示す光学素子10では、第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1および第3の透明電極112-3にLow電位が印加され、第2の透明電極112-2および第4の透明電極112-4にHigh電位が印加されている。同様に、第2の液晶セル120の第1の透明電極122-1および第3の透明電極122-3にLow電位が印加され、第2の透明電極122-2および第4の透明電極122-4にHigh電位が印加されている。なお、
図6Bでは、便宜上、Low電位およびHigh電位を、それぞれ、「-」および「+」の記号を用いて図示している。
【0053】
図6Aおよび
図6Bに示す光学素子10では、第1の液晶セル110の第1の配向膜114-1および第2の液晶セル120の第1の配向膜124-1は、x軸方向に配向処理が行われている。一方、第1の液晶セル110の第2の配向膜114-2および第2の液晶セル120の第2の配向膜124-2は、y軸方向に配向処理が行われている。したがって、第1の液晶セル110では、第1の配向膜114-1の配向方向はx軸方向であり、第2の配向膜114-2の配向方向はy軸方向である。同様に、第2の液晶セル120では、第1の配向膜124-1の配向方向はx軸方向であり、第2の配向膜124-2の配向方向はy軸方向である。
【0054】
第1の液晶セル110と第2の液晶セル120とが積層した光学素子10では、平面視において、第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1と第2の液晶セル120の第1の透明電極122-1とが延在方向にわたって略一致するように重畳している。他の透明電極も同様である。但し、第1の液晶セル110と第2の液晶セル120とは、第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1と第2の液晶セル120の第1の透明電極122-1とが、x軸方向またはy軸方向に僅かにずれて重畳するように配置されていてもよい。より具体的には、平面視において、第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1と第2の液晶セル120の第1の透明電極122-1とが、互いに延在方向にわたって一部または全部が重畳している。または、第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1と第2の液晶セル120の第1の透明電極122-1とが互いに重畳せずとも、同じ方向に延在していればよい。
【0055】
図6Aおよび
図6Bでは、光は、第1の液晶セル110の第1の基板111-1に対して垂直な方向から入射し、第2の液晶セル120の第2の基板121-2から出射する。第1の液晶セル110の第1の基板111-1に入射する光は、x軸方向の偏光(P偏光成分)と、y軸方向の偏光(S偏光成分)とを有している。そこで、以下では、便宜上、光源から発せられる光のうち、x軸方向の偏光成分を第1の偏光成分310とし、また、y軸方向の偏光成分を第2の偏光成分320とし、これらの偏光成分が
図6Bの光学素子10を透過する過程を説明する。
【0056】
第1の偏光成分310および第2の偏光成分320は、それぞれ、光源から出射された光のP偏光成分およびS偏光成分に対応する(
図6B中の(1)参照)。なお、
図6Aおよび
図6Bでは、P偏光成分は矢印(紙面水平方向を示す矢印)を用いて図示され、S偏光成分は丸印にバツを付した記号(紙面法線方向を示す矢印)を用いて図示されている。
【0057】
第1の液晶セル110の第1の基板111-1側における液晶層113の液晶分子は、長軸がx軸方向に沿って配向されているため、
図6Bに示すように、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間に横電界が発生すると、当該液晶分子はx軸方向に屈折率分布を有する。また、第1の液晶セル110の第2の基板111-2側における液晶層113の液晶分子は、長軸がy軸方向に沿って配向されているため、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間に横電界が発生すると、当該液晶分子はy軸方向に屈折率分布を有する。
【0058】
そのため、光学素子10(より具体的には、第1の液晶セル110)に入射する第1の偏光成分310は、第1の基板111-1に入射した後、第2の基板111-2に向かうにつれて、液晶配向のねじれに従ってその偏光成分がS偏光成分に変化する(
図6B中の(2)~(4)参照)。より具体的には、第1の偏光成分310は、第1の基板111-1側ではx軸方向に偏光軸を有しているが、液晶層113の厚さ方向に通過する過程でその偏光軸を徐々に変化させ、第2の基板111-2側ではy軸方向に偏光軸を有することとなり、その後、第2の基板111-2側から出射される(
図6B中の(5)参照)。ここで、
図6Bに示すように、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間に横電界が発生すると、当該横電界の影響で液晶分子の配向状態が
図5Aのように変化し、屈折率分布が変化する。また、第1の偏光成分310は、第1の基板111-1側においては、その偏光軸が当該第1の基板111-1側における液晶層113の液晶分子の配向方向に平行であるため、当該液晶分子の屈折率分布の変化に応じてx軸方向に拡散する。また、第1の偏光成分310は、液晶層113内で偏光軸をx軸方向からy軸方向に変化させることによって、第2の基板111-2側においては、その偏光軸が当該第2の基板111-2側における液晶層113の液晶分子の配向方向に平行となる。ここで、
図6Bに示すように、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間に横電界が発生すると、当該横電界の影響で液晶分子の配向状態が
図5Bのように変化し、屈折率分布が変化する。このため、第1の偏光成分310は、当該液晶分子の屈折率分布の変化に応じてy軸方向に拡散する。
【0059】
また、
図6Bに示すように、光学素子10(より具体的には、第1の液晶セル110)に入射する前にS偏光成分であった第2の偏光成分320は、第1の基板111-1に入射した後、第2の基板111-2に向かうにつれて、液晶配向のねじれに従ってその偏光成分がP偏光成分に変化する(
図6B中の(2)~(4)参照)。より具体的には、第2の偏光成分320は、第1の基板111-1側ではy軸方向に偏光軸を有しているが、液晶層113の厚さ方向に通過する過程でその偏光軸を徐々に変化させ、第2の基板111-2側ではx軸方向に偏光軸を有することとなり、その後、第2の基板111-2側から出射される(
図6B中の(5)参照)。ここで、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間に横電界が発生しても、第2の偏光成分320は、第1の基板111-1側においては、その偏光軸が当該第1の基板111-1側における液晶層113の液晶分子の配向方向に直交しているため、当該液晶分子の屈折率分布の影響を受けず、そのまま拡散せずに通過する。また、第2の偏光成分320は、液晶層113内で偏光軸をy軸方向からx軸方向に変化させることによって、第2の基板111-2側においては、その偏光軸が当該第2の基板111-2側における液晶分子の配向方向とも直交することになるため、当該液晶分子の屈折率分布の影響を受けず、そのまま拡散せずに通過する。
【0060】
すなわち、光学素子10に入射する前にS偏光成分であった第2の偏光成分320は、第1の液晶セル110を通過する過程で偏光軸をy軸方向からx軸方向に変化させてP偏光成分となるものの、第1の偏光成分310のような拡散は生じない。
【0061】
第2の液晶セル120の液晶層123の液晶分子も、第1の液晶セル110の液晶層113の液晶分子と同様の屈折率分布を有する。そのため、第2の液晶セル120内においても、基本的に、第1の液晶セル110内と同様の現象が生じる。一方、第1の偏光成分310および第2の偏光成分320は、第1の液晶セル110を通過することで、その偏光軸が入れ替わるため、液晶層113の液晶分子の屈折率分布の影響を受ける偏光成分も入れ替わる。すなわち、
図6Bに示すように、第2の液晶セル120の第1の透明電極122-1と第2の透明電極122-2との間および第3の透明電極122-3と第4の透明電極112-4との間に横電界が発生しても、第2の液晶セル120を通過する第1の偏光成分310はその偏光軸をy軸方向から再びx軸方向に変化するものの(
図6B中の(6)~(8)参照)、拡散は生じない。一方、第2の液晶セル120を通過する第2の偏光成分320は、その偏光軸をx軸方向から再びy軸方向に変化しつつ(
図6B中の(6)~(8)参照)、かつ、液晶層123の液晶分子の屈折率分布の影響を受けて拡散する。
【0062】
以上からわかるように、光学素子10では、同一の構造を有する2つの液晶セルを積層させることにより、光学素子10に入射される光の偏光方向を2度にわたって変化させ、その結果、入射前と入射後での偏光方向を変わらなくすることができる(
図6B中の(1)および(9)参照)。他方、当該光学素子10は、液晶セルの液晶層の液晶分子が有する屈折率分布を変化させ、透過する光を屈折させることができる。より具体的には、第1の液晶セル110が第1の偏光成分310(P偏光成分)の光をx軸方向、y軸方向、またはx軸とy軸の両方向に拡散させ、第2の液晶セル120が第2の偏光成分320(S偏光成分)の光をx軸方向、y軸方向、またはx軸とy軸の両方向に拡散させる。したがって、光学素子10は、無偏光の光に対して、光の偏光状態を変えることなく、光を拡散することができる。
【0063】
また、上記では、主として
図6Bを用いてそれぞれの偏光成分が光学素子10を通過する過程で拡散および偏光軸を変化させる過程を説明した。
図6Aの光学素子10は、各透明電極に電位を印可していない状態(隣り合う透明電極間に電位差がない状態)であり、偏光成分を拡散させない点を除いては
図6Bの光学素子と同じように偏光成分の偏光軸を変化させる。説明の重複を避けるべく、
図6Aの光学素子を通過する偏光成分の説明は
図6Bの(1)~(9)と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0064】
なお、
図6Aおよび
図6Bに示すように、第1の液晶セル110と第2の液晶セル120との間には、光学弾性樹脂層130が設けられている。光は、第1の液晶セル110の第2の基板111-2と光学弾性樹脂層130との界面または第2の液晶セル120の第1の基板121-1と光学弾性樹脂層130との界面においても屈折され得る。そのため、光学弾性樹脂層130の光学弾性樹脂の屈折率は、第1の液晶セル110の第2の基板111-2および第2の液晶セル120の第1の基板121-1の屈折率に近いものが好ましい。また、光学素子10は、光源に近い位置に配置され、光源からの熱によって温度が上昇する場合がある。この場合、光学弾性樹脂層130の光学弾性樹脂の熱膨張の影響を緩和することができるように、光学弾性樹脂層130の厚さは、第1の液晶セル110における第1の基板111-1と第2の基板111-2との間または第2の液晶セル120における第1の基板121-1と第2の基板121-2との間の基板間距離dよりも大きいことが好ましい。
【0065】
光学素子10は、単に光を拡散するだけでなく、各透明電極に印加する電位によって光の配光を制御し、所定の配光パターンを形成することができる。以下では、
図7A~
図10を参照して、光学素子10を用いて制御された光の配光パターンのいくつかを例示する。但し、光学素子10によって制御される光の配光パターンは、これらに限られるものではない。なお、
図7A~
図10に記載された電位の符号(V
11など)は、表1のとおりである。
【0066】
【0067】
また、以下では、便宜上、各透明電極に印加する電位を、第1の電位(変動電位、例えば、Low電位が0VおよびHigh電位が30V)、第1の電位と位相が反転している第2の電位(変動電位、例えば、Low電位が0VおよびHigh電位が30V)、および第3の電位(中間電位、例えば、15V)として説明する。第3の電位は、Low電位とHigh電位との間の電位であり、固定電位であってもよく、変動電位であってもよい。なお、電圧の値は、
図7A~
図10に記載された0V、15V、および30Vに限られない。
【0068】
[例1:x軸方向に拡がる配光パターン]
図7Aは、本発明の一実施形態に係る光学素子10に含まれる各透明電極に印加する電位を示すタイミングチャートである。また、
図7Bは、本発明の一実施形態に係る光学素子10において、各透明電極に
図7Aに示す電位を印加して得られた光の配光パターンの写真である。
【0069】
第1の液晶セル110では、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2に、それぞれ、第1の電位および第2の電位が印加される。また、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4の各々に第3の電位が印加される。第1の透明電極112-1に印加される第1の電位と、第2の透明電極112-2に印加される第2の電位とは、位相が反転している。そのため、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間には、電位差(例えば、+30Vまたは-30V)が生じている。これに対し、第2の基板111-2側の第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間は、無電位状態となっている。また、第2の基板111-2側の第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4は、いずれの状態であっても、第1の基板111-1側の第1の透明電極112-1との間または第2の透明電極112-2との間に+15Vまたは-15Vが生じており、絶対値で見た場合に、第1の基板111-1側の一方の透明電極との間および他方の透明電極との間での電位差に偏りはない。
【0070】
これにより、第1の基板111-1側の液晶分子は、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間の電位差に従って配向状態を変化させる(
図5A~
図5Cなど参照)。一方、第2の基板111-2側の液晶分子は、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間に電位差が生じておらず、また、第1の基板111-1側の電位による影響を受けないほど第1の基板111-1と第2の基板111-2とが十分に離れているため、初期配向方向から配向方向を変化させない。また、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4に印加される第3の電位は第1の電位と第2の電位との間の中間電位であるため、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2とに、Low電位とHigh電位とが交互に印加されても容量が蓄積されることはなく、第2の基板111-2側の液晶分子の配向状態が変化することはない。
【0071】
第2の液晶セル120では、第1の透明電極122-1および第2の透明電極122-2に、それぞれ、第1の電位および第2の電位が印加される。また、第3の透明電極122-3および第4の透明電極122-4の各々に第3の電位が印加される。第1の透明電極122-1に印加される第1の電位と、第2の透明電極122-2に印加される第2の電位とは、位相が反転している。そのため、第1の透明電極122-1と第2の透明電極122-2との間には、電位差(例えば、+30Vまたは-30V)が生じている。これに対し、第2の基板121-2側の第3の透明電極122-3と第4の透明電極122-4との間は、無電位状態となっている。また、第2の基板121-2側の第3の透明電極122-3および第4の透明電極122-4は、いずれの状態であっても、第1の基板121-1側の第1の透明電極122-1との間または第2の透明電極122-2との間に+15Vまたは-15Vが生じており、絶対値で見た場合に、第1の基板121-1側の一方の透明電極との間および他方の透明電極との間での電位差に偏りはない。
【0072】
これにより、第1の基板121-1側の液晶分子は、第1の透明電極122-1と第2の透明電極122-2との間の電位差に従って配向状態を変化させる(
図5A~
図5Cなど参照)。一方、第2の基板121-2側の液晶分子は、第3の透明電極122-3と第4の透明電極122-4との間に電位差が生じておらず、また、第1の基板121-1側の電位による影響を受けないほど第1の基板121-1と第2の基板121-2とが十分に離れているため、初期配向方向から配向方向を変化させない。また、第3の透明電極122-3および第4の透明電極122-4に印加される第3の電位は第1の電位と第2の電位との間の中間電位であるため、第1の透明電極122-1と第2の透明電極122-2とに、Low電位とHigh電位とが交互に印加されても容量が蓄積されることはなく、第2の基板121-2側の液晶分子の配向状態が変化することはない。
【0073】
また、
図7Aに示すように、第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の電位変動は、それぞれ、第2の液晶セル120の第1の透明電極122-1および第2の透明電極122-2の電位変動と同期している。
【0074】
各透明電極に上述のような電位を印加した場合、第1の液晶セル110の第1の基板111-1側の液晶層113の液晶分子は、x軸方向の偏光を有する光をx軸方向に屈折することができる。そのため、第1の液晶セル110は、x軸方向の偏光を有する光をx軸方向に拡散することができる。
【0075】
また、第2の液晶セル120の第1の基板121-1側の液晶層123の液晶分子も、x軸方向の偏光を有する光をx軸方向に屈折させる。そのため、第2の液晶セル120も、x軸方向の偏光を有する光をx軸方向に拡散する。
【0076】
すなわち、各透明電極の電位が
図7Aに示すものであるとき、光学素子10は、第1の液晶セル110の第1の基板111-1側から光が入射される(
図6Aおよび
図6Bに示すように、第1の液晶セル110の下方側から第1の基板111-1に向けて光が照射されることを意味する。以下、同様とする。)と、第1の液晶セル110を通過する過程において、x軸方向の偏光軸を有する第1の偏光成分310は第1の基板111-1側でx軸方向に拡散しつつ、偏光軸をy軸方向に変化させる。他方、y軸方向の偏光を有する第2の偏光成分320は、拡散することなく、偏光軸をy軸方向からx軸方向に変化させる。そして、これらの偏光成分はそのまま第2の液晶セル120に入射する。第1の液晶セル110内で拡散することなく、y軸方向からx軸方向に偏光軸を変化させた第2の偏光成分320は、第2の液晶セル120を通過する過程において、x軸方向に拡散し、その後、偏光軸をy軸方向に変化させる。他方、第1の液晶セル110内で拡散しつつ偏光軸をx軸方向からy軸方向に変化させた第1の偏光成分310は、拡散することなく偏光軸をy軸方向からx軸方向に変化させる。これにより、光学素子10に入射する光は、第1の液晶セル110または第2の液晶セル120を通過する過程で、x軸方向に拡散することとなる。したがって、光学素子10を透過した光は、
図7Bに示すように、x軸方向に拡がる配光パターンAを形成することができる。
【0077】
[例2:y軸方向に拡がる配光パターン]
図8Aは、本発明の一実施形態に係る光学素子10に含まれる各透明電極に印加する電圧を示すタイミングチャートである。また、
図8Bは、本発明の一実施形態に係る光学素子10において、各透明電極に
図8Aに示す電位を印加して得られた光の配光パターンの写真である。
【0078】
第1の液晶セル110では、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の各々に第3の電位が印加される。また、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4に、それぞれ、第1の電位および第2の電位が印加される。第3の透明電極112-3に印加される第1の電位と、第4の透明電極112-4に印加される第2の電位とは、位相が反転している。そのため、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間には、電位差(例えば、+30Vまたは-30V)が生じている。これに対し、第1の基板111-1側の第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間は、無電位状態となっている。また、第1の基板111-1側の第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2は、いずれの状態であっても、第2の基板111-2側の第3の透明電極112-3との間または第4の透明電極112-4との間に+15Vまたは-15Vが生じており、絶対値で見た場合に、第2の基板111-2側の一方の透明電極との間および他方の透明電極との間での電位差に偏りはない。
【0079】
これにより、第2の基板111-2側の液晶分子は、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間の電位差に従って配向状態を変化させる(
図5A~
図5Cなど参照)。一方、第1の基板111-1側の液晶分子は、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間に電位差が生じておらず、また、第2の基板111-2側の電位による影響を受けないほど第1の基板111-1と第2の基板111-2とが十分に離れているため、初期配向方向から配向方向を変化させない。また、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2に印加される第3の電位は第1の電位と第2の電位との間の中間電位であるため、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4とに、Low電位とHigh電位とが交互に印加されても容量が蓄積されることはなく、第1の基板111-1側の液晶分子の配向状態が変化することはない。
【0080】
第2の液晶セル120では、第1の透明電極122-1および第2の透明電極122-2の各々に第3の電位が印加される。また、第3の透明電極122-3および第4の透明電極122-4に、それぞれ、第1の電位および第2の電位が印加される。第3の透明電極122-3に印加される第1の電位と、第4の透明電極122-4に印加される第2の電位とは、位相が反転している。そのため、第3の透明電極122-3と第4の透明電極122-4との間には、電位差(例えば、+30Vまたは-30V)が生じている。これに対し、第1の基板121-1側の第1の透明電極122-1と第2の透明電極122-2との間は、無電位状態となっている。また、第1の基板121-1側の第1の透明電極122-1および第2の透明電極122-2は、いずれの状態であっても、第2の基板121-2側の第3の透明電極122-3との間または第4の透明電極122-4との間に+15Vまたは-15Vが生じており、絶対値で見た場合に、第2の基板121-2側の一方の透明電極との間および他方の透明電極との間での電位差に偏りはない。
【0081】
これにより、第2の基板121-2側の液晶分子は、第3の透明電極122-3と第4の透明電極122-4との間の電位差に従って配向状態を変化させる(
図5A~
図5Cなど参照)。一方、第1の基板121-1側の液晶分子は、第1の透明電極122-1と第2の透明電極122-2との間に電位差が生じておらず、また、第2の基板121-2側の電位による影響を受けないほど第1の基板121-1と第2の基板121-2とが十分に離れているため、初期配向方向から配向方向を変化させない。また、第1の透明電極122-1および第2の透明電極122-2に印加される第3の電位は第1の電位と第2の電位との間の中間電位であるため、第3の透明電極122-3と第4の透明電極122-4とに、Low電位とHigh電位とが交互に印加されても容量が蓄積されることはなく、第1の基板121-1側の液晶分子の配向状態が変化することはない。
【0082】
また、
図8Bに示すように、第1の液晶セル110の第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4の電位変動は、それぞれ、第2の液晶セル120の第3の透明電極122-3および第4の透明電極122-4の電位変動と同期している。
【0083】
各透明電極に上述のような電位を印加した場合、第1の液晶セル110の第2の基板111-2側の液晶層113の液晶分子は、y軸方向の偏光を有する光をy軸方向に屈折させる。そのため、第1の液晶セル110は、y軸方向の偏光を有する光をy軸方向に拡散する。
【0084】
また、第2の液晶セル120の第2の基板121-2側の液晶層123の液晶分子も、y軸方向の偏光を有する光をy軸方向に屈折させる。そのため、第2の液晶セル120も、y軸方向の偏光を有する光をy軸方向に拡散する。
【0085】
すなわち、各透明電極の電位が
図8Aに示すものであるとき、光学素子10は、第1の液晶セル110の第1の基板111-1側から光が入射されると、第1の液晶セル110を通過する過程において、x軸方向の偏光を有する第1の偏光成分310は、偏光軸をx軸方向からy軸方向に変化させつつ、第2の基板111-2側でy軸方向に拡散する。他方、y軸方向の偏光を有する第2の偏光成分320は、拡散することなく、偏光軸をy軸方向からx軸方向に変化させる。そして、これらの偏光成分はそのまま第2の液晶セル120に入射する。第1の液晶セル110内で拡散することなく、y軸方向からx軸方向に偏光軸を変化させた第2の偏光成分320は、第2の液晶セル120を通過する過程において、偏光軸をy軸方向に変化させつつ、第2の基板121-2側でy軸方向に拡散する。他方、第1の液晶セル110内で拡散しつつ偏光軸をx軸方向からy軸方向に変化させた第1の偏光成分310は、拡散することなく偏光軸をy軸方向からx軸方向に変化させる。これにより、光学素子10に入射する光は、第1の液晶セル110または第2の液晶セル120を通過する過程で、y軸方向に拡散することとなる。したがって、光学素子10を透過した光は、
図8Bに示すように、y軸方向に拡がる配光パターンBを形成することができる。
【0086】
[例3:十字に拡がる配光パターン]
図9Aは、本発明の一実施形態に係る光学素子10に含まれる各透明電極に印加する電位を示すタイミングチャートである。また、
図9Bは、本発明の一実施形態に係る光学素子10において、各透明電極に
図9Aに示す電位を印加して得られた光の配光パターンの写真である。
【0087】
第1の液晶セル110では、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2に、それぞれ、第1の電位および第2の電位が印加される。また、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4の各々に第3の電位が印加される。第1の透明電極112-1に印加される第1の電位と、第2の透明電極112-2に印加される第2の電位とは、位相が反転している。そのため、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間には、電位差(例えば、+30Vまたは-30V)が生じている。これに対し、第2の基板111-2側の第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間は、無電位状態となっている。また、第2の基板111-2側の第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4は、いずれの状態であっても、第1の基板111-1側の第1の透明電極112-1との間または第2の透明電極112-2との間に+15Vまたは-15Vが生じており、絶対値で見た場合に、第1の基板111-1側の一方の透明電極との間および他方の透明電極との間での電位差に偏りはない。
【0088】
これにより、第1の基板111-1側の液晶分子は、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間の電位差に従って配向状態を変化させる(
図5A~
図5Cなど参照)。一方、第2の基板111-2側の液晶分子は、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間に電位差が生じておらず、また、第1の基板111-1側の電位による影響を受けないほど第1の基板111-1と第2の基板111-2とが十分に離れているため、初期配向方向から配向方向を変化させない。また、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4に印加される第3の電位は第1の電位と第2の電位との間の中間電位であるため、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2とに、Low電位とHigh電位とが交互に印加されても容量が蓄積されることはなく、第2の基板111-2側の液晶分子の配向状態が変化することはない。
【0089】
第2の液晶セル120では、第1の透明電極122-1および第2の透明電極122-2の各々に第3の電位が印加される。また、第3の透明電極122-3および第4の透明電極122-4に、それぞれ、第1の電位および第2の電位が印加される。第3の透明電極122-3に印加される第1の電位と、第4の透明電極122-4に印加される第2の電位は、位相が反転している。そのため、第3の透明電極122-3と第4の透明電極122-4との間には、電位差(例えば、+30Vまたは-30V)が生じている。これに対し、第1の基板121-1側の第1の透明電極122-1と第2の透明電極122-2との間は、無電位状態となっている。また、第1の基板121-1側の第1の透明電極122-1および第2の透明電極122-2は、いずれの状態であっても、第2の基板121-2側の第3の透明電極122-3との間または第4の透明電極122-4との間に+15Vまたは-15Vが生じており、絶対値で見た場合に、第2の基板121-2側の一方の透明電極との間および他方の透明電極との間での電位差に偏りはない。
【0090】
これにより、第2の基板121-2側の液晶分子は、第3の透明電極122-3と第4の透明電極122-4との間の電位差に従って配向状態を変化させる(
図5A~
図5Cなど参照)。一方、第1の基板121-1側の液晶分子は、第1の透明電極122-1と第2の透明電極122-2との間に電位差が生じておらず、また、第2の基板121-2側の電位による影響を受けないほど第1の基板121-1と第2の基板121-2とが十分に離れているため、初期配向方向から配向方向を変化させない。また、第1の透明電極122-1および第2の透明電極122-2に印加される第3の電位は第1の電位と第2の電位との間の中間電位であるため、第3の透明電極122-3と第4の透明電極122-4とに、Low電位とHigh電位とが交互に印加されても容量が蓄積されることはなく、第1の基板121-1側の液晶分子の配向状態が変化することはない。
【0091】
また、
図9Aに示すように、第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の電位変動は、それぞれ、第2の液晶セル120の第3の透明電極122-3および第4の透明電極122-4の電位変動と同期している。
【0092】
各透明電極に上述のような電位を印加した場合、第1の液晶セル110の第1の基板111-1側の液晶層113の液晶分子は、x軸方向の偏光を有する光をx軸方向に屈折させる。そのため、第1の液晶セル110は、x軸方向の偏光を有する光をx軸方向に拡散させる。
【0093】
また、第2の液晶セル120の第2の基板121-2側の液晶層123の液晶分子は、y軸方向の偏光を有する光をy軸方向に屈折させる。そのため、第2の液晶セル120は、y軸方向の偏光を有する光をy軸方向に拡散する。
【0094】
すなわち、各透明電極の電位が
図9Aに示すものであるとき、光学素子10は、第1の液晶セル110の第1の基板111-1側からに光が入射されると、第1の液晶セル110を通過する過程において、x軸方向の偏光を有する第1の偏光成分310は第1の基板111-1側でx軸方向に拡散しつつ、偏光軸をx軸方向からy軸方向に変化させる。他方、y軸方向の偏光を有する第2の偏光成分320は、拡散することなく、偏光軸をy軸方向からx軸方向に変化させる。そして、これらの偏光成分はそのまま第2の液晶セル120に入射する。第1の液晶セル110内で拡散することなく、y軸方向からx軸方向に偏光軸を変化させた第2の偏光成分320は、第2の液晶セル120を通過する過程において、偏光軸をx軸方向からy軸方向に変化させつつ、第2の基板121-2側でy軸方向に拡散する。他方、第1の液晶セル110内で拡散しつつ偏光軸をx軸方向からy軸方向に変化させた第1の偏光成分310は、拡散することなく、偏光軸をy軸方向からx軸方向に変化させる。このように、光学素子10に入射する光は、第1の偏光成分310が第1の液晶セル110を通過する過程でx軸方向に拡散され、第2の偏光成分320が第2の液晶セル120を通過する過程でy軸方向に拡散される。したがって、光学素子10を透過した光は、
図9Bに示すように、十字に拡がる配光パターンCを形成することができる。
【0095】
なお、上記の通り、
図9Aに示す電位を各透明電極に印可することにより、主として第1の偏光成分310を拡散させることで十字状の配光パターンを形成しているが、各透明電極に供給する電位を変えることにより、第2の偏光成分320を拡散させて十字状の配光パターンを形成することができる。具体的には、第1の液晶セル110では、第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4に、それぞれ、第1の電位および第2の電位を印加し、かつ、第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2の各々に第3の電位を印加する。そして、第2の液晶セル120では、第1の透明電極122-1および第2の透明電極122-2に、それぞれ、第1の電位および第2の電位を印加し、且つ、第3の透明電極122-3および第4の透明電極122-4の各々に第3の電位を印可する。これにより、主として第2の偏光成分320を拡散させることで十字状の配光パターンが形成される。
【0096】
[例4:矩形に拡がる配光パターン]
図10は、本発明の一実施形態に係る光学素子10に含まれる各透明電極に印加する電圧を示すタイミングチャートである。
【0097】
第1の液晶セル110では、第1の透明電極112-1および第3の透明電極112-3の各々に第1の電位が印加される。また、第2の透明電極112-2および第4の透明電極112-4の各々に第2の電位が印加される。第1の透明電極112-1および第3の透明電極112-3に印加される第1の電位と、第2の透明電極112-2および第4の透明電極112-4に印加される第2の電位とは、位相が反転している。そのため、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間および第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間には、電位差(例えば、+30Vまたは-30V)が生じている。また、第1の透明電極112-1と第4の透明電極112-4との間および第2の透明電極112-2と第3の透明電極112-3との間にも、電位差(例えば、+30Vまたは-30V)が生じている。
【0098】
これにより、第1の基板111-1側の液晶分子は、第1の透明電極112-1と第2の透明電極112-2との間の電位差に従って配向状態を変化させる(
図5A~
図5Cなど参照)。また、第2の基板111-2側の液晶分子は、第3の透明電極112-3と第4の透明電極112-4との間の電位差に従って配向状態を変化させる(
図5A~
図5Cなど参照)。なお、第1の基板111-1と第2の基板111-2とは十分に離れているため、第3の透明電極112-3に印加される第1の電位または第4の透明電極112-4に印加される第2の電位による第1の基板111-1側の液晶分子への影響は僅かである。同様に、第1の透明電極112-1に印加される第1の電位または第2の透明電極112-2に印加される第2の電位による第2の基板111-2側の液晶分子への影響は僅かである。
【0099】
第2の液晶セル120では、第1の透明電極122-1および第3の透明電極122-3の各々に第1の電位が印加される。また、第2の透明電極122-2および第4の透明電極122-4の各々に第2の電位が印加される。第1の透明電極122-1および第3の透明電極122-3に印加される第1の電位と、第2の透明電極122-2および第4の透明電極122-4に印加される第2の電位とは、位相が反転している。そのため、第1の透明電極122-1と第2の透明電極122-2との間および第3の透明電極122-3と第4の透明電極122-4との間には、電位差(例えば、+30Vまたは-30V)が生じている。また、第1の透明電極122-1と第4の透明電極122-4との間および第2の透明電極122-2と第3の透明電極122-3との間にも、電位差(例えば、+30Vまたは-30V)が生じている。
【0100】
これにより、第1の基板121-1側の液晶分子は、第1の透明電極122-1と第2の透明電極122-2との間の電位差に従って配向状態を変化させる(
図5A~
図5Cなど参照)。また、第2の基板121-2側の液晶分子は、第3の透明電極122-3と第4の透明電極122-4との間の電位差に従って配向状態を変化させる(
図5A~
図5Cなど参照)。なお、第1の基板121-1と第2の基板121-2とは十分に離れているため、第3の透明電極122-3に印加される第1の電位または第4の透明電極122-4に印加される第2の電位による第1の基板121-1側の液晶分子への影響は僅かである。同様に、第1の透明電極122-1に印加される第1の電位または第2の透明電極122-2に印加される第2の電位による第2の基板121-2側の液晶分子への影響は僅かである。
【0101】
また、
図10に示すように、第1の液晶セル110の第1の透明電極112-1および第3の透明電極112-3の電位変動ならびに第2の液晶セル120の第1の透明電極122-1および第3の透明電極122-3の電位変動は、互いに同期している。また、第1の液晶セル110の第2の透明電極112-2および第4の透明電極112-4の電位変動ならびに第2の液晶セル120の第2の透明電極122-2および第4の透明電極122-4の電位変動は、互いに同期している。
【0102】
各透明電極に上述のような電位を印加した場合、第1の液晶セル110の第1の基板111-1側の液晶層113の液晶分子は、x軸方向の偏光を有する光をx軸方向に屈折させる。また、第1の液晶セル110の第2の基板111-2側の液晶層113の液晶分子は、y軸方向の偏光を有する光をy軸方向に屈折させる。そのため、第1の液晶セル110は、x軸方向の偏光を有する光をx軸方向およびy方向に拡散させる。
【0103】
また、第2の液晶セル120の第1の基板121-1側の液晶層123の液晶分子は、x軸方向の偏光を有する光をx軸方向に屈折させる。また、第2の液晶セル120の第2の基板121-2側の液晶層123の液晶は、y軸方向の偏光を有する光をy軸方向に屈折させる。そのため、第2の液晶セル120も、x軸方向の偏光を有する光をx軸方向およびy方向に拡散させる。
【0104】
すなわち、各透明電極の電位が
図10に示すものであるとき、光学素子10は、第1の液晶セル110の第1の基板111-1側から光が入射されると、第1の液晶セル110を通過する過程において、x軸方向の偏光を有する第1の偏光成分310は第1の基板111-1側でx軸方向に拡散しつつ、偏光軸をx軸方向からy軸方向に変化させる。また、x軸方向からy軸方向に偏光軸を変化させた第1の偏光成分310は、第2の基板111-2側でy軸方向に拡散する。他方、y軸方向の偏光を有する第2の偏光成分320は、拡散することなく、偏光軸をy軸方向からx軸方向に変化させる。そして、これらの偏光成分はそのまま第2の液晶セル120に入射する。第1の液晶セル110内で拡散することなく、y軸方向からx軸方向に偏光軸を変化させた第2の偏光成分320は、第2の液晶セル120を通過する過程において、第1の基板121-1側でx軸方向に拡散しつつ、偏光軸をx軸方向からy軸方向に変化させる。また、x軸方向からy軸方向に偏光軸を変化させた第2の偏光成分320は、第2の基板121-2側でy軸方向に拡散する。他方、第1の液晶セル110内で拡散しつつ偏光軸をx軸方向からy軸方向に変化させた第1の偏光成分310は、拡散することなく偏光軸をy軸方向からx軸方向に変化させる。このように、光学素子10に入射する光は、第1の偏光成分310が第1の液晶セル110を通過する過程でx軸方向およびy軸方向に拡散され、第2の偏光成分320が第2の液晶セル120を通過する過程でx軸方向およびy軸方向に拡散される。したがって、光学素子10を透過した光は、矩形に拡がる配光パターンを形成することができる。
【0105】
以上、いくつかの配光パターンを例示したが、光の配光の分布を示す配光角は、透明電極に印加する電圧の大きさによって制御することができる。例えば、透明電極に印加する電圧を高くすると、配光角が大きくなり、光がより拡散された配光パターンが得られる。また、配光角は、例えば、基板間距離dまたはピッチpによっても制御することができる。
【0106】
[4.基板間距離とピッチの相関関係]
図11を参照して、基板間距離dとピッチpの相関関係について詳細に説明する。
【0107】
図11は、本発明の一実施形態に係る光学素子10の液晶セルにおいて、d/pに対する正面相対輝度(0度における相対輝度)を示すグラフである。基板間距離dは、
図4A~
図5Bに示したように、第1の液晶セル110の第1の基板111-1と第2の基板111-2との間の距離(または、第2の液晶セル120の第1の基板121-1と第2の基板121-2との間の距離)である。また、ピッチpは、
図3Aに示した第1のピッチp
1(または、
図3Bに示した第2のピッチp
2)である。また、正面相対輝度は、第1の基板111-1から入射され、第2の基板111-2から出射される光において、第2の基板111-2の垂直方向(0度)から出射される光の輝度である。
図11に示すグラフは、光学素子10がない場合(光源のみの場合)の光の輝度を1として規格化されている。したがって、
図11に示すグラフのy軸は、光学素子10がない場合の輝度を1とした場合の相対輝度比ということもできる。
【0108】
なお、
図11に示すグラフのデータを取得した液晶セルは、第1の基板111-1上に第1の透明電極112-1および第2の透明電極112-2が形成されているが、第2の基板111-2上に第3の透明電極112-3および第4の透明電極112-4が形成されていない。また、輝度の測定時には、第1の透明電極112-1にLow電位(0V)を印加し、第2の透明電極112-2にHigh電位(30V)を印加した。
【0109】
図11に示すように、d/pが大きくなると正面相対輝度は低下するが、d/p<1とd/p≧1とでは正面相対輝度の低下の割合が大きく異なる。d/p<1では、正面相対輝度がd/p=1に近づくにつれて大きく低下するものの、正面輝度比は0.2~0.4程度の正面輝度が測定された。これは、液晶セルによる光の拡散に伴う輝度の低下を示しているものの、当該拡散が未だ十分でないことを示している。これに対し、d/p≧1では、正面相対輝度が0.1以下となり、その後、d/pを大きくしても正面相対輝度は安定している。これは、d/p≧1では液晶セルによる光の拡散が十分であることを示している。すなわち、d/p≧1では、優れた光拡散が得られる。したがって、光学素子10においては、基板間距離dとピッチpがd/p≧1を満たすことが好ましく、d/p≧2を満たすことがさらに好ましい。
【0110】
また、透明電極材料は屈折率が高く、液晶セルの透過率に影響を及ぼす場合がある。そのため、透明電極の幅は小さいことが好ましい。すなわち、電極間距離b(
図3Aまたは
図3Bに示す第1の電極間距離b
1または第2の電極間距離b
2)は、透明電極の幅a(
図3Aまたは
図3Bに示す第1の幅a
1または第2の幅a
2)以下であることが好ましい。例えば、電極間距離bをピッチpとの関係で表せば、p/2≦bを満たすことが好ましい。
【0111】
以上説明したように、本実施形態に係る光学素子10は、2つの液晶セルを有し、各透明電極に印加する電圧を制御することにより、光学素子10を透過する光の配光または配光パターンを容易に制御することができる。
【0112】
<第2実施形態>
図12を参照して、本発明の一実施形態に係る照明装置20の構成について説明する。
【0113】
図12は、本発明の一実施形態に係る照明装置20の構成を示す模式図である。
図12に示すように、照明装置20は、光学素子10、光源210、凸レンズ220、および反射器230を含む。凸レンズ220は、光学素子10と光源210との間に配置されている。また、反射器230は、光源210と凸レンズ220との間の空間を取り囲むように配置されている。
【0114】
光源210は、光を照射することができる。光源210として、例えば、電球、蛍光灯、冷陰極管、発光ダイオード(LED)、またはレーザダイオード(LD)などを用いることができる。好ましくは、照明装置20の光源210は、LEDである。光源210として高発光効率であるLEDを用いた照明装置20は、高輝度および低消費電力となる。なお、LEDおよびLDは、それぞれ、有機発光ダイオード(OLED)および有機レーザダイオード(OLD)を含む。
【0115】
凸レンズ220は、光源210から照射された光を集光し、集光した光を光学素子10に入射させることができる。
【0116】
反射器230は、光源210から照射された光を反射し、反射した光を凸レンズに入射させることができる。反射器230の形状は、例えば、略円錐形であるが、これに限られない。また、反射器230の表面は平面であってもよく、曲面であってもよい。
【0117】
さらに、照明装置20は、透明電極に印加する電圧を制御する制御部を含み、様々な光の配向パターンを形成することができるようにしてもよい。
【0118】
以上説明したように、本実施形態に係る照明装置20は、光学素子10を含むため、照明装置20から出射する光の配光または配光パターンを容易に制御することができる。
【0119】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に相当し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、上述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0120】
また、本実施形態において態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0121】
10:光学素子、 20:照明装置、 110:第1の液晶セル、 111-1:第1の基板、 111-2:第2の基板、 112-1:第1の透明電極、 112-2:第2の透明電極、 112-3:第3の透明電極、 112-4:第4の透明電極、 113:液晶層、 114-1:第1の配向膜、 114-2:第2の配向膜、 115:シール材、 116-1:第1の配線、 116-2:第2の配線、 116-3:第3の配線、 116-4:第4の配線、 116-5:第5の配線、 116-6:第6の配線、 120:第2の液晶セル、 121-1:第1の基板、 121-2:第2の基板、
122-1:第1の透明電極、 122-2:第2の透明電極、 122-3:第3の透明電極、 122-4:第4の透明電極、 123:液晶層、 124-1:第1の配向膜、 124-2:第2の配向膜、 125:シール材、 130:光学弾性樹脂層、
210:光源、 220:凸レンズ、 230:反射器、 310:第1の偏光成分、
320:第2の偏光成分