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特許7600362導波管における光学モードを含む光放射を提供するフォトニックデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】導波管における光学モードを含む光放射を提供するフォトニックデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20210101AFI20241209BHJP
   H01S 5/12 20210101ALI20241209BHJP
   H01S 5/026 20060101ALI20241209BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20241209BHJP
   G02B 6/124 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
H01S5/022
H01S5/12
H01S5/026 618
G02B6/12 301
G02B6/124
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023503516
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 FR2021050384
(87)【国際公開番号】W WO2021205086
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】2003428
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】522392508
【氏名又は名称】シンティル フォトニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィ メネゾ
(72)【発明者】
【氏名】トーリー ティエッセン
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-502788(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0323575(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102244367(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
H01L 21/28-21/288
H01L 21/44-21/445
H01L 29/40-29/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波管における光学モードを含む光放射を提供するフォトニックデバイス(DP,PD’)であって、
前記光学モードの伝播の主方向に沿って平面内に広がる導波管(2)と、
前記導波管(2)を覆うように配置されたN-型半導体層(1n)と、
III-V材料からなる堆積層で形成された活性領域(QW)であって、前記活性領域(QW)は、前記導波管の一部分(2h)に沿って、前記N-型半導体層(1n)の一部分に配置され、および接触されており、前記N-型半導体層(1n)の他の部分は、自由部分と呼ばれ、前記活性領域(QW)と接触していないことと、
前記活性領域(QW)に配置され、および接触される複数のP-型半導体ピラー(1p、1’p)であって、P-型半導体材料は第1光学指数を有し、前記P-型半導体ピラー(1p、1’p)は第1より低い第2光学指数を有する封入材料によって互いに分離されていることと、
前記N-型半導体層(1n)の前記自由部分にオーミック接触する少なくとも一つの第1金属パッド(3n、3’n)と前記P-型半導体ピラー(1p、1’p)にオーミック接触する少なくとも一つの第2金属パッド(3p、3’p)と
を備えたことを特徴とするフォトニックデバイス。
【請求項2】
前記導波管(2)は、光帰還構造を形成するように構成される請求項1に記載のフォトニクデバイス(DP,PD’)。
【請求項3】
前記光帰還構造は、横方向に凸凹形状、または縦方向に凸凹形状のブラッグ格子である請求項2に記載のフォトニクデバイス(DP,PD’)。
【請求項4】
前記N-型半導体層(1n)と前記導波管(2)の間に配置され、誘電体材料からなるアセンブリ層(BL)をさらに備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフォトニクデバイス(DP,PD’)。
【請求項5】
少なくとも3つのP-型半導体ピラー(1p、1’p)を含む請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフォトニクデバイス(DP,PD’)。
【請求項6】
少なくとも一つの前記P-型半導体ピラー(1p、1’p)は、第2金属パッド(3p、3’p)にオーミック接触していない請求項5に記載のフォトニクデバイス(DP,PD’)。
【請求項7】
前記封入材料は、空気、二酸化ケイ素、窒化シリコン、または酸化アルミニウムを含む請求項1乃至6のいずれか一項に記載のフォトニクデバイス(DP,PD’)。
【請求項8】
前記P-型ピラーは、異なる幅を有し、または異なる間隔で横方向にお互いに分離されている請求項1乃至7のいずれか一項に記載のフォトニクデバイス(DP,PD’)。
【請求項9】
P-型半導体ピラー(1p、1’p)は、前記活性領域(QW)の横方向中央に沿って配置される請求項1乃至8のいずれか一項に記載のフォトニクデバイス(DP,PD’)。
【請求項10】
前記P-型半導体ピラー(1p、1’p)は、1ミクロン未満の高さを有する請求項1乃至9のいずれか一項に記載のフォトニクデバイス(DP,PD’)。
【請求項11】
前記活性領域(QW)は、0.5から5ミクロンの間の幅を有する請求項1乃至10のいずれか一項に記載のフォトニクデバイス(DP,PD’)。
【請求項12】
前記活性領域(QW)は、2つのP-型半導体ピラー(1p、1’p)の間に配置される損傷ゾーンを含む請求項1乃至11のいずれか一項に記載のフォトニクデバイス(DP,PD’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、光を放出できる半導体材料の特性と、論理および/またはアナログ機能を実現する集積回路で従来使用される半導体材料の特性とを使用する集積光学素子に関する。本発明は、より具体的に導波管における光学モードを含む光放射を確立することを目的とするフォトニックデバイスに関する。それは、特に、シリコン上の異種のレーザーであってもよい。
【背景技術】
【0002】
光学送受信機は、一般的に(レーザー、変調器、フォトダイオードのような)アクティブ光デバイスと、選択的に電子回路により補完される(導波管、光学フィルターのような)パッシブ光デバイスとにより構成される。これらのブロックは、一般的に集積電子回路の製造に用いられる技術と材料を使用して、フォトニックデバイスに集積することができる。
【0003】
このようなフォトニクデバイスにおいて、そして、それ自体でよく知られているように、III-V材料の積層によって形成される活性領域は、レーザーの光増幅媒体を形成する。この活性領域は、少なくとも一つの量子井戸、量子ドットまたは量子ボックス、または複数のそのような井戸、ドットまたはボックスを含むことができる。それは、InP、AsGa、InGaAlAs、InGaAsP、InAsP、InAsの非限定的なリストから選択された材料から作られる。
【0004】
この活性領域は、N-型半導体層とP-型半導体層との間に挟まれ配置される。これらの層は、典型的にInP、またはAsGaに基づいて活性領域に電流を循環させ、光を発生させるために増幅媒体を電気的にポンプすることができる。活性領域に電荷を注入、および抽出し、このポンピングを可能にするために、導電性金属パッドを、それぞれP-型、およびN-型半導体層にオーミック接触させる。これらのパッドは、電気的相互接続トラックにも電気的に接続されており、これらのトラックは電荷をデバイス内で循環させることができる。
【0005】
活性領域は、例えばシリコンからなる導波管の部分に沿って配置され、「ハイブリッド部分」と呼ばれる。このような配置で生成される光学モードは、部分的に活性領域と導波管に位置するため、「ハイブリッド」と呼ばれる。導波管は、生成されたモードの伝播を可能にするために、ハイブリッド部分の少なくとも片側に広がる。非特許文献1は、光学モードが活性領域の電流注入ゾーンと重なるほど増幅率が大きくなるという点を想起させる。
【0006】
このレーザー効果を許容するため、フォトニックデバイスは光帰還構造も含み、増幅媒体に共振キャビティを形成することが可能である。この構造は、分布反射器、例えば活性領域、または好ましくは導波管に配置されるブラッグ格子、によって形成することができる。
【0007】
一般に、私たちは選択された応用分野に有用な波長を有する光放射に関心がある。したがって、電気通信分野では、このような波長は典型的に1200から1600nmの間である。先ほど提示したフォトニックデバイスのいくつかの要素は、選択された波長範囲で放射を放出するように構成されている。
【0008】
図1は先行技術に応じたフォトニックデバイスの実施形態を示す。薄層DLには、図示しない支持体上に、シリコンからなる導波管2が形成されている。後者は、図1の座標系(X、Y、Z)における主方向Xの平面内で縦方向に広がる。
【0009】
導波管は、縁に輪郭(つまり、誘導光の伝播の主方向に垂直な平面におけるその輪郭)を有する。したがって、それは、(Y方向に)広がる横方向寸法を有するリボン2aと、横方向寸法が小さく、このリボン2aの下に載置され、このリボン2aを中央とするリブ2bから構成される。リボン2aとリブ2bの厚さ(Z方向)はそれぞれ100nmのオーダーであり、典型的に50から500nmの間である。導波管2を覆うようにして、N-型半導体層1nが薄層DL上に載置される。導波管2とN-型半導体層1nとの間に、電気絶縁体、例えば酸化シリコン層を設けてもよい。この層1nは100nmのオーダーの厚さを有する。
【0010】
N-型半導体層1n上には活性領域QWが存在し、その上にP-型半導体層1pが載置される。このアセンブリは、N-型層1nに接触して、導波管2のハイブリッド部分2hに沿って、特に導波管2のリブ2bに沿って配置される。導波管のハイブリッド部分は、例えば、図1に示す導波管2の横方向の凹凸形状のように、デバイスの光帰還構造を画定するブラッグ格子の画定のために構成される。
【0011】
活性領域QW、およびP-型半導体層1pによって形成されるアセンブリは、N-型半導体層1nの横方向寸法よりも小さい横方向寸法を有するスラブの形状をとり、したがって、活性領域QWの両側に配置されたこの層1nの自由部分は、活性領域QWに覆われておらず、P-型半導体層1pにも覆われていない。活性領域QWは、200nmのオーダーの比較的薄い厚さを有し、導波管のハイブリッド部分2hに沿って広がり、500ミクロンのオーダーの長手方向距離を有してもよい。
【0012】
N-型半導体層1nの自由部分には、金属パッドがこの層とオーミック接触で配置されており、ここでは2つのビア3n、3'nが活性領域QWの両側に配置されている。この金属ビア3n、3'nは、N-型半導体層1nとアセンブリの上に突出した電気相互接続トラックICとの間の電気的接続を提供する。同様に、他のビアの形状の金属パッド3pは、この層と別の相互接続トラックICとの間の電気的接続を確保するために、P-型半導体層1pとオーミック接触している(これらのトラックは、このビューの可読性を維持するために、図1の上面図には示されてない)。
【0013】
電流がP-型半導体層1pを経て活性領域QW注入されるときに生成される光学モードMが図1の断面に点線で示されている。このモードは、導波管が画定される平面(X、Y)に垂直な方向に非常に大きな範囲を有することが観察される。このモードがデバイスの金属元素、特に第2金属パッド3p、を妨害することを防止するために、P-型層1pの厚さは特に大きく、1ミクロンより大きく、最大数ミクロンに達する。このようにして、金属パッド3n、3'n、3pは、活性領域QWから十分に離間され、そしてパッドを構成する金属における光放射の吸収が回避される。
【0014】
しかしながら、この構成は有利でない。それは、まず、P-型半導体層1pを形成する著しい厚さの材料を必要とし、これはフォトニックデバイスの製造中には好ましくない。実際、この著しい厚さのエッチングは、長く、そして高い表面トポロジーを生成し、残りの製造作業、特に、金属パッドの形成において問題である。さらに、典型的にInPで形成されるP-型半導体層1pは、例えば,約2E18at/cm3で亜鉛がドープされた、(特に、光通信の分野における有用な波長の範囲において)特に-40から-70dB/cmのオーダーの、高い吸収率を有する。この係数は、例えば2E18/cm3で硫黄がドープされた、-15dB/cmのオーダーのInP NをもととするN-型半導体層及び-2dB/cmのオーダーのシリコンと比較されるべきでる。
【0015】
このように、図1に示すフォトニックデバイスのアーキテクチャは、一方では生成された放射がP-型半導体層1pで多く吸収され、また、他方では平坦な表面を提供することを目的とする場合にはその製造が困難であるため、最適ではない。
【0016】
これを解決するために、前述の非特許文献では、Y方向に沿って、横方向寸法に広がり、この方向に発生する光学モードを広げ、また導波管2に画定された平面に垂直なZ方向に光学モードを平坦化することを可能にする活性領域QWとP-型半導体層1pを提供することを提案する。電流の注入と電気的ポンピングが光学モードと重なるようにするために、この解決策は、活性領域QWとP-型半導体層1pとの間に配置された横方向遮断層の存在を必要とする。したがって、電流注入は、遮断層によって横方向に遮断されるため、構造の中央にある。この方法で、光放射は、金属パッドを形成する金属には広がないモードを有する。この方法の短所は、横方向遮断層を覆うP-型半導体層を形成するためにエピタキシーが必要なことである。このステップは非常に高温で実行され、活性領域QWに、その劣化を起こす、応力が発生する。
【0017】
本発明は、強制的に厚いP-型層の存在によってもたらされる問題を改善するために、先行技術に対する代案的な解決策を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許第8110823号明細書
【非特許文献】
【0019】
【文献】Seifried et al., “Monolithically Integrated CMOS-Compatible III-V on Silicon Lasers,” in IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics, vol. 24, no. 6, pp. 1-9, Nov.-Dec. 2018, Art no. 8200709
【発明の概要】
【0020】
これらの目的の1つを達成することを目指して、本発明の主題は、導波管における光学モードを含む光放射を提供するフォトニックデバイスであって、
光学モードの伝播の主方向に沿って平面内に広がる導波管と、
導波管を覆うように配置されたN-型半導体層と、
III-V材料からなる堆積層で形成された活性領域であって、活性領域は、導波管の一部分に沿って、N-型層の一部分に配置され、および接触されており、N-型層の他の部分は、自由部分と呼ばれ、活性領域と接触していないことと、
活性領域に配置され、および接触される複数のP-型半導体ピラーであって、P-型半導体材料は第1光学指数を有し、P-型ピラーは第1より低い第2光学指数を有する封入材料によって互いに分離されていることと、
N-型層の自由部分にオーミック接触する少なくとも一つの第1金属パッドとP-型ピラーにオーミック接触する少なくとも一つの第2金属パッドと
を備える。
【0021】
低い光学指数の封入材料によって、互いに横方向に分離された複数のピラーの形でP-型層を作成することにより、フォトニックデバイスによって生成された光学モードを整形することができ、導波管が存在する平面に垂直なZ方向に光学モードが広がることを防止する(またはこの拡散を制限する)ことができ、強く吸収される金属パッドに重なっている。同時に、遮断層を必要とせずに、先行技術のP-型層の厚さと比較して、P-型ピラーの厚さを制限することが可能である。これにより、フォトニックデバイスの効率が向上される。
【0022】
単独でまたは任意の技術的に実現可能な組み合わせでとられる、本発明の他の有利で非限定的な特徴によれば、
導波管は、光帰還構造を形成するように構成され、
光帰還構造は、横方向に凸凹形状、または縦方向に凸凹形状のブラッグ格子であり、
N-型層と導波管の間に配置され、誘電体材料からなるアセンブリ層をさらに備えるフォトニクデバイスと、
少なくとも3つのP-型ピラーを含むフォトニクデバイスと、
少なくとも一つのP-型ピラーは、第2金属パッドにオーミック接触していないことと、
封入材料は、空気、二酸化ケイ素、窒化シリコン、または酸化アルミニウムを含むことと、
P-型ピラーは、異なる幅を有し、または異なる間隔で横方向にお互いに分離されていることと、
P-型ピラーは、活性領域の横方向中央ゾーンに沿って配置されることと、
P-型ピラーは、1ミクロン未満の高さを有することと、
活性領域は、0.5から5ミクロンの間の幅を有することと、
活性領域の両側に配置される2つの第1金属パッドをさらに備えるフォトニクデバイスと、
活性領域は、2つのP-型ピラーの間に配置される損傷ゾーンを含むことで実行される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図を参照して、以下の本発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
図1】先行技術のフォトニクデバイスを示す図である。
図2】本発明によるフォトニックデバイスDPの第1実施形態を示す図である。
図3a】本発明によるフォトニックデバイスの利点を明白にするフォトニックデバイスの3つのシミュレートされたアーキテクチャを示す図である。
図3b】本発明によるフォトニックデバイスの利点を明白にするフォトニックデバイスの3つのシミュレートされたアーキテクチャを示す図である。
図3c】本発明によるフォトニックデバイスの利点を明白にするフォトニックデバイスの3つのシミュレートされたアーキテクチャを示す図である。
図4】P-型半導体材料の厚さに応じて、3つのシミュレートされたアーキテクチャの金属パッドでの吸収損失を示す図である。
図5】本発明の調製の枠組み内で実行されたシミュレーション結果の要約を示す図である。
図6】本発明によるフォトニックデバイスの他の実施形態を示す図である。
図7】本発明によるフォトニックデバイスの他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明を簡略化するために、同一の要素、または先行技術または記載されているフォトニックデバイスの異なる実施形態において同一の機能を果たす要素に対して、同一の参照符号が使用される。
【0025】
図2は、本明細書によるフォトニックデバイスDPの第1の実施形態を示す。
【0026】
シリコンオンインシュレータ型の基板であってもよい、基板Sには、この基板Sの薄層DLに配置されたシリコン導波管2が存在する。導波管2は、フォトニックデバイス1の他の部品、例えば変調器に光を送るために、主方向(図2のX方向)に沿って長手方向に広がる。図2の例では、導波管2はリボン2aで構成されている。その最大幅(Y方向に沿って、主方向に横断)は、2から500ミクロンの間になり得る。図示の導波管は、また、リボン2aの横方向の中央にあるリブ2bで構成されており、このリボン2aの一端から他端まで主方向に広がる。リブ2bは、0.05から20ミクロンの間の幅を有することができる。導波管は、5nmから5ミクロンの間の(Z方向に沿った)厚さを有する。
【0027】
この例では、リボン2aとリブ2bの組み合わせは輪郭がエッジである導波管2を構成する。光帰還構造を形成する、それ自体は周知である、構造になっている。図2の上面図から分かるように、ここでの導波管2は、横方向の凹凸形状を有するブラッグ格子の形状で構成されるが、その格子は縦方向の凹凸形状を備えていてもよく、光帰還構造をフォトニックデバイスDPの光増幅媒体に統合することである。
【0028】
導波管2は、誘電体材料、典型的には二酸化ケイ素に埋め込まれており、導波管2内の光学的拘束は導波管2のシリコンとシリコンよりも低い光学指数の誘電体材料との間の光学指数の差によって得られる。誘電体と導波管2から構成されるアセンブリは、基板Sの薄層DLを形成する。
【0029】
当然、本発明は、図2に示す形状の導波管2に限定されるものでなく、ここで例示したものとは異なる輪郭を有していてもよい。また、基板Sがシリコンオンインシュレータタイプである必要もないが、そのような基板を用いることにより、導波管2の製造が大幅に容易にする。導波管2はシリコンからなる必要もない。例えば、導波管2は、表面酸化物層を有するシリコン基板上に堆積した窒化シリコンから形成され、窒化物導波管は、堆積した酸化シリコン層によって封入されていると考えることができる。したがって、導波管を誘電体材料によって完全に封入する必要はなく、例えば特許文献1のように、フォトニックデバイスDPが補充される際に、薄層DLは構造内のキャビティの形成につながる表面トポロジーを有することができる。
【0030】
図2の実施形態の説明を続けると、導波管2は、N-型半導体材料1nとP-型半導体材料1pの層の間に挟まれた活性領域QWからなる放出構造によって覆われる。
【0031】
更に具体的には、図2のフォトニックデバイスは、導波管2と重なるように配置された、すなわち、少なくともその長さの一部にわたってこの導波管の両側に横方向に広がるように配置されたN-型半導体層1nを備える。それは、典型的には(Y方向に)20から200ミクロンの幅を有する。N-型半導体層は、硫黄がドープされたInPから形成することができ、導波管2がシリコンから作られる場合、一般に50から500nmの間の厚さを有することができる。このN-型半導体層1nは、導波管2に、より一般的には薄層DLに直接接触することができ、または図2の場合と同様に、薄層DLとN-型半導体層1nとの間にアセンブリ層BLを設けてもよい。このアセンブリ層は、数ナノメートルから150nmの間の厚さで薄いことが好ましい。
【0032】
簡潔にするために、本明細書の残りでは、N-型半導体層は「N-型層」という表現で示し、この層は半導体材料からなることが理解される。
【0033】
N-型層1n上には、III-V材料の堆積から形成された活性領域QWが存在する。活性領域QWは、ハイブリッド部分と呼ばれる導波管2の縦方向部分2hに沿って、N-型層1nの一部のみに接触して配置される。したがって、N-型層1nのいわゆる「自由」部分は活性層QWに接触せず、この自由部分は、ここで活性領域QWの両側に横方向に配置されており、オーミック接触を形成するために使用することができる。
【0034】
活性領域QWは、一般に10から500nm、典型的には50nmのオーダーの厚さであって、典型的には100から2,000ミクロンの長さにわたって導波管2のハイブリッド部分2hに沿って広がる。それは、0.5から30ミクロンの間、例えば5ミクロンに等しい幅を有する。
【0035】
本明細書によるフォトニックデバイスDPは、またN型層1nの自由部分と接触する少なくとも1つの第1の金属パッドを備える。図示の例では、金属材料、例えばタングステン、で満たされた2つのビア3n、3'nが、活性層QWの両側に配置される。これらの金属ビアは、N-型層1nとフォトニックデバイスDPの相互接続トラックICとの間の電気的接続を確保する(このビューの可読性を維持するために図2の上面図には示されていない)。
【0036】
最後に、図2のフォトニックデバイスDPは、活性領域QW上に配置され、かつ、これと接触する、P-型半導体材料1pからなる複数のピラーを備える。これらのピラーは、本明細書の残りでは「P-型ピラー」という表現で示され、いかなる場合においても半導体材料から作られているものと理解される。したがって、この図は、活性領域QWの第1側に沿って配置されたP-ドープInPから作成された第1のP-型ピラー1pと、この領域の他側に沿って配置された第2のP-型ピラー1'pを示す。これらのピラー1p、1'pの下面は活性領域QWと接触し、上面はそれぞれ第2の金属パッド3p、3'pとオーミック接触する。これらのP-型ピラー1p、1'pは、ピラーが形成される半導体材料よりも低い光学指数を有する封入材料によって互いに分離される。したがって、それは、酸化シリコン、窒化ケイ素、ベンゾシクロブテンに基づくポリマー誘電体、さらには空気をもとにした誘電体材料であってもよい。いかなる場合において、P-型ピラーを形成する半導体材料は第1光学指数を有し、P-型ピラーを分離する封入材料は第1の指数よりも低い第2の指数を有する。
【0037】
このようなP-型ピラーの配置により、フォトニックデバイスによって生成された光学モードを整形することができ、導波管2が存在する平面に垂直なZ方向に光学モードが広がることを防止する(またはこの拡散を制限する)ことができる。
【0038】
P-型ピラー1pおよび1'pは、活性領域QWの全長にわたって、または少なくともこの長さの大部分にわたって広がる。各ピラーの幅Wbおよび各ピラー1p、1'p間の間隔eは、当然、活性層QWの幅およびピラーの数に依存する。ピラーの幅または2つのピラー間の間隔は、すべて同じである必要はない。例えば、その上に位置する活性領域QWの幅に応じて、ピラーの幅Wbが0.5~3ミクロンのであってもよく、2つのピラー間の間隔eは0.1~2ミクロンであってもよい。
【0039】
前述のように、N-型層1n、活性領域QW、およびP-型ピラー1pは、典型的には酸化シリコンである封入材料で埋め込まれている。第1および第2の金属パッドは、アセンブリに突出される電気的相互接続トラックICに多様な素子を電気的に接続するために、この材料内に配置される。
【0040】
図2に示すフォトニックデバイスDPによって、活性層QWおよび導波管2においてハイブリッド方式で生成される光学モードMは、この図の断面上の点線で示す。複数のP-型ピラー1p、1'pは、この光学モードMを整形し、その結果、図2のY方向に特権的に横方向に広がり、活性領域QWが存在する平面に対して垂直なZ方向に広がることを防止することができる。これにより、この光学モードが金属ゾーン、特にP-型ピラー1p、1'pとオーミック接触している金属パッド3p、3'p、を覆うリスクが低減される。
【0041】
一般に、P-型ピラーの数、これらのピラーの幅Wb、および2つのP-型ピラー間の間隔eは、導波管2の幅に適合される。これらは、ハイブリッド光学モードが優先的に横方向に広がるように形状を作成するように選択される。
【0042】
したがって、これらのピラー1p、1'pの高さを、先行技術のデバイスで遭遇する1または2ミクロン以上の厚さと比較して低減することができる。これらのピラーを形成するP-型半導体材料は特に高い光吸収係数を有するため、この特徴は特に有利である。この構造にはいかなる遮断層がないため、これらのピラーの形成が容易であり、エピタキシー回復ステップを必要とせず、平坦な表面を有するフォトニクデバイスを提供することが容易である。本明細書の次節に示す結果からも明らかなように、金属パッドの吸収損失を0.1dB未満に抑えながら、高さ1ミクロン未満、さらには500nm、または300nmのP-型ピラー1p、1'pを形成することができる。
【0043】
先行技術の連続するP-型層を、低い光学指数の封入材料で分離した複数のP-型ピラー1p、1'pに置き換えて得られる利点を十分に示すため、出願人は図3aから3cに示すアーキテクチャのいくつかの構造DP1、DP2、DP3のシミュレーションを進行した。
【0044】
図3aの第1の構造DP1は、InPに基づいて形成された先行技術のフォトニックデバイスに対応する。活性層QWは、3ミクロンの幅にわたって広がる。P-型InP1pの連続層は、活性層上に中心があり、導波管2のリブに沿った、2ミクロンの幅を有する。この層は、厚さ1ミクロンで、500nmの金属パッド3pで覆われている。アセンブリ層BLは、N-型層1nと導波管2との間に配置される。
【0045】
図3bの第2の構造DP2は、本発明によるものである。活性領域QWは幅2ミクロンで、導波管2のリブが突出されている。また、この第2構造DP2には幅Wbが0.5ミクロン、および0.5ミクロンの距離eで離間されたP-ドープInPからなる2つのP-型ピラー1pが設けられている。P-型ピラーはそれぞれ活性層QWの縁から0.25ミクロンに配置される。この第2の構造の2つのP-型ピラー1pは、500nmの高さを有する。
【0046】
図3cの第3の構造DP3も本発明によるものであり、第2の構造DP2と同様であるが、今回は、それぞれ0.25ミクロンの幅を有するP-ドープInPから作られた4つのP-型ピラーが設けられている。それらは、互いに0.25ミクロンの距離eだけ離間している。この第3の構造DP3の4つのP-型ピラーは、250nmの高さを有する。
【0047】
これらの各構造について、生成された光学モードMと、それらを構成する様々な要素(導波管2、活性領域QW、P-型層またはピラーIp)との重なりをシミュレーションによって測定した。以下の表に得られた結果をまとめる。
【0048】
【表1】
【0049】
封入材料によって分離されたピラーをデバイスのアーキテクチャに導入することによって、導波管2および活性領域QWおけるモードMの増加部分を限定できることが観察される。同時に、第1の構造DP1の連続層を形成するP-型半導体材料、または第2及び第3の構造PD2、DP3のP-型ピラーにおけるこの放射の範囲は制限される。P-ドープInPは50dB/cmのオーダーの光放射の吸収係数を有し、活性領域QWがInNから形成された場合、15dB/cmのオーダーの吸収係数を有し、シリコン導波管は2dB/cmのオーダーの有することを想起する。したがって、P-型半導体材料で生成される放射の範囲は、この材料がピラーの形状で構成される場合に観察されるように、制限することが非常に有利である。
【0050】
第2シリーズのシミュレーションでは、3つの構造DP1、DP2、DP3のそれぞれについて、P-ドープされたInPピラー1pの高さを変化させた。P-ドープされた半導体材料に突出された金属パッド3pにおける吸収損失をこの厚さの関数として評価した。図4のグラフにこれらの結果を示す。第1の構造DP1のピラー1p、または第2および第3の構造DP2、DP3のP-型ピラー1pを形成するP-型半導体材料の厚さは、nm単位、このグラフのx-軸に沿って配置されている。y-軸は、これらの構造の金属パッド3pにおける吸収損失(dB単位)を示す。このグラフでは、これらの損失を第1のDP1構造のような従来の構造で0.1dB未満に低減するためには、先行技術の紹介で報告したように、P-型層1pに対して1ミクロン以上の厚さを提供する必要があることが観察される。本発明による構造DP2、DP3の場合、第2の構造DP2のように2つのP-型ピラー1pを設けると、この半導体材料の厚さを650nm未満に減少することができ、第3構造DP3のようにP-型ピラー1pを4つ設けた場合、300nm未満に減少することができる。
【0051】
最後に、図5は、図3aから3bで示す3つの構造DP1、DP2、DP3のそれぞれについて遂行し、比較したその吸収による損失のシミュレーション結果の要約を示している。この図5に見られるように、各構造DP1、DP2、DP3は、金属パッド3pでの吸収による損失を制限するのに十分な厚さのP-型半導体材料を有しており、これらの損失はこれらの各構造について制限されており、1dB/cmをはるかに下回る。生成された光学モードが比較的厚いP-型材料に広く広がる第1の構造DP1の場合、この材料における吸収損失は10dB/cmに達する。第2および第3の構造DP2、DP3において、ピラー1pにおけるP-型半導体材料の光学モードの拡散および厚さの減少が、この材料の吸収損失を5dB/cm未満に制限される場合はそうではない。
【0052】
この図5に示される総損失を観察すると、本発明の完全な利点が評価される。
【0053】
本明細書の範囲を逸脱することなく、図2に示す実施形態に対して多くの変更を加えることができる。したがって、シミュレーション結果の提示に関連してすでに述べたように、2つ以上のP-型ピラー1p、1'pを提供することが有利であり得る。したがって、偶数または奇数、例えば、3、4、5、またはそれ以上の任意の数のP-型ピラー1pを提供することができる。実質的に活性領域QWの、Y方向に沿って、中央にP-型ピラーを配置することが有利であり得る。これは、ピラー内の熱伝導によって熱の排出を促進し、この熱は活性領域QWの中央ゾーンで顕著に発生する。これは、例えば、奇数のP-型ピラー1pを選択することによって達成することができ、そして、そのピラーの1つは、この中央ゾーンに沿って配置される。この構成は図7の例に示されているものであるが、当然、他の構成も可能である。
【0054】
前述したように、そのピラーは可変幅Wbとそれらの間の間隔eを有することができる。少なくとも3つのP-型ピラー1pが設けられる場合、複数のこれらのピラーのみが少なくとも1つの第2金属パッドと電気的に接触し、その残りのP-型ピラー1pは相互接続トラックICに電気的に接続しないようにすることもできる。封入材料に埋め込まれた半導体材料からなる電気的に接続されていないピラーを備えることによって、光学モードMを閉じ込め、横方向に広がるように整形することができる。
【0055】
したがって、図6は4つのP-型ピラー1pを有するフォトニクデバイスDP'の断面図を示す。外側のP-型ピラーは第2金属パッド3pに接続されていないため、その相互接続トラックICに接続されていない。中央のP-型ピラーを分離する距離eは、外側のピラーを中央のピラーから分離する距離e'より大きい。
【0056】
一般に、通常のシミュレーション手段を使用して、複数のP-型ピラーの幾何学的パラメータ、それらの数、およびそれらの相対位置を決定して、光学モードに適切な形状を与えることができる。
【0057】
図6に示すフォトニックデバイスDP'の場合のように、導波管2を図2の配置に対して反転させることも可能である。そのような構成では、リボン2aはN-型層1nとリプ2bの間に配置される。図6のそのフォトニクデバイスDP'のアセンブリ層BLは任意である。
【0058】
光学モードの拘束を助け、主に横方向に拡散するように整形するために、活性領域QWの一部、特にP型ピラー1pによって突出されていないこの領域QWの部分、に損傷を与え、それを光学的に不活性にすることができる。活性領域QWの結晶構造に対するこの損傷は、シリコンのような重い種を注入することによって達成することができる。
【0059】
前述した多様な実施形態によるフォトニクデバイスDP、DP'の製造方法は先行技術の方法と非常に類似している。
【0060】
導波管2はエッチング、蒸着、酸化などによって、専ら従来の方法にて、まず基板内に形成される。このステップは、導波管2を開始基板から基板Sに移し、フォトニクデバイスを形成することを含むことができる。あるいは、この基板Sに直接導波管2を形成することもできる。
【0061】
導波管2を覆うラベルは、この導波管2が存在する基板S上に移され、ラベルはN-型半導体層、活性層、およびP-型半導体層によって形成される積層からなる。このラベルは、フォトニクデバイスの放出構造を形成することを目的としている。したがって、P-型半導体層は、対象のフォトニクデバイスのP-型ピラーの厚さと実質的に等しい厚さ、例えば1ミクロン未満、または500nm未満の厚さを有する。一般に、ラベルは2ミクロン未満の薄い厚さを有する。
【0062】
ラベルは、これらの積層された層のスラブを形成し、導波管2と重なる基板S上に載置され、N-型半導体層は導波管2の側に載置される。この導波管2とN-型半導体層との間に載置されるアセンブリ層BLを設けることができる。
【0063】
その後の局所的なエッチングステップで、このラベルは、放出構造を正確に画定するために処理される。このために、P-型半導体層の一部は、P型ピラー1pの形成および活性層の露出のために、除去される。この層の側面部は、活性領域QWを画定およびN-型半導体層の少なくとも1つの自由部分の露出のために、除去される。この自由部分は、N-型層をその最終寸法で形成するために、部分的に除去することもできる。
【0064】
その後、アセンブリは、封入材料を蒸着することによって封入され、例えば、機械化学研磨ステップを使用して、平坦にすることができる。ラベルは、最初は比較的薄い厚さを有するため、局所的なエッチングステップは迅速に実行され、これらのステップの後の表面トポロジーはより小さく、放出構造を覆うのに必要な封入材料の厚さは減少し、最終面を平坦にすることを目的とする研磨ステップが容易であることに留意する。
【0065】
フォトニックデバイスの製造のための方法の補足的ステップにおいて、N-型層1nの自由部分と少なくとも一部のP型ピラー1pにオーミック接触する第1および第2の金属パッドを形成するために、金属材料で充填された封入材料にエッチングによって凹みを形成する。
【0066】
当然、本発明は、記載された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を逸脱することなく、変形実施形態を追加することが可能である。
【0067】
したがって、ここでは、より低い光学指数を有する封入材料によって互いに完全に分離されたP-型半導体ピラーが示されているが、常にそうである必要はない。したがって、少なくともいくつかのP-型ピラーを、それらの高さの一部のみにわたって、それらの足元でピラーに隣接するピラーに固定することができる。いずれの場合も、ラベルのP-型半導体層は本明細書で詳述するように、生成される光学モードの形状が横方向に特権的に広がるように導波管上に構築される。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7