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特許7600365推定装置、推定システム、推定方法、及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】推定装置、推定システム、推定方法、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/41 20060101AFI20241209BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20241209BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G01N21/41 Z
G01N21/59 Z
G02B21/36
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2023506591
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2021010836
(87)【国際公開番号】W WO2022195765
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】100123962
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 圭介
(72)【発明者】
【氏名】渡部 智史
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-088342(JP,A)
【文献】国際公開第2020/013325(WO,A1)
【文献】特開2015-219502(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0182788(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0030742(US,A1)
【文献】特開2012-117999(JP,A)
【文献】HABAZA, M. et al.,Rapid 3D Refractive-Index Imaging of Live Cells in Suspension without Labeling Using Dielectrophoret,Advanced Science,2016年10月21日,Vol. 4, No. 1600205,pp. 1-9,doi: 10.1002/advs.201600205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
G03H 1/00- 5/00
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリと、プロセッサと、を備え、
前記メモリは、第1波面情報と第2波面情報を記憶し、
前記第1波面情報は、物体を通過した第1照明光に基づいて取得した波面の情報であり、
前記第2波面情報は、前記物体を通過した第2照明光に基づいて取得した波面の情報であり、
前記第2照明光における最大強度の波長は、前記第1照明光における最大強度の波長よりも短波長側に位置し、
前記プロセッサは、前記物体の3次元光学特性を推定する推定処理を実行し、
前記3次元光学特性は、屈折率分布又は吸収率分布であり、
前記推定処理は、前記第1波面情報と前記第2波面情報の両方を用い
前記推定処理は、前記第1波面情報を拘束条件とする第1最適化処理と、
前記第2波面情報を拘束条件とする第2最適化処理と、を含み、
前記プロセッサは、前記第1最適化処理を複数回実行し、
前記プロセッサは、前記第2最適化処理を複数回実行することを特徴とする推定装置。
【請求項2】
前記メモリは、複数の前記第1波面情報と複数の前記第2波面情報を記憶し、
複数の前記第1波面情報では、前記第1照明光の前記物体に対する入射角度が、前記第1波面情報毎に異なり、
複数の前記第2波面情報では、前記第2照明光の前記物体に対する入射角度が、前記第2波面情報毎に異なり、
前記推定処理は、複数の前記第1波面情報と複数の前記第2波面情報の両方を用いることを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
記プロセッサは、前記第1最適化処理の連続実行によって更新された前記3次元光学特性に対して、前記第2最適化処理を連続実行することを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記3次元光学特性に設定された初期値に対して、前記第1最適化処理を連続で実行することを特徴とする請求項3に記載の推定装置。
【請求項5】
記プロセッサは、前記第1最適化処理と前記第2最適化処理とからなる複合処理を、2回以上実行し、
前記複合処理では、前記第1最適化処理が最初に実行され、
前記複合処理では、前記第2最適化処理が実行された後に、前記第1最適化処理は実行されないことを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記3次元光学特性に設定された初期値に対して、前記複合処理を実行することを特徴とする請求項5に記載の推定装置。
【請求項7】
前記複合処理では、前記第1最適化処理の実行回数が前記第2最適化処理の実行回数以上になる制御がされることを特徴とする請求項5に記載の推定装置。
【請求項8】
連続する前記複合処理において、前記制御が継続することを特徴とする請求項7に記載の推定装置。
【請求項9】
前記複合処理が所定回数実行されたあと、前記複合処理において、前記第2最適化処理の実行回数と前記第1最適化処理の実行回数との差を減らす制御がされることを特徴とする請求項8に記載の推定装置。
【請求項10】
前記第1照明光は、赤外領域の光であり、
前記第2照明光は、可視領域の光であることを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項11】
前記第1照明光は、赤外領域の光であり、
以下の条件式(A)を満足することを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
2×λ2<λ1 (A)
ここで、
λ1は、前記第1照明光の波長、
λ2は、前記第2照明光の波長、
である。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の推定装置と、
前記第1照明光と前記第2照明光を射出する光源ユニットと、
光検出器と、
前記物体を載置するステージと、
角度変更機構と、を備え、
前記ステージは、前記光源ユニットから前記光検出器まで間の光路上に配置され、
前記角度変更機構は、前記第1照明光の前記物体に対する入射角度と、前記第2照明光の前記物体への入射角度を変化させることを特徴とする推定システム。
【請求項13】
前記角度変更機構は、駆動装置と、回転部材と、を有し、
前記回転部材は、前記ステージを保持し、
前記回転部材の回転軸は、前記物体と交差すると共に、前記光路の光軸と直交することを特徴とする請求項12に記載の推定システム。
【請求項14】
前記角度変更機構は、駆動装置と、回転部材と、を有し、
前記回転部材は、反射面を有し、
前記回転部材の配置角度を変えることによって、前記反射面の向きが変化することを特徴とする請求項12に記載の推定システム。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか1項に記載の推定装置と、
前記第1照明光と前記第2照明光を射出する光源ユニットと、
前記物体を載置するステージと、
光検出器と、前記光検出器とは別の光検出器と、を備え、
前記ステージは、前記光源ユニットから前記光検出器まで間の光路上に配置され、
前記ステージは、前記光源ユニットから前記別の光検出器まで間の光路上に配置されることを特徴とする推定システム。
【請求項16】
前記光検出器は、前記第1照明光の波長帯域に対して第1閾値以上の感度を持ち、前記第2照明光の波長帯域に対して前記第1閾値以上の感度を持たず、
前記別の光検出器は、前記第2照明光の波長帯域に対して第2閾値以上の感度を持ち、前記第1照明光の波長帯域に対して前記第2閾値以上の感度を持たないことを特徴とする請求項15に記載の推定システム。
【請求項17】
前記光検出器と共に用いられる第1光学素子と、
前記別の光検出器と共に用いられる第2光学素子と、を備え、
前記第1光学素子は、前記第1照明光を透過し、前記第2照明光を遮光する特性を有し、
前記第2光学素子は、前記第2照明光を透過し、前記第1照明光を遮光する特性を有することを特徴とする請求項15に記載の推定システム。
【請求項18】
前記物体の光学像を形成する結像光学系と、
前記結像光学系の焦点位置と前記物体の位置との間隔を、前記結像光学系の光軸方向に変化させる駆動機構と、を有し、
前記第1照明光による照明と前記第2照明光による照明は、前記物体に対してパーシャルコヒーレント照明を形成していることを特徴とする請求項15から17のいずれか1項に記載の推定システム。
【請求項19】
請求項1から11のいずれか1項に記載の推定装置と、
前記第1照明光と前記第2照明光を射出する光源ユニットと、を備え、
前記光源ユニットは、照射角度が異なる複数の独立した光源で構成されており、
前記推定装置の前記プロセッサ若しくは前記プロセッサと異なるプロセッサが、前記光源に照明光を射出させるか否かを制御することで、前記第1照明光の前記物体に対する入射角度と、前記第2照明光の前記物体への入射角度を変化させることを特徴とする推定システム。
【請求項20】
請求項1から11のいずれか1項に記載の推定装置と、
前記第1照明光と前記第2照明光を射出する光源ユニットと、
前記物体の光学像を形成する結像光学系と、
前記物体の光学像から前記物体の画像を取得する光検出器と、
前記結像光学系の焦点位置と前記物体の位置との間隔を、前記結像光学系の光軸方向に変化させる駆動機構と、を有し、
前記第1照明光による照明と前記第2照明光による照明は、前記物体に対してパーシャルコヒーレント照明を形成していることを特徴とする推定システム。
【請求項21】
物体の3次元光学特性を推定する推定方法であって、
前記3次元光学特性は、屈折率分布又は吸収率分布であり、
第1波面情報は、前記物体を通過した第1照明光に基づいて取得した波面の情報であり、
第2波面情報は、前記物体を通過した第2照明光に基づいて取得した波面の情報であり、
前記第2照明光における最大強度の波長は、前記第1照明光における最大強度の波長よりも短波長側に位置し、
前記第1波面情報と前記第2波面情報の両方を用いて推定処理を実行し、
前記推定処理は、前記第1波面情報を拘束条件とする第1最適化処理と、前記第2波面情報を拘束条件とする第2最適化処理と、を含み、
前記第1最適化処理を複数回実行し、
前記第2最適化処理を複数回実行することを特徴とする推定方法
【請求項22】
メモリとプロセッサを備えたコンピュータに推定処理を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
第1波面情報は、物体を通過した第1照明光に基づいて取得した波面の情報であり、
第2波面情報は、前記物体を通過した第2照明光に基づいて取得した波面の情報であり、
前記第2照明光における最大強度の波長は、前記第1照明光における最大強度の波長よりも短波長側に位置し、
前記推定処理では、前記物体の3次元光学特性を推定し、
前記3次元光学特性は、屈折率分布又は吸収率分布であり、
前記プロセッサに、前記第1波面情報と前記第2波面情報を前記メモリから読み出させる処理と、
前記第1波面情報と前記第2波面情報の両方を用いて、前記推定処理を実行させ、
前記推定処理は、前記第1波面情報を拘束条件とする第1最適化処理と、前記第2波面情報を拘束条件とする第2最適化処理と、を含み、
前記プロセッサに、前記第1最適化処理を複数回実行させ、
前記プロセッサに、前記第2最適化処理を複数回実行させることを特徴とするプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、推定システム、推定方法、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
実際の物体を計算機上の物体モデルで再現する再構成手法がある。この再構成手法では、測定した物体の画像と計算した物体モデルの画像が一致するように、最適化手法で計算機上の物体モデルを変更していく。最終的に、物体の画像と物体モデルの画像が一致した時に、計算機上の物体モデルは実際の物体を再現している。
【0003】
非特許文献1に、物体の再構成を行う手法が提案されている。この手法では、LEDアレイが配置された推定装置が用いられている。LEDアレイは、照明光学系の瞳位置に配置されている。LEDの点灯位置を変えることで、標本に対して様々な角度で照明が照射される。各照射角度で標本の画像を取得するので、複数の標本の画像が取得される。
【0004】
物体の再構成によって、物体の3次元光学特性が得られる。3次元光学特性は、例えば、屈折率分布又は吸収率分布である。
【0005】
物体の3次元光学特性を高い精度と高い空間分解能で取得するためには、物体を高い精度と高い空間分解能で再構成する必要がある。
【0006】
高い精度で再構成した物体では、光軸と直交する方向と光軸と平行な方向の両方で、物体の3次元光学特性を、高い確度で取得することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】“3D intensity and phase imaging from light field measurements in an LED array microscope”, Optica, 2, 104-111 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
物体の厚みが大きい場合、非特許文献1では、物体を高い精度と高い空間分解能で再構成することが難しい。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、物体の厚みが大きい場合であっても、物体の3次元光学特性を高い精度と高い空間分解能で取得できる推定装置、推定システム、推定方法、及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る推定装置は、
メモリと、プロセッサと、を備え、
メモリは、第1波面情報と第2波面情報を記憶し、
第1波面情報は、物体を通過した第1照明光に基づいて取得した波面の情報であり、
第2波面情報は、物体を通過した第2照明光に基づいて取得した波面の情報であり、
第2照明光における最大強度の波長は、第1照明光における最大強度の波長よりも短波長側に位置し、
プロセッサは、物体の3次元光学特性を推定する推定処理を実行し、
3次元光学特性は、屈折率分布又は吸収率分布であり、
推定処理は、第1波面情報と第2波面情報の両方を用い
推定処理は、第1波面情報を拘束条件とする第1最適化処理と、第2波面情報を拘束条件とする第2最適化処理と、を含み、
プロセッサは、第1最適化処理を複数回実行し、
プロセッサは、第2最適化処理を複数回実行することを特徴とする。
【0011】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る推定システムは、
上述の推定装置と、
第1照明光と第2照明光を射出する光源ユニットと、
光検出器と、
物体を載置するステージと、
角度変更機構と、を備え、
ステージは、光源ユニットから光検出器まで間の光路上に配置され、
角度変更機構は、第1照明光の物体に対する入射角度と、第2照明光の物体への入射角度を変化させることを特徴とする。
本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る推定システムは、
上述の推定装置と、
物体を載置するステージと、
光検出器と、光検出器とは別の光検出器と、を備え、
ステージは、光源ユニットから光検出器まで間の光路上に配置され、
ステージは、光源ユニットから別の光検出器まで間の光路上に配置されることを特徴とする。
【0012】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る推定システムは、
上述の推定装置と、
第1照明光と第2照明光を射出する光源ユニットと、を備え、
光源ユニットは、照射角度が異なる複数の独立した光源で構成されており、
推定装置のプロセッサ若しくはプロセッサと異なるプロセッサが、光源に照明光を射出させるか否かを制御することで、第1照明光の物体に対する入射角度と、第2照明光の物体への入射角度を変化させることを特徴とする。
本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る推定システムは、
上述の推定装置と、
第1照明光と第2照明光を射出する光源ユニットと、
物体の光学像を形成する結像光学系と、
物体の光学像から物体の画像を取得する光検出器と、
結像光学系の焦点位置と物体の位置との間隔を、結像光学系の光軸方向に変化させる駆動機構と、を有し、
第1照明光による照明と第2照明光による照明は、物体に対してパーシャルコヒーレント照明を形成していることを特徴とする。
【0013】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る推定方法は、
物体の3次元光学特性を推定する推定方法であって、
3次元光学特性は、屈折率分布又は吸収率分布であり、
第1波面情報は、物体を通過した第1照明光に基づいて取得した波面の情報であり、
第2波面情報は、物体を通過した第2照明光に基づいて取得した波面の情報であり、
第2照明光における最大強度の波長は、第1照明光における最大強度の波長よりも短波長側に位置し、
第1波面情報と第2波面情報の両方を用いて推定処理を実行し、
推定処理は、第1波面情報を拘束条件とする第1最適化処理と、第2波面情報を拘束条件とする第2最適化処理と、を含み、
第1最適化処理を複数回実行し、
第2最適化処理を複数回実行することを特徴とする。
【0014】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る記録媒体は、
メモリとプロセッサを備えたコンピュータに推定処理を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
第1波面情報は、物体を通過した第1照明光に基づいて取得した波面の情報であり、
第2波面情報は、物体を通過した第2照明光に基づいて取得した波面の情報であり、
第2照明光における最大強度の波長は、第1照明光における最大強度の波長よりも短波長側に位置し、
推定処理では、物体の3次元光学特性を推定し、
3次元光学特性は、屈折率分布又は吸収率分布であり、
プロセッサに、第1波面情報と第2波面情報をメモリから読み出させる処理と、
第1波面情報と第2波面情報の両方を用いて、推定処理を実行させ、
推定処理は、第1波面情報を拘束条件とする第1最適化処理と、第2波面情報を拘束条件とする第2最適化処理と、を含み、
プロセッサに、第1最適化処理を複数回実行させ、
プロセッサに、第2最適化処理を複数回実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。

【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、物体の厚みが大きい場合であっても、物体の3次元光学特性を高い精度と高い空間分解能で取得できる推定装置、推定システム、推定方法、及び記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の推定装置を示す図である。
図2】第1の取得方法におけるフローチャートである。
図3】第1照明光が物体を通過する様子を示す図である。
図4】第2照明光が物体を通過する様子を示す図である。
図5】第2の取得方法におけるフローチャートである。
図6】第1の推定処理におけるフローチャートである。
図7】測定画像と推定画像を示す図である。
図8】推定波面情報の算出におけるフローチャートである。
図9】第2の推定処理におけるフローチャートである。
図10】本実施形態の推定システムを示す図である。
図11】本実施形態の推定システムを示す図である。
図12】照明光の切替え方法を示す図である。
図13】本実施形態の推定システムを示す図である。
図14】本実施形態の推定システムを示す図である。
図15】本実施形態の推定システムを示す図である。
図16】本実施形態の推定システムを示す図である。
図17】物体の画像を示す図である。
図18】物体の画像を示す図である。
図19】本実施形態の推定システムを示す図である。
図20】開口部材と物体の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施例の説明に先立ち、本発明のある態様にかかる実施形態の作用効果を説明する。なお、本実施形態の作用効果を具体的に説明するに際しては、具体的な例を示して説明することになる。しかし、後述する実施例の場合と同様に、それらの例示される態様はあくまでも本発明に含まれる態様のうちの一部に過ぎず、その態様には数多くのバリエーションが存在する。したがって、本発明は例示される態様に限定されるものではない。
【0018】
本実施形態の推定装置は、メモリと、プロセッサと、を備え、メモリは、第1波面情報と第2波面情報を記憶する。第1波面情報は、物体を通過した第1照明光に基づいて取得した波面の情報であり、第2波面情報は、物体を通過した第2照明光に基づいて取得した波面の情報である。第2照明光における最大強度の波長は、第1照明光における最大強度の波長よりも短波長側に位置する。プロセッサは、物体の3次元光学特性を推定する推定処理を実行し、3次元光学特性は、屈折率分布又は吸収率分布である。推定処理は、第1波面情報と第2波面情報の両方を用いる。
【0019】
図1は、本実施形態の推定装置を示す図である。推定装置1は、メモリ2と、プロセッサ3と、を備える。メモリ2は、第1波面情報と第2波面情報を記憶している。プロセッサ3は、物体の3次元光学特性を推定する推定処理を実行する。3次元光学特性は、屈折率分布又は吸収率分布である。推定処理には、第1波面情報と第2波面情報を用いることができる。
【0020】
プロセッサはASICやFPGAで実現されても良いし、CPUであっても良い。CPUでプロセッサを実現する場合、CPUはプログラムをメモリから読み出して処理を実行する。
【0021】
第1波面情報は、物体を通過した第1照明光に基づいて取得した波面の情報である。第2波面情報は、物体を通過した第2照明光に基づいて取得した波面の情報である。
【0022】
推定処理では、波面情報が用いられる。波面情報は多い方が良い。波面情報が多いと、物体の3次元光学特性を高い精度で推定することができる。
【0023】
波面情報は、物体を通過した照明光に基づいて取得した波面情報である。よって、波面情報の量は、照明光の波長の影響を受ける。
【0024】
波面情報は、振幅、位相、光強度、複素振幅の何れかを含む。波面情報は、結像面における波面の情報である。結像面とは、光検出器が光を検出する面であり、撮像面とも言う。
【0025】
波長が異なると、空間分解能(以下、「分解能」という)が異なる。この場合、波面情報を抽出するのに必要な点の数に差が生じる。そのため、光軸と直交する方向(以下、「横方向」という)と、光軸と平行な方向(以下、「軸方向」という)の両方で、波面情報の量に差が生じ得る。
【0026】
光軸は、例えば、波面情報を測定する装置の光軸である。検出光学系が備わっている装置の場合、光軸は、検出光学系の光軸である。
【0027】
また、波長が異なると、照明光の散乱の度合いが異なる。この場合、軸方向では、物体内部における照明光の到達位置に差が生じる。そのため、軸方向で、波面情報の量に差が生じる。
【0028】
また、物体の厚みが大きい場合には、照明光が物体を通過する際に生じる変化が大きくなり、位相情報が-π~πの範囲に折り畳まれるため、2πの整数倍の不確定値を持つようになり、波面情報の量が制限されることが起こり得る。物体を通過することによる位相の変動は波長に依存するため、この波面情報の量の制限も波長に依存する。
【0029】
波長が長い照明光では、波長が短い照明光と比べて、分解能が低い。よって、横方向と軸方向で、波長が短い照明光と比べて、取得できる波面情報の量が少ない。ただし、軸方向では、波長が短い照明光と比べて、物体内部の深い位置まで照明光が到達する。
【0030】
また、物体の厚みが大きい場合には、波長が長い照明光では、波長が短い照明光と比べて位相情報の2πの整数倍の不確定を生じにくく、波面情報の量の制限も受けにくい。よって、軸方向で、波長が短い照明光と比べて、取得できる波面情報の量が多い。
【0031】
軸方向では、分解能の面では波面情報の量が少ないが、照明光の到達位置の面では波面情報の量は多い。全体としては、波長が長い照明光では、軸方向における波面情報の量は、波長が短い照明光と比べて多い。
【0032】
波長が短い照明光では、波長が長い照明光と比べて、分解能が高い。よって、横方向と軸方向で、波長が長い照明光と比べて、取得できる波面情報の量が多い。ただし、軸方向では、波長が長い照明光と比べて、物体内部の深い位置まで照明光は到達しない。よって、軸方向で、波長が長い照明光と比べて、取得できる波面情報の量が少ない。
【0033】
軸方向では、分解能の面では波面情報の量が多いが、照明光の到達位置の面では波面情報の量は少ない。全体としては、波長が短い照明光では、軸方向における波面情報の量は、波長が長い照明光と比べて少ない。
【0034】
波面情報の取得に使用する照明光の波長が短くなるほど、軸方向における情報が少なくなる。そのため、軸方向では、推定の精度が低下する。
【0035】
軸方向における推定の精度の低下を防ぐには、波長が長い照明光で取得した波面情報を用いれば良い。ただし、照明光の波長が長くなると、回折角度が大きくなる。そのため、分解能が低下する。
【0036】
分解能の低下を防ぐには、光学系の開口数を大きくすれば良い。しかしながら、開口数を大きくすると、視野が狭くなると共に、作動距離が減少する。よって、物体の厚みが大きい場合、水平方向の推定に必要な波面情報を取得することが困難になる。
【0037】
よって、物体の厚みが大きい場合、1つの波長に基づいて取得した波面情報だけで物体の3次元光学特性の推定を行うと、物体の3次元光学特性を高い精度と高い空間分解能で取得することが難しくなる。
【0038】
推定装置1では、2つの波長に基づいて取得した波面情報で、物体の3次元光学特性の推定を行う。第1照明光の波長帯域は、第2照明光の波長帯域と異なる。更に、第2照明光における最大強度の波長は、第1照明光における最大強度の波長よりも短波長側に位置する。そのため、波面情報の量を増やすことができる。その結果、物体の3次元光学特性を高い精度と高い空間分解能で取得することができる。
【0039】
最大強度は、ピーク(極大値)の最大値である。ピークが複数の場合もある。具体的には、第1照明光の光源と第2照明光の光源には、例えば、レーザー、又は準単色光LEDを用いることができる。第1照明光と第2照明光には、光学演算上、単一波長の光、又は単色波長とみなせる波長の光を用いることができる。第1照明光と第2照明光には、波長帯域が狭い光を用いることができる。第1照明光と第2照明光の半値幅は50nm以下が望ましい。
【0040】
波面情報は、例えば、干渉縞から取得することができる。干渉縞は、測定光と参照光で形成される。測定光は、物体を通過した照明光である。参照光は、物体を通過しない照明光である。照明光には、平行光が用いられる。
【0041】
波面を光強度で推定する場合、画像を波面情報として使用することができる。画像を波面情報として使用する場合、画像を解析して波面情報を取得しなくても良い。
【0042】
波面情報は、干渉縞の画像を解析することで取得することができる。よって、干渉縞を取得する必要がある。干渉縞の画像の取得方法について説明する。
【0043】
図2は、第1の取得方法におけるフローチャートである。第1の取得方法では、照明光の波長を変える。
【0044】
ステップS10では、波長変更回数Nλを設定する。例えば、照明光の波長を3回変更する場合、波長変更回数Nλの値に3を設定する。波長変更回数Nλを3として説明したが2以上の値であれば良い。
【0045】
ステップS20では、波長λ(n)を設定する。波長λ(n)の設定では、例えば、変数nの値が大きくなるにつれて波長が短くなるように、波長λ(n)の値を設定する。この場合、λ(1)の値に、最も長い波長が設定される。
【0046】
例えば、λ(1)の値に1500nmを設定し、λ(2)の値に650nmを設定し、λ(3)の値に480nmを設定する。1500nm、650nm、及び480nmは、最大強度における波長である。波長については、数値に単位を付けて説明している。実際には、数値のみを設定する。
【0047】
波長λ(n)の設定は、変数nが大きくなるにつれて波長が長くなるような設定でも良い。また、(n)の設定は、変数nの大きさと波長の長さとがランダムになるような設定でも良い。テーブルであらかじめ定義しておくことで、ランダムな設定が実現可能である。
【0048】
ステップS30では、変数nの値に1を設定する。
【0049】
ステップS40では、波長λ(n)の値に基づいて、照明光を選択する。光源から射出される光の波長が1つの場合、波長λ(n)の値と一致する波長の光を出射する光源を選択する。光源として、レーザーを用いることができる。
【0050】
光源から射出される光の波長が複数の場合、光学フィルタで1つの波長の光を選択することができる。この場合、波長λ(n)の値と一致する波長の光を透過する光学フィルタを選択する。
【0051】
ステップS50では、干渉縞I(n)の画像を取得する。照明光が物体に照射されることで、干渉縞I(n)が形成される。干渉縞I(n)を光検出器で撮像することで、干渉縞I(n)の画像を取得することができる。
【0052】
変数nの値は、波長に関する序数を表している。よって、干渉縞I(n)は、n番目の波長で形成された干渉縞を表している。
【0053】
上述のように、波長の設定では、変数nの値が大きくなるにつれて波長が短くなるように設定している。よって、干渉縞I(n)では、変数nの値が大きくなるにつれて、干渉縞の形成に使用された照明光の波長は短くなる。
【0054】
ステップS60では、変数nの値が変更回数Nλの値と一致したか否かを判断する。判断結果がNOの場合は、ステップS70を実行する。判断結果がYESの場合は、終了する。
【0055】
(判断結果がNOの場合:n≠Nλ)
ステップS70を実行する。ステップS70では、変数nの値に1を加算する。ステップS70が終ると、ステップS40に戻る。ステップS70で、変数nの値が1つ増えている。そのため、別の照明光を用いてステップS50を実行する。ステップS50を、全ての照明光が用いられるまで繰り返す。
(判断結果がYESの場合:n=Nλ)
干渉縞の画像の取得を終了する。干渉縞の画像の取得は、Nλ回行われる。よって、Nλ枚の干渉縞の画像が取得される。上記の例では、波長変更回数Nλの値に3を設定している。よって、3枚の干渉縞の画像が取得される。
【0056】
干渉縞から波面情報を取得することができる。干渉縞I(n)から取得した波面情報を、波面情報W(n)とする。
【0057】
第2照明光の波長は、第1照明光の波長より短い。そして、第2照明光の波長帯域における最長波長は、第1照明光の波長帯域における最短波長よりも短波長側に位置する。
【0058】
上述の例では、λ(1)の値に1500nmを設定し、λ(2)の値に650nmを設定し、λ(3)の値に480nmを設定している。よって、第1照明光には、λ(1)の値の照明光が対応する。第2照明光には、λ(2)の値の照明光又はλ(3)の値の照明光が対応する。又は、第1照明光にはλ(2)が対応し、第2照明光にはλ(3)が対応する。
【0059】
Nλ枚の干渉縞の画像は、第1画像と第2画像を含む。第1画像は、第1照明光で形成された干渉縞の画像である。第2画像は、第2照明光で形成された干渉縞の画像である。
【0060】
波面情報W(n)は、第1波面情報と第2波面情報を含んでいる。よって、波面情報W(n)をメモリ2に記憶する。このとき、波長λ(n)の値もメモリ2に記憶する。
【0061】
上述のように、プロセッサ3は、物体の3次元光学特性を推定する推定処理を実行する。推定処理では、物体の3次元光学特性の推定を、第1波面情報と第2波面情報の両方を用いて実行する。
【0062】
本実施形態の推定装置では、メモリは、複数の第1波面情報と複数の第2波面情報を記憶し、複数の第1波面情報では、第1照明光の物体に対する入射角度が、第1波面情報毎に異なり、複数の第2波面情報では、第2照明光の物体に対する入射角度が、第2波面情報毎に異なり、推定処理は、複数の第1波面情報と複数の第2波面情報の両方を用いることが好ましい。
【0063】
推定処理には、複数の第1波面情報と複数の第2波面情報を用いる。そのため、メモリは、複数の第1波面情報と複数の第2波面情報を記憶している。
【0064】
第1波面情報は、物体を通過した第1照明光に基づいて取得した波面情報である。複数の第1波面情報では、第1照明光の物体に対する入射角度が、第1波面情報毎に異なる。
【0065】
図3は、第1照明光が物体を通過する様子を示す図である。図3(a)、図3(b)、図3(c)は、第1照明光の向きが変化する様子示す図である。図3(d)、図3(e)、図3(f)は、物体の向きが変化する様子示す図である。
【0066】
図3(a)、図3(b)、図3(c)では、物体10の向きを変えずに、第1照明光Lλ1の向きを変えている。そのため、物体10に対する第1照明光Lλ1の入射角度が、変化する。θLは、第1照明光Lλ1と光軸AXとのなす角度である。図3(a)ではθL=-20°、図3(b)ではθL=0°、図3(c)ではθL=+20°である。
【0067】
図3(d)、図3(e)、図3(f)では、第1照明光Lλ1の向きを変えずに、物体10の向きを変えている。そのため、第1照明光Lλ1に対する物体10の向きが、変化する。θSは、物体の傾き角である。図3(d)ではθS=-20°、図3(e)ではθS=0°、図3(f)ではθS=+20°である。
【0068】
図3(d)、図3(e)、図3(f)では、第1照明光Lλ1の向きは変化しない。よって、見かけ上、第1照明光Lλ1の物体10に対する入射角度は変化しない。しかしながら、物体10の向きが変化しているので、実質的には、第1照明光Lλ1の物体10に対する入射角度は変化している。
【0069】
第2波面情報は、物体を通過した第2照明光に基づいて取得した波面情報である。複数の第2波面情報では、第2照明光の物体に対する入射角度が、第2波面情報毎に異なる。
【0070】
図4は、第2照明光が物体を通過する様子を示す図である。図4(a)、図4(b)、図4(c)は、第2照明光の向きが変化する様子を示す図である。図4(d)、図4(e)、図4(f)は、物体の向きが変化する様子を示す図である。
【0071】
図4(a)、図4(b)、図4(c)では、物体10の向きを変えずに、第2照明光Lλ2の向きを変えている。そのため、物体10に対する第2照明光Lλ2の入射角度が、変化する。θLは、第2照明光Lλ2と光軸AXとのなす角度である。図4(a)ではθL=-20°、図4(b)ではθL=0°、図4(c)ではθL=+20°である。
【0072】
図4(d)、図4(e)、図4(f)では、第2照明光Lλ2の向きを変えずに、物体10の向きを変えている。そのため、第2照明光Lλ2に対する物体10の向きが、変化する。θSは、物体の傾き角である。図4(d)ではθS=-20°、図4(e)ではθS=0°、図4(f)ではθS=+20°である。
【0073】
図4(d)、図4(e)、図4(f)では、第2照明光Lλ2の向きは変化しない。よって、見かけ上、第2照明光Lλ2の物体10に対する入射角度は変化しない。しかしながら、物体10の向きが変化しているので、実質的には、第2照明光Lλ2の物体10に対する入射角度は変化している。
【0074】
照明光の物体に対する入射角度は、照明光と物体の相対的な向き(以下、「相対方向」という)に置き換えることができる。
【0075】
上述のように、波面情報は、物体を通過した照明光に基づいて取得した波面情報である。よって、波面情報の量は、相対方向の影響を受ける。
【0076】
相対角度を変化させると、変化させた回数だけ波面情報を取得できる。そのため、波面情報の量を増やすことができる。また、相対角度が異なると、物体内部における照明光の通過領域が異なる。1つの相対方向における波面情報は、他の相対方向における波面情報には無い情報を含んでいる。そのため、波面情報の量を増やすことができる。
【0077】
複数の第1波面情報では、第1照明光の物体に対する入射角度が、第2波面情報毎に異なる。複数の第2波面情報では、第2照明光の物体に対する入射角度が、第2波面情報毎に異なる。そのため、波面情報の量を増やすことができる。その結果、物体の3次元光学特性を高い精度と高い空間分解能で取得することができる。
【0078】
図5は、第2の取得方法におけるフローチャートである。図2と同じステップには同じ番号を付し、説明は省略する。第2の取得方法では、照明光の波長と相対方向を変える。
【0079】
ステップS21では、角度変更回数Nθを設定する。変更する角度は、相対方向である。例えば、相対方向を5回変更する場合、角度変更回数Nθの値に5を設定する。
【0080】
相対方向のずれは、角度で表わすことができる。以下では、相対方向のずれを、相対角度θ(m)で表わす。照明光と物体の相対的な向きが一致している場合、相対方向のずれは0°である。この場合、相対角度θ(m)の値に0°を設定する。
【0081】
ステップS22では、相対角度θ(m)を設定する。相対角度θ(m)の設定では、例えば、θ(1)の値に0°を設定し、θ(2)の値に4°を設定し、θ(3)の値に7°を設定し、θ(4)の値に10°を設定し、θ(5)の値に15°を設定する。
【0082】
また、初期値と増分を設定しても良い。この場合、θ(1)の値に初期値を設定し、θ(2)の値、θ(3)の値、θ(4)の値、及びθ(5)の値に、初期値に増分を加えた角度を設定すれば良い。
【0083】
角度については、数値に単位を付けて説明している。実際には、数値のみを設定する。
【0084】
ステップS31では、変数mの値と変数nの値に1を設定する。
【0085】
ステップS32では、相対角度θ(m)に基づいて位置決めする。位置決めする対象は、照明光又は物体である。位置決めでは、照明光と光軸とのなす角度が相対角度θ(m)の値と一致するように、照明光の向きを変化させる。又は、照明光に対する物体の向きが相対角度θ(m)の値と一致するように、物体を回転させる。
【0086】
ステップS51では、干渉縞I(m,n)の画像を取得する。照明光が物体に照射されることで、干渉縞I(m,n)が形成される。干渉縞I(m,n)を光検出器で撮像することで、干渉縞I(m,n)の画像を取得することができる。
【0087】
変数mの値は、相対角度に関する序数を表している。変数nの値は、波長に関する序数を表している。よって、干渉縞I(m,n)は、m番目の相対角度とn番目の波長で形成された干渉縞を表している。
【0088】
上述のように、波長λ(n)の設定では、例えば、変数nの値が大きくなるにつれて波長が短くなるように設定することができる。この場合、干渉縞I(m,n)では、変数nの値が大きくなるにつれて、干渉縞の形成に使用された照明光の波長は短くなる。
【0089】
変数nが大きくなるにつれて波長が長くなるような設定の場合、干渉縞I(m,n)では、変数nの値が大きくなるにつれて、干渉縞の形成に使用された照明光の波長は長くなる。
【0090】
ステップS60では、変数nの値が変更回数Nλの値と一致したか否かを判断する。判断結果がNOの場合は、ステップS40を実行する。判断結果がYESの場合は、ステップS80を実行する。
【0091】
(判断結果がYESの場合:n=Nλ)
ステップS80を実行する。ステップS80では、変数mの値が角度変更回数Nθの値と一致したか否かを判断する。判断結果がNOの場合は、ステップS90を実行する。判断結果がYESの場合は、終了する。
【0092】
(判断結果がNOの場合:m≠Nθ)
ステップS90を実行する。ステップS90では、変数mの値に1を加算する。ステップS90が終ると、ステップS32に戻る。ステップS90で、変数mの値が1つ増えている。そのため、別の相対角度で、ステップS40とステップS51を実行する。ステップS40とステップS51を、全ての相対角度で位置決めされるまで繰り返す。
【0093】
(判断結果がYESの場合:m=Nθ)
干渉縞の画像の取得を終了する。干渉縞の画像の取得は、(Nλ×Nθ)回行われる。よって、(Nλ×Nθ)枚の干渉縞の画像が取得される。上記の例では、角度変更回数Nθの値に5を設定し、波長変更回数Nλの値に3を設定している。よって、15枚の干渉縞の画像が取得される。
【0094】
干渉縞から波面情報を取得することができる。干渉縞I(m,n)から取得した波面情報を、波面情報W(m,n)とする。
【0095】
第2照明光の波長は、第1照明光の波長より短い。上述の例では、λ(1)の値に1500nmを設定し、λ(2)の値に650nmを設定し、λ(3)の値に480nmを設定している。よって、第1照明光には、λ(1)の値の照明光が対応する。第2照明光には、λ(2)の値の照明光又はλ(3)の値の照明光が対応する。また、第1照明光にλ(2)の値の照明光が対応する場合、第2照明光にはλ(3)の値の照明光が対応する。
【0096】
(Nλ×Nθ)枚の干渉縞の画像は、複数の第1画像と複数の第2画像を含む。第1画像は、第1照明光で形成された干渉縞の画像である。第2画像は、第2照明光で形成された干渉縞の画像である。
【0097】
複数の第1画像は、第1照明光の物体に対する入射角度が異なる干渉縞の画像を含む。よって、複数の第1画像から複数の第1波面情報を取得することができる。複数の第2画像は、第2照明光の物体に対する入射角度が異なる干渉縞の画像を含む。よって、複数の第2画像から複数の第2波面情報を取得することができる。
【0098】
波面情報W(m,n)は、複数の第1波面情報と複数の第2波面情報を含んでいる。よって、波面情報W(m,n)をメモリ2に記憶する。このとき、角度変更回数Nθの値、相対角度θ(m)の値、及び波長λ(n)の値も、メモリ2に記憶する。
【0099】
上述のように、プロセッサ3は、物体の3次元光学特性を推定する推定処理を実行する。推定処理では、物体の3次元光学特性の推定を、複数の第1波面情報と複数の第2波面情報の両方を用いて実行する。
【0100】
第2の取得方法では、1つの相対角度で、第1照明光で形成された干渉縞と第2照明光で形成された干渉縞を取得している。しかしながら、第1照明光で形成された干渉縞の取得を全ての相対角度で行った後に、第2照明光で形成された干渉縞の取得を全ての相対角度で取得しても良い。
【0101】
本実施形態の推定装置では、推定処理は、第1波面情報を拘束条件とする第1最適化処理と、第2波面情報を拘束条件とする第2最適化処理と、を含み、プロセッサは、第1最適化処理の連続実行によって更新された3次元光学特性に対して、第2最適化処理を連続実行することが好ましい。
【0102】
物体の3次元光学特性の推定では、波面情報を用いる。波面情報を取得するためには、物体を通過した波面を求める必要がある。本実施形態の推定装置では、ビーム伝搬法を用いて、波面を求めている。ビーム伝搬法の代わりに、FDTD(Finite Difference Time Domain)を用いても良い。
【0103】
第2波面情報は、第2照明光を用いたときの情報である。第2照明光の波長帯域は、第1照明光の波長帯域よりも短波長側に位置する。よって、第2波面情報を用いると、横方向では3次元光学特性を精度良く推定できるが、軸方向では3次元光学特性を大まかに推定することはできない。
【0104】
これに対して、第1波面情報は、第1照明光を用いたときの情報である。第1照明光の波長帯域は、第2照明光の波長帯域よりも長波長側に位置する。よって、第1波面情報を用いることで、横方向だけでなく、軸方向においても、3次元光学特性を大まかに推定することができる。
【0105】
そこで、最初に第1波面情報を用いて、全ての方向において、3次元光学特性を大まかに推定する。大まかな推定が終わった後で、第2波面情報を用いて、3次元光学特性を精度良く推定する。この順で推定することで、物体の3次元光学特性を効率よく、しかも高い精度と高い空間分解能で取得できる。
【0106】
図6は、第1の推定処理におけるフローチャートである。第1の推定処理は、ステップS100と、ステップS200と、ステップS300と、ステップS400と、ステップS500と、を有する。
【0107】
ステップS100では、各種の設定を行う。
【0108】
ステップS100は、ステップS110と、ステップS120と、ステップS130と、ステップS140と、を有する。ステップS150は、必要に応じて設ければ良い。
【0109】
ステップS110では、角度変更回数Nθを設定する。メモリ2には、角度変更回数Nθの値が記憶されている。よって、角度変更回数Nθの値に、メモリ2に記憶された値を設定すれば良い。例えば、メモリ2に5が記憶されている場合、角度変更回数Nθの値に5を設定する。
【0110】
ステップS120では、波長λ(n)を設定する。メモリ2には、波長λ(n)の値が記憶されている。使用する波長を予め設定しておくことで、表示せずに処理を進めることができる。
【0111】
波長λ(n)の値を全てメモリ2から読み出して、表示しても良い。例えば、メモリ2に、1500nm、650nm、480nmが記憶されている場合、これらの値を表示すれば良い。表示された値は、波長を表している。よって、表示された波長のなかから、推定に用いる波長を複数選択することができる。
【0112】
波長λ(n)の設定では、例えば、nの値が大きくなるにつれて波長が短くなるように、波長λ(n)の値に選択した値を設定する。この場合、λ(1)の値には、最大強度の波長の値が設定される。
【0113】
例えば、1500nm、650nm、及び480nmを選択した場合、波長λ(n)の値は以下のように設定する。
λ(1)の値:1500nm
λ(2)の値:650nm
λ(3)の値:480nm
【0114】
ステップS130では、変数Nλ’波長の数を設定する。波長の数は、選択した波長の数である。推定に用いる波長を選択することで、選択した波長の数が求まる。波長の数Nλ’の値に、選択した波長の数を設定する。上記の例では、選択した波長の数は3なので、波長の数Nλ’の値に3を設定する。選択する波長の数は、2以上であれば良い。
【0115】
ステップS140では、反復数N(n)を設定する。反復数N(n)は、最適化処理を実行する回数である。最適化処理には、第1最適化処理と第2最適化処理がある。第1最適化処理と第2最適化処理については、後述する。
【0116】
反復数N(n)と波長λ(n)には、変数nが用いられている。よって、反復数N(n)の設定では、波長λ(n)に設定した値(波長)に対して反復数を設定することになる。
【0117】
上記の例では、選択した波長の数は3である。反復数N(n)の値は、例えば以下のように設定する。
N(1)の値:3回
N(2)の値:2回
N(3)の値:2回
【0118】
ステップS150を設けた場合、ステップS150では、推定値に初期値を設定する。推定値は、推定物体の3次元光学特性の値である。3次元光学特性の推定は、シミュレーションによって行われる。シミュレーションは推定物体を用いて行われる。推定値に初期値を設定することで、シミュレーションを行うことができる。
【0119】
ステップS200では、各種の初期化を行う。
【0120】
ステップS200は、ステップS210と、ステップS220と、ステップS230と、を有する。
【0121】
ステップS210では、変数nの値に1を設定する。ステップS220では、変数mの値に1を設定する。ステップS230では、変数mの値に1を設定する。
【0122】
ステップS300では、推定処理を実施する。推定処理では、物体の3次元光学特性を推定する。
【0123】
ステップS300は、ステップS400と、ステップS410と、ステップS420と、ステップS430と、ステップS440と、ステップS450と、を有する。
【0124】
推定処理では、例えば、評価値が用いられる。評価値は、測定光の波面情報とシミュレーションによる波面情報との差、又は、測定光の波面情報とシミュレーションによる波面情報との比で表わされる。波面情報は、例えば、振幅、位相、光強度、複素振幅の何れかを含んでいる情報である。
【0125】
シミュレーションによる波面情報(以下、「推定波面情報」という)は、推定画像から算出される。推定画像は、推定物体を透過した光によって得られる画像である。推定物体を透過する光は、シミュレーションによる光である。測定光の波面情報(以下、「測定波面情報」という)は、測定画像から算出される。
【0126】
測定画像は、光学装置で取得した物体の画像である。推定画像は、シミュレーションで取得した推定物体の画像である。
【0127】
図7は、測定画像と推定画像を示す図である。図7(a)は、測定画像の取得の様子を示す図である。図7(b)と図7(c)は、推定画像の取得の様子を示す図である。
【0128】
図7(a)に示すように、測定画像の取得では、物体20と測定光学系21が用いられる。測定光学系21は、レンズ22を有する。
【0129】
図7(a)において、位置Zfoは、測定光学系21の焦点の位置を示している。位置Zsは、物体20の像側面の位置を示している。
【0130】
測定光学系21では、位置Zfoにおける物体20の光学像が、結像面IMに形成される。図7(a)では、位置ZsからΔZ離れた物体20の内部が、位置Zfoと一致している。
【0131】
結像面IMには、CCD23が配置されている。物体20の光学像は、CCD23によって撮像される。その結果、物体20の光学像の画像(以下、「測定画像Imea」という)を取得できる。測定画像Imeaから、測定波面情報が算出される。
【0132】
光学像の画像は光強度の画像なので、測定画像Imeaも光強度の画像である。測定画像Imeaは光強度の画像なので、測定画像Imeaから算出される測定波面情報は、光強度である。光強度を用いる場合、測定画像を波面情報として使用することもできる。
【0133】
推定波面情報は、推定物体24の光学像の画像(以下、「推定画像Iest」という)から算出される。
【0134】
図7(c)には測定光学系21が図示されている。推定画像Iestの算出はシミュレーションで行われるので、測定光学系21は物理的に存在しない。そのため、推定画像Iestの算出では、測定光学系21の瞳関数が用いられる。
【0135】
推定画像Iestは、結像面IMにおける推定物体24の像から得られる。測定画像Imeaは光強度の画像なので、推定画像Iestも光強度の画像であると良い。よって、結像面IMにおける推定物体24の光強度を算出する必要がある。
【0136】
ステップS400では、推定波面情報を算出する。
【0137】
図8は、推定波面情報の算出におけるフローチャートである。ステップS400は、ステップS401と、ステップS402と、ステップS403と、ステップS404と、ステップS405と、を有する。
【0138】
推定波面情報の算出は、波面の順伝搬に基づいて行う。照明光が進行する方向への波面の伝搬である。逆伝搬は、照明光が進行する方向と逆方向への波面の伝搬である。順伝搬では、図7(b)と図7(c)に示すように、波面は推定物体24から結像面IMに向かって伝搬する。
【0139】
ステップS401では、推定物体へ入射する波面を算出する。
【0140】
位置Zinは、物体20の光源(照明)側の面に対応する推定物体24の面の位置である。位置Zinは、シミュレーションによる光が推定物体24に入射する側の面の位置である。よって、位置Zinにおける波面Uinを算出する。波面Uinには、物体20に照射される測定光の波面と同じ波面を用いることができる。
【0141】
ステップS402では、推定物体から射出する波面を算出する。
【0142】
位置Zoutは、物体20の結像側(レンズ側、CCD側)の面に対応する推定物体24の面の位置である。位置Zoutは、推定物体24からシミュレーションによる光が射出する側の面の位置である。よって、位置Zoutにおける波面Uoutを算出する。波面Uoutは、例えば、ビーム伝搬法を用いて、波面Uinから算出することができる。
【0143】
ステップS403では、所定の取得位置における波面を算出する。
【0144】
所定の取得位置は、測定画像が取得されたときの物体側の位置である。所定の取得位置は、位置Zinから位置Zoutまでの間の任意の位置である。位置Zpは、所定の取得位置の一つである。位置Zpは、結像面IMと共役な位置である。
【0145】
推定画像Iestは、測定画像Imeaと同じ条件で算出される。測定画像Imeaは、位置ZsからΔZ離れた物体20の内部の光学像から取得されている。よって、推定画像Iest算出では、位置ZsからΔZ離れた位置における波面が必要である。
【0146】
図7(b)では、位置Zoutが位置Zsに対応している。位置ZoutからΔZ離れた位置は、位置Zpである。よって、位置Zpにおける波面Upが算出できれば良い。
【0147】
位置Zpは、位置ZoutからΔZ離れている。よって、波面Uoutを波面Upとして用いることはできない。波面Upは、例えば、ビーム伝搬法を用いて、波面Uoutから算出することができる。
【0148】
ステップS404では、結像面における波面を算出する。
【0149】
波面Upは、測定光学系21を通過して、結像面IMに到達する。結像面IMにおける波面Uimgは、波面Upと測定光学系21の瞳関数から算出することができる。
【0150】
ステップS405では、結像面における推定波面情報を算出する。
【0151】
波面Uimgは、光の振幅を表している。光強度は、振幅の二乗で表わされる。よって、波面Uimgを二乗することで、推定物体24の光強度を算出することができる。その結果、推定画像Iestを取得できる。推定画像Iestから、推定波面情報が算出される。
【0152】
光強度の代わりに、振幅と位相を用いても良い。振幅と位相は、電場を用いて表される。よって、振幅と位相を用いる場合、測定地と推定値には、電場から算出された値が用いられる。測定に基づく電場Emesと、推定に基づく電場Eestは、以下の式で表される。
【0153】
Emes=Ames×exp(i×Pmes)
Eest=Aest×exp(i×Pest)
ここで、
Pmesは、測定に基づく位相、
Amesは、測定に基づく振幅、
Pestは、推定に基づく位相、
Aestは、推定に基づく振幅、
である。
【0154】
測定に基づく電場Emesの取得では、測定光と参照光は非平行な状態で、光検出器に入射する。
【0155】
光検出器では、測定光と参照光によって、光検出器の撮像面に干渉縞が形成される。干渉縞は光検出器によって撮像される。その結果、干渉縞の画像を取得することができる。
【0156】
干渉縞は、測定光と参照光が非平行な状態で取得されている。よって、この干渉縞を解析することで、測定に基づく位相と、測定に基づく振幅と、を得ることができる。その結果、測定に基づく電場Emesが得られる。推定に基づく電場Eestは、シミュレーションで得ることができる。
【0157】
また、干渉縞を解析することで、複素振幅を得ることができる。よって、光強度の代わりに、複素振幅を波面情報に用いても良い。
【0158】
図6に戻って説明を続ける。ステップS410では、波面情報W(m,n)で推定波面情報を拘束する。
【0159】
波面情報W(m,n)は、干渉縞I(m,n)の画像から取得している。干渉縞I(m,n)は、測定光によって形成されている。よって、波面情報W(m,n)は、ステップS400で説明した測定波面情報と見なすことができる。
【0160】
変数mの値は、相対角度に関する序数を表している。変数nの値は、波長に関する序数を表している。波面情報W(m,n)は、m番目の相対角度とn番目の波長を用いたときの測定波面情報を表している。
【0161】
ステップS210で、変数nの値に1を設定している。ステップS120で説明したように、波長λ(n)の設定では、変数nの値が大きくなるにつれて波長が短くなるように、波長λ(n)の値を設定している。よって、変数nの値が1の場合、λ(n)の値には、最も長い波長の値が設定されている。
【0162】
変数nの値が1の場合、波面情報W(m,n)は、最も長い波長を用いたときの波面情報である。最も長い波長は、第1照明光の波長である。よって、変数nの値が1の場合、波面情報W(m,n)は、第1照明光を用いたときの波面情報である。
【0163】
第1照明光を用いたときの波面情報は、第1波面情報である。よって、変数nの値が1の場合、波面情報W(m,n)は、第1波面情報になる。この場合、ステップS410における処理は、第1波面情報で推定波面情報を拘束する処理になる。
【0164】
第1最適化処理は、第1波面情報を拘束条件とする処理である。変数nの値が1の場合、ステップS410では、第1波面情報で推定波面情報を拘束している。よって、この場合、ステップS410における処理は、第1最適化処理になる。
【0165】
後述のように、変数nの値は変化する。よって、変数nの値には、1以外の値も設定される。この場合、波長λ(n)の値は、別の波長の値になる。
【0166】
別の波長は、最も長い波長よりも短い波長である。最も長い波長は、第1照明光の波長である。第2照明光の波長は、第1照明の波長より短い。よって、別の波長は、第2照明光の波長である。
【0167】
変数nの値が1以外の場合、波面情報W(m,n)は、別の波長を用いたときの波面情報である。別の波長は、第2照明光の波長である。よって、変数nの値が1以外の場合、波面情報W(m,n)は、第2照明光を用いたときの波面情報である。
【0168】
第2照明光を用いたときの波面情報は、第2波面情報である。よって、変数nの値が2の場合、波面情報W(m,n)は、第2波面情報になる。この場合、ステップS410における処理は、第2波面情報で推定波面情報を拘束する処理になる。変数nの値が3の場合、波面情報W(m,n)は、第3波面情報になる。この場合、ステップS410における処理は、第3波面情報で推定波面情報を拘束する処理になる。
【0169】
第2最適化処理は、第2波面情報を拘束条件とする処理である。変数nの値が2の場合、ステップS410では、第2波面情報で推定波面情報を拘束している。よって、この場合、ステップS410における処理は、第2最適化処理になる。変数nの値が3の場合、ステップS410では、第3波面情報で推定波面情報を拘束している。よって、この場合、ステップS410における処理は、第3最適化処理になる。
【0170】
測定画像Imeaから、測定波面情報が算出される。推定画像Iestから、推定波面情報が算出される。測定波面情報と推定波面情報との差、又は測定波面情報と推定波面情報との比から評価値を算出することができる。測定波面情報による推定波面情報の拘束とは、測定波面情報を用いて推定波面情報を修正する、又は推定波面情報と測定波面情報との誤差を算出することであり、評価値を算出することとほぼ同義である。
【0171】
測定画像Imeaと推定画像Iestとの差、又は、測定画像Imeaと推定画像Iestとの比を、評価値に用いても良い。
【0172】
ステップS420では、評価値と閾値との比較を行う。
【0173】
評価値が測定波面情報と推定波面情報との差で表されている場合、測定波面情報と推定波面情報との差が、評価値として算出される。評価値は、閾値と比較される。判断結果がNOの場合は、ステップS500を実行する。判断結果がYESの場合は、ステップS430を実行する。
【0174】
(判断結果がNOの場合:閾値≧評価値)
ステップS500を実行する。
【0175】
ステップS500では、推定物体の3次元光学特性を算出する。
【0176】
得られた推定物体24の3次元光学特性は、物体20の3次元光学特性と同一か、又は、略同一である。ステップS500で得られた3次元光学特性を用いることで、再構成された推定物体を得ることができる。
【0177】
再構成された推定物体は、例えば、表示装置に出力することができる。
【0178】
上述のように、ステップS500で得られた3次元光学特性は、物体20の3次元光学特性と同一か、又は、略同一である。よって、再構成された推定物体は、物体20の構造と同一か、又は、略同一と見なすことができる。
【0179】
(判断結果がYESの場合:閾値≦評価値の場合)
ステップS430を実行する。ステップS430では、勾配を算出する。
【0180】
ステップS430は、ステップS431と、ステップS432と、を有する。
【0181】
勾配の算出は、波面の逆伝搬に基づいて行う。逆伝搬では、波面は位置Zoutから位置Zinに向かって伝搬する。
【0182】
ステップS431では、補正後の波面を算出する。
【0183】
光強度で算出する場合は、波面情報として画像を使用することができる。よって、補正後の波面U’pの算出では、測定画像Imeaと推定画像Iestが用いられる。波面U’pは、位置Zpにおける波面である。
【0184】
図7(c)に示すように、推定画像Iestは、波面Uimgに基づいて算出される。また、波面Uimgは、波面Upに基づいて算出される。
【0185】
ステップS150を設けた場合、波面Upの算出には、ステップS150で設定した初期値が用いられている。初期値は、推定物体24の3次元光学特性の値である。ステップS430の1回目の実行時、初期値は、物体20の3次元光学特性の値(以下、「物体特性値」という)と異なる。
【0186】
初期値と物体特性値との差が大きくなるほど、推定画像Iestと測定画像Imeaとの差も大きくなる。よって、推定画像Iestと測定画像Imeaとの差は、初期値と物体特性値との差を反映していると見なすことができる。
【0187】
光強度で算出する場合は、波面情報として画像を使用することができる。そこで、推定画像Iest(r)と測定画像Imea(r)とを用いて、波面Upを補正する。その結果、補正後の波面、すなわち、波面U’pが得られる。
【0188】
波面U’pは、例えば、以下の式(1)で表される。
U’p=Up×√(Imea/Iest) (1)
【0189】
ステップS432では、勾配を算出する。
【0190】
勾配の算出は、波面の逆伝搬に基づいて行うことができる。
【0191】
波面の逆伝搬では、位置Zoutから位置Zinに向かう波面が算出される。よって、勾配を算出するためには、位置Zoutにおける補正後の波面(以下「波面U’out」という)が必要である。
【0192】
波面U’pは波面Upを補正した波面なので、波面U’pは位置Zpにおける波面である。図7(c)では、見易さのために、波面U’pは、位置Zpからずれた位置に図示されている。また、図7(b)では、波面U’outは、位置Zoutからずれた位置に図示されている。
【0193】
図7(b)と図7(c)に示すように、位置Zoutは、位置ZpからΔZだけ離れている。よって、波面U’pを波面U’outとして用いることはできない。波面U’outは、例えば、ビーム伝搬法を用いて、波面U’pから算出することができる。
【0194】
波面U’outが算出されると、波面の逆伝搬に基づいて、波面の算出が行われる。波面の逆伝搬では、推定物体24の内部を伝搬する波面が算出される。波面の算出では、波面UoutとU’outとが用いられる。
【0195】
波面U’pは、波面Upと異なる。よって、波面U’outも、波面Uoutと異なる。波面U’outと波面Uoutを用いることで、勾配を算出することができる。勾配は、物体内の任意の位置の波面の勾配である。勾配には、推定物体24の3次元光学特性の値に関する新たな情報が含まれている。
【0196】
ステップS461では、変数mの値が角度変更回数Nθの値と一致したか否かを判断する。判断結果がNOの場合は、ステップS462を実行する。判断結果がYESの場合は、ステップS440を実行する。
【0197】
(判断結果がNOの場合:m≠Nθ)
ステップS462を実行する。ステップS462では、変数mの値に1を加算する。ステップS462が終ると、ステップS400に戻る。
【0198】
ステップS462で、変数mの値が1つ増えている。この場合、波面情報W(m,n)におけるmの値が変化する。よって、別の相対角度の波面情報で、ステップS400からステップS430までを実行する。ステップS400からステップS430までを、全ての相対角度で位置決めされるまで繰り返す。
【0199】
上記の例では、角度変更回数Nθの値に5を設定している。よって、ステップS400からステップS430までを、5回実行する。
【0200】
例えば、波面情報Aと波面情報Bで相対角度が異なる場合、波面情報Aは波面情報Bには無い情報を含み、波面情報Bは波面情報Aには無い情報を含む。よって、相対角度が異なる波面情報が多いほど、情報量が多くなる。
【0201】
情報量が多くなると、ステップS431で、より正確に、補正後の波面を算出することができる。その結果、勾配の精度も高まる。勾配には、推定値と物体特性値との差に関する情報が含まれている。勾配の精度を高めることで、推定値と物体特性値との差を小さくすることができる。すなわち、推定値を、より物体特性値に近づけることができる。
【0202】
(判断結果がYESの場合:m=Nθ)
ステップS440を実行する。ステップS440では、推定値を更新する。
【0203】
勾配には、推定値と物体特性値との差に関する情報が含まれている。よって推定値に勾配を加えることで、更新された推定値が得られる。
【0204】
更新された推定値は、初期値に比べて、物体特性値により近い。よって、更新された推定値を用いて、推定物体24の3次元光学特性の値を更新することができる。
【0205】
ステップS450では、TV正則化を行う。
【0206】
TV正則化を行うことで、ノイズ除去やぼけ画像の修正を行うことができる。TV正則化は、必要に応じて実行すれば良い。よって、ステップS450を省略しても良い。
【0207】
ステップS463では、変数iの値が反復数N(n)の値と一致したか否かを判断する。判断結果がNOの場合は、ステップS464を実行する。判断結果がYESの場合は、ステップS465を実行する。
【0208】
(判断結果がNOの場合:i≠N(n))
ステップS464を実行する。ステップS464では、変数iの値に1を加算する。ステップS464が終ると、ステップS230に戻る。
【0209】
ステップS464で、変数iの値が1つ増えている。但し、波面情報W(m,n)における変数nの値は変化しない。変数nの値は1なので、第1波面情報で、再びステップS300を実行する。ステップS300を、変数iの値が反復数N(n)の値と一致するまで繰り返す。
【0210】
ステップS230で、変数mの値に1を設定している。そのため、ステップS400からステップS430までを、変数mの値が角度変更回数Nθと一致するまで繰り返す。
【0211】
上記の例では、変数nの値が1のとき、反復数N(n)の値に3を設定している。よって、ステップS300を3回実行する。また、ステップS410における処理は、第1最適化処理である。上記の例では、ステップS300を3回実行するので、第1最適化処理が3回実行される。
【0212】
1回目の第1最適化処理で、推定値が更新されている。更新された推定値は、初期値に比べて、物体特性値により近い。2回目の第1最適化処理では、更新された推定値を使用する。その結果、2回目の第1最適化処理では、推定値を、物体特性値に近づけることができる。第1最適化処理を複数回実行することで、推定値を、物体特性値に近づけることができる。
【0213】
(判断結果がYESの場合:i=N(n))
【0214】
ステップS465を実行する。ステップS465では、変数nの値が波長の数Nλ’の値と一致したか否かを判断する。判断結果がNOの場合は、ステップS466を実行する。判断結果がYESの場合は、終了する。
【0215】
(判断結果がNOの場合:n≠Nλ’)
ステップS466を実行する。ステップS466では、変数nの値に1を加算する。ステップS466が終ると、ステップS220に戻る。
【0216】
ステップS466で、変数nの値が1つ増えている。この場合、波面情報W(m,n)における変数nの値が変化する。変数nの値が1以外なので、第2波面情報で、ステップS300を実行する。変数nの値が2の場合は、第2波面情報で、ステップS300を実行する。変数nの値が3の場合は、第3波面情報で、ステップS300を実行する。
【0217】
ステップS220で、変数iの値に1を設定している。そのため、ステップS300を、変数iの値が反復数N(n)の値と一致するまで繰り返す。
【0218】
また、ステップS230で、変数mの値に1を設定している。そのため、ステップS400からステップS430までを、変数mの値が角度変更回数Nθと一致するまで繰り返す。
【0219】
上記の例では、変数nの値が2のとき、反復数N(n)の値に2を設定している。よって、ステップS300を2回実行する。また、ステップS410における処理は、第2最適化処理である。上記の例では、ステップS300を2回実行するので、第2最適化処理が2回実行される。
【0220】
第2最適化処理を実行する前に、第1最適化処理を実行している。よって、第2最適化処理における初期値には、第1最適化処理で更新された推定値が用いられる。第2最適化処理における初期値は、第1最適化処理における初期値よりも、物体特性値に近い。よって、推定値を、物体特性値に近づけることができる。
【0221】
1回目の第2最適化処理で、推定値が更新されている。更新された推定値は、初期値に比べて、物体特性値により近い。2回目の第2最適化処理では、更新された推定値を使用する。その結果、2回目の第2最適化処理では、推定値を、物体特性値に近づけることができる。第2最適化処理を複数回実行することで、推定値を、物体特性値に近づけることができる。
【0222】
ステップS300は、変数nの値が波長の数Nλ’の値と一致するまで繰り返す。上記の例では、波長の数Nλ’の値に3を設定している。よって、最適化処理の回数は3回である。
【0223】
上述のように、変数nの値が1のときに、第1最適化処理を1回実行し、変数nの値が2のときに、第2最適化処理を1回実行している。よって、変数nの値が3のとき、第3最適化処理を行えば、変数nの値が波長の数Nλ’の値と一致する。
【0224】
上記の例では、λ(1)の値に1500nmを設定し、λ(2)の値に650nmを設定し、λ(3)の値に480nmを設定している。
【0225】
波長が1500nmの照明光は、第1照明光である。この波長に関する最適化処理は、変数nの値が1のときの第1最適化処理である。波長が650nmの照明光は、第2照明光である。この波長に関する最適化処理は、変数nの値が2のときの第2最適化処理である。
【0226】
変数nの値が3のときの最適化処理は、第3最適化処理である。第3最適化処理は、480nmの波長に関する最適化処理である。波長が480nmの波長の照明光は、第2照明光である。よって、480nmの波長に関する最適化処理は、第2最適化処理と同じである。よって、説明は省略する。
【0227】
変数nの値が3のときの最適化処理は、以下の順番で行うことができる。
(例1)第1最適化処理、第2最適化処理、第3最適化処理の順。
(例2)第1最適化処理、第3最適化処理、第2最適化処理の順。
【0228】
変数nの値が3のときの最適化処理では、以下の組み合わせで処理を行うことができる。
(例1)
第1最適化処理:波長が1500nmの照明光。
第2最適化処理:波長が650nmの照明光
(例2)
第1最適化処理:波長が1500nmの照明光。
第2最適化処理:波長が480nmの照明光
(例3)
第1最適化処理:波長が650nmの照明光。
第2最適化処理:波長が480nmの照明光
【0229】
例えば、波面情報aと波面情報bで波長が異なる場合、波面情報aは波面情報bには無い情報を含み、波面情報bは波面情報aには無い情報を含む。よって、波長が異なる波面情報が多いほど、情報量が多くなる。
【0230】
情報量が多くなると、ステップS431で、より正確に、補正後の波面を算出することができる。その結果、勾配の精度も高まる。勾配には、推定値と物体特性値との差に関する情報が含まれている。勾配の精度を高めることで、推定値と物体特性値との差を小さくすることができる。すなわち、推定値を、より物体特性値に近づけることができる。よって、第1最適化処理と第2最適化処理を、各々2回以上実行することが好ましい。
【0231】
(判断結果がYESの場合:n=Nλ’)
既定の反復回数に達したため、ステップS500で推定物体の3次元光学特性を算出し、終了する。
【0232】
上述のように、波長が長い照明光では、軸方向で多くの波面情報を取得することができる。また、横方向でも、ある程度の量の波面情報を取得することができる。第1波面情報の取得に用いる照明光の波長は、第2波面情報の取得に用いる照明光の波長よりも長い。よって、第1波面情報を用いることで、推定物体の3次元光学特性を大まかに推定することができる。
【0233】
第1波面情報は、第1最適化処理で用いる。よって、第1最適化処理を実行することで、推定物体の3次元光学特性を大まかに推定することができる。
【0234】
ステップS210で、変数nの値に1を設定している。よって、最初に実行するステップS410における処理は、第1最適化処理である。第1最適化処理では、推定物体の3次元光学特性を大まかに推定することができる。よって、第1最適化処理を第2最適化処理よりも先に実行することで、効率良く推定物体の3次元光学特性を推定することができる。
【0235】
また、第1の推定処理では、第1最適化処理と第2最適化処理を、各々2回以上実行する。よって、分解能の低下と推定の精度の低下を防ぐことができる。その結果、物体の厚みが大きい場合であっても、物体の3次元光学特性を高い精度と高い分解能で取得できる推定装置を実現することができる。
【0236】
本実施形態の推定装置では、プロセッサは、3次元光学特性に設定された初期値に対して、第1最適化処理を連続で実行することが好ましい。
【0237】
上述のように、ステップS150は、必要に応じて設けることができる。ステップS150を設けた場合、3次元光学特性の推定値に初期値が設定される。この場合、3次元光学特性に設定された初期値に対して、第1最適化処理を連続で実行する。
【0238】
本実施形態の推定装置では、推定処理は、第1波面情報を拘束条件とする第1最適化処理と、第2波面情報を拘束条件とする第2最適化処理と、を含み、プロセッサは、第1最適化処理と第2最適化処理とからなる複合処理を、2回以上実行し、複合処理では、第1最適化処理が最初に実行され、複合処理では、第2最適化処理が実行された後に、第1最適化処理は実行されないことが好ましい。
【0239】
図9は、第2の推定処理におけるフローチャートである。第1の推定処理と同じステップには同じ番号を付し、説明は省略する。
【0240】
以下では、複合処理について説明する。そのため、最初から複合処理を開始する説明になっている。しかしながら、第1最適化処理や第2最適化処理など特定の最適化処理を所定回数実行した後に、複合処理を開始しても良い。
【0241】
第2の推定処理は、複合処理を有する。複合処理は、第1最適化処理と第2最適化処理とからなる。複合処理は、2回以上実行する。
【0242】
複合処理を繰り返すために、第2の推定処理は、ステップS141と、ステップS142と、ステップS201と、ステップS467と、ステップS468と、ステップS469と、を有する。
【0243】
波長λ(n)の設定で、例えば、1500nmと650nmを選択した場合、波長λ(n)の値は以下のように設定する。
λ(1)の値:1500nm
λ(2)の値:650nm
【0244】
上記の例では、選択した波長の数は2なので、波長の数Nλ’の値に2を設定する。
【0245】
ステップS141では、第1反復数NSを設定する。第1反復数NSは、複合処理を実行する回数である。例えば、複合処理を2回実行する場合、第1反復数NSの値に2を設定する。
【0246】
ステップS142では、第2反復数N(n,j)を設定する。第2反復数N(n,j)は、最適化処理を実行する回数である。
【0247】
第2反復数N(n,j)と波長λ(n)には、変数nが用いられている。よって、第2反復数N(n,j)の設定では、波長λ(n)に設定した値(波長)に対して反復数を設定することになる。
【0248】
最適化処理を実行する回数は、複合処理毎に変えることができる。よって、第2反復数N(n,j)の設定では、複合処理毎に反復数を設定することになる。
【0249】
上記の例では、選択した波長の数は2である。また、複合処理を実行する回数は4である。第2反復数N(n,j)の値は、例えば以下のように設定する。
N(1,1)の値:5回
N(2,1)の値:1回
N(1,2)の値:5回(5回のまま継続)
N(2,2)の値:1回
N(1,3)の値:3回(5回から3回に減らす)
N(2,3)の値:1回
N(1,4)の値:3回(3回のまま継続)
N(2,4)の値:1回
N(1,4)の値:1回(3回から1回に減らす)
N(2,4)の値:1回
【0250】
上記の例では、第1最適化処理の実行回数が、第2最適化処理の実行回数以上になっている。第2最適化処理の実行回数と第1最適化処理の実行回数との差は減っている。複合処理を連続実行した後に、第2最適化処理の実行回数と第1最適化処理の実行回数との差は減っている。
【0251】
第2最適化処理の数を増やすことで、複合処理における第1最適化処理と第2最適化処理との差を減らしても良い。
【0252】
ステップS201では、変数jの値に1を設定する。
【0253】
変数jの値が1なので、1回目の複合処理を実行する。また、ステップS210で、変数nの値に1を設定している。よって、最初のステップS300における処理では、第1最適化処理を実行する。
【0254】
ステップS467では、変数iの値が第2反復数N(n,j)の値と一致したか否かを判断する。判断結果がNOの場合は、ステップS464を実行する。判断結果がYESの場合は、ステップS465を実行する。
【0255】
(判断結果がNOの場合:i≠N(n,j))
ステップS464を実行する。ステップS464では、変数iの値に1を加算する。ステップS464が終ると、ステップS230に戻る。
【0256】
ステップS464で、変数iの値が1つ増えている。但し、変数nの値は変化しないので、変数nの値は1である。よって、S300における処理では、再び第1最適化処理を実行する。第1最適化処理を、変数iの値が反復数N(n)の値と一致するまで繰り返す。
【0257】
変数jの値は変化しないので、変数jの値は1である。上記の例では、変数nの値が1で、変数jの値は1のとき、第2反復数N(n,j)の値に3を設定している。よって、第1最適化処理を3回実行する。
【0258】
(判断結果がYESの場合:i=N(n,j))
ステップS465を実行する。ステップS465では、変数nの値が波長の数Nλ’の値と一致したか否かを判断する。判断結果がNOの場合は、ステップS466を実行する。判断結果がYESの場合は、ステップS468を実行する。
【0259】
(判断結果がNOの場合:n≠Nλ’)
ステップS466を実行する。ステップS466では、変数nの値に1を加算する。ステップS466が終ると、ステップS220に戻る。
【0260】
ステップS466で、変数nの値が1つ増えている。この場合、変数nの値が1以外なので、S300における処理では、第2最適化処理を実行する。
【0261】
ステップS220で、変数iの値に1を設定している。そのため、第2最適化処理を、変数iの値が第2反復数N(n,j)の値と一致するまで繰り返す。
【0262】
変数nの値は1から2に変化する。変数jの値は変化しないので、変数jの値は1である。上記の例では、変数nの値が2で、変数jの値は1のとき、第2反復数N(n,j)の値に2を設定している。よって、第2最適化処理を2回実行する。
【0263】
(判断結果がYESの場合:n=Nλ’)
ステップS468を実行する。ステップS468では、変数jの値が第1反復数NSの値と一致したか否かを判断する。判断結果がNOの場合は、ステップS469を実行する。判断結果がYESの場合は、終了する
【0264】
(判断結果がNOの場合:n≠NS)
ステップS469を実行する。ステップS468では、変数jの値に1を加算する。ステップS468が終ると、ステップS210に戻る。
【0265】
ステップS466で、変数jの値が1つ増えている。変数jの値が2なので、2回目の複合処理を実行する。
【0266】
ステップS210で変数nの値に1が設定されている。よって、第1最適化処理を実行する。ステップS220で、変数iの値に1を設定している。そのため、第2最適化処理を、変数iの値が第2反復数N(n,j)の値と一致するまで繰り返す。
【0267】
変数nの値は1で、変数jの値は2である。上記の例では、変数nの値が2で、変数jの値は1のとき、第2反復数N(n,j)の値に1を設定している。よって、第1最適化処理を1回実行する。
【0268】
第1最適化処理の実行が終わると、変数nの値は1から2に変化する。よって、第2最適化処理を実行する。ステップS220で、変数iの値に1を設定している。そのため、第2最適化処理を、変数iの値が第2反復数N(n,j)の値と一致するまで繰り返す。
【0269】
変数nの値は2で、変数jの値は2である。上記の例では、変数nの値が2で、変数jの値は2のとき、第2反復数N(n,j)の値に4を設定している。よって、第2最適化処理を4回実行する。
【0270】
(判断結果がYESの場合:n=NS’)
既定の反復回数に達したため、ステップS500で推定物体の3次元光学特性を算出し、終了する。
【0271】
以上のように、第2の推定処理では、複合処理を2回以上実行する。この場合、第1最適化処理と第2最適化処理が交互に実行される。よって、分解能の低下と推定の精度の低下を防ぐことができる。その結果、物体の厚みが大きい場合であっても、物体の3次元光学特性を高い精度と高い分解能で取得できる推定装置、推定システム、推定方法、及び記録媒体を提供することができる。
【0272】
本実施形態の推定装置では、プロセッサは、3次元光学特性に設定された初期値に対して、複合処理を実行することが好ましい。
【0273】
上述のように、ステップS150は、必要に応じて設けることができる。ステップS150を設けた場合、3次元光学特性の推定値に初期値が設定される。この場合、3次元光学特性に設定された初期値に対して、複合処理を実行する。
【0274】
本実施形態の推定装置では、複合処理において、第1最適化処理の実行回数が第2最適化処理の実行回数以上になる制御がされることが好ましい。
【0275】
上述のように、第1最適化処理を実行することで、推定物体の3次元光学特性を大まかに推定することができる。よって、第2波面情報を用いる回数よりも第1波面情報を用いる回数を多くすることで、効率良く推定物体の3次元光学特性を大まかに推定することができる。
【0276】
ステップS150を設けた場合、第1の推定処理と第2の推定処理では、ステップS150で、推定値に初期値が設定されている。初期値は、物体特性値と異なる。よって、できるだけ早く第1最適化処理を実行することで、推定値を物体特性値に近づけることができる。その結果、効率よく推定することができる。
【0277】
本実施形態の推定装置では、複合処理で、所定の処理を実行する。所定の処理では、第1最適化処理の実行回数が第2最適化処理の実行回数よりも多い。また、第1最適化処理を、第2最適化処理よりも先に実行する。よって、推定物体の3次元光学特性を、効率よく推定することができる。
【0278】
本実施形態の推定装置では、連続する複合処理において、制御が継続することが好ましい。
【0279】
本実施形態の推定装置では、複合処理が所定回数実行されたあと、複合処理において、第2最適化処理の実行回数と第1最適化処理の実行回数との差を減らす制御がされることが好ましい。
【0280】
本実施形態の推定装置では、2回目の複合処理で、所定の処理を実行する。所定の処理では、第1最適化処理の実行回数が第2最適化処理の実行回数よりも多い。また、第1最適化処理を、第2最適化処理よりも先に実行する。よって、推定物体の3次元光学特性を、効率よく推定することができる。
【0281】
本実施形態の推定装置では、第1照明光は、赤外領域の光であり、第2照明光は、可視領域の光であることが好ましい。
【0282】
本実施形態の推定装置によれば、推定物体の3次元光学特性を、効率よく推定することができる。
【0283】
本実施形態の推定装置では、第1照明光は、赤外領域の光であり、
以下の条件式(A)を満足することが好ましい。
2×λ2<λ1 (A)
ここで、
λ1は、第1照明光の波長、
λ2は、第2照明光の波長、
である。
【0284】
本実施形態の推定装置によれば、推定物体の3次元光学特性を、効率よく推定することができる。
【0285】
本実施形態の推定システムは、本実施形態の推定装置と、第1照明光と第2照明光を射出する光源ユニットと、光検出器と、物体を載置するステージと、角度変更機構と、を備える。ステージは、光源ユニットから光検出器まで間の光路上に配置され、角度変更機構は、第1照明光の物体に対する入射角度と、第2照明光の物体への入射角度を変化させる。
【0286】
図10は、本実施形態の推定システムを示す図である。図1と同じ構成については同じ番号を付し、説明を省略する。
【0287】
推定システム30は、光源ユニット31と、光検出器34と、ステージ35と、推定装置1と、を備える。推定装置1は、メモリ2と、プロセッサ3と、を有する。
【0288】
光源ユニット31は、第1照明光と第2照明光を射出する。推定システム30では、光源ユニット31は、第1光源32と、第2光源33と、を有する。第1光源32は、第1照明光を射出する。第2光源33は、第2照明光を射出する。第2照明光の波長帯域における最長波長は、第1照明光の波長帯域における最短波長よりも短波長側に位置する。
【0289】
第1照明光は、第1の方向から、ダイクロイックミラー36に入射する。第2照明光は、第1の方向と直交する方向から、ダイクロイックミラー36に入射する。
【0290】
ダイクロイックミラー36は、波長の長い光を透過し、且つ波長の短い光を反射する分光特性を有する。よって、第1照明光は、ダイクロイックミラー36を透過して、第1の方向に進行する。第2照明光はダイクロイックミラー36で反射して、第1の方向に進行する。
【0291】
第1の方向には、ビームスプリッタ37が配置されている。第1照明光と第2照明光は、ビームスプリッタ37に入射する。ビームスプリッタ37は、光学膜が形成された光学面を有する。ビームスプリッタ37では、光学膜によって、入射した光から、第1の方向に透過する光と、第2の方向に反射する光と、が生成される。
【0292】
推定システム30では、第1の方向に測定光路OPmeaを形成し、第2の方向に参照光路OPrefを形成している。しかしながら、第1の方向に参照光路OPrefを形成し、第2の方向に測定光路OPmeaを形成しても良い。第1照明光と第2照明光は、各々、測定光路OPmeaと参照光路OPrefを進行する。
【0293】
測定光路OPmeaには、ミラー38が配置されている。測定光路OPmeaは、ミラー38で第2の方向に折り曲げられる。参照光路OPrefには、ミラー39が配置されている。参照光路OPrefは、ミラー39で第1の方向に折り曲げられる。その結果、参照光路OPrefは、測定光路OPmeaと交差する。2つの光路が交差する位置に、ビームスプリッタ40が配置されている。
【0294】
測定光路OPmeaでは、ミラー38とビームスプリッタ40の間に、ステージ35が配置されている。ステージ35上に、物体Sが載置されている。第1照明光と第2照明光は、物体Sに照射される。
【0295】
第1照明光を物体Sに照射すると、物体Sから第1測定光Lmea1が出射する。第1測定光Lmea1は、物体Sを通過した第1照明光である。第2照明光を物体Sに照射すると、物体Sから第2測定光Lmea2が出射する。第2測定光Lmea2は、物体Sを通過した第2照明光である。
【0296】
参照光路OPrefでは、第1参照光Lref1と第2参照光Lref2が進行する。第1参照光Lref1は、物体Sを通過しない第1照明光である。第2参照光Lref2は、物体Sを通過しない第2照明光である。
【0297】
第1測定光Lmea1、第2測定光Lmea2、第1参照光Lref1、及び第2参照光Lref2は、ビームスプリッタ40に入射する。ビームスプリッタ40は、光学膜が形成された光学面を有する。ビームスプリッタ40では、光学膜によって、入射した光から、第1の方向に透過する光と、第2の方向に反射する光と、が生成される。
【0298】
第1の方向には、光検出器34が配置されている。第1光源32と第2光源33が点灯している場合、光検出器34に、第1測定光Lmea1、第2測定光Lmea2、第1参照光Lref1、及び第2参照光Lref2が入射する。
【0299】
第1光源32を点灯し、第2光源33を消灯すると、第1測定光Lmea1と第1参照光Lref1が光検出器34に入射する。第1光源32を消灯し、第2光源33を点灯すると、第2測定光Lmea2と第2参照光Lref2が光検出器34に入射する。
【0300】
第1測定光Lmea1と第1参照光Lref1で、第1の干渉縞が形成される。第2測定光Lmea2と第2参照光Lref2で、第2の干渉縞が形成される。第1の干渉縞と第2の干渉縞を光検出器34で撮像することで、第1の干渉縞の画像と第2の干渉縞の画像を取得することができる。
【0301】
第1の干渉縞の画像と第2の干渉縞の画像は、推定装置1に送られる。推定装置1では、第1の干渉縞の画像に基づいて第1波面情報を取得する。第2の干渉縞の画像に基づいて第2波面情報を取得する。第1波面情報と第2波面情報を、メモリ2に記憶する。第1波面情報と第2波面情報を用いて、推定処理を実行する。
【0302】
推定処理では、複数の第1波面情報と複数の第2波面情報を用いる。複数の第1波面情報では、第1照明光の物体への入射角度が、第1波面情報毎に異なる。複数の第2波面情報では、第2照明光の物体への入射角度が、第2波面情報毎に異なる。
【0303】
本実施形態の推定システムは、角度変更機構を有する。角度変更機構は、相対方向を変える。そのため、照明光の物体に対する入射角度を変えることができる。その結果、複数の第1波面情報と複数の第2波面情報を取得することができる。
【0304】
本実施形態の推定システムでは、角度変更機構は、駆動装置と、回転部材と、を有し、回転部材は、ステージを保持し、回転部材の回転軸は、物体と交差すると共に、光路の光軸と直交することが好ましい。
【0305】
図10に示すように、推定システム30は、角度変更機構41を有する。角度変更機構41は、測定光路OPmea側に配置されている。
【0306】
角度変更機構41は、駆動装置42と、回転部材43と、を有する。回転部材43は、ステージ35を保持している。軸RXは、回転部材43の回転軸である。軸RXは、物体Sと交差すると共に、光軸AXと直交している。
【0307】
角度変更機構41では、駆動装置42によって回転部材43が回転する。回転部材43がステージ35を保持しているので、ステージ35が回転する。ステージ35を回転させることで、軸RXを中心に物体Sを回転させることができる。
【0308】
第1照明光と第2照明光は、ミラー38で反射して、物体Sに入射する。物体Sの回転によって、第1照明光に対する物体Sの向きと、第2照明光する物体Sの向きが変わる。よって、様々な方向から、第1照明光と第2照明光が物体Sに照射される。
【0309】
物体Sから、第1測定光Lmea1と第2測定光Lmea2が出射する。第1測定光Lmea1と第2測定光Lmea2は、光検出器34に入射する。
【0310】
推定システム30では、第1照明光の向きと第2照明光の向きは変わらずに、物体Sの向きが変わる。よって、第1照明光の物体Sに対する入射角度と、第2照明光の物体Sに対する入射角度を変えることができる。
【0311】
本実施形態の推定システムでは、角度変更機構は、駆動装置と、回転部材と、を有し、回転部材は、反射面を有し、回転部材の配置角度を変えることによって、反射面の向きが変化することが好ましい。
【0312】
図11は、本実施形態の推定システムを示す図である。図10と同じ構成については同じ番号を付し、説明を省略する。
【0313】
推定システム50は、角度変更機構60と、角度変更機構70と、を有する。角度変更機構60と、角度変更機構70は、測定光路OPmeaに配置されている。
【0314】
角度変更機構60は、駆動装置61と、回転部材62と、を有する。回転部材62は、反射面を有する。回転部材62の回転運動又は反復運動によって、反射面の向きが変化する。角度変更機構70は、駆動装置71と、回転部材72と、を有する。回転部材72は、反射面を有する。回転部材72の回転運動又は反復運動によって、反射面の向きが変化する。
【0315】
角度変更機構60は、例えば、ガルバノメータースキャナ、又はポリゴンスキャナーである。ガルバノメータースキャナでは、平面ミラーの反復運動によって、反射面の向きが変化する。ポリゴンスキャナーでは、ポリゴンミラーの回転運動によって、反射面の向きが変化する。ガルバノメータースキャナとポリゴンスキャナーは、光偏向器と呼ばれる。
【0316】
角度変更機構60から角度変更機構70までの間に、照明光学系51と、ステージ35と、検出光学系52と、が配置されている。物体Sは、照明光学系51と検出光学系52の間に位置している。
【0317】
第1照明光と第2照明光は、照明光学系51を通過して、物体Sに入射する。回転部材62の回転運動又は反復運動によって、物体Sに対する第1照明光の向きと、物体Sに対する第2照明光の向きが変わる。よって、様々な方向から、第1照明光と第2照明光が物体Sに照射される。
【0318】
物体Sから、第1測定光Lmea1と第2測定光Lmea2が出射する。第1測定光Lmea1と第2測定光Lmea2は、検出光学系52を通過して、角度変更機構70に入射する。
【0319】
角度変更機構70に対する第1測定光Lmea1の入射角度は、変化する。角度変更機構70に対する第2測定光Lmea2の入射角度も、変化する。入射角度の変化は、角度変更機構70で打ち消すことができる。よって、第1測定光Lmea1と第2測定光Lmea2は、動くこと無くミラー53に入射する。ミラー53で反射された第1測定光Lmea1と第2測定光Lmea2は、光検出器34に入射する。
【0320】
推定システム50では、角度変更機構60によって、照明光の向きが変わる。この場合、物体Sの向きは変わらずに、第1照明光の向きと第2照明光の向きが変わる。よって、第1照明光の物体Sに対する入射角度と、第2照明光の物体Sに対する入射角度を変えることができる。
【0321】
推定システム50では、1つの軸において、回転部材の回転運動、又は回転部材の反復運動を行っている。しかしながら、直交する2つの軸において、回転部材の回転運動、又は回転部材の反復運動を行っても良い。
【0322】
推定システム30と推定システム50では、照明光の数は2で、光検出器の数は1である。そのため、照明光の切替えが必要になる。
【0323】
図12は、照明光の切替え方法を示す図である。図10と同じ構成については同じ番号を付し、説明を省略する。図12(a)は、第1の切替え方法を示す図である。図12(b)は、第2の切替え方法を示す図である。図12(c)は、第3の切替え方法を示す図である。
【0324】
(第1の方法)
図12(a)に示すように、第1の方法では、第1遮光板80と第2遮光板81を用いる。第1光源32と第2光源33は、点灯している。第1光源32から第1照明光が出射し、第2光源33から第2照明光が出射する。
【0325】
第1光源32とダイクロイックミラー36の間の光路の外側に、第1遮光板80を配置する。第2光源33とダイクロイックミラー36の間の光路の外側に、第2遮光板81を配置する。第1遮光板80と第2遮光板81は、光路に対して出し入れが可能になっている。
【0326】
第1遮光板80を光路の外側に位置させた状態で、第2光源33とダイクロイックミラー36の間に第2遮光板81を挿入する。この配置にすることで、第1照明光を選択することができる。
【0327】
第2遮光板81を光路の外側に位置させた状態で、第1光源32とダイクロイックミラー36の間に第1遮光板80を挿入する。この配置にすることで、第2照明光を選択することができる。
【0328】
(第2の方法)
図12(b)に示すように、第2の方法では、第1光学フィルタ82と第2光学フィルタ83を用いる。光源ユニット31は、点灯している。光源ユニット31は、1つの光源を有する。1つの光源から第1照明光と第2照明光が出射する。
【0329】
光源ユニット31とビームスプリッタ37の間の光路の外側に、第1光学フィルタ82と第2光学フィルタ83を配置する。第1光学フィルタ82と第2光学フィルタ83は、光路に対して出し入れ可能になっている。
【0330】
第1光学フィルタ82は、第1照明光だけを透過する分光特性を有する。第2光学フィルタ83は、第2照明光だけを透過する分光特性を有する。
【0331】
第2光学フィルタ83を光路の外側に位置させた状態で、光源ユニット31とビームスプリッタ37の間に第1光学フィルタ82を挿入する。この配置にすることで、第1照明光を選択することができる。
【0332】
第1光学フィルタ82を光路の外側に位置させた状態で、光源ユニット31とビームスプリッタ37の間に第2光学フィルタ83を挿入する。この配置にすることで、第2照明光を選択することができる。
【0333】
図12(a)に示すように、光源ユニット3が2つの光源を有する場合、ダイクロイックミラー36とビームスプリッタ37の間で、第1光学フィルタ82と第2光学フィルタ83を出し入れすれば良い。
【0334】
(第3の方法)
図12(c)に示すように、第3の方法では、第1光学フィルタ82と第2光学フィルタ83を用いる。第1光源32と第2光源33は、点灯している。
【0335】
ビームスプリッタ40と光検出器34の間の光路の外側に、第1光学フィルタ82と第2光学フィルタ83を配置する。第1光学フィルタ82と第2光学フィルタ83は、光路に対して出し入れ可能になっている。
【0336】
第2光学フィルタ83を光路の外側に位置させた状態で、ビームスプリッタ40と光検出器34の間に第1光学フィルタ82を挿入する。このような配置にすることで、第1照明光を選択することができる。
【0337】
第1光学フィルタ82を光路の外側に位置させた状態で、ビームスプリッタ40と光検出器34の間に第2光学フィルタ83を挿入する。このような配置にすることで、第2照明光を選択することができる。
【0338】
本実施形態の推定システムは、光検出器とは別の光検出器を備え、光検出器は、第1照明光の波長帯域に対して第1閾値以上の感度を持ち、第2照明光の波長帯域に対して第1閾値以上の感度を持たず、別の光検出器は、第2照明光の波長帯域に対して第2閾値以上の感度を持ち、第1照明光の波長帯域に対して第2閾値以上の感度を持たないことが好ましい。
【0339】
図13は、本実施形態の推定システムを示す図である。図11と同じ構成については同じ番号を付し、説明を省略する。
【0340】
推定システム90は、第1光検出器91と、第2光検出器92と、を有する。第1光源32と第2光源33が点灯している場合、第1光検出器91と第2光検出器92には、第1測定光Lmea1、第2測定光Lmea2、第1参照光Lref1、及び第2参照光Lref2が入射する。
【0341】
第1光検出器91は、第1照明光の波長帯域に対して第1閾値以上の感度を持つが、第2照明光の波長帯域に対して第1閾値以上の感度を持たない。よって、第1光検出器91では、第1測定光Lmea1と第1参照光Lref1で形成された第1の干渉縞のだけを、撮像することができる。第1閾値は、適宜決めれば良い。
【0342】
第2光検出器92は、第2照明光の波長帯域に対して第2閾値以上の感度を持つが、第1照明光の波長帯域に対して第2閾値以上の感度を持たない。よって、第2光検出器92では、第2測定光Lmea2と第2参照光Lref2で形成された第2の干渉縞だけを、撮像することができる。第2閾値は、適宜決めれば良い。
【0343】
本実施形態の推定システムは、光検出器とは別の光検出器と、光検出器と共に用いられる第1光学素子と、別の光検出器と共に用いられる第2光学素子と、を備え、第1光学素子は、第1照明光を透過し、第2照明光を遮光する特性を有し、第2光学素子は、第2照明光を透過し、第1照明光を遮光する特性を有することが好ましい。
【0344】
図14は、本実施形態の推定システムを示す図である。図11と同じ構成については同じ番号を付し、説明を省略する。
【0345】
推定システム100は、第1光検出器101と、第2光検出器102と、第1光学素子103と、第2光学素子104と、を有する。
【0346】
第1光学素子103は、ビームスプリッタ40と第1光検出器101の間に配置されている。第2光学素子104は、ビームスプリッタ40と第2光検出器102の間に配置されている。
【0347】
第1光源32と第2光源33が点灯している場合、第1光学素子103と第2光学素子104には、第1測定光Lmea1、第2測定光Lmea2、第1参照光Lref1、及び第2参照光Lref2が入射する。
【0348】
第1光学素子103は、第1照明光を透過し、第2照明光を遮光する特性を有する。よって、第1測定光Lmea1と第1参照光Lref1が第1光検出器101に入射する。第1測定光Lmea1と第1参照光Lref1で、第1の干渉縞が形成される。第1の干渉縞を第1光検出器101で撮像することで、第1の干渉縞の画像を取得することができる。
【0349】
第1光学素子104は、第2照明光を透過し、第1照明光を遮光する特性を有する。よって、第2測定光Lmea2と第2参照光Lref2が第2光検出器102に入射する。第2測定光Lmea2と第2参照光Lref2で、第2の干渉縞が形成される。第2の干渉縞を第2光検出器102で撮像することで、第2の干渉縞の画像を取得することができる。
【0350】
図15は、本実施形態の推定システムを示す図である。図10と同じ構成については同じ番号を付し、説明を省略する。
【0351】
推定システム110は、ミラー111と、ビームスプリッタ112と、を有する。ミラー111は、測定光路OPmeaに配置されている。ビームスプリッタ112は、参照光路OPrefと測定光路OPmeaが交差する位置に配置されている。
【0352】
図10に示す推定システム30では、ビームスプリッタ40で測定光路OPmeaを第1の方向に折り曲げ、ミラー39で参照光路OPrefを第1の方向に折り曲げている。
【0353】
これに対して、推定システム110ではミラー111で測定光路OPmeaを第1の方向と逆方向に折り曲げ、ビームスプリッタ112で参照光路OPrefを第1の方向と逆方向に折り曲げている。そのため、測定光路OPmeaの光路長と参照光路OPrefの光路長と間で、差が生じる。
【0354】
照明光における可干渉距離が光路長の差よりも長い場合、干渉縞が形成される。照明光における可干渉距離が光路長の差よりも短い場合、光路長調整部113をビームスプリッタ37とミラー112の間に配置する。このような配置にすることで、干渉縞を形成することができる。
【0355】
光路長調整部113は、例えば、ピエゾステージと4枚のミラーを有する。ピエゾステージには、2枚のミラーが載置されている。2枚のミラーを移動させることで、参照光路OPrefにおける光路長を変化させることができる。このピエゾステージを光源波長以下のステップで駆動することにより、複数回撮影を行うことで波面情報を算出しても良い。
【0356】
本実施形態の推定システムは、本実施形態の推定装置と、第1照明光と第2照明光を射出する光源ユニットと、を備え、光源ユニットは、照射角度が異なる複数の独立した光源で構成されており、推定装置のプロセッサ若しくはプロセッサと異なるプロセッサが、光源に照明光を射出させるか否かを制御することで、第1照明光の物体に対する入射角度と、第2照明光の物体への入射角度を変化させることを特徴とする。
【0357】
図16は、本実施形態の推定システムを示す図である。図11と同じ構成については同じ番号を付し、説明を省略する。
【0358】
推定システム120は、光源121と、レンズ122と、レンズ123と、光検出器124と、を有する。レンズ123は、照明光学系51に配置されている。推定システム120では、測定光路OPmeaだけが形成されている。
【0359】
光源121は、第1照明部と、第2照明部と、を有する。第1照明部と第2照明部は、各々、複数の光射出部を有する。光射出部には、例えば、発光ダイオード(LED)、または、半導体レーザ(LD)を配置することができる。
【0360】
光射出部は、アレイ状に配置されている。光射出部では、発光と消光を独立に制御できる。第1照明部は、第1照明光を出射する。第2照明部は、第2照明光を出射する。
【0361】
光射出部は、ファイババンドルの出射面であっても良い。ファイババンドルは、第1ファイババンドルと、第2ファイババンドルを有する。第1ファイババンドルを第1光源(不図示)に接続することで、第1ファイババンドルの出射面から第1照明光が出射する。第2ファイババンドルを第2光源(不図示)に接続することで、第2ファイババンドルの出射面から第2照明光が出射する。
【0362】
物体Sは、平行光で照明されることが好ましい。光源121では、光射出部の面積は点光源と見なせる程度に小さい。そのため、光射出部は、照明光学系51の瞳位置と共役な位置に配置されている。
【0363】
レンズ122は、光源121と照明光学系51の間に配置されている。レンズ122とレンズ123とで、光源121の位置と照明光学系51の瞳位置を、共役にすることができる。照明光学系51の瞳位置の周囲に十分な空間が確保できる場合、光射出部は、照明光学系51の瞳位置に配置しても良い。
【0364】
光源121では、第1照明部の制御と第2照明部の制御が行われる。この制御では、複数の光射出部のうち光が射出される光射出部が変更される。この制御により、第1照明光の物体に対する入射角度の変更と、第2照明光の物体に対する入射角度の変更を行うことができる。
【0365】
光源121を光源ユニットと見なすと、光源ユニットから、第1照明光と第2照明光を射出される。第1照明部と第2照明部は、各々、複数の光射出部を有する。よって、光源ユニットは、照射角度が異なる複数の独立した光源で構成されていることになる。
【0366】
推定装置120は、プロセッサ若しくはプロセッサと異なるプロセッサを有する。よって。プロセッサで、照明光を射出させるか否かの制御を、光源ユニットに対して行うことができる。この制御により、第1照明光の物体に対する入射角度と、第2照明光の物体への入射角度を変化させることができる。
【0367】
推定システム120では、光路の数が1つしかないため、干渉縞から直接的に位相情報を得ることができない。
【0368】
そのため、推定システム120では、波面の振幅データを測定する。測定する波面は、光検出器124の検出面での波面である。波面の振幅データの測定では、複数の波長での測定、あるいは照明角度の変更による測定などを行えば良い。照明角度の変更による測定では、照明角度を、微小な角度で変化させる。これらの測定方法を用いることで、検出面での波面の位相推定に必要なデータセットを測定できる。
【0369】
推定システム120では、参照光路が不要となるため、構成をより簡易にすることができる。
【0370】
図17は、物体の画像を示す図である。図17(a)は、第1波面情報で推定した画像である。図17(b)は、第2波面情報で推定した画像したである。図17(c)は、第1波面情報と第2波面情報で推定した画像である。画像は、シミュレーションで得られた画像である。
【0371】
シミュレーションでは、物体として、フォトニッククリスタルファイバー(以下、「PCF」という)を用いているPCFは、円柱部材と、貫通孔と、を有する。
【0372】
PCFでは、貫通孔が複数、円柱部材の内部に形成されている。貫通孔は円筒形で、円柱部材の母線に沿って形成されている。PCFの外径は230μmで、媒質の屈折率は1.47である。貫通孔と円柱部材の周囲は、屈折率が1.44の液体で満たされている。
【0373】
図17(a)に示す画像の推定には、波長λが633nmの照明光で取得した波面情報を用いている。図17(b)に示す画像の推定には、波長λが1300nmの照明光で取得した波面情報を用いている。
【0374】
第2照明光の波長帯域における最長波長は、第1照明光の波長帯域における最短波長よりも短波長側に位置する。よって、図17(a)に示す画像の推定には、第2照明光で取得した波面情報、すなわち、第2波面情報が用いられている。図17(b)に示す画像の推定には、第1照明光で取得した波面情報、すなわち、第1波面情報が用いられている。
【0375】
上述のように、第2波面情報では、軸方向における波面情報の量が、第1波面情報よりも少ない。よって、図17(a)に示すように、PCFの構造はほとんど推定できていない。これに対して、第1波面情報では、軸方向における波面情報の量が、第2波面情報よりも多い。よって、図17(b)に示すように、PCFの構造を大まかに推定できている。
図17(c)に示す画像の推定には、波長λ1が1300nmの照明光で取得した波面情報と、波長λ2が633nmの照明光で取得した波面情報を用いている。よって、図17(c)に示す画像の推定には、第1波面情報と第2波面情報が用いられている。
【0376】
第2波面情報では、横方向における波面情報の量が、第1波面情報よりも多い。よって、第1波面情報と第2波面情報を推定に用いることで、推定の精度を高めることができる。第1波面情報と第2波面情報で推定した画像では、図17(c)に示すように、横方向におけるPCFの構造をより鮮明にすることができる。
【0377】
図18は、物体の画像を示す図である。図18(a)と図18(b)は、第1波面情報で推定した画像である。図18(c)と図18(d)は、第1波面情報と第2波面情報で推定した画像である。画像は、シミュレーションで得られた画像である。
【0378】
図18(a)に示す画像の推定と、図18(c)に示す画像の推定には、開口数NAが0.1の検出光学系で取得した波面情報を用いている。図18(b)に示す画像の推定と、図18(d)に示す画像の推定には、開口数NAが0.2の検出光学系で取得した波面情報を用いている。
【0379】
光学系の開口数NAを大きくすると、分解能が向上する。分解能が向上すると、波面情報の量が増える。波面情報が多いと、物体の3次元光学特性を高い精度で推定することができる。
【0380】
図18(b)に示す画像の推定では、図18(a)に示す画像の推定よりも、多くの波面情報を用いることができる。よって、図18(b)に示す画像では、図18(a)に示す画像に比べて、PCFの構造がより鮮明になっている。
【0381】
図18(d)に示す画像の推定では、図18(c)に示す画像の推定よりも、多くの波面情報を用いることができる。よって、図18(d)に示す画像では、図18(c)に示す画像に比べて、PCFの構造がより鮮明になっている。
【0382】
図18(a)に示す画像の推定と図18(b)に示す画像の推定には、波長λが1300nmの照明光で取得した波面情報を用いている。図18(c)に示す画像の推定と図18(d)に示す画像の推定には、波長λ1が1300nmの照明光で取得した波面情報と、波長λ2が633nmの照明光で取得した波面情報を用いている。
【0383】
波長の数を多くすると波面情報の量が増える。波面情報が多いと、物体の3次元光学特性を高い精度で推定することができる。図18(c)に示す画像の推定と図18(d)に示す画像の推定では、1300nmの波長よりも短い波長で取得した波面情報を用いている。
【0384】
波長が短い照明光では、波長が長い照明光と比べて、分解能が高い。よって、1300nmの照明光で取得した波面情報よりも多くの情報を使って、推定できる。取得することができる。
【0385】
図18(c)に示す画像の推定では、図18(a)に示す画像の推定よりも、多くの波面情報を用いることができる。よって、図18(c)に示す画像では、図18(a)に示す画像に比べて、PCFの構造がより鮮明になっている。
【0386】
図18(d)に示す画像の推定では、図18(b)に示す画像の推定よりも、多くの波面情報を用いることができる。よって、図18(d)に示す画像では、図18(b)に示す画像に比べて、PCFの構造がより鮮明になっている。
【0387】
本実施形態の推定システムは、本実施形態の推定装置と、第1照明光と第2照明光を射出する光源ユニットと、物体の光学像を形成する結像光学系と、物体の光学像から物体の画像を取得する光検出器と、結像光学系の焦点位置と物体の位置との間隔を、結像光学系の光軸方向に変化させる駆動機構と、を有する。第1照明光による照明と第2照明光による照明は、物体に対して空間的なパーシャルコヒーレント照明を形成している。
【0388】
図19は、本実施形態の推定システムを示す図である。図11と同じ構成については同じ番号を付し、説明を省略する。
【0389】
推定システム130は、光源ユニット31と、照明光学系133と、開口部材134と、結像光学系135と、光検出器136と、駆動機構137と、推定装置1と、を備える。推定装置1は、メモリ2と、プロセッサ3と、を有する。
【0390】
光源ユニット31は、第1照明光と第2照明光を射出する。推定システム130では、光源ユニット31は、第1光源131と、第2光源132と、を有する。第1光源131は、第1照明光を射出する。第2光源132は、第2照明光を射出する。第1照明光と第2照明光は、準単色光であると良い。準単色光は、波長帯域が狭い光である。第1光源131と第2光源132には、例えば、LED(発光ダイオード)を用いることができる。
【0391】
LEDの代わりに、波長帯域が広い光を出射する光源を用いることができる。この場合、ダイクロイックミラー138と照明光学系133の間で、2枚の狭帯域光学フィルタを出し入れすれば良い。例えば、2枚狭帯域光学フィルタには、図12(b)に示す第1光学フィルタ82と第2光学フィルタ83を用いれば良い。狭帯域光学フィルタの分光透過率特性の精度は高くなくても良い。
【0392】
第1光源131から出射する光を赤外光とし、第2光源132から出射する光を可視光にすることができる。
【0393】
第1照明光と第2照明光は、ダイクロイックミラー138に入射する。ダイクロイックミラー138は、波長の長い光を透過し、且つ波長の短い光を反射する分光特性を有する。よって、第1照明光は、ダイクロイックミラー138を透過し、第2照明光はダイクロイックミラー138で反射する。
【0394】
第1照明光と第2照明光は、照明光学系133に入射する。照明光学系133は、物体Sを照明する。
【0395】
照明光学系133には、開口部材134が配置されている。開口部材134は、円形の遮光部134aと、輪帯形状の透過部134bと、輪帯形状の遮光部134cと、を有する。透過部134bは、減光部でも良い。
【0396】
開口部材134とは別の開口部材を用意して、2つの開口部材を用いても良い。別の開口部材では、透過部は透過部134bと同一で、2つの遮光部は、遮光部134a及び遮光部134cと同一である。ただし、開口部材134では、透過部134bに第1光学フィルタ82を設ける。別の開口部材では、透過部に第2光学フィルタ83を設ける。
【0397】
2つの開口部材を用いる場合、ダイクロイックミラー138と照明光学系133の間で、2枚の狭帯域光学フィルタを出し入れする必要はない。
【0398】
開口部材134上に、第1光源131の発光部の像と、第2光源132の発光部の像が形成される。第1光源131と第2光源132は、面光源である。面光源では、発光部は無数の点光源で形成されている。開口部材134上には、無数の点光源が位置していると見なすことができる。
【0399】
開口部材134では、透過部134bに形成された点光源の像から、第1照明光と第2照明光が出射する。しかしながら、遮光部134aと遮光部134cに形成された点光源の像から、第1照明光と第2照明光は出射しない。よって、第1照明光による照明と第2照明光による照明は、パーシャルコヒーレント照明である。
【0400】
パーシャルコヒーレント照明は、コヒーレント照明とインコヒーレント照明の中間の照明である。コヒーレント照明は、点光源から出射した光による照明で、例えば、レーザー光による照明である。インコヒーレント照明は、面光源から、出射した光による照明で、例えば、ハロゲンランプから出射した光による照明である。
【0401】
面光源であっても、光が出射する領域を狭めることで点光源に近づく。パーシャルコヒーレント照明における光源は、面光源と点光源の中間の光源ということになる。
【0402】
開口部材134は、レンズ133aの前側焦点位置に配置されている。よって、照明光学系133から、平行光束が出射する。物体Sは、平行光で照明される。
【0403】
結像光学系135は、物体Sの光学像を形成する。光学像を光検出器136で撮像することで、物体Sの画像を取得することができる。光検出器136には、2次元センサー、例えば、CCD又はCMOSを用いることができる。
【0404】
図14に示す推定システム100のように、2つの光検出器を用いても良い。この場合、一方の光検出器にSiセンサーを用い、他方の光検出器に、InGaAsセンサーを用いることができる。
【0405】
駆動機構137は、結像光学系135の焦点位置と物体Sの位置の間隔を、光軸AXと平行な方向に変化させる。推定システム130では、駆動機構137にステージが用いられている。この場合、結像光学系135を固定したまま、ステージを光軸AXと平行な方向に移動する。その結果、結像光学系135の焦点位置に対して物体Sの位置を変えることができる。
【0406】
ステージを移動させる代わりに、結像光学系135と光検出器136を、光軸AXと平行な方向に移動させても良い。この方法でも、結像光学系135の焦点位置に対して物体Sの位置を変えることができる。
【0407】
結像光学系135では、レンズ135aに無限遠補正型の顕微鏡対物レンズを用いることができる。この場合、レンズ135aから平行光が出射する。よって、レンズ135aだけを、光軸AXと平行な方向に移動させても良い。
【0408】
結像光学系135の焦点位置と物体Sの位置の間隔を変化させながら、物体Sの画像を取得する。その結果、複数の画像を取得することができる。複数の画像から、複数の波面情報を取得することができる。複数の波面情報は、第1照明光と第2照明光の各々について、軸方向の情報を含んでいる。
【0409】
透過部134bは、光軸AXを含まない。よって、光軸AXと交差する方向から、物体Sは平行光で照明される。その結果、コントラストを有する物体の画像を取得することができる。更に、パーシャルコヒーレント照明を行っているので、コヒーレント照明と比べて、高い分解能で物体の画像を取得することができる。
【0410】
推定システム130は、1つの開口部材を用いている。しかしながら、複数の開口部材を用いることができる。遮光部134aの大きさ、輪帯形状の透過部134の幅を変えることで、異なる波面情報を取得することができる。
【0411】
図20は、開口部材と物体の画像を示す図である。図20(a)は、第1の開口部材と物体の画像を示す図である。図20(b)は、第2の開口部材と物体の画像を示す図である。図20(c)は、第3の開口部材と物体の画像を示す図である。画像は、シミュレーションで得られた画像である。
【0412】
第1の開口部材、第2の開口部材及び第3の開口部材は、輪帯形状の透過部を有する。透過部の位置、透過部の幅は、各々の開口部材で異なる。そのため、波面情報は、各開口部材で異なる。
【0413】
撮像した画像から取得した波面情報は、空間周波数に関連した情報を含んでいる。透過部が中心から離れるにつれて、物体に対する照明光の入射角が大きくなる。入射角が大きくなると、高周波数成分の情報が低周波成分の情報よりも多くなる。高周波数成分の情報が多いと、物体の画像では、細部の構造が強調される。
【0414】
透過部は、第1の開口部材、第2の開口部材、第3の開口部材の順で、中心から遠ざかっている。そのため、物体の画像では、細部の構造が、図20(a)に示す画像、図20(b)に示す画像、図20(c)に示す画像の順で、鮮明になっている。
【0415】
以上説明したように、推定システム130では、多くの波面情報を取得することができる。よって、物体の厚みが大きい場合であっても、物体の3次元光学特性を高い精度と高い空間分解能で取得できる。
【0416】
本実施形態の推定方法は、物体の3次元光学特性を推定する推定方法である。3次元光学特性は、屈折率分布又は吸収率分布である。第1波面情報は、物体を通過した第1照明光に基づいて取得した波面の情報であり、第2波面情報は、物体を通過した第2照明光に基づいて取得した波面の情報である。第2照明光における最大強度の波長は、第1照明光における最大強度の波長よりも短波長側に位置する。第1波面情報と第2波面情報の両方を用いて推定処理を実行する。
【0417】
推定処理は、コンピュータが実行する。コンピュータは、メモリに記憶されている第1波面情報と第2波面情報を読み出して推定処理を実行する。
【0418】
本実施形態の推定方法では、複数の第1波面情報と複数の第2波面情報の両方を用いて推定処理を実行し、複数の第1波面情報では、第1照明光の物体に対する入射角度が、第1波面情報毎に異なり、複数の第2波面情報では、第2照明光の物体に対する入射角度が、第2波面情報毎に異なることが好ましい。
【0419】
本実施形態の推定方法では、推定処理は、第1波面情報を拘束条件とする第1最適化処理と、第2波面情報を拘束条件とする第2最適化処理と、を含む。第1最適化処理と第2最適化処理の各々を、2回以上実行する。第1最適化処理の連続実行によって更新された3次元光学特性に対して、第2最適化処理を連続実行する。
【0420】
本実施形態の推定方法では、推定処理は、第1最適化処理の実行によって更新された3次元光学特性に対して、第2最適化処理を実行する。
【0421】
本実施形態の推定方法では、推定処理は、第1波面情報を拘束条件とする第1最適化処理と、第2波面情報を拘束条件とする第2最適化処理と、を含む。第1最適化処理と第2最適化処理とからなる複合処理を、2回以上実行する。複合処理では、第1最適化処理が最初に実行される。複合処理では、第2最適化処理が実行された後に、第1最適化処理は実行されない。
【0422】
本実施形態の推定方法では、複合処理は、3次元光学特性に設定された初期値に対して、第1最適化処理を実行する。
【0423】
本実施形態の推定方法では、第1最適化処理の実行回数が第2最適化処理の実行回数以上になる制御がされる。
【0424】
本実施形態の推定方法では、連続する複合処理において、制御が継続する。
【0425】
本実施形態の推定方法では、複合処理が所定回数実行されたあと、複合処理において、第2最適化処理の実行回数と第1最適化処理の実行回数との差を減らす制御がされる。
【0426】
本実施形態の推定方法では、第1照明光は、赤外領域の光であり、第2照明光は、可視領域の光である。
【0427】
本実施形態の推定方法では、第1照明光は、赤外領域の光であり、以下の条件式(A)を満足する。
2×λ2<λ1 (A)
ここで、
λ1は、第1照明光の波長、
λ2は、第2照明光の波長、
である。
【0428】
本実施形態の記録媒体は、プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。記録媒体には、メモリとプロセッサを備えたコンピュータに推定処理を実行させるためのプログラムが記録されている。メモリは、第1波面情報と第2波面情報を記憶している。第1波面情報は、物体を通過した第1照明光に基づいて取得した波面の情報であり、第2波面情報は、物体通過した第2照明光に基づいて取得した波面の情報である。第2照明光における最大強度の波長は、第1照明光における最大強度の波長よりも短波長側に位置する。3次元光学特性は、屈折率分布又は吸収率分布である。コンピュータは、プロセッサに、第1波面情報と第2波面情報をメモリから読み出させる処理と、第1波面情報と第2波面情報の両方を用いて、推定処理を実行させる。
【0429】
本実施形態の記録媒体では、メモリに、複数の第1波面情報と複数の第2波面情報を記憶し、複数の第1波面情報と複数の第2波面情報の両方を用いて、プロセッサに推定処理を実行させることが好ましい。複数の第1波面情報では、第1照明光の物体に対する入射角度が、第1波面情報毎に異なり、複数の第2波面情報では、第2照明光の物体に対する入射角度が、第2波面情報毎に異なる。
【産業上の利用可能性】
【0430】
以上のように、本発明は、物体の厚みが大きい場合であっても、物体の3次元光学特性を高い精度と高い空間分解能で取得できる推定装置、推定システム、推定方法、及び記録媒体に適している。
【符号の説明】
【0431】
1 推定装置
2 メモリ
3 プロセッサ
10、20 物体
21 測定光学系
22 レンズ
23 CCD
24 推定物体
30 推定システム
31 光源ユニット
32 第1光源
33 第2光源
34 光検出器
35 ステージ
36 ダイクロイックミラー
37、40 ビームスプリッタ
38、39 ミラー
41、60、70 角度変更機構
42、61,71 駆動装置
43、62,72 回転部材
50 推定システム
51 照明光学系
52 検出光学系
53 ミラー
80 第1遮光板
81 第2遮光板
82 第1光学フィルタ
83 第2光学フィルタ
90、100、110、120 推定システム
91、101 第1光検出器
92、102 第2光検出器
103 第1光学素子
104 第2光学素子
111 ミラー
112 ビームスプリッタ
113 光路長調整部
121 光源
122、123 レンズ
124 光検出器
130 推定システム
131 第1光源
132 第2光源
133 照明光学系
133a、135a レンズ
134 開口部材
134a、134c 遮光部
134b 透過部
135 結像光学系
136 光検出器
137 駆動機構
138 ダイクロイックミラー
AX 光軸
Lλ1 第1照明光
Lλ2 第2照明光
mea1 第1測定光
mea2 第2測定光
ref1 第1参照光
ref2 第2参照光
OPmea 測定光路
OPref 参照光路
RX 軸
S 物体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20