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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】顕微鏡システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
G02B21/06
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2023506627
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021011097
(87)【国際公開番号】W WO2022195805
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】100123962
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 圭介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良政
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/024420(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0100278(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0139388(US,A1)
【文献】特開2014-063151(JP,A)
【文献】特開2014-044254(JP,A)
【文献】特開2015-179208(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125281(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インコヒーレント光源と、検出光学系と、撮像素子と、を備え、
前記インコヒーレント光源は、時間的にコヒーレントでない光を射出する光源であり、
前記検出光学系は、標本の光学像を形成する光学系であり、
前記撮像素子は、前記検出光学系により形成された前記標本の光学像を受光し、
前記標本では、前記インコヒーレント光源から出射した光によって複数のコヒーレント照明が同時に行われ、
前記コヒーレント照明は、空間的にコヒーレントである光による照明であり、
前記標本に対して光束が照射される方向は、前記コヒーレント照明それぞれで異なり、
前記検出光学系の瞳面では、前記コヒーレント照明それぞれの光束が互いに異なる第1領域を通過し、
前記第1領域のそれぞれは、以下の条件(1)を満たし、
隣接する2つの前記第1領域の間隔のうち少なくとも1つの間隔は、以下の条件(2)を満たすことを特徴とする顕微鏡システム。
LS<PS×10-3 (1)
0.05×T<d (2)
ここで、
LSは、前記第1領域の面積(単位はmm)、
PSは、前記検出光学系の瞳の面積(単位はmm)、
dは、隣接する2つの前記第1領域の間隔(単位はmm)、
Tは、前記検出光学系の瞳の直径(単位はmm)、
である。
【請求項2】
前記第1領域の半数が、前記条件(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
以下の条件(3)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【数1】

ここで、
LSiは、i番目の前記第1領域の面積(単位はmm)、
nは、前記第1領域の数、
である。
【請求項4】
前記第1領域のいくつかは、第1円環領域内に位置し、
前記第1円環領域は、前記検出光学系の瞳領域のうち、半径が50%以上の領域であることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項5】
前記第1領域のいくつかは、前記第1円環領域内において、2重の円を形成するように並んでいることを特徴とする請求項4に記載の顕微鏡システム。
【請求項6】
前記第1領域のいくつかは、第2円環領域内に位置し、
前記第2円環領域は、前記検出光学系の瞳領域のうち、半径が70%から90%の領域であることを特徴とする請求項4に記載の顕微鏡システム。
【請求項7】
前記第1領域のいくつかは、第3円環領域内に位置し、
前記第3円環領域は、前記検出光学系の瞳領域のうち、半径が50%から70%の領域であることを特徴とする請求項6に記載の顕微鏡システム。
【請求項8】
前記第1領域のいくつかは、第1円領域内に位置し、
前記第1円領域は、前記検出光学系の瞳領域のうち、前記第1円環領域より中心側の領域であることを特徴とする請求項4に記載の顕微鏡システム。
【請求項9】
前記第1領域のいくつかは、前記第1円領域内において、円を形成するように並んでいることを特徴とする請求項8に記載の顕微鏡システム。
【請求項10】
前記第1領域のいくつかは、第2円領域内に位置し、
前記第2円領域は、前記検出光学系の瞳領域のうち、半径が50%以下の領域であることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項11】
前記第1領域のいくつかは、前記第2円領域内において、円を形成するように並んでいることを特徴とする請求項10に記載の顕微鏡システム。
【請求項12】
前記第1領域のいくつかは、第4円環領域内に位置し、
前記第4円環領域は、前記検出光学系の瞳領域のうち、半径が30%以上から50%の領域であることを特徴とする請求項10に記載の顕微鏡システム。
【請求項13】
前記第1領域のいくつかは、、第3円領域内に位置し、
前記第3円領域は、前記検出光学系の瞳領域のうち、半径が30%以下の領域であることを特徴とする請求項12に記載の顕微鏡システム。
【請求項14】
前記検出光学系の瞳を中心角が等しい4つの扇型に分けたとき、4つの前記扇型の全てに前記第1領域のいずれかが位置していることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項15】
前記第1領域のいくつかは、前記検出光学系の瞳の中心を挟んで対をなしていることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項16】
前記第1領域のそれぞれは、以下の条件(4)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
PS×10-6<LS (4)
【請求項17】
隣接する2つの前記第1領域の間隔のうち少なくとも1つの間隔は、条件(2)及び以下の条件(5)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
d<0.5×T (5)
【請求項18】
照明光学系を更に備え、
前記照明光学系の瞳面では、前記コヒーレント照明それぞれの光束が互いに異なる第2領域に位置し、
前記第2領域のそれぞれは、以下の条件(6)を満たし、
隣接する2つの前記第2領域の間隔のうち少なくとも1つの間隔は、条件(2)及び以下の条件(7)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
LS’<PS’×10-3 (6)
0.05×T’<d’ (7)
ここで、
LS’は、前記第2領域の面積(単位はmm)、
PS’は、前記照明光学系の瞳の面積(単位はmm)、
d’は、隣接する2つの前記第2領域の間隔(単位はmm)、
T’は、前記照明光学系の瞳の直径(単位はmm)、
である。
【請求項19】
開口部材を更に備え、
前記コヒーレント照明それぞれの光束は、所定面上の独立した複数の領域のそれぞれから射出され、
前記所定面は、前記検出光学系の光軸と直交する面であり、かつ、前記標本に対して前記検出光学系と反対側の位置にある面であり、
前記開口部材は、前記所定面に配置され、独立した複数の透過領域を備え、前記透過領域は、光を透過する領域であり、
前記透過領域のそれぞれは、前記第1領域のそれぞれに対応することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項20】
前記コヒーレント照明それぞれの光束は、所定面上の独立した複数の領域のそれぞれから射出され、
前記所定面は、前記検出光学系の光軸と直交する面であり、かつ、前記標本に対して前記検出光学系と反対側の位置にある面であり、
前記インコヒーレント光源は、前記所定面に複数配置され、
前記インコヒーレント光源のそれぞれは、前記第1領域のそれぞれに対応することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項21】
インコヒーレント光源と、照明光学系と、検出光学系と、撮像素子と、を備え、
前記インコヒーレント光源は、時間的にコヒーレントでない光を射出する光源であり、
前記検出光学系は、標本の光学像を形成する光学系であり、
前記撮像素子は、前記検出光学系により形成された前記標本の光学像を受光し、
前記標本では、前記インコヒーレント光源から出射した光によって複数のコヒーレント照明が同時に行われ、
前記コヒーレント照明は、空間的にコヒーレントである光による照明であり、
前記標本に対して光束が照射される方向は、前記コヒーレント照明それぞれで異なり、
前記照明光学系の瞳面では、前記コヒーレント照明それぞれの光束が互いに異なる第2領域に位置し、
前記第2領域のそれぞれは、以下の条件(6)を満たし、
隣接する2つの前記第2領域の間隔のうち少なくとも1つの間隔は、以下の条件(7)を満たすことを特徴とする顕微鏡システム。
LS’<PS’×10-3 (6)
0.05×T’<d’ (7)
ここで、
LS’は、前記第2領域の面積(単位はmm)、
PS’は、前記照明光学系の瞳の面積(単位はmm)、
d’は、隣接する2つの前記第2領域の間隔(単位はmm)、
T’は、前記照明光学系の瞳の直径(単位はmm)、
である。
【請求項22】
前記検出光学系は、対物レンズと、結像レンズと、を備え、
前記照明光学系は、コンデンサレンズを備え、
前記第2領域の面積は、以下の式(8)で表され、
前記照明光学系の瞳の直径は、以下の式(9)で表されることを特徴とする請求項21に記載の顕微鏡システム。
PS’=(FLcd×NA)×π (8)
T’=FLcd×NA (9)
ここで、
FLcdは、前記コンデンサレンズの焦点距離(単位mm)、
NAは、前記対物レンズの開口数、
である。
【請求項23】
開口部材を更に備え、
前記複数の光束のそれぞれは、所定面上の独立した複数の領域のそれぞれから射出され、
前記所定面は、前記検出光学系の光軸と直交する面であり、かつ、前記標本に対して前記検出光学系と反対側の位置にある面であり、
前記開口部材は、前記所定面に配置され、独立した複数の透過領域を備え、前記透過領域は、光を透過する領域であり、
前記透過領域のそれぞれは、前記第2領域のそれぞれに対応することを特徴とする請求項21に記載の顕微鏡システム。
【請求項24】
前記複数の光束のそれぞれは、所定面上の独立した複数の領域のそれぞれから射出され、
前記所定面は、前記検出光学系の光軸と直交する面であり、かつ、前記標本に対して前記検出光学系と反対側の位置にある面であり、
前記インコヒーレント光源は、前記所定面に複数配置され、
前記インコヒーレント光源のそれぞれは、前記第2領域のそれぞれに対応することを特徴とする請求項21に記載の顕微鏡システム。
【請求項25】
プロセッサを更に備え、
前記プロセッサは、
前記標本をモデル化した推定標本を通過する波面を、前記光束毎に順伝搬演算で求め、
前記光束毎に、前記波面に対応する前記検出光学系の結像位置における強度分布を算出し、
前記光束毎の前記強度分布を足し合わせることで計算像を生成し、
前記計算像と、前記撮像素子から出力された測定像と、の差を小さくする最適化処理を行うことで、前記推定標本を再構築することを特徴とする請求項1または請求項21に記載の顕微鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
実際の物体を計算機上の物体モデルで再現する再構成手法がある。この再構成手法では、測定した物体の画像と計算した物体モデルの画像が一致するように、最適化手法で計算機上の物体モデルを変更していく。最終的に、物体の画像と物体モデルの画像が一致した時に、計算機上の物体モデルは実際の物体を再現している。
【0003】
物体の画像は、測定光学系で取得される。物体モデルの画像がどのような画像になるかは、像演算手法で計算される。そのため、この再構成手法では、測定光学系と、像演算手法の2つが重要である。
【0004】
測定光学系として、例えば、顕微鏡の光学系を用いることができる。顕微鏡の光学系では、ハロゲンランプ又はLEDを用いて標本の画像を取得する。ハロゲンランプとLEDは、インコヒーレント光源である。
【0005】
インコヒーレント光源を用いた照明は、照明条件によって、インコヒーレント照明、コヒーレント照明、及びパーシャルコヒーレント照明に分類される。これらの照明について説明する。
【0006】
顕微鏡では、ケーラー照明が用いられる。ケーラー照明では、光源がコンデンサレンズの焦点面上に配置されるか、又は光源の像がコンデンサレンズの焦点面上に形成される。光源の各点から出た光は、コンデンサレンズで平行光線に変換される。よって、標本は平行光束で照明される。
【0007】
光源の大きさを変えると、標本面での照明光の空間的コヒーレンスが変化する。照明光の空間的コヒーレンスが変化することで、結像特性が変化する。
【0008】
インコヒーレント光源であっても、光源の大きさを非常に小さくすると、光源は点光源とみなせるようになる。点光源からの光を標本に照射する照明は、コヒーレント照明と呼ばれる。
【0009】
像演算手法は、線形演算と非線形演算に分類できる。線形演算では、標本内の1回の散乱のみが考慮される。非線形演算では、1回の散乱だけでなく、多重散乱も考慮される。
【0010】
線形演算では、1次ボルン近似を利用している。ボルン近似では、標本で2回以上の散乱が生じても、2回以上の散乱は無視される。線形演算では、標本情報と出力情報が一対一の関係に決まる。そのため、解析的に出力情報を計算できる。出力情報は、例えば、標本の像である。
【0011】
線形演算について、顕微鏡での結像を例に説明する。標本情報(標本の透過率分布)Oと出力情報(像強度分布)Iを光学系の点像強度分布PSFのコンボリューションの線形システムとみなせるとき、出力情報Iは、以下の式で表される。
I=PSF*O
ここで、*は、コンボリューションを表す。
【0012】
線形演算では、計算時間は短いが、2回以上の散乱は無視しているため計算精度は低くなる。線形演算を利用して再構成した物体モデルの像は、測定した標本の像を点像強度分布でデコンボリューションして求める。
【0013】
非線形演算は、標本で複数回の散乱が生じることを考慮した演算手法である。非線形演算の1つに、ビーム伝搬法がある。ビーム伝搬法では、物体モデルを複数の薄い層に置き換える。そして、光が各層を通過する際の波面変化を逐次計算して、物体モデルの像を計算する。
【0014】
ビーム伝搬法は、線形演算に比べて、より正確に、物体モデルの像を計算できる。
【0015】
最適化計算で標本の屈折率分布を復元する手法が、非特許文献1に開示されている。この手法では、ビーム伝搬法を利用している。また、画像の取得では、空間コヒーレント照明が行われている。
【0016】
画像から物体モデルの推定を推定することで、三次元光学特性を推定することができる。三次元光学特性は、例えば、物体の屈折率分布である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【文献】"High-resolution 3D refractive index microscopy of multiple-scattering samples from intensity images" Optica, Vol. 6, No. 9, pp.1211-1219(2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
非特許文献1では、照明は一つの光束で行われている。この場合、標本を複数の方向から照明するためには、照明角度を変える必要がある。そのため、画像の取得に時間かかる。その結果、画像の取得を開始してから物体モデルの推定が完了するまでの時間が長い。
【0019】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、画像の取得を開始してから物体モデルの推定が完了するまでの時間が短い顕微鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る顕微鏡システムは、
インコヒーレント光源と、検出光学系と、撮像素子と、を備え、
インコヒーレント光源は、時間的にコヒーレントでない光を射出する光源であり、
検出光学系は、標本の光学像を形成する光学系であり、
撮像素子は、検出光学系により形成された標本の光学像を受光し、
標本では、インコヒーレント光源から射出した光によって複数のコヒーレント照明が同時に行われ、
コヒーレント照明は、空間的にコヒーレントである光による照明であり、
標本に対して光束が照射される方向は、コヒーレント照明それぞれで異なり、
検出光学系の瞳面では、コヒーレント照明それぞれの光束が互いに異なる第1領域を通過し、
第1領域のそれぞれは、以下の条件(1)を満たし、
隣接する2つの第1領域の間隔のうち少なくとも1つの間隔は、以下の条件(2)を満たすことを特徴とする。
LS<PS×10-3 (1)
0.05×T<d (2)
ここで、
LSは、第1領域の面積(単位はmm)、
PSは、検出光学系の瞳の面積(単位はmm)、
dは、隣接する2つの第1領域の間隔(単位はmm)、
Tは、検出光学系の瞳の直径(単位はmm)、
である。
【0021】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る顕微鏡システムは、
インコヒーレント光源と、照明光学系と、検出光学系と、撮像素子と、を備え、
インコヒーレント光源は、時間的にコヒーレントでない光を射出する光源であり、
検出光学系は、標本の光学像を形成する光学系であり、
撮像素子は、検出光学系により形成された標本の光学像を受光し、
標本では、インコヒーレント光源から射出した光によって複数のコヒーレント照明が同時に行われ、
コヒーレント照明は、空間的にコヒーレントである光による照明であり、
標本に対して光束が照射される方向は、コヒーレント照明それぞれで異なり、
照明光学系の瞳面では、コヒーレント照明それぞれの光束が互いに異なる第2領域に位置し、
第2領域のそれぞれは、以下の条件(6)を満たし、
隣接する2つの第2領域の間隔のうち少なくとも1つの間隔は、以下の条件(7)を満たすことを特徴とする。
LS’<PS’×10-3 (6)
0.05×T’<d’ (7)
ここで、
LS’は、第2領域の面積(単位はmm)、
PS’は、照明光学系の瞳の面積(単位はmm)、
d’は、隣接する2つの第2領域の間隔(単位はmm)、
T’は、照明光学系の瞳の直径(単位はmm)、
である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、画像の取得を開始してから物体モデルの推定が完了するまでの時間が短い顕微鏡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態の顕微鏡システムと撮影画像を示す図である。
図2】検出光学系の瞳面を示す図である。
図3】第1例の検出光学系の瞳面を示す図である。
図4】第2例の検出光学系の瞳面を示す図である。
図5】第3例の検出光学系の瞳面を示す図である。
図6】第4例の検出光学系の瞳面を示す図である。
図7】第5例の検出光学系の瞳面を示す図である。
図8】第6例の検出光学系の瞳面を示す図である。
図9】第7例の検出光学系の瞳面を示す図である。
図10】第8例の検出光学系の瞳面を示す図である。
図11】第9例の検出光学系の瞳面を示す図である。
図12】本実施形態の顕微鏡システムを示す図である。
図13】照明光学系の瞳面を示す図である。
図14】本実施形態の顕微鏡システムを示す図である。
図15】開口部材を示す図である。
図16】本実施形態の顕微鏡システムを示す図である。
図17】第1のシミュレーションのフローチャートである。
図18】シミュレーションで用いる光学系を示す図である。
図19】推定標本の像を示す図である。
図20】波面の補正を示す図である。
図21】標本の勾配を示す図である。
図22】標本の勾配を示す図である。
図23】本実施形態の顕微鏡システムを示す図である。
図24】撮影画像を示す図である。
図25】第2のシミュレーションのフローチャートである。
図26】第2のシミュレーションのフローチャートである。
図27】シミュレーションで用いる光学系を示す図である。
図28】各層における波面を示す図である。
図29】撮影画像の取得位置における波面と結像面における波面を示す図である。
図30】推定標本の像を示す図である。
図31】波面の補正を示す図である。
図32】標本の勾配と波面の伝搬を示す図である。
図33】標本の勾配と波面の伝搬を示す図である。
図34】標本の勾配を示す図である。
図35】標本の勾配を示す図である。
図36】第1例のシミュレーションの結果を示す図である。
図37】開口部材と再構成した推定標本を示す図である。
図38】第2例の測定における開口部材と標本の像を示す図である。
図39】第2例の推定標本を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施例の説明に先立ち、本発明のある態様にかかる実施形態の作用効果を説明する。なお、本実施形態の作用効果を具体的に説明するに際しては、具体的な例を示して説明することになる。しかし、後述する実施例の場合と同様に、それらの例示される態様はあくまでも本発明に含まれる態様のうちの一部に過ぎず、その態様には数多くのバリエーションが存在する。したがって、本発明は例示される態様に限定されるものではない。
【0025】
以下の説明では、厚みが薄い標本を「薄い標本」といい、厚みが厚い標本を「厚い標本」という。
【0026】
本実施形態の顕微鏡システムは、インコヒーレント光源と、検出光学系と、撮像素子と、を備える。インコヒーレント光源は、時間的にコヒーレントでない光を射出する光源である。検出光学系は、標本の光学像を形成する光学系であり、撮像素子は、検出光学系により形成された標本の光学像を受光する。標本では、インコヒーレント光源から射出した光によって複数のコヒーレント照明が同時に行われ、コヒーレント照明は、空間的にコヒーレントである光による照明である。標本に対して光束が照射される方向は、コヒーレント照明それぞれで異なる。検出光学系の瞳面では、コヒーレント照明のそれぞれの光束が互いに異なる第1領域を通過する。第1領域は、検出光学系の瞳面を通過する光束の領域であり、第1領域のそれぞれは、以下の条件(1)を満たし、隣接する2つの第1領域の間隔のうち少なくとも1つの間隔は、以下の条件(2)を満たす。
LS<PS×10-3 (1)
0.05×T<d (2)
ここで、
LSは、第1領域の面積(単位はmm)、
PSは、検出光学系の瞳の面積(単位はmm)、
dは、隣接する2つの第1領域の間隔(単位はmm)、
Tは、検出光学系の瞳の直径(単位はmm)、
である。
【0027】
図1は、本実施形態の顕微鏡システムと撮影画像を示す図である。図1(a)は、顕微鏡システムを示す図である。図1(b)は、撮影画像を示す図である。
【0028】
図1(a)に示すように、顕微鏡システム1は、インコヒーレント光源2と、検出光学系3と、撮像素子4と、を備える。
【0029】
インコヒーレント光源2は、時間的にコヒーレントでない光を射出する光源である。標本5では、インコヒーレント光源から射出した光によって、コヒーレント照明が行われる。コヒーレント照明は、空間的にコヒーレントである光による照明である。
【0030】
標本5に対するコヒーレント照明では、複数の光束が、同時に標本5に照射される。また、複数の光束のそれぞれは、異なる方向から標本5に照射される。
【0031】
図1(a)では、光束L1と光束L2が図示されている。光束L1と光束L2は、標本5に照射される光束であって、インコヒーレント光源2から射出した光束である。光束L1と光束L2は、互いに独立した光束であって、標本5に同時に照射される。標本5に対する光束L1の向きと、標本5に対する光束L2の向きは異なる。光束L1と光束L2は、それぞれがコヒーレント照明光の光束である。
【0032】
標本5は、薄い標本である。図1では、検出光学系3の焦点位置Foは、標本5の内部に位置している。
【0033】
検出光学系3は、標本5の光学像5’を形成する光学系である。標本5から射出した光は、検出光学系3によって、結像面IPに集光される。結像面IPに、光学像5’が形成される。
【0034】
結像面IPには、撮像素子4の撮像面が位置している。撮像素子4は、検出光学系3によって形成された標本5の光学像5’を受光する。撮像素子4によって、光学像5’の画像の取得が行われる。その結果、図1(b)に示す撮影画像Imea(r)が得られる。rは、(x,y)の2次元座標を示す。
【0035】
標本5は、薄い標本なので、1つの撮影画像が取得される。よって、検出光学系3と撮像素子4は、光軸方向に移動しない。また、標本5も、光軸方向に移動しない。
【0036】
標本5から射出した光束は、検出光学系3の瞳位置Puに到達する。標本5には、複数の光束が、同時に照射される。よって、瞳位置Puには、複数の光束が同時に到達する。また、複数の光束のそれぞれは、異なる方向から標本5に照射される。よって、瞳位置Puでは、複数の光束が互いに異なる領域を通過する。
【0037】
図2は、検出光学系の瞳面を示す図である。第1領域は、検出光学系の瞳面を通過する光束の領域である。
【0038】
図2では、検出光学系3の瞳面10における第1領域の数は8である。例えば、第1領域11は、光束L1が瞳面10を通過する領域である。第1領域12は、光束L2が瞳面10を通過する領域である。
【0039】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第1領域のそれぞれは、以下の条件(1)を満たす。
LS<PS×10-3 (1)
ここで、
LSは、第1領域の面積(単位はmm)、
PSは、検出光学系の瞳の面積(単位はmm)、
である。
【0040】
複数の光束のそれぞれは、独立した光束である。よって、光源における光束の射出位置は、それぞれの光束で異なる。光源から射出した光束は、標本に照射される。このとき、1つの射出位置から射出した光束の照射では、1つの波面が標本に照射されることが好ましい。
【0041】
本実施形態の顕微鏡システムでは、撮影画像Imea(r)を取得することができる。撮影画像Imea(r)は、例えば、屈折率分布の推定に用いることができる。屈折率分布の推定については、後述する。
【0042】
屈折率分布の推定では、部分的コヒーレント結像用ビーム伝搬法を用いて、推定標本から計算像を算出する。計算像が撮影画像Imea(r)に近づくように、推定標本のパラメータ(屈折率分布)を勾配降下法等で変化させる。
【0043】
部分的コヒーレント結像用ビーム伝搬法では、計算時間は標本に照射される波面の数に比例する。条件(1)の上限値を上回る場合、1つの射出位置から射出した光束の照射で、複数の波面が標本に照射されることになる。そのため、計算時間が長くなり過ぎる。
【0044】
本実施形態の顕微鏡システムでは、隣接する2つの第1領域の間隔うち、少なくとも1つの間隔は以下の条件(2)を満たす。
0.05×T<d (2)
ここで、
dは、隣接する2つの第1領域の間隔(単位はmm)、
Tは、検出光学系の瞳の直径(単位はmm)、
である。
【0045】
一方の第1領域における光束で光学像が形成され、他方の第1領域における光束で光学像が形成される。標本に入射する角度は2つの光束で異なるので、2つの光学像も異なる。
【0046】
条件(2)の下限値を下回る場合、一方の第1領域と他方の第1領域とが近づき過ぎる。この場合、2つの光学像の差異が少なくなる。差異が少なくなると、2つの光学像から得られる情報が殆ど同じになる。そのため、例えば、屈折率分布の推定では、計算時間がかかる割に再構成性能が良くならない。
【0047】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第1領域の半数が、条件(2)を満たすことが好ましい。
【0048】
第1領域の半数が条件(2)を満たすと、互いに異なる情報を、隣接する2つの光学像から得られると共に、互いに異なる情報を多数取得することができる。屈折率分布を推定する場合、比較的高い精度で推定することができる。
【0049】
本実施形態の顕微鏡システムでは、以下の条件(3)を満たすことが好ましい。
【数1】
ここで、
LSiは、i番目の第1領域の面積(単位はmm)、
PSは、検出光学系の瞳の面積(単位はmm)、
nは、第1領域の数、
である。
【0050】
条件(3)の左辺は、第1領域のそれぞれの面積を足し合わせた合計面積である。条件(3)を満足することで標本に照射される波面の数を少なくでき、計算時間が短くなる。
【0051】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第1領域のいくつかは、第1円環領域内に位置し、第1円環領域は、検出光学系の瞳領域のうち、半径が50%以上の領域であることが好ましい。
【0052】
図3は、第1例の検出光学系の瞳面を示す図である。図3には、検出光学系の瞳面10における第1領域が図示されている。第1領域20と第1領域21は、円周上に位置している。第1領域20は、第1領域21が位置する円周の外側に位置している。第1領域20と第1領域21のどちらか一方があれば良い。
【0053】
図3では、1つの円が破線で描かれている。円の半径は、瞳10の半径の50%である。円の外側の領域が、第1円環領域30である。第1円環領域30は、半径が50%以上の領域である。
【0054】
第1例では、第1円環領域30に、第1領域20と第1領域21が位置している。第1例は、条件(1)、(2)、(3)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第1例では、比較的細かい構造を推定することができる。
【0055】
条件(2)を満たす第1領域が多いと計算時間が短くなる。第1領域のいくつかが条件(2)を満たさなくても計算時間は短くなる。半数以上の第1領域が条件(2)を満たすことが望ましい。
【0056】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第1領域のいくつかは、第1円環領域内において、2重の円を形成するように並んでいることが好ましい。
【0057】
図3に示すように、第1例では、第1領域20と第1領域21によって、第1円環領域30において2重の円が形成されている。よって、互いに異なる情報を、多数取得することができる。屈折率分布を推定する場合、比較的細かい構造を推定することができる。
【0058】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第1領域のいくつかは、第2円環領域内に位置し、第2円環領域は、検出光学系の瞳領域のうち、半径が70%から90%の領域であることが好ましい。
【0059】
図4は、第2例の検出光学系の瞳面を示す図である。図4には、検出光学系の瞳面10における第1領域が図示されている。第1領域20と第1領域21は、円周上に位置している。第1領域20は、第1領域21が位置する円周の外側に位置している。第1領域20のみがあり、第1領域21はなくても良い。
【0060】
図4では、2つの円が破線で描かれている。内側の円の半径は、瞳10の半径の70%である。外側の円の半径は、瞳10の半径の90%である。2つの円に挟まれた領域が、第2円環領域31である。第2円環領域31は、半径が70%から90%の領域である。
【0061】
第2例では、第2円環領域31に、第1領域20が位置している。第2例は、条件(1)、(2)、(3)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第2例では、比較的細かい構造を推定することができる。第1領域のいくつかが条件(2)を満たさなくても良い。半数以上の第1領域が条件(2)を満たすことが望ましい。
【0062】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第1領域のいくつかは、第3円環領域内に位置し、第3円環領域は、検出光学系の瞳領域のうち、半径が50%から70%の領域であることが好ましい。
【0063】
図5は、第3例の検出光学系の瞳面を示す図である。図5には、検出光学系の瞳面10における第1領域が図示されている。第1領域20と第1領域21は、円周上に位置している。第1領域20は、第1領域21が位置する円周の外側に位置している。第1領域21のみがあり、第1領域20はなくても良い。
【0064】
図5では、2つの円が破線で描かれている。内側の円の半径は、瞳10の半径の50%である。外側の円の半径は、瞳10の半径の70%である。2つの円に挟まれた領域が、第3円環領域32である。第3円環領域32は、半径が50%から70%の領域である。
【0065】
第3例では、第3円環領域32に、第1領域21が位置している。第3例は、条件(1)、(2)、(3)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第3例では、比較的細かい構造を推定することができる。第1領域のいくつかが条件(2)を満たさなくても良い。半数以上の第1領域が条件(2)を満たすことが望ましい。
【0066】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第1領域のいくつかは、第1円領域内に位置し、第1円領域は、検出光学系の瞳領域のうち、第1円環領域より中心側の領域であることが好ましい。
【0067】
図6は、第4例の検出光学系の瞳面を示す図である。図6には、検出光学系の瞳面10における第1領域が図示されている。第1領域20と第1領域40は、円周上に位置している。第1領域20は、第1領域40が位置する円周の外側に位置している。
【0068】
図6では、1つの円が破線で描かれている。円の外側の領域は、第1円環領域30である。円の内側の領域が、第1円領域50である。第1円領域50は、第1円環領域より中心側の領域である。
【0069】
第4例では、第1円領域50に、第1領域40が位置している。第4例は、条件(1)、(2)、(3)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第4例では、比較的細かい構造をだけでなく、比較的粗い構造を推定することができる。第1領域のいくつかが条件(2)を満たさなくても良い。半数以上の第1領域が条件(2)を満たすことが望ましい。
【0070】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第1領域のいくつかは、第1円領域内において、円を形成するように並んでいることが好ましい。
【0071】
図6に示すように、第4例では、第1領域40によって、第1円領域50に円が形成されている。屈折率分布を推定する場合、比較的粗い構造を推定することができる。
【0072】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第1領域のいくつかは、第2円領域内に位置し、第2円領域は、検出光学系の瞳領域のうち、半径が50%以下の領域であることが好ましい。
【0073】
図7は、第5例の検出光学系の瞳面を示す図である。図7には、検出光学系の瞳面10における第1領域が図示されている。第1領域40と第1領域41は、円周上に位置している。第1領域41は、第1領域40が位置する円周の外側に位置している。第1領域40と第1領域41のどちらか一方があれば良い。
【0074】
図7では、1つの円が破線で描かれている。円の半径は、瞳10の半径の50%である。円の内側の領域が、第2円領域51である。第2円領域51は、半径が50%以下の領域である。
【0075】
第5例では、第2円領域51に、第1領域40と第1領域41が位置している。第5例は、条件(1)、(2)、(3)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第5例では、比較的粗い構造を推定することができる。第1領域のいくつかが条件(2)を満たさなくても良い。半数以上の第1領域が条件(2)を満たすことが望ましい。
【0076】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第1領域のいくつかは、第2円領域内において、円を形成するように並んでいることが好ましい。
【0077】
図7に示すように、第5例では、第1領域40と第1領域41によって、第2円領域51において円が形成されている。よって、互いに異なる情報を、多数取得することができる。屈折率分布を推定する場合、比較的粗い構造を推定することができる。
【0078】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第1領域のいくつかは、第4円環領域内に位置し、第4円環領域は、検出光学系の瞳領域のうち、半径が30%以上から50%の領域であることが好ましい。
【0079】
図8は、第6例の検出光学系の瞳面を示す図である。図8には、検出光学系の瞳面10における第1領域が図示されている。第1領域40と第1領域41は、円周上に位置している。第1領域41は、第1領域40が位置する円周の外側に位置している。第1領域41のみがあり、第1領域40はなくても良い。
【0080】
図8では、2つの円が破線で描かれている。内側の円の半径は、瞳10の半径の30%である。外側の円の半径は、瞳10の半径の50%である。2つの円に挟まれた領域が、第4円環領域52である。第4円環領域52は、半径が30%から50%の領域である。
【0081】
第6例では、第4円環領域52に、第1領域41が位置している。第6例は、条件(1)、(2)、(3)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第6例では、比較的粗い構造を推定することができる。第1領域のいくつかが条件(2)を満たさなくても良い。半数以上の第1領域が条件(2)を満たすことが望ましい。
【0082】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第1領域のいくつかは、第3円領域内に位置し、第3円領域は、検出光学系の瞳領域のうち、半径が30%以下の領域であることが好ましい。
【0083】
図9は、第7例の検出光学系の瞳面を示す図である。図9には、検出光学系の瞳面10における第1領域が図示されている。第1領域40と第1領域41は、円周上に位置している。第1領域41は、第1領域40が位置する円周の外側に位置している。第1領域40のみがあり、第1領域41はなくても良い。
【0084】
図9では、1つの円が破線で描かれている。円の半径は、瞳10の半径の30%である。円の内側の領域が、第3円領域53である。第3円領域53は、半径が30%以下の領域である。
【0085】
第7例では、第3円領域53に、第1領域40が位置している。第7例は、条件(1)、(2)、(3)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第7例では、比較的粗い構造を推定することができる。第1領域のいくつかが条件(2)を満たさなくても良い。半数以上の第1領域が条件(2)を満たすことが望ましい。
【0086】
本実施形態の顕微鏡システムでは、検出光学系の瞳を中心角が等しい4つの扇型に分けたとき、4つの扇型の全てに第1領域のいずれかが位置していることが好ましい。
【0087】
図10は、第8例の検出光学系の瞳面を示す図である。図10には、検出光学系の瞳面10における第1領域が図示されている。第1領域60は、格子状に位置している。
【0088】
図10では、直交する2つの直線が描かれている。2つの直線によって、瞳面10は、第1の扇型領域70と、第2の扇型領域71と、第3の扇型領域72と、第4の扇型領域74と、に分かれる。4つの扇型領域では、1つの扇型領域における中心角は、他の扇型領域における中心角と等しい。
【0089】
第8例では、第1の扇型領域70、第2の扇型領域71、第3の扇型領域72、及び第4の扇型領域74の全てで、第1領域60が位置している。第8例は、条件(1)、(2)、(3)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第8例では、比較的細かい構造をだけでなく、比較的粗い構造を推定することができる。第1領域のいくつかが条件(2)を満たさなくても良い。半数以上の第1領域が条件(2)を満たすことが望ましい。
【0090】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第1領域のいくつかは、検出光学系の瞳の中心を挟んで対をなしていることが好ましい。
【0091】
図11は、第9例の検出光学系の瞳面を示す図である。図11には、検出光学系の瞳面10における第1領域が図示されている。第1領域80と第1領域81は、円周上に位置している。
【0092】
第9例では、第1領域80と第1領域81は、検出光学系の瞳の中心Cを挟んで対をなしている。第9例では、条件(1)、(2)、(3)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第9例では、比較的粗い構造を推定することができる。第1領域のいくつかが条件(2)を満たさなくても良い。半数以上の第1領域が条件(2)を満たすことが望ましい。
【0093】
また、第9例では、第7例に比べて、第1領域数が少ない。屈折率分布を推定する場合、第7例における推定時間よりも短い時間で推定することができる。
【0094】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第1領域のそれぞれは、以下の条件(4)を満たすことが好ましい。
PS×10-6<LS (4)
ここで、
LSは、第1領域の面積(単位はmm)、
PSは、検出光学系の瞳の面積(単位はmm)、
である。
【0095】
条件(4)の下限値を下回る場合、光学像が暗くなる。この場合、撮影画像Imea(r)におけるSNが悪化する。撮影画像Imea(r)は、例えば、屈折率分布の推定に用いることができる。撮影画像Imea(r)におけるSNが悪化すると、推定精度が悪化する。
【0096】
本実施形態の顕微鏡システムでは、隣接する2つの第1領域の間隔うち、少なくとも1つの間隔は、以下の条件(5)を満たすことが好ましい。
d<0.5×T (5)
ここで、
dは、隣接する2つの第1領域の間隔(単位はmm)、
Tは、検出光学系の瞳の直径(単位はmm)
である。
【0097】
条件(5)の上限値を上回る場合、第1領域の数が少なくなる。そのため、光学像が暗くなる。
【0098】
条件(2)を満たす第1領域が、同時に条件(5)を満たすことが望ましい。
【0099】
本実施形態の顕微鏡システムは、以下の条件(A)を満たすことが好ましい。
4≦n≦100 (A)
ここで、
nは、第1領域の数、
である。
【0100】
条件(A)の下限値を下回る場合、第1領域の数が少なくなる。そのため、光学像が暗くなる。条件(A)の上限値を上回る場合、例えば、屈折率分布の推定で時間が長くなる。
【0101】
本実施形態の顕微鏡システムは、インコヒーレント光源と、照明光学系と、検出光学系と、撮像素子と、を備える。インコヒーレント光源は、時間的にコヒーレントでない光を射出する光源である。検出光学系は、標本の光学像を形成する光学系であり、撮像素子は、検出光学系により形成された標本の光学像を受光する。標本では、インコヒーレント光源から射出した光によって複数のコヒーレント照明が同時に行われ、コヒーレント照明は、空間的にコヒーレントである光による照明である。標本に対して光束が照射される方向は、コヒーレント照明それぞれで異なり、照明光学系の瞳面では、コヒーレント照明それぞれの光束が互いに異なる第2領域に位置する。第2領域のそれぞれは、以下の条件(6)を満たし、隣接する2つの第2領域の間隔のうち少なくとも1つの間隔は、以下の条件(7)を満たす。
LS’<PS’×10-3 (6)
0.05×T’<d’ (7)
ここで、
LS’は、第2領域の面積(単位はmm)、
PS’は、照明光学系の瞳の面積(単位はmm)、
d’は、隣接する2つの第2領域の間隔(単位はmm)、
T’は、照明光学系の瞳の直径(単位はmm)、
である。
【0102】
図12は、本実施形態の顕微鏡システムを示す図である。図1と同じ構成については同じ番号を付し、説明は省略する。
【0103】
顕微鏡システム90は、インコヒーレント光源2と、照明光学系91と、検出光学系3と、撮像素子4と、を備える。
【0104】
照明光学系91の瞳面PIから離れた位置にインコヒーレント光源2を配置した場合、インコヒーレント光源2から射出した光が瞳面PIを通過する。瞳面PIの位置にインコヒーレント光源2を配置した場合、瞳面PIから光が射出する。インコヒーレント光源2から射出した光は、照明光学系91を通過して、標本5に照射される。
【0105】
図13は、照明光学系の瞳面を示す図である。図13では、照明光学系91の瞳面100における第2領域の数は8である。瞳面100では、複数の光が互いに異なる領域に位置する。第2領域のそれぞれの位置は、互いに異なる。第2領域は、複数の光のそれぞれの位置を示している。
【0106】
例えば、第2領域101は、光束L1が瞳面100を通過する領域、又は、光束L1が生成される領域である。第2領域102は、光束L2が瞳面100を通過する領域、又は、光束L2が生成される領域である。光束L1と光束L2は、それぞれがコヒーレント照明光の光束である。
【0107】
本実施形態の顕微鏡システムでは、第2領域のそれぞれは、以下の条件(6)を満たす。
LS’<PS’×10-3 (6)
ここで、
LS’は、第2領域の面積(単位はmm)、
PS’は、照明光学系の瞳の面積(単位はmm)、
である。
【0108】
条件(6)の技術的意義は、条件(1)の技術的意義と同じである。
【0109】
本実施形態の顕微鏡システムでは、隣接する2つの第2領域の間隔うち、少なくとも1つの間隔は、以下の条件(7)を満たす。
0.05×T’<d’ (7)
ここで、
d’は、隣接する2つの第2領域の間隔(単位はmm)、
T’は、照明光学系の瞳の直径(単位はmm)、l
である。
【0110】
条件(7)の技術的意義は、条件(2)の技術的意義と同じである。
【0111】
本実施形態の顕微鏡システムでは、検出光学系は、対物レンズと、結像レンズと、を備え、照明光学系は、コンデンサレンズを備え、第2領域の面積は、以下の式(8)で表され、照明光学系の瞳の直径は、以下の式(9)で表されることが好ましい。
PS’=(FLcd×NA)×π (8)
T’=FLcd×NA (9)
ここで、
FLcdは、コンデンサレンズの焦点距離(単位mm)、
NAは、対物レンズの開口数、
である。
【0112】
本実施形態の顕微鏡システムは、開口部材を更に備えることが好ましい。複数の光束のそれぞれは、所定面上の独立した複数の領域のそれぞれから射出される。所定面は、検出光学系の光軸と直交する面であり、かつ、標本に対して検出光学系と反対側の位置にある面である。開口部材は、所定面に配置され、独立した複数の透過領域を備える。透過領域は、光を透過する領域であり、透過領域のそれぞれは、第2領域のそれぞれに対応する。
【0113】
図14は、本実施形態の顕微鏡システムを示す図である。図12と同じ構成については同じ番号を付し、説明は省略する。
【0114】
顕微鏡システム110は、インコヒーレント光源2と、照明光学系91と、開口部材111と、検出光学系3と、撮像素子4と、を備える。
【0115】
顕微鏡システム110では、複数の光束のそれぞれは、所定面上の複数の領域のそれぞれから射出されている。複数の領域のそれぞれは、互いに独立している。所定面は、検出光学系3の光軸と直交する面であり、かつ、標本5に対して検出光学系3と反対側の位置にある面である。顕微鏡システム110では、照明光学系91の瞳面PIが所定面である。
【0116】
開口部材111は、所定面に配置されている。顕微鏡システム110では、開口部材111は、瞳面PIに配置されている。
【0117】
顕微鏡システム110は、プロセッサ112を備えていても良い。プロセッサ112を備えることで、例えば、標本5の屈折率分布を推定することができる。
【0118】
図15は、開口部材を示す図である。開口部材111は、独立した複数の透過領域112を備えている。複数の透過領域112のそれぞれは、互いに独立している。透過領域112の周囲は、遮光領域113である。
【0119】
透過領域112は、光を透過する領域である。光が透過領域112を通過することで、光束L1が標本5に照射される。光が別の透過領域112を通過することで、光束L2が標本5に照射される。
【0120】
透過領域112は、瞳面PIにおける光の領域である。透過領域112のそれぞれは、第2領域のそれぞれに対応する。
【0121】
開口部材111では、4つの円の円周上に、透過領域112が位置している。4つの円を、開口部材の外縁から中心に向かって、第1円、第2円、第3円、第4円とする。
【0122】
第1円の円周上に、透過領域112aが位置している。第2円の円周上に、透過領域112bが位置している。第3円の円周上に、透過領域112cが位置している。第4円の円周上に、透過領域112dが位置している。開口部材111を用いて屈折率分布を推定すると、高い精度で推定を行うことができる。
【0123】
開口部材111では、中央に透過領域が設けられている。中央に透過領域を設けることで、開口部材111の位置決めを容易にすることができる。しかしながら、中央の透過領域は、必ずしも必要ではない。
【0124】
開口部材の具体例について説明する。第2領域は瞳面PIに位置し、第1領域は瞳面Puに位置する。瞳面PIは、瞳面Puと共役にすることができる。この場合、第2領域は第1領域と共役になる。第2領域は開口部材の透過領域なので、第1領域を開口部材の透過領域と見なすことができる。その結果、図3図11は、開口部材の具体例を示していると見なすことができる。
【0125】
図3は、開口部材の第1例を示している。図3では、第1領域20と第1領域21が、開口部材の透過領域を表している。開口部材のいくつかは、照明光学系の瞳領域のうち、半径が50%以上の領域に位置している。開口部材の透過領域のいくつかは、半径が50%以上の領域内において、2重の円を形成するように並んでいる。
【0126】
第1例は、条件(6)、(7)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第1例では、比較的細かい構造を推定することができる。
【0127】
図4は、開口部材の第2例を示している。図4では、開口部材の透過領域のいくつかは、照明光学系の瞳領域のうち、半径が70%から90%の領域に位置している。
【0128】
第2例は、条件(6)、(7)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第2例では、比較的細かい構造を推定することができる。
【0129】
図5は、開口部材の第3例を示している。図5では、開口部材の透過領域のいくつかは、照明光学系の瞳領域のうち、半径が50%から70%の領域に位置している。
【0130】
第3例は、条件(6)、(7)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第3例では、比較的細かい構造を推定することができる。
【0131】
図6は、開口部材の第4例を示している。図6では、開口部材の透過領域のいくつかは、照明光学系の瞳領域のうち、半径が50%以上の領域より中心側の領域に位置している。
【0132】
第4例は、条件(6)、(7)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第4例では、比較的細かい構造をだけでなく、比較的粗い構造を推定することができる。
【0133】
図7は、開口部材の第5例を示している。図7では、開口部材の透過領域のいくつかは、照明光学系の瞳領域のうち、半径が50%以下の領域に位置している。
【0134】
第5例は、条件(6)、(7)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第5例では、比較的粗い構造を推定することができる。
【0135】
図8は、開口部材の第6例を示している。図8では、開口部材の透過領域のいくつかは、照明光学系の瞳領域のうち、半径が30%以上から50%の領域に位置している。
【0136】
第6例は、条件(6)、(7)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第6例では、比較的粗い構造を推定することができる。
【0137】
図9は、開口部材の第7例を示している。図9では、開口部材の透過領域のいくつかは、照明光学系の瞳領域のうち、半径が30%以下の領域に位置している。
【0138】
第7例は、条件(6)、(7)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第7例では、比較的粗い構造を推定することができる。
【0139】
図10は、開口部材の第8例を示している。図10では、照明光学系の瞳を中心角が等しい4つの扇型に分けたとき、4つの扇型の全てに開口部材の透過領域のいずれかが位置している。
【0140】
第8例は、条件(6)、(7)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第8例では、比較的細かい構造をだけでなく、比較的粗い構造を推定することができる。
【0141】
図11は、開口部材の第9例を示している。図11では、開口部材の透過領域のいくつかは、照明光学系の瞳の中心を挟んで対をなしている。
【0142】
第9例は、条件(6)、(7)を満足している。屈折率分布を推定する場合、第9例では、比較的粗い構造を推定することができる。また、第9例では、第7例に比べて、開口部材の透過領域の数が少ない。屈折率分布を推定する場合、第7例における推定時間よりも短い時間で推定することができる。
【0143】
本実施形態の顕微鏡システムでは、複数の光束のそれぞれは、所定面上の独立した複数の領域のそれぞれから射出されることが好ましい。所定面は、検出光学系の光軸と直交する面であり、かつ、標本に対して検出光学系と反対側の位置にある面である。インコヒーレント光源は、所定面に複数配置され、インコヒーレント光源のそれぞれは、第2領域のそれぞれに対応する。
【0144】
図16は、本実施形態の顕微鏡システムを示す図である。図12と同じ構成については同じ番号を付し、説明は省略する。
【0145】
顕微鏡システム120は、インコヒーレント光源121と、照明光学系122と、検出光学系3と、撮像素子4と、を備える。
【0146】
顕微鏡システム120では、複数の光束のそれぞれは、所定面上の複数の領域のそれぞれから射出されている。複数の領域のそれぞれは、互いに独立している。所定面は、検出光学系3の光軸と直交する面であり、かつ、標本5に対して検出光学系3と反対側の位置にある面である。顕微鏡システム120では、照明光学系122の瞳面PIが所定面である。
【0147】
インコヒーレント光源121は、所定面に配置されている。顕微鏡システム120では、インコヒーレント光源121は、瞳面PIに配置されている。
【0148】
インコヒーレント光源121は、独立した複数の発光領域121aを備えている。複数の発光領域121aのそれぞれは、互いに独立している。
【0149】
発光領域121aは、光を射出する領域である。光が発光領域121aから射出することで、光束L1が標本5に照射される。光が別の発光領域121aから射出することで、光束L2が標本5に照射される。
【0150】
発光領域121aは、瞳面PIにおける光の領域である。発光領域121aのそれぞれは、第2領域のそれぞれに対応する。
【0151】
図15に示す透過領域112を発光領域121aと見なすと、図15はインコヒーレント光源を示す図と見なすことができる。また、図3図11は、インコヒーレント光源の具体例と見なすことができる。よって、第1例から第9例の開口部材によって生じる効果は、インコヒーレント光源を用いた場合にも生じる。
【0152】
本実施形態の顕微鏡システムは、プロセッサを更に備えることが好ましい。プロセッサは、標本をモデル化した推定標本を通過する波面を、光束毎に順伝搬演算で求め、光束毎に、波面に対応する検出光学系の結像位置における強度分布を算出し、光束毎の強度分布を足し合わせることで計算像を生成し、計算像と、撮像素子から出力された測定像と、の差を小さくする最適化処理を行うことで、推定標本を再構築する。
【0153】
本実施形態の顕微鏡システムは、プロセッサを備える。プロセッサを備えることで、本実施形態の顕微鏡システムでは、推定標本を再構築することができる。推定標本の再構築では、例えば、標本の屈折率分布を推定する。
【0154】
推定標本の再構築では、標本をモデル化した推定標本を通過する波面を、光束毎に順伝搬演算で求める。光束毎に、波面に対応する検出光学系の結像位置における強度分布を算出する。光束毎の強度分布を足し合わせることで計算像を生成する。計算像と、撮像素子から出力された測定像と、の差を小さくする最適化処理を行う。
【0155】
以下、推定標本の再構築について説明する。
【0156】
図14に示す顕微鏡システム110では、照明光学系91と検出光学系3との間に、標本5が位置している。図16に示す顕微鏡システム120では、照明光学系122と検出光学系3との間に、標本5が位置している。照明光学系と検出光学系で、測定光学系が形成されている。
【0157】
標本5には、複数の方向から、光束が同時に入射する。複数の方向から同時に入射する光線によって、標本5が照明されている。実施形態の顕微鏡システムでは、それぞれの光束による照明はコヒーレント照明である。
【0158】
検出光学系3によって、標本5の光学像5’形成される。光学像5’を撮像素子4で撮像することで、図1(b)に示す撮影画像Imea(r)が得られる。
【0159】
撮影画像Imea(r)は、プロセッサに入力される。プロセッサでは、撮影画像Imea(r)を用いて、推定標本の再構築が行われる。再構築では、シミュレーションが行われる。
【0160】
第1のシミュレーションでは、標本は薄い標本である。第2のシミュレーションでは、標本は厚い標本である。
【0161】
第1のシミュレーションについて説明する。第1のシミュレーションで用いる光学系は、図14に示す顕微鏡システム110の測定光学系である。
【0162】
図14に示すように、標本5は、薄い標本である。検出光学系3の焦点位置Foは、標本5の内部に位置している。例えば、焦点位置Foと標本5の表面5aとの間隔はΔz1である。
【0163】
標本5は、薄い標本なので、1つの撮影画像が取得される。よって、検出光学系3と撮像素子4は、光軸方向に移動しない。また、標本5も、光軸方向に移動しない。
【0164】
図17は、第1のシミュレーションのフローチャートである。フローチャートを説明する前に、推定標本と波面について説明する。
【0165】
図18は、シミュレーションで用いる光学系を示す図である。シミュレーションで用いる光学系は、撮影画像Imea(r)を取得した測定光学系と同一である。シミュレーションでは、標本5の代わりに、推定標本130が用いられる。
【0166】
図18には、推定標本130、波面fin (r)、振幅透過率T(r)、波面gout (r)、撮影画像の取得位置における波面u(r)、及び結像面における波面uimg (r)が図示されている。
【0167】
顕微鏡システム110では、開口部材111が、瞳面PIに配置されている。第2領域は、開口部材111の透過領域である。透過領域から光が射出するので、第2領域は光源と見なすことができる。
【0168】
図18では、1番目の光源からNLS番目までの第2領域が図示されている。第2領域は、照明光学系91の瞳位置に配置することができる。
【0169】
図17に戻って、シミュレーションについて説明する。シミュレーションは、推定標本を推定するステップと、推定標本の像を算出するステップと、推定標本の屈折率分布を最適化するステップと、推定標本を更新するステップと、推定標本の構造を再構成して出力するステップと、を含む。
【0170】
ステップS10では、第2領域の数NLSが設定される。顕微鏡システム110では、照明光学系の瞳面に開口部材の透過領域が位置している。透過領域は第2領域である。よって、ステップS10では、NLSに透過領域の数が設定される。
【0171】
ステップS20は、推定標本を推定するステップである。標本5については、1枚の撮影画像が取得されている。推定標本130は薄い標本なので、1つの薄い層とみなすことができる。よって、振幅透過率の初期値の設定は1回行われる。
【0172】
ステップS20では、推定標本130における振幅透過率T(r)に初期値が設定される。
【0173】
推定標本130の像を算出するためには、推定標本130の情報、例えば、屈折率分布が必要である。推定標本130は、標本5をモデル化した標本である。よって、推定標本130の屈折率分布に標本5の屈折率分布を用いることができると良い。
【0174】
しかしながら、標本5の屈折率分布は、撮影画像Imea(r)から正確に得られない。よって、推定標本130の屈折率分布は、推定せざるを得ない。
【0175】
式(10)に示すように、推定標本130の屈折率分布n(r)は、振幅透過率T(r)に変換することができる。よって、ステップS20では、推定標本130における振幅透過率T(r)の初期値を設定する。
【数2】

【数3】
ここで、
は、照明光の波長λに対して2π/λ、
は、媒質の屈折率
dzは、標本の厚み、
である。
【0176】
振幅透過率T(r)の値を撮影画像Imea(r)から推定できる場合、推定した値を初期値に用いても良い。また、他の方法で振幅透過率T(r)の値を推定できる場合、推定した値を初期値に設定することができる。初期値が推定できない場合、例えば、T(r)=1とする。
【0177】
ステップS30では、変数mの値が初期化される。後述のステップS41、ステップS42、ステップS43、ステップS44、及びステップS45は、全ての光源に対して実行される。変数mは、これらのステップが実行された回数を表している。
【0178】
ステップS40とステップS50は、推定標本の像を算出するステップである。推定標本の像の数は、撮影画像の数と同数である。撮影画像の数は1なので、推定標本の像の数も1である。
【0179】
ステップS40は、ステップS41、ステップS42、ステップS43、ステップS44、ステップS45、ステップS46、及びステップS47を有する。
【0180】
ステップS41では、推定標本130へ入射する波面fin (r)が算出される。fin (r)は、1番目の光源からNLS番目までの光源から射出された光の波面を表している。
【0181】
照明光学系の瞳には、1番目の光源からNLS番目までの光源が位置している第1波面を、各光源から射出された波面とすると、波面fin (r)は、第1波面を表している。
【0182】
上述のように、第2領域の各々は、点光源とみなすことができる。図18では、m番目の光源から照明光Lmが射出されている。照明光Lmは、推定標本130に入射する。
【0183】
この場合、波面fin (r)は、式(11)と式(12)で表される。
【数4】

【数5】

ここで、
kは、2πn/r、
は、媒質の屈折率、
θx,m、θy,mは、推定標本への入射角、
である。
【0184】
ステップS42では、推定標本130から射出される波面gout (r)が算出される。薄い標本の場合、波面gout (r)は、式(13)で表される。
【数6】

ここで、
(r)は、推定標本の振幅透過率、
である。
【0185】
波面gout (r)は、波面fin (r)が推定標本130を通過した後の波面である。波面fin (r)は第1波面を表しているので、波面gout (r)は第2波面を表している。
【0186】
推定標本130は薄い標本なので、式(13)に示すように、波面fin (r)から、波面gout (r)を直接算出することができる。
【0187】
ステップS43では、撮影画像の取得位置における波面u(r)が算出される。撮影画像の取得位置は、撮影画像の取得が行われたときの、標本側における検出光学系3の焦点位置Foである。
【0188】
波面u(r)は、式(14)で表される。
【数7】

ここで、
Δz1は、推定標本の表面から撮影画像の取得位置までの距離、
λは、波長、
uは、瞳面座標(ξ,η)の2次元表記、
2Dは、2次元フーリエ変換、
2D -1は、2次元フーリエ逆変換、
である。
【0189】
後述のステップS60では、残差が算出される。残差の算出は、撮影画像と推定標本の像が用いられる。推定標本の像を算出するためには、撮影画像の取得位置における波面を求める必要がある。
【0190】
上述のように、焦点位置Foと表面5aとの間隔はΔz1である。光の進行方向に向かって測定したときの距離の符号をプラスとすると、撮影画像の取得位置は、表面5aから-Δz1だけ離れた位置になる。
【0191】
よって、シミュレーションで用いる光学系では、撮影画像の取得位置は、推定標本130の表面130aから-Δz1だけ離れた位置になる。この場合、撮影画像の取得位置における波面は、表面130aから-Δz1だけ離れた位置における波面になる。
【0192】
式(14)における波面u(r)は、波面gout (r)が、光の進行方向とは逆の方向にΔz1だけ伝搬した波面である。この波面は、表面130aから-Δz1だけ離れた位置における波面である。よって、式(14)における波面u(r)は、撮影画像の取得位置における波面を表している。
【0193】
なお、撮影画像の取得位置と表面5aの位置は、厳密には異なる。しかしながら、標本5は薄い標本なので、Δz1の値は非常に小さい。そのため、撮影画像の取得位置と表面5aの位置は、ほぼ同じと見なすことができる。
【0194】
推定標本130も薄い標本である。そのため、表面130aの位置と、表面130aから-Δz1だけ離れた位置は、ほぼ同じと見なすことができる。すなわち、波面gout (r)の位置と波面u(r)の位置は、ほぼ同じと見なすことができる。この場合、波面u(r)の代わりに、波面gout (r)を用いることもできる。
【0195】
ステップS44では、結像面における波面uimg (r)が算出される。波面u(r)は、結像面IPに伝搬される。このとき、検出光学系3を通過する。検出光学系3は、フーリエ光学系を形成している。よって、式(15)に示すように、結像面IPにおける波面uimg (r)は、波面u(r)と検出光学系の瞳関数P(u)を用いて算出することができる。
【数8】
【0196】
ステップS45では、波面uimg (r)が2乗される。波面uimg (r)は、光の振幅を表している。よって、波面uimg (r)を2乗することで、光強度が算出される。
【0197】
|uimg (r)|は、結像面IPに光強度分布を表している。第1強度分布を、検出光学系の結像位置における光強度分布とすると、|uimg (r)|は、検出光学系の結像位置における第1光強度分布を表している。
【0198】
波面fin (r)、波面gout (r)、波面u(r)、及び波面uimg (r)は、m番目の光源から射出された照明光、すなわち、1つの光源から射出された照明光によって生成される波面を表している。
【0199】
推定標本の像Iest(r)は、全ての光源から射出された照明光によって生成される。よって、全ての光源について、波面fin (r)、波面gout (r)、波面u(r)、及び波面uimg (r)を求めなくてはならない。
【0200】
ステップS46では、変数mの値が第2領域の数NLSと一致したか否かが判断される。判断結果がNOの場合は、ステップS47が実行される。判断結果がYESの場合は、ステップS50が実行される。
【0201】
(判断結果がNOの場合:m≠NLS
判断結果がNOの場合、ステップS47で、変数mの値に1が加算される。ステップS47が終ると、ステップS41に戻る。
【0202】
ステップS47で、変数mの値が1つ増えている。そのため、別の光源について、ステップS41で波面fin (r)が算出され、ステップS42で波面gout (r)が算出され、ステップS43で波面u(r)が算出され、ステップS44で波面uimg (r)が算出され、ステップS45で|uimg (r)|が算出される。
【0203】
ステップS41、ステップS42、ステップS43、ステップS44、及びステップS45は、全ての光源について|uimg (r)|が求まるまで、繰り返し行われる。
【0204】
(判断結果がYESの場合:m=NLS
判断結果がYESの場合、ステップS50で、|uimg (r)|の足し合わせが行われる。その結果、推定標本の像Iest(r)が算出される。推定標本の像Iest(r)は、式(16)で表される。
【数9】
【0205】
図19は、推定標本の像を示す図である。推定標本の像Iest(r)は、全ての光源について波面uimg (r)が求められた場合の像である。図19に示すように、各光源について波面uimg (r)が算出され、波面uimg (r)から|uimg (r)|が算出され|uimg (r)|が全て足し合わされている。その結果、推定標本の像Iest(r)が算出される。
【0206】
ステップS60で、残差が算出される。残差は、式(17)で表される。式(17)に示すように、残差は、撮影画像Imea(r)と推定標本の像Iest(r)とから算出される。
【数10】
【0207】
式(17)は、行列のノルムを表している。ノルムは、式(18)で表される。
【数11】
【0208】
ステップS70では、残差と閾値との比較が行われる。判断結果がNOの場合は、ステップS80が実行される。判断結果がYESの場合は、ステップS110が実行される。
【0209】
(判断結果がNOの場合:残差≧閾値)
【0210】
ステップS80では、変数mの値が初期化される。後述のステップS91とステップS92は、全ての光源に対して実行される。変数mは、これらのステップが実行された回数を表している。
【0211】
ステップS90は、推定標本の屈折率分布を最適化するステップである。
【0212】
ステップS90は、ステップS91、ステップS92、ステップS93、及びステップS94を有する。
【0213】
ステップS91では、波面u’(r)が算出される。波面u’(r)の算出では、撮影画像Imea(r)と推定標本の像Iest(r)が用いられる。また、波面u’(r)は、撮影画像の取得位置における波面である。
【0214】
波面u’(r)は式(19)で表される。
【数12】
【0215】
図20は、波面の補正を示す図である。図20(a)は、推定標本から射出する補正前の波面を示す図である。図20(b)は、撮影画像の取得位置における補正前の波面を示す図である。図20(c)は、撮影画像の取得位置における補正後の波面を示す図である。図20(d)は、推定標本から射出する補正後の波面を示す図である。
【0216】
図19に示すように、推定標本の像Iest(r)は、波面uimg (r)に基づいて算出される。また、図19図20(b)に示すように、波面uimg (r)は、波面u(r)に基づいて算出される。
【0217】
図20(a)に示すように、波面u(r)の算出には、振幅透過率T(r)が用いられている。振幅透過率T(r)は、推定された振幅透過率である。ステップS90の1回目の実行時、この振幅透過率T(r)は、標本5の振幅透過率と異なる。
【0218】
振幅透過率T(r)と標本5の振幅透過率との差が大きくなるほど、推定標本の像Iest(r)と撮影画像Imea(r)との差も大きくなる。よって、推定標本の像Iest(r)と撮影画像Imea(r)との差は、振幅透過率T(r)と標本5の振幅透過率との差を反映していると見なすことができる。
【0219】
そこで、式(11)に示すように、推定標本の像Iest(r)と撮影画像Imea(r)と用いて、波面u(r)を補正する。その結果、図20(c)に示すように、補正後の波面、すなわち、波面u’(r)が得られる。
【0220】
波面u’(r)を用いることで、新たな振幅透過率T(r)を算出できる。波面u’(r)は、波面u(r)と異なる。よって、新たな振幅透過率T(r)は、波面u(r)を算出したときの振幅透過率とは異なる。
【0221】
このように、波面u’(r)を用いて、振幅透過率T(r)を算出することができる。ただし、図20(a)に示すように、振幅透過率T(r)の算出には、波面gout (r)が必要である。
【0222】
図20(a)、(c)に示すように、波面u’(r)の位置と、波面gout (r)の位置は異なる。よって、振幅透過率T(r)を算出するためには、図20(d)に示すように、波面g’out (r)が必要である。
【0223】
波面g’out (r)は、式(20)で表される。波面u’(r)は補正後の波面なので、波面g’out (r)も補正後の波面である。
【数13】
【0224】
上述のように、撮影画像の取得位置は、表面130aから-Δz1だけ離れた位置になる。言い換えると、表面130aの位置は、撮影画像の取得位置からΔz1だけ離れた位置になる。よって、表面130aの位置における波面は、撮影画像の取得位置からΔz1だけ離れた位置における波面になる。
【0225】
式(20)における波面g’out (r)は、波面u’(r)が、光の進行方向にΔz1だけ伝搬した波面である。この波面は、影画像の取得位置からΔz1だけ離れた位置における波面である。よって、式(20)における波面g’out (r)は、表面130aの位置における波面を表している。
【0226】
表面130aの位置における波面は、fin (r)が推定標本130を通過した後の波面である。上述のように、fin (r)は、第1波面を表している。第2波面を、第1波面が推定標本を通過した後の波面とすると、波面g’out (r)は、第2波面を表している。
【0227】
上述のように、Δz1の値は非常に小さい。また、推定標本130は薄い標本である。そのため、撮影画像の取得位置と、撮影画像の取得位置からΔz1だけ離れた位置は、ほぼ同じと見なすことができる。すなわち、波面u’(r)の位置と、波面gout (r)の位置は、ほぼ同じと見なすことができる。この場合、波面g’out (r)の代わりに、波面u’(r)を用いることもできる。
【0228】
ステップS92では、標本の勾配ΔT (r)が算出される。標本の勾配ΔT は式(21)で表される。標本の勾配ΔT (r)の算出には、例えば、勾配降下法を用いることができる。
【数14】

ここで、
は、fの複素共役、
δは、ゼロ除算を防ぐための正規化定数、
である。
【0229】
図20(a)に示すように、波面gout (r)の算出には、振幅透過率T(r)が用いられている。振幅透過率T(r)は、推定された振幅透過率である。よって、この振幅透過率T(r)は、標本5の振幅透過率と異なる。
【0230】
振幅透過率T(r)と標本5の振幅透過率との差が大きくなるほど、波面gout (r)と波面g’out (r)との差も大きくなる。よって、波面gout (r)と波面g’out (r)との差は、振幅透過率T(r)と標本5の振幅透過率との差を反映していると見なすことができる。
【0231】
波面fin (r)、振幅透過率T(r)、波面gout (r)、及び波面g’out (r)は、既知である。そこで、式(21)に示すように、波面fin (r)、振幅透過率T(r)、波面gout (r)、及び波面g’out (r)用いて、標本の勾配ΔT (r)を算出することができる。
【0232】
図21は、標本の勾配を示す図である。
【0233】
ステップS92で得られる標本の勾配ΔT (r)は、1つの光源から射出された照明光における標本の勾配を表している。標本の勾配ΔT (r)は、全ての光源から射出された照明光によって決まる。よって、全ての光源について、標本の勾配ΔT (r)を求めなくてはならない。
【0234】
ステップS93では、変数mの値が光源の数NLSと一致したか否かが判断される。判断結果がNOの場合は、ステップS94が実行される。判断結果がYESの場合は、ステップS100が実行される。
【0235】
(判断結果がNOの場合:m≠NLS
判断結果がNOの場合、ステップS94で、変数mの値に1が加算される。ステップS94が終ると、ステップS91に戻る。
【0236】
ステップS94で、変数mの値が1つ増えている。そのため、別の光源について、ステップS91で波面u’(r)が算出され、ステップS92で標本の勾配ΔT (r)が算出される。
【0237】
ステップS91とステップS92は、全ての光源について標本の勾配ΔT (r)が求まるまで、繰り返し行われる。
【0238】
図22は、標本の勾配を示す図である。図22では、全ての光源について、標本の勾配ΔT (r)が求められている。
【0239】
(判断結果がYESの場合:m=NLS
判断結果がYESの場合、ステップS100で、振幅透過率T(r)が更新される。ステップS100は、推定標本を更新するステップするステップである。
【0240】
更新された振幅透過率T(r)は、式(22)で表される。
【数15】

ここで、
αは、標本の勾配の補正係数、
である。
【0241】
さらに、標本5を吸収の無い完全位相物体として考える場合、式(23)を用いて、振幅透過率T(r)をさらに更新することができる。
【数16】
【0242】
ステップS100が終ると、ステップS30に戻る。更新された振幅透過率T(r)で、ステップS30からステップS100までが実行される。
【0243】
ステップS30からステップS100までが繰り返し実行されることで、更新された振幅透過率T(r)は、徐々に、標本5の振幅透過率に近づく。すなわち、残差が小さくなる。やがて、残差は閾値よりも小さくなる。
【0244】
(判断結果がYESの場合:残差<閾値)
ステップ110では、推定標本の屈折率分布が算出される。得られた振幅透過率T(r)は、標本5の振幅透過率と同一か、又は、略同一である。得られた振幅透過率T(r)と式(1)から、屈折率分布n(r)が求まる。
【0245】
ステップS110で得られた屈折率分布n(r)を用いることで、推定標本の構造を再構成することができる。再構成された推定標本の構造は、例えば、表示装置に出力することができる。推定標本130は、薄い標本である。第1のシミュレーションでは、薄い標本の構造を再構成することができる。
【0246】
上述のように、ステップS110で得られた振幅透過率T(r)は、標本5の振幅透過率と同一か、又は、略同一である。この場合、屈折率分布n(r)も、標本5の屈折率分布と同一か、又は、略同一と見なすことができる。よって、再構成された推定標本130の構造は、標本5の構造と同一か、又は、略同一と見なすことができる。
【0247】
第1のシミュレーションでは、ステップS40、ステップS50、及びステップS90が、繰り返し実行される。その結果、振幅透過率T(r)が更新される。上述のように、ステップS40とステップS50は、推定標本の像を算出するステップである。ステップS90は、推定標本の屈折率分布を最適化するステップである。
【0248】
振幅透過率T(r)は、推定標本を表している。よって、推定標本の像を算出するステップと推定標本の屈折率分布を最適化するステップが繰り返し実行されることで、推定標本が更新される。
【0249】
第2のシミュレーションについて説明する。第2のシミュレーションで用いる光学系は、図16に示す顕微鏡システム120の測定光学系である。
【0250】
図23は、本実施形態の顕微鏡システムを示す図である。図16と同じ構成については同じ番号を付し、説明は省略する。
【0251】
標本140は、厚い標本である。標本140には、複数の方向から、光束が同時に入射する。図23では、光束L1と光束L2が示されている。
【0252】
標本140から射出した光は、検出光学系3によって、結像面IPに集光される。結像面IPに、光学像140’が形成される。光学像140’は、標本140の光学像である。
【0253】
顕微鏡システム120は、移動ステージ141を有する。移動ステージ141は、光軸AXの方向に移動する。
【0254】
上述のように、推定標本の屈折率分布の最適化には、撮影画像が用いられる。標本140は、厚い標本なので、複数の撮像画像が取得される。複数の撮像画像を取得するために、標本140を固定し、移動ステージ141で、検出光学系3の焦点位置を移動させている。
【0255】
検出光学系3は、例えば、無限遠補正対物レンズと結像レンズを有する。この場合、対物レンズを移動させることで、検出光学系3の焦点位置を移動させることができる。検出光学系3と撮像素子4を固定し、標本140を移動させても良い。
【0256】
以下、取得された撮像画像が4枚の場合について説明する。
【0257】
図24は、撮影画像を示す図である。図24(a)は、第1の位置における撮影画像を示す図である。図24(b)は、第2の位置における撮影画像を示す図である。図24(c)は、第3の位置における撮影画像を示す図である。図24(d)は、第4の位置における撮影画像を示す図である。
【0258】
検出光学系3と標本140との間隔を変化させることで、標本140に対する焦点位置Foが変化する。ここでは、標本140に対する焦点位置Foを、4回変化させている。これにより、以下の4つの撮影画像が取得される。
撮影画像Imea1(r):表面140aからの距離が3×Δzの位置の画像。
撮影画像Imea2(r):表面140aからの距離が2×Δzの位置の画像。
撮影画像Imea3(r):表面140aからの距離がΔzの位置の画像。
撮影画像Imea4(r):表面140aの画像。
【0259】
撮影画像Imea1(r)、撮影画像Imea2(r)、撮影画像Imea3(r)、及び撮影画像Imea4(r)は、プロセッサに入力される。プロセッサでは、4つの撮影画像を用いて、推定標本の再構築が行われる。再構築では、シミュレーションが行われる。
【0260】
図25図26は、第2のシミュレーションのフローチャートである。第1のフローチャートにおける処置と同じ処理につては、同じ番号を付し、説明は省略する。フローチャートを説明する前に、推定標本と波面について説明する。
【0261】
図27は、シミュレーションで用いる光学系を示す図である。図16と同じ構成については同じ番号を付し、説明は省略する。
【0262】
シミュレーションで用いる光学系は、撮影画像Imea1(r)、撮影画像Imea2(r)、撮影画像Imea3(r)、及び撮影画像Imea4(r)を取得した測定光学系と同一である。シミュレーションでは、標本140の代わりに、推定標本150が用いられる。
【0263】
図27には、推定標本150、波面fin (r)、振幅透過率T(r)、及び波面gout (r)が図示されている。
【0264】
推定標本が薄い標本の場合、式(13)に示すように、波面fin (r)から、波面gout (r)を直接算出することができる。しかしながら、推定標本が厚い標本の場合、波面fin (r)から波面gout (r)を直接算出することは困難である。
【0265】
推定標本150は、厚い標本である。そこで、光軸方向に沿って、推定標本150を複数の薄い層に置き換える。そして、薄い層の各々について、層の両側の波面を算出する。
【0266】
図28は、各層における波面を示す図である。波面の算出については後述する。層の数は、取得画像の数と同じにすることができる。ただし、層の数は、取得画像の数よりも多くしても良い。図28では、層の数は、取得画像の数と同じである。
【0267】
図28では、Z=1の位置が第1層の位置、Z=2の位置が第2層の位置、Z=3の位置が第3層の位置、Z=4の位置が第4層の位置である。
【0268】
図25図26に戻って、シミュレーションについて説明する。
【0269】
ステップS10では、第2領域の数NLSが設定される。顕微鏡システム120では、照明光学系の瞳面にインコヒーレント光源が位置している。よって、ステップS10では、NLSに光源の数が設定される。
【0270】
ステップS200では、層の数NIMが設定される。推定標本150は、厚い標本である。よって、上述のように、推定標本150を複数の薄い層に置き換える。層の数NIMは、薄い層の数を表している。
【0271】
標本140では、複数の位置で撮影画像が取得される。層の数NIMは、撮影画像が取得された位置の数と同じにすることができる。標本140に対する焦点位置Foを4回変化させている場合、NIM=4になる。
【0272】
1からNIMまでの数字は、薄い層の位置を表している。例えば、NIM=4の場合、数字の1は第1層の位置を表し、数字の2は第2層の位置を表し、数字の3は第3層の位置を表し、数字の4は第4層の位置を表している。
【0273】
推定標本の像の算出は、シミュレーションで行われる。そのため、層の数NIMは、自由に設定できる。例えば、層の数NIMは、撮影画像が取得された位置の数よりも多くすることができる。
【0274】
例えば、NIM=7の場合、薄い層の数は7つである。この場合、7つの推定標本の像が算出される。シミュレーションでは、後述のように、撮影画像と薄い層における推定標本の像が用いられる。よって、推定標本の像が算出される7つ位置には、撮影画像が取得された4つの位置が含まれている。
【0275】
7つ位置と撮影画像の関係は、例えば、以下のようにすることができる。
【0276】
数字の1は、第1層の位置を表している。この位置では、撮影画像Imea1(r)が取得されている。また、この位置では、第1層における推定標本の像が算出される。よって、第1層における推定標本の像と撮影画像Imea1(r)が、後述のステップで用いられる。
【0277】
数字の2は、第2層の位置を表している。この位置で取得された撮影画像は無い。
【0278】
数字の3は、第3層の位置を表している。この位置では、撮影画像Imea2(r)が取得されている。また、この位置では、第3層における推定標本の像が算出される。よって、第3層における推定標本の像と撮影画像Imea2(r)が、後述のステップで用いられる。
【0279】
数字の4は、第4層の位置を表している。この位置で取得された撮影画像は無い。
【0280】
数字の5は、第5層の位置を表している。この位置では、撮影画像Imea3(r)が取得されている。また、この位置では、第5層における推定標本の像が算出される。よって、第5層における推定標本の像と撮影画像Imea3(r)が、後述のステップで用いられる。
【0281】
数字の6は、第6層の位置を表している。この位置で取得された撮影画像は無い。
【0282】
数字の7は、第7層の位置を表している。この位置では、撮影画像Imea4(r)が取得されている。また、この位置では、第7層における推定標本の像が算出される。よって、第7層における推定標本の像と撮影画像Imea4(r)が、後述のステップで用いられる。
【0283】
ステップS210では、補正の回数NCRが設定される。
【0284】
ステップS220では、変数zの値が初期化される。後述のステップS231は、全ての取得位置に対して実行される。変数zは、ステップS231が実行された回数を表している。
【0285】
ステップS230は、推定標本を推定するステップである。標本140では、4つの撮影画像が取得されている。上述のように、推定標本150は4つの薄い層に置き換えられている。よって、振幅透過率の初期値の設定は4回行われる。
【0286】
ステップS230は、ステップS231、ステップS232、及びステップS233を有する。
【0287】
ステップS231では、推定標本150における振幅透過率T(r)に初期値が設定される。
【0288】
初期値の設定では、強度輸送方程式を用いても良い。強度輸送方程式は、例えば、以下の文献に開示されている。
M. R. Teague, “Deterministic phase retrieval: a Greens function solution,” J. Opt. Soc. Am. 73, 1434-1441(1983)
【0289】
焦点位置Z0での強度輸送方程式は、式(24)で表される。
【数17】
ここで、
は、2次のラプラシアン、
kは、波数、
φZ0(r)は,結像面での標本の位相分布、
Z0は,光学像の平均光強度、
δImeaZ0(r)/δは、結像面から±△zだけ離れた2つのデフォーカス像の差分像、
である。
【0290】
式(24)を用いると、フォーカス像と2つのデフォーカス像から、標本の位相分布φZ0(r)を簡単に求めることができる。
【0291】
ただし、2つのデフォーカス像の同一点における光強度の差が0か、又は、非常に小さいと、位相を計測できない。パーシャルコヒーレント照明であっても、照明光の開口数が対物レンズの開口数に近い場合は、この光強度の差が0になるか、又は、非常に小さくなる。そのため、このような場合は、強度輸送方程式を用いて初期値を設定することは難しい。
【0292】
上述のように、位相分布φZ0(r)は、フォーカス像と2つのデフォーカス像から算出される。フォーカス像、例えば、対物レンズを一定の間隔で、光軸方向に移動させることで取得される。この場合、光軸に沿って、複数のフォーカス像が離散的に取得される。よって、2つのデフォーカス像も離散的に取得される。
【0293】
式(24)で表される位相分布φZ0(r)は、光軸と直交する面内における位相分布である。フォーカス像と2つのデフォーカス像は離散的に取得されるので、位相分布φZ0(r)を表す面も、光軸に沿って離散的に位置している。
【0294】
式(25)に示すように、位相分布φ(r)は、振幅透過率T(r)に変換することができる。このようにして、振幅透過率T(r)に初期値を設定することができる。
【数18】
【0295】
強度輸送方程式で得られた位相分布φZ0は、位相分布φ(r)に用いることができる。強度輸送方程式を用いて、初期値を設定することができる。なお、初期値の推定が難しい場合、例えば、T(r)=1としても構わない。
【0296】
ステップS232では、変数zの値が取得位置の数NIMと一致したか否かが判断される。判断結果がNOの場合は、ステップS233が実行される。判断結果がYESの場合は、ステップS30が実行される。
【0297】
(判断結果がNOの場合:z≠NIM
判断結果がNOの場合、ステップS233で、変数zの値に1が加算される。ステップS233が終ると、ステップS231に戻る。
【0298】
ステップS233で、変数zの値が1つ増えている。そのため、別の取得位置について、ステップS231で振幅透過率T(r)に初期値が設定される。
【0299】
ステップS231は、全ての取得位置について初期値が設定されるまで、繰り返し行われる。
【0300】
(判断結果がYESの場合:z=NIM
ステップS30で、変数mの値が初期化される。後述のステップS240、ステップS41、ステップS42、ステップS251、及びステップS260は、全ての光源に対して実行される。変数mは、これらのステップが実行された回数を表している。
【0301】
ステップS240で、関数Iestz(r)の値が初期化される。Iestz(r)は、推定標本30の像を表している。上述のように、推定標本150の像は、4つの薄い層に置き換えられている。よって、Iestz(r)は、薄い層の像を表している。
【0302】
ステップS250とステップS270は、推定標本の像を算出するステップである。推定標本の像の数は、撮影画像の数と同数である。撮影画像の数は4なので、推定標本の像の数も4である。
【0303】
ステップS250は、ステップS41、ステップS42、ステップS251、ステップS252、ステップS253、及びステップS260を有する。
【0304】
ステップS41では、推定標本150へ入射する波面fin (r)が算出される。波面fin (r)は、上述の式(11)、(12)で表される。
【0305】
ステップS42では、推定標本150から射出する波面gout (r)が算出される。波面gout (r)は、波面fin (r)に基づいて算出される。推定標本150は4つの薄い層に置き換えられている。よって、薄い層の各々で波面を算出する。
【0306】
図28では、Z=1の位置が第1層の位置、Z=2の位置が第2層の位置、Z=3の位置が第3層の位置、Z=4の位置が第4層の位置である。
【0307】
4つの薄い層は、等間隔で並んでいる。隣り合う2つの層の間隔はΔzである。波面は、2つの層の間を伝搬する。よって、Δzは、伝搬距離を表している。
【0308】
第1層における波面f (r)は、式(26)と式(12)で表される。
【数19】
【0309】
第1層の位置は、推定標本150の表面150bの位置と一致している。表面150bには、波面fin (r)が入射する。よって、波面f (r)は、波面fin (r)を表している。図28では、波面f (r)の代わりに、波面fin (r)が示されている。
【0310】
第1層における波面g (r)は、式(27)で表される。
【数20】
ここで、
(r)は、第1層における振幅透過率、
である。
【0311】
第2層における波面f (r)は、波面g (r)が、Δzだけ伝搬したときの波面である。波面f (r)は、式(28)で表される
【数21】
Δzは、隣り合う2つの層の間隔、
λは、波長、
uは、瞳面座標(ξ,η)の2次元表記、
2Dは、2次元フーリエ変換、
2D -1は、2次元フーリエ逆変換、
である。
【0312】
第2層における波面g (r)は、式(29)で表される。
【数22】
ここで、
(r)は、第2層における振幅透過率、
である。
【0313】
第3層における波面f (r)は、波面g (r)が、Δzだけ伝搬したときの波面である。第3層における波面f (r)は、式(30)で表される。
【数23】
【0314】
第3層における波面g (r)は、式(31)で表される。
【数24】

ここで、
(r)は、第3層における振幅透過率、
である。
【0315】
第4層における波面f (r)は、波面g (r)が、Δzだけ伝搬したときの波面である。第4層における波面f (r)は、式(32)で表される。式(21)で、ΔD=Δzとすることで、波面f (r)を算出することができる。
【数25】
【0316】
第4層における波面g (r)は、式(33)で表される。
【数26】

ここで、
(r)は、第4層における振幅透過率、
である。
【0317】
第4層の位置は、推定標本150の表面150aの位置と一致している。表面150aからは、波面gout (r)が射出される。よって、波面g (r)は、波面gout (r)を表している。図28では、波面g (r)の代わりに、波面gout (r)が示されている。
【0318】
以上のように、推定標本が厚い標本の場合は、複数の薄い層に置き換えると共に、2つの層の間を伝搬する波面を求めることで、波面gout (r)を算出することができる。
【0319】
ステップS251では、変数zの値が初期化される。後述のステップS261、ステップS262、及びステップS263は、全ての取得位置に対して実行される。変数zは、これらのステップが実行された回数を表している。
【0320】
ステップS260は、ステップS261、ステップS262、ステップS263、ステップS264、及びステップS265を有する。
【0321】
ステップS261では、撮影画像の取得位置における波面u (r)が算出される。波面u (r)は、式(34)で表される。
【数27】

ここで、
△Dは推定標本の表面から薄い層までの距離、
である。
【0322】
ステップS262では、結像面における波面uimgz (r)が算出される。波面uimgz (r)は、式(35)で表される。
【数28】
【0323】
ステップS263では、波面uimgz (r)が2乗される。波面uimgz (r)は、光の振幅を表している。よって、波面uimgz (r)を2乗することで、光強度が算出される。
【0324】
|uimgz (r)|は、結像面IPに光強度分布を表している。第1強度分布を、検出光学系の結像位置における光強度分布とすると、|uimgz (r)|は、検出光学系の結像位置における第1光強度分布を表している。
【0325】
ステップS264では、変数zの値が取得位置の数NIMと一致したか否かが判断される。判断結果がNOの場合は、ステップS265が実行される。判断結果がYESの場合は、ステップS252が実行される。
【0326】
(判断結果がNOの場合:z≠NIM
判断結果がNOの場合、ステップS265で、変数zの値に1が加算される。ステップS265が終ると、ステップS261に戻る。
【0327】
ステップS265で、変数zの値が1つ増えている。そのため、別の取得位置について、ステップS261、ステップS262、及びステップS263が実行される。
【0328】
ステップS261、ステップS262、及びステップS263は、全ての取得位置について初期値が設定されるまで、繰り返し行われる。
【0329】
ステップS250における処理を、第1層と第4層を用いて説明する。第2層と第3層については、第1層と同じように考えれば良い。
【0330】
図29は、撮影画像の取得位置における波面と結像面における波面を示す図である。図29(a)は、第1層におけるにおける2つの波面を示す図である。図29(b)は、第4層における2つの波面を示す図である。
【0331】
z=1における撮影画像は、撮影画像Imea1(r)である。撮影画像Imea1(r)は、表面140aからの距離が3×Δzの位置の画像である。第1層は、表面150aから3×Δzだけ離れている。よって、第1層の位置が、撮影画像Imea1(r)の取得位置に対応する。
【0332】
波面gout (r)の射出位置は、表面150aと一致している。図29(a)に示すように、波面gout (r)の射出位置は、第1層の位置と異なる。第1層は、波面gout (r)の射出位置から3×Δzだけ離れている。
【0333】
第1層における波面u (r)は、波面gout (r)が光の進行方向とは反対に3×Δzだけ伝搬したときの波面である。よって、ステップS261においてΔD=-3×Δzとすることで、式(34)から、波面u (r)を算出することができる。
【0334】
波面u (r)が算出されると、ステップS262で、式(35)から、結像面における波面uimg1 (r)が算出される。
【0335】
更に、ステップS263で、第1層の像の光強度|uimg1(r)|が算出される。
【0336】
z=2における撮影画像は、撮影画像Imea2(r)である。撮影画像Imea2(r)は、表面140aからの距離が2×Δzの位置の画像である。第2層は、表面150aから2×Δzだけ離れている。よって、第2層の位置が、撮影画像Imea2(r)の取得位置に対応する。
【0337】
波面gout (r)の射出位置は、第2層の位置と異なる。第2層は、波面gout (r)の射出位置から2×Δzだけ離れている。
【0338】
第2層における波面u (r)は、波面gout (r)が光の進行方向とは反対に2×Δzだけ伝搬したときの波面である。よって、ステップS261においてΔD=-2×Δzとすることで、波面u (r)を算出することができる。
【0339】
波面u (r)が算出されると、ステップS262で、結像面における波面uimg2 (r)が算出される。
【0340】
更に、ステップS263で、第2層の像の光強度|uimg2(r)|が算出される。
【0341】
z=3における撮影画像は、撮影画像Imea3(r)である。撮影画像Imea3(r)は、表面140aからの距離がΔzの位置の画像である。第3層は、表面150aからΔzだけ離れている。よって、第3層の位置が、撮影画像Imea3(r)の取得位置に対応する。
【0342】
波面gout (r)の射出位置は、第3層の位置と異なる。第3層は、波面gout (r)の射出位置からΔzだけ離れている。
【0343】
第3層における波面u (r)は、波面gout (r)が光の進行方向とは反対にΔzだけ伝搬したときの波面である。よって、ステップS261においてΔD=Δzとすることで、波面u (r)を算出することができる。
【0344】
波面u (r)が算出されると、ステップS262で、結像面における波面uimg3 (r)が算出される。
【0345】
更に、ステップS263で、第3層の像の光強度|uimg3(r)|が算出される。
【0346】
z=4における撮影画像は、撮影画像Imea4(r)である。撮影画像Imea4(r)は、表面140aの画像である。第4層は、表面150aと一致している。よって、第4層の位置が、撮影画像Imea4(r)の取得位置に対応する。
波面gout (r)の射出位置は、表面150aである。図29(b)に示すように、波面gout (r)の射出位置は、第4層の位置と同じである。
第4層における波面u (r)は、波面gout (r)同じである。波面gout (r)を波面u (r)に置き換えることができる。
波面u (r)が算出されると、ステップS262で、結像面における波面uimg4
【0347】
波面gout (r)の射出位置は、表面150aである。図16(b)に示すように、波面gout (r)の射出位置は、第4層の位置と同じである。
【0348】
第4層における波面u (r)は、波面gout (r)同じである。波面gout (r)を波面u (r)に置き換えることができる。
【0349】
波面u (r)が算出されると、ステップS262で、結像面における波面uimg4 (r)が算出される。
【0350】
更に、ステップS263で、第4層の像の光強度|uimg4(r)|が算出される。
【0351】
波面u (r)と波面uimgz (r)は、m番目の光源から射出された照明光、すなわち、1つの光源から射出された照明光によって生成される波面を表している。
【0352】
推定標本の像Iestz(r)は、取得位置において、全ての光源から射出された照明光によって生成される。よって、全ての光源について、波面を求めなくてはならない。
【0353】
(判断結果がYESの場合:z=NIM
ステップS242が実行される。
【0354】
波面fin (r)、波面gout (r)、波面u (r)、及び波面uimgz (r)は、m番目の光源から射出された照明光、すなわち、1つの光源から射出された照明光によって生成される波面を表している。
【0355】
推定標本の像Iestz(r)は、全ての光源から射出された照明光によって生成される。よって、全ての光源について、波面fin (r)、波面gout (r)、波面u (r)、及び波面uimgz (r)を求めなくてはならない。
【0356】
ステップS252では、変数mの値が光源の数NLSと一致したか否かが判断される。判断結果がNOの場合は、ステップS253が実行される。判断結果がYESの場合は、ステップS270が実行される。
【0357】
(判断結果がNOの場合:m≠NLS
判断結果がNOの場合、ステップS253で、変数mの値に1が加算される。ステップS253が終ると、ステップS41に戻る。
【0358】
ステップS253で、変数mの値が1つ増えている。そのため、別の光源について、ステップS41で波面fin (r)が算出され、ステップS42で波面gout (r)が算出され、ステップS261で波面u (r)が算出され、ステップS262で波面uimgz (r)が算出され,ステップS263で|uimgz (r)|が算出される。
【0359】
ステップS41、ステップS42、ステップS251、及びステップS260は、全ての光源について|uimgz (r)|が求まるまで、繰り返し行われる。
【0360】
(判断結果がYESの場合:m=NLS
判断結果がYESの場合、ステップS270で、|uimgz (r)|の足し合わせが行われる。その結果、推定標本の像Iestz(r)が算出される。推定標本の像Iestz(r)は、式(36)で表される。
【数29】
【0361】
図30は、推定標本の像を示す図である。図30(a)は、第1層における推定標本の像を示す図である。図30(b)は、第4層における推定標本の像を示す図である。
【0362】
推定標本の像Iest1(r)は、全ての光源について波面uimg1 (r)が求められた場合の像である。推定標本の像Iest4(r)は、全ての光源について波面uimg4 (r)が求められた場合の像である。
【0363】
図30(a)に示すように、各光源について波面uimg1 (r)が算出され、波面uimg1 (r)から|uimg1 (r)|が算出され、|uimg1 (r)|が全て足し合わされている。その結果、第1層における推定標本の像Iest1(r)が算出される。
【0364】
図30(b)に示すように、各光源について波面uimg4 (r)が算出され、波面uimg4 (r)から|uimg4 (r)|が算出され、|uimg4 (r)|が全て足し合わされている。その結果、第4層における推定標本の像Iest4(r)が算出される。
【0365】
(判断結果がYESの場合:m=NLS
ステップS280で、残差が算出される。残差は、式(37)で表される。式(37)に示すように、残差は、撮影画像Imeaz(r)と推定標本の像Iestz(r)とから算出される。
【数30】
【0366】
上述のように、撮影画像の数は4で、推定標本の像の数も4である。よって、Imea1(r)とIest1(r)から、第1層における残差が算出される。Imea2(r)とIest2(r)から、第2層における残差が算出される。Imea3(r)とIest3(r)から、第3層における残差が算出される。Imea4(r)とIest4(r)から、第4層における残差が算出される。
【0367】
第1層における残差、第2層における残差、第3層における残差、及び第4層における残差から、ステップ70で用いられる残差が算出される。
【0368】
ステップS70では、残差と閾値との比較が行われる。判断結果がNOの場合は、ステップS290が実行される。判断結果がYESの場合は、ステップS110が実行される。
【0369】
(判断結果がNOの場合:残差≧閾値)
ステップS290では、変数Lの値が初期化される。後述のステップS301、ステップS302、ステップS303、ステップS304、及びステップS310は、ステップS210で設定した回数だけ実行される。変数Lは、これらのステップが実行された回数を表している。
【0370】
ステップS300は、ステップS301、ステップS302、ステップS303、ステップS304、ステップS305、ステップS306、及びステップS310を有する。
【0371】
ステップS301では、1からNIMまでのなかから1つがランダムに選択される。後述のステップS311では、補正後の波面が算出される。補正後の波面の算出では、1つの撮影画像と1つの推定標本の像が用いられる。
【0372】
上述のように、ステップS270では、複数の推定標本の像が算出される。補正後の波面の算出に用いる推定標本の像は、1つである。よって補正後の波面の算出に用いる推定標本の像を、複数の推定標本の像のなかから選択する。
【0373】
IMは、層の数である。NIM=4の場合、ステップS301では、1から4までの数字のなかから、1つの数字がランダムに選択される。
【0374】
例えば、選択された数字が1の場合、数字の1は第1層を表している。第1層における推定標本の像には、1番目の取得位置における撮影画像が対応する。よって、補正後の波面の算出には、1番目の取得位置における撮影画像と、第1層における推定標本の像が用いられる。
【0375】
また、例えば、選択された数字が4の場合、選択された数字は第4層を表している。第4層における推定標本の像には、4番目の取得位置における撮影画像が対応する。よって、補正後の波面の算出には、4番目の取得位置における撮影画像と、第4層における推定標本の像が用いられる。
【0376】
ステップS302では、ステップS301で選択した値が変数zLに入力される。上述のように、ステップS301では、1からNIMまでの数字のなかから、1つの数字がランダムに選択される。例えば、選択された数字が1の場合、ステップS302で、変数zLに1が入力されることになる。
【0377】
ステップS303では、変数mの値が初期化される。後述のステップS311、ステップS312、及びステップS313は、全ての光源に対して実行される。変数mは、これらのステップが実行された回数を表している。
【0378】
ステップS310は、推定標本の屈折率分布を最適化するステップである。
【0379】
ステップS310は、ステップS311、ステップS312、ステップS313、ステップS314、及びステップS315を有する。
【0380】
ステップS311では、波面u’zL (r)が算出される。波面u’zL (r)は、変数zLの値で示される層の位置における波面である。
【0381】
波面u’zL (r)の算出では、撮影画像ImeazL(r)と推定標本の像IestzL(r)が用いられる。撮影画像ImeazL(r)は、撮影画像Imeazのうち、変数zLの値で示される位置の撮像画像である。推定標本の像IestzL(r)は、推定標本の像Iestzのうち、変数zLの値で示される位置の推定標本の像である。
【0382】
波面u’zL (r)は式(38)で表される。
【数31】
【0383】
図31は、波面の補正を示す図である。図31(a)は、推定標本から射出する補正前の波面を示す図である。図31(b)は、撮影画像の取得位置における補正前の波面を示す図である。図31(c)は、撮影画像の取得位置における補正後の波面を示す図である。図31(d)は、推定標本から射出する補正後の波面を示す図である。
【0384】
ステップS301で選択された数字が1の場合、すなわち、zL=1の場合について説明する。
【0385】
図30(a)に示すように、推定標本の像Iest1(r)は、波面uimg1 (r)に基づいて算出される。また、図30(a)と図31(b)に示すように、波面uimg1 (r)は、波面u (r)に基づいて算出される。
【0386】
図31(a)に示すように、波面u (r)の算出には、振幅透過率T(r)が用いられている。振幅透過率T(r)は、推定された振幅透過率である。ステップS300の1回目の実行時、この振幅透過率T(r)は、標本140の振幅透過率と異なる。
【0387】
振幅透過率T(r)と標本140の振幅透過率との差が大きくなるほど、推定標本の像Iestz(r)と撮影画像Imeaz(r)との差も大きくなる。よって、推定標本の像Iestz(r)と撮影画像Imeaz(r)との差は、振幅透過率T(r)と標本140の振幅透過率との差を反映していると見なすことができる。
【0388】
上述のように、zL=1である。そこで、式(38)でzL=1として、推定標本の像Iest1(r)と撮影画像Imea1(r)と用いて、波面u (r)を補正する。その結果、図31(c)に示すように、補正された波面、すなわち、波面u’ (r)が得られる。
【0389】
波面u’ (r)を用いることで、新たな振幅透過率を算出できる。波面u’ (r)は、波面u (r)と異なる。よって、新たな振幅透過率は、波面u (r)を算出したときの振幅透過率とは異なる。
【0390】
ステップS312では、補正後の波面g’out m,zL(r)が算出される。波面g’out m,zL(r)は、波面u’zL (r)がΔDだけ伝搬したときの波面である。波面g’out m,zL(r)は、式(39)で表される。
【数32】
【0391】
上述のように、波面u’ (r)を用いて、振幅透過率T(r)を算出することができる。ただし、図31に示すように、振幅透過率T(r)の算出には、波面gout (r)の位置における波面が必要である。
【0392】
図31(a)、(c)に示すように、波面u’ (r)の位置と、波面gout (r)の位置は異なる。よって、振幅透過率T(r)を算出するためには、図31(d)に示すように、波面g’out m,1(r)が必要である。
【0393】
波面g’out m,1(r)は、波面u’ (r)が、3×Δzだけ伝搬したときの波面である。式(39)で、ΔD=3×Δz、zL=1とすることで、波面g’out m,1(r)を算出することができる。
【0394】
ステップS313では、標本の勾配ΔT m,zL(r)が算出される。ΔT m,zL(r)は、m番目の光源で照明し、且つ、変数zLの値で示される層の位置における撮影画像と推定標本の像で補正した時の標本の勾配である。
【0395】
標本の勾配ΔT m,zLは式(40)で表される。標本の勾配ΔT m,zL(r)の算出には、例えば、勾配降下法を用いることができる。
【数33】
ここで、
は、fの複素共役
δは、ゼロ除算を防ぐための正規化定数、
である。
【0396】
上述のように、推定標本150は、複数の薄い層に置き換えられている。よって、薄い層の各々について、標本の勾配ΔT m,zL(r)を算出する必要がある。
【0397】
図32は、標本の勾配と波面の伝搬を示す図である。推定標本150が4つの薄い層に置き換えられた場合、つまりNIM=4の場合について説明する。また、zL=1とする。図32(a)は、標本の勾配を示す図である。図32(b)は、波面の伝搬を示す図である。
【0398】
波面gout (r)の算出には、振幅透過率T(r)が用いられている。振幅透過率T(r)は、推定された振幅透過率である。よって、この振幅透過率T(r)は、標本140の振幅透過率と異なる。
【0399】
振幅透過率T(r)と標本140の振幅透過率との差が大きくなるほど、波面gout (r)と波面g’out m,1(r)との差も大きくなる。よって、波面gout (r)と波面g’out m,1(r)との差は、振幅透過率T(r)と標本140の振幅透過率との差を反映していると見なすことができる。
【0400】
波面f (r)、振幅透過率T(r)、波面gout (r)、及び波面g’out m,1(r)は、既知である。そこで、式(40)でz=4、zL=1とすることで、図32(a)に示すように、標本の勾配ΔT m,1(r)を算出することができる。
【0401】
(r)と波面gout (r)は同じなので、g (r)の代わりに、波面gout (r)を用いれば良い。また、g’ m,1(r)はg’out m,1(r)と同じなので、g’ m,1(r)の代わりに、g’out m,1(r)を用いれば良い。
【0402】
次に、標本の勾配ΔT m,1(r)を算出する。標本の勾配ΔT m,1(r)の算出には、波面g (r)の位置における波面が必要である。この波面を算出するためには、図32(b)に示すように、波面f’ m,1(r)が必要である。
【0403】
波面f’ m,1(r)は、式(41)でz=4、zL=1とすることで算出できる。
【数34】
【0404】
次に、算出された波面f’ m,1(r)を用いて、波面g m,1(r)の位置における波面を算出する。
【0405】
図33は、標本の勾配と波面の伝搬を示す図である。図33(a)は、波面の伝搬と標本の勾配を示す図である。図33(b)は、波面の伝搬を示す図である。
【0406】
図33(a)に示すように、波面g’ m,1(r)は、波面f’ m,1(r)がΔzだけ伝搬したときの波面である。これは、第4層から第3層への波面の伝搬である。
【0407】
上述のように、第3層から第4層への波面の伝搬は、式(32)で表わされる。よって、式(32)において、以下のようにすることで、波面g’ m,1(r)を算出できる。
波面f (r)を、波面g’ m,1(r)に置き換える。
波面g (r)を、波面f’ m,1(r)に置き換える。
ΔD=-Δzとする。
【0408】
波面f (r)、振幅透過率T(r)、波面g (r)、及び波面g’ m,1(r)は、既知である。そこで、式(40)でz=3、zL=1とすることで、図33(b)に示すように、標本の勾配ΔT m,1(r)を算出することができる。
【0409】
波面f’ m,1(r)は、式(41)でz=3、zL=1とすることで算出できる。
【0410】
第2層と第1層についても、第3層と同様にして、標本の勾配の算出を行えばよい。
【0411】
図34は、標本の勾配を示す図である。図34では、第1層における標本の勾配ΔT m,1(r)、第2層における標本の勾配ΔT m,1(r)、第3層における標本の勾配ΔT m,1(r)、及び第4層における標本の勾配ΔT m,1(r)、が算出されている。
【0412】
ステップS313で得られる標本の勾配ΔT m,1(r)は、m番目の光源で照明し、且つ、第1層の位置における撮影画像と第1層の位置における推定標本の像で補正した時の標本の勾配である。標本の勾配ΔT m,1(r)は、全ての光源から射出された照明光によって決まる。よって、全ての光源について、標本の勾配ΔT m,1(r)を求めなくてはならない。
【0413】
ステップS314では、変数mの値が光源の数NLSと一致したか否かが判断される。判断結果がNOの場合は、ステップS315が実行される。判断結果がYESの場合は、ステップS304が実行される。
【0414】
(判断結果がNOの場合:m≠NLS
判断結果がNOの場合、ステップS315で、変数mの値に1が加算される。ステップS315が終ると、ステップS311に戻る。
【0415】
ステップS315で、変数mの値が1つ増えている。そのため、別の光源について、ステップS311で波面um,1(r)が算出され、ステップS312で波面goutm,1(r)が算出され、ステップS313で標本の勾配ΔT m,1(r)が算出される。
【0416】
ステップS311、ステップS312、及びステップS313は、全ての光源について標本の勾配ΔT m,1(r)が求まるまで、繰り返し行われる。
【0417】
図35は、標本の勾配を示す図である。図35では、全ての光源について、標本の勾配ΔT m.1(r)が求められている。
【0418】
(判断結果がYESの場合:m=NLS
判断結果がYESの場合、ステップS304で、振幅透過率T(r)が更新される。ステップS304は、推定標本を更新するステップするステップである。
【0419】
更新された振幅透過率T(r)は、式(42)で表される。
【数35】
ここで、
αは、標本の勾配の補正係数、
である。
【0420】
ステップS305では、変数Lの値が補正の回数NCRと一致したか否かが判断される。判断結果がNOの場合は、ステップS306が実行される。判断結果がYESの場合は、ステップS30が実行される。
【0421】
(判断結果がNOの場合:m≠NCR
判断結果がNOの場合、ステップS306で、変数Lの値に1が加算される。ステップS306が終ると、ステップS301に戻る。
【0422】
ステップS301で、1からNIMまでのなかから1つがランダムに選択される。選択された数字に基づいて、補正に用いる推定標本の像と取得位置が決まる。
【0423】
そして、ステップS311で波面um,1(r)が算出され、ステップS312で波面goutm,1(r)が算出され、ステップS313で標本の勾配ΔT m,1(r)が算出され、ステップS304で振幅透過率T(r)が更新される。
【0424】
ステップS301、ステップS302、ステップS303、ステップS304、及びステップS310は、設定された回数の補正が終るまで、繰り返し行われる。
【0425】
(判断結果がYESの場合:m=NCR
判断結果がYESの場合、ステップS30に戻る。更新された振幅透過率T(r)で、ステップS30からステップS300までが実行される。
【0426】
ステップS30からステップS300までが繰り返し実行されることで、更新された振幅透過率T(r)は、徐々に、標本140の振幅透過率に近づく。すなわち、残差が小さくなる。やがて、残差は閾値よりも小さくなる。
【0427】
(判断結果がYESの場合:残差<閾値)
ステップS110では、推定標本の屈折率分布が算出される。得られた振幅透過率T(r)は、標本140の振幅透過率と同一か、又は、略同一である。得られた振幅透過率T(r)と式(1)から、屈折率分布n(r)が求まる。
【0428】
ステップS110で得られた屈折率分布n(r)を用いることで、推定標本の構造を再構成することができる。再構成された推定標本の構造は、例えば、表示装置に出力することができる。推定標本150は、厚い標本である。第2のシミュレーションでは、厚い標本の構造は、推定標本の3次元構成を再構成することができる。
【0429】
上述のように、ステップS110で得られた振幅透過率T(r)は、標本140の振幅透過率と同一か、又は、略同一である。この場合、屈折率分布n(r)も、標本140の屈折率分布と同一か、又は、略同一と見なすことができる。よって、再構成された推定標本150の構造は、標本6の構造と同一か、又は、略同一と見なすことができる。
【0430】
第2のシミュレーションでは、ステップS250、ステップS270、及びステップS310が、繰り返し実行される。その結果、振幅透過率T(r)が更新される。上述のように、ステップS250とステップS270は、推定標本の像を算出するステップである。ステップS310は、推定標本の屈折率分布を最適化するステップである。
【0431】
振幅透過率T(r)は、推定標本を表している。よって、推定標本の像を算出するステップと推定標本の屈折率分布を最適化するステップが繰り返し実行されることで、推定標本が更新される。
【0432】
図36は、第1例のシミュレーションの結果を示す図である。図36(a)は、標本を示している。図36(b)は、開口部材を示している。図36(c)は、標本の像を示している。図36(d)は、再構成した推定標本を示している。
【0433】
標本は、フォトニッククリスタルファイバー(以下、「PCF」という)ある。PCFでは、クラッドの内部に、複数の貫通孔が形成されている。貫通孔を、コアと称する。PCFは液体に浸されている。よって、コアは液体で満たされている。
【0434】
各種パラメータの数値は、以下のとおりである。
標本の外径 230μm
コアの直径 6μm
コアの屈折率 1.466
クラッドの屈折率 1.462
液体の屈折率 1.466
対物レンズの開口数 1.4
対物レンズの倍率 60倍
対物レンズの焦点距離 3mm
第2領域の開口数 0.3、1.25
コンデンサレンズの焦点距離 7mm
開口部材の透過領域の直径 0.2mm
照明光の波長 0.7μm
【0435】
第2領域の開口数は、コンデンサレンズの開口数で表している。図36(b)に示すように、第2領域は、2つの円の円周上に位置している。内側の円周上に位置する第2領域から射出した光束は、開口数0.3相当の光束と見なせば良い。外側の円周上に位置する第2領域から射出した光束は、開口数1.25相当の光束と見なせば良い。
【0436】
各条件式におけるパラメータの値は以下のとおりである。
検出光学系の瞳の面積(PS’) 55.4mm
第2領域の面積(LS’) 0.0058mm
LS’/PS’ 1.0×10-4
検出光学系の瞳直径(T’) 8.4mm
隣接する2つの第2領域の間隔(d’) 0.47mm
d’/T’ 0.056
【0437】
検出光学系の瞳の面積 (8.4/2)×3.14=55.4
第2領域の面積 (0.086/2)×3.14=0.0058
第2領域の直径 0.2/7×3=0.086
検出光学系の瞳直径 2×1.4×3=8.4
内側の第2領域までの半径 0.3×3=0.9
隣接する2つの第2領域の間隔
0.9×sin30/cos15=0.47
【0438】
図36(b)に示すように、第2領域は、2つの円の円周上に位置している。内側に位置する第2領域までの半径は、内側の円の半径である。
【0439】
図37は、開口部材と再構成した推定標本を示す図である。図37(a)、図37(b)、図37(c)、図37(d)は、開口部材を示している。図37(e)、図37(f)、図37(g)、図37(h)は、再構成した推定標本を示している。
【0440】
対物レンズの開口数を1.4、照明光の波長を0.7μmとして、推定標本を再構成している。
【0441】
各図における開口部材と再構成した推定標本の対応関係は、以下の通りである。
開口部材 再構成した推定標本
図37(a) 図37(e)
図37(b) 図37(f)
図37(c) 図37(g)
図37(d) 図37(g)
【0442】
図37(a)に示す開口部材では、第2領域の開口数は0.3と0.5である。図37(e)に示すように、再構成した推定標本では、コアがZ軸方向に伸びている。図37(a)に示す開口部材では、細かい構造は推定することが困難である。
【0443】
図37(b)に示す開口部材では、第2領域の開口数は1.05と1.25である。図37(f)に示すように、再構成した推定標本では、アーチファクトが存在する。コアの薄い像が、左右に存在する。
【0444】
図37(c)に示す開口部材では、第2領域の開口数は0.3、0.5、1.05、及び1.25である。図37(g)に示すように、再構成した推定標本では、アーチファクトが存在する。ただし、図37(f)に比べて、アーチファクトが減少している。
【0445】
図37(d)に示す開口部材では、第2領域の開口数は0.3、0.5、1.05、及び1.25である。ただし、2つの開口部材を用いている。図37(h)に示すように、再構成した推定標本では、アーチファクトが存在する。ただし、図37(g)と同じ程度のアーチファクトである。
【0446】
図37(e)と図37(f)との比較から、第2領域の開口数の値が大きいほど、細かい構造が再構築される。また図37(f)と図37(g)との比較から、第2領域の数が多いほど、アーチファクトが減少する。ただし、第2領域の数が多いと、再構築における演算が収束しにくくなる。
【0447】
図37(d)に示すように、2つの開口部材を使用することで、再構成では、比較的粗い構造の推定と、比較的細かい構造の推定の割合を調整することができる。このような調整を行うことで、再構成の時間を短縮することができる。
【0448】
また、図37(d)に示す開口部材を用いると、図37(c)に示す開口部材を用いた場合と比べて、比較的粗い構造の推定だけを行うことや、比較的細かい構造の推定だけを行うことができる。
【0449】
図38は、第2例の測定における開口部材と標本の像を示す図である。図38(a)は、開口部材を示している。図38(b)と図38(c)は、標本の像を示している。
【0450】
標本は、格子状の構造物である。標本は、屈折率が1.518のオイルに浸されている。よって、格子に囲まれた空間はオイルで満たされている。
【0451】
各種パラメータの数値は、以下のとおりである。
対物レンズの開口数 1.42
対物レンズの倍率 60倍
対物レンズの焦点距離 3mm
第2領域の開口数 0.3、0.45
コンデンサレンズの焦点距離 7.1mm
開口部材の透過領域の直径 0.2mm
【0452】
第2領域の開口数は、コンデンサレンズの開口数で表している。図37(a)に示すように、第2領域は、2つの円の円周上に位置している。内側の円周上に位置する第2領域から射出した光束は、開口数0.3相当の光束と見なせば良い。外側の円周上に位置する第2領域から射出した光束は、開口数0.45相当の光束と見なせば良い。
【0453】
各条件式におけるパラメータの値は以下のとおりである。
検出光学系の瞳の面積(PS’) 57.0mm
第2領域の面積(LS’) 0.0056mm
LS’/PS’ 9.8×10-5
検出光学系の瞳直径(T’) 8.52mm
隣接する2つの第2領域の間隔(d’) 0.47mm
d’/T’ 0.055
【0454】
検出光学系の瞳の面積 (8.52/2)×3.14=57.0
第2領域の面積 (0.0845/2)×3.14=0.0056
第2領域の直径 0.2/7.1×3=0.0845
検出光学系の瞳直径 2×1.42×3=8.52
内側の第2領域までの半径 0.3×3=0.9
隣接する2つの第2領域の間隔
0.9×sin30/cos15=0.47
【0455】
図37(a)に示すように、第2領域は、2つの円の円周上に位置している。内側に位置する第2領域までの半径は、内側の円の半径である。
【0456】
図39は、第2例の結果を示す図である。図39(a)と図39(b)は、初期値を設定したの推定標本を示している。図39(c)、図39(d)、図39(e)は、再構成した推定標本を示している。
【0457】
各図における初期値開口部材と再構成した推定標本の対応関係は、以下の通りである。
初期値を設定したの推定標本 再構成した推定標本
図39(a) 図39(c)
図39(b) 図39(d)
なし 図39(e)
【0458】
図39(a)では、推定標本の輪郭が判別できるように初期値が設定されている。図39(b)では、強度輸送方程式を用いて初期値が設定されている。
【0459】
図37(c)と図37(e)との比較、および図37(d)と図37(e)との比較から、初期値を設定した方が、精度よく推定標本を再構成することができる。
【0460】
図1(a)に示す顕微鏡システム1は、照明光学系を備えることができる。この場合、顕微鏡システム1は、条件(6)、(7)を満足すると良い。また、顕微鏡システム1は、開口部材を備えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0461】
以上のように、本発明は、画像の取得を開始してから物体モデルの推定が完了するまでの時間が短い顕微鏡システムに適している。
【符号の説明】
【0462】
1 顕微鏡システム
2 インコヒーレント光源
3 検出光学系
4 撮像素子
5 標本
5a 表面
5’ 光学像
10 検出光学系3の瞳面
11、12、20、21 第1領域
30 第1円環領域
31 第2円環領域
32 第3円環領域
40、41 第1領域
50 第1円領域
51 第2円領域
52 第4円環領域
53 第3円領域
60 第1領域
70 第1の扇型領域
71 第2の扇型領域
72 第3の扇型領域
74 第1の扇型領域
80、81 第1領域
90 顕微鏡システム
91 照明光学系
100 照明光学系の瞳面
101、102 第2領域
110 顕微鏡システム
111 開口部材
112 プロセッサ
113 遮光領域
112a、112b、112c、112d 透過領域
120 顕微鏡システム
121 インコヒーレント光源
122 照明光学系
130 推定標本
130a 表面
140 標本
140’ 光学像
141 移動ステージ
150 推定標本
150a 表面
L1、L2 光束
Fo 検出光学系の焦点位置
Pu 検出光学系の瞳位置
IP 結像面
C 検出光学系の瞳の中心
IP 結像面
PI 照明光学系の瞳面
図1
図2
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