(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】高電圧装置、及び、高電圧装置における絶縁耐力を増大させるための方法
(51)【国際特許分類】
H02B 13/035 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
H02B13/035 301L
(21)【出願番号】P 2023519120
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2021075089
(87)【国際公開番号】W WO2022069202
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】102020212385.3
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フランク,ディートマー
(72)【発明者】
【氏名】グルント,アーミン
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥング,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】クレーンケ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】レーマン,フォルカー
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-071007(JP,U)
【文献】米国特許第04554399(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 13/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル型ハウジング(2)を有し、前記カプセル型ハウジング(2)に引き込まれる、及び/又は、前記カプセル型ハウジング(2)から引き出される、少なくとも1つの活線導体(4)のための少なくとも1つのブッシング(3)を有する、高電圧装置(1)であって、
自由電位にある少なくとも1つの電極(5)が前記ブッシング(3)により囲まれて
おり、
自由電位にある前記少なくとも1つの電極(5)が円筒形に形成されている、
ことを特徴とする高電圧装置(1)。
【請求項2】
少なくとも1つの開閉ユニットが含まれており、前記カプセル型ハウジング(2)内に配置されている、及び/又は、前記少なくとも1つの活線導体(4)を介して電力系統の電力需要家、発電者及び/又は電力線に接続されている、ことを特徴とする、請求項1に記載の高電圧装置(1)。
【請求項3】
自由電位にある前記少なくとも1つの電極(5)の中心軸(6)が、前記少なくとも1つの活線導体(4)の長手方向軸と一致するように配置されていることを特徴とする請求項1
または2に記載の高電圧装置(1)。
【請求項4】
接地電位にある少なくとも1つの電極(7)が前記ブッシング(3)によって囲まれており、この接地電位にある少なくとも1つの電極(7)は自由電位にある前記少なくとも1つの電極(5)と間隔を置いて配置されている、及び/又は、自由電位にある前記少なくとも1つの電極(5)が少なくとも部分的に空間的に取り囲まれている、ことを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の高電圧装置(1)。
【請求項5】
自由電位にある前記少なくとも1つの電極(5)の中心軸が、接地電位にある前記少なくとも1つの電極(7)の中心軸と一致するように配置されている、及び/又は、自由電位にある前記少なくとも1つの電極(5)がその中心軸に沿って、接地電位にある前記少なくとも1つの電極(7)よりも長く形成されている、ことを特徴とする請求項
4に記載の高電圧装置(1)。
【請求項6】
自由電位にある前記少なくとも1つの電極(5)が電気絶縁性のスペーサ(8)により、少なくとも1つの活線導体(4)に対して特に等距離になるように前記カプセル型ハウジング(2)に保持されている、ことを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の高電圧装置(1)。
【請求項7】
前記カプセル型ハウジング(2)が1つのフランジ(9)と1つの絶縁体(10)を有し、
前記絶縁体(10)が、中空パイプ状及び/又は円筒状に形成され、その外周部に複数のリブを有しており、前記フランジ(9)に機械的に安定な方法で固定されている、
ことを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の高電圧装置(1)。
【請求項8】
前記絶縁体(10)の中心軸が、自由電位にある前記少なくとも1つの電極(5)の中心軸(6)、及び/又は、前記少なくとも1つの活線導体(4)の長手方向軸、と一致するように配置されていることを特徴とする請求項
7に記載の高電圧装置(1)。
【請求項9】
自由電位にある前記少なくとも1つの電極(5)が、前記カプセル型ハウジング(2)内に突き出ている、及び/又は、前記絶縁体(10)内に突き出ている、ことを特徴とする請求項
7又は
8に記載の高電圧装置(1)。
【請求項10】
自由電位にある前記少なくとも1つの電極(5)が、金属及び/又は、金属合金で作られていることを特徴とする請求項1から
9のいずれか1項に記載の高電圧装置(1)。
【請求項11】
前記高電圧装置(1)、前記カプセル型ハウジング(2)及び/又は前記ブッシング(3)が、清浄空気で充填されていることを特徴とする請求項1から
10のいずれか1項に記載の高電圧装置(1)。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか1項に記載の高電圧装置(1)において絶縁耐力を増大させるための方法であって、
前記高電圧装置(1)の前記カプセル型ハウジング(2)に引き込まれる、及び/又は、前記カプセル型ハウジング(2)から引き出される、前記少なくとも1つの活線導体(4)のための前記少なくとも1つのブッシング(3)によって囲まれた、自由電位にある前記少なくとも1つの電極(5)が、自由電位にある電極(5)のないブッシング(3)と比べて絶縁耐力を増大することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧装置、及び、高電圧装置における絶縁耐力を増大させるための方法に関し、この高電圧装置は1つのカプセル型ハウジング、及び、そのカプセル型ハウジングに引き込まれる及び/又はそのカプセル型ハウジングから引き出される少なくとも1つの活線導体のための少なくとも1つのブッシングを含む。
【0002】
高電圧装置は数十キロボルトの範囲から数百キロボルトの電圧範囲、特に1200 kVの電圧、かつ、数百キロアンペアまでの範囲の電流に対して設計されている。高電圧装置には、例えば、高電圧開閉装置、断路器、変圧器、避雷器、計器用変成器及び/又はブッシングが含まれる。高電圧装置、特に開閉装置は、例えば、屋外型開閉装置として及び/又はガス絶縁開閉装置(Gas-Isolierte-Leistungsschalter)、即ちガス絶縁開閉装置(Gas-Insulated-Switchgear)として設計されており、ガス絶縁開閉装置は、高圧電位で開閉ユニットが絶縁体内に配置された碍子形として、又は、接地されたハウジング内に開閉ユニットが配置されたタンク形として、設計されている。
【0003】
タンク形ガス絶縁開閉装置は、特に円筒形のタンクの形に設計された例えばアルミニウム製のカプセル型ハウジングと、活線導体用の複数のブッシングとを有し、これらのブッシングはカプセル型ハウジングの内部に配置された開閉ユニットを電力系統内の電力需要家、発電者及び/又は電力線に接続するためのものである。このカプセル型ハウジングは、特にタンク形では気密に設計されており、例えば特に円形のフランジ形状に設計された2つの開口部を有し、この開口部に特に中空円筒形の絶縁体ハウジングが気密に固定されている。絶縁体ハウジングすなわち絶縁体内では、開閉ユニットを電力系統内の電力需要家、発電者及び/又は電力線に電気的に接続するために、活線導体が、気密封止されたハウジング端部の外部接続端子からカプセル型ハウジングの開口部へ、さらにこれを通って例えば開閉ユニットまで延在している。
【0004】
高電圧装置の、特に開閉装置のカプセル型ハウジングは、特にコンクリートの基礎に機械的に安定した方法で固定された支持台上に、例えば鋼製支柱の上に配設されている。カプセル型ハウジングは、メンテナンス作業員及び/又は周囲にいる人の危険を最小限に抑えるために、電気的に接地されている。特に長い中空円筒形の絶縁体は、カプセル型ハウジングの、支持台とは反対の側に配設又は固定されており、例えば、カプセル型ハウジングに垂直に又は角度をつけて、特に、カプセル型ハウジングから上方に向いている。したがって、接続端子の、接地電位及び/又は基礎からの十分な電気絶縁距離が得られ、電気フラッシュオーバーを防止することができる。カプセル型ハウジング及び絶縁体の内部は絶縁ガス及び/又は遮断ガス、特にSF6で充填されている。
【0005】
この絶縁ガスは、高電圧装置の内部の例えば開閉ユニット及び活線導体を接地されたカプセル型ハウジングに対して絶縁する。ブッシングの領域では、特に、カプセル型ハウジングのフランジの形に設計された円形開口部から固定された特に中空円筒形の絶縁体への移行部の領域では、接地されたカプセル型ハウジングと特に高電圧電位の活線導体との間で十分な絶縁耐力を確保することができる。カプセル型ハウジングにおいて開口部が円形の場合には、活線導体はカプセル型ハウジングに対して等距離に、特に、開口部の円形平面を円の中心において垂直に貫通するように配置されている。これらの開口部は、高電圧装置の最大電圧及び使用された絶縁ガスならびにその圧力に応じて、十分な絶縁耐力を確保する大きさ又は円周を有し、これにより、導体とカプセル型ハウジングとの間の電気的フラッシュオーバーを確実に防止することができる。
【0006】
開口部の領域における電界又は電界ピークは、接地された複数の電極によって、特に絶縁体の内部に配置されカプセル型ハウジングのフランジに機械的に固定された円形の中空円筒形の金属電極によって、活線導体から出発して変化されるか又は減少される、すなわち、シールドされる。これにより、特にブッシング領域内の高電圧電位の電気導体または活線導体と接地されたカプセル型ハウジングとの間で電気的フラッシュオーバー及び/又は短絡が生じることなしに、この高電圧装置において特に数百キロボルトの範囲の高電圧印可が可能である。高電圧装置の高い電圧レベルは、長期にわたる安全な運転のために、カプセル型ハウジングの開口部の大口径を必要とし、このことは大きな周囲を有する絶縁体のための高コストに繋がり、高い絶縁耐力を有する遮断ガス、特にSF6
を必要とし、及び/又は、遮断ガスの高い圧力を必要とし、このことは、十分な機械的安定性を長期にわたり確保するために、絶縁体及びカプセル型ハウジングの大きな肉厚のための高コストに繋がる。
【0007】
SF6のような遮断ガスは気候に有害である。清浄空気、すなわち、洗浄された空気、のような代替の遮断ガスの絶縁耐力はより小さい。清浄空気のような気候に優しい遮断ガスの使用は、カプセル型ハウジング内の開口部のより大きな開口部直径及び/又は遮断ガスのより高い圧力を必要とし、上述した欠点がある。例えば複数の接地された制御電極の使用、及び/又は、導体への及び/又はカプセル型ハウジングの開口部への絶縁塗料の塗布などの対策は、特定の電圧レベルに対しては不十分な程度にしか絶縁耐力を増大させることができない。したがって、その高電圧開閉装置の使用は制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上述した諸問題を解決する高電圧装置、及び、高電圧装置において絶縁耐圧を高めるための方法を提供することにある。特にこの課題は、特に清浄空気のような代替の遮断ガスの使用時に、高電圧装置のブッシング領域における絶縁耐力が大きく、特に例えば周囲空気の範囲のような低いガス圧力を有する遮断ガスの使用時に、及び/又は、ブッシング直径がSF6で充填された高電圧装置のブッシング直径と同等かそれよりも小さい場合に、有利なコストで且つ材料を節約して高い電圧レベルを可能にする高電圧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上掲の課題は、請求項1の特徴を有する高電圧装置によって、及び/又は、高電圧装置、特に、上述の高電圧装置において絶縁耐力を増大させるための請求項13による方法によって、解決される。本発明による高電圧装置の有利な実施形態、及び/又は、高電圧装置、特に上述の高電圧装置における絶縁耐力を増大させるための本発明による方法の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。2つの主請求項の主題は互いに、及び、従属請求項の特徴と組み合わせることができ、従属請求項の特徴は互いに組み合わせることができる。
【0010】
本発明による高電圧装置は、1つのカプセル型ハウジングと、少なくとも1つの活線導体又は電気導体のための少なくとも1つのブッシングとを備える。以降では、特に導体中を電流が流れている場合の本発明の効果を説明するために、電気導体の同義語として活線導体を用いている。この少なくとも1つの導体がそのカプセル型ハウジング内に引き込まれる、及び/又は、そのカプセル型ハウジングから引き出される。自由電位にある少なくとも1つの電極がブッシングで囲まれている。
【0011】
自由電位にあるこの少なくとも1つの電極により、SF6のような気候に有害な遮断ガスに代えて特に清浄空気のような気候に優しい遮断ガスを使用する場合に、小さい直径のブッシングの使用が可能となる。自由電位にある少なくとも1つの電極を備えた高電圧装置は、特に清浄空気のような気候に優しい遮断ガスの使用時に、小さい直径のブッシングを使用することができるので、コスト的に有利で、且つ、材料を節約することができ、高い電圧レベルにおいて高電圧装置のブッシング領域で高い絶縁耐力を備えた、例えば周囲空気の範囲のような低いガス圧を有する遮断ガスの使用を可能とし、このことにより、肉厚の薄いカプセル型ハウジング及び絶縁体が可能となる。
【0012】
この高電圧装置には高電圧開閉装置の少なくとも1つの開閉ユニットが含まれており、特にカプセル型ハウジング内に配置されており、及び/又は、少なくとも1つの活線導体を介して電力系統内の電力需要家、発電者及び/又は電力線に接続されることが可能である。高電圧開閉装置の複数の開閉ユニットは、少なくとも1つの活線導体又は電気導体のための少なくとも1つのブッシングを有する上述のタイプのカプセル型ハウジング内に設置されており、このことが、高電圧装置としての、特に高電圧開閉装置のための上述の利点と結びついている。
【0013】
自由電位にある少なくとも1つの電極は円筒形に形成することができる。特に円形断面の円筒形電極は簡単でコスト的に有利であり、活線導体又は電気導体の周りに等距離に配置することが可能である。
【0014】
自由電位にあるこの少なくとも1つの電極の中心軸は、少なくとも1つの活線導体又は電気導体の長手方向軸線と一致するように又は同一に配置することができる。これにより、特にカプセル型ハウジングの開口部における、ブッシングの電界の最適なシールドが得られる。
【0015】
接地電位にある少なくとも1つの電極をブッシングによって囲むことができ、特に空間的に囲むことができる。接地電位にある少なくとも1つの電極を自由電位にあるこの少なくとも1つの電極と間隔を置いて配置することができる。接地電位にあるこの少なくとも1つの電極は自由電位にあるこの少なくとも1つの電極を少なくとも部分的に取り囲むことができる。これにより、カプセル型ハウジングの開口部の領域における電界の更なるシールドが得られ、特に、活線導体に対する開口部の良好なシールドが得られる。接地電位にある電極と自由電位にある電極との組合せは、ブッシング領域及び/又はカプセル型ハウジングの開口部の領域における高い絶縁耐力をもたらし、これにより上述の利点が得られる。この組合せにより、1つの電極又は1つのタイプの電極だけを使用する場合に加えて、シールド効果をさらに増大することができる。接地電位にある少なくとも1つの電極を自由電位にある少なくとも1つの電極の周りに配置することによって、接地電位にある電極を、カプセル型ハウジングに又はカプセル型ハウジングのフランジの開口部の周囲に、接地して配置する又は固定することが可能となる。
【0016】
自由電位にある少なくとも1つの電極の中心軸は、接地電位にある少なくとも1つの電極の中心軸と一致するように又は同一に配置することができる。自由電位にあるこの少なくとも1つの電極はその中心軸に沿って、接地電位にある少なくとも1つの電極よりも長く形成することができる。これによって、電気導体又は活線導体に対するカプセル型ハウジングの開口部の最適なシールドが得られ、このことが上述の利点と結びついている。
【0017】
自由電位にあるこの少なくとも1つの電極は電気絶縁性のスペーサ、特に、セラミック、プラスチック、シリコーン、PTFE、テフロン(登録商標)、エポキシ樹脂及び/又は複合材料から成るスペーサにより、少なくとも1つの活線導体に対して特に等距離に保持することができる。この電気絶縁性のスペーサは、自由電位にある少なくとも1つの電極が接地されずに自由電位にあるようにするためのものであり、その結果、特に、少なくとも1つの活線導体に対して等距離に配置されている場合に、最適なシールドが得られる。セラミック、プラスチック、シリコーン、PTFE、テフロン(登録商標)、エポキシ樹脂及び/又は複合材料のような材料は良好な電気絶縁性を有しており、コスト的に有利で機械的に安定であり、自由電位にある少なくとも1つの電極を、少なくとも1つの活線導体に対して等距離になるように特にカプセル型ハウジングに長期にわたり機械的に安定に保持することができる。
【0018】
このカプセル型ハウジングは1つのフランジを有することができ、1つの絶縁体、特に中空パイプ状及び/又は円筒状に形成され、その外周部に特に複数のリブを有している絶縁体がこのフランジに機械的に安定な方法で固定可能である。フランジにより、絶縁体をカプセル型ハウジングに、機械的に安定で、長期的に強固で、特に気密に固定することができる。こうして、カプセル型ハウジングと絶縁体とを有する高電圧装置の気密なハウジングが可能となり、これは、ハウジング内に少なくとも部分的に電気シールドされた導体を有する。特に、絶縁体及び/又はカプセル型ハウジング内に配置されたこれらの電極は例えば天候の影響から保護されている。
【0019】
この絶縁体の中心軸は、自由電位にある少なくとも1つの電極の中心軸及び/又は少なくとも1つの活線導体の長手方向軸線と一致するように又は同一に配置することができる。これにより、良好なシールド効果を有し、省スペースでコスト的に有利な電極配置が可能になる。
【0020】
自由電位にあるこの少なくとも1つの電極は、カプセル型ハウジング内に突き出る、及び/又は、絶縁体内に突き出ることができる。自由電位にある電極を、開口部を貫通してカプセル型ハウジング内に及び絶縁体内に導くことにより、自由電位にある電極によりカプセル型ハウジング内の開口部の高いシールド効果が得られ、上述の利点に繋がる。
【0021】
自由電位にある少なくとも1つの電極は金属、特に、銅、アルミニウム及び/又は鋼、及び/又は、金属合金で作ることができ、及び/又は、構成することができる。金属は良好な電気シールド効果を生じさせ、有利なコストで、容易に任意の形状に製造可能であるか又は容易に加工可能である。
【0022】
この高電圧装置、特にカプセル型ハウジング及び/又はブッシングは、清浄空気で充填することができる。清浄空気は有利なコストで環境に優しく、特に気候に対してニュートラルである。清浄空気の絶縁耐力がSF6のような従来の絶縁ガスよりも低いことは、活線導体又は電気導体が貫通しているカプセル型ハウジングの特に開口部の領域において、自由電位にある少なくとも1つの電極を使用することによって補償することができる。これにより、異なる絶縁ガスに対して同一のカプセル型ハウジングを使用することが可能となり、このことによって、自由電位にある電極を設けると、既存の高電圧装置での簡単な交換が可能となり、これは気候に優しい効果を有し、さらに、特に気候に優しい絶縁ガスの使用時に、新設の設備においてコスト的に有利な大量生産が可能となる。小さい寸法を有するカプセル型ハウジング及び絶縁体を使用することができ、このことにより、上記の利点と共に、材料及びコストが節約される。
【0023】
高電圧装置、特に上述の高電圧装置において絶縁耐力を増大させるための本発明による方法は、高電圧装置のカプセル型ハウジングに引き込まれるか及び/又はカプセル型ハウジングから引き出される少なくとも1つの活線導体のための少なくとも1つのブッシングによって囲まれた、自由電位にある少なくとも1つの電極が、自由電位にある電極のないブッシングと比べて絶縁耐力を高めることを含む。
【0024】
高電圧装置、特に上述の高電圧装置において絶縁耐力を増大するための請求項13に記載された本発明による方法の利点は、請求項1に記載された本発明による高電圧装置の上述の利点と同様であり、その逆も然りである。
【0025】
以下に本発明の実施例を図面で模式的に示し、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による高電圧装置1の一部の断面の模式図である。カプセル型ハウジング2に開口部があり、この開口部を通る活線導体4のためのブッシング3があり、自由電位にある電極5がブッシング3で囲まれている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、本発明による高電圧装置1の一部の断面が模式的に示されており、高電圧装置1のカプセル型ハウジング2に開口部がある。この開口部は、リング状又はつば状に形成されたフランジ9を備えている。フランジ9には固定手段、例えばねじのための複数の孔が設けられている。中空パイプ状の絶縁体10がフランジ9に垂直に配置されており、固定手段、特にねじにより機械的に安定にフランジ9に固定されている。フランジ9を備えたカプセル型ハウジング2は例えば金属、特にアルミニウムで形成されている。絶縁体9は例えば、セラミック、シリコーン及び/又は複合材料で作られている。絶縁体10の外周部には、沿面漏れ電流経路を長くするために、特につば状の複数のリブが形成されている。
【0028】
円形断面を有するこの中空パイプ状の絶縁体10は、円形開口部の開口面に垂直な長手方向軸6を有し、この長手方向軸はカプセル型ハウジング2の開口部と円の中心で交差するか、これを貫通している。このカプセル型ハウジング2内には、本発明による高電圧装置1に含まれる高電圧開閉装置の例えば1つの開閉ユニットが配置されており、導体4を介してカプセル型ハウジング2の外部の電力系統内の電力需要家、発電者及び/又は電力線と電気的に接続されている。高電圧装置1の運転中に又は開閉ユニットの閉状態において活線導体4である電気導体4、これを以下において、開口部及び電極に対する作用を明確に表すために、高電圧装置のすべての開閉位置又は状態に対して一般的に活線導体4と呼ぶ、は特にロッド又はバーの形に形成されており、絶縁体の長手方向軸6と一致する又は同一の長手方向軸を有する。この活線導体4は例えば、銅、アルミニウム及び/又は導電性の鋼から成っている。
【0029】
電流が活線導体4を流れると、その導体4の周囲に電界及び磁界が発生する。この導体4は特に1200kVまでの高電圧電位にあり、カプセル型ハウジング2は接地されている、すなわち接地電位にある。接地されたカプセル型ハウジング2と活線導体4との間の電位差は、電圧フラッシュオーバー及び/又は短絡を生じさせ得る。これを防止するために、カプセル型ハウジング2の開口部は、導体4とカプセル型ハウジング4との間の最小距離を確保するに十分な半径を有し、この半径は電圧フラッシュオーバーを防止するために十分に大きい。この必要最小距離は、カプセル型ハウジング4及び絶縁体10に充填されている絶縁ガス、例えば清浄空気に依存し、さらに、その絶縁ガスの圧力、例えば1バール(105Pa)、に依存する。導体4への及び/又はカプセル型ハウジング2の内部への絶縁塗料の被着のような、さらなる対策により、この最小距離を短くすることが可能である。
【0030】
カプセル型ハウジング4の開口部の領域において十分な絶縁耐力を有しつつ、最小距離を短くするための一つの可能性は、図に示されているように、接地電位にある電極7を使用することである。この電極7は金属、特に、アルミニウム、銅及び/又は鋼で作られ、円形断面を有する中空円筒又は中空パイプの形状である。円形断面を有する中空パイプ状の電極7は長手方向軸又は中心軸6を有し、この中心軸は円形開口部の開口面に垂直であり、カプセル型ハウジング2の開口部と円の中心で交差するか、又はこれを貫通する。接地電位に印加された電極7の長手方向軸すなわち中心軸は、絶縁体10の長手方向軸6を含むか又はそれと同一である。電極7は、例えばねじなどの固定手段を用いて、カプセル型ハウジング2のフランジ9に機械的に安定で、且つ導電的に固定されており、絶縁体10内に又はその内部の中空空間内に突き出ている。この電極7は、カプセル型ハウジング2の開口部又はフランジ9における電圧上昇が電極7によってシールドされるか、又は、絶縁体10の内部に移されるように、カプセル型ハウジング2と活線導体4との間の電界を変化させる。
【0031】
本発明によれば、自由電位にある電極5を使用することによって、カプセル型ハウジング2と活線導体4との間の電界のさらなるシールド又はその電界の変化が可能である。この電極5は金属、特に、アルミニウム、銅及び/又は鋼で作られ、円形断面を有する中空円筒状又は中空パイプ状に形成されている。その断面は電極7の断面よりも小さい。円形断面を有する中空パイプ状の電極5は長手方向軸又は中心軸6を有し、この軸は円形開口部の開口面に垂直であり、カプセル型ハウジング2の開口部と円の中心で交差するか、これを貫通している。自由電位にある電極5の長手方向軸又は中心軸は、絶縁体10の長手方向軸6及び接地電位にある電極7の中心軸と同一である。
【0032】
電極5は、スペーサ8を介してカプセル型ハウジング2のフランジ9に機械的に安定で、且つ、電気的に絶縁して固定されており、絶縁体10の内部にもカプセル型ハウジング2の内部にも突き出ている。この電極5はさらに絶縁体10の内部に電極7として突き出ており、接地電位にある電極7を活線導体4に対してシールドしている。スペーサ8は電気絶縁材料、特に、セラミック、プラスチック、シリコーン、PTFE、テフロン(登録商標)、エポキシ樹脂、及び/又は、複合材料で作られている。このスペーサは、自由電位にある電極5を活線導体4に対して及びカプセル型ハウジング2、すなわち、フランジ9に対して、特に等距離になるように固定している。
【0033】
自由電位にある電極5は、カプセル型ハウジング2と活線導体4との間の電界を、カプセル型ハウジング2または開口部における電圧上昇、並びに、接地電位にある電極7における電圧上昇が自由電位にある電極5によりシールドされて又は低減されて、さらに絶縁体10の内部へ、及び、カプセル型ハウジング2の中へ移されるように、変化させる。これにより、カプセル型ハウジング2の開口部又はフランジ9の大きさがより小さい場合でも、絶縁ガスの圧力が低い場合でも、例えば清浄空気のような代替の絶縁ガスの使用時でも、及び/又は、高電圧装置の運転中に電圧レベルが上昇した時にも、カプセル型ハウジング2と活線導体4との間の電圧フラッシュオーバー及び/又は短絡が妨げられる。
【0034】
このことにより、カプセル型ハウジング2及び絶縁体10の寸法及び肉厚がより小さくなる場合の材料節約及びより低いコストが得られ、カプセル型ハウジング2の開口部を通る活線導体4のブッシング3の領域における絶縁耐力が増大した状態においてより軽量になり、さらに、より低い圧力での、例えば1バールでの、清浄空気のような代替の遮断ガスの使用が可能となる。この高電圧装置1の信頼性及び耐用年数が向上し、保守費用が低減される。
【0035】
上述の複数の実施例は、互いに組み合わすことができ、及び/又は、従来技術と組み合わせることができる。したがって、例えば、高電圧装置1は、高電圧開閉装置、断路器、変圧器、避雷器、計器用変成器及び/又はブッシングを含むことができる。高電圧装置1、特に開閉装置は例えばガス絶縁開閉装置(Gas-Isolierte-Leistungsschalter)、即ちガス絶縁開閉装置(Gas-Insulated-Switchgear)として設計されている。接地電位にある開口部を通る導体のブッシング内に自由電位にある電極を設けるという基本原理は、屋外型開閉装置又は屋外型高電圧装置においても適用可能である。本発明は、タンク形設備、すなわち接地されたハウジング内に配置された開閉ユニットを有する設備において使用可能である。しかし、基本的には碍子形設備、すなわち、絶縁体中に配置された高電圧電位の開閉ユニットを有する設備においても使用可能である。自由電位にあるこの電極5は、例えば円筒形に形成されている。さらに、他の形状、例えば、楕円形の断面を有する形状、及び/又は、円錐台として形成された形状も可能である。
【0036】
この高電圧装置のカプセル型ハウジング2は例えばタンク形であり、絶縁体10により気密に閉じられている。タンク形の容器は、例えば、球形又は円筒形であり、別の形状も可能である。この高電圧装置の要素間の接続は、例えば、固定手段、特にねじ、及び、少なくとも1つのフランジを介して機械的に安定した方法で行われる。他の又は代替の接続技術、特に、接着接続、溶接接続及び/又はろう付け接続も同様に適用可能である。複数の要素の気密接続のためのシールの使用、特に銅シールの使用が可能である。このスペーサは例えば円板状であり単一部品で作られている。代案として、同一の、又は、異なる部分形状を有する複数部品から成るスペーサも可能である。これらの電極の端部は、電界上昇を避けるために、例えば丸みを付けられている。これらの電極端部の、例えば、直線状に延びている、曲線状の、複数の丸み半径を有する丸みをつけられた、などの他の形状も可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 高電圧装置
2 カプセル型ハウジング
3 ブッシング
4 活線導体
5 自由電位にある電極
6 長手方向軸又は中心軸
7 接地電位にある電極
8 スペーサ
9 フランジ
10 絶縁体