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特許7600393補強用不織布を有するバッテリシェル、製造方法及び駆動用バッテリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】補強用不織布を有するバッテリシェル、製造方法及び駆動用バッテリ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/227 20210101AFI20241209BHJP
   H01M 50/229 20210101ALI20241209BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20241209BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
H01M50/227
H01M50/229
B29C43/36
B29C43/18
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023526404
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 EP2021079894
(87)【国際公開番号】W WO2022090349
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】102020128528.0
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598001467
【氏名又は名称】カウテックス テクストロン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハルトムート・ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイウェイ・ジャオ
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/188873(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/080412(WO,A1)
【文献】特開2014-125532(JP,A)
【文献】特開2010-153129(JP,A)
【文献】特開2016-199038(JP,A)
【文献】特開2013-201112(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044801(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
B29C 43/00-43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部(102)、側壁(104)、内面、及び外面を有し、0.5mmから20mmの長さを有するロングカット繊維から成る補強用不織布及び高分子マトリクスを有するバッテリシェル(100)を製造するための方法であって、
前記方法は、以下のステップ:
c)シアエッジ式ツール(170)として構成された空洞部を有するプレス成形機(160)を用いて前記ロングカット繊維から成る補強用不織布及び高分子マトリクスを有するプリフォームから前記バッテリシェル(100)を形成するステップ;及び
d)前記バッテリシェル(100)を取り出すステップ、を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記プリフォーム用の成形材料は、溶融したポリマーと、ロングカット繊維とを混合することによって提供されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記プリフォームは、前記バッテリシェル(100)の形成前に、
押出し成形機ノズルによって形成される;且つ/又は
シアエッジ式ツール(170)として構成された前記プレス成形機(160)にもたらされることを特徴とする、請求項又はに記載の方法。
【請求項4】
前記押出し成形機ノズルは、幅広スリットノズルであることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記プレス成形機(160)の前記空洞部は、可変の容積を有することを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記バッテリシェル(100)の形成前に、挿入部品が前記空洞部にもたらされることを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記バッテリシェル(100)の形成前に、前記バッテリシェル(100)を固定するための金属インサートが空洞部にもたらされることを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ロングカット繊維は、1.0mmから15mmまでの間の長さを有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法
【請求項9】
前記バッテリシェル(100)は、20%以上の繊維体積割合を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法
【請求項10】
前記高分子マトリクスは、熱可塑性プラスチックから成ることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法
【請求項11】
前記ロングカット繊維は、ガラス繊維及び/又は炭素繊維及び/又はアラミド繊維を有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法
【請求項12】
前記バッテリシェル(100)は、前記バッテリシェル(100)を固定するための金属インサートを有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法
【請求項13】
前記バッテリシェル(100)の少なくとも一つの側壁は異なる高さを有することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強用不織布を有するバッテリシェル、製造方法及び駆動用バッテリに関する。
【0002】
バッテリ、特に自動車においてエネルギを蓄積するための駆動用バッテリは、多数の構成部材から成る。ここで、少なくとも1つのバッテリシェルを有するバッテリケーシングは、特に、バッテリモジュール及び他の所要コンポーネントを固定して保護するという役割を担っている。
【0003】
今日のバッテリケーシングは比較的大きい質量を有しているため、平坦なバッテリケーシング、特に電気車両に使用するためのバッテリケーシングでは、比較的高い加速度値において、バッテリモジュールの大きい質量を確実且つロバストに支持することが要求される。
【0004】
更に、電気車両のバッテリには、事故が起きてしまった場合でも、バッテリモジュールが損傷から保護されるべきであるという要求が課されている。
【0005】
従来技術においては、種々に実施されているプラスチック製のバッテリシェルが公知である。
【0006】
本発明が基礎とする課題は、従来技術に対する改善形態又は代替形態を提供することである。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、上記の課題は、バッテリシェル、特に駆動用バッテリのバッテリシェルによって解決され、このバッテリシェルは、底部及び側壁を有し、バッテリシェルは、内面及び外面を有し、バッテリシェルは、ロングカット繊維から成る補強用不織布及び高分子マトリクスを有する。
【0008】
これに関して、以下では概念について説明する:
先ず、本願明細書の枠内では、「ある/1つの」、「2つの」などの不定冠詞及び数値表記は、各文脈から、そこでは「ちょうど1つの~」、「ちょうど2つの~」などを意味し得ることが明確でない限り、又は当業者には自明でない限り、又は技術的にそれが必然でない限り、通常の場合は「少なくとも」を表すものとして、つまり、「少なくとも1つの~」、「少なくとも2つの~」として解されるべきことを言及しておく。
【0009】
本願明細書の枠内では、「特に」という表現は常に、この表現で任意の好適な特徴が導入されるものと解される。この表現は、「しかも」及び「即ち」と解されるべきではない。
【0010】
「駆動用バッテリ」とは、エネルギ蓄積部、特に電流のためのエネルギ蓄積部であると解される。とりわけ、駆動用バッテリは、電気車両への取り付けに適しており、また電気車両を駆動させるためにも適している。とりわけ、駆動用バッテリは、バッテリ電気自動車及び/並びにバッテリ電気駆動部及び内燃機関を備えた車両において利用することに適している。
【0011】
「バッテリシェル」とは、バッテリ、特に駆動用バッテリのケーシング構成要素であると解される。
【0012】
特に、バッテリシェルは、バッテリのコンポーネントを収容するように設計されており、またそれに応じて、コンポーネントを収容するための収容空間を有しているので、それらのコンポーネントをバッテリシェルによって外部の影響から保護することができ、且つ/又は少なくとも間接的にバッテリシェル内に固定することができる。
【0013】
とりわけ、バッテリシェルとは、バッテリ下部シェル又はバッテリ上部シェルであると解され、この場合、バッテリ下部シェル及びバッテリ上部シェルは、とりわけ、駆動用バッテリのケーシングの重要なコンポーネントを一緒に形成する。
【0014】
「補強用不織布」とは、不規則な配向で組まれて相互に接続されることで繊維層を形成している、有限長の繊維から成る造形物であると解され、この場合、補強用不織布は、繊維強化プラスチック複合材から成る構成部材を補強するように設計されている。特に、結晶化された高分子マトリクスにおける補強用不織布は、繊維強化プラスチック複合材の剛性及び耐穿刺性を向上させることができる。
【0015】
「ロングカット繊維」とは、0.5mm以上の長さを有する有限長の繊維であると解される。0.5mm未満の長さを有する繊維は、ショートカット繊維と称される。
【0016】
「高分子マトリクス」とは、繊維強化プラスチック複合材において、補強用不織布を包囲するプラスチックであると解され、補強用不織布の繊維は、接着相互作用によって、高分子マトリクスに結合されている。
【0017】
ここでは、繊維強化プラスチック複合材としてのバッテリシェルが提案され、この場合、繊維部分が補強用不織布を有するか、又は補強用不織布から成る。
【0018】
補強用不織布の使用は、比較的軽い重量において高い剛性を備えたバッテリシェルを実現する。更に、補強用不織布によって、バッテリシェルの特に良好な耐穿刺性を達成することができる。
【0019】
ここで提案するバッテリシェルの製造においては、とりわけ、プレス法が使用される。プレス法は、複雑な幾何学形状、特にバッテリシェルの典型的な幾何学形状のバッテリシェルを形成するための、溶融した成形材料の分散を実現する。ここで提案する補強用不織布は、配向が不規則なロングカット繊維から成る造形物であり、それらのロングカット繊維は、接着により、結晶性の及び/又は溶融した高分子マトリクスの中で相互に結合されている。これにより、溶融した成形材料が、そこに含有されているロングカット繊維と共に、プレス成形機内に分散されることが実現される。成形材料がプレス成形機において硬化すると即座に、成形材料はロングカット繊維と結合し、それによって、比較的均一な繊維体積割合を有する、比較的均一に分散した補強用不織布を有するバッテリシェルが生じる。
【0020】
従って、有利には、補強用不織布内ではロングカット繊維の配向が不規則であるにもかかわらず、比較的均一な材料特性を有するバッテリシェルを達成することができる。
【0021】
好適な実施形態によれば、バッテリシェルの底部の法線方向から見た側壁の高さは、50mmより大きく、好適には80mmより大きく、更に好適には110mmより高く、特に好適には140mmより高い。
【0022】
特に好適には、バッテリシェルは一体的に形成されており、それによって、バッテリシェルは単一の構成部材として、一繋がりで継ぎ目無く製造されている。
【0023】
オプションとして、ロングカット繊維は、0.5mmから20mmまでの間の長さ、好適には1.0mmから15mmまでの間の長さ、好適には1.0mmから10mmまでの間の長さを有する。
【0024】
ここではとりわけ、ロングカット繊維が0.5mmから20mmまでの間の長さを有することが提案され、この場合、個々の繊維の長さは、実質的に同じ長さで分布していても良いし、異なる長さで分布していても良い。これによって、試験の結果、バッテリシェルの比較的複雑な構成部材幾何学形状において、比較的高い引張強度を示す、有利には特に均一な材料特性を達成できることが分かった。
【0025】
ここで、ロングカット繊維の長さについての上記の値は、厳格な限界値と解されるべきではなく、むしろ、本発明の上述の態様から逸脱することなく、工学的な尺度でその値を上回っても良いし、下回っても良いことを明示的に言及しておく。簡潔に述べると、上記の値は、ロングカット繊維の長さのここで提案する範囲の大きさについての目安を提供するものである。
【0026】
好適には、バッテリシェルは、20%以上の繊維体積割合、好適には30%以上の繊維体積割合、特に好適には40%以上の繊維体積割合を有する。
【0027】
これに関して、以下では概念について説明する:
「繊維体積割合」とは、繊維強化材料の総体積に対する繊維の体積の比率であると解される。
【0028】
バッテリシェルは、とりわけ、45%以上の繊維体積割合、好適には50%以上の繊維体積割合、特に好適には55%以上の繊維体積割合を有する。
【0029】
更には、バッテリシェルは、とりわけ、60%以上の繊維体積割合、好適には70%以上の繊維体積割合、特に好適には80%以上の繊維体積割合を有する。
【0030】
有利には、繊維体積割合のここで提案する範囲によって、成形材料を良好に分散させることができ、それによって、バッテリシェルの材料特性が特に均一になり、それと同時に、引張強度も比較的高くなる。
【0031】
ここで、繊維体積割合についての上記の値は、厳格な限界値と解されるべきではなく、むしろ、本発明の上述の態様から逸脱することなく、工学的な尺度でその値を上回っても良いし、下回っても良いことを明示的に言及しておく。簡潔に述べると、上記の値は、繊維体積割合のここで提案する範囲の大きさについての目安を提供するものである。
【0032】
好適な実施形態によれば、高分子マトリクスは、熱可塑性プラスチック、特にポリプロピレン、PA6又はPA6.6から成る。
【0033】
これに関して、以下では概念について説明する:
「プラスチック」とは、主として高分子から成る材料であると解される。
【0034】
とりわけ、プラスチックは熱可塑性プラスチックであり、この場合、熱可塑性プラスチックは、材料に依存した温度範囲において変形させることができ、このプロセスは可逆的であり、冷却と、溶融状態になるまでの再加熱とによって任意の回数繰り返すことができる。
【0035】
とりわけ、熱可塑性プラスチックとは、ポリアミド6(PA6)又はポリアミド6.6(PA6.6)であると解される。
【0036】
これによって有利には、特に高い弾性率及び/又は高い結晶化度を示す、熱可塑性プラスチックを有する、特に剛性の高いバッテリシェルを達成することができる。
【0037】
好適な実施形態によれば、高分子マトリクスは、熱硬化性プラスチックから成り、それによって、特に硬質で堅固なバッテリシェルを達成することができる。
【0038】
好適には、ロングカット繊維は、ガラス繊維及び/又は炭素繊維及び/又はアラミド繊維を有する。
【0039】
ここでは、ロングカット繊維が、一種類の繊維材料から成ることが提案されるか、又は複数種類の異なる繊維材料が混合されたものから成ることが提案される。ガラス繊維、炭素繊維及び/又はアラミド繊維の材料特性は異なるので、繊維の選択及び/又は繊維の組成を、バッテリシェルの個々の要件に最適に適合させることができる。
【0040】
特に好適な実施形態によれば、バッテリシェルは、バッテリシェルを固定するための金属インサート、特に雌ねじを有する金属インサートを有する。
【0041】
これに関して、以下では概念について説明する:
「金属インサート」とは、バッテリシェルを固定するための接続手段として設計されている金属体であると解される。
【0042】
とりわけ、金属インサートは、雌ねじ及び/又はその外面におけるプロファイルを有する。この場合、雌ねじは、対応するねじとの相互作用下で、ねじ結合を確立できるように設計されている。更に、外面におけるプロファイルは、金属インサートを包囲するバッテリシェルのプラスチックとの形状結合を生じさせることができるように設計されており、それによって、バッテリシェルと金属インサートとの間で力をより良好に伝達させることができる。
【0043】
特に好適には、金属インサートはヘリコイルであり、更にはとりわけバネ形ねじとして形成されている。その種のヘリコイルは、とりわけ、バッテリシェルの形成前に空洞部に挿入することができ、バッテリシェルの形成時に成形材料によってモールドすることができる。
【0044】
有利には、金属インサートによって、バッテリシェルとその周囲、特に指定された車両のボディ及び/又は隣接するバッテリシェルとの間のロバストで負荷に耐え得る結合を達成することができる。
【0045】
特に好適には、バッテリシェルの少なくとも1つの側壁が、変化する高さを有する。
【0046】
補強用不織布を有する2つのバッテリシェルから成るバッテリケーシングの荷重試験において、バッテリシェルの少なくとも1つの側壁が、別の側壁の高さとは異なる高さを有する場合には、バッテリケーシングは外部からの荷重に対して、特にロバストで耐性があることが分かった。有利な実施形態によれば、バッテリケーシングは、2つのバッテリシェルから構成することができ、各バッテリシェルは、対向する側壁の高さとは異なる高さを有する側壁を有しているので、バッテリシェルの各底部に対して角度がずらされた接合面が生じる。
【0047】
2つのバッテリシェルの間に、バッテリシェルの各底部に対して僅かに角度がずらされた接合面が延在する場合、荷重が掛けられたバッテリケーシングには特に有利である。とりわけ、バッテリシェルは、対向する側壁に対して異なる高さを有する側壁においても、その対向する側壁においても、指定された車両の指定の周囲ボディシェルとの接続手段をそれぞれ有しており、特に、とりわけ指定された接合面の直ぐ近傍に有している。これによって有利には、荷重をバッテリシェルから指定の周囲ボディシェルへと、また荷重を指定の周囲ボディシェルからバッテリシェルへと、それぞれ特に有利に伝達できることを達成することができる。
【0048】
バッテリシェルの接合面の近傍、特にバッテリシェルの底部に対して角度がずらされた接合面の近傍における、接続要素を用いた荷重導入は特に有利であることが分かっており、それにより非常に軽量のバッテリシェルを達成することができる。
【0049】
換言すれば、ここでは、一定ではあるが異なる高さを備えた2つの側壁と、斜めに延在する高さレベルを備えた2つの側壁と、を有することで、一定ではあるが異なる高さを備えた2つの側壁間の高さレベルを、斜めに延在する高さレベルを備えた側壁によって補償調整することができるバッテリシェルが提案される。これによって、バッテリシェルの各底部に対して僅かに角度がずらされた接合面を備えたバッテリケーシングを達成することができる。
【0050】
車両は、ここで提案するバッテリシェルを車両の構造に指定されたように接続するために用いられる固定点に関して非対称であることが多い。ここで提案するバッテリシェルは、高さが異なる側壁を有する。これによって、固定点に関して非対称的である車両にバッテリシェルを理想的に適合させることが有利に実現できる。ここではとりわけ、バッテリシェルが、側壁の上縁に延在するカラーを用いて、指定された車両において非対称的に配置されているボディに載置することができ、更には、とりわけ少なくとも間接的に、1つ又は複数のカラーを用いてそのボディに固定できるように、側壁の異なる高さは設計されている。有利には、指定された車両の運転時に発生する水平方向の力を、ここで提案するバッテリシェルに理想的に導入することができる。
【0051】
本発明の第2の態様によれば、上記の課題は、バッテリシェル、特に本発明の第1の態様によるバッテリシェルを製造するための方法によって解決され、この方法は、以下のステップを含む:
a)空洞部を有するプレス成形機を用いて、特にシアエッジ式ツールを用いて、ロングカット繊維から成る補強用不織布及び高分子マトリクスを有するプリフォームからバッテリシェルを形成するステップ;及び
b)バッテリシェルを取り出すステップ。
【0052】
これに関して、以下では概念について説明する:
「プリフォーム」とは、高分子マトリクスと、高分子マトリクスによって包囲された補強用不織布と、を有する、予め形成された成形材料であると解される。とりわけ、高分子マトリクスは、熱可塑性プラスチック、特にポリプロピレン、PA6又はPA6.6から成る。
【0053】
圧縮成形は、特にシアエッジ式ツールとして構成されている「プレス成形機」が使用される、熱可塑性プラスチック又は熱硬化性プラスチックを成形品に加工するための製造法である。成形機は、製品を形成するための空洞部を成すように設計されているキャビティ及びコアを有する。キャビティとコアとの間での相対的な移動によって、空洞部を開閉することができる。
【0054】
製品、特にバッテリシェルを製造するために、特にプリフォームの形態の成形材料が、成形機の空洞部に導入される。とりわけ、成形機は温度調整される。続いて、空洞部が、圧力ピストンを使用して閉鎖される。圧力によって、成形材料は、成形機の空洞部によって設定された形状となる。
【0055】
「シアエッジ式ツール」とは、コアをガイドするため、且つ/又は空洞部をシールするために、少なくとも部分的に周方向に延在するシアエッジを有するプレス成形機であると解される。とりわけ、シアエッジは、交換可能なシアエッジ条片として構成されている。
【0056】
とりわけ、シアエッジ式ツール、特に可変容量のシアエッジ式ツールを用いて、バッテリシェルがバリを有する場合には、そのバリが成形機の方向に向けられているバッテリシェルを製造することができる。
【0057】
ここでは、プリフォームがプレス成形機内でバッテリシェルとして形成される、バッテリシェルを製造するための方法が提案される。形成後、高分子マトリクスが結晶化し、プレス成形機の開放後に、硬化したバッテリシェルを取り出すことができる。
【0058】
使用されるプリフォームは、高分子マトリクスと、成形材料内で不均一に配向されたロングカット繊維から成る補強用不織布とを有する成形材料から成る。
【0059】
プレス成形機を用いた形成時に、プレス成形機からプリフォームに圧力が伝達され、それによって、プリフォームがプレス成形機の空洞部内に広がる。このようにして、空洞部内では、不均一に配向されたロングカット繊維の比較的均一な分布も生じるので、補強用不織布も、比較的均一にプレス成形機の空洞部内に分布する。
【0060】
ここで提案する製造方法に応じた空洞部は、バッテリシェルの雌型を有するので、バッテリシェルを形成することができる。成形材料の比較的均一な分布によって、完成したバッテリシェルも比較的均一な材料特性を有する。
【0061】
必要とされる成形機内圧に到達することによって、成形材料の十分な圧縮が達成され、それによって、補強用不織布のロバストな構造をサポートすることができる。
【0062】
有利には、ここで提案する製造方法によって、高い工程速度で、またそれによって比較的低いコストで、比較的均一な材料特性を有する繊維強化プラスチック構成部材としての多数のバッテリシェルを製造することができる。
【0063】
特に、シアエッジ式ツールの使用時には、有利には、衡量された成形材料が成形機の空洞部から再び押し出されないことを達成することができ、この場合、キャビティ及びピストンの僅かな公差により、成形材料の成形時に空洞部が同時に通気されることが実現され、それによって、特に複雑な成形機及び長い流路において、成形材料による空洞部の完全な充填を達成することができる。
【0064】
特に、シアエッジ式ツールの使用は、更に、バリを有しないか、又は最小限のバリしか有しないバッテリシェルを、ここで提案する方法で成形することを実現し、それによって、場合によっては必要となる事後的な加工を回避することができるか、又は縮小することができる。
【0065】
好適には、プリフォーム用の成形材料は、溶融したポリマー、特に溶融した熱可塑性プラスチックと、ロングカット繊維とを特に押出し成形機を用いて混合することによって提供される。
【0066】
これに関して、以下では概念について説明する:
「成形材料」とは、ロングカット繊維及び高分子マトリクスの混合物であると解され、この場合、ロングカット繊維は既に高分子マトリクスによって包囲されており、またロングカット繊維は、既に不規則な配向で繊維材料に組まれており、高分子マトリクスを用いて、並びに接着相互作用によって相互に接続されている。
【0067】
成形材料は、ここで提案する第1の変形形態によれば、ポリマー材料及びロングカット繊維から成る溶融流が第2の押出し成形機において相互に混合されることによって得られる。更に、上記の混合によって、第2の押出し成形機内では、補強用不織布を形成するために利用される成形材料内のロングカット繊維の不規則な配向が既に生じている。
【0068】
第1の押出し成形機を用いた第2の押出し成形機内での混合の前に、第1の変形形態によれば、ポリマー材料が溶融され、必要に応じて均質化されて、溶融流として提供され、この溶融流がロングカット繊維と一緒に第2の押出し成形機において混合されて、成形材料となる。
【0069】
ここで提案する第2の変形形態によれば、成形材料が、2つのセクションを有する単一の押出し成形機において処理される。第1のセクションにおいては、ポリマー材料が溶融され、また必要に応じて均質化される。続いて、ロングカット繊維が、後続の第2のセクションの先頭において、溶融流に供給され、押出し成形機によって、またその内部に既に存在する溶融流によって運ばれ、押出し成形機によって溶融流と混合され、成形材料が均質化される。
【0070】
オプションとして、プリフォームが、バッテリシェルの形成前に、
-押出し成形機ノズルによって形成される;且つ/又は
-プレス成形機、特にシアエッジ式ツールにもたらされる。
【0071】
ここで、第1の代替形態によれば、プリフォームが押出し成形機ノズルを用いて成形材料から形成されることが提案され、この場合、プリフォームは、押出し成形機ノズルによって、開放されたプレス成形機に直接的にもたらされる。
【0072】
このために、例えば、押出し成形機ノズルが、プリフォームの形成時に、適切な機構によって、とりわけマニピュレータを用いて、開放されたプレス成形機を介して案内され、それによって、形成されたプリフォームはその形成と同時に、プレス成形機内に置かれる。
【0073】
第2の変形形態によれば、プリフォームが、先ず、位置固定された押出し成形機ノズルによって形成され、続いて、開放されたプレス成形機に運ばれることが提案される。このことは、とりわけ、手動で行うことができるか、又はマニピュレータを用いて行うことができる。
【0074】
好適な実施形態によれば、押出し成形機ノズルは、幅広スリットノズルである。
【0075】
有利には、これによって、実質的に矩形のプリフォームを形成することができ、この矩形のプリフォームを、簡単な手段によって、プレス成形機に運ぶことができるか、又は可動の押出し成形機を用いて、プレス成形機に置くこともできる。
【0076】
好適には、プレス成形機、特にシアエッジ式ツールの空洞部は、可変の容積を有する。
【0077】
これに関して、以下では概念について説明する:
プレス成形機、特にシアエッジ式ツールが「可変の容積」を有する場合、このことは、成形機の空洞部が規定された終端位置を有しないこと、特に可動の成形機半部が、固定の成形機半部に対して規定された終端位置を有しないことと解される。多くの場合、1つの成形機半部、特に上部成形機のみが可動に支承されているので、上部成形機は下部の成形機半部(下部成形機)に対して、規定された終端位置を有しない。換言すれば、バッテリシェルの材料厚さは、プレス成形機にもたらされる成形材料の量に応じて決まる。
【0078】
有利には、バッテリシェルに使用される成形材料の量を、可変の容積を有していないプレス成形機に比べて、より広い公差範囲で測り取ることができる。この場合には、とりわけ、必要とされる構成部材剛性を少なくとも有しているバッテリシェルを達成する際に用いられる成形材料の最小量を規定することが提案される。
【0079】
更に、可変の容積を有するプレス成形機、特にシアエッジ式ツールは、成形機の過充填及び/又は過少充填の危険が生じることなく、バッテリシェルの精緻な細部の形成を実現する。
【0080】
オプションの実施形態によれば、バッテリシェルの形成前に、挿入部品が空洞部にもたらされる。
【0081】
これに関して、以下では概念について説明する:
「挿入部品」とは、プリフォームの他に、成形機の空洞部にもたらされ、プリフォームと一緒に1つの製品に形成される、予め形成された部品であると解される。
【0082】
とりわけ、挿入部品は、接着相互作用によって成形材料と接続される金属インサートである。
【0083】
とりわけ、挿入部品は、接着及び/又は混合によって成形材料と接続されるプラスチック構成部材である。
【0084】
特に好適には、バッテリシェルの形成前に、バッテリシェルを固定するための金属インサート、特に雌ねじを有する金属インサートが空洞部にもたらされ、特に金属インサートが、空洞部内の保持装置と作用結合される。
【0085】
「保持装置」とは、バッテリシェルの形成中に金属インサートを固定し、それによって、形成されるバッテリシェルにおいて金属インサートを正確な位置に配置できるように設計されている、空洞部内にある装置であると解される。
【0086】
ここでは、バッテリシェルが、その接続手段と共に、1サイクルで形成されることが提案される。とりわけ、接続手段は、バッテリシェルの内部において、指定された駆動用バッテリのためのコンポーネント及び/又は他の取付部材をバッテリシェルに接続できるように設計されている。とりわけ、接続手段は、バッテリシェルをその周囲と接続させるために、特に指定された車両と接続させるために設計されている。
【0087】
とりわけ、金属インサートはヘリコイルインサートであり、とりわけバネ形ねじとして実施されている。金属インサートは、バッテリシェルの形成前に空洞部に挿入することができ、それによって金属インサートは、バッテリシェルの形成時に成形材料によってモールドすることができる。
【0088】
第2の態様の対象は、本発明の上述の態様の対象と有利に組み合わせることができ、しかも個別に、又は任意の組み合わせで累積的に組み合わせることができることを明示的に言及しておく。
【0089】
本発明の第3の態様によれば、上記の課題は、バッテリシェル、特に駆動用バッテリのバッテリシェルによって解決され、バッテリシェルは、底部及び側壁を有し、バッテリシェルは、内面及び外面を有し、バッテリシェルは、本発明の第2の態様による方法で製造されている。
【0090】
本発明の第2の態様によるバッテリシェルを製造するための方法の利点は、上述したように、本発明の第2の態様によるバッテリシェルを製造するための方法で製造されているバッテリシェルに直接的に関係していると解される。
【0091】
第3の態様の対象は、本発明の上述の態様の対象と有利に組み合わせることができ、しかも個別に、又は任意の組み合わせで累積的に組み合わせることができることを明示的に言及しておく。
【0092】
本発明の第4の態様によれば、上記の課題は、本発明の第1の態様又は本発明の第3の態様によるバッテリシェルを有する駆動用バッテリ、特に自動車のための駆動用バッテリによって解決される。
【0093】
本発明の第1の態様又は本発明の第3の態様によるバッテリシェルの利点は、上述したように、本発明の第1の態様又は本発明の第3の態様によるバッテリシェルを有する駆動用バッテリに直接的に関係していると解される。
【0094】
第4の態様の対象は、本発明の上述の態様の対象と有利に組み合わせることができ、しかも個別に、又は任意の組み合わせで累積的に組み合わせることができることを明示的に言及しておく。
本発明の更なる利点、詳細及び特徴は、以下に説明する実施例から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1】バッテリシェルの一部を概略的に示す。
図2】標準的に分割されているプレス成形機の一部におけるバッテリシェルの一部を概略的に示す。
図3】シアエッジ式ツールの一部におけるバッテリシェルの一部を概略的に示す。
【0096】
図1におけるバッテリシェル100は、熱可塑性プラスチック(図示せず)から一体的に成形されており、この熱可塑性プラスチックが補強用不織布(図示せず)を包囲している。
【0097】
バッテリシェル100は、底部102と、少なくとも1つの側壁104と、周囲に延びるカラー120と、を有する。
【0098】
更に、バッテリシェル100は、バッテリシェル100を補強するための内側補強部材140を有し、この内側補強部材も同様に、バッテリシェル100と一体的に形成されており、従って、補強用不織布(図示せず)も有する。
【0099】
内側補強部材140は、両側(片側のみが可視である)に補強リブ141を有し、この補強リブ141は、バッテリシェル100を付加的に補強し、また同様に補強用不織布(図示せず)を有する。
【0100】
カラー120も、その内部に補強用不織布(図示せず)を有する。
【0101】
バッテリシェル100のカラー120は、更に、少なくとも1つの金属インサート110を有し、この金属インサート110を用いて、バッテリシェル100を固定することができる、且つ/又は別のバッテリシェル(図示せず)に接続してバッテリケーシング(図示せず)を形成することができる。
【0102】
バッテリシェル100の底部102も、少なくとも1つの金属インサート110を有し、この金属インサート110を用いて、バッテリシェル100において、指定されたコンポーネント(図示せず)を接続することができる。
【0103】
図2には、標準的に分割されているマルチピースのプレス成形機(160)の一部におけるバッテリシェル100の一部が図示されている。見て取れるように、バッテリシェル100の場合によっては生じるバリ150が、標準的に分割されているプレス成形機(160)の分割領域(図示せず)に延在している。
【0104】
図3には、マルチピースのシアエッジ式ツール(170)の一部におけるバッテリシェル100の一部が図示されている。ここでは、バッテリシェル100の場合によっては生じるバリ150が、シアエッジ式ツール(170)を開閉できる方向(図示せず)に延在している。
【符号の説明】
【0105】
100 バッテリシェル
102 底部
104 側壁
110 金属インサート
120 カラー
140 内側補強部材
141 補強リブ
150 バリ
160 標準的に分割されたプレス成形機
170 シアエッジ式ツール
図1
図2
図3