(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】効能促進組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20241209BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241209BHJP
A61K 8/9728 20170101ALI20241209BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20241209BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20241209BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241209BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/49
A61K8/9728
A61K8/9794
A61K8/44
A61Q19/00
A61Q19/08
(21)【出願番号】P 2023532218
(86)(22)【出願日】2021-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2021075783
(87)【国際公開番号】W WO2022110550
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】202011343249.4
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521282033
【氏名又は名称】ブルーメイジ バイオテクノロジー コーポレイション リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】藺▲虎▼霄
(72)【発明者】
【氏名】▲敢▼洪玲
(72)【発明者】
【氏名】林伶俐
(72)【発明者】
【氏名】董建軍
(72)【発明者】
【氏名】邵萌
(72)【発明者】
【氏名】王磊
(72)【発明者】
【氏名】田雪
(72)【発明者】
【氏名】郭学平
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0130245(KR,A)
【文献】Hua Xi Hai Yu Biology and Medical, China,Single Use Gaba-Polypeptide HA Lifting Stoste,Mintel GNPD [online],2020年08月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#7974023, [検索日2024.06.26], 表題部分及び成分
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子ヒアルロン酸又はその塩、加水分解ヒアルロン酸又はその塩、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩、テトラヒドロピリミジン又はその誘導体、エルゴチオネイン、
サッカロミセス/コメ発酵液(SACCHAROMYCES/RICE FERMENT FILTRATE)、及びアミノ酪酸を含むことを特徴とする効能促進組成物
であって;
前記高分子ヒアルロン酸又はその塩は1~30質量%、前記加水分解ヒアルロン酸又はその塩は2~50質量%、前記アセチル化ヒアルロン酸又はその塩は1~10質量%、前記テトラヒドロピリミジン又はその誘導体は0.1~10質量%、前記エルゴチオネインは2~20質量%、前記サッカロミセス/コメ発酵液は10~50質量%、および前記アミノ酪酸は0.1~5質量%であり;
前記高分子量ヒアルロン酸又はその塩の分子量は1000~1800kDaであり;および
前記加水分解ヒアルロン酸又はその塩の分子量は1~10kDaである、
組成物。
【請求項2】
前記高分子ヒアルロン酸又はその塩
は1~10
質量%、前記加水分解ヒアルロン酸又はその塩
は2~10質量%、前記アセチル化ヒアルロン酸又はその塩
は1~1.5質量%、前記テトラヒドロピリミジン又はその誘導体
は0.3~5質量%、前記エルゴチオネイン
は3~10質量%、前記
サッカロミセス/コメ発酵液は15~40質量%、前記アミノ酪酸
は0.3~3質量%であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
重量部基準で、前記高分子ヒアルロン酸又はその塩は1重量部、前記加水分解ヒアルロン酸又はその塩は0.2~2重量
部、前記アセチル化ヒアルロン酸又はその塩は0.05~1.5重量
部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
重量部基準で、前記高分子ヒアルロン酸又はその塩は1重量部、前記加水分解ヒアルロン酸又はその塩は0.5~1重量部、前記アセチル化ヒアルロン酸又はその塩は0.1~0.5重量部であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記高分子量ヒアルロン酸又はその塩の分子量
は1000~1500kDaであることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記加水分解ヒアルロン酸
又はその塩の分子量
は5kDa~10kDaであることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記アセチル化ヒアルロン酸又はその塩の分子量は20kDa~100kDa、アセチル基は20~40質量%であることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記テトラヒドロピリミジン又はその誘導体は、
エクトイン及びヒドロキシ
エクトインから選択される1種又は2
種であることを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記テトラヒドロピリミジン又はその誘導体は、エクトインであることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
防腐剤をさらに含み、前記組成物において、前記防腐剤は0.1~5質量%であり、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール及びエチルヘキシルグリセリンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の組成物のスキンケア用品又は化粧品における使用。
【請求項12】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の組成物を含むスキンケア用品又は化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医薬の分野に属し、具体的には、効能促進組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品が最大の効能を発揮するための前提条件は、有効成分(活性成分)の浸透性と活性が良く、有効成分の利用率を高めることである。
【0003】
化粧品の経皮吸収とは、化粧品中の機能性成分が製品の有効性に応じて皮膚表面に作用したり、表皮や真皮に入り込んだりして、その部位に蓄積されて作用する過程をいう。化粧品の効能成分の経皮吸収は、皮膚を透過して体循環に入る必要がないことが、薬との主な違いである。例えば、美白製品の中の美白剤は皮膚の基底層に作用し、メラニンの生成を遮断し、抗老化製品の効能成分は真皮層の線維芽細胞に作用し、皮膚に張りを付与し、日やけ止め製品の中の日やけ止め剤は、皮膚の表面に滞留して、紫外線を吸収と反射し、一方、いくつかの保湿製品は異なる作用機序によって、表皮層や真皮層に作用して皮膚の水分量を改善する作用を発揮する。
【0004】
化粧品の経皮吸収を影響する要素は多く、主に皮膚要素、有効成分の構造、物質濃度、化粧品の剤形、外界環境などがあり、現在、市場では、皮膚と似た有効成分を選択したり、化粧品の剤形などを変えたりして化粧品の浸透性を高めるのが一般的であり、効果は単一で、浸透促進作用には一定の限界が存在する。
【0005】
そのため、効能成分のそれぞれの効果を発揮する場所に応じて、効能成分の浸透吸収を促進し、有効成分の正確な局在化を実現し、スキンケア効果を迅速に発揮させることができるとともに、効能成分の安定性を向上させ、効能成分の皮膚との接触時間を増加させ、有効成分の利用率を向上させることができる効能促進組成物が急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、保湿と水分補給を行いながら、効能成分の浸透吸収と効能成分の安定性を効果的に向上させることができ、これにより効能成分の利用率を向上させ、皮膚状態を改善することができる効能促進組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的には、本発明は以下の態様に係る。
1、高分子ヒアルロン酸又はその塩、加水分解ヒアルロン酸又はその塩、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩、テトラヒドロピリミジン又はその誘導体、エルゴチオネイン、サッカロミセス/コメ発酵液、アミノ酪酸を含むことを特徴とする効能促進組成物。
2、前記高分子ヒアルロン酸又はその塩は1~30質量%、好ましくは1~10質量%、前記加水分解ヒアルロン酸又はその塩は2質量%~50質量%、好ましくは2~10質量%、前記アセチル化ヒアルロン酸又はその塩は1~10質量%、好ましくは1~1.5質量%、前記テトラヒドロピリミジン又はその誘導体は0.1質量%~10質量%、好ましくは0.3~5%、前記エルゴチオネインは2~20質量%、好ましくは3~10質量%、前記サッカロミセス/コメ発酵液は10~50質量%、好ましくは15~40質量%、前記アミノ酪酸は0.1~5質量%、好ましくは0.3~3質量%であることを特徴とする項1に記載の組成物。
3、重量部基準で、前記高分子ヒアルロン酸又はその塩は1重量部、前記加水分解ヒアルロン酸又はその塩は0.2~2重量部、好ましくは0.5~1重量部、前記アセチル化
ヒアルロン酸又はその塩は0.05~1.5重量部、好ましくは0.1~0.5重量部であることを特徴とする項1又は2に記載の組成物。
4、前記高分子量ヒアルロン酸又はその塩の分子量は1000~1800kDa、好ましくは1000~1500kDaであることを特徴とする項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
5、前記加水分解ヒアルロン酸の分子量は1kDa~10kDa、好ましくは5kDa~10kDaであることを特徴とする項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
6、前記アセチル化ヒアルロン酸又はその塩の分子量は20kDa~100kDa、アセチルは20~40質量%であることを特徴とする項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
7、前記テトラヒドロピリミジン又はその誘導体は、エクトイン及びヒドロキシエクトインから選択される1種又は2種、好ましくはエクトインであることを特徴とする項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
8、防腐剤をさらに含み、前記組成物において、前記防腐剤は0.1~5質量%であり、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール及びエチルヘキシルグリセリンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
9、項1~8のいずれか1項に記載の組成物のスキンケア用品又は化粧品における使用。
10、項1~8のいずれか1項に記載の組成物を含むスキンケア用品又は化粧品。
【発明の効果】
【0008】
本発明は下記の有益な効果がある。
1、アセチル化ヒアルロン酸は、特定の配合比で特定の分子量の高分子ヒアルロン酸と加水分解ヒアルロン酸を連結して、3次元空間内で安定な「工」の字型チャンネルを構築して、皮膚表面の保湿・水分保持層から皮膚深層の水分補給層までの長期的な水分補給チャンネルを形成し、これにより、効果的に水分を補給して、皮膚の水分量を増加させる。
2、テトラヒドロピリミジン、エルゴチオネイン、サッカロミセス/コメ発酵液、及びアミノ酪酸の4者の相乗効果により、ヒアルロン酸ナトリウム及びその誘導体が形成した「工」の字形構造の効率的な作動を確保し、それによって、より効率的な皮膚バリアの修復、損傷の修復、皮膚表面状况の改善を図る。
3、7つの成分が構築した「工」の字形の効能促進システムは、皮膚に対して水分を補給して修復するとともに、高分子効能成分の安定性を高め、効能成分の皮膚との接触時間を増加させ、それによって高分子効能成分の利用率を向上させ、効能成分の使用量を減らし、コストを節約し、一部の効能成分の過剰な使用量による皮膚刺激性を低減させる一方、「工」の字形チャネルを介して、小分子効能成分の経皮吸収効果を増加させ、小分子効能成分の利用率を増加させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施例を参照して本発明をさらに説明するが、実施例は、本発明をさらに説明するためにのみ使用されるものであり、本発明を限定するために使用されるものではないことを理解すべきである。
【0010】
別段の定義がない限り、本明細書における技術的及び科学的な用語は、当業者が一般に理解する意味と同じである。本明細書では、本明細書に記載されたものと類似又は同一の方法及び材料を、実験又は実際の応用において適用することができるが、材料及び方法については、以下で説明する。矛盾する場合は、本明細書に含まれる定義が優先され、また、材料、方法及び例は単に説明に供するものであって、限定的なものではない。以下では、特定の実施例を参照して本発明をさらに説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0011】
本発明は、高分子ヒアルロン酸又はその塩、加水分解ヒアルロン酸又はその塩、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩、テトラヒドロピリミジン又はその誘導体、エルゴチオネイン、サッカロミセス/コメ発酵液、アミノ酪酸を含む効能促進組成物を提供する。
【0012】
1つの具体的な実施形態では、前記高分子ヒアルロン酸又はその塩は1~30質量%、例えば1質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、好ましくは1~10質量%であってもよい。前記加水分解ヒアルロン酸又はその塩は2質量%~50質量%、例えば2質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、好ましくは2~10質量%であり、前記アセチル化ヒアルロン酸又はその塩は1~10質量%、例えば1質量%、1.2質量%、1.5質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、好ましくは1~1.5質量%であってもよい。前記テトラヒドロピリミジン又はその誘導体は0.1質量%~10質量%、例えば0.1質量%、0.3質量%、0.5質量%、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、好ましくは0.3~5質量%であってもよい。前記エルゴチオネインは2~20質量%、2質量%、3質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、好ましくは3~10質量%であってもよい。前記サッカロミセス/コメ発酵液は10~50質量%、例えば10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、好ましくは15~40質量%であってもよい。前記アミノ酪酸は0.1~5質量%、例えば0.1質量%、0.3質量%、0.5質量%、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、好ましくは0.3~3質量%であってもよい。
【0013】
ヒアルロン酸(Hyaluronic Acid、HA)は、人体組織細胞間質に天然に存在する高分子多糖類で、医薬、スキンケア製品、食品などの分野に広く応用されており、様々な分子量を持って、各分子量のHAは異なる効能と表現があって、高分子HAは優れた成膜と水分保持作用を持ち、低分子加水分解HAは皮膚に浸透することができ、皮膚に深く水分を補給することができ、アセチル化HAは皮膚表面と加水分解HAの橋梁として機能でき、天然の有効な保湿因子と水分保持因子である。
【0014】
3種類の異なるHAの組み合わせにより、成膜された高分子HAを主体とする皮膚表面保湿・水分保持層と、加水分解HAを主体とする深層水分補給層と、2つの部分を連結するアセチル化HAの水分輸送層とを空間内に形成し、3次元空間内で「工」の字形の長期的な水分補給・保湿チャンネルを構築する。
【0015】
1つの具体的な実施形態では、前記高分子量ヒアルロン酸又はその塩の分子量は1000~1800kDa、例えば1000kDa、1100kDa、1200kDa、1300kDa、1400kDa、1500kDa、1600kDa、1700kDa、1800kDa、好ましくは1000~1500kDaであってもよい。前記加水分解ヒアルロン酸又はその塩の分子量は1kDa~10kDa、例えば1kDa、2kDa、3kDa、4kDa、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、好ましくは5kDa~10kDaであってもよい。前記アセチル化ヒアルロン酸又はその塩の分子量は20kDa~100kDa、例えば20kDa、30kDa、40kDa、50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、90kDa、100kDaであってもよい。前記アセチル化ヒアルロン酸又はその塩中のアセチル基は20~40質量%、例えば20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%であってもよい。
【0016】
1つの具体的な実施形態では、前記高分子ヒアルロン酸又はその塩は1重量部であり、前記加水分解ヒアルロン酸又はその塩は0.2~2重量部、例えば0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、1重量部、1.1重量部、1.2重量部、1.3重量部、1.4重量部、1.5重量部、1.6重量部、1.7重量部、1.8重量部、1.9重量部、2重量部、好ましくは0.5~1重量部であってもよく、前記アセチル化ヒアルロン酸又はその塩は0.05~1.5重量部、例えば0.05重量部、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、1重量部、1.1重量部、1.2重量部、1.3重量部、1.4重量部、1.5重量部、好ましくは0.1~0.5重量部であってもよい。
【0017】
エクトイン(ECTOIN)は、現在発見された細菌界に分布する最も広範な適合性溶質であり、細胞内の新陳代謝と適合し、細胞の生体高分子機能又は生理機能に影響しない、重要な浸透圧補償溶質である。エクトインは表面の密な電荷分布のため、水分子との間の静電作用を通じて、水分子間の水素結合作用をさらに強化し、水分活性を低下させ、水分子を錯化させ、長期的な保湿作用を持つことができる。自身の高密度電荷を通じて、水分子間の水素結合作用を強化し、長期的に保湿することができ、エクトインは親水性に優れているので、上記の工字形構造により、より効率的に皮膚バリアを修復し、損傷を修復することができる。
【0018】
1つの具体的な実施形態では、前記テトラヒドロピリミジン又はその誘導体は、エクトイン及びヒドロキシエクトインから選択される1種又は2種、好ましくはエクトインである。
【0019】
エルゴチオネイン(ERGOTHIONEINE)は哺乳動物のある組織、器官に分布し、天然抗酸化剤であり、発酵法により生産することができ、人体内で細胞に対して保護作用を果たすことができ、UV保護作用を持ち、生体内の重要な活性物質である。ECTOINとの相乗効果により、皮膚バリアを効果的に保護し、ヒアルロン酸ナトリウム及びその誘導体が形成する「工」字形構造の動作を確保することができる。
【0020】
サッカロミセス/コメ発酵液(SACCHAROMYCES/RICE FERMENT FILTRATE)は、発酵法により製造される天然原料であり、細胞の活力を高め、細胞の新生を促進する作用を有する。高分子HAにより皮膚表面に形成された薄膜を効果的に通じて、長時間皮膚表面に留まることができ、表面損傷細胞の再生を促進し、エルゴチオネインやECTOINとの相乗作用により、皮膚表面の状態をより効率的に改善し、その保湿能力を高めることができる。
【0021】
アミノ酪酸(AMINOBUTYRIC ACID)は、表皮細胞の増殖とケラチノサイトのインボルクリンの産生を促進し、角質層のバリアを修復することができ、また、紫外線による皮膚の損傷を減らすことができ、しかも、細胞活性を高めることができる。
【0022】
テトラヒドロピリミジン又はその誘導体、エルゴチオネイン、サッカロミセス/コメ発酵液、アミノ酪酸は、皮膚バリアを効果的に保護し、高分子HAにより皮膚表面に形成される膜の安定性及び持続性を確保し、それによって、ヒアルロン酸ナトリウム及びその誘導体が形成する「工」字形構造の効率的な作動を確保する。
【0023】
前記組成物は防腐剤をさらに含み、前記防腐剤はペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール及びエチルヘキシルグリセリンから選択される1種又は2種以上であり、前記組成物中、前記防腐剤は0.1~5質量%である。
【0024】
本発明はまた、高分子ヒアルロン酸又はその塩、加水分解ヒアルロン酸又はその塩、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩、テトラヒドロピリミジン又はその誘導体、エルゴチオネイン、サッカロミセス/コメ発酵液、アミノ酪酸、防腐剤及び水からなる効能促進組成物を提供する。各成分の質量比、及び分子量などの性質は上記したとおりである。
【0025】
本発明はまた、上記の組成物のスキンケア用品又は化粧品における使用を提供する。
【0026】
本発明の効能促進組成物は、高分子ヒアルロン酸、加水分解ヒアルロン酸、アセチル化ヒアルロン酸、テトラヒドロピリミジン、エルゴチオネイン、サッカロミセス/コメ発酵液及びアミノ酪酸を特定の配合比で含有することにより、効果的な効能促進機能を有する。例えば、水分補給を著しく促進し、有効成分の安定性を向上させ、抗老化成分の吸収を向上するなどが可能である。これは、アセチル化ヒアルロン酸が特定の分子量の高分子ヒアルロン酸と加水分解ヒアルロン酸とを特定の配合比で連結し、3次元空間内に安定した「工」字形チャンネルを構築する一方、テトラヒドロピリミジン、エルゴチオネイン、サッカロミセス/コメ発酵液、およびアミノ酪酸の4つの相乗効果により、ヒアルロン酸ナトリウム及びその誘導体が形成する「工」字形構造の効率的な作動が確保されるためと考えられる。
実施例
【0027】
以下、実施例を参照して本発明をさらに説明するが、実施例は、本発明をさらに説明するためにのみ使用されるものであり、本発明を限定するために使用されるものではないことを理解すべきである。
【0028】
以下の実施例で使用される実験方法は、特別な要件がない限り、従来の方法である。
下記の実施例で使用される材料、試薬などは、特段の説明がない限り、商業的に入手することができる。このうち、高分子量ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、エクトイン、エルゴチオネイン、サッカロミセス/コメ発酵液、アミノ酪酸はいずれも華煕生物科技股▲分▼有限公司(Bloomage Biotechnology corporation limited)に由来する。
【0029】
実施例1
高分子量ヒアルロン酸ナトリウム(1200kDa)2.5gを適量の水に加えて、完全に溶解するまで攪拌した。その後、加水分解ヒアルロン酸ナトリウム(5kDa)2.5gとアセチル化ヒアルロン酸ナトリウム(分子量4kDa、アセチル含有量24%)1gを加え、完全に溶解するまで均一に攪拌した。エクトイン3g、エルゴチオネイン7g、サッカロミセス/コメ発酵液20g、アミノ酪酸1.5g、防腐剤5g(ペンタンジオール2.5g、ヘキサンジオール2.5g)を順に加え、水分を100gまで補給し、完全に溶解するまで均一に攪拌して、効能促進組成物を得た。
【0030】
実施例1と比べて、実施例2~13、比較例1~8では、表1に示すように、高分子量ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウムの分子量又は含有量、エクトイン、エルゴチオネイン、サッカロミセス/コメ発酵液、アミノ酪酸の含有量が異なる。このうち、実施例9と実施例1の違いは、高分子ヒアルロン酸ナトリウムの分子量の違いだけであり、実施例10と実施例1の違いは、高分子ヒアルロン酸ナトリウムの含有量の違いだけであり、実施例11と実施例1の違いは、加水分解ヒアルロン酸ナトリウムの含有量の違いだけであり、実施例12と実施例1の違いは、加水分解ヒアルロン酸ナトリウムの分子量の違いだけであり、実施例13と実施例1との違いは、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウムの含有量の違いである。
【0031】
【0032】
試験例1 水分補給効果
1、前腕の22個の異なる領域(領域番号1~22)の皮膚水分量を測定し、初期値データを記録した。
2、実施例1~13、比較例1~8で製造された効能促進組成物のそれぞれに、組成物に対してセラミド-3 1質量%を加え、実施例1~13及び比較例1~8に対応する水分補給組成物を得た。
3、前腕の21個の異なる領域(領域番号1~21)に実施例1~13、比較例1~8に対応する水分補給組成物を同量で塗布し、30分間後、皮膚水分蒸散量測定装置Tewameter TM300(Courage+Khazaka、ドイツ)を用いて、皮膚水分量を測定して記録した。これらのうち、実施例1の水分補給組成物は領域1に対応し、実施例2の水分補給組成物は領域2に対応し、このように、実施例8の水分補給組成物は領域8に対応し、比較例1の水分補給組成物は領域14に対応し、比較例2の水分補給組成物は領域15に対応し、比較例8の水分補給組成物は領域21に対応する。
4、領域22に同量の水分補給成分溶液(セラミド-3 1質量%)をコントロールとして塗布し、30分間後、皮膚水分量を測定して記録した。
5、被験者数は10人、水分量は平均値とした。
【0033】
上記の各水分補給組成物の水分補給効果を表2に示す。
【0034】
【0035】
結論:表2から、本発明の実施例で製造された組成物を添加すると、水分補給成分の水分補給能力が著しく増加し、特に実施例1~4で得られた組成物の水分補給効果が最も高く、本発明の効能促進組成物が水分補給を効果的に促進できることがわかった。
比較例1~3では、3つのヒアルロン酸のうち2つしか含まれていないため、水分補給効果が低いが、これは、本発明の3つのヒアルロン酸が3次元空間内に安定した「工」の字形チャネルを構築し、皮膚表面の保湿・水分保持層から皮膚深部水分補給層までの持続的な水分補給・保湿チャネルを形成し、効果的に水分を補給し、皮膚の水分量を増加させると同時に、「工」の字形チャネルはセラミド-3の経皮吸収効果を増加させ、セラミド-3の利用率を増加させ、水分補給効果を高めることができるためであると考えられる。
【0036】
比較例4~8も水分補給効果が低く、その中でも、比較例8の水分補給効果は最も低く、使用前後の皮膚水分量の差は0.21しかない。これは、テトラヒドロピリミジン、エルゴチオネイン、サッカロミセス/コメ発酵液、アミノ酪酸の4つの相乗効果により、皮膚表面の高分子ヒアルロン酸で形成された膜の安定性と持続性を維持することができ、ヒアルロン酸ナトリウム及びその誘導体が形成した「工」の字形構造の効率的な作動を確保するためであると考えられる。
【0037】
試験例2 有効成分に対する保護作用
実施例1~13、比較例1~8で製造された効能促進組成物に、組成物中のアスタキサンチンの質量%が0.01%となるようにアスタキサンチンを添加して、それぞれ適用例1~16に対応するアスタキサンチン含有組成物を得た。ここで、実施例1で得られたアスタキサンチン組成物は適用例1に対応し、実施例2で得られたアスタキサンチン組成物は適用例2に対応し、このように、実施例8で得られたアスタキサンチン組成物は適用例8に対応し、実施例13で得られたアスタキサンチン組成物は適用例13に対応し、比較例1で得られたアスタキサンチン組成物は適用例14に対応し、比較例2で得られたアスタキサンチン組成物は適用例15に対応し、比較例8で得られたアスタキサンチン組成物は適用例21に対応する。
【0038】
適用例1~21のアスタキサンチン組成物を透明容器に入れて室温で2h放置し、その間絶えず攪拌して酸素と接触させ、組成物の色の変化を観察し、組成物を適量取り、トリクロロメタン溶媒で濃度1μg/mLの溶液に希釈し、UV8500紫外分光光度計で489nmの吸光度を測定した。同濃度で遮光密閉保存したアスタキサンチンをコントロールとして、同条件で489nmの吸光度を測定した。結果を表3に示す。
【0039】
【0040】
結論:アスタキサンチンは酸化されやすく色が薄くなり、色が薄いほどアスタキサンチンは酸化されやすく、アスタキサンチンの効能が悪いことを示した。本発明の実施例で製造された組成物を添加すると、アスタキサンチンの色が薄くなることが目立たなくなり、特に実施例1~4では、色の変化が最も小さくなり、遮光密閉保存したコントロールと比較して、吸光度が0.0391~0.0969しか低下しない。しかし、比較例では、アスタキサンチン組成物の色の変化が大きく、吸光度が0.3以上低下した。このことは、本発明の7種類の成分により構築された効能促進システムは、アスタキサンチンなどの高分子効能成分の安定性を高め、アスタキサンチンと皮膚との接触時間を増加させ、それによってアスタキサンチンの利用率を高めることができることを示している。
【0041】
試験例3 抗老化成分に対する促進作用
1. 目尻及び顔のしわをVisiaで撮影し、皮膚年齢のデータを記録した。
2. 実施例1、比較例1、比較例8に1%のしわ取り成分(しわ取り複合ペプチド)を添加することにより、それぞれ適用例22、23、24に対応した抗老化作用を有する組成物を得た。
3. 領域別に適用例22、23、24を1日2回、12週間塗布使用し、2週間ごとにVisiaで撮影し、皮膚年齢データを記録した。
4.被験者数は各10人、皮膚年齢は平均値とした。
【0042】
【0043】
結論:本発明の実施例で製造された効能促進組成物は抗老化成分の効能発揮を効果的に促進することができ、上記の表から分かるように、適用例22では、抗老化成分の効能の増加が著しく、一定期間使用した後、皮膚年齢が6歳減少したが、適用例23、24では、一定期間使用した後、皮膚年齢の変化は比較的小さいか、ほとんど変化しなかった。