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特許7600400自動車両の照明装置を作動させるための方法および自動車両の照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】自動車両の照明装置を作動させるための方法および自動車両の照明装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/155 20200101AFI20241209BHJP
   H05B 47/16 20200101ALI20241209BHJP
   H05B 45/44 20200101ALI20241209BHJP
   H05B 45/56 20200101ALI20241209BHJP
   H05B 47/28 20200101ALI20241209BHJP
【FI】
H05B47/155
H05B47/16
H05B45/44
H05B45/56
H05B47/28
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023532405
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2021082556
(87)【国際公開番号】W WO2022112193
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】2012303
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ハフィド、エル、イドリッシ
(72)【発明者】
【氏名】ラビーフ、タレブ
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-199520(JP,A)
【文献】特開2020-087862(JP,A)
【文献】特開2008-253109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0032600(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0003670(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
H05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1光モジュール(1)および第2光モジュール(2)を具備し、それぞれの光モジュールがソリッドステート光源(3)を備えている自動車両の照明装置(10)を作動させるための方法であって、
- 前記第1光モジュール(1)に給電するための、第1光束平均値を有した第1予備電流プロファイル(11)を準備する段階と、
- 前記第1予備電流プロファイル(11)に関連付けられる第1予備出力低下時間(21)を推定する段階と、
- 前記第2光モジュール(2)に給電するための、第2光束平均値を有した第2予備電流プロファイル(12)を準備する段階と、
- 前記第2予備電流プロファイルに関連付けられる、前記第1予備出力低下時間(21)よりも長い第2予備出力低下時間(22)を推定する段階と、
- 前記第1光束平均値の0.96倍よりも低い光束平均値をもたらす第1電流プロファイル(11’)で前記第1光モジュール(2)に給電する段階と、
- 前記第2光束平均値の1.04倍よりも高い光束平均値をもたらす第2電流プロファイル(12’)で前記第2光モジュール(2)に給電する段階と、
を備え、
前記第1電流プロファイル(11’)および前記第2電流プロファイル(12’)は、最初の電流値で始まって所定条件に達したときに電流値を増大させることを含んでいる、方法。
【請求項2】
車両センサーから情報を得る機械学習アルゴリズムによって前記最初の電流値を得る段階が遂行される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ソリッドステート光源の温度を得る段階を更に備え、前記ソリッドステート光源の温度が所定値に達したときに当該方法の残りの各段階が発動される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1電流プロファイル(11’)は、前記第1光束平均値の0.94倍よりも低い光束平均値をもたらす、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2電流プロファイル(12’)は、前記第2光束平均値の1.06倍よりも高い光束平均値をもたらす、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1および/または第2予備出力低下時間の推定は、予めトレーニングデータセットでトレーニングされている人工知能アルゴリズムを用いて遂行される、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記人工知能アルゴリズムはリッジ回帰アルゴリズムを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1電流プロファイル(11’)で前記第1光モジュール(2)に給電する段階と、前記第2電流プロファイル(12’)で前記第2光モジュール(2)に給電する段階とは、同時ではなく、前記第1電流プロファイルの給電が最初に行われ、それからある時間間隔の後で前記第2電流プロファイルの給電が次に行われる、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1光モジュールはロービームモジュールであり、前記第2光モジュールはハイビームモジュールである、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
当該方法の各段階が、対応する前記光モジュールにおける前記ソリッドステート光源の少なくとも10%に対して適用される、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
- 複数のソリッドステート光源(3)を備えた第1光モジュール(1)と、
- 複数のソリッドステート光源(3)を備えた第2光モジュール(2)と、
- 請求項1から10のうちのいずれか一項に記載の方法の各段階を遂行するための制御要素(4)と、
を具備した自動車両の照明装置。
【請求項12】
前記ソリッドステート光源の温度を測定するように企図されたサーミスタ(5)を更に備えた、請求項11に記載の自動車両の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車両の照明装置の分野、より特定的には、これらの装置に含まれるこれらの光源の温度制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車メーカーによって中・高級市場向けの製品にデジタル照明装置がますます採用されてきている。
【0003】
これらのデジタル照明装置は通常、ソリッドステート光源を備えているが、それらの光源の作動は温度に大きく左右される。
【0004】
これらの素子における温度制御は、非常に敏感な局面であり、出力を下げることによって実行されるのが通常である。これは、それに応じて出力光束と作動温度とが低下するよう、光源に給電される電流値を低下させることを意味する。この過熱の問題に立ち向かうには、依然として認容可能な値を維持しながら作動値を低下させ得るよう、光源の性能が必要以上に高すぎねばならないということが、これにより引き起こされる。
【0005】
運転状況に拘わらずヘッドランプについての最適な性能を維持するのは極めて困難である。非常に多くの場合、1つの照明モジュールがその他のものより熱くなってしまい、かくしてHLの高い内部温度のせいで、残りの照明モジュールを不利な状況にしてしまうのである。この現象が最適なものではないのは、次の理由によるものである。即ち、ある1つの光モジュールが出力低下を受ける場合、残りのモジュールもまた(実際には、まだ出力低下閾値に達していないにも拘わらず)容認可能な均一性を確保するために影響を受けてしまうからである。
【0006】
この問題は、今まで想定されてきているが、そのための解決策は与えられている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、本発明による自動車両の照明装置を作動させるための方法および自動車両の照明装置によって、自動車両の照明装置における光源の温度を管理するための代替的な解決策をもたらすものである。本発明の好適な諸実施形態が、各従属請求項に定義されている。
【0008】
別様に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての用語(技術的、科学的用語を含む)は、当該技術において通例であるように解釈されるべきものである。更に、一般的な語法による用語類も、やはり関連技術において通例であるように解釈されるべきであって、本明細書で明確にそう定義されない限り、理想化されたり過度に形式的であったりする意味に解釈されるべきではない。
【0009】
この本文において、用語「備える/含む(comprises)」や、その派生語(例えば「備えている/含んでいる(comprising)」など)は、排他的な意味に理解されるべきではない。即ち、これらの用語は、説明されたり定義されたりするものが更なる要素や段階などを含み得るという可能性を排除するように解釈されるべきではないのである。
【0010】
第1の発明態様において、本発明は、少なくとも第1光モジュールおよび第2光モジュールを具備し、それぞれの光モジュールがソリッドステート光源を備えている自動車両の照明装置を作動させるための方法であって、
- 第1光モジュールに給電するための、第1光束平均値を有した第1予備電流プロファイルを準備する段階と、
- 第1予備電流プロファイルに関連付けられる第1予備出力低下時間を推定する段階と、
- 第2光モジュールに給電するための、第2光束平均値を有した第2予備電流プロファイルを準備する段階と、
- 第2予備電流プロファイルに関連付けられる、第1予備出力低下時間よりも長い第2予備出力低下時間を推定する段階と、
- 第1光束平均値の0.96倍よりも低い光束平均値をもたらす第1電流プロファイルで第1光モジュールに給電する段階と、
- 第2光束平均値の1.04倍よりも高い光束平均値をもたらす第2電流プロファイルで第2光モジュールに給電する段階と、
を備えた方法を提供する。
【0011】
推定される第2予備出力低下時間が第1予備出力低下時間よりも長いという事実は、両方の光モジュールについて予備出力低下時間が推定され、そして第1光モジュールが、より短い出力低下時間のもので、第2光モジュールが、より長い出力低下時間のものである、ということを意味する。
【0012】
当該技術分野の現状では、第1モジュールの予備出力低下時間が、照明装置全体の性能を危うくすることになる。それにより、第2照明モジュールがまだ必要としないであろうにも拘わらず、第2モジュールに出力低下を被らせてしまうからである。しかしながら、本発明の方法では、第1光モジュールの出力低下時間の延長を引き起こすように、第2光モジュールの出力低下時間が第2予備出力低下時間よりも短くなっている。従って、全体的な出力低下時間が延長され、光束の均一性を維持しつつ、より長い時間、優れた性能が得られるのである。
【0013】
電流プロファイルの大きな変動のおかげで、光モジュール同士の出力低下時間の差が埋め合わされ得る。この方法は、推定される出力低下時間同士の間の差が大きい場合に特に有利なものである。
【0014】
幾つかの特定の実施形態において、第1電流プロファイルおよび第2電流プロファイルは、最初の電流値で始まって所定条件に達したときに電流値を増大させることを含んでいる。
【0015】
この取り組み方で、それぞれの時に必要な最小限の電流をもたらす(必要ならば電流を増大させる能力を有している)ように第1および第2電流プロファイルが最適化される。
【0016】
幾つかの特定の実施形態においては、車両センサーから情報を得る機械学習アルゴリズムによって最初の電流値を得る段階が遂行される。
【0017】
この機械学習アルゴリズムは、車両の様々なセンサーから情報を得て、より有利でない方の光モジュールについて最大限の出力低下時間を得るよう、様々な状況においてトレーニングされテストされる。
【0018】
この機械学習アルゴリズムは、クラウド内に置かれたり、車両の制御装置内に埋め込まれたりしていてもよい。
【0019】
幾つかの特定の実施形態において、車両のセンサーには、温度センサー、車速センサー、全地球測位用センサー、およびレーダーないしライダーセンサーのうち少なくとも一部が含まれる。
【0020】
幾つかの特定の実施形態においては、測定光束値が対応する光束閾値を下回るという事実が所定の条件に含まれる。
【0021】
光束値は、照明装置の作動についての情報をもたらす唯一のものではないが、重要なパラメータである。光束で電流値を制御することによって、照明モジュール同士の総体での容認可能な動作が確保されるのである。
【0022】
幾つかの特定の実施形態において、当該発明は、光源温度を得る段階を更に備え、光源温度が所定値に達するという事実が所定の条件に含まれる。
【0023】
電流を制御する異なるが両立可能な手法は、温度によるものである。温度が光束の間接的なデータをもたらし得るのである。
【0024】
幾つかの特定の実施形態においては、制限時間に達しているという事実が所定の条件に含まれる。
【0025】
電流を制御する別の手法は、タイマーのみによるものであり、時間による温度の進展を推定している。この場合、如何なるデータも測定する必要がなく、電流が自動的に増大させられる。これは、時間パターンがしっかりと確立されている場合になされ得る。
【0026】
幾つかの特定の実施形態において、電流値を増大させる段階は、電流値を第1の値から第2の値へと増大させること含み、第2の値は、第1の値よりも大きいが、第1の値の1.1倍よりは小さく、特に第1の値の1.05倍よりは小さく、特に第1の値の1.03倍よりは小さい。
【0027】
これらの例においては、狭い範囲内で電流が増大させられ得る。その結果、電流値(および温度)は、認容可能な性能をもたらす範囲内で、できるだけ低く保たれる。
【0028】
幾つかの特定の実施形態において、当該方法は、所定条件についての一連の電流値増分を記録する段階を更に備えている。
【0029】
この一連のものは、時系列パターンを用いる場合において連続的な温度測定を避けるのに有用となり得る。
【0030】
幾つかの特定の実施形態において、第1光モジュールはロービームモジュールであり、第2光モジュールはハイビームモジュールである。ロービームモジュールとハイビームモジュールとが同時に作動させられることもあるので、これが相乗効果を有しているのである。
【0031】
幾つかの特定の実施形態においては、当該方法の各段階が、対応する光モジュールにおける光源の少なくとも10%に対して適用される。
【0032】
電流値の漸増が、多数の光源に対して同時に(例えば、所定の機能性をもたらす光源の全てに)適用されてもよい。従って、省電力と均一な性能とが多数の素子に対して宛がわれるのである。
【0033】
幾つかの特定の実施形態において、当該方法は光源温度を得る段階を更に備え、光源温度が所定値に達したときに当該方法の残りの各段階が発動される。
【0034】
温度や出力低下時間をシステムが絶えず管理する必要はない。温度域値を作り出すことが、システムをより緩和させることを助けて電力消費を低下させる。
【0035】
幾つかの特定の実施形態において、第1電流プロファイルは、第1光束平均値の0.94倍よりも低い、より特定的には第1光束平均値の0.91倍よりも低い光束平均値をもたらす。第2電流プロファイルは今度は、第2光束平均値の1.06倍よりも高い、より特定的には第1光束平均値の1.09倍よりも高い光束平均値をもたらす。
【0036】
これらの(投射光パターンの均一性を損なう場合もあり得る)値で、驚くべき出力低下時間の結果が得られるのである。熱的な安定化が達成され得る場合もある。
【0037】
幾つかの特定の実施形態において、第1および/または第2予備出力低下時間の推定は、予めトレーニングデータセットでトレーニングされている人工知能アルゴリズムを用いて遂行される。幾つかの特定の実施形態において、人工知能アルゴリズムは、複数の質問を伴った質問木構造を含み、その結果、当該質問に対する回答が出力低下時間の値へと変換される最終スコアをもたらす。
【0038】
この種の手法は、例えば温度測定値(照明装置の周囲に設置されたサーミスタからの、外部温度、推定温度…)、車両速度、道路状況、天気、昼/夜、別の能動的な照明機能、熱的な制御パラメータ(LED減光、別のモジュールでの出力低下、ファン回転数)、および物理的なヘッドランプのパラメータなどの様々なパラメータでの実験データの集まりであるトレーニングデータセットを用いる。これらの値は、実験的に既知である出力低下時間の値と関連付けられる。与えられたパラメータを用いることによって、出力低下時間を正確に推定するように制御装置が学習させられる。その結果、現実の状況に直面したとき、現実の出力低下時間の推定が、できるだけ精確なものとなるのである。
【0039】
幾つかの特定の実施形態において、人工知能アルゴリズムはリッジ回帰アルゴリズムを含む。
【0040】
リッジ回帰アルゴリズムの使用は、次の理由から有利なものである。即ち、この手法で用いられるデータは多重共線性を欠点として有している:当該手法で用いられるパラメータ(例えば、各モジュールの起動された照明機能、持続時間、および温度測定値など)のうち一部の挙動同士の間に直接的な連係が存在するからである。また、1つの光モジュール内の熱が、その他の光モジュールにおける温度の進展に対して直接的な影響を有している。様々なモジュールを用いることによって、ある1つの照明パターンが組み立てられる場合もある。それで、様々なモジュールの出力低下時間によって照明機能の出力低下が左右されてしまう。多重共線性が生ずる場合、最小自乗推定法には不偏性はあっても分散が大きく、かなり大きな推定(予測)の誤差を導入してしまう可能性があるであろう。リッジ回帰アルゴリズムは、回帰推定法に偏り度を加えるのを可能とすることで、標準誤差を減少させることとなるのである。
【0041】
幾つかの特定の実施形態において、第1電流プロファイルで第1光モジュールに給電する段階と、第2電流プロファイルで第2光モジュールに給電する段階とは、同時ではなく、第1電流プロファイルの給電が最初に行われ、それからある時間間隔の後で第2電流プロファイルの給電が次に行われる。
【0042】
これは、電流を増大させる動作を必要があるまで遅らせることで、より一層有利な出力低下時間のための助けとなる。
【0043】
第2の発明態様において、本発明は、
- 複数のソリッドステート光源を備えた第1光モジュールと、
- 複数のソリッドステート光源を備えた第2光モジュールと、
- 第1の発明態様による方法の各段階を遂行するための制御要素と、
を具備した自動車両の照明装置を提供する。
【0044】
用語「ソリッドステート(solid state)」は、電力を光へと変換するために半導体を用いるソリッドステート電界発光(固体電界発光)によって放出される光を表す。白熱照明に比べて、ソリッドステート照明は、熱の発生を減少させ、より少ないエネルギー消散で可視光を作り出す。ソリッドステート電子照明装置の概して小さな嵩は、もろいガラス管/球や長細いフィラメント線に比べて、衝撃や振動に対してより強い耐性を与えるものである。それらはまた、フィラメントの蒸発を排除して、発光装置の寿命を延長させる可能性を有している。これらの型式の照明における幾つかの例は、光源として、電気フィラメント、プラズマ、またはガスではなく、半導体発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、または高分子発光ダイオード(PLED)を備えている。
【0045】
この照明装置は、光源の性能を効率的に管理する有利な機能性をもたらしてくれる。
【0046】
幾つかの特定の実施形態において、自動車両の照明装置は、ソリッドステート光源の温度を測定するように企図されたサーミスタを更に備えている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明による自動車両の照明装置の概略斜視図。
図2】本発明による方法が適用されない場合の、照明装置の2つの光モジュールにおける標準的な作動のグラフによる図解。
図3】本発明の方法による作動に従った場合の、第1および第2モジュールの光束・温度曲線における進展を示す図。
図4図3で説明された方法によって生じる、時を経ての温度の影響を示す図。
図5】システムがどのようにトレーニングされてテストされるかの特定の例を示す図。
【0048】
これらの図においては、以下の参照符号が用いられている。
【符号の説明】
【0049】
1 第1光モジュール
2 第2光モジュール
3 LED
4 制御要素
5 サーミスタ
6 温度域値
7 温度発動値
10 照明装置
11 第1モジュール用の第1予備曲線
11’ 第1モジュール用の発明曲線
12 第2モジュール用の第1予備曲線
12’ 第2モジュール用の発明曲線
13 第1予備電流プロファイル
14 第1修正電流プロファイル
21 第1モジュール用の第1予備出力低下温度
21’ 第1モジュール用の発明出力低下時間
22 第2モジュール用の第2予備出力低下温度
22’ 第2光モジュール用の発明出力低下時間
23 第2予備電流プロファイル
24 第2修正電流プロファイル
100 自動車両
【発明を実施するための形態】
【0050】
当業者が本明細書のシステムやプロセスを具現化して実施するのを可能とするに足るほど詳細に例示の諸実施形態が説明される。各実施形態は、多くの代替形態で提供することができ、本明細書に記載された例に限定して解釈されるべきではない、ということを理解するのが重要である。
【0051】
従って、実施形態は種々のやり方で改変することができ、種々の代替形態をとることができるが、それらのうちの特定の諸実施形態を、例として図面に示すと共に以下で詳細に説明する。開示された特定の形態に限定する意図はない。それどころか、添付の特許請求の範囲内に入っている全ての改変、均等物、および代替物が包含されるべきである。
【0052】
図1は、本発明による自動車両の照明装置の概略斜視図を示している。
この照明装置10は、自動車両100内に設置されると共に、
- 複数のLED3を備えた第1光モジュール1と、
- 複数のLED3を備えた第2光モジュール2と、
- 制御要素4と、
- 第1および第2光モジュールの様々な部分の温度を測定するように企図された複数のサーミスタ5と、
を具備している。
【0053】
光モジュールのそれぞれが、2000ピクセルを超える解像度を有した、高解像度モジュールである。ただし、投射モジュールを製造するために用いられる技術に制限が付されるものではない。
【0054】
このマトリックス構成の第1例は、モノリシック光源を備えている。このモノリシック光源は、数列×数行に配置されたモノリシックなエレクトロルミネセント(電界発光)素子のマトリックスを備えている。モノリシック・マトリックスにおいて、各エレクトロルミネセント素子は、共通基板から成長させることができ、個別にか、或いはエレクトロルミネセント素子同士のサブセット(小集団)毎にかのいずれかで選択的に作動可能となるよう、電気的に接続されている。基板は、主として半導体材料で作られていてよい。基板は、1つないし複数の他の材料、例えば非半導体材料(金属や絶縁体)を含んで成っていてもよい。かくして、各エレクトロルミネセント素子またはエレクトロルミネセント素子の各グループが、光ピクセルを形成することができ、従って、そ(れら)の素子の材料へ電力が供給されたときに光を放出することができるのである。そのようなモノリシック・マトリックスの構成によって、プリント回路基板に半田付けされるよう企図された従来の発光ダイオード群と比べて、選択的に点灯可能なピクセル同士を互いにかなり近接させて配置することが可能となる。モノリシック・マトリックスは、共通基板に対して垂直に測定した高さの主寸法が略1マイクロメートルであるエレクトロルミネセント素子を備えていてよい。
【0055】
モノリシック・マトリックスは、マトリックス配置によるピクセル化された光ビームの生成および/または投射を制御するように制御センターに結合されている。かくして制御センターは、マトリックス配置の各ピクセルの発光を個別に制御することができる。
【0056】
上記で提示したものに代えて、マトリックス配置は、ミラー(反射鏡)のマトリックスに結合された主光源を備えていてもよい。かくして、光を放出する少なくとも1つの発光ダイオードで形成された少なくとも1つの主光源と、主光源からの光線を反射によって投射光学素子へ差し向ける光電素子のアレイとの組立体によって、ピクセル化された光源が形成される。その光電素子のアレイは、例えば「Digital Micro-mirror Device(デジタル・マイクロミラー・デバイス)」の頭字語DMDによっても知られるマイクロミラーのマトリックスである。適切な場合には補助光学素子が、少なくとも1つの光源の光線を集中させてマイクロミラー・アレイの表面の方へ差し向けるように、それらの光線同士を集めることができる。
【0057】
各マイクロミラーは、2つの決められた位置、各光線が投射光学素子の方へ反射される第1位置と、各光線が投射光学素子とは異なる方向へ反射される第2位置との間を回動することができる。2つの決められた位置は、全てのマイクロミラーについて同様の向きにされ、マイクロミラーのマトリックスを支持する基準面に対して当該マイクロミラーのマトリックスの仕様で定められた特有の角度を成している。そのような角度は、一般的には20°未満であり、通常は約12°であってよい。かくして、マイクロミラーのマトリックス上に入射する光ビームの一部を反射する各マイクロミラーが、ピクセル化された光源の基本発光体を成す。この基本発光体を、基本光ビームを放出したりしなかったりするよう選択的に作動させるための、各ミラーの位置変更の作動および制御は、制御センターによって制御される。
【0058】
異なる実施形態において、マトリックス配置は、次のような走査素子に向かってレーザー光源がレーザービームを放出する走査レーザーシステムを備えていてもよい。即ち、レーザービームで波長変換器の表面を探査するように構成された走査素子である。この表面の像が、投射光学素子によって捕捉される。
【0059】
走査素子の探査は、人間の目が投射像の如何なる変位も知覚せぬに足るほど高い速度で成し遂げられ得る。
【0060】
レーザー光源の点灯とビームの走査運動との同期制御によって、選択的に点灯させることのできる基本発光体のマトリックスを波長変換素子の表面に生成することが可能となる。走査手段は、レーザービームの反射によって波長変換素子の表面を走査するための可動式マイクロミラーであってよい。走査手段として挙げられるマイクロミラーは、例えば、「Micro-Electro-Mechanical Systems(微小電気機械システム)」を表すMEMS型のものである。但し、本発明は、そのような走査手段に限定されるものではなく、他の種類の走査手段(例えば、回転要素上に配置された一連のミラーであって、当該要素の回転がレーザービームによる伝達面の走査を生じさせるものなど)を用いることができる。
【0061】
別の変形例では、光源が複雑なものであって、光素子(発光ダイオードなど)の少なくとも1つのセグメントと、モノリシック光源の表面部分との両者を含んでいてもよい。
【0062】
大量の光源同士が互いにかなり近接し合っているので、優れた性能や効率を保証するためには熱の制御が非常に重要なのである。
【0063】
図2は、本発明による方法が適用されない場合の、照明装置の2つの光モジュールにおける標準的な作動のグラフによる図解を示している。
【0064】
この図によれば、第1光モジュールは、第1曲線11に従って、時間と共に温度を上昇させている。第1予備出力低下時間21に達したとき、第1光モジュールは、最高温度閾値6に達して、ダメージを避けるために出力低下をさせられる必要がある。
【0065】
類似的に、第2光モジュールは(単独で設置されたとすれば)第2曲線12に従って、時間と共に温度を上昇させるであろう。第2予備出力低下時間22に達していたときには、第2光モジュールは、最高温度閾値6に達していたであろうし、ダメージを避けるために出力低下をさせられる必要がある。現実には、第2光モジュールは(もっと短い出力低下時間を有した)第1光モジュールと一緒に設置されるので、第2予備出力低下時間よりも前に発生する第1予備出力低下時間で出力低下をさせられる必要があるであろう。それは、ビームの均一性を保証するためと、規定を遵守するためである。その規定は、ロービームモジュールを作動させることなくハイビームモジュールを用いることを許容しないのである。
【0066】
図3は、本発明の方法による作動に従った場合の、第1および第2モジュールの光束・温度曲線における進展を示している。
【0067】
第1モジュールは予備電流プロファイル13に従うが、この第1光モジュール内で所定温度7に達したときには、本発明の方法が発動し、第1予備出力低下時間が推定される。この推定の特定の例が、図5で説明されることとなる。
【0068】
第2モジュールが、今度は予備電流プロファイル23に従うが、当該方法が発動したときには、同方法に従って第2予備出力低下時間が同様に推定される。
【0069】
現実の筋書きでは、より長い予備出力低下時間を有するモジュールが第2光モジュールとみなされることとなる。
【0070】
当該方法が発動したときには、第1光モジュールの電流プロファイルが、当該方法の発動前に第1光モジュールが有していた光束平均値の0.9倍の光束平均値をもたらす電流プロファイル14に切り換えられる。第2光モジュールの電流プロファイルは、今度は、当該方法の発動前に第2光モジュールが有していた光束平均値の1.1倍の光束平均値をもたらす電流プロファイル24に切り換えられる。
【0071】
第1モジュールにおける電流プロファイルの低下が最初に実行され、そして光パターンの合計光束が規定による低閾値に達したときに第2モジュールの電流プロファイルが上昇させられる場合もある。この筋書きによってさえも、出力低下時間が改善される。
【0072】
これらの変化は、結果として得られる光パターンの均一性に良からぬ影響を有するが、維持されている合計光束を保つために実行されるのである。そのような実質的な電流低下によって第2モジュールの出力低下時間が大幅に延長され、熱的な安定化を達成することもある。
【0073】
この図では、如何にして電流プロファイルが一定の電流値ではなく僅かな変動を意味しているかに気付くであろう。基準値が選ばれ、それから上述した方法の条件を満たす光束平均値を保つように強度が僅かに増大させられてよいのである。
【0074】
図4は、図3で説明された方法によって生じる、時を経ての温度の影響を示している。
【0075】
このグラフでは、両方の光モジュールについての時を経ての温度が示されている。グラフの上方部分は、第1光モジュールについての進展を示している。(図2に示すように)決定が成されない場合には、第1曲線11が第1出力低下時間21をもたらし、第2曲線12が出力低下時間22をもたらすことになるであろう。
【0076】
しかしながら、各照明モジュールにおいて光束平均値を上昇させたり低下させたりする決定によって、第1モジュールは、第1曲線11ではなく修正された曲線11’に従い、第2モジュールは、第2曲線12ではなく修正された曲線12’に従う。第1モジュールは、第1出力低下時間21ではなく修正された出力低下時間21’で温度閾値6に達し、第2モジュールは、第2出力低下時間22ではなく修正された出力低下時間22’で温度閾値6に達する。全体的な機能の出力低下時間は第1出力低下時間と第2出力低下時間との短い方の時間なので、常に第2出力低下時間よりも短い第1出力低下時間が、当該照明機能の出力低下時間を決定することとなる。第1出力低下時間21から修正された出力低下時間21’へと改善されていることから、全体的な照明機能の出力低下時間が改善されるのである。
【0077】
図5は、システムがどのようにトレーニングされてテストされるかの特定の例を示している。様々なトレーニングデータセットでの様々な例が与えられている。様々なパラメータ(温度測定値(照明装置の周囲に設置されたサーミスタからの、外部温度、推定温度…)、車両速度、道路状況、天気、昼/夜、別の能動的な照明機能、熱的な制御パラメータ(LED減光、別のモジュールでの出力低下、ファン回転数)、および物理的なヘッドランプのパラメータ)が時間に沿って測定される典型的な運転期間を、それぞれの例が含んでいる。これらのデータセットのそれぞれが、実験による既知の出力低下時間の値と関連付けられている。これらの値がシステムに導入され、制御装置が出力低下時間を推定する。推定された出力低下時間は実験によるものと対照され、誤差が算出される。
【0078】
従って、各トレーニングデータセットが誤差値と関連付けられる。そして、様々な値やパラメータ同士の多重共線性ゆえに、出力低下時間の推定を改善するために制御装置に与えられることとなる管理規則を作り出すのに、リッジ回帰アルゴリズムが用いられる。
図1
図2
図3
図4
図5