(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極スラリー組成物、これを含む正極及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20241209BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241209BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20241209BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20241209BHJP
H01M 4/1397 20100101ALI20241209BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241209BHJP
H01M 4/60 20060101ALI20241209BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241209BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20241209BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/136
H01M4/139
H01M4/1397
H01M4/38 Z
H01M4/60
H01M10/052
H01M10/0566
(21)【出願番号】P 2023532823
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 KR2022009875
(87)【国際公開番号】W WO2023282672
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0089726
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チュンヒョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】テク・ギョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ラン・チェ
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-319657(JP,A)
【文献】特表2021-504899(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109346671(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0133412(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01M10/05-10/0587, 10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質、導電材、バインダ、増粘剤、添加剤、及び溶媒を含み、
前記増粘剤は、リチウム化されたカルボキシメチルセルロース(lithiated carboxymethyl cellulose,LiCMC)を含み、
前記添加剤は、スクシンイミド(succinimide)系化合物を含むものであ
り、
前記正極活物質は、硫黄元素(Elemental sulfur,S
8
)、Li
2
S
n
(n≧1、nは整数である)、有機硫黄化合物、及び炭素-硫黄ポリマー[(C
2
S
x
)
n
、2.5≦x≦50、n≧2、x及びnは整数である]からなる群より選択された1種以上を含むものである、リチウム二次電池用正極スラリー組成物。
【請求項2】
前記スクシンイミド系化合物は、N-ヒドロキシスクシンイミド(N-hydroxylsuccinimide、NHS)、N-ヒドロキシエチルスクシンイミド(N-(2-Hydroxyethyl)succinimide)、N-スクシンイミジルアセテート(N-Succinimidyl Acetate)、N-スクシンイミジルメタクリレート(N-Succinimidyl Methacrylate)、N-スクシンイミジルアクリレート(N-Succinimidyl Acrylate)、スクシンイミド(Succinimide)、及びエトスクシミド(Ethosuximide)からなる群より選択される1種以上を含むものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極スラリー組成物。
【請求項3】
前記増粘剤は、前記正極スラリー組成物の固形分全体の重量を基準として0.5重量%~5重量%で含まれたものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極スラリー組成物。
【請求項4】
前記添加剤は、前記正極スラリー組成物の固形分全体の重量を基準として0.01重量%~5重量%で含まれたものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極スラリー組成物。
【請求項5】
前記溶媒は、有機溶媒及び水系溶媒のうちから選択される1種以上を含むことができ、
前記有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、メトキシプロピルアセテート、ブチルアセテート、グリコール酸、ブチルエステル、ブチルグリコール、メチルアルキルポリシロキサン、アルキルベンゼン、プロピレングリコール、キシレン、モノフェニルグリコール、アラルキル変性メチルアルキルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリアクリレート、ジイソブチルケトン、有機変性ポリシロキサン、ブタノール、イソブタノール、変性ポリアクリレート、変性ポリウレタン、及びポリシロキサン変性ポリマーからなる群より選択された1種以上を含み、
前記水系溶媒は、水を含むものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極スラリー組成物。
【請求項6】
前記正極スラリー組成物は、揺変性指数(T)が0.1~0.4であ
り、
揺変性指数(T)=(回転速度10rpmでの正極スラリー組成物の粘度)/(回転速度1rpmでの正極スラリー組成物の粘度)であり、
前記粘度は25℃で測定されたものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極スラリー組成物。
【請求項7】
正極集電体;及び前記正極集電体の一面に形成された正極活物質層を含み、
前記正極活物質層は、請求項1の正極スラリー組成物で形成されたものである、リチウム二次電池用正極。
【請求項8】
(S1)正極集電体の一面に請求項1の正極スラリー組成物をコーティングする段階、
(S2)前記(S1)段階で形成されたコーティング層を乾燥させる段階、及び
(S3)前記コーティング層を圧延して正極活物質層を形成する段階、を含むリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項9】
前記コーティング方法は、バーコーティング、ロール・ツー・ロールコーティング、スピンコーティング、ノズルプリンティング、インクジェットプリンティング、スロットコーティング、及びディップコーティングからなる群より選択される1種以上であるものである、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項10】
請求項7による正極、負極、分離膜、及び電解液を含む、リチウム二次電池。
【請求項11】
前記リチウム二次電池は、リチウム-硫黄二次電池である、請求項10に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月8日付の韓国特許出願第2021-0089726号に基づいた優先権の利益を主張し、該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用正極スラリー組成物、これを含む正極及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、電子機器分野と電気自動車分野の急速な発展に伴い、二次電池の需要が増加している。特に、携帯用電子機器の小型化及び軽量化の傾向に伴って、それに応じることができる高エネルギー密度を有する二次電池に対する要求が大きくなっている。
【0004】
二次電池のうち、リチウム-硫黄二次電池は、硫黄-硫黄結合を有する硫黄系化合物を正極活物質として使用し、リチウムのようなアルカリ金属、リチウムイオンのような金属イオンの挿入及び脱離が起きる炭素系物質、またはリチウムと合金を形成するシリコンやスズ等を負極活物質として使用する二次電池である。具体的には、前記リチウム-硫黄二次電池は、還元反応である放電時に硫黄-硫黄結合が切れて硫黄の酸化数が減少し、酸化反応である充電時に硫黄の酸化数が増加して硫黄-硫黄結合がまた形成される酸化-還元反応を利用して、電気的エネルギーを貯蔵し生成する。
【0005】
特に、リチウム-硫黄二次電池に正極活物質として使用される硫黄は、理論エネルギー密度が1,675mAh/gで、既存のリチウム二次電池に使用される正極活物質に比べて5倍程度高い理論エネルギー密度を有していて、高出力及び高エネルギー密度の発現が可能な電池である。これに加え、硫黄は、価格が廉価であり、埋蔵量が豊かで需給が容易で、環境親和的であるという利点のために、携帯用電子機器だけでなく電気自動車のような中大型装置のエネルギー源として注目されている。
【0006】
硫黄は、電気伝導度が約5x10-30S/cmで、電気導電性がない不導体であるため、電気化学反応で生成された電子の移動が難しい問題がある。そこで電気化学的反応サイトを提供できる炭素のような電気伝導性物質と共に複合化されて硫黄-炭素複合体として使用されている。
【0007】
前記硫黄-炭素複合体を正極材として使用するために、前記硫黄-炭素複合体、導電材、バインダ、及び増粘剤を用いてスラリーを製造した後、前記スラリーを集電体に塗布するスラリー工程を経て正極を製造する方式が一般的に使用されている。
【0008】
しかし、従来のリチウム-硫黄二次電池用正極スラリーは、揺変性(thixotropy)が低く、正極スラリーを溶液コーティング工程に適用するとき、十分な流れ性が保障されなかった。そこで、正極スラリー製造時、正極活物質である硫黄-炭素複合体に親和的な分散剤(dispersion agent)及び/または流変物性変化剤(Reology modifier)を使用したりもするが、これらを使用しても流れ性に有意味な変化がなく、むしろ前記分散剤及び/または流変物性変化剤を使用することによって充放電性能が弱化したりした。
【0009】
一方、最近は、正極組成物の製造時にバインダとしてカルボキシメチルセルロース系の物質を適用して正極スラリーの流れ性を改善するための研究結果が公開されている。
【0010】
例えば、韓国公開特許第2016-0071740号は、安定的かつ柔軟な極板特性を付与するための水系正極組成物を提供するために、前記正極組成物の製造時にバインダとしてカルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose,CMC))を含む。しかし、バインダとしてカルボキシメチルセルロースのみを使用する場合、揺変性が低いスラリーは、スラリーコーティング工程でコーティング速度が変化する時に適切に広がらず正極活物質層が均一に形成できない問題がある。
【0011】
Lei Qui et al.(Carbohydrate polymers,Vol.112,(2014)pp.532-538)は、バインダとしてリチウム化されたカルボキシメチルセルロース(lithiated carboxymethyl cellulose,LiCMC)を含むリチウム二次電池用正極組成物を開示している。しかし、バインダとしてリチウム化されたカルボキシメチルセルロースのみを使用する場合、やはり正極スラリーの製造時に揺変性が弱くて、正極活物質層のコーティング工程でコーティング速度が変化する時、前記正極組成物に適切に対応することができないため、正極活物質層が均一に形成できない問題がある。
【0012】
このように、リチウム二次電池用正極の製造時に工程性を向上させ、製造されたリチウム二次電池の充放電性能を改善させることができるように、正極スラリーの流変物性を改善するための研究が続けられている。しかし、現在までに開発された正極スラリーは、リチウム二次電池用正極の製造時に工程性と電池性能の向上について有意味な効果を示すことができていない実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】韓国公開特許第2016-0071740号
【文献】Lei Qui et al.(Carbohydrate polymers、Vol.112,(2014)pp.532-538)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者は、前記の問題点を解決するために多角的に研究を行った結果、リチウム二次電池用正極スラリー組成物に、増粘剤であるリチウム化されたカルボキシメチルセルロース(lithiated carboxymethyl cellulose,LiCMC)と、添加剤であるスクシンイミド系化合物を混用する場合、前記正極スラリー組成物の流れ性が改善され、正極の製造時に前記正極スラリー組成物のコーティング工程でコーティング速度が変わっても、良質の正極活物質層を形成することができるということを確認した。
【0015】
したがって、本発明の目的は、流れ性が優れスラリーコーティング時に可変的な工程条件に対して柔軟に対応できるリチウム二次電池用正極スラリー組成物を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、前記流れ性がよい正極スラリー組成物を用いて製造された正極及びこれの製造方法を提供することである。
【0017】
本発明のまた他の目的は、前記流れ性がよい正極スラリー組成物を用いて製造された正極を含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、本発明は、正極活物質、導電材、バインダ、増粘剤、添加剤、及び溶媒を含み、前記増粘剤は、リチウム化されたカルボキシメチルセルロース(lithiated carboxymethyl cellulose,LiCMC)を含み、前記添加剤は、スクシンイミド系化合物を含むものである、リチウム二次電池用正極スラリー組成物を提供する。
【0019】
本発明はまた、正極集電体、及び前記正極集電体の一面に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は前記正極スラリー組成物によって形成されたものである、リチウム二次電池用正極を提供する。
【0020】
本発明はまた、(S1)正極集電体の一面に前記正極スラリー組成物をコーティングする段階、(S2)前記(S1)段階で形成されたコーティング層を乾燥させる段階、及び(S3)前記コーティング層を圧延して正極活物質層を形成する段階、を含むリチウム二次電池用正極の製造方法を提供する。
【0021】
本発明はまた、前記正極、負極、分離膜、及び電解液を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明による正極スラリー組成物は、コーティング工程時に変化するコーティング速度に柔軟に対応できる程度の流れ性を有するため、前記正極スラリー組成物を用いて正極集電体上に均一な正極活物質層が形成された正極を製造することができる。
【0023】
また、前記流れ性がよい正極スラリー組成物を用いて製造された正極を含むリチウム二次電池は、充放電性能が改善された効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例1及び比較例1の正極スラリー組成物のせん断速度によるせん断応力の変化を示したグラフである。
【
図2】実施例1及び比較例1のリチウム-硫黄二次電池に係る充放電特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明をさらに詳細に説明する。
【0026】
本明細書及び請求の範囲で使用された用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は、自身の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義できるという原則に則って、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0027】
本明細書で使用された用語「揺変性(thixotropy)」とは、物質にせん断応力(shear stress)が未作用の状態では粘性が増加し、せん断応力が作用した状態では粘性が減少する性質を意味する。
【0028】
本明細書で使用された「固形分」とは、リチウム二次電池用正極スラリー組成物から溶媒を除いた正極活物質、導電材、バインダ、増粘剤、及び添加剤を通称する意味である。
【0029】
リチウム二次電池用正極スラリー組成物
本発明は、リチウム二次電池用正極の製造時、正極活物質層を形成するためのコーティング工程で変化するコーティング速度に柔軟に対応できる程度の流れ性を有する正極スラリー組成物に関するものである。このとき、「対応」とは、コーティング速度が早まる時には、コーティング物質がコーティングされる集電体とコーティングバー間の正極スラリー組成物に印加されるせん断応力が大きくなるため、前記正極スラリー組成物の粘性が減少して速いコーティング速度に合わせて均一にコーティングされ、コーティング速度が遅くなる時には、集電体とコーティングバー間の正極スラリー組成物に印加されるせん断応力が小さくなるため、前記正極スラリー組成物の粘性が大きくなって遅いコーティング速度に合わせて均一にコーティングされることを意味する。
【0030】
本発明によるリチウム二次電池用正極スラリー組成物は、正極活物質、導電材、バインダ、増粘剤、添加剤、及び溶媒を含み、前記増粘剤は、リチウム化されたカルボキシメチルセルロース(lithiated carboxymethyl cellulose,LiCMC)を含み、前記添加剤は、スクシンイミド(succinimide)系化合物を含む。
【0031】
前記リチウム二次電池用正極スラリー組成物は、添加剤としてスクシンイミド系化合物を含むため、揺変性が改善され保管性がよくなる物性を示す。前記揺変性が増加したスラリーの場合、せん断応力が発生しない保管中も粘性を維持する能力が増加して、時間の流れに伴うスラリー内部での上部と下部のスラリー組成の変化が少なく、保管性が改善されることができる。もし、スラリー内部で上部と下部のスラリーの組成変化が起きると、スラリーコーティング時にスラリーの内部組成が相違するようになり、組成が均一でないコーティング層が形成され得る。
【0032】
以下、前記リチウム二次電池用正極スラリー組成物の各成分を中心に本発明をより詳しく説明する。
【0033】
本発明において、前記正極活物質は、硫黄元素(Elemental sulfur,S8)、Li2Sn(n≧1、nは整数である)、有機硫黄化合物、及び炭素-硫黄ポリマー[(C2Sx)n、2.5≦x≦50、n≧2、x及びnは整数である]からなる群より選択された1種以上を含むものであり得る。好ましくは、前記正極活物質は、硫黄元素を含むものであり得る。例えば、正極活物質は、硫黄/炭素複合体でもあり得るし、前記硫黄/炭素複合体は硫黄SとCNT(Carbon Nanotube)を用いて得られたS/CNT複合体でもあり得る。
【0034】
また、前記正極活物質は、前記正極スラリー組成物の固形分全体の重量を基準として60重量%~97重量%で含まれたものであり得る。具体的には、前記正極活物質の含量は、60重量%以上、70重量%以上、または80重量%以上であり得、91重量%以下、93重量%以下または97重量%以下であり得る。前記正極活物質の含量が60重量%未満であれば全体セル(cell)の電池容量が低下し得、97重量%を超過すると正極活物質を除いた導電材、バインダ、増粘剤、及び添加剤のうち1種以上の含量が相対的に低下して前記正極スラリー組成物の流れ性、導電性または物理的性質が低下し得る。
【0035】
また、前記導電材は、電気伝導性を向上させるためのもので、リチウム二次電池で化学変化を起こさない電気導電性物質であれば特に制限がない。
【0036】
前記導電材は、カーボンブラック(carbon black)、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末、導電性金属酸化物、及び有機導電材からなる群より選択された1種以上を含むことができる。前記カーボンブラックは、ケッチェンブラック(ketjen black)、スーパーP(super P)、デンカブラック(denka black)、アセチレンブラック(acetylene black)及びファーネスブラック(furnace black)からなる群より選択される1種以上を含むことができる。
【0037】
前記導電材は、前記正極スラリー組成物の固形分全体の重量を基準として0.01~30重量%で含まれることができる。具体的に前記導電材の含量は、0.01重量%以上、2重量%以上、または4重量%以上であり得、10重量%以下、20重量%以下または30重量%以下であり得る。前記導電材の含量が0.01重量%未満であれば正極の導電性が低下し得、30重量%を超過すると正極の柔軟性が低下し得る。
【0038】
また、前記バインダは、正極活物質を正極集電体に維持させ、正極活物質間を有機的に連結させてこれらの間の結着力をより高めるもので、当該業界で公知となった全てのバインダを使用することができる。
【0039】
前記バインダは、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride,PVdF)及び/またはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene,PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダ;スチレン-ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム及びスチレン-イソプレンゴムのうち1種以上を含むゴム系バインダ;カルボキシメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose,CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース及び再生セルロースのうち1種以上を含むセルロース系バインダ;ポリアルコール系バインダ;ポリエチレン及びポリプロピレンのうち1種以上を含むポリオレフィン系バインダ;ポリイミド系バインダ;ポリエステル系バインダ;アクリル系単量体を含むアクリル系バインダ;及びシラン系バインダ;からなる群より選択された1種、2種以上の混合物または共重合体を使用することができる。本発明の一具体例によれば、前記バインダは、ゴム系バインダの組み合わせが好ましいといえる。また、前記バインダは、カルボキシメチルセルロース系増粘剤との相溶性を考慮するとき、前記バインダは、SBR及び/またはアクリル系バインダを含むものであり得る。
【0040】
また、前記バインダは、エマルジョン型バインダであり得る。通常的に正極バインダの形態は、正極内の成分を結合させることができるならば、線形ポリマー(linear polymer)形態を使用してもよく、特に制限されない。しかし、前記エマルジョン型バインダを使用する場合、正極成分を点と点形態で最も効果的に結合させることができ、接着力もよい効果がある。またエマルジョン型バインダを使用する場合、線形ポリマー(linear polymer)形態のバインダに比べスラリー固形分が増加する効果がある。
【0041】
また、前記バインダは、前記正極スラリー組成物の固形分全体の重量を基準として0.01~30重量%で含まれることができる。具体的に前記バインダの含量は、0.01重量%以上、1重量%以上、または2重量%以上であり得、10重量%以下、20重量%以下または30重量%以下であり得る。前記バインダの含量が0.01重量%未満であれば、結着力のような正極の物理的性質が低下して正極活物質と導電材が脱落することがあり得、30重量%を超過すると正極活物質と導電材の比率が相対的に減少して電池容量が減少し得る。
【0042】
また、前記増粘剤は、前記正極スラリー組成物に適切な粘性を付与して前記正極スラリー組成物の安定性を確保することができ、前記正極スラリー組成物を正極集電体にコーティング時に固形分同士の再凝集現象を緩和させて表面不良を改善させることができる。
【0043】
前記増粘剤は、リチウム化されたカルボキシメチルセルロース(lithiated carboxymethyl cellulose,LiCMC)を含むことができる。前記LiCMCは、下記化学式1で表されることができる:
【0044】
【0045】
前記化学式1で、RはHまたはCH2COOHであり、nは25~2000である。
【0046】
前記LiCMCは、従来のCMCの金属イオンをLiに置換したものである。従来のCMCに含まれた金属イオンは、セル内部で不純物として作動し得てセルの性能を低下させ得る一方、LiCMCは、このようなセル内部の不純物を排除しリチウムイオンを含むため、不純物によるセルの性能低下を最小化することができる。
【0047】
また、前記LiCMCは、スクシンイミド系化合物と共に使用されるため、スラリー内部の相互作用(水素結合)を変化させ、それによってせん断応力に対応する揺変性を改善させることができる。具体的には、前記LiCMCの作用基(-OCH2COO-または-OR)とスクシンイミド系化合物内部の作用基(N-hydroxyl & carbonyl group)間の水素結合による相互作用により、スラリーの揺変性が増加してスラリーの保管性が改善されることができる。
【0048】
また、前記増粘剤は、前記正極スラリー組成物の固形分全体の重量を基準として0.5重量%~5重量%で含まれたものであり得る。具体的には、前記増粘剤の含量は、0.5重量%以上、0.8重量%以上、または1重量%以上であり得、2重量%以下、3重量%以下または5重量%以下であり得る。前記増粘剤の含量が0.5重量%未満であれば、前記正極スラリー組成物の粘性が低くて水のように流れ落ちるため、正極集電体上に前記正極スラリー組成物をコーティングすることができず、5重量%を超過すると粘性が高く堅いため均一なコーティング層を形成するのが難しくなり得る。
【0049】
前記正極スラリー組成物の粘度は特に制限されず、増粘剤の含量によって粘度が可変的であり得るが、正極スラリー組成物の相安定性とコーティング工程の容易性を勘案して、25℃で1000cP以上、または4500cP以上であり得る。
【0050】
また、前記添加剤は、正極の製造時に、前記正極スラリー組成物を正極集電体上にコーティングするコーティング工程で、可変的なコーティング速度に対応できるようにする揺変性を有するようにすることができる。
【0051】
前記添加剤は、スクシンイミド系化合物を含み、前記スクシンイミド系化合物は、N-ヒドロキシスクシンイミド(N-hydroxylsuccinimide、NHS)、N-ヒドロキシエチルスクシンイミド(N-(2-Hydroxyethyl)succinimide)、N-スクシンイミジルアセテート(N-Succinimidyl Acetate)、N-スクシンイミジルメタクリレート(N-Succinimidyl Methacrylate)、N-スクシンイミジルアクリレート(N-Succinimidyl Acrylate)、スクシンイミド(Succinimide)、及びエトスクシミド(Ethosuximide)からなる群より選択された1種以上を含むものであり得る。
【0052】
前記スクシンイミド系化合物を添加剤として含む場合、スラリーの固形分が増加して揺変性を制御することが容易であり得る。例えば、スラリー製造時、既存組成に追加で前記スクシンイミド系化合物を添加剤として使用してスラリーを製造するようになると、固形分の増大効果がよくスラリーの揺変性を制御することが容易であり得る。
【0053】
また、前記添加剤は、前記正極スラリー組成物の固形分全体の重量を基準として0.01重量%~5重量%で含まれたものであり得る。具体的には、前記添加剤の含量は、0.01重量%以上、0.1重量%以上、または0.3重量%以上であり得、1.5重量%以下、3重量%以下または5重量%以下であり得る。前記添加剤の含量が0.01重量%未満であれば、前記正極スラリー組成物の揺変性がよくなくて前記コーティング工程時にコーティング速度が変化する時、均一な厚さを有するコーティング層を形成することが難しくなり得、5重量%を超過すると、LiCMC増粘剤の含量が相対的に減少して前記正極スラリー組成物の安定性がよくなくてコーティング層形成後に亀裂が発生することがあり得る。
【0054】
また、前記溶媒は、上述したような正極活物質、導電材、バインダ、増粘剤、及び添加剤と混合されて正極スラリー組成物を形成することができる溶媒であれば特別な制限なしに使用されることができる。
【0055】
前記溶媒は、有機溶媒及び/または水系溶媒を含むことができる。前記有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、メトキシプロピルアセテート、ブチルアセテート、グリコール酸、ブチルエステル、ブチルグリコール、メチルアルキルポリシロキサン、アルキルベンゼン、プロピレングリコール、キシレン、モノフェニルグリコール、アラルキル変性メチルアルキルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリアクリレート、ジイソブチルケトン、有機変性ポリシロキサン、ブタノール、イソブタノール、変性ポリアクリレート、変性ポリウレタン、及びポリシロキサン変性ポリマーからなる群より選択された1種以上を含むことができる。前記水系溶媒は、水を含むことができる。
【0056】
前記溶媒は、正極スラリー組成物の全体重量を基準として55~70重量%であり得る。具体的には、前記溶媒の含量は、55重量%以上、または57重量%以上であり得、65重量%以下、67重量%以下または70重量%以下であり得る。前記溶媒の含量が55重量%未満であれば、前記正極スラリー組成物の濃度が過度に高くなって堅いため正極集電体上に前記正極スラリー組成物を均一にコーティングするのが難しくなり得、70重量%を超過すると前記正極スラリー組成物の濃度が過度に低くなって流れ落ちるためコーティング工程で前記正極スラリー組成物をコントロールするのが難しくなり得、コーティング層形成後に乾燥時間が長く所要され得る。
【0057】
本発明において、前記正極スラリー組成物は、下記数学式1で表される揺変性指数Tが0.1~0.4であるものであり得る:
【0058】
<数学式1>
揺変性指数T=(回転速度10rpmでの正極スラリー組成物の粘度)/(回転速度1rpmでの正極スラリー組成物の粘度)、
前記粘度は25℃で測定されたものである。
【0059】
前記正極スラリー組成物は、せん断応力が未作用の状態では粘性が増加し、せん断応力が作用した状態では粘性が減少する性質である揺変性を有する。
【0060】
前記正極スラリー組成物を回転させると、回転速度に比例するせん断速度(shear rate)によってせん断応力(shear stress)が加えられる原理を利用して、前記数学式1のように、回転速度1rpmでの前記正極スラリー組成物の粘度に対する回転速度10rpmでの前記正極スラリー組成物の粘度を用いて揺変性を定義した。前記回転速度1rpmである時、せん断速度は0.29/sであり、回転速度10rpmである時せん断速度は2.9/sである。
【0061】
前記揺変性指数Tが0.1未満であれば、低い回転速度に比べ高い回転速度での粘度が非常に低く、前記正極スラリー組成物を正極集電体上にコーティングする工程で、コーティング速度が変化する時に有効なコーティング速度が制限され、0.4を超過するとコーティング速度が変化しても粘性変化が大きくなくスラリーの対応が難しいことがあり得る。具体的には、前記揺変性指数Tは0.1以上、0.15以上、または0.2以上であり得、0.3以下、0.35以下または0.4以下であり得る。
【0062】
リチウム二次電池用正極スラリー組成物の製造方法
本発明はまた、リチウム二次電池用正極スラリー組成物の製造方法に関するものである。前記正極スラリー組成物の製造時に使用された物質の種類と重量は、上述したとおりである。
【0063】
前記正極スラリー組成物は、上述したような正極活物質、導電材、バインダ、増粘剤、及び添加剤を溶媒に添加し、混合して製造されることができる。
【0064】
前記混合はミリング(milling)によって実施されることができるが、当業界でスラリー形成のために使用する混合方法であれば、特に制限されるものではない。例えば、前記ミリングは、ビードミリング(bead milling)、ロールミリング(roll milling)、ボールミリング(ball Milling)、アトリッションミリング(attrition milling)、遊星ボールミリング(planetary milling)、ジェットミリング(zet Milling)、またはスクリュー混合(screw mixing)ミリングであり得る。好ましくは、前記正極スラリー組成物に含まれた成分の均一な混合及び分散性を考慮して、ビードミリングを適用することができる。
【0065】
リチウム二次電池用正極
本発明はまた、正極集電体;及び前記正極集電体の一面に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、正極活物質、バインダ、導電材、増粘剤、及び添加剤を含むものである、リチウム二次電池用正極を提供する。
【0066】
本発明において、前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有し、正極充電電圧で電気化学的に安定的に使用できるものであれば特に制限されるものではない。例えば、前記正極集電体は、銅、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上であり得る。前記ステンレススチールは、カーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されたものであり得る。
【0067】
また、前記正極集電体の形態は特に制限されず、フィルム、シート、ホイル(foil)、ネット(net)、多孔質体、発泡体、または不織布体の形態のものを使用することができる。必要に応じて、正極集電体の表面には微細な凹凸が形成されていてよく、前記凹凸は、正極活物質層との接着力改善に役立つことができる。前記正極集電体の表面に凹凸を形成する方法は特に制限されず、例えば、機械的研磨法、電解研磨法、または化学研磨法等の公知の方式が適用されることができる。
【0068】
また、前記正極集電体の厚さは特に制限されず、正極の機械的強度、生産性または電池の容量を考慮して適切な範囲で設定することができる。例えば、前記正極集電体の厚さは、通常的に3μm~500μmであり得る。
【0069】
本発明において、前記正極活物質層は、上述したような正極スラリー組成物によって形成されたものであり、正極活物質、バインダ、導電材、増粘剤、及び添加剤を含むことができる。前記正極活物質、バインダ、導電材、増粘剤、及び添加剤の種類及び含量は、上述のとおりである。
【0070】
前記正極活物質層の厚さは特に制限されず、正極の機械的強度、ローディング量または電池の容量を考慮して適切な範囲で設定することができる。例えば、前記正極活物質層の厚さは、通常的に30μm~300μmであり得る。
【0071】
リチウム二次電池用正極の製造方法
本発明はまた、リチウム二次電池用正極の製造方法に関するものであり、(S1)正極集電体の一面に前記正極スラリー組成物をコーティングする段階、(S2)前記(S1)段階で形成されたコーティング層を乾燥させる段階、及び(S3)前記コーティング層を圧延して正極活物質層を形成する段階、を含むことができる。
【0072】
前記(S1)段階では、正極集電体の一面に前記正極スラリー組成物をコーティングしてコーティング層を形成することができる。前記正極集電体と正極スラリー組成物は、前に説明したとおりである。
【0073】
前記コーティング方法は、スラリーをコーティングできる方法であれば特に制限されない。例えば、前記コーティング方法は、ロール・ツー・ロール(Roll-to-Roll)コーティング法、スピンコーティング、ノズルプリンティング、インクジェットプリンティング、スロットコーティング、及びディップコーティングからなる群より選択される1種以上であり得、好ましくはロール・ツー・ロールコーティング法であり得る。
【0074】
前記のようなコーティング法を用いたたコーティング工程で、コーティング速度が可変的であり得る。コーティング条件によって最適化された乾燥条件を確立するためにコーティング速度が変わり得る。前記コーティング速度が可変的であるのは、正極スラリー組成物を集電体に塗布して乾燥する過程で、前記正極スラリー組成物の性質によって溶媒の乾燥速度が異なるためである。
【0075】
前記(S2)段階では、前記(S1)段階で形成されたコーティング層を乾燥させることができる。
【0076】
前記乾燥を介して前記正極スラリー組成物内に含まれた溶媒が蒸発してレイヤー形態のコーティング層が形成され得る。
【0077】
前記乾燥温度は、良質の正極活物質層が形成できるように30℃以上、40℃以上、または45℃以上であり得、60℃以下、70℃以下または80℃以下であり得る。
【0078】
前記(S3)段階では、前記(S2)段階で形成されたコーティング層を圧延して正極活物質層を形成することができる。
【0079】
前記圧延は、当業界で使用される通常の圧延工程を導入することができ、ロールプレスを用いて圧延を実施することができる。例えば、前記ロールプレスを用いた圧延は、コーティング層が形成された正極集電体の上部と下部に二つのロールが配置された状態で、前記ロールで前記コーティング層が形成された正極集電体に圧力を加え、同時に前記コーティング層が形成された正極集電体を水平方向に移動させて実施されることができる。
【0080】
リチウム二次電池
本発明はまた、正極、負極、分離膜、及び電解液を含むリチウム二次電池に関するものである。
【0081】
本発明によるリチウム二次電池において、前記正極の構造、構成物質及び製造方法は、前に説明したとおりである。
【0082】
本発明によるリチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に形成された負極活物質層を含むことができる。負極活物質層(一例として、リチウムホイル)を単独で使用することができる。
【0083】
前記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有したものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金等が使用されることができる。また、前記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態が使用されることができる。
【0084】
また、前記負極活物質は、結晶質人造黒鉛、結晶質天然黒鉛、非晶質ハードカーボン、低結晶質ソフトカーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、スーパー-P、グラフェン(graphene)、繊維状炭素からなる群より選択される一つ以上の炭素系物質、Si系物質、LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)等の金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、Bi2O5等の金属酸化物;ポリアセチレン等の導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物等を含むことができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0085】
これに加えて、負極活物質は、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)等の金属複合酸化物;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、及びBi2O5等の酸化物等を使用することができ、結晶質炭素、非晶質炭素または炭素複合体のような炭素系負極活物質が単独でまたは2種以上が混用されて使用されることができる。
【0086】
本発明によるリチウム二次電池において、前記電解液は、リチウム二次電池の製造に通常的に使用されてきたものが全て使用されることができる。
【0087】
前記電解液で電解質として含まれ得るリチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常的に使用されるものが制限なしに使用されることができ、例えば、前記リチウム塩の陰イオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、ClO4
-、PF6
-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、CF3SO3
-、CF3CF2SO3
-、(CF3SO2)2N-、(FSO2)2N-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、(SF5)3C-、(CF3SO2)3C-、CF3(CF2)7SO3
-、CF3CO2
-、CH3CO2
-、SCN-、及び(CF3CF2SO2)2N-からなる群より選択されたいずれか一であり得る。前記リチウム塩は、LiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide,LiC2F6NO4S2)及び/またはLiNO3であり得る。
【0088】
本発明で使用される電解液において、電解液に含まれる有機溶媒としては、リチウム二次電池用電解液に通常的に使用されるものを制限なしに使用することができる。本発明の一具体例によれば、前記有機溶媒は、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。その中で代表的にはエーテル系溶媒を使用することができる。
【0089】
前記カーボネート系溶媒としては、具体的には、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、またはブチレンカーボネート(BC)等が使用されることができる。
【0090】
前記エステル系溶媒としては、具体的には、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、1,1-ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノライド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(carprolactone)等が使用されることができる。
【0091】
前記エーテル系溶媒としては、具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、またはポリエチレングリコールジメチルエーテル等が使用されることができる。
【0092】
前記ケトン系溶媒としては、具体的には、シクロヘキサノン等が使用されることができる。前記アルコール系溶媒としては、具体的には、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が使用されることができる。
【0093】
前記非プロトン性溶媒としては、具体的には、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、1,3-ジオキソラン(DOL)等のジオキソラン類、またはスルホラン (sulfolane)等が使用されることができる。
【0094】
前記非水性有機溶媒は、単独でまたは一つ以上混合して使用されることができ、一つ以上混合して使用される場合の混合比率は、目的とする電池性能によって適切に調節することができる。
【0095】
本発明によるリチウム二次電池において、前記分離膜は、当業界で分離膜として使用された通常の多孔性高分子フィルムを使用することができる。例えば、前記分離膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、及びエチレン/メタクリレート共重合体等のようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して使用することができ、または通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタルレート繊維等からなった不織布を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0096】
本発明によるリチウム二次電池において、電池形態は特に制限されず、例えば、ゼリー-ロール型、ステック型、スタック-フォールディング型(スタック-Z-フォールディング型含む)、またはラミネーション-ステック型であり得、好ましくはスタック-フォールディング型であり得る。
【0097】
また、前記リチウム二次電池は、前記負極、分離膜、及び正極を順に積層させて電解液を注入した電極組立体を製造した後、これを電池ケースに入れてから、キャッププレート及びガスケットで密封して組立てて製造されることができる。
【0098】
このとき、リチウム二次電池は、使用する正極/負極の材質によってリチウム-硫黄二次電池、リチウム-空気電池、リチウム-酸化物電池、リチウム全固体電池等、多様な電池に分類が可能で、形態によって円筒形、角形、コイン型、パウチ型等に分類されることができ、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに分けることができる。これら電池の構造と製造方法は、この分野に広く知られているため詳細な説明は省略する。
【0099】
本発明において、リチウム二次電池は、正極として硫黄-炭素複合体を含む形態の正極材を使用するリチウム-硫黄二次電池であり得る。前記リチウム-硫黄二次電池は、負極活物質としてリチウム金属を使用することができる。リチウム-硫黄二次電池の放電時、負極ではリチウムの酸化反応が起き、正極では硫黄の還元反応が発生する。このとき、還元された硫黄は負極から移動してきたリチウムイオンと結合してリチウムポリサルファイドに変換され最終的にリチウムサルファイドを形成する反応を伴う。
【0100】
本発明はまた、前記リチウム二次電池を含む電池モジュールに関するものであり、高容量及び高いレート特性等が要求されるデバイスの電源として使用されることができる。前記デバイスの具体的な例としては、電池的モータによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)等を含む電気自動車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(Escooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システム等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0101】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するだけで、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能なことは当業者にあって明白なことであり、このような変更及び修正が添付された特許請求の範囲に属するのも当然である。
【0102】
実施例1
(1)正極スラリー組成物の製造
正極活物質、導電材、バインダ、増粘剤、及び添加剤を、92:5:2:0.7:0.3の重量比で混合した混合物を得た。前記正極活物質は、硫黄(Sigma-Aldrich製品)をCNT(Carbon Nanotube)と共にボールミルを使用して混合した後、155℃で熱処理して得たS/CNT複合体であり、導電材はデンカブラックで、バインダはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)で、増粘剤はLiCMC(LiCMC1000、ジーエムケム)であり、添加剤はN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を使用した。
【0103】
前記混合物と水を混合し、正極スラリー組成物を製造した。
【0104】
(2)正極の製造
前記正極スラリー組成物を厚さ12μmのアルミニウムホイル(Al foil)正極集電体の一面にコーティングした後、50℃で2時間の間乾燥させ、圧延して正極活物質層が形成された正極を製造した。
【0105】
(3)リチウム-硫黄二次電池の製造
前記正極とリチウム負極の間に厚さ20μm及び気孔度45%の多孔性ポリエチレン分離膜を入れてケース内部に位置させた後、ケース内部に電解質を注入してCR-2032コインセル形態のリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0106】
前記電解質は、1,3-ジオキソラン(DOL)と1,2-ジメトキシエタン(DME)の混合溶媒(1:1、v/v)に、0.38MのLiTFSIと0.31MのLiNO3を添加したものを使用した。
【0107】
比較例1
添加剤を使用せず、正極活物質、導電材、バインダ及び増粘剤を92:5:2:1の重量比で混合したことを除いて、実施例1と同一の方法で正極スラリー組成物、正極及びリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0108】
実験例1:正極スラリー組成物の粘度、揺変性指数及び流変物性の測定
実施例及び比較例で製造された正極スラリー組成物について、粘度を測定し、測定された粘度から揺変性指数を計算し、流変物性を測定して、その結果を下記表1及び
図1に示した。
【0109】
前記粘度の測定方法、揺変性指数の計算方法及び流変物性の測定方法は、下記に記載されたとおりである。
【0110】
(1)粘度測定
25℃のコンテナ(container)に前記正極スラリー組成物4mlを投入し、前記コンテナにSCP-16 spindle(Brookfield)を装着した。その後、前記SCP-16 spindleを1rpm~10rpmの速度で回転させ、各回転速度で測定される粘度(cP)を記録した。粘度測定のための粘度計としてはViscometer(DV2T、Brookfield)を使用した。
【0111】
(2)揺変性指数の計算
下記数学式1を用いて正極スラリー組成物の揺変性指数を計算した:
【0112】
<数学式1>
揺変性指数T=(回転速度10rpmでの正極スラリー組成物の粘度)/(回転速度1rpmでの正極スラリー組成物の粘度)、
前記粘度は25℃で測定されたものである。
【0113】
(3)流変物性の測定
レオメーター(rheometer、DHR-1、TA instruments)に正極スラリー組成物1gを投入した後、0.1/s~50/sの範囲で変化するせん断速度(shear rate)に対応するせん断応力(shear stress、Pa)を測定した。
【0114】
【0115】
前記表1に示されたように、実施例1は、添加剤としてNHSを適量含む正極スラリー組成物であって粘度が高く、揺変性指数値が比較例1に比べて低く揺変性が高いことがわかる。
【0116】
また、比較例1は、添加剤を含まない正極スラリー組成物であって、スラリー形成に必要な粘性はあるが、せん断応力変化による対応能力が低いことがわかる。
【0117】
図1は、実施例1及び比較例1の正極スラリー組成物のせん断速度によるせん断応力の変化を示したグラフである。
【0118】
図1を参照すると、hysteresis loop内部の面積の大きさの差を確認することができ、これから実施例1のスラリーが、揺変性特性が優れていることがわかる。
【0119】
実験例2:充放電特性の評価
実施例及び比較例で製造されたCR-2032コインセル形態のリチウム-硫黄二次電池に対し、1.8V~2.5Vの電圧範囲内で、0.1C充電/0.1C放電3回、及び0.3C充電/0.5C放電を実施し、充放電特性を評価した。
【0120】
図2は、実施例1及び比較例1のリチウム-硫黄二次電池に対する充放電特性を示したグラフである。
【0121】
図2を参照すると、実施例1のリチウム-硫黄電池は、1105mAh/g水準の初期放電容量を示して、1080mAh/g水準の比較例1の放電容量に比べて上回った値を示し、100サイクル以上800mAh/g以上の放電容量を維持する寿命性能を示した。これは、添加剤を含まない比較例1のリチウム-硫黄電池の放電容量維持と同等あるいは優位にある性能である。
【0122】
以上で本発明は、限定された実施例と図面によって説明されてはいるが、本発明はこれによって限定されず、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と下に記載する特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能なことはもちろんである。