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  • 特許-R-T-B磁石及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】R-T-B磁石及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20241209BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20241209BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20241209BHJP
   C21D 6/00 20060101ALI20241209BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20241209BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20241209BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20241209BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20241209BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20241209BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241209BHJP
【FI】
H01F1/057
H01F1/057 170
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
C21D6/00 B
B22F9/04 C
B22F9/04 E
B22F1/052
B22F3/00 F
B22F3/24 B
B22F3/24 K
C22C33/02 J
B22F1/00 Y
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023544206
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2022072251
(87)【国際公開番号】W WO2022193818
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】202110287750.1
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】福建省金龍稀土股分有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】牟維国
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101266856(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/057
H01F 41/02
C22C 38/00
C21D 6/00
B22F 9/04
B22F 1/052
B22F 3/00
B22F 3/24
C22C 33/02
B22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
R-T-B磁石であって、
下記の成分を含み、
R:≧30.0wt.%、前記Rは、希土類元素であり、
Nb:0.02~0.14wt.%、
Cu:0.2~0.48wt.%、
Ti+Nb:≦0.24wt.%、
Al+Cu:≦0.50wt.%、
B:≧0.955wt.%、
残部がFeであり、wt.%は、各成分の質量が各成分の総質量に占める百分率であ
前記R-T-B磁石の二粒子粒界相中のFeの含有量と二粒子粒界相中の全元素の総含有量の比は、40wt.%~46wt.%であり、
前記R-T-B磁石は、Cu-Nb-Fe相を含み、前記Cu-Nb-Fe相は、結晶粒間三角領域に位置し、
前記Cu-Nb-Fe相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.3~2%であり、
前記Cu-Nb-Fe相におけるCu、Nb、Feの原子百分率含有量の比は、5:1:94である、
ことを特徴とするR-T-B磁石。
【請求項2】
前記Rの含有量は、30~33wt.%であり、
前記Rの種類は、Ndを含み、
ここで、前記Ndの含有量は、29~31wt.%であり、wt.%は、各成分の総質量に占める百分率であり、
前記Rの種類は、Pr及びRHのうちの少なくとも1つをさらに含み、前記RHは、重希土類元素であり、
ここで、前記Prの含有量は、0.3wt.%以下であり、wt.%は、各成分の総質量に占める百分率であり、
ここで、前記RHの種類は、Tbであり、
ここで、前記RHの含有量は、1.4wt.%以下であり、wt.%は、各成分の総質量に占める百分率であり、
ここで、前記RHの原子百分率含有量と前記Rの原子百分率含有量との比は、0.1以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B磁石。
【請求項3】
前記「Ti+Nb」の含有量は、0.1~0.24wt.%であり
前記Nbの含有量は、0.05~0.14wt.%であり
前記Tiの含有量は、0.24wt.%以下であるが、且つ0wt.%ではなく
前記「Al+Cu」の含有量は、0.44wt.%以下であるが、且つ0wt.%ではなく
前記Alの含有量は、0.08wt.%以下であるが、且つ0wt.%ではなく
前記Cuの含有量は、0.2~0.46wt.%である
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B磁石。
【請求項4】
前記Bの含有量は、0.955~1.15wt.%であり
前記Bの原子百分率含有量と前記R-T-B磁石における前記Rの原子百分率含有量との比は、0.38以上であり
前記R-T-B磁石は、Coをさらに含み、
ここで、前記Coの含有量は、1wt.%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B磁石。
【請求項5】
二粒子粒界相中のFeの含有量と二粒子粒界相中の全元素の総含有量の比は、42wt.%、43wt.%、44wt.%、45wt.%又は46wt.%であり、
前記Cu-Nb-Fe相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.3%、1.4%、1.5%又は1.6%である
ことを特徴とする請求項に記載のR-T-B磁石。
【請求項6】
前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.3wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.49wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.8wt.%のCo、0.3wt.%のCu、0.03wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び67.68wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、46wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.5wt.%のCo、0.2wt.%のCu、0.05wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.05wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.16wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.6wt.%のCo、0.4wt.%のCu、0.04wt.%のAl、0.14wt.%のNb、0.09wt.%のTi、0.99wt.%のB及び67.74wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.6%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、43wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.2wt.%のCu、0.03wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.58wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、43wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.39wt.%のCu、0.04wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.38wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、42wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.46wt.%のCu、0.04wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.31wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、46wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.3wt.%のCu、0.04wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.05wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.57wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、44wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.8wt.%のCo、0.3wt.%のCu、0.03wt.%のAl、0.1wt.%のNb、0.14wt.%のTi、0.99wt.%のB及び67.64wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、43wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.8wt.%のCo、0.3wt.%のCu、0.03wt.%のAl、0.12wt.%のNb、0.11wt.%のTi、0.99wt.%のB及び67.65wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、29.7wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.39wt.%のCu、0.04wt.%のAl、0.1wt.%のNb、0.14wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.04wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.6%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、30.4wt.%のNd、0.4wt.%のTb、0.39wt.%のCu、0.05wt.%のAl、0.1wt.%のNb、0.14wt.%のTi、0.99wt.%のB及び67.53wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、29.9wt.%のNd、0.4wt.%のTb、0.39wt.%のCu、0.06wt.%のAl、0.1wt.%のNb、0.14wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.02wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、43wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、30.1wt.%のNd、0.2wt.%のTb、0.39wt.%のCu、0.05wt.%のAl、0.09wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.03wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、44wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.3wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.49wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、42wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.3wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.49wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、30wt.%のNd、0.3wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.49wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、43wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、29wt.%のNd、1wt.%のTb、0.3wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.49wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、28.2wt.%のNd、0.6wt.%のTb、1.2wt.%のDy、0.36wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.43wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、44wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、28.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、1wt.%のDy、0.5wt.%のCo、0.36wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び67.93wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.3%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、46wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、28.8wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.6wt.%のDy、0.36wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.43wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.3%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、46wt.%であり、
又は、前記R-T-B磁石は、28.2wt.%のNd、0.7wt.%のTb、0.3wt.%のDy、0.8wt.%のCo、0.36wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.43wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.3%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、46wt.%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B磁石。
【請求項7】
R-T-B磁石の製造方法であって、
請求項1~のいずれか1項に記載のR-T-B磁石の各成分の原料混合物を微粉砕した後、焼結処理するステップを含み、
前記微粉砕の後に得られた粉体の粒径は、3.9~4.4μmである、
ことを特徴とするR-T-B磁石の製造方法。
【請求項8】
前記微粉砕の後に得られた粉体の粒径は、3.9μm、4.0μm、4.1μm、4.2μm又は4.3μmであり、
前記微粉砕は、ジェットミル粉砕であり、
前記微粉砕時のガス雰囲気は、酸化ガス含有量が1000ppm以下であり、前記酸化ガス含有量は、酸素又は水分の含有量を意味し、
前記焼結処理の温度は、1000~1100℃であり
前記焼結処理の時間は、4~8hであり
前記微粉砕の前に、前記R-T-B磁石の各成分の原料混合物に対して溶解製錬、鋳造及び水素破砕を順に行うことをさらに含み、
ここで、前記溶解製錬の真空度は、5×10-2Paであり、
ここで、前記溶解製錬の温度は、1550℃以下であり、
ここで、前記鋳造の工程は、急冷凝固鋳片法を採用し、
ここで、前記鋳造の温度は、1390~1460℃であり
ここで、前記鋳造後に得られた合金鋳片の厚さは、0.25~0.40mmであり
前記微粉砕後、前記焼結処理前には、磁場成形が含まれる、
ことを特徴とする請求項7に記載のR-T-B磁石の製造方法。
【請求項9】
前記焼結処理の後に、時効処理をさらに含み、
ここで、前記時効処理は、1段目時効処理及び2段目時効処理を含み、
前記1段目時効処理の温度は、860~920℃であり
前記1段目時効処理の時間は、2.5~4hであり
前記2段目時効処理の温度は、460~530℃であり
前記2段目時効処理の時間は、2.5~4hであり
ここで、前記R-T-B磁石が重希土類元素をさらに含む場合、前記時効処理の後に一般的に粒界拡散をさらに含み、前記粒界拡散の温度は、800~900℃であり、前記粒界拡散の時間は、5~10hであり
前記R-T-B磁石内の重希土類元素の添加方式は、0~80%の重希土類元素を溶解製錬時に添加し且つ残りの重希土類元素を溶解製錬時に添加する方式を採用し、前記R-T-B磁石内の重希土類元素がTbであり且つTbが0.5wt.%より大きい場合、40~67%のTbを溶解製錬時に添加し、残部を粒界拡散時に添加し、又は、前記R-T-B磁石内の重希土類元素がTb及びDyである場合、前記Tbを溶解製錬時に添加し、前記Dyを粒界拡散時に添加し、又は、前記R-T-B磁石内の重希土類元素がTbであり且つTbが0.5wt.%以下である場合、又は、前記R-T-B磁石内の重希土類元素がDyである場合、前記R-T-B磁石内の重希土類元素を粒界拡散時に添加する、
ことを特徴とする請求項に記載のR-T-B磁石の製造方法。
【請求項10】
請求項に記載のR-T-B磁石の製造方法によって製造されたR-T-B磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、R-T-B磁石及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネオジム鉄ホウ素磁石材料は現在、電子、電力機械、医療機器などの分野に広く応用されている。近年、ネオジム鉄ホウ素磁石材料の磁気特性の向上は、現在の研究のホットスポットとなっている。
【0003】
例えば、中国特許文献CN108831650Aは、ネオジウム鉄ホウ素材料にチタン、ジルコニウム、ニオブ、ガリウムをそれぞれ0.05~0.5%複合添加することにより、少量で複数種添加する原則を採用して、材料内の重希土類元素の用量を減少するとともに、各ブランドの2段目時効温度を統一し、2段目時効の普遍性を向上させることができる、ネオジウム鉄ホウ素磁石材料及びその製造方法を開示する。この4種類の複合元素の添加は、結晶粒を微細化するとともに粒界の希土類リッチ相の流動性を向上させる目的を達成し、材料の各項目の性能指標、特に固有保磁力及び角型比を向上させ、重稀土類用量を減少するとともに製品の角型比を改善し、製品の一貫性と高温安定性を向上させる。例えば、当該特許の実施例5の成分には、以下の質量含有量の成分を含み、30.3%のPrNd、0%のDy、0.97%のB、0.5%のCo、0.15%のCu、0.1%のAl、0.08%のTi、0.1%のNb、0.2%のGa、0.05%のZr、残部はFeである。ジェットミルを採用して3.0μmの微粉を製造し、焼結温度は1040℃であり、1段目時効温度は900℃、2段目時効温度は520℃である製造工程により、残留磁束密度が14.4、Hcjが12.5、最大エネルギー積が50.82、角型比が97%であるネオジウム鉄ホウ素磁石材料を得た。しかしながら、当該磁石材料の成分はさらに最適化されておらず、得られた磁石材料の保磁力は低いレベルにあり、高温時の磁気特性温度性も低いレベルにあり、より高く要求される製品には適用できない。
【0004】
製造後に高保磁力、高残留磁束密度、保磁力の高温安定性、高角型比の総合的な磁気特性に優れた磁石材料を得るように、ネオジウム鉄ホウ素磁石の成分を求めることが、現在解決すべき技術的課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ネオジウム鉄ホウ素磁石材料の成分により得られた磁石の残留磁束密度、保磁力、高温安定性及び角型比が同時に高いレベルに達することができないという従来技術に存在する欠陥を解決するために、R-T-B磁石及びその製造方法を提供する。本発明におけるR-T-B磁石における特定元素の種類と特定含有量との間の配合により、残留磁束密度、保磁力及び角型比が高くて、高温安定性も優れた磁石材料を製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は主に以下の技術考案により上記のような技術的課題を解決する。
【0007】
本発明には、R-T-B磁石が提供され、下記の成分を含み、R:≧30.0wt.%、前記Rは、希土類元素であり、
Nb:0.02~0.14wt.%、
Cu:0.2~0.48wt.%、
Ti+Nb:≦0.24wt.%、
Al+Cu:≦0.50wt.%、
B:≧0.955wt.%、
Fe:58~69wt.%、wt.%は、各成分の質量が各成分の総質量に占める百分率である。
【0008】
本発明において、前記Rの含有量は、好ましくは、30~33wt.%であり、例えば、30wt.%、30.3wt.%又は30.8wt.%である。
【0009】
本発明において、前記Rの種類は本分野の従来どおりであってもよく、一般的にNdを含む。
【0010】
ここで、前記Ndの含有量は、好ましくは、29~31wt.%であり、例えば、29wt.%、29.4wt.%、29.7wt.%、29.9wt.%、30wt.%、30.1wt.%又は30.4wt.%であり、wt.%は、各成分の総質量に占める百分率である。
【0011】
本発明において、前記Rは、一般的にPr及び/又はRHをさらに含み、前記RHは、重希土類元素である。
【0012】
ここで、前記Prの含有量は、好ましくは、0.3wt.%以下であり、wt.%は、各成分の質量が各成分の総質量に占める百分率である。
【0013】
ここで、前記重希土類元素は、好ましくはTbである。
【0014】
ここで、前記RHの含有量は、1.4wt.%以下であってもよく、例えば、0.2wt.%、0.4wt.%、0.6wt.%又は1wt.%であり、wt.%は、各成分の総質量に占める百分率である。
【0015】
ここで、前記RHの原子百分率含有量と前記Rの原子百分率含有量との比は、0.1以下であってもよく、例えば、0.02、0.04又は0.06であり、前記の原子百分率含有量は、各成分の総含有量に占める原子百分率を意味する。
【0016】
本発明において、前記「Ti+Nb」の含有量は、好ましくは、0.1~0.24wt.%であり、例えば、0.1wt.%、0.2wt.%、0.23wt.%又は0.24wt.%である。
【0017】
本発明において、前記Nbの含有量は、好ましくは、0.05~0.14wt.%であり、例えば、0.05wt.%、0.09wt.%、0.1wt.%、0.12wt.%又は0.14wt.%である。
【0018】
本発明において、前記Tiの含有量は、好ましくは、0.24wt.%以下であるが、且つ0wt.%ではなく、例えば、0.05wt.%、0.09wt.%、0.11wt.%、0.14wt.%又は0.15wt.%である。
【0019】
本発明において、前記「Al+Cu」の含有量は、好ましくは、0.44wt.%以下であるが、且つ0wt.%ではなく、より好ましくは、0.1~0.44wt.%であり、例えば、0.23wt.%、0.25wt.%、0.32wt.%、0.33wt.%、0.34wt.%、0.43wt.%、0.44wt.%又は0.45wt.%である。
【0020】
本発明において、前記Alの含有量は、好ましくは、0.08wt.%以下であるが、且つ0wt.%ではなく、例えば、0.02wt.%、0.03wt.%、0.04wt.%、0.05wt.%、0.06wt.%又は0.08wt.%である。
【0021】
本発明において、前記Cuの含有量は、好ましくは、0.2~0.46wt.%であり、例えば、0.2wt.%、0.3wt.%、0.39wt.%、0.4wt.%又は0.46wt.%である。
【0022】
本発明において、前記Bの含有量は、好ましくは、0.955~1.15wt.%であり、例えば、0.99wt.%である。
【0023】
本発明において、前記Bの原子百分率含有量と前記R-T-B磁石における前記Rの原子百分率含有量との比は、0.38以上であってもよく、例えば、0.4、0.41、0.42、0.43又は0.44であり、前記の原子百分率含有量は、各成分の全含有量に占める原子百分率を意味する。
【0024】
本発明において、前記Feの含有量は、好ましくは、67~69wt.%であり、例えば、67.53wt.%、67.58wt.%、67.63wt.%、67.68wt.%、67.74wt.%、68.02wt.%、68.03wt.%、68.04wt.%、68.16wt.%、68.31wt.%、68.38wt.%、68.49wt.%、68.57wt.%又は68.58wt.%である。
【0025】
本発明において、前記R-T-B磁石は、当分野における通常の添加元素、例えば、Coをさらに含んでもよい。
【0026】
ここで、前記Coの含有量は、好ましくは、1wt.%以下であり、例えば、0.8wt.%であり、wt.%は、各成分の質量が各成分総質量で占める百分率である。
【0027】
本発明において、当業者に知られているように、前記R-T-B磁石は、一般的に製造過程中に不可避的な不純物、例えば、C、O及びMnのうちの1つ又は複数をさらに導入することができる。
【0028】
本発明者らは、R-T-B磁石の配合を最適化することによって、上記の特定含有量のTi、Nb、Cuなどの元素間の組み合わせで得られたR-T-B磁石の保磁力、高温安定性および角型比などの磁気特性が著しく向上したことを発見した。さらに、上記の特定成分の組成は、R-T-B磁石を製造した後、二粒子粒界相における一部のFeがNb、Cu元素と集合してCu-Nb-Fe相を形成し、前記Cu-Nb-Fe相の存在によって、二粒子粒界相におけるFeの含有量が著しく低下し、Ndリッチ相の磁気遮断作用を増やし、本発明のR-T-B磁石を得ることを発見した。
【0029】
本発明において、前記R-T-B磁石は、好ましくは、Cu-Nb-Fe相をさらに含み、前記Cu-Nb-Fe相は、結晶粒間三角領域に位置する。前記結晶粒間三角領域は、当分野で一般的に理解されている意味であってもよく、一般的に、3つ以上の主相粒子間に形成される粒界相を意味する。前記粒界相は、一般的に二粒子粒界相と粒間三角領域とによって形成される領域の総称である。前記二粒子粒界相は、一般的に2つの主相粒子間の粒界相である。
【0030】
ここで、前記結晶粒間三角領域におけるCu-Nb-Fe相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積との比は、好ましくは、1.3~2%であり、例えば、1.3%、1.4%、1.5%又は1.6%である。本発明において、前記Cu-Nb-Fe相の面積と前記結晶粒間三角領域の総面積は、一般的に、FE-EPMA検出時に、検出された前記R-T-B磁石の断面にそれぞれ占める面積を意味する。
【0031】
ここで、二粒子粒界相中のFeの含有量と二粒子粒界相中の全元素の総含有量の比は、46wt.%以下、例えば、40wt.%、41wt.%、42wt.%、43wt.%、44wt.%、45wt.%または46wt.%であることが好ましい。前記二粒子粒界相における全ての元素は、例えば、Fe、希土類元素、Cu、Nbなどである。
【0032】
ここで、測定によると、前記Cu-Nb-Fe相におけるCu、Nb、Feの原子百分率含有量の比は、5:1:94に近いことがわかった。したがって、本発明では、前記Cu-Nb-Feは、CuNbFe94相であることが好ましい。
【0033】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.3wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.49wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%である。
【0034】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.8wt.%のCo、0.3wt.%のCu、0.03wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び67.68wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、46wt.%である。
【0035】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.5wt.%のCo、0.2wt.%のCu、0.05wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.05wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.16wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%である。
【0036】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.6wt.%のCo、0.4wt.%のCu、0.04wt.%のAl、0.14wt.%のNb、0.09wt.%のTi、0.99wt.%のB及び67.74wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.6%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、43wt.%である。
【0037】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.2wt.%のCu、0.03wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.58wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、43wt.%である。
【0038】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.39wt.%のCu、0.04wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.38wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、42wt.%である。
【0039】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.46wt.%のCu、0.04wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.31wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、46wt.%である。
【0040】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.3wt.%のCu、0.04wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.05wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.57wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、44wt.%である。
【0041】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.8wt.%のCo、0.3wt.%のCu、0.03wt.%のAl、0.1wt.%のNb、0.14wt.%のTi、0.99wt.%のB及び67.64wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、43wt.%である。
【0042】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.8wt.%のCo、0.3wt.%のCu、0.03wt.%のAl、0.12wt.%のNb、0.11wt.%のTi、0.99wt.%のB及び67.65wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%である。
【0043】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29.7wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.39wt.%のCu、0.04wt.%のAl、0.1wt.%のNb、0.14wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.04wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.6%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%である。
【0044】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、30.4wt.%のNd、0.4wt.%のTb、0.39wt.%のCu、0.05wt.%のAl、0.1wt.%のNb、0.14wt.%のTi、0.99wt.%のB及び67.53wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%である。
【0045】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29.9wt.%のNd、0.4wt.%のTb、0.39wt.%のCu、0.06wt.%のAl、0.1wt.%のNb、0.14wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.02wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、43wt.%である。
【0046】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、30.1wt.%のNd、0.2wt.%のTb、0.39wt.%のCu、0.05wt.%のAl、0.09wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.03wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、44wt.%である。
【0047】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.3wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.49wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、42wt.%である。
【0048】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.3wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.49wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%である。
【0049】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、30wt.%のNd、0.3wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.49wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.5%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、43wt.%である。
【0050】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、29wt.%のNd、1wt.%のTb、0.3wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.49wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%である。
【0051】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、28.2wt.%のNd、0.6wt.%のTb、1.2wt.%のDy、0.36wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.43wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.4%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、44wt.%である。
【0052】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、28.4wt.%のNd、0.6wt.%のTb、1wt.%のDy、0.5wt.%のCo、0.36wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び67.93wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.3%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、46wt.%である。
【0053】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、28.8wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.6wt.%のDy、0.36wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.43wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.3%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、46wt.%である。
【0054】
本発明の一つの好ましい実施例において、前記R-T-B磁石は、28.2wt.%のNd、0.7wt.%のTb、0.3wt.%のDy、0.8wt.%のCo、0.36wt.%のCu、0.02wt.%のAl、0.05wt.%のNb、0.15wt.%のTi、0.99wt.%のB及び68.43wt.%のFeを含み、wt.%は、各成分の含有量が各成分の総含有量で占める質量比であり、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域には、CuNbFe94相をさらに含み、前記CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積との比は、1.3%であり、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、46wt.%である。
【0055】
本発明は、上記R-T-B磁石の製造方法をさらに提供し、当該方法は、前記各成分の原料混合物を微粉砕した後、焼結処理するステップを含み、
前記微粉砕の後に得られた粉体の粒径は、3.9~4.4μmである。
【0056】
本発明において、前記微粉砕の後に得られた粉体の粒径は、例えば、3.9μm、4.0μm、4.1μm、4.2μm又は4.3μmである。
【0057】
本発明において、本発明者らは、前記R-T-B磁石を製造する過程において、前記微粉砕の後に得られた粉体の粒径が4.4μmより大きいか3.9μmより小さいと、前記R-T-B磁石の結晶粒間三角領域におけるCu-Nb-Fe相の面積割合が低下することを発見した。前記粉体の粒径は、一般的にはD50である。
【0058】
本発明において、前記微粉砕の工程は、当分野における通常の工程、例えばジェットミル粉砕を採用することができる。
【0059】
ここで、前記微粉砕時のガス雰囲気は、酸化ガス含有量が1000ppm以下であってもよく、前記酸化ガス含有量は、酸素又は水分の含有量を意味する。
【0060】
ここで、前記微粉砕時の圧力は、例えば0.68MPaである。
【0061】
ここで、前記微粉砕の後、一般的に例えばステアリン酸亜鉛などの潤滑剤をさらに添加する。
【0062】
ここで、前記潤滑剤の添加量は、前記微粉砕後に得られた粉体質量の0.05~0.15%であってもよく、例えば0.12%である。
【0063】
本発明において、前記焼結処理の温度は、本分野における通常の温度を採用することができ、好ましくは、1000~1100℃、例えば1080℃である。
【0064】
本発明において、前記焼結処理は、真空条件下で行われることが好ましく、例えば5×10-3Paの真空条件で行われる。
【0065】
本発明において、前記焼結処理の時間は、当分野における通常のものを採用することができ、4~8hであってもよく、例えば6hである。
【0066】
本発明において、当業者が分かるように、前記微粉砕の前に、一般的に、前記R-T-B磁石の各成分の原料混合物に対して溶解製錬、鋳造及び水素破砕を順に行うことをさらに含む。
【0067】
ここで、前記溶解製錬は、当分野における通常の溶解製錬工程を採用することができる。
【0068】
前記溶解製錬の真空度は、例えば5×10-2Paである。
【0069】
前記溶解製錬の温度は、例えば1550℃以下である。
【0070】
前記溶解製錬は、一般的に高周波真空誘導溶解炉で行われる。
【0071】
ここで、前記鋳造の工程は、当分野における通常のものを採用することができる。
【0072】
ここで、前記鋳造の工程は、例えば、急冷凝固鋳片法(Strip Casting)を採用する。
【0073】
ここで、前記鋳造の温度は、1390~1460℃であってもよく、例えば、1400、1420℃又は1430℃である。
【0074】
ここで、前記鋳造後に得られた合金鋳片の厚さは、0.25~0.40mmであってもよく、例えば0.29mmである。
【0075】
ここで、前記水素破砕の工程は、一般的に水素吸収、脱水素、冷却処理の順に行われるものであってもよい。
【0076】
前記水素吸収は、水素ガス圧力0.085MPaの条件下で行うことができる。
【0077】
前記脱水素は、真空引きしながら昇温する条件で行うことができる。前記脱水素の温度は、480~520℃であってもよく、例えば、500℃である。
【0078】
本発明において、前記微粉砕後、前記焼結処理前には、一般的に当該分野における通常の成形工程が含まれる。
【0079】
ここで、前記成形は、磁場成形法を採用してもよい。
【0080】
ここで、前記成形は、1.8T以上の磁場強度及び窒素雰囲気の保護下で行われ、例えば1.8~2.5Tの磁場強度で行う。
【0081】
本発明において、一般的に、前記焼結処理の後に当分野における通常の時効処理をさらに含む。
【0082】
ここで、一般的に、前記時効処理は、1段目時効処理及び2段目時効処理を含む。
【0083】
前記1段目時効処理の温度は、860~920℃であってもよく、例えば880℃又は900℃である。
【0084】
前記1段目時効処理の時間は、2.5~4hであってもよく、例えば3hである。
【0085】
前記2段目時効処理の温度は、460~530℃であってもよく、例えば490℃、500℃、510℃又は520℃である。
【0086】
前記2段目時効処理の時間は、2.5~4hであってもよく、例えば3hである。
【0087】
本発明において、前記R-T-B磁石が重希土類元素をさらに含む場合、前記時効処理の後に一般的に粒界拡散をさらに含む。
【0088】
ここで、前記粒界拡散は、当分野における通常の工程であってもよく、重希土類元素を粒界拡散することが一般的である。
【0089】
前記粒界拡散の温度は、800~900℃であってもよく、例えば850℃である。前記粒界拡散の時間は、5~10hであってもよく、例えば8hである。
【0090】
ここで、前記R-T-B磁石内の重希土類元素の添加方式は、当分野における通常のものを参照すればよく、一般的に、0~80%の重希土類元素を溶解製錬時に添加し且つ残部を溶解製錬時に添加する方式を採用し、例えば33%、38%、40%、57%又は67%である。溶解製錬時に添加される重希土類元素は、例えばTbである。
【0091】
例えば、前記R-T-B磁石内の重希土類元素がTbであり且つTbが0.5wt.%より大きい場合、40~67%のTbを溶解製錬時に添加し、残部を粒界拡散時に添加する。例えば、前記R-T-B磁石内の重希土類元素がTb及びDyである場合、前記Tbを溶解製錬時に添加し、前記Dyを粒界拡散時に添加する。例えば、前記R-T-B磁石内の重希土類元素がTbであり且つTbが0.5wt.%以下である場合、又は、前記R-T-B磁石内の重希土類元素がDyである場合、前記R-T-B磁石内の重希土類元素を粒界拡散時に添加する。
【0092】
本発明において、前記R-T-B磁石に0.08wt.%以下のAlが含まれた場合、各成分の原料混合物を調製する時に、Alを追加添加しないのが一般的である。当業者は、0.08wt.%以下のAlが一般的に製造過程で導入されることを知っている。
【0093】
本発明は、前記製造方法を採用して得られたR-T-B磁石をさらに提供する。
【0094】
本分野の周知常識に準拠したうえで、前記各好適な条件を任意に組み合わせることによって、本発明の各好適な実例が得られる。
【0095】
本発明で使用される試薬および原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0096】
本発明の積極的な進歩的効果は、以下の点にあり、即ち、本発明は、特定の含有量のTi、Nb、Cu等の元素の配合に従って、R-T-B磁石の成分をさらに最適化し、得られたR-T-B磁石の保磁力が著しく向上し、残留磁束密度、高安定性能及び角型比等の磁気特性も同時に高いレベルにある。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1図1は、実施例1におけるR-T-B磁石のSEMによるマップであり、ここで、図1の矢印aが示す位置は、結晶粒間三角領域における単点定量分析のCu-Nb-Fe相である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明は前記実施例の範囲に制限されるものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常の方法および条件に従って、または商品仕様書に応じて選択される。
実施例1
【0099】
下記表1に示す実施例1のR-T-B磁石の成分に従って原料を調製し、当該原料混合物(表1において、0.4wt.%のTbを溶解製錬時に添加し、残りの0.2wt.%を下記の粒界拡散時に添加する)に対して溶解製錬、鋳造、水素破砕、微粉砕、磁場成形、焼結、時効処理及び粒界拡散を順に行って得られた。
【0100】
ここで、溶解製錬は、真空度が5×10-2Paである高周波真空誘導溶解炉で行われ、溶解製錬の温度は、1530℃以下である。
【0101】
ストリップ鋳造方法を採用して鋳造を行い、厚さが0.29mmである合金鋳片を獲得する。鋳造の温度は、1420℃である。
【0102】
水素破砕は、水素吸収、脱水素、冷却処理の順に行われるものである。水素吸収は、0.085MPaの水素圧力の条件で行うことができる。脱水素は、真空引きしながら昇温する条件下で行われ、脱水素温度は、500℃である。
【0103】
微粉砕は、酸化ガス含有量が100ppm以下である雰囲気下でジェットミル粉砕を行い、得られた粉体の粒径は4.1μmであり、酸化ガスは、酸素又は水分含有量を意味する。ジェットミル粉砕の研磨室の圧力は、0.68MPaである。粉砕後に、潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を添加し、添加量は、混合後の粉末重量の0.12%である。
【0104】
磁場成形は、1.8~2.5Tの磁場強度と窒素雰囲気の保護下で行われた。
【0105】
焼結は、5×10-3Paの真空条件と1080℃下で6hの焼結を行い、そして、冷却し、気圧が0.05MPaに達するように冷却の前にArガスを導入することができる。
【0106】
時効処理:1段目時効の温度は900℃、時間は3hであり、2段目時効の温度は490℃、時間は3hである。
【0107】
粒界拡散:残りの重希土類元素(0.2wt.%のTb)を材料表面に付着して、850℃下で8hの粒界拡散を行う。
【0108】
2、実施例2~22及び比較例1~7におけるR-T-B磁石の原料及び粉体の粒径は、表1に示す通りであり、その他の製造工程は実施例1に従って行う。ここで、実施例1~11、15、16、18及び比較例1~7には、いずれも溶解製錬時に0.4wt%のTbを添加し、残りのTbは粒界拡散によりR-T-B磁石に入り込み、実施例12~14における重希土類元素は、粒界拡散時に添加され、実施例17は粒界拡散を含まなく。実施例19~22におけるTbは、溶解製錬時に添加され、Dyは、粒界拡散時に添加される。
効果実施例1
【0109】
1、成分測定:実施例1~22及び比較例1~7におけるR-T-B系永久磁石材料に対して、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)で測定した。試験結果は、表1に示す通りである。
【0110】
表1 R-T-B磁石の成分及び含有量(wt.%)
表1
【0111】
備考:/は、当該元素が検出されていないことを示す。上記の各実施例及び比較例のR-T-B磁石にはGa及びZrが検出されず、最終製品のR-T-B磁石は、製造中にC、O、Mnが不可避的に導入され、各実施例及び比較例に記載された含有量は、これらの不純物を含まない。また、0.08wt.%以下のAlは、製造過程で導入されたものであり、原料の形で特別に添加されるものではない。
【0112】
2、磁気特性試験
実施例1~22及び比較例1~7におけるR-T-B磁石は、PFMパルス式BH減磁曲線試験装置で試験されて、残留磁束密度(Br)、固有保磁力(Hcj)、最大エネルギー積(BHmax)及び角型比(Hk/Hcj)のデータを得ており、試験結果は、下記の表2に示す通りである。
【0113】
表2
【0114】
3、ミクロ構造の試験
FE-EPMAによる検出:実施例1~22及び比較例1~7におけるR-T-B磁石の垂直配向面を研磨し、電界放出電子プローブマイクロアナライザ(FE-EPMA,日本電子株式会社(JEOL),8530F)を採用して検出した。まず、FE-EPMA面走査によりR-T-B磁石内のCu、Nb、Fe等の元素の分布を決定し、次に、FE-EPMA単点定量分析によりCu-Nb-Fe相におけるCu、Nb、Fe等の元素の含有量を決定し、試験条件は、加速電圧15kv、プローブビーム電流50nAである。測定によると、実施例1~18におけるCu-Nb-Fe相のCu、Nb、Fe元素の原子比は5:1:94に近く、したがって、Cu-Nb-Fe相は、CuNbFe94相である。
【0115】
図1に示すように、図1は、実施例1におけるFE-EPMA検出によって得られたR-T-B磁石のSEMによるマップであり、図1の矢印aが示す位置は、結晶粒間三角領域における単点定量分析のCu-Nb-Fe相である。測定と計算により、本発明のR-T-B磁石の結晶粒間三角領域にCuNbFe94相を形成しており、且つCuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積の比は1.5%であり、CuNbFe94相の面積と結晶粒間三角領域の総面積は、FE-EPMA検出時に、検出されたR-T-B磁石の断面(前述した垂直配向面)に占める面積をそれぞれ意味する。また、FE-EPMA測定によって二粒子粒界相におけるFeの含有量を分析した結果、二粒子粒界相における全ての元素の総含有量に対する二粒子粒界相におけるFeの含有量の比は、45wt.%であることがわかった。
【0116】
実施例1~22及び比較例1~7におけるFE-EPMA検出結果は、下記表3に示す通りである。
【0117】
表3
【0118】
上記の実験データから分かるように、発明者らが設計した前記R-T-B磁石の成分は、磁石材料として製造された後、残留磁束密度、保磁力、高温安定性、磁気エネルギー積、角型比がいずれも高いレベルにあり、総合的な磁気特性に優れた磁石材料を得ることができ、高要求の分野への適用を満足することができる。ミクロ構造に対するさらなる解析により、発明者らは、前記特定成分のR-T-B磁石が磁石材料として製造された後、磁石の結晶粒間三角領域に特定面積割合のCuNbFe94相を形成し、当該物相の存在が二粒子粒界相中に分布するFe元素を集めており、ひいては二粒子粒界相中に分布するFeを減少させ、ネオジムリッチ相の磁気遮断作用を強め、さらに磁気特性を高めていることを発見した。
【0119】
R-T-B磁石の成分中のある元素の含有量が本発明の範囲外にあると、少量のCuNbFe94相だけを形成し、二粒子粒界相中のFeを顕著に低減することが困難である。例えば、比較例1ではCuの含有量が低すぎて、Cuは主相と粒界相の相界面のみに集まり、粒界相ではCuNbFe94相を形成できない。例えば、比較例4では、Al+Cuが0.5wt.%より大きくて、多すぎるCuが粒界相に入り、界面安定性を低下させ、CuNbFe94相の生成を減少する。例えば、比較例5ではNb+Tiが0.24wt.%より大きく、多すぎる高融点元素が粒界にピン留めして、Ndリッチ相の流動性に影響し、CuNbFe94相の含有量が低下することを招く。
図1