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特許7600416ネオジム鉄ホウ素磁石材料及びその製造方法並びに応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】ネオジム鉄ホウ素磁石材料及びその製造方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20241209BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20241209BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20241209BHJP
   C21D 6/00 20060101ALI20241209BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20241209BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20241209BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241209BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20241209BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20241209BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20241209BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20241209BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20241209BHJP
   B22D 11/06 20060101ALN20241209BHJP
【FI】
H01F1/057
H01F1/057 170
H01F1/057 130
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
C21D6/00 B
C21D9/00 S
B22F3/00 F
B22F1/00 Y
C22C33/02 K
B22F3/24 B
B22F9/04 D
B22F9/04 C
B22F9/04 E
B22F3/02 R
B22F3/10 E
B22D11/06 360
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023544213
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2022072255
(87)【国際公開番号】W WO2023005165
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】202110866231.0
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】福建省金龍稀土股分有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】牟維国
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
(72)【発明者】
【氏名】江政
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110021466(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111613408(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111613409(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/057
H01F 41/02
C22C 38/00
C21D 6/00
C21D 9/00
B22F 3/00
B22F 1/00
C22C 33/02
B22F 3/24
B22F 9/04
B22F 3/02
B22F 3/10
B22D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオジム鉄ホウ素磁石材料であって、下記の成分を含み、
R:28~33wt.%、前記Rは、希土類元素であり、
前記Rは、Ndを含み、前記Nd:27~31.5wt.%、
Al:0.30~1.3wt.%、
Cu:0.35~0.6wt.%、
0<Co≦0.74wt.%、
B:0.98~1.2wt.%、
Fe:62~69wt.%、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、
前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、Nbを含み、且つNbの質量含有量は、(Pr+Co)wt.%≦Nbwt.%+1wt.%の条件を満た
前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、Nb Co 物相を含み、前記Nb Co 物相におけるNbとCoの総モル量100%に対して、xは30~40%、yは60~70%であり、
前記Nb Co 物相は粒界相に位置し、前記Nb Co 物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、3~6%であり、前記Nb Co 物相の面積又は前記粒界相の総面積とは、それぞれ、検出された前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の垂直配向面に占める面積を意味する、
ことを特徴とするネオジム鉄ホウ素磁石材料。
【請求項2】
前記Rの含有量は、29~32.5wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、
及び/又は、前記Ndの含有量は、27.5~31wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、
及び/又は、前記Prの含有量は、0~0.3wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、
及び/又は、前記Prと前記Coの総含有量は、0.9wt.%以下であるが、且つ0ではなく、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、
及び/又は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、RHをさらに含み、前記RHは、重希土類元素であり、
ここで、前記RHの含有量は、0.5~3wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、
ここで、前記RHの種類は、Dy及び/又はTbであり、前記RHがDyを含む場合、前記Dyの含有量は、0.2~2.5wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、
前記RHがTbを含む場合、前記Tbの含有量は、0.5~2.5wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ホウ素磁石材料。
【請求項3】
前記Nbの含有量は、0.25~0.6wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、
及び/又は、前記Alの含有量は、0.45~1.2wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、
及び/又は、前記Cuの含有量は、0.35~0.45wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、
及び/又は、前記Coの含有量は、0.7wt.%以下であるが、且つ0wt.%ではなく、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、
及び/又は、前記Bの含有量は、0.98~1.05wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、
及び/又は、前記Feの含有量は、64~68wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ホウ素磁石材料。
【請求項4】
前記xは、32%、33%、34%、35%又は39%であり、前記yは、61%、62%、65%、66%、67%又は68%であり、
前記NbCo物相は粒界相に位置し、前記NbCo物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4~4.5%である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のネオジム鉄ホウ素磁石材料。
【請求項5】
前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、29.7wt.%のNd、1.7wt.%のDy、0.61wt.%のAl、0.4wt.%のCu、0.6wt.%のCo、0.25wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.75wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb35Co65物相を含み、前記Nb35Co65物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.5%であり、
又は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、29.8wt.%のNd、0.1wt.%のPr、1.4wt.%のDy、0.46wt.%のAl、0.38wt.%のCu、0.7wt.%のCo、0.25wt.%のNb、1wt.%のB及び65.91wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb35Co65物相を含み、前記Nb35Co65物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.4%であり、
又は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、30.2wt.%のNd、1.7wt.%のDy、0.61wt.%のAl、0.38wt.%のCu、0.6wt.%のCo、0.3wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.22wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb39Co61物相を含み、前記Nb39Co61物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.5%であり、
又は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、29.3wt.%のNd、0.3wt.%のPr、2.3wt.%のDy、0.61wt.%のAl、0.39wt.%のCu、0.5wt.%のCo、0.26wt.%のNb、1.01wt.%のB及び65.33wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb33Co67物相を含み、前記Nb33Co67物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.3%であり、
又は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、30.7wt.%のNd、0.1wt.%のPr、1.5wt.%のDy、1.15wt.%のAl、0.37wt.%のCu、0.6wt.%のCo、0.25wt.%のNb、0.99wt.%のB及び64.34wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb35Co65物相を含み、前記Nb35Co65物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.4%であり、
又は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、28.9wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.46wt.%のAl、0.36wt.%のCu、0.5wt.%のCo、0.26wt.%のNb、0.98wt.%のB及び67.94wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb39Co61物相を含み、前記Nb39Co61物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.5%であり、
又は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、28.3wt.%のNd、1.2wt.%のTb、0.45wt.%のAl、0.35wt.%のCu、0.5wt.%のCo、0.26wt.%のNb、0.99wt.%のB及び67.95wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb34Co66物相を含み、前記Nb34Co66物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.5%であり、
又は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料、27wt.%のNd、0.2wt.%のPr、2.5wt.%のTb、0.45wt.%のAl、0.36wt.%のCu、0.5wt.%のCo、0.26wt.%のNb、0.99wt.%のB及び67.74wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb35Co65物相を含み、前記Nb35Co65物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.4%であり、
又は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、27.5wt.%のNd、2wt.%のTb、0.45wt.%のAl、0.36wt.%のCu、0.6wt.%のCo、0.26wt.%のNb、0.99wt.%のB及び67.84wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb35Co65物相を含み、前記Nb35Co65物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.3%であり、
又は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、28.3wt.%のNd、0.1wt.%のPr、0.9wt.%のDy、0.7wt.%のAl、0.42wt.%のCu、0.7wt.%のCo、0.25wt.%のNb、0.99wt.%のB及び67.64wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb35Co65物相を含み、前記Nb35Co65物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.4%であり、
又は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、30.5wt.%のNd、1.5wt.%のDy、0.65wt.%のAl、0.45wt.%のCu、0.6wt.%のCo、0.25wt.%のNb、0.98wt.%のB及び65.07wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb32Co68物相を含み、前記Nb32Co68物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.3%であり、
又は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、29.7wt.%のNd、1.7wt.%のDy、0.61wt.%のAl、0.4wt.%のCu、0.5wt.%のCo、0.25wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.85wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb33Co67物相を含み、前記Nb33Co67物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.3%であり、
又は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、29.1wt.%のNd、1.5wt.%Tb、0.46wt.%のAl、0.37wt.%のCu、0.25wt.%のCo、0.35wt.%のNb、0.99wt.%のB及び66.98wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb39Co61物相を含み、前記Nb39Co61物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.2%であり、
又は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、29.5wt.%のNd、0.2wt.%のDy、0.8wt.%のTb、0.46wt.%のAl、0.37wt.%のCu、0.25wt.%のCo、0.55wt.%のNb、1.04wt.%のB及び66.83wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb40Co60物相を含み、前記Nb40Co60物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.1%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ホウ素磁石材料。
【請求項6】
ネオジム鉄ホウ素磁石材料の製造方法であって、
請求項1~3及び5のいずれか一項に記載のネオジム鉄ホウ素磁石材料の成分に従って、各成分の原料を調製し、その後に各成分の原料の混合物を溶解製錬、鋳造、粉砕、成形、焼結及び時効処理を順に行うステップを含み、
前記時効処理は、3段時効処理を含み、ここで、1段目時効処理の温度は、850~950℃であり、2段目時効処理の温度は、650~700℃であり、3段目時効処理の温度は、450~550℃である、
ことを特徴とするネオジム鉄ホウ素磁石材料の製造方法。
【請求項7】
前記1段目時効処理の温度は、870~890℃であり、
及び/又は、前記1段目時効処理の時間は、2~4hであり、
及び/又は、前記2段目時効処理の温度は、660~690℃であり、
及び/又は、前記2段目時効処理の時間は、1~4hであり、
及び/又は、前記3段目時効処理の温度は、480~500℃であり、
及び/又は、前記3段目時効処理の時間は、1~4hであり、
及び/又は、前記3段目時効処理を行った後に、粒界拡散処理をさらに行い、
ここで、前記粒界拡散処理の温度は、850~1000℃であり、
ここで、前記粒界拡散処理の時間は、10~30hであり、
ここで、前記粒界拡散処理の拡散源は、Dy金属粉末及び/又はDyを含有する合金であり、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に対する前記拡散源の質量百分率は、0.3~0.5wt.%である
ことを特徴とする請求項6に記載のネオジム鉄ホウ素磁石材料の製造方法。
【請求項8】
前記溶解製錬の真空度は、5×10-2Paであり、
及び/又は、前記溶解製錬の温度は、1550℃以下であり、
及び/又は、前記鋳造は、急速凝固鋳造法を採用し、
及び/又は、前記鋳造の温度は、1390~1460℃であり、
及び/又は、前記鋳造後に得られた合金鋳片の厚さは、0.25~0.40mmであり、
及び/又は、前記粉砕は、水素破砕とジェットミル粉砕の順に行い、
ここで、前記水素破砕の工程は、水素吸収、脱水素及び冷却処理を順に行い、前記水素吸収の水素圧力は、0.085MPaであり、前記脱水素の温度は、480~520℃であり、
ここで、前記ジェットミル粉砕時のガス雰囲気は、酸化ガスの含有量が100ppm以下であり、前記ガスの含有量とは、酸素及び/又は水分の含有量を意味し、
ここで、前記ジェットミル粉砕後に、潤滑剤をさらに添加し、前記潤滑剤は、ステアリン酸亜鉛であり、前記潤滑剤の添加量は、前記ジェットミル粉砕後に得られた粉体質量の0.05~0.15%であり、
及び/又は、前記成形は、磁場成形であり、前記磁場成形における磁場強度は、1.8~2.5Tであり、
及び/又は、前記焼結の温度は、1000~1100℃であり、
及び/又は、前記焼結の時間は、4~8hである
ことを特徴とする請求項に記載のネオジム鉄ホウ素磁石材料の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載のネオジム鉄ホウ素磁石材料の製造方法により製造されたネオジム鉄ホウ素磁石材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネオジム鉄ホウ素磁石材料及びその製造方法並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石材料は、電子デバイスを支持する重要な材料として開発される。R-T-B系永久磁石材料は、永久磁石の中でも最も高い性能を有する磁石として知られており、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ、電気自動車用モータ、産業機器用モータ等に用いられている。
【0003】
R-T-B系永久磁石材料の総合的な特性を向上させる方法については、現在、本分野において検討されている方向である。例えば、中国特許文献CN110993233Aには、R-T-B系永久磁石材料を開示し、当該永久磁石材料は、X(Al\Cu\Ga)の含有量を高め、希土類の含有量を調整してFeとBの割合を変化させることにより、従来の含有量のBでも6:13:1相を生成でき、それにより磁性特性に優れた磁石材料が得られる。
【0004】
さらに例えば、中国特許文献CN111180159Aにもネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を開示し、当該特許内の具体的な実施例では、29wt.%のNd、0.1wt.%のTb、0.4wt.%のDy、0.4wt.%のCu、0.5wt.%のAl、0.9wt.%のCo、1wt.%のB、0.25wt.%のNb及び67.45wt.%のFeの成分及び構造を有する磁石材料が開示され、粒間希土類リッチ相には、さらに、特定質量比の相Tb0.4Dy2.5-Al0.59-Nd89.6-Cu1.4-Co5.1が生成される。
【0005】
上記の成分は、いずれも高Cu高Alの磁石材料に基づく改良であり、これは、主にCu元素の添加によりネオジム鉄ホウ素磁石の保磁力が効果的に向上するためであるが、Cuが多すぎると(例えば、0.35wt.%以上)、粒界での富化により、磁石焼結後に微小クラックが形成され、それにより、磁石の緻密性及び強度が低下するためであり、従来技術では、一般的に、Alを添加する方式(例えば、中国特許文献CN110993234A)で上記の欠陥を解決する。しかしながら、これらの磁石材料の保磁力と残留磁束密度は、永久磁石材料の理論値と依然として一定の差がある。
【0006】
磁石材料の成分をさらに最適化し、保磁力と残留磁束密度の総合的な特性がより高いネオジム鉄ホウ素磁石材料を得ることは早急に解決すべき技術的課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、主に従来技術に存在するAl及びCu含有するネオジム鉄ホウ素磁石材料の磁気特性が低い欠陥を克服するために、ネオジム鉄ホウ素磁石材料及びその製造方法並びに応用を提供する。本発明は、ネオジム鉄ホウ素磁石材料の成分をさらに最適化し、製造されたネオジム鉄ホウ素磁石材料の保磁力を著しく向上し、同時に高い残留磁束密度と角型比を維持する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、主に、以下の技術考案を通じて上記の技術的問題を解決する。
【0009】
本発明には、ネオジム鉄ホウ素磁石材料が提供され、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、下記の成分を含み、
R:28~33wt.%、前記Rは、希土類元素であり、
前記Rは、Ndを含み、前記Nd:27~31.5wt.%、
Al:0.30~1.3wt.%、
Cu:0.35~0.6wt.%、
0<Co≦0.74wt.%、
B:0.98~1.2wt.%、
Fe:62~69wt.%、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、
前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、Nbを含み、且つNbの質量含有量は、(Pr+Co)wt.%≦(1+Nb)wt.%の条件を満たす。
【0010】
本発明において、前記Rの含有量は、好ましくは29~32.5wt.%であり、例えば、29.3wt.%、29.5wt.%、29.7wt.%、30.5wt.%、30.6wt.%、31.3wt.%、31.4wt.%、31.9wt.%、32wt.%又は32.3wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する。
【0011】
本発明において、前記Ndの含有量は、好ましくは27.5~31wt.%であり、例えば、28.3wt.%、28.9wt.%、29.1wt.%、29.3wt.%、29.5wt.%、29.7wt.%、29.8wt.%、30.2wt.%、30.5wt.%又は30.7wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する。
【0012】
本発明において、前記Prの含有量は、好ましくは0~0.3wt.%であり、例えば、0.1wt.%又は0.2wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する。
【0013】
本発明において、当業者が分かるように、前記(Pr+Co)wt.%≦(1+Nb)wt.%とは、一般的に、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料におけるPrの質量百分率と前記Coの質量百分率との合計が、Nbの質量百分率と1wt.%との合計以下であることを意味する。
【0014】
本発明において、前記Prと前記Coの総含有量は、好ましくは0.9wt.%以下であるが、且つ0wt.%ではなく、例えば、0.25wt.%、0.5wt.%、0.6wt.%、0.7wt.%又は0.8wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する。
【0015】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、好ましくはRHをさらに含み、前記RHは重希土類元素である。
【0016】
ここで、前記RHの含有量を本分野の通常のものとすることができ、好ましくは0.5~3wt.%であり、例えば、0.6wt.%、0.9wt.%、1wt.%、1.2wt.%、1.4wt.%、1.5wt.%、1.7wt.%、2wt.%、2.3wt.%又は2.5wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する。
【0017】
ここで、前記RHの種類を本分野の通常のものとすることができ、好ましくはDy及び/又はTbである。
【0018】
前記RHがDyを含む場合、前記Dyの含有量は、好ましくは0.2~2.5wt.%であり、例えば、0.9wt.%、1.4wt.%、1.5wt.%、1.7wt.%又は2.3wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する。
【0019】
前記RHがTbを含む場合、前記Tbの含有量は、好ましくは0.5~2.5wt.%であり、例えば、0.6wt.%、1.2wt.%又は2wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する。
【0020】
本発明において、前記Nbの含有量は、好ましくは0.25~0.6wt.%であり、例えば、0.26wt.%、0.3wt.%、0.35wt.%又は0.55wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する。
【0021】
本発明において、前記Alの含有量は、好ましくは0.45~1.2wt.%であり、例えば、0.46wt.%、0.61wt.%、0.65wt.%、0.7wt.%又は1.15wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する。
【0022】
本発明において、前記Cuの含有量は、好ましくは0.35~0.45wt.%であり、例えば、0.36wt.%、0.37wt.%、0.38wt.%、0.39wt.%、0.4wt.%又は0.42wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する。
【0023】
本発明において、前記Coの含有量は、好ましくは0.7wt.%以下であるが、且つ0wt.%ではなく、例えば、0.2wt.%、0.25wt.%、0.5wt.%又は0.6wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する。
【0024】
本発明において、前記Bの含有量は、好ましくは0.98~1.05wt.%であり、例えば、0.99wt.%、1wt.%、1.01wt.%又は1.02wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する。
【0025】
本発明において、前記Feの含有量は、好ましくは64~68wt.%であり、例えば、64.34wt.%、65.07wt.%、65.22wt.%、65.33wt.%、65.75wt.%、65.85wt.%、65.91wt.%、66.31wt.%、66.83wt.%、66.98wt.%、67.64wt.%、67.74wt.%、67.84wt.%、67.94wt.%又は67.95wt.%であり、wt.%とは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味する。
【0026】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、好ましくはNbxCoy物相を含み、前記NbxCoy物相におけるNbとCoの総モル量100%に対して、xは30~40%であり、yは60~70%であり、前記NbxCoy物相は粒界相に位置し、前記NbxCoy物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、3~6%である。ここで、前記NbxCoy物相におけるx又はyがそれぞれ、Nb又はCoのモル量と「NbとCo」の総モル量の百分率を意味する。
【0027】
本発明において、前記NbxCoy物相の面積又は前記粒界相の総面積とは、一般的に、FE-EPMA検出時に、検出された前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の垂直配向面に占める面積を意味する。
【0028】
ここで、前記xは、例えば、32%、33%、34%、35%又は39%である。
【0029】
ここで、前記yは、例えば、61%、62%、65%、66%、67%又は68%である。
【0030】
本発明において、前記NbxCoy物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、好ましくは4~4.5%であり、例えば、4.1%、4.2%、4.3%又は4.4%である。
【0031】
発明者は、特定の含有量の前記NbxCoy物相が粒界相に存在して、粒界をピン留めすることができ、結晶粒の成長をより顕著に阻止し、それにより、ネオジム鉄ホウ素磁石の保磁力を向上させる可能性があると推定した。
【0032】
本発明において、上記の粒界相は、本分野で通常理解されている意味であり得、一般的に二粒子粒界相と粒間三角領域とによって形成される領域の総称である。前記二粒子粒界相は、一般的に2つの主相粒子間の粒界相である。
【0033】
本発明の1つの好適な実施例において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、29.7wt.%のNd、1.7wt.%のDy、0.61wt.%のAl、0.4wt.%のCu、0.6wt.%のCo、0.25wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.75wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb35Co65物相を含み、前記Nb35Co65物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.5%である。
【0034】
本発明の1つの好適な実施例において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、29.8wt.%のNd、0.1wt.%のPr、1.4wt.%のDy、0.46wt.%のAl、0.38wt.%のCu、0.7wt.%のCo、0.25wt.%のNb、1wt.%のB及び65.91wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb35Co65物相を含み、前記Nb35Co65物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.4%である。
【0035】
本発明の1つの好適な実施例において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、30.2wt.%のNd、1.7wt.%のDy、0.61wt.%のAl、0.38wt.%のCu、0.6wt.%のCo、0.3wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.22wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb39Co61物相を含み、前記Nb39Co61物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.5%である。
【0036】
本発明の1つの好適な実施例において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、29.3wt.%のNd、0.3wt.%のPr、2.3wt.%のDy、0.61wt.%のAl、0.39wt.%のCu、0.5wt.%のCo、0.26wt.%のNb、1.01wt.%のB及び65.33wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb33Co67物相を含み、前記Nb33Co67物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.3%である。
【0037】
本発明の1つの好適な実施例において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、30.7wt.%のNd、0.1wt.%のPr、1.5wt.%のDy、1.15wt.%のAl、0.37wt.%のCu、0.6wt.%のCo、0.25wt.%のNb、0.99wt.%のB及び64.34wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb35Co65物相を含み、前記Nb35Co65物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.4%である。
【0038】
本発明の1つの好適な実施例において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、28.9wt.%のNd、0.6wt.%のTb、0.46wt.%のAl、0.36wt.%のCu、0.5wt.%のCo、0.26wt.%のNb、0.98wt.%のB及び67.94wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb39Co61物相を含み、前記Nb39Co61物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.5%である。
【0039】
本発明の1つの好適な実施例において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、28.3wt.%のNd、1.2wt.%のTb、0.45wt.%のAl、0.35wt.%のCu、0.5wt.%のCo、0.26wt.%のNb、0.99wt.%のB及び67.95wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb34Co66物相を含み、前記Nb34Co66物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.5%である。
【0040】
本発明の1つの好適な実施例において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、27wt.%のNd、0.2wt.%のPr、2.5wt.%のTb、0.45wt.%のAl、0.36wt.%のCu、0.5wt.%のCo、0.26wt.%のNb、0.99wt.%のB及び67.74wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb35Co65物相を含み、前記Nb35Co65物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.4%である。
【0041】
本発明の1つの好適な実施例において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、27.5wt.%のNd、2wt.%のTb、0.45wt.%のAl、0.36wt.%のCu、0.6wt.%のCo、0.26wt.%のNb、0.99wt.%のB及び67.84wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb35Co65物相を含み、前記Nb35Co65物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.3%である。
【0042】
本発明の1つの好適な実施例において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、28.3wt.%のNd、0.1wt.%のPr、0.9wt.%のDy、0.7wt.%のAl、0.42wt.%のCu、0.7wt.%のCo、0.25wt.%のNb、0.99wt.%のB及び67.64wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb35Co65物相を含み、前記Nb35Co65物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.4%である。
【0043】
本発明の1つの好適な実施例において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、30.5wt.%のNd、1.5wt.%のDy、0.65wt.%のAl、0.45wt.%のCu、0.6wt.%のCo、0.25wt.%のNb、0.98wt.%のB及び65.07wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb32Co68物相を含み、前記Nb32Co68物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.3%である。
【0044】
本発明の1つの好適な実施例において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、29.7wt.%のNd、1.7wt.%のDy、0.61wt.%のAl、0.4wt.%のCu、0.5wt.%のCo、0.25wt.%のNb、0.99wt.%のB及び65.85wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb33Co67物相を含み、前記Nb33Co67物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.3%である。
【0045】
本発明の1つの好適な実施例において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、29.1wt.%のNd、1.5wt.%Tb、0.46wt.%のAl、0.37wt.%のCu、0.25wt.%のCo、0.35wt.%のNb、0.99wt.%のB及び66.98wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb39Co61物相を含み、前記Nb39Co61物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.2%である。
【0046】
本発明の1つの好適な実施例において、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、29.5wt.%のNd、0.2wt.%のDy、0.8wt.%のTb、0.46wt.%のAl、0.37wt.%のCu、0.25wt.%のCo、0.55wt.%のNb、1.04wt.%のB及び66.83wt.%のFeの成分からなり、wt.%とは、各成分の質量が前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率を意味し、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相には、Nb40Co60物相を含み、前記Nb40Co60物相の面積と前記粒界相の総面積との比は、4.1%である。
【0047】
本発明には、ネオジム鉄ホウ素磁石材料の製造方法がさらに提供され、前記方法は、前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の成分に従って、各成分の原料を調製し、その後に各成分の原料の混合物を溶解製錬、鋳造、粉砕、成形、焼結及び時効処理を順に行うステップを含み、
【0048】
前記時効処理は、3段時効処理を含み、ここで、1段目時効処理の温度は、850~950℃であり、2段目時効処理の温度は、650~700℃であり、3段目時効処理の温度は、450~550℃である。
【0049】
本発明において、前記1段目時効処理の温度は、好ましくは870~890℃であり、例えば、880℃である。
【0050】
本発明において、前記1段目時効処理の時間は、2~4hとすることができ、例えば、3hである。
【0051】
本発明において、前記2段目時効処理の温度は、好ましくは660~690℃であり、例えば、670℃又は680℃である。
【0052】
本発明において、前記2段目時効処理の時間は、好ましくは1~4hであり、例えば、2hである。
【0053】
本発明において、前記3段目時効処理の温度は、好ましくは480~500℃であり、例えば、490℃である。
【0054】
本発明において、前記3段目時効処理の時間は、好ましくは1~4hであり、例えば、3hである。
【0055】
本発明において、前記3段目時効処理後に、粒界拡散処理をさらに行うことができる。
【0056】
ここで、前記粒界拡散処理の温度は、好ましくは850~1000℃であり、例えば、900℃、910℃又は920℃である。
【0057】
ここで、前記粒界拡散処理の時間は、好ましくは10~30hであり、例えば、20hである。
【0058】
ここで、前記粒界拡散処理の拡散源は、好ましくはDy金属粉末及び/又はDyを含有する合金である。
【0059】
前記ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に対する前記拡散源の質量百分率は、好ましくは0.3~0.5wt.%であり、例えば、0.4wt.%である。
【0060】
本発明において、前記溶解製錬の工程は、本分野における通常の溶解製錬の工程であることができる。
【0061】
ここで、前記溶解製錬の真空度は、例えば、5×10-2Paである。
【0062】
ここで、前記溶解製錬の温度は、例えば、1550℃以下であり、例えば、1540℃である。
【0063】
本発明において、前記鋳造の工程は、本分野における通常の鋳造の工程であることができる。
【0064】
ここで、前記鋳造の工程は、例えば、急冷凝固鋳片法(StripCasting)を採用する。
【0065】
ここで、前記鋳造の温度は、1390~1460℃であってもよく、例えば、1410℃である。
【0066】
ここで、前記鋳造後に得られた合金鋳片の厚さは、0.25~0.40mmであってもよい。
【0067】
本発明において、前記粉砕の工程は、本分野における通常の粉砕の工程であることができる。
【0068】
ここで、前記粉砕は、一般的に、水素破砕とジェットミル粉砕の順に行う。
【0069】
前記水素破砕の工程は、一般的に、水素吸収、脱水素及び冷却処理を順に行う工程である。
【0070】
前記水素吸収は、0.085MPaの水素圧力条件で行うことができる。
【0071】
前記脱水素は、真空引きしながら昇温する条件で行うことができる。前記脱水素の温度は、480~520℃であってもよく、例えば、500℃である。
【0072】
前記ジェットミル粉砕時のガス雰囲気は、酸化ガスの含有量が100ppm以下とすることができ、前記酸化ガスの含有量とは、酸素及び/又は水分の含有量を意味する。
【0073】
前記ジェットミル粉砕後に、一般的に、ステアリン酸亜鉛等の潤滑剤をさらに添加する。前記潤滑剤の添加量は、前記ジェットミル粉砕後に得られた粉体質量の0.05~0.15%であってもよく、例えば、0.12%である。
【0074】
本発明において、前記成形は、磁場成形法を採用してもよい。
【0075】
ここで、前記磁場成形は、例えば、1.8~2.5Tの磁場強度で行うことができる。
【0076】
本発明において、前記焼結の工程は、本分野における通常の焼結の工程であることができる。
【0077】
ここで、前記焼結の温度は、1000~1100℃であってもよく、例えば、1080℃である。
【0078】
ここで、前記焼結の時間は、4~8hであってもよく、例えば、6hである。
【0079】
本発明は、ネオジム鉄ホウ素磁石材料をさらに提供し、当該ネオジム鉄ホウ素磁石材料は、上記の製造方法によって製造される。
【0080】
本発明は前記のネオジム鉄ホウ素磁石材料が、電子部品としての応用をさらに提供する。
【0081】
本分野の周知常識に準拠した上で、上記の各々好適な条件を任意に組み合わせることによって、本発明の各々好適な実施例を得ることができる。
【0082】
本発明で使用される試薬および原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0083】
本発明の積極的な進歩的効果は、本発明には、Al及びCu含有するネオジム鉄ホウ素磁石材料の上で、Co、Al、Cu、Pr及びNb等元素の含有量をさらに最適化して、得られたネオジム鉄ホウ素磁石材料の保磁力は、顕著に向上し、同時に残留磁束密度及び角型比も高いレベルを維持するという点にある。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下、実施例の態様により本発明をさらに説明するが、本発明を上記の実施例の範囲に制限されるものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常の方法および条件に従って、または商品仕様書に応じて選択される。
実施例1
【0085】
ネオジム鉄ホウ素磁石材料の製造:
(1) 溶解製錬:表1のネオジム鉄ホウ素磁石材料の成分に従って調製された原料を真空度が5×10-2Paである高周波真空誘導溶解炉に入れ、1540℃で溶融液を溶解製錬した。
(2) 鋳造:急速凝固鋳造法を採用して、合金鋳片(厚さ0.29mm)を得、鋳造の温度は、1410℃である。
(3) 粉砕:水素破砕とジェットミル粉砕の順に行う。
【0086】
水素破砕は、水素吸収、脱水素、冷却処理を行う処理である。水素吸収は、0.085MPaの水素圧力条件で行う。脱水素は、真空引きしながら昇温する条件で行い、脱水素温度は、500℃である。
【0087】
ジェットミル粉砕は、酸化ガス含有量100ppm以下で行い、粉砕して得られた粒径は、4.2μmであり、酸化ガスは、酸素又は水分含有量を意味する。ジェットミル粉砕の研磨室圧力は、0.68MPaである。粉砕後に、潤滑剤であるステアリン酸亜鉛を入れ、添加量は、混合後の粉末重量の0.12%である。
【0088】
(4)磁場成形:1.8~2.5Tの磁場強度と窒素雰囲気の保護下で行う。
【0089】
(5)焼結:5×10-3Pa真空条件で焼結、冷却を行う。1080℃で6h焼結し、冷却前に、Arガスを通して空気圧を0.05MPaに達するようにする。
【0090】
(6)3段時効:1段目時効の温度は880℃、時間は3hであり、2段目時効の温度は680℃、時間は2hであり、3段目時効の温度は490℃、時間は3hである。
【0091】
(7)粒界拡散処理:粒界拡散処理により、3段時効処理後に得られた磁石材料にDy金属粉末(添加されたDyの含有量は0.4wt.%であり、wt.%とは、ネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率であるが、表1に記載の1.3wt.%の残りのDyの含有量は、溶解製錬時に添加する)を拡散し、粒界拡散処理の温度は910℃、時間は20hである。
【0092】
実施例1~5及び10~12、比較例1~6は、下記表1の成分で原料を調製し、2段目時効の温度は表1に示す通りであり、他の製造工程は、実施例1と同様である。ここで、粒界拡散時に添加されたDyの含有量は、いずれも0.4wt.%であり、表1の残りのDyは、溶解製錬時に添加する。
【0093】
実施例6~9、13及び14は、下記表1の成分で原料を調製し、製造工程は、3段目時効処理後に粒界拡散処理を行わず、2段目時効処理の温度は下記表1に示す通りであり、他の製造工程は、実施例1と同様である。
効果実施例1
【0094】
1、 成分測定:実施例1~14及び比較例1~6におけるネオジム鉄ホウ素磁石に対して、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)を用いて測定した。検出の結果は、以下の表1に示されている。
【0095】


(表1)(単位:wt.%、各元素がネオジム鉄ホウ素磁石材料の総質量に占める百分率)

【0096】
備考:「/」とは、当該元素が未添加且つ検出されていないことを示す。「Y」は肯定的なものを意味し、「N」は否定的なものを意味する。前記実施例と比較例におけるネオジム鉄ホウ素磁石材料のFeの含有量の数値は、100%から各元素の含有量を差し引いたものであり、Feの含有量には、製造過程に導入された不可避的いくつかの不純物が含まれていることを当業者に知られている。
【0097】
2、磁気特性試験
実施例1~14及び比較例1~6におけるネオジム鉄ホウ素磁石材料は、PFMパルス式BH減磁曲線試験設備を用いて測定し、測定温度は20℃であり、残留磁束密度(Br)、固有保磁力(Hcj)、最大エネルギー積(BHmax)、角型比(Hk/Hcj)のデータを得て、検出の結果は、以下の表2に示されている。
【0098】
3、ミクロ構造の特徴
FE-EPMAによる検出:実施例1~14及び比較例1~6におけるネオジム鉄ホウ素磁石材料の垂直配向面を研磨し、電界放出電子プローブマイクロアナライザー(FE-EPMA)(日本電子株式会社(JEOL)、8530F)を採用して検出した。まず、FE-EPMA面走査によりネオジム鉄ホウ素磁石材料の粒界相におけるNb、Co元素の分布を特定し、その後、FE-EPMA単一点(シングルポイント)定量分析により、NbxCoy物相におけるNbとCoのモル含有量を特定し、測定条件は、加速電圧15kv、プローブビーム電流50nAである。検出の結果は、以下の表2に示されている。
【0099】
ここで、NbxCoy物相の面積の占める割合は、ネオジム鉄ホウ素磁石材料を検出する断面(前述の垂直配向面)におけるNbxCoy物相の面積と、当該断面における粒界相の総面積との比である。
【0100】
【表2】
【0101】
備考:表中のNbxCoy物相の下付き数字は、%を省略した。
【0102】
上記の表のデータから明らかなように、本発明は、特定の含有量のCo、Al、Cu、Pr、Nb等の元素の配合に従って、製造工程において特定の3段時効処理を採用することにより、製造されたネオジム鉄ホウ素磁石材料の保磁力は、従来技術に比べて顕著に向上し、同時に残留磁束密度と角型比を高いレベルに維持した。さらに、ミクロ検出結果から、本発明の最適化後のネオジム鉄ホウ素磁石材料の成分が、ネオジム鉄ホウ素磁石材料に製造された後に、粒界相には特定の含有量のNbxCoy物相を形成し、粒界相を最適化でき、保磁力を向上させるためであると考えられる。