(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気装置
(51)【国際特許分類】
F02B 27/02 20060101AFI20241209BHJP
F02B 31/04 20060101ALI20241209BHJP
F02B 31/08 20060101ALI20241209BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
F02B27/02 F
F02B31/04 500A
F02B31/08 522C
F02M35/10 301P
(21)【出願番号】P 2023550876
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2021036013
(87)【国際公開番号】W WO2023053308
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】香取 直道
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-338253(JP,A)
【文献】特開平11-166417(JP,A)
【文献】特開平11-218029(JP,A)
【文献】特開2003-262165(JP,A)
【文献】特開2017-89527(JP,A)
【文献】特許第6714764(JP,B2)
【文献】欧州特許出願公開第0439848(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 27/02
F02B 31/04
F02B 31/08
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室(36)に吸気を導入する吸気通路(80)と、内部が前記吸気通路(80)の一部となる吸気通路管(6)と、前記吸気通路管(6)に吸気空気を導入するスロットルボディ(7)と、前記吸気通路(80)の開度を制御するために前記スロットルボディ(7)の内部に設けられるスロットル弁(75)と、を有する内燃機関(E)の吸気装置において、
前記吸気通路管(6)は、スロットルボディ(7)の下流側に配置され、前記吸気通路(80)を吸気空気の流入方向である長手方向に沿ってタンブル流路(80A)と主流路(80B)とに分割する隔壁(81)を備え、
前記吸気通路(80)に、連通管(101)を介して連通するレゾネータ(100)を有し、
前記吸気通路管(6)は、前記スロットル弁(75)の下流側に位置して、前記タンブル流路(80A)と前記主流路(80B)との吸気流量割合を制御する吸気制御弁(65)と、前記連通管(101)に開口する連通孔(102)とを有し、
前記連通管(101)は、前記吸気通路管(6)内を開閉する空気量調整弁(110)を備え、
前記吸気制御弁(65)と前記空気量調整弁(110)とは、同一の回動軸としての軸部材(120)上に設けられていることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
燃焼室(36)に吸気を導入する吸気通路(80)と、内部が前記吸気通路(80)の一部となる吸気通路管(6)と、前記吸気通路管(6)に吸気空気を導入するスロットルボディ(7)と、前記吸気通路(80)の開度を制御するために前記スロットルボディ(7)の内部に設けられるスロットル弁(75)と、を有する内燃機関(E)の吸気装置において、
前記吸気通路管(6)は、スロットルボディ(7)の下流側に配置され、前記吸気通路(80)を吸気空気の流入方向である長手方向に沿ってタンブル流路(80A)と主流路(80B)とに分割する隔壁(81)を備え、
前記吸気通路(80)に、連通管(101)を介して連通するレゾネータ(100)を有し、
前記吸気通路管(6)は、前記スロットル弁(75)の下流側に位置して、前記タンブル流路(80A)と前記主流路(80B)との吸気流量割合を制御する吸気制御弁(65)と、前記連通管(101)に開口する連通孔(102)とを有し、
前記連通管(101)は、前記吸気通路管(6)内を開閉する空気量調整弁(110)を備え、
前記連通孔(102)は前記スロットルボディ(7)の下流端(7a)と前記隔壁(81)の上流端(81a)との間に位置することを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項6】
前記吸気通路(80)の内部に向かって燃料を噴射する燃料噴射弁(87)を備え、
前記吸気通路管(6)の内壁(6c)に、吸気流れ方向の上流側から下流側に向かった切欠部(103)が設けられ、前記連通孔(102)は、前記切欠部(103)と重なる位置に設けられたことを特徴とする請求項1、請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の内燃機関の吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気通路が主流路とタンブル流路とに仕切られ、吸気通路に連通吸うレゾネータが設けられた内燃機関の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気通路を仕切部により主流路とタンブル流路に仕切り、タンブル流を発生させる構造が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に示されるような内燃機関の吸気装置では、吸気通路に連通するレゾネータを備えておらず、吸気ポート内に溜まっている吸気量が少なく、内燃機関は低負荷領域での稼働時ではスロットル弁が絞られた開口部が小さい状態となっている。そのため、吸気弁が開いてから閉じるまでの吸気行程において、ピストンの下降に伴って吸気ポート側の体積が増加するが、その体積増加に対してスロットル弁の開口部からの空気量の流入が間に合わず、吸気ポート内は急激に負圧の状態となって吸気通路内の流動が弱くなってしまい、タンブル流の流動が低下するといった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、内燃機関の低負荷領域におけるスロットル弁が絞られた状態においても、吸気通路内の流動の低下を低減させてタンブル流の流動を強化し、燃焼効率を向上させ、またレゾネータからタンブル通路への空気の流入を切り替えることにより、さらに燃燃焼効率を向上させることのできる内燃機関の吸気装置を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、燃焼室に吸気を導入する吸気通路と、内部が前記吸気通路の一部となる吸気通路管と、前記吸気通路管に吸気空気を導入するスロットルボディと、前記吸気通路の開度を制御するために前記スロットルボディの内部に設けられるスロットル弁と、を有する内燃機関の吸気装置において、
前記吸気通路管は、スロットルボディの下流側に配置され、前記吸気通路を吸気空気の流入方向である長手方向に沿ってタンブル流路と主流路とに分割する隔壁を備え、
前記吸気通路に、連通管を介して連通するレゾネータを有し、
前記吸気通路管は、前記スロットル弁の下流側に位置して、前記タンブル流路と前記主流路との吸気流量割合を制御する吸気制御弁と、前記連通管に開口する連通孔とを有し、
前記連通管は、前記吸気通路管内を開閉する空気量調整弁を備えることを特徴とする内燃機関の吸気装置を特徴とするものである。
【0006】
前記構成によれば、吸気通路管においてスロットル弁の下流側に位置して、吸気通路管に連通するレゾネータを設けることで、内燃機関の低負荷領域での稼働時におけるスロットル弁が絞られた状態においても、レゾネータ内からスロットル弁より下流側の吸気通路内に吸気が流れ込むので、吸気通路内の吸気の流動が低下することなく、タンブル流の流動を強化して、燃焼効率を向上させることができる。さらに、レゾネータから吸気通路管内への空気の流入を必要に応じて空気量調整弁で切り替えることにより、上記効果をさらに高めることができる。
【0007】
前記構成において、前記吸気制御弁と前記空気量調整弁とは、同一の回動軸としての軸部材上に設けることもできる。
【0008】
前記構成によれば、吸気制御弁と空気量調整弁とを同一の回動軸としての軸部材上に設けることで、軸共用化により部品点数を削減することができる。
【0009】
前記構成において、前記吸気制御弁と前記空気量調整弁とは、一方の弁が開くと他方の弁が閉じる構造を有してもよい。
【0010】
前記構成によれば、ストイキ運転時に吸気制御弁を開弁状態とし、レゾネータとの間の空気量調整弁を閉弁状態とすることで、吸気ボリュームのあるレゾネータから空気が流入することによるポンピング損失増加による燃費の悪化を防ぐことができ、一方リーン燃焼時には、吸気制御弁を閉じて、レゾネータとの間の空気量調整弁を開けることで、レゾネータの吸気ボリュームを生かしてタンブル流形成を促進して燃焼効率を向上させることができる。
【0011】
前記構成において、前記連通孔は前記スロットルボディの下流端と前記隔壁の上流端との間に位置させてもよい。
【0012】
前記構成によれば、発熱部である内燃機関から離れた箇所にレゾネータに連通する連通孔を配置したことにより、比較的温度が高い気流が吸気通路内に流入した場合であっても、レゾネータと連通する連通管に熱が伝わらず、内燃機関の排熱の影響を受けにくくなり、吸気効率の低減を防止することができる。
【0013】
前記構成において、前記吸気通路管は、前記連通管の一端が取り付けられる取付部を有し、前記取付部と前記吸気通路管とを一体品としてもよい。
【0014】
前記構成によれば、取付部を吸気通路管に固定するための固定部品が不要となり、部品点数の増加を防ぐとともに、加工の手間を低減することができる。
【0015】
前記構成において、前記吸気通路の内部に向かって燃料を噴射する燃料噴射弁を備え、
前記吸気通路管の内壁に、吸気流れ方向の上流側から下流側に向かった切欠部が設けられ、前記連通孔は、前記切欠部と重なる位置に設けてもよい。
【0016】
前記構成によれば、連通孔および切欠部に噴射燃料が溜まることを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吸気通路管においてスロットル弁の下流側に位置して、吸気通路管に連通するレゾネータを設けることで、内燃機関の低負荷領域での稼働時におけるスロットル弁が絞られた状態においても、レゾネータ内からスロットル弁より下流側の吸気通路内に吸気が流れ込むので、吸気通路内の吸気の流動が低下することなく、タンブル流の流動を強化して、燃焼効率を向上させることができる。さらに、レゾネータ内の空気の流入を必要に応じて空気量調整弁で切り替えることにより、上記効果をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態1に係る内燃機関の吸気構造を備えたパワーユニットを搭載した自動二輪車の右側面である。
【
図2】
図1の自動二輪車の車体カバーを外した後部右側面である。
【
図3】
図2中のパワーユニットを取出して、
図2に示したものと略同じ配向により示し、実施形態1に係る内燃機関の吸気構造を備えたパワーユニットの側面断面図である。
【
図5】吸気管およびレゾネータの周辺を示した概略図である。
【
図6】インレットパイプ、連通管を連通孔が通る位置で切断した断面図である。
【
図10】スロットルボディおよびインレットパイプ近傍を示した左側面図である。
【
図11】インレットパイプの取付部周辺を示した斜視図である。
【
図12】連通孔周辺をインレットパイプ内部から視た図である。
【
図13】空気量調整弁の弁軸および切欠部を示した斜視図である。
【
図14】空気量調整弁の開弁状態を示した連通管および空気量調整弁の縦断面図である。
【
図15】空気量調整弁の閉弁状態を示した連通管および空気量調整弁の縦断面図である。
【
図16】タンブルコントロール弁が開いて、空気量調整弁が閉じた状態を示す概略図である。
【
図17】タンブルコントロール弁が閉じて、空気量調整弁が開いた状態を示す概略図である。
【
図18】スロットル弁下流側領域を示した吸気通路の模式図である。
【
図19】内燃機関のサイクルにおいて
図16で示された箇所における圧力の変動を示した図である。
【
図20】タンブルコントロール弁の開弁状態におけるレゾネータの有無が内燃機関のポンピング損失および燃費に与える影響を示したグラフである。
【
図21】タンブルコントロール弁の閉弁状態におけるレゾネータの有無が内燃機関のポンピング損失および燃費に与える影響を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から
図21に基づき、本発明の一実施形態に係る内燃機関の吸気装置について説明する。
【0020】
なお、本明細書の説明および特許請求の範囲における前後左右上下等の向きは、本実施形態に係る内燃機関の吸気装置を備えたパワーユニットを、車両に搭載した状態での車両の向きに従うものとする。本実施形態において車両は小型車両であり、具体的には自動二輪車である。ただし、スロットルボディ7の吸気路70、および吸気通路80に関しては、それらを吸気流れ方向Fに沿って分割する隔壁としての仕切部81の上方を「上」側、下方を「下」側として記載する。また、図中矢印FRは車両前方を、LHは車両左方を、RHは車両右方を、UPは車両上方を、それぞれ示す。
【0021】
図1に、本発明の実施形態の内燃機関の吸気装置を備えたパワーユニット3を搭載した自動二輪車1の右側面を示す。また、
図2に、
図1の自動二輪車1の車体カバー10を外した後部右側面を示す。
【0022】
本実施形態に係る内燃機関の吸気装置60を搭載した自動二輪車1は、いわゆるスクータ型自動二輪車であり、車体前部1Aと車体後部1Bとが、低いフロア部1Cを介して連結されており、車体の骨格をなす車体フレーム2は、概ねダウンチューブ21とメインパイプ22(
図2参照)とからなる。
【0023】
すなわち車体前部1Aのヘッドパイプ20からダウンチューブ21が下方へ延出し、ダウンチューブ21は下端で水平に屈曲してフロア部1Cの下方を後方へ延び、
図2に示されるようにその後端において車幅方向に配設された連結フレーム23を介して、左右一対のメインパイプ22が連結され、メインパイプ22は連結フレーム23から傾斜部22aをなして斜め後方に立ち上がって、途中、傾斜をゆるめるように屈曲して後方に延びている。
【0024】
メインパイプ22の傾斜部22aの上方には収納ボックス11と燃料タンク12が支持されるとともに、収納ボックス11と燃料タンク12はその上方に取付けられた乗員シート13で塞がれ、収納ボックス11、燃料タンク12を含め、乗員シート13の下方は、車体カバー10で覆われている。一方、車体前部1Aにおいては、ヘッドパイプ20に軸支されて上方にハンドル14が設けられ、下方にフロントフォーク15が延びてその下端に前輪16が軸支されている。
【0025】
図2に、車体カバー10を外した自動二輪車1の後部右側面を示すように、メインパイプ22の傾斜部22aの下端付近にブラケット24が突設され、ブラケット24にリンク部材25を介してパワーユニット3が揺動可能に連結支持されている。
【0026】
パワーユニット3は、その前部が単気筒4ストロークサイクルの空冷式内燃機関(以下、単に「内燃機関」という。)30であり、クランクケース部50aを構成するパワーユニットケース50の前部に、クランク軸51を車幅方向に配して回転自在に軸支し、シリンダ軸線Cを略水平に近い状態にまで大きく前傾した姿勢にあって、パワーユニットケース50の下端から前方に突出したハンガアーム52の端部が、メインパイプ22のブラケット24に取付けられたリンク部材25を介して上下揺動自在に連結される。
【0027】
パワーユニット3には、クランクケース部50aを構成するパワーユニットケース50の前部に略水平に大きく前傾して内燃機関30を構成するシリンダブロック31、シリンダヘッド32、シリンダヘッドカバー33が順次積み上げられるように締結されるほか、クランクケース部50aから左側後方にかけてベルト式無段変速機等を備えた動力伝動ケース部55が一体に延在し、その後部にパワーユニット3の出力軸である後車軸56が設けられ、後輪17が取り付けられている。すなわち、パワーユニット3はいわゆるスイングユニットであり、パワーユニット3の後部の動力伝動ケース部55と、メインパイプ22の後部との間には図示しないリヤクッションが介装されている。
【0028】
図2に示されるように、パワーユニット3の上部では、内燃機関30の大きく前傾したシリンダヘッド32の上部から、吸気通路管としてのインレットパイプ6が延出して後方に湾曲し、インレットパイプ6に接続されたスロットルボディ7がシリンダブロック31の上方に位置し、スロットルボディ7にコネクティングチューブ85を介して接続するエアクリーナ装置86が動力伝動ケース部55の上方に配設されている。一方、シリンダヘッド32の下部から下方に延出した排気管38は、後方へ屈曲し右側に偏って後方に延びて後輪17の右側のマフラ39に接続される。
【0029】
図3は、
図2のパワーユニット3を取出して、
図2に示すと略同じ配向により示す、パワーユニット3の側面断面図である。パワーユニット3における内燃機関30は、シリンダブロック31、シリンダヘッド32、シリンダヘッドカバー33の左半面の断面が示され、パワーユニットケース50は、左ケース半体50Lが、図示しない右ケース半体との合わせ面50bを図示手前に向けて示される。
【0030】
パワーユニットケース50は、左右割りの左ケース半体50Lと図示されない右ケース半体とを合体して構成されるもので、右ケース半体は、クランクケース部50aの右半体をなし、左ケース半体50Lは、前部がクランクケース部50aの左半体をなすとともに、後方に延設されて、クランク軸51と後輪17の後車軸56との間の前後に図示しない長尺のベルト式無段変速機と減速ギヤ機構57等を含む伝動装置を収容する動力伝動ケース部55を形成する。
【0031】
減速ギヤ機構57は、動力伝動ケース部55の後部の右側開放面55Rの内部に収納され、図示しない減速機ケースにより覆われる。減速ギヤ機構57の出力軸は、後輪17の後車軸56である。而して、内燃機関30のクランクケース部50aのクランク軸51の回転動力は、動力伝動ケース部55内のベルト式無段変速機と減速ギヤ機構57を介して、後輪17に伝達される。
【0032】
シリンダブロック31のシリンダボア31a内を往復動するピストン34は、クランクケース部50aのクランク軸51のクランクピン51aと、コネクティングロッド35により連結されている。シリンダブロック31のシリンダボア31a内に摺動自在に嵌合されるピストン34の頂面34aと、頂面34aが対向するシリンダヘッド32の燃焼室天井面32aとの間には燃焼室36が構成される。
【0033】
内燃機関30は、SOHC型式の2バルブシステムを採用しており、シリンダヘッド32に動弁機構9が設けられている。動弁機構9を覆うように、シリンダヘッド32にはシリンダヘッドカバー33が重ねられて被せられる。
【0034】
シリンダヘッドカバー33内の動弁機構9に動力伝達を行うため、図示しない無端状のカムチェーンが、クランクケース部50a、シリンダブロック31、シリンダヘッド32のクランク軸51方向の一方側に設けられた図示しないカムチェーン室を通って、カム軸91とクランク軸51との間に架設され、カム軸91はクランク軸51に同期して1/2の回転速度で回転する。なお、シリンダヘッド32において前記カムチェーン室と反対側(クランク軸51方向の他方側)から燃焼室36内に向かって図示しない点火プラグが嵌挿されている。
【0035】
図3、および
図3の要部拡大図である
図4に示されるように、シリンダ軸線Cを略水平に近く大きく前傾したシリンダヘッド32において、燃焼室天井面32aに開口した吸気弁口40と排気弁口41からは、各々吸気ポート42と排気ポート43が互いに上下に離れる方向に湾曲しながら延出して形成される。
【0036】
吸気ポート42の上流端は、シリンダヘッド32の上方に向けて開口し、インレットパイプ6と接続して、連続した吸気通路80が構成されている。
図5に示されるように、インレットパイプ6の上流端6eに、接続部材としてのインシュレータ8を介して、スロットルボディ7の下流端7aが接続される。
排気ポート43の下流端は、シリンダヘッド32の下方に向けて開口し、排気管38(
図2参照)に連結される。
【0037】
シリンダヘッド32における吸気ポート42の湾曲外壁部42aに一体に円筒状の吸気弁ガイド44が嵌着され、吸気弁ガイド44に摺動可能に支持された吸気弁46が、吸気ポート42の燃焼室36に臨む吸気弁口40を開閉する。また、シリンダヘッド32における排気ポート43の湾曲外壁部43aに一体に嵌着された排気弁ガイド45に摺動可能に支持された排気弁47が、排気ポート43の燃焼室36に臨む排気弁口41を開閉する。
【0038】
吸気弁46および排気弁47はその傘部46a、47aが、いずれも燃焼室36に臨む吸気弁口40、排気弁口41を閉じるように、弁ばね48により上方に付勢されているが、
図3に示すように、カム軸91の吸気カム92、排気カム93に当接揺動する吸気ロッカアーム94、排気ロッカアーム95によって、吸気弁46、排気弁47のステムエンド46b、47bが押し下げられて、所定のタイミングで吸気弁46、排気弁47が開弁し、吸気ポート42と燃焼室36、また、排気ポート43と燃焼室36が連通し、所定のタイミングの吸気、排気がなされる。
【0039】
以上のような内燃機関30において、燃焼室36でのより好ましい燃焼を得るために燃焼室36において燃料・空気混合気のタンブル渦流T、すなわち縦回転を与えることのできる吸気装置60が用いられている。
【0040】
すなわち、内燃機関30の吸気ポート42の上流端には、インシュレータ61を介してインレットパイプ6が接続して、連続した断面略円形の吸気通路80が構成されている。インレットパイプ6の上流側に、固定部材としてのインシュレータ8を介してスロットルボディ7が接続される。
【0041】
スロットルボディ7は、内燃機関30の燃焼室36に連なる吸気通路80の一部を構成する断面略円形の吸気路70を有し、その上流側は、コネクティングチューブ85を介して、エアクリーナ装置86(
図2参照)に接続している。
【0042】
図4に示されるように、スロットルボディ7は、スロットル弁75を備えている。スロットル弁75はバタフライ式のもので、スロットル弁軸76と、スロットル弁軸76に固定され共に一体的に回転する円盤状の弁体77とを有している。弁体77は、スロットル弁軸76に、円盤を略二等分するように固定されている。弁体77は、吸気路70の吸気流れ方向Fと垂直、すなわち吸気路70の中心軸線と垂直に交差して略水平に配向するスロットル弁軸76によってスロットルボディ7内に回転自在に軸支されている。スロットル弁75は、操作者等の指示により回動され、吸気路70の流路面積を可変制御して吸気路70内に流れる吸気流量を変更する。
【0043】
吸気通路80は、インレットパイプ6から吸気ポート42へと続けて仕切部81によって、吸気流れ方向Fに沿って分割され、通った吸気が燃焼室36内でタンブル渦流Tを発生するように構成されたタンブル流路80Aと、タンブル流路80Aを除く主流路80Bとに、仕切られている。吸気通路80は、タンブル流路80Aが主流路80Bと比較して流路が狭くなるように、仕切部81により仕切られている。本発明において「タンブル流路」とは、スロットル弁75低開度時、つまり、内燃機関30低負荷時に燃焼室36にタンブル渦流Tを発生させるための吸気の流路である。
【0044】
吸気通路80の仕切部81によって仕切られた下側部分がタンブル流路80A、上側部分が主流路80Bとなるが、本発明においてはその上下配置に限定されない。また、本明細書において、吸気通路80や吸気路70、スロットル弁75についての「上、下」とは、シリンダ軸線C方向においてシリンダヘッド32ないしシリンダヘッドカバー33方向を「上」、クランク軸51方向を「下」といい、空間上の絶対的な「上、下」の意味ではない。
【0045】
図4に示されるように、仕切部81は、インレットパイプ側仕切部81Aと、インシュレータ側仕切部81Bと、吸気ポート側仕切部81Cが、吸気流の上流側から下流側へと連続して位置して構成される。
【0046】
図示上側の主流路80Bと図示下側のタンブル流路80Aとは、インレットパイプ6から吸気ポート42へ縦通し仕切部81により、スロットル弁75の下流側の吸気通路80を図示上下に区画することで、各々断面略半円状に画成される。
なお、仕切部81の吸気通路80幅方向の面とスロットル弁軸76とは平行である。
【0047】
また、
図4に示されるように、仕切部81の下流側端部81b、すなわちシリンダヘッド32の吸気ポート42内に位置する下流側端部81bは、シリンダヘッド32においてシリンダブロック31側に向けて屈曲して一体に形成され、且つタンブル流路80Aの終端80Abは、シリンダヘッド32の燃焼室天井面32aを指向するように形成されている。
そのため、タンブル流路80Aを流れる吸気を、
図4中小矢印が示すように、吸気弁46の傘部46aの上方を通過させたうえで、シリンダボア31a内に流入させことができるため、燃焼室36内においてタンブル渦流Tが発生しやすくすることができる。そのように、タンブル流路80Aは、通過した吸気がタンブル渦流Tを発生させるように構成されている。
【0048】
図4に示されるように、インレットパイプ6内に形成された仕切部81の上流端81aに近接して、タンブル流路80Aと主流路80Bとの吸気流量割合を制御する吸気制御弁としてのタンブルコントロール弁65が配設されている。本実施の形態では、タンブルコントロール弁65は、仕切部81の上流端81aと間隔を存して配設されているが、仕切部81の上流側の上流端部81aaに設けてもよい。タンブルコントロール弁65は、弁軸66と、弁軸66に固定され共に一体的に回転するタンブル弁体67とを有している。
【0049】
タンブル弁体67は、インレットパイプ6内において仕切部81の上流端81a近傍の主流路80Bの開口を塞ぐような板状の半円盤に形成されている。タンブル弁体67の直線状の一端に弁軸66が取り付けられている。
【0050】
弁軸66は、仕切部81の吸気通路80幅方向の面と平行になるようにインレットパイプ6に回動自在に支承されている。弁軸66は、
図5に示されるように、減速機69を介してアクチュエータ68に接続されている。
図8も参照して、弁軸66は、アクチュエータ68により適宜所定の角度に回動される。弁軸66の回動に伴ってタンブル弁体67も回動して、主流路80Bの開度が変更されて、主流路80Bに流れる吸気量が調整されるに従って、タンブル流路80Aの吸気量も調整される。
【0051】
図4に示されるように、スロットルボディ7には、上方外部から貫通して燃料噴射弁87が取り付けらえており、吸気通路80に向けて燃料を噴射供給するように配置されている。またインレットパイプ6にも、主流路80Bに上方外部から貫通して、吸気弁口40に向けて燃料を噴射供給するように配置された燃料噴射弁88が取り付けられる。燃料噴射弁88をインレットパイプ6に取り付ける場合には、吸気通路壁面に燃料が付着することを防止するために、タンブル流路80Aよりも流路断面積が大きい主流路80B側に取り付けることが好ましい。
【0052】
本実施の形態では、インレットパイプ6およびスロットルボディ7に燃料噴射弁88,87を配置しているが、燃料噴射弁の数を2つに限定するものではなく、例えば1つであってもよく、燃料噴射弁87,88のいずれか一方のみを取り付けるものであってもよい。また、シリンダヘッド32、あるいは、シリンダブロック31に燃料噴射弁を配置し、燃焼室36に燃料を噴射する直噴構造でもよい。
【0053】
吸気装置60は、
図5に示されるように、インレットパイプ6の内部の吸気通路80と連通管101を介して連通しているレゾネータ100を具備している。
図6に示されるように、連通管101の一端101aはインレットパイプ6から突出した取付部104に接続されている。連通管101の他端101bは、
図7に示されるように、レゾネータ100に接続されている。連通管101の内部は、インレットパイプ6の内部とレゾネータ100の内部を連通する連通路101cとなっている。
【0054】
インレットパイプ6には、
図9および
図10に示されるように、連通管101の一端101aを取り付ける取付部104が、インレットパイプ6の外壁面6dから突出して形成されている。取付部104は管状に形成され、内部が連通路104aとなっている。取付部104の外面には鍔状部104bが形成されている。本実施の形態では、連通管101はインレットパイプ6と一体に形成された一体品であるが、インレットパイプ6と別体でインレットパイプ6に取り付ける構造であってもよい。
図8および
図9に示されるように、インレットパイプ6の内壁6cには、取付部104の内部の連通路104aに開口する連通孔102が形成されている。
【0055】
図8に示されるように、インレットパイプ6内部の吸気通路80は、仕切部81によりタンブル流路80Aと主流路80Bとに仕切られている。インレットパイプ6において、仕切部81の板の厚さ方向における中心を通る面を仕切部中心面Paと、仕切部中心面Paをインレットパイプ6の形状に沿って延長した延長中心面Pbと定義し、これらの仕切部中心面Paと延長中心面Pbとで構成される面を仕切部等中心面Pと定義する。インレットパイプ6を仕切部等中心面Pで分けて、タンブル流路80A側の部分をタンブル流路側部6aと定義し、主流路80B側の部分を主流路側部6bとする。
【0056】
インレットパイプ6に形成された連通孔102は、
図8および
図9に示されるように、タンブル流路側部6aの内壁面6a
1に位置して設けられている。このように連通孔102をタンブル流路側部6aに設けることで、吸気弁46が開口していく際に、レゾネータ100に溜まった吸気を積極的にタンブル流路80A側に流すことができ、タンブル流の強化を図ることができる。
【0057】
連通孔102は、
図4に示されるように、スロットルボディ7の下流端7aと、仕切部81の上流端81aとの間に位置するように形成されている。連通孔102を発熱部である燃焼室36から比較的遠い位置に設けることで、比較的温度が高い気流が吸気通路80に流入した場合であっても、レゾネータ100と接続している連通管101に熱が伝わることを防ぐことができ、吸気効率が下がることを防止することができる。
【0058】
さらに、
図8に示されるように、連通孔102は、スロットルボディ7とインレットパイプ6とを接続するインシュレータ8の下流端8aよりも下流側に設けられている。インレットパイプ6がインシュレータ8を介してスロットルボディ7に接続されても、連通孔102がインシュレータ8により塞がれることがない。
【0059】
図10および
図11に示されるように、インレットパイプ6は、締結部材であるボルト37により、インシュレータ61を介してシリンダヘッド32に固定されている。連通孔102と連通し、インレットパイプ6から突出した取付部104が、ボルト37をシリンダヘッド32に締結するのを妨げないように、連通孔102および取付部104は、ボルト37の取付方向視において、ボルト37と重ならない位置に配置されている。
【0060】
インレットパイプ6の内壁6cには、
図6、
図8および
図9に示されるように、連通孔102を挟んで吸気の上流側および下流側に向かって、内壁6cから凹んだ切欠部103が設けられている。切欠部103は、連通孔102の近傍が最も深くなっており、上流端103aおよび下流端103bに向かうに従って、次第に浅くなるように形成されている。
図12に示されるように、切欠部103の下縁103cは、上流端103aから下流端103bに向かうに従って下方に向かうように下り勾配にされており、インレットパイプ6内に噴射された噴射燃料が連通孔102および切欠部103に溜まることを防ぐようになっている。
【0061】
さらに、
図5に示されるように、レゾネータ100とインレットパイプ6を接続する連通管101には、その途中に、レゾネータ100からインレットパイプ6内へ流入する空気量を調整する空気量調整弁110が設けられている。空気量調整弁110は、連通管101内の空気流れ方向に対して交差する方向が軸線となる弁軸111を備えている。
図13に示されるように、弁軸111はその断面形状が円形となるように形成されており、該弁軸111に切欠部112が形成されている。
【0062】
図5に示されるように、連通管101の所定の位置には、空気量調整弁110の弁軸111が挿通される挿通孔101dが設けられている。弁軸111は、切欠部112が連通管101の内部に位置するように、挿通孔101dに挿通され、連通管101の両側に位置した軸受105に回動自在に支承されている。挿通孔101dと軸受105の間には、連通管101からの空気漏れを防止するパッキン部材106配設されている。
【0063】
空気量調整弁110は、タンブルコントロール弁65と、同一の回動軸上に設けられている。本実施の形態の吸気装置60では、タンブルコントロール弁65の弁軸66と空気量調整弁110の弁軸111とは同一の軸部材120により構成されている。軸部材120がアクチュエータ68により回動されると、空気量調整弁110の弁軸111が回動する。本実施の形態の吸気装置60では、タンブルコントロール弁65の弁軸66と空気量調整弁110の弁軸111とが同一の部品として形成されているが、弁軸66と弁軸111とを別部品で形成し、一体に回動するように連結してもよい。
【0064】
図14に示されるように、空気量調整弁110の弁軸111が所定角度回動すると、切欠部112が開口して、切欠部112内を空気が通過可能な開弁状態となる。
図15に示されるように、空気量調整弁110の弁軸111が所定角度に回動すると、連通管101は弁軸111により閉じられて閉弁状態となる。
【0065】
図16に示さるように、タンブルコントロール弁65が開弁状態時には、空気量調整弁110が閉弁状態とされ、レゾネータ100と吸気通路80とが連通されていない状態となる。
図17に示されるように、タンブルコントロール弁65が閉弁状態時には、空気量調整弁110が開弁状態となり、レゾネータ100から吸気通路80に空気が供給される。このように、タンブルコントロール弁65と空気量調整弁110は、一方の弁が開くと他方の弁が閉じるように構成されている。
【0066】
次に、吸気通路80に連通してスロットル弁75より下流にレゾネータ100を設けることにより、タンブル流の流動を強化する効果について、
図18および
図19を参照して、レゾネータ100が設けられていない吸気装置の場合と比較して説明する。
図18に示されるように、これらの吸気装置では、吸気通路の上側の通路にタンブルコントロール弁65が取り付けられており、上側が主流路80B、下側がタンブル流路80Aとなっている。
図18には、
図19で示す吸気装置内の圧力の変化を表している各所の位置を、A,Bで示している。A点は、スロットル弁75の下流側であってタンブル流路80Aと主流路80Bとを仕切る仕切部81の上流端81aより上流側に位置しており、B点はタンブル流路80A内に位置している。
【0067】
図19は、レゾネータ100がスロットル弁75より下流側に接続された吸気装置と、レゾネータ100がスロットル弁75より下流側に接続されていない吸気装置の、スロットル弁75の徐開時における1サイクルにおけるクランク角ごとの各所の圧力のデータを、横軸をクランク角、縦軸を圧力として表している。スロットル弁75下流から吸気弁46までの吸気装置内の吸気通路領域をスロットル弁下流吸気領域と定義し、この容積をスロットル弁下流吸気容積と定義する。これらの定義においては、レゾネータ100が接続されている場合には、レゾネータ100内の領域および容積も含んでいる。
【0068】
レゾネータ100がスロットル弁75より下流側に接続されてない場合の吸気通路の圧力変化および吸気の流動について説明する。レゾネータ100がスロットル弁75より下流側に接続されてない場合とは、吸気装置がレゾネータ100を有しない場合、また吸気装置がレゾネータ100を有していても、スロットル弁75より上流側に接続されている場合である。
【0069】
レゾネータ100がスロットル弁75より下流側に接続されていない吸気装置では、スロットル弁下流吸気容積が大きくないので、ここに溜まっている空気量が少なく、吸気弁46が開いてから閉じるまでの吸気行程において、スロットル弁75の開口を通じて、スロットル弁75の上流の大気から空気の取り込みを行う。しかし、スロットル弁75の開口が小さいので、ピストン34の下降に伴って増加する体積分の空気量のチャージが間に合わず、吸気ポート内圧力は急激に負圧となる(
図19)において、クランク角380度付近から540度付近の間)。このように吸気ポート内圧力が急激に負圧になると、ピストン34の下降にともない、スロットル弁下流吸気領域内の空気が膨張して吸入するため流動が弱くなり、筒内で形成されるタンブル流が弱くなる。
【0070】
次にレゾネータ100がスロットル弁75より下流側に接続された場合の吸気通路の圧力変化および吸気の流動について説明する。吸気弁46が開いてから閉じるまでの吸気行程において、レゾネータ100が接続されていないものの場合に比べて、レゾネータ100内の容積分、スロットル弁下流吸気容積が大きいので、溜る空気の質量は大きい。
【0071】
吸気弁46が開いた時に、ピストン34の下降に伴って増加する体積分の空気量のチャージが、スロットル弁下流吸気領域内に多く溜まった空気から行われて、スロットル弁75の開口を通じて、スロットル弁75の上流の大気から取り込む空気量が比較的少ない。
そのため、徐開時等のスロットル弁75の開口が小さい場合であっても、吸気ポート内圧力の負圧の変化は比較的少ないものとなる(
図19)において、クランク角380度付近から540度付近の間)。このように吸気ポート内圧力が急激に負圧になることが少ないので、ピストン下降にともなったスロットル弁下流吸気領域内の吸気の膨張が比較的少なく、流動が低下せず、筒内で形成されるタンブル流の流動を高めることができる。
【0072】
次に、タンブルコントロール弁65の開弁状態および閉弁状態のそれぞれについて、吸気通路80と連通するレゾネータ100の有無が、ポンピング損失(PMEP(kPa))と燃費(正味燃料消費率 BSFC(g/kW-h))に与える影響を、机上モデルを用いて効果を予測した。
【0073】
図20は、タンブルコントロール弁65の開弁状態において、レゾネータ100があるモデルとレゾネータ100がないモデルについて、ポンピング損失および燃費の値の予測結果をグラフにしたものである。タンブルコントロール弁65が開弁状態時は、内燃機関のストイキ運転時を想定している。タンブルコントロール弁65が開弁状態においては、レゾネータが無い場合はレゾネータがある場合に比べて、ポンピング損失が小さく燃費が良い結果となった。
【0074】
図21は、タンブルコントロール弁65の閉弁状態において、レゾネータ100があるモデルとレゾネータ100がないモデルについて、ポンピング損失および燃費の値の予測結果をグラフにしたものである。タンブルコントロール弁65が閉弁状態時は、内燃機関のリーン運転時を想定している。タンブルコントロール弁65が閉弁状態においては、レゾネータがある場合はレゾネータが無い場合に比べて、ポンピング損失が小さく燃費が良い結果となった。
【0075】
タンブルコントロール弁65の開閉状態により、ポンピング損失および燃費に対して、レゾネータ100の有無の優位性が逆転する。本実施の形態の吸気装置60では、タンブルコントロール弁65の開弁状態のときに空気量調整弁110が閉弁状態となり、タンブルコントロール弁65の閉弁状態のときに空気量調整弁110が開弁状態となるので、タンブルコントロール弁65の開閉どちらの状態においても、燃費優位性のあるレゾネータ100との接続状態となるので、内燃機関30の燃費改善することが可能となる。
【0076】
本発明の実施の形態の内燃機関の吸気装置60は、前記したように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0077】
吸気装置60は、燃焼室36に吸気を導入する吸気通路80と、内部が吸気通路80の一部となるインレットパイプ6と、インレットパイプ6に吸気空気を導入するスロットルボディ7と、吸気通路80の開度を制御するためにスロットルボディ7の内部に設けられるスロットル弁75と、レゾネータ100とを有し、インレットパイプ6は、スロットルボディ7の下流側に配置され、吸気通路80を吸気空気の流入方向である長手方向に沿ってタンブル流路80Aと主流路80Bとに分割する仕切部81を備え、インレットパイプ6は、スロットル弁75の下流側に位置して、タンブルコントロール弁65と、レゾネータ100および吸気通路80を繋ぐ連通管10)に開口する連通孔102とを有し、連通管101は、レゾネータ100とインレットパイプ6との間の空気量を調整する空気量調整弁110を備えている。
【0078】
前記構成によれば、インレットパイプ6においてスロットル弁75の下流側に位置して、吸気通路80に連通するレゾネータ100を設けることで、内燃機関30の低負荷領域での稼働時におけるスロットル弁75が絞られた状態においても、レゾネータ100内からスロットル弁75より下流側の吸気通路80内に吸気が流れ込むので、吸気通路80内の吸気の流動が低下することなく、タンブル流の流動を強化して、燃焼効率を向上させることができる。さらに、レゾネータ100からインレットパイプ6内への空気の流入を必要に応じて空気量調整弁110で切り替えることにより、上記効果をさらに高めることができる。
【0079】
さらに、タンブルコントロール弁65と空気量調整弁110とは、同一の回動軸としての軸部材120上に設けられているので、タンブルコントロール弁65と空気量調整弁110とを同一の回動軸としての軸部材120上に設けることで、軸共用化により部品点数を削減することができる。
【0080】
また、タンブルコントロール弁65と空気量調整弁110とは、一方の弁が開くと他方の弁が閉じる構造を有しているので、ストイキ運転時にタンブルコントロール弁65を開弁状態とし、レゾネータ100との間の空気量調整弁110を閉弁状態とすることで、吸気ボリュームのあるレゾネータ100から空気が流入することによるポンピング損失増加による燃費の悪化を防ぐことができ、一方リーン燃焼時には、タンブルコントロール弁65を閉じて、レゾネータとの間の空気量調整弁を開けることで、レゾネータの吸気ボリュームを生かしてタンブル流形成を促進して燃焼効率を向上させることができる。
【0081】
さらにまた、連通孔102はスロットルボディ7の下流端7aと仕切部81の上流端81aとの間に位置するので、発熱部である内燃機関30から離れた箇所にレゾネータ100に連通する連通孔102を配置したことにより、比較的温度が高い気流が吸気通路80内に流入した場合であっても、レゾネータ100と連通する連通管101に熱が伝わらず、内燃機関30の排熱の影響を受けにくくなり、吸気効率の低減を防止することができる。
【0082】
また、インレットパイプ6は、連通管101の一端101aが取り付けられる取付部104を有し、取付部104とインレットパイプ6とは一体品であるので、取付部104をインレットパイプ6に固定するための固定部品が不要となり、部品点数の増加を防ぐとともに、加工の手間を低減することができる。
【0083】
さらに、吸気通路80の内部に向かって燃料を噴射する燃料噴射弁87を備え、インレットパイプ6の内壁6cに、吸気流れ方向の上流側から下流側に向かった切欠部103が設けられ、連通孔102は切欠部103と重なる位置に設けられているので、連通孔102および切欠部103に噴射燃料が溜まることを防止できる。
【0084】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能であり、本発明の要旨の範囲で、車両、内燃機関等が、多様な態様で実施されるものを含むことは勿論である。
なお、説明の便宜上、図示の実施例の左右配置のものについて説明したが、左右配置の異なるものであっても、発明の要旨の範囲であれば本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
6…吸気通路管、7…スロットルボディ、
30…内燃機関、36…燃焼室、
60…吸気装置、65…タンブルコントロール弁、
75…スロットル弁、
80…吸気通路、80A…タンブル流路、80B…主流路、81…隔壁、87…燃料噴射弁、
100…レゾネータ、101…連通管、101a…一端、102…連通孔、103…切欠部、104…取付部、
110…空気量調整弁、
120…軸部材。