(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気装置
(51)【国際特許分類】
F02B 27/00 20060101AFI20241209BHJP
F02B 31/04 20060101ALI20241209BHJP
F02B 31/08 20060101ALI20241209BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
F02B27/00 D
F02B31/04 500A
F02B31/08 522C
F02M35/10 301Q
(21)【出願番号】P 2023550912
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036152
(87)【国際公開番号】W WO2023053346
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋平
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-27025(JP,A)
【文献】特開平8-338253(JP,A)
【文献】特開平11-166417(JP,A)
【文献】特開平11-218029(JP,A)
【文献】特開2003-262165(JP,A)
【文献】特開2017-89527(JP,A)
【文献】特許第6714764(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/009347(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0439848(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 27/00
F02B 31/04
F02B 31/08
F02M 35/10
F02M 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットル弁(62c)の下流側の吸気通路(60d)を複数の流路に分割するように吸気流れ方向に延在する仕切部(70)と、
前記吸気流れ方向において前記仕切部(70)の中間部(70m)よりも下流側において前記吸気通路(60d)に連通するように設けられたレゾネータ(77)と
を備え、
前記内燃機関のシリンダ軸線(C)の方向においてクランク軸(12)側からシリンダヘッド(24)側の方向を第1方向と定義するとき、
前記仕切部(70)は、前記吸気通路(60d)を、前記第1方向において順に並ぶ第1吸気流路(72)と第2吸気流路(74)とに分けるように設けられていて、
燃料噴射弁(78)は、前記第2吸気流路(74)側に設けられていて、
前記燃料噴射弁(78)の燃料噴射方向は、前記レゾネータ(77)を前記吸気通路(60d)につなぐ連通路(77b)における下流側出口部(77c)の軸線(77d)と略平行である
ことを特徴とする内燃機関の吸気装置(S)。
【請求項2】
前記レゾネータ(77)を前記吸気通路(60d)につなぐ前記連通路(70b)における前記下流側出口部(77c)の前記軸線(77d)は前記燃焼室(32)側を向くように設計されている
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気装置(S)。
【請求項3】
前記レゾネータ(77)は、前記燃焼室(32)の天井面(24t)を区画形成する前記内燃機関のシリンダヘッド(24)に前記連通路(77b)を介して直接的に繋げられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の吸気装置(S)。
【請求項5】
前記レゾネータ(77)を前記吸気通路(60d)につなぐ前記連通路(77b)は、前記第2吸気流路(74)の下流側部分(74d)又は前記第1吸気流路(72)と前記第2吸気流路(74)との下流側合流部(72f)に連通する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の内燃機関の吸気装置(S)。
【請求項6】
前記燃焼室(32)に臨むとともに吸気弁(44)によって開閉される吸気弁口(34)の中心部と、前記燃焼室(32)に臨むとともに排気弁(46)によって開閉される排気弁口(36)の中心部とを通過するとともに前記シリンダ軸線(C)に平行に延びる仮想面(IS)を定めるとき、
前記第1吸気流路(72)から前記燃焼室(32)への吸気を前記仮想面(IS)の一方側に偏らせるように構成された偏向部(DP)が更に設けられている
ことを特徴する請求項1から請求項3及び請求項5のいずれか一項に記載の内燃機関の吸気装置(S)。
【請求項9】
前記第2吸気流路(74)を開閉するタンブル制御弁(75)が前記仕切部(70)の上流端(70u)又は該上流端(70u)よりも上流側に更に設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項3、請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の内燃機関の吸気装置(S)。
【請求項10】
前記レゾネータ(77)を前記吸気通路(60d)につなぐ連通路(77b)における下流側出口部(77c)に切欠部(77e)が更に設けられている
請求項1から請求項3、請求項5から請求項7及び請求項9のいずれか一項に記載の内燃機関の吸気装置(S)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室に連なる吸気通路に仕切部を備え、かつ、レゾネータを備える内燃機関の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼室における混合気の燃焼を促進し燃焼効率を向上させるべく、燃焼室内にタンブル流、スワール流といった渦流を発生させる構成が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、内燃機関の吸気通路を仕切部により主流路と副流路に仕切り、タンブル流を発生させる構造を開示する。この内燃機関の吸気構造では、スロットル弁の下流側にタンブル制御弁を設け、そのタンブル制御弁の下流側にインレットパイプから吸気ポートへと続けて仕切部である仕切板部を設け、この仕切板部により吸気通路を上下の下側副通路と上側主通路とに仕切ることが行われる。下側副通路がタンブル流路となり、タンブル制御弁は上側主通路を実質的に開閉するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば内燃機関の運転状態が低負荷領域にあるとき、上記タンブル制御弁は閉弁され、このタンブル制御弁よりも上流側に設けられるスロットル弁の開度も比較的小さい。したがって、このとき、吸気弁が開いてから閉じるまでの吸気行程において、ピストンの下降に伴って吸気ポート側の体積が増加するが、その体積増加に対してスロットル弁の開口部からの吸気ではその流入が間に合わず、吸気ポート内は急激に負圧の状態となり、吸気通路内の流動が弱くなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、スロットル弁の下流側の吸気通路に仕切部が設けられる内燃機関において、スロットル弁の開度が相対的に小さいときの吸気の吸入を改善することを可能にする構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、
スロットル弁の下流側の吸気通路を複数の流路に分割するように吸気流れ方向に延在する仕切部と、
前記吸気流れ方向において前記仕切部の中間部よりも下流側において前記吸気通路に連通するように設けられたレゾネータと
を備えた
ことを特徴とする内燃機関の吸気装置
を提供する。
【0008】
上記構成によれば、レゾネータが、吸気流れ方向において上記仕切部の中間部よりも下流側において吸気通路に連通するように設けられる。したがって、例えば内燃機関の低負荷領域での稼働時といったスロットル弁が絞られた状態つまりその開度が相対的に小さいとき、仕切部より下流側の吸気通路にレゾネータ側から吸気が流れ込むことができるので、吸気通路から燃焼室への吸気の流入を改善することができる。
【0009】
好ましくは、前記レゾネータを前記吸気通路につなぐ連通路における下流側出口部の軸線は前記燃焼室側を向くように設計されている。この構成により、レゾネータから流入する空気を燃焼室に導きやすくすることができ、よって燃焼室での燃焼効率を向上させることができる。
【0010】
好ましくは、前記レゾネータは、前記燃焼室の天井面を区画形成する前記内燃機関のシリンダヘッドに連通路を介して直接的に繋げられている。これにより、レゾネータから流入する空気を燃焼室により直接的に導きやすくなる。
【0011】
好ましくは、前記内燃機関のシリンダ軸線の方向においてクランク軸側からシリンダヘッド側の方向を第1方向と定義するとき、前記仕切部は、前記吸気通路を、前記第1方向において順に並ぶ第1吸気流路と前記第2吸気流路とに分けるように設けられている。これにより、例えば第1吸気通路から燃焼室に流入する吸気でタンブル流を生じさせることができる。
【0012】
好ましくは、前記レゾネータを前記吸気通路につなぐ連通路は、前記第2吸気流路の下流側部分又は前記第1吸気流路と前記第2吸気流路との下流側合流部に連通する。これにより、第2吸気通路側又は下流側合流部から燃焼室にレゾネータからの吸気を導入することができる。
【0013】
好ましくは、前記燃焼室に臨むとともに吸気弁によって開閉される吸気弁口の中心部と、前記燃焼室に臨むとともに排気弁によって開閉される排気弁口の中心部とを通過するとともに前記シリンダ軸線に平行に延びる仮想面を定めるとき、前記第1吸気流路から前記燃焼室への吸気を前記仮想面の一方側に偏らせるように構成された偏向部が更に設けられている。この構成により、第1吸気通路からの吸気を仮想面の一方側に偏らせて導くことができ、よって燃焼室での渦流をより強化することができる。
【0014】
好ましくは、前記第2吸気流路の流路断面積は前記第1吸気流路の流路断面積よりも大きく、燃料噴射弁は、前記第2吸気流路側に設けられている。これにより、第1吸気通路から吸気を強く燃焼室に導入することが可能になり、また、第1吸気通路における吸気の流れを好適に保ちつつ燃料噴射弁からの噴霧燃料を燃焼室に好適に導くことが可能になる。
【0015】
好ましくは、前記燃料噴射弁の燃料噴射方向は、前記レゾネータを前記吸気通路につなぐ連通路における下流側出口部の軸線と略平行である。この構成により、レゾネータからの空気の流れを燃料の噴射方向と実質的に同じにすることができ、よって噴霧燃料をより効果的に燃焼室で拡散させることができる。
【0016】
好ましくは、前記第2吸気流路を開閉するタンブル制御弁が前記仕切部の上流端又は該上流端よりも上流側に更に設けられている。この構成により、第1吸気通路からの吸気でより好適に燃焼室でタンブル流を生じさせることができる。
【0017】
好ましくは、前記レゾネータを前記吸気通路につなぐ連通路における下流側出口部に切欠部が更に設けられている。この構成により、噴射燃料が連通孔に溜まることをより防ぐことができ、よって燃費の悪化を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記態様によれば、上記構成を備えるので、スロットル弁の下流側の吸気通路に仕切部が設けられる内燃機関において、スロットル弁の開度が相対的に小さいときの吸気の吸入を改善することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関及びその周囲の断面図である。
【
図2】
図1の内燃機関のシリンダヘッド及びその近辺の右側面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った、
図1の内燃機関の断面図である。
【
図4】
図1の内燃機関のシリンダヘッドの下面図である。
【
図5】
図1の内燃機関の燃焼室近傍の吸気系及び排気系の立体モデルの正面図である。
【
図7】
図5の立体モデルの、
図6のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】
図5の立体モデルのうちの主に吸気系の、
図6のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図9】
図5の立体モデルのうちの主に吸気系の、
図6のIX-IX線に沿った断面図である。
【
図10】
図5の立体モデルのうちの主に吸気系の、
図6のX-X線に沿った断面図であり、噴霧燃料を模式的に示す図である。
【
図12】
図5の立体モデルの、
図7のXII-XII線に沿った断面図である。
【
図13A】
図6の立体モデルにおける透視図であり、噴霧燃料を模式的に示す図である。
【
図13B】
図5の立体モデルにおける透視図であり、噴霧燃料を模式的に示す図である。
【
図14】
図1の内燃機関の燃焼室及びその周囲をシリンダ軸線方向からみた模式図である。
【
図15】
図1の内燃機関における、レゾネータを吸気通路につなぐ連通路の方向を示す模式的に示す図である。
【
図16】
図1の内燃機関における、吸気流れ方向の上流側から吸気弁口側をみた模式図である。
【
図17】スロットル弁下流側領域を示した吸気通路の模式図である。
【
図18】内燃機関のサイクルにおいて
図17で示された箇所における圧力の変動を示した図である。
【
図19】スロットル弁及びタンブル制御弁の動作マップである。
【
図20A】スロットル開度と吸気流量との関係を示すグラフである。
【
図20B】スロットル開度と渦流の強さとの相関関係を示すグラフである。
【
図21】変形例の吸気装置における、レゾネータの吸気通路への合流部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を添付図に基づいて説明する。同一の部品(又は構成)には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0021】
本発明の一実施形態に係る内燃機関の吸気装置Sについて図に基づいて説明する。
図1は、一実施形態に係る吸気装置Sが適用された内燃機関10及びその周囲の断面図である。
図2は、
図1の内燃機関のシリンダヘッド及びその近辺の右側面図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿った、
図1の内燃機関の断面図である。
図4は、
図1の内燃機関のシリンダヘッドの下面図である。なお、本明細書の説明において、前後左右の向きは、実施形態に係る内燃機関10が搭載される自動二輪車(不図示)の直進方向を前方とする通常の基準に従うものとし、図面において、FRは前方を、RRは後方を、LHは左方を、RHは右方を示すものとする。
【0022】
内燃機関10は、SOHC型2バルブの単気筒4ストローク内燃機関であり、車体に対してクランク軸12を車体幅方向に指向させ、気筒を若干前傾させて起立した姿勢で懸架される。内燃機関10のクランク軸12を回転自在に軸支するクランクケース14では、クランク軸12の後方に配設されるメイン軸16及び出力軸であるカウンタ軸18の間に変速歯車機構20が構成されている。
【0023】
クランクケース14の上には、1本のシリンダライナ22Lが鋳込まれたシリンダブロック22と、シリンダブロック22の上にガスケットを介してシリンダヘッド24が重ねられ、スタッドボルトにより一体に締結され、シリンダヘッド24の上方をシリンダヘッドカバー26が覆っている。クランクケース14の上に重ねられるシリンダブロック22、シリンダヘッド24、シリンダヘッドカバー26は、クランクケース14から若干前傾した姿勢で上方に延出している。なお、内燃機関10は、上記構成の単気筒内燃機関であることに限定されず、種々の形式を有して構成された内燃機関とされてもよい。
【0024】
クランクケース14は左右割りで、左右クランクケースの合せ面に形成された開口にシリンダライナ22Lの下端部が嵌入されている。シリンダブロック22は若干前傾して、クランクケース14から上方に突出している。シリンダライナ22Lの内部のシリンダボア22bにピストン28が往復摺動自在に嵌合されている。ピストン28のピストンピン28pとクランク軸12のクランクピン12pとの間をコンロッド30が連接してクランク機構を構成している。
【0025】
シリンダブロック22のシリンダボア22b内を摺動するピストン28の頂面28tと同頂面28tが対向するシリンダヘッド24の燃焼室天井面(以下、単に「天井面」と称し得る。)24tとの間に燃焼室32が構成される。燃焼室32は、シリンダブロック22のシリンダボア22bと、ピストン28の頂面28tと、シリンダヘッド24の天井面24tとにより概ね区画形成される。シリンダヘッド24には、天井面24tにシリンダボア22bの中心軸線であるシリンダ軸線Cに関して互いに反対位置に1つずつ吸気弁口34と排気弁口36が燃焼室32に臨んで開口されるとともに、吸気弁口34と排気弁口36から各々吸気ポート38と排気ポート40が互いに離れる方向に湾曲しながら延出して形成されている。このように、シリンダヘッド24には、単一の吸気ポート38及び単一の排気ポート40が区画形成されている。
【0026】
シリンダヘッド24に一体に嵌着された弁ガイド42i、42eにそれぞれ摺動可能に支持される吸気弁44及び排気弁46は、シリンダヘッド24の上に設けられる動弁機構48により駆動されて、吸気ポート38の吸気弁口34及び排気ポート40の排気弁口36をクランク軸12の回転に同期して開閉する。つまり、シリンダヘッド24における吸気ポート38の湾曲外壁部38aに一体に円筒状の吸気弁ガイド42iが嵌着されている。吸気弁ガイド42iに摺動可能に支持された吸気弁44が、吸気ポート38の燃焼室32に臨む吸気弁44を開閉する。また、シリンダヘッド24における排気ポート40の湾曲外壁部40aに一体に嵌着された排気弁ガイド42eに摺動可能に支持された排気弁46が、排気ポート40の燃焼室32に臨む排気弁口36を開閉する。
【0027】
図1及び
図3を参照して、動弁機構48は、シリンダヘッド24の上に1本のカム軸48aが左右方向に指向して軸支されたSOHC型内燃機関の動弁機構であり、カム軸48aの斜め前後上方にロッカアームシャフト47i、47eが支持され、後方のロッカアームシャフト47iに吸気ロッカアーム48iが揺動自在に中央部を軸支され、前方のロッカアームシャフト47eに排気ロッカアーム48eが揺動自在に中央部を軸支されている。
【0028】
吸気ロッカアーム48iの一端は、カム軸48aの吸気カムロブに接し、他端がスプリングで付勢された吸気弁44のバルブステム44sの上端に調整ねじを介して接する。排気ロッカアーム48eの一端は、カム軸48aの排気カムロブに接し、他端がスプリングで付勢された排気弁46のバルブステム46sの上端に調整ねじを介して接する。カム軸48aの回転により吸気ロッカアーム48iと排気ロッカアーム48eが揺動することで吸気弁44と排気弁46は開閉駆動される。
【0029】
カム軸48aは軸受から左方に突出して、その左端部にカムチェーンスプロケット50が軸支され、カムチェーンスプロケット50に巻き掛けられたカムチェーン52がクランク軸12に向かい、クランク軸12に嵌着されたカムチェーンスプロケット(図示せず)に巻き掛けられ、カム軸48aがクランク軸12と同期して、その1/2の回転数で同一方向に回転する。
【0030】
シリンダブロック22のシリンダボア22bの左側及び燃焼室32の左側に、カムチェーン52を挿通する矩形孔であるカムチェーン室22c、24cが形成されている。
図3に示されるように、シリンダヘッド24の右側壁には、点火手段である点火プラグ54が燃焼室32に向かって嵌入して装着される。なお、点火プラグ54の付近に筒内圧センサ(不図示)が燃焼室32に向かって嵌入して装着されるとよい。
【0031】
図4は、シリンダブロック22に重ね合わされるシリンダヘッド24の下面図であり、内燃機関10におけるシリンダ軸線Cが点であらわされている。
図4を参照して、シリンダヘッド24におけるシリンダブロック22の合わせ面に対面する合わせ面24fに、シリンダボア22bに対応して燃焼室32の天井面24tが凹んで形成されている。燃焼室32は所謂ペントルーフ型燃焼室の形状を有さず、天井面24tは、凹状の曲面に形成され、概ね半球状に形成されている。また、合わせ面24fには、カムチェーン室22cに対応して連通するカムチェーン室24cが燃焼室32の左側に穿設されている。
【0032】
シリンダヘッド24の合わせ面24fにおける燃焼室32の天井面24tの円形開口縁24eが円筒状のシリンダボア22bの円孔に一致する。天井面24tのシリンダ軸線Cより後側に大径の吸気弁口34が開口し、天井面24tのシリンダ軸線Cより前側に、吸気弁口34より幾らか小径の排気弁口36が開口している。
【0033】
また、天井面24tのシリンダ軸線Cより右側には、点火プラグ54の電極を燃焼室32に突出させるプラグ孔56が穿設されている。すなわち、点火プラグ54は、天井面24tの中心部に位置づけられるのではなく、その中心からずれて設けられている。点火プラグ54は、吸気弁口34側から排気弁口36側に延びるとともにシリンダ軸線Cに平行に延びる仮想面ISを定めるとき、仮想面ISの一方側に位置付けられている。特にここでは、点火プラグ54は、仮想面ISに関してカムチェーン室24cと反対側の一方側に配置される。なお、
図4において、仮想面ISは、吸気弁口34の中心部34aと排気弁口36の中心部36aとを通るように定められている。つまり、ここでは、仮想面ISは、吸気弁口34の中心部34a及び排気弁口36の中心部36aを通過するとともにシリンダ軸線Cに平行に延びるように定められている。吸気弁口34の中心部34aは、吸気弁口34の中心であるとよく、排気弁口36の中心部36aも排気弁口36の中心であるとよい。ここでは、吸気弁口34も排気弁口36も略円形であり、それらの各中心が中心部34a、36aとなる。吸気弁口34及び排気弁口36のそれぞれは、例えば正円形であっても、楕円形であってもよい。
【0034】
図3に示すように、点火プラグ54は、中心電極54eと、側方電極(又は接地電極)54fとを備える。側方電極54fは、点火プラグ54のプラグ本体部54b側の基端部54gと基端部54gから中央電極54eの先端部を覆うように湾曲して延びる湾曲部54hとを有する。なお、側方電極54fの基端部54gは、点火プラグ54のプラグ本体部54bの軸線に概ね平行に延びる。
【0035】
吸気ポート38の上流端は、シリンダヘッド24の上方に向けて開口し、インシュレータ63を介してインレットパイプ58と接続して、連続した吸気通路60が構成され、インレットパイプ58の上流側に、スロットルボディ62が接続される。スロットルボディ62は、内燃機関10の燃焼室32に連なる吸気通路60の一部を構成する断面略円形の吸気路62aを有し、その上流側は、図示しないエアクリーナ装置に接続している。
【0036】
スロットルボディ62は、その吸気路62aの吸気の流れ方向と垂直、すなわち吸気路62aの中心軸線と直角に交差するスロットル弁軸62bによってスロットルボディ62内に回転自在に軸支されて、吸気路62aの流路面積を可変制御し、吸気路62aを開閉し得るスロットル弁62cを備えている。スロットル弁62cはバタフライ式のもので、スロットル弁軸62bと、スロットル弁軸62bに固定される共に一体的に回転する円盤状の弁体62dとを有している。
【0037】
スロットル弁62cは運転者の操作等により、
図1において時計回りに開弁方向に回動可能となっているとともに、図示しない復帰ばねにより、弁体62dはそれの縁部が吸気路62aの内壁面に当接する全閉位置に位置するように、閉弁方向に反時計回りに付勢されている。
【0038】
排気ポート40の下流端は、シリンダヘッド24の下方に向けて開口し、排気管(不図示)に連結され、連続した排気通路64が構成される。排気通路64の下流側には、排気浄化装置及び消音装置が設けられ得る。
【0039】
以上の内燃機関10において、燃焼室32でのより好ましい燃料つまり混合気の燃焼を得るために燃焼室32において燃料・空気混合気のタンブル渦流つまりタンブル流、すなわち縦回転を与えるための吸気装置Sが構成されている。吸気装置Sは、吸気通路60を複数に分けるように、吸気通路60に設けられた仕切部70を備える。仕切部70により、複数の吸気流路部72、74に吸気通路60は分けられ、ここではシリンダ軸線Cの方向において複数の吸気流路部72、74に吸気通路60は分けられる。すなわち、スロットル弁62cよりも下流側の吸気通路60dは、インレットパイプ58から吸気ポート38へと続く仕切部70によって、吸気流れ方向に沿って分割され、通った吸気が燃焼室32でタンブル流を発生し得るように構成された吸気流路部であるタンブル流路72と、タンブル流路72を除く吸気流路部である主流路74とに仕切られている。燃焼室32でのタンブル流を発生させるためのタンブル流路となり得る吸気流路部72をタンブル流路と称し、それは第1吸気流路に相当し、主流路74が第2吸気流路に相当する。つまり、タンブル流路72とは、スロットル弁62cの低開度時、例えば内燃機関10の低負荷運転時に燃焼室32にタンブル流を発生させるための吸気の流路である。なお、タンブル流路72は副通路と称されてもよい。
【0040】
なお、吸気流れ方向に板状に延在する仕切部70は、吸気通路60の下流側を実質的に上下方向において二分するように、つまり吸気通路60の下流側を実質的にシリンダ軸線Cの方向において二分するように、ここでは吸気流れ方向に延びる軸線に略平行に実質的に延びるように設けられている。本実施形態では、タンブル流路72の流路断面積は主流路74の流路断面積よりも小さい、つまり、主流路74の流路断面積はタンブル流路72の流路断面積よりも大きい。しかし、タンブル流路72の流路断面積が主流路74の流路断面積よりも大きくなるように仕切部70は設けられてもよく、それらを略同じにすることも可能である。
【0041】
図1に示すように、吸気通路60の仕切部70によって仕切られた下側部分がタンブル流路72、上側部分が主流路74となるが、本明細書においてはそれらはその上下配置に限定されない。なお、本明細書において、吸気通路60、60dなどについての「上」、「下」とは、シリンダ軸線C方向においてクランク軸12側からシリンダヘッド24ないしシリンダヘッドカバー26側の方向を「上」又は「上」方向、この「上」方向とは逆向きの方向つまりシリンダヘッド24側からクランク軸12側の方向を「下」又は「下」方向といい、空間上の絶対的な「上」、「下」の意味ではない。この「上」又は「上」方向は第1方向に相当し、「下」又は「下」方向は第2方向に相当する。
【0042】
仕切部70の上流側かつスロットル弁62cの下流側にタンブル制御弁75が更に設けられている。
図1に示されるように、インレットパイプ58内に形成された仕切部70の上流側の上流側端部70uに、タンブル制御弁75が配設されている。タンブル制御弁75は、タンブル弁軸75aと、タンブル弁軸75aに固定される共に一体的に回転するタンブル弁体75bとを有している。タンブル弁体75bは、インレットパイプ58内において仕切部70の上流側端部70u近傍の主流路74の開口を塞ぐような板状の半円盤に形成されている。タンブル弁体75bの直線状の一端にタンブル弁軸75aが取り付けられている。タンブル弁軸75aは、仕切部70の吸気通路60の幅方向の面と平行になるように、より具体的にはスロットル弁軸62bと平行になるように、インレットパイプ58に回動自在に支承されており、図示されないアクチュエータにより適宜回動される。タンブル弁軸75aの回動に伴ってタンブル弁体75bも回動し、主流路74の開度が変更され、主流路74に流れる吸気量が調整されるに従って、タンブル流路72の吸気量も調整される。本実施形態では、タンブル制御弁75は、仕切部70の上流側端部70uに連続するように設けられているが、仕切部70の上流側端部70uと間隔を存して配設されてもよい。
【0043】
なお、タンブル制御弁75は、吸気制御弁、タンブル弁、又は、TCVなどとも称され得る。また、タンブル制御弁75及び上記スロットル弁62cは、それぞれ、以下に説明するようにそれぞれ電子制御されるが、電子制御されることに限定されず、例えばそれらの少なくともいずれか一方はケーブルで機械的にコントロールされる弁であってもよい。
【0044】
内燃機関10では、燃料噴射弁76、78が設けられている。一方の燃料噴射弁(以下、第1燃料噴射弁)76は、仕切部70の上流側端部70uよりも上流側に設けられて、該上流側端部70uよりも上流側の吸気通路60の部分に燃料を噴射するように設けられている。他方の燃料噴射弁(以下、第2燃料噴射弁)78は、吸気ポート38に燃料を噴射するように設けられている。第2燃料噴射弁78は、主流路74側に設けられている。第2燃料噴射弁78は、主流路74に臨むように設けられ、ここではインレットパイプ58に設けられている。このように、第2燃料噴射弁78は、主流路74側から燃料を噴射し、吸気ポート38を介して燃焼室32に燃料を供給するように設けられている。なお、
図1から明らかなように、第2燃料噴射弁78は、吸気通路60を区画形成する部材の上側の壁部に取り付けられている。なお、本開示は、燃料噴射弁の数を2つに限定するものではなく、例えば1つであってもよく、燃料噴射弁76、78のいずれか一方のみを、例えば、第2燃料噴射弁78のみを設けることができる。
【0045】
上記構成の内燃機関10では、吸気通路60に連通管77aを介してレゾネータ77が接続されている。連通管77aは、吸気流れ方向において仕切部70の中間部70mよりも下流側において吸気通路60にレゾネータ77を連通させるように設けられている。ここでは、連通管77aはシリンダヘッド24に区画形成された吸気ポート38に連通するように、特に主流路74の下流側部分74d及びその下流側に連通するように位置決めされている。したがって、連通管77aのレゾネータ77を吸気通路60につなぐ連通路77bにおける下流側出口部77cはシリンダヘッド24により区画形成された吸気ポート38に開口する。連通路77bはここではレゾネータ77とシリンダヘッド24とをつなぐ連通管77aにより区画形成されているが、これに限定されず、レゾネータ77の一部又はシリンダヘッド24の一部として構成されてもよい。なお、主流路74の下流側部分74dは、主流路74における仕切部70の中間部70mよりも下流側の部分である。また、仕切部70の中間部70mは、吸気流れ方向に延びる仕切部70の吸気流れ方向の長さの中間に位置する部分であり、この実施形態では仕切本体部92と偏位部90とを含む仕切部70の吸気流れ方向の長さの中間に位置する部分であるが、例えば仕切本体部92のみを仕切部70が備える場合、吸気流れ方向の長さの中間に位置する部分である。
【0046】
内燃機関10を制御するECU(電子制御ユニット)80は、所謂コンピュータとしての構成を備え、吸気制御部82、燃料噴射制御部84及び点火制御部85を備えている。ECU80は、エンジン回転速度センサ、エンジン負荷センサなどの各種センサからの出力に基づいて内燃機関10の運転状態を解析して、吸気制御部82により、スロットル弁62cの作動を制御したり、タンブル制御弁75の作動を制御したりする。また、ECU80は、解析した内燃機関10の運転状態に基づいて、燃料噴射制御部84により、燃料噴射弁76、78の各作動を制御する。また、ECU80は、解析した内燃機関10の運転状態に基づいて、点火制御部85により、点火プラグ54の作動を制御する。なお、ECU80には、これらの制御のためのプログラム及び各種データが記憶されている。
【0047】
ここで、
図5及び
図6に、燃焼室32近傍の吸気系及び排気系の立体モデルMを示す。
図7に、
図6のVII-VII線に沿ったその立体モデルMの断面図を示し、
図8に
図6のVIII-VIII線に沿ったその立体モデルMの主に吸気系の断面図を示し、
図9に
図6のIX-IX線に沿ったその立体モデルMの主に吸気系の断面図を示し、
図10に
図6のX-X線に沿ったその立体モデルMの主に吸気系の断面図を示す。なお、
図11は、
図8に示す立体モデルMの斜視図である。また、
図12に、
図7のXII-XII線に沿った位置での立体モデルMの断面図を示す。
【0048】
立体モデルMは、インレットパイプ58の下流側端部から吸気ポート38を含み、かつ、排気ポート40を含む。なお、立体モデルMにおける吸気系の外表面79は、吸気通路60の下流側を区画形成する部材であるインレットパイプ58の内面58s、インシュレータ63の内面63s及びシリンダヘッド24の内壁面24sに対応する部分を有し、一部は仕切部70の表面70sに対応し、部分的に後述する偏位部90の表面90sに対応する。そこで、理解を容易にするように、インレットパイプ58の内面58s、インシュレータ63の内面63s、シリンダヘッド24の内壁面24s、仕切部70の表面70s、偏位部90の表面90sに対応する立体モデルMの個所に、それらの符号を付す。また、第2燃料噴射弁78が取り付けられてその噴射口が吸気通路60に臨む部分(以下、取付部)に符号「78s」を付す。更に、シリンダ軸線Cの方向において前述の「上」側に符号「U」を用い、「下」側に符号「D」を用いる。
【0049】
既に述べたように、また
図5から明らかなように、タンブル流路72と主流路74とはシリンダ軸線C方向において上下に重なる。また、
図8から明らかなように、タンブル流路72は、ここではその下流側端部72dは、主流路74よりも左右方向の幅が狭く、ここでは右側に偏っている。特にタンブル流路72のうちシリンダヘッド24の内壁面24sにより区画形成された部分72dは、
図9に示すように、吸気弁口34に対して右側に偏っている。
【0050】
図1、
図8から
図10及び
図12より理解できるように、仕切部70は、仕切部70の下流側に設けられた偏位部90を備える。偏位部90は、シリンダ軸線Cに交差する左右方向(LH-RH方向)つまり幅方向の幅が仕切部70の上流側端部(上流端)70uよりも狭い。偏位部90は、吸気通路60を吸気が上流側から下流側に流れる方向つまり吸気流れ方向において吸気弁44に対して向かったときに吸気弁44のバルブ軸線の一方側からもう一方側に延びる方向として定められ得る幅方向において、仕切部70の幅狭の部分である。
図12に示すように、タンブル流路72において、シリンダヘッド24により区画形成された部分のうちの仕切部70の上流側端部70u側に位置する上流端側部分の幅方向の幅W1よりも、下流端側部分72dの幅方向の幅W2は明らかに狭い。
【0051】
更に、偏位部90は、左右方向つまり幅方向において一方向に偏っている。ここでは、上述のように、タンブル流路72の下流端側部分72dは右RH側に偏るように区画形成されている(
図10及び
図12参照)。したがって、このタンブル流路72の偏っている下流端側部分72dを少なくとも部分的に区画形成する仕切部70の下流側の偏位部90は、ここでは右RH側に偏っている。したがって、ここでは、
図1において、シリンダ軸線Cは紙面に平行に延び、幅方向は同紙面に略直交するように延びる方向であるので、仕切部70の下流側に延びる偏位部90はあらわれず、よって実線ではなく二点破線で示している。このように、吸気流れ方向の下流側では、タンブル流路72は幅方向に偏るように設計され、これに伴い偏位部90は幅方向で同じ側に偏るように区画形成されている。
【0052】
ここで、上記仕切部70及びその下流側の偏位部90と、タンブル流路72及び主流路74との関係について、
図8から
図10に基づいて更に説明する。
【0053】
図8の切断箇所(
図6のVIII-VIII)では、タンブル流路72と主流路74とが完全に分かれている。そして、タンブル流路72の幅と主流路74の幅とは略同じである。この切断位置では、仕切部70は、タンブル流路72と主流路74との間において幅方向の両端でシリンダヘッド24の内壁面24sにまで延びていて、偏位部90の上流側につながる仕切本体部92が延在する。なお、
図8では、仕切部70の表面70s及びそのうちの仕切本体部92の表面92sに対応する個所にそれらの符号を付している。
【0054】
図9の切断箇所(
図6のIX-IX線)では、タンブル流路72と主流路74とが完全に分かれているが、タンブル流路72の幅が主流路74の幅よりも狭くなっている。この切断位置では、仕切部70は、タンブル流路72と主流路74との間において幅方向の両端でシリンダヘッド24の内壁面24sにまで延びていて、仕切本体部92から偏位部90へ移行する途中である。なお、
図9では、仕切部70の表面70sに対応する個所にその符号を付している。
【0055】
図10の切断箇所(
図6のX-X線)では、タンブル流路72と主流路74とは部分的につながっている。また、この切断面では、仕切部70の表面70sが幅方向に延びるとともに上下方向にも延びていて、右側に偏っている。これより、仕切部70は仕切本体部92から偏位部90に移行していて、その偏位部90がタンブル流路72と主流路74とを完全に隔てない程度に、吸気ポート38にシリンダヘッド24の内壁面24sの右側の箇所から左方向に延在していることがわかる。つまり、吸気流れ方向において偏位部90が延在する領域において主流路74とタンブル流路72とが連通するように、タンブル流路72及び主流路74は区画形成されている。換言すると、仕切部70の仕切本体部92よりも下流側において該仕切本体部92の一部を吸気流れ方向に延長するように、仕切本体部92につながる偏位部90は仕切本体部92の下流側に延出して形成されている。なお、
図10では、仕切部70の表面70s及びそのうちの偏位部90の表面90sに対応する個所にそれらの符号を付している。
【0056】
そして、吸気流れ方向において偏位部90が延在する領域において主流路74が偏位部90の脇つまり側方にまで下方に延びるように、タンブル流路72及び主流路74は区画形成されている。この主流路74の下方への拡張は、偏位部90が偏った方向とは反対側の方向で実施され、ここでは偏位部90の左LH側で行われている。なお、この主流路74の下方への拡張及びそれによる主流路74とタンブル流路72との融合は、偏位部90の下流側ほど顕著である。
【0057】
図9及び
図10に示すように、仕切部70が仕切本体部92から偏位部90に移行するにつれて、タンブル流路72を幅方向において偏らせる壁面24wがあらわれる。壁面24wはここではシリンダヘッド24の内壁面24sの一部であり、主流路74の第2方向側の真下に位置し、
図9及び
図10に示すようにシリンダ軸線Cの方向に延びて上下方向の長さを有するとともに、吸気流れ方向に延びている。したがって、この内壁面24sをシリンダ軸線の方向に伸ばすとき、この伸長した内壁面24sは主流路74を横断する。この壁面24wはタンブル流路72の下流端側部分72dの左LH側に延びてそれを区画形成し、タンブル流路72を右RH側に偏らせる。つまり、この壁面24wは、タンブル流路72からの吸気を前述の仮想面ISの一方側つまり右RH側に偏らせるように構成されている偏向部DPとなる。
【0058】
そして、第2燃料噴射弁78の取付部78sは、
図6、
図8及び
図11から明らかなように、吸気通路60の左LH側に位置付けられている。このように、第2燃料噴射弁78は、偏位部90が偏った方向とは反対側の方向に偏った位置に設けられている。よって、第2燃料噴射弁78は、偏位部90が偏った方向とは異なる方向に、より好ましくは反対側の方向において燃料を噴射することができる。なお、第2燃料噴射弁78は、上側につまり主流路74側に設けられていて、主流路74側から燃料を噴射する。
【0059】
ここで、
図6及び
図5に示す立体モデルMの透視図を
図13A及び
図13Bに示す。
図13A及び
図13Bにおいて、左LH側に偏った位置に設けた第2燃料噴射弁78から噴射された噴霧燃料SFを模式的に表す。また、
図10において、第2燃料噴射弁78から噴射された噴霧燃料SFの一部を模式的に表す。
図10、
図13A及び
図13Bより、第2燃料噴射弁78から噴射された燃料SFは仕切部70に阻まれることなく、その少なくとも一部が、ここでは特にその少なくとも過半が、より好ましくはその全てが、まず主流路74を流れ、次に主流路74とタンブル流路72との合流部(下流側合流部)72fに流れ、そして直接的に吸気弁口34に到達し、燃焼室32に導入されることが理解できる。このような燃料噴射を可能にするように、第2燃料噴射弁78の配置、及び、偏位部90を含む仕切部70の形状等は設計されている。特に、仕切部70の仕切本体部92はその下流側で部分的に終端して主流路74とタンブル流路72との合流を可能にし、また、偏位部90の表面90sに沿って好ましくは偏位部90に触れることなく第2燃料噴射弁78から噴射された燃料SFが吸気弁口34に達するように、仕切部70の仕切本体部92及びそれの下流側に続く偏位部90は設計されている(例えば
図10参照)。
【0060】
更に、主流路74側から燃焼室32に向けて燃料SFを噴射するように設けられている第2燃料噴射弁78は、偏位部90が偏った方向とは反対側の方向において燃料を噴射するように設けられている。したがって、仕切部70を、特にその偏位部90を吸気流れ方向でより下流側にまで延ばすことができる。そして、壁面24wである偏向部DPにより、タンブル流路72は偏位部90が偏った方向に下流側で偏るように区画形成されている。したがって、吸気流れ方向でより下流側にまで延長された仕切部70の偏位部90で、タンブル流路72からの吸気により強い指向性を与えることができる。
【0061】
このように、仕切部70は、その上流側の仕切本体部92で主流路74とタンブル流路72とを完全に仕切り、その下流側において、偏位部90を有して、主流路74とタンブル流路72とのつながりを実現しつつもタンブル流路72からの流れをより下流側まで特徴づけるように設計されている。また、第2燃料噴射弁78は偏位部90が偏った方向とは逆側に偏って配置され、ここでは幅方向において反対側に配置され、偏位部90とは異なる方向において燃料を噴射でき、吸気弁口34を介して概ね直接的に燃焼室32に燃料を導入することができる。つまり、燃焼室への燃料の供給を良好に確保することができる。したがって、仕切部70の下流側部分である偏位部90をより下流側にまで延ばすことができる。よって、タンブル流路72からの流れにより強い指向性を与えることができる。この指向性は燃焼室32でより強いタンブル流を形成するように吸気弁口34と開弁時の吸気弁44の傘部との間に向けられている。よって、タンブル流路72からの吸気で燃焼室32により好適にタンブル流を形成することができる。
【0062】
なお、タンブル流路72が仕切部70の下流側縁部つまり偏位部90の下流側縁部90dよりも下流側で主流路74と連通し、燃焼室32に連なる単一の吸気通路となるように、タンブル流路72及び主流路74は区画形成されている。これにより、タンブル流路72からの吸気は主流路74からの吸気とともに燃焼室32に導入され得、単一の吸気通路である単一の吸気ポート38からの吸気で、燃焼室32への燃料の供給とタンブル流の形成とを生じさせることが可能になる。なお、この構成は、部品点数の増加を抑制でき、コスト面でも優れる。
【0063】
上記内燃機関10では、前述のように、壁面24wにより、タンブル流路72からの吸気を仮想面ISの一方側つまり右RH側に偏らせ、燃焼室32に流入させることができる。このタンブル流路72からの吸気は上記のごとく強いタンブル流を形成するように強い指向性を有して、燃焼室32に流入し、燃焼室32を区画形成する壁面のうち排気側に延びる例えば天井面24tの部分やシリンダボア22bの部分に衝突する。この衝突により、その壁面によりタンブル流の縦方向の流れに横方向の力成分を生じさせることができる。よって、タンブル流路72からの吸気にタンブル流の縦方向の力成分に加えて、スワール流の横方向つまりシリンダ円周方向の力成分をも持たせることができる。
【0064】
加えて、燃焼室32に設けられる点火プラグ54は、その仮想面ISのその一方側に、つまり、タンブル流路72からの吸気が偏って導かれる側に位置付けられている。したがって、タンブル流路72からの吸気に含まれる燃料に、つまり混合気に、好適に点火することが可能になる。
【0065】
図14に、内燃機関10の燃焼室32及びその周囲をシリンダ軸線C方向上側からみた模式図を示す。
図14では、シリンダボア22b又は燃焼室32の天井面24tの円形開口縁24eの輪郭、吸気弁口34、排気弁口36及び点火プラグ54の相対的な配置を示す。吸気弁口34の中心部34aを通るとともに排気弁口36の中心部36aを通るように定められる前述の仮想面ISは、
図14において、シリンダ軸線Cを通り、かつ、吸気弁44のバルブステム44sの軸線(バルブ軸線)に重なる。
【0066】
タンブル流路72からの吸気は、
図14において矢印Tで示すように、仮想面ISに直交する幅方向において右RH側に偏って燃焼室32に入る。
図12においてタンブル流路72の下流端側部分72dは略一定の幅を有するので、タンブル流路72からの吸気の矢印Tは仮想面ISに略平行に示されている。この矢印Tは、燃焼室32において、仮想面ISの一方側である右側を主に通り、燃焼室32の排気弁口36側の壁面32Wに向かって進み、衝突することができる。このとき、矢印Tの流れがぶつかる壁面32Wは、主に仮想面ISよりも右RH側の壁であり、
図14に示すように排気側ほど仮想面ISに近づくように左側に向けて凹湾曲している。したがって、矢印Tの流れの壁面32Wへの衝突力Fは、壁面32Wに直交する直交成分Faと、壁面32Wに沿った接線成分Fbとに分けることができる。直交成分Faはシリンダ軸線C方向の縦の渦流つまりタンブル流を生じさせる成分である。接線成分Fbは仮想面ISの一方側である右側からその他方側である左側に向けてシリンダ円周方向に沿って回転する流れつまりスワール流を生じさせる成分となる。つまり、矢印Tの流れは、タンブル流を生じさせるとともにスワール流を生じさせるように、燃焼室32での流れを形成する。これにより、タンブル流路72からの流れは、燃焼室32で単にタンブル流を形成するときとは異なる渦中心を有することになり、燃焼室32でタンブル流を生じさせることができるとともに、仮想面ISの一方側である右RH側から左LH側へのスワール流のような流れをも生じさせることができる。
【0067】
タンブル流路72からの吸気が衝突する壁面32Wは、前述のように燃焼室32を区画形成する壁面のうち排気側に延びる例えば天井面24tの部分やシリンダボア22bの部分である。前述のように、天井面24tは凹状の曲面に形成されている。したがって、天井面24tはタンブル流路72からの吸気により好適に接線成分Fbの力を生じさせることができる。特にここでは天井面24tは略半球状に形成されていて、滑らかな凹曲面であるので、そのような力をタンブル流路72からの吸気に生じさせ、スワール流のような流れをより好適に生じさせることに寄与し得る。
【0068】
なお、吸気がより右側に偏るように方向づけられて燃焼室32に流入した場合の、その流れを
図14において矢印T1で示す。このとき、矢印Tの流れに比べて、矢印T1の流れは壁面32Wにより角度をつけて衝突するので(θ1<θ2)、矢印T1の流れの衝突力F1が矢印Tの流れの衝突力Fと同じ大きさを有する場合(F1=F)、矢印T1の流れの衝突力F1は、相対的に小さな直交成分Fa1(Fa1<Fa)と、相対的に大きな接線成分Fb1(Fb1>Fb)とを生じさせることができる。よって、よりスワール流の成分が大きくなり、仮想面ISの一方側から他方側への火炎伝播はより生じ易くなる。この生じさせる接線成分の力の程度を考慮してタンブル流路72の偏り、タンブル流路72の燃焼室32に対する傾きなど、例えば壁面24wは設計されるとよい。
【0069】
また、内燃機関10では、点火プラグ54は、その仮想面ISの、タンブル流路72からの吸気が偏って導かれる側に位置付けられている。したがって、タンブル流路72からの吸気は、燃料を含み、混合気を実質的に形成するので、燃焼室32に導入された混合気は点火プラグ54により好適に点火される。そして、仮想面ISの一方側である右RH側から左LH側への流れが上述のように形成されるので、燃焼室32での火炎伝播を好適に生じさせることができる。
【0070】
さて、上記構成の内燃機関10において、前述のように、吸気通路60に、特にスロットル弁62cの下流側の吸気通路60dにレゾネータ77が接続されている。レゾネータ77は、
図1、
図5から
図9、
図11、
図13A及び
図13Bに示すように、吸気流れ方向に対して、直交するのではなく、斜めに吸気通路60dに連通するように設けられている。そして、連通管77aは上側から下側に向けて斜めに差し込まれるようにシリンダヘッド24に接続されている。したがって、連通管77aつまり連通路77bにおける下流側出口部77cの軸線77d(
図7及び
図9)は吸気通路60、60dへの接続箇所での吸気流れ方向に斜めに交差し、ここでは特に燃焼室32側を向く。
【0071】
レゾネータ77を吸気通路60につなげる連通路77bは、第2燃料噴射弁78と同じく、左LH側に偏った位置に設けられている。そして、連通路77bは主流路74及び下流側合流部72fに直接的に連通する。更に、
図1及び
図6から明らかなように、連通路77bの吸気通路60への連通箇所は第2燃料噴射弁78の取付部78s近傍の、その取付部78sのすぐ下流側に位置決めされている。これにより、レゾネータ77を吸気通路66につなぐ連通路77bにおける下流側出口部77cの軸線77dを、第2燃料噴射弁78の燃料噴射方向と略平行にする。つまり、第2燃料噴射弁78は吸気弁口34を介して概ね直接的に燃焼室32に燃料を導入することができるように方向づけされているのと同様に、レゾネータ77の連通路77bは、レゾネータ77からの吸気を直接的に燃焼室32に方向付けることができるように、吸気通路60に対して設けられている。特にここでは、このレゾネータ77からの吸気の指向性は燃焼室32でより強いスワール流を形成するように吸気弁口34と開弁時の吸気弁44の傘部との間に向けられている。
【0072】
図15に、
図5の立体モデルを示すとともに、吸気弁44を模式的に示し、レゾネータ77からの吸気の流れ方向つまり軸線77dを模式的に示す。また、
図16に、吸気流れ方向の上流側から吸気弁口34側をみた図を模式的に示し、吸気弁口34を開いた状態の吸気弁44に対する第2燃料噴射弁78から噴霧燃料SFと、レゾネータ77からの吸気の流れ方向つまり軸線77dとを示す。
【0073】
図15及び
図16に示すように、レゾネータ77からの吸気が開弁時の吸気弁44の傘部と吸気弁口34との間を直接通過して燃焼室32に向くように、連通路77bの軸線77dは、開弁時の吸気弁44の傘部44aと吸気弁口34との間を直接的に通過して燃焼室32に延びる。ここでは、吸気流れ方向において上流側から、開弁時の吸気弁44の傘部44a側をみた
図16に示すように、この連通路77bの軸線77dの方向は、連通路77bの軸線77dが吸気弁44のバルブステム44sよりも上流側においてバルブステム44sと交差するように定められている。なお、連通路77bの軸線77dは、吸気弁44のバルブステム44sよりも上流側においてバルブステム44sと交差することに限定されず、吸気弁44のバルブステム44sと直接的に交わっても、そのバルブステム44sよりも下流側においてバルブステム44sと交差するように定められることもできる。
【0074】
そして、
図15の立体モデルMの側面図において、連通路77bの軸線77dは、吸気弁44が吸気行程で開弁しているときに吸気弁44の傘部44aの裏部(燃焼室に向かって面する側)と吸気弁口34との間に定めることができる仮想円柱体IC(
図15)において、連通路77bの出口部77cと反対側の仮想壁面を通る。そして、吸気弁口34の下流側において、連通路77bの軸線77dは、傘部44aの面に略平行に延びる。
【0075】
レゾネータ77は連通路77bを介して前述のように吸気通路60dにつながっているので、レゾネータ77からの空気が燃焼室32に向けて流れるとき、その空気は、吸気弁口34の右側に偏って燃焼室32に流入することができる。このレゾネータ77からの吸気の偏りは、前述のように連通路77bにおける下流側出口部77cの軸線77dが吸気通路60、60dへの接続箇所での吸気流れ方向に斜めに交差しているので、タンブル流路72からの吸気の偏りよりも大きい。タンブル流路72からの吸気が
図14に矢印Tで示すように燃焼室32に偏って流入することに対して、レゾネータ77からの吸気は
図14に矢印T1で示すように右側に偏って又はそれ以上に偏って燃焼室32にする流入することができる。したがって、レゾネータ77からの吸気でスワール流又はそれに近い渦流を生じさせることができる。
【0076】
ここで、実験結果を説明する。吸気通路60に連通してスロットル弁62cより下流にレゾネータを設けることにより、タンブル流路72による流動を強化する効果について、
図17及び
図18を参照して、レゾネータが設けられていない吸気装置の場合と比較して説明する。
図17に示されるように、これらの吸気装置では、吸気通路の上側の流路部にタンブル制御弁75が取り付けられており、上側が主流路74、下側がタンブル流路72となっている。
図17には、
図18で示す吸気装置内の圧力の変化を表している各所の位置を、A,Bで示している。A点は、スロットル弁62cの下流側であってタンブル流路72と主流路74とを仕切る仕切部70の上流側端部つまり上流端70uより上流側に位置しており、B点はタンブル流路72内に位置している。
【0077】
図18は、レゾネータ77がスロットル弁62cより下流側に接続された吸気装置と、レゾネータ77がスロットル弁62cより下流側に接続されていない吸気装置の、スロットル弁62cの徐開時における1サイクルにおけるクランク角ごとの各所の圧力のデータを、横軸をクランク角、縦軸を圧力として表している。スロットル弁62c下流から吸気弁44までの吸気装置内の吸気通路領域をスロットル弁下流吸気領域と定義し、この容積をスロットル弁下流吸気容積と定義する。これらの定義においては、レゾネータ77が接続されている場合には、レゾネータ77内の領域および容積も含んでいる。
【0078】
レゾネータ77がスロットル弁62cより下流側に接続されてない場合の吸気通路の圧力変化および吸気の流動について説明する。レゾネータ77がスロットル弁62cより下流側に接続されていない場合とは、吸気装置がレゾネータ77を有しない場合、また吸気装置がレゾネータ77を有していても、スロットル弁62cより上流側に接続されている場合である。
【0079】
レゾネータ77がスロットル弁62cより下流側に接続されていない吸気装置では、スロットル弁下流吸気容積が大きくないので、ここに溜まっている空気量が少なく、吸気弁44が開いてから閉じるまでの吸気行程において、スロットル弁62cの開口を通じて、スロットル弁62cの上流の大気から空気の取り込みを行う。しかし、スロットル弁62cの開口が小さいので、ピストン28の下降に伴って増加する体積分の空気量のチャージが間に合わず、吸気ポート内圧力は急激に負圧となる(
図18において、クランク角380度付近から540度付近の間)。このように吸気ポート内圧力が急激に負圧になると、ピストン28の下降にともない、スロットル弁下流吸気領域内の空気が膨張して吸入するため流動が弱くなり、筒内で形成されるタンブル流といった渦流が弱くなる。
【0080】
次にレゾネータ77がスロットル弁62cより下流側に接続された場合の吸気通路の圧力変化および吸気の流動について説明する。吸気弁44が開いてから閉じるまでの吸気行程において、レゾネータ77が接続されていないものの場合に比べて、レゾネータ77内の容積分、スロットル弁下流吸気容積が大きいので、溜る空気の質量は大きい。
【0081】
吸気弁44が開いたときに、ピストン28の下降に伴って増加する体積分の空気量のチャージが、スロットル弁下流吸気領域内に多く溜まった空気から行われて、スロットル弁62cの開口を通じて、スロットル弁62cの上流の大気から取り込む空気量が比較的少ない。
【0082】
そのため、徐開時等のスロットル弁62cの開口が比較的小さい場合であっても、吸気ポート内圧力の負圧の変化は比較的少ないものとなる(
図18において、クランク角380度付近から540度付近の間)。このように吸気ポート内圧力が急激に負圧になることが少ないので、ピストン下降にともなったスロットル弁下流吸気領域内の吸気の膨張が比較的少なく、流動が低下せず、筒内で形成されるタンブル流といった渦流の流動を高めることができる。
【0083】
ここで本実施形態の説明に戻る。本実施形態の吸気装置Sにおける内燃機関10での吸気の吸入について、
図19、
図20A及び
図20Bに基づいて更に説明する。
【0084】
図19は、スロットル弁62c及びタンブル制御弁75の動作マップであり、横軸にエンジン回転速度Neをとり、縦軸に内燃機関10の出力をとり、スロットル弁62cの全開時の線と、タンブル制御弁75の開度領域を示す。領域α1及び領域α2はともに
図1に破線で示すようにタンブル制御弁75が閉じられる領域であり、領域βは
図1に実線で示すようにタンブル制御弁75が開かれる領域である。領域α1は、スロットル弁62cが徐開される領域であり、低負荷領域に相当し、領域α2はスロットル弁62cが領域α1での開度よりも大きな所定開度以上に開かれる領域であり、中負荷領域に相当する。なお、ここではタンブル制御弁75は全開及び全閉のどちらかの状態にされる。しかし、全開と全閉との間の開度をとるようにタンブル制御弁75が制御されてもよい。
図19のマップ化されたデータは、ECU80の記憶部に記憶されている。
【0085】
図20Aのグラフは、横軸にスロットル弁62cの開度つまりスロットル開度THをとり、縦軸に燃焼室32への吸入空気流量をとり、タンブル流路72からの吸気流量と、レゾネータ77からの吸気流量との関係を示す。細線はレゾネータ77からの吸気流量を、太線はタンブル流路72からの吸気流量である。なお、
図20Aのグラフの破線は、タンブル流路72からの吸気流量と、レゾネータ77からの吸気流量との和を示す。
【0086】
図20Bのグラフは、タンブル流路72からの吸気によるタンブル流といった渦流と、レゾネータ77からの吸気によるスワール流といった渦流との強さの相関関係を示すものであり、横軸は
図20Aのグラフの横軸と同じであり縦軸はその渦流の強さを示す。ただし、
図20A及び
図20Bの横軸は、タンブル制御弁75が閉弁されているときのスロットル開度であり、開度TH1は、低負荷領域(
図19の領域α1に相当)と中負荷領域(
図19の領域α2に相当)の境界での開度である。
【0087】
タンブル制御弁75が閉弁状態にあり、スロットル開度THが徐開など相対的に小さいとき、つまり、内燃機関の運転状態が低負荷領域つまり領域α1にあるとき、前述のようにスロットル弁62cから下流側の吸気流路部分であるタンブル流路72の吸気は少ない。このとき、吸気行程においては、タンブル流路72を介して流入する吸気に加えて、前述のようにレゾネータ77内の吸気も燃焼室32へ吸入される。
【0088】
このように、タンブル制御弁75が閉弁状態にあり、スロットル開度THが相対的に小さいとき(例えばTH<TH1のとき)、吸気行程においては、タンブル流路72を介して流入する吸気に加えて、レゾネータ77内の吸気も燃焼室32へ積極的に吸入される。このとき、レゾネータ77からの吸気は、前述のように指向されて、燃焼室32の右側へ強く指向されて吸入される。これにより、スワール流又はスワール成分の強いタンブル流が燃焼室32で強く生じることになる(
図20Bの「スワール」線)。よって燃焼室における混合気の燃焼を促進することができる。このように、上記のように設けたレゾネータ77により、スロットル開度が相対的に小さいときの吸気の吸入を改善することができる。
【0089】
一方、タンブル制御弁75が閉弁状態にあり、スロットル開度THが徐々に大きくなると、例えば内燃機関の運転状態が中負荷領域つまり領域α2にあるとき、スロットル弁62cからその下流側のタンブル流路72に流入する吸気で、吸気行程での吸入空気はまかなえるようになり、レゾネータ77内の吸気が燃焼室32へ吸入される度合いは低下する。
【0090】
このように、タンブル制御弁75が閉弁状態にあり、スロットル開度THが相対的に大きいとき(例えばTH>TH1のとき)、吸気行程においては、タンブル流路72に流入する吸気が主に燃焼室32へ吸入される。これにより、タンブル流路72を経た吸気によりタンブル流を燃焼室32において生じさせることができる(
図20Bの「タンブル」線)。よって、タンブル制御弁75が閉弁状態にあり、スロットル開度THが相対的に大きいときも、吸気の吸入を好適に行うことができる。
【0091】
以上述べたように、レゾネータ77が、吸気流れ方向において仕切部70の中間部70mよりも下流側において吸気通路に連通するように設けられる。したがって、例えば内燃機関の低負荷領域での稼働時といったスロットル弁62cが絞られた状態つまりその開度が相対的に小さいとき、仕切部70より下流側の吸気通路にレゾネータ側から吸気が流れ込むことができる。よって、吸気通路から燃焼室32への吸気の流入を改善することができる。
【0092】
そして、レゾネータ77を吸気通路60につなぐ連通路70bにおける下流側出口部70cの軸線70dは前述のように燃焼室32側を向くように設計されている。したがって、レゾネータから流入する空気を燃焼室32に導きやすくすることができ、よって燃焼室32で例えばスワール流といった渦流をより積極的に生じさせることができる。
【0093】
更に、レゾネータ77は、連通路77bを介して、燃焼室32の天井面24tを区画形成するシリンダヘッド24に直接的に繋げられている。したがって、レゾネータ77から流入する空気を燃焼室32により直接的に導くことができる。
【0094】
更に、第2燃料噴射弁78からの燃料がレゾネータ77を吸気通路60につなぐ連通路77bにおける下流側出口部の軸線77dに略平行な方向に噴射されるので、タンブル制御弁75が閉弁状態にあるとき、スワール流及び/又はタンブル流により燃料の混合がより好適に促進され、その燃焼を促進することができる。
【0095】
更に、この燃料の噴射方向に点火プラグ54が位置するように位置付けられている。従って、燃焼室32での燃料の燃焼を更に好適に生じさせることができる。
【0096】
なお、上記内燃機関10の吸気装置Sでは、吸気流れ方向において仕切部70の中間部70mよりも下流側において吸気通路60に連通するように、特に主流路74の下流側部分に連通するようにレゾネータ77が設けられた。これにより、内燃機関10の低負荷領域α1での稼働時においてスロットル弁62cが絞られた状態において、レゾネータ77からの吸気を燃焼室32に効果的に導入することを可能にした。そして、更に、レゾネータ77の吸気を吸気通路60につなぐ連通路77bにおける下流側出口部77cの軸線77dは燃焼室32側を向くように設計された。これにより、レゾネータ77からの吸気をより直接的に燃焼室32に向け、燃焼室32でスワール流又はスワール成分を有するタンブル流を積極的に生じさせるようにした。このように、燃焼室32でスワール流又はスワール成分を有するタンブル流を積極的に生じさせるために、連通路77bは、主流路74の中でもその下流側部分よりも下流側に連通するとよく、例えばタンブル流路72と主流路74との下流側合流部72fに連通するとよい。
【0097】
また、
図21に示すように、レゾネータ77を吸気通路60につなぐ連通路77bにおける下流側出口部77cに切欠部77eが更に設けられてもよい。切欠部77eを設けることで、例えば第2燃料噴射弁78からの燃料が連通路77bの下流側出口部77cに滞留することをより効果的に防ぐことができる。
【0098】
以上、本発明に係る実施形態及びその変形例について説明したが、本発明はそれらに限定されない。本願の請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【0099】
なお、上記内燃機関10は、1気筒当たりたった1つの吸気弁及びたった1つの排気弁を備える2バルブの内燃機関であった、しかし、本発明が適用される内燃機関は1気筒当たり3バルブ以上を有してもよい。また、上記内燃機関10はタンブル制御弁75を備えたが、本発明はタンブル制御弁75が設けられない内燃機関にも適用され得る。
【符号の説明】
【0100】
10…内燃機関、12…クランク軸、22…シリンダブロック、24…シリンダヘッド
24w…壁部、32…燃焼室、34…吸気弁口、36…排気弁口、38…吸気ポート
40…排気ポート、44…吸気弁、46…排気弁、54…点火プラグ、60…吸気通路
62…スロットルボディ、62c…スロットル弁、70…仕切部
72…タンブル流路(第1吸気流路)、74…主流路(第2吸気流路)
75…タンブル制御弁、76…第1燃料噴射弁、77…レゾネータ、77b…連通路
78…第2燃料噴射弁、90…偏位部、92…仕切本体部
DP…偏向部、M…立体モデル、S…吸気装置