(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】直流遮断装置、直流遮断装置の制御装置、直流遮断装置の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01H 33/59 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
H01H33/59 B
(21)【出願番号】P 2023557861
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2021040391
(87)【国際公開番号】W WO2023079592
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江尻 開
(72)【発明者】
【氏名】星野 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】金谷 和長
(72)【発明者】
【氏名】石黒 崇裕
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特公昭51-023015(JP,B1)
【文献】特許第6328356(JP,B1)
【文献】特開平05-081973(JP,A)
【文献】特表2018-538677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/28 - 33/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流線路に挿入され
、遮断対象電流が一方向及び逆方向に流れる主遮断器と、
前記主遮断器に対して並列に接続される梯子回路と、を備え、
前記梯子回路は、3個以上の枝部が直列に接続された2個以上の縦木部と、
前記2個以上の縦木部のそれぞれにおける前記枝部同士の節点のうち、互いに対応する前記節点同士の間に介在される横木部と、を備え、
前記枝部のうちの複数が開閉器を含み、
前記横木部は、蓄電部を含む、
直流遮断装置。
【請求項2】
前記主遮断器に並列に接続される補助回路を更に備える、
請求項1に記載の直流遮断装置。
【請求項3】
前記枝部は、リアクトル、コンデンサ、または抵抗のうち少なくともいずれか1つを更に含む、
請求項1または2に記載の直流遮断装置。
【請求項4】
前記横木部は、リアクトルまたはエネルギー吸収ユニットのうち少なくともいずれか1つを更に含む、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の直流遮断装置。
【請求項5】
前記開閉器は、ギャップスイッチ、真空開閉器、ガス開閉器、または半導体素子のうち少なくともいずれか1つを含む、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の直流遮断装置。
【請求項6】
前記主遮断器は、真空遮断器またはガス遮断器のうち少なくともいずれか1つを含んで構成される、請求項1から5のうちいずれか1項に記載の直流遮断装置。
【請求項7】
前記主遮断器に並列に配置されたエネルギー吸収ユニットを更に備える、
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の直流遮断装置。
【請求項8】
前記主遮断器は、複数の遮断ユニットを備え、
前記遮断ユニットは、前記真空遮断器またはガス遮断器のうち少なくともいずれか1つと、エネルギー吸収ユニットと、が互いに並列に接続された回路を含む、
請求項6に記載の直流遮断装置。
【請求項9】
直流線路に挿入される主遮断器と、
前記主遮断器に対して並列に接続される梯子回路と、を備え、
前記梯子回路は、3個以上の枝部が直列に接続された2個以上の縦木部と、
前記2個以上の縦木部のそれぞれにおける前記枝部同士の節点のうち、互いに対応する前記節点同士の間に介在される横木部と、を備え、
前記枝部のうちの複数が開閉器を含み、
前記横木部は、蓄電部を含み、
前記主遮断器は、真空遮断器またはガス遮断器のうち少なくともいずれか1つを含んで構成され、
前記主遮断器は、複数の遮断ユニットを備え、
前記遮断ユニットは、前記真空遮断器またはガス遮断器のうち少なくともいずれか1つと、エネルギー吸収ユニットと、が互いに並列に接続された回路を含む、
直流遮断装置。
【請求項10】
請求項1から9のうちいずれか1項に記載の直流遮断装置における前記開閉器を開閉制御する制御部を備える、
直流遮断装置の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記主遮断器に流れる遮断対象電流に重畳させる電流の向き、周波数、または大きさのうち少なくともいずれか1つを変更するように、前記開閉器を制御する、
請求項10に記載の直流遮断装置の制御装置。
【請求項12】
直流線路に挿入される主遮断器と、
前記主遮断器に対して並列に接続される梯子回路と、を備え、
前記梯子回路は、3個以上の枝部が直列に接続された2個以上の縦木部と、
前記2個以上の縦木部のそれぞれにおける前記枝部同士の節点のうち、互いに対応する前記節点同士の間に介在される横木部と、を備え、
前記枝部のうちの複数が開閉器を含み、
前記横木部は、蓄電部を含む、
直流遮断装置における前記開閉器を開閉制御する制御部を備え、
前記制御部は、遮断対象電流が前記主遮断器を一方向に流れる場合に、第1開閉パターンで前記開閉器を制御し、前記開閉器をすべて開放させた後、第2開閉パターンで前記開閉器を制御し、
前記第1開閉パターンは、2個以上の前記縦木部における第1縦木部及び第2縦木部に含まれる複数の前記開閉器を、前記第1縦木部における奇数番目及び前記第2縦木部における偶数番目の前記開閉器を開放し、前記第1縦木部における偶数番目及び前記第2縦木部における奇数番目の前記開閉器を閉鎖するパターンであり、
前記第2開閉パターンは、2個以上の前記縦木部における第1縦木部及び第2縦木部に含まれる複数の前記開閉器を、前記第1縦木部における偶数番目及び前記第2縦木部における奇数番目の前記開閉器を開放し、前記第1縦木部における奇数番目及び前記第2縦木部における偶数番目の前記開閉器を閉鎖するパターンである、
直流遮断装置の制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、遮断対象電流が前記主遮断器を前記一方向とは逆方向に流れる場合に、前記第2開閉パターンで前記開閉器を制御し、前記開閉器をすべて開放させた後、前記第1開閉パターンで前記開閉器を制御する、
請求項12に記載の直流遮断装置の制御装置。
【請求項14】
直流線路に挿入される主遮断器と、
前記主遮断器に対して並列に接続される梯子回路と、を備え、
前記梯子回路は、3個以上の枝部が直列に接続された2個以上の縦木部と、
前記2個以上の縦木部のそれぞれにおける前記枝部同士の節点のうち、互いに対応する前記節点同士の間に介在される横木部と、を備え、
前記枝部のうちの複数が開閉器を含み、
前記横木部は、蓄電部を含む、
直流遮断装置における前記開閉器を開閉制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記主遮断器に流れる遮断対象電流の大きさまたは向きのうち少なくとも1つに基づいて、閉鎖する前記開閉器を調整する、
直流遮断装置の制御装置。
【請求項15】
直流線路に挿入される主遮断器と、
前記主遮断器に対して並列に接続される梯子回路と、を備え、
前記梯子回路は、3個以上の枝部が直列に接続された2個以上の縦木部と、
前記2個以上の縦木部のそれぞれにおける前記枝部同士の節点のうち、互いに対応する前記節点同士の間に介在される横木部と、
開閉器を開閉制御する制御部と、を備え、
前記枝部のうちの複数が前記開閉器を含み、
前記横木部は、蓄電部を含む、
直流遮断装置の制御装置のコンピュータが、
前記制御部は、遮断対象電流が前記主遮断器を一方向に流れる場合に、第1開閉パターンで前記開閉器を制御し、前記開閉器をすべて開放させた後、第2開閉パターンで前記開閉器を制御し、
前記第1開閉パターンは、2個以上の前記縦木部における第1縦木部及び第2縦木部に含まれる複数の前記開閉器を、前記第1縦木部における奇数番目及び前記第2縦木部における偶数番目の前記開閉器を開放し、前記第1縦木部における偶数番目及び前記第2縦木部における奇数番目の前記開閉器を閉鎖するパターンであり、
前記第2開閉パターンは、2個以上の前記縦木部における第1縦木部及び第2縦木部に含まれる複数の前記開閉器を、前記第1縦木部における偶数番目及び前記第2縦木部における奇数番目の前記開閉器を開放し、前記第1縦木部における奇数番目及び前記第2縦木部における偶数番目の前記開閉器を閉鎖するパターンである、
直流遮断装置の制御方法。
【請求項16】
直流線路に挿入される主遮断器と、
前記主遮断器に対して並列に接続される梯子回路と、を備え、
前記梯子回路は、3個以上の枝部が直列に接続された2個以上の縦木部と、
前記2個以上の縦木部のそれぞれにおける前記枝部同士の節点のうち、互いに対応する前記節点同士の間に介在される横木部と、
開閉器を開閉制御する制御部と、を備え、
前記枝部のうちの複数が前記開閉器を含み、
前記横木部は、蓄電部を含む、
直流遮断装置の制御装置のコンピュータに、
前記制御部は、遮断対象電流が前記主遮断器を一方向に流れる場合に、第1開閉パターンで前記開閉器を制御し、前記開閉器をすべて開放させた後、第2開閉パターンで前記開閉器を制御させ、
前記第1開閉パターンは、2個以上の前記縦木部における第1縦木部及び第2縦木部に含まれる複数の前記開閉器を、前記第1縦木部における奇数番目及び前記第2縦木部における偶数番目の前記開閉器を開放し、前記第1縦木部における偶数番目及び前記第2縦木部における奇数番目の前記開閉器を閉鎖するパターンであり、
前記第2開閉パターンは、2個以上の前記縦木部における第1縦木部及び第2縦木部に含まれる複数の前記開閉器を、前記第1縦木部における偶数番目及び前記第2縦木部における奇数番目の前記開閉器を開放し、前記第1縦木部における奇数番目及び前記第2縦木部における偶数番目の前記開閉器を閉鎖するパターンである、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、直流遮断装置、直流遮断装置の制御装置、直流遮断装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧直流送電の実現に向け、近年、高電圧直流遮断装置(以下、単に「直流遮断装置」と呼ぶ)の開発が進んでいる。直流遮断装置には、直流線路で発生した事故を遮断する主遮断器と、主遮断器に流れる電流を打ち消す高周波電流を供給する転流回路(共振回路ともいう)を備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。この方式は、強制消弧方式と呼ばれる。この種の直流遮断装置としては、高速度再閉路を行うものがあり、高速度再閉路後に事故遮断を行う強制消弧方式の直流遮断装置として、従来、複数の共振回路を備える技術(例えば、特許文献2参照)や、共振回路としてブリッジ回路を備える技術(例えば、特許文献3参照)がある。
【0003】
しかし、複数の共振回路を備える技術では、共振回路の数が増えるため、装置のコンパクト化を妨げる原因となる。また、ブリッジ回路を備える技術では、コンデンサの全電圧に耐えることのできる開閉器が複数必要であり、やはりコンパクト化を妨げる原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-34525号公報
【文献】特許第6328356号公報
【文献】特許第6509466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、構造をコンパクトにすることができる直流遮断装置、直流遮断装置の制御装置、直流遮断装置の制御方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の直流遮断装置は、主遮断器と、梯子回路と、を持つ。主遮断器は、直流線路に挿入される。梯子回路は、前記主遮断器に対して並列に接続される。前記梯子回路は、2個以上の縦木部と、横木部と、を持つ。2個以上の縦木部は、3個以上の枝部が直列に接続される。横木部は、前記2個以上の縦木部のそれぞれにおける前記枝部同士の節点のうち、互いに対応する前記節点同士の間に介在される。前記枝部のうちの複数が開閉器を含む。前記横木部は、蓄電部を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】梯子回路部3における枝部5の複数の例を並べて示す図。
【
図5】直流遮断装置100の回路構成の一例を示す図。
【
図6】制御部101により制御される直流遮断装置100における動作波形の例を示す図。
【
図7】全横木部コンデンサを使用して逆電流を重畳した場合の電流Ib及び電圧Vbの時間変化を示す図。
【
図8】全横木部コンデンサの一部を使用して逆電流を重畳した場合の電流Ib及び電圧Vbの時間変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の直流遮断装置、直流遮断装置の制御装置、直流遮断装置の制御方法、及びプログラムを、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を示す。それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0009】
図1は、直流遮断装置100の回路図である。直流遮断装置100は、例えば、主遮断器1と、補助回路部2と、梯子回路部3と、制御部101と、を備える。補助回路部2及び梯子回路部3は、主遮断器1に対して並列に接続される。補助回路部2は、主遮断器1及び梯子回路部3の構成次第では、省略されていてもよい。
【0010】
主遮断器1は、例えば、真空遮断器を備える。主遮断器1は、例えば、ガス遮断器を備えてもよく、真空遮断器とガス遮断器を組み合わせて構成されていてもよい。主遮断器1には、可飽和リアクトルが直列に接続されていてもよい。可飽和リアクトルは、1個でもよいし複数でもよい。直流遮断装置100は、エネルギー吸収ユニットを備えてもよい。この場合、真空遮断器やガス遮断器は、エネルギー吸収ユニットの各々または複数に対して並列に接続されてもよい。エネルギー吸収ユニットは、過剰なエネルギー、例えば電力を吸収するユニットである。エネルギー吸収ユニットは、例えば、酸化亜鉛(ZnO)素子が直列及び並列に組み合わされた避雷器(MOSA:Metal Oxide Surge Arrestors)として構成される。避雷器における酸化亜鉛素子は、直列のみまたは並列のみとされていてもよい。
【0011】
主遮断器1は、例えば、複数の遮断ユニットを備え、遮断ユニットは、真空遮断器またはガス遮断器のうち少なくともいずれか1つと、エネルギー吸収ユニットと、が互いに並列に接続された回路を含んでいてもよい。また、遮断ユニットは、真空遮断器またはガス遮断器のうち少なくともいずれか1つ及びエネルギー吸収ユニットに対して互いに並列に接続された分圧回路を更に含んでいてもよい。この場合の分圧回路は、例えば、複数の遮断ユニットにおける真空遮断器またはガス遮断器の極間に生じる極間電圧を均等または不均等に分圧するように動作する回路でよい。
【0012】
複数の可飽和リアクトルは、例えば直列に接続される。主遮断器1における左側には、例えば発電所などの電力供給源が接続され、右側には、負荷が接続される。以下の説明において、電力供給源が接続される側を上流側、負荷が接続される側を下流側という。
【0013】
図2は、補助回路部2の複数の例を並べて示す図である。補助回路部2は、例えば、リアクトル21及びエネルギー吸収ユニット22を組み合わせて構成される。補助回路部2は、リアクトル21またはエネルギー吸収ユニット22のいずれかでもよいし、これらの複数を組み合わせて構成されてもよい。
【0014】
図2の最左部に第1例として示される第1補助回路部2Aは、2個のリアクトル21と、1つのエネルギー吸収ユニット22を備える。2個のリアクトル21は、主遮断器1の上流側と梯子回路部3の上流側を結ぶ配線と、主遮断器1の下流側と梯子回路部3の下流側を結ぶ配線と、にそれぞれ配置される。主遮断器1の上流側と梯子回路部3の上流側を結ぶ配線に配置されたリアクトル21と主遮断器1を結ぶ配線にエネルギー吸収ユニット22の一端が接続され、主遮断器1の下流側と梯子回路部3の下流側を結ぶ配線に配置されたリアクトル21と梯子回路部3を結ぶ配線にエネルギー吸収ユニット22の他端が接続される。
【0015】
図2の左から2番目に第2例として示される第2補助回路部2Bは、2個のリアクトル21と、1つのエネルギー吸収ユニット22を備える。2個のリアクトル21は、主遮断器1の上流側と梯子回路部3の上流側を結ぶ配線に直列に配置される。2個のリアクトル21を結ぶ配線にエネルギー吸収ユニット22の一端が接続され、主遮断器1の下流側と梯子回路部3の下流側を結ぶ配線にエネルギー吸収ユニット22の他端が接続される。
【0016】
図2の左から3番目に第3例として示される第3補助回路部2Cは、1つのリアクトル21と、1つのエネルギー吸収ユニット22を備える。リアクトル21は、主遮断器1の上流側と梯子回路部3の上流側を結ぶ配線に配置される。リアクトル21と主遮断器1の上流側を結ぶ配線にエネルギー吸収ユニット22の一端が接続され、主遮断器1の下流側と梯子回路部3の下流側を結ぶ配線にエネルギー吸収ユニット22の他端が接続される。
【0017】
図2の左から4番目に第4例として示される第4補助回路部2Dは、2個のリアクトル21と、1つのエネルギー吸収ユニット22を備える。2個のリアクトル21は、主遮断器1の上流側と梯子回路部3の上流側を結ぶ配線と、主遮断器1の下流側と梯子回路部3の下流側を結ぶ配線と、にそれぞれ配置される。主遮断器1の上流側と梯子回路部3の上流側を結ぶ配線に配置されたリアクトル21と梯子回路部3を結ぶ配線にエネルギー吸収ユニット22の一端が接続され、主遮断器1の下流側と梯子回路部3の下流側を結ぶ配線に配置されたリアクトル21と梯子回路部3を結ぶ配線にエネルギー吸収ユニット22の他端が接続される。
【0018】
図2の左から5番目に第5例として示される第5補助回路部2Eは、1つのリアクトル21のみを備える。リアクトル21は、主遮断器1の上流側と梯子回路部3の上流側を結ぶ配線に設けられる。
図2の左から6番目に描画される第6補助回路部2Fは、1つのエネルギー吸収ユニット22のみを備える。エネルギー吸収ユニット22の一端は、主遮断器1の上流側と梯子回路部3の上流側を結ぶ配線に接続され、エネルギー吸収ユニット22の他端は、主遮断器1の下流側と梯子回路部3の下流側を結ぶ配線に接続される。
【0019】
補助回路部2は、上記の第1補助回路部2A~第6補助回路部2Fのいずれかのように、それぞれが1つまたは複数組み合わされてまたは単独で用いられてよい。上記の第1補助回路部2A~第6補助回路部2Fは、主遮断器1および梯子回路部3に対する接続を反転させたり、紙面上の左右を反転させたりしてもよいし、並列部分を直列としたり、直列部分を並列としたりしてもよい。
【0020】
梯子回路部3は、例えば、2個以上、例えば2個の縦木部4を備える。2個の縦木部4は、例えば、直列に接続された3個以上の枝部5を備える。隣接する枝部5同士の間には、それぞれ節点6が形成される。2個の縦木部4における枝部5及び節点6の数は、いずれも同数である。
【0021】
2個の縦木部4のそれぞれにおける互いに対応する節点6同士の間には、横木部7が接続される。対応する節点6同士は、例えば、2個の縦木部4において、同じ側から数えて同じ順番となる位置に配置される節点同士である。横木部7は、例えば、梯子回路部3内に2個以上設置される。
【0022】
図3は、梯子回路部3における枝部5の複数の例を並べて示す図である。枝部5は、例えば、開閉器51、リアクトル52、抵抗53、コンデンサ54のうちの一部または全部を組み合わせて構成される。枝部5は、例えば、開閉器51、リアクトル52、抵抗53、コンデンサ54のいずれかでもよいし、これらの複数を組み合わせて構成されてもよい。開閉器51は、ギャップスイッチ、真空開閉器、ガス開閉器、半導体素子のいずれかでもよいし、これらの複数を組み合わせて構成されていてもよい。枝部5は、部分的にリアクトル、抵抗、コンデンサ、開閉器といった回路要素を接続しなくてもよい。
【0023】
図3の最左部に第1例として示される第1枝部5Aは、開閉器51のみにより構成される。
図3の左から2番目に第2例として示される第2枝部5Bは、開閉器51とリアクトル52が直列に接続されて構成される。
図3の左から3番目に第3例として示される第3枝部5Cは、直列に接続された開閉器51及びリアクトル52に対して、抵抗53及びコンデンサ54がいずれも並列に接続されて構成される。
【0024】
図3の左から4番目に第4例として示される第4枝部5Dは、並列に接続された開閉器51、抵抗53、及びコンデンサ54の一端側に対して直列にリアクトル52が接続されて構成される。
図3の左から5番目に第5例として示される第5枝部5Eは、並列に接続された開閉器51及びコンデンサ54の一端側に対して直列にリアクトル52が接続されて構成される。
【0025】
図3の左から6番目に第6例として示される第6枝部5Fは、直列に接続された開閉器51及びリアクトル52に対して、コンデンサ54が並列に接続されて構成される。
図3の左から7番目に第7例として示される第7枝部5Gは、抵抗53とコンデンサ54が並列に接続されて構成される。
【0026】
梯子回路部3に設けられる枝部5の数(開閉器51の数)は、複数であるが、例えば、一度目の遮断と、再閉路後の二度目の遮断のみを考慮した場合には、4つ以上が必要である。また、梯子回路部3に6個以上の枝部5(開閉器51)を設けることにより、梯子回路部3から主遮断器1に投入する電流の大きさを変えることができる。
【0027】
また、梯子回路部3における縦木部4は2本以上であるが、一度目の遮断と、再閉路後の二度目の遮断のみを考慮する場合には、枝部5(開閉器51)は、各縦木部4に2つ以上設けることが必要である。また、各縦木部4にそれぞれ3個以上の枝部5(開閉器51)を設けることにより、梯子回路部3から主遮断器1に投入する電流の大きさを変えることができる。
【0028】
図4は、横木部7の複数の例を並べて示す図である。横木部7は、例えば、コンデンサ71、リアクトル72、エネルギー吸収ユニット73のうちの一部または全部を組み合わせて構成される。横木部7は、例えば、コンデンサ71、リアクトル72、エネルギー吸収ユニット73のいずれかでもよいし、これらの複数を組み合わせて構成されてもよい。また、コンデンサ71に対する予備充電回路などの充電回路が設けられていてもよい。コンデンサ71は、蓄電部の一例である。
【0029】
図4の最左部に第1例として示される第1横木部7Aは、コンデンサ71を備える。
図4の左から2番に第2例として示される第2横木部7Bは、コンデンサ71及びリアクトル72が直列に接続されて構成される。
図4の左から3番に第3例として示される第3横木部7Cは、コンデンサ71及びエネルギー吸収ユニット73が並列に接続されて構成される。
【0030】
図4の左から4番に第4例として示される第4横木部7Dは、直列に接続されたコンデンサ71及びリアクトル72に対して、エネルギー吸収ユニット73が並列に接続されて構成される。
図4の左から5番に第5例として示される第5横木部7Eは、並列に接続されたコンデンサ71及びエネルギー吸収ユニット73に対して、リアクトル72が直列に接続されて構成される。
【0031】
制御部101は、主遮断器1と、梯子回路部3に含まれる開閉器51と、を開閉制御可能である。制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)(コンピュータ)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより開閉制御を実行する。また、制御部101は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって開閉制御を実行してもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって開閉制御を実行してもよい。プログラムは、予めコントローラのHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。プログラムは、記憶部に記憶されていてもよい。
【0032】
制御部101は、例えば、落雷などにより事故電流が遮断対象電流として発生した場合に、事故電流が発生した場所を系統から遮断し、その後、系統を迅速に再接続するように高速度再閉路する。制御部101は、主遮断器1が系統を遮断した後、系統を再接続したときに、主遮断器1に流れる事故電流に電流を重畳させる。制御部101は、主遮断器1に流れる事故電流に重畳させる電流の向き、周波数、または大きさのうちいずれか1つを変更するように、開閉器51を制御する。コンデンサ71に対する予備充電回路などの充電回路が設けられる場合には、充電の制御を制御部101が担ってもよい。
【0033】
次に、制御部101により制御される直流遮断装置100の動作について説明する。補助回路部2及び梯子回路部3の構成を具体的に特定した直流遮断装置100を用いて直流遮断装置100の動作を説明する。
図5は、直流遮断装置100の回路構成の一例を示す図である。
【0034】
図5に示す直流遮断装置100は、
図1に示す直流遮断装置100における補助回路部2及び梯子回路部3の構成を具体的に特定したものである。ここでは、直流遮断装置100の動作の説明に先立ち、補助回路部2及び梯子回路部3の構成を具体的に特定した直流遮断装置100の構成について説明する。
【0035】
図5に示す直流遮断装置100は、補助回路部2として
図2に示す第3補助回路部2Cを備える。第3補助回路部2Cには、リアクトル21及びエネルギー吸収ユニット22が含まれる。直流遮断装置100の梯子回路部3は、第1縦木部4a~第3縦木部4cの3個の縦木部4を備える。
【0036】
第1縦木部4a及び第2縦木部4bにおける各枝部5としては、
図3に示す第1枝部5Aが選択される。第1枝部5Aには、開閉器51のみが含まれる。第1縦木部4a及び第2縦木部4bに挟まれた第3縦木部4cの各枝部5としては、
図3に示す第7枝部5Gが選択される。第7枝部5Gには、抵抗53及びコンデンサ54が含まれる。横木部7としては、
図4に示す第1横木部7Aが選択されている。第1横木部7Aには、コンデンサ71が含まれる。
【0037】
以下の説明において、第1縦木部4aにおける枝部5に含まれる開閉器51を、上流側から順に第1開閉器51a、第3開閉器51c、第5開閉器51e、第7開閉器51g、第9開閉器51iとする。また、第2縦木部4bにおける枝部5に含まれる開閉器51を、上流側から順に第2開閉器51b、第4開閉器51d、第6開閉器51f、第8開閉器51h、第10開閉器51jとする。
【0038】
また、第1縦木部4aと第3縦木部4cの間に配置された横木部7に含まれるコンデンサ71を、上流側から順に第1コンデンサ71a、第3コンデンサ71c、第5コンデンサ71e、第7コンデンサ71gとする。また、第2縦木部4bと第3縦木部4cの間に配置された横木部7に含まれるコンデンサ71を、上流側から順に第2コンデンサ71b、第4コンデンサ71d、第6コンデンサ71f、第8コンデンサ71hとする。
【0039】
図6は、制御部101により制御される直流遮断装置100における動作波形の例を示す図である。系統を遮断する前の状態では、第1開閉器51a~第10開閉器51jは、すべて開放された「開」の状態とされている。また、第1コンデンサ71a~第8コンデンサ71h(以下、全横木部コンデンサ)は、全て
図6の矢印のY1~Y8向きを正として充電されている。全横木部コンデンサは、例えば図示しない予備充電回路を介して充電される。第3縦木部4cの枝部として選択された抵抗53及びコンデンサ54は、例えば、直流電圧や雷インパルス電圧、開閉サージ電圧に対する電圧分担を良好とする役割を担う。
【0040】
制御部101は、直流系統で事故が発生した時に、第1開閉器51a~第10開閉器51jのうち適した開閉器を閉鎖された「閉」の状態とする。ここでは、事故により主遮断器1に流れる事故電流が電流Ibとなって
図5中の矢印Y11の向きに流れた場合の制御部101による制御について説明する。
【0041】
例えば、時刻t1において事故が発生すると、制御部101がこれを検知し、時刻t2において主遮断器1を「開」とする。例えば、主遮断器1をガス遮断器や真空遮断器とした場合には、主遮断器1を「開」とした後、主遮断器1に電流零点が形成して電流遮断が完了するまでは、アーク放電により通電状態が維持される。
【0042】
続いて、時刻t3に第1開閉器51a、第4開閉器51d、第5開閉器51e、第8開閉器51h、及び第9開閉器51i(以下、第1グループ開閉器)を「閉」とする。第1グループ開閉器のうち、第1開閉器51a、第5開閉器51e、及び第9開閉器51iは、第1縦木部4aにおける奇数番目の開閉器であり、第4開閉器51d及び第8開閉器51hは、第2縦木部4bにおける偶数番目の開閉器である。
【0043】
このとき、第2開閉器51b、第3開閉器51c、第6開閉器51f、第7開閉器51g、及び第10開閉器51j(以下、第2グループ開閉器)を「開」のままとする。第2グループ開閉器のうち、第3開閉器51c及び第7開閉器51gは、第1縦木部4aにおける偶数番目の開閉器であり、第2開閉器51b、第6開閉器51f、及び第10開閉器51jは、第2縦木部4bにおける奇数番目の開閉器である。第1グループ開閉器を「閉」とし、第2グループ開閉器を「開」とするパターンは、第1開閉パターンの一例である。
【0044】
第1グループ開閉器を「閉」とすることにより、第1グループ開閉器、全横木部コンデンサ、リアクトル21、及び主遮断器1を含むループに、予め充電された全横木部コンデンサのそれぞれから電荷が放出される。
【0045】
全横木部コンデンサのそれぞれから電荷が放出されることによって、全横木部コンデンサのそれぞれから第1グループ開閉器とリアクトル21と主遮断器1とを通過する共振電流が流れる。これにより、直流遮断装置100では、事故電流である電流Ibが流れる向きとは逆向きの振動電流が事故電流に重畳される。電流Ibが流れる向きは、一方向の一例である。電流Ibが流れる向きの逆向きは、逆方向の一例である。その結果、主遮断器1は、電流零点が形成されて電流遮断を完了することにより、遮断責務を果たす。
【0046】
このような制御により強制的に事故電流を遮断すると、系統に電磁エネルギーが残留することがある。この残留した電磁エネルギーは、横木部コンデンサを充電し、エネルギー吸収ユニット22によって処理される。時刻t3において第1グループ開閉器を閉として主遮断器1に電流零点が形成されると、矢印Y21に示すように、事故電流は電流Irとなって主遮断器1を除いた回路による転流回路に流れる。
【0047】
転流回路に流れる事故電流による電流Irは、第1グループ開閉器が「閉」である間は、予め充電されていた向きとは逆向きに全横木部コンデンサを充電する。リアクトル21に誘起される電圧を無視すれば、全横木部コンデンサの充電電圧の和は主遮断器1の両端の電圧Vbとほぼ等しく、エネルギー吸収ユニット22はVbがある電圧値まで上昇した時刻からエネルギーの処理を開始する。
【0048】
時刻t3において第1グループ開閉器を「閉」とした後、再閉路するまでの適した時刻t4において、第1グループ開閉器を再度「開」とする。時刻t4に第1グループ開閉器を再度「開」とすることで、全横木部コンデンサに流れる電流は遮断され、全横木部コンデンサの充電電圧Vcを再度の事故処理に必要な電圧値に保つことができる。
【0049】
直流遮断装置100は、時刻t4において高速度再閉路するために、主遮断器1を再度「閉」にする。事故が継続していた場合、高速度再閉路後には主遮断器1には再度事故電流が流れる。この際、事故電流である電流Ibの向きは高速度再閉路を実施する前の一度目の事故電流の向きと同一となる。
【0050】
制御部101は、電流Ibが再度流れていることを検知し、時刻t5にて主遮断器1を再び「開」として事故遮断(以下、二度目の事故遮断)する。二度目の事故遮断では、一度目に主遮断器1を「開」として事故遮断(以下、一度目の事故遮断)した場合と同様に、主遮断器1に電流零点が形成されるまではアーク放電により通電状態が維持される。
【0051】
続いて、時刻t6に第2グループ開閉器を「閉」とし、第1グループ開閉器は「開」のままとする。第2グループ開閉器を「閉」とすることにより、第2グループ開閉器、全横木部コンデンサ、リアクトル21、主遮断器1を含むループに、一度目の事故遮断により逆極性に充電された全横木部コンデンサから電荷が放出される。
【0052】
全横木部コンデンサから電荷が放出されることによって、全横木部コンデンサのそれぞれから第2グループ開閉器とリアクトル21と主遮断器1とを通過する共振電流が流れる。これにより、直流遮断装置100では、事故電流である電流Ibとは逆向きの振動電流が事故電流に重畳される。その結果、主遮断器1は、電流零点が形成されて電流遮断を完了することにより、遮断責務を果たす。その後、一度目の事故遮断の場合と同様に、系統に残留する電磁エネルギーを処理する。
【0053】
また、事故により主遮断器1に流れる事故電流である電流Ibが
図6中の矢印の向きとは逆向きに流れた場合には、制御部101は、一度目の事故遮断として、第2グループ開閉器を「閉」とし、第1グループ開閉器を「開」のままとする。第1グループ開閉器を「開」とし、第2グループ開閉器を「閉」とするパターンは、第2開閉パターンの一例である。第2グループ開閉器を閉とすることで、第2グループ開閉器、全横木部コンデンサ、リアクトル21、主遮断器1を含むループに、予め充電された全横木部コンデンサのそれぞれから電荷が放出される。
【0054】
全横木部コンデンサのそれぞれから電荷が放出されることによって、全横木部コンデンサのそれぞれから第2グループ開閉器とリアクトル21と主遮断器1とを通過する共振電流が流れる。これにより、直流遮断装置100では、事故電流とは逆向きの振動電流が事故電流に重畳される。その結果、主遮断器1は、電流零点が形成されて電流遮断を完了することにより、遮断責務を果たす。その後、系統に残留する電磁エネルギーを処理する。
【0055】
続いて、再閉路後に再度事故遮断が必要となった場合には、第1グループ開閉器を「閉」として、電流Ibが
図6中の矢印の向きに流れた場合における第1グループ開閉器と第2グループ開閉器の処理を入れ替えた場合と同様の二度目の事故遮断を実行する。その後、系統に残留する電磁エネルギーを処理する。
【0056】
制御部101は、事故電流である電流Ibの向きを検知や予測することができない場合には、第1グループ開閉器または第2グループ開閉器のいずれかを閉として、主遮断器1に振動電流を重畳させる。この場合、主遮断器1は、振動電流は第一半波で主遮断器1に電流零点を形成する場合でも、第二半波で主遮断器1に電流零点を形成する場合でも遮断が成功するように構成される。
【0057】
以上の説明では転流回路から主遮断器1に重畳される共振電流により主遮断器1に形成される第一電流零点にて遮断が成功する場合について説明した。これに対して、主遮断器1は、第一電流零点での電流遮断には失敗したが、第二電流零点や第三電流零点にて成功する場合もある。
【0058】
次に、遮断対象電流として負荷電流を遮断するときの動作について説明する。事故電流を遮断するときには、全横木部コンデンサが帯電していた電荷を放出するが、負荷電流を遮断するときには、全横木部コンデンサの一部が、帯電していた電荷を放出する。制御部101は、主遮断器1に流れる負荷電流の大きさまたは向き、あるいはその両方に基づいて、閉鎖する開閉器51を調整する。ここでは、全横木部コンデンサのうち、第5コンデンサ71e及び第6コンデンサ71fが電荷を放出する例について説明する。
【0059】
図6中の矢印Y11の向きに負荷電流である電流Ibが流れているときに遮断指令を受けた制御部101は、例えば第1開閉器51a、第3開閉器51c、第5開閉器51e、第8開閉器51h、第10開閉器51j(以下、第3グループ開閉器)を閉にし、第2開閉器51b、第4開閉器51d、第6開閉器51f、第7開閉器51g、第9開閉器51i(以下、第4グループ開閉器)を開のままとする。これにより、主遮断器1には、第3グループ開閉器、予め充電された第5コンデンサ71e及び第6コンデンサ71f、リアクトル21、主遮断器1を含むループに、第5コンデンサ71e及び第6コンデンサ71fのそれぞれから電荷が放出される。
【0060】
第5コンデンサ71e及び第6コンデンサ71fのそれぞれから電荷が放出されることによって、第5コンデンサ71e及び第6コンデンサ71fのそれぞれから第3グループ開閉器とリアクトル21と主遮断器1とを通過する共振電流が流れる。これにより、直流遮断装置100では、負荷電流である電流Ibとは逆向きの振動電流が負荷電流に重畳される。その結果、主遮断器1に電流零点が形成される。主遮断器1に電流零点が形成される前の適切な時刻に主遮断器1を「開」とすることにより、主遮断器1は、電流零点が形成された時刻で電流遮断を完了し、遮断責務を果たす。
【0061】
図6中の矢印Y11の向きとは逆向きに負荷電流である電流Ibが流れているときに遮断指令を受けた制御部101は、例えば第4グループを閉とし、第3グループ開閉器を開のままとする。これにより、主遮断器1には、第4グループ開閉器、予め充電された第5コンデンサ71eおよび第6コンデンサ71f、リアクトル21、主遮断器1を含むループに、第5コンデンサ71eおよび第6コンデンサ71fのそれぞれから電荷が放出される。
【0062】
第5コンデンサ71eおよび第6コンデンサ71fのそれぞれから電荷が放出されることによって、第5コンデンサ71eおよび第6コンデンサ71fのそれぞれから第4グループ開閉器とリアクトル21と主遮断器1とを通過する共振電流が流れる。これにより、直流遮断装置100では、負荷電流とは逆向きの振動電流が負荷電流に重畳される。その結果、主遮断器1に電流零点が形成される。主遮断器1に電流零点が形成される前の適切な時刻に主遮断器1を「開」とすることにより、主遮断器1は、電流零点が形成された時刻で電流遮断を完了し、遮断責務を果たす。
【0063】
次に、主遮断器1により負荷電流を遮断するときに主遮断器1に流れる電流Ibと主遮断器1に印加される電圧Vbの時間変化の関係について説明する。ここでは、全横木部コンデンサを使用して主遮断器1に流れる負荷電流に逆電流を重畳した場合と、全横木部コンデンサの一部を使用して主遮断器1に流れる負荷電流に逆電流を重畳した場合について説明する。
【0064】
図7は、全横木部コンデンサを使用して逆電流を重畳した場合の電流Ib及び電圧Vbの時間変化を示す図、
図8は、全横木部コンデンサの一部を使用して逆電流を重畳した場合の電流Ib及び電圧Vbの時間変化を示す図である。
【0065】
全横木部コンデンサの一部を使用して逆電流を重畳した場合には、全横木部コンデンサを使用して逆電流を重畳した場合と比較して、主遮断器1に印加される電圧Vbが小さくなる。このため、全横木部コンデンサの一部を使用して逆電流を重畳した場合には、全横木部コンデンサを使用して逆電流を重畳した場合よりも、電流零点の後に主遮断器1に印加される過渡回復電圧を小さくすることができる。したがって、主遮断器1の遮断責務が軽減されるので、遮断に失敗する恐れを小さくすることができる。
【0066】
また、主遮断器1が遮断する事故電流が小さい場合には、直流遮断装置100は、主遮断器1において事故電流に重畳させる逆電流の放出に用いるコンデンサ71の数を削減してもよい。主遮断器1において事故電流に重畳させる逆電流の大きさを小さくすることにより、電流零点の後に主遮断器1に印加される過渡回復電圧の大きさも小さくなる。
【0067】
このため、主遮断器1の遮断責務が軽減され、遮断に失敗する恐れを低減できる。ただし、高速度再閉路の実施後に再度事故電流が流れた場合にも主遮断器1に電流零点を形成するため、制御部101は、「閉」とする開閉器51を適切に選定し、接続されたコンデンサ71により電流零点を形成するために十分な充電電圧を保つことが要求される。
【0068】
実施形態の直流遮断装置100は、主遮断器1に対して並列に接続される梯子回路部3を備え、梯子回路部3における縦木部4は3個以上の開閉器51を備え、横木部7は、コンデンサ71を備える。このため、主遮断器1が一度目の事故遮断を行った後に再度「閉」としたときに、事故電流が主遮断器1に再度流れている場合に二度目の事故遮断を行う。
【0069】
直流遮断装置100は、一度目の事故遮断の際に、二度目の事故遮断を行うための電力をコンデンサ71に蓄電するので、高速度再閉路することができる。高速度再閉路の際に主遮断器1に電流を重畳させる回路は梯子回路部3である。直流遮断装置100は、梯子回路部3を備えるので特許文献2に開示される技術のように、複数の共振回路を設ける必要はない。
【0070】
また、特許文献3に開示される技術のように、ブリッジ回路を設けるものではないため、コンデンサの全電圧に耐えることのできる開閉器を複数設ける必要もない。このように、複数の共振回路やコンデンサの全電圧に耐えることのできる開閉器を複数設ける必要もないので、装置全体のコンパクト化を図ることができる。よって、追加の共振回路を設けることなく、直流線路における高速度再閉路の動作責務にも対応しつつ、負荷電流を含む小電流の遮断にも、事故に伴う大電流の遮断にも対応することができる。
【0071】
また、特許文献3に開示されるブリッジ式の強制消弧方式の直流遮断装置では、ブリッジ回路から主遮断器に重畳される電流の大きさや周波数の特徴を制御することが難しい。このため、負荷電流の遮断や小規模な事故電流の遮断が容易ではない。
【0072】
この点、実施形態の直流遮断装置100は、主遮断器1において事故電流に重畳させる逆電流の放出に用いるコンデンサ71の数を削減することができる。したがって、負荷電流の遮断や小規模な事故電流の遮断にも容易に対応することができる。
【0073】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、直流線路に挿入される主遮断器と、前記主遮断器に対して並列に接続される梯子回路と、を備え、前記梯子回路は、3個以上の枝部が直列に接続された2個以上の縦木部と、前記2個以上の縦木部のそれぞれにおける前記枝部同士の節点のうち、互いに対応する前記節点同士の間に介在される横木部と、を備え、前記枝部のうちの複数が開閉器を含み、前記横木部は、蓄電部を含む、直流遮断装置であることにより、構造をコンパクトにすることができる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
1…主遮断器、2(2A~2F)…補助回路部、3…梯子回路部、4(4a~4c)…縦木部、5(5A~5G)…枝部、6…節点、7(7A~7E)横木部、21,52,72…リアクトル、22,73…エネルギー吸収ユニット、51(51a~51j)…開閉器、53…抵抗、54,71(71a~71h)…コンデンサ、100…直流遮断装置、101…制御部