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特許7600440自動車外装用途のためのポリプロピレン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】自動車外装用途のためのポリプロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20241209BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241209BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20241209BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
C08L23/10 ZAB
C08K3/013
C08L23/14
C08L23/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023575445
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2022065334
(87)【国際公開番号】W WO2022258578
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】21178566.2
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ミレヴァ ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】カーレン スザンヌ マーガレーテ
(72)【発明者】
【氏名】レグラス アンジェリカ マエレ デルフィーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】サレス クリストフ
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-176061(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0385555(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0044359(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0137617(US,A1)
【文献】特表2018-532859(JP,A)
【文献】特開平09-208797(JP,A)
【文献】特開昭58-168649(JP,A)
【文献】特開2020-073685(JP,A)
【文献】特開平06-320689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/10
C08K 3/013
C08L 23/14
C08L 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも成分(A)、(B)、(C)及び(D)をブレンドすることによって得られる自動車用途に適した組成物であって、
(A)15重量%~50重量%の混合プラスチックポリプロピレンブレンド、
(B)20重量%~50重量%の異相プロピレンコポリマー、
(C)5重量%~25重量%のエチレン系プラストマー、及び
(D)5重量%~25重量%の無機充填剤、
すべてのパーセンテージは組成物全体に対して示されており、
前記混合プラスチックポリプロピレンブレンド(A)は、
使用済み廃棄物及び/又は産業廃棄物に由来し、ポリプロピレン及びポリエチレンを含有し、
85.0~96.0重量%の範囲の、160℃での溶解、40℃での結晶化及び160℃での1,2,4-トリクロロベンゼン中での再溶解の温度サイクルによって得られるCRYSTEX 分析に従って決定された結晶部(CF)含有量、及び
4.0~15.0重量%の範囲の、160℃での溶解、40℃での結晶化及び160℃での1,2,4-トリクロロベンゼン中での再溶解の温度サイクルによって得られるCRYSTEX 分析に従って決定された可溶部(SF)含有量
を有し、
前記結晶部(CF)は、1.0~10.0重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))を有し、
前記可溶部(SF)は、0.9~2.1dl/gの範囲の、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された固有粘度(iV(SF))を有し、
前記異相プロピレンコポリマー(B)は、高分解能顕微鏡で検出可能な、マトリクス相と、その中に分散されたエラストマー相とを含み、
85~250g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)、
20.0重量%超~30.0重量%の範囲の、160℃での溶解、40℃での結晶化及び160℃での1,2,4-トリクロロベンゼン中での再溶解の温度サイクルによって得られるCRYSTEX 分析に従って決定された可溶部(SF)含有量、及び
2.0dl/g~4.5dl/gの、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された前記可溶部の固有粘度iV(SF)
を有し、
エチレンと炭素原子数3~12のα-オレフィンから選択されるコモノマー単位とのコポリマーである前記エチレン系プラストマー(C)は、
0.2~2.5g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO1133)、及び
850~870kg/mの密度
を有し、
前記組成物は、
8~50g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)
を有する、組成物。
【請求項2】
成分(A)、(B)、(C)、(D)及び以下の成分のうちの1種以上をブレンドすることによって得られ、
(E)0~20重量%の第2の異相プロピレンコポリマー、及び
(F)0~10重量%のプロピレンホモポリマー、
すべてのパーセンテージは組成物全体に対して示されており、
前記第2の異相プロピレンコポリマー(E)は、高分解能顕微鏡で検出可能な、マトリクス相と、その中に分散されたエラストマー相とを含み、
2~10g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)、
20.0超~50.0重量%の、160℃での溶解、40℃での結晶化及び160℃での1,2,4-トリクロロベンゼン中での再溶解の温度サイクルによって得られるCRYSTEX 分析に従って決定された可溶部(SF)含有量、及び
冷キシレン可溶部(XCS)含有量の4.0dl/g~10.0dl/gの、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された前記可溶部の固有粘度iV(SF)
を有し、
前記プロピレンホモポリマー(F)は、
800~2000g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)
を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(A)、(B)、(C)及び(D)をブレンドすることによって得られ、(E)第2の異相プロピレンコポリマー、及び(F)プロピレンホモポリマーが存在しない、
(A)15重量%~50重量%の混合プラスチックポリプロピレンブレンド、
(B)30重量%~50重量%の異相プロピレンコポリマー、
(C)5重量%~25重量%のエチレン系プラストマー、及び
(D)5重量%~25重量%の無機充填剤、
請求項に記載の組成物。
【請求項4】
成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)をブレンドすることによって得られ、(F)プロピレンホモポリマーが存在しない、
(A)15重量%~40重量%の混合プラスチックポリプロピレンブレンド、
(B)20重量%~50重量%の異相プロピレンコポリマー、
(C)5重量%~25重量%のエチレン系プラストマー、
(D)5重量%~25重量%の無機充填剤、及び
(E)5重量%~20重量%の第2の異相プロピレンコポリマー、
請求項に記載の組成物。
【請求項5】
成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(F)をブレンドすることによって得られ、(E)第2の異相プロピレンコポリマーが存在しない、
(A)15重量%~40重量%の混合プラスチックポリプロピレンブレンド、
(B)20重量%~50重量%の異相プロピレンコポリマー、
(C)5重量%~25重量%のエチレン系プラストマー、
(D)5重量%~25重量%の無機充填剤、及び
(F)2重量%~10重量%のプロピレンホモポリマー
請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記無機充填剤(D)は、
0.3~30.0マイクロメートルのコンパウンディング前のメジアン粒子サイズd50、及び/又は
1.0~50.0マイクロメートルのコンパウンディング前のトップカット粒子サイズd95
を有するタルクである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
55.0~75.0重量%の範囲の、160℃での溶解、40℃での結晶化及び160℃での1,2,4-トリクロロベンゼン中での再溶解の温度サイクルによって得られるCRYSTEX 分析に従って決定された結晶部(CF)含有量、及び
25.0~45.0重量%の範囲の、160℃での溶解、40℃での結晶化及び160℃での1,2,4-トリクロロベンゼン中での再溶解の温度サイクルによって得られるCRYSTEX 分析に従って決定された可溶部(SF)含有量
を有し、
前記結晶部(CF)は、10.0重量%未満の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))を有し、
前記結晶部(CF)は、1.8dl/g未満の、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された固有粘度(iV(CF))を有し、
前記可溶部(SF)は、45.0~65.0重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))を有し、
前記可溶部(SF)は、1.6dl/g超の、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された固有粘度(iV(SF))を有する
請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
1400MPa~2000MPaの曲げ弾性率を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
20.0kJ/m~65.0kJ/mの23℃でのノッチ付きシャルピー衝撃強さ、及び/又は4.0kJ/m~10.0kJ/mの-20℃でのノッチ付きシャルピー衝撃強さを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
90℃超の荷重たわみ温度(ISO75B)、及び/又は60~100μm/mKの線熱膨張係数(CLTE)を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
23℃でISO6603-2に従う計装化落錘式試験において決定されたときの、25~55Jのパンクチャーエネルギー、及び/又は-30℃でISO6603-2に従う計装化落錘式試験において決定されたときの、12~40Jのパンクチャーエネルギーを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の組成物を含む物品。
【請求項13】
50mm未満の、mm単位の不良の又は剥離したコーティング面積として評価される塗料接着性を有し、
前記コーティング面積は、150mm×80mm×3mmの射出成形した試料プレート上に、プライマー層、ベースコート(黒色)層及びクリアコート層をコーティングし、このコーティングを100mmの長さの分岐を有する十字を作製する切削工具を用いて切開し、切開領域を68℃の水に曝露し、画像処理ソフトウェアを用いて算出した剥離面積である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
物品の射出成形のための請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合プラスチックポリプロピレン系ブレンド及び無機充填剤を含む、とりわけ自動車外装用途に適したポリプロピレン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業に適した組成物は、典型的には、1種以上の異相ポリプロピレンコポリマー、及び/又はランダム異相コポリマーと、従来では、いく種かの無機充填材とを含有する。
ポリマービジネスにおける基本的な課題の1つはリサイクルである。現時点では、リサイクル物、特に、一般にPCR(「post-consumer resins(使用済み樹脂)」)と称される家庭ごみからのリサイクル物の市場は、いくらか限られている。家庭ごみから出発する場合、採用される選別及び分離プロセスは、純粋なポリマーを調製することを可能にしない、すなわち、常にいくつかの混入物質が存在することになるか、又はプロセスは、異なるポリマーのブレンドさえももたらす可能性がある。収集された家庭ごみのポリマー画分の大部分を構成するポリオレフィンに関しては、ポリプロピレン及びポリエチレンの完全な分離はほとんど不可能である。リサイクルポリオレフィン材料、特に使用済み樹脂は、従来、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリスチレン等の非ポリオレフィン材料又は木材、紙、ガラス若しくはアルミニウム等の非ポリマー物質で交叉汚染されている。さらに悪いことに、これらの使用済みリサイクルポリオレフィン材料は、数トン規模で容易に入手可能であるが、残念ながら、機械的性質が限られており、しばしば重篤な臭気及び/又は排出問題を有する。
自動車産業における外装用途のために、良好な流動性、塗装性、表面外観、並びに剛性及び靭性に関してバランスのとれた機械的特性を有する材料が必要とされる。近年、市場の需要は、特定の要件を満たすために、バージンポリマーとのブレンドでリサイクルポリオレフィンを使用する方向に拡大している。
しかしながら、健康及び安全上の危険なしに最終製品における使用済みポリオレフィンリサイクル物のダンピング及び再利用を可能にする必要性が深く感じられている。
【0003】
未公開の特許出願欧州特許出願第20190838.1号明細書は、使用済みリサイクルポリオレフィン流に由来する混合プラスチックポリプロピレン系ブレンドと、エチレン系プラストマーと、無機充填剤、例えばタルク、とを含有する自動車用途のためのポリプロピレン組成物に関する。これらの組成物は、有益なVOC特性及び衝撃特性を示すので、これらの組成物は、自動車用途において洗練された異相ポリプロピレンコポリマーに取って代わることができる。しかしながら、これらの組成物は、依然として機械的特性及び流動性の欠陥を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、使用済みリサイクルポリオレフィン流に由来する混合プラスチックポリプロピレン系ブレンドと、エチレン系プラストマーと、無機充填剤、例えばタルク、とを含有するポリプロピレン系組成物において異相プロピレンコポリマー系バージン成分を注意深く選択することにより、ポリプロピレン系組成物は、衝撃特性、熱安定性、塗装性、並びにとりわけ引張特性等の機械的特性、及び高いメルトフローレートで示される流動性に関する優れた特性のバランスを有するという驚くべき知見に基づく。従って、使用済みリサイクルポリオレフィン流に由来する混合プラスチックポリプロピレン系ブレンドを含む本発明の組成物は、とりわけ、自動車外装用途等の自動車分野における射出成形用途に適しており、洗練された異相ポリプロピレンコポリマーに取って代わることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも成分(A)、(B)、(C)及び(D)を配合することによって得られる自動車用途に適した組成物であって、
(A)15重量%~50重量%、好ましくは18~44重量%、より好ましくは20~40重量%の混合プラスチックポリプロピレンブレンド、
(B)20重量%~50重量%、好ましくは22~47重量%、より好ましくは25~45重量%の異相プロピレンコポリマー、
(C)5重量%~25重量%、好ましくは7~23重量%、より好ましくは10~22重量%のエチレン系プラストマー、
(D)5重量%~25重量%、好ましくは7~22重量%、より好ましくは10~20重量%の無機充填剤、
すべてのパーセンテージは組成物全体に対して示されており、
混合プラスチックポリプロピレンブレンド(A)は、
・85.0~96.0重量%の範囲、好ましくは86.5~95.5重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された結晶部(結晶性画分、CF)含有量、及び
・4.0~15.0重量%の範囲、好ましくは4.5~13.5重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶部(SF)含有量
を有し、
・上記結晶部(CF)は、1.0~10.0重量%の範囲、好ましくは1.5~9.5重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))を有し、
・上記可溶部(SF)は、0.9~2.1dl/gの範囲、好ましくは1.0~2.0dl/gの範囲、より好ましくは1.1~1.9dl/gの範囲の、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された固有粘度(iV(SF))を有し、
異相プロピレンコポリマー(B)は、マトリクス相と、その中に分散されたエラストマー相とを含み、
・85~250g/10分、好ましくは90~150g/10分、より好ましくは95~125g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)、
・20.0重量%超~30.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶部(SF)、及び
・2.0dl/g~4.5dl/g、好ましくは2.4~3.8dl/g、より好ましくは2.5~3.7dl/gの、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された上記可溶部の固有粘度iV(SF)
を有し、
エチレンと炭素原子数3~12のα-オレフィン、好ましくは炭素原子数4~10のα-オレフィン、最も好ましくは1-ブテン又は1-オクテンから選択されるコモノマー単位とのコポリマーであるエチレン系プラストマー(C)は、
・0.2~2.5g/10分、好ましくは0.3~2.0g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO1133)、及び
・850~870kg/m、好ましくは855~865kg/mの密度
を有し、
上記組成物は、
・8~50g/10分、好ましくは10~48g/10分、より好ましくは11~45g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)
を有する、組成物に関する。
【0006】
さらに、本発明は、上記又は下記の組成物を含む物品、好ましくは成形物品、より好ましくは自動車用成形物品に関する。
【0007】
なおさらに、本発明は、物品、好ましくは自動車物品、より好ましくは自動車外装物品の射出成形のための上記又は下記の組成物の使用に関する。
【0008】
定義
特段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の試験のために実践において使用することができるが、好ましい材料及び方法が本明細書に記載される。本発明の説明及び請求項の記載において、以下の用語が、以下に示される定義に従って使用される。明示的に特段の記載がない限り、「a(ある、1つの)」、「an(ある、1つの)」等の用語の使用は、1つ以上を指す。
【0009】
混合プラスチックは、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、木材、紙、リモネン、アルデヒド、ケトン、脂肪酸、金属、及び/又は安定剤の長期分解生成物等のバージン(未使用)のポリプロピレンブレンドには通常見出されない少量の化合物の存在として定義される。バージンポリプロピレンブレンドは、中間使用なしで製造プロセスに直接由来するブレンドを意味する。
定義の問題として、「混合プラスチック」は、検出可能な量のポリスチレン及び/又はポリアミド-6及び/又はリモネン及び/又は脂肪酸と同等であってもよい。
従って、混合プラスチックは、バージンポリマーとは対照的に、使用済み廃棄物及び産業廃棄物の両方に由来してもよい。使用済み廃棄物は、少なくとも第1の使用サイクル(又はライフサイクル)を完了した、すなわちすでにそれらの第1の目的を果たした物体を指す。これとは対照的に、産業廃棄物は、製造スクラップ、又は変換スクラップを指し、これらは、通常、消費者に届かない。
【0010】
0.9~2.2未満dl/gの範囲の固有粘度(iV(SF))を有するCRYSTEX QC分析によって得られる可溶部(SF)が、典型的には、リサイクル流からの材料中に見出されることが当業者には理解されよう。本発明の好ましい態様では、CRYSTEX QC分析によって得られる可溶部(SF)は、0.9~2.1dl/gの範囲の固有粘度(iV(SF))を有する。
【0011】
ポリマーブレンドは、2種以上のポリマー成分の混合物である。概して、ブレンドは、2種以上のポリマー成分を混合することにより調製することができる。当該技術分野で公知の好適な混合手順は、重合後ブレンドである。重合後ブレンドは、ポリマー粉末及び/又はコンパウンディングを経たポリマーペレット等のポリマー成分の乾式ブレンド、又はポリマー成分を溶融混合することによる溶融ブレンドであることができる。
【0012】
プロピレンホモポリマーは、プロピレンモノマー単位から本質的になるポリマーである。とりわけ商業的重合プロセス中の不純物のために、プロピレンホモポリマーは、0.1モル%までのコモノマー単位、好ましくは0.05モル%までのコモノマー単位、最も好ましくは0.01モル%までのコモノマー単位を含むことができる。
【0013】
「ポリプロピレン-ポリエチレンブレンド」は、ポリプロピレンコポリマー及びポリエチレンコポリマーも含む、ポリプロピレン及びポリエチレンの両方を含有する組成物を指す。ポリプロピレン含有量及びポリエチレン含有量の直接的な決定は不可能であって、19:1~7:3のポリプロピレン(A-1)対ポリエチレン(A-2)の重量比は、iPP及びHDPEによる較正及びIR分光法による決定から決定された当量比を表す。
【0014】
ポリプロピレンは、50モル%を超える量のプロピレンから誘導される単位から構成されるポリマーを意味する。
ポリエチレンは、50モル%を超える量のエチレンから誘導される単位から構成されるポリマーを意味する。
【0015】
用語「エラストマー」は、弾性的特性を有する天然又は合成のポリマーを表す。用語「プラストマー」は、エラストマー及びプラスチックの性質、例えばゴム様特性とプラスチックの加工能力とを兼ね備えた天然又は合成のポリマーを表す。エチレン系プラストマーは、50モル%を超える量のエチレンから誘導される単位から構成されるプラストマーを意味する。
【0016】
異相性の存在は、例えば動的機械分析(DMA)におけるガラス転移点の数、及び/又は走査型電子顕微鏡法(SEM)、透過型電子顕微鏡法(TEM)若しくは原子間力顕微鏡法(AFM)等の高分解能顕微鏡法によって容易に決定することができる。
【0017】
用語「XCS」は、25℃でISO16152に従って決定された冷キシレン可溶部(分率)(XCS重量%)を指す。用語「XCI」は、25℃でISO16152に従って決定された冷キシレン不溶部(分率)(XCI重量%)を指す。
【0018】
反応器ブレンドは、直列に連結された2つ以上の反応器、又は2つ以上の反応区画を有する反応器における製造から生じるブレンドである。あるいは、反応器ブレンドは、溶液中でのブレンドから生じてもよい。反応器ブレンドは、溶融押出によって製造されるような配合物とは対照的である。
【0019】
別段の指示がない限り、「%」は重量%を指す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
組成物
第1の態様では、本発明は、少なくとも成分(A)、(B)、(C)及び(D)をブレンドすることによって得られる自動車用途に適した組成物であって、
(A)15重量%~50重量%、好ましくは18~44重量%、より好ましくは20~40重量%の混合プラスチックポリプロピレンブレンド、
(B)20重量%~50重量%、好ましくは22~47重量%、より好ましくは25~45重量%の異相プロピレンコポリマー、
(C)5重量%~25重量%、好ましくは7~23重量%、より好ましくは10~22重量%のエチレン系プラストマー、及び
(D)5重量%~25重量%、好ましくは7~22重量%、より好ましくは10~20重量%の無機充填剤、
すべてのパーセンテージは組成物全体に対して示されており、
混合プラスチックポリプロピレンブレンド(A)は、
・85.0~96.0重量%の範囲、好ましくは86.5~95.5重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された結晶部(CF)含有量、及び
・4.0~15.0重量%の範囲、好ましくは4.5~13.5重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶部(SF)含有量
を有し、
・上記結晶部(CF)は、1.0~10.0重量%の範囲、好ましくは1.5~9.5重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))を有し、
・上記可溶部(SF)は、0.9~2.1dl/gの範囲、好ましくは1.0~2.0dl/gの範囲、より好ましくは1.1~1.9dl/gの範囲の、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された固有粘度(iV(SF))を有し、
異相プロピレンコポリマー(B)は、マトリクス相と、その中に分散されたエラストマー相とを含み、
・85~250g/10分、好ましくは90~150g/10分、より好ましくは95~125g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)、
・20.0重量%超~30.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶部(SF)含有量、及び
・2.0dl/g~4.5dl/g、好ましくは2.4~3.8dl/g、より好ましくは2.5~3.7dl/gの、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された上記可溶部の固有粘度iV(SF)
を有し、
エチレンと炭素原子数3~12のα-オレフィン、好ましくは炭素原子数4~10のα-オレフィン、最も好ましくは1-ブテン又は1-オクテンから選択されるコモノマー単位とのコポリマーであるエチレン系プラストマー(C)は、
・0.2~2.5g/10分、好ましくは0.3~2.0g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO1133)、及び
・850~870kg/m、好ましくは855~865kg/mの密度
を有し、
上記組成物は、
・8~50g/10分、好ましくは10~48g/10分、より好ましくは11~45g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)
を有する、組成物に関する。
【0021】
本発明に係る自動車用途に適した組成物は、車両の外部で使用される物品の射出成形に特に適している。
【0022】
本発明に係る自動車用途に適した組成物は、以下の特徴の1つ以上を有する。
【0023】
当該組成物は、8~50g/10分、好ましくは10~48g/10分、より好ましくは11~45g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)を有する。
【0024】
当該組成物は、CRYSTEX QC分析によって特徴付けることができる。CRYSTEX QC分析では、結晶部(CF)及び可溶部(SF)が得られ、これらは、モノマー及びコモノマーの含有量並びに固有粘度(iV)に関して定量化し分析することができる。
当該組成物は、好ましくは、CRYSTEX QC分析において以下の特性の1つ又はすべてを示す。
・55.0~75.0重量%、好ましくは60.0~72.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された結晶部(CF)含有量、
・25.0~45.0重量%、好ましくは28.0~40.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶部(SF)含有量。
【0025】
上記結晶部(CF)は、好ましくは、以下の特性の1つ以上、好ましくはすべてを有する。
・10.0重量%未満、好ましくは2.5~7.5重量%の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))、及び/又は
・1.8dl/g未満、好ましくは0.8~1.6dl/gの、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された固有粘度(iV(CF))。
【0026】
上記可溶部(SF)は、好ましくは、以下の特性の1つ以上、好ましくはすべてを有する。
・45.0~65.0重量%、好ましくは46.0~63.0重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))、及び/又は
・1.6dl/g超、好ましくは1.7~2.7dl/gの、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された固有粘度(iV(SF))。
【0027】
当該組成物は、好ましくは12.5~32.5重量%、より好ましくは15.0~30.0重量%、さらにより好ましくは17.0~28.0重量%の量のエチレンから誘導される単位を含む。
【0028】
本発明に係る組成物は、好ましくは、衝撃特性、熱安定性、上述のメルトフローレートから分かるように流動性、及びとりわけ例えば曲げ弾性率又は引張特性に関して機械的特性に関して優れた特性バランスを示す。
【0029】
当該組成物は、好ましくは1400MPa~2000MPa、好ましくは1450MPa~1950MPaの曲げ弾性率を有する。
【0030】
さらに、当該組成物は、好ましくは、20.0kJ/m~65.0kJ/m、好ましくは21.0kJ/m~60.0kJ/mの、23℃でのノッチ付きシャルピー衝撃強さ(23℃でのCNIS)を有する。
さらに、当該組成物は、好ましくは、4.0kJ/m~10.0kJ/m、好ましくは4.5kJ/m~7.5kJ/mの、-20℃でのノッチ付きシャルピー衝撃強さ(-20℃でのCNIS)を有する。
【0031】
さらにより好ましくは、当該組成物は、計装化衝撃試験(パンクチャー衝撃試験)において非常に良好な衝撃強さを有する。
当該組成物は、好ましくは、23℃で測定して25~55J、好ましくは30~50Jのパンクチャーエネルギー(puncture energy)を有する。
当該組成物は、好ましくは、23℃で測定して15~45J、好ましくは18~40Jの最大衝撃力時エネルギー(energy at maximum force)を有する。
さらに、当該組成物は、好ましくは、-30℃で測定して12~40J、好ましくは13~38Jのパンクチャーエネルギーを有する。
当該組成物は、好ましくは、-30℃で測定して10~30J、好ましくは11~28Jの最大衝撃力時エネルギーを有する。
【0032】
加えて、組成物は、好ましくは90℃超、好ましくは91℃~110℃の荷重たわみ温度(ISO75B)を有する。
【0033】
さらに、当該組成物は、好ましくは60~100μm/mK、好ましくは65~90μm/mKの線熱膨張係数(CLTE)を有する。
【0034】
本発明の組成物は、上記又は下記の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を相応に記載される量で必須に含む。
【0035】
当該組成物は、追加のポリマー成分を任意選択で含むことができ、そのため、当該組成物は、成分(A)、(B)、(C)及び以下の成分のうちの1つ又は複数をブレンドすることによって得られてもよい。
(E)0~20重量%、好ましくは0~18重量%、より好ましくは0~17重量%の第2の異相プロピレンコポリマー、及び
(F)0~10重量%、好ましくは0~9重量%、より好ましくは0~8重量%のプロピレンホモポリマー、
すべてのパーセンテージは組成物全体に対して示されており、
第2の異相プロピレンコポリマー(E)は、マトリクス相と、その中に分散されたエラストマー相とを含み、
・2~10g/10分、好ましくは3~8g/10分、より好ましくは3.5~7.5g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)、
・20.0超~50.0重量%、好ましくは21.0~45.0重量%の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶部(SF)含有量、及び
・上記冷キシレン可溶部(XCS)含有量の4.0dl/g~10.0dl/g、好ましくは4.5~9.5dl/g、より好ましくは5.0~9.0dl/gの、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された上記可溶部の固有粘度iV(SF)
を有し、
プロピレンホモポリマー(F)は、
・800~2000g/10分、好ましくは900~1600g/10分、より好ましくは1000~1500g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)
を有する。
【0036】
1つの実施形態では、当該組成物は、成分(A)、(B)、(C)及び(D)をブレンドすることによって得られ、(E)及び(F)が存在せず、
(A)15重量%~50重量%、好ましくは18~44重量%、より好ましくは20~40重量%の混合プラスチックポリプロピレンブレンド、
(B)30重量%~50重量%、好ましくは32~47重量%、より好ましくは35~45重量%の異相プロピレンコポリマー、
(C)5重量%~25重量%、好ましくは7~23重量%、より好ましくは10~22重量%のエチレン系プラストマー、及び
(D)5重量%~25重量%、好ましくは7~22重量%、より好ましくは10~20重量%の無機充填剤、
すべてのパーセンテージは組成物全体に対して示されている。
【0037】
別の実施形態では、当該組成物は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)をブレンドすることによって得られ、(F)が存在せず、
(A)15重量%~40重量%、好ましくは18~37重量%、より好ましくは20~38重量%の混合プラスチックポリプロピレンブレンド、
(B)20重量%~50重量%、好ましくは22~47重量%、より好ましくは25~45重量%の異相プロピレンコポリマー、
(C)5重量%~25重量%、好ましくは7~23重量%、より好ましくは10~22重量%のエチレン系プラストマー、
(D)5重量%~25重量%、好ましくは7~22重量%、より好ましくは10~20重量%の無機充填剤、及び
(E)5~20重量%、好ましくは7~18重量%、より好ましくは10~17重量%の第2の異相プロピレンコポリマー、
すべてのパーセンテージは組成物全体に対して示されている。
【0038】
さらに別の実施形態では、当該組成物は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(F)をブレンドすることによって得られ、(E)が存在せず、
(A)15重量%~40重量%、好ましくは18~37重量%、より好ましくは20~38重量%の混合プラスチックポリプロピレンブレンド、
(B)20重量%~50重量%、好ましくは22~47重量%、より好ましくは25~45重量%の異相プロピレンコポリマー、
(C)5重量%~25重量%、好ましくは7~23重量%、より好ましくは10~22重量%のエチレン系プラストマー、
(D)5重量%~25重量%、好ましくは7~22重量%、より好ましくは10~20重量%の無機充填剤、及び
(F)2重量%~10重量%、好ましくは3~9重量%、より好ましくは4~8重量%のプロピレンホモポリマー、
すべてのパーセンテージは組成物全体に対して示されている。
【0039】
混合プラスチックポリプロピレンブレンド(A)
混合プラスチックポリプロピレンブレンド(A)は、CRYSTEX QC分析によって適切に特徴付けられる。CRYSTEX QC分析では、結晶部(CF)及び可溶部(SF)が得られ、これらは、モノマー及びコモノマーの含有量並びに固有粘度(iV)に関して定量化し分析することができる。
混合プラスチックポリプロピレンブレンド(A)は、CRYSTEX QC分析において以下の特性を示す。
・85.0~96.0重量%の範囲、好ましくは86.5~95.5重量%の範囲、より好ましくは88.0~95.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された結晶部(CF)含有量、及び
・4.0~15.0重量%の範囲、好ましくは4.5~13.5重量%の範囲、より好ましくは5.0~12.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶部(SF)含有量。
【0040】
上記結晶部(CF)は、以下の特性の1つ以上、好ましくはすべてを有する。
・1.0~10.0重量%の範囲、好ましくは1.5~9.5重量%の範囲、より好ましくは2.0~9.0重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))、及び/又は
・好ましくは1.0~2.6未満dl/gの範囲、より好ましくは1.2~2.5dl/gの範囲、さらにより好ましくは1.3~2.4dl/gの範囲の、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された固有粘度(iV(CF))。
【0041】
上記可溶部(SF)は、以下の特性の1つ以上、好ましくはすべてを有する。
好ましくは20.0~55.0重量%の範囲、好ましくは22.0~50.0重量%の範囲、より好ましくは24.0~48.0重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))、及び/又は
・0.9~2.1dl/gの範囲、好ましくは1.0~2.0dl/gの範囲、より好ましくは1.1~1.9dl/gの範囲の、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された固有粘度(iV(SF))。
【0042】
好ましくは、混合プラスチックポリプロピレンブレンド(A)はポリプロピレン及びポリエチレンを含む。
ポリプロピレンとポリエチレンの重量比は、好ましくは19:1~7:3である。
【0043】
混合プラスチックポリプロピレンブレンド(A)は、好ましくは、50モル%を超える量のプロピレンから誘導される単位を含む。
【0044】
混合プラスチックポリプロピレンブレンド(A)は、好ましくは、2.5~15.0重量%、より好ましくは4.0~12.5重量%、さらにより好ましくは5.0~10.0重量%の量のエチレンから誘導される単位を含む。
【0045】
さらに、混合プラスチックポリプロピレンブレンド(A)は、好ましくは、以下の特性の1つ以上、好ましくはすべてを有する。
・8.0~40g/10分、好ましくは9.0~35g/10分、より好ましくは10.0~30g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)、及び/又は
・固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を使用することにより決定されたリモネン含有量:0.1ppm~50ppm、及び/又は
・1000MPa~1500MPa、好ましくは1100MPa~1400MPaの引張弾性率、及び/又は
・3.0~7.5kJ/m、好ましくは4.0~7.0kJ/mの、23℃でのノッチ付きシャルピー衝撃強さ(23℃でのCNIS)。
【0046】
本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、好ましくはペレットの形態で存在する。ペレット化は揮発性物質が少量になることに寄与する。
【0047】
異相プロピレンコポリマー(B)
異相ポリプロピレンコポリマー(B)は、マトリクス相と、その中に分散されたエラストマー相とを含む。
【0048】
異相プロピレンコポリマー(B)は、
・85~250g/10分、好ましくは90~150g/10分、より好ましくは95~125g/10分の、メルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)、
・20.0~30.0重量%、好ましくは21.0~28.0重量%、より好ましくは21.0~26.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶部(SF)含有量、及び
・2.0dl/g~4.5dl/g、好ましくは2.4~3.8dl/g、より好ましくは2.5~3.7dl/gの、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された上記可溶部の固有粘度iV(SF)
を特徴とする。
【0049】
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(B)は、以下の特性のうちの1つ以上、好ましくはすべてを有する。
・30~45重量%、好ましくは32~40重量%、より好ましくは33~38重量%の可溶部(SF)中のエチレンから誘導される単位の含有量(C2)、及び/又は
・0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%、より好ましくは0.5~3.0重量%の上記結晶部(CF)中のエチレンから誘導される単位の含有量(C2)、及び/又は
・5.0~15.0重量%、好ましくは6.0~12.0重量%、より好ましくは7.0~10.0重量%のエチレンから誘導される単位の総含有量(C2)、及び/又は
・0.8~2.0dl/g、好ましくは0.9~1.8dl/gの、CRYSTEX QC分析に従って決定され、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された結晶部の固有粘度iV(CF)、及び/又は
・155~175℃、好ましくは157~172℃、より好ましくは160~170℃の融解温度Tm、及び/又は
・120~140℃、好ましくは122~137℃、より好ましくは125~135℃の結晶化温度Tc、及び/又は
・1250MPa~1800MPa、好ましくは1300MPa~1750MPa、より好ましくは1350MPa~1700MPaの引張弾性率、及び/又は
・4.0~8.5kJ/m、好ましくは5.0~7.0kJ/mの23℃でのノッチ付きシャルピー衝撃強さ(23℃でのCNIS)。
【0050】
異相プロピレンコポリマー(B)は、プロピレン単位及びエチレン単位からなることが好ましい。
測定していないが、可溶部(SF)中のプロピレンから誘導される単位の含有量(C3)は、好ましくは、可溶部(SF)中のエチレンから誘導される単位の含有量(C2)と合わせて100重量%になる。
可溶部(SF)中のプロピレンから誘導される単位の含有量(C3)は、好ましくは55~70重量%、より好ましくは60~68重量%、さらにより好ましくは62~67重量%である。
測定していないが、結晶部(CF)中のプロピレンから誘導される単位の含有量(C3)は、好ましくは、結晶部(CF)中のエチレンから誘導される単位の含有量(C2)と合わせて100重量%になる。
結晶部(CF)中のプロピレンから誘導される単位の含有量(C3)は、好ましくは95.0~99.9重量%、より好ましくは96.0~99.8重量%、さらにより好ましくは97.0~99.5重量%である。
異相プロピレンコポリマー(B)中のプロピレンから誘導される単位の総含有量(C3)は、好ましくは85.0~95.0重量%、より好ましくは88.0~94.0重量%、さらにより好ましくは90.0~93.0重量%である。
【0051】
このような異相プロピレンコポリマーは市販されている。
【0052】
エチレン系プラストマー(C)
エチレン系プラストマー(C)は、好ましくは、エチレンと炭素原子数3~12のα-オレフィン、好ましくは炭素原子数4~10のα-オレフィン、最も好ましくは1-ブテン又は1-オクテンから選択されるコモノマー単位とのコポリマーである。
エチレン系プラストマーは、通常、組成物の衝撃特性をさらに改善するために添加される。
【0053】
エチレン系プラストマー(C)は、好ましくは、以下の特性のうちの1つ以上、好ましくはすべてを有する。
・0.2~2.5g/10分、好ましくは0.3~2.0g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg、ISO1133)、及び
・850~870kg/m、好ましくは855~865kg/mの密度。
【0054】
このようなエチレン系プラストマーは、Engage、Exact、Queo、Tafmer等の商品名で市販されている。
【0055】
無機充填剤(D)
無機充填剤(D)としては、タルクが好ましい。
【0056】
無機充填剤、好ましくはタルク、(D)は、好ましくは0.3~30.0マイクロメートル、より好ましくは0.5~15.0マイクロメートルのコンパウンディング(配合)前のメジアン粒子サイズ(粒径中央値)d50を有する。
【0057】
さらに、無機充填剤、好ましくはタルク、(D)は、好ましくは、1.0~50.0マイクロメートル、好ましくは1.5~35.0マイクロメートルのコンパウンディング前のトップカット(top-cut)粒子サイズd95を有する。
【0058】
このような無機充填剤は市販されている。
【0059】
添加剤
添加剤は、本発明に係る組成物において通常使用される。好ましくは、添加剤は、酸化防止剤、UV安定剤、スリップ剤、核形成剤、顔料、潤滑剤、マスターバッチポリマー(いずれも複数種可)及び/又は防曇剤のうちの1つ以上から選択される。
添加剤は、通常、組成物全体に対して0.01~4.0重量%の量で、好ましくは0.05~3.0重量%の量で当該組成物中に存在する。
【0060】
第2の異相プロピレンコポリマー(E)
任意選択の異相ポリプロピレンコポリマー(E)は、マトリクス相と、その中に分散されたエラストマー相とを含む。
【0061】
第2の異相プロピレンコポリマー(E)は、当該組成物中に存在する場合、好ましくは、異相プロピレンコポリマー(B)のメルトフローレートよりも低いメルトフローレートを有する。
任意選択の第2の異相プロピレンコポリマー(E)は、2~10g/10分、好ましくは3~8g/10分、より好ましくは4~7g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)を有する。
さらに、任意選択の第2の異相プロピレンコポリマー(E)は、20.0超~50.0重量%の範囲、好ましくは21.0~45.0重量%の範囲、より好ましくは22.0~40.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶部(SF)含有量を有する。
上記可溶部は、好ましくは、4.0dl/g~10.0dl/g、好ましくは4.5~9.5dl/g、より好ましくは5.0~9.0dl/gの、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された固有粘度iV(SF)を有する。
【0062】
任意選択の第2の異相プロピレンコポリマー(E)は、好ましくは、50.0~80.0重量%の範囲、好ましくは55.0~79.0重量%の範囲、より好ましくは60.0~78.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された結晶部(CF)含有量を有する。
【0063】
好ましくは、任意選択の第2の異相プロピレンコポリマー(E)は、以下の特性のうちの1つ以上、好ましくはすべてを有する。
・25~35重量%、好ましくは27~34重量%、より好ましくは28~33重量%の、可溶部(SF)中のエチレンから誘導される単位の含有量(C2)、及び/又は
・0.5~7.5重量%、好ましくは1.0~5.0重量%、より好ましくは1.5~4.0重量%の結晶部(CF)中のエチレンから誘導される単位の含有量、及び/又は
・4.0~15.0重量%、好ましくは5.0~12.0重量%、より好ましくは6.0~10.0重量%のエチレンから誘導される単位の総含有量、及び/又は
・1.8~3.5dl/gの範囲、好ましくは2.0~3.0dl/gの範囲のCRYSTEX QC分析に従って決定され、135℃でDIN ISO1628/1に従ってデカリン中で測定された結晶部の固有粘度iV(CF)、及び/又は
・155~175℃、好ましくは157~172℃、より好ましくは160~170℃の融解温度Tm、及び/又は
・105~125℃、好ましくは107~122℃、より好ましくは110~120℃の結晶化温度Tc。
【0064】
任意選択の異相プロピレンコポリマー(E)は、プロピレン単位及びエチレン単位からなることが好ましい。
測定していないが、可溶部(SF)中のプロピレンから誘導される単位の含有量(C3)は、好ましくは、可溶部(SF)中のエチレンから誘導される単位の含有量(C2)と合わせて100重量%になる。
可溶部(SF)中のプロピレンから誘導される単位の含有量(C3)は、好ましくは65~75重量%、より好ましくは66~73重量%、さらにより好ましくは67~72重量%である。
測定していないが、結晶部(CF)中のプロピレンから誘導される単位の含有量(C3)は、好ましくは、結晶部(CF)中のエチレンから誘導される単位の含有量(C2)と合わせて100重量%になる。
結晶部(CF)中のプロピレンから誘導される単位の含有量(C3)は、好ましくは92.5~99.5重量%、より好ましくは95.0~99.0重量%、さらにより好ましくは96.0~98.5重量%である。
異相プロピレンコポリマー(B)中のプロピレンから誘導される単位の総含有量(C3)は、好ましくは85.0~96.0重量%、より好ましくは88.0~95.0重量%、さらにより好ましくは90.0~94.0重量%である。
【0065】
任意選択の異相プロピレンコポリマー(E)は、好ましくは800MPa~1200MPa、好ましくは850MPa~1150MPaの引張弾性率を有する。
【0066】
さらに、任意選択の異相プロピレンコポリマー(E)は、好ましくは、25~75kJ/m、好ましくは35~60kJ/mの、23℃でのノッチ付きシャルピー衝撃強さ(CNIS、23℃)を有する。
【0067】
このような異相プロピレンコポリマーは市販されている。
【0068】
プロピレンホモポリマー(F)
任意選択のプロピレンホモポリマー(F)は、好ましくは、800~2000g/10分、好ましくは900~1600g/10分、より好ましくは1000~1500g/10分の非常に高いメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)を有する。
【0069】
さらに、任意選択のプロピレンホモポリマー(F)は、好ましくは、150~170℃、好ましくは155~166℃の、ISO11357-3に従ってDSCによって決定された融解温度Tmを有する。
【0070】
このようなプロピレンホモポリマーは、通常、組成物の流動性をさらに改善するために添加される。
このようなプロピレンホモポリマーは市販されている。
【0071】
物品
別の態様では、本発明は、上記又は下記の組成物を含む物品、好ましくは成形物品、より好ましくは自動車用成形物品に関する。
当該物品は、好ましくは車両の外部で使用される。
【0072】
当該物品は、好ましくは、不良の又は剥離したコーティング面積として評価される塗料接着性を示す。
当該物品は、50mm未満、好ましくは0~45mmの、mm単位の不良の又は剥離したコーティング面積を有することが好ましい。
【0073】
使用
さらに別の態様では、本発明は、物品、好ましくは自動車物品、より好ましくは自動車外装物品の射出成形のための上記又は下記の組成物の使用に関する。
【実施例
【0074】
実験の部
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の特定の態様及び実施形態を実証するために含まれる。しかしながら、以下の説明は例示に過ぎず、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではないということは、当業者には理解されるはずである。
【0075】
試験方法
a)CRYSTEX
結晶部及び可溶部並びにそれらのそれぞれの特性(IV及びエチレン含有量)の決定
ポリプロピレン(PP)組成物の結晶部(CF)及び可溶部(SF)、並びにそれぞれの画分のコモノマー含量及び固有粘度を、CRYSTEX装置、Polymer Char(ポリマー・チャー)(バレンシア(Valencia)、スペイン)の使用によって分析した。技術及び方法の詳細は、文献(Ljiljana Jeremic、Andreas Albrecht、Martina Sandholzer、及びMarkus Gahleitner (2020) Rapid characterization of high-impact ethylene-propylene copolymer composition by crystallization extraction separation:comparability to standard separation methods、International Journal of Polymer Analysis and Characterization、25:8、581-596)に見出すことができる。
結晶部及び非晶質部を、160℃での溶解、40℃での結晶化及び160℃での1,2,4-トリクロロベンゼン中での再溶解の温度サイクルによって分離する。SF及びCFの定量化及びエチレン含有量(C2)の決定は、統合赤外線検出器(IR4)によって達成され、固有粘度(iV)の決定のために、オンライン2毛細管粘度計が使用される。
IR4検出器は、2つの異なる帯域(エチレン-プロピレンコポリマー中の濃度及びエチレン含有量の決定に役立つCH伸張振動(約2960cm-1を中心とする)及びCH伸張振動(2700~3000cm-1))でIR吸光度を測定する多波長検出器である。IR4検出器は、2重量%~69重量%の範囲の既知のエチレン含量(13C-NMRにより決定)を有する一連の8種のEPコポリマーを用い、それぞれ2~13mg/mlの範囲の様々な濃度で較正される。Crystex分析中に予想される様々なポリマー濃度(Conc)について、両方の特徴、濃度及びエチレン含有量に同時に対処するために、以下の較正方程式を適用した。
【0076】
Conc=a+b×Abs(CH)+c×(Abs(CH))+d×Abs(CH)+e×(Abs(CH+f×Abs(CH)×Abs(CH) (式1)
CH/1000C=a+b×Abs(CH)+c×Abs(CH)+d×(Abs(CH)/Abs(CH))+e×(Abs(CH)/Abs(CH)) (式2)
【0077】
式1の定数a~e及び式2の定数a~fは、最小二乗回帰分析を用いて決定した。
CH/1000Cは、以下の関係を使用してエチレン含有量(重量%)に変換される。
重量%(EPコポリマー中のエチレン)=100-CH/1000TC×0.3 (式3)
可溶部(SF)及び結晶部(CF)の量を、XS較正によって、それぞれ「冷キシレン可溶部」(XCS)量及び冷キシレン不溶部(XCI)画分と相関させ、ISO16152による標準的な重量測定法に従って決定する。XS較正は、2~31重量%の範囲のXS含有量を有する様々なEPコポリマーを試験することによって達成される。決定されたXS較正は線形である。
重量%XS=1.01×重量%SF (式4)
親EPコポリマー並びにその可溶部及び結晶部の固有粘度(iV)は、オンライン2毛細管粘度計を用いて決定し、ISO1628-3に従ってデカリン中で標準的な方法によって決定された対応するiVと相関する。較正は、iV=2~4dL/gの様々なEPPPコポリマーを用いて達成される。決定された較正曲線は線形である。
【0078】
iV(dL/g)=a×Vsp/c (式5)
【0079】
分析する試料を10mg/ml~20mg/mlの濃度で秤量する。PET及びPAのように160℃でTCBに溶解しない存在しうるゲル及び/又はポリマーの注入を回避するために、秤量した試料をステンレス鋼メッシュMW0.077/D0.05mmmに充填した。
酸化防止剤として250mg/l 2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含有する1,2,4-TCBをバイアルに自動充填した後、試料を、400rpmで絶えず撹拌しながら、完全な溶解が達成されるまで、通常60分間、160℃で溶解する。試料の劣化を回避するために、溶解中には、ポリマー溶液をN2雰囲気で覆う。
規定体積の試料溶液を、試料の結晶化及び結晶部分からの可溶部の分離が行われる不活性担体を充填したカラムに注入する。このプロセスを2回繰り返す。第1の注入中、試料全体を高温で測定し、PP組成物のiV[dl/g]及びC2[重量%]を決定する。第2の注入中に、結晶化サイクルで可溶部(低温で)及び結晶部(高温で)を測定する(重量%SF、重量%C2、iV)。
【0080】
b)冷キシレン可溶部(XCS、重量%)
冷キシレン可溶部(XCS)分率を25℃でISO16152;第1版;2005-07-01に従って決定した。不溶性のままである部分は、冷キシレン不溶性(XCI)画分である。
【0081】
c)固有粘度
固有粘度は、DIN ISO1628/1、1999年10月(デカリン中135℃)に従って測定した。
【0082】
d)ノッチ付きシャルピー衝撃強さ
EN ISO1873-2に従って調製した80×10×4mmの射出成形試験片について、+23℃及び-20℃でISO179-1eAに従って決定した。測定は、試験片の23℃で96時間のコンディショニング時間後に行った。
【0083】
e)曲げ弾性率
曲げ弾性率は、EN ISO1873-2に従って射出成形によって調製した80×10×4mm(長さ×幅×厚さ)の寸法を有する試験片に対して、支点間距離64mmで、2mm/分の試験速度及び100Nの力でISO178に従って決定した。
【0084】
f)引張弾性率
EN ISO1873-2に記載されるように調製した射出成形試験片1B(ドッグボーン形状、厚さ4mm)を使用して、ISO527-2(クロスヘッド速度=1mm/分;試験速度50mm/分、23℃)に従って測定した。測定は、試験片の23℃で96時間のコンディショニング時間後に行った。
【0085】
g)計装化衝撃試験(パンクチャー衝撃試験)
計装化衝撃試験は、60×60×3mm射出成形小板(plaque)に対して、23℃及び-30℃でISO6603-2:2000に従って行った。測定は、試験片の23℃で96時間のコンディショニング時間後に行った。
【0086】
h)コモノマー含有量
ポリ(プロピレン-co-エチレン) - エチレン含量 - IR分光法
定量的赤外(IR)分光法を使用して、一次的方法に対する較正によってポリ(エチレン-co-プロペン)コポリマーのエチレン含有量を定量した。較正は、定量的13C溶液状態核磁気共鳴(NMR)分光法により決定した既知のエチレン含有量の組織内の市販されていない較正標品のセットの使用によって容易にした。較正手順は、文献によく記載されている従来の方法で行った。較正セットは、様々な条件下でパイロットスケール又はフルスケールのいずれかで生成された0.2~75.0重量%の範囲のエチレン含有量を有する38の較正標品からなっていた。最終的な定量的IR分光法で遭遇するコポリマーの典型的な多様性を反映するように較正セットを選択した。
Bruker(ブルカー) Vertex 70 FTIR分光計を用いて固体状態で定量IRスペクトルを記録した。スペクトルは、180~210℃及び4~6MPaで圧縮成形することによって調製した厚さ300μmの25×25mmの正方形フィルムに対して記録した。非常に高いエチレン含有量(>50モル%)を有する試料については、100μm厚のフィルムを使用した。標準的な透過FTIR分光法を採用し、5000~500cm-1のスペクトル範囲、6mmの開口、2cm-1のスペクトル分解能、16回のバックグラウンドスキャン、16回のスペクトルスキャン、64のインターフェログラムゼロ埋めファクター、及びブラックマン-ハリス(Blackmann-Harris)3項アポダイゼーションを使用した。(CH>2の構造単位に対応する730及び720cm-1でのCH逆対称面内変角(横揺れ)の合計面積(A)(積分方法G、限界762及び694cm-1)を用いて定量分析を行った。定量バンドを、CH構造単位(積分方法G、限界4650、4007cm-1)に対応する4323cm-1のCHバンドの面積(A)に対して正規化した。次いで、重量パーセントの単位のエチレン含有量を、二次較正曲線を使用して正規化吸収(A/A)から予測した。この較正曲線は、上記較正セット上で測定した正規化吸収及び一次コモノマー含有量の最小二乗(OLS)回帰によって以前に構築したものである。
【0087】
ポリ(プロピレン-co-エチレン) - エチレン含量 - 13C NMR分光法
定量的13C{H}NMRスペクトルは、H及び13Cについてそれぞれ400.15及び100.62MHzで動作するBruker Avance III 400 NMR分光計を用いて、溶液状態で記録した。すべてのスペクトルを、125℃の13Cに最適化した10mm拡張温度プローブヘッドを使用し、すべての空気圧について窒素ガスを用いて記録した。およそ200mgの材料を、溶媒中の緩和剤の65mM溶液を与えるクロム(III)アセチルアセトネート(Cr(acac))とともに3mlの1,2-テトラクロロエタン-d(TCE-d)に溶解した(Singh,G.、Kothari,A.、Gupta,V.、Polymer Testing 28 5(2009)、475)。
均一溶液を確保するために、ヒートブロック中での最初の試料調製のあと、そのNMRチューブを回転式オーブンの中で少なくとも1時間さらに加熱した。磁石の中へ挿入したあと、チューブを10Hzで回転させた。正確なエチレン含有量の定量のために必要である高分解能及び定量性を主な理由としてこの設定を選んだ。最適化した先端角(tip angle)、1sの繰り返し時間(recycle delay)、及びバイレベルWALTZ16デカップリングスキーム(Zhou,Z.ら、J.Mag.Reson. 187(2007)225及びBusico,V.ら、Macromol.Rapid Commun. 2007、28、1128)を使用して、NOEを伴わない標準的なシングルパルス励起を採用した。1スペクトルあたり全部で6144(6k)の過渡信号を取得した。定量的13C{H}NMRスペクトルを処理し、積分し、関連の定量的特性を積分値から求めた。すべての化学シフトは、溶媒の化学シフトを使用して、30.00ppmのエチレンブロック(EEE)の中央のメチレン基を間接的に基準とした。このアプローチにより、この構造単位が存在しない場合でも比較可能な基準設定が可能になった。エチレンの組み込みに対応する特徴的なシグナルを観察し(Cheng,H.N.、Macromolecules 17(1984)、1950)、コモノマー分率を、ポリマー中のすべてのモノマーに対するポリマー中のエチレンの分率として算出した:fE=(E/(P+E)。コモノマー分率は、13C{H}スペクトルのスペクトル領域全体にわたる複数のシグナルの積分により、Wangらの方法(Wang,W-J.、Zhu,S.、Macromolecules 33(2000)、1157)を使用して定量した。この方法を、そのロバスト性、及び必要な場合には位置欠陥の存在を考慮できることが理由で選んだ。積分領域は、直面するコモノマー含有量の全範囲にわたる適用性を高めるためにわずかに調整した。PPEPP配列中の孤立したエチレンのみが観察される非常に低いエチレン含量を有する系については、Wangらの方法を、もはや存在しない部位の積分の影響を低減するように改変した。このアプローチはそのような系に対するエチレン含有量の過大評価を低減し、これは、絶対的なエチレン含有量を求めるために使用される部位の数をE=0.5(Sββ+Sβγ+Sβδ+0.5(Sαβ+Sαγ))に減じることにより成し遂げられた。この部位の組の使用により、対応する積分方程式は、Wangらの論文(Wang,W-J.、Zhu,S.、Macromolecules 33(2000)、1157)で使用されたのと同じ表記法を使用して、E=0.5(I+I+0.5(I+I))となる。絶対的プロピレン含有量のために使用した方程式は改変しなかった。モルパーセントでのコモノマー組み込みはモル分率から算出した。E[モル%]=100×fE。重量パーセントでのコモノマー組み込みはモル分率から算出した:E[重量%]=100×(fE×28.06)/((fE×28.06)+((1-fE)×42.08))。
【0088】
i)コモノマー含有量
含有量は、定量バンドの強度I(q)とプレスフィルムの厚さTとを用いた膜厚法を用いて、以下の関係式を用いて求めた:[I(q)/T]m+c=C。式中、m及びcは、13C-NMR分光法から得られたコモノマー含有量を用いて構築した較正曲線から決定した係数である。
コモノマー含有量を、13C-NMRを用いて較正し、Nicolet Omnic FTIRソフトウェアとともにNicolet Magna 550 IR分光計を使用するフーリエ変換赤外分光法(FTIR)に基づいて公知の様式で測定した。約250μmの厚さを有するフィルムを試料から圧縮成形した。同様のフィルムを、既知含有量のコモノマーを有する較正用試料から作製した。コモノマー含有量は、1430~1100cm-1の波数範囲のスペクトルから決定した。吸光度は、いわゆる短ベースライン若しくは長ベースライン又はその両方を選択することにより、ピークの高さとして測定した。短ベースラインは、最低点を通って約1410~1320cm-1に引き、長ベースラインは約1410~1220cm-1間に引いた。各ベースラインの種類に対して個々に較正を行う必要があった。また、未知試料のコモノマー含有量は、較正試料のコモノマー含有量の範囲内であった。
【0089】
j)MFR
メルトフローレートは、230℃(ポリプロピレン系材料)又は190℃(ポリエチレン系材料)で2.16kgの荷重で測定した(MFR)。メルトフローレートは、ISO1133に標準化された試験装置が2.16kgの荷重下で230℃(又は190℃)の温度で10分以内に押し出すグラム単位のポリマーの量である。
【0090】
k)密度
密度は、ISO1183-187に従って測定した。試料調製は、ISO1872-2:2007に従って圧縮成形によって行った。
【0091】
l)荷重たわみ温度(HDT)
HDTは、ISO1873-2に従って調製し、測定前に少なくとも96時間、+23℃で保存した80×10×4mmの射出成形試験片で決定した。試験は、0.45MPaの公称表面応力で、ISO75、条件Bに従って平らに支持した試験片に対して行った。
【0092】
m)線熱膨張係数(CLTE)
線熱膨張係数(CLTE)は、引張弾性率の決定に使用したのと同じ射出成形試験片から20個切断した10mm長の小片に対してISO11359-2:1999に従って決定した。測定は、縦方向(機械方向)で、1℃/分の加熱速度で-30~+80℃の温度範囲で、及び1℃/分の加熱速度で23~+80℃の温度範囲でそれぞれ行った。
【0093】
n)塗料接着性
接着性は、以下に記載される特定の条件に従って高圧クリーナー洗浄に供された場合の塗料等の装飾コーティングの耐性として特徴付けられる。
射出成形した試料プレート(150mm×80mm×3mm)を、240℃の溶融温度及び50℃の金型温度で作製した。フローフロント速度は100mm/sであった。コーティング前に、小板をZeller Gmelin Divinol(登録商標)mm/sで5分間洗浄した。その後、表面を、670mm/秒の速度のバーナーで1:20の比のプロパン(9リットル/分)と空気(180リットル/分)との混合物をポリマー基材上に広げたフレーミング(発炎、flaming)によって活性化した。その後、ポリマー基材を3層、すなわちプライマー、ベースコート(黒色)及びクリアコートでコーティングした。フレーミング工程は2回行った。
上記装飾コーティングを、100mmの長さの分岐を有する十字(交差部)を作製する切削工具を用いて、約500μmの総深さ(コーティング及び基材を含む)で基材まで切開した。各コーティングした基材上に、対応する十字を有する3本の線を切開した。切開領域を、試験パネルの表面に対して距離dから角度αに向けた温度Tを有する熱水の蒸気に、時間tの間、さらに曝露した。水ジェットの圧力は、水流量から生じ、水パイプの端部に設置されたノズルの種類によって決定される。
以下のパラメータを使用した。
【0094】
T(水)=68℃;t=30秒;d=100mm、α=90°、水圧65bar、ノズル種類=Walter 13/32。
【0095】
接着性は、試験線あたりの不良の(剥落した、不合格の)又は剥離したコーティング面積をmmで定量化することにより評価した。各例について、5枚のパネル(150mm×80mm×3mm)を試験した。この目的のために、蒸気ジェット曝露の前後の試験線の画像を取得した。その後、画像処理ソフトウェアを用いて剥離面積を算出した。5つの試験片上の3つの試験線についての平均不良面積(すなわち、全体で15個の試験点の平均である)を平均不良面積として報告した。SDは、下記式に従って決定した標準偏差である。
【数1】
上記式中、
xは観測値であり、
【数2】
は、観測値の平均であり、
nは観測回数である。
【0096】
実験
触媒系:
HECO1の重合プロセスのために、国際公開第2016/066446A1号パンフレットの発明例に使用され、記載され、ポリ(ビニルシクロヘキサン)で核形成させるためにビニルシクロヘキサンを用いて前(予備)重合したチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)型触媒を使用した。
ビニルシクロヘキサンを用いた前重合による核形成は、欧州特許第2960256B1号明細書及び欧州特許第2960279B1号明細書に詳細に記載されている。これらの文献は、参照により組み込まれる。
【0097】
HECO2及びHECO3の重合プロセスのために、内部ドナーとしてフタル酸ジエチルを含む伝統的なエステル交換した高収率MgCl担持チーグラー・ナッタポリプロピレン触媒成分を使用した。触媒成分及びその調製概念は、例えば特許公報欧州特許第491566号明細書、欧州特許第591224号明細書及び欧州特許第586390号明細書に概して記載されている。
従って、触媒成分を以下のように調製した。まず、0.1モルのMgCl×3EtOHを、不活性条件下で、大気圧で反応器中で250mlのデカン中に懸濁した。この溶液を-15℃に冷却し、温度を前記温度に維持しながら300mlの冷TiClを添加した。次いで、スラリーの温度を20℃までゆっくりと上昇させた。この温度で、0.02モルのフタル酸ジオクチル(DOP)をスラリーに添加した。フタル酸エステルの添加後、温度を90分間かけて135℃に上昇させ、スラリーを60分間静置した。次いで、さらに300mlのTiClを添加し、温度を135℃で120分間維持した。この後、触媒を液体から濾過し、80℃で300mlのヘプタンで6回洗浄した。次いで、固体触媒成分を濾過し、乾燥した。
【0098】
HECO1、HECO2及びHECO3は、前重合/ループ反応器/気相反応器1/気相反応器2/気相反応器3の構成において製造し、その後、ペレット化工程を行った。上記で定義した触媒系を、共触媒としてのトリエチルアルミニウム(TEAL)及び外部ドナーとしてのジシクロペンタジエニル-ジメトキシシラン(ドナーD)と組み合わせて使用した。
【0099】
【表1(1)】
【表1(2)】
【0100】
異相コポリマーHECO1、HECO2及びHECO3を、同方向(共)回転二軸押出機Coperion(コペリオン) ZSK 47において、220℃で、0.15重量%の酸化防止剤(BASF AG、ドイツ、製のIrganox B215FF;これは、ペンタエリスリチル-テトラキス(3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、CAS番号6683-19-8及びトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、CAS番号31570-04-4の1:2混合物である)、0.05重量%のステアリン酸Ca(CAS番号1592-23-0、Faci(ファシ)、イタリア、から市販されている)とともにコンパウンディングした。これらの3種のコポリマーのCRYSTEX QC分析は、表2に列挙する結果を与えた。
【0101】
【表2】
【0102】
表3は、評価に用いたポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)の特性を示す。これらの組成物は、機械的リサイクルプロセスに由来するので、特性は範囲として示している。
【0103】
【表3】
【0104】
プラストマー1は、DOW,Inc(ダウ)、米国、から市販されている、860kg/mの密度、<0.5g/10分のMFR(2.16kg、190℃、ISO1133)を有するエチレン-1-ブテンプラストマーであるEngage HM7487であった。
【0105】
プラストマー2は、DOW,Inc、米国、から市販されている、857kg/mの密度、及び1.0g/10分のMFR(2.16kg、190℃、ISO1133)を有するエチレン-1-オクテンプラストマーであるEngage 8842であった。
【0106】
タルク1は、IMERYS(イメリス)、フランス、から市販されている、1.2μmのd50及び3.3μmのd95(Sedigraph測定)を有するJetfine 3CAであった。
【0107】
タルク2は、IMERYSから市販されている、2.0μmのd50及び10.0μmのd95(Sedigraph測定)を有するLuzenac HAR T84であった。
【0108】
PP-ホモは、1200g/10分のMFR(2.16kg、230℃、ISO1133)及び158℃のTm(DSC、ISO11357-3)を有する市販のプロピレンホモポリマー HL712FBであった。
【0109】
最終組成物を、酸化防止剤、UV安定剤、スリップ剤、核形成剤、カーボンブラックマスターバッチ、ステアリン酸カルシウム、防曇剤とともに上記ポリマー及びタルクを使用して、Coperin ZSK40二軸押出機中で220℃でコンパウンディングした。実施した例の組成を表4に示す。
【0110】
【表4】
【0111】
表5は実施した例の特性を示す。
【0112】
【表5】
n.m.=測定せず。
【0113】
例IE2は、CE2におけるHECO2の代わりにHECO1を使用することにより、同等の衝撃特性、流動性及び良好な塗料接着性において、より良好な機械的特性及びより良好な熱安定性を得ることができることを示す。
例IE1は、HECO3を省くことにより、他の特性を犠牲にすることなく流動性をさらに高めることができることを示す。
例IE3及びIE4におけるPP-ホモの添加は、流動性の増大を示す。これにより、IE4においてより少量のプラストマーを使用する場合、並外れた機械的挙動及び熱安定性を得ることができる。しかしながら、PP-ホモの添加は、塗装性が損なわれるという代償を伴う。