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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20241209BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241209BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G21/00 386
H04N1/00 002A
H04N1/00 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024001994
(22)【出願日】2024-01-10
(62)【分割の表示】P 2019223473の分割
【原出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2024028435
(43)【公開日】2024-03-04
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】冨井 弘
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-146653(JP,A)
【文献】特開2019-066721(JP,A)
【文献】特開2017-208685(JP,A)
【文献】特開2009-020176(JP,A)
【文献】特開2001-105693(JP,A)
【文献】特開2019-092034(JP,A)
【文献】特開2017-039278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
複数の種類の調整項目の中から選択された2以上の調整項目の選択結果と、該選択結果が示す2以上の調整項目のそれぞれで使用するシートの種類と、に関するユーザ指示情報を受け付ける受付手段と、
前記受付手段により受け付けた前記ユーザ指示情報に基づき前記画像形成手段に前記使用する種類のシートにテスト画像を形成させる制御手段と、を有し、
前記画像形成手段は、前記2以上の調整項目にかかわらず、前記使用するシートの種類毎に連続してテスト画像を形成することを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成装置は、シート上の画像を読み取る読取手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記読取手段に前記テスト画像を読み取らせ、前記テスト画像の読取結果に基づき前記2以上の調整項目に対応する調整を実施することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記読取手段は、前記テスト画像が形成されたシートを搬送させながら該シート上の前記テスト画像を読み取ることを特徴とする、
請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記読取手段は、原稿台と、前記原稿台に載置された原稿を読み取る画像センサと、原稿が積載されるトレイと、前記トレイ上の前記原稿を前記画像センサによって読み取るために前記トレイから前記原稿を搬送する搬送手段と、を備えることを特徴とする、
請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記2以上の調整項目を選択するための画面を表示する表示手段を備えることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画面は、前記複数の種類の調整項目とシートの種類とを表形式に表示した画面であることを特徴とする、
請求項5記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント条件の調整機能や画像不良の診断機能を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、テストチャートを生成し、該テストチャートの読取装置による読取結果に基づいて、プリント条件の調整や画像不良の診断等を行う機能を有する。プリント条件の調整には、例えば、階調補正、面内濃度ムラ補正、印刷位置調整、転写出力調整(二次転写電圧調整)等がある。画像不良には、点、筋画像等の発生がある。テストチャートは、調整内容や診断内容に応じたテスト画像がシートにプリントされることで形成される。
【0003】
テストチャートによるプリント条件の調整の一例として階調補正について説明する。画像形成装置によりシートに形成される画像の階調特性(濃度特性)は、様々な要因で変動する。例えば、階調特性は、画像形成装置の設置場所の気温や湿度等の環境条件の変化や、画像形成装置の部品の経時変化により変動する。そのために画像形成装置は、階調特性を維持するためのキャリブレーションを実行する。キャリブレーションでは、まずシートにテスト画像が形成されて階調補正用のテストチャートが生成される。画像形成装置は、テストチャートを読取装置で読み取ることで、テスト画像の画像濃度を取得する。画像形成装置は、取得した画像濃度が目標濃度となるような補正テーブルを作成する。画像形成時には、この補正テーブルを用いて階調補正が行われる。補正テーブルは、シートの種類(坪量やコーティングの有無、再生紙かどうか)毎に用意される。
【0004】
特許文献1は、複数枚のテストチャートを連続して作成し、自動原稿搬送装置を用いて複数枚のテストチャートを連続して読み取ることで、キャリブレーション時のユーザの作業負荷を低減する方法を提案する。特許文献2は、シートの種類別に調整が必要な転写出力調整と印刷位置調整と、を同じ種類のシートに対して一括して行う方法を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-92034号公報
【文献】特開2019-66721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、複数種類の解像度(線数)のスクリーンに対する階調補正を一括で行うことが可能である。しかしながら特許文献1には、複数種類の調整を一括で行うことについての開示がない。特許文献2では、複数種類の調整を一括して行うことが可能である。複数種類の調整は、一括調整モードで行われる。しかし画像形成装置の状態やユーザの目的によっては、一括調整モードにより不要な調整が行われることがある。例えば、階調補正と面内濃度ムラ補正とを行い且つ印字位置調整を行う必要が無い場合、一括調整モードでは、階調補正、面内濃度ムラ補正、及び印字位置調整がすべて行われてしまう。これは不要な調整の実行による調整時間の浪費や無駄なテストチャートの増加の原因となる。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑み、複数種類の調整を一括して行う動作モードであっても、調整する種類を選択できる画像形成装置を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、シートに画像を形成する画像形成手段と、複数の種類の調整項目の中から選択された2以上の調整項目の選択結果と、該選択結果が示す2以上の調整項目のそれぞれで使用するシートの種類と、に関するユーザ指示情報を受け付ける受付手段と、前記受付手段により受け付けた前記ユーザ指示情報に基づき前記画像形成手段に前記使用する種類のシートにテスト画像を形成させる制御手段と、を有し、前記画像形成手段は、前記2以上の調整項目にかかわらず、前記使用するシートの種類毎に連続してテスト画像を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数種類の調整を一括して行う動作モードであっても、調整する種類を選択することで、画像形成装置の状態やユーザの目的に応じて、不要な調整を行わないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像形成装置の構成図。
図2】(a)、(b)は、ドキュメントスキャナの説明図。
図3】(a)~(d)は、ADFの説明図。
図4】プリンタ制御部の説明図。
図5】階調補正処理を表すフローチャート。
図6】(a)~(c)は、階調補正処理中に表示される画面の例示図。
図7】階調補正に用いるテストチャートの例示図。
図8】(a)、(b)は、濃度ムラ補正用のテストチャートの説明図。
図9】印刷位置調整用チャートの説明図。
図10】印刷位置のズレ量を検出する方法の説明図。
図11】転写出力調整用チャートの説明図。
図12】(a)、(b)は、点・指示画像診断用のテストチャートの説明図。
図13】筋検出位置と筋の原因との関係説明図。
図14】両面読取補正チャートの説明図。
図15】動作モードを設定するための操作画面の例示図。
図16】実行受付操作画面の例示図。
図17】一括調整モード時の画像形成装置の処理を表すフローチャート。
図18】(a)~(c)は、テストチャートを必要としない調整処理の説明図。
図19】(a)、(b)は、第2実施形態の実行受付操作画面の例示図。
図20】(a)、(b)は、第2実施形態の一括調整モード時の画像形成装置の処理を表すフローチャート。
図21】予め選択されている調整項目の変更例の説明図。
図22】第3実施形態の実行受付操作画面の例示図。
図23】第4実施形態の実行受付操作画面の例示図。
図24】プリントヘッドの構成説明図。
図25】(a)、(b)は、ロッドレンズアレイの説明図。
図26】(a)、(b)は、1本のロッドレンズが倒れた状態の例示図。
図27】プリントヘッド縦ムラ補正用のテストチャートの例示図。
図28】プリントヘッド以外の要因による濃度ムラ補正用のテストチャートの例示図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の画像形成装置の構成図である。画像形成装置100は、原稿から画像を読み取る読取装置であるリーダ200と、シートPに画像を形成するプリンタ300(プリント装置)と、を備える。リーダ200は、ドキュメントスキャナ210と自動原稿搬送装置(以下、「ADF:Auto Document Feeder」という。)220と、を備える。プリンタ300の上にドキュメントスキャナ210が設けられ、ドキュメントスキャナ210の上にADF220が設けられる。リーダ200は、原稿101にプリントされた画像を読み取り、読み取った画像を表す画像データをプリンタ300へ送信する。プリンタ300は、リーダ200から取得した画像データに基づいて、シートPへの印刷処理(画像形成処理)を行うことができる。
【0013】
図中、プリンタ300によるシートの搬送方向をPX方向、PX方向に直交する方向をY方向とする。また、ADF220の給紙方向をSX2方向、ドキュメントスキャナ210が有する第1ミラーユニット104a及び第2ミラーユニット104bの移動方向をSX1方向とする。
【0014】
リーダ200は、ADF220により給送される原稿の画像や、ドキュメントスキャナ210のADF220側に設けられる原稿台ガラス102上に載置された原稿101の画像を読み取る。ドキュメントスキャナ210は、内部に画像センサ105及びリーダ画像処理部108を備える。リーダ画像処理部108は、原稿101を読み取ることで画像センサ105が生成した電気信号を画像データに変換してプリンタ300へ送信する。
【0015】
プリンタ300は、内部にプリンタ制御部109を備える。プリンタ制御部109は、ドキュメントスキャナ210のリーダ画像処理部108から画像データを取得する。プリンタ制御部109は、取得した画像データに基づいてシートPに画像を形成する処理を制御する。プリンタ300は、画像データに基づいた画像を生成する電子写真方式の画像形成エンジンである画像形成部10を備える。画像形成部10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を生成するために4つのユニットを備える。プリンタ300は、中間転写ベルト31及び定着器40を備える。なお、ブラックのユニットのみを用いることで、プリンタ300は、モノクロ印刷にも適用可能である。
【0016】
図1で示すように、画像形成部10は左側から順にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応した4つの感光ドラム11を備えている。各感光ドラム11の周囲にはローラ状の帯電器12、露光器13、現像器14、一次転写器17、ドラムクリーナ15等が配置される。以下では、4色を代表してブラックのトナー画像を形成する手順を説明する。他色のトナー画像を形成する手順も同様である。
【0017】
画像形成が開始されると、感光ドラム11は矢印方向に回転する。帯電器12は、感光ドラム11の表面を均一に帯電させる。露光器13は、プリンタ制御部109から取得する画像データに応じて変調したレーザ光により感光ドラム11の表面を露光して、静電潜像を形成する。現像器14は、静電潜像にトナーを付着させて現像し、トナー画像を形成する。一次転写器17は、感光ドラム11に形成されたトナー画像を中間転写ベルト31に一次転写する。ドラムクリーナ15は、一時転写後に感光ドラム11に残ったトナーを除去する。これにより感光ドラム11は次の画像を形成可能な状態となる。本実施形態のドラムクリーナ15は、弾性材料からなるクリーニングブレードを感光ドラム11の表面に当接する構成である。
【0018】
なお、露光器13は、レーザ光により感光ドラム11の表面をY方向に走査する。そのために、Y方向は、プリンタ300が画像を形成するときの主走査方向となる。リーダ200の主走査方向とプリンタ300の主走査方向とは、同じY方向である。
【0019】
中間転写ベルト31は、3つのローラ34、36、37に吊架されており、図中時計回り方向に回転される。中間転写ベルト31は、感光ドラム11から転写されたトナー画像を担持する像担持体であり、回転によりトナー画像をローラ34方向へ搬送する。中間転写ベルト31には、各色の感光ドラム11から各色のトナー画像が重畳して転写されることで、フルカラーのトナー画像が形成される。ローラ34は、中間転写ベルト31を挟んだ位置に配置される二次転写器27との間で二次転写部を構成する。ローラ36の中間転写ベルト31を挟んだ位置には、転写クリーナ35が設けられる。
【0020】
シートPは、給紙カセット20或いは手差しトレイ25から給送される。シートPは、給紙カセット20或いは手差しトレイ25から給紙されると、搬送経路をレジストローラ対23まで搬送される。レジストローラ対23は、搬送されてきたシートPを一旦停止させ、シートPの搬送方向に対する斜行を補正する。レジストローラ対23は、中間転写ベルト31に担持されたトナー画像が二次転写部に搬送されるタイミングに応じて、シートPを二次転写部に送り込む。二次転写器27は、中間転写ベルト31上のトナー画像をシートPに転写(二次転写)する。転写クリーナ35は、中間転写ベルト31上に残ったトナーを除去する。これにより中間転写ベルト31は次の画像を形成可能な状態となる。
【0021】
トナー画像が転写されたシートPは、二次転写器27により定着器40へ搬送される。定着器40は、シートPにトナー画像を定着させる。定着器40は、例えばトナー画像を加熱溶融して加圧することで、シートPにトナー画像を定着させる。以上によりシートPに画像が形成される。画像が形成されたシートPは、排出ローラ63により排出トレイ64に排出される。
【0022】
(ドキュメントスキャナ)
図2は、ドキュメントスキャナ210の説明図である。図2(a)は、ドキュメントスキャナ210の構成を示す。図2(b)は、ドキュメントスキャナ210をADF220側から見た図である。ドキュメントスキャナ210は、筐体内に、第1ミラーユニット104a、第2ミラーユニット104b、画像センサ105、レンズ115、モータ116、原稿サイズ検知センサ113、及びホームポジションセンサ106を備える。第1ミラーユニット104aは、原稿照明ランプ103及び第1ミラー107aを備える。第2ミラーユニット104bは、第2ミラー107b及び第3ミラー107cを備える。第1ミラーユニット104a及び第2ミラーユニット104bは、モータ116により駆動されてSX1方向に移動可能である。
【0023】
ドキュメントスキャナ210は、ADF220により搬送される原稿101を読み取る第1読取モードと、原稿台ガラス102上に載置された原稿101を読み取る第2読取モードとにより、画像読取を行うことができる。第1読取モードは「流し読み」や「ADF読み」と呼ばれることがある。第2読取モードは「固定読み」や「原稿台読み」と呼ばれることもある。
【0024】
第1読取モードには、シートスルー方式と原稿固定方式の二種類の読取方式がある。
シートスルー方式では、モータ116が回転することで、第1ミラーユニット104a及び第2ミラーユニット104bが流し読み位置に移動して停止する。流し読み位置は、ADF220により搬送中の原稿101から画像を読み取る際の読取位置である。ADF220が原稿台ガラス102上に原稿101を搬送している間に、画像センサ105が原稿101の画像を読み取る。画像が読み取られる間、第1ミラーユニット104a及び第2ミラーユニット104bは、読取位置に停止したままである。
【0025】
ドキュメントスキャナ210は、原稿照明ランプ103を点灯して、原稿101の読取面(画像が印刷されている面)に光を照射する。第1ミラー107a、第2ミラー107b、及び第3ミラー107cは、原稿101に照射された光の反射光(画像光)を偏向してレンズ115に導く。レンズ115は画像光を画像センサ105の受光面上に結像させる。画像センサ105は画像光を電気信号に変換する。リーダ画像処理部108は、画像センサ105から電気信号を取得して画像データを生成する。画像読取の際には、第1ミラーユニット104a、第2ミラーユニット104b、画像センサ105、及びリーダ画像処理部108がこのように動作する。この画像読取の動作は、読取モードや読取方式によらず同じである。
【0026】
原稿固定方式では、ADF220が原稿台ガラス102上に原稿101を搬送し、原稿台ガラス102上の所定位置に原稿101を停止させる。第1ミラーユニット104a及び第2ミラーユニット104bは、モータ116によりSX1方向に移動しながら、原稿101の画像を読み取る。ADF220は、画像読取後に原稿101の搬送を再開して排出する。
【0027】
第2読取モード時には、モータ116が回転することで、第1ミラーユニット104a及び第2ミラーユニット104bが、一旦ホームポジションセンサ106のあるホームポジションまで移動する。原稿台ガラス102には、1枚の原稿が、読取面を原稿台ガラス102側に向けて、ADF220により位置を固定されて載置される。ドキュメントスキャナ210は、原稿照明ランプ103を点灯し、原稿101の読取面に光を照射する。第1ミラーユニット104a及び第2ミラーユニット104bは、SX1方向に移動しながら、第1ミラー107a、第2ミラー107b、及び第3ミラー107cにより原稿101からの画像光を偏向してレンズ115に導く。レンズ115は、画像光を画像センサ105の受光面上に結像させる。画像センサ105は画像光を電気信号に変換する。リーダ画像処理部108は、画像センサ105から電気信号を取得して画像データを生成する。
【0028】
ドキュメントスキャナ210は、原稿101のサイズ(原稿サイズ)を検出することが可能である。本実施形態のドキュメントスキャナ210は、原稿画像を読み取る前に原稿サイズを検出する。ドキュメントスキャナ210は、まず、原稿101の端部を原稿照明ランプ103により照射し、原稿101からの反射光を画像センサ105で読み取る。画像センサ105は、例えばY方向に複数の光電変換素子が配列されたラインセンサである。画像センサ105は、所定数のラインを読み取る。ラインの方向は、SX1方向に直交する。画像センサ105の所定数のラインの読取結果(電気信号)に基づいて、原稿101の幅(Y方向の長さ)が取得される。画像センサ105がY方向に複数の光電変換素子が配列されて構成されるために、Y方向は、リーダ200が画像を読み取るときの主走査方向となる。SX方向は、リーダ200が画像を読み取るときの主走査方向に直交する副走査方向となる。
【0029】
また、原稿サイズ検知センサ113の検知結果に基づいて、原稿101の長さ(SX1方向の長さ)が検出される。原稿サイズ検知センサ113は、ドキュメントスキャナ210の筐体内のSX1方向の所定の位置に少なくとも1つ配置され、該位置上の原稿台ガラス102上の原稿101の有無を検知する。原稿サイズ検知センサ113は、例えば赤外センサであり、原稿101の有無を2値で出力することが可能である。原稿サイズ検知センサ113の検知結果により、原稿101の長さが原稿サイズ検知センサ113の位置よりも長いか否かを判別することができる。原稿101の長さを正確に検出したい場合には、複数の原稿サイズ検知センサ113が配置される。
【0030】
このように検出される原稿101の幅及び長さに基づいて、原稿101が所定の複数の定形サイズのいずれであるかが判定される。また、原稿101の幅及び長さに基づいて、原稿101が原稿台ガラス102上にどの向き(縦読み、横読み)で載置されているかも判定される。
【0031】
図2(b)に示すように、原稿台ガラス102は、外周に原稿サイズラベル1230が配置され、Y方向の奥側の基準突き当て部に原稿合わせマーク1231が設けられる。原稿101は、原稿合わせマーク1231に頂点が突き当てられるように載置される。定形サイズの原稿の基準は、原稿合わせマーク1231になる。本実施形態の原稿サイズ検知センサ113は、原稿合わせマーク1231からA4サイズの原稿の長さよりも少しだけ遠い位置で、原稿台ガラス102のY方向側に配置される。そのために原稿サイズ検知センサ113は、A4、B5、A5、B6サイズの原稿101を検知できず、A3、B4、A4R、B5Rサイズの原稿101を検知できる。
【0032】
(ADF)
図3は、ADF220の説明図である。図3(a)は、ADF220の外観斜視図である。図3(b)は、ADF220の内部構成図である。図3(c)は、後述の原稿積載部301を斜め上方から見た図である。図3(d)は、後述の原稿積載部301の内部構成図である。ADF220は、原稿積載部301、原稿給紙部304、原稿搬送部308、及び反転排紙部313を備える。
【0033】
原稿積載部301は、原稿トレイ302を有している。原稿トレイ302は、積載面に1枚以上の原稿101が積載可能である。原稿トレイ302は、給紙部として機能する。原稿積載部301には、原稿101が原稿トレイ302に積載されることで点灯する原稿インジケータ303が設けられる。原稿トレイ302に積載される原稿101は、原稿給紙部304により1枚ずつ原稿台ガラス102上へ搬送され、原稿台ガラス102上を通過して反転排紙部313により反転排紙部313の排紙トレイ321へ排出される。
【0034】
原稿給紙部304は、ピックアップローラ306、給紙ローラ307、及びレジストローラ対305が、原稿101の搬送経路に沿って設けられる。ピックアップローラ306は、回転可能であり且つ上下動可能なローラである。ピックアップローラ306は、給紙時に、原稿トレイ302に積載された原稿束のうち最上位の原稿101上に下降して接触し、該原稿101を搬送する。給紙ローラ307は、ピックアップローラ306により搬送されてきた原稿101をレジストローラ対305へ搬送する。ピックアップローラ306及び給紙ローラ307により、原稿101が1枚ずつ給送される。レジストローラ対305は、原稿101の先端の到達時には停止している。これは、原稿101の斜行を補正するためである。レジストローラ対305は、斜行補正後に回転を開始して、原稿101を原稿搬送部308へ搬送する。
【0035】
原稿搬送部308は、搬送ベルト309、駆動ローラ310、従動ローラ311、及び複数の押圧コロ312を備える。原稿搬送部308は、搬送ベルト309を用いて原稿101をSX1方向へ搬送する。搬送ベルト309は、駆動ローラ310及び従動ローラ311に張架されている。さらに搬送ベルト309は、押圧コロ312によって原稿台ガラス102へ押圧されている。搬送ベルト309は、搬送ベルト309と原稿台ガラス102との間に進入してきた原稿101を、摩擦力により搬送する。これにより原稿101は、原稿台ガラス102上を搬送される。
【0036】
第1読取モードの原稿固定方式では、原稿101が読取位置に到達すると、搬送ベルト309が停止する。第1ミラーユニット104a及び第2ミラーユニット104bにより原稿101が読み取られた後に、搬送ベルト309は、原稿101を反転排紙部313に搬送する。この場合、第1ミラーユニット104a及び第2ミラーユニット104bは、SX1方向に移動しながら、停止中の原稿101を読み取る。
【0037】
第1読取モードのシートスルー方式では、原稿101が読取位置に到達しても搬送ベルト309は停止せずに、原稿101の搬送を継続する。この場合、第1ミラーユニット104a及び第2ミラーユニット104bは、停止したまま、搬送中の原稿101を読み取る。つまり、原稿101のスキャンは、第1ミラーユニット104a及び第2ミラーユニット104bが移動する代わりに、原稿101が移動することで行われる。
【0038】
反転排紙部313は、反転ローラ314、搬送ローラ対315、反転フラッパ316、排紙フラッパ317、及び反転コロ318を備える。反転排紙部313は、原稿搬送部308から搬送されてきた原稿101の表裏を反転して、排紙積載部320の排紙トレイ321へ排出する。
【0039】
原稿搬送部308の搬送ベルト309により搬送されてきた原稿101は、反転排紙部313に進入するときに、反転フラッパ316により掬い上げられて反転ローラ314へ搬送される。原稿101は、CCW(Counter Clock Wise:逆時計回り方向)に回転する反転ローラ314と、これに対向する反転コロ318とにより挟持されて、搬送ローラ対315へ搬送される。原稿101の後端が排紙フラッパ317を通過すると、排紙フラッパ317がCW(Clock Wise:時計回り方向)に回転する。また、反転ローラ314もCWに回転する。これにより、原稿101はスイッチバック搬送されて、排紙積載部320の排紙トレイ321へ排出される。
【0040】
なお、ADF220を用いて原稿101の裏面の画像を読み取る場合、原稿101は、表面をスキャンされた後に反転され、続けて裏面がスキャンされる。このような読取方式は「両面反転読み」と呼ばれる。原稿101は、例えば表面のスキャン後に原稿搬送部308から反転排紙部313へ搬送されて表裏面が反転される。反転排紙部313は、排出時と同様の動作で原稿101の一部を排紙トレイ321へ排出した状態で、反転ローラ314をCCWに回転させる。これにより原稿101は、表裏面が反転した状態で反転排紙部313から原稿搬送部308に進入して裏面がスキャンされる。
【0041】
なお、ADF220は、原稿101の搬送経路を挟んでドキュメントスキャナ210に対向する位置に読取ユニットを備えた構成であってもよい。読取センサは、原稿に光を照射する光源と、原稿による反射光を受光して画像データを生成する読取センサと、を備える。このような構成では、原稿101は、表面をドキュメントスキャナ210により読み取られ、裏面を読取ユニットにより読み取られる。この場合、原稿101は、反転排紙部313による反転動作が不要になる。このように流し読みを行いながら、原稿101の表面と裏面を同時にスキャンする方式は、「両面同時読み」と呼ばれる。
【0042】
(ADFによる原稿サイズ検出)
図3(c)に示すように、原稿積載部301の原稿トレイ302には、原稿101の幅方向(Y方向)にスライド可能な一対の規制部材332が配置される。規制部材332は、原稿積載部301(原稿トレイ302)に載置された原稿101の幅方向の両端部を規制することで、給送時の幅方向の位置を揃える機能を有する。一対の規制部材332は、原稿101の幅方向に対称的に移動可能となっており、給送される原稿101の幅方向の中央が給送中央となるように、原稿位置を規制する。
【0043】
原稿積載部301には、規制部材332の位置を検出可能な原稿幅センサ333が設けられる(図3(d))。原稿幅センサ333は、原稿101の幅に応じて移動する規制部材332の位置を検出することで、原稿トレイ302に載置された原稿101の幅方向のサイズを検出する。
【0044】
原稿積載部301には、原稿の給送方向(SX2方向)に複数(本実施形態では2個)の原稿長検知センサ334a、334bがならんで配置される。原稿長検知センサ334a、334bは、原稿積載部301(原稿トレイ302)上の原稿101の有無を検知する。原稿長検知センサ334a、334bのそれぞれの検知結果に基づいて、原稿101の原稿給送方向(SX2方向)のサイズが検出される。
【0045】
原稿幅センサ333及び原稿長検知センサ334a、334bの検知結果に基づいて、原稿積載部301に載置された原稿のサイズ及び向き(縦送りであるか横送りであるか)が検出可能である。
【0046】
(プリンタ制御部)
図4は、プリンタ制御部109の説明図である。プリンタ制御部109には、画像形成装置100の動作を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)401、リーダ200、及び半導体レーザ410が接続される。CPU401には、メモリ402及び操作部400が接続される。メモリ402は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)を備え、画像形成装置100の動作を制御するための制御プログラムや各種のデータを格納する。CPU401は、メモリ402に格納される制御プログラムを実行することで、画像形成装置100の動作を制御することになる。操作部400は、入力装置及び出力装置を備えるユーザインタフェースである。入力装置には、スタートキー、ストップキー、テンキー等のキーボタンやタッチパネルがある。出力装置には、ディスプレイやスピーカがある。リーダ200は、上記したリーダ画像処理部108の他に、リーダ制御部413を備える。リーダ制御部413は、リーダ200の各部の動作を制御する。
【0047】
プリンタ制御部109は、色処理部403、階調制御部411、ディザ処理部407、PWM(Pulse Width Modulation)部408、及びレーザドライバ409を備える。プリンタ制御部109は、グリーン(G)、レッド(R)、ブルー(B)の各画像データをPWM信号に変換し、このPWM信号に基づいて半導体レーザ410の発光制御を行う。半導体レーザ410は、露光器13内に設けられ、感光ドラム11を照射するレーザ光を出射する。
【0048】
リーダ200のリーダ画像処理部108から出力される画像データは、色処理部403に入力される。色処理部403は、プリンタ300の出力特性が理想的であった場合に所望の出力結果(画像)が得られるように、入力された画像データに対して画像処理及び色処理を行う。色処理部403は、画像データの階調数を、精度向上のために8ビットから10ビットに拡張する。色処理部403は、ルックアップテーブルであるLUTid404を備える。LUTid404は、画像データに含まれる輝度情報を濃度情報に変換する輝度-濃度変換テーブルである。色処理部403は、LUTid404により、R、G、Bの各画像データの輝度情報を、Y、M、Cの各画像データの濃度情報に変換する。Y、M、Cの画像データは、階調制御部411に入力される。
【0049】
階調制御部411は、画像が形成されるシートの種類に応じた補正条件を用いて、色処理部403から取得した画像データの階調特性を補正する。そのために階調制御部411は、UCR(Under Color Remove)部405、及びルックアップテーブルであるLUTaを含むγ補正部406を備える。階調制御部411は、プリンタ300の実際の出力特性に合わせて所望の出力結果(画像)が得られるように、Y、M、C、Kの各画像データの階調補正を行う。UCR部405は、各画素における画像データの積算値(総和)を規定値以下に規制することで、画像データレベルの総和を制限する。総和が規定値を超えた場合、UCR部405は、所定量のC、M、Yの画像データをKの画像データに置き換える下色除去処理(UCR)を行い、画像データレベルの総和を低下させる。
【0050】
γ補正部406は、LUTaを用いて画像データの濃度特性(γ特性)を補正する。LUTaは、濃度特性を補正するための10ビットの変換テーブル(階調補正条件)である。プリンタ300は、環境変動や部品の消耗によりシート上に形成する画像の階調特性が変動する。また、画像の階調特性は、シートの種類により異なる。CPU401は、階調補正を実行することでLUTaを更新し、画像の階調特性を所定の階調特性に維持する。プリンタ300は、γ補正部406により補正された画像データにしたがってシートPに画像を形成する。メモリ402は、シートの種類毎のLUTaを保持していてもよい。CPU401は、操作部400により指定されたシートの種類に対応するLUTaをメモリ402から読み出し、γ補正部406に設定する。LUTaは、原稿の複写やホストコンピュータからのプリントジョブにしたがって画像を形成するときには使用されるが、階調補正を実行する際には使用されない。階調補正後のY、M、C、Kの各画像データは、ディザ処理部407に入力される。
【0051】
ディザ処理部407は、階調補正後のY、M、C、Kの各10ビットの画像データにディザ処理(中間調処理)を行い、4ビットの信号に変換する。PWM部408は、ディザ処理後の信号にパルス幅変調を行い、露光器13の制御信号であるPWM信号を生成する。PWM信号は、レーザドライバ409に入力される。レーザドライバ409は、PWM信号に応じて半導体レーザ410の発光制御を行う。
【0052】
(画像形成装置の特性の調整)
画像形成装置100は、テストチャートを用いてプリンタ300の特性(プリント条件)の調整や画像診断を行うことができる。画像形成装置100は、テストチャートをリーダ200により読み取り、その読取結果に応じて特性の調整や画像診断を行う。特性の調整により、例えば、階調補正、面内濃度ムラ補正、印刷位置調整、転写出力調整(二次転写電圧調整)等の複数種類のプリント条件が調整される。画像診断により、例えば点・筋画像診断、両面読取色補正等の画像不良が診断される。テストチャートは、特性の調整や画像診断の種類に応じた画像データがシートPに形成されることで作成される。
【0053】
(階調補正)
階調補正は、プリンタ300により形成された画像の濃度や色味の再現性が低下した場合に行われる。階調補正は、プリンタ300で形成した階調補正用のテストチャートをリーダ200により読み取り、その読取結果に基づいて濃度特性(γ特性)を補正するためのLUTaを作成することで行われる。
【0054】
図5は、階調補正処理を表すフローチャートである。図6は、階調補正処理中に操作部400のディスプレイに表示される画面の例示図である。図7は、階調補正に用いるテストチャートの例示図である。
【0055】
CPU401は、ユーザがADF読みと原稿台読みとのいずれの読取モードを選択したかを表す信号を、操作部400から取得する(S501)。ユーザがADF読みを選択した場合、CPU401は、第1読取モードで動作する。ユーザが原稿台読みを選択した場合、CPU401は、第2読取モードで動作する。図6(a)は、読取モード選択時の操作画面700aを例示する。CPU401は、操作画面700aを操作部400のディスプレイに表示させる。操作画面700aには、ADF読みが選択可能なボタン701aと、原稿台読みが選択可能なボタン701bとが表示される。ユーザは、操作部400によりボタン701aとボタン701bとのいずれかを選択することで、読取モードを選択する。CPU401は、操作部400から、選択された読取モードを表す信号を取得することになる。
【0056】
読取モードが選択されると、CPU401は、画像形成条件をプリンタ300に設定し、プリンタ300により図7に例示する階調補正用のテストチャートを作成する(S502)。そのためにCPU401は、テストチャートを作成するためのテスト画像の濃度信号をディザ処理部407に送信する。このとき、LUTaは使用されない。テストチャートが複数枚必要な場合、S501で選択された読取モードがADF読みの場合と原稿台読みの場合とで、プリント動作が異なる。ADF読みの場合、複数枚のテストチャートが連続してプリントされる。原稿台読みの場合、1枚毎にテストチャートのプリントと原稿台読みとが繰り返される。
【0057】
図7に示すように、テストチャート801a、801bは、それぞれY、M、C、Kの各色について10階調からなるテスト画像を含んでいる。10階調の画像は、例えば、各色10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%の濃度信号により形成される。ディザ処理部407は、複数の中間調処理を適用可能である。例えば、ディザ処理部407は、低線数のスクリーン(160lpi(line per inch)~180lpi)と高線数のスクリーン(250lpi~300lpi)とを有している。テストチャート801aは、低線数のスクリーンを適用されたテストチャートである。テストチャート801bは、高線数のスクリーンを適用されたテストチャートである。なお、低線数のスクリーンは、プリントに適用され、高線数のスクリーンはコピーに適用される。プリンタ300が3種類以上の線数で画像を形成できる能力を有している場合、テストチャートの種類も3種類以上とされてもよい。ここでは、説明の便宜上、階調補正を行う際に形成されるテストチャートの枚数を1枚としている。つまり、ユーザが階調補正を行うスクリーン別に、図5の階調補正処理が行われることとなる。
【0058】
テストチャートの作成後に、CPU401は、読取モードに応じた処理で、リーダ200によりテストチャートを読み取る(S503)。
【0059】
読取モードがADF読みの場合、CPU401は、テストチャートをADF220の原稿トレイ302に載置するように促すメッセージを、操作部400のディスプレイに表示する。図6(b)は、このようなメッセージ画面700bを例示する。メッセージ画面700bには、テストチャートを原稿トレイ302に載置するように促すメッセージと、読取開始を指示するボタン701cとが表示される。ユーザは、原稿トレイ302にテストチャートを載置した後に、操作部400によりボタン701cを押下することで、ADF読みの開始を指示する。これによりCPU401は、操作部400から、ADF読みによる読取開始指示を取得する。
【0060】
CPU401は、読取開始指示を取得すると、リーダ200にADF読みを指示する。リーダ200は、ADF220によりテストチャートを搬送し、ドキュメントスキャナ210によりテストチャートを読み取る。ドキュメントスキャナ210のリーダ画像処理部108は、テストチャートの読取結果を表す輝度信号を含む画像データをプリンタ制御部109に送信する。テストチャートが複数枚の場合、ドキュメントスキャナ210は、ADF220により連続して搬送される複数枚のテストチャートを連続して読み取る。リーダ画像処理部108は、連続して読み取られたテストチャートの読取結果を表す輝度信号を含む画像データを、プリンタ制御部109に連続して送信する。
【0061】
読取モードが原稿台読みの場合、CPU401は、テストチャートを原稿台ガラス102に載置するように促すメッセージを、操作部400のディスプレイに表示する。図6(c)は、このようなメッセージ画面700cを例示する。メッセージ画面700cには、テストチャートを原稿台ガラス102に載置するように促すメッセージと、読取開始を指示するボタン701cとが表示される。ユーザは、ADF220を開いて原稿台ガラス102を露出させ、原稿台ガラス102上に、テスト画像が形成された面を原稿台ガラス102側に向けてテストチャートを載置する。ユーザは、その後に操作部400によりボタン701cを押下することで、原稿台読みの開始を指示する。これによりCPU401は、操作部400から、原稿台読みによる読取開始指示を取得する。
【0062】
CPU401は、読取開始指示を取得すると、リーダ200に原稿台読みを指示する。リーダ200は、ドキュメントスキャナ210により原稿台ガラス102上のテストチャートを読み取る。ドキュメントスキャナ210のリーダ画像処理部108は、テストチャートの読取結果を表す輝度信号を含む画像データをプリンタ制御部109に送信する。テストチャートが複数枚の場合、ドキュメントスキャナ210は、1枚毎に原稿台ガラス102に載置されるテストチャート読み取る。リーダ画像処理部108は、読み取られた1枚毎のテストチャートの読取結果を表す輝度信号を含む画像データを、プリンタ制御部109に送信する。
【0063】
CPU401は、読取結果(輝度信号)に基づいてテスト画像の濃度信号を取得する(S504)。CPU401は、色処理部403のLUTid404を用いて、輝度信号を濃度信号に変換する。これにより、10階調の画像のそれぞれについての濃度信号が得られる。なお、CPU401は、テストチャートに用いられるシートの種類に応じて色処理部403のLUTid404のテーブルを切り替えてもよい。
【0064】
CPU401は、テスト画像を生成するために使用された濃度信号と、テストチャートの読取結果から得られた濃度信号とに基づいて、LUTaを作成する(S505)。CPU401は、作成したLUTaをメモリ402に格納する。以上のようにして階調補正処理が行われる。
【0065】
(面内濃度ムラ補正)
面内濃度ムラ補正は、シートPの画像が形成される領域内の画像濃度のムラを補正するために行われる。プリンタ300の主走査方向(Y方向)の濃度ムラは、例えば感光ドラム11の表面を帯電させる帯電器12の劣化による帯電ムラ、露光器13によるレーザ光の露光ムラ、或いは現像器14による現像ムラ等が原因となって発生する。
【0066】
このような主走査方向の濃度ムラを補正する場合、濃度ムラ補正用のテストチャートが作成される。図8は、濃度ムラ補正用のテストチャートの説明図である。図8(a)は、A4サイズのテストチャート810を例示する。図8(b)は、A3サイズのテストチャート811を例示する。いずれのテストチャート810、811も、主走査方向(Y方向)に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の50%の濃度信号で形成される帯状のテスト画像が形成される。帯状のテスト画像は、シートのサイズによらず、主走査方向が帯の長手となるように形成される。
【0067】
濃度ムラ補正用のテストチャート810、811の読み取りは、テストチャート810、811の主走査方向(Y方向)がリーダ200のSX1方向又はSX2方向に平行になるようにセットされて行われることが推奨される。これは、画像センサ105が主走査方向にライン状に配列された光電変換素子を有しており、Y方向の位置により光電変換素子の特性が異なるためである。リーダ200は、テストチャート810、811の主走査方向をリーダ200のSX1方向又はSX2方向にして読み取ることで、画像センサ105の光電変換素子の位置による特性差を抑制することができる。なお、画像センサ105の光電変換素子の位置による特性差の影響が小さい場合には、濃度ムラ補正用のテストチャート810、811の読み取り方向を限定する必要はない。
【0068】
濃度ムラ補正は、濃度ムラ補正用のテストチャートの読取結果から検出される主走査方向(Y方向)の濃度ムラに対して、濃度ムラを打ち消すように主走査方向(Y方向)のレーザ光の露光量をフィードバック補正することで行われる。濃度ムラ補正用のテストチャートの読み取りは、階調補正と同様に、リーダ200により、ADF読み(第1読取モード)または原稿台読み(第2読取モード)で行われる。
【0069】
(印刷位置調整)
印刷位置調整は、シートの伸縮、裁断精度、シートの保管状態によって、印刷位置にズレが生じたときに行われる。印刷位置のズレ量は、印刷するシートの物理特性に大きく依存する。そのためにシートの種類に応じて印刷位置調整を行うことが好ましい。
【0070】
図9は、印刷位置調整用のテストチャートである印刷位置調整用チャートの説明図である。印刷位置調整用チャート601の画像データは、メモリ402に格納されている。CPU401は、印刷位置調整用チャート601を印刷する際に印刷位置調整用チャート601の画像データをメモリ402から読み出し、プリンタ制御部109に転送する。
【0071】
印刷位置調整用チャート601は、シートの表面及び裏面の所定の位置にマーク620が形成されて構成される。本実施形態では、マーク620が、印刷位置調整用チャート601の両面四隅に合計8つ形成される。マーク620は、シートの色に対して反射率の差が大きい色で形成される。例えば白色のシートに対して、ブラックのマーク620が形成される。
【0072】
印刷位置調整用チャート601の表面には、読み取り時の搬送方向を識別するための画像610、及び表裏を識別するための画像612が印刷される。印刷位置調整用チャート601の裏面には、読み取り時の搬送方向を識別するための画像611、及び表裏を識別するための画像613が印刷される。即ち、両面の画像の位置合わせを行う場合、印刷位置調整用チャート601の表面には画像610及び画像612が印刷され、裏面には画像611及び画像613が印刷される。片面の画像の位置調整を行う場合、印刷位置調整用チャート601の表面に画像610及び画像612が印刷される。
【0073】
印刷位置調整用チャート601の搬送方向を識別するための画像610、611は、印刷位置調整用チャート601をADF読みで読み取る場合に印刷されていればよく、固定読みで読み取る場合には印刷されていなくてもよい。なお、画像610、611は、印刷位置調整用チャート601の搬送方向をユーザが識別可能な矢印である。画像612、613は、印刷位置調整用チャート601の表裏面をユーザが識別可能な文字である。
【0074】
マーク620は、理想的な位置に形成される場合に、印刷位置調整用チャート601のシート端部から所定の距離離れた位置に形成される。印刷位置調整用チャート601の表面に印刷されているマーク620の位置を測定することにより、シートの表面の印刷位置のズレ量が検出される。印刷位置調整用チャート601の裏面に印刷されているマーク620の位置を測定することにより、シートの裏面の印刷位置のズレ量が検出される。印刷位置調整用チャート601の両面に印刷されている各マーク620の相対位置を測定することにより、表面の印刷位置に対する裏面の印刷位置のズレ量、或いは裏面の印刷位置に対する表面の印刷位置のズレ量が検出される。
【0075】
印刷位置調整用チャート601を用いて印刷位置の調整を行う場合、マーク620の位置を測定するために、表面の距離a~j及び裏面の距離k~rが測定される。距離aは、印刷位置調整用チャート601の副走査方向の長さであり、距離bは、印刷位置調整用チャート601の主走査方向の長さである。距離aの理想的な長さ及び距離bの理想的な長さは、画像形成装置100に予め登録される。距離c~rは、それぞれ、マーク620から直近の印刷位置調整用チャート601の端部までの長さである。
【0076】
距離a~rの測定方法として、手動で測定する方法と自動で測定する方法とがある。手動で測定する方法では、ユーザが、印刷位置調整用チャート601に定規を当てることにより、距離a~rの長さを実測する。ユーザは、実測した長さを操作部400により画像形成装置100に入力することになる。
自動で測定する方法では、印刷位置調整用チャート601がリーダ200で読み取られる(スキャンされる)。CPU401は、印刷位置調整用チャート601の読取結果である画像データを解析して、読み取った画像の画素毎の濃度差を検出する。CPU401は、この濃度差から印刷位置調整用チャート601の端部及びマーク620のエッジ(即ち、印刷位置調整用チャート601の下地とマーク620との境界)を検出する。CPU401は、検出した印刷位置調整用チャート601の端部及びマーク620のエッジに基づいて、距離a~rを算出する。
【0077】
図10は、測定された距離a~rから印刷位置のズレ量を検出する方法の説明図である。本実施形態では、印刷位置のズレ量の検出に演算テーブル1300を用いる。演算テーブル1300は、メモリ402に格納される。CPU401は、演算テーブル1300に基づいて印刷位置のズレ量を算出する。
【0078】
演算テーブル1300は、印刷位置調整用チャート601の表面及び裏面における「リード位置」、「サイド位置」、「主走査倍率」、「副走査倍率」の、測定値1310、理想値1311、及び印刷位置の位置ズレ量1312によって定義される。印刷位置の位置ズレ量1312は、測定値1310及び理想値1311を用いた換算式で表される。
【0079】
印刷位置調整用チャート601の表面における「リード位置」の測定値1310は、演算テーブル1300に示した換算式を用いて、図9の距離c、eの実測値から算出される。リード位置は、シートの搬送方向の先頭における印刷位置調整用チャート601の端部から対応するマーク620までの距離の平均値である。
印刷位置調整用チャート601の表面における「サイド位置」の測定値1310は、演算テーブル1300に示した換算式を用いて、図9の距離f、jの実測値から算出される。サイド位置は、シートの搬送方向の左側における印刷位置調整用チャート601の端部から対応するマーク620までの距離の平均値である。
演算テーブル1300に示すように、「リード位置」及び「サイド位置」の理想値1311は、それぞれ1[cm]である。即ち、マーク620は、理想的にはそれぞれ対応する印刷位置調整用チャート601の端部から1[cm]離れた位置に印刷される。
【0080】
印刷位置調整用チャート601の表面における「主走査倍率」の測定値1310は、演算テーブル1300に示した換算式を用いて、図9の距離b、d、f、h、jの実測値から算出される。主走査倍率は、主走査方向に同一走査線上に並ぶマーク620間の距離の平均値である。
印刷位置調整用チャート601の表面における「副走査倍率」の測定値1310は、演算テーブル1300に示した換算式を用いて、図9の距離a、c、e、g、iの実測値から算出される。副走査倍率は、副走査方向に同一走査線上に並ぶマーク620間の距離の平均値である。
演算テーブル1300に示すように、「主走査倍率」の理想値1311は、予め画像形成装置100に登録されている各シートの主走査方向のシートの長さ512から2[cm]減算した値である。同様に、「副走査倍率」の理想値1311は、予め画像形成装置100に登録されている各シートの副走査方向のシートの幅512から2[cm]減算した値である。
【0081】
印刷位置調整用チャート601の裏面における位置ズレ量1312も、表面と同様の換算式により算出される。
【0082】
演算テーブル1300に示すように、「リード位置」、「サイド位置」、「主走査倍率」、及び「副走査倍率」の各々の印刷位置の位置ズレ量1312は、対応する測定値1310及び理想値1311を用いて算出される。「リード位置」及び「サイド位置」の印刷位置の位置ズレ量1312は、測定値1310から理想値1311を減算することで算出される(単位は[mm]である)。「主走査倍率」及び「副走査倍率」の印刷位置の位置ズレ量1312は、測定値1310から理想値1311を減算したものを理想値1311で除算することで算出される(単位は[%]である)。以上のように算出された印刷位置の位置ズレ量1312は、シートの属性データとしてメモリ402に保存される。
【0083】
(転写出力調整)
転写出力調整(二次転写電圧調整)は、二次転写時に転写不良が発生したときに行われる。転写出力調整では、転写出力調整用のテストチャートのリーダ200による読取結果に基づいて転写出力(二次転写電圧)が調整される。二次転写器27は、二次転写時に二次転写電圧が印加され、二次転写電圧により生じる電界により中間転写ベルト31上のトナー画像をシートPに移動させる。二次転写電圧は、トナー画像が転写されるシートの物理特性(表面性、シートの抵抗)により最適な電圧値が異なる。そのために二次転写電圧は、シートの種類に応じて調整されることが好ましい。
【0084】
図11は、転写出力調整用のテストチャートである転写出力調整用チャートの説明図である。転写出力調整用チャート830のテスト画像の画像データは、メモリ402に格納されている。CPU401は、転写出力調整用チャート830を生成する際に転写出力調整用チャート830の画像データをメモリ402から読み出し、プリンタ制御部109に転送する。
【0085】
転写出力調整用チャート830は、シートの表面にテスト画像830aが形成され、シートの裏面にテスト画像830bが形成される。各テスト画像830a、830bは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の100%の濃度信号のパッチ画像と、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各色のパッチ画像と、の7色のパッチ画像により構成される。レッドのパッチ画像は、それぞれ100%の濃度信号で形成されたイエローの画像とマゼンタの画像とが重なって構成される。グリーンのパッチ画像は、それぞれ100%の濃度信号で形成されたイエローの画像とシアンの画像とが重なって構成される。ブルーのパッチ画像は、それぞれ100%の濃度信号で形成されたマゼンタの画像とシアンの画像とが重なって構成される。
【0086】
7色のパッチ画像は、それぞれ5水準(-2、-1、0、+1、+2)の二転写電圧の電圧値により形成される。5水準の二次転写電圧は、例えば2000[V]、2250[V]、2500[V]、2750[V]、3000[V]である。ここでは、転写出力調整用チャート830の表面と裏面とで同じ水準で二次転写電圧を変更してテスト画像830a、830bが形成されているが、表面と裏面で二次転写電圧の水準を変更してもよい。
【0087】
転写出力調整用チャート830は、両面のテスト画像830a、830bがリーダ200により、ADF読み(第1読取モード)または原稿台読み(第2読取モード)で読み取られる。リーダ200は、転写出力調整用チャート830を読み取ることで各パッチ画像の輝度値を取得する。本実施形態では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッド、グリーン、ブルーの各平均輝度値が最も小さくなるときの水準の二次転写電圧が、転写出力の調整値として設定される。なお、表面と裏面とで調整値は異なっていてもよい。また、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッド、グリーン、ブルーの平均輝度値ではなく、色によって重みづけして比較してもよい。
【0088】
(点・筋画像診断)
点・指示画像診断は、シートに形成した画像に生じる点・筋等の画像不良の原因が、リーダ200とプリンタ300とのいずれであるかを判断するときに行われる。
【0089】
図12は、「ADF読取筋の検出を含む画像不良診断」で用いられる点・指示画像診断用のテストチャートの説明図である。画像診断用のテストチャート820は、画像が形成されない白地部821と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の50%の濃度信号で形成される帯状のテスト画像822、823、824、825と、を含む。
【0090】
図12(a)は、A4のシートにテスト画像822、823、824、825が形成された点・指示画像診断のテストチャート820を例示する。このテストチャート820は、帯状の長辺がY方向に平行となるようにテスト画像822、823、824、825が形成される。図12(b)は、A4Rのシートにテスト画像822、823、824、825が形成された点・指示画像診断のテストチャート820を例示する。このテストチャート820は、帯状の短辺がY方向に平行となるようにテスト画像822、823、824、825が形成される。
点・指示画像診断用のテストチャート820を読み取る場合、テストチャートがA4、A4Rのいずれであっても、テストチャート820は、長手方向(シートの長辺)がY方向と平行になる向きで原稿トレイ302にセットされることが好ましい。
【0091】
ADF読取筋の有無を判断する際に、テストチャート820がリーダ200の読取位置に搬送される前とテストチャート820の白地部821との両方で筋が検出された場合、テストチャート820の有無によらず筋が検出されることになる。この場合、リーダ200に起因した筋が発生していると判断される。テストチャート820がリーダ200の読取位置に搬送される前には筋が検出されず、テストチャート820の白地部821で筋が検出された場合、リーダ200に起因した筋ではなくテストチャート820の白地部821に筋が有ると判断される。この場合、プリンタ300に起因した筋であると判断される。図13は、このような筋検出位置と筋の原因との関係説明図である。
【0092】
リーダ200に起因した筋とプリンタ300に起因した筋とを切り分けるために、リーダ200のより広い読取領域(Y方向)に対して画像診断が行われることが好ましい。そのために、テストチャート820は、長手方向(シートの長辺)をY方向と平行になる向きでセットされる。
【0093】
(両面読取色補正)
両面読取補正は、リーダ200の部品交換やメンテナンスを行った際に、シートの表裏面の読取色を調整する目的で行われる。
【0094】
図14は、両面読取補正用のテストチャートである両面読取補正チャートの説明図である。両面読取色補正チャート850のテスト画像は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各色の異なる濃度のパッチ画像により構成される。本実施形態では、パッチ画像は、濃度信号20%、40%、60%、80%、100%の5階調である。テスト画像は35個のパッチ画像を含む。本実施形態の両面読取色補正チャート850は、2枚のシートの片面に連続してテスト画像が印刷された2枚のテストチャートである。
【0095】
両面読取補正は以下のように行われる。
プリンタ300は、同じ種類のシートの片面に連続してテスト画像を形成することで2枚の両面読取色補正チャート850を作成する。2枚の両面読取色補正チャート850の一枚は、テスト画像が形成された面を上向きにしてADF220の原稿トレイ302にセットされる。次に、もう一枚の両面読取色補正チャート850は、テスト画像が形成された面を下向きにして原稿トレイ302にセットされる。2枚の両面読取色補正チャート850は、重ねて原稿トレイ302にセットされる。
【0096】
2枚の両面読取色補正チャート850は、連続してADF読み(第1読取モード)で読み取られる。これにより2枚の両面読取色補正チャート850のそれぞれのパッチ画像の輝度値が得られる。1枚目の両面読取色補正チャート850の各パッチ画像の輝度値と、2枚目の両面読取色補正チャート850の各パッチ画像の輝度値とが近い値になるように、一方の両面読取色補正チャート850の読取結果を補正する係数が導出される。この係数は、両面読取色補正係数としてメモリ402に保存され、両面読取色補正に用いられる。
【0097】
(一括調整モード)
以上説明したような各調整や画像の診断処理は、ユーザの指示により一括して実行可能である。一括して処理を実行する動作モードを「一括調整モード」という。本実施形態では、ユーザが一括調整モードの実行を指示する場合であっても、補正を行う種類(項目)を選択可能とすることで、ユーザが意図しない種類の調整や画像の診断処理の実行を防止することができる。
【0098】
図15は、画像形成装置100の動作モードを設定するための操作画面の例示図である。この操作画面770は、操作部400のディスプレイに表示される。ユーザは、操作画面770に表示されるボタンを操作部400により選択することで、該ボタンに関連付けられた処理の実行を画像形成装置100に指示することができる。
【0099】
操作画面770の一括調整ボタン771が選択された場合、操作部400のディスプレイの表示は、一括調整の実行を受け付けるための実行受付操作画面に切り替えられる。操作画面770の階調補正ボタン772や印刷位置調整ボタン773が選択された場合、操作部400のディスプレイの表示は、上述した方法で階調補正や印刷位置調整を個別で行うための操作画面に切り替えられる。
【0100】
図16は、実行受付操作画面の例示図である。実行受付操作画面750は、調整項目毎に調整を行うか否かを選択するための調整項目選択ボタン751a、一括調整の実行を指示するための一括調整実行ボタン752、及び調整するシートの種類を選択するための調整する用紙種類ボタン753を含む。図17は、一括調整モード時の画像形成装置100の処理を表すフローチャートである。
【0101】
図15の操作画面770から一括調整ボタン771が選択されると、CPU401は、操作部400のディスプレイに、図16の実行受付操作画面750を表示する。CPU401は、一括調整実行ボタン752が選択されることで、その時点で用紙種類ボタン753により選択されているシートの種類の情報を取得する(S551)。これにより一括調整モードで調整するシートの種類が確定する。
【0102】
本実施形態では、調整対象のシートには予め普通紙が設定されている。これは、本実施形態の画像形成装置100で使用頻度が最も高いシートを普通紙に想定しているためである。なお、予め設定するシートは、画像形成装置100のプリント履歴により最も使用頻度が多い種類のシートとしてもよいし、最新の1か月における使用頻度が最も高い種類のシートとしてもよい。予め設定されている種類以外の種類のシートに対して一括調整を行う場合、ユーザは、用紙種類ボタン753を操作して、予め設定されている種類以外の種類(再生紙、薄紙、厚紙、コート紙等)のシートに変更することが可能である。つまり、予め設定されている種類(例えば普通紙)を用いて一括調整をする場合には、シートを選択するユーザ操作を省略することができる。なお、シートの種類によって変更する調整がない場合には、用紙種類ボタン753は表示されない。また、シートの種類に応じて、一括調整される調整項目が設定されていてもよい。
【0103】
一括調整モードで調整するシートの種類の確定後に、CPU401は、実行受付操作画面750の一括調整実行ボタン752が選択されることで、その時点で調整項目選択ボタン751aにより選択されている調整項目の情報を取得する(S552)。これにより一括調整モードで調整する調整項目が確定する。
【0104】
図16の例では、「面内濃度ムラ補正」、「階調補正:プリント」、及び「階調補正:コピー」の3つの調整項目が予め設定されている。予め設定されるこれらの調整項目は、画像形成装置100の設置場所の気温や湿度等の環境条件の変化や、プリンタ300の部品の経時変化により、画質の変化の要因となる調整項目である。これらの調整項目は、定期的に調整を行う必要がある。定期的なメンテナンス作業時にユーザによる調整項目の選択操作を減らすために、予めこれらの3つの調整項目が設定されている。
【0105】
ここで、図16に示す「〇」は調整を実行、「-」は調整を実行しないことを表している。ユーザは、調整項目選択ボタン751aにより選択を解除することで該調整項目の実行を一括調整から解除し、調整項目選択ボタン751aにより選択することで該調整項目の実行を一括調整の項目に追加することができる。解除された項目には「-」が表示され、追加された項目には「○」が表示される。一括調整する項目を変更しない場合には、ユーザは、一括調整する調整項目を選択する操作を省略することができる。
【0106】
調整項目の選択後に、CPU401は、実行受付操作画面750の一括調整実行ボタン752が選択されることで、一括調整の実行指示を受け付ける(S553)。実行指示を受け付けたCPU401は、選択された種類のシートに対して、選択された調整項目に応じたテスト画像を連続して印刷することで、テストチャートを生成する(S554)。本実施形態では、濃度ムラ補正用のテストチャート810、プリント用の階調補正用のテストチャート801a、及びコピー用の階調補正用のテストチャート801bが生成される。各テストチャート810、801a、801bのテスト画像は、すべてA4サイズの普通紙に、A4サイズの長辺がY方向となる向き(A4縦向き)に印刷される。
【0107】
なお、テスト画像の印刷の向きを統一せずに、テストチャート810のテスト画像をA4縦向き、テストチャート801a、801bのテスト画像をA4サイズの短辺がY方向に平行となる向き(A4R)としてもよい。また、印刷するシートのサイズを統一せずに、テストチャート811をA3サイズのシートにより生成し、テストチャート801a、801bをA4サイズのシートにより生成してもよい。各調整項目のテストチャートを生成する順序は任意でよい。ただし、実行受付操作画面750に用紙種類ボタン753が表示されている場合には、選択された種類のシートによりテストチャートが生成される。つまり、本実施形態では、一括調整モードのテストチャートに用いられるシートは、すべて同じ種類となる。
【0108】
生成されたテストチャート810、801a、801bは、すべてADF220の原稿トレイ302に載置される。CPU401は、操作部400から読取開始の指示を受け付けると、ADF読みによりすべてのテストチャート810、801a、801bを連続して読み取る(S555)。一括調整モードは、複数種類のテストチャートをまとめて生成し、複数種類のテストチャートを連続して読み取ることで、個別に複数種類の調整を行うよりも調整時の作業負荷を低減する調整モードである。一括調整モードでは、ADF読みを利用することで、複数種類の調整用のテストチャートの読み取りのためのユーザ操作を1回だけですませることが可能となる。
【0109】
なお、ADF読みは、複数の用紙サイズが混載された状態でテストチャートが原稿トレイ302に積載されても、連続して読み取りを行うことができる。このため、必ずしもテストチャートを積載する際にテストチャートの読み取り向きを揃える必要はない。ただし、テストチャート810が一括調整モードで生成されたテストチャートに含まれる場合、上述したように、テストチャート810は、PX方向がSX2方向となるように原稿トレイ302に載置されることが好ましい。また、画像診断用のテストチャート820が一括調整モードで生成されたテストチャートに含まれる場合、テストチャート820は、長手方向(長辺)がY方向と平行になるように原稿トレイ302に載置されることが好ましい。
【0110】
CPU401は、各テストチャート810、801a、801bの読取結果に基づいて、上述した処理により各調整項目に対して調整結果を反映する(S556)。以上により、一括調整モードによる1以上の調整項目に対する調整処理が終了する。
【0111】
以上のように本実施形態の画像形成装置100では、ユーザが一括調整する項目を選択可能であり、必要な項目の調整のみの実行が可能となる。また、調整項目を予め設定しておくことで、ユーザによる項目の選択操作を省略することも可能である。また、テストチャートの作成に用いるシートの種類を予め設定しておくことで、ユーザによるシートの種類の選択操作を省略することも可能である。
【0112】
(第2実施形態)
第2実施形態の画像形成装置100の構成は、第1実施形態と同様である。第1実施形態では、一括調整モードにおいて、テストチャートを用いる複数種類の調整項目から、ユーザにより選択された調整項目のみを実行することで、ユーザが必要とする調整のみを一括調整している。
これに対して第2実施形態では、一括調整モードの一部の調整がテストチャートを必要としない調整である場合について説明する。テストチャートを必要としない調整では、中間転写ベルト31に形成されるテスト画像をセンサにより検出した検出結果に基づいて調整が行われる。第2実施形態では、テストチャートを必要としない調整項目が追加される。例えば、テストチャートを用いない階調補正や色ズレ調整が、調整項目として追加される。図18は、テストチャートを必要としない調整処理の説明図である。
【0113】
図18(a)は、中間転写ベルト31に形成されるテスト画像を検出するセンサの説明図である。このセンサ900は、光学センサであり、正反射光及び乱反射光を用いてテスト画像904を検出可能である。センサ900は、正反射光により階調補正用のテスト画像を検出する。センサ900は、乱反射光により色ズレ調整用のテスト画像を検出する。センサ900は、例えば中間転写ベルト31の近傍に、中間転写ベルト31の回転方向で複数の画像形成部10の下流側に設けられる。
【0114】
センサ900は、中間転写ベルト31上のテスト画像904を照射する発光部901と、テスト画像904による正反射光を受光する受光部902と、テスト画像904による乱反射光を受光する受光部903と、を備える。発光部901は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子を備える。受光部902、903は、フォトダイオード等の受光素子を備える。
【0115】
発光部901は、光軸が中間転写ベルト31の法線に対して45度の角度になるように光を照射する。受光部902は、発光部901から出射された光の中間転写ベルト31による正反射光を受光する位置に配置される。受光部902は、中間転写ベルト31の表面(下地)とテスト画像904による正反射光を受光して、受光した正反射光の光量に応じた値の出力信号を出力する。出力信号の値の大きさに基づいてテスト画像904の濃度が検出される。受光部903は、発光部901から出射された光の中間転写ベルト31による乱反射光を受光する位置に配置される。受光部903は、中間転写ベルト31の表面(下地)とテスト画像904による乱反射光を受光して、受光した正反射光の光量に応じた値の出力信号を出力する。出力信号の値の変化に基づいてテスト画像904の有無が判断される。テスト画像904の有無により、テスト画像の位置が検出される。
【0116】
(階調補正)
図18(b)は、テストチャートを使用しない場合の階調補正用のテスト画像を例示する。このテスト画像は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色毎に、それぞれ階調の異なる複数のパッチ画像を備える。本実施形態では、色毎に、10%から10%間隔で100%までの10階調の濃度信号により、10階調のパッチ画像905Y1、905Y2、905Y3…905K8、905K9、905K10が形成される。各パッチ画像905Y1、905Y2、905Y3…905K8、905K9、905K10の濃度が、センサ900の受光部902による正反射光の受光結果(出力信号の値)に基づいて検出される。例えば、出力信号の値と濃度値との関係を表すテーブルが予め用意され、該テーブルを参照することで出力信号の値に応じた濃度が検出される。検出された各パッチ画像905Y1、905Y2、905Y3…905K8、905K9、905K10の濃度に基づいて、上述の階調補正と同様に階調性を補正するLUTaを生成、更新することで、階調補正が行われる。
【0117】
(色ズレ調整)
図18(c)は、テストチャートを使用しない場合の色ズレ調整用のテスト画像を例示する。このテスト画像は、縦線のパッチ画像906Y、906M、906C、906K及び斜線のパッチ画像907Y、907M、907C、907Kを備える。パッチ画像906Y、906M、906C、906Kは、主走査方向に伸びる直線である。パッチ画像907Y、907M、907C、907Kは、主走査方向に対して所定角度(例えば45°)傾斜する直線である。パッチ画像906Y、907Yはイエローの画像である。パッチ画像906M、907Mはマゼンタの画像である。パッチ画像906C、907Cはシアンの画像である。パッチ画像906K、907Kはブラックの画像である。
【0118】
パッチ画像906Y、906M、906C、906Kは、副走査方向の色間の色ズレ補正量の測定に用いられる。パッチ画像906Y、906M、906C、906Kからパッチ画像907Y、907M、907C、907Kまでの相対距離により、主走査方向の色間の色ズレ補正量が測定される。測定された副走査方向及び主走査方向の色ズレ量に基づいてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像の相対的な位置を調整することで、色ズレが補正される。
【0119】
図19は、第2実施形態の実行受付操作画面の例示図である。図19(a)では、第1実施形態の実行受付操作画面(図16参照)に対して、センサ900を用いた調整項目が追加されている。また、調整項目選択ボタン751b1の種類には、調整を行うことを表す「○」、調整を行わないことを表す「-」の他に、センサ900を用いて調整を行うことを表す「▲(三角)」が追加されている。なお、図19(b)に示すように、「シート使用」と「シート不使用」とを並べて表示するが、これらはいずれか一方のみを表示してもよい。本実施形態では、「階調補正:プリント」はシートを使用する調整であり、「階調補正:コピー」はシートを使用しない調整である。また、「色ズレ調整」はシートを使用しない調整である。
【0120】
図20は、第2実施形態の一括調整モード時の画像形成装置100の処理を表すフローチャートである。図20(a)と図20(b)とは処理の順序が異なるのみである。シートの種類選択、調整項目の選択、及び調整の実行指示の受け付けの処理は、図17のS551~S553の処理と同様の処理である(S561~S563)。
【0121】
図20(a)の処理の場合、調整の実行指示を受け付けたCPU401は、テストチャートの生成よりも先にセンサ900を用いた調整を実行する(S564)。CPU401は、上述したセンサ900を用いた調整による調整結果を反映する。その後、CPU401は、テストチャートを生成する(S565)。そのために、センサ900を用いた調整を反映した後にテストチャートを用いた調整を行うことができる。例えば、センサ900を用いた階調補正後に濃度ムラ補正が行われると、濃度ムラ補正に適した濃度で濃度ムラ補正用のテストチャート810、811による濃度ムラ補正が可能となる。そのために濃度ムラの調整の精度が、階調補正を行わない場合よりも向上する。その後、CPU401は、図17のS554~S556と同様にテストチャートを読み取り、読取結果に基づいて調整結果の反映の各処理を行う(S565~S567)。
【0122】
図20(b)の処理の場合、調整の実行指示を受け付けたCPU401は、センサ900を用いた調整よりも先に、図17のS554、S555と同様の処理により、テストチャートを生成して読み取る(S565、S566)。その後、CPU401が、図20(a)のS564と同様の処理により、センサ900を用いた調整を実行する(S564)。そのために、ユーザが一括調整モードの実行の際に最後に行う操作は、テストチャートをADF読みによる読取指示を入力する操作となる。図20(b)の処理では、CPU401がセンサ900を用いた調整を実行する時間分だけ、ユーザの拘束時間を図20(a)の処理の場合に比べて短縮することができる。その後、CPU401は、図17のS556と同様に、読取結果に基づいて調整結果の反映の処理を行う(S567)。
【0123】
以上のような本実施形態の画像形成装置100では、第1実施形態で一括調整モードで行われる調整の一部で、テストチャートを必要としない調整を選択可能となる。そのために、一括調整モードにおけるテストチャートの枚数を削減することができる。また、テストチャートの生成後にセンサ900を用いた調整を行う場合には、一括調整モードにセンサ900を用いた調整を含む場合のユーザの拘束時間を短縮することができる。
【0124】
(第3実施形態)
第3実施形態の画像形成装置100の構成は、第1実施形態と同様である。第3実施形態では、第1実施形態とは異なり、図16に示す調整項目選択ボタン751aで予め選択されている調整項目を画像形成装置100の状態に応じて変更することで、ユーザに最適な一括調整モードの調整項目の組み合わせを提示する。図21は、予め選択されている調整項目の変更例の説明図である。
【0125】
Case_Aは、画像形成装置100を設置した初期に、一括調整モードで行われることが好ましい調整項目である。この場合、一括調整モードですべての調整が行われることが好ましい。よって、画像形成装置100の初期設置の際には、Case_Aの組み合わせの調整項目が予め選択されている。
【0126】
Case_Bは、ユーザが定期的なメンテナンス作業を行う際に、一括調整モードで行われることが好ましい調整項目である。面内濃度ムラや階調性は画像形成装置100を使用することによる経時変化、環境条件の変化等の影響を受けやすいために、定期的なメンテナンスにより調整する必要がある。よって、ユーザが通常行うメンテナンス作業の際には、Case_Bの組み合わせの調整項目が予め選択されている。ただし、後述するCase_CとCase_Dの場合は、Case_C、Case_Dの順で優先する。
【0127】
Case_Cは、一括調整モードの実行受付操作画面750へ画面が遷移する前の一定期間の間に、「階調補正:プリント」の調整が行われた場合の調整項目である。この場合、前回の調整から再度調整する必要がないために、Case_Bに示す調整項目から「階調補正:プリント」を除いた項目が選択される。なお、ここで、前回の調整から再度調整の必要がないと判断する判断基準は、前回の調整からの経過時間、環境条件の変化、経過時間と環境条件の変化との組み合わせである。本実施形態では、前回の調整から1週間の間に行われた調整項目は、予め選択される項目から除外することとする。
【0128】
Case_Dは、一括調整モードの実行受付操作画面750へ画面が遷移する前の一定期間の間に、コピーのジョブ履歴がない場合の調整項目である。ユーザによっては、セキュリティの観点から画像形成装置100のコピー機能を使用しないことがある。この場合、「階調補正:コピー」を「一括調整モード」で行う必要がない。本実施形態では、3か月の間にコピーのジョブ履歴がない場合に、調整項目で予め選択される項目から「階調補正:コピー」を除外することとする。
【0129】
Case_Eは、新たな種類のシートが使用される際に、一括調整モードで行うことが好ましい調整項目である。これは、上述したように、印刷位置や転写出力がシートの特性により大きく変化するために設定される。ユーザが実行受付操作画面750の用紙種類ボタン753により、これまで調整を行っていない新しい種類のシートを選択した場合、「印刷位置調整」、「転写出力調整」が予め選択される項目に追加される。
【0130】
Case_Fは、画像形成装置100の部品を交換した際やメンテナンス作業を行った際に、一括調整モードで行うことが好ましい調整項目である。「両面読取色補正」は、上述したように、画像形成装置100の調整機能であるために設定される。「点・筋画像診断」は、メンテナンス時の作業により、ゴミ等がリーダ200の読取位置に落ちることがあるために設定される。よって、リーダ200にかかわる部品や設定値が変更された際には、「点・筋画像診断」、「両面読取色補正」が予め選択される項目に追加される。
【0131】
ユーザに最適な一括調整モードの組み合わせを示す方法は、調整項目選択ボタン751aにより予め選択されている調整項目を変更する方法に限らない。図22は、第3実施形態の実行受付操作画面の例示図である。この実行受付操作画面750は、調整項目選択ボタン751dに推奨する選択項目(調整項目)を表示する。また、この実行受付操作画面750は、推奨する調整項目の選択理由755を表示してもよい。
【0132】
以上のような本実施形態の画像形成装置100では、画像形成装置100の状態に応じて推奨される調整項目が予め選択される。そのために、ユーザは、一括調整モードで行うべき調整項目を選択しやすくなる。また、ユーザが調整項目の変更を行う際の操作の手間も低減される。
【0133】
(第4実施形態)
第4実施形態の画像形成装置100の構成は、第1実施形態と同様である。図23は、第4実施形態の実行受付操作画面の例示図である。第4実施形態では、第1実施形態とは異なり、調整項目選択ボタン751cに示す各調整項目に対して、一括調整モードで調整を行うシートを複数種類選択可能である。
【0134】
第1実施形態の処理との相違点について説明する。第4実施形態では、図17に示す一括調整モード時の画像形成装置100のS552の処理において、CPU401は、「階調補正:プリンタ」で調整するシートの種類を普通紙、厚紙、再生紙の3つをまとめて選択可能となる。S554の処理においては、CPU401は、複数種類のシートを用いてテスト画像を印刷することでテストチャートをまとめて生成する。この際にシートの種類が異なっていてもよい。これは、ADF220がシートの種類が異なっても同じADF読取が可能であるためである。また、テストチャートは、シートの種類毎にまとめてテスト画像を印刷してからシートの種類を切り替えることが好ましい。これは、シートの種類によって画像形成条件が異なり、画像形成条件の切り替え回数が少ない方がテストチャートの生成時間を短縮できるためのである。
【0135】
以上のような本実施形態の画像形成装置100では、複数種類のシートに対してまとめて一括調整モードによる調整を行うことが可能となる。そのために、複数種類のシートに対する調整を行う際のユーザの負荷が低減される。
【0136】
(第5実施形態)
第5実施形態の画像形成装置は、露光器13にプリントヘッドを用いて画像形成を行う。露光器13がプリントヘッドの場合、第1実施形態の濃度ムラ補正とは異なり、Y方向の濃度ムラ補正が「プリントヘッド縦ムラ補正」と「プリントヘッド以外の要因による濃度ムラ補正」に分かれて別々に行われる。これらの濃度ムラ補正は、一括調整モードで各々選択して実行することが可能となる。
【0137】
(プリントヘッド縦ムラ補正)
プリントヘッド縦ムラ補正は、プリントヘッドによって発生する画像形成装置100の濃度の縦ムラを補正する機能である。以下、プリントヘッド縦ムラ補正について説明する。プリントヘッド縦ムラ補正は、第1実施形態の濃度ムラ補正とは異なり、プリントヘッドに起因する筋の位置を予め特定し、濃度ムラ補正時にプリントヘッドに起因する筋のみを補正する処理である。
【0138】
プリントヘッド縦ムラ補正は、露光器13をプリントヘッドとする構成の画像形成装置100に特有の調整である。ここでプリントヘッドは、LED等の発光素子を各画素に対応して一列に配置した発光素子アレイとロッドレンズアレイとを備えた露光器である。プリントヘッド130を用いた画像形成装置100は、プリントヘッド130の各発光素子を画像データに基づいて駆動することで、画像データに基づく光をプリントヘッドに出力させる。発光素子から出力された光は、ロッドレンズによって感光ドラム11の表面に結像される。これにより、感光ドラム11が画像データに基づいて露光される。感光ドラム11とプリントヘッドとを副走査方向に相対移動させることで露光位置を移動させて、感光ドラム11上に静電潜像が形成される。
【0139】
プリントヘッドを用いる画像形成装置100では、副走査方向に走るスジ状のムラ(縦ムラ)が発生することがある。以下、縦ムラが発生する原因について説明する。
【0140】
図24は、プリントヘッドの構成説明図である。プリントヘッド130は、発光素子アレイであるLEDアレイ1301と、プリント基板42と、LEDアレイ1301から出射された光を感光ドラム11上に結像させるロッドレンズアレイ44と、を備えている。プリント基板42は、LEDアレイ1301を支持しており、LEDアレイ1301を駆動制御する各種信号を供給するための回路装置を備える。LEDアレイ1301は、Y方向に並べられた複数のLEDからなり、LED毎に光量のバラツキや経時変化がある。
【0141】
図25は、ロッドレンズアレイ44の説明図である。図25(a)に示すように、ロッドレンズアレイ44は、結像レンズとして機能する屈折率分布型のプラスチックロッドレンズ(ロッドレンズ46)を複数備える。屈折率分布型のプラスチックロッドレンズとは、本実施形態では、中心から周辺に向かって同心円状に屈折率を変化させた円筒形状のプラスチックロッドをレンズとして用いたものである。ロッドレンズアレイ44は、LEDアレイ1301の各LEDから出射された光を感光ドラム11上に結像させる。ロッドレンズアレイ44は、形状ではなく、屈折率の分布で入射光を結像させる。ロッドレンズ46は、図25(b)に示すように、光軸方向を揃えて、所定の間隔で規則正しく配列されている。
【0142】
ロッドレンズアレイ44を構成するロッドレンズ46のうち1本あるいは複数本が所定の位置や角度から外れることがある。図26は、1本のロッドレンズ46が倒れた状態の例示図である。
【0143】
図26(a)、26(b)に示すようにロッドレンズ46bが倒れて所定の位置や角度を外れる場合、ロッドレンズアレイ44は、本来の光学性能を発揮しない場合が考えられる。すなわち、ロッドレンズ46がロッドレンズ46bのように傾いた(倒れた)場合、ロッドレンズ46bを通過する光は本来の位置に結像しない。その結果、図中Wの位置は光が結像してドット密度が本来よりも密になるため薄いスジが発生し、図中Bの位置は逆にドット密度が本来よりも疎になるため濃いスジが発生する。これによりレンズ倒れが発生したロッドレンズ46bの直下近傍では縦ムラが発生してしまう。また、ロッドレンズ46が物理的に所定の位置や角度から外れていない場合であっても、ロッドレンズ46内部の屈折率分布がバラつき、所望の値から外れた場合は光学的に規格性能を満たしていないことになり、上記と同様に縦ムラが発生する。
【0144】
つまり、ロッドレンズアレイ44に起因するムラは、工場出荷時等で事前に特性を計測しておくことによって、縦ムラが発生しやすい位置を特定しておき、対応する位置に発生した縦ムラのみを、補正の対象とすることで補正可能である。これにより縦ムラは、ロッドレンズアレイ44以外の原因で発生する濃度ムラと分離して補正される。
【0145】
一方、LEDアレイ1301は、上記の通りLED単位で光量のバラツキや経時変化がある。LED毎の光量のバラツキや経時変化は、縦ムラが発生する原因の一つである。そのために、LED単位で補正を行う必要がある。
【0146】
図27は、プリントヘッド縦ムラ補正用のテストチャート840の例示図である。プリントヘッド縦ムラ補正用のテストチャート840のテスト画像は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の帯状のパッチ画像と、矢印841の画像とが含まれる。帯状のパッチ画像は、各色とも濃度信号が50%である。矢印841は、プリントヘッド130のY方向の位置とテストチャート840のY方向の位置との対応をとるために形成され。矢印841によって、LEDアレイ1301の各LEDの位置が対応付けられる。
【0147】
プリントヘッド縦ムラ補正は、プリントヘッド縦ムラ補正用のテストチャート840の読取結果に基づいて行われる。プリントヘッド縦ムラ補正用のテストチャート840の読取結果から、予め補正対象としたY方向の位置にのみプリントヘッド130の発光量をフィードバック補正することで、ロッドレンズアレイ44に起因する縦ムラのみを補正することができる。LEDアレイ1301のLED単位でプリントヘッド130の発光量をフィードバック補正することで、LEDアレイ1301は、LED単位で光量のバラツキや経時変化が補正される。なお、テストチャート840の読み取りは、階調補正と同様に、リーダ200により、ADF読み(第1読取モード)または原稿台読み(第2読取モード)で行われる。
【0148】
(プリントヘッド以外の要因による濃度ムラ補正)
図28は、プリントヘッド130以外の要因による濃度ムラ補正用のテストチャート845の例示図である。図27に例示したテストチャート840との違いは、テストチャートの区別をするためのマーク846が追加された部分である。
【0149】
プリントヘッド130以外の要因による濃度ムラ補正では、プリントヘッド130以外の要因によるY方向の濃度ムラを、Y方向の位置毎に、画像データの信号値を変更するようにフィードバックすることで補正する。つまり、Y方向に同じ画像データの信号値が設定されていても、画像形成を行う際には、プリントヘッド130以外の要因による濃度ムラ補正の結果を反映して、Y方向の画像データの信号値を補正して画像形成を行う。
【0150】
第5実施形態では、第1実施形態とは異なり、一括調整モードによる調整は、「面内(濃度)ムラ補正」が「プリントヘッド縦ムラ補正」と「プリントヘッド以外の要因による濃度ムラ補正」とに分けて別々に行われる。
第1実施形態では、「面内(濃度)ムラ補正」は、露光器13を含む画像形成部10に起因するY方向の濃度ムラを補正している。これに対して第5実施形態では、「プリントヘッド縦ムラ補正」は、プリントヘッド130に起因するY方向の濃度ムラのみを補正することができる。「プリントヘッド以外の要因による濃度ムラ補正」は、プリントヘッド130以外の画像形成部10に起因するY方向の濃度ムラを補正することができる。
【0151】
以上のような第1~第5実施形態で説明したように、画像形成装置100は、適切な調整項目を選択して一括調整モードで動作することで、一括調整モードで複数の調整をまとめて行うことができる。これにより、ユーザビリティを維持した上で、ユーザに必要な調整のみが実行可能となる。
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