(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置、エレベータ制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/46 20060101AFI20241209BHJP
B66B 1/14 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
B66B1/46 A
B66B1/14 L
B66B1/14 M
(21)【出願番号】P 2024072246
(22)【出願日】2024-04-26
【審査請求日】2024-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 健志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 雄太
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-086607(JP,A)
【文献】特開2023-025471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0106159(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路を移動する乗りかごの行き先階をそれぞれ表示する複数の表示部と、
前記複数の表示部にそれぞれ対応して設けられ、利用者による所定の前記表示部への操作を非接触で検知する複数のセンサ部と、
前記乗りかご内に設けられ、前記複数の表示部と前記複数のセンサ部とが少なくとも横方向に配列された複数の段で設けられた車椅子用操作盤と、
前記複数の段のうち一列の段において、複数のセンサ部により略同時に操作が検知された場合には、当該複数のセンサ部で検知された操作を無効とし、前記一列の段において、単一のセンサ部により操作が検知された場合、または、前記一列の段以外の列の段において、単一のセンサ部により操作が検知された場合には、当該操作に基づく呼び登録に関する情報を出力する制御部と、
を備えるエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記一列の段において、2個のセンサ部により略同時に操作が検知された場合において、検知された時点から所定の閾値時間経過前に前記2個のセンサ部による2つの操作が検知されなくなった場合には、当該操作に基づく呼び登録に関する情報を出力し、前記閾値時間経過しても、前記2個のセンサ部による2つの操作の検知が継続している場合には、前記2個のセンサ部で検知された2つの操作を無効とする、
請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、さらに、前記一列の段において、3以上のセンサ部により略同時に操作が検知された場合には、前記3以上のセンサ部で検知された3以上の操作を無効とする、
請求項2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
エレベータ制御装置で実行されるエレベータ制御方法であって、
前記エレベータ制御装置は、
昇降路を移動する乗りかごの行き先階をそれぞれ表示する複数の表示部と、
前記複数の表示部にそれぞれ対応して設けられ、利用者による所定の前記表示部への操作を非接触で検知する複数のセンサ部と、
前記複数の表示部と前記複数のセンサ部とが少なくとも横方向に配列された複数の段で設けられ車椅子用操作盤と、を備え、
前記複数の段のうち一列の段において、複数のセンサ部により略同時に操作が検知された場合には、当該複数のセンサ部で検知された操作を無効とし、前記一列の段において、単一のセンサ部により操作が検知された場合、または、前記一列の段以外の列の段において、単一のセンサ部により操作が検知された場合には、当該操作に基づく呼び登録に関する情報を出力する制御ステップ、
を含むエレベータ制御方法。
【請求項5】
エレベータ制御装置のコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記エレベータ制御装置は、
昇降路を移動する乗りかごの行き先階をそれぞれ表示する複数の表示部と、
前記複数の表示部にそれぞれ対応して設けられ、利用者による所定の前記表示部への操作を非接触で検知する複数のセンサ部と、
前記複数の表示部と前記複数のセンサ部とが少なくとも横方向に配列されて複数の段で設けられ車椅子用操作盤と、を備え、
前記複数の段のうち一列の段において、複数のセンサ部により略同時に操作が検知された場合には、当該複数のセンサ部で検知された操作を無効とし、前記一列の段において、単一のセンサ部により操作が検知された場合、または、前記一列の段以外の列の段において、単一のセンサ部により操作が検知された場合には、当該操作に基づく呼び登録に関する情報を出力する制御ステップ、
を前記コンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置、エレベータ制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかご内において、行き先階呼び等を非接触で行う技術が知られている。例えば、乗りかご内の操作盤に、利用者の手指を非接触で検知する複数のセンサ部を設け、このセンサ部により行き先階呼びを行う手法がある。特に、コロナウイルス感染を回避するため、この非接触による検知により呼びを行う方式が広まっている。
【0003】
そして、乗りかご内には、利用者に主として利用される主操作盤の他に、当該主操作盤より低い位置に、車椅子を利用する乗りかごの利用者が操作するための車椅子用操作盤が設けられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7226907号公報
【文献】特許第7400060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来技術には以下のような問題点がある。
車椅子用操作盤は、主操作盤より低い位置に設置されており、複数のセンサ部が少なくとも横方向に複数段で配列されているため、利用者が意図せずに車椅子用操作盤に寄りかかったり、車椅子用操作盤に手荷物が接近する場合がある。このような状況では、センサ部が利用者の寄りかかった体や手荷物を検知して、これが誤検知や過検知となって行先階を誤って呼び登録されてしまう場合がある。
【0006】
このように、従来技術では、センサ部の誤検知や誤検知により、利用者が意図しない階床が登録される可能性があり、エレベータの運行効率が低下するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のエレベータ制御装置は、昇降路を移動する乗りかごの行き先階をそれぞれ表示する複数の表示部と、前記複数の表示部にそれぞれ対応して設けられ、利用者による所定の前記表示部への操作を非接触で検知する複数のセンサ部と、前記乗りかご内に設けられ、前記複数の表示部と前記複数のセンサ部とが少なくとも横方向に配列された複数の段で設けられた車椅子用操作盤と、前記複数の段のうち一列の段において、複数のセンサ部により略同時に操作が検知された場合には、当該複数のセンサ部で検知された操作を無効とし、前記一列の段において、単一のセンサ部により操作が検知された場合、または、前記一列の段以外の列の段において、単一のセンサ部により操作が検知された場合には、当該操作に基づく呼び登録に関する情報を出力する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の乗りかごの内部を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるエレベータ制御システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる車椅子用操作盤の構成の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかるセンサ部と押しボタンを側面から見た構成とセンサ部の検知範囲を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るエレベータ制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態において3段で配置されたセンサ部による検知と有効及び無効の例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態において3段で配置されたセンサ部による検知と有効及び無効の他の例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態において2段で配置されたセンサ部による検知と有効及び無効の他の例を示す図である。
【
図9】
図9は、変形例におけるキャリブレーション中の車椅子操作盤の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、変形例におけるキャリブレーション中の車椅子操作盤の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
(実施形態)
(乗りかご内部の構成)
図1は、実施形態の乗りかごの内部を示す模式図である。本実施形態の乗りかご1には、
図1に示すように、正面側に乗降口を開閉する扉1401が設けられている。そして、扉1401の横の壁面には、主操作盤1318が設けられている。この主操作盤1318は、主として、利用者が行き先階等を指定する操作を行うためのものである。また、操作盤318には、不図示のインターホンが設けられている。
【0011】
乗りかご1内の扉1401と対向する壁面には、鏡340が設けられている。乗りかご1内の利用者は当該鏡340に自身を映すことが可能となっている。
【0012】
また、乗りかご1内の側壁面のほぼ中央部には、車椅子用操作盤318と、手摺り341が設けられている。車椅子用操作盤318は、主として、車椅子に乗った利用者が行き先階等が操作可能なように、主操作盤1318より低い高さ位置に設けられている。手摺り341は、車椅子用操作盤318の下方に設けられている。この他、乗りかご1の天井には、停電時に乗りかご1内を照明する停電灯6が設けられている。
【0013】
ここで、車椅子操作盤318の高さ位置である主操作盤1318より低い高さ位置は、主操作盤1318と一部が重なる高さであってもよい。例えば、車椅子用操作盤318Bの後述する押しボタン312,315やセンサ部311,319の位置が、主操作盤1318の押しボタンやセンサ部の少なくとも一部の高さ位置より低ければよい。
【0014】
(エレベータ制御システムの構成例)
次に、
図2を用いて、行き先階呼び装置30を含むエレベータ制御システム100について説明する。
【0015】
図2は、実施形態にかかるエレベータ制御システム100の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、エレベータ制御システム100は、制御盤10、行き先階呼び装置30を備える。エレベータ制御システム100が制御を行うエレベータは、乗りかご1、駆動装置2、カウンタウェイト3、及びロープ4等を備える。
【0016】
乗りかご1は、図示しない昇降路内を昇降して、各階に設けられた乗り場で乗りかご1に乗車した利用者を他の階に輸送する。乗りかご1とカウンタウェイト3とはロープ4によって連結されている。ロープ4は駆動装置2に架け渡されている。駆動装置2は例えば巻上機等であり、駆動装置2が駆動することで乗りかご1を昇降路内で上下に走行させることができる。
【0017】
制御盤10は、制御部11、通信部12、及び記憶部13を備え、エレベータ全体を制御する。制御盤10は、各種信号の授受が可能なように、駆動装置2と有線または無線で接続されている。また、制御盤10は、各種信号の授受が可能なように、例えば乗りかご1内等に設置される行き先階呼び装置30に接続されている。制御盤10と行き先階呼び装置30とは有線または無線等のネットワークで接続されていてよい。また、制御盤10は、各種信号の授受が可能なように、乗り場に設置される図示しない乗り場呼び装置等と有線または無線で接続されている。
【0018】
制御部11は、乗りかご1内の利用者から行き先階呼びがあった場合、または、乗り場の利用者から乗り場呼びがあった場合等に、それらの呼び登録を行う。制御部11は、呼び登録の内容を記憶部13に格納してもよい。
【0019】
ここで、行き先階呼びとは、乗りかご1内の利用者が、その乗りかご1を所望の行き先階へと向かわせるために行う操作である。また、乗り場呼びとは、乗り場の利用者が、上下いずれかの行き先方向に向かう乗りかご1をその乗り場に到着させるために行う操作である。
【0020】
また、行き先階呼びは、通信部12を介して行き先階呼び装置30から受信する呼び登録要求である。乗り場呼びは、通信部12を介して乗り場呼び装置(不図示)から受信する呼び登録要求である。
【0021】
制御部11は、呼び登録の内容に応じて駆動装置2を駆動させ、乗りかご1を行き先階呼び、または乗り場呼びに応答させる。また、制御部11は、乗りかご1が所定階に到着すると乗りかご1及び乗り場の扉の開動作の指示および扉の閉動作の指示等を行う。
【0022】
また、制御部11は、行き先階呼び装置30から行き先階呼びを受信した場合、行き先階呼びを送信した行き先階呼び装置30に対して表示灯313Bの明点灯の指令を通信部12を介して送出し、表示灯313Bを明点灯させる。また、制御部11は、乗り場呼び装置から乗り場呼びを受信した場合、乗り場呼び装置に対して表示灯の明点灯の指令を通信部12を介して送出し、表示灯を明点灯させる。
【0023】
通信部12は、乗りかご1内の利用者から行き先階呼びがあった場合、または、乗り場の利用者から乗り場呼びがあった場合等に、それらの情報を行き先階呼び装置及び図示しない乗り場呼び装置等から取得する。また、通信部12は、制御部11からの各種命令等を乗りかご1等に送信する。
【0024】
記憶部13は、制御盤10にエレベータの制御を実行させるための各種プログラムを記憶する。上述のように、記憶部13が、行き先階呼び登録および乗り場呼び登録等を記憶していてもよい。
【0025】
次に、行き先階呼び装置30について説明する。行き先階呼び装置30は、車椅子操作盤318(
図1、2参照)の各部を制御して、利用者による行き先階呼びを受け付け、利用者の操作に対して処理を行う装置である。また、行き先階呼び装置30は、制御盤10の制御部11や車椅子用操作盤318Bからの指示により、乗りかご1の扉401の開閉を制御する。ここで、乗りかご1の扉401の開を戸開と称し、乗りかご1の扉401の閉を戸閉と称する。行き先階呼び装置30は、エレベータ制御装置を構成する。
【0026】
なお、エレベータ制御システム100には、主操作盤1318の各部を制御して、利用者による行き先階呼びを受け付け、利用者の操作に対して処理を行う別の行き先階呼び装置もあるが、ここでは説明を省略する。
【0027】
行き先階呼び装置30は、物体検知部31、センサ部311(311a,311b,311c・・・)、319(319a,319b)、押下検知部32、押しボタン312(312a,312b,312c・・・)、315(315a,315b)、表示灯313(313a,313b,313c・・・),321(321a,321b)、液晶表示部317、スピーカ320及び通信部34を備え、乗りかご1の利用者による行き先階呼びおよび扉1401の開閉の指示を受け付ける。行き先階呼び装置30のうち、少なくともセンサ部311,319、押しボタン312,315、及び表示灯313,321は乗りかご1内に設けられている。行き先階呼び装置30の全体が乗りかご1内に設けられていてもよい。
【0028】
センサ部311(311a,311b,311c・・・)は、行き先階を指示するための非接触式のセンサである。センサ部311(311a,311b,311c・・・)は、乗りかご1の複数の行き先階にそれぞれ対応して乗りかご1内に設けられている。所定の行き先階呼びを行おうとする利用者が、対応するセンサ部311に手指等をかざすと、センサ部311は利用者の手指等の物体を検知する。センサ部311を行き先階用のセンサ部311Bと称する場合がある。
【0029】
センサ部319(319a,319b)は、乗りかご1の扉1401の開および閉にそれぞれ対応して乗りかご1内に設けられている。センサ部319aは、扉1401の開を指示するための非接触式のセンサである。センサ部319bは、扉1401の閉を指示するための非接触式のセンサである。利用者が、開に対応するセンサ部319a、閉に対応するセンサ部319bに手指等をかざすと、センサ部319a,319bは利用者の手指等の物体を検知する。センサ部319aを戸開用のセンサ部319aと称し、センサ部319bを戸閉用のセンサ部319bと称する場合がある。
【0030】
押しボタン312(312a,312b,312c・・・)は、押下により行き先階を指示するための押しボタンである。押しボタン312(312a,312b,312c・・・)は、乗りかご1の複数の行き先階にそれぞれ対応して乗りかご1内に設けられている。押しボタン312は、所定の行き先階呼びを行おうとする利用者が、行き先階に対応する押しボタン312を押下することが可能に構成されている。
【0031】
押しボタン315(315a,315b)は、乗りかご1の扉1401の開および閉にそれぞれ対応して乗りかご1内に設けられている。すなわち、押しボタン315aは、扉1401の開を指示するための押しボタンである。押しボタン315bは、扉1401の閉を指示するための非接触式のセンサである。押しボタン315は、利用者が、開または閉に対応する対応する押しボタン315を押下することが可能に構成されている。
【0032】
表示灯313(313a,313b,313c・・・)は、乗りかご1の複数の行き先階にそれぞれ対応して乗りかご1内に設けられている。所定の行き先階呼びを行おうとする利用者が、対応するセンサ部311に手指等をかざし、または、対応する押しボタン312を押下すると、その行き先階に対応する表示灯313が所定の態様で発光する。
【0033】
表示灯321(321a,321b,313c)は、乗りかご1の扉1401の開および閉にそれぞれ対応して乗りかご1内に設けられている。表示灯321は、利用者が、開または閉に対応するセンサ部319に手指等をかざし、または、開または閉に対応する押しボタン315を押下すると、その開または閉に対応する表示灯321が所定の態様で発光する。
【0034】
スピーカ320は、物体検知部31の制御部31b等からの制御で各種音声を出力する。液晶表示部317は、物体検知部31の制御部31b等からの制御で各種表示を行う。
【0035】
物体検知部31は、計時部31aと、制御部31bとを備える。
計時部31Baは、計時を行うタイマを備えている。タイマは、2のセンサ部311が略同時に検知された場合に、検知された時点から計時を開始する。
【0036】
制御部31bは、車椅子操作盤318に設けられた複数の段のセンサ部311のうち一列の段において、複数のセンサ部311により略同時に操作が検知された場合には、当該複数のセンサ部311で検知された操作を無効とする。また、制御部31bは、車椅子操作盤318に設けられた複数の段のセンサ部311のうち、一列の段において、単一のセンサ部311により操作が検知された場合、または、上記一列の段以外の列の段において、単一のセンサ部311により操作が検知された場合には、当該操作を有効とする。そして、制御部31bは、表示灯313Bを所定の態様で点灯させ、当該操作に基づく呼び登録に関する情報としての行き先階呼びを、通信部34を介して制御盤10に送信する。ここで、呼び登録に関する情報には、指定された行き先階が含まれる。
【0037】
ここで、通信部34を介して制御盤10に送信することが、出力の一例である。また、制御盤10では、行き先階呼びを受信すると、検知されたセンサ部311Bに対応する行き先階呼びの本登録が行われる。
【0038】
制御部31bは、車椅子操作盤318に設けられた複数の段のセンサ部311のうち一列の段において、2個のセンサ部311により略同時に操作が検知された場合において、検知された時点から所定の閾値時間経過前に2個のセンサ部311による2つの操作が検知されなくなった場合には、当該操作を有効とする。そして、制御部31bは、表示灯313Bを所定の態様で点灯させ、当該操作に基づく呼び登録に関する情報としての行き先階呼びを、通信部34を介して制御盤10に送信する。
【0039】
一方、制御部31bは、2個のセンサ部311により略同時に操作が検知された場合において、検知された時点から閾値時間経過しても、2個のセンサ部311による2つの操作の検知が継続している場合には、2個のセンサ部311で検知された2つの操作を無効とする。
【0040】
制御部31bは、車椅子操作盤318に設けられた複数の段のセンサ部311のうち一列の段において、3以上のセンサ部311により略同時に操作が検知された場合には、3以上のセンサ部で検知された3以上の操作を無効とする。
【0041】
ここで、所定の閾値時間は、任意に設定することができる。例えば、閾値時間を10sとすることができる。ただし、これに限定されるものではない。
【0042】
また、閾値時間を設定変更可能なパラメータデータとして構成し、装置ごとに調整するように構成してもよい。例えば、車椅子操作盤318や主操作盤1318の下部に設けられたボックス(不図示)内のダイヤルにより、閾値時間を調整するように構成することができる。また、制御盤10に設けたボリュームつまみにより、行き先階呼び装置30ごとに、閾値時間を調整するように構成することができる。
【0043】
押下検知部32は、制御部32bを備える。制御部32bは、いずれかの押しボタン312が利用者によって押下されると、押下された押しボタン312に対応する行き先階への呼びがあったものと判定する。そして、制御部32bは、行き先階への呼びがあったと判定した場合、押下された押しボタン312に対応する行き先階への行き先階呼びを、通信部34を介して、制御盤10に通知する。これにより、制御盤10により押下された押しボタン312に対応する行き先階へ呼びの本登録が行われ、押下された押しボタン312に対応する表示灯313が明点灯する。
【0044】
通信部34は、通信インタフェース(通信I/F)であり、物体検知部31または押下検知部32が、所定の行き先階への呼びがあったものと判定した場合には、その行き先階登録呼びの情報を制御盤10に送信する。
【0045】
なお、行き先階呼び装置30は、上記以外にも、乗りかご1の利用者の操作に供する種々の構成を備えることができる。
【0046】
次に、第1の実施形態にかかるエレベータ制御システム100の物理構成について説明する。制御盤10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び記憶装置等を備えるコンピュータとして構成されている。
【0047】
ROMには、例えば、制御プログラム及び呼び登録プログラム等のエレベータの制御に関わる各種プログラムが格納されている。ROMに格納されたこれらのプログラムが読み出されてRAMに展開され、それらのプログラムをCPU101が実行することにより、制御盤10のエレベータ制御装置としての機能が実現される。
【0048】
この呼び登録プログラムがCPUにより実行されることで、上述の制御部11、通信部12、及び記憶部13等が実現される。
【0049】
行き先階呼び装置30は、CPU、ROM、RAM、及び記憶装置等を備えるコンピュータとして構成されている。
【0050】
ROMには、例えば、センサ部311Bの検知に基づく呼び等の制御プログラム、押下ボタン312Aの押下に基づく呼び等の制御プログラム等の各種プログラムが格納されている。ROMに格納された制御プログラムが読み出されてRAMに展開され、CPUによって実行されることにより、物体検知部31の計時部31a、制御部31b、押下検知部32の制御部32b等が実現される。
【0051】
ここで、呼び登録プログラム、各制御プログラム等は、コンピュータで実行可能な、エレベータの制御に関する複数の命令を含むコンピュータ読み取り可能かつ非遷移的な記録媒体(Non-transitory Computer Readable Recording Medium)を有するコンピュータプログラムプロダクトである。呼び登録プログラム、各制御プログラム等等は、例えばモジュール構成となっており、これらのモジュールが主記憶装置上にロードされる。
【0052】
呼び登録プログラム、各制御プログラム等は、例えばコンピュータでの読み取りが可能なように記録媒体等に格納されて提供される。記録媒体は、例えば磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、またはフラッシュメモリ等である。また、呼び登録プログラム、各制御プログラム等は、ネットワークに置かれたサーバ等により配信され、または、ダウンロード可能なように構成されることで、他の様々な手法により提供されてもよい。また、呼び登録プログラム、各制御プログラム等をインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0053】
なお、主に、制御盤10によって実行される呼び登録プログラムと、行き先階呼び装置30によって実行される各制御プログラムとによって、エレベータ制御システム100によって実行されるエレベータ制御プログラムが構成される。
【0054】
(車椅子用操作盤の構成例)
次に、本実施形態の車椅子用操作盤318Bの構成について説明する。
図3は、実施形態にかかる車椅子用操作盤318の構成の一例を示す図である。車椅子用操作盤318は、
図3に示すように、例えば行き先階表示部310、センサ部311,319、押しボタン312,315、表示灯313,321、開閉表示部314、非常用ボタン316、スピーカ320及び液晶表示部317を備える。
【0055】
行き先階表示部310は、例えば乗りかご1の行き先階の数字が示された文字盤等であり、乗りかご1の行き先階に対応して車椅子用操作盤318に複数配置されている。
図3の例では、乗りかご1の行き先階である1階~24階にそれぞれ対応する。そして、24個の行き先階表示部310が、一段が横方向に8個ずつ配列された合計で三段で配置されている。
【0056】
センサ部311(311a,311c,311d,311e,・・・)は、上述したとおり非接触式のセンサであり、複数の行き先階表示部310にそれぞれ対応して、対応する行き先階表示部310の近傍に複数配置されている。従って、
図3の例では、24個のセンサ部311が乗りかご1の行き先階である1階~24階にそれぞれ対応し、一段が横方向に8個ずつ配列された合計で三段で配置されている。
【0057】
押しボタン312(312a,312c,312d,312e,・・・)は、上述したとおり利用者が手指等で押下することが可能に構成され、複数の行き先階表示部310にそれぞれ対応して、対応する行き先階表示部310と一体的に車椅子用操作盤318に複数配置されている。従って、
図3の例では、24個の押しボタン312が乗りかご1の行き先階である1階~24階にそれぞれ対応し、一段が横方向に8個ずつ配列された合計で三段で配置されている。
【0058】
表示灯313(313a,313c,313d,313e,・・・)は、複数の態様で発光することが可能に構成され、複数の行き先階表示部310にそれぞれ対応して、対応する行き先階表示部310と一体的に車椅子用操作盤318に複数内蔵されている。
【0059】
開閉表示部314は、例えば乗りかご1の扉の開閉を表示する表示盤等であり、乗りかご1の戸開を表示する開閉表示部314aと乗りかご1の戸閉を表示する開閉表示部314bとから構成される。
図3の例では、二つの開閉表示部314が左右に並んで車椅子用操作盤318に配置されている。
【0060】
センサ部319(319a,319b)は、上述したとおり非接触式のセンサである。センサ部319aは戸開を示す開閉表示部314aに対応して、開閉表示部314aの近傍に配置される。センサ部319bは戸閉を示す開閉表示部314bに対応して、開閉表示部314bの近傍に配置される。
【0061】
押しボタン315(315a,315b)は、利用者が手指等で押下することが可能に構成される。押しボタン315aは、戸開用の開閉表示部314aに対応し、かつ開閉表示部314aと一体的に車椅子用操作盤318に配置されている。押しボタン315aは、戸閉用の開閉表示部314bに対応し、かつ開閉表示部314bと一体的に車椅子用操作盤318に配置されている。二つの開閉表示部314a,314bにそれぞれ対応して、二つの表示灯321a,321bが対応する開閉表示部314a,314bと一体的に車椅子用操作盤318に内蔵されている。
【0062】
ここで、本実施形態では、センサ部311と押しボタン312は一体化されている。また、センサ部319と押しボタン315は一体化されている。
【0063】
図4は、実施形態にかかるセンサ部311,319と押しボタン312,315を側面から見た構成とセンサ部311,319の検知範囲を示す模式図である。具体的には、
図4に示すように、押しボタン312,315の裏面3122側にセンサ部311,319が装着されている。
【0064】
センサ部311,319は、
図4に示すように、押しボタン312,315のおもて面3121から所定距離だけ離れた検知範囲410を有している。センサ部311,319は、
図4に示すように、センサ部311,319と押しボタン312,315のおもて面3121(すなわち行き先階表示部310、開閉表示部314のおもて面3121)から第1距離だけ離間した位置までの第1の空間領域405では利用者の操作を検知しない。検知範囲410は、押しボタン312,315のおもて面3121から第1距離から離間した位置から第2距離だけ離間した位置までの空間領域であり、この空間領域で利用者の操作を検知する。第1距離は、例えば、押しボタン312,315のおもて面3121から5mm程度であり、第2距離は、例えば、押しボタン312,315のおもて面3121から25mm程度とすることができる。ただし、第1距離、第2距離についてはこれに限定されるものではない。検知範囲410は、
図4に示すように、押しボタン312,315のおもて面3121から離れるに従って狭まる山型である。検知範囲410は、全体が押しボタン312,315のおもて面3121と対向する位置に設定されている。
図4に示すように、検知範囲410は、おもて面3121と直交する第1方向D1から見て押しボタン312のおもて面3121内に収まり、かつ、その中央がおもて面3121の略中央と重なるように設定されている。一例として、検知範囲410の中央とおもて面3121の中央とは、第1方向D1から見て一致する。このように、検知範囲410の全体が押しボタン312,315のおもて面3121と対向する位置に設定されている。
【0065】
利用者は、行き先階登録をする際には、自分の手指501等を押しボタン312,315へ向けて前進させ、この際に、センサ部311,319の検知範囲410に指先が入ってセンサ部311,319が検知状態となり、指先が検知範囲410から抜けておもて面3121までの第1空間領域に入ると、センサ部311,319非検知状態となる。利用者は、さらに手指501を前進させて、押しボタン312,315を押下する。
【0066】
図3に戻り、非常用ボタン316は、押下されることにより、管理センタ等の外部に非常事態を通知するためのボタンである。
【0067】
液晶表示部317は、液晶パネルとして構成され、乗りかご1が、どの階付近をどちらの向きに走行中であるかを表示する。
図3の例では、上向き矢印と「3」の文字が表示されている。このことから、乗りかご1は3階付近を上方へ向かって走行中であることが判る。また、液晶表示部317は、警告も表示可能となっている。
【0068】
スピーカ320は、上述したとおり各種音声や警告を出力可能となっており、
図3に示すように、車椅子用操作盤318Bの液晶表示部317Bの下方に配置されている。
なお、車椅子用操作盤318Bの構成および各種構成の配置は
図3の例に限られない。
【0069】
(エレベータ制御処理)
次に、以上のように構成された本実施形態に係るエレベータ制御システム100の行き先階呼び装置30によるエレベータ制御処理について説明する。
図5は、実施形態に係るエレベータ制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0070】
まず、物体検知部31の制御部31bは、いずれかのセンサ部311が検知されたか否かを判断する(S101)。いずれのセンサ部311も検知されていない場合には(S101:No)、制御部31bは、センサ部311の検知待ち状態となる。
【0071】
いずれかセンサ部311が検知された場合には(S101:Yes)、制御部31bは、一列の段におけるセンサ部311による検知数が1個であるか否かを判断する(S102)。そして、一列の段におけるセンサ部311による検知数が1個である場合には(S102:Yes)、制御部31bは、当該検知に基づく操作を有効とし、当該操作に基づく行き先階呼びを、通信部34を介して制御盤10に送信することで、行き先階の呼び登録を行う(S108)。ここで、上記一列の段以外の列の段において、センサ部311による検知数が1個の場合でも、制御部31bは、当該検知に基づく操作を有効とし、当該操作に基づく行き先階呼びを、通信部34を介して制御盤10に送信することで、行き先階の呼び登録を行う。そして、処理は終了する。
【0072】
一方、S102において、一列の段におけるセンサ部311による検知数が1個でない場合には(S102:No)、制御部31bは、一列の段におけるセンサ部311による検知数が2個であるか否かを判断する(S103)。検知数が2個でない場合、すなわち、一列の段におけるセンサ部311による検知数が3個以上である場合には(S103:No)、制御部31bは、3個以上のセンサ部311による当該検知は、利用者の寄りかかりや手荷物の接近等による誤検知あるいは過検知であると判断して、検知された操作をすべて無効とし、キャンセルする(S104)。そして、処理は終了する。
【0073】
一方、S103において、一列の段におけるセンサ部311による検知数が2個である場合には(S103:Yes)、物体検知部31の計時部31aは、その検知時点から2個のセンサ部311による検知時間の計測を開始する(S105)。
【0074】
次に、制御部31bは、2個のセンサ部311による検知時間が閾値時間以上であるか否かを判断する(S106)。2個のセンサ部311による検知時間が閾値時間以上である場合には(S105:Yes)、制御部31bは、2個のセンサ部311による当該検知は、利用者の寄りかかりや手荷物の接近等による誤検知あるいは過検知であると判断して、検知された操作をすべて無効とし、キャンセルする(S109)。そして、処理は終了する。
【0075】
一方、S105において、2個のセンサ部311による検知時間が閾値時間未満である場合には(S105:No)、制御部31bは、当該検知に基づく操作を有効とし、当該操作に基づく行き先階呼びを、通信部34を介して制御盤10に送信することで、行き先階の呼び登録を行う(S108)。そして、処理は終了する。
【0076】
図6は、実施形態において3段で配置されたセンサ部311による検知と有効及び無効の例を示す図である。
図6(a)~(c)において破線で囲まれた列の段は、無効となる範囲を示している。後述する
図7、
図8においても同様である。
図6(a)の例では、子どもの頭502で、中段の9~11階の3個のセンサ部311および下段の1~3階の3個のセンサ部311がいずれも検知されるが、いずれの段の検知数も3個の検知となる。このため、制御部31bは、S104で、中段の9~11階の3個のセンサ部311の検知および下段の1~3階の3個のセンサ部311による検知は、寄りかかり等に起因するものと判断し、いずれの検知も無効とする。
【0077】
図6(a)の例では、利用者の手指501の人差し指の指先で上段の21階のセンサ部311が検知し、手指501の人差し指以外の部位で、中段の12~14階のセンサ部311、および下段の4~6階のセンサ部311が検知する。上段では、21階のセンサ部311のみが検知されるので、制御部31bは、S108で、21階のセンサ部311の検知を有効とし、21階の行き先階呼びを制御盤10に送信する。一方、中段の12~14階のセンサ部311の検知数および下段の4~6階のセンサ部311による検知数はいずれの段も3個である。このため、制御部31bは、S104で、中段の12~14階の3個のセンサ部311の検知および下段の4~6階の3個のセンサ部311による検知を無効とする。
【0078】
図6(b)の例では、子どもの頭502で、下段の1~3階の3個のセンサ部311が検知されるが、
図6(a)と同様に、制御部31bは、S104で、下段の1~3階の3個のセンサ部311による検知を無効とする。
【0079】
また、
図6(b)の例では、利用者の手指501の人差し指の指先で中段の13階のセンサ部311が検知し、手指501の人差し指以外の部位で、下段の4~6階のセンサ部311が検知する。また、他の利用者の手指501の人差し指の指先で中段の14階のセンサ部311が検知し、手指501の人差し指以外の部位で、上段の21~23階のセンサ部311が検知する。制御部31bは、
図6(a)の例と同様に、S104で、下段の4~6階の3個のセンサ部311による検知、および上段の21~23階の3個のセンサ部311による検知を無効とする。
【0080】
一方、中段の13階および14階の2個のセンサ部311による検知時間が、各利用者が手指501をセンサ部311から遠ざけることで、閾値時間未満であるとすると、制御部31bは、S109で、この2個のセンサ部311による検知を有効とし、13階、14階の行き先階呼びを、通信部34を介して制御盤10に送信する。
【0081】
図6(c)の例では、利用者の腕503で、下段の4、5階の2個のセンサ部311が、中段の12、13階の2個のセンサ部311が、上段の20、21階の2個のセンサ部311がそれぞれ検知する。各段の2個のセンサ部311による検知時間が閾値時間以上であるとすると、制御部31bは、寄りかかりと判断して、S107で、各段の2個のセンサ部311による検知を無効とする。
【0082】
図7は、実施形態において3段で配置されたセンサ部311による検知と有効及び無効の他の例を示す図である。
図7の例では、利用者の手指501の人差し指の指先で上段の20階のセンサ部311のみが検知し、手指501の人差し指以外の部位で、中段の12~14階の3個のセンサ部311、および下段の4~6階のセンサ部311が検知する。上段では、20階のセンサ部311のみが検知されるので、制御部31bは、S108で、21階のセンサ部311の検知を有効とし、21階の行き先階呼びを制御盤10に送信する。一方、制御部31bは、
図6(a)の例と同様に、S104で、中段の12~14階の3個のセンサ部311の検知および下段の4~6階の3個のセンサ部311による検知を無効とする。
【0083】
上記の
図6,7は、センサ部311が3段に配列されている場合の例であったが、2段に配列されている場合も同様である。
図8は、実施形態において2段で配置されたセンサ部311による検知と有効及び無効の他の例を示す図である。
図8の例の車椅子用操作盤318には、下段に1~7階のセンサ部311、上段に8~14階のセンサ部311が配置されている。
【0084】
図8(a)の例では、子どもの頭502で、下段の1~3階の3個のセンサ部311が検知されるが、
図6(a)の例と同様に、制御部31bは、S104で、下段の1~3階の3個のセンサ部311による検知を無効とする。
【0085】
また、
図8(a)の例では、利用者の手指501の人差し指の指先で上段の12階のセンサ部311のみが検知し、手指501の人差し指以外の部位で、下段の1~3階の3個のセンサ部311が検知する。制御部31bは、
図6(a)の例と同様に、S108で、12階のセンサ部311の検知を有効とし、12階の行き先階呼びを制御盤10に送信する。一方、制御部31bは、
図6(a)の例と同様に、S104で、下段の1~3階の3個のセンサ部311による検知を無効とする。
【0086】
また、
図8(b)の例では、子どもの頭502で、上段の10~12階の3個のセンサ部311および下段の3~5階の3個のセンサ部311が検知される。制御部31bは、
図6(a)の例と同様に、S104で、上段の10~12階の3個のセンサ部311による検知および下段の3~5階の3個のセンサ部311による検知は、寄りかかり等に起因するものと判断し、いずれの検知もを無効とする。
【0087】
このように本実施形態に係る行き先階呼び装置30は、昇降路を移動する乗りかご1の行き先階をそれぞれ表示する複数の行き先階表示部310と、複数の行き先階表示部310にそれぞれ対応して設けられ、利用者による所定の行き先階表示部310への操作を非接触で検知する複数のセンサ部311と、乗りかご1内に設けられ、複数の行き先階表示部310と複数のセンサ部311とが少なくとも横方向に配列された複数の段で設けられた車椅子用操作盤318と、複数の段のうち一列の段において、複数のセンサ部311により略同時に操作が検知された場合には、複数のセンサ部311で検知された操作を無効とし、一列の段において、単一のセンサ部311により操作が検知された場合、または、前記一列の段以外の列の段において、単一のセンサ部により操作が検知された場合には、当該操作に基づく呼び登録に関する情報を出力する制御部31bと、を備える。
【0088】
このため、本実施形態では、一列の段において複数のセンサ部311により略同時に操作が検知された場合には、複数のセンサ部311で検知された操作を無効とすることで、利用者の寄りかかり等によるセンサ部311の検知に対して呼び登録せず、一列の段において、単一のセンサ部311により操作による検知に対して呼び登録することで、車椅子操作盤318のセンサ部311の誤検知や過検知を確実に防止して、エレベータの運行効率を向上させることができる。
【0089】
また、本実施形態に係る行き先階呼び装置30では、制御部31bは、一列の段において、2個のセンサ部311により略同時に操作が検知された場合において、検知された時点から所定の閾値時間経過前に2個のセンサ部311による2つの操作が検知されなくなった場合には、当該操作に基づく呼び登録に関する情報を出力し、閾値時間経過しても、2個のセンサ部311による2つの操作の検知が継続している場合には、2個のセンサ部311で検知された2つの操作を無効とする。
【0090】
主操作盤1318では、通常、センサ部311は縦長に配列されているため、主操作盤1318に対する階の指定の操作は、利用者が一人ずつ行う場合が多い。これに対して車椅子操作盤318は、センサ部311は横長に配列されており、すなわち、複数のセンサ部311が横方向に配列された複数の段で設けられている。このため、車椅子操作盤318に対する階の指定の操作は、二人の利用者が略同時に行う場合も考えられる。このため、本実施形態では、一列の段の2個のセンサ部311が略同時に検知され、検知時間が閾値時間を経過していない場合には、制御部31bは、二人の利用者が略同時に異なる階を行き先階として指定したと判断し、呼び登録する。一方、2個のセンサ部311の検知時間が閾値時間を経過した場合には、制御部31bは、当該検知が寄りかかり等に基づくものであると判断して、無効として呼び登録しない。従って、本実施形態によれば、車椅子操作盤318のセンサ部311の誤検知や過検知をより確実に防止して、エレベータの運行効率をより向上させることができる。
【0091】
また、本実施形態に係る行き先階呼び装置30では、制御部31bは、さらに、一列の段において、3以上のセンサ部311により略同時に操作が検知された場合には、3以上のセンサ部311で検知された3以上の操作を無効とする。
【0092】
このため、本実施形態では、一列の段において3以上のセンサ部311により略同時に操作が検知された場合には、当該検知は寄りかかり等に基づく検知であると判断し、3以上のセンサ部311で検知された操作を無効とし呼び登録しない。従って、本実施形態によれば、車椅子操作盤318のセンサ部311の誤検知や過検知をより確実に防止して、エレベータの運行効率をより向上させることができる。
【0093】
(変形例)
上記実施形態には種々の変形例が考えられる。
例えば、車椅子用操作盤318は、センサ部311および押しボタン312の数によって、各階床のセンサ部311および押しボタン312が配置される段が変わってくるため、仕様ごとにどの階床のセンサ部311および押しボタン312から配置される段の高さが変わるかを、設定データまたは、管理者の操作によって設定できるように構成することができる。
【0094】
具体的には、上記実施形態において、センサ部311および押しボタン312の車椅子用操作盤318での配置において、上段、中段、下段の範囲を、作業者によるキャリブレーションによって設定することが可能である。
【0095】
図9、10は、変形例におけるキャリブレーション中の車椅子操作盤318の一例を示す図である。
図9は二段の場合の例であり、
図10は、三段の場合の例である。
【0096】
キャリブレーション中において、
図9、
図10(a)、(b)に示すように、スピーカ320や液晶表示部317にから各段の先頭のボタンを押下する旨のメッセージが出力される。このため、作業者は、各段の先頭の押しボタン312の押下あるいはセンサ部311への手指の接近を行うことで、各段の先頭の階が設定データとして記憶部等に保存されて、各段の開始と終了の階が登録されることになる。
【0097】
また、上記実施形態では、センサ部311と押しボタン312が一体となっている場合を例にあげて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、センサ部311と押しボタン312が別体で設けられた車椅子操作盤318についても本実施形態を適用することができ、この場合には、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1…乗りかご、2…駆動装置、3…カウンタウェイト、4…ロープ、10…制御盤、11…制御部、12…通信部、13…記憶部、30…行き先階呼び装置、31…物体検知部、31a…計時部、31b…制御部、32…押下検知部、34…通信部、100…エレベータ制御システム、310…行き先階表示部(表示部)、311,311a~311e…センサ部、318…車椅子用操作盤、319a…戸開用のセンサ部、319b…戸閉用のセンサ部、312…押しボタン、315a…戸開用の押しボタン、315b…戸閉用の押しボタン、313,313a~313e,321a,321b…表示灯、320…スピーカ、317…液晶表示部。
【要約】
【課題】エレベータの運行効率の向上を図ること。
【解決手段】実施形態のエレベータ制御装置は、昇降路を移動する乗りかごの行き先階をそれぞれ表示する複数の表示部と、前記複数の表示部にそれぞれ対応して設けられ、利用者による所定の前記表示部への操作を非接触で検知する複数のセンサ部と、前記乗りかご内に設けられ、前記複数の表示部と前記複数のセンサ部とが少なくとも横方向に配列された複数の段で設けられた車椅子用操作盤と、前記複数の段のうち一列の段において、複数のセンサ部により略同時に操作が検知された場合には、当該複数のセンサ部で検知された操作を無効とし、前記一列の段において、単一のセンサ部により操作が検知された場合、または、前記一列の段以外の列の段において、単一のセンサ部により操作が検知された場合には、当該操作に基づく呼び登録に関する情報を出力する制御部と、を備える。
【選択図】
図2