IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サカタインクス株式会社の特許一覧

特許7600464活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20241209BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20241209BHJP
【FI】
C09D11/101
C09D11/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024174254
(22)【出願日】2024-10-03
【審査請求日】2024-10-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 良一
(72)【発明者】
【氏名】中前 昂祐
(72)【発明者】
【氏名】中島 興範
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-83900(JP,A)
【文献】特開2018-159038(JP,A)
【文献】特開2023-5799(JP,A)
【文献】特開2024-63602(JP,A)
【文献】特表2022-520286(JP,A)
【文献】特表2002-531460(JP,A)
【文献】特開2022-149204(JP,A)
【文献】特開2022-103950(JP,A)
【文献】特開2021-11031(JP,A)
【文献】特開2021-8580(JP,A)
【文献】特開2020-23702(JP,A)
【文献】特開2019-81867(JP,A)
【文献】特開2017-226143(JP,A)
【文献】特開2017-2162(JP,A)
【文献】特開2016-183344(JP,A)
【文献】特開2016-172841(JP,A)
【文献】特開2016-65212(JP,A)
【文献】特開2015-117359(JP,A)
【文献】特開2015-83656(JP,A)
【文献】特表2020-533451(JP,A)
【文献】特表2014-529637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温での粘度が5cps以上80cps以下である、活性エネルギー線硬化型のインクジェット印刷用インク組成物であって:
前記インク組成物に対して10質量%以上の単官能モノマーと、
前記インク組成物に対して1~15質量%のアミン変性オリゴマーと、
(2,4,6-トリメチル ベンゾイル)ビス(p-トリル)ホスフィン オキシドと、を含み、
黒色顔料を更に含む場合には増感剤を含有する、インク組成物。
【請求項2】
増感剤と、着色材と、を更に含む、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
白色顔料又は透明体質顔料を含むか、あるいは、顔料成分を含まない、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項4】
(2,4,6-トリメチル ベンゾイル)ビス(p-トリル)ホスフィン オキシドの含有量が、前記インク組成物に対して2~12質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記単官能モノマーは、分子量500以下の単官能モノマーを含み、前記分子量500以下の単官能モノマーの含有量は、前記インク組成物に対して10質量%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記単官能モノマーは、窒素含有単官能モノマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記インク組成物は、重合性成分の合計に対して2質量%以上の多官能モノマーを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記インク組成物は、ジフェニル(2,4,6-トリメチル ベンゾイル)ホスフィン オキシドを含有しない、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インクに関し、より具体的には、光開始剤であるTMO ((2,4,6-トリメチル ベンゾイル)ビス(p-トリル)ホスフィン オキシド)を含有する、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射することによって硬化可能なインク組成物である。活性エネルギー線硬化型インク組成物は、無溶媒もしくは低溶媒のインクとすることができ、かつ速乾性を有するため、様々な被印刷基材に印刷することができる。つまり、活性エネルギー線硬化型インク組成物は、吸収性の低い被印刷基材に印刷されても、インクの滲みを防止できるなどの効果が得られる。
【0003】
更に、活性エネルギー線硬化型インク組成物をインクジェット印刷用インクとすることも知られている。特許文献1には、着色材と、単官能モノマーと、2官能オリゴマーと、光重合開始剤と、表面張力調整剤と、を含有するエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物が開示されている。
【0004】
活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、硬化するための活性エネルギー線の種類にもよるが、光開始剤(光重合開始剤)を含有することがある。光開始剤は、一般的にいくつかの種類に大別されうるが、その例には、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、アセトフェノン系、アシルホスフィン系の化合物などが含まれる。
【0005】
光開始剤の一つとして、(2,4,6-トリメチル ベンゾイル)ビス(p-トリル)ホスフィン オキシド(TMOと略称されることがある)が提案され、その製法も研究されている(特許文献2及び3)。また、TMOを含有するインク組成物も提案されており;変性エポキシ樹脂アクリレートプレポリマー及び反応性希釈剤とともに、TMOを配合したインクが提示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-299057号公報
【文献】特表2002-531460号公報
【文献】特表2022-520286号公報
【文献】CN118240419A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光開始剤は化学物質としての毒性が懸念されることがあり;例えば、アシルホスフィン系の光開始剤であるTPO (ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン オキシド) は、その生物毒性の懸念が指摘されることがある。また、アシルホスフィン系の光開始剤では、硬化性が不十分であったり、その結果、硬化物の硬度が十分に向上しなかったりする場合があり;また、硬化物に変色(黄変など)が生じたり、インク組成物の粘度安定性が十分でなかったりする。
【0008】
光重合開始剤は、その溶解性が低い(例えば、単官能モノマーなどの反応性希釈剤に対する溶解性が低い)場合があり、その種類によっては、インク組成物の硬化物の耐溶剤性が十分に向上しないこともある。そこで本発明は、TMOを光重合開始剤として含む、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物において、その硬化性を十分に高め、好ましくは、硬化物の耐溶剤性を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下に示す活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物に関する。
[1]室温での粘度が5cps以上80cps以下である、活性エネルギー線硬化型のインクジェット印刷用インク組成物であって:
前記インク組成物に対して10質量%以上の単官能モノマーと;前記インク組成物に対して1~15質量%のアミン変性オリゴマーと;(2,4,6-トリメチル ベンゾイル)ビス(p-トリル)ホスフィン オキシドと、を含み、黒色顔料を更に含む場合には増感剤を含有する、インク組成物。
【0010】
本発明は、好ましくは以下に示す活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物に関する。
[2]増感剤と、着色材と、を更に含む、前記[1]に記載のインク組成物。
[3]白色顔料又は透明体質顔料を含むか、あるいは、顔料成分を含まない、前記[1]に記載のインク組成物。
【0011】
[4](2,4,6-トリメチル ベンゾイル)ビス(p-トリル)ホスフィン オキシドの含有量が、前記インク組成物に対して2~12質量%である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のインク組成物。
[5]前記単官能モノマーは、分子量500以下の単官能モノマーを含み、前記分子量500以下の単官能モノマーの含有量は、前記インク組成物に対して10質量%以上である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のインク組成物。
[6]前記単官能モノマーは、窒素含有単官能モノマーを含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載のインク組成物。
[7]前記インク組成物は、重合性成分の合計に対して2質量%以上の多官能モノマーを更に含む、前記[1]~[6]のいずれかに記載のインク組成物。
[8]前記インク組成物は、ジフェニル(2,4,6-トリメチル ベンゾイル)ホスフィン オキシドを含まない、前記[1]~[7]のいずれかに記載のインク組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインクジェット印刷用インク組成物は、活性エネルギー線硬化型インクとしての特性を有し、従来の光開始剤を含有するインク組成物で問題となり得る課題(硬化性の向上、硬化物の黄変抑制、インク組成物の粘度安定性の向上)を解決しつつ、硬化物の耐溶剤性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1.活性エネルギー線硬化型のインクジェット印刷用インク組成物について]
本発明のインクジェット印刷用インク組成物(単に、「インク組成物」ともいう)は、活性エネルギー線で露光されることで硬化可能なインク組成物である。活性エネルギー線の例には、発光ダイオード(LED)や各種ランプや電極から照射される紫外線、電子線、可視光線等が挙げられる。環境面からは、発光ピーク波長が350~420nmの範囲の紫外線を発生する発光ダイオード(LED)を活性エネルギー線の光源とすることが好ましい。
【0014】
本発明のインク組成物はインクジェット印刷可能な粘度を有するが、具体的には、室温(25℃)での粘度が5cps以上であり、10cps以上であってもよく;一方、80cps以下であり、60cps以下であることが好ましく、40cps以下であることがより好ましく、30cps以下であってもよい。インク組成物の粘度は、E型粘度計を使用して、温度25℃、ローター回転速度20rpmの条件で測定することができる。
【0015】
本発明のインクジェット印刷用インク組成物は、A)重合性成分として、単官能モノマーと、アミン変性オリゴマーと、B)光重合開始剤として、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ビス(p-トリル)ホスフィン オキシドと、を含む。また、インク組成物は、重合性成分として(アミン変性オリゴマー以外の)多官能モノマーを含有してもよい。また、インク組成物は、必要に応じて、着色材を含有することができ、その場合には、増感剤を含有することが好ましい。特にインク組成物は、黒色顔料を含有する場合には、増感剤を含有する。
【0016】
[1-1.光重合性成分]
インク組成物に含まれる重合性成分は、A)単官能モノマーと、B)反応性オリゴマーと、C)多官能モノマーと、に大別されうる。
【0017】
[1-1A.単官能モノマー]
重合性成分としての単官能モノマーは、典型的には、エチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物である。単官能モノマーは、窒素含有単官能モノマーと、それ以外の単官能モノマー(不飽和カルボン酸系化合物、アルキル(メタ)アクリレート系化合物、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物、ハロゲン含有(メタ)アクリレート系化合物、エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物、その他の(メタ)アクリレート系化合物、スチレン系化合物)とに大別されうる。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。
【0018】
重合性成分としての単官能モノマーの少なくとも一部の単官能モノマーの分子量が、500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、300以下であることが更に好ましい。一定以下の分子量を有する単官能モノマーは、インク組成物において光重合開始剤を溶解させやすい。分子量が、500以下の単官能モノマーの割合が、単官能モノマーの合計に対して、少なくとも50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。
【0019】
<窒素含有単官能モノマー>
窒素含有単官能モノマーは、インク組成物の硬化性を向上させることができる。窒素含有単官能モノマーの例には、アクリロイルモルホリン、ビニルメチルオキサゾリジノン、ビニルカプロラクタム、および、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、ラクトン変性可とう性アクリレート等から選ばれる。これらの窒素含有単官能モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
<不飽和カルボン酸系化合物>
不飽和カルボン酸系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、それらの塩及びそれらの酸無水物等が挙げられる。
【0021】
<アルキル(メタ)アクリレート系化合物>
アルキル(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
<ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物>
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-エチルヘキシルEO変性(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールEO変性アクリレート、p-クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール変性(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0023】
<ハロゲン含有(メタ)アクリレート系化合物>
ハロゲン含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2,6-ジブロモ-4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノール3EO(エチレンオキサイド)付加(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
<エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物>
エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、1,3-ブチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、クレジルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(EO繰返し単位数400、700等)、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アルコキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート(エトキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等)、アルコキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート(エトキシ化(4)ノニルフェノールアクリレート等)、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、エトキシ化コハク酸(メタ)アクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート等のアルコキシ系及び又はフェノキシ系(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0025】
<カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物>
カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート等が挙げられる。
【0026】
<その他の(メタ)アクリレート系化合物>
その他の(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、ベンジルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、ジフェニル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、カプロラクトン変性-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシ-1-(メタ)アクリロキシ-3-メタクリロキシプロパン、アクリオロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトールアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライド4級塩、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クレゾール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、1-(メタ)アクリロイルピペリジン-2-オン、2-(メタ)アクリル酸-1,4-ジオキサスピロ[4,5]デシ-2-イルメチル、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、イミドアクリレート、(メタ)アクリル酸ビニル、マレイミド等が挙げられる。
【0027】
<スチレン系化合物>
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、p-ヒドロキシスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-t-ブトキシスチレン、p-t-ブトキシカルボニルスチレン、p-t-ブトキシカルボニルオキシスチレン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0028】
エチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物として、前記化合物以外の「その他のエチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物」を用いることができる。そのような化合物としては、例えば、酢酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバル酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、三員環化合物類(例えば、ビニルシクロプロパン類、1-フェニル-2-ビニルシクロプロパン類、2-フェニル-3-ビニルオキシラン類、2,3-ジビニルオキシラン類等)、環状ケテンアセタール類(例えば、2-メチレン-1,3-ジオキセパン、ポジオキソラン類、2-メチレン-4-フェニル-1,3-ジオキセパン、4,7-ジメチル-2-メチレン-1,3-ジオキセパン、5,6-ベンゾ-2-メチレン-1,3-ジオセパン等)等が挙げられる。
【0029】
これらの単官能モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
本発明のインク組成物は重合性成分を含有するが、重合性成分として単官能モノマーを、インク組成物に対して10質量%以上含有し、15質量%以上含有することが好ましく;一方、インク組成物に対して80質量%以下含有することが好ましく、70質量%以下含有することがより好ましい。単官能モノマーは、インク組成物において希釈剤としても機能し得る重合性成分であり、インク組成物に対して10質量%以上含有することで、光重合開始剤(TMO:2,4,6-トリメチルベンゾイル)ビス(p-トリル)ホスフィン オキシド)を十分に溶解させて、インク組成物の相溶性を確保することができる。また単官能モノマーは、インク組成物の効果物の折り曲げ性を向上させることができる。
【0031】
本発明のインク組成物は重合性成分として、窒素含有単官能モノマーを含有することが好ましいが;窒素含有単官能モノマーの含有量は、単官能モノマーの合計に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であってもよい。窒素含有単官能モノマーは光重合開始剤を溶解させやすく、溶解性の低い光重合開始剤であるTMOを含む本発明のインク組成物の単官能モノマーとして好ましい。
【0032】
[1-1B.反応性オリゴマー]
本発明のインク組成物は、重合性成分として反応性オリゴマーを含有する。オリゴマーとは、分子内に有するエチレン性不飽和結合が重合して高分子量化する成分である。オリゴマーは、重合前に比較的高分子量の成分であるので、インク組成物に適度な粘性や弾性を付与することができる。また、オリゴマーは比較的極性が高く、硬化後のインク組成物に非吸収性の被印刷基材への接着性を付与することがある。反応性オリゴマーとは、1又は2以上の重合性官能基(エチレン性不飽和結合)分子内に有するオリゴマーである。
【0033】
インク組成物に含まれるオリゴマーは、アミン変性オリゴマーであることが好ましい。アミン変性オリゴマーは、アミノ基及び活性エネルギー線照射により架橋または重合する官能基を分子内に2つ以上有する反応性オリゴマーである。アミン変性オリゴマーは、好ましくは、2つのアミノ基と、2つの活性エネルギー線照射により架橋または重合する官能基と、を分子内に有する反応性オリゴマーである。アミン変性オリゴマーは、反応性アミン共開始剤、反応性アミンシナジスト、アクリレート変性アミンシナジスト、アミンアクリレート等と称されることもある。
【0034】
オリゴマー(好ましくは、アミン変性オリゴマー)の粘度は限定されないが、特に、25℃での粘度が2000cps以下であると、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物全体の粘度を適切な範囲とするために好ましい。
【0035】
インク組成物におけるアミン変性オリゴマーの含有量は、インク組成物の合計に対して1質量%以上であり、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく;一方、15質量%以下であり、13質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。アミン変性オリゴマーの含有量を1質量%以上とすることで、インク組成物の硬化性を向上させることができ、かつ硬化塗膜の耐溶剤性を改善することができる。また、アミン変性オリゴマーの含有量を15質量%以下とすることで、インク組成物の粘度を抑制して吐出安定性を向上させつつ、硬化印刷膜の延伸性を確保しやすくする。本発明のインク組成物は、重合開始剤としてTMOを含み、TMOは反応性希釈剤(単官能モノマーなど)への溶解性が相対的に低い。そのため、本発明のインク組成物の硬化性やその硬化塗膜の耐溶剤性を十分に高めることができない場合があるため、アミン変性オリゴマーを含有することで、これらの特性を改善する。
【0036】
アミン変性オリゴマーは、市場から入手することも可能である。市場から入手可能なアミン変性オリゴマーの例には、Sartomer社製のCN371、CN373、CN383、CN386、CN501、CN550、及びCN551;ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL80、及びEBECRYL7100;RAHN社製のGENOMER 5142、GENOMER 5161、及びGENOMER 5275;Miwon社製のMiramer AS2010、及びMiramer AS5142;並びに長興化学社製のEtercure 641、Etercure 6410、Etercure 6411、Etercure 6412、Etercure 6413、Etercure 6417、Etercure 6420、Etercure 6422、Etercure 6423、Etercure 6425、Etercure 6430、Etercure 645、及びEtercure 647等が含まれる。好ましいアミン変性オリゴマーの例には、CN371、CN373、CN383、CN386(Sartomer社製)等のアクリル化アミン化合物であることが好ましく、分子内に2個以上の光重合性官能基を有するCN371、CN386(Sartomer社製)、EBECRYL80(ダイセル・オルネクス社製)等がさらに好ましい。
【0037】
[1-1C.多官能モノマー]
重合性成分としての多官能モノマーは、2以上のエチレン性不飽和結合を備えたモノマーであり、例えば多官能(メタ)アクリレート系化合物やビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物等を用いることができる。多官能(メタ)アクリレート系化合物は、2官能のジ(メタ)アクリレート系化合物、3官能のトリ(メタ)アクリレート系化合物、又はそれ以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物であってもよい。
【0038】
2官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ルジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノーAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
3官能モノマーとしては、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
4官能以上のモノマーとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
多官能モノマーは、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物であってもよく;その例には、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1-ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸-2-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1,1-ジメチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸-6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-m-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-o-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル等が挙げられる。
【0042】
本発明のインク組成物は、多官能モノマーを含んでいても含んでいなくてもよいが、印刷硬化物の耐擦過性や耐溶剤性の点から、重合性成分の合計に対して、好ましくは2質量%以上の、より好ましくは3質量%以上の、更に好ましくは4質量%以上の多官能モノマーを含有し;一方、好ましくは80質量%以下の、より好ましくは60質量%以下の、更に好ましくは40質量%以下の多官能モノマーを含有する。多官能モノマーの含有量を2質量%以上とすることで、硬化印刷膜の耐擦過性や耐溶剤性を向上させることができるが;一方、80質量%を超えると硬化印刷膜のフレキシビリティ(延伸性)が低下する傾向がみられる。
【0043】
[1-2.光重合開始剤]
本発明のインク組成物は、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射を受けてラジカル等の活性種を発生させ、活性エネルギー線硬化型組成物の光重合を開始させる。
【0044】
本発明のインク組成物は、光重合開始剤として、(2,4,6-トリメチル ベンゾイル)ビス(p-トリル)ホスフィン オキシドを含む。(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ビス(p-トリル)ホスフィン オキシドは、下記構造式で示される化合物であり、「TMO」と略称されることがある。
【化1】
【0045】
TMOは、アシルホスフィン系の光重合開始剤の一つであるが、他のアシルホスフィン系の光重合開始剤であるTPO (ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン オキシド)と比較して、毒性が低いと考えられている。つまり、TPOは生殖毒性区分1Bに指定されているが、TMOはその指定がない。
【0046】
TMOは、TPOと比較してその溶解性が低く、インク組成物に比較的溶解しにくい。そのため、TMOを含有する活性エネルギー線硬化型インク組成物においては、TMOが相溶しやすいように光重合性成分の組成を調整する必要がある。そのため、本発明のインク組成物は、インク組成物に対して10質量%以上の単官能モノマーを含む。
【0047】
また、TPOを含有する活性エネルギー線硬化型インク組成物は、その硬化物の耐溶剤性が十分でないことがあった。それに対して、TMOとアミン変性オリゴマーとを組み合わせることで、インク組成物の硬化物の耐溶剤性を改善することができる。
【0048】
本発明のインク組成物におけるTMOの含有量は、インク組成物の合計に対して、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、6質量%以上であることが更に好ましく;一方、16質量%以下であることが好ましく、14質量%以下であることが更に好ましい。
【0049】
本発明のインク組成物は、TMOとともに、他の光重合開始剤を含有してもよい。他の光重合開始剤の例には、アシルホスフィンオキサイド系化合物、トリアジン系化合物、芳香族ケトン系化合物、芳香族オニウム塩系化合物、有機過酸化物、チオキサントン系化合物、チオフェニル系化合物、アントラセン系化合物、ヘキサアリールビスイミダゾール系化合物、ケトオキシムエステル系化合物、ボレート系化合物、アジニウム系化合物、メタロセン系化合物、活性エステル系化合物、ハロゲン化炭化水素系化合物及びアルキルアミン系化合物、ヨードニウム塩系化合物及びスルフォニウム塩系化合物等が含まれる。但し、本発明のインク組成物は、生殖毒性区分1Bに指定されているTPOを含有しないことが好ましい。
【0050】
[1-3.着色材又は顔料]
本発明のインク組成物は、着色材を含むことができる。着色材は、インク組成物に白以外の着色を付与する成分であり、黒色又はカラーを付与する。着色材は、顔料であってもよいし、染料であってもよいが、顔料(着色顔料)であることが好ましい。また、本発明のインク組成物は顔料を含んでいてもよい。インク組成物に着色力や隠蔽力等を付与するために添加される成分であり;顔料は、白色顔料、(白色以外の)着色顔料、透明体質顔料、金属パウダー等に大別されうる。また顔料は、有機顔料と無機顔料とに大別されうる。
【0051】
本発明のインク組成物は、白色顔料又は透明体質顔料を含むか、又は顔料を含まない場合があり;つまり、本発明のインク組成物は、白色インク又は透明インクであり得る。白色インク又は透明インクは、その硬化物が黄変すると、その色の変化が目立つ(視認しやすい)ことが多い。光重合開始剤を含有するインク組成物を硬化させると、硬化物が黄変することがあるが;本発明のインク組成物に含まれる光重合開始剤であるTMOは、硬化物を黄変させにくいという特性を有する。そのため、本発明のインク組成物は、白色インク又は透明インクであることが好ましい場合がある。なお、本発明のインク組成物は、白色顔料又は透明体質顔料を含むか、又は顔料を含まない場合には、増感剤を含む必要がないことがある。
【0052】
一方で、本発明のインク組成物は着色材を含むことができ、つまり、本発明のインク組成物は黒色インク又はカラーインクであり得る。後述の通り、インク組成物が着色材を含む場合には、増感剤を含むことが好ましい。
【0053】
白色顔料の例には、二酸化チタン(ピグメントホワイト7等)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、及び酸化ジルコニウム等が含まれるが、二酸化チタンが好ましい。白色顔料は、アルミナ、シリカ等の種々の材料で表面処理されていてもよい。透明体質顔料の例には、酸化ケイ素(シリカ)、硫酸バリウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が含まれるが、シリカ又はアルミナが好ましい。
【0054】
着色顔料の例には、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の有機顔料及び各種無機顔料等が挙げられる。
【0055】
好ましい着色顔料の例には、ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー1)、ハンザイエロー、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー155等のイエロー顔料;ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウオッチングレッド、キナクリドン、ピグメントレッド122、ピグメントレッド254等のマゼンタ顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、ピグメントブルー15:4等のシアン顔料;ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、鉄黒、酸化クロムグリーン、カーボンブラック(ピグメントブラック7等)、黒鉛等の有色顔料、アルミニウムペースト、ブロンズパウダー等の金属パウダー等が含まれる。
【0056】
イエロー顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow(PY) 1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213等が挙げられる。
【0057】
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red(PR) 5、7、12、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられる。
【0058】
シアン顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue(PB) 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、60等が挙げられる。
【0059】
ブラック顔料(黒色顔料)としては、例えば、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)等が挙げられる。後述の通り、本発明のインク組成物が黒色顔料を含む場合には、更に増感剤を含む。黒色顔料を含有するインク組成物は、活性エネルギー線を照射されたときの硬化性が十分ではない場合があるため、増感剤を含有させてインク組成物の硬化性を高める。
【0060】
インク組成物における顔料の含有量は、顔料の種類と目的とする着色の程度に応じて異なり、特に限定されないが:黒色顔料又は着色顔料の場合には、インク組成物の全体に対して、例えば1.0~10.0質量%程度であり;白色顔料又は体質顔料の場合には、インク組成物の全体に対して、例えば1.0~20.0質量%程度であり得る。
【0061】
[1-4.増感剤]
本発明のインク組成物は、増感剤を含有することができ、増感剤はインク組成物の硬化性を向上させることができる。本発明のインク組成物は、黒色顔料を含有する場合には、増感剤を含有し、また、着色材(白色以外の着色材)を含む場合に、増感剤を含むことが好ましい。活性エネルギー線をインク組成物に照射したときに、インク組成物に含まれる着色材が活性エネルギー線を遮ることで、インク組成物を硬化させにくい場合があるからである。増感剤は、一般的に、非高分子型の増感剤と高分子型増感剤とに大別されうる。本発明のインク組成物に含まれる増感剤はいずれでもよいが、塗膜からのマイグレーションを抑制することができるため、高分子型増感剤が好ましい場合がある。
【0062】
非高分子型の増感剤の例には、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン等のアントラセン系増感剤;2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤等が含まれる。増感剤は、好ましくはチオキサントン系増感剤である。
【0063】
高分子型の増感剤の例には、チオキサントン系高分子光増感剤、アシルホスフィン系高分子増感剤、その他の高分子型増感剤が含まれる。チオキサントン系高分子光増感剤として、Omnipol TX((2-カルボキシメトキシチオキサントン)-(ポリテトラメチレングリコール250)ジエステル)(数平均分子量:660)(IGM Resins B.V.社製)、Genopol TX-1(数平均分子量:820)(RaHN社製)等が挙げられる。アシルホスフィン系高分子増感剤として、SpeedCure 7010(分子量1839)(ランブソン社製)が挙げられる。更に、その他の高分子型増感剤として、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパン)(Lamberti社製、「ESACURE KIP 150」、「ESACURE1」)、ポリエチレングリコール200-ジ(β-4(4-(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル)ブタノニルフェニル)ピペラジン)(IGM社製、「Omnipol 910」)、(カルボキシメトキシメトキシベンゾフェノン)-(ポリエチレングリコール250)ジエステル(IGM社製、「Omnipol BP」)等があげられる。
【0064】
インク組成物における増感剤の含有量としては、重合性成分の合計を100質量部としたときに、0.3質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく;一方、10質量部以下であることが好ましく、9質量部以下であることがより好ましい。
【0065】
[1-5.その他の成分]
本発明のインク組成物は、更に、重合禁止剤、顔料分散剤、レベリング剤、その他の添加剤を含みうる。
【0066】
[1-5A.重合禁止剤]
本発明のインク組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤は、意図しない重合反応(活性エネルギー線を照射しない状態で生じる重合反応等)が生じることを抑制することができる。重合禁止剤の例には、ヒドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン等が含まれる。インク組成物における重合禁止剤の含有量としては、例えば、0.01~5.0質量%程度である。
【0067】
[1-5B.顔料分散剤]
本発明のインク組成物が顔料を含有する場合には、さらに顔料を分散させるための顔料分散剤を含有してもよい。顔料分散剤は、高分子系の顔料分散剤であることが好ましく、また、塩基性基を含有する顔料分散剤であることが好ましい。塩基性基を含有する顔料分散剤の例には、塩基性基含有ポリエステル系顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系顔料分散剤、塩基性基含有ウレタン系顔料分散剤、塩基性基含有カルボジイミド系顔料分散剤等の高分子系顔料分散剤のほか、アニオン性界面活性剤等が含まれる。
【0068】
高分子系顔料分散剤は、特に限定されないが、ブロックまたはグラフト構造により少なくとも主鎖の末端に(片末端又は両末端に)、塩基性基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子でありうる。高分子系顔料分散剤は、塩基性基を1分子中に2~3000個含むことができ、数平均分子量が1000~1000000でありうる。
【0069】
インク組成物における顔料分散剤の含有量は、顔料の合計量を100質量部としたときに、1.0~200.0質量部であることが好ましい。
【0070】
[1-5C.レベリング剤(表面調整剤)]
本発明のインク組成物は、レベリング剤を含有することができる。レベリング剤は、インク組成物の吐出安定性を高めることもできる。レベリング剤の例としては、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤、シリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0071】
レベリング剤としてのシリコーン系界面活性剤の具体例としては、水酸基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンや、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等のポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリメチルアルキルシロキサン等のポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤は、市場から入手することも可能であり、BYK-307、BYK-315、BYK-315N、BYK-331、BYK-333、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-345、BYK-377、BYK-378、BYK-3455(BYK社)等として市場から入手できる。
【0072】
インク組成物における表面調整剤の含有量は、インク組成物に対して0.05~2.50質量%の範囲であることが好ましい。
【0073】
[1-5D.その他の添加剤]
その他の添加剤の例には、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、保存性向上剤、防黴剤、防錆剤、増粘剤、保湿剤、pH調整剤等の各種添加剤を含有してもよい。溶媒は、インク組成物中、10.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることが更に好ましく、含有しなくてもよい。
【0074】
[2.インク組成物の調製]
本発明のインク組成物は、従来公知の手法に準じて調製することができる。例えば、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、DCPミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の分散機を使用して各成分を分散混合し、必要により粘度を調整して、インク組成物を得ることができる。
【0075】
なお、インク組成物が顔料を含有する場合には、顔料、顔料分散剤、及び重合性成分の一部を混合することにより、予めベースインク組成物(顔料分散物ともいう)を得て、それに所望の組成となるよう上記成分の残余の分を添加して、インク組成物を調製することもできる。
【0076】
[3.インク組成物のインクジェット印刷]
本発明のインク組成物は、インクジェット印刷装置による印刷に用いることができる。使用可能なインクジェット印刷装置の方式は特に限定されず、ラインヘッド方式(シングルパス方式)であってもよいし、シリアルヘッド方式(マルチパス方式)であってもよい。また、コンティニュアスタイプのインクジェット印刷装置であってもよく、その場合には、さらに導電性付与剤を加えてインク組成物の電導度を調整することができる。
【0077】
インク組成物は、インクジェット印刷装置のプリンターヘッドに供給され、このプリンターヘッドからインク組成物を印刷対象の被印刷基材に吐出する。プリンターヘッドからのインク組成物の被印刷基材への吐出(画像の印字)は、被印刷基材に対して塗膜の膜厚が、例えば、1~60μmとなるように行えばよい。
【0078】
被印刷基材に着弾したインク組成物は、活性エネルギー線で露光されて硬化する。活性エネルギー線としては、発光ダイオード(LED)や各種ランプや電極から照射される紫外線、電子線、可視光線等が挙げられる。環境面からは、発光ピーク波長が350~420nmの範囲の紫外線を発生する発光ダイオード(LED)を光源とすることが好ましい。
【0079】
印刷対象となる被印刷基材も特に限定されず、従来公知の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物が適用可能な基材であれば特に限定されない。基材の例には、プラスチック、紙、カプセル、ジェル、金属箔、ガラス、木材、布等が挙げられる。本発明のインク組成物の硬化塗膜は、耐擦過性や延伸性に優れるという特質を有する。そのため、本発明のインク組成物は、フレキシブルな被印刷基材、例えばプラスチックフィルム等に印刷されることが好ましい場合がある。
【0080】
被印刷基材を構成するプラスチックとしては、例えば、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等)、セルロース系ポリマー(例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアクリル系ポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート等)、塩化ビニル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィンポリマー、エチレン・プロピレン共重合体ポリマー等)、ポリアミド系ポリマー(例えば、ナイロン、芳香族ポリアミドポリマー等)、ポリスチレン系ポリマー(例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体ポリマー等)、ポリイミド系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニルスルフィド系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、ポリビニルブチラール系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、及びポリエポキシ系ポリマー、これらのポリマーのブレンド物等からなる群より選ばれる1種以上等が挙げられる。
【実施例
【0081】
以下に実施例を参照して、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明の範囲は、実施例の記載に基づいて限定して解釈されない。
【0082】
A.インク組成物の調製
表1~表4に示す各実施例及び比較例のインク組成物の調製に用いた原料を示す。
【0083】
A-1.顔料
・Pigment Yellow 150
・Pigment Red 122
・Pigment Red 254
・Pigment Blue 15:4
・Pigment Black 7
・Pigment White 7
・AEROXIDE(登録商標) ALU-C:アルミナ微粒子(エボニック社)
・AEROSIL(登録商標) R9200:シリカ微粒子(エボニック社)
【0084】
A-2.顔料分散剤
・Solsperse56000:顔料分散用樹脂 アミン価39mgKOH/g(Lubrizol社)
・BYKJET9151:顔料分散用樹脂(BYK社)
・Solsperse36000:顔料分散用樹脂 酸価45mgKOH/g(Lubrizol社)
・アジスパーPB821:顔料分散用樹脂(味の素ファインテクノ社)
【0085】
A-3.単官能モノマー
・4HBA(4-ヒドロキシブチルアクリレート) 分子量:144.2
・ベンジルアクリレート 分子量:162.2
・VCAP(N-ビニルカプロラクタム) 分子量:139.2
・アクリロイルモルホリン 分子量:141.17
【0086】
A-4.オリゴマー
・CN371NS:アミン変性オリゴマー(サートマー社)
・Miramer PE-210:ビスフェノールAエポキシアクリレート(MIWON社)
【0087】
A-5.多官能モノマー
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(Trimethylolpropane(EO)3triacrylate):Miramer M3130(東洋ケミカルズ社)
・ジプロピレングリコールジアクリレート
・1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
【0088】
A-6.光重合開始剤
・TMO:(2,4,6-トリメチル ベンゾイル)ビス(p-トリル)ホスフィン オキシド
・TPO:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン オキシド
・BAPO:フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン オキシド
・TPOL:(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィン オキシド
【0089】
A-7.増感剤
・DETX:2,4-ジエチルチオキサントン
・Speedcure7010:高分子チオキサントン(サートマー社)
【0090】
A-8.その他添加剤
・Irgastab UV22:重合禁止剤(BASF社)
・Lunacure500:重合禁止剤(DKSH社)
・BYK-377:シリコーン系表面調整剤(BYK社)
・ESACURE A198:アミノベンゾエート化合物(IGM RESINS B.V.社)
【0091】
表1~表4に示す処方に沿って、各成分を配合し、攪拌混合することによって、各実施例及び比較例のインクジェット印刷用インク組成物を調製した。
【0092】
B.インク組成物及びその硬化塗膜(印刷物)の評価
各実施例及び比較例で製造したインク組成物、及びその硬化物を、以下の項目について評価して、その評価結果を表1~4に示した。
【0093】
B-1.インク組成物の粘度
E型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)を使用して、温度25℃、ローター回転速度20rpmの条件で、調製直後のインク組成物の粘度(cps)を測定した。
【0094】
B-2.硬化塗膜の耐溶剤性
PVC板 (タキロンシーアイ社製T938) に印刷した各インク組成物の硬化塗膜を、学振型堅牢度試験機 (大栄科学精器製作所製) を用いて、30%エタノール水を含んだ晒し布で200g×5回塗膜を擦った際の、塗膜の取られ具合を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:塗膜の取られなし
△:塗膜の表面に傷がある
×:塗膜の明らかな取られが見られる
【0095】
B-3.硬化塗膜(印刷物)の折り曲げ性
PET(東洋紡社製E5100)に印刷した各インク組成物の硬化塗膜を折り曲げ角度180度で折り曲げて、その割れの状態を目視で確認した。
○:塗膜に細かなクラック等の割れが生じない
△:塗膜に細かなクラックが生じる
×:塗膜に明らかな亀裂が生じる
【0096】
B-4.インク組成物のLED硬化性(表面硬化性)
PETフィルムの表面に、各インク組成物をバーコーターNo.4を用いて塗布し、各塗工物を得た。ついでLED照射装置 (398nm、500mj/cm2) を用いて、LED光を照射した。光照射後のインク塗膜を綿棒で軽くこすり、塗膜と綿棒の状態を評価した。
○:塗膜に綿棒のこすり跡が付着しない
△:塗膜に綿棒のこすり跡が若干付着する
×:綿棒にインクが付着する
【0097】
B-5.光重合開始剤の相溶性
各実施例及び比較例のインク組成において、顔料および顔料分散剤を除く各成分を、ディスパーにて室温下で撹拌混合して、光重合開始剤が溶解するまでの時間を測定し、下記評価基準に従って評価した。
〇:1時間以内に溶解する
△:1時間~2時間で溶解する
×:2時間以上でも溶解しない
【0098】
B-6.硬化塗膜の黄変
白色PVC板に印刷した各インク組成物の硬化塗膜を分光測色計X-Rite eXact(x-rite社製)で測色し、そのb*値によって以下の基準で評価した。
〇:b*値が0未満である。
×:b*値が0以上である。
【0099】
B-7.硬化塗膜の鉛筆硬度
JIS K 5600-5-4:1999 塗料一般試験方法に則り、被印刷物に印刷した硬化塗膜について試験を実施した。凝集破壊が生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度とした。
〇:2H以上
△:BからH
×:2B以下
【0100】
B-8.インク組成物の粘度安定性
60℃の雰囲気温度下に、実施例及び比較例で得られた各インク組成物を3週間静置した後、E型粘度計を使用して粘度を測定し、以下の計算式により増粘率(%)を算出し、以下の評価基準にしたがって粘度安定性を評価した:増粘率(%) =((60℃ 3週間静置後の粘度値/25℃ 3週間静置後の粘度値)×100))-100。
○:増粘率が10%未満
△:増粘率が10%~20%
×:増粘率が20%超
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
表2の比較例1及び2に示されるように、光重合開始剤としてTPOを含むインク組成物は、その硬化塗膜の耐溶剤性が十分ではなかった。また、表2の比較例3及び4に示されるように、光重合開始剤としてTPOL、又はTPOLとBAPOとの組み合わせ、を含むインク組成物は、その硬化塗膜の耐溶剤性が十分ではなく、硬化塗膜のLED硬化性や鉛筆硬度も十分ではなかった。また、インク組成物の粘度安定性も悪化した。なお、比較例4に示されるように、光重合開始剤としてTPOLとBAPOとの組み合わせを含むインク組成物は、その硬化塗膜に黄変が見られた。これに対して、光重合開始剤としてTMOを含有する各実施例(表1)では、各評価項目のいずれにおいても十分な評価が得られた。
【0104】
表2の比較例5に示されるように、アミン変性オリゴマーを含有しないインク組成物は、他のオリゴマーを含むにも係わらず、LED硬化性が低下し、耐溶剤性も十分ではなかった。このように、光重合開始剤としてTMOを含有しても、反応性オリゴマーであるアミン変性オリゴマーを含有しないインク組成物は、LED硬化性と耐溶剤性とを両立できないことがわかる。また、表2の比較例6に示されるように、単官能モノマーの含有量が少ない(インク組成物に対して3質量%である)インク組成物は、光重合開始剤が十分に相溶せず、その硬化塗膜のLED硬化性が十分ではなかった。また、比較例6では硬化塗膜の折り曲げ性も低下した。これに対して、アミン変性オリゴマーと、所定量の単官能モノマーとを含む各実施例(表1)では、各評価項目のいずれにおいても十分な評価が得られた。
【0105】
表1の実施例1~5、実施例6、実施例7、実施例8との対比からわかるように、顔料として白色顔料又は透明体質顔料を含んでいる場合も、あるいは顔料を含まない場合も、各評価項目のいずれにおいても十分な評価が得られた。
【0106】
表1の実施例1と実施例2との対比からわかるように、TMOの含有量は調整可能であり、また、他の光重合開始剤と組み合わせることで、各評価項目のいずれにおいても十分な評価が得られる。
【0107】
表1の実施例1と実施例3及び4との対比からわかるように、アミン変性オリゴマーの含有量は、例えば多官能モノマーとのバランスで調整可能であることがわかる。
【0108】
表1の実施例1と実施例5との対比からわかるように、単官能モノマー(特に、窒素含有モノマー)の含有量は調整可能であることがわかる。
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
表4の比較例7及び8に示されるように、光重合開始剤としてTPOを含むインク組成物は、その硬化塗膜の耐溶剤性が十分ではなかった。また、表4の比較例9及び10に示されるように、光重合開始剤としてTPOL、又はTPOLとBAPOとの組み合わせ、を含むインク組成物は、その硬化塗膜の耐溶剤性が十分ではなく、硬化塗膜のLED硬化性や鉛筆硬度も十分ではなかった。また、インク組成物の粘度安定性も悪化した。これに対して、光重合開始剤としてTMOを含有する各実施例9~17(表3)では、各評価項目のいずれにおいても実用的に十分な評価が得られた。
【0112】
表4の比較例11に示されるように、黒色顔料を含むときに、増感剤を含まないインク組成物は、LED硬化性及びその硬化塗膜の硬度が低下した。
【0113】
表4の比較例12に示されるように、アミン変性オリゴマーを含有しないインク組成物は、他のオリゴマーを含むにも係わらず、LED硬化性が低下した。また、表4の比較例13に示されるように、単官能モノマーの含有量が少ない(インク組成物に対して3質量%である)インク組成物は、光重合開始剤が十分に相溶せず、その硬化塗膜のLED硬化性が十分ではなかった。また、比較例13では、硬化塗膜の折り曲げ性も低下した。これに対して、アミン変性オリゴマーと、所定量の単官能モノマーとを含む各実施例9~17(表3)では、各評価項目のいずれにおいても実用的に十分な評価が得られた。
【0114】
表3の実施例9~14、実施例15、実施例16、実施例17との対比からわかるように、顔料として黒色顔料を含んでいる場合も、各種カラー着色顔料を含んでいる場合も、各評価項目のいずれにおいても十分な評価が得られた。
【0115】
表3の実施例9と実施例10との対比からわかるように、TMOの含有量は調整可能であり、また、他の光重合開始剤と組み合わせたり、増感剤を適切に選択したりすることで、各評価項目のいずれにおいても十分な評価が得られる。
【0116】
表3の実施例9と、実施例11及び12との対比からわかるように、アミン変性オリゴマーの含有量は、例えば多官能モノマーとのバランスで調整可能であることがわかる。また、表3の実施例9と実施例13との対比からわかるように、単官能モノマー(特に、窒素含有単官能モノマー)の含有量も、例えば多官能モノマーとのバランスで調整可能であることがわかる。更に、表3の実施例9と実施例14との対比からわかるように、増感剤の含有量もある程度調整可能である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、光重合開始剤として生物毒性の低いTMOを含むため、生物学的安全性の高いインク組成物として利用できる。更には、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物としてのインク特性や硬化塗膜の物性に優れ、とりわけ耐溶剤性に優れるため、これまでの活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物の各種用途に適用でき、新たな用途に適用されることが期待される。
【要約】
【課題】(2,4,6-トリメチル ベンゾイル)ビス(p-トリル)ホスフィン オキシドを光重合開始剤として含む、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物において、その硬化性を十分に高め、好ましくは、硬化物の耐溶剤性を改善すること。
【解決手段】室温での粘度が5cps以上80cps以下である、活性エネルギー線硬化型のインクジェット印刷用インク組成物であって:前記インク組成物に対して10質量%以上の単官能モノマーと、前記インク組成物に対して1~15質量%のアミン変性オリゴマーと、(2,4,6-トリメチル ベンゾイル)ビス(p-トリル)ホスフィン オキシドと、を含み、黒色顔料を更に含む場合には増感剤を含有する、インク組成物。
【選択図】なし