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特許7600468無停電電源システムおよび無停電電源装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】無停電電源システムおよび無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
H02J9/06 120
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024518403
(86)(22)【出願日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2023042514
【審査請求日】2024-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂田 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】森 大輝
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-278755(JP,A)
【文献】特開2016-059247(JP,A)
【文献】特開2007-306758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に対して並列接続される複数の無停電電源装置を備えた無停電電源システムであって、
前記複数の無停電電源装置の各々は、
少なくとも1つの電力変換器と、
複数のプロセッサと、
前記複数のプロセッサがアクセス可能に構成されるメモリと、
前記複数のプロセッサから前記メモリへのアクセスを制御するメモリアクセスコントローラとを備え、
前記複数のプロセッサは、
前記メモリから読み出した情報に基づいて前記少なくとも1つの電力変換器を制御し、前記少なくとも1つの電力変換器の制御情報を前記メモリに書き込む第1のプロセッサと、
前記少なくとも1つの電力変換器に入出力される電流および電圧を計測し、計測情報を前記メモリに書き込む第2のプロセッサと、
他の無停電電源装置および外部装置と情報を遣り取りし、受信情報を前記メモリに書き込む第3のプロセッサと、
前記メモリに蓄積された情報から複数のトレースデータをそれぞれ生成する複数の第4のプロセッサとを含み、
前記複数の第4のプロセッサの各々には、対応するトレースデータを生成するためのトレース条件が予め設定されており、前記複数の第4のプロセッサの各々は、対応する前記トレース条件に従って生成された前記トレースデータを外部記憶装置に保存する、無停電電源システム。
【請求項2】
ユーザ入力を受け付けるための入力装置をさらに備え、
前記複数のプロセッサは、
前記入力装置に対するユーザ入力に従って、前記複数の第4のプロセッサにそれぞれ対応する複数の前記トレース条件を設定し、設定情報を前記メモリに書き込む第5のプロセッサをさらに含み、
前記複数の第4のプロセッサの各々は、前記メモリに書き込まれた前記設定情報に基づいて、前記トレースデータを生成する、請求項1に記載の無停電電源システム。
【請求項3】
前記トレース条件は、記録対象となる情報の種類、記録を開始するためのトリガ、記録時間、およびサンプリング周波数を含む、請求項1または2に記載の無停電電源システム。
【請求項4】
各種情報を表示するディスプレイをさらに備え、
前記複数のプロセッサは、
前記メモリに蓄積された前記計測情報の時系列データ、および各前記第4のプロセッサにより生成された前記トレースデータを前記ディスプレイに表示する第6のプロセッサをさらに含む、請求項1または2に記載の無停電電源システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの電力変換器は、
交流電源と直流ラインとの間に接続される第1の電力変換器と、
前記直流ラインと前記負荷との間に接続される第2の電力変換器と、
電力貯蔵装置と前記直流ラインとの間に接続される第3の電力変換器とを含み、
前記複数の無停電電源装置の各々は、前記交流電源と前記負荷との間に接続されるバイパススイッチをさらに備え、
前記第1のプロセッサは、前記第3の電力変換器が故障した場合に前記バイパススイッチをオンするとともに、前記バイパススイッチのオンオフ情報を前記メモリに書き込む、請求項1に記載の無停電電源システム。
【請求項6】
前記トレース条件は、記録対象となる情報の種類、記録を開始するためのトリガ、記録時間、およびサンプリング周波数を含み、
前記トリガは、前記無停電電源装置の故障、前記無停電電源装置の給電モードの切換、および前記交流電源の停電のいずれかを含む、請求項5に記載の無停電電源システム。
【請求項7】
少なくとも1つの電力変換器と、
複数のプロセッサと、
前記複数のプロセッサがアクセス可能に構成されるメモリと、
前記複数のプロセッサから前記メモリへのアクセスを制御するメモリアクセスコントローラとを備え、
前記複数のプロセッサは、
前記メモリから読み出した情報に基づいて前記少なくとも1つの電力変換器を制御し、前記少なくとも1つの電力変換器の制御情報を前記メモリに書き込む第1のプロセッサと、
前記少なくとも1つの電力変換器に入出力される電流および電圧を計測し、計測情報を前記メモリに書き込む第2のプロセッサと、
外部装置と情報を遣り取りし、受信情報を前記メモリに書き込む第3のプロセッサと、
前記メモリに蓄積された情報から複数のトレースデータをそれぞれ生成する複数の第4のプロセッサとを含み、
前記複数の第4のプロセッサの各々には、対応するトレースデータを生成するためのトレース条件が予め設定されており、前記複数の第4のプロセッサの各々は、対応する前記トレース条件に従って生成された前記トレースデータを外部記憶装置に保存する、無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無停電電源システムおよび無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2009-278755号公報(特許文献1)には、状態変化があったときのトレースデータを記憶する機能を有する無停電電源装置が開示される。この無停電電源装置は、商用交流電源からの交流電力を直流電力に変換するコンバータと、コンバータまたは蓄電池からの直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータと、装置を運転制御するための制御回路と、装置の各部の波形を記憶する波形記憶回路とを備える。
【0003】
制御回路は、コンバータの入力電流および入力電圧、蓄電池の入力電圧および入力電流、ならびにインバータの出力電流および出力電圧を検出する複数の検出器の出力信号に基づいて、コンバータおよびインバータを制御する。
【0004】
波形記憶回路は、上記複数の検出器の出力信号を状態監視用の信号に変換し、変換した信号をトレースデータとして外部記憶回路に記憶させる。このとき、波形記憶回路は、制御回路から与えられるトリガ信号に応じて、トリガ信号の所定時間前から所定時間後までのトレースデータを外部記憶回路に記憶させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-278755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、データセンター市場の拡大に伴い、無停電電源装置が大容量化するとともに、無停電電源装置を含む電源システムが複雑化している。無停電電源装置の大容量化を実現するために、1台の無停電電源装置に複数の電力変換モジュールの並列回路を実装する構成や、複数の無停電電源装置を並列に接続する構成が採用されている。また、無停電電源装置を上位または下位の電源設備と連携させる構成も採用されている。
【0007】
これらの構成では、給電に関する情報の種類および数が格段に増えるため、従来のトレース技術では、給電に関する解析を行うために必要となるトレースデータを漏れなく記憶できない事態が生じてしまう。また、複数の検出器の出力信号などの各種情報を直接的に波形記憶回路に入力する従来技術では、全ての情報を波形記憶回路に取り込むために膨大な数の配線が必要となる。
【0008】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、給電に関する情報量の増加に容易に対応することができる無停電電源システムおよび無停電電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に従う無停電電源システムは、負荷に対して並列接続される複数の無停電電源装置を備える。複数の無停電電源装置の各々は、少なくとも1つの電力変換器と、複数のプロセッサと、複数のプロセッサがアクセス可能に構成されるメモリと、複数のプロセッサからメモリへのアクセスを制御するメモリアクセスコントローラとを備える。複数のプロセッサは、第1から第3のプロセッサと、複数の第4のプロセッサとを含む。第1のプロセッサは、メモリから読み出した情報に基づいて少なくとも1つの電力変換器を制御し、少なくとも1つの電力変換器の制御情報をメモリに書き込む。第2のプロセッサは、少なくとも1つの電力変換器に入出力される電流および電圧を計測し、計測情報をメモリに書き込む。第3のプロセッサは、他の無停電電源装置および外部装置と情報を遣り取りし、受信情報をメモリに書き込む。複数の第4のプロセッサは、メモリに蓄積された情報から複数のトレースデータをそれぞれ生成する。複数の第4のプロセッサの各々には、対応するトレースデータを生成するためのトレース条件が予め設定されている。複数の第4のプロセッサの各々は、対応するトレース条件に従って生成されたトレースデータを外部記憶装置に保存する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、給電に関する情報量の増加に容易に対応することができる無停電電源システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態に従う無停電電源システムの構成を示すブロック図である。
図2】UPSUの構成を示す回路ブロック図である。
図3】複数の状態記録回路の動作を説明する図である。
図4】トレース条件に含まれるトリガの一例を示す図である。
図5】トレース条件の推奨例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
図1は、本開示の実施の形態に従う無停電電源システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、無停電電源システム100は、N台の無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)U1~UNと、N組のスイッチS1~S3と、通信線L0と、タッチパネルディスプレイ74と、外部記憶装置75とを備える。Nは2以上の整数である。
【0014】
UPSU1~UNの各々は、入力端子T1、バイパス入力端子T2、バッテリ端子T3、出力端子T4、および通信端子T5~T7を含む。以下の説明では、UPSU1~UNを包括的に「UPSU」と称する場合がある。N組のスイッチS1~S3は、N台のUPSU1~UNにそれぞれ対応して設けられている。
【0015】
各UPSUの入力端子T1は、対応する組のスイッチS1を介して商用交流電源71に接続される。商用交流電源71は、商用周波数の交流電力を無停電電源システム100に供給する。
【0016】
各UPSUのバイパス入力端子T2は、対応する組のスイッチS2を介してバイパス交流電源72に接続される。バイパス交流電源72は、商用周波数の交流電力を無停電電源システム100に供給する。バイパス交流電源72は、商用交流電源71と同じものであっても構わないし、自家用発電機であっても構わない。
【0017】
UPSU1~UNのバッテリ端子T3は、バッテリB1~BNにそれぞれ接続される。バッテリB1~BNは、直流電力を蓄える。バッテリB1~BNの各々の代わりにコンデンサが接続されていても構わない。以下の説明では、バッテリB1~BNを包括的に「バッテリB」と称する場合がある。
【0018】
各UPSUの出力端子T4は、対応する組のスイッチS3を介して負荷73に接続される。負荷73は、無停電電源システム100から供給される交流電力によって駆動される。
【0019】
スイッチS1~S3は、対応するUPSUを使用する場合にオンされ、対応するUPSUを他のUPSUから電気的に切り離す場合にオフされる。例えばUPSU1が故障した場合には、それに対応するスイッチS1~S3をオフさせて他のUPSU2~UNから電気的に切り離す。
【0020】
各UPSUの通信端子T6は、外部記憶装置75に接続される。外部記憶装置75は、UPSUから物理的に取り出して外部ツールによって読み出すことが可能な記憶媒体である。外部記憶装置75は、例えば、USBメモリ、SDメモリカードなどである。外部記憶装置75は、主に状態監視用のトレースデータを記憶するために用いられる。
【0021】
各UPSUの通信端子T7は、タッチパネルディスプレイ74に接続される。タッチパネルディスプレイ74は、例えば、UPSU1~UNを収容する矩形状の盤筐体の前面に設置されている。タッチパネルディスプレイ74は、無停電電源システム100のユーザによる入力操作を受け付ける入力装置と、種々の情報を表示するディスプレイとを含む。ユーザがタッチパネルディスプレイ74を操作することにより、無停電電源システム100の電源をオンおよびオフすること、および無停電電源システム100の給電モードを設定することが可能となっている。また、ユーザがタッチパネルディスプレイ74を操作することにより、種々の情報を設定することが可能となっている。種々の情報には、複数の状態記録回路10の各々がトレースデータを生成するためのトレース条件が含まれる。
【0022】
各UPSUの通信端子T5は、通信線L0を介して他のUPSUの通信端子T5に接続される。各UPSUは、通信線L0を介して他のUPSUと各種情報を遣り取りする。その情報に基づいて、N台のUPSU1~UNのうちの負荷73を運転するために必要なM台のUPSUが選択される。Mは、1以上N以下の整数である。
【0023】
選択されたUPSUは、負荷73に電力を供給する運転動作を実行する。運転動作時において、UPSUは、商用交流電源71から正常に交流電力が供給されている場合(商用交流電源71の健全時)には、商用交流電源71からの交流電力を一旦、直流電力に変換し、その直流電力を交流電力に変換して負荷73に供給するとともにバッテリBに蓄える。
【0024】
また、運転動作時においてUPSUは、商用交流電源71から正常に交流電力が供給されていない場合(商用交流電源71の停電時)には、バッテリBの直流電力を交流電力に変換して負荷73に供給する。したがって、バッテリBに直流電力が蓄えられている期間は、停電時においても負荷73の運転を継続することができる。負荷73を運転するために選択されなかったUPSUは、負荷73に電力を供給せずに待機する待機動作を実行する。
【0025】
また、運転動作時においてUPSUは、UPSUのうちの所定部分が故障しているか否かを診断する診断動作を実行する。UPSUは、診断動作を実行した結果、当該UPSUの所定部分が故障していると診断した場合には、その旨を示す情報を、通信端子T6を介してタッチパネルディスプレイ74に出力する。無停電電源システム100のユーザは、故障しているUPSUに対応しているスイッチS1~S3をオフさせて、負荷73を駆動させながら、故障しているUPSUを修理する、または新品のUPSと交換する。
【0026】
図2は、UPSUの構成を示す回路ブロック図である。図2に示すように、UPSUは、スイッチSW1~SW3、電流検出器CD1~CD6、コンデンサC1,C2,3、リアクトルL1,L2、コンバータ1、直流ライン2、双方向チョッパ4、インバータ5、および半導体スイッチ6を含む。
【0027】
スイッチSW1およびリアクトルL1は、入力端子T1とコンバータ1の交流ノードとの間に直列接続される。スイッチSW1は、制御回路7によって制御される。商用交流電源71の健全時には、スイッチSW1はオンされる。商用交流電源71の停電時には、スイッチSW1はオフされる。電流検出器CD1は、商用交流電源71とコンバータ1との間に流れる電流IR(コンバータ電流)を検出し、その検出値を示す信号を計測回路8に出力する。入力端子T1に現れる交流電圧VR(コンバータ入力電圧)の瞬時値は、計測回路8によって検出される。
【0028】
コンデンサC1は、スイッチSW1とリアクトルL1との間のノードに接続される。コンデンサC1およびリアクトルL1は、交流フィルタF1を構成する。交流フィルタF1は、低域通過フィルタであり、商用交流電源71からコンバータ1に商用周波数の交流電力を通過させ、コンバータ1で発生するスイッチング周波数の信号が商用交流電源71に通過することを防止する。
【0029】
コンバータ1は、複数の半導体スイッチング素子および複数のダイオードを含む周知のものであり、制御回路7によって制御される。商用交流電源71の健全時には、コンバータ1は、交流電力を直流電力に変換して直流ライン2に出力する。コンバータ1の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。コンバータ1は「第1の電力変換器」の一実施例に対応する。
【0030】
商用交流電源71の停電時には、コンバータ1の運転は停止される。コンデンサ3は、直流ライン2に接続され、直流ライン2の電圧を平滑化させる。直流ライン2に現れる直流電圧VDの瞬時値は、計測回路8によって検出される。
【0031】
制御回路7は、商用交流電源71の健全時には、直流ライン2の直流電圧VDが参照直流電圧VDRになるようにコンバータ1を制御する。
【0032】
直流ライン2は、双方向チョッパ4の高電圧側ノードに接続され、双方向チョッパ4の低電圧側ノードはスイッチSW2を介してバッテリ端子T3に接続される。スイッチSW2は、制御回路7によって制御される。スイッチSW2は、UPSUの使用時はオンされ、例えばUPSUおよびバッテリBのメンテナンス時にオフされる。
【0033】
双方向チョッパ4は、複数の半導体スイッチング素子および複数のダイオードを含む周知のものであり、制御回路7によって制御される。商用交流電源71の健全時には、双方向チョッパ4は、コンバータ1によって生成される直流電力をバッテリBに蓄える。商用交流電源71の停電時には、双方向チョッパ4は、バッテリBの直流電力を、直流ライン2を介してインバータ5に供給する。双方向チョッパ4は「第3の電力変換器」の一実施例に対応する。
【0034】
電流検出器CD4は、双方向チョッパ4とバッテリBとの間に流れる電流IB(バッテリ電流)を検出し、その検出値を示す信号を計測回路8に出力する。バッテリ端子T3に現れるバッテリBの端子間電圧(バッテリ電圧)VBの瞬時値は、計測回路8によって検出される。
【0035】
制御回路7は、商用交流電源71の健全時には、バッテリ電圧VBが参照直流電圧VBRになるように双方向チョッパ4を制御し、商用交流電源71の停電時には、直流ライン2の直流電圧VDが参照直流電圧VDRになるように双方向チョッパ4を制御する。直流ライン2は、インバータ5の直流ノードに接続されている。
【0036】
インバータ5は、複数の半導体スイッチング素子および複数のダイオードを有する周知のものであり、制御回路7によって制御される。インバータ5は、コンバータ1または双方向チョッパ4から直流ライン2を介して供給される直流電力を交流電力に変換して出力ノードに出力する。
【0037】
すなわちインバータ5は、商用交流電源71の健全時には、コンバータ1から直流ライン2を介して供給される直流電力を交流電力に変換し、商用交流電源71の停電時には、バッテリBから双方向チョッパ4を介して供給される直流電力を交流電力に変換する。インバータ5の出力電圧は所望の値に制御可能になっている。インバータ5は「第2の電力変換器」の一実施例に対応する。
【0038】
インバータ5の出力ノードはリアクトルL2を介してスイッチSW3の第1端子に接続され、スイッチSW3の第2端子は出力端子T4に接続される。コンデンサC2は、リアクトルL2とスイッチSW3との間のノードに接続される。コンデンサC2およびリアクトルL2は、交流フィルタF2を構成する。交流フィルタF2は、低域通過フィルタであり、インバータ5で生成された商用周波数の交流電力を出力端子T4に通過させ、インバータ5で発生するスイッチング周波数の信号が出力端子T4に通過することを防止する。
【0039】
スイッチSW3は、制御回路7によって制御され、インバータ5によって生成された交流電力を負荷73に供給するインバータ給電モード時にはオンされ、バイパス交流電源72からの交流電力を負荷73に供給するバイパス給電モード時にはオフされる。
【0040】
リアクトルL2とスイッチSW3との間のノードに現れる交流電圧VA(インバータ電圧)の瞬時値は計測回路8によって検出される。電流検出器CD2は、インバータ5から出力される電流IA(インバータ電流)を検出し、その検出値を示す信号を計測回路8に与える。電流検出器CD3は、交流フィルタF2と出力端子T4との間に流れる電流IAを検出し、その検出値を示す信号を計測回路8に与える。出力端子T4に現れる交流電圧VL(負荷電圧)の瞬時値は計測回路8によって検出される。制御回路7は、交流電圧VLが正弦波状の参照交流電圧VLRになるようにインバータ5を制御する。
【0041】
半導体スイッチ6は、互いに逆並列に接続された一対のサイリスタを含み、バイパス入力端子T2と出力端子T4との間に接続される。半導体スイッチ6は、制御回路7によって制御され、インバータ給電モード時にはオフされ、バイパス給電モード時にはオンされる。また、半導体スイッチ6は、インバータ5が故障した場合にオンし、バイパス交流電源72からの交流電力を負荷73に供給する。バイパス入力端子T2に現れる交流電圧VS(バイパス入力電圧)の瞬時値は計測回路8によって検出される。電流検出器CD5は、バイパス入力端子T2と半導体スイッチ6との間に流れる電流IS(バイパス電流)を検出し、その検出値を示す信号を計測回路8に与える。電流検出器CD6は、半導体スイッチ6またはインバータ5と出力端子T4との間に流れる電流IL(UPS出力電流)を検出し、その検出値を示す信号を計測回路8に与える。
【0042】
UPSUは、制御回路7、計測回路8、通信回路9、複数の状態記録回路10、設定回路11、表示回路12、メモリアクセスコントローラ13、およびシステム情報収集メモリ15をさらに含む。
【0043】
本実施の形態では、制御回路7、計測回路8、通信回路9、複数の状態記録回路10、設定回路11、表示回路12、およびメモリアクセスコントローラ13は、複数のCPU(Central Processing Unit)および/または、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの回路を用いて構成される。ある局面では、制御回路7、計測回路8、通信回路9、複数の状態記録回路10、設定回路11、表示回路12、およびメモリアクセスコントローラ13は、互いに独立した複数のCPUを用いて構成される。別の局面では、制御回路7、計測回路8、通信回路9、複数の状態記録回路10、設定回路11、表示回路12、およびメモリアクセスコントローラ13のうちの少なくとも一部は、少なくとも1つのFPGAを用いて構成される。
【0044】
システム情報収集メモリ15は、制御回路7、計測回路8、通信回路9、複数の状態記録回路10、設定回路11、および表示回路12を構成する複数のCPUおよび/またはFPGAがアクセス可能に構成される。システム情報収集メモリ15は、制御回路7、計測回路8、通信回路9、複数の状態記録回路10、設定回路11、および表示回路12の各々によって使用される情報および信号を収集して、一括して保存するためのメモリである。メモリアクセスコントローラ13は、制御回路7、計測回路8、通信回路9、複数の状態記録回路10、設定回路11、および表示回路12からシステム情報収集メモリ15へのアクセスを制御するように構成される。
【0045】
具体的には、計測回路8は、交流電圧VR,VS,VA,VLの瞬時値、直流電圧VDの瞬時値、およびバッテリ電圧VBの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号をメモリアクセスコントローラ13に与える。また、計測回路8は、電流検出器CD1~CD6の出力信号をメモリアクセスコントローラ13に与える。交流電圧VR,VS,VA,VLの瞬時値、直流電圧VDの瞬時値、バッテリ電圧VBの瞬時値、および電流検出器CD1~CD6の出力信号は、「計測情報」の一実施例に対応する。メモリアクセスコントローラ13は、計測回路8からの計測情報をシステム情報収集メモリ15に格納する。計測回路8は「第2のプロセッサ」の一実施例に対応する。
【0046】
通信回路9は、通信端子T5および通信線L0を介して、他のUPSU2~UNとの間で種々の信号を遣り取りする。また、通信回路9は、通信端子T5を介して外部装置との間で種々の信号を遣り取りする。外部装置には、N組のスイッチS1~S3を含む周辺盤、バッテリB1~BNを含む蓄電池盤、および上位または下位の電源設備などが含まれる。通信回路9は、他のUPSU2~UNおよび外部装置からの受信情報をメモリアクセスコントローラ13に与える。メモリアクセスコントローラ13は、通信回路9の受信情報をシステム情報収集メモリ15に格納する。また、通信回路9は、メモリアクセスコントローラ13から与えられる種々の情報を通信端子T5および通信線L0を介して他のUPSU2~UNへ送信するとともに、通信端子T5を介して外部装置へ送信する。通信回路9は「第3のプロセッサ」の一実施例に対応する。
【0047】
設定回路11は、無停電電源システム100のユーザがタッチパネルディスプレイ74を操作することによって設定した情報を受け付ける。設定回路11は、設定情報をメモリアクセスコントローラ13に与える。メモリアクセスコントローラ13は、設定回路11からの設定情報をシステム情報収集メモリ15に格納する。設定回路11は「第5のプロセッサ」の一実施例に対応する。
【0048】
制御回路7は、メモリアクセスコントローラ13を介してシステム情報収集メモリ15にアクセスすることにより、UPSUの制御に必要な情報をシステム情報収集メモリ15から読み出す。UPSUの制御に必要な情報には、計測回路8の計測情報、通信回路9の受信情報、および設定回路11からの設定情報が含まれる。
【0049】
制御回路7は、システム情報収集メモリ15から読み出した情報に基づいて、UPSU全体を制御する。具体的には、制御回路7は、計測情報、受信情報、および設定情報に基づいて、コンバータ1、双方向チョッパ4およびインバータ5を制御するとともに、スイッチSW1~SW3および半導体スイッチ6のオンオフを制御する。また、制御回路7は、UPSUの制御に関する制御情報をメモリアクセスコントローラ13に与える。制御情報には、コンバータ1、双方向チョッパ4およびインバータ5の各々を制御するための制御信号、およびスイッチSW1~SW3および半導体スイッチ6に対するオンオフ指令が含まれる。メモリアクセスコントローラ13は、制御回路7からの制御情報をシステム情報収集メモリ15に格納する。
【0050】
また、制御回路7は、システム情報収集メモリ15から読み出した情報に基づいて、インバータ5を含む所定部分が故障しているか否かを判定し、所定部分が故障している場合に故障検出信号をメモリアクセスコントローラ13に与える。メモリアクセスコントローラ13は、制御回路7からの故障検出信号をシステム情報収集メモリ15に格納する。制御回路7は「第1のプロセッサ」の一実施例に対応する。
【0051】
このようにしてシステム情報収集メモリ15には、制御回路7の制御情報、故障検出信号、計測回路8の計測情報、通信回路9の受信情報、および設定回路11の設定情報が一括して保存される。これらの情報は、システム情報収集メモリ15内の予め指定されたアドレスに予め指定されたデータサイズで書き込まれる。制御回路7は、システム情報収集メモリ15に書き込まれた情報を、メモリアクセスコントローラ13を介して参照しながら、UPSU全体を制御するとともに、制御情報をメモリアクセスコントローラ13を介してシステム情報収集メモリ15に保存する。
【0052】
システム情報収集メモリ15に保存される制御情報は、制御回路7の制御周期に従って常時更新される。また、計測情報は、計測回路8の計測周期に従って常時更新される。複数の状態記録回路10の各々は、予め設定されたトレース条件に従って、常時更新されるシステム情報収集メモリ15内の情報からトレースデータを生成する。図3は、複数の状態記録回路10の動作を説明する図である。図中のA~Gは情報または信号を表す。
【0053】
図3に示すように、システム情報収集メモリ15には、制御回路7の制御情報、計測回路8の計測情報、通信回路9の受信情報、および設定回路11の設定情報などが保存されている。設定情報には、M台の状態記録回路10_1~10_Mにそれぞれ対応するM個のトレース条件が含まれている。Mは2以上の整数である。
【0054】
トレース条件は、各状態記録回路10がトレースデータを生成するための条件である。トレース条件には、状態記録回路10が記録する情報の種類、当該情報の記録時間、当該情報の記録を開始するためのトリガ、およびサンプリング周波数が含まれている。無停電電源システム100のユーザは、タッチパネルディスプレイ74を用いて、状態記録回路10ごとにトレース条件を設定することができる。設定されたM個のトレース条件は、設定回路11の設定情報としてシステム情報収集メモリ15に格納される。
【0055】
M個の状態記録回路10_1~10Mは、互いに独立したM個のCPUまたはFPGAを用いて構成される。各状態記録回路10を構成するCPUまたはFPGAは、対応するトレース条件に従ってシステム情報収集メモリ15から情報を読み出してトレースデータを生成する。
【0056】
例えば、状態記録回路10_1は、第1のトレース条件に設定されているサンプリング周波数に従って、第1のトレース条件に設定されている情報A,Bをシステム情報収集メモリ15から読み出し、読み出した情報A,Bをトレースデータとして記録する。状態記録回路10_1には、常時、第1のトレース条件に設定されている記録時間分のトレースデータが上書きされて記録される。そして、第1のトレース条件に設定されているトリガが発生したときには、状態記録回路10_1は、トリガが発生した時刻、またはトリガが発生してから記録時間が経過した時刻にてトレースデータの上書きを停止する。これにより状態記録回路10_1は、トリガが発生した時刻に対して記録時間前から記録時間後までのトレースデータを記録することができる。状態記録回路10_1は、生成されたトレースデータを外部記憶装置75に保存する。
【0057】
状態記録回路10_2は、第2のトレース条件に設定されているサンプリング周波数に従って、第2のトレース条件に設定されている情報B,D,FPGAをシステム情報収集メモリ15から読み出し、読み出した情報B,D,Fをトレースデータとして記録する。状態記録回路10_Mには、常時、第2のトレース条件に設定されている記録時間分のトレースデータが上書きされて記録される。そして、第2のトレース条件に設定されているトリガが発生したときには、状態記録回路10_2は、トリガが発生した時刻、またはトリガが発生してから記録時間が経過した時刻にてトレースデータの上書きを停止する。これにより状態記録回路10_2は、トリガが発生した時刻に対して記録時間前から記録時間後までのトレースデータを記録することができる。状態記録回路10_2は、生成されたトレースデータを外部記憶装置75に保存する。状態記録回路10は「第4のプロセッサ」の一実施例に対応する。
【0058】
図4は、トレース条件に含まれるトリガの一例を示す図である。図4には、複数種類のトリガが示されている。各トリガには名称および設定番号が付されている。
【0059】
例えば、設定番号1のトリガである「重故障」は、対応するUPSUに重故障が発生したときのトレースデータを記録するためのトリガである。設定番号2のトリガである「軽故障」は、対応するUPSUに軽故障が発生したときにトレースデータを記録するためのトリガである。なお、重故障とはUPSUの運転を継続できない程度の故障であり、軽故障とはしばらく修理しなくてもUPSUの運転を継続することができる程度の故障である。
【0060】
設定番号3のトリガである「停電」は、商用交流電源71の停電が発生したときのトレースデータを記録するためのトリガである。設定番号4のトリガである「切換」は、インバータ給電モード中のUPSUがバイパス給電モードへ切り換えられたときのトレースデータを記録するためのトリガである。設定番号5のトリガである「切戻」は、バイパス給電モード中のUPSUがインバータ給電モードに戻されたときのトレースデータを記録するためのトリガである。
【0061】
設定番号6のトリガである「出力監視」は、対応するUPSUの出力端子T4に現れる交流電圧VLが変動したときのトレースデータを記録するためのトリガである。設定番号7のトリガである「放電開始」は、対応するUPSUに接続されるバッテリBの放電が開始したときのトレースデータを記録するためのトリガである。設定番号8のトリガである「放電終止」は、対応するUPSUに接続されるバッテリBの放電が終了したときのトレースデータを記録するためのトリガである。
【0062】
設定番号9のトリガである「手動」は、無停電電源システム100のユーザが手動で設定したトリガである。設定番号10のトリガである「検証」は、システム情報収集メモリ15に保存される複数の信号の論理和または論理積に応じてトレースデータを記録するためのトリガである。
【0063】
無停電電源システム100のユーザは、タッチパネルディスプレイ74に設定番号を入力することにより、所望のトリガを設定することができる。ただし、各状態記録回路10は記憶可能なデータ容量が決まっているため、図4に示した複数のトリガにそれぞれ対応して、トレースデータとして記録する情報の種類、記録時間およびサンプリング周波数に関する推奨例を用意しておくことができる。
【0064】
図5は、トレース条件の推奨例を示す図である。図5には、5個のトレース条件が例示されている。5個のトレース条件は5種類のトリガにそれぞれ対応している。各トレース条件は、トリガの名称と、記録する情報の種類、サンプリング周波数、および記録時間の各々の推奨例とを含んでいる。
【0065】
例えば、第1のトレース条件は、「重故障」のトリガに対応するトレース条件の推奨例である。第2のトレース条件は、「軽故障」のトリガに対応するトレース条件の推奨例である。第3のトレース条件は、「切換」のトリガに対応するトレース条件の推奨例である。第4のトレース条件は、「切戻」のトリガに対応するトレース条件の推奨例である。第5のトレース条件は、「検証」のトリガに対応するトレース条件の推奨例である。
【0066】
図5に示す推奨例では、トリガの種類に応じて、記録する情報の種類、記録時間、およびサンプリング周波数が異なっている。記録する情報には、計測回路8の計測情報が含まれる。具体的には、5個のトレース条件のうち「重故障」に対応する第1のトレース条件は、計測情報に含まれる複数の電流および電圧の瞬時値を記録対象としている。サンプリング周波数は6[kHz]であり、記録時間は0.2[sec]である。これによると、状態記録回路10は、重故障が発生した時刻の0.2[sec]前から0.2[sec]後までの複数の電流および電圧の瞬時値のトレースデータを外部記憶装置75に保存することができる。
【0067】
「軽故障」に対応する第2のトレース条件は、記録対象が第1のトレース条件と同じである一方で、サンプリング周波数が第1のトレース条件よりも低いために記録時間が第1のトレース条件よりも長くなっている。これによると、軽故障が発生した場合には、重故障が発生した場合と比べて、サンプリング間隔が粗くなるものの、故障が発生した時刻前後のより長い時間(0.4[sec])の複数の電流および電圧の瞬時値のトレースデータを外部記憶装置75に保存することができる。
【0068】
「出力監視」に対応する第4のトレース条件は、サンプリング周波数が第1のトレース条件よりも高いため、記録時間が第1のトレース条件よりも短くなっている。これによると、出力電圧の変動が生じた瞬間における電流および電圧の瞬時値の急峻な変化を細かくサンプリングしたトレースデータを外部記憶装置75に保存することができる。
【0069】
図5に示す推奨例は、タッチパネルディスプレイ74を通じて無停電電源システム100のユーザに提示される。無停電電源システム100のユーザは、提示された推奨例を参照しながら各状態記録回路10におけるトレース条件を設定することができる。
【0070】
図3に戻って、状態記録回路10_1~10_Mの各々は、システム情報収集メモリ15に保存されている多数の情報の中から、対応するトレース条件に設定されている情報を抽出して記録することによりトレースデータを生成する。システム情報収集メモリ15には制御情報、計測情報、受信情報、および設定情報が一括して保存されていることから、状態記録回路10を複数設けることによって、様々な情報のトレースデータを並行して生成することができる。例えば、図4および図5に示した例によれば、重故障の発生時、軽故障の発生時、給電モードの切換え時、および停電の発生時などの異なるタイミングにて異なる情報のトレースデータを生成することが可能となる。
【0071】
図2に戻って、表示回路12は、タッチパネルディスプレイ74とメモリアクセスコントローラ13との間に配置されている。タッチパネルディスプレイ74は、システム情報収集メモリ15のアドレスを指定するユーザ入力を受け付け、受け付けたアドレスの情報を表示回路12に出力する。表示回路12は、メモリアクセスコントローラ13を介してシステム情報収集メモリ15にアクセスすることにより、指定されたアドレスに保存されている情報をシステム情報収集メモリ15から読み出す。表示回路12は、読み出した情報をタッチパネルディスプレイ74に与えることにより、当該情報をタッチパネルディスプレイ74に表示させる。これによると、計測情報に含まれている各種の電流または電圧の瞬時値をシステム情報収集メモリ15から読み出してタッチパネルディスプレイ74に表示させることができる。また、各種の電流または電圧の瞬時値の時間変化を示す時系列データをタッチパネルディスプレイ74に表示させることができる。
【0072】
表示回路12はさらに、複数の状態記録回路10に接続されている。表示回路12は、複数の状態記録回路10により生成されたトレースデータを取得してタッチパネルディスプレイ74に転送することにより、トレースデータをタッチパネルディスプレイ74に表示させることができる。表示回路12は「第6のプロセッサ」の一実施例に対応する。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態に従う無停電電源システムは、無停電電源装置に含まれる制御回路、計測回路、通信回路、状態記録回路、設定回路、および表示回路などを互いに独立した複数のプロセッサで構成し、当該複数のプロセッサをメモリアクセスコントローラを介してシステム情報収集メモリにアクセス可能に接続するように構成されている。これにより、制御回路の制御情報、計測回路の計測情報、通信回路の受信情報、および設定回路の設定情報などを複数の回路で共有することができる。また、システム情報収集メモリへのアクセスはメモリアクセスコントローラによって実行されるため、各回路は、システム情報収集メモリから必要な情報だけを高速に読み出して使用することができる。これによると、各回路は、他の回路との間で情報の遣り取りすることが不要となるため、高速に処理することが可能となる。したがって、給電に関する情報量の増加に容易に対応することができる。
【0074】
さらに、複数の回路が並行して動作できることから、トレースデータを記録するための複数の状態記録回路を備えることができる。複数の状態記録回路も互いに独立した複数のプロセッサで構成されるため、各状態記録回路は、対応するトレース条件に従ってトレースデータを並行して記録することができる。
【0075】
また、各状態記録回路のトレース条件は、設定回路の設定情報としてシステム情報収集メモリに保存されて複数の回路間で共有される。これにより、無停電電源システムのユーザは、タッチパネルディスプレイを通じてシステム情報収集メモリにアクセスすることにより、設定情報を参照しながら各状態記録回路のトレース条件を適宜変更することができる。
【0076】
なお、上述した実施の形態では、負荷に対して並列接続される複数の無停電電源装置を備えた無停電電源システムについて説明したが、複数の電力変換モジュールの並列回路を備えた無停電電源装置に対しても本開示を適用することが可能である。この場合、複数の電力変換モジュールの制御情報および計測情報、複数の電力変換モジュール間で遣り取りされる情報などが一括してシステム情報収集メモリに保存される。そして、複数の状態回路の各々は、対応するトレース条件に従ってトレースデータを外部記憶装置に記憶する。
【0077】
また、上述した実施の形態では、コンバータ、インバータおよび双方向チョッパを備える無停電電源装置の構成について説明したが、本開示は、交流電源と負荷との間に接続される高速スイッチと、負荷と電力貯蔵装置との間に接続される電力変換器とを備える無停電電源装置にも適用することが可能である。
【0078】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
1 コンバータ、2 直流ライン、3,C1,C2 コンデンサ、4 双方向チョッパ、5 インバータ、6 半導体スイッチ、7 制御回路、8 計測回路、9 通信回路、10 状態記録回路、11 設定回路、12 表示回路、13 メモリアクセスコントローラ、15 システム情報収集メモリ、71 商用交流電源、72 バイパス交流電源、73 負荷、74 タッチパネルディスプレイ、75 外部記憶装置、100 無停電電源システム、B,B1~BN バッテリ、CD1~CD6 電流検出器、F1,F2 交流フィルタ、L0 通信線、L1,L2 リアクトル、S1~S3,SW1~SW3 スイッチ、T1 入力端子、T2 バイパス入力端子、T3 バッテリ端子、T4 出力端子、T5~T7 通信端子、U,U1~UN 無停電電源装置。
【要約】
無停電電源装置(U)は、少なくとも1つの電力変換器(1,4,5)と、複数のプロセッサ(7~12)と、メモリ(15)と、メモリアクセスコントローラ(13)とを備える。第1のプロセッサ(7)は、メモリ(15)から読み出した情報に基づいて少なくとも1つの電力変換器(1,4,5)を制御し、制御情報をメモリ(15)に書き込む。第2のプロセッサ(8)は、少なくとも1つの電力変換器(1,3,5)に入出力される電流および電圧を計測し、計測情報をメモリ(15)に書き込む。第3のプロセッサ(9)は、他の無停電電源装置および外部装置と情報を遣り取りし、受信情報をメモリ(15)に書き込む。複数の第4のプロセッサ(10)は、メモリ(15)に蓄積された情報から複数のトレースデータをそれぞれ生成する。複数の第4のプロセッサ(10)の各々には、対応するトレースデータを生成するためのトレース条件が予め設定されている。複数の第4のプロセッサ(10)の各々は、対応するトレース条件に従って生成されたトレースデータを外部記憶装置に保存する。
図1
図2
図3
図4
図5