(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】セパレータ一体ガスケット、及びこれを備える積層構造
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0276 20160101AFI20241209BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20241209BHJP
H01M 8/0247 20160101ALI20241209BHJP
H01M 8/0273 20160101ALN20241209BHJP
H01M 8/0284 20160101ALN20241209BHJP
H01M 8/242 20160101ALN20241209BHJP
【FI】
H01M8/0276
H01M8/0228
H01M8/0247
H01M8/0273
H01M8/0284
H01M8/242
(21)【出願番号】P 2024520310
(86)(22)【出願日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 JP2023014859
(87)【国際公開番号】W WO2023218841
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2024-10-02
(31)【優先権主張番号】P 2022077916
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】由井 元
(72)【発明者】
【氏名】佐野 陽平
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063018(JP,A)
【文献】特開2018-125258(JP,A)
【文献】特開2020-177746(JP,A)
【文献】特表2017-509123(JP,A)
【文献】特表2011-525693(JP,A)
【文献】特開2016-164854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/24
C25B 1/00
C25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜を有する膜ユニットとセパレータが交互に積層される積層構造に備えられ、前記膜ユニットに接触可能な弾性体を備えることでガスケット機能を持たせたセパレータ一体ガスケットであって、
第1のセパレータ部品と、
第1のセパレータ部品に対して重ね合わさるよう接合される第2のセパレータ部品と、
を備えると共に、
第1のセパレータ部品には、第1のセパレータ部品における平面領域内に設けられる第1の弾性体が設けられ、
第2のセパレータ部品には、主ビード部と、前記主ビード部の頂きに沿って固定される第2の弾性体とが設けられていることを特徴とするセパレータ一体ガスケット。
【請求項2】
前記平面領域の平面に垂直に見た場合に、前記主ビード部の頂きは、第1の弾性体が設けられる範囲に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のセパレータ―一体ガスケット。
【請求項3】
第1のセパレータ部品には、第1の弾性体の短手方向の両側又は片側に第1の補強用ビード部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のセパレータ一体ガスケット。
【請求項4】
第1のセパレータ部品には、副ビード部が設けられ、かつ、前記副ビード部表面に設けられた前記平面領域内に第1の弾性体が設けられていることを特徴とする請求項1
または2に記載のセパレータ一体ガスケット。
【請求項5】
第2のセパレータ部品には、第2の弾性体の短手方向の両側又は片側に、前記主ビード部の突出方向とは逆方向に突出する第2の補強用ビード部が設けられていることを特徴とする請求項1
または2に記載のセパレータ一体ガスケット。
【請求項6】
第1のセパレータ部品には、副ビード部が設けられ、かつ、前記副ビード部表面に設けられた前記平面領域内に第1の弾性体が設けられると共に、
第2の補強用ビード部は、前記副ビード部内に入り込むように配されていることを特徴とする請求項5に記載のセパレータ一体ガスケット。
【請求項7】
電解質膜を有する膜ユニットとセパレータが交互に積層される積層構造において、
前記セパレータは、前記膜ユニットに接触可能な弾性体を備えることでガスケット機能を有するセパレータ一体ガスケットであり、
前記セパレータ一体ガスケットは、
第1のセパレータ部品と、
第1のセパレータ部品に対して重ね合わさるよう接合される第2のセパレータ部品と、
を備えると共に、
第1のセパレータ部品には、第1のセパレータ部品における平面領域内に設けられる第1の弾性体が設けられ、
第2のセパレータ部品には、主ビード部と、前記主ビード部の頂きに沿って固定される第2の弾性体とが設けられており、
前記平面領域の平面に垂直に見た場合に、前記膜ユニットの一方の面側に配された前記セパレータ一体ガスケットにおける主ビード部の頂きは、前記膜ユニットの他方の面側に配された前記セパレータ一体ガスケットにおける第1の弾性体が設けられる範囲に設けられていることを特徴とする積層構造。
【請求項8】
第1のセパレータ部品には、第1の弾性体の短手方向の両側又は片側に第1の補強用ビード部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の積層構造。
【請求項9】
第1のセパレータ部品には、副ビード部が設けられ、かつ、前記副ビード部表面に設けられた前記平面領域内に第1の弾性体が設けられていることを特徴とする請求項7または8に記載の積層構造。
【請求項10】
第2のセパレータ部品には、第2の弾性体の短手方向の両側又は片側に、前記主ビード部の突出方向とは逆方向に突出する第2の補強用ビード部が設けられていることを特徴とする請求項7または8に記載の積層構造。
【請求項11】
第1のセパレータ部品には、副ビード部が設けられ、かつ、前記副ビード部表面に設けられた前記平面領域内に第1の弾性体が設けられると共に、
第2の補強用ビード部は、前記副ビード部内に入り込むように配されていることを特徴とする請求項10に記載の積層構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータ一体ガスケット、及びこれを備える積層構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池においては、燃料ガスなどの流体の漏れを抑制するために、ガスケットが設けられる。従来、組立性を高めるために、燃料電池を構成するセパレータにガスケット機能を持たせたセパレータ一体ガスケットが知られている。
図9は従来技術に係るセパレータ一体ガスケットを有する燃料電池の一部を示す模式的断面図である。
【0003】
燃料電池は、セパレータ500と、電解質膜を有する膜ユニット600とが交互に積層される構造をなしている。図示のセパレータ500は、第1のセパレータ部品510と、第1のセパレータ部品510に対して重ね合わさるよう接合される第2のセパレータ部品520とを備えている。そして、第1のセパレータ部品510には、密封領域を取り囲むように設けられるビード部511と、ビード部511の頂きに沿って固定される弾性体530とが設けられている。同様に、第2のセパレータ部品520には、密封領域を取り囲むように設けられるビード部521と、ビード部521の頂きに沿って固定される弾性体540とが設けられている。
【0004】
以上のように構成される燃料電池においては、膜ユニット600が、第1のセパレータ部品510のビード部511の頂きに固定される弾性体530と、第2のセパレータ部品520のビード部521の頂きに固定される弾性体540とにより押圧される。従って、面圧ピークが高くなるため、密封性を高くすることができる。
【0005】
ここで、
図9(a)は、セパレータ500と膜ユニット600との位置決めが精度の高い状態で積層された様子を示している。この場合には、上記の通り、高い密封性が得られる。しかしながら、
図9(b)に示すように、セパレータ500と膜ユニット600との位置決め精度が低く、これらの位置がずれた場合には、膜ユニット600が、ビード部511の頂き付近とビード部521の頂き付近とで挟み込まれない状態となってしまう。この場合には、面圧ピークが低くなってしまい、密封性が低下してしまう。
【0006】
なお、上記のようにセパレータと電解質膜を有する膜ユニットとが交互に積層される構造は、燃料電池だけでなく、水素発生装置としても利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、密封機能を安定的に発揮させることのできるセパレータ一体ガスケット、及びこれを備える積層構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0010】
すなわち、本発明のセパレータ一体ガスケットは、
電解質膜を有する膜ユニットとセパレータが交互に積層される積層構造に備えられ、前記膜ユニットに接触可能な弾性体を備えることでガスケット機能を持たせたセパレータ一体ガスケットであって、
第1のセパレータ部品と、
第1のセパレータ部品に対して重ね合わさるよう接合される第2のセパレータ部品と、
を備えると共に、
第1のセパレータ部品には、第1のセパレータ部品における平面領域内に設けられる第1の弾性体が設けられ、
第2のセパレータ部品には、主ビード部と、前記主ビード部の頂きに沿って固定される第2の弾性体とが設けられていることを特徴とする。
【0011】
前記平面領域の平面に垂直に見た場合に、前記主ビード部の頂きは、第1の弾性体が設けられる範囲に設けられているとよい。
【0012】
また、本発明の積層構造は、
電解質膜を有する膜ユニットとセパレータが交互に積層される積層構造において、
前記セパレータは、前記膜ユニットに接触可能な弾性体を備えることでガスケット機能を有するセパレータ一体ガスケットであり、
前記セパレータ一体ガスケットは、
第1のセパレータ部品と、
第1のセパレータ部品に対して重ね合わさるよう接合される第2のセパレータ部品と、
を備えると共に、
第1のセパレータ部品には、第1のセパレータ部品における平面領域内に設けられる第1の弾性体が設けられ、
第2のセパレータ部品には、主ビード部と、前記主ビード部の頂きに沿って固定される第2の弾性体とが設けられており、
前記平面領域の平面に垂直に見た場合に、前記膜ユニットの一方の面側に配された前記セパレータ一体ガスケットにおける主ビード部の頂きは、前記膜ユニットの他方の面側に配された前記セパレータ一体ガスケットにおける第1の弾性体が設けられる範囲に設けられていることを特徴とする。
【0013】
これらの発明によれば、膜ユニットは、第1のセパレータ部品の平面領域内に設けられる第1の弾性体と、第2のセパレータ部品の主ビード部の頂きに沿って固定される第2の弾性体とによって挟み込まれるようにして押圧される。そのため、第2の弾性体による面圧ピークを高くすることができる。また、第1の弾性体は第1のセパレータ部品の平面領域内に設けられているため、各部材の位置決め精度が低い場合でも、膜ユニットは、より確実に第1の弾性体と第2の弾性体に挟み込まれた状態となる。
【0014】
第1のセパレータ部品には、第1の弾性体の短手方向の両側又は片側に第1の補強用ビード部が設けられているとよい。
【0015】
このような構成を採用すれば、第1のセパレータ部品の変形を抑制することができる。
【0016】
第1のセパレータ部品には、副ビード部が設けられ、かつ、前記副ビード部表面に設けられた前記平面領域内に第1の弾性体が設けられていることも好適である。
【0017】
このような構成を採用した場合にも、第1のセパレータ部品の変形を抑制することができる。
【0018】
第2のセパレータ部品には、第2の弾性体の短手方向の両側又は片側に、前記主ビード部の突出方向とは逆方向に突出する第2の補強用ビード部が設けられているとよい。
【0019】
このような構成を採用すれば、第2のセパレータ部品の変形をより一層抑制することができる。
【0020】
第1のセパレータ部品には、副ビード部が設けられ、かつ、前記副ビード部表面に設けられた前記平面領域内に第1の弾性体が設けられると共に、
第2の補強用ビード部は、前記副ビード部内に入り込むように配されていることも好適である。
【0021】
このような構成を採用すれば、第1のセパレータ部品と第2のセパレータ部品の変形を抑制することができる。
【0022】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、密封機能を安定的に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は本発明の実施例1に係る燃料電池を構成する部材の概略図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例1に係る燃料電池の模式的断面図の一部である。
【
図3】
図3は本発明の実施例2に係るセパレータ一体ガスケットの模式的断面図の一部である。
【
図4】
図4は本発明の実施例3に係るセパレータ一体ガスケットの模式的断面図の一部である。
【
図5】
図5は本発明の実施例4に係るセパレータ一体ガスケットの模式的断面図の一部である。
【
図6】
図6は本発明の実施例5に係るセパレータ一体ガスケットの模式的断面図の一部である。
【
図7】
図7は本発明の実施例6に係るセパレータ一体ガスケットの模式的断面図の一部である。
【
図8】
図8は本発明の実施例7に係る燃料電池の模式的断面図の一部である。
【
図9】
図9は従来技術に係るセパレータ一体ガスケットを有する燃料電池の一部を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0026】
(実施例1)
図1及び
図2を参照して、本発明の実施例1に係るセパレータ一体ガスケット及び燃料電池について説明する。
図1は本発明の実施例1に係る燃料電池を構成する部材の概略図であり、同図(a)はセパレータ一体ガスケットの概略を示す平面図であり、同図(b)は膜ユニットの概略を示す平面図である。
図2は本発明の実施例1に係る燃料電池の模式的断面図の一部である。
図2中のセパレータ一体ガスケット100の模式的断面図は
図1(a)中のA1-A1断面に相当し、
図2中の膜ユニット200の模式的断面図は
図1(b)中のA2-A2断面に相当する。
【0027】
一般的に、燃料電池は、複数の単セルからなるセルスタックとして構成される。
図2においては、複数の単セルからなるセルスタックのうちの一部(単セルの一部)の模式的断面図を示している。セルスタックは、セパレータとMEA(Membrane Electrode Assembly)が交互に積層されるように構成される。そして、MEAと、その両面に設けられる一対のセパレータによって、単セルが構成される。なお、セルスタックにおいては、冷却液が流される個所において、MEAが介在されずに、セパレータ同士が隣り合うように設けられる個所も存在することがある。
【0028】
MEAは、電解質膜210と、電解質膜210の両面に備えられる一対のガス拡散層220とを備えている。本実施例においては、電解質膜210を補強する補強フィルム230が電解質膜210を囲むように設けられている。本実施例においては、これらMEAと補強フィルム230とによって、膜ユニット200を構成している。ただし、本発明における膜ユニットは、補強フィルムを有していないMEAの場合も含まれる。
【0029】
また、本実施例に係るセパレータは、膜ユニット200に接触(密着)可能な弾性体を備えることでガスケット機能を持たせており、以下、セパレータ一体ガスケット100と称する。本実施例に係る燃料電池は、セパレータ一体ガスケット100と膜ユニット200が交互に積層されるように積層構造をなしており、単セルは、膜ユニット200と、その両面に設けられる一対のセパレータ一体ガスケット100とにより構成される。
【0030】
セパレータ一体ガスケット100と膜ユニット200には、流体(燃料ガスや酸化剤ガスや冷却液など)を各単セルに供給するために、複数のマニホルド101,201が設けられている。そして、セパレータ一体ガスケット100の両面には、流体が流れる流路として用いられる凹凸111,121が形成されている。
【0031】
そして、セパレータ一体ガスケット100と膜ユニット200との間の流体が漏れるのを防ぐために、セパレータ一体ガスケット100にガスケット機能を持たせている。
【0032】
<セパレータ一体ガスケット>
セパレータ一体ガスケット100について、より詳細に説明する。セパレータ一体ガスケット100は、第1のセパレータ部品110と、第2のセパレータ部品120とから構成される。第2のセパレータ部品120は、第1のセパレータ部品110に対して重ね合わさるよう接合される。本実施例の場合、レーザー溶接により形成された接合部130により、第1のセパレータ部品110と第2のセパレータ部品120が接合されている。なお、第1のセパレータ部品110と第2のセパレータ部品120は、例えば、SUSプレートやチタンプレート等の金属製の板材を板金加工することにより得ることができる。
【0033】
上記の通り、セパレータ一体ガスケット100は、ガスケット機能を有している。燃料電池においては、マニホルド101,201を流れる各種流体(燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却液など)と、セパレータ一体ガスケット100の両面に設けられた凹凸111,121により構成される流路を流れる流体の漏れを抑制する必要がある。従って、マニホルド101,201が設けられた領域と、凹凸111,121により構成される流路が設けられた領域が密封領域となるように、これらの密封領域をそれぞれ取り囲むシール部を設ける必要がある。以下、密封構造(ガスケット機能を持たせた構造)について、詳細に説明する。
【0034】
第1のセパレータ部品110には、複数の密封領域をそれぞれ取り囲むように、かつ第1のセパレータ部品110における平面領域内に設けられる第1の弾性体140が設けられている。なお、第1の弾性体140は、平面領域内においてのみ設けられている。この点は、下記のいずれの実施例においても同様である。第2のセパレータ部品120には、複数の密封領域をそれぞれ取り囲むように設けられる主ビード部122と、主ビード部122の頂きに沿って固定される第2の弾性体150とが設けられている。本実施例においては、主ビード部122の突出高さを1mm程度に設定している。セパレータ一体ガスケット100と膜ユニット200が交互に積層されて、燃料電池が構成されると、
図2に示すように、第1の弾性体140と第2の弾性体150は、膜ユニット200に接触(密着)する。
【0035】
図1(a)に示すように、第2の弾性体150は、マニホルド101が設けられた領域と、凹凸121により構成される流路が設けられた領域を、それぞれ取り囲むように設けられる。第1の弾性体140についての平面図は特に示していないが、第1の弾性体140も同様に配される。以下、第1の弾性体140及び第2の弾性体150における密封領域を取り囲むように伸びる方向を長手方向と称し、当該方向に垂直な方向(幅方向)を短手方向と称する。
【0036】
第1の弾性体140が設けられる平面領域の平面に垂直な方向に見た場合に、主ビード部122の頂きは、第1の弾性体140が設けられる範囲に設けられている。そして、本実施例においては、同方向に見た場合に、第1の弾性体140と第2の弾性体150は、これらの長手方向の全域に亘って重なる位置に設けられている。また、同方向に見た場合に、第1の弾性体140と第2の弾性体150は、これらの短手方向の少なくとも一部が重なる位置に設けられている。本実施例においては、同方向に見た場合に、第1の弾性体140と第2の弾性体150は、これらの短手方向の略全部が重なる位置に設けている。しかしながら、第1の弾性体140と第2の弾性体150の短手方向の幅を必ずしも同一にする必要はない。なお、第1の弾性体140の短手方向の幅Hは、0.3mm以上5mm以下の範囲で設定するのが望ましい。第1の弾性体140と第2の弾性体150の材料としては、EPDM、シリコンゴム、及びフッ素ゴムなどを好適に適用することができる。
【0037】
以上のように構成されるセパレータ一体ガスケット100が、膜ユニット200の両面側にそれぞれ配されることで、膜ユニット200は第1の弾性体140及び第2の弾性体150により挟み込まれるように両面側から押圧される。本実施例においては、膜ユニット200における補強フィルム230が、第1の弾性体140及び第2の弾性体150により挟み込まれるように両面側から押圧される。ただし、特に図示はしないが、補強フィルムを有していない膜フィルムを採用する場合には、MEAにおける電解質膜が第1の弾性体140及び第2の弾性体150により挟み込まれるように両面側から押圧される。以上の構成により、第1の弾性体140の内側と第2の弾性体150の内側にそれぞれ密封領域が形成され、各種流体の漏れが抑制される。
【0038】
<本実施例に係るセパレータ一体ガスケットの優れた点>
本実施例に係るセパレータ一体ガスケット100によれば、膜ユニット200は、第1の弾性体140及び第2の弾性体150により挟み込まれるように両面側から押圧される。第2の弾性体150は、第2のセパレータ部品120の主ビード部122の頂きに沿って固定されているため、第2の弾性体150による面圧ピークを高くすることができる。従って、密封性を高めることができる。
【0039】
そして、第1の弾性体140は、第1のセパレータ部品110の平面領域内に設けられている。そのため、セパレータ一体ガスケット100と膜ユニット200とを交互に積層した際の位置決め精度が低く、位置がずれてしまっても、膜ユニット200は、より確実に第1の弾性体140と第2の弾性体150に挟み込まれた状態となる。すなわち、平面状の第1の弾性体140が設けられた範囲内の真裏側の位置において、第2の弾性体150が膜ユニット200に接していれば、その位置に拘わらず、第1の弾性体140の面圧ピークを所望の面圧ピークとすることができ、かつ、第2の弾性体150の面圧ピークについても、所望の面圧ピークにすることができる。従って、密封機能を安定的に発揮させることができる。
【0040】
なお、本実施例においては、
図2に示すように、第1のセパレータ部品110と第2のセパレータ部品120は、主ビード部122の両側の近傍において、それぞれ接合部130により接合されている。従って、密封構造付近において、第1のセパレータ部品110と第2のセパレータ部品120が接合されるため、密封機能をより一層安定させることができる。
【0041】
(実施例2)
図3には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、第1のセパレータ部品に補強用のビード部を設ける構成を採用した場合について示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0042】
図3は本発明の実施例2に係るセパレータ一体ガスケットの模式的断面図の一部であり、セパレータ一体ガスケットにおけるガスケット機能を発揮する付近の断面を拡大した図である。
【0043】
本実施例に係るセパレータ一体ガスケット100Aにおいても、第1のセパレータ部品110Aと、第2のセパレータ部品120Aとから構成される。第2のセパレータ部品120Aの構成は、実施例1における第2のセパレータ部品120と同一の構成であるので、その説明は省略する。また、第1のセパレータ部品110Aと第2のセパレータ部品120Aが、主ビード部122の両側の近傍において、それぞれ接合部130により接合される点も、実施例1と同一である。
【0044】
また、第1のセパレータ部品110Aにおける平面領域内に第1の弾性体140が設けられる点も実施例1と同一である。本実施例の場合には、第1のセパレータ部品110Aに、第1の弾性体140の短手方向の両側に第1の補強用ビード部112が設けられている点が、実施例1と異なっている。なお、第1の弾性体140と第2の弾性体150の配置関係については、実施例1で説明した通りである。
【0045】
第1の補強用ビード部112は、図中矢印P方向に見た2種類の平面図に示すように、第1の弾性体140に沿うように連続的に設けられるようにしてもよいし、断続的に設けられるようにしてもよい。図中、左側の丸内に示す第1の補強用ビード部112aは連続的に設けた場合を示し、右側の丸内に示す第1の補強用ビード部112bは断続的に設けた場合を示している。
【0046】
以上のように構成される本実施例に係るセパレータ一体ガスケット100Aにおいても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、第1の補強用ビード部112を設けたことで、第1のセパレータ部品110Aにおける第1の弾性体140が設けられた領域付近が変形し難くなる。従って、主ビード部122による押圧力が、第2の弾性体150と膜ユニット200と第1の弾性体140とを介して第1のセパレータ部品110Aに作用しても、第1のセパレータ部品110Aの変形を抑制することができる。なお、本実施例においては、第1の弾性体140の短手方向の両側に第1の補強用ビード部112が設けられる構成を示したが、第1の弾性体140の短手方向の片側にのみ第1の補強用ビード部112が設けられる構成を採用することもできる。
【0047】
(実施例3)
図4には、本発明の実施例3が示されている。本実施例においては、第1のセパレータ部品に副ビード部を設け、第2のセパレータ部品に補強用のビード部を設ける構成を採用した場合について示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0048】
図4は本発明の実施例3に係るセパレータ一体ガスケットの模式的断面図の一部であり、セパレータ一体ガスケットにおけるガスケット機能を発揮する付近の断面を拡大した図である。
【0049】
本実施例に係るセパレータ一体ガスケット100Bにおいても、第1のセパレータ部品110Bと、第2のセパレータ部品120Bとから構成される。第1のセパレータ部品110Bには、密封領域を取り囲むように設けられる副ビード部113が設けられ、かつ、副ビード部表面に設けられた平面領域内に第1の弾性体140が設けられている。また、第2のセパレータ部品120Bには、第2の弾性体150の短手方向の両側に、主ビード部122の突出方向とは逆方向に突出する第2の補強用ビード部123が設けられている。そして、第2の補強用ビード部123は、副ビード部113内に入り込むように配されている。
【0050】
第1のセパレータ部品110Bと第2のセパレータ部品120Bは、副ビード部113の両側の近傍において、それぞれ接合部130により接合されている。第1の弾性体140と第2の弾性体150の配置関係については、実施例1で説明した通りである。
【0051】
以上のように構成される本実施例に係るセパレータ一体ガスケット100Bにおいても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、主ビード部122による押圧力が、第2の弾性体150と膜ユニット200と第1の弾性体140とを介して第1のセパレータ部品110Bに作用しても、第1のセパレータ部品110Bの変形を抑制することができる。本実施例の場合には、副ビード部113により第1のセパレータ部品110Bが変形し難いだけでなく、副ビード部113が変形しようとすると、第2のセパレータ部品120Bの第2の補強用ビード部123に突き当たるため、より一層、第1のセパレータ部品110Bの変形を抑制することができる。なお、本実施例においては、第2の弾性体150の短手方向の両側に第2の補強用ビード部123が設けられる構成を示したが、第2の弾性体150の短手方向の片側にのみ第2の補強用ビード部123が設けられる構成を採用することもできる。
【0052】
(実施例4)
図5には、本発明の実施例4が示されている。本実施例においては、第1のセパレータ部品に副ビード部を設ける構成を採用した場合について示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0053】
図5は本発明の実施例4に係るセパレータ一体ガスケットの模式的断面図の一部であり、セパレータ一体ガスケットにおけるガスケット機能を発揮する付近の断面を拡大した図である。
【0054】
本実施例に係るセパレータ一体ガスケット100Cにおいても、第1のセパレータ部品110Cと、第2のセパレータ部品120Cとから構成される。第2のセパレータ部品120Cの構成は、実施例1における第2のセパレータ部品120と同一の構成であるので、その説明は省略する。また、第1のセパレータ部品110Cと第2のセパレータ部品120Cが、主ビード部122の両側の近傍において、それぞれ接合部130により接合される点も、実施例1と同一である。
【0055】
本実施例においては、第1のセパレータ部品110Cには、密封領域を取り囲むように設けられる副ビード部113が設けられ、かつ、副ビード部表面に設けられた平面領域内に第1の弾性体140が設けられている。副ビード部113は第2のセパレータ部品120Cとは反対側に突出するように構成されている。第1の弾性体140と第2の弾性体150の配置関係については、実施例1で説明した通りである。
【0056】
以上のように構成される本実施例に係るセパレータ一体ガスケット100Cにおいても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、副ビード部113を設けたことで、第1のセパレータ部品110Aにおける第1の弾性体140が設けられた領域付近が変形し難くなる。従って、主ビード部122による押圧力が、第2の弾性体150と膜ユニット200と第1の弾性体140とを介して第1のセパレータ部品110Cに作用しても、第1のセパレータ部品110Cの変形を抑制することができる。
【0057】
(実施例5)
図6には、本発明の実施例5が示されている。本実施例においては、第1のセパレータ部品に副ビード部を設ける構成を採用した場合について示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0058】
図6は本発明の実施例5に係るセパレータ一体ガスケットの模式的断面図の一部であり、セパレータ一体ガスケットにおけるガスケット機能を発揮する付近の断面を拡大した図である。
【0059】
本実施例に係るセパレータ一体ガスケット100Dにおいても、第1のセパレータ部品110Dと、第2のセパレータ部品120Dとから構成される。第2のセパレータ部品120Dの構成は、実施例1における第2のセパレータ部品120と同一の構成であるので、その説明は省略する。また、第1のセパレータ部品110Dと第2のセパレータ部品120Dが、主ビード部122の両側の近傍において、それぞれ接合部130により接合される点も、実施例1と同一である。
【0060】
本実施例においては、第1のセパレータ部品110Dには、密封領域を取り囲むように設けられる副ビード部114が設けられ、かつ、副ビード部表面に設けられた平面領域内に第1の弾性体140が設けられている。副ビード部114は第2のセパレータ部品120Dが設けられている側に突出し、主ビード部122内に入り込むように構成されている。第1の弾性体140と第2の弾性体150の配置関係については、実施例1で説明した通りである。
【0061】
以上のように構成される本実施例に係るセパレータ一体ガスケット100Dにおいても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、副ビード部114を設けたことで、第1のセパレータ部品110Dにおける第1の弾性体140が設けられた領域付近が変形し難くなる。従って、主ビード部122による押圧力が、第2の弾性体150と膜ユニット200と第1の弾性体140とを介して第1のセパレータ部品110Dに作用しても、第1のセパレータ部品110Dの変形を抑制することができる。
【0062】
(実施例6)
図7には、本発明の実施例6が示されている。本実施例においては、第1のセパレータ部品に副ビード部を設けた上で、第1のセパレータ部品に補強用のビード部を設ける構成を採用した場合について示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0063】
図7は本発明の実施例6に係るセパレータ一体ガスケットの模式的断面図の一部であり、セパレータ一体ガスケットにおけるガスケット機能を発揮する付近の断面を拡大した図である。
【0064】
本実施例に係るセパレータ一体ガスケット100Eにおいても、第1のセパレータ部品110Eと、第2のセパレータ部品120Eとから構成される。第2のセパレータ部品120Eの構成は、実施例1における第2のセパレータ部品120と同一の構成であるので、その説明は省略する。また、第1のセパレータ部品110Eと第2のセパレータ部品120Eが、主ビード部122の両側の近傍において、それぞれ接合部130により接合される点も、実施例1と同一である。
【0065】
本実施例においては、第1のセパレータ部品110Eには、密封領域を取り囲むように設けられる副ビード部113が設けられ、かつ、副ビード部表面に設けられた平面領域内に第1の弾性体140が設けられている。副ビード部113は第2のセパレータ部品120Eとは反対側に突出するように構成されている。第1の弾性体140と第2の弾性体150の配置関係については、実施例1で説明した通りである。そして、本実施例においては、第1の弾性体140の短手方向の両側に第1の補強用ビード部112が設けられている点が、上記実施例4と異なっている。
【0066】
以上のように構成される本実施例に係るセパレータ一体ガスケット100Eにおいても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、副ビード部113を設け、かつ第1の補強用ビード部112を設けたことで、第1のセパレータ部品110Eにおける第1の弾性体140が設けられた領域付近が変形し難くなる。従って、主ビード部122による押圧力が、第2の弾性体150と膜ユニット200と第1の弾性体140とを介して第1のセパレータ部品110Eに作用しても、第1のセパレータ部品110Eの変形を抑制することができる。
【0067】
(実施例7)
図8には、本発明の実施例7が示されている。本実施例においては、第2のセパレータ部品にストッパ部を設ける構成を採用した場合について示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0068】
図8は本発明の実施例7に係るセパレータ一体ガスケットを備える燃料電池の模式的断面図の一部であり、セパレータ一体ガスケットにおけるガスケット機能を発揮する付近の断面を拡大した図である。
【0069】
本実施例に係るセパレータ一体ガスケット100Fにおいても、第1のセパレータ部品110Fと、第2のセパレータ部品120Fとから構成される。第1のセパレータ部品110Fの構成は、実施例1における第1のセパレータ部品110と同一の構成であるので、その説明は省略する。また、第1のセパレータ部品110Fと第2のセパレータ部品120Fが、主ビード部122の両側の近傍において、それぞれ接合部130により接合される点も、実施例1と同一である。
【0070】
本実施例においては、第2のセパレータ部品120Fには、主ビード部122よりも内側(流路となる凹凸121が設けられている側)において、接合部130の近傍に、膜ユニット200に当接するストッパ部124が設けられている。この点のみ、第2のセパレータ部品120Fの構成が、実施例1における第2のセパレータ部品120の構成と異なっている。
【0071】
以上のように構成される本実施例に係るセパレータ一体ガスケット100Fにおいても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、ストッパ部124が設けられているため、セパレータ一体ガスケット100Fの変形を抑制することができる。なお、本実施例で示すストッパ部124に関する構成は、実施例2~6のいずれの構成にも適用可能である。
【0072】
(その他)
上記実施例においては、セパレータ一体ガスケットを備える積層構造が燃料電池として利用される場合を示したが、上記の積層構造は水素発生装置としても利用可能である。すなわち、上記のような積層構造が燃料電池として利用される場合には、電解質膜の一方の面側に酸素を流し、他方の面側に水素を流すことで、電解質膜において化学反応が発生し、電気を発生させることができる。これに対して、電解質膜の一方の面側に水と酸素を流すことで、電解質膜において電気分解されて、電解質膜の他方の面側に水と水素が流れる。これにより、水素を取り出すことができるので、上記の積層構造を水素発生装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
100,100A,100B,100C,100D,100E,100F セパレータ一体ガスケット
101 マニホルド
110,110A,110B,110C,110D,110E,110F 第1のセパレータ部品
111 凹凸
112,112a,112b 第1の補強用ビード部
113,114 副ビード部
120,120A,120B,120C,120D,120E,120F 第2のセパレータ部品
121 凹凸
122 主ビード部
123 第2の補強用ビード部
124 ストッパ部
130 接合部
140 第1の弾性体
150 第2の弾性体
200 膜ユニット
201 マニホルド
210 電解質膜
220 ガス拡散層
230 補強フィルム