(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】指用装具
(51)【国際特許分類】
A61F 13/10 20060101AFI20241209BHJP
A61F 13/02 20240101ALI20241209BHJP
【FI】
A61F13/10 H
A61F13/02 380
A61F13/02 340
(21)【出願番号】P 2024543520
(86)(22)【出願日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2024008844
【審査請求日】2024-07-23
(31)【優先権主張番号】P 2023037880
(32)【優先日】2023-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595005927
【氏名又は名称】阪本 桂造
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 桂造
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-050762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/10
A41D13/08
A61F13/02
A61F5/10
A61F5/01
A61F5/042
A61F5/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指用装具であって、
所定の長さ及び幅を有する帯状に形成されたテープ体と、
前記テープ体の長軸方向の所定位置に設けられた弾性変形可能なパッドと、
前記テープ体を指に巻き付けたときに指側を向く面において、前記テープ体の長軸方向に延在し、かつ、
前記指の第2関節の位置と、前記指の掌側において前記第2関節よりも指先側に位置しつつ前記第2関節の最も近くに位置する皺の位置との距離である所定距離をもって前記テープ体の短軸方向の中点から
オフセットした位置に設けられた第1ガイド線と、
前記テープ体を前記指に巻き付けたときに、前記テープ体を互いに結合するために前記テープ体に設けられた粘着部とを有する、指用装具。
【請求項2】
前記第1ガイド線が、前記テープ体の短軸方向に沿って3対2に分割する点を通過する、長軸方向に延びる線であるように構成される、請求項1に記載の指用装具。
【請求項3】
前記パッドの長軸方向長さが1.5~3.5cmである、請求項1または2に記載の指用装具。
【請求項4】
前記パッドの長軸方向の一方の端縁の近傍に、
前記パッドの長軸方向に直交するように前記テープ体の短軸方向に延在する第2ガイド線が設けられている、請求項3に記載の指用装具。
【請求項5】
前記パッドが、
前記パッドの長軸方向よりも
前記パッドの短軸方向に伸縮し難い組織を有する素材からなる、請求項4に記載の指用装具。
【請求項6】
前記パッドの長軸方向における中点が、前記テープ体の長軸方向の中点に対して一方にオフセットした位置に設けられている、請求項5に記載の指用装具。
【請求項7】
前記テープ体を前記指に巻き付けたときに、互いに重合するべき部分に、前記テープ体の巻き付け太さを表示する標識が設けられている、請求項6に記載の指用装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指の腱鞘炎の治療に用いられる指用装具に関する。
【背景技術】
【0002】
指が腱鞘炎になると、就寝中などにおいて、指(PIP-J部、近位指節間関節)が90度程度屈曲したまま固まってしまうことがある。この場合に、無理に指を伸ばそうとすると、痛みを伴い、弾発(ばね)現象を引き起こすことある。このような指の腱鞘炎を治療するための手段として、塗り薬、注射、手術などが用いられている。
【0003】
しかしながら、塗り薬や注射は指の腱鞘炎を根本的に治療することができない。また、手術は塗り薬や注射よりも治療効果が高いが、好まない患者も多い。このような事情から、患者の指が屈曲しないように指を固定する固定材が知られている(例えば、特許文献1)。文献1の固定材は、シートまたはフィルムからなる基部と、互いに間隔を置いて、前記基部に固着された、高剛性の材料からなる複数の補強部とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る固定材は、指の患部以外の部分も余分に覆う構造となっている。また、補強部は、関節を固定保持するためのものであり、過度の剛性を有するもので、患部を有する指が伸展した状態に過度に固定されてしまう。ここでいう指全体が「過度に固定」されてしまうとは、指が伸展した状態に完全に固定されることに限らず、指の屈曲の機能が妨げられることを指す。それにより、物を握る動作など、日常で指を屈曲する動作が大幅に制限されてしまうといった問題や、指の過度の固定による関節障害を発生する恐れがある。
【0006】
以上の背景を鑑み、本発明は、指の腱鞘炎の治療に用いるための指用装具であって、患者自身が指に容易に装着することができ、かつ、患部を有する指をソフトに固定しつつハードに固定し過ぎることのない指用装具を提供することを課題とする。なお、ここでいう指を「ソフトに固定」するとは、指の屈曲の機能を妨げない程度に指を固定すること、すなわち、日常において必要な指を屈曲する動作を大幅に制限することがないように指を適度に固定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態による指用装具(1)は、所定の長さ及び幅を有する帯状に形成されたテープ体(2)と、前記テープ体(2)の長軸方向の所定位置に設けられた弾性変形可能なパッド(3)と、前記テープ体(2)の長軸方向に沿ってかつ前記テープ体(2)の短軸方向の中点から所定距離オフセットした位置に設けられた第1ガイド線(4)と、前記テープ体(2)を指に巻き付けたときに、前記テープ体(2)を互いに結合するために前記テープ体(2)に設けられた粘着部(5)とを有する。
【0008】
この構成によれば、先ず、指用装具(1)を患部の側方に、指の長軸方向に直交するように、かつ第1ガイド線(4)が指先側にオフセットした向きとなるように配置する。次に、第1ガイド線(4)を掌側の皺(しわ、PIP-J部)に合せ、テープ体(2)を指に適度の張力をもって巻き付け、粘着部(5)により、テープ体(2)を指に巻き付けた状態で保持する。解剖学的には、指の関節の位置は、掌側の皺からやや外れた位置にあることから、外見から指の関節の位置を判定することは困難である。しかしながら、第1ガイド線(4)が、テープ体(2)の短軸方向の中点から適切な距離をもってオフセットした位置に設けられていることから、第1ガイド線(4)を掌側の皺(しわ)に合せることにより、容易に、テープ体(2)を指の関節に適切に整合した位置に巻き付けることが可能となる。また、パッド(3)が適度な弾性を有するものとすることにより、患部を有する指を過度に固定する恐れがない。
【0009】
上記指用装具(1)において、前記第1ガイド線(4)が前記テープ体(2)の短軸方向に沿って3対2に分割する点を通過する、長軸方向に延びる線であるように構成される。
【0010】
この構成によれば、患者が指用装具(1)を指に装着するときに、容易にパッド(3)を、PIP-J部を含む指の適切な位置に合わせることができる。
【0011】
上記の指用装具(1)において、前記パッド(3)は長軸方向長さが1.5~3.5cmである。
【0012】
この構成によれば、様々な患者の指の太さに応じて、適切な大きさのパッド(3)を選択することができる。
【0013】
上記の指用装具(1)において、前記パッド(3)の長軸方向の一方の端縁の近傍に、前記テープ体(2)の短軸方向に延在する第2ガイド線(6)が設けられていてもよい。
【0014】
この構成によれば、患者が第2ガイド線(6)を、側面視において指の掌側の輪郭線に合わせることにより、パッド(3)を指の掌側の関節に対応する位置に正確にかつ容易に整合させることができる。
【0015】
上記の指用装具(1)において、前記パッド(3)が、長軸方向よりも短軸方向に伸縮し難い組織を有する素材から構成されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、患者は、快適性を保ちつつ患部の屈伸を適度に抑制することができる。
【0017】
上記の指用装具(1)において、前記パッド(3)の長軸方向における中点が、前記テープ体(2)の長軸方向の中点に対して一方にオフセットした位置に設けられていてもよい。
【0018】
この構成によれば、患者が指用装具(1)を装着するときに、パッド(3)が視認しやすいため、パッド(3)を指の掌側に位置合わせすることが容易となる。
【0019】
上記の指用装具(1、201)において、前記テープ体(2)を指に巻き付けたときに、互いに重合するべき部分に、前記テープ体(2)の巻き付け太さを表示する標識(7)が設けられていてもよい。
【0020】
この構成によれば、患者が指用装具(1)を装着するときに、患者の指の太さや患部の治癒の状況によって、巻き付けの太さを容易に選択することができる。
【発明の効果】
【0021】
この構成によれば、指用装具(1)において、患者が指に容易に装着することができ、かつ、患部を有する指を過度に固定することがない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る指用装具を示す図
【
図3】
図1における指用装具のIII-III断面図
【
図4】本発明の第1実施形態に係る指用装具を巻き付ける工程を示す図
【
図5】本発明の第1実施形態に係る指用装具の使用状態を示す図
【
図6】本発明の第2実施形態に係る指用装具を示す図
【
図7】本発明の第3実施形態に係る指用装具を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る指用装具1について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
<<第1実施形態>>
図1は第1実施形態に係る指用装具1を示す。指用装具1は、帯状に形成されたテープ体2を含む。テープ体2は患部をなす指に巻き付けられるもので、巻き付けられた状態のときに指に向く面を内面8、その反対側の面を外面9と呼ぶものとする。テープ体2は、ウレタン不織布、塩化ビニル、伸縮性綿布、スポンジシート、ウレタンフィルム、オレフィンフィルムなどの折り曲げ可能な可撓性素材を薄く加工して形成されており、細く加工した金属が加わってもよい。テープ体2の長軸方向の端縁は、弧状に形成されているとよい。
【0025】
図1及び
図2に示すように、テープ体2の長軸方向の所定位置の内面8には、パッド3が設けられている。パッド3は、指の掌側の略半周を覆う程度の長軸方向長さと、テープ体2の短軸方向の長さと同じ短軸方向長さとを有するように形成されるか、それらよりもやや小さく矩形状に形成されている。なお、パッド3の長軸方向とは、テープ体2の長軸方向に対して平行な方向を指し、パッド3の短軸方向とは、テープ体2の短軸方向に対して平行な方向を指す。
【0026】
パッド3は、弾性的に伸縮容易であり、かつ、ソフトな素材から形成される。パッド3は、木綿、レーヨン、ポリエステルなどからなる直線あるいはらせん構造をなす糸を経編または緯編した布(ニット)によって形成され、少なくとも2つの層を有する。パッド3は、長軸方向よりも短軸方向に伸縮し難い組織を有するように形成されるとよい。ある組織が他の組織と比較して伸縮し難いかどうかは、例えば、定速伸長形引張試験機を用いて伸び率を測定し、伸び率が小さいほど伸縮し難い組織であると判断することが可能である。パッド3が長軸方向よりも短軸方向に伸縮し難い組織を有することにより、指用装具1を装着した状態でも、患者は、快適性を保ちつつ患部の屈曲を適度に抑制することができる。例えば、指用装具1を装着したときの指の屈曲の度合いは、掌側に約20度~60度の範囲であるとよい。
【0027】
テープ体2には、患者が指用装具1を指に装着したときに、指用装具1が患者の指から外れないようにするための粘着部5が設けられている。粘着部5は、テープ体2の長軸方向の内面8または外面9の少なくとも一方に設けられた接着剤などである。粘着部5は、テープ体2の内面8または外面9の端部にのみ設けられていてもよいが、テープ体2の内面8の全面に設けられていてもよい。このとき、テープ体2の長軸方向の端部の粘着部5の粘着力が、他の部分の粘着部5の粘着力よりも弱くてもよい。粘着部5は、接着剤に限らず、製造のしやすさに合わせて、互いに結合または嵌合するスナップボタン、面ファスナー等から形成されていてもよい。
図1においては、粘着部5は、テープ体2の内面8の全体に塗布された接着剤である。テープ体2は、粘着部5が接着剤である場合には、粘着部5を覆う剥離可能な紙やフィルム(不図示)を備えているとよい。粘着部5に剥離可能な紙やフィルムを設けることにより、指用装具1を装着しないときには、粘着部5が意図しない場所に貼り付いてしまうことを防止することができる。
【0028】
パッド3の長軸方向における中点は、テープ体2の長軸方向における中点ではなく、テープ体2の長軸方向の中点からオフセットした位置に設けられている。
図1においては、パッド3の長軸方向における中点は、テープ体2の長軸方向における中点から0.5cmオフセットした位置に設けられている。
【0029】
指用装具1は、テープ体2の内面8において、テープ体2の長軸方向に沿って設けられた第1ガイド線4を有する。第1ガイド線4は、テープ体2の短軸方向の中点からオフセットした位置に設けられている。第1ガイド線4は、テープ体2の長軸方向の一方の端部からパッド3を通過して、テープ体2の他方の端部に向かって延在している。
図1においては、第1ガイド線4は、テープ体2の短軸方向に沿って3対2に分割する点を通過する、長軸方向に延びる線であるように構成される。
【0030】
指用装具1は、テープ体2の内面8に、テープ体2の短軸方向に沿って設けられた第2ガイド線6を有する。第2ガイド線6は、パッド3の長軸方向の一方の近傍に設けられている。すなわち、第2ガイド線6は、パッド3の内面8において第1ガイド線4と直角に交差している。
【0031】
テープ体2の長軸方向において、パッド3の長軸方向における中点がオフセットしている方の端部の内面8には、印(マーキング)10が設けられている。マーキング10は、点や線、数字、文字を表示したものであってもよく、テープ体2の端部の領域を特定の色で着色したものや、幾何学模様を付したものとしてもよい。第1実施形態において、マーキング10は、テープ体2の端部を赤色で着色して形成されている。
【0032】
テープ体2の長軸方向の長さは、例えば、約4.0~8.0cmであるとよい。テープ体2の短軸方向の長さは、例えば、約2.0~4.0cmであるとよい。本実施形態の指用装具1において、テープ体2の長軸方向の長さは、8cmであり、短軸方向の長さは3.5cmである。テープ体2の長軸方向の長さ及び短軸方向の長さは、様々な患者の指の太さや長さ等に応じて適宜変更することができる。
【0033】
パッド3の長軸方向の長さは、短軸方向の長さと同じか、あるいはそれよりも大きく形成されている。パッド3の長軸方向の長さは、例えば、約1.5~4cmであるとよい。パッド3の短軸方向の長さは、例えば、約1.5cm~3.5cmであるとよい。本実施形態の指用装具1において、パッド3の長軸方向の長さは3cmであり、短軸方向の長さは2cmである。パッド3の長軸方向の長さ及び短軸方向の長さは、様々な患者の指の太さや長さに応じて適宜変更することができる。
【0034】
次に、
図4~
図5を参照して、指用装具1の使用方法を説明する。ここでは、図示の通りに方向を定め、左手の人差し指が腱鞘炎になった場合を例に挙げて説明する。まず、患者は、指用装具1を手に取り、粘着部5を覆う剥離可能な紙またはフィルム(不図示)を剥がす。次いで、
図4に示すように、患者は指を完全に延ばした状態で、マーキング10が上側に来るようにしてテープ体2の内面8を指側に向けて、指用装具1と患者の間に患部(指)が位置するように配置する。このとき、指用装具1が、指の長軸方向に直交するように、かつ第1ガイド線4が指先側にオフセットした向きとなるように配置するとよい。次いで、患者は、第1ガイド線4が指の掌側の皺(近位指節間皮線)に合うように位置を合わせる。次いで、患者は、指用装具1を装着する指の掌側の輪郭線が、第2ガイド線6に沿うように位置合わせをする。次いで、患者は、テープ体2の端部を右手で把持し、指用装具1を装着する指にテープ体2を指に適度の張力をもって巻き付ける。
図5(A)は上記に従って指用装具1を装着した後の状態を示す図であり、
図5(B)は指先側から
図5(A)を見た図である。
【0035】
上記の実施形態に係る指用装具1によれば、第1ガイド線4が、テープ体2の短軸方向に沿って3対2に分割する点を通過する、長軸方向に延びる線であるように構成される。これにより、第1ガイド線4を掌側の皺に合せることで、患者は容易に、テープ体2を外見から判定困難な指の関節に適切に整合した位置に巻き付けることが可能となる。具体的には、
図4に示すように、パッド3の長軸方向の仮想的な中心線11を、指の中節骨12及び基節骨13の接合部に位置するPIP-J部に整合した位置に合わせることができる。また、テープ体2の長軸方向の一方の端部にマーキング10を設けたことにより、患者が装着するときに、指用装具1を配置する向きを容易に認識することができる。
【0036】
また、パッド3が適度な弾性を有するものとすることにより、患部を有する指を過度に固定する恐れがない。また、パッド3が伸縮容易な素材から構成されていることにより、指用装具1を装着した患者は、快適性を保ちつつ、患部をソフトに固定して指の屈伸を適度に抑制可能とすることができる。
【0037】
また、パッド3がテープ体2の長軸方向の中点からオフセットされた位置に設けられていることにより、パッド3を指の掌側の正確な位置に整合させつつ、容易にテープ体2を指に巻き付けることができる。
【0038】
加えて、第2ガイド線6がパッド3の長軸方向の一方の近傍に設けられている。これにより、第2ガイド線6を側方から見て指の掌側の輪郭線に合わせることにより、患者が指用装具1を装着するときに、パッド3の大部分を視認しながら、パッド3を指の掌側の関節に対応する位置に正確にかつ容易に整合させることができる。
【0039】
また、テープ体2の長軸方向の端部の粘着部5の粘着力が他の部分の粘着部5の粘着力よりも弱くなっていることにより、患者は、指用装具1を誤った位置に装着した後であっても、テープ体2の粘着力の弱い端部を把持することで指用装具1を容易に取り外すことができるため、指用装具1の位置を調整することができる。
【0040】
なお、上記の指用装具1の使用方法の説明では左手の人差し指の第2関節(PIP-J部)への使用方法を示したが、指用装具1は人差し指以外の指や親指の第1関節にも装着することが可能である。また、指用装具1を右手の指に装着することも可能である。
【0041】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係る指用装具101は、第1実施形態の指用装具1と比べて、パッド3の位置及び第2ガイド線6が2本設けられている点で異なる。以下の説明では、相違する構成についてのみ説明し、第1実施形態に係る指用装具1と同様の構成については、同一の符号を付し、上記の記載を援用して説明を省略する。
【0042】
図6に示すように、パッド103は、第1実施形態に係る指用装具1と同様に、帯状に形成されたテープ体2に設けられている。パッド103の長軸方向の中点は、テープ体2の長軸方向の中点に設けられている。指用装具101は、テープ体2の短軸方向に沿って設けられた2本の第2ガイド線106を有する。第2ガイド線106は、パッド103の長軸方向の両端部の近傍に設けられている。すなわち、いずれの第2ガイド線106も、パッド103の内面8において第1ガイド線4と交差している。
【0043】
パッド103の長軸方向の中点をテープ体2の長軸方向の中点に設け、かつ、第2ガイド線106を2本設けたことにより、左手だけでなく、右手の指にも容易に装着することが可能となる。その理由として、第1実施形態に係る指用装具1を装着する場合には、
図4において、第1ガイド線4を指先側にオフセットした位置に合わせる必要があった。そのため、第1実施形態に係る指用装具1を右手の指に巻き付けるときには、指先を左に向けたときに、指用装具1を、患部(指)と患者の間に配置し、かつ、内面8を指側に向けなければならない。その結果として、第1ガイド線4及び第2ガイド線6が患者から視認しづらくなってしまう。または、指先を右に向けて、指用装具1と患者の間に患部(指)が位置するように配置することも可能であるが、手首の可動域の制限上、指用装具1を指の適切な位置に装着することは困難である。一方、第2実施形態に係る指用装具101においては、指用装具101の上下を180度回転させることにより、右手の指先を左に向けたときに、指用装具1と患者の間に患部(指)が位置するように配置すればよく、第1ガイド線4及び第2ガイド線106が患者から視認できるため、指用装具101を容易に装着することができる。
【0044】
<<第3実施形態>>
第3実施形態に係る指用装具201は、第1実施形態の指用装具1及び第2実施形態の指用装具101と比較して、テープ体2の外面9に、標識7が設けられている点で異なる。この標識7は、テープ体2を指に巻き付けたときに、テープ体2が互いに重合するべき部分に、テープ体2の巻き付け太さを表示するものである。以下の説明では、相違する構成についてのみ説明し、第1実施形態に係る指用装具1と同様の構成については、同一の符号を付し、上記の記載を援用して説明を省略する。
【0045】
標識7は、テープ体2の外面9の長軸方向の両端部にそれぞれ少なくとも1つ以上設けられている。標識7は、例えば、点や線、数字やアルファベットなどである。
図7に示すように、本実施形態において標識7は、テープ体2の長軸方向の両端部の同一側の側縁に沿って間隔をおいてそれぞれ3カ所ずつ設けられた1~3までの数字である。患者は、指用装具201を装着するときに、テープ体2の長軸方向の一方の端部に設けられたある標識7(例えば、「2」の標識7)と、テープ体2の長軸方向の他方の端部に設けられたある標識7(例えば、「2」の標識7)とが互いに重なるようにテープ体2を巻き付けることで、自身の指の太さや治癒の状況に応じてテープ体2の巻き付けの強さを適宜調整することができる。
【0046】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く応用して実施することができる。例えば、テープ体2の長軸方向の一方の縁部は、他方の縁部よりも長く形成されていてもよく、テープ体2を指に巻き付けたときに、指先側に向かってテープ体2が開口するようになっていてもよい。特に指用装具1、101、201を装着したときに、指先側に向かって指の掌側のテープ体2のみが開口するような形状とするとよい。この構成により、患者は指用装具1、101、201を装着した状態でも、患部である指の屈曲をより容易に行うことができる。
【0047】
また、テープ体2は、少なくとも一部に、内面8から外面9に貫通する孔を有していてもよい。それにより、指用装具1、101、201を装着した状態の患部の通気性を改善し、蒸れを防止することができる。
【0048】
また、パッド3、103を形成する糸の太さは様々であってもよく、太さの異なる糸を規則的に編むことによりパッド3、103が形成されていてもよい。例えば、剛性の高い太糸を、長軸方向の横糸よりも短軸方向の縦糸に多く用いることで、パッド3、103を長軸方向よりも短軸方向に伸縮し難い構成とすることができる。それにより、患者は指用装具1、101、201を装着した状態でも、患者の患部の屈伸を適度に抑制可能としつつ、妨げることがないため、日常での機能障害が少ない。また、パッド3、103を構成する糸が、伸縮可能ならせん構造を有するものであってもよい。それにより、指用装具1、101、201が伸縮するため、指用装具1、101、201を装着していても、患者は患部の屈伸をより容易に行うことができる。
【0049】
また、標識7を設けたテープ体2の長軸方向の一方の端部の側縁が、テープ体2の長軸方向の他の部分の側縁よりも短軸方向に小さく形成されていてもよい。患者は、指用装具201を装着するときに、このようにテープ体2の短軸方向に小さく形成された端部が、他方の端部の上から重なるようにしてテープ体2を巻き付けるとよい。それにより、患者は、テープ体2を巻き付けるときに、テープ体2の長軸方向の両端部に設けられた標識7を視認しやすくなり、両端部に設けられた標識7の位置合わせを容易に行うことができる。
【0050】
また、上記の構成による指用装具1、101、201は、繰り返し使えるものであっても、使い捨て可能なものであってもよい。指用装具1、101、201を使い捨て可能なものとした場合には、患者は、指用装具1、101、201を装着した患部を清潔な状態に保つことができる。
【0051】
また、上記の構成による指用装具1、101、201において、より高い伸縮性が必要とされる場合には、ソフトパッド3にマイクロスプリングを付加してもよい。
【0052】
また、指用装具1、101、201は、指用装具1、101、201の使用方法を説明する説明書を含むキットの形態で患者に提供されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 :指用装具
2 :テープ体
3 :パッド
4 :第1ガイド線
5 :粘着部
6 :第2ガイド線
7 :標識
8 :内面
9 :外面
【要約】
【課題】指用装具において、患者が指に容易に装着することができ、かつ、患部を有する指を過度に固定することがないようにする。
【解決手段】指用装具であって、所定の長さ及び幅を有する帯状に形成されたテープ体と、テープ体の長軸方向の所定位置に設けられた弾性変形可能なパッドと、テープ体を指に巻き付けたときに、テープ体を互いに結合するためにテープ体に設けられた粘着部とを有し、テープ体の長軸方向に沿ってかつ前記テープ体の短軸方向の中点から所定距離オフセットした位置に設けられた第1ガイド線により、患者が患部の適切な位置に指用装具を装着できるようにする。