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特許7600478筒状部材、筒状部材の組立方法、筒状部材の分解方法、ライナー、船尾管シールシステム、及び船舶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】筒状部材、筒状部材の組立方法、筒状部材の分解方法、ライナー、船尾管シールシステム、及び船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 23/36 20060101AFI20241209BHJP
   F16B 5/10 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
B63H23/36
F16B5/10 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024547274
(86)(22)【出願日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2024023549
【審査請求日】2024-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507182988
【氏名又は名称】バルチラジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】藤井 真彦
(72)【発明者】
【氏名】三原 正樹
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-269297(JP,A)
【文献】特開2007-182696(JP,A)
【文献】特開2022-181469(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0110855(KR,A)
【文献】中国実用新案第219056544(CN,U)
【文献】登録実用新案第3104177(JP,U)
【文献】特許第6326186(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 23/36
E21D 11/00
F16B 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って分割される複数の部品を周方向に組み合わせて構成される分割式筒状体と、
前記複数の部品のうち隣接する2つの部品において、前記周方向に対向して相互に接する2つの接合面に前記軸方向に沿って設けられ、前記2つの接合面が当接するときに前記接合面上の開口どうしが繋がることによって前記軸方向を軸線方向とする貫通孔を形成する一対の溝と、
前記軸線方向に沿って延在して形成され、前記貫通孔に挿入されることで前記2つの部品を接合する棒材と、
を備え、
前記軸方向に直交する断面における前記溝の断面形状は、前記接合面上の前記開口の幅に対して底面側の幅が大きく形成され
前記棒材は、
前記貫通孔の前記軸線方向の両端の少なくとも一方に挿入される第1部材と、
一対の前記第1部材が前記貫通孔の両端に挿入される状態における前記一対の第1部材の中間位置にて前記貫通孔に挿通される第2部材と、
を有し、
前記第1部材は、前記断面における断面形状が前記貫通孔と同形状であり、
前記第2部材は、前記断面における断面形状が前記一対の溝のうちの一方と同形状の基端部と、前記一対の溝のうちの他方の前記開口から該溝の内部に進入可能な先端部と、を有する、
筒状部材。
【請求項2】
前記溝は、前記断面における断面形状がT字形状に形成され、
前記一対の溝が組み合わされて形成される前記貫通孔は、前記断面における断面形状がH字形状に形成される、
請求項に記載の筒状部材。
【請求項3】
軸方向に沿って分割される複数の部品を周方向に組み合わせて構成される分割式筒状体と、
前記複数の部品のうち隣接する2つの部品において、前記周方向に対向して相互に接する2つの接合面に前記軸方向に沿って設けられ、前記2つの接合面が当接するときに前記接合面上の開口どうしが繋がることによって前記軸方向を軸線方向とする貫通孔を形成する一対の溝と、
前記軸線方向に沿って延在して形成され、前記貫通孔に挿入されることで前記2つの部品を接合する棒材と、
を備え、
前記軸方向に直交する断面における前記溝の断面形状は、前記接合面上の前記開口の幅に対して底面側の幅が大きく形成され、
前記棒材は、
前記貫通孔の前記軸線方向の両端の少なくとも一方に挿入される第1部材と、
一対の前記第1部材が前記貫通孔の両端に挿入される状態における前記一対の第1部材の中間位置にて前記貫通孔に挿通される第2部材と、
を有し、
前記第1部材は、前記断面における断面形状が前記貫通孔と同形状であり、
前記第2部材は、前記断面における断面形状が前記一対の溝のうちの一方と同形状の基端部と、前記一対の溝のうちの他方の前記開口から該溝の内部に進入可能な先端部と、を有する、
筒状部材の組立方法であって、
前記第2部材の前記基端部を前記一対の溝のうちの一方の溝に挿通させる挿通ステップと、
前記挿通ステップの後に前記一方の溝の前記開口から突出する前記第2部材の前記先端部を、前記一対の溝のうちの他方の溝の前記開口に挿入させることによって、前記分割式筒状体の前記2つの部品のそれぞれの前記接合面どうしを当接する当接ステップと、
前記当接ステップの後に前記一対の溝により形成される前記貫通孔の前記軸線方向の両端の開口部のうち少なくとも一方から前記第1部材を挿入する挿入ステップと、
を含む、
筒状部材の組立方法。
【請求項4】
前記第1部材の前記軸線方向の長さは、前記挿入ステップにおいて前記貫通孔に挿入されたときに前記貫通孔の前記開口部から一端が突出する突出部を有するよう形成され、
前記挿入ステップにおいて前記第1部材を前記貫通孔に挿入した後に、前記突出部を切除して前記第1部材の前記開口部側の端面を前記分割式筒状体の前記軸方向の端面と面一にする切除ステップと、
を含む、
請求項に記載の筒状部材の組立方法。
【請求項5】
軸方向に沿って分割される複数の部品を周方向に組み合わせて構成される分割式筒状体と、
前記複数の部品のうち隣接する2つの部品において、前記周方向に対向して相互に接する2つの接合面に前記軸方向に沿って設けられ、前記2つの接合面が当接するときに前記接合面上の開口どうしが繋がることによって前記軸方向を軸線方向とする貫通孔を形成する一対の溝と、
前記軸線方向に沿って延在して形成され、前記貫通孔に挿入されることで前記2つの部品を接合する棒材と、
を備え、
前記軸方向に直交する断面における前記溝の断面形状は、前記接合面上の前記開口の幅に対して底面側の幅が大きく形成され、
前記棒材は、
前記貫通孔の前記軸線方向の両端の少なくとも一方に挿入される第1部材と、
一対の前記第1部材が前記貫通孔の両端に挿入される状態における前記一対の第1部材の中間位置にて前記貫通孔に挿通される第2部材と、
を有し、
前記第1部材は、前記断面における断面形状が前記貫通孔と同形状であり、
前記第2部材は、前記断面における断面形状が前記一対の溝のうちの一方と同形状の基端部と、前記一対の溝のうちの他方の前記開口から該溝の内部に進入可能な先端部と、を有する、
筒状部材の分解方法であって、
前記第1部材を前記貫通孔から引き抜く引き抜きステップと、
前記引き抜きステップの後に、前記第2部材の前記基端部が前記溝に挿入されている前記分割式筒状体の前記2つの部品の一方を他方から離間する離間ステップと、
前記離間ステップの後に前記第2部材を前記溝から抜き出す抜き出しステップと、
を含む、
筒状部材の分解方法。
【請求項6】
前記第1部材の前記軸線方向の長さは、前記引き抜きステップの前に、前記貫通孔の中間に前記第2部材が挿通されている状態で前記貫通孔に挿入されている状態において、前記貫通孔の開口部から一端が突出する突出部を有するよう形成され、
前記引き抜きステップでは、前記突出部が把持されて外力が付加されることによって、前記第1部材が前記貫通孔から引き抜かれる、
請求項に記載の筒状部材の分解方法。
【請求項7】
船舶のプロペラ軸の周囲に空気を供給することで船内への浸水を防止する船尾管シール装置を備える船尾管シールシステムにおいて、前記プロペラ軸の周囲に嵌め込まれて設置される円筒形状のライナーであって、
前記プロペラ軸の軸方向に沿って分割される複数の部品を前記プロペラ軸まわりの周方向に組み合わせて構成される分割式筒状体と、
前記複数の部品のうち隣接する2つの部品において、前記周方向に対向して相互に接する2つの接合面に前記軸方向に沿って設けられ、前記2つの接合面が当接するときに前記接合面上の開口どうしが繋がることによって前記軸方向を軸線方向とする貫通孔を形成する一対の溝と、
前記軸線方向に沿って延在して形成され、前記貫通孔に挿入されることで前記2つの部品を接合する棒材と、
を有し、
前記軸方向に直交する断面における前記溝の断面形状は、前記接合面上の前記開口の幅に対して底面側の幅が大きく形成される、
ライナー。
【請求項8】
前記棒材は、
前記貫通孔の前記軸線方向の両端の少なくとも船首側に挿入される第1部材と、
一対の前記第1部材が前記貫通孔の両端に挿入される状態における前記一対の第1部材の中間位置にて前記貫通孔に挿通される第2部材と、
を有し、
前記第1部材は、前記断面における断面形状が前記貫通孔と同形状であり、
前記第2部材は、前記断面における断面形状が前記一対の溝のうちの一方と同形状の基端部と、前記一対の溝のうちの他方の前記開口から該溝の内部に進入可能な先端部と、を有する、
請求項に記載のライナー。
【請求項9】
船尾管と、
前記船尾管に回転可能に支持されるプロペラ軸と、
前記プロペラ軸の船尾側の先端に固定されるプロペラと、
請求項7または8に記載のライナーと、
前記ライナーの外周側に設置され、前記プロペラ軸の周囲に空気を供給することで船内への浸水を防止する船尾管シール装置と、
を備える、船尾管シールシステム。
【請求項10】
請求項に記載の船尾管シールシステムを備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、筒状部材、筒状部材の組立方法、筒状部材の分解方法、ライナー、船尾管シールシステム、及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば船尾管シールシステムにおいてプロペラ軸の周囲に嵌め込まれるライナーのような筒状の部材がある(特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6887584号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、船尾管シールシステムのライナーを交換しようとする場合、一般的にライナーはプロペラ軸の周囲に篏合できるように円筒形状に一体成形される構造である場合が多いので、周囲の他の部品を取り外す必要があり、工数が多く手間がかかる。この問題は、ライナーと同様の構造や設置条件の他の筒状部材でも同様である。
【0005】
本開示は、設置や取り外しを容易にできる筒状部材、筒状部材の組立方法、筒状部材の分解方法、ライナー、船尾管シールシステム、及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一観点に係る筒状部材は、軸方向に沿って分割される複数の部品を周方向に組み合わせて構成される分割式筒状体と、前記複数の部品のうち隣接する2つの部品において、前記周方向に対向して相互に接する2つの接合面に前記軸方向に沿って設けられ、前記2つの接合面が当接するときに前記接合面上の開口どうしが繋がることによって前記軸方向を軸線方向とする貫通孔を形成する一対の溝と、前記軸線方向に沿って延在して形成され、前記貫通孔に挿入されることで前記2つの部品を接合する棒材と、を備え、前記軸方向に直交する断面における前記溝の断面形状は、前記接合面上の前記開口の幅に対して底面側の幅が大きく形成され、前記棒材は、前記貫通孔の前記軸線方向の両端の少なくとも一方に挿入される第1部材と、一対の前記第1部材が前記貫通孔の両端に挿入される状態における前記一対の第1部材の中間位置にて前記貫通孔に挿通される第2部材と、を有し、前記第1部材は、前記断面における断面形状が前記貫通孔と同形状であり、前記第2部材は、前記断面における断面形状が前記一対の溝のうちの一方と同形状の基端部と、前記一対の溝のうちの他方の前記開口から該溝の内部に進入可能な先端部と、を有する
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、設置や取り外しを容易にできる筒状部材、筒状部材の組立方法、筒状部材の分解方法、ライナー、船尾管シールシステム、及び船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る船尾管シールシステムの概略構成の一例を示す図
図2】実施形態に係るライナーを船首側から視た斜視図
図3】実施形態に係るライナーを船尾側から視た斜視図
図4】実施形態に係るライナーを船尾側から視た分解斜視図
図5】実施形態に係るライナーの組み立て手順の第1段階を示す図
図6】実施形態に係るライナーの組み立て手順の第2段階を示す図
図7】実施形態に係るライナーの組み立て手順の第3段階を示す図
図8】実施形態に係るライナーの組み立て手順の第4段階を示す図
図9】第1変形例に係る棒材の一例を示す図
図10】第2変形例に係る棒材群の第3部材の一例を示す図
図11】第3変形例に係る貫通孔と棒材の断面形状一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
[船尾管シールシステム200の構成]
はじめに、図1を参照して、実施形態に係る船尾管シールシステム200について説明する。図1は、実施形態に係る船尾管シールシステム200の概略構成の一例を示す図である。
【0011】
図1に示すように、船尾管シールシステム200は、船舶300に搭載される。船尾管シールシステム200は、船舶300のプロペラ軸3の周囲に船尾管シール装置10を有し、さらに船舶300内に空気制御ユニット30と、油タンクユニット60と、油ポンプユニット70と、ドレン回収ユニット80とを主として有する。
【0012】
船尾管1の内側には軸受2が備えてあり、軸受2を介してプロペラ軸3が回転可能に支持されており、プロペラ軸3の船尾側の先端においてプロペラ5のボス部5Aが固定されている。これにより、プロペラ軸3が回転駆動されることによって、駆動力がボス部5Aを介してプロペラ5に伝達されて、プロペラ5が回転する。
【0013】
プロペラ軸3の周囲にはライナー4が嵌め込まれている。ライナー4は、筒状部4Aと、フランジ部4Bと、を有する。筒状部4Aは、プロペラ軸3の外周面と当接する円筒形状の部分である。筒状部4Aの内径は、プロペラ軸3の径とほぼ同一である。フランジ部4Bは、筒状部4Aの船尾側の端部に設けられ、筒状部4Aから円筒形状の径方向外側に延在して形成される円環状の部分である。フランジ部4Bは、プロペラ5のボス部5Aの船首側の端面にと対向配置されるよう形成され、この端面にボルト固定などの任意の構成によって連結固定される。これにより、ライナー4はプロペラ軸3及びプロペラ5と一体的に回転する。
【0014】
ライナー4の外周側において、ライナー4を同心円状に囲む筒状のハウジング7が配設され、ハウジング7は船尾管1にボルトにより固定されている。船尾管シール装置10は、ハウジング7と、パッキンリング8と、4つのシールリング9(船尾側から順に、第1シールリング9A、第2シールリング9B、第3シールリング9C、及び第4シールリング9D)を有する。
【0015】
ハウジング7は、6つの分割ハウジング6により形成され、各分割ハウジング6はいずれも円筒状の部材であり、互いに嵌合してプロペラ軸3の軸方向に積層された状態で船尾管1に固定される。また、各分割ハウジング6は、それぞれ隣接する分割ハウジング6と嵌合した際に、シールリング9が2つの分割ハウジング6の間で保持される。尚、パッキンリング8は円環状の弾性部材から形成され、ライナー4に外嵌している。パッキンリング8は、ライナー4とともに回転してハウジング7に摺接し、漁網等の異物が船尾管シール装置10及び船尾管1に侵入するのを防止する。
【0016】
各シールリング9は、環状形状の中心側の端部に形成されるリップ部がそれぞれライナー4の外周面に接触して、ライナー4側に締め付けられて設置されている。
【0017】
弾性部材であるシールリング9の成形材料として、ゴム材料や、ゴム以外の樹脂材料を挙げることができる。ゴム材料としては、ニトリルゴム(NBR)、フッ素ゴム(FR)、天然ゴム(NR)やイソブレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。一方、ゴム以外の樹脂材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素樹脂、ポリアミド(PA)などが挙げられる。
【0018】
第1シールリング9Aと第2シールリング9Bはリップ部を船尾側に向けて配設され、第3シールリング9Cと第4シールリング9Dはリップ部を船首側に向けて配設されている。そして、隣り合うシールリング9,9の間には環状室がそれぞれ形成されており、船尾側から順に、第1空気室20A,第2空気室20B(いずれも空気室の一例)、第1油室20C(油室の一例)が形成されている。尚、図示例の他にも、3つのシールリング9を有する船尾管シール装置であってもよく、この形態では、船尾側から1番目のシールリングはリップ部を船尾側に向けて配設され、2番目と3番目のシールリングはリップ部を船首側に向けて配設される。
【0019】
第2空気室20Bには、空気制御ユニット30から延設する空気供給路51が通じており、空気源38から提供される空気が空気制御ユニット30を介し、空気供給路51を介して第2空気室20Bに供給される。そして、この供給された空気により、第2シールリング9Bと第1シールリング9Aのリップ部が順次押し上げられ、海水中に空気を排出するようになっている。
【0020】
一方、第1油室20Cには、油供給路56が通じており、油タンクユニット60から供給される潤滑油が油供給路55を介して油ポンプユニット70に供給され、油ポンプユニット70から油供給路56を介して潤滑油が第1油室20Cに供給される。
【0021】
油ポンプユニット70の二次側において油供給路56は分岐しており、一方の油供給路56を介して第1油室20Cに潤滑油が供給され、他方の油供給路56を介して第3油室20Eに潤滑油が供給される。この潤滑油により、軸受2の滑りが良好になる。第3油室20Eに提供された潤滑油は、軸受2の船尾側において第4シールリング9Dと軸受2の間に形成されている環状室である第2油室20Dまで供給される。第3油室20Eには油戻り路54が通じており、油戻り路54を介して油タンクユニット60に潤滑油が回収される。
【0022】
空気制御ユニット30は、空気供給路51を介して第2空気室20Bに接続され、空気源38から第2空気室20Bに供給される空気(圧縮空気)の圧力および流量を制御する。また空気制御ユニット30は、加圧路52を介して油タンクユニット60を構成する油タンク61に接続されており、油タンク61の室圧を制御する。空気制御ユニット30は、タブレットなどの端末装置100と有線または無線によって通信可能に接続されており、端末装置100に内蔵される管理アプリケーションにより動作やパラメータ調整が実施される。空気制御ユニット30の詳細な構成については説明を省略する。なお、空気制御ユニット30は、タブレットなどの端末装置100と接続しない、いわゆる機械式のみのものを使用する構成でもよい。
【0023】
油タンクユニット60は、油タンク61と、油戻り路54の途中に介在して平時開いているバルブ62とを有する。加圧路52を介して油タンク61に提供される空気の圧力を利用して油タンク61が加圧されることにより、第1油室20C乃至第3油室20Eにある潤滑油の油圧が、海水圧や第1空気室20A及び第2空気室20Bの空気室圧力よりも常に一定圧高くなるように制御されている。第1油室20Cの油室圧力が第2空気室20Bの空気室圧力よりも常に一定圧高くなるように制御されていること、及び、第3シールリング9Cのリップ部が船首側に向いていることにより、第1油室20Cの潤滑油は第3シールリング9Cのリップ部をライナー4に常時押し付けることができる。このことにより、第3シールリング9Cのリップ部はライナー4に常時摺接され、第1油室20Cから第2空気室20Bへの潤滑油の漏れが防止される。
【0024】
油ポンプユニット70は、油タンク61側から順に、フィルター71と、循環ポンプ72と、クーラー73と、クーラー73から延設する油供給路56が分岐した位置において平時開いているバルブ74とを有する。油ポンプユニット70は、油タンクユニット60から供給される潤滑油を第1油室20Cと第3油室20Eに供給し、ライナー4と第3シールリング9C及び第4シールリング9Dの間の摺動面を介して第2油室20Dにまで潤滑油を供給する。そして、第3油室20Eより油戻り路54を介して油タンクユニット60に潤滑油を戻すことにより、潤滑油を常時循環させるようになっている。
【0025】
ドレン回収ユニット80は、第2空気室20Bに海水や潤滑油が浸入した際に、これらの流体を排出するべく、第2空気室20Bに通じるドレン路57と、ドレン路57の途中において平時開いているバルブ83とを有する。ドレン回収ユニット80はさらに、ドレン排出機81(オートドレン)とニードル弁82とを有し、ドレン排出機81に海水や潤滑油等が回収され、一定量が溜まった段階で自動排出されるようになっている。
【0026】
ドレン回収ユニット80により、平時は、第2空気室20Bから空気のみが放出される。しかしながら、第2空気室20Bに海水や潤滑油が万一漏れてきた場合、常時開いているニードル弁82を介して加圧空気を僅かに排出するとともに、漏れてきた海水や潤滑油をドレン回収ユニット80にて回収する。
【0027】
[ライナー4の構成]
次に、図2図4を参照して実施形態に係るライナー4の構成について説明する。図2は、実施形態に係るライナー4を船尾側から視た斜視図である。図3は、実施形態に係るライナー4を船首側から視た斜視図である。図4は、実施形態に係るライナー4を船尾側から視た分解斜視図である。
【0028】
なお、以下の説明において、X方向、Y方向、Z方向は互いに垂直な方向である。X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。X方向は船舶300の前後方向であり、X正方向側が船尾側、X負方向側が船首側である。また、X方向はプロペラ軸3の軸心方向でもある。Y方向は、船舶300の左右幅方向である。また、以下では説明の便宜上、Z正方向側を上側、Z負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0029】
図2図3に示すように、ライナー4は、円筒形状の部材である。ライナー4は、筒状部4Aとフランジ部4Bとを有し、フランジ部4Bが筒状部4AのX正方向側(船尾側)の端部に設けられる。フランジ部4Bには複数の貫通孔4Cが設けられる。複数の貫通孔4Cは、それぞれがフランジ部4BにX方向に貫通されて形成され、フランジ部4Bの円環形状の周方向に沿って略等間隔に配置される。
【0030】
フランジ部4BのX正方向側の端面は、筒状部4AのX正方向側の端面と面一となるよう形成されている。すなわち、ライナー4は、X正方向側(船尾側)に平面状の端面4Dを有する。ライナー4は、端面4Dがプロペラ5のボス部5A(図1参照)の船首側(X負方向側)の端面に当接された状態で、複数の貫通孔4Cにボルトなどの締結要素をX負方向側から挿通してボス部5Aに締結させることによって、プロペラ5と一体回転可能となるようプロペラ5に固定される。
【0031】
また、ライナー4は、X負方向側(船首側)にも平面状の端面4Eを有する。端面4Eは、筒状部4Aの端面である。
【0032】
図2図4に示すように、ライナー4は、プロペラ軸3の軸方向(X方向)に沿って分割される2つの部品をプロペラ軸3まわりの周方向に組み合わせて構成される分割式筒状体である。例えば図2図4に示すように、ライナー4は、Z方向の中心位置にてY方向に沿って円筒形状が2つに分割される第1分割体41と、第2分割体42とを有する。第1分割体41はZ負方向側が開口する半円筒形状の部材であり、第2分割体42はZ正方向側が開口する半円筒形状の部材である。第1分割体41はZ正方向側に配置され、第2分割体42はZ負方向側に配置される。第1分割体41と、第2分割体42とが、ライナー4の分割式筒状体を構成する「2つの部品」に相当する。
【0033】
図4に示すように、第1分割体41は、Z負方向側の端面として第1接合面411と第2接合面412とを有する。第1接合面411はライナー4の中心軸に対してY正方向側に配置される端面であり、第2接合面412はY負方向側に配置される端面である。
【0034】
第1接合面411には第1溝413が設けられる。第1溝413は、第1接合面411からZ正方向側に凹んで形成され、軸方向(X方向)に沿って延在するよう形成される。第1溝413は、開口部413Aと拡幅部413Bとを有する。開口部413Aは、第1接合面411上に開口する部分であり、第1溝413の開口が含まれる。拡幅部413Bは、開口部413AよりZ正方向側の部分であり、第1溝413の底面が含まれる。拡幅部413Bは、開口部413Aに対してY方向の両側に伸びて形成され、これによりY方向の寸法が開口部413Aより大きく形成されている。
【0035】
第2接合面412には第2溝414が設けられる。第2溝414は、第2接合面412からZ正方向側に凹んで形成され、軸方向(X方向)に沿って延在するよう形成される。第2溝414は、開口部414Aと拡幅部414Bとを有する。開口部414Aは、第2接合面412上に開口する部分であり、第2溝414の開口が含まれる。拡幅部414Bは、開口部414AよりZ正方向側の部分であり、第2溝414の底面が含まれる。拡幅部414Bは、開口部414Aに対してY方向の両側に伸びて形成され、これによりY方向の寸法が開口部414Aより大きく形成されている。
【0036】
第1分割体41の第1溝413及び第2溝414は、軸方向(X方向)に直交する断面における断面形状が、第1接合面411及び第2接合面412上の開口の幅(すなわち開口部413A、414AのY方向の幅寸法)に対して底面側の幅(すなわち拡幅部413B、414BのY方向の幅寸法)が大きく形成される。本実施形態では、第1溝413及び第2溝414は、断面形状がT字形状に形成されている。
【0037】
図4に示すように、第2分割体42は、Z正方向側の端面として第1接合面421と第2接合面422とを有する。第1接合面421はライナー4の中心軸に対してY正方向側に配置される端面であり、第2接合面422はY負方向側に配置される端面である。
【0038】
第1接合面421には第1溝423が設けられる。第1溝423は、第1接合面421からZ負方向側に凹んで形成され、軸方向(X方向)に沿って延在するよう形成される。第1溝423は、開口部423Aと拡幅部423Bとを有する。開口部423Aは、第1接合面421上に開口する部分であり、第1溝423の開口が含まれる。拡幅部423Bは、開口部423AよりZ負方向側の部分であり、第1溝423の底面が含まれる。拡幅部423Bは、開口部423Aに対してY方向の両側に伸びて形成され、これによりY方向の寸法が開口部423Aより大きく形成されている。
【0039】
第2接合面422には第2溝424が設けられる。第2溝424は、第2接合面422からZ負方向側に凹んで形成され、軸方向(X方向)に沿って延在するよう形成される。第2溝424は、開口部424Aと拡幅部424Bとを有する。開口部424Aは、第2接合面422上に開口する部分であり、第2溝424の開口が含まれる。拡幅部424Bは、開口部424AよりZ正方向側の部分であり、第2溝424の底面が含まれる。拡幅部424Bは、開口部424Aに対してY方向の両側に伸びて形成され、これによりY方向の寸法が開口部424Aより大きく形成されている。
【0040】
第2分割体42の第1溝423及び第2溝424は、軸方向(X方向)に直交する断面における断面形状が、第1接合面421及び第2接合面422上の開口の幅(すなわち開口部423A、424AのY方向の幅寸法)に対して底面側の幅(すなわち拡幅部423B、424BのY方向の幅寸法)が大きく形成される。本実施形態では、第1溝423及び第2溝424は、断面形状がT字形状に形成されている。
【0041】
第1分割体41と第2分割体42とが接合される際には、第1分割体41の第1接合面411と、第2分割体42の第1接合面421とが、筒状部4Aの周方向に沿って対向して相互に当接する。また、第1分割体41と第2分割体42の筒状部分の厚さは同寸法で形成されるため、第1分割体41の第1接合面411と、第2分割体42の第1接合面421とは同一形状で形成される。これにより、第1接合面411、421どうしは外形が完全に重畳して当接される。
【0042】
さらに、第1分割体41の第1接合面411に設けられる第1溝413と、第2分割体42の第1接合面421に設けられる第1溝423とは、それぞれの開口部分がY方向の同一位置となるよう形成される。これにより、図2図3に示すように、2つの第1溝413、423は、第1分割体41の第1接合面411と、第2分割体42の第1接合面421とが当接するときに、接合面上の開口どうしが繋がることによって、ライナー4の軸方向(X方向)を軸線方向とする第1貫通孔49を形成することができる。本実施形態では、軸方向(X方向)に直交する断面における第1溝413、423の断面形状が共にT字形状であるので、第1貫通孔49の断面形状はH字形状に形成されている。
【0043】
同様に、第1分割体41と第2分割体42とが接合される際には、第1分割体41の第2接合面412と、第2分割体42の第2接合面422とが、筒状部4Aの周方向に沿って対向して相互に当接する。また、第1分割体41と第2分割体42の筒状部分の厚さは同寸法で形成されるため、第1分割体41の第2接合面412と、第2分割体42の第2接合面422とは同一形状で形成される。これにより、第2接合面412、422どうしは外形が完全に重畳して当接される。
【0044】
さらに、第1分割体41の第2接合面412に設けられる第2溝414と、第2分割体42の第2接合面422に設けられる第2溝424とは、それぞれの開口部分がY方向の同一位置となるよう形成される。これにより、図2図3に示すように、2つの第2溝414、424は、第1分割体41の第2接合面412と、第2分割体42の第2接合面422とが当接するときに、接合面上の開口どうしが繋がることによって、ライナー4の軸方向(X方向)を軸線方向とする第2貫通孔50を形成することができる。本実施形態では、軸方向(X方向)に直交する断面における第2溝414、424の断面形状が共にT字形状であるので、第2貫通孔50の断面形状はH字形状に形成されている。
【0045】
図4に示すように、第1分割体41の第1接合面411には、接合面上からZ正方向側に凹んで形成されるピン挿入孔417が設けられる。一方、第2分割体42の第1接合面421にも、接合面上からZ負方向側に凹んで形成されるピン挿入孔427が設けられる。2つのピン挿入孔417、427は、それぞれの開口部分がX方向及びY方向の同一位置となるよう形成される。これにより、第1分割体41の第1接合面411と、第2分割体42の第1接合面421とが当接するときに、2つのピン挿入孔417、427どうしがZ方向に沿って一直線状に連通する。そして、これらの2つのピン挿入孔417、427には、一本のピン47が挿入される。ピン47は、断面形状がピン挿入孔417、427と略同一であるのが好ましい。
【0046】
同様に、第1分割体41の第2接合面412には、接合面上からZ正方向側に凹んで形成されるピン挿入孔418が設けられる。一方、第2分割体42の第2接合面422にも、接合面上からZ負方向側に凹んで形成されるピン挿入孔428が設けられる。2つのピン挿入孔418、428は、それぞれの開口部分がX方向及びY方向の同一位置となるよう形成される。これにより、第1分割体41の第2接合面412と、第2分割体42の第2接合面422とが当接するときに、2つのピン挿入孔418、428どうしがZ方向に沿って一直線状に連通する。そして、これらの2つのピン挿入孔418、428には、一本のピン48が挿入される。ピン48は、断面形状がピン挿入孔418、428と略同一であるのが好ましい。
【0047】
このように二本のピン47、48を用いることによって、第1分割体41と第2分割体42とのX方向及びY方向の相対的な位置関係を一定にできるので、第1接合面411、421どうしを完全に重畳するよう当接させることを確実にできる。これにより、第1溝413、423の開口どうしを完全に重畳するよう配置させることも確実にできるので、第1貫通孔49を接合面でY方向にずれることなくきれいに形成できる。同様に、第2溝414、424の開口どうしを完全に重畳するよう配置させることも確実にできるので、第2貫通孔50も接合面でY方向にずれることなくきれいに形成できる。
【0048】
図4に示すように、第1分割体41のうちフランジ部4Bに対応する部分には、Y負方向側の端部に、円環状の外周面からY正方向側に窪んで形成される切り欠き部415が設けられる。切り欠き部415は、第1分割体41のフランジ部4Bに対応する部分のうち、第2接合面412からZ正方向側の所定の高さ位置までの部分が残るように形成される。つまり、切り欠き部415のZ負方向側には、第1分割体41の中心側からY負方向に延在する突出部分が残される。この突出部分には、Z方向に貫通して形成されるボルト挿通孔416が設けられる。一方、第2分割体42の第2接合面412上には、ボルト挿通孔416と重畳する位置に、Z負方向に凹んで形成され、さらに内周面にめねじ溝が切られたボルト螺合孔430が設けられる。第1分割体41と第2分割体42とが接合される際には、Z正方向側からボルト挿通孔416にボルト45が挿入されて、ボルト螺合孔430に螺合されることによって、第1分割体41の第2接合面412と第2分割体42の第2接合面422とを当接した状態で連結固定できる。
【0049】
同様に、第2分割体42のうちフランジ部4Bに対応する部分には、Y正方向側の端部に、円環状の外周面からY負方向側に窪んで形成される切り欠き部425が設けられる。切り欠き部425は、第2分割体42のフランジ部4Bに対応する部分のうち、第1接合面421からZ負方向側の所定の高さ位置までの部分が残るように形成される。つまり、切り欠き部425のZ正方向側には、第2分割体42の中心側からY正方向に延在する突出部分が残される。この突出部分には、Z方向に貫通して形成されるボルト挿通孔426が設けられる。一方、第1分割体41の第1接合面411上には、ボルト挿通孔426と重畳する位置に、Z負方向に凹んで形成され、さらに内周面にめねじ溝が切られたボルト螺合孔420が設けられる。第1分割体41と第2分割体42とが接合される際には、Z負方向側からボルト挿通孔426にボルト46が挿入されて、ボルト螺合孔420に螺合されることによって、第1分割体41の第1接合面411と第2分割体42の第1接合面421とを当接した状態で連結固定できる。
【0050】
また、ボルト45を第1分割体41側から締結し、ボルト46を第2分割体42側から締結する構成とすることにより、二本のボルト45、46がZ方向の反対向き、かつ、ライナー4の軸方向の中心位置からY方向の等距離の位置にて締結されるので、第1分割体41と第2分割体42とをバランス良く連結固定できる。
【0051】
図4に示すように、ライナー4は、さらに第1棒材群43と第2棒材群44とを備える。図2図3に示すように、第1棒材群43は、第1貫通孔49の軸線方向に沿って延在して形成され、第1貫通孔49に挿入されることで第1分割体41と第2分割体42とを接合する要素である。第2棒材群44は、第2貫通孔50の軸線方向に沿って延在して形成され、第2貫通孔50に挿入されることで第1分割体41と第2分割体42とを接合する要素である。
【0052】
図4に示すように、第1棒材群43は、一対の第1部材431、432と、第2部材433とを有する。一方の第1部材431は、第1貫通孔49の船尾側(X正方向側)の端部に挿入される。他方の第1部材432は、第1貫通孔49の船首側(X負方向側)の端部に挿入される。第2部材433は、船尾側の第1部材431と船首側の第1部材432との中間位置にて第1貫通孔49に挿通される。
【0053】
一対の第1部材431、432は、断面形状が第1貫通孔49と同形状である。本実施形態では、第1貫通孔49の断面形状がH字形状であるので、第1部材431、432の断面形状も第1貫通孔49と同様のH字形状である。すなわち、一方の第1部材431は、第1分割体41の第1溝413の拡幅部413Bと同形状であり、Y方向に延在する第1平板部431Aと、第2分割体42の第1溝423の拡幅部423Aと同形状であり、Y方向に延在する第2平板部431Bと、第1溝413の開口部413A及び第1溝423の開口部423Aと同形状であって、Z方向に延在して第1平板部431Aと第2平板部431Bとを連結する連結部431Cと、を有する。同様に、他方の第1部材432は、第1分割体41の第1溝413の拡幅部413Bと同形状であり、Y方向に延在する第1平板部432Aと、第2分割体42の第1溝423の拡幅部423Aと同形状であり、Y方向に延在する第2平板部432Bと、第1溝413の開口部413A及び第1溝423の開口部423Aと同形状であって、Z方向に延在して第1平板部432Aと第2平板部432Bとを連結する連結部432Cと、を有する。また、一対の第1部材431、432の外形は、第1貫通孔49に挿入可能なように、第1貫通孔49の内周面の形状より若干小さく形成されている。
【0054】
第2部材433は、断面形状が第1分割体41の第1溝413と同形状であり、第1溝413に挿通される基端部433Aと、第2分割体42の第1溝423の開口(開口部423A)からこの溝の内部(拡幅部423B)に進入可能な先端部433Bと、を有する。本実施形態では、第2部材433の断面形状はT字形状である。
【0055】
図4に示すように、第2棒材群44は、一対の第1部材441、442と、第2部材443とを有する。一方の第1部材441は、第2貫通孔50の船尾側(X正方向側)の端部に挿入される。他方の第1部材442は、第2貫通孔50の船首側(X負方向側)の端部に挿入される。第2部材443は、船尾側の第1部材441と船首側の第1部材442との中間位置にて第2貫通孔50に挿通される。
【0056】
一対の第1部材441、442は、断面形状が第2貫通孔50と同形状である。本実施形態では、第2貫通孔50の断面形状がH字形状であるので、第1部材441、442の断面形状も第2貫通孔50と同様のH字形状である。すなわち、一方の第1部材441は、第1分割体41の第2溝414の拡幅部414Bと同形状であり、Y方向に延在する第1平板部441Aと、第2分割体42の第2溝424の拡幅部424Bと同形状であり、Y方向に延在する第2平板部441Bと、第2溝414の開口部414A及び第2溝424の開口部424Aと同形状であって、Z方向に延在して第1平板部441Aと第2平板部441Bとを連結する連結部441Cと、を有する。同様に、他方の第1部材442は、第1分割体41の第2溝414の拡幅部414Bと同形状であり、Y方向に延在する第1平板部442Aと、第2分割体42の第2溝424の拡幅部424Bと同形状であり、Y方向に延在する第2平板部442Bと、第2溝414の開口部414A及び第2溝424の開口部424Aと同形状であって、Z方向に延在して第1平板部442Aと第2平板部442Bとを連結する連結部442Cと、を有する。また、一対の第1部材441、442の外形は、第2貫通孔50に挿入可能なように、第2貫通孔50の内周面の形状より若干小さく形成されている。
【0057】
第2部材443は、断面形状が第2分割体42の第2溝424と同形状であり、第2溝424に挿通される基端部443Aと、第1分割体41の第2溝414の開口(開口部414A)からこの溝の内部(拡幅部414B)に進入可能な先端部443Bと、を有する。本実施形態では、第2部材443の断面形状はT字形状である。
【0058】
本実施形態において第1分割体41に設けられる第1溝413及び第2溝414と、第2分割体42に設けられる第1溝423及び第2溝424は、例えばワイヤ放電加工などの周知の加工手法を利用して形成することができる。
【0059】
本実施形態に係るライナー4を構成する第1分割体41、第2分割体42、第1棒材群43、及び第2棒材群44は、例えばステンレスベースの材料を使用して形成できる。
【0060】
本実施形態に係る筒状部材の一例としてのライナー4は、プロペラ軸3の軸方向に沿って分割される2つの部品(第1分割体41、第2分割体42)をプロペラ軸3まわりの周方向に組み合わせて構成される分割式筒状体と、第1分割体41及び第2分割体42において、周方向に対向して相互に接する2つの接合面(第1分割体41の第1接合面411と第2分割体42の第1接合面421、第1分割体41の第2接合面412と第2分割体42の第2接合面422に前記軸方向に沿って設けられ、2つの接合面が当接するときに接合面上の開口どうしが繋がることによって軸方向を軸線方向とする貫通孔(第1貫通孔49及び第2貫通孔50)を形成する一対の溝(第1分割体41の第1溝413と第2分割体42の第1溝423、第1分割体41の第2溝414と第2分割体42の第2溝424)と、軸線方向に沿って延在して形成され、貫通孔49、50に挿入されることで2つの部品を接合する棒材(第1棒材群43、第2棒材群44)と、を有する。軸方向に直交する断面における各溝の断面形状は、接合面上の開口の幅に対して底面側の幅が大きく形成される。
【0061】
この構成により、第1分割体41と第2分割体42の接合面どうしを当接させたときに一対の溝部により形成される貫通孔に棒材を挿入させるだけで、第1分割体41と第2分割体42とを強固に接合できるので、ライナー4を一例とする筒状部材の設置を容易にできる。同様に、貫通孔に挿入されている棒材を貫通孔から引き抜くだけで、第1分割体41と第2分割体42とを容易に分離できるので、ライナー4を一例とする筒状部材の取り外しも容易にできる。
【0062】
特に実施形態に係る筒状部材の適用例がライナー4である場合には、ライナー4が設置される船尾管シールシステム200においてライナー4を交換する作業が必要となるが、従来の円筒状に一体成形されるタイプのライナーの場合には、ライナー交換のために一旦プロペラ5をプロペラ軸3から取り外し、その後にライナーをプロペラ軸3から引き抜く手順が必要だったため、非常に手間がかかっていた。このような従来の問題に対して、本実施形態では分割式筒状体を備えるライナー4を適用できるため、ライナー4を分解すれば、プロペラ5をプロペラ軸3から取り外さずにライナー4をプロペラ軸3から取り外すことが可能となる。これにより、ライナー4の交換作業の負荷を軽減できる。
【0063】
さらに、貫通孔49、50を形成する各溝の形状が開口の幅に対して底面側の幅が大きく形成されるので、各貫通孔49、50の断面形状はZ方向の中央の接合面どうしの接触部分にてY方向の幅寸法が最も細くなり、接触部分よりZ正方向側及びZ負方向側の部分では相対的に幅寸法が大きくなる。また、このような形状の貫通孔49、50に挿入される各棒材の断面形状も同様である。このような貫通孔と棒材を用いることにより、貫通孔を形成する各溝の内側面を、この溝に挿入される棒材の側面と当接させることができるので、各溝が棒材に対してZ方向に抜けることを防止でき、この結果、外力が付加された場合などでも、第1分割体41と第2分割体42との想定外の離間を防止できる。また、各溝が棒材に対してY方向に移動するも防止できるので、第1分割体41と第2分割体42とのY方向へのズレの発生も防止できる。これにより、第1分割体41と第2分割体42とをより安定して接合できる。
【0064】
また、本実施形態では、第1分割体41と第2分割体42との接合構造が、第1分割体41と第2分割体42とが接合されてなる分割式筒状体の軸方向に沿って設けられる貫通孔に、同じく軸方向に沿って延在する棒材を挿入する構成である。この構成により、第1分割体41の接合面と第2分割体42の接合面とが当接する領域において、軸方向の全域に亘って棒材が介在するので、分割式筒状体の接合部分における液体や気体の漏れを抑制できる。また、この構成の場合、接合構造の各要素は、筒形状を形成する部材の内部に配置できる。これにより分割式筒状体を接合した後の筒状部材の外部には接合構造の各要素が露出しないので、各要素の劣化を抑制でき、筒状部材の長寿命化を図れる。
【0065】
また、第1分割体41と第2分割体42との接合構造が、接合面に設けられる一対の溝と、これらの溝により形成される貫通孔に挿入される棒材のみで済む、つまり接合面の幅寸法の内部のみに収めることができるので、分割式筒状体を備えるライナー4であっても、円筒状に一体成形されるタイプのライナーと筒状部4Aの肉厚を同程度に薄くできる。これにより、分割式筒状体を備えるライナー4などの筒状部材の軽量化を図ることができる。また、筒状部4Aの外周側にボルト締結部などの接合のための要素を設ける必要がないので、筒状部材の小型化も図れる。このような軽量化や小型化のメリットによって、筒状部材の適用分野を拡大でき、汎用性を向上できる。
【0066】
また、本実施形態に係る筒状部材の一例としてのライナー4では、棒材の一例としての第1棒材群43は、貫通孔49の軸線方向の両端に挿入される一対の第1部材431、432と、一対の第1部材431、432が貫通孔49の両端に挿入される状態における一対の第1部材431、432の中間位置にて貫通孔49に挿通される第2部材433と、を有する。一対の第1部材431、432は、軸方向に直交する断面における断面形状が貫通孔49と同形状である。第2部材433は、断面形状が一対の溝のうちの一方と同形状の基端部433Aと、一対の溝のうちの他方の開口から該溝の内部に進入可能な先端部433Bと、を有する。
【0067】
同様に、本実施形態に係る筒状部材の一例としてのライナー4では、棒材の一例としての第2棒材群44は、貫通孔50の軸線方向の両端に挿入される一対の第1部材441、442と、一対の第1部材441、442が貫通孔50の両端に挿入される状態における一対の第1部材441、442の中間位置にて貫通孔50に挿通される第2部材443と、を有する。一対の第1部材441、442は、軸方向に直交する断面における断面形状が貫通孔50と同形状である。第2部材443は、断面形状が一対の溝のうちの一方と同形状の基端部443Aと、一対の溝のうちの他方の開口から該溝の内部に進入可能な先端部443Bと、を有する。
【0068】
これらの構成により、貫通孔49、50と棒材との係合部分を孔の両端の船尾側の第1部材431、441と、船首側の第1部材432、442とが挿入する部分に限定できるので、ライナー4の組立作業や分解作業をより簡易にでき、作業効率を向上できる。
【0069】
[ライナー4の組立方法及び分解方法]
図5図8を参照してライナー4の組立方法について説明する。
【0070】
図5は、実施形態に係るライナー4の組み立て手順の第1段階を示す図である。図5に示すように、第1段階(挿通ステップ)では、第1分割体41の第1溝413に、第1棒材群43の第2部材433の基端部433Aを挿通させる。同様に、第2分割体42の第2溝424に、第2棒材群44の第2部材443の基端部443Aを挿通させる。また、第1段階では、第1分割体41の第2溝414と、第2分割体42の第1溝423とに、シール材が塗布される。なお、各溝413、424に挿通させる第2部材433、443にシール材を塗布してもよい。また、第1分割体41のピン挿入孔417にピン47が挿入され、第2分割体42のピン挿入孔428にピン48が挿入される。
【0071】
図6は、実施形態に係るライナー4の組み立て手順の第2段階を示す図である。図6に示すように、第2段階(当接ステップ)では、第1段階の後に第1分割体41の第1溝413の開口から突出する第2部材433の先端部433Bを、第2分割体42の第1溝423の開口に挿入させ、かつ、第2分割体42の第2溝424の開口から突出する第2部材443の先端部443Bを、第1分割体41の第2溝414の開口に挿入させることによって、分割式筒状体を構成する第1分割体41と第2分割体42のそれぞれの第1接合面411、421どうしと、第2接合面412、422どうしを当接する。このとき、第1段階においてシール材が塗布されているので、各溝423、414において第2部材の先端部433B、443Bが挿入される部分のうち隙間となる部分にはシール材が充填される。また、第2段階では、第2分割体42のピン挿入孔427にピン47が挿入され、第1分割体41のピン挿入孔418にピン48が挿入されて、これにより二本のピン47、48によって第1分割体41と第2分割体42との相対的な位置関係が一定に位置決めされる。
【0072】
図7は、実施形態に係るライナー4の組み立て手順の第3段階を示す図である。図7に示すように、第3段階(挿入ステップ)では、第2段階の後に第1分割体41の第1溝413と第2分割体42の第1溝423とにより形成される第1貫通孔49の軸線方向の両端の開口部のうち、ライナー4の船尾側の端面4D側の開口部から第1棒材群43の一方の第1部材431を挿入する。同様に、第2段階の後に第1分割体41の第2溝414と第2分割体42の第2溝424とにより形成される第2貫通孔50の軸線方向の両端の開口部のうち、ライナー4の船尾側の端面4D側の開口部から第2棒材群44の一方の第1部材441を挿入する。また、第3段階では、ボルト45が第1分割体41のボルト挿通孔416に挿入されて、第2分割体42のボルト螺合孔430に螺合され、ボルト46が第2分割体42のボルト挿通孔426に挿入されて、第1分割体41のボルト螺合孔420に螺合される。
【0073】
図8は、実施形態に係るライナー4の組み立て手順の第4段階を示す図である。図8に示すように、第4段階(挿入ステップ)では、第1貫通孔49の軸線方向の両端の開口部のうち、ライナー4の船首側の端面4E側の開口部から第1棒材群43の他方の第1部材432を挿入する。同様に、第2貫通孔50の軸線方向の両端の開口部のうち、ライナー4の船首側の端面4E側の開口部から第2棒材群44の他方の第1部材442を挿入する。
【0074】
ライナー4の分解方法は、組立方法の逆の手順で行うことができる。すなわち、船尾側の第1部材431、441と、船首側の第1部材432、442とを貫通孔49、50から引き抜く引き抜きステップと、引き抜きステップの後に、第2部材433、443の基端部433A、443Aが溝に挿入されている分割式筒状体の第1分割体41と第2分割体42の一方を他方から離間する離間ステップと、離間ステップの後に第2部材433、443を各溝413、424から抜き出す抜き出しステップと、を順番に行う。
【0075】
なお、例えば船舶300を所有する発注者がライナー4のみを製造者に発注して、製造者が仮組した状態のライナー4を注文者に発送する状況が生じ得る。この場合、発注者は受領した仮組されたライナー4を一旦分解して、所有する船舶300のプロペラ軸3の周囲でライナー4を組み立てて、ライナー4が本組される。
【0076】
このような状況では、上述の組立方法においては、船尾側の第1部材431、441と、船首側の第1部材432、442の軸線方向の長さは、図7図8を参照して説明した組立手順の第3段階及び第4段階(挿入ステップ)において貫通孔49、50に挿入されたときに貫通孔49、50の開口部から一端が突出する突出部を有するよう形成されて仮組の状態とするのが好ましい。この場合、上述の分解方法においては、引き抜きステップでは、突出部が把持されて外力が付加されることによって、船尾側の第1部材431、441と、船首側の第1部材432、442とが貫通孔49、50から引き抜かれる。これにより、船尾側の第1部材431、441と船首側の第1部材432、442の引き抜き作業をより簡便にでき、分解作業の効率を向上できる。
【0077】
また、このような状況では、ライナー4を本組する際には、図7図8を参照して説明した組立手順の第3段階及び第4段階(挿入ステップ)において船尾側の第1部材431、441と、船首側の第1部材432、442とを貫通孔49、50に挿入した後に、各部材の突出部を切除して船尾側の第1部材431、441と、船首側の第1部材432、442の開口部側の端面を分割式筒状体の軸方向の端面(すなわちライナー4の船尾側の端面4Dと船首側の端面4E)と面一に加工する工程(切除ステップ)を、第4段階の後に行うのが好ましい。これにより、本組の後に第1棒材群43と第2棒材群44の一部がライナー4の端面4D、4Eから突出しない形状となるので、外力の付加などによって第1棒材群43と第2棒材群44が破損したり抜け出すことを防止でき、ライナー4を高寿命化できる。
【0078】
[第1変形例]
図9は、第1変形例に係る棒材43A、44Aの一例を示す図である。上記実施形態では、第1棒材群43及び第2棒材群44は、それぞれ貫通孔49、50の軸線方向に沿って3つの部材に分割される構成を例示したが、軸線方向に沿って一本の棒材43A、44Aに置き換えてもよい。
【0079】
この場合、図9に示すように、棒材43A、44Aでは、軸線方向の各位置の断面形状がすべてH字形状となる。また、各棒材43A、44Aの軸線方向の長さLは、上記実施形態の各部材の長さの合計、例えば図9に示すように第1棒材群43の一方の第1部材431と他方の第1部材432と第2部材433のそれぞれの長さの合計Lと同一となるように形成されるのが好ましい。棒材43A、44Aは、それぞれ貫通孔49、50に挿通されることによって、第1分割体41と第2分割体42とを連結する。
【0080】
[第2変形例]
図10は、第2変形例に係る棒材群の第2部材434の一例を示す図である。上記実施形態では、例えば図4などに図示したように、第2部材433、443の先端部433B、443Bが断面形状においてZ方向に沿った延在方向において同一幅となるよう形成される構成を例示したが、先端部433B、443Bが他方の溝の内部に挿入可能な形状であればこれに限られない。
【0081】
例えば図10に示す第2部材434のように、先端部434Bが先端側に進むほど幅が小さくなる先細形状でもよい。なお、第2部材434の基端部434Aの形状は、上記実施形態の基端部433A、443Aと同様である。
【0082】
[第3変形例]
図11は、第3変形例に係る貫通孔49Aと棒材435の断面形状一例を示す図である。上記実施形態では、貫通孔49、50と、棒材群43、44の船尾側の第1部材431、441及び船首側の第1部材432、442の断面形状は共にH字形状である構成を例示したが、他の形状でもよい。要は、ライナー4の軸方向に直交する断面における各溝の断面形状は、接合面上の開口の幅に対して底面側の幅が大きく形成されればよい。例えば図11に示す第1分割体41の溝419と、第2分割体42の溝429のように、溝の開口に対して溝の底面に進むにつれて徐々にY方向の幅寸法が増加する形状でもよい。この場合、2つの溝419、429によって形成される貫通孔49Aの断面形状は、接合面411、421の開口部分の幅が最も狭く、上下方向に沿って徐々に広がる砂時計型の形状となる。この場合、棒材435の断面形状も、貫通孔49Aと同様の砂時計型となる。
【0083】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0084】
上記実施形態では、実施形態に係る筒状部材の一例として、船尾管シールシステム200においてプロペラ軸3の周囲に設置されるライナー4を例示して説明したが、ライナー4と同様の構造の筒状部材であればライナー4以外の要素にも適用可能である。
【0085】
また、上記実施形態で筒状部材の一例として例示したライナー4は、第1分割体41と第2分割体42とを備えて筒形状が2つに分割される構成を例示したが、筒状部材は、筒状部材の軸方向に沿って分割される複数の部品を筒状の周方向に組み合わせて構成される分割式筒状体を備える構成であればよく、3つ以上の分割体が接合されて一体的な筒状体となる構成でもよい。
【0086】
また、上記実施形態で筒状部材の一例として例示したライナー4では、貫通孔49に挿入される第1棒材群43が、一方の第1部材431と他方の第1部材432と第2部材433とを有する構成を例示した。また、この構成において、一方の第1部材431が貫通孔49の船尾側の端部に挿入され、他方の第1部材432が貫通孔49の船首側の端部に挿入され、第2部材433が一対の第1部材431、432の中間位置に挿通される構成を例示した。この構成に対して、船尾側の第1部材431を貫通孔49に挿入しない構成としてもよい。つまり、貫通孔49の中央位置に第2部材433を挿通し、貫通孔49の船首側の端部に他方の第1部材432を挿入する構成としてもよい。言い換えると、第1棒材群43が貫通孔49の船首側端部に挿入される他方の第1部材432と、貫通孔49の中央位置に挿通される第2部材433との2個の部材からなる構成としてもよい。この構成の場合、貫通孔49の船尾側の端部は空洞となって、第1分割体41と第2分割体42とが第1棒材群43によって連結されない状態となる。しかしながら、この構成の場合でも、第1分割体41と第2分割体42とは、船尾側のフランジ部4Bにおいて二本のボルト45、46によってボルト締結されるので、ライナー4の船尾側の部分でも分割体41、42を充分に強固に連結させることができる。
【0087】
同様に、上記実施形態で筒状部材の一例として例示したライナー4では、貫通孔50に挿入される第2棒材群44が、一方の第1部材441と他方の第1部材442と第2部材443とを有する構成を例示した。また、この構成において、一方の第1部材441が貫通孔50の船尾側の端部に挿入され、他方の第1部材442が貫通孔50の船首側の端部に挿入され、第2部材443が一対の第1部材441、442の中間位置に挿通される構成を例示した。この構成に対して、船尾側の第1部材441を貫通孔50に挿入しない構成としてもよい。つまり、貫通孔50の中央位置に第2部材443を挿通し、貫通孔50の船首側の端部に他方の第1部材442を挿入する構成としてもよい。言い換えると、第2棒材群44が貫通孔50の船首側端部に挿入される他方の第1部材442と、貫通孔50の中央位置に挿通される第2部材443との2個の部材からなる構成としてもよい。この構成の場合、貫通孔50の船尾側の端部は空洞となって、第1分割体41と第2分割体42とが第2棒材群44によって連結されない状態となる。しかしながら、この構成の場合でも、第1分割体41と第2分割体42とは、船尾側のフランジ部4Bにおいて二本のボルト45、46によってボルト締結されるので、ライナー4の船尾側の部分でも分割体41、42を充分に強固に連結させることができる。
【0088】
また、船尾管シールシステム200に用いられるライナー4では、船尾側(X正方向側)の内径部分をテーパ形状にする場合がある。このようなケースにおいては、貫通孔49、50の船尾側の端部に挿入される第1部材431、441のうち貫通孔49、50から露出する部分も内径部分と同様のテーパ状に切断する必要がある。このため、ライナー4の組立工程において複雑な対応が必要になる。そこで、貫通孔49、50の船尾側の端部に第1部材431、441を挿入しない構成とすると、第1部材431、441の貫通孔49、50からの露出部分をライナー4の船尾側(X正方向側)の端面4Dと面一に加工する必要がなくなる。このため、ライナー4の組立工程において煩雑な作業が必要になる、という問題点を回避できる。
【0089】
なお、第1部材431、441を挿入しない構成の場合には、第1分割体41と第2分割体42のそれぞれの第1接合面411、421と第2接合面412、422にシール材(液体パッキン)を塗布してライナー4を組み立てることや、ライナー4のフランジ面(船尾側の端面4D)とプロペラ5のボス部5Aとの間にガスケット(シートパッキン)を挟むこと、などの対応をとることができる。これらの対応によって、フランジ部4B側(船尾側)に第1部材431、441が無い構成でも、上記実施形態と同様に、分割式筒状体の接合部分における液体や気体の漏れを抑制できる。
【0090】
また、ライナー4以外の筒状部材でも、貫通孔49、50の両端のうち一方において、ボルト締結などの棒材以外の要素によって分割体41、42が連結される構成の場合には、貫通孔49、50の一方の端部側に第1部材を挿入しない構成でもよい。これらの構成によっても、上記実施形態と同様に、ライナー4を一例とする筒状部材の設置や取り外しを容易にできることや、筒状部材の長寿命化を図れること、筒状部材の組立作業や分解作業をより簡易にでき、作業効率を向上できること、などの効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0091】
4 ライナー(筒状部材)
41 第1分割体(分割式筒状体)
411 第1接合面
412 第2接合面
413 第1溝
414 第2溝
42 第2分割体(分割式筒状体)
421 第1接合面
422 第2接合面
423 第1溝
424 第2溝
43 第1棒材群(棒材)
44 第2棒材群(棒材)
431、432、441、442 第1部材
433、443、434 第2部材
435 棒材
49 第1貫通孔
50 第2貫通孔
1 船尾管
3 プロペラ軸
5 プロペラ
10 船尾管シール装置
200 船尾管シールシステム
300 船舶
【要約】
筒状部材の一例としてライナーは、プロペラ軸の軸方向に沿って分割される2つの部品をプロペラ軸まわりの周方向に組み合わせて構成される分割式筒状体と、2つの部品において、周方向に対向して相互に接する2つの接合面に前記軸方向に沿って設けられ、2つの接合面が当接するときに接合面上の開口どうしが繋がることによって軸方向を軸線方向とする貫通孔を形成する一対の溝と、軸線方向に沿って延在して形成され、貫通孔に挿入されることで2つの部品を接合する棒材と、を有し、軸方向に直交する断面における溝の断面形状は、接合面上の開口の幅に対して底面側の幅が大きく形成される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11