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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ウェアラブル人工エラ
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/04 20060101AFI20241210BHJP
   A41D 13/012 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B63C11/04 A
A41D13/012
B63C11/04 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021520475
(86)(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 GB2019051734
(87)【国際公開番号】W WO2019243826
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】1810160.0
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520503289
【氏名又は名称】アンフィバイオ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100193116
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】亀井 潤
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0093262(KR,A)
【文献】国際公開第96/015027(WO,A1)
【文献】特開昭48-077111(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103029819(CN,A)
【文献】特開2013-095135(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01116504(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0003811(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/04
A41D 13/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中環境において着用者に酸素を供給するための人工エラ被服であって、
膜を通した空気の浸透を許容するとともに、該膜を通した水の浸透を防止するように構成される膜を備え、
前記膜は、空気だめを提供するように構成され、
前記膜は、可撓であり、前記着用者の胴体の一部又は全部を覆うように構成される、
人工エラ被服。
【請求項2】
請求項1に記載の人工エラ被服において、
(i)前記膜は、該膜と前記着用者との間に直接空気だめを提供するように構成され、又は、
(ii)前記膜は、該膜の複数の表面の間に空気だめを提供するように構成される、
人工エラ被服。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の人工エラ被服において、
前記膜は、前記空気だめに流体的に連通し、前記着用者の少なくとも顔の呼吸機能を覆うように構成されるマスク部を含む、
人工エラ被服。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の人工エラ被服において、
前記膜は、多孔質の疎水性材料又は超疎水性材料であり、あるいは、多孔質の疎水性材料又は超疎水性材料を含む、
人工エラ被服。
【請求項5】
請求項に記載の人工エラ被服において、
前記多孔質の疎水性材料は、疎水性被膜を含む、
人工エラ被服。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の人工エラ被服において、
前記膜又は該膜の外表面は、該外表面の表面積を増加させるための表面パターン及び/又は表面構成を含む、
人工エラ被服。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の人工エラ被服において、
前記人工エラ被服は、前記空気だめに吐き出された前記着用者の呼気から二酸化炭素を抽出し、該着用者の呼気中の未使用酸素の再呼吸を可能にするように構成されるリブリーザを備える、
人工エラ被服。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の人工エラ被服において、
前記人工エラ被服は、酸素を貯蔵するとともに、前記空気だめに酸素を供給するように構成される酸素タンクを備える、
人工エラ被服。
【請求項9】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の人工エラ被服を製造する方法であって、
人工エラ被服を所望の形状に鋳造又は三次元印刷し、印刷された被服は空気透過性及び水不透過性である、
方法。
【請求項10】
請求項に記載の方法において、
前記印刷した被服に一以上の空気透過性領域及び水不透過性領域を形成することをさらに含む、
方法。
【請求項11】
請求項又は請求項10に記載の方法において、
前記三次元印刷は、維を所望の形状に三次元印刷することを含み、
前記繊維は、疎水性材料と親水性材料との複合繊維を含み、
前記方法は、前記印刷した被服を水で洗浄し、該印刷した被服から前記親水性材料を取り除くことをさらに含む、
方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記疎水性材料は、疎水性エラストマーポリマーであるか、疎水性エラストマーポリマーを含み、
前記親水性材料は、親水性粒子であるか、親水性粒子を含む、
方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
前記疎水性エラストマーポリマーはリウレタンを含み、
前記親水性粒子は、リビニルアルコールを含み、
前記複合繊維における前記ポリビニルアルコールに対する前記ポリウレタンの重量比は、20:80~80:20である、
方法。
【請求項14】
請求項から請求項13のいずれか一項に記載の方法において、
前記印刷した被服を疎水性被膜又は超疎水性被膜でコーティングすることをさらに含む、
方法。
【請求項15】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の人工エラ被服において、
ス透過性防水膜は、疎水性材料及び親水性材料の混合物を含む前駆体組成物から形成される、
人工エラ被服。
【請求項16】
請求項15に記載の人工エラ被服において、
前記疎水性材料は、疎水性エラストマーポリマーであるか、疎水性エラストマーポリマーを含み、
前記親水性材料は、親水性粒子であるか、親水性粒子を含む、
人工エラ被服。
【請求項17】
請求項16に記載の人工エラ被服において、
前記疎水性エラストマーポリマーは、熱可塑性ポリウレタンを含み、
前記親水性粒子は、ポリビニルアルコールを含み、
前記混合物におけるポリビニルアルコールに対する熱可塑性ポリウレタンの重量比は、20:80~80:20である、
人工エラ被服。
【請求項18】
請求項から請求項14のいずれか一項に記載の方法において、
疎水性材料及び親水性材料の混合物を製造し、
疎水性材料及び親水性材料の前記混合物から膜を形成し、
前記膜を水で洗浄し、該膜から前記親水性材料を取り除くことにより該膜に細孔を形成する、ことによりス透過性防水膜を製造すること、を含む、
方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、
疎水性特性を付与するために前記膜の表面を処理することをさらに含む、
方法。
【請求項20】
請求項18又は請求項19に記載の方法において、
前記疎水性材料は、疎水性エラストマーポリマーであるか、疎水性エラストマーポリマーを含み、
前記親水性材料は、親水性粒子であるか、親水性粒子を含む、
方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、
前記疎水性エラストマーポリマーは、ポリウレタンを含み、
前記親水性粒子は、ポリビニルアルコールを含み、
前記混合物におけるポリビニルアルコールに対するポリウレタンの重量比は、20:80~80:20である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工エラ被服、人工エラ被服の製造方法、ガス透過性防水膜を作製するための前駆体組成物、及びガス透過性防水膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の活動により引き起こされる環境変化には、海面上昇や沿岸都市における部分的又は全体的な洪水が含まれる。また、増加する世界人口に対応するために、土地に建物を建てるスペースは減少の一途をたどっている。多くの国や都市は、水面又は水中における水生生物の環境を開発することにより、(また、海洋環境をより一般的に利用するためにも、)このような潜在的に劇的な変化に備えている。
【0003】
例えば、オランダは、水上に建設された都市の実験を行っている(「オランダ人建築家が住宅の未来をオフショアする(A Dutch Architect Offshores the Future of Housing)」、www.nytimes.com参照)。リゾートビーチには、水陸両用のホテルが建てられている(「水中ホテルの部屋がザンジバルのコストを開放する(Underwater hotel room opens off the cost of Zanzibar)」、www.dezeen.com参照)。日本企業の清水建設は、今世紀中に、東京湾と赤道帯に水上都市を建設することを目標としている(「植物のような都市の植物学的未来都市(The Botanical Future City Concept of a Plant-like City)」、www.shimz.co.jp参照)。
【0004】
このような潜在的に水没し得る都市部では、周辺の水を活用可能である。水深およそ10m以下では、人間が消費のために採取するのに十分な酸素があり、人間が見ることを可能にするのに十分な光の透過性があり、水圧は、人間が繰り返し潜水するのに耐えられる。
【0005】
水生昆虫の中には、水中環境で呼吸するように進化したものもいる。これは、多孔質の超疎水性層又はその表面を利用する複数の昆虫により達成され得る。表面が水没すると、超疎水性表面が空気保持器として機能するように、昆虫の体上には薄い空気層(すなわち、ガスエラ)が形成される。また、薄い空気層は、周囲の水とのガス交換インタフェースとしても機能する。薄い空気層内の酸素が枯渇すると、薄い空気層と周囲の水の間の酸素濃度差を補償するために、周囲の水に溶け込んだ酸素が超疎水性層を通過して薄い空気層に流れ得る。同様に、昆虫が吐き出した二酸化炭素が薄い空気層内に過剰に留まると、過剰な二酸化炭素は、超疎水性層を通過して周囲の水に溶け込み、薄い空気層と周囲の水との間の二酸化炭素濃度差を中和させ得る。ガス交換のこのメカニズムは、プラストロン呼吸として知られる。
【0006】
また、薄い空気層内の窒素は、薄い空気層から超疎水性層を通って拡散し、周囲の水に溶け込み得る。しかしながら、水に溶存する窒素は非常に少なく、薄い空気層から周囲の水への窒素の移動によって引き起こされる分圧不足は、超疎水性層を通して周囲の水から薄い空気層への酸素の移動が増加することにより補償される。図1は、このことを詳細に示す(「潜水昆虫と蜘蛛の物理的エラ:理論と実験(Physical gills in diving insects and spiders: theory and experiment)」、R.S. Seymour及びP.G.D. Matthews著、実験生物学ジャーナル(Journal of Experimental Biology)、2013年 216、164~170頁)。有効な境界層は、昆虫が拡散のみにより必要なガス交換を達成するために必要な厚さL及び表面積Aを有する停滞した(すなわち、流れていない)水の仮想的な層を示す。水力境界層は、超疎水性層の周りの水の流速の分布を示す。この流速は、薄い空気層の外表面からの距離が減少するにつれて減少する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、水中環境において着用者に酸素を供給するための人工エラ被服が提供される。人工エラ被服は、膜を通した空気の浸透を許容するとともに、膜を通した水の浸透を防止するように構成される膜を備える。その膜は、空気だめを提供するように構成されてもよい。
【0008】
膜は、膜と着用者との間に直接、例えば、着用者の肌上の単層に空気だめを提供するように構成されてもよい。あるいは、膜は、該膜の複数の表面の間に空気だめを提供するように構成されてもよい。例えば、膜は、複数の層又はその表面の間に空気だめを提供し、あるいは、封入してもよい。膜は、使用時に、空気用の密閉容器又は貯蔵器を効果的に提供してもよい。
【0009】
ユーザが呼吸するために、水を浸透させることなく、空気の浸透を許容するように構成される膜を有する人工エラ被服内に空気だめを設けることにより、人工エラ被服は、長時間又は無期限に、着用者が水中で呼吸することを可能にし得る。人工エラ被服の膜を通した空気の浸透により、周囲の水に溶け込んだ酸素ガスが膜を透過して、着用者が呼吸するための酸素を供給することを可能にしてもよい。同時に、膜により、吐き出された二酸化炭素が膜を透過して周囲の水に溶け込むことを可能にしてもよい。このようにして、人工エラ被服内において最適な呼吸環境を維持することが可能となり得る。
【0010】
したがって、人工エラ被服により、着用者は、スキューバダイビングや深海ダイビングに通常必要な重くてかさばる機器を必要とすることなく、フリーダイビング(すなわち、ダイバーが呼吸を止めて機器なしで行うダイビング)中に通常達成可能であるよりも長く水中に入ることを可能にし得る。また、着用者は、酸素呼吸に必要な重い追加の機器なしで、呼吸管を介してシュノーケリングマスクに水が流れてしまうというリスクなく、シュノーケリング中に通常達成可能な深さ以上に深い深さで泳ぐことを可能にし得る。
【0011】
膜は、空気だめに流体的に連通し、着用者の少なくとも顔の呼吸機能を覆うように構成されるマスク部を備えてもよい。マスク部は、着用者の顔にフィットし、あるいはシールするように形成される凹み又はシェルであってもよく、あるいは、それを含み得る。シールは、公知のシュノーケリング/ダイビング用マスクシール(ゴムやシリコーンなどの可撓性材料)と同様であってもよい。膜は、マスク部に取り付けられていてもよく、取り付け可能であってもよい。膜は、着用者の体の少なくとも一部、例えば、着用者の胴体の一部又は全部、あるいは着用者の一以上の胴体以外の箇所(手足)の一部又は全部の上に配置されるか、あるいは、それらを覆うように構成されてもよい。人工エラ被服の表面積は、着用者の呼吸要求に応じて変更されてもよい。また、人工エラ被服は、例えば、長袖又は半袖、又は脚部を有する被服に対する着用者の個人的な好みに応じて変更されてもよい。
【0012】
マスク部は、プラスチック又はポリマー材料、例えば、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート、又は任意の他の適当な水中マスク材料から形成すればよく、あるいは、それらを含んでもよい。マスク部は、全体的に又は部分的に、剛性、半剛性、あるいは可撓であればよい。マスク部は、着用者が使用するときに液密シールを形成するために、その縁の周りに可撓性材料又はシーリング材料を含んでもよい。
【0013】
膜は、可撓性材料から形成されてもよく、あるいはそれを含んでもよい。可撓性材料は、水中と陸上の両方において、着用者の制約されない自然な動きを可能にし得る。したがって、着用者が短時間に複数回のダイビングを行い得る状況において、着用者の快適さを改善し得る。
【0014】
膜は、多孔質の疎水性材料又は超疎水性材料であってもよく、それを含んでもよい。多孔質の疎水性材料又は超疎水性材料は、多孔質熱可塑性ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリブタジエン、ポリエステル、ネオプレンもしくは他の重合材料、又はプラスチックの少なくとも一つを含めばよい。多孔質疎水性材料は、体積比で20~80%の気孔率(多孔度)を有していてもよい。
【0015】
ポリジメチルシロキサンは、引き裂きに対する耐性が高いため、深海ダイビング用被服のための有用な膜材料であり得る。
【0016】
多孔質熱可塑性ポリウレタンは、体積比で、20~80%の気孔率を有していればよい。例えば、気孔率が高いほど、ガス交換率が高くなり、水圧が低いために膜を通して水が浸透する可能性が低い浅瀬において、人工エラ被服を利用することができる。容易に制御可能な気孔率を有する材料を含む被服は、広範囲の水中用途のために広範囲の異なる気孔率を有する異なる被服を製造することを可能にし得る。
【0017】
疎水性材料は、着用者が例えば陸上で乾燥した状態を維持することを可能にし得る。一実施形態では、人工エラ被服が防水性の膜を含むので、人工エラ被服内に囲まれた着用者の体の一部は、水中でも乾燥したままでいることができ得る。また、疎水性材料が人工エラ被服の表面上の水をはじくので、人工エラ被服は、着用者が陸上にいるときに乾燥したままでいることができる。多くの典型的なフリーダイビング又はスキューバダイビングの被服とは対照的に、水分保持による人工エラ被服の重量の増加は打ち消される。したがって、着用者が短時間に複数回のダイビングを行い得る状況において、(すなわち、従来のダイビング機材あるいはウェットスーツなどの被服と比較して)着用者の快適さを改善し得る。
【0018】
多孔質疎水性材料は、疎水性被膜を含んでもよい。疎水性被膜は、フルオロアルキルベースのポリマー疎水性被膜を含んでもよい。フルオロアルキルベースのポリマー疎水性被膜は、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルコキシポリマー、パーフルオロエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロスルホン酸、ポリハロゲン化炭化水素ポリマー、ポリプロピレン、あるいは、ポリテトラフルオロエチレンであってもよく、及び/又は、それらを含んでもよい。
【0019】
膜又は膜の外表面は、外表面の表面積を増加するための表面パターン及び/又は表面形状、又は構成を含んでもよい。人工エラ被服の表面積を増加することにより、膜を通して酸素及び二酸化炭素のより効果的な浸透を可能にし得る。したがって、着用者が水中で適切に呼吸することができるように、十分な速度で十分な量の新鮮な酸素を提供し(および十分な量の吐き出された二酸化炭素を取り除く)ことにより、着用者の呼吸要求をより効率的に満たすことができる。
【0020】
表面積の増加は、外表面において、一以上の起伏、折り目、ポケット、ひだ、プリーツなどにより提供されてもよい。膜の材料又は膜の外表面の材料は、特定の潜水深度に対応する特定の水圧に耐えるように選択されてもよい。
【0021】
人工エラ被服は、リブリーザを含んでもよい。リブリーザは、空気だめに吐き出された着用者の息から二酸化炭素を抽出する(取り出す)ように構成されてよい。リブリーザは、着用者が呼気(吐き出した息)中の未使用酸素の再呼吸を可能にするように構成されてよい。人工エラ被服の表面積が、着用者が追加の酸素供給なしに呼吸するのに十分な酸素を提供するのに十分な大きさではない場合、あるいは、空間内の酸素が例えば長いダイビングで使い果たされた場合には、リブリーザは、人工エラ被服が着用者の呼吸要求を満たすことを可能にするために使用されてもよい。
【0022】
人工エラ被服は、酸素を貯蔵するとともに、空気だめに酸素を供給するように構成される酸素タンクを含んでもよい。人工エラ被服の表面積が、着用者が追加の酸素供給なしに呼吸するのに十分な酸素を提供するのに十分な大きさではない場合には、人工エラ被服が着用者の呼吸を満たすことを可能にするために、酸素タンクが用いられてもよい。人工エラ被服は、着用者が呼吸するのに必要な酸素の割合(例えば、10%~100%)を供給すればよく、酸素タンクは、必要に応じて、人工エラ被服のガス透過性特性に応じて残存酸素(例えば、90%~0%)を供給してもよい。このように、酸素タンクは、スキューバダイビングや深海ダイビングに通常使用される酸素タンクよりも小さな容量を有していてもよい。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、膜及び/又は人工エラ被服の製造方法が提供される。その製造方法は、第1の態様の膜及び/又は人工エラ被服を製造するために用いられてよい。この方法は、人工エラ被服を所望の被服形状に三次元印刷することを含んでもよい。印刷した被服は、空気透過性及び水不透過性(防水性)である。三次元印刷は、付加製造(3Dプリント)技術を利用すればよい。この方法は、所望の被服形状への繊維の三次元印刷、粉末ベースの三次元印刷、及び/又は液体又はペーストベースの三次元印刷を含んでもよい。あるいは、人工エラ被服を鋳造してもよい。この方法は、本発明の第1の態様による人工エラ被服を製造するために用いられてもよい。
【0024】
人工エラ被服の三次元印刷は、他の製造方法を用いて製造するのがより困難又は不可能であり得る複雑な形状を設計し、製造することを可能にしてもよい。特に、三次元印刷は、外表面の表面積を増加させるために、複雑な形状の外表面を有する被服を製造することを可能にし得る。また、三次元印刷を用いて、ワンピースの被服を製造してもよい。ワンピースの被服は、水中でマルチピースの被服の接合位置において、人工エラ被服と着用者の間の空間に水が侵入するリスクを低減又は排除することができる。
【0025】
この方法は、印刷した被服に一以上の空気透過性領域及び水不透過性領域を形成することを含んでもよい。例えば、三次元印刷を用いて細孔を生成することにより、一以上の空気透過性領域及び水不透過性領域を形成してもよい。
【0026】
繊維は、疎水性材料及び親水性材料の複合繊維を含んでもよい。疎水性材料は、疎水性エラストマーポリマーであってもよく、それを含んでもよい。親水性材料は、親水性粒子を含んでもよい。疎水性エラストマーポリマーは、熱可塑性ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリジメチルシロキサン、ネオプレン、ポリエステル、及び/又は、あらゆる他の重合プラスチック又は材料の少なくとも一つを含んでよい。親水性粒子は、ポリビニルアルコール、結晶塩、及びポリグリコール酸の少なくとも一つを含んでよい。この方法は、印刷した被服を水で洗浄し、印刷した被服から親水性材料を取り除くステップをさらに含んでもよい。
【0027】
疎水性材料及び親水性材料の複合物を含む繊維を三次元印刷に利用することにより、繊維の組成を変えることで、印刷した被服の気孔率を容易かつ繊細に制御することができる。したがって、異なる水中用途に適した幅広い被服を製造することができる。材料の展性は、防水「容器(コンテナ)」タイプの被服を製造することを有利に提供する。
【0028】
繊維は、熱可塑性ポリウレタン及びポリビニルアルコールの複合繊維であってもよく、それを含んでもよい。複合繊維におけるポリビニルアルコールに対する熱可塑性ポリウレタンの重量比は、20:80~80:20であってもよい。複合繊維におけるポリビニルアルコールに対する熱可塑性ポリウレタンの重量比は、30:70~70:30であってもよく、さらに、40:60~60:40であってもよい。
【0029】
この方法は、疎水性被膜又は超疎水性被膜で印刷した被服をコーティングするステップをさらに含んでもよい。この方法は、フルオロアルキルベースのポリマー疎水性被膜で印刷した被服をコーティングするステップをさらに含んでもよい。フルオロアルキルベースのポリマー疎水性被膜は、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルコキシポリマー、パーフルオロエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン、あるいはパーフルオロスルホン酸のいずれか一つ以上であればよく、それらを含んでもよい。
【0030】
疎水性被膜は、着用者が例えば陸上で乾燥した状態を保つことを可能にし得る。人工エラ被服が防水性の膜を含むので、人工エラ被服内に包まれている着用者の体の一部は、水中でも乾燥した状態を保ち得る。また、疎水性被膜が人工エラ被服の表面上の水をはじくので、人工エラ被服は、着用者が陸上にいるときも乾燥したままでいることができ得る。多くの典型的なフリーダイビング又はスキューバダイビング用の被服とは対照的に、水分保持による人工エラ被服の重量増加は打ち消され得る。したがって、着用者が短時間に複数回のダイビングを行い得る状況において、着用者の快適さを改善し得る。
【0031】
本発明の第3の態様によれば、ガス透過性防水膜を作製するための前駆体組成物が提供され得る。前駆体組成物は、疎水性材料及び親水性材料の混合物を含む。前駆体組成物は、本発明の第1の態様の人工エラ被服を作製するために用いられてもよく、本発明の第2の態様の方法で用いられてもよい。疎水性材料は、疎水性エラストマーポリマーであってもよく、それを含んでもよい。
【0032】
親水性材料は、親水性粒子であってもよく、それを含んでもよい。疎水性エラストマーポリマーは、熱可塑性ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリジメチルシロキサン、ネオプレン、ポリエステル、及び/又は任意の他の重合プラスチック又は材料の少なくとも一つを含んでもよい。親水性粒子は、ポリビニルアルコール、結晶塩、及びポリグリコール酸の少なくとも一つを含んでもよい。混合物は、ポリビニルアルコールに対する熱可塑性ポリウレタンの重量比が20:80~80:20となるように、熱可塑性ポリウレタン及びポリビニルアルコールを含んでもよい。混合物におけるポリビニルアルコールに対する熱可塑性ポリウレタンの重量比は、30:70~70:30であってもよく、さらに、40:60~60:40であってもよい。
【0033】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第3の態様にかかる前駆体組成物を用いて作製されたガス透過性防水膜が提供される。ガス透過性防水膜は、第1の態様にかかるガス透過性防水膜であってもよい。
【0034】
本発明の第5の態様によれば、ガス透過性防水膜の製造方法が提供される。ガス透過性防水膜は、第1の態様又は第4の態様にかかるガス透過性防水膜であってもよい。その製造方法は、疎水性材料及び親水性材料の混合物を作製することを含む。その製造方法は、疎水性材料及び親水性材料の混合物から膜を形成することをさらに含む。また、その製造方法は、膜を水中で洗浄して膜から親水性材料を取り除ことにより、膜内に細孔を作製することを含む。その製造方法は、本発明の第1の態様にかかる人工エラ被服を作製するのに用いられてもよい。
【0035】
この製造方法は、膜の表面を処理して、該膜の表面に疎水性特性を付与することをさらに含んでもよい。
【0036】
膜の表面を処理するステップは、膜の表面を疎水性被膜でコーティングすることを含んでもよい。疎水性被膜は、フルオロアルキルベースのポリマー疎水性被膜を含んでもよい。その代わりに、膜の表面を処理するステップは、膜の表面上の材料と一以上の物質とを反応させることにより、膜の表面の界面化学を変化させることを含んでもよい。
【0037】
疎水性材料は、疎水性エラストマーポリマーであってもよく、それを含んでもよい。親水性材料は、親水性粒子であってもよく、それを含んでもよい。疎水性エラストマーポリマーは、熱可塑性ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリジメチルシロキサン、ネオプレン、ポリエステル、及び/又は任意の他の重合プラスチック又は材料の少なくとも一つであってもよく、それらを含んでもよい。親水性粒子は、ポリビニルアルコール、結晶塩、及びポリグリコール酸の少なくとも一つであってもよく、それらを含んでもよい。混合物は、ポリビニルアルコールに対する熱可塑性ポリウレタンの重量比が20:80~80:20であるように、熱可塑性ポリウレタン及びポリビニルアルコールを含んでもよい。混合物におけるポリビニルアルコールに対する熱可塑性ポリウレタンの重量比は、30:70~70:30であってもよく、さらに、40:60~60:40であってもよい。
【0038】
第6の態様では、第5の態様のいずれかの方法により製造されるガス透過性防水膜を含む被服を提供する。
【0039】
第7の態様では、第5の態様のいずれかの方法により製造されるガス透過性防水膜を含む建物又は構造を提供する。
【0040】
本発明の第1、第2、第4、第5、第6、及び第7の各態様では、細孔サイズは、全方向でおよそ250マイクロメートル以下であればよく、任意に、全方向でおよそ100マイクロメートル以下であればよい。このような細孔サイズは、膜の疎水性特性又は超疎水性特性により提供されるガス透過性と防水性のバランスを取るのに最適である。膜の気孔率は、20%~80%であればよく、任意に、30%~70%であればよく、さらに任意に、40%~60%であればよい。膜の気孔率は、特定の用途に適合するように調整することができる。例えば、浅瀬でのダイビングでは水圧が低くなるので、膜は、膜を通したガス透過性を提供するために、より高い気孔率を有してもよい。
【0041】
本発明の別個の態様及び/又は実施形態に照らして説明する特徴は、一緒に用いられてもよく、あるいは、可能な限り交換可能であってもよい。同様に、簡潔のために、単一の実施形態又は態様に照らして特徴を説明するが、これらは、別個に、あるいは、あらゆる適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。人工エラ被服あるいは膜に関連して説明する特徴は、方法に関して規定可能な対応する特徴を有してもよく、その逆もまた同様であり、これらの実施形態を具体的に想定する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
以下の添付図面を参照して、一例として本発明を説明する。
図1図1は、水生昆虫におけるプラストロン呼吸の概略を示す。
図2-1】図2A図2B、及び図2Cは、それぞれ、一実施形態における人工エラ被服の正面図、側面図、及び背面図を示す。
図2-2】図2D図2E、及び図2Fは、それぞれ、別の実施形態における人工エラ被服の正面図、側面図、及び背面図を示す。
図3図3は、本開示による人工エラ被服を通した酸素ガス交換及び二酸化炭素ガス交換の概略を示す。
図4図4は、本開示による人工エラ被服の表面構成を示す。
図5図5A図5Eは、本開示による多孔質超疎水性膜のガス交換特性を調査するための実験装置の種々の構成要素を示す。
図6図6は、図5の実験装置を用いて実施する実験における時間の関数としての酸素濃度のプロットを示す。
図7図7A及び図7Bは、本開示による多孔質膜の光学顕微鏡写真を示す。
図8図8は、図7A及び図7Bに示す多孔質膜上で実施された図5の実験装置を用いて行う実験における時間の関数としての酸素濃度のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の別個の態様及び実施形態に照らして説明する特徴は、一緒に用いられてもよく、あるいは、可能な限り交換可能であればよい。同様に、簡潔のために、単一の実施形態に照らして特徴を説明するが、これらは、別個に、あるいは、あらゆる適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。人工エラ被服に関連して説明する特徴は、組成物の製造方法に関して規定可能な対応する特徴を有してもよく、これらの実施形態は具体的に想定される。
【0044】
図2A~2Fは、本発明の一実施形態における人工エラ被服100を示す。人工エラ被服100は、着用者に着用されるように設計されており、水中呼吸をサポートし、水中と水の外の両方において快適な被服を提供するように構成される。例えば、人工エラ被服100は、特に、日常生活の一部として、浅瀬でのダイビングを頻繁に行う個人に適し得る。人工エラ被服100は、ダイビング後に必ずしも脱ぐ必要はなく、水中と同様に陸上でも着用可能である。
【0045】
人工エラ被服100は、マスク部105と、膜又は本体部110とを備える。マスク部105は、着用者の顔の呼吸機能(すなわち、口及び/又は鼻)を覆うように構成される。本体部110は、少なくとも着用者の胴体を覆うように構成される。いくつかの例では、本体部110は、着用者の胴体及び一以上の手足(すなわち、腕あるいは足)を覆うように構成されてもよい。他の例では、本体部110は、着用者の胴体及び手足よりも着用者の体の小さな割合、例えば、着用者の肩及び上部胴体を覆うように構成されてもよい。他の例では、人工エラ被服100は、着用者の頭部全体を覆うように構成されてもよく、及び/又は、本体部110を含まなくてもよい。
【0046】
一実施形態では、人口エラ被服100は、水の侵入の一以上の潜在的なポイントにおいて着用者の周りに確実にフィットすることを保障するように製造されてよい。例えば、人工エラ被服100は、被服の任意の腕の長さに応じて、着用者の顔の周り、及び任意選択で、着用者の肩、肘、手首、又はいずれかの腕の他の点の周りに確実にフィットすることを保障するように製造されてよい。同様に、人口エラ被服100は、被服の任意の脚の長さに応じて、着用者の腰、太もも、ふくらはぎ、足首、又は脚の他の点の周りに確実にフィットすることを保障するように製造されてよい。人工エラ被服100は、例えば、着用者の顔又は頭の周りにマスクを装着し、あるいは、密封することにより、着用者の首及び顔の周りに確実にフィットすることを保障するように製造されてよい。人工エラ被服100は、着用者が人工エラ被服100を着用するとき、そのような水の侵入の潜在的なポイントにおいて、着用者が自分自身の上に人工エラ被服100を引き伸ばさなければならないように人工エラ被服100の関連部分を製造することにより、水の侵入の潜在的なポイントにおいて着用者の周りに確実に装着(フィット)するように構成されてよい。人工エラ被服100のそのようなポイントにおける人工エラ被服100の弾性変形により、着用者が人工エラ被服100を着用することを可能にし得、人工エラ被服100のその後の弾性応答により、人工エラ被服100は、水の侵入の潜在的なポイントにおいて着用者の体の周りで収縮し、これにより、人工エラ被服100が着用者の周りに密閉(シール)を形成するのを保障し得る。
【0047】
あるいは、人工エラ被服100は、着用者が人工エラ被服100を着用可能にするための穴が形成された水の侵入の潜在的なポイントにおいて、水の侵入を防止するように構成されたシールを備えてもよい。
【0048】
図2A図2Cに示す一実施形態では、マスク部105と本体部110はともに、人工エラ被服100と着用者の間に空間を形成するように構成される。人工エラ被服100と着用者との間に閉じ込められた空気は、着用者と人工エラ被服100の間の内部空間内で循環し、これにより、水中で人工エラ被服100を着用している間、着用者は息を吸うことができる。本実施形態では、人工エラ被服100は、膜を通した空気の浸透を許容するが、膜を通した水の浸透を防止するように構成される単層膜を備える。
【0049】
図2D図2Fに示す異なる実施形態では、層110、110’又は本体部110の表面の間に、空気だめ111が設けられる。例えば、空気だめ111は、二重層膜内又は(例えば、それ自体の上で膜110を囲んだり、折りたたんだりすることにより形成される)エンベロープ110内に形成されればよい。図2D図2Fは、点線110、110’により本実施形態の空気だめ111を示す。
【0050】
いずれの実施形態においても、人工エラ被服100は、着用者が水中で人工エラ被服100を着用している間、着用者が呼吸するための新鮮な酸素の供給を補充するように構成される。着用者の呼吸の結果として、人工エラ被服100と着用者の間又は人工エラ被服100の層間の空間内の酸素濃度の枯渇は、空気だめ111内の空気と周囲の水との間の酸素濃度差を引き起こす。この濃度差は、周囲の水に溶け込んだ酸素ガスを強制的に膜を通して透過させ、人工エラ被服100と着用者の間又は人工エラ被服100の層間の空気だめ111に入り込ませる駆動力として作用する。同様に、着用者の呼吸の結果として、空気だめ111内の二酸化炭素濃度の増加は、空気だめ111内の空気と周囲の水の間の二酸化炭素濃度差を引き起こす。この濃度差は、空気だめ111内の二酸化炭素を強制的に膜を通して透過させ、周囲の水に溶け込ませる(フィックの拡散の第1法則による)駆動力として作用する。このようにして、空気だめ111内の空気組成は、着用者が呼吸するのに最適な組成に保たれ得る。図3は、この処理を概略的に示す。
【0051】
着用者が水中と陸上の両方で人工エラ被服100を着用している間、着用者が自然に動くことを可能にするために、膜110(又は110、110’)は、少なくとも部分的に可撓性材料であるか、可撓性材料を含む。あるいは、膜110(又は110、110’)は、例えば、水深が増して増加した水圧に対応するために、あるいは、荒い水中状態や海洋生物からの攻撃から着用者を保護するために、剛体材料を含んでもよい。また、剛体材料を含む被服は、例えば、軍事用途に有用であってもよい。
【0052】
膜110(又は110、110’)は、多孔質の疎水性材料又は超疎水性材料を含んでもよい。多孔質の疎水性材料又は超疎水性材料は、膜110(又は110、110’)を通した空気の浸透を許容するとともに、水に対する膜110(又は110、110’)の不透過性を改善する。また、疎水性材料又は超疎水性材料によって水が材料内に又は材料の表面に保持されていないので、着用者は、人工エラ被服100を着用している間、乾燥したままでいることができる。また、人工エラ被服100が水を保持していないことは、典型的なダイビング機材に共通の課題である水中での使用後の重さの変化が人工エラ被服100にはないことを意味する。これは、使用後に乾燥させる必要がないので、着用者が人工エラ被服100を続けざまに複数回着用しても快適である。
【0053】
多孔質の疎水性材料又は超疎水性材料は、多孔質熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含んでもよい。TPUの多孔率は、体積比で20~80%であればよい。
【0054】
多孔質の疎水性材料又は超疎水性材料は、フルオロアルキルベースのポリマー被膜を含んでもよい。フルオロアルキルベースのポリマー被膜は、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルコキシポリマー、パーフルオロエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン、及びパーフルオロスルホン酸の少なくとも一つを含んでもよい。フルオロアルキルベースのポリマー被膜は、膜110(又は110、110’)を通した水の浸透を防止するために、疎水性特性又は超疎水性特性を提供してもよい。
【0055】
膜110(又は110、110’)は、表面を有するか、表面パターン及び/又は表面形状を有する外表面、又は表面/外表面の表面積を増加するように構成される構成を含む。表面パターン又は表面形状は、(本体部110のみを示す)図4A及び図4Bに示すように、人工エラ被服100の外表面上に複数の隆起バンド(例えば、複数の半円筒形バンド)を含む起伏のある表面であってもよい。人工エラ被服100の外表面の表面積を増加させるために、溝や隆起、もしくはくぼみなどの他の表面パターンを用いてもよい。表面パターンは、(例えば、1000マイクロメートル未満の寸法を有する特徴を含む)微細パターンであってもよい。微細パターンは、人工エラ被服100の表面機械加工により生成されてもよい。人工エラ被服100の外表面の表面積が大きいほど、人工エラ被服100と着用者との間の空間への膜を通した酸素及び二酸化炭素の浸透がより効果的になる(すなわち、より高い浸透速度になる)。これにより、人工エラ被服100は、着用者の呼吸要求を満たすために、着用者への新鮮な酸素の供給を補充することができる(すなわち、着用者が適切に呼吸することができるほど十分な量の新鮮な酸素を供給することによって)。また、図4A及び図4Bに示すように、表面形状/表面パターンの構成は、空気だめ111の容積を増加させるように作用してもよい。図4A及び図4Bに示すような半円筒形隆起バンドの場合、各隆起バンドは、空気だめ111内に追加の空気ポケットを提供してもよい。
【0056】
図2A図2Fに示す人工エラ被服100は、リブリーザ120を含む。リブリーザ120は、着用者に対して、人工エラ被服100の背面に配置されるが、人工エラ被服100のあらゆる位置に配置されてもよい。リブリーザ120は、着用者の呼気から二酸化炭素を抽出し、着用者が以前に吐き出した二酸化炭素を吸い込むことなく、呼気中の未使用酸素を利用することを可能にする。流線(フローライン)115は、着用者の口又は鼻からリブリーザ120への呼気の流れる方向を示す。呼気は、人口エラ被服100のマスク部105から人口エラ被服100の前側を横切って人口エラ被服100の本体部110に向かって流れてもよく、その後、人口エラ被服100の横方向の側面の周りを流れ、後側を横切ってリブリーザ120に向かって流れてもよい。呼気は、満タンの空気だめ111全体に流れてもよい。リブリーザ120が呼気から二酸化炭素を抽出すると、再呼吸可能な空気は、流線125により示されるように、着用者の首及び肩周りの本体部110の背面を流れることによって、リブリーザ120から人工エラ被服100のマスク部105に向かって流れてもよい。再呼吸可能な空気がマスク部105に到達すると、着用者は、再呼吸可能な空気を呼吸することができる。リブリーザ120は、膜110(又は110、110’)と協働し、呼吸可能な空気を空気だめ111に供給するように構成される。
【0057】
あるいは、呼気及び/又は再呼吸可能な空気は、空気だめ111内の十分に規定したいずれの流れパターンにも従わず、空気だめ111内でランダムに拡散してもよい。
【0058】
その代わりに又はそれに加えて、人工エラ被服100は、酸素タンクを含んでもよい(図示せず)。酸素タンクは、着用者の呼吸を助けるために空気だめ111に補助酸素を供給するように構成されてもよい。酸素タンクは、空気だめ111内の酸素濃度が所定の閾値を下回ったことに応じて、補助酸素を供給するように構成されてもよい。空気だめ111内の酸素濃度は、空気だめ111内に配置された酸素センサにより計測することができる。酸素タンクは、酸素を空気だめ111に供給する膜110(又は110、110’)及び/又はリブリーザ120と協働するように構成されればよい。
【0059】
あるいは、人工エラ被服100は、リブリーザ120又は酸素タンクを備えなくてもよい。人工エラ被服100は、人工エラ被服100の膜110(又は110、110’)を通した酸素の浸透により、十分な酸素を空気だめ111に供給するのに十分な大きさの表面積を有するように構成されてよい。
【0060】
人工エラ被服100は、種々の製造技術を用いて製造されてもよい。例えば、人工エラ被服100は、三次元印刷(3D印刷)などの付加層製造技術を用いて製造されてもよい。付加層製造技術を用いて人工エラ被服100を製造することにより、高い表面積を有する複雑な形状の製造が可能になり、空気だめ111内の効率的な空気循環を可能にすることができる。両特徴は、着用者にとって最適な呼吸条件を維持するための空気だめ111との効率的なガス交換(すなわち、酸素及び二酸化炭素)にとって望ましい。3D印刷可能性のおかげで、コンピュータ演算を用いて、及び/又はパラメトリック設計を用いて、所望の形状を有する人工エラ被服100を作成することができる。あるいは、人工エラ被服100は、鋳造技術を用いて製造されてもよい。鋳造処理のための型は、複雑な表面形状または表面パターンを付与するように設計されてもよく、人口エラ被服100に高い表面積および空気だめ内の効率的な空気循環を与えることができる。
【0061】
粉末ベースの3D印刷を用いて、人工エラ被服100を3D印刷してもよい。液体又はペーストベースの三次元印刷を用いて、人工エラ被服100を3D印刷してもよい。熱溶解積層法技術(すなわち、溶融フィラメント製造方法)を用いた3D印刷を介して、人工エラ被服100は製造されてもよい。繊維は、多孔質材料又は非多孔質材料の繊維を含めばよい。繊維は、単一成分材料又は複合材料を含んでもよい。繊維は、疎水性材料又は超疎水性材料を含んでもよい。
【0062】
繊維は、疎水性材料及び親水性材料の複合繊維を含めばよい。疎水性材料は、疎水性エラストマーポリマーであってもよく、それを含んでもよい。親水性材料は、親水性粒子であってもよく、それを含んでもよい。疎水性エラストマーポリマーは、熱可塑性ポリウレタン、ポリブタジエン、及びポリジメチルシロキサンの少なくとも一つを含めばよいが、他の疎水性エラストマーポリマー材料を用いてもよい。親水性粒子は、ポリビニルアルコール、結晶塩、及びポリグリコール酸の少なくとも一つを含めばよいが、他の親水性微粒子材料を用いてもよい。繊維は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)及びポリビニルアルコール(PVOH)の複合繊維を含んでもよい。複合繊維におけるTPU:PVOHは、重量比でおよそ20:80~80:20であればよい。あるいは、複合繊維におけるTPU:PVOHは、重量比でおよそ30:70~70:30であってもよく、さらに、重量比でおよそ40:60~60:40であってもよい。複合物TPU及びPVOH繊維の初期組成は、人工エラ被服100の膜の最終的な気孔率を決定する(後述する)。複合繊維に用いられるPVOH粒子の粒径により、TPU及びPVOHの複合繊維を用いて生成された細孔サイズが決定される。(細孔サイズが大きいほど、透過性が高くなるので)所望の細孔サイズに応じて、複合繊維に用いられるPVOH粒子の粒径を1~100マイクロメートルにするのが好ましい。複合繊維に用いられるTPU粒子の粒径は、複合繊維に用いられるPVOH粒子の粒径と実質的に等しくてもよい。複合繊維に用いられるTPU粒子の粒径は、1~50マイクロメートルであってもよい。
【0063】
そして、その繊維は、3D印刷技術を用いて人工エラ被服100を形成するために用いられる。鋳造に対する3D印刷の利点は、(鋳造の場合のように)完全な被服を形成するために、2つ以上の別々のパーツを結合する更なる処理工程(すなわち、縫ったり、他の方法で接着したりすることを介して)を必要とせずに、ワンピースの被服をより容易に製造することができることである。被服の別々の構成要素のそのような製造後の結合は、正しく結合されていない場合には、人工エラ被服100と着用者の間の空間への水の侵入を防止する人工エラ被服100の能力を低下させる可能性がある。
【0064】
また、人工エラ被服100を鋳造するために、人工エラ被服100の3D印刷に関する上述のような組成物が用いられてもよい。
【0065】
非多孔質繊維材料又は鋳造材料の場合、人工エラ被服100の膜110(又は110、110’)を通したガス透過が可能なように、多孔質の膜110(又は110、110’)を備える人工エラ被服100を製造するために、洗浄又はエッチングなどの更なる処理工程が要求されてもよい。例えば、人工エラ被服100の3D印刷に用いられる繊維が疎水性エラストマーポリマーと親水性粒子との複合繊維である場合、人工エラ被服100から親水性粒子を取り除くために、蒸留水又は蒸留水とエタノールの混合物で人工エラ被服100を洗浄してもよい。人工エラ被服100から親水性粒子を取り除くことにより、多孔質の人工エラ被服100が製造される。3D印刷で用いられる複合疎水性エラストマーポリマー親水性粒子繊維の組成は、人工エラ被服100の膜の最終的な気孔率を決定する。例えば、TPUの重量比が大きい複合TPU:PVOH繊維は、TPUの重量比が小さい複合TPU:PVOH繊維よりも、洗浄後の最終的な気孔率は小さくなり得る。したがって、TPUとPVOHの密度が類似しているので、得られる材料の気孔率は、それぞれ体積比で80~20%の範囲になる。得られる細孔サイズは、複合繊維に用いられるPVOH粒子の粒径に依存する。そのため、1~100マイクロメートルの間で細孔サイズを制御することができる。洗浄後、人工エラ被服100は周囲環境で乾燥させるために放置される。
【0066】
いくつかの例では、人工エラ被服100の多孔性は、3D印刷を用いた人工エラ被服100の製造中に導入されればよい。例えば、3D印刷中に人工エラ被服100に特徴を構築することにより、人工エラ被服100に細孔を導入してもよい。上述のように、人工エラ被服100の細孔サイズは、およそ100マイクロメートル以下であってもよい。このように、3D印刷機は、全方向におよそ100マイクロメートル以下の寸法(例えば、およそ100マイクロメートル以下の直径)を有する細孔を構築することにより、人工エラ被服100に多孔性を導入してもよい。いくつかの例では、3D印刷中、人工エラ被服100の外表面に小さいスケール(例えば、マイクロメートルの長さスケール)の表面パターンを生成することにより、疎水性特性又は超疎水性特性が人工エラ被服100に付与されてもよい。
【0067】
水中における人工エラ被服100の膜のガス透過性(すなわち、ガス交換比)は、膜の厚さや膜110(又は110、110’)の気孔率に応じて変化する。人工エラ被服100の3D印刷に用いられる複合TPU:PVOH繊維の場合、TPU:PVOHの初期組成は、人工エラ被服100の膜110(又は110、110’)の気孔率を決定する。ガス透過性は、気孔率に比例し、膜厚に反比例する。したがって、より高い気孔率を有するより薄い膜110(又は110、110’)は、より低い気孔率を有するより厚い膜よりも高いガス透過性を有することになる。しかしながら、より低い気孔率を有するより厚い膜は、高い水圧下において、より高い気孔率を有するより薄い膜よりもより低いガス透過性を有することになる。
【0068】
非疎水性繊維材料又は非超疎水性繊維材料、又は鋳造材料の場合、疎水性特性又は超疎水性特性を有する人工エラ被服100を製造するために、更なる処理ステップが要求されてもよい。超疎水性表面の疎水性を生成するために、人工エラ被服100の界面化学を変化させることによって、人工エラ被服100を処理してもよい。疎水性被膜又は超疎水性被膜で人工エラ被服100をコーティングしてもよく、疎水性特性又は超疎水性特性を有する人工エラ被服100の外表面を形成するために、印刷した被服の材料と反応する物質に人工エラ被服100を曝してもよい。例えば、人工エラ被服100の3D印刷に用いられる繊維がTPU:PVOHの複合繊維であれば、疎水性特性又は超疎水性特性を有する人工エラ被服100の外表面を提供するために、人工エラ被服100をフルオロアルキルベースのポリマー被膜でコーティングしてもよい。被膜は、0.25~2マイクロメートルの間の厚さ、任意には、0.5~1マイクロメートルの間の厚さを有してもよい。
【0069】
また、人工エラ被服100に要求される機械的特性に基づいて、人工エラ被服100の3D印刷に用いられる繊維材料を選択してもよい。例えば、着用者の制限のない自然な動きを可能とすることを人工エラ被服100に要求する場合には、人工エラ被服100の3D印刷に可撓性材料を含む繊維を用いればよい。荒い水中条件や海洋生物の攻撃から着用者を保護することが人工エラ被服100に要求される場合、あるいは、人工エラ被服100がより深い水深での増加した水圧に耐える必要がある場合には、人工エラ被服100の3D印刷に半剛性材料又は剛性材料を含む繊維が用いられればよい。
【0070】
上述の方法に従って人工エラ被服100を製造することにより、人工エラ被服100の用途に望まれる機械的特性(すなわち、柔軟性、剛性、強度、靭性)を備えた撥水性、ガス透過性の被服の製造が可能になる。
【0071】
人工エラ被服100に関して上述したものと同様の方法を利用して、ガス透過性防水膜(必ずしも人工エラ被服に用いるものではない)を製造してもよい。例えば、疎水性エラストマーポリマー(例えば、TPU)及び親水性粒子(例えば、PVOH)の混合物を製造することにより、ガス透過性防水膜を作製するための前駆体組成物を製造してもよい。そして、疎水性エラストマーポリマー及び親水性粒子の混合物から膜を形成してもよい。膜は、例えば、3D印刷、鋳造、又はその他の適切な製造技術により形成されてもよい。膜から親水性粒子を取り除くために、膜を蒸留水で洗浄することにより、膜内に細孔を作製してもよい。
【0072】
また、膜の表面に疎水性特性又は超疎水性特性を付与するように、膜の表面を処理してもよい。
【0073】
いくつかの例では、洗浄又はコーティングステップの前に、前駆体組成物から製造したパーツ(部品)を第三者に配布してもよい。このように、ガス透過性防水膜又はパーツを製造する処理は、単一の場所や単一の製造業者により製造される必要はない。
【0074】
上述の方法で製造されたようなガス透過性防水膜は水中構造物又は建物に利用されてもよい。例えば、人工エラ被服ではなく、ガス透過性防水膜に囲まれた空間内に、水中空間を含む建物を作製してもよい。ガス透過性防水膜に囲まれた空間内で一人以上の人が呼吸することができるようにしてもよい。また、水に溶け込んだ有害ガスを濾過するために、ガス透過性防水膜が用いられてもよい。3D印刷により、複雑な形状や、別の方法では標準的なフィルタのタイプ及び/又は形状を用いてアクセスするのが困難な環境や場所で用いられる形状を有するフィルタを製造することが可能となり得る。その他の用途には、エクストリームスポーツ用の高いガス透過性を有する撥水性の衣類が含まれてもよい。
【0075】
多孔質超疎水性材料のガス交換特性を計測するために、図5に示すような実験装置が用いられた。タンク200内の第1の開口205(下から図示)を多孔質超疎水性膜210で覆い、多孔質超疎水性膜210と第1の開口205の縁の間に液密シールを形成した。図5Aは、このことをより詳細に示す。多孔質超疎水性膜210は、タンク200内とガスを交換可能な唯一の経路を形成した。多孔質超疎水性膜は、5mmの厚さと77%の気孔率を有するポリテトラフルオロエチレン膜であった。図5Bに示すように、多孔質超疎水性膜210上の水滴は、水が多孔質超疎水性膜210を通過することができないことを示す。また、タンク200内に酸素センサ215を配置した。二酸化炭素ガスをタンク200に導入するための管225をタンク200内の第2の開口220に通し、管225と第2の開口220の縁との間に液密シールを形成した。図5Cは、このことを詳細に示す。
【0076】
そして、図5D及び図5Eに示すように、完全に密閉したタンク200を過酸化水素水(酸素飽和水)に完全に水没させ、テスト期間中水中に保持した。過酸化水素水への水没後、タンク200内の酸素濃度を低下させるために、第2の開口220を通る管225を通して、密閉したタンク200に二酸化炭素ガスを導入した。
【0077】
タンク200に二酸化炭素ガスを導入した後、密閉したタンク200の酸素濃度を体積比で9%まで減少させた。過酸化水素水に12時間水没させた後、密閉したタンク200の酸素濃度(密閉したタンク200内の酸素センサ215により計測した値)が20.1%まで増加した。これらの結果は、人工エラ被服100に多孔質の超疎水性材料を用いることの実行可能性を示すものである。
【0078】
海水環境において更なる試験を実施した。環境条件は、実験室ベースの試験よりも制御が困難であった(すなわち、実験室ベースの試験は、十分に換気した部屋で十分に通気した(炭酸ガスを含ませた)水で行われた)。図5に示されているのと同じ実験装置を用いた。ただし、過酸化水素水の代わりに、海水に密閉したタンク200を水没させた。多孔質超疎水性膜210を海水に完全に水没させたままにするのを確実にするために、近くの岩又はロープにタンク200を固定した。
【0079】
密閉したタンク200内の酸素濃度は、14.22容量%まで減少し、およそ1時間の間、多孔質超疎水性膜210を海水に水没させたままにした。この場合、管225を介した200内の空気を吸い込むことにより、タンク200内の酸素濃度が減少した。
【0080】
図6は、上述の海水環境における試験から得られた結果を示す。図6は、密閉タンク200内の酸素濃度が時間の関数としてプロットされた図である。プロットの傾向は、タンク200の酸素濃度が時間の経過とともに増加していることを示しており、実験室ベースの試験から得られた結果を裏付けるものとなった。明らかに、多孔質超疎水性膜210は、密閉したタンク200と、密閉したタンク200をとり囲む環境との間で、酸素ガス及び二酸化炭素ガスを交換可能である。
【0081】
テストした多孔質超疎水性膜210の表面積は、6cmであった。海水試験における試験期間中のタンク200内の酸素濃度の変化は、およそ毎時0.5%であった。タンク200は、565mLの容量を有し、多孔質超疎水性膜210を通して、0.075mL/(時間・cm)の酸素補充速度をもたらした。人間の平均酸素消費速度は、毎時14400mLである。
【0082】
上記から、人間の呼吸をサポートするために必要な表面積がおよそ19.2mであると計算することができる。上述のような表面パターンあるいは表面形状又は構成を利用することで、そのような膜から作られた被服の表面積を増加させることができる。いくつかの被服は、必要量の表面積を有さないかもしれない。例えば、人工エラ被服は、着用者の胴体及び顔の呼吸機能のみを覆ってもよいが、人工エラ被服がユーザの一以上の手足も覆う場合に利用可能な追加の表面積を利用することができない。そのような場合には、着用者に最適な呼吸条件を提供するために、人工エラ被服を(上述のような)リブリーザあるいは酸素タンクと組み合わせて用いればよい。
【0083】
図7は、TPU及びPVOHの複合繊維を3D印刷することにより製造した3D印刷した部品の表面の光学顕微鏡画像を示す。図7Aは、図7Bに示す光学顕微鏡写真に用いられる倍率よりも低い倍率の光学顕微鏡写真を示す。各顕微鏡写真の右下角には、スケールバーを示す。これらの画像は、蒸留水及びエタノールの混合物で3D印刷した部品を洗浄した後、該部品を疎水性被膜でコーティングする前にキャプチャされた。図7Aの画像は、3D印刷した部品の密閉を達成するための隣接する層の良好な接着を示す。冷却後も、3D印刷した被服では、隣接する層間の破損や剥離は観察されなかった。これは、複数の層が十分に接着されていることを示す。このように、接着が不十分な層を通して水が浸透してくるのを防止し、これにより、上述のように形成した3D印刷した被服は、人工エラ被服と着用者との間の空間を封入することができる。
【0084】
図8は、密閉タンク内の酸素濃度を時間の関数としてプロットした図を示す。図8に示す結果を得るために用いた実験装置は、多孔質超疎水性膜が(重量比で50:50の初期TPU:PVOH組成物から初めて製造した)50%の多孔率を有するTPUの膜であることを除き、図5及び図6に関して説明した実験装置と同じであった。TPU膜の厚さは、400マイクロメートルであった。図8より、フルオロアルキルベースのポリマー疎水性被膜を有する多孔質TPUを含むガス透過性防水膜が人工エラ被服の材料として使用するのに適していることが分かる。
【0085】
本開示を読むことにより、他の変形や改良も当業者にとって明らかであろう。そのような変形や改良は、ガス透過性防水膜の分野で既に公知であり、本明細書に既に記載した特徴の代わりに又はそれに加えて用いられ得る同等及び他の特徴を含み得る。
【0086】
添付の特許請求の範囲は、複数の特徴の特定の組み合わせに向けられる。しかしながら、本発明の開示の範囲は、あらゆる新規の特徴、本明細書内で明示的又は黙示的に開示した特徴のあらゆる新規の組み合わせ、あるいは、それらの一般化、それがいずれかの請求項に現在記載されるものと同じ発明に関連するか否か、及びそれが本発明と同じ技術的課題のいずれか又はすべてを軽減するか否かも含むことを理解されたい。
【0087】
また、別々の実施形態に照らして説明した特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよい。逆に、簡潔のために、単一の実施形態に照らして説明した種々の特徴も、別個に、あるいは、あらゆる適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。出願人は、本出願又は本出願から派生したあらゆる更なる出願の審査中、そのような特徴あるいはそのような特徴の組み合わせに対して新規の請求項を策定可能であることをここに通知する。
【0088】
完全を期すために、用語「含む(comprising)」が他の構成要素やステップを排除せず、用語「一つの(a)」や「一つの(an)」が複数を排除せず、単一のプロセッサ又は他の部(ユニット)が特許請求の範囲に列挙したいくつかの手段の機能を実現してもよく、特許請求の範囲のあらゆる参照符号が請求項の権利範囲を制限するものとして解釈すべきではないことを言明する。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7A
図7B
図8