(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】工具情報提示システム、工具情報提示装置、及び工具情報提示方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4063 20060101AFI20241210BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20241210BHJP
B23C 9/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G05B19/4063 L
B23Q17/00 E
B23C9/00 Z
(21)【出願番号】P 2024541771
(86)(22)【出願日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2024002039
【審査請求日】2024-07-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503212652
【氏名又は名称】住友電工ハードメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 雄介
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-251349(JP,A)
【文献】特開2012-096301(JP,A)
【文献】国際公開第2021/210207(WO,A1)
【文献】特開2015-128809(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0297021(US,A1)
【文献】特開2019-070916(JP,A)
【文献】特開2019-181628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/46
B23Q 17/00
B23Q 3/155
B23C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転削加工用の工具に関する情報をユーザに提示する工具情報提示システムであって、
工具情報提示装置と、
表示装置と、
を備え、
前記工具情報提示装置は、特定の工具についての前記工具の回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量に対する前記工具と被加工物との前記工具の1回転における干渉状態を示す干渉状態情報を前記表示装置に送信し、
前記表示装置は、前記工具情報提示装置から送信された前記干渉状態情報を受信し、受信した前記干渉状態情報を表示する、
工具情報提示システム。
【請求項2】
前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記干渉状態を示す物理量の最大値の分布を示す第1マップを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項3】
前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記干渉状態を示す物理量の変動幅の分布を示す第2マップを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項4】
前記干渉状態情報は、前記回転軸方向切込み量と前記干渉状態を示す物理量の最大値との関係を示す第1グラフを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項5】
前記干渉状態情報は、前記回転軸方向切込み量と、前記干渉状態を示す物理量の最大値から前記物理量の変動幅を引いた差分との関係を示す第2グラフを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項6】
前記干渉状態情報は、前記回転軸方向切込み量と前記干渉状態を示す物理量の最大値との関係を示す第1グラフを含み、
前記干渉状態情報は、前記第1グラフ及び前記第2グラフが、前記回転軸方向切込み量を第1座標軸とし、前記物理量を第2座標軸とする同一座標系において重畳された図を含む、
請求項5に記載の工具情報提示システム。
【請求項7】
前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量と前記干渉状態を示す物理量の最大値との関係を示す第3グラフを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項8】
前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量と、前記干渉状態を示す物理量の最大値から前記物理量の変動幅を引いた差分との関係を示す第4グラフを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項9】
前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量と前記干渉状態を示す物理量の最大値との関係を示す第3グラフを含み、
前記干渉状態情報は、前記第3グラフ及び前記第4グラフが、前記回転半径方向切込み量を第1座標軸とし、前記物理量を第2座標軸とする同一座標系において重畳された図を含む、
請求項8に記載の工具情報提示システム。
【請求項10】
前記工具情報提示装置は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記干渉状態を示す物理量の最大値の分布を示す第1マップと、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記物理量の変動幅の分布を示す第2マップとを含む第1干渉状態情報を前記表示装置へ送信し、
前記表示装置は、前記第1干渉状態情報を受信し、受信した前記第1干渉状態情報に含まれる前記第1マップ及び前記第2マップを含む干渉状態画面を表示し、
前記表示装置は、前記回転半径方向切込み量の第1指定値のユーザからの入力を受け付け、入力された前記第1指定値を前記工具情報提示装置へ送信し、
前記工具情報提示装置は、前記第1指定値を受信し、前記回転半径方向切込み量が前記第1指定値である場合における前記回転軸方向切込み量と前記物理量の最大値との関係を示す第1グラフを含む第2干渉状態情報を前記表示装置へ送信し、
前記表示装置は、前記第2干渉状態情報を受信し、受信した前記第2干渉状態情報に含まれる前記第1グラフを前記干渉状態画面に表示する、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項11】
前記第2干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量が前記第1指定値である場合における前記回転軸方向切込み量と、前記物理量の最大値から前記物理量の変動幅を引いた差分との関係を示す第2グラフを含み、
前記表示装置は、受信した前記第2干渉状態情報に含まれる前記第2グラフを前記干渉状態画面に表示する、
請求項10に記載の工具情報提示システム。
【請求項12】
前記干渉状態画面は、前記第1グラフ及び前記第2グラフが、前記回転軸方向切込み量を第1座標軸とし、前記物理量を第2座標軸とする同一座標系において重畳された図を含む、
請求項11に記載の工具情報提示システム。
【請求項13】
前記表示装置は、前記回転軸方向切込み量の第2指定値のユーザからの入力を受け付け、入力された前記第2指定値を前記工具情報提示装置へ送信し、
前記工具情報提示装置は、前記第2指定値を受信し、前記回転軸方向切込み量が前記第2指定値である場合における前記回転半径方向切込み量と前記物理量の最大値との関係を示す第3グラフを含む第3干渉状態情報を前記表示装置へ送信し、
前記表示装置は、前記第3干渉状態情報を受信し、受信した前記第3干渉状態情報に含まれる前記第3グラフを前記干渉状態画面に表示する、
請求項10に記載の工具情報提示システム。
【請求項14】
前記第3干渉状態情報は、前記回転軸方向切込み量が前記第2指定値である場合における前記回転半径方向切込み量と、前記物理量の最大値から前記物理量の変動幅を引いた差分との関係を示す第4グラフを含み、
前記表示装置は、受信した前記第3干渉状態情報に含まれる前記第4グラフを前記干渉状態画面に表示する、
請求項13に記載の工具情報提示システム。
【請求項15】
前記干渉状態画面は、前記第3グラフ及び前記第4グラフが、前記回転半径方向切込み量を第1座標軸とし、前記物理量を第2座標軸とする同一座標系において重畳された図を含む、
請求項14に記載の工具情報提示システム。
【請求項16】
前記工具情報提示装置は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記干渉状態を示す物理量の最大値の分布を示す第1マップと、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記物理量の変動幅の分布を示す第2マップとを含む第1干渉状態情報を前記表示装置へ送信し、
前記表示装置は、前記第1干渉状態情報を受信し、受信した前記第1干渉状態情報に含まれる前記第1マップ及び前記第2マップを含む干渉状態画面を表示し、
前記表示装置は、前記回転半径方向切込み量の第1指定値及び前記回転軸方向切込み量の第2指定値それぞれのユーザからの入力を受け付け、入力された前記第1指定値及び前記第2指定値を前記工具情報提示装置へ送信し、
前記工具情報提示装置は、前記第1指定値及び前記第2指定値を受信し、前記工具の1回転における前記被加工物の切削体積が前記第1指定値及び前記第2指定値の積によって定まる固定値である場合における前記回転軸方向切込み量と前記物理量の最大値との関係を示す第5グラフを含む第4干渉状態情報を前記表示装置へ送信し、
前記表示装置は、前記第4干渉状態情報を受信し、受信した前記第4干渉状態情報に含まれる前記第5グラフを前記干渉状態画面に表示する、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項17】
前記第4干渉状態情報は、前記切削体積が前記固定値である場合における前記回転軸方向切込み量と、前記物理量の最大値から前記物理量の変動幅を引いた差分との関係を示す第6グラフを含み、
前記表示装置は、受信した前記第4干渉状態情報に含まれる前記第6グラフを前記干渉状態画面に表示する、
請求項16に記載の工具情報提示システム。
【請求項18】
前記工具情報提示装置は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記干渉状態を示す物理量の最大値の分布を示す第1マップと、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記物理量の変動幅の分布を示す第2マップとを含む第1干渉状態情報を前記表示装置へ送信し、
前記表示装置は、前記第1干渉状態情報を受信し、受信した前記第1干渉状態情報に含まれる前記第1マップ及び前記第2マップを含む干渉状態画面を表示し、
前記表示装置は、前記回転半径方向切込み量の第1指定値及び前記回転軸方向切込み量の第2指定値それぞれのユーザからの入力を受け付け、入力された前記第1指定値及び前記第2指定値を前記工具情報提示装置へ送信し、
前記工具情報提示装置は、前記第1指定値及び前記第2指定値を受信し、前記工具の1回転における前記被加工物の切削体積が前記第1指定値及び前記第2指定値の積によって定まる固定値である場合における前記回転半径方向切込み量と前記物理量の最大値との関係を示す第7グラフを含む第5干渉状態情報を前記表示装置へ送信し、
前記表示装置は、前記第5干渉状態情報を受信し、受信した前記第5干渉状態情報に含まれる前記第7グラフを前記干渉状態画面に表示する、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項19】
前記第5干渉状態情報は、前記切削体積が前記固定値である場合における前記回転半径方向切込み量と、前記物理量の最大値から前記物理量の変動幅を引いた差分との関係を示す第8グラフを含み、
前記表示装置は、受信した前記第5干渉状態情報に含まれる前記第8グラフを前記干渉状態画面に表示する、
請求項18に記載の工具情報提示システム。
【請求項20】
前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての、第1工具と前記被加工物との干渉状態を示す第1物理量の最大値から、第2工具と前記被加工物との干渉状態を示す第2物理量の最大値を引いた差分の分布を示す第3マップを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項21】
前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての、第1工具と前記被加工物との干渉状態を示す第1物理量の変動幅から、第2工具と前記被加工物との干渉状態を示す第2物理量の変動幅を引いた差分の分布を示す第4マップを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項22】
前記干渉状態情報は、第1工具と前記被加工物との干渉状態を示す第1物理量の最大値から、第2工具と前記被加工物との干渉状態を示す第2物理量の最大値を引いた差分と、前記回転軸方向切込み量との関係を示す第9グラフを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項23】
前記干渉状態情報は、第1工具と前記被加工物との干渉状態を示す第1物理量の変動幅から、第2工具と前記被加工物との干渉状態を示す第2物理量の変動幅を引いた差分と、前記回転軸方向切込み量との関係を示す第10グラフを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項24】
前記干渉状態情報は、第1工具と前記被加工物との干渉状態を示す第1物理量の最大値から、第2工具と前記被加工物との干渉状態を示す第2物理量の最大値を引いた差分と、前記回転半径方向切込み量との関係を示す第11グラフを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項25】
前記干渉状態情報は、第1工具と前記被加工物との干渉状態を示す第1物理量の変動幅から、第2工具と前記被加工物との干渉状態を示す第2物理量の変動幅を引いた差分と、前記回転半径方向切込み量との関係を示す第12グラフを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項26】
前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての、前記工具の回転に伴って時間的に変化する前記干渉状態を示す物理量の周波数スペクトルにおける0Hzより高い周波数成分での最大値の分布を示す第5マップを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項27】
前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての、前記工具の回転に伴って時間的に変化する前記干渉状態を示す物理量の周波数スペクトルにおける0Hzより高い周波数成分での最大値を示す周波数の分布を示す第6マップを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項28】
前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての、前記工具の回転に伴って時間的に変化する前記干渉状態を示す物理量の周波数スペクトルにおける0Hzより高い周波数成分での最大値を示す周波数の前記工具の刃の切込み周波数に対する比の分布を示す第7マップを含む、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項29】
前記干渉状態情報は、前記干渉状態を示す物理量の前記工具の1回転における最大値を含み、
前記工具情報提示装置は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量の少なくとも1つが第1設定条件を満足する場合に、前記物理量の前記工具1回転における最大値が第1許容範囲に入るか否かを判定し、
前記表示装置は、前記物理量の最大値が、前記第1許容範囲に入るか否かの第1判定結果を表示する、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項30】
前記干渉状態情報は、前記干渉状態を示す物理量の前記工具の1回転における変動幅を含み、
前記工具情報提示装置は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量の少なくとも1つが第2設定条件を満足する場合に、前記物理量の前記工具の1回転における変動幅が第2許容範囲に入るか否かを判定し、
前記表示装置は、前記物理量の変動幅が、前記第2許容範囲に入るか否かの第2判定結果を表示する、
請求項1に記載の工具情報提示システム。
【請求項31】
前記工具情報提示装置は、複数の工具のうち、前記物理量に基づいて1又は複数の工具を選択する選択処理を実行し、
前記表示装置は、前記選択処理によって選択された前記1又は複数の工具に関する情報を表示する、
請求項
2から請求項
19及び請求項26から請求項30のいずれか1項に記載の工具情報提示システム。
【請求項32】
前記選択処理は、前記複数の工具のうち、前記回転軸方向切込み量についての前記物理量の前記工具の1回転における最大値の、前記回転半径方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具を選択する処理である、
請求項31に記載の工具情報提示システム。
【請求項33】
前記選択処理は、前記複数の工具のうち、前記回転半径方向切込み量についての前記物理量の前記工具の1回転における最大値の、前記回転軸方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具を選択する処理である、
請求項31に記載の工具情報提示システム。
【請求項34】
前記選択処理は、前記複数の工具のうち、前記回転軸方向切込み量についての前記物理量の前記工具の1回転における変動幅の、前記回転半径方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具を選択する処理である、
請求項31に記載の工具情報提示システム。
【請求項35】
前記選択処理は、前記複数の工具のうち、前記回転半径方向切込み量についての前記物理量の前記工具の1回転における変動幅の、前記回転軸方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具を選択する処理である、
請求項31に記載の工具情報提示システム。
【請求項36】
転削加工用の工具に関する情報をユーザに提示する工具情報提示装置であって、
特定の工具についての前記工具の回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量に対する前記工具と被加工物との前記工具の1回転における干渉状態を示す干渉状態情報を、前記ユーザに提示するために出力する出力部を備える、
工具情報提示装置。
【請求項37】
転削加工用の工具に関する情報をユーザに提示するための工具情報提示方法であって、
工具情報提示装置が、特定の工具についての前記工具の回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量に対する前記工具と被加工物との前記工具の1回転における干渉状態を示す干渉状態情報を表示装置へ送信するステップと、
前記表示装置が、前記工具情報提示装置から送信された前記干渉状態情報を受信し、受信した前記干渉状態情報を表示するステップと、
を含む、
工具情報提示方法。
【請求項38】
転削加工用の工具に関する情報をユーザに提示するための工具情報提示方法であって、
表示装置が、特定の工具についての前記工具の回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量に対する前記工具と被加工物との前記工具の1回転における干渉状態を示す干渉状態情報を受信するステップと、
前記表示装置が、受信した前記干渉状態情報を表示するステップと、
を含む、
工具情報提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工具情報提示システム、工具情報提示装置、及び工具情報提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工具の形状及び材質、被加工物の形状及び材質、加工条件等の各種情報を用いて切削加工をシミュレーションする装置が知られている(例えば、特許文献1-4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-134813号公報
【文献】特開2003-019646号公報
【文献】国際公開第2021/024438号
【文献】特開2013-132733号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る工具情報提示システムは、転削加工用の工具に関する情報をユーザに提示する工具情報提示システムであって、工具情報提示装置と、表示装置と、を備え、前記工具情報提示装置は、特定の工具についての前記工具の回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量に対する前記工具と被加工物との前記工具の1回転における干渉状態を示す干渉状態情報を前記表示装置に送信し、前記表示装置は、前記工具情報提示装置から送信された前記干渉状態情報を受信し、受信した前記干渉状態情報を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、実施形態に係る工具情報提示システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るサーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、エンドミルの形状情報を説明するための図である。
【
図4B】
図4Bは、エンドミルの軸方向切込み量を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るサーバ100の機能の一例を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、工具の仮想モデルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、工具の1回転における工具の回転角度と切削面積との関係の一例を示すグラフである。
【
図8】
図8は、軸方向切込み量及び半径方向切込み量に対する工具1回転における切削面積の最大値の分布の一例を示すコンターマップ(第1マップ)である。
【
図9】
図9は、軸方向切込み量及び半径方向切込み量に対する工具1回転における切削面積の変動幅の分布の一例を示すコンターマップ(第2マップ)である。
【
図10】
図10は、半径方向切込み量が特定の値である場合における軸方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示すグラフ(第1グラフ)及び半径方向切込み量が特定の値である場合における軸方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示すグラフ(第2グラフ)の例を示す図である。
【
図11】
図11は、軸方向切込み量が特定の値である場合における半径方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示すグラフ(第3グラフ)及び軸方向切込み量が特定の値である場合における半径方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示すグラフ(第4グラフ)の例を示す図である。
【
図12A】
図12Aは、工具の1回転における被加工物の切削体積が特定の固定値である場合における軸方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示すグラフ(第5グラフ)及び工具の1回転における被加工物の切削体積が特定の固定値である場合における軸方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示すグラフ(第5グラフ)及び工具の1回転における被加工物の切削体積が上記の固定値である場合における軸方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示すグラフ(第6グラフ)の例を示す図である。
【
図12B】
図12Bは、工具の1回転における被加工物の切削体積が特定の固定値である場合における半径方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示すグラフ(第7グラフ)及び工具の1回転における被加工物の切削体積が上記の固定値である場合における半径方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示すグラフ(第8グラフ)の例を示す図である。
【
図13C】
図13Cは、軸方向切込み量及び半径方向切込み量に対する第1工具による切削面積の最大値と第2工具による切削面積の最大値との第1差分の分布の一例を示すコンターマップ(第3マップ)である。
【
図14C】
図14Cは、軸方向切込み量及び半径方向切込み量に対する第1工具による切削面積の変動幅と第2工具による切削面積の変動幅との第2差分の分布の一例を示すコンターマップ(第4マップ)である。
【
図15A】
図15Aは、第1工具についての第1グラフ及び第2グラフの例を示す図である。
【
図15B】
図15Bは、第2工具についての第1グラフ及び第2グラフの例を示す図である。
【
図15C】
図15Cは、軸方向切込み量と、第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分との関係を示すグラフ(第9グラフ)、及び、軸方向切込み量と、第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分との関係を示すグラフ(第10グラフ)の例を示す図である。
【
図16A】
図16Aは、第1工具についての第3グラフ及び第4グラフの例を示す図である。
【
図16B】
図16Bは、第2工具についての第3グラフ及び第4グラフの例を示す図である。
【
図16C】
図16Cは、半径方向切込み量と、第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分との関係を示すグラフ(第11グラフ)、及び、半径方向切込み量と、第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分との関係を示すグラフ(第12グラフ)の例を示す図である。
【
図17A】
図17Aは、第1工具についての第7グラフ及び第8グラフの例を示す図である。
【
図17B】
図17Bは、第2工具についての第7グラフ及び第8グラフの例を示す図である。
【
図17C】
図17Cは、半径方向切込み量と、第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分との関係を示すグラフ(第13グラフ)、及び、半径方向切込み量と、第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分との関係を示すグラフ(第14グラフ)の例を示す図である。
【
図18A】
図18Aは、不等ピッチの工具による切削面積の時間変動の一例を示すグラフである。
【
図19A】
図19Aは、等ピッチ及び等リードの工具についての第1マップの一例を示す図である。
【
図19B】
図19Bは、等ピッチ及び等リードの工具についての第2マップの一例を示す図である。
【
図19C】
図19Cは、軸方向切込み量及び半径方向切込み量のそれぞれについての等ピッチ及び等リードの工具による切削面積の周波数スペクトルにおいて0Hzより高い周波数成分での最大値の分布の一例を示すコンターマップ(第5マップ)である。
【
図19D】
図19Dは、軸方向切込み量及び半径方向切込み量のそれぞれについての等ピッチ及び等リードの工具による切削面積の周波数スペクトルにおいて0Hzより高い周波数成分での最大値を示す周波数の分布の一例を示すコンターマップ(第6マップ)である。
【
図19E】
図19Eは、軸方向切込み量及び半径方向切込み量のそれぞれについての工具Aによる切削面積の周波数スペクトルにおいて0Hzより高い周波数成分での最大値を示す周波数の等ピッチ及び等リードの工具の刃の切込み周波数に対する比(周波数比)の分布の一例を示すコンターマップ(第7マップ)である。
【
図20A】
図20Aは、不等ピッチ及び等リードの工具についての第1マップの一例を示す図である。
【
図20B】
図20Bは、不等ピッチ及び等リードの工具についての第2マップの一例を示す図である。
【
図20C】
図20Cは、不等ピッチ及び等リードの工具についての第5マップの一例を示す図である。
【
図20D】
図20Dは、不等ピッチ及び等リードの工具についての第6マップの一例を示す図である。
【
図20E】
図20Eは、不等ピッチ及び等リードの工具についての第7マップの一例を示す図である。
【
図21A】
図21Aは、等ピッチ及び不等リードの工具についての第1マップの一例を示す図である。
【
図21B】
図21Bは、等ピッチ及び不等リードの工具についての第2マップの一例を示す図である。
【
図21C】
図21Cは、等ピッチ及び不等リードの工具についての第5マップの一例を示す図である。
【
図21D】
図21Dは、等ピッチ及び不等リードの工具についての第6マップの一例を示す図である。
【
図21E】
図21Eは、等ピッチ及び不等リードの工具についての第7マップの一例を示す図である。
【
図22A】
図22Aは、実施形態に係るサーバによる第1工具情報提供処理の一例を示すフローチャートの前半部である。
【
図22B】
図22Bは、実施形態に係るサーバによる第1工具情報提供処理の一例を示すフローチャートの後半部である。
【
図23】
図23は、実施形態に係るサーバによる第2工具情報提供処理の一例を示すフローチャートである。
【
図24】
図24は、実施形態に係るサーバによる第3工具情報提供処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
<本開示が解決しようとする課題>
フライス加工に代表される転削加工では、回転する工具の回転軸方向端面及び回転円周面において工具の刃が被加工物に接触するため、回転半径方向(以下、単に「半径方向」ともいう)の切込み量及び回転軸方向(以下、単に「軸方向」ともいう)の切込み量に応じて工具と被加工物との干渉状態が複雑に変化する。したがって、工具と被加工物との干渉状態を考慮しなければ、転削加工に適した工具の選定及び転削加工における加工条件の設定を適切に行うことができない。しかしながら、特許文献1-4に記載されているような従来の装置では、転削加工における工具の特性の1つである工具と被加工物との干渉状態に関する情報をユーザに提示することはできない。
【0007】
<本開示の効果>
本開示によれば、転削加工における工具の特性である工具と被加工物との干渉状態に関する情報をユーザに提示することができる。
【0008】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
【0009】
(1) 本実施形態に係る工具情報提示システムは、転削加工用の工具に関する情報をユーザに提示する。前記工具情報提示システムは、工具情報提示装置と、表示装置と、を備える。前記工具情報提示装置は、特定の工具についての前記工具の回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量に対する前記工具と被加工物との前記工具の1回転における干渉状態を示す干渉状態情報を前記表示装置に送信する。前記表示装置は、前記工具情報提示装置から送信された前記干渉状態情報を受信し、受信した前記干渉状態情報を表示する。工具と被加工物との工具の1回転における干渉状態は、工具の直径、刃数、刃のねじれ角、及び隣り合う刃の間隔(ピッチ)といった工具の形状によって定まる工具の特性の1つである。したがって、上記構成により、工具の選定及び加工条件の設定に有用な、工具の特性である工具と被加工物との干渉状態に関する干渉状態情報をユーザに提示することができる。
【0010】
(2) 上記(1)において、前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記干渉状態を示す物理量の最大値の分布を示す第1マップを含んでもよい。これにより、ユーザは、第1マップを参照することにより、回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量のそれぞれについての物理量の最大値の分布を確認することができる。
【0011】
(3) 上記(1)又は(2)において、前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記干渉状態を示す物理量の変動幅の分布を示す第2マップを含んでもよい。これにより、ユーザは、第2マップを参照することにより、回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量のそれぞれについての物理量の変動幅の分布を確認することができる。
【0012】
(4) 上記(1)から(3)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、前記回転軸方向切込み量と前記干渉状態を示す物理量の最大値との関係を示す第1グラフを含んでもよい。これにより、ユーザは、第1グラフを参照することにより、回転軸方向切込み量と物理量の最大値との関係を確認することができる。
【0013】
(5) 上記(1)から(4)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、前記回転軸方向切込み量と、前記干渉状態を示す物理量の最大値から前記物理量の変動幅を引いた差分との関係を示す第2グラフを含んでもよい。これにより、ユーザは、第2グラフを参照することにより、回転軸方向切込み量と物理量の最大値から物理量の変動幅を引いた差分(すなわち、物理量の最小値)との関係を確認することができる。
【0014】
(6) 上記(5)において、前記干渉状態情報は、前記第1グラフ及び前記第2グラフが、前記回転軸方向切込み量を第1座標軸とし、前記物理量を第2座標軸とする同一座標系において重畳された図を含んでもよい。これにより、ユーザは、重畳表示された第1グラフ及び第2グラフを参照することにより、回転軸方向切込み量について、物理量が取り得る値の範囲を確認することができる。
【0015】
(7) 上記(1)から(6)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量と前記干渉状態を示す物理量の最大値との関係を示す第3グラフを含んでもよい。これにより、ユーザは、第3グラフを参照することにより、回転半径方向切込み量と物理量の最大値との関係を確認することができる。
【0016】
(8) 上記(1)から(7)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量と、前記干渉状態を示す物理量の最大値から前記物理量の変動幅を引いた差分との関係を示す第4グラフを含んでもよい。これにより、ユーザは、第4グラフを参照することにより、回転半径方向切込み量と物理量の最大値から物理量の変動幅を引いた差分(すなわち、物理量の最小値)との関係を確認することができる。
【0017】
(9) 上記(8)において、前記干渉状態情報は、前記第3グラフ及び前記第4グラフが、前記回転半径方向切込み量を第1座標軸とし、前記物理量を第2座標軸とする同一座標系において重畳された図を含んでもよい。これにより、ユーザは、重畳表示された第3グラフ及び第4グラフを参照することにより、回転半径方向切込み量について、物理量が取り得る値の範囲を確認することができる。
【0018】
(10) 上記(1)において、前記工具情報提示装置は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記干渉状態を示す物理量の最大値の分布を示す第1マップと、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記物理量の変動幅の分布を示す第2マップとを含む第1干渉状態情報を前記表示装置へ送信してもよい。前記表示装置は、前記第1干渉状態情報を受信し、受信した前記第1干渉状態情報に含まれる前記第1マップ及び前記第2マップを含む干渉状態画面を表示してもよい。前記表示装置は、前記回転半径方向切込み量の第1指定値のユーザからの入力を受け付け、入力された前記第1指定値を前記工具情報提示装置へ送信してもよい。前記工具情報提示装置は、前記第1指定値を受信し、前記回転半径方向切込み量が前記第1指定値である場合における前記回転軸方向切込み量と前記物理量の最大値との関係を示す第1グラフを含む第2干渉状態情報を前記表示装置へ送信してもよい。前記表示装置は、前記第2干渉状態情報を受信し、受信した前記第2干渉状態情報に含まれる前記第1グラフを前記干渉状態画面に表示してもよい。これにより、ユーザは、回転半径方向切込み量の所望の値を第1指定値として表示装置に入力することで、第1指定値における回転軸方向切込み量と物理量の最大値との関係を確認することができる。
【0019】
(11) 上記(10)において、前記第2干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量が前記第1指定値である場合における前記回転軸方向切込み量と、前記物理量の最大値から前記物理量の変動幅を引いた差分との関係を示す第2グラフを含んでもよい。前記表示装置は、受信した前記第2干渉状態情報に含まれる前記第2グラフを前記干渉状態画面に表示してもよい。これにより、ユーザは、回転半径方向切込み量の所望の値を第1指定値として表示装置に入力することで、第1指定値における回転軸方向切込み量と、物理量の最大値から変動幅を引いた差分との関係を確認することができる。
【0020】
(12) 上記(11)において、前記干渉状態画面は、前記第1グラフ及び前記第2グラフが、前記回転軸方向切込み量を第1座標軸とし、前記物理量を第2座標軸とする同一座標系において重畳された図を含んでもよい。これにより、ユーザは、重畳表示された第1グラフ及び第2グラフを参照することにより、回転半径方向切込み量が第1指定値である場合において、回転軸方向切込み量について物理量が取り得る値の範囲を確認することができる。
【0021】
(13) 上記(10)から(12)のいずれか1つにおいて、前記表示装置は、前記回転軸方向切込み量の第2指定値のユーザからの入力を受け付け、入力された前記第2指定値を前記工具情報提示装置へ送信してもよい。前記工具情報提示装置は、前記第2指定値を受信し、前記回転軸方向切込み量が前記第2指定値である場合における前記回転半径方向切込み量と前記物理量の最大値との関係を示す第3グラフを含む第3干渉状態情報を前記表示装置へ送信してもよい。前記表示装置は、前記第3干渉状態情報を受信し、受信した前記第3干渉状態情報に含まれる前記第3グラフを前記干渉状態画面に表示してもよい。これにより、ユーザは、回転軸方向切込み量の所望の値を第2指定値として表示装置に入力することで、第2指定値における回転半径方向切込み量と物理量の最大値との関係を確認することができる。
【0022】
(14) 上記(13)において、前記第3干渉状態情報は、前記回転軸方向切込み量が前記第2指定値である場合における前記回転半径方向切込み量と、前記物理量の最大値から前記物理量の変動幅を引いた差分との関係を示す第4グラフを含んでもよい。前記表示装置は、受信した前記第3干渉状態情報に含まれる前記第4グラフを前記干渉状態画面に表示してもよい。これにより、ユーザは、回転軸方向切込み量の所望の値を第2指定値として表示装置に入力することで、第2指定値における回転半径方向切込み量と、物理量の最大値から変動幅を引いた差分との関係を確認することができる。
【0023】
(15) 上記(14)において、前記干渉状態画面は、前記第3グラフ及び前記第4グラフが、前記回転半径方向切込み量を第1座標軸とし、前記物理量を第2座標軸とする同一座標系において重畳された図を含んでもよい。これにより、ユーザは、重畳表示された第3グラフ及び第4グラフを参照することにより、回転軸方向切込み量が第2指定値である場合において、回転半径方向切込み量について物理量が取り得る値の範囲を確認することができる。
【0024】
(16) 上記(1)において、前記工具情報提示装置は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記干渉状態を示す物理量の最大値の分布を示す第1マップと、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記物理量の変動幅の分布を示す第2マップとを含む第1干渉状態情報を前記表示装置へ送信してもよい。前記表示装置は、前記第1干渉状態情報を受信し、受信した前記第1干渉状態情報に含まれる前記第1マップ及び前記第2マップを含む干渉状態画面を表示してもよい。前記表示装置は、前記回転半径方向切込み量の第1指定値及び前記回転軸方向切込み量の第2指定値それぞれのユーザからの入力を受け付け、入力された前記第1指定値及び前記第2指定値を前記工具情報提示装置へ送信してもよい。前記工具情報提示装置は、前記第1指定値及び前記第2指定値を受信し、前記工具の1回転における前記被加工物の切削体積が前記第1指定値及び前記第2指定値の積によって定まる固定値である場合における前記回転軸方向切込み量と前記物理量の最大値との関係を示す第5グラフを含む第2干渉状態情報を前記表示装置へ送信してもよい。前記表示装置は、前記第2干渉状態情報を受信し、受信した前記第2干渉状態情報に含まれる前記第5グラフを前記干渉状態画面に表示してもよい。これにより、ユーザは、回転半径方向切込み量の所望の値を第1指定値として表示装置に入力し、回転軸方向切込み量の所望の値を第2指定値として表示装置に入力することで、工具の1回転における被加工物の切削体積を第1指定値及び第2指定値の積によって定まる値に固定した場合における回転軸方向切込み量と物理量の最大値との関係を確認することができる。
【0025】
(17) 上記(16)において、前記第2干渉状態情報は、前記切削体積が前記固定値である場合における前記回転軸方向切込み量と、前記物理量の最大値から前記物理量の変動幅を引いた差分との関係を示す第6グラフを含んでもよい。前記表示装置は、受信した前記第2干渉状態情報に含まれる前記第6グラフを前記干渉状態画面に表示してもよい。これにより、ユーザは、回転半径方向切込み量の所望の値を第1指定値として表示装置に入力し、回転軸方向切込み量の所望の値を第2指定値として表示装置に入力することで、工具の1回転における被加工物の切削体積を第1指定値及び第2指定値の積によって定まる値に固定した場合における回転軸方向切込み量と、物理量の最大値から変動幅を引いた差分との関係を確認することができる。
【0026】
(18) 上記(1)において、前記工具情報提示装置は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記干渉状態を示す物理量の最大値の分布を示す第1マップと、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての前記物理量の変動幅の分布を示す第2マップとを含む第1干渉状態情報を前記表示装置へ送信してもよい。前記表示装置は、前記第1干渉状態情報を受信し、受信した前記第1干渉状態情報に含まれる前記第1マップ及び前記第2マップを含む干渉状態画面を表示してもよい。前記表示装置は、前記回転半径方向切込み量の第1指定値及び前記回転軸方向切込み量の第2指定値それぞれのユーザからの入力を受け付け、入力された前記第1指定値及び前記第2指定値を前記工具情報提示装置へ送信してもよい。前記工具情報提示装置は、前記第1指定値及び前記第2指定値を受信し、前記工具の1回転における前記被加工物の切削体積が前記第1指定値及び前記第2指定値の積によって定まる固定値である場合における前記回転半径方向切込み量と前記物理量の最大値との関係を示す第7グラフを含む第2干渉状態情報を前記表示装置へ送信してもよい。前記表示装置は、前記第2干渉状態情報を受信し、受信した前記第2干渉状態情報に含まれる前記第7グラフを前記干渉状態画面に表示してもよい。これにより、ユーザは、回転半径方向切込み量の所望の値を第1指定値として表示装置に入力し、回転軸方向切込み量の所望の値を第2指定値として表示装置に入力することで、工具の1回転における被加工物の切削体積を第1指定値及び第2指定値の積によって定まる値に固定した場合における回転半径方向切込み量と物理量の最大値との関係を確認することができる。
【0027】
(19) 上記(18)において、前記第2干渉状態情報は、前記切削体積が前記固定値である場合における前記回転半径方向切込み量と、前記物理量の最大値から前記物理量の変動幅を引いた差分との関係を示す第8グラフを含んでもよい。前記表示装置は、受信した前記第2干渉状態情報に含まれる前記第8グラフを前記干渉状態画面に表示してもよい。これにより、ユーザは、回転半径方向切込み量の所望の値を第1指定値として表示装置に入力し、回転軸方向切込み量の所望の値を第2指定値として表示装置に入力することで、工具の1回転における被加工物の切削体積を第1指定値及び第2指定値の積によって定まる値に固定した場合における回転半径方向切込み量と、物理量の最大値から変動幅を引いた差分との関係を確認することができる。
【0028】
(20) 上記(1)から(19)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての、第1工具と前記被加工物との干渉状態を示す第1物理量の最大値から、第2工具と前記被加工物との干渉状態を示す第2物理量の最大値を引いた差分の分布を示す第3マップを含んでもよい。これにより、ユーザは、第3マップを参照することで、第1工具と第2工具とを被加工物との干渉状態について比較することができる。
【0029】
(21) 上記(1)から(20)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての、第1工具と前記被加工物との干渉状態を示す第1物理量の変動幅から、第2工具と前記被加工物との干渉状態を示す第2物理量の変動幅を引いた差分の分布を示す第4マップを含んでもよい。これにより、ユーザは、第4マップを参照することで、第1工具と第2工具とを被加工物との干渉状態について比較することができる。
【0030】
(22) 上記(1)から(21)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、第1工具と前記被加工物との干渉状態を示す第1物理量の最大値から、第2工具と前記被加工物との干渉状態を示す第2物理量の最大値を引いた差分と、前記回転軸方向切込み量との関係を示す第9グラフを含んでもよい。これにより、ユーザは、第9グラフを参照することにより、第1物理量の最大値から第2物理量の最大値を引いた差分と、回転軸方向切込み量との関係を確認することができる。
【0031】
(23) 上記(1)から(22)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、第1工具と前記被加工物との干渉状態を示す第1物理量の変動幅から、第2工具と前記被加工物との干渉状態を示す第2物理量の変動幅を引いた差分と、前記回転軸方向切込み量との関係を示す第10グラフを含んでもよい。これにより、ユーザは、第10グラフを参照することにより、第1物理量の変動幅から第2物理量の変動幅を引いた差分と、回転軸方向切込み量との関係を確認することができる。
【0032】
(24) 上記(1)から(23)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、第1工具と前記被加工物との干渉状態を示す第1物理量の最大値から、第2工具と前記被加工物との干渉状態を示す第2物理量の最大値を引いた差分と、前記回転半径方向切込み量との関係を示す第11グラフを含んでもよい。これにより、ユーザは、第11グラフを参照することにより、第1物理量の最大値から第2物理量の最大値を引いた差分と、回転半径方向切込み量との関係を確認することができる。
【0033】
(25) 上記(1)から(24)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、第1工具と前記被加工物との干渉状態を示す第1物理量の変動幅から、第2工具と前記被加工物との干渉状態を示す第2物理量の変動幅を引いた差分と、前記回転半径方向切込み量との関係を示す第12グラフを含んでもよい。これにより、ユーザは、第12グラフを参照することにより、第1物理量の変動幅から第2物理量の変動幅を引いた差分と、回転半径方向切込み量との関係を確認することができる。
【0034】
(26) 上記(1)から(25)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての、前記工具の回転に伴って時間的に変化する前記干渉状態を示す物理量の周波数スペクトルにおける0Hzより高い周波数成分での最大値の分布を示す第5マップを含んでもよい。これにより、ユーザは、第5マップを参照することにより、回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量のそれぞれについて、干渉状態を示す物理量の周波数スペクトルにおける最大値がどのように分布するかを確認することができる。
【0035】
(27) 上記(1)から(26)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての、前記工具の回転に伴って時間的に変化する前記干渉状態を示す物理量の周波数スペクトルにおける0Hzより高い周波数成分での最大値を示す周波数の分布を示す第6マップを含んでもよい。これにより、ユーザは、第6マップを参照することにより、回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量のそれぞれについて、干渉状態を示す物理量の周波数スペクトルにおいて物理量の最大値を示す周波数がどのように分布するかを確認することができる。
【0036】
(28) 上記(1)から(27)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量のそれぞれについての、前記工具の回転に伴って時間的に変化する前記干渉状態を示す物理量の周波数スペクトルにおける0Hzより高い周波数成分での最大値を示す周波数の前記工具の刃の切込み周波数に対する比の分布を示す第7マップを含んでもよい。これにより、ユーザは、第7マップを参照することにより、回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量のそれぞれについて、干渉状態を示す物理量の周波数スペクトルにおいて物理量の最大値を示す周波数の工具の刃の切込み周波数に対する比がどのように分布するかを確認することができる。ここで、「刃の切込み周波数」とは、1秒間に繰り返す工具の刃が被加工物に切り込む数である。例えば、刃数4の工具の4つの刃の全てが被加工物に切り込む場合、刃の切込み周波数は工具の回転周波数の4倍である。
【0037】
(29) 上記(1)から(28)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、前記干渉状態を示す物理量の前記工具の1回転における最大値を含んでもよい。前記工具情報提示装置は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量の少なくとも1つが第1設定条件を満足する場合に、前記物理量の前記工具1回転における最大値が第1許容範囲に入るか否かを判定してもよい。前記表示装置は、前記物理量の最大値が、前記第1許容範囲に入るか否かの第1判定結果を表示してもよい。これにより、ユーザは、第1判定結果を参照することにより、特定の工具について、干渉状態を示す物理量の最大値が第1許容範囲に入るか否かを確認することができる。
【0038】
(30) 上記(1)から(29)のいずれか1つにおいて、前記干渉状態情報は、前記干渉状態を示す物理量の前記工具の1回転における変動幅を含んでもよい。前記工具情報提示装置は、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量の少なくとも1つが第2設定条件を満足する場合に、前記物理量の前記工具の1回転における変動幅が第2許容範囲に入るか否かを判定してもよい。前記表示装置は、前記物理量の変動幅が、前記第2許容範囲に入るか否かの第2判定結果を表示してもよい。これにより、ユーザは、第2判定結果を参照することにより、特定の工具について、干渉状態を示す物理量の変動幅が第2許容範囲に入るか否かを確認することができる。
【0039】
(31) 上記(1)から(30)のいずれか1つにおいて、前記工具情報提示装置は、複数の工具のうち、前記物理量に基づいて1又は複数の工具を選択する選択処理を実行してもよい。前記表示装置は、前記選択処理によって選択された前記1又は複数の工具に関する情報を表示してもよい。これにより、ユーザは、物理量に基づいて選択された1又は複数の工具に関する情報を確認することができる。
【0040】
(32) 上記(31)において、前記選択処理は、前記複数の工具のうち、前記回転軸方向切込み量についての前記物理量の前記工具の1回転における最大値の、前記回転半径方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具を選択する処理であってもよい。これにより、ユーザは、複数の工具のうち、回転軸方向切込み量についての物理量の最大値の、回転半径方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具に関する情報を確認することができる。
【0041】
(33) 上記(31)において、前記選択処理は、前記複数の工具のうち、前記回転半径方向切込み量についての前記物理量の前記工具の1回転における最大値の、前記回転軸方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具を選択する処理であってもよい。これにより、ユーザは、複数の工具のうち、回転半径方向切込み量についての物理量の最大値の、回転軸方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具に関する情報を確認することができる。
【0042】
(34) 上記(31)において、前記選択処理は、前記複数の工具のうち、前記回転軸方向切込み量についての前記物理量の前記工具の1回転における変動幅の、前記回転半径方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具を選択する処理であってもよい。これにより、ユーザは、複数の工具のうち、回転軸方向切込み量についての物理量の変動幅の、回転半径方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具に関する情報を確認することができる。
【0043】
(35) 上記(31)において、前記選択処理は、前記複数の工具のうち、前記回転半径方向切込み量についての前記物理量の前記工具の1回転における変動幅の、前記回転軸方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具を選択する処理であってもよい。これにより、ユーザは、複数の工具のうち、回転半径方向切込み量についての物理量の変動幅の、回転軸方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具に関する情報を確認することができる。
【0044】
(36) 本実施形態に係る工具情報提示装置は、転削加工用の工具に関する情報をユーザに提示する。前記工具情報提示装置は、特定の工具についての前記工具の回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量に対する前記工具と被加工物との前記工具の1回転における干渉状態を示す干渉状態情報を、前記ユーザに提示するために出力する出力部を備える。これにより、工具の選定及び加工条件の設定に有用な、工具の特性である工具と被加工物との干渉状態に関する干渉状態情報をユーザに提示することができる。
【0045】
(37) 本実施形態に係る工具情報提示方法は、転削加工用の工具に関する情報をユーザに提示するための方法である。前記工具情報提示方法は、工具情報提示装置が、特定の工具についての前記工具の回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量に対する前記工具と被加工物との前記工具の1回転における干渉状態を示す干渉状態情報を表示装置へ送信するステップと、前記表示装置が、前記工具情報提示装置から送信された前記干渉状態情報を受信し、受信した前記干渉状態情報を表示するステップと、を含む。これにより、工具の選定及び加工条件の設定に有用な、工具の特性である工具と被加工物との干渉状態に関する干渉状態情報をユーザに提示することができる。
【0046】
(38) 本実施形態に係る工具情報提示方法は、転削加工用の工具に関する情報をユーザに提示するための工具情報提示方法であって、表示装置が、特定の工具についての前記工具の回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量に対する前記工具と被加工物との前記工具の1回転における干渉状態を示す干渉状態情報を受信するステップと、前記表示装置が、受信した前記干渉状態情報を表示するステップと、を含む、これにより、工具の選定及び加工条件の設定に有用な、工具の特性である工具と被加工物との干渉状態に関する干渉状態情報をユーザに提示することができる。
【0047】
本開示は、上記のような特徴的な構成を備える工具情報提示システムとして実現することができるだけでなく、コンピュータを工具情報提示装置として機能させるコンピュータプログラムとして実現したり、工具情報提示装置の一部又は全部を半導体集積回路として実現したりすることができる。
【0048】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0049】
[1.工具情報提示システムの構成]
図1は、実施形態に係る工具情報提示システムの全体構成の一例を示す図である。工具情報提示システム10は、転削加工用の工具に関する情報をユーザに提示する。転削加工用の工具の一例は、エンドミルである。転削加工用の工具の他の例は、正面フライス又は溝フライスである。以下、転削加工用の工具をエンドミルとして説明する。
【0050】
工具情報提示システム10は、サーバ100と、端末装置200とを含む。サーバ100は、「工具情報提示装置」の一例であり、端末装置200は、「表示装置」の一例である。
【0051】
サーバ100は、インターネット、イントラネット、LAN(Local Area Network)等のネットワーク300に接続されている。端末装置200もまた、ネットワーク300に接続されている。サーバ100及び端末装置200は、ネットワーク300を介して通信することが可能である。
【0052】
[2.サーバのハードウェア構成]
図2は、実施形態に係るサーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0053】
サーバ100は、プロセッサ101と、不揮発性メモリ102と、揮発性メモリ103と、通信インタフェース(通信I/F)104とを含む。プロセッサ101と、不揮発性メモリ102と、揮発性メモリ103と、通信I/F104とは、データバス105によって接続されている。
【0054】
揮発性メモリ103は、例えばSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリである。不揮発性メモリ102は、例えばフラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)等である。不揮発性メモリ102には、コンピュータプログラムである工具情報提示プログラム110が格納される。サーバ100の各機能は、工具情報提示プログラム110がプロセッサ101によって実行されることで実現される。工具情報提示プログラム110は、フラッシュメモリ、ROM、CD?ROMなどの記録媒体に記憶させることができる。
【0055】
プロセッサ101は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。ただし、プロセッサ101は、CPUに限られない。プロセッサ101は、GPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。プロセッサ101は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよいし、ゲートアレイ、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスであってもよい。この場合、ASIC又はプログラマブルロジックデバイスは、工具情報提示プログラム110と同じ処理を実行可能に構成される。
【0056】
通信I/F104は外部の装置と通信することができる。通信I/F104は、例えば、ネットワーク300に通信ケーブルによって接続され、ネットワーク300に接続された端末装置200と通信することができる。通信I/F104は、無線通信インタフェースであってもよい。
【0057】
[3.工具データベース]
不揮発性メモリ102には、工具データベース(DB)120が設けられている。なお、工具DB120は、ネットワーク300に接続された、サーバ100とは異なる装置に設けられてもよい。
【0058】
工具DB120には、各種のエンドミルの情報が格納されている。具体的には、工具DB120には、エンドミルの形状を示す形状情報が格納されている。形状情報は、例えば、工具径、刃数、刃のねじれ角、刃のピッチを含む。
【0059】
図3は、エンドミルの形状情報を説明するための図である。工具径は、エンドミル400の軸Axを中心とした外径Dである。刃数は、エンドミルに設けられた刃401の数である。ねじれ角は、側面視における軸Axに対する刃401のエッジの角度φである。ピッチは、軸Axを中心としたエンドミル400の周方向(回転方向)における隣り合う刃401のなす角度αである。
【0060】
工具DB120は、上述したような形状情報を、エンドミル400の識別情報に対応づけて格納する。識別情報は、例えばエンドミル400の製品名又は製品番号である。
【0061】
[4.用語の説明]
以下、転削加工の分野において用いられる用語を説明する。
【0062】
[4-1.1刃当たりの送り量]
転削加工において、1つの刃が1点を通過後に、次の刃が当該点と同じ角度に到達するまでの工具の送り方向への移動量(送り量)を、1刃当たりの送り量(feed per tooth)という。
【0063】
図4Aは、1刃当たりの送り量を説明する図である。
図4Aには、一例として、刃数4のエンドミル400(以下、「工具400」ともいう)を示している。
図4Aにおいて、工具400は回転軸Axを中心として時計回りRDに回転する。回転軸Axは、工具400の中心軸でもあり、工具400は回転軸Axを中心として自転する。工具400は、方向Xへ進行しながら被加工物Wを切削する。被加工物Wに接触した工具400の刃は、回転軸Axに直交する平面による断面において、回転軸Axを通り進行方向Xに直交する直線(図中破線で示す)と工具400の外縁円周との交点LPにおいて被加工物Wから離脱する。上記断面において、回転軸Axについて点LPと対称な点を「基準点RP」とし、回転軸Axを基点として基準点RPに至る線分を「基準線RL」とする。さらに上記断面において、回転軸Axを中心に基準線RLから時計回り方向RDへの角度を「工具角度θ」とする。回転軸Axから基準点RPへ至る線分の工具角度は0°である。回転軸Axから工具400の外縁円周まで進行方向Xへ延びる線分の工具角度θは90°である。回転軸Axから点LPに至る線分の工具角度は180°である。工具400は、進行方向側の半面のみ、すなわち、0°≦θ≦180°の範囲でのみ被加工物Wに接触する。
【0064】
刃401Aが工具角度90°の位置にあるときから、刃401Bが工具角度90°の位置(つまり、刃401Aが工具角度180°の位置)に到達するまでに工具400が進行する量(距離)が、工具400の1刃当たりの送り量である。
【0065】
[4-2.切込み量]
図4Aを用いて、エンドミルの半径方向切込み深さを説明する。
図4Aにおいて、Xは被加工物Wの送り方向であり、fzは工具400の1刃当たりの送り量である。
【0066】
被削面と仕上げ面との距離に対応する工具の切込み量を、切込み深さ(depth of cut)ともいう。工具の回転軸方向切込み量を、軸方向切込み深さ(axial depth of cut)ともいい、工具の回転半径方向切込み量を、半径方向切込み深さ(radial depth of cut)ともいう。工具の回転軸方向切込み量を、軸方向切込み量ともいい、工具の回転半径方向切込み量を、半径方向切込み量ともいう。
【0067】
ここで、回転軸Axからθ=0°の方向を工具400の回転半径方向Yとする。つまり、工具400の回転半径方向は、被加工物Wの送り方向Xに垂直な方向として定義される。半径方向切込み量aeは、工具400の回転半径方向Yにおいて、エンドミル400が被加工物Wに切り込む深さである。1刃当たりの送り量fzは、工具の送り方向で定義される長さであり、半径方向切込み量aeは、送り方向Xに垂直な半径方向Yで定義される長さであるため、これらには互いに相関はない。
【0068】
図4Bは、エンドミルの軸方向切込み量を説明するための図である。軸方向切込み量apは、工具400の軸Axの長手方向において、工具400が被加工物Wに切り込む深さである。
【0069】
[4-3.切削面積、切削抵抗]
工具1回転当たりの切削面積(以下、単に「切削面積」ともいう)とは、工具が1回転する間において工具と被加工物とが干渉する領域の大きさである。切削面積は、工具と被加工物との干渉状態を示す物理量の一例である。
【0070】
工具1回転当たりの切削抵抗(以下、単に「切削抵抗」ともいう)とは、工具が1回転する間において工具が被加工物に塑性変形を生じさせて切りくずを分離するときに工具が受ける変形抵抗である。切削抵抗は、工具と被加工物との干渉状態を示す物理量の他の例である。
【0071】
[5.端末装置の構成]
図1を参照し、端末装置200は、入力部201及び表示部202を含む。端末装置200は、例えば、コンピュータである。他の例では、端末装置200は、スマートフォン、タブレット等の携帯情報端末であってもよい。
【0072】
例えば、入力部201は、キーボード及びマウス等のポインティングデバイスを含む。入力部201は、表示部202の画面に重ねられた静電容量式又は感圧式のタッチパッドであってもよい。入力部201は、ユーザによるデータ入力に用いられる。
【0073】
表示部202は、例えば液晶パネル又はOEL(有機エレクトロルミネッセンス)パネルを含む。表示部202は、文字又は図形の情報を表示することができる。
【0074】
端末装置200は、例えば、プロセッサと、揮発性メモリと、不揮発性メモリとをさらに含む(図示せず)。不揮発性メモリには、プロセッサに端末装置としての機能を実現するためのコンピュータプログラムが格納されている。プロセッサは、上記のコンピュータプログラムを実行することにより、後述するような動作を行うことができる。
【0075】
[6.サーバの機能]
図5は、実施形態に係るサーバ100の機能の一例を示す機能ブロック図である。
【0076】
サーバ100は、受付部111と、取得部112と、シミュレーション部113と、提供部114と、判定部115と、選択部116との各機能を有する。プロセッサ101が工具情報提示プログラム110を実行することにより、受付部111と、取得部112と、シミュレーション部113と、提供部114と、判定部115と、選択部116との各機能が実現される。
【0077】
ユーザは、特定の工具の使用を検討する際に、端末装置200を操作して、当該工具に関する工具情報(干渉状態情報)をサーバ100に要求する。例えば、ユーザは、端末装置200に特定の工具(工具情報の提供対象の工具)の識別情報を入力する。端末装置200は、入力された識別情報を含む工具情報要求をサーバ100へ送信する。
【0078】
受付部111は、端末装置200から工具情報要求を受け付ける。すなわち、受付部111は、端末装置200からネットワーク300を介して工具情報要求を受信する。
【0079】
取得部112は、受付部111によって受け付けられた工具情報要求に含まれる識別情報を用いて、工具の形状情報を取得する。具体的な一例では、取得部112は、識別情報を用いて工具DB120に形状情報を問い合わせる。工具DB120は、識別情報に対応する形状情報を出力する。取得部112は、工具DB120から出力された形状情報を取得する。
【0080】
シミュレーション部113は、取得部112によって取得された形状情報に基づいて、特定の工具を用いた切削加工(転削加工)のシミュレーションを実行する。シミュレーション部113は、半径方向切込み量及び軸方向切込み量のそれぞれを変化させ、各半径方向切込み量及び各軸方向切込み量における切削面積を算出する。
【0081】
具体的な一例では、シミュレーション部113は、取得された形状情報に基づいて工具の仮想モデルを作成し、作成した仮想モデルに基づいて切削面積を算出する。
【0082】
図6は、工具の仮想モデルの一例を示す図である。シミュレーション部113は、仮想的な3次元空間XYZにおいて、工具の立体形状を示す仮想モデル450を作成する。仮想モデル450は、例えば、工具の軸方向Zにおいて工具の各刃(切れ刃)が複数の要素(切れ刃要素)451に分割された3次元モデルである。各切れ刃要素451のZ方向における幅(厚さ)dZを微小にすることで、実際の工具の形状に近似した仮想モデル450を作成することができる。
【0083】
シミュレーション部113は、各切れ刃要素451と被加工物との干渉状態から各切れ刃要素451における被加工物の切取り厚みhを算出する(式(1))。なお、以下において、θは工具の回転角度を、apは軸方向切込み量を、Fは切削抵抗を、Aは切削面積を、hは切込み厚みを、K
Cは比切削抵抗を、R
tは工具半径を、φはねじれ角を、α
iはi番目の刃のピッチを、Nは刃数を示す。
【数1】
【0084】
切取り厚さhと幅dZとの積が切れ刃要素451による切削面積である。シミュレーション部113は、1つの切れ刃(i番目の切れ刃)を分解した各切れ刃要素451による切削面積の総和を算出することで、i番目の切れ刃による切削面積A
iを算出する(式(2)及び(3))。
【数2】
【0085】
さらにシミュレーション部113は、各切れ刃による切削面積の総和を算出することで、1つの工具による切削面積Aを算出する(式(4))。
【数3】
【0086】
工具の切削抵抗を算出する場合、シミュレーション部113は、比切削抵抗K
Cを用いて、次式(5)によりi番目の切れ刃における切削抵抗F
iを算出する。
【数4】
さらにシミュレーション部113は、各切れ刃における切削抵抗の総和を算出することで、1つの工具における切削抵抗Fを算出する(式(6))。
【数5】
【0087】
なお、上述した切削面積及び切削抵抗の算出方法は一例である。上記とは異なる算出方法によって切削面積又は切削抵抗を算出してもよい。以下では、シミュレーション部113が干渉状態を示す物理量として工具による切削面積を算出する場合について説明する。
【0088】
シミュレーション部113は、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeを固定し、工具を1回転させたときの工具の各回転角度における切削面積を算出する。
図7は、工具の1回転における工具の回転角度と切削面積との関係の一例を示すグラフである。
図7において、縦軸は切削面積を示し、横軸は工具の回転角度を示している。
図7に示す例は、刃数が4の工具における切削面積の変動である。この例では、工具1回転において、刃数に対応する数(すなわち4つ)の切削面積のピークが表れている。
【0089】
シミュレーション部113は、複数の軸方向切込み量ap及び複数の半径方向切込み量aeのそれぞれにおける工具1回転での切削面積の変動を算出する。さらにシミュレーション部113は、複数の軸方向切込み量ap及び複数の半径方向切込み量aeのそれぞれにおける工具1回転での切削面積の最大値を算出する。
【0090】
シミュレーション部113は、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeに対する工具1回転における切削面積の最大値の分布を示すコンターマップ(以下、「第1マップ」ともいう)を作成する。
【0091】
図8は、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeに対する工具1回転における切削面積の最大値の分布の一例を示すコンターマップである。
図8において、縦軸は軸方向切込み量apを示し、横軸は半径方向切込み量aeを示す。
図8の例において、各ハッチングは色に対応する。すなわち、第1マップでは、切削面積の最大値のレベルに応じて色分けされる。ユーザは、第1マップを参照することにより、例えば、使用する可能性が高い軸方向切込み量及び半径方向切込み量における切削面積の最大値のレベルを確認することができる。切削面積の最大値は、工具の寿命、工具の折損、加工精度、被加工物の治具からの脱落に影響する。すなわち、ユーザは、切削面積の最大値によって、工具の寿命、工具の折損、加工精度、被加工物の治具からの脱落の可能性を評価することができる。
【0092】
第1マップは、切削面積の最大値が、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeに関してどのように変化するのかを示している。例えば、第1マップによって、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeの2次元空間のどの領域において切削面積の最大値が高く、どの領域において切削面積の最大値が低いかが把握される。他の例では、第1マップによって、特定の軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeにおける切削面積の最大値がどの程度であるかが把握される。このように、第1マップは、工具の特性の1つである工具と被加工物との干渉状態に関する情報である。
【0093】
シミュレーション部113は、複数の軸方向切込み量ap及び複数の半径方向切込み量aeのそれぞれにおける工具1回転での切削面積の変動幅を算出する。
【0094】
シミュレーション部113は、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeに対する工具1回転における切削面積の変動幅の分布を示すコンターマップ(以下、「第2マップ」ともいう)を作成する。
【0095】
図9は、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeに対する工具1回転における切削面積の変動幅の分布の一例を示すコンターマップである。
図9において、縦軸は軸方向切込み量apを示し、横軸は半径方向切込み量aeを示す。
図9の例において、各ハッチングは色に対応する。すなわち、第2マップでは、切削面積の変動幅のレベルに応じて色分けされる。ユーザは、第2マップを参照することにより、例えば、使用する可能性が高い軸方向切込み量及び半径方向切込み量における切削面積の変動幅のレベルを確認することができる。切削面積の変動幅は、工具の寿命及び加工精度に影響する。すなわち、ユーザは、切削面積の変動幅によって、工具の寿命及び加工精度を評価することができる。
【0096】
第2マップは、切削面積の変動幅が、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeに関してどのように変化するのかを示している。例えば、第2マップによって、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeの2次元空間のどの領域において切削面積の変動幅が高く、どの領域において切削面積の変動幅が低いかが把握される。他の例では、第2マップによって、特定の軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeにおける切削面積の変動幅がどの程度であるかが把握される。このように、第2マップは、工具の特性の1つである工具と被加工物との干渉状態に関する情報である。
【0097】
図5に戻り、提供部114は、マップ情報をユーザに提供する。マップ情報は、第1マップ及び第2マップを含む。ただし、マップ情報はこれに限られず、第1マップ及び第2マップのいずれか1つを含んでもよい。具体的な一例では、提供部114は、マップ情報をネットワーク300を介して端末装置200へ送信する。端末装置200は、マップ情報を受信し、受信したマップ情報に含まれる第1マップ及び第2マップを表示する。マップ情報は、第1干渉状態情報の一例である。
【0098】
シミュレーション部113は、半径方向切込み量が特定の値である場合における軸方向切込み量apと切削面積の最大値との関係を示すグラフ(以下、「第1グラフ」ともいう)を作成する。さらにシミュレーション部113は、半径方向切込み量が特定の値である場合における軸方向切込み量apと切削面積の変動幅との関係を示すグラフ(以下、「第2グラフ」ともいう)を作成する。具体的な一例では、第2グラフは、軸方向切込み量と、切削面積の最大値から切削面積の変動幅を引いた差分との関係を示すグラフである。本実施形態では、シミュレーション部113は、軸方向切込み量を第1座標軸とし、切削面積を第2座標軸とする同一座標系において、第1グラフ及び第2グラフが重畳された図を作成する。なお、シミュレーション部113は、第1グラフ及び第2グラフを重畳せず、第1グラフ及び第2グラフのそれぞれが独立した図を作成してもよい。
【0099】
図10は、第1グラフ及び第2グラフの例を示す図である。
図10において、第1グラフ501を実線で示し、第2グラフ502を破線で示す。
図10の第1グラフ501及び第2グラフ502は、
図8及び
図9に示される特定点PTにおける半径方向切込み量を特定の値としている。すなわち、第1グラフ501は、
図8において特定点PTを通る縦線(破線)によって第1マップを切断したときの断面図に相当する。第2グラフ502は、
図9において特定点PTを通る縦線(破線)によって第2マップを切断したときの断面図に相当する。
【0100】
図10の例では、第2グラフ502は、第1グラフ(切削面積の最大値)を基準とした切削面積の変動幅のグラフである。すなわち、シミュレーション部113は、軸方向切込み量の各値において、切削面積の最大値から切削面積の変動幅を引いた値を算出し、算出した値を座標にプロットすることで第2グラフ502を作成する。切削面積の変動幅は、切削面積の最大値から切削面積の最小値を引いた差分である。したがって、第2グラフ502は、切削面積の最小値のグラフでもある。
【0101】
例えば、シミュレーション部113は、第1グラフ501及び第2グラフ502が重畳された図において、軸方向切込み量のユーザからの指定値における切削面積の変動幅を示す図形502Aを含めることができる。シミュレーション部113は、第1グラフ501及び第2グラフ502が重畳された図において、切削面積の変動幅の最小値を示す図形502Bを含めることができる。
図10の例では、図形502A及び図形502Bは、第1グラフ501上の点と第2グラフ502上の点とを線分で結んだ図形である。
図10における図形502Bでは、切削面積の変動幅の最小値が非常に小さいため2つの点が互いに近接し、線分がほとんど表れていない。
【0102】
図5に戻り、例えば、半径方向切込み量の特定の値をユーザが指定してもよい(以下、この値を「第1指定値」ともいう)。具体的な一例では、ユーザは第1マップ及び第2マップのいずれか1つにおいて1点(特定点PT)を指定することにより、半径方向切込み量の第1指定値を端末装置200に入力する。端末装置200は、入力された第1指定値をネットワーク300を介してサーバ100へ送信する。サーバ100の受付部111は、端末装置200から送信された第1指定値をネットワーク300を介して受信する。シミュレーション部113は、半径方向切込み量が第1指定値である場合における第1グラフ及び第2グラフを作成する。
【0103】
シミュレーション部113は、軸方向切込み量が特定の値である場合における半径方向切込み量aeと切削面積の最大値との関係を示すグラフ(以下、「第3グラフ」ともいう)を作成する。さらにシミュレーション部113は、軸方向切込み量が特定の値である場合における半径方向切込み量aeと切削面積の変動幅との関係を示すグラフ(以下、「第4グラフ」ともいう)を作成する。具体的な一例では、第4グラフは、半径方向切込み量と、切削面積の最大値から切削面積の変動幅を引いた差分との関係を示すグラフである。本実施形態では、シミュレーション部113は、半径方向切込み量を第1座標軸とし、切削面積を第2座標軸とする同一座標系において、第3グラフ及び第4グラフが重畳された図を作成する。なお、シミュレーション部113は、第3グラフ及び第4グラフを重畳せず、第3グラフ及び第4グラフのそれぞれが独立した図を作成してもよい。
【0104】
図11は、第3グラフ及び第4グラフの例を示す図である。
図11において、第3グラフ503を実線で示し、第4グラフ504を破線で示す。
図11の第3グラフ503及び第4グラフ504は、
図8及び
図9に示される特定点PTにおける軸方向切込み量を特定の値としている。すなわち、第3グラフ503は、
図8において特定点PTを通る横線(実線)によって第1マップを切断したときの断面図に相当する。第4グラフ504は、
図9において特定点PTを通る横線(実線)によって第2マップを切断したときの断面図に相当する。
【0105】
図11の例では、第4グラフ504は、第3グラフ(切削面積の最大値)を基準とした切削面積の変動幅のグラフである。すなわち、シミュレーション部113は、半径方向切込み量の各値において、切削面積の最大値から切削面積の変動幅を引いた値を算出し、算出した値を座標にプロットすることで第4グラフ504を作成する。したがって、第4グラフ504は、切削面積の最小値のグラフでもある。
【0106】
例えば、シミュレーション部113は、第3グラフ503及び第4グラフ504が重畳された図において、第1指定値における切削面積の変動幅を示す図形504Aを含めることができる。
図11の例では、図形504Aは、第3グラフ503上の点と第4グラフ504上の点とを線分で結んだ図形である。
【0107】
図5に戻り、例えば、軸方向切込み量の特定の値をユーザが指定してもよい(以下、この値を「第2指定値」ともいう)。具体的な一例では、ユーザは第1マップ及び第2マップのいずれか1つにおいて特定点PTを指定することにより、軸方向切込み量の第2指定値を端末装置200に入力する。すなわち、ユーザは、特定点PTを指定することにより、第1指定値及び第2指定値を同時に入力することができる。端末装置200は、入力された第2指定値をネットワーク300を介してサーバ100へ送信する。サーバ100の受付部111は、端末装置200から送信された第2指定値をネットワーク300を介して受信する。シミュレーション部113は、軸方向切込み量が第2指定値である場合における第3グラフ及び第4グラフを作成する。
【0108】
提供部114は、グラフ情報をユーザに提供する。グラフ情報は、第1グラフ、第2グラフ、第3グラフ及び第4グラフを含む。ただし、グラフ情報はこれに限られず、第1グラフ、第2グラフ、第3グラフ、及び第4グラフのうちの少なくとも1つを含んでもよい。具体的な一例では、提供部114は、グラフ情報をネットワーク300を介して端末装置200へ送信する。端末装置200は、グラフ情報を受信し、受信したグラフ情報に含まれる第1グラフ、第2グラフ、第3グラフ及び第4グラフを表示する。例えば、端末装置200は、第1グラフ及び第2グラフが同一座標系に重畳表示された図、及び、第3グラフ及び第4グラフが同一座標系に重畳表示された図の少なくとも1つを表示する。グラフ情報は、第2干渉状態情報の一例であり、第3干渉状態情報の一例である。
【0109】
シミュレーション部113は、さらに、工具の1回転における被加工物の切削体積が特定の固定値である場合(つまり、切削加工の能率が一定の場合)における軸方向切込み量apと切削面積の最大値との関係を示すグラフ(以下、「第5グラフ」ともいう)を作成する。シミュレーション部113は、さらに、工具の1回転における被加工物の切削体積が上記の固定値である場合における軸方向切込み量apと切削面積の変動幅との関係を示すグラフ(以下、「第6グラフ」ともいう)を作成する。具体的な一例では、第6グラフは、軸方向切込み量と、切削面積の最大値から切削面積の変動幅を引いた差分との関係を示すグラフである。本実施形態では、シミュレーション部113は、軸方向切込み量を第1座標軸とし、切削面積を第2座標軸とする同一座標系において、第5グラフ及び第6グラフが重畳された図を作成する。なお、シミュレーション部113は、第5グラフ及び第6グラフを重畳せず、第5グラフ及び第6グラフのそれぞれが独立した図を作成してもよい。
【0110】
図12Aは、第5グラフ及び第6グラフの例を示す図である。
図12Aにおいて、第5グラフ505を実線で示し、第6グラフ506を破線で示す。
図12Aの第5グラフ505及び第6グラフ506は、
図8及び
図9に示される特定点PTにおける切削体積を特定の固定値としている。すなわち、第5グラフ505は、
図8において特定点PTを通る、軸方向切込み量apと半径方向切込み量aeとの積が一定である曲線(一点鎖線)によって第1マップを切断したときの断面を、横軸方向(つまり、半径方向切込み量の軸の方向)に見たときの図に相当する。第6グラフ506は、
図9において特定点PTを通る曲線(一点鎖線)によって第2マップを切断したときの断面を、横軸方向に見たときの図に相当する。
【0111】
図12Aの例では、第6グラフ506は、第5グラフ(切削面積の最大値)を基準とした切削面積の変動幅のグラフである。すなわち、シミュレーション部113は、半径方向切込み量の各値において、切削面積の最大値から切削面積の変動幅を引いた値を算出し、算出した値を座標にプロットすることで第6グラフ506を作成する。したがって、第6グラフ506は、切削面積の最小値のグラフでもある。
【0112】
例えば、シミュレーション部113は、第5グラフ505及び第6グラフ506が重畳された図において、第2指定値における切削面積の変動幅を示す図形506Aを含めることができる。シミュレーション部113は、第5グラフ505及び第6グラフ506が重畳された図において、切削面積の変動幅の最小値を示す図形506Bを含めることができる。
図12Aの例では、図形506A及び図形506Bは、第5グラフ505上の点と第6グラフ506上の点とを線分で結んだ図形である。
図10における図形506Bでは、切削面積の変動幅の最小値が非常に小さいため2つの点が互いに近接している。
【0113】
図5に戻り、例えば、ユーザは第1マップ及び第2マップのいずれか1つにおいて特定点PTを指定することにより、切削体積の固定値を指定してもよい。すなわち、ユーザは、特定点PTを指定することにより、第1指定値及び第2指定値を同時に入力することで、第1指定値及び第2指定値の積である切削体積を指定することができる。端末装置200は、入力された第1指定値及び第2指定値をネットワーク300を介してサーバ100へ送信する。サーバ100の受付部111は、端末装置200から送信された第1指定値及び第2指定値をネットワーク300を介して受信する。シミュレーション部113は、切削体積が第1指定値と第2指定値との積に固定された場合における第5グラフ及び第6グラフを作成する。
【0114】
シミュレーション部113は、さらに、工具の1回転における被加工物の切削体積が特定の固定値である場合における半径方向切込み量aeと切削面積の最大値との関係を示すグラフ(以下、「第7グラフ」ともいう)を作成する。シミュレーション部113は、さらに、工具の1回転における被加工物の切削体積が上記の固定値である場合における半径方向切込み量aeと切削面積の変動幅との関係を示すグラフ(以下、「第8グラフ」ともいう)を作成する。具体的な一例では、第8グラフは、半径方向切込み量と、切削面積の最大値から切削面積の変動幅を引いた差分との関係を示すグラフである。本実施形態では、シミュレーション部113は、半径方向切込み量を第1座標軸とし、切削面積を第2座標軸とする同一座標系において、第7グラフ及び第8グラフが重畳された図を作成する。なお、シミュレーション部113は、第7グラフ及び第8グラフを重畳せず、第7グラフ及び第8グラフのそれぞれが独立した図を作成してもよい。
【0115】
図12Bは、第7グラフ及び第8グラフの例を示す図である。
図12Bにおいて、第5グラフ507を実線で示し、第8グラフ508を破線で示す。
図12Bの第7グラフ507及び第8グラフ508は、
図8及び
図9に示される特定点PTにおける切削体積を特定の固定値としている。すなわち、第7グラフ507は、
図8において特定点PTを通る、軸方向切込み量apと半径方向切込み量aeとの積が一定である曲線(一点鎖線)によって第1マップを切断したときの断面を、縦軸方向(つまり、軸方向切込み量の軸の方向)に見たときの図に相当する。第8グラフ508は、
図9において特定点PTを通る曲線(実線)によって第2マップを切断したときの断面を、縦軸方向に見たときの図に相当する。
【0116】
図12Bの例では、第8グラフ508は、第7グラフ(切削面積の最大値)を基準とした切削面積の変動幅のグラフである。すなわち、シミュレーション部113は、半径方向切込み量の各値において、切削面積の最大値から切削面積の変動幅を引いた値を算出し、算出した値を座標にプロットすることで第8グラフ508を作成する。したがって、第8グラフ508は、切削面積の最小値のグラフでもある。
【0117】
例えば、シミュレーション部113は、第7グラフ507及び第8グラフ508が重畳された図において、第1指定値における切削面積の変動幅を示す図形508Aを含めることができる。シミュレーション部113は、第7グラフ507及び第8グラフ508が重畳された図において、切削面積の変動幅の最小値を示す図形508Bを含めることができる。
図12Bの例では、図形508A及び図形508Bは、第7グラフ507上の点と第8グラフ508上の点とを線分で結んだ図形である。
図10における図形508Bでは、切削面積の変動幅の最小値が非常に小さいため2つの点が互いに近接し、線分が表れていない。
【0118】
提供部114から端末装置200へ送信されるグラフ情報は、第5グラフ、第6グラフ、第7グラフ、及び第8グラフを含んでもよい。例えば、グラフ情報は、第5グラフ、第6グラフ、第7グラフ、及び第8グラフの少なくとも1つを含んでもよい。他の例では、グラフ情報は、第1グラフ、第2グラフ、第3グラフ、及び第4グラフを含まず、第5グラフ、第6グラフ、第7グラフ、及び第8グラフの少なくとも1つを含んでもよい。これにより、第5グラフ、第6グラフ、第7グラフ、及び第8グラフの少なくとも1つをユーザに提示することができる。
【0119】
サーバ100は、2つの工具の切削特性を比較した情報をユーザに提示することができる。ユーザは、特定の工具の使用を検討する際に、端末装置200を操作して、当該特定の工具である第1工具と、比較対象の工具である第2工具とを比較した工具情報(干渉状態情報)をサーバ100に要求する。例えば、ユーザは、端末装置200に第1工具の第1識別情報と、第2工具の第2識別情報とを入力する。端末装置200は、入力された第1識別情報及び第2識別情報を含む工具情報要求をサーバ100へ送信する。
【0120】
受付部111は、端末装置200から工具情報要求を受け付ける。取得部112は、受付部111によって受け付けられた工具情報要求に含まれる第1識別情報及び第2識別情報を用いて、第1工具の第1形状情報及び第2工具の第2形状情報を取得する。具体的な一例では、取得部112は、第1識別情報を用いて工具DB120に第1形状情報を問い合わせ、第2識別情報を用いて工具DB120に第2形状情報を問い合わせる。工具DB120は、第1識別情報に対応する第1形状情報及び第2識別情報に対応する第2形状情報を出力する。取得部112は、工具DB120から出力された第1形状情報及び第2形状情報を取得する。
【0121】
シミュレーション部113は、取得部112によって取得された第1形状情報に基づいて、第1工具を用いた転削加工のシミュレーションを実行する。シミュレーション部113は、取得部112によって取得された第2形状情報に基づいて、第2工具を用いた転削加工のシミュレーションを実行する。転削加工のシミュレーションは、上述した処理と同じであるので説明を省略する。
【0122】
シミュレーション部113は、複数の軸方向切込み量ap及び複数の半径方向切込み量aeのそれぞれについて、第1工具による切削面積(第1物理量)の最大値から第2工具による切削面積(第2物理量)の最大値を引いた差分(以下、「第1差分」ともいう)を算出する。シミュレーション部113は、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeに対する第1工具による切削面積の最大値と第2工具による切削面積の最大値との第1差分の分布を示すコンターマップ(以下、「第3マップ」ともいう)を作成する。
【0123】
図13Aは、第1工具についての第1マップの一例を示す図である。
図13Bは、第2工具についての第1マップの一例を示す図である。
図13Cは、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeに対する第1工具による切削面積の最大値と第2工具による切削面積の最大値との第1差分の分布の一例を示すコンターマップである。
図13Cにおいて、縦軸は軸方向切込み量apを示し、横軸は半径方向切込み量aeを示す。
図13Cの例において、各ハッチングは色に対応する。すなわち、第3マップ511Cでは、第1工具による切削面積の最大値と第2工具による切削面積の最大値との第1差分のレベルに応じて色分けされる。ユーザは、第3マップを参照することにより、例えば、使用する可能性が高い軸方向切込み量及び半径方向切込み量において、第1工具と第2工具との間で切削面積の最大値がどの程度異なるかを確認することができる。
【0124】
第3マップ511Cは、第1工具についての第1マップ511Aにおける切削面積の最大値から、第2工具についての第1マップ511Bにおける切削面積の最大値を、同一座標において引いた差分のマップである。
【0125】
第3マップ511Cは、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeに関して、第1工具による切削面積の最大値と第2工具による切削面積の最大値とを比較した情報である。例えば、第3マップ511Cによって、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeの2次元空間のどの領域において、第1工具による切削面積の最大値と第2工具による切削面積の最大値との差が大きく、どの領域において第1工具による切削面積の最大値と第2工具による切削面積の最大値との差が小さいかが把握される。他の例では、第3マップ511Cによって、特定の軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeにおいて、第1工具による切削面積の最大値が第2工具による切削面積の最大値よりもどの程度大きいか(又は小さいか)が把握される。このように、第3マップ511Cは、第1工具の切削特性と第2工具の切削特性とを比較した情報であり、第1工具及び第2工具の被加工物に対する干渉状態に関する情報である。
【0126】
シミュレーション部113は、複数の軸方向切込み量ap及び複数の半径方向切込み量aeのそれぞれについて、第1工具による切削面積(第1物理量)の変動幅から第2工具による切削面積(第2物理量)の変動幅を引いた差分(以下、「第2差分」ともいう)を算出する。シミュレーション部113は、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeに対する第1工具による切削面積の変動幅と第2工具による切削面積の変動幅との第2差分の分布を示すコンターマップ(以下、「第4マップ」ともいう)を作成する。
【0127】
図14Aは、第1工具についての第2マップの一例を示す図である。
図14Bは、第2工具についての第2マップの一例を示す図である。
図14Cは、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeに対する第1工具による切削面積の変動幅と第2工具による切削面積の変動幅との第2差分の分布の一例を示すコンターマップである。
図14Cにおいて、縦軸は軸方向切込み量apを示し、横軸は半径方向切込み量aeを示す。
図14Cの例において、各ハッチングは色に対応する。すなわち、第4マップ512Cでは、第1工具による切削面積の変動幅と第2工具による切削面積の変動幅との第2差分のレベルに応じて色分けされる。ユーザは、第4マップを参照することにより、例えば、使用する可能性が高い軸方向切込み量及び半径方向切込み量において、第1工具と第2工具との間で切削面積の変動幅がどの程度異なるかを確認することができる。
【0128】
第4マップ512Cは、第1工具についての第2マップ512Aにおける切削面積の変動幅から、第2工具についての第2マップ512Bにおける切削面積の変動幅を、同一座標において引いた差分のマップである。
【0129】
第4マップ512Cは、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeに関して、第1工具による切削面積の変動幅と第2工具による切削面積の変動幅とを比較した情報である。例えば、第4マップ512Cによって、軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeの2次元空間のどの領域において、第1工具による切削面積の変動幅と第2工具による切削面積の変動幅との差が大きく、どの領域において第1工具による切削面積の変動幅と第2工具による切削面積の変動幅との差が小さいかが把握される。他の例では、第4マップ512Cによって、特定の軸方向切込み量ap及び半径方向切込み量aeにおいて、第1工具による切削面積の変動幅が第2工具による切削面積の変動幅よりもどの程度大きいか(又は小さいか)が把握される。このように、第4マップ512Cは、第1工具の切削特性と第2工具の切削特性とを比較した情報であり、第1工具及び第2工具の被加工物に対する干渉状態に関する情報である。
【0130】
提供部114から端末装置200へ送信されるマップ情報は、第3マップ及び第4マップを含んでもよい。例えば、マップ情報は、第3マップ及び第4マップの少なくとも1つを含んでもよい。他の例では、マップ情報は、第1マップ及び第2マップを含まず、第3マップ及び第4マップの少なくとも1つを含んでもよい。これにより、第3マップ及び第4マップの少なくとも1つをユーザに提示することができる。
【0131】
シミュレーション部113は、半径方向切込み量が特定の値である場合における軸方向切込み量apと、第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分との関係を示すグラフ(以下、「第9グラフ」ともいう)を作成する。さらにシミュレーション部113は、半径方向切込み量が特定の値である場合における軸方向切込み量apと、第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分との関係を示すグラフ(以下、「第10グラフ」ともいう)を作成する。本実施形態では、シミュレーション部113は、軸方向切込み量を第1座標軸とし、切削面積を第2座標軸とする同一座標系において、第9グラフ及び第10グラフが重畳された図を作成する。なお、シミュレーション部113は、第9グラフ及び第10グラフを重畳せず、第9グラフ及び第10グラフのそれぞれが独立した図を作成してもよい。
【0132】
図15Aは、第1工具についての第1グラフ及び第2グラフの例を示す図である。
図15Bは、第2工具についての第1グラフ及び第2グラフの例を示す図である。
図15Cは、軸方向切込み量と、第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分との関係を示す第9グラフ、及び、軸方向切込み量と、第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分との関係を示す第10グラフの例を示す図である。
図15Aは、半径方向切込み量が特定の値である場合における第1工具についての第1グラフ521A及び第2グラフ522Aであり、
図15Bは、半径方向切込み量が上記と同一の特定の値である場合における第2工具についての第1グラフ521B及び第2グラフ522Bである。
図15Cは、半径方向切込み量が上記と同一の特定の値である場合における第9グラフ521C及び第10グラフ522Cである。
【0133】
図15Aの第1グラフ521A及び第2グラフ522Aが重畳された図において、第2指定値における切削面積の変動幅を示す図形522AAと、切削面積の変動幅の最小値を示す図形522ABとが表されている。
【0134】
図15Bの第1グラフ521B及び第2グラフ522Bが重畳された図において、第2指定値における切削面積の変動幅を示す図形522BAと、切削面積の変動幅の最小値を示す図形522BBとが表されている。
【0135】
図15Cにおいて、第9グラフ521Cを実線で示し、第10グラフ522Cを破線で示す。
図15Cの第9グラフ521C及び第10グラフ522Cは、
図13C及び
図14Cに示される特定点PTにおける半径方向切込み量を特定の値としている。すなわち、第9グラフ521Cは、
図13Cにおいて特定点PTを通る縦線(破線)によって第3マップ511Cを切断したときの断面図に相当する。第10グラフ522Cは、
図14Cにおいて特定点PTを通る縦線(破線)によって第4マップ512Cを切断したときの断面図に相当する。
【0136】
例えば、シミュレーション部113は、第9グラフ521C及び第10グラフ522Cが重畳された図において、第2指定値における第1差分と第2差分とを示す図形522CAを含めることができる。図形522CAは、第2指定値における第9グラフ521C上の点と、第2指定値における第10グラフ522C上の点とを線分で結んだ図形である。
【0137】
第9グラフ521C上の図形522CAの点の位置によって、第2指定値における第1差分が示される。第1差分が正であることは、第1工具の切削面積の最大値が、第2工具の切削面積の最大値よりも大きいことを示している。したがってこの場合、第2工具の方が寿命、折損の可能性、加工精度、被加工物の治具からの脱落等の点において有利である。一方、第1差分が負であることは、第1工具の切削面積の最大値が、第2工具の切削面積の最大値よりも小さいことを示している。したがってこの場合、第1工具の方が寿命、折損の可能性、加工精度、被加工物の治具からの脱落等の点において有利である。
【0138】
第10グラフ522C上の図形522CAの点の位置によって、第2指定値における第2差分が示される。第2差分が正であることは、第1工具の切削面積の変動幅が、第2工具の切削面積の変動幅よりも大きいことを示している。したがってこの場合、第2工具の方が寿命、加工精度等の点において有利である。一方、第2差分が負であることは、第1工具の切削面積の変動幅が、第2工具の切削面積の変動幅よりも小さいことを示している。したがってこの場合、第1工具の方が寿命、加工精度等の点において有利である。
【0139】
図5に戻り、例えば、半径方向切込み量の特定の値(第1指定値)をユーザが指定してもよい。具体的な一例では、ユーザは第3マップ及び第4マップのいずれか1つにおいて1点(特定点PT)を指定することにより、半径方向切込み量の第1指定値を端末装置200に入力する。端末装置200は、入力された第1指定値をネットワーク300を介してサーバ100へ送信する。サーバ100の受付部111は、端末装置200から送信された第1指定値をネットワーク300を介して受信する。シミュレーション部113は、半径方向切込み量が第1指定値である場合における第9グラフ及び第10グラフを作成する。
【0140】
シミュレーション部113は、軸方向切込み量が特定の値である場合における半径方向切込み量aeと、第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分との関係を示すグラフ(以下、「第11グラフ」ともいう)を作成する。さらにシミュレーション部113は、軸方向切込み量が特定の値である場合における半径方向切込み量aeと、第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分との関係を示すグラフ(以下、「第12グラフ」ともいう)を作成する。本実施形態では、シミュレーション部113は、半径方向切込み量を第1座標軸とし、切削面積を第2座標軸とする同一座標系において、第11グラフ及び第12グラフが重畳された図を作成する。なお、シミュレーション部113は、第11グラフ及び第12グラフを重畳せず、第11グラフ及び第12グラフのそれぞれが独立した図を作成してもよい。
【0141】
図16Aは、第1工具についての第3グラフ及び第4グラフの例を示す図である。
図16Bは、第2工具についての第3グラフ及び第4グラフの例を示す図である。
図16Cは、半径方向切込み量と、第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分との関係を示す第11グラフ、及び、半径方向切込み量と、第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分との関係を示す第12グラフの例を示す図である。
図16Aは、軸方向切込み量が特定の値である場合における第1工具についての第3グラフ523A及び第4グラフ524Aであり、
図16Bは、軸方向切込み量が上記と同一の特定の値である場合における第2工具についての第3グラフ523B及び第4グラフ524Bである。
図16Cは、軸方向切込み量が上記と同一の特定の値である場合における第11グラフ523C及び第12グラフ524Cである。
【0142】
図16Aの第3グラフ523A及び第4グラフ524Aが重畳された図において、第1指定値における切削面積の変動幅を示す図形524AAが表されている。
【0143】
図16Bの第3グラフ523B及び第4グラフ524Bが重畳された図において、第1指定値における切削面積の変動幅を示す図形524BAが表されている。
【0144】
図16Cにおいて、第11グラフ523Cを実線で示し、第12グラフ524Cを破線で示す。
図16Cの第11グラフ523C及び第12グラフ524Cは、
図13C及び
図14Cに示される特定点PTにおける軸方向切込み量を特定の値としている。すなわち、第11グラフ523Cは、
図13Cにおいて特定点PTを通る横線(実線)によって第3マップ511Cを切断したときの断面図に相当する。第12グラフ524Cは、
図14Cにおいて特定点PTを通る横線(実線)によって第4マップ512Cを切断したときの断面図に相当する。
【0145】
例えば、シミュレーション部113は、第11グラフ523C及び第12グラフ524Cが重畳された図において、第1指定値における第1差分と第2差分とを示す図形524CAを含めることができる。図形524CAは、第1指定値における第11グラフ523C上の点と、第1指定値における第12グラフ524C上の点とを線分で結んだ図形である。
【0146】
第11グラフ523C上の図形524CAの点の位置によって、第1指定値における第1差分が示される。上述した図形522CAと同様に、図形524CAによって示される第1差分の大きさにより、第1工具及び第2工具の間での、寿命、折損の可能性、加工精度、被加工物の治具からの脱落等についての有利、不利を評価することができる。
【0147】
第12グラフ524C上の図形524CAの点の位置によって、第1指定値における第2差分が示される。上述した図形522CAと同様に、図形524CAによって示される第2差分の大きさにより、第1工具及び第2工具の間での、寿命、加工精度等についての有利、不利を評価することができる。
【0148】
図5に戻り、例えば、軸方向切込み量の特定の値(第2指定値)をユーザが指定してもよい。具体的な一例では、ユーザは第3マップ及び第4マップのいずれか1つにおいて1点(特定点PT)を指定することにより、軸方向切込み量の第2指定値を端末装置200に入力する。端末装置200は、入力された第2指定値をネットワーク300を介してサーバ100へ送信する。サーバ100の受付部111は、端末装置200から送信された第2指定値をネットワーク300を介して受信する。シミュレーション部113は、軸方向切込み量が第2指定値である場合における第11グラフ及び第12グラフを作成する。
【0149】
提供部114から端末装置200へ送信されるグラフ情報は、第9グラフ、第10グラフ、第11グラフ、及び第12グラフを含んでもよい。例えば、グラフ情報は、第9グラフ、第10グラフ、第11グラフ、及び第12グラフの少なくとも1つを含んでもよい。他の例では、グラフ情報は、第1グラフ、第2グラフ、第3グラフ、第4グラフ、第5グラフ、第6グラフ、第7グラフ、及び第8グラフを含まず、第9グラフ、第10グラフ、第11グラフ、及び第12グラフの少なくとも1つを含んでもよい。これにより、第9グラフ、第10グラフ、第11グラフ、及び第12グラフの少なくとも1つをユーザに提示することができる。
【0150】
シミュレーション部113は、さらに、工具の1回転における被加工物の切削体積が特定の固定値である場合における半径方向切込み量aeと、第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分との関係を示すグラフ(以下、「第13グラフ」ともいう)を作成する。さらにシミュレーション部113は、工具の1回転における被加工物の切削体積が特定の固定値である場合における半径方向切込み量aeと、第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分との関係を示すグラフ(以下、「第14グラフ」ともいう)を作成する。本実施形態では、シミュレーション部113は、半径方向切込み量を第1座標軸とし、切削面積を第2座標軸とする同一座標系において、第13グラフ及び第14グラフが重畳された図を作成する。なお、シミュレーション部113は、第13グラフ及び第14グラフを重畳せず、第13グラフ及び第14グラフのそれぞれが独立した図を作成してもよい。
【0151】
図17Aは、第1工具についての第7グラフ及び第8グラフの例を示す図である。
図17Bは、第2工具についての第7グラフ及び第8グラフの例を示す図である。
図17Cは、半径方向切込み量と、第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分との関係を示す第13グラフ、及び、半径方向切込み量と、第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分との関係を示す第14グラフの例を示す図である。
図17Aは、工具の1回転における被加工物の切削体積が特定の固定値である場合における第1工具についての第7グラフ527A及び第8グラフ528Aであり、
図17Bは、切削体積が上記と同一の特定の値である場合における第2工具についての第7グラフ527B及び第8グラフ528Bである。
図17Cは、切削体積が上記と同一の特定の値である場合における第13グラフ527C及び第14グラフ528Cである。
【0152】
図17Aの第7グラフ527A及び第8グラフ528Aが重畳された図において、第1指定値における切削面積の変動幅を示す図形528AAが表されている。さらにこの図において、切削面積の変動幅の最小値を示す図形528ABが表されている。
【0153】
図17Bの第7グラフ527B及び第8グラフ528Bが重畳された図において、第1指定値における切削面積の変動幅を示す図形528BAが表されている。さらにこの図において、切削面積の変動幅の最小値を示す図形528BBが表されている。
【0154】
図17Cにおいて、第13グラフ527Cを実線で示し、第14グラフ528Cを破線で示す。
図17Cの第13グラフ527C及び第14グラフ528Cは、
図13C及び
図14Cに示される特定点PTにおける切削面積を特定の値としている。すなわち、第13グラフ527Cは、
図13Cにおいて特定点PTを通る、軸方向切込み量apと半径方向切込み量aeとの積が一定である曲線(一点鎖線)によって第3マップ511Cを切断したときの断面図を、縦軸方向に見たときの図に相当する。第14グラフ528Cは、
図14Cにおいて特定点PTを通る、軸方向切込み量apと半径方向切込み量aeとの積が一定である曲線(一点鎖線)によって第4マップ512Cを切断したときの断面図を、縦軸方向に見たときの図に相当する。
【0155】
例えば、シミュレーション部113は、第13グラフ527C及び第14グラフ528Cが重畳された図において、第1指定値における第1差分と第2差分とを示す図形528CAを含めることができる。図形528CAは、第1指定値における第13グラフ527C上の点と、第1指定値における第14グラフ528C上の点とを線分で結んだ図形である。
【0156】
第13グラフ527C上の図形528CAの点の位置によって、第1指定値における第1差分が示される。上述した図形522CAと同様に、図形528CAによって示される第1差分の大きさにより、第1工具及び第2工具の間での、寿命、折損の可能性、加工精度、被加工物の治具からの脱落等についての有利、不利を評価することができる。
【0157】
第14グラフ528C上の図形528CAの点の位置によって、第1指定値における第2差分が示される。上述した図形522CAと同様に、図形528CAによって示される第2差分の大きさにより、第1工具及び第2工具の間での、寿命、加工精度等についての有利、不利を評価することができる。
【0158】
図5に戻り、例えば、ユーザは第3マップ及び第4マップのいずれか1つにおいて特定点PTを指定することにより、切削体積の固定値を指定してもよい。すなわち、ユーザは、特定点PTを指定することにより、第1指定値及び第2指定値を同時に入力することで、第1指定値及び第2指定値の積である切削体積を指定することができる。端末装置200は、入力された第1指定値及び第2指定値をネットワーク300を介してサーバ100へ送信する。サーバ100の受付部111は、端末装置200から送信された第1指定値及び第2指定値をネットワーク300を介して受信する。シミュレーション部113は、切削体積が第1指定値と第2指定値との積に固定された場合における第13グラフ及び第14グラフを作成する。
【0159】
シミュレーション部113は、さらに、工具の1回転における被加工物の切削体積が特定の固定値である場合における半径方向切込み量aeと、第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分との関係を示すグラフ(以下、「第15グラフ」ともいう)を作成する。さらにシミュレーション部113は、工具の1回転における被加工物の切削体積が特定の固定値である場合における半径方向切込み量aeと、第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分との関係を示すグラフ(以下、「第16グラフ」ともいう)を作成する。本実施形態では、シミュレーション部113は、半径方向切込み量を第1座標軸とし、切削面積を第2座標軸とする同一座標系において、第15グラフ及び第16グラフが重畳された図を作成する。なお、シミュレーション部113は、第15グラフ及び第16グラフを重畳せず、第15グラフ及び第16グラフのそれぞれが独立した図を作成してもよい。なお、第15グラフ及び第16グラフは、第1軸が半径方向切込み量であることを除き、第13グラフ及び第14グラフと同様であるので、図及び説明を省略する。
【0160】
提供部114から端末装置200へ送信されるグラフ情報は、第13グラフ、第14グラフ、第15グラフ、及び第16グラフを含んでもよい。例えば、グラフ情報は、第13グラフ、第14グラフ、第15グラフ、及び第16グラフの少なくとも1つを含んでもよい。他の例では、グラフ情報は、第1グラフ、第2グラフ、第3グラフ、第4グラフ、第5グラフ、第6グラフ、第7グラフ、第8グラフ、第9グラフ、第10グラフ、第11グラフ、及び第12グラフを含まず、第13グラフ、第14グラフ、第15グラフ、及び第16グラフの少なくとも1つを含んでもよい。これにより、第13グラフ、第14グラフ、第15グラフ、及び第16グラフの少なくとも1つをユーザに提示することができる。
【0161】
サーバ100は、工具の切削特性を周波数解析した情報をユーザに提示することができる。工具の切削特性の周波数解析は、特に、不等ピッチ又は不等リードの工具において有用である。ここで、不等ピッチとは、工具の各刃のピッチが異なることをいい、不等リードとは、工具の各刃のねじれ角が異なることをいう。
【0162】
シミュレーション部113は、時間的に変化する切削面積を周波数変換し、切削面積の周波数スペクトルを算出する。周波数変換には、例えば高速フーリエ変換が用いられる。
【0163】
図18Aは、不等ピッチの工具による切削面積の時間変動の一例を示すグラフである。
図18Aにおいて、縦軸は切削面積を示し、横軸は時間を示す。工具は等速回転をするため、横軸は工具の回転角度にも対応している。
図18Aの例のように、不等ピッチ又は不等リードの工具による切削面積は、時間的に複雑なパターンを示す。
図18Bは、
図18Aの例の切削面積の時間変動を周波数変換した結果を示すグラフである。
図18Bにおいて、縦軸は切削面積を示し、横軸は周波数を示す。
図18Bに示すように、切削面積は、0Hzを除き、特定の周波数(
図18Bの例では、約160Hz、約330Hz、約490Hz、約660Hz、約830Hz、約1000Hz、約1160Hz、及び約1330Hz)においてピークを示している。
図18Bの例において、切削面積の最大ピークAMは約2.0mm
2である。切削面積の最大ピークAMは、0Hzより高い周波数成分での切削面積の最大値である。切削面積の最大ピークAMが現れる周波数F_AMは約160Hzである。周波数F_AMは、0Hzより高い周波数成分での切削面積の最大値を示す周波数である。
【0164】
シミュレーション部113は、軸方向切込み量及び半径方向切込み量のそれぞれについての切削面積の周波数スペクトルにおいて0Hzより高い周波数成分での最大値の分布を示すコンターマップ(以下、「第5マップ」ともいう)を作成する。
図18Bの例において、切削面積の最大値(ただし、0Hzにおける切削面積を除く)は約160Hzにおける約2.0mm
2である。シミュレーション部113は、このような切削面積の最大値を各軸方向切込み量及び各半径方向切込み量について算出し、第1座標軸が軸方向切込み量であり、第2座標軸が半径方向切込み量である座標空間に切削面積の最大値を記録することにより、第5マップを作成する。
【0165】
図19Aは、等ピッチ(全ての刃のピッチが等しい)及び等リード(全ての刃のねじれ角が等しい)の工具A(工具径12mm、刃数4)についての第1マップの一例を示す図である。
図19Bは、工具Aについての第2マップの一例を示す図である。
図19Cは、軸方向切込み量及び半径方向切込み量のそれぞれについての工具Aによる切削面積の周波数スペクトルにおいて0Hzより高い周波数成分での最大値の分布の一例を示すコンターマップ(第5マップ)である。
図19Cにおいて、縦軸は軸方向切込み量apを示し、横軸は半径方向切込み量aeを示す。
図19Cの例において、各ハッチングは色に対応する。すなわち、第5マップでは、工具による切削面積の最大値のレベルに応じて色分けされる。ユーザは、第5マップを参照することにより、例えば、使用する可能性が高い軸方向切込み量及び半径方向切込み量において、周波数スペクトルでの切削面積の最大値のレベルを確認することができる。
【0166】
図19Aと
図19Cとを比較すると理解されるように、等ピッチ及び等リードの工具Aでは、周波数領域における切削面積の最大値の軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての分布は、時間領域における切削面積の最大値の軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての分布と全く異なっている。一方、
図19Bと
図19Cとを比較すると理解されるように、等ピッチ及び等リードの工具Aでは、時間領域における切削面積の変動幅の軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての分布と、周波数領域における切削面積の最大値の軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての分布とが概ね一致する。
【0167】
図20Aは、不等ピッチ及び等リードの工具B(工具径12mm、刃数4)についての第1マップの一例を示す図である。
図20Bは、工具Bについての第2マップの一例を示す図である。
図20Cは、工具Bについての第5マップの一例を示す。
【0168】
図20Aと
図20Cとを比較すると理解されるように、不等ピッチ及び等リードの工具Bにおいても、周波数領域における切削面積の最大値の軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての分布は、時間領域における切削面積の最大値の軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての分布と全く異なっている。一方、
図20Bと
図20Cとを比較すると理解されるように、不等ピッチ及び等リードの工具Bにおいて、周波数領域における切削面積の最大値の軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての分布パターンは、時間領域における切削面積の変動幅の軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての分布パターンにある程度近似しているが、等ピッチ及び等リードの工具Aの場合(
図19B及び
図19C)よりも異なっている。すなわち、第5マップには、不等ピッチの工具Bの周波数特性が強く現れていることが分かる。
【0169】
図21Aは、等ピッチ及び不等リードの工具C(工具径12mm、刃数4)についての第1マップの一例を示す図である。
図21Bは、工具Cについての第2マップの一例を示す図である。
図21Cは、工具Cについての第5マップの一例を示す。
【0170】
図21Aと
図21Cとを比較すると理解されるように、等ピッチ及び不等リードの工具Cにおいても、周波数領域における切削面積の最大値の軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての分布は、時間領域における切削面積の最大値の軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての分布と全く異なっている。
図21Bと
図21Cとを比較すると理解されるように、等ピッチ及び不等リードの工具Cにおいて、周波数領域における切削面積の最大値の軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての分布パターンは、時間領域における切削面積の変動幅の軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての分布パターンにある程度近似しているが、等ピッチ及び等リードの工具Aの場合(
図19B及び
図19C)よりも異なっている。すなわち、第5マップには、不等リードの工具Cの周波数特性が強く現れていることが分かる。
【0171】
図5に戻り、シミュレーション部113は、さらに、軸方向切込み量及び半径方向切込み量のそれぞれについての切削面積の周波数スペクトルにおいて0Hzより高い周波数成分での最大値を示す周波数の分布を示すコンターマップ(以下、「第6マップ」ともいう)を作成する。
図18Bの例において、切削面積の最大値(ただし、0Hzにおける切削面積を除く)は約160Hzで現れている。シミュレーション部113は、このような切削面積の最大値を示す周波数を各軸方向切込み量及び各半径方向切込み量について算出し、第1座標軸が軸方向切込み量であり、第2座標軸が半径方向切込み量である座標空間に切削面積の最大値を示す周波数を記録することにより、第6マップを作成する。
【0172】
図19Dは、軸方向切込み量及び半径方向切込み量のそれぞれについての工具Aによる切削面積の周波数スペクトルにおいて0Hzより高い周波数成分での最大値を示す周波数の分布の一例を示すコンターマップ(第6マップ)である。
図19Dにおいて、縦軸は軸方向切込み量apを示し、横軸は半径方向切込み量aeを示す。
図19Dの例において、各ハッチングは色に対応する。すなわち、第6マップでは、工具による切削面積の最大値を示す周波数のレベルに応じて色分けされる。ユーザは、第6マップを参照することにより、例えば、使用する可能性が高い軸方向切込み量及び半径方向切込み量において、切削面積の最大値における周波数レベルを確認することができる。
【0173】
等ピッチ及び等リードの工具では、軸方向切込み量及び半径方向切込み量が変化しても切削面積の周波数特性がほとんど変化しない。このため、切削面積の周波数スペクトルにおいて、0Hzよりも高い周波数成分での切削面積の最大値は、概ね同じ周波数に現れる。したがって、工具Aについての第6マップでは、軸方向切込み量及び半径方向切込み量の全体において一様な周波数レベルが示されている。
【0174】
図20Dは、工具Bについての第6マップの一例を示す。不等ピッチ及び等リードの工具では、軸方向切込み量及び半径方向切込み量の変化に応じて、切削面積の周波数特性が変化する。このため、切削面積の周波数スペクトルにおいて、0Hzよりも高い周波数成分での切削面積の最大値は、軸方向切込み量及び半径方向切込み量に応じて変化する。このように、第6マップには、不等ピッチの工具Bの周波数特性が強く現れていることが分かる。
【0175】
図21Dは、工具Cについての第6マップの一例を示す。等ピッチ及び不等リードの工具では、軸方向切込み量及び半径方向切込み量の変化に応じて、切削面積の周波数特性が変化する。このため、切削面積の周波数スペクトルにおいて、0Hzよりも高い周波数成分での切削面積の最大値は、軸方向切込み量及び半径方向切込み量に応じて変化する。このように、第6マップには、不等リードの工具Cの周波数特性が強く現れていることが分かる。
【0176】
図5に戻り、シミュレーション部113は、さらに、軸方向切込み量及び半径方向切込み量のそれぞれについての切削面積の周波数スペクトルにおいて0Hzより高い周波数成分での最大値を示す周波数の工具の回転周波数に対する比の分布を示すコンターマップ(以下、「第7マップ」ともいう)を作成する。上述したように、
図18Bの例において、切削面積の最大値(ただし、0Hzにおける切削面積を除く)は約160Hzで現れている。シミュレーション部113は、このような切削面積の最大値を示す周波数を各軸方向切込み量及び各半径方向切込み量について算出し、算出した周波数の工具の刃の切込み周波数に対する比(以下、「周波数比」ともいう)を算出する。シミュレーション部113は、第1座標軸が軸方向切込み量であり、第2座標軸が半径方向切込み量である座標空間に周波数比を記録することにより、第7マップを作成する。
【0177】
図19Eは、軸方向切込み量及び半径方向切込み量のそれぞれについての工具Aによる切削面積の周波数スペクトルにおいて0Hzより高い周波数成分での最大値を示す周波数の工具Aの刃の切込み周波数に対する比(周波数比)の分布の一例を示すコンターマップ(第7マップ)である。
図19Eにおいて、縦軸は軸方向切込み量apを示し、横軸は半径方向切込み量aeを示す。
図19Eの例において、各ハッチングは色に対応する。すなわち、第7マップでは、工具による切削面積の最大値を示す周波数の工具の回転周波数に対する比のレベルに応じて色分けされる。ユーザは、第7マップを参照することにより、例えば、使用する可能性が高い軸方向切込み量及び半径方向切込み量において、工具の回転周波数に対して切削面積の最大値における周波数がどの程度であるかを確認することができる。
【0178】
等ピッチ及び等リードの工具では、軸方向切込み量及び半径方向切込み量が変化しても切削面積の周波数特性がほとんど変化しない。したがって、上述したように、切削面積の周波数スペクトルにおいて、0Hzよりも高い周波数成分での切削面積の最大値は、概ね同じ周波数に現れる。工具Aについての第7マップでは、軸方向切込み量及び半径方向切込み量の全体において一様な周波数比が示されている。
【0179】
図20Eは、工具Bについての第7マップの一例を示す。不等ピッチ及び等リードの工具では、軸方向切込み量及び半径方向切込み量の変化に応じて、切削面積の周波数特性が変化する。このため、軸方向切込み量及び半径方向切込み量に応じて周波数比は変化する。このように、第7マップには、不等ピッチの工具Bの周波数特性が強く現れていることが分かる。
【0180】
図21Eは、工具Cについての第7マップの一例を示す。等ピッチ及び不等リードの工具では、軸方向切込み量及び半径方向切込み量の変化に応じて、切削面積の周波数特性が変化する。このため、軸方向切込み量及び半径方向切込み量に応じて周波数比は変化する。このように、第7マップには、不等リードの工具Cの周波数特性が強く現れていること
が分かる。
【0181】
サーバ100は、工具が特定の条件における切削加工に適しているか否かを判定し、判定結果をユーザに提示することができる。
【0182】
図5に戻り、判定部115は、半径方向切込み量及び軸方向切込み量の少なくとも1つが特定の条件を満たしている場合に、工具1回転における切削面積の最大値が第1許容範囲に入るか否かを判定する。以下、工具1回転における切削面積の最大値が第1許容範囲に入るか否かの判定を「第1判定」ともいう。
【0183】
上記の特定の条件(以下、「第1設定条件」ともいう)は、サーバ100に設定される。例えば、第1設定条件は、ユーザから指定された条件である。具体的な一例では、ユーザは、工具を使用したい半径方向切込み量の範囲及び軸方向切込み量の範囲を指定し、第1設定条件としてサーバ100に設定する。
【0184】
例えば、第1許容範囲は、ユーザによってサーバ100に設定される。第1許容範囲は、サーバ100の不揮発性メモリ102に予め記憶されていてもよいし、第1判定の都度ユーザから指定されてもよい。他の例では、第1許容範囲は、ユーザによらず決定される。具体的な一例では、判定部115は、切削面積の最大値の、軸方向切込み量及び半径方向切込み量のいずれか1つを変化させた場合における極小値に基づいて第1許容範囲を決定する。例えば、第1設定条件として軸方向切込み量の範囲が指定されている場合に、判定部115は、切削面積の最大値の軸方向切込み量を変化させたときにおける極小値を特定し、特定した極小値から当該極小値よりも所定量大きい値までの範囲を第1許容範囲に決定することができる(例えば、極小値が0であり、所定量が0.3mm2である場合、第1許容範囲は0以上0.3mm2以下である)。半径方向切込み量についての第1許容範囲も同様に決定することができる。
【0185】
例えば、第1設定範囲における工具1回転当たりの切削面積の最大値が0.25mm2であり、第1許容範囲が0以上0.3mm2以下である場合、判定部115は、切削面積の最大値が第1許容範囲に入ると判定する。例えば、第1設定範囲における工具1回転当たりの切削面積の最大値が0.35mm2であり、第1許容範囲が0以上0.3mm2以下である場合、判定部115は、切削面積の最大値が第1許容範囲に入らないと判定する。
【0186】
提供部114は、判定部115による第1判定の結果(以下、「第1判定結果」ともいう)をユーザに提供することができる。具体的な一例では、提供部114は、第1判定結果を端末装置200へ送信する。端末装置200は第1判定結果を受信し、受信した第1判定結果を表示する。
【0187】
判定部115は、半径方向切込み量及び軸方向切込み量の少なくとも1つが特定の条件を満たしている場合に、工具1回転における切削面積の変動幅が第2許容範囲に入るか否かを判定する。以下、工具1回転における切削面積の変動幅が第2許容範囲に入るか否かの判定を「第2判定」ともいう。
【0188】
上記の特定の条件(以下、「第2設定条件」ともいう)は、サーバ100に設定される。例えば、第2設定条件は、ユーザから指定された条件である。具体的な一例では、ユーザは、工具を使用したい半径方向切込み量の範囲及び軸方向切込み量の範囲を指定し、第2設定条件としてサーバ100に設定する。なお、第2設定条件と第1設定条件とは同一であってもよい。
【0189】
例えば、第2許容範囲は、ユーザによってサーバ100に設定される。第2許容範囲は、サーバ100の不揮発性メモリ102に予め記憶されていてもよいし、第2判定の都度ユーザから指定されてもよい。他の例では、第2許容範囲は、ユーザによらず決定される。具体的な一例では、判定部115は、切削面積の変動幅の、軸方向切込み量及び半径方向切込み量のいずれか1つを変化させた場合における極小値に基づいて第2許容範囲を決定する。例えば、第2設定条件として軸方向切込み量の範囲が指定されている場合に、判定部115は、切削面積の変動幅の軸方向切込み量を変化させたときにおける極小値を特定し、特定した極小値から当該極小値よりも所定量大きい値までの範囲を第2許容範囲に決定することができる(例えば、極小値が0であり、所定量が0.15mm2である場合、第2許容範囲は0以上0.15mm2以下である)。半径方向切込み量についての第2許容範囲も同様に決定することができる。
【0190】
例えば、第2設定範囲における工具1回転当たりの切削面積の変動幅が0.1mm2であり、第2許容範囲が0以上0.15mm2以下である場合、判定部115は、切削面積の変動幅が第2許容範囲に入ると判定する。例えば、第2設定範囲における工具1回転当たりの切削面積の変動幅が0.3mm2であり、第2許容範囲が0以上0.15mm2以下である場合、判定部115は、切削面積の変動幅が第2許容範囲に入らないと判定する。
【0191】
提供部114は、判定部115による第2判定の結果(以下、「第2判定結果」ともいう)をユーザに提供することができる。具体的な一例では、提供部114は、第2判定結果を端末装置200へ送信する。端末装置200は第2判定結果を受信し、受信した第2判定結果を表示する。
【0192】
提供部114は、第1判定結果と第2判定結果とを統合した情報をユーザに提供してもよい。例えば、提供部114は、第1判定結果と第2判定結果との両方を含む画面を端末装置200に表示させてもよい。例えば、第1設定条件及び第2設定条件が等しく、且つ、第1判定結果と第2判定結果との両方が肯定的である(つまり、切削面積の最大値が第1許容範囲に入り、且つ、切削面積の変動幅が第2許容範囲に入る)場合、提供部114は、当該工具が第1設定条件(第2設定条件)における切削加工に適しているという判定結果をユーザに提供してもよい。例えば、第1設定条件及び第2設定条件が等しく、且つ、第1判定結果と第2判定結果との少なくとも1つが否定的である(つまり、切削面積の最大値が第1許容範囲を外れる、又は、切削面積の変動幅が第2許容範囲を外れる)場合、提供部114は、当該工具が第1設定条件(第2設定条件)における切削加工に適していないという判定結果をユーザに提供してもよい。
【0193】
判定部115は、第1判定結果が否定的である場合、工具1回転における切削面積の最大値が第1許容範囲に入る半径方向切込み量及び軸方向切込み量を、切削加工に適した加工条件(以下、「第1推奨条件」ともいう)として決定してもよい。判定部115は、第2判定結果が否定的である場合、工具1回転における切削面積の変動幅が第2許容範囲に入る半径方向切込み量及び軸方向切込み量を、切削加工に適した加工条件(以下、「第2推奨条件」ともいう)として決定してもよい。
【0194】
サーバ100は、複数の工具から特定の加工条件に最も適した工具を選択し、選択した工具の情報をユーザに提示することができる。
【0195】
選択部116は、複数の工具のうち、工具1回転における切削面積に基づいて1又は複数の工具を選択する選択処理を実行する。具体的な一例では、選択処理は、複数の工具のうち、軸方向切込み量についての工具1回転における切削面積の最大値の、半径方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具を選択する処理である。他の具体的な一例では、選択処理は、複数の工具のうち、半径方向切込み量についての工具1回転における切削面積の最大値の、軸方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具を選択する処理である。
【0196】
さらに他の例では、選択処理は、複数の工具のうち、軸方向切込み量についての工具1回転における切削面積の変動幅の、半径方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具を選択する処理である。さらに他の例では、選択処理は、複数の工具のうち、半径方向切込み量についての工具1回転における切削面積の変動幅の、軸方向切込み量を変化させた場合における極小値が最小となる工具を選択する処理である。
【0197】
ユーザは、特定の切削加工に用いる工具を検討する際に、端末装置200を操作して、候補となる複数の工具からの切削加工に適した工具の選択をサーバ100に要求する。例えば、ユーザは、端末装置200に候補となる複数の工具(以下、「候補工具」ともいう)の各識別情報を入力する。端末装置200は、入力された複数の候補工具の識別情報を含む工具選択要求をサーバ100へ送信する。
【0198】
受付部111は、端末装置200から工具選択要求を受け付ける。取得部112は、受付部111によって受け付けられた工具選択要求に含まれる各識別情報を用いて、複数の候補工具のそれぞれの形状情報を取得する。具体的な一例では、取得部112は、各識別情報を用いて工具DB120に候補工具それぞれの形状情報を問い合わせる。工具DB120は、各識別情報に対応する複数の形状情報を出力する。取得部112は、工具DB120から出力された複数の形状情報を取得する。
【0199】
シミュレーション部113は、取得部112によって取得された複数の形状情報に基づいて、転削加工のシミュレーションを候補工具毎に実行する。転削加工のシミュレーションは、上述した処理と同じであるので説明を省略する。
【0200】
選択部116は、シミュレーション部113による転削加工のシミュレーション結果を用いて、上述した選択処理を実行する。すなわち、選択部116は、一例では、複数の候補工具毎に、軸方向切込み量についての工具1回転における切削面積の最大値の、半径方向切込み量を変化させた場合における極小値(以下、「第1極小値」ともいう)を取得する。他の例では、選択部116は、複数の候補工具毎に、半径方向切込み量についての工具1回転における切削面積の最大値の、軸方向切込み量を変化させた場合における極小値(以下、「第2極小値」ともいう)を取得する。例えば、選択部116は、取得した第1極小値が最も小さい候補工具、及び、取得した第2極小値が最も小さい候補工具の少なくとも1つを選択する(以下、選択された候補工具を「選択工具」ともいう)。選択部116は、第1極小値及び第2極小値の両方に基づいて、選択工具を決定してもよい。例えば、選択部116は、第1極小値及び第2極小値の和が最も小さい候補工具を、選択工具として選択することができる。
【0201】
選択部116は、ユーザから指定された半径方向切込み量及び軸方向切込み量の範囲(以下、「指定範囲」ともいう)において、第1極小値及び第2極小値を取得してもよい。ユーザは例えば、工具を使用する半径方向切込み量及び軸方向切込み量の範囲を指定範囲として端末装置200に入力する。受付部111は、端末装置200から送信された指定範囲を受け付ける(受信する)。選択部116は、受付部111によって受け付けられた指定範囲を使用して、第1極小値及び第2極小値を取得し、第1極小値及び第2極小値に基づいて選択工具を決定する。これにより、ユーザが工具を使用する指定範囲において、軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての切削面積の最大値が極小となる工具を選択することができる。
【0202】
他の例では、選択部116は、複数の候補工具毎に、軸方向切込み量についての工具1回転における切削面積の変動幅の、半径方向切込み量を変化させた場合における極小値(以下、「第3極小値」ともいう)を取得する。さらに他の例では、選択部116は、複数の候補工具毎に、半径方向切込み量についての工具1回転における切削面積の変動幅の、軸方向切込み量を変化させた場合における極小値(以下、「第4極小値」ともいう)を取得する。例えば、選択部116は、取得した第3極小値が最も小さい候補工具、及び、取得した第4極小値が最も小さい候補工具の少なくとも1つを選択する。選択部116は、第3極小値及び第3極小値の両方に基づいて、選択工具を決定してもよい。例えば、選択部116は、第3極小値及び第4極小値の和が最も小さい候補工具を、選択工具として選択することができる。
【0203】
選択部116は、指定範囲において、第3極小値及び第4極小値を取得してもよい。選択部116は、受付部111によって受け付けられた指定範囲を使用して、第3極小値及び第4極小値を取得し、第3極小値及び第4極小値に基づいて選択工具を決定する。これにより、ユーザが工具を使用する指定範囲において、軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての切削面積の変動幅が極小となる工具を選択することができる。
【0204】
例えば、選択部116は、第1極小値、第2極小値、第3極小値、及び第4極小値の全てに基づいて、選択工具として決定してもよい。具体的な一例では、選択部116は、指定範囲における第1極小値、第2極小値、第3極小値、及び第4極小値の和が最も小さい候補工具を、選択工具として選択してもよい。
【0205】
提供部114は、選択工具に関する情報(以下、「選択工具情報」ともいう)をユーザに提供する。例えば、選択工具に関する情報は、選択工具の識別情報を含む。選択工具情報は、選択工具の形状情報を含んでもよい。具体的な一例では、提供部114は、選択工具情報を端末装置200へ送信する。端末装置200は選択工具情報を受信し、受信した選択工具情報を表示する。
【0206】
[7.工具情報提示システムの動作]
次に、工具情報提示システム10の動作について説明する。
【0207】
サーバ100は、第1工具情報提供処理、第2工具情報提供処理、及び第3工具情報提供処理を実行することができる。
【0208】
図22A及び
図22Bは、実施形態に係るサーバ100による第1工具情報提供処理の一例を示すフローチャートである。
【0209】
ユーザは、特定の工具(以下、「対象工具」ともいう)の特性を検討したい場合、対象工具の識別情報を端末装置200に入力する。端末装置200は、入力された識別情報を含む工具情報要求をサーバ100へ送信する。サーバ100のプロセッサ101は、工具情報要求を受信することにより、対象工具の識別情報を受け付ける(ステップS101)。
【0210】
プロセッサ101は、対象工具の識別情報によって工具DB120に対象工具の形状情報を問い合わせる。工具DB120は識別情報に対応する形状情報を出力し、プロセッサ101は工具DB120から出力された対象工具の形状情報を取得する(ステップS102)。
【0211】
プロセッサ101は、取得した形状情報を用いて、対象工具による転削加工のシミュレーションを実行する(ステップS103)。
【0212】
プロセッサ101は、転削加工のシミュレーションにより、第1マップ及び第2マップを作成する(ステップS104)。
【0213】
プロセッサ101は、作成した第1マップ及び第2マップを含むマップ情報をユーザに提供する(ステップS105)。具体的には、プロセッサ101は、上記のマップ情報を端末装置200へ送信する。端末装置200は、マップ情報を受信し、受信したマップ情報を表示する。
【0214】
ユーザは、対象工具の特性をさらに詳細に知りたい場合、第1マップ又は第2マップ上の1点を指定し、グラフの作成要求を端末装置200に入力する。指定点PTは、軸方向切込み量及び半径方向切込み量によって定義される。端末装置200は、入力された指定点を含むグラフ作成要求をサーバ100へ送信する。
【0215】
プロセッサ101は、グラフ作成要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS106)。グラフ作成要求を受け付けた場合(ステップS106においてYES)、プロセッサ101は、半径方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における軸方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示す第1グラフを作成する。プロセッサ101は、軸方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における半径方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示す第2グラフを作成する。プロセッサ101は、半径方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における軸方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示す第3グラフを作成する。プロセッサ101は、軸方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における半径方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示す第4グラフを作成する。プロセッサ101は、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における軸方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示す第5グラフを作成する。プロセッサ101は、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における軸方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示す第6グラフを作成する(ステップS107)。なお、プロセッサ101は、第5グラフ及び第6グラフに代えて、又は、第5グラフ及び第6グラフに加えて、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における半径方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示す第7グラフを作成してもよい。さらにプロセッサ101は、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における半径方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示す第8グラフを作成してもよい。
【0216】
プロセッサ101は、作成した第1グラフから第6グラフまでの6つのグラフを含むグラフ情報をユーザに提供する(ステップS108)。具体的には、プロセッサ101は、第1グラフ、第2グラフ、第3グラフ、第4グラフ、第5グラフ、及び第6グラフを含むグラフ情報を端末装置200へ送信する。端末装置200は、グラフ情報を受信し、受信したグラフ情報を表示する。
【0217】
一方、グラフ作成要求を受け付けていない場合(ステップS106においてNO)、プロセッサ101は、ステップS109へ進む。
【0218】
ユーザは、特定の加工条件(第1設定条件)における転削加工に対象工具が適しているか否かを知りたい場合、第1設定条件を端末装置200に入力する。端末装置200は、入力された第1設定条件を含む判定要求をサーバ100へ送信する。
【0219】
プロセッサ101は、判定要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS109)。判定要求を受け付けた場合(ステップS109においてYES)、プロセッサ101は、半径方向切込み量及び軸方向切込み量の少なくとも1つが第1設定条件を満たしている場合に、工具1回転における切削面積の最大値が第1許容範囲に入るか否かを判定する第1判定処理を実行する(ステップS110)。
【0220】
さらにプロセッサ101は、半径方向切込み量及び軸方向切込み量の少なくとも1つが第1設定条件を満たしている場合に、工具1回転における切削面積の変動幅が第2許容範囲に入るか否かを判定する第2判定処理を実行する(ステップS111)。
【0221】
プロセッサ101は、第1判定処理の結果及び第2判定処理の結果を含む判定結果をユーザに提供する(ステップS112)。具体的には、プロセッサ101は、第1判定処理の結果及び第2判定処理の結果を含む判定結果を端末装置200へ送信する。端末装置200は、判定結果を受信し、受信した判定結果を表示する。
【0222】
一方、判定要求を受け付けていない場合(ステップS109においてNO)、プロセッサ101は、ステップS113へ進む。
【0223】
ユーザは、対象工具の周波数特性を知りたい場合、周波数解析要求を端末装置200に入力する。端末装置200は、入力された周波数解析要求をサーバ100へ送信する。
【0224】
プロセッサ101は、周波数解析要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS113)。周波数解析要求を受け付けた場合(ステップS113においてYES)、プロセッサ101は、シミュレーションによって得られた時間領域の切削面積を周波数変換する(ステップS114)。
【0225】
プロセッサ101は、軸方向切込み量及び半径方向切込み量のそれぞれについての切削面積の周波数スペクトルにおいて0Hzより高い周波数成分での最大値の分布を示す第5マップを作成する。プロセッサ101は、さらに、軸方向切込み量及び半径方向切込み量のそれぞれについての切削面積の周波数スペクトルにおいて0Hzより高い周波数成分での最大値を示す周波数の分布を示す第6マップを作成する。プロセッサ101は、さらに、軸方向切込み量及び半径方向切込み量のそれぞれについての切削面積の周波数スペクトルにおいて0Hzより高い周波数成分での最大値を示す周波数の工具の刃の切込み周波数に対する比の分布を示す第7マップを作成する(ステップS115)。
【0226】
プロセッサ101は、作成した第5マップ、第6マップ、及び第7マップを含む周波数マップ情報をユーザに提供する(ステップS116)。具体的には、プロセッサ101は、第5マップ、第6マップ、及び第7マップを含む周波数マップ情報を端末装置200へ送信する。端末装置200は、周波数マップ情報を受信し、受信した周波数マップ情報を表示する。
【0227】
以上で、第1工具情報提供処理が終了する。また、周波数解析要求を受け付けていない場合も(ステップS113においてNO)、第1工具情報提供処理が終了する。
【0228】
図23は、実施形態に係るサーバ100による第2工具情報提供処理の一例を示すフローチャートである。
【0229】
ユーザは、特定の工具(第1工具)の特性と別の工具(第2工具)の特性とを比較したい場合、第1工具の第1識別情報と、第2工具の第2識別情報とを端末装置200に入力する。端末装置200は、入力された第1識別情報及び第2識別情報を含む工具情報要求をサーバ100へ送信する。サーバ100のプロセッサ101は、工具情報要求を受信することにより、第1識別情報及び第2識別情報を受け付ける(ステップS201)。
【0230】
プロセッサ101は、第1識別情報によって工具DB120に第1工具の第1形状情報を問い合わせ、第2識別情報によって工具DB120に第2工具の第2形状情報を問い合わせる。工具DB120は第1識別情報に対応する第1形状情報を出力し、第2識別情報に対応する第2形状情報を出力する。プロセッサ101は工具DB120から出力された第1形状情報及び第2形状情報を取得する(ステップS202)。
【0231】
プロセッサ101は、取得した第1形状情報を用いて、第1工具による転削加工のシミュレーションを実行する(ステップS203)。
【0232】
プロセッサ101は、第1工具による転削加工のシミュレーションにより、第1マップ及び第2マップを作成する(ステップS204)。
【0233】
プロセッサ101は、取得した第2形状情報を用いて、第2工具による転削加工のシミュレーションを実行する(ステップS205)。
【0234】
プロセッサ101は、第2工具による転削加工のシミュレーションにより、第1マップ及び第2マップを作成する(ステップS206)。
【0235】
プロセッサ101は、複数の軸方向切込み量及び複数の半径方向切込み量のそれぞれについて、第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分を算出する。プロセッサ101は、軸方向切込み量及び半径方向切込み量に対する第1工具による切削面積の最大値と第2工具による切削面積の最大値との第1差分の分布を示す第3マップを作成する。プロセッサ101は、複数の軸方向切込み量及び複数の半径方向切込み量のそれぞれについて、第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分を算出する。プロセッサ101は、軸方向切込み量及び半径方向切込み量に対する第1工具による切削面積の最大値と第2工具による切削面積の最大値との第2差分の分布を示す第4マップを作成する(ステップS207)。
【0236】
プロセッサ101は、第1工具についての第1マップ及び第2マップ、第2工具についての第1マップ及び第2マップ、並びに、作成した第3マップ及び第4マップを含むマップ情報をユーザに提供する(ステップS208)。具体的には、プロセッサ101は、第1工具についての第1マップ及び第2マップ、第2工具についての第1マップ及び第2マップ、並びに、作成した第3マップ及び第4マップを含むマップ情報を端末装置200へ送信する。端末装置200は、マップ情報を受信し、受信したマップ情報を表示する。
【0237】
ユーザは、第1工具の特性と第2工具の特性とをさらに詳細に比較したい場合、第1工具についての第1マップ及び第2マップ、第2工具についての第1マップ及び第2マップ、並びに、作成した第3マップ及び第4マップのいずれか1つにおいて1点を指定し、グラフの作成要求を端末装置200に入力する。端末装置200は、入力された指定点を含むグラフ作成要求をサーバ100へ送信する。
【0238】
プロセッサ101は、グラフ作成要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS209)。グラフ作成要求を受け付けた場合(ステップS209においてYES)、プロセッサ101は、第1工具について、半径方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における軸方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示す第1グラフを作成する。プロセッサ101は、軸方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における半径方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示す第2グラフを作成する。プロセッサ101は、第1工具について、半径方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における軸方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示す第3グラフを作成する。プロセッサ101は、軸方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における半径方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示す第4グラフを作成する。プロセッサ101は、第1工具について、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における軸方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示す第5グラフを作成する。プロセッサ101は、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における軸方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示す第6グラフを作成する(ステップS210)。なお、プロセッサ101は、第1工具についての第5グラフ及び第6グラフに代えて、又は、第1工具についての第5グラフ及び第6グラフに加えて、第1工具について、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における半径方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示す第7グラフを作成してもよい。さらにプロセッサ101は、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における半径方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示す第8グラフを作成してもよい。
【0239】
さらに、プロセッサ101は、第2工具について、半径方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における軸方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示す第1グラフを作成する。プロセッサ101は、軸方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における半径方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示す第2グラフを作成する。プロセッサ101は、第2工具について、半径方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における軸方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示す第3グラフを作成する。プロセッサ101は、軸方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における半径方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示す第4グラフを作成する。プロセッサ101は、第2工具について、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における軸方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示す第5グラフを作成する。プロセッサ101は、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における軸方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示す第6グラフを作成する(ステップS210)。なお、プロセッサ101は、第2工具についての第5グラフ及び第6グラフに代えて、又は、第2工具についての第5グラフ及び第6グラフに加えて、第2工具について、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における半径方向切込み量と切削面積の最大値との関係を示す第7グラフを作成してもよい。さらにプロセッサ101は、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における半径方向切込み量と切削面積の変動幅との関係を示す第8グラフを作成してもよい。
【0240】
プロセッサ101は、半径方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における軸方向切込み量と、第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分との関係を示す第9グラフを作成する。さらにプロセッサ101は、半径方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における軸方向切込み量と、第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分との関係を示す第10グラフを作成する。プロセッサ101は、軸方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合における半径方向切込み量と、第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分との関係を示す第11グラフを作成する。さらにプロセッサ101は、軸方向切込み量が指定点PTによって指定された値である場合半径方向切込み量と、第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分との関係を示す第12グラフを作成する。プロセッサ101は、さらに、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における軸方向切込み量と、第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分との関係を示す第13グラフを作成する。さらにプロセッサ101は、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における軸方向切込み量と、第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分との関係を示す第14グラフを作成する(ステップS212)。なお、プロセッサ101は、第13グラフ及び第14グラフに代えて、又は、第13グラフ及び第14グラフに加えて、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における半径方向切込み量と第1工具による切削面積の最大値から第2工具による切削面積の最大値を引いた第1差分との関係を示す第15グラフを作成し、工具の1回転における被加工物の切削体積が指定点PTによって定まる値である場合における半径方向切込み量と第1工具による切削面積の変動幅から第2工具による切削面積の変動幅を引いた第2差分との関係を示す第16グラフを作成してもよい。
【0241】
プロセッサ101は、第1工具についての第1グラフから第6グラフの6つのグラフ、第2工具についての第1グラフから第6グラフの6つのグラフ、並びに、第9グラフから第14グラフの6つのグラフを含むグラフ情報をユーザに提供する(ステップS213)。具体的には、プロセッサ101は、上記のグラフ情報を端末装置200へ送信する。端末装置200は、グラフ情報を受信し、受信したグラフ情報を表示する。以上で、第2工具情報提供処理が終了する。また、グラフ作成要求を受け付けていない場合も(ステップS209においてNO)、第2工具情報提供処理が終了する。
【0242】
図24は、実施形態に係るサーバ100による第3工具情報提供処理の一例を示すフローチャートである。
【0243】
ユーザは、複数の候補工具の中から特定の加工条件(半径方向切込み量及び軸方向切込み量の指定範囲)に適した工具を選択したい場合、複数の候補工具のそれぞれの識別情報を端末装置200に入力し、半径方向切込み量及び軸方向切込み量の指定範囲を入力する。端末装置200は、入力された識別情報及び指定範囲を含む工具選択要求をサーバ100へ送信する。サーバ100のプロセッサ101は、工具選択要求を受信することにより、候補工具の識別情報及び指定範囲を受け付ける(ステップS301)。
【0244】
プロセッサ101は、候補工具の識別情報によって工具DB120に候補工具の形状情報を問い合わせる。工具DB120は識別情報に対応する形状情報を出力し、プロセッサ101は工具DB120から出力された候補工具の形状情報を取得する(ステップS302)。
【0245】
プロセッサ101は、取得した形状情報を用いて、各候補工具による転削加工のシミュレーションを実行する(ステップS303)。
【0246】
プロセッサ101は、転削加工のシミュレーションにより、候補工具毎に、軸方向切込み量についての工具1回転における切削面積の最大値の、半径方向切込み量を変化させた場合における第1極小値、半径方向切込み量についての工具1回転における切削面積の最大値の、軸方向切込み量を変化させた場合における第2極小値、軸方向切込み量についての工具1回転における切削面積の変動幅の、半径方向切込み量を変化させた場合における第3極小値、及び、半径方向切込み量についての工具1回転における切削面積の変動幅の、軸方向切込み量を変化させた場合における第4極小値を取得する(ステップS304)。
【0247】
プロセッサ101は、取得した第1極小値、第2極小値、第3極小値、及び第4極小値に基づいて、複数の候補工具の中から1又は複数の選択工具を決定する(ステップS305)。
【0248】
プロセッサ101は、選択工具に関する選択工具情報を端末装置200へ送信する。端末装置200は、選択工具情報を受信し、受信した選択工具情報を表示する。以上で、第3工具情報提供処理が終了する。
【0249】
[8.変形例]
上述した実施形態では、サーバ100が端末装置200へ干渉状態情報を送信し、端末装置200において干渉状態情報を表示することにより、ユーザに干渉状態情報を提示したが、これに限定されない。例えば、表示部を備えるコンピュータによってスタンドアロンの工具情報提示装置が構成され、工具情報提示装置が工具による転削加工のシミュレーションを実行することによって第1マップ、第2マップ等の干渉状態情報を作成し、作成した干渉状態情報を表示してもよい。
【0250】
上述した実施形態では、サーバ100が工具による転削加工のシミュレーションを実行し、シミュレーション結果に基づいて第1マップ、第2マップ等の工具の特性を示す干渉状態情報を作成したが、これに限定されない。例えば、データベースに各種の工具による軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての切削面積の実績値(又はシミュレーション値)が格納されており、サーバ100がデータベースから対象工具の切削面積の実績値を取得し、取得した実績値を用いて第1マップ、第2マップ等の干渉状態情報を作成してもよい。
【0251】
上述した実施形態では、工具と被加工物との干渉状態を示す物理量として切削面積を用いたが、これに限定されない。工具と被加工物との干渉状態を示す物理量として切削抵抗を用いてもよい。ただし、切削抵抗を計算する場合、工具のすくい角、逃げ角、刃先の丸み、被加工物の材質等を用いなければ、正確な値を計算することは難しい。このように切削抵抗は、工具のすくい角、逃げ角、刃先の丸み、被加工物の材質等の要素が加味されているため、切削抵抗を用いることで転削加工への工具の適否を正確に評価することができる。しかし、軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての切削面積の時間変動(及び周波数変動)は、軸方向切込み量及び半径方向切込み量についての切削抵抗の時間変動(及び周波数変動)と概ね同等であるため、切削面積によっても転削加工への工具の適否を適切に評価することができる。
【0252】
[9.付記]
(付記1)
転削加工用の工具に関する情報をユーザに提示するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
特定の工具についての前記工具の回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量の少なくとも1つが第1設定条件を満足する場合に、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量に対する前記工具と被加工物との前記工具の1回転における干渉状態を示す物理量の前記工具の1回転における最大値が第1許容範囲に入るか否かを判定するステップと、
前記物理量の最大値が、前記第1許容範囲に入るか否かの第1判定結果を送信するステップと、
を実行させるための、
コンピュータプログラム。
【0253】
(付記2)
転削加工用の工具に関する情報をユーザに提示するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
特定の工具についての前記工具の回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量の少なくとも1つが第1設定条件を満足する場合に、前記回転半径方向切込み量及び前記回転軸方向切込み量に対する前記工具と被加工物との前記工具の1回転における干渉状態を示す物理量の前記工具の1回転における変動幅が第2許容範囲に入るか否かを判定するステップと、
前記物理量の変動幅が、前記第2許容範囲に入るか否かの第2判定結果を送信するステップと、
を実行させるための、
コンピュータプログラム。
【0254】
(付記3)
転削加工用の工具に関する情報をユーザに提示するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
複数の工具のうち、前記工具の回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量に対する前記工具と被加工物との前記工具の1回転における干渉状態を示す物理量に基づいて1又は複数の工具を選択する選択処理を実行するステップと、
前記選択処理によって選択された前記1又は複数の工具に関する情報を送信するステップと、
を実行させるための、
コンピュータプログラム。
【0255】
[10.補記]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的ではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0256】
10 工具情報提示システム
100 サーバ(工具情報提示装置)
101 プロセッサ
102 不揮発性メモリ
103 揮発性メモリ
104 通信インタフェース(通信I/F)
105 データバス
110 工具情報提示プログラム
111 受付部
112 取得部
113 シミュレーション部
114 提供部
115 判定部
116 選択部
120 工具データベース(工具DB)
200 端末装置(表示装置)
201 入力部
202 表示部
300 ネットワーク
400 エンドミル(工具)
401 刃
401A,401B,401C,401D 刃
450 仮想モデル
451 切れ刃要素
501,521A,521B 第1グラフ
502,522A,522B 第2グラフ
503,523A,523B 第3グラフ
504,524A,524B 第4グラフ
505,525A,525B 第5グラフ
506,526A,526B 第6グラフ
507 第7グラフ
508 第8グラフ
511A,511B 第1マップ
512A,512B 第2マップ
511C 第3マップ
512C 第4マップ
521C 第9グラフ
522C 第10グラフ
523C 第11グラフ
524C 第12グラフ
527C 第13グラフ
528C 第14グラフ
502A,502B,504A,506A,506B,508A,508B,522AA,522AB,522BA,522BB,522CA,524AA,524BA,524CA,528AA,528AB,528BA,528BB,528CA 図形
AM 切削面積の最大ピーク
F_AM 切削面積の最大ピークを示す周波数
【要約】
工具情報提示システムは、転削加工用の工具に関する情報をユーザに提示する工具情報提示システムであって、工具情報提示装置と、表示装置と、を備え、前記工具情報提示装置は、特定の工具についての前記工具の回転半径方向切込み量及び回転軸方向切込み量に対する前記工具と被加工物との前記工具の1回転における干渉状態を示す干渉状態情報を前記表示装置に送信し、前記表示装置は、前記工具情報提示装置から送信された前記干渉状態情報を受信し、受信した前記干渉状態情報を表示する。