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特許7600523光学フィルム、偏光板、および画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】光学フィルム、偏光板、および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241210BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241210BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20241210BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241210BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241210BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K59/10
H05B33/02
H10K50/10
G02F1/1335 510
G09F9/00 313
G09F9/00 307A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019239844
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2020129107
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2018247909
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019028249
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯嶋 征一
(72)【発明者】
【氏名】堀井 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】野村 崇尚
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 智之
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/115784(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/200042(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/143167(WO,A1)
【文献】特開2012-234164(JP,A)
【文献】特開2017-182080(JP,A)
【文献】特開2018-169513(JP,A)
【文献】特開2018-010086(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074102(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第113227856(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H10K 59/10
H05B 33/02
H10K 50/10
G02F 1/1335
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材、第1機能層、および第2機能層をこの順に備える光学フィルムであって、
前記光透過性基材が、アセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、および(メタ)アクリル系樹脂の少なくともいずれかを含み、
前記第1機能層および前記第2機能層が、いずれ紫外線吸収剤を含み、
前記第1機能層と前記第2機能層の間に設けられ、前記第1機能層および前記第2機能層に隣接し、かつ前記第1機能層の成分および前記第2機能層の成分を含む混合層をさらに備え、
前記第1機能層、前記第2機能層および前記混合層の合計膜厚が、1μm以上10μm以下であり、
前記第1機能層、前記第2機能層および前記混合層の合計膜厚に対する前記混合層の膜厚の割合が、%以上40%以下であり、
前記第2機能層が、ハードコート層であり、
前記第2機能層のインデンテーション硬さが、前記第1機能層のインデンテーション硬さより大きく、
前記第2機能層中の前記紫外線吸収剤の濃度が、前記第1機能層中の前記紫外線吸収剤の濃度よりも低くなっている、光学フィルム。
【請求項2】
光透過性基材、第1機能層、および第2機能層をこの順に備える光学フィルムであって、
前記第1機能層および前記第2機能層が、いずれ紫外線吸収剤を含み、
前記第1機能層と前記第2機能層の間に設けられ、前記第1機能層および前記第2機能層に隣接し、かつ前記第1機能層の成分および前記第2機能層の成分を含む混合層をさらに備え、
前記第1機能層、前記第2機能層および前記混合層の合計膜厚が、1μm以上10μm以下であり、
前記混合層の膜厚が、0.1μm以上1μm以下であり、
前記第2機能層が、ハードコート層であり、
前記第2機能層のインデンテーション硬さが、前記第1機能層のインデンテーション硬さより大きく、
前記第2機能層中の前記紫外線吸収剤の濃度が、前記第1機能層中の前記紫外線吸収剤の濃度よりも低くなっている、光学フィルム。
【請求項3】
前記混合層の膜厚が、0.1μm以上である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項4】
記第1機能層のインデンテーション硬さが、50MPa以上600MPa以下である、請求項1ないしのいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の光学フィルムと、
前記光学フィルムの一方の面側に設けられた偏光子と、
を備える、偏光板。
【請求項6】
表示素子と、
前記表示素子よりも観察者側に配置された請求項1ないしのいずれか一項に記載の光学フィルムまたは請求項に記載の偏光板と、
を備える、画像表示装置。
【請求項7】
前記表示素子が、有機発光ダイオード素子である、請求項に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、偏光板、および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として、有機発光ダイオード(OLED)素子を用いたスマートフォン等の画像表示装置の開発が進んでいる。有機発光ダイオード素子を用いた画像表示装置は、液晶表示装置に代表される受光型の表示装置とは異なり、自発光型の表示装置であり、バックライト装置などの光源が不要であるため、薄型化および軽量化を図ることが可能である。
【0003】
一方で、OLED素子は、紫外線によって劣化することがあるので、画像表示装置に組み込まれている光学フィルムの粘着層等の機能層には、紫外線吸収剤が含まれていることがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
また、特許文献2には、紫外線吸収剤を含む硬化層上に、実質的に紫外線吸収剤を含まないか、または紫外線吸収剤の含有量が硬化層よりも少ないオーバーコート層を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-155213号公報
【文献】特開2016-200709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、画像表示装置においては、更なる薄型化が求められている。このため、画像表示装置に組み込まれている光学フィルムの薄型化も求められている。上記薄型化の要求に対し、光学フィルムの機能層の薄膜化が検討されている。
【0007】
しかしながら、単に、機能層の膜厚を薄くすると、機能層中の紫外線吸収剤の濃度が高くなってしまい、機能層を形成するための紫外線によって重合する重合性化合物の反応率が低下してしまう。このため、紫外線吸収剤を含む機能層とこの機能層に隣接する他の機能層との密着性が低くなってしまう。
【0008】
また、単に、機能層の膜厚を薄くすると、機能層中の紫外線吸収剤の濃度が高くなってしまい、機能層の表面硬度および耐擦傷性が低下するおそれがある。なお、表面硬度や耐擦傷性が低下すると、加工工程で傷が生じやすくなる。
【0009】
また、機能層中の紫外線吸収剤の濃度が高くなると、紫外線吸収剤が析出しやすくなり、耐久性が低下してしまうおそれがある。
【0010】
なお、特許文献2のように硬化層およびオーバーコート層のような機能層が2層積層されている場合において、機能層の合計の膜厚が薄い場合、これらの2層間で極端に紫外線吸収剤の濃度差が生じると、耐久試験時に紫外線吸収剤が多く含まれている機能層と紫外線吸収剤が少ない機能層との間の熱収縮差によりクラックが生じるおそれがある。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、薄型化を図ることができ、かつ第1機能層と第2機能層の密着性を向上させることができる光学フィルム、このような光学フィルムを備える偏光板および画像表示装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、薄型化を図ることができ、かつ良好な表面硬度、良好な耐擦傷性および良好な耐久性を有する光学フィルム、このような光学フィルムを備える偏光板および画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]光透過性基材、第1機能層、および第2機能層をこの順に備える光学フィルムであって、前記光透過性基材が、トリアセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、および(メタ)アクリル系樹脂の少なくともいずれかを含み、前記第1機能層および前記第2機能層の少なくともいずれかが、紫外線吸収剤を含み、前記第1機能層と前記第2機能層の間に設けられ、前記第1機能層および前記第2機能層に隣接し、かつ前記第1機能層の成分および前記第2機能層の成分を含む混合層をさらに備え、前記第1機能層、前記第2機能層および前記混合層の合計膜厚が、1μm以上10μm以下であり、前記第1機能層、前記第2機能層および前記混合層の合計膜厚に対する前記混合層の膜厚の割合が、0.6%以上40%以下である、光学フィルム。
【0014】
[2]光透過性基材、第1機能層、および第2機能層をこの順に備える光学フィルムであって、前記第1機能層および前記第2機能層の少なくともいずれかが、紫外線吸収剤を含み、前記第1機能層と前記第2機能層の間に設けられ、前記第1機能層および前記第2機能層に隣接し、かつ前記第1機能層の成分および前記第2機能層の成分を含む混合層をさらに備え、前記第1機能層、前記第2機能層および前記混合層の合計膜厚が、1μm以上10μm以下であり、前記混合層の膜厚が、0.02μm以上1μm以下である、光学フィルム。
【0015】
[3]前記混合層が、前記光透過性基材の一方の面に少なくとも重合性化合物を含む第1機能層用組成物の第1塗膜を塗布して第1塗膜を形成し、前記第1塗膜を半硬化させ、半硬化させた前記第1塗膜に少なくとも重合性化合物を含む第2機能層用組成物の第2塗膜を形成し、前記第1塗膜および前記第2塗膜を硬化させることによって形成される、上記[1]または[2]に記載の光学フィルム。
【0016】
[4]前記混合層の膜厚が、0.1μm以上である、上記[1]ないし[3]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【0017】
[5]前記第1機能層および前記第2機能層が、いずれも前記紫外線吸収剤を含む、上記[1]ないし[4]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【0018】
[6]前記第1機能層が、前記紫外線吸収剤を含み、前記第1機能層のインデンテーション硬さが、50MPa以上600MPa以下である、上記[1]に記載の光学フィルム。
【0019】
[7]光透過性基材および機能層を備える光学フィルムであって、前記機能層が、窒素原子を含む紫外線吸収剤を含み、前記機能層の膜厚が、1μm以上10μm以下であり、前記機能層において、飛行時間型二次イオン質量分析法により前記機能層の深さ方向の二次イオンの強度を測定したとき、前記機能層の表面を含む厚さ0.3μmの第1領域における前記紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度に対する前記機能層の前記深さ方向に前記機能層を二等分する二等分線を含む厚さ0.3μmの第2領域における前記紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度の比が1.1以上4.0以下であり、かつ前記第2領域における前記紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度に対する前記機能層の裏面を含む厚さ0.3μmの第3領域における前記紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度の比が1.2以上4.0以下である、光学フィルム。
【0020】
[8]前記第1領域における前記紫外線吸収剤由来の二次イオンの最小強度が、前記機能層における前記第1領域の前記光透過性基材側の境界から前記裏面までの第4領域における前記紫外線吸収剤由来の二次イオンの最小強度よりも小さい、上記[7]に記載の光学フィルム。
【0021】
[9]前記機能層が、フッ素原子含有化合物およびケイ素原子含有化合物の少なくともいずれかを含む、上記[7]または[8]に記載の光学フィルム。
【0022】
[10]前記機能層が、前記フッ素原子含有化合物を含み、前記飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記第1領域における前記フッ素原子含有化合物由来の二次イオンの強度が、前記第2領域および前記第3領域における前記フッ素原子含有化合物由来の二次イオンのそれぞれの強度よりも大きい、上記[9]に記載の光学フィルム。
【0023】
[11]前記機能層が、前記ケイ素原子含有化合物を含み、前記飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された前記第1領域における前記ケイ素原子含有化合物由来の二次イオンの強度が、前記第2領域および前記第3領域における前記ケイ素原子含有化合物由来の二次イオンのそれぞれ強度よりも大きい、上記[9]または[10]に記載の光学フィルム。
【0024】
[12]上記[1]ないし[11]のいずれか一項に記載の光学フィルムと、前記光学フィルムの一方の面側に設けられた偏光子と、を備える、偏光板。
【0025】
[13]表示素子と、前記表示素子よりも観察者側に配置された上記[1]ないし[11]のいずれか一項に記載の光学フィルムまたは上記[12]に記載の偏光板と、を備える、画像表示装置。
【0026】
[14]前記表示素子が、有機発光ダイオード素子である、上記[13]に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一の態様によれば、薄型化を図ることができ、かつ第1機能層と第2機能層の密着性を向上させることができる光学フィルム、このような光学フィルムを備える偏光板および画像表示装置を提供することができる。
【0028】
本発明の他の態様によれば、薄型化を図ることができ、かつ良好な表面硬度、良好な耐擦傷性および良好な耐久性を有する光学フィルム、このような光学フィルムを備える偏光板および画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、第1実施形態に係る光学フィルムの概略構成図である。
図2図2(A)~図2(C)は、折り畳み試験の様子を模式的に示した図である。
図3図3は、折り畳み試験に用いるサンプルの平面図である。
図4図4(A)および図4(B)は、第1実施形態に係る光学フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
図5図5(A)および図5(B)は、第1実施形態に係る光学フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
図6図6は、第1実施形態に係る偏光板の概略構成図である。
図7図7は、第1実施形態に係る画像表示装置の概略構成図である。
図8図8は、第2実施形態に係る光学フィルムの概略構成図である。
図9図9は、図8の光学フィルムの一部拡大図である。
図10図10は、面内位相差を測定する位置を特定するためのサンプルの平面図である。
図11図11(A)および図11(B)は、第2実施形態に係る光学フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
図12図12(A)および図12(B)は、第2実施形態に係る光学フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
図13図13は、第2実施形態に係る偏光板の概略構成図である。
図14図14は、第2実施形態に係る画像表示装置の概略構成図である。
図15図15は、実施例B1に係る光学フィルムにおける飛行時間型二次イオン質量分析法により測定されたハードコート層のデプスプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る光学フィルムおよび画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。本明細書において、「フィルム」、「シート」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「フィルム」はシートとも呼ばれるような部材も含む意味で用いられる。図1は、本実施形態に係る光学フィルムの概略構成図であり、図2(A)~図2(C)は、折り畳み試験の様子を模式的に示した図であり、図3は、折り畳み試験に用いるサンプルの平面図である。図4および図5は、本実施形態に係る光学フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
【0031】
<<<<光学フィルム>>>>
図1に示される光学フィルム10は、光透過性基材11、第1機能層12および第2機能層13をこの順で備えている。光学フィルム10は、第1機能層12と第2機能層13の間に形成された混合層14をさらに備えている。本明細書における「機能層」とは、光学フィルムにおいて、何らかの機能を発揮することを意図された層である。具体的には、機能層としては、例えば、光透過性基材との密着性を向上させるための下地層、ハードコート層、分光透過率調整層、防眩層、不可視化層、屈折率調整層、防汚層またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。本実施形態における「機能層」は、単層構造のものである。
【0032】
光学フィルム10の厚み(全体厚み)は、5μm以上80μm以下となっていることが好ましい。光学フィルム10の厚みが5μm以上であれば、所望の鉛筆硬度を得ることができ、また80μm以下であれば、光学フィルム10の薄型化を図ることができる。また、このように光学フィルム10の厚みを制御することにより、光学フィルム10を画像表示装置に組み込んだ際に画像表示装置全体の厚みを薄くすることが可能となり、その結果、軽量化も可能となる。光学フィルム10の厚みの下限は、光学フィルム10の機械強度の確保の観点から、8μm以上、10μm以上、または15μm以上が好ましい。また、光学フィルム10の更なる薄型化を図る観点から、50μm以下、40μm以下、または30μm以下が好ましい。
【0033】
また、後述するように光学フィルム10にフレキシブル性を付与するためには、光透過性基材11の樹脂系にもよるが、光学フィルム10の厚みは、73μm以下、更には63μm以下が好ましい。特に、後述する折り畳み試験での辺部の間隔φが小さくても、折り畳み方向に寄らない観点から、光学フィルム10の厚みは、48μm以下、更には43μm以下が好ましい。また、フレキシブル性を得る一方で、機械強度も確保したいため、光学フィルム10の厚みは21μm以上、更には28μm以上が好ましい。
【0034】
第1機能層12、第2機能層13および混合層14の合計膜厚は、1μm以上10μm以下となっている。この合計膜厚が1μm以上であれば、これらの層において強固な密着性を確保できる。またこの合計膜厚が10μm以下であれば、薄型化を図ることができる。ここで、本発明の光学フィルムにおいては、厚みの大部分を光透過性基材で占められている。したがって、最終的な画像表示装置の設計によっては、光透過性基材を薄くできない場合もある。このような場合、混合層14の厚みを薄くしない限り、上記したような光学フィルム全体の厚みを80μm以下や、特にフレキシブル性が良好となる50μm以下にすることが困難となる。従来においては、例えば10μmの単層の機能層で十分な機能を確保しようとすると、機能層に機能を発揮する成分を大量に添加しなくてはならず、その結果、機能層中の光透過性基材との密着性を付与できる成分が不足してしまい、良好な密着性は到底得られない。このため、光透過性基材との密着性を付与する成分の量を得るためには、機能層中の機能を発揮する成分の濃度を低下させる必要がある。この成分の濃度を低下させた状態で、上述したような10μmの単層の機能層で得られたような十分な機能を確保しようする場合には、機能層の膜厚を増やさざるを得ない。また、従来においては、上記したように光透過性基材との密着性を付与する成分が不足しているため、光学フィルムの物理的強度も不足していた。
【0035】
この合計膜厚の下限は、機械的強度の確保の観点から、1.5μm以上、2μm以上、または2.5μm以上であることが好ましい。また、この合計膜厚の上限は、更なる薄型化を図る観点から、9μm以下、8μm以下、または5μm以下となっていてもよい。
【0036】
図1に示される光学フィルム10の表面10Aは、第2機能層13の表面13Aとなっている。ただし、第2機能層の表面に第3機能層が形成されている場合には、光学フィルムの表面は、第3機能層の表面となる。本明細書における「機能層の表面」とは、機能層における光透過性基材側の面とは反対側の面を意味するものとする。
【0037】
光学フィルム10においては、波長380nmにおける分光透過率が10%未満となっていることが好ましい。光学フィルム10の波長380nmにおける分光透過率が、10%未満であれば、偏光子の光劣化を抑制できる。上記波長380nmにおける分光透過率は、偏光子の光劣化をより抑制する観点から、8%以下、5%以下、または1%以下であることがより好ましい。
【0038】
光学フィルム10においては、波長410nmにおける分光透過率が20%以下となっていることが好ましい。光学フィルム10の波長410nmにおける分光透過率が、20%以下であれば、表示素子、例えばOLED素子の光劣化をより抑制できる。上記波長410nmにおける分光透過率は、表示素子の光劣化を抑制する観点から、18%以下、15%以下、または10%以下であることがより好ましい。
【0039】
光学フィルム10においては、波長440nmにおける分光透過率が75%以上となっていることが好ましい。光学フィルム10の波長440nmにおける分光透過率が、75%以上であれば、着色による視認性低下を抑制できる。上記波長440nmにおける分光透過率は、着色による視認性低下をより抑制する観点から、78%以上、80%以上、または85%以上であることがより好ましい。
【0040】
上記分光透過率は、50mm×50mmの大きさに切り出した光学フィルムを、透過率を0.5nm刻みにて測定可能な分光光度計(製品名「UV-2450」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプおよび重水素ランプ)内に光学フィルムの光透過性基材側が光源側となるように配置した状態で、以下の測定条件で、波長380nm、410nm、および440nmにおいてそれぞれ前後1nmの間で最低5ポイント分の透過率を測定し、その平均値を算出することによって求めるものとする。なお、波長380nm、410nm、および440nmにおける分光透過率は、それぞれ3回測定して得られた値の算術平均値とする。また、分光透過率のスペクトルにうねりが出るようであれば、デルタ5.0nmでスムージング処理を行ってもよい。また、光学フィルムを上記大きさに切り出すことができない場合には、15mm×40mmの大きさ以上であれば、上記大きさでなくともよい。
(測定条件)
・波長域:300nm~780nm
・スキャン速度:高速
・スリット幅:2.0
・サンプリング間隔:オート(0.5nm間隔)
・照明:C
・光源:D2およびWI
・視野:2°
・光源切替波長:360nm
・S/R切替:標準
・検出器:PM
・オートゼロ:ベースラインのスキャン後550nmにて実施
・温度:23±5℃
・相対湿度:30%以上70%以下
【0041】
光学フィルム10の分光透過率は、波長380nmまでは1%未満と極めて低く、波長410nmから徐々に大きくなり、波長440nm付近で急激に大きくなっていてもよい。具体的には、例えば、光学フィルム10では、波長380nmから440nmの間で分光透過率がシグモイド型の曲線を描くように変化していてもよい。
【0042】
光学フィルム10は、ブルーライトの遮蔽率が20%以上であることが好ましい。ブルーライトの遮蔽率が20%以上であれば、後述するブルーライトに起因した問題が充分に解消できる。上記ブルーライトの遮蔽率は、例えば、まず、50mm×50mmの大きさに切り出した光学フィルムを、分光透過率を0.5nm刻みにて測定可能な分光光度計(製品名「UV-2450」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプおよび重水素ランプ)内に光学フィルムの光透過性基材側が光源側となるように配置した状態で、波長300nm~780nmにおいてそれぞれ前後1nmの間で最低5ポイント分の透過率を測定する。そして、ブルーライトカット率(%)をAとし、波長380nm~500nmの透過率の平均値(%)をBとし、波長500nm~650nmの透過率の平均値(%)をCとして、ブルーカット率を下記数式(1)によって求める。なお、ブルーライトの遮蔽率は、3回測定して得られた値の算術平均値とする。また、分光透過率の測定条件は、上記波長380nm、410nm、および440nmにおける分光透過率の測定条件と同様である。
A={1-(B/C)}×100 …(1)
【0043】
光学フィルム10は、イエローインデックス(YI)が15以下であることが好ましい。光学フィルム10のYIが15以下であれば、光学フィルム10の黄色味を抑制でき、透明性が求められる用途にも適用できる。イエローインデックス(YI)は、50mm×50mmの大きさに切り出した光学フィルムを、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、分光光度計(製品名「UV-2450」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプおよび重水素ランプ)内に光透過性基材側が光源側となるように配置した状態で測定した光学フィルムの波長300nm~780nmの透過率から、JIS Z8722:2009に記載された演算式に従って色度三刺激値X、Y、Zを計算し、三刺激値X、Y、ZからASTM D1925:1962に記載された演算式に従って算出される値である。イエローインデックス(YI)は、光学フィルム1枚に対して波長300nm~780nmの透過率を3回測定することによって3回算出し、3回算出して得られた値の算術平均値とする。なお、UV-2450においては、イエローインデックスは、UV-2450に接続されたパーソナルコンピュータ(PC)上で、上記透過率の測定データを読み込み、計算項目にて「YI」の項目にチェックを入れることによって算出される。波長300nm~780nmの透過率の測定条件は、上記波長380nm、410nm、および440nmにおける分光透過率の測定条件と同様である。YIの下限は、本来は高透明性の確保という観点から低い方が好ましいが、紫外線吸収性能も付与することを考えると、1以上、2以上、または3以上であることがより好ましい。ただし、YIが大きすぎると今度は黄色味が強くなってしまう場合がある。このため、YIの上限は、光学フィルム10の黄色味をより抑制する観点から、10以下、7以下、または6以下であることがより好ましい。
【0044】
光学フィルム10は、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。光学フィルム10の全光線透過率が80%以上であれば、充分な光学的性能を得ることができる。光学フィルム10の全光線透過率は、光学的性能をより得る観点から、88%以上、89%以上、または90%以上であることがより好ましい。
【0045】
上記全光線透過率は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、JIS K7361-1:1997に準拠して、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて、光学フィルムを50mm×50mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で光透過性基材が光源側となるように設置し、光学フィルム1枚に対して3回測定を行い、3回測定して得られた値の算術平均値とする。本明細書における「3回測定する」とは、同じ場所を3回測定するのではなく、異なる3箇所を測定することを意味するものとする。光学フィルム10は、目視した表面は平坦であり、かつ第1機能層12等の積層する層も平坦であり、また厚みのばらつきも厚みの平均値の±10%の範囲内、好ましくは±5%の範囲内に収まる。したがって、切り出した光学フィルムの異なる3箇所の全光線透過率を測定することで、おおよその光学フィルムの面内全体の全光線透過率の平均値が得られると考えられる。なお、光学フィルムを上記大きさに切り出せない場合には、例えば、HM-150は測定する際の入口開口が20mmφであるので、直径21mm以上となるような大きさのサンプルが必要になる。このため、22mm×22mm以上の大きさに光学フィルムを適宜切り出してもよい。光学フィルムの大きさが小さい場合は、光源スポットが外れない範囲で少しずつずらす、または角度を変えるなどして測定点を3箇所にする。光学フィルム10においては、得られる全光線透過率のばらつきは、測定対象が1m×3000mと長尺であっても、5インチのスマートフォン程度の大きさであっても、全光線透過率の平均値の±10%以内である。
【0046】
光学フィルム10は、ヘイズ値(全ヘイズ値)が1%以下であることが好ましい。光学フィルム10のヘイズ値が1%以下であれば、光学フィルム10をモバイル機器に用いた場合、画面の白化を抑制できる。光学フィルム10のヘイズ値の上限は、白化をより抑制する観点から、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、または0.2%以下であることがより好ましい。
【0047】
上記ヘイズ値は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、株式会社村上色彩技術研究所製)を用いてJIS K7136:2000に準拠した方法により測定することができる。具体的には、ヘイズ値は、全光線透過率の測定方法と同様の方法により測定する。
【0048】
光学フィルム10の表面10Aにおける鉛筆硬度は、3B~2Hであることが好ましい。鉛筆硬度試験は、50mm×100mmの大きさに切り出した光学フィルムの表面に対し鉛筆硬度試験機(製品名「鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機(電動式)」、株式会社東洋精機製作所製)を用いて、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、鉛筆(製品名「ユニ」、三菱鉛筆株式会社製)に300gの荷重を加えながら3mm/秒の移動速度で移動させることにより行うものとする。鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験において光学フィルム10の表面に傷が付かなかった最も高い硬度とする。なお、鉛筆硬度の測定の際には、硬度が異なる鉛筆を複数本用いて行うが、鉛筆1本につき5回鉛筆硬度試験を行い、5回のうち4回以上光学フィルム10の表面に傷が付かなかった場合には、この硬度の鉛筆においては光学フィルム10の表面に傷が付かなかったと判断する。上記傷は、鉛筆硬度試験を行った光学フィルム10の表面を蛍光灯下で透過観察して視認されるものを指す。
【0049】
温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、光学フィルム10に対し光学フィルム10の対向する辺部の間隔φが6mmとなり、かつ第2機能層13が内側となるように180°折り畳む試験(折り畳み試験)を10万回、20万回、50万回、または100万回繰り返し行った場合であっても、光学フィルム10に割れまたは破断が生じないことが好ましい。光学フィルム10に対し折り畳み試験を10万回繰り返し行った場合に、光学フィルム10に割れや破断等が生じると、光学フィルム10の折り畳み性が不充分となる。なお、上記折り畳み回数が多いほど、割れやすくまたは破断しやすくなるので、上記折り畳み回数が20万回、30万回、50万回または100万回の折り畳み試験後の光学フィルムにおいて割れや破断しないことは、上記折り畳み回数が10万回の折り畳み試験後の光学フィルムにおいて割れまたは破断が生じないことに対して技術的に顕著な差がある。また、上記折り畳み試験の折り畳み回数を少なくとも10万回で評価しているのは、以下の理由からである。例えば、光学フィルムを折り畳み可能なスマートフォンに組み込むことを想定すると、折り畳みを行う頻度(開閉する頻度)が非常に多くなる。このため、上記折り畳み試験の折り畳み回数を例えば1万回や5万回とする評価では、実用的なレベルでの評価を行うことができないおそれがある。具体的には、例えば、常にスマートフォンを使用する人を想定すると、朝、電車やバス等の通勤時だけでも5回~10回はスマートフォンを開閉することが想定されるので、1日だけでも少なくとも30回はスマートフォンを開閉することが想定される。したがって、スマートフォンを1日30回開閉することを想定すると、折り畳み回数が1万回の折り畳み試験は、30回×365日=10950回となるので、1年間の使用を想定した試験となる。すなわち、折り畳み回数が1万回の折り畳み試験の結果が良好であったとしても、1年経過後は、光学フィルムに割れや破断が生じるおそれがある。したがって、折り畳み試験における折り畳み回数が1万回の評価とは、製品として使用できないレベルしか確認できないものであり、使用できるが不十分なものも良好となってしまい、評価することができない。このため、実用的なレベルであるか否かを評価するためには、上記折り畳み試験の折り畳み回数は少なくとも10万回で評価する必要がある。また、光学フィルム10に対し光学フィルム10の対向する辺部の間隔φが6mmとなり、かつ第2機能層13が外側となるように光学フィルム10を10万回折り畳む場合であっても、光学フィルム10に割れまたは破断が生じないことがより好ましい。
【0050】
上記折り畳み試験においては、光学フィルム10の対向する辺部の間隔φが6mmの状態で行うが、画像表示装置の薄型化を図る観点から、光学フィルム10の対向する辺部の間隔φは、更に狭い範囲、具体的には4mmとなるように10万回繰り返し180°折り畳む折り畳み試験を行った場合であっても、割れまたは破断が生じないことがより好ましい。なお、上記折り畳み回数が同じであっても、上記間隔φが狭くなるほど、割れまたは破断が生じないようにすることは難しくなるので、上記間隔φが4mmの折り畳み試験後の光学フィルムにおいて割れまたは破断が生じないことは、上記間隔φが6mmの折り畳み試験後の光学フィルムにおいて割れまたは破断が生じないことに対して技術的に顕著な差がある。
【0051】
折り畳み試験を行う際には、まず、折り畳み試験前の光学フィルム10の任意の箇所から所定の大きさ(例えば、125mm×50mmの長方形形状)のサンプルS1を切り出す(図2(A)参照)。なお、125mm×50mmの大きさにサンプルを切り出せない場合には、折り畳み試験後に行う後述する各評価ができる大きさであれば良く、例えば、80mm×25mmの大きさの長方形状にサンプルを切り出してもよい。折り畳み試験前の光学フィルム10からサンプルS1を切り出した後、サンプルS1に対し、折り畳み試験を行う。
【0052】
折り畳み試験は、以下のようにして行われる。図2(A)に示すように折り畳み試験においては、まず、サンプルS1の辺部S1aと、辺部S1aと対向する辺部S1bとを、平行に配置された折り畳み耐久試験機(例えば、製品名「U字伸縮試験機DLDMLH-FS」、ユアサシステム機器株式会社製、IEC62715-6-1準拠)の固定部15、16にそれぞれ固定する。固定部15、16による固定は、サンプルS1の長手方向に片側約10mmのサンプルS1の部分を保持することによって行われる。ただし、サンプルS1が上記大きさよりも更に小さい場合、サンプルS1におけるこの固定に要する部分が約20mmまでであれば、固定部15、16にテープで貼り付けることで測定が可能である(つまり、最小サンプルは、60mm×25mmである)。また、図2(A)に示すように、固定部15は水平方向にスライド移動可能になっている。なお、上記装置であると、従来のロッドにサンプルを巻きつける方法などと異なり、サンプルに張力や摩擦を発生させることなく、曲げの負荷に対しての耐久評価することが可能で好ましい。
【0053】
次に、図2(B)に示すように、固定部16を固定した状態で、固定部15と固定部16が近接するように固定部15が移動することで、サンプルS1の中央部S1cを折り畳むように変形させ、更に、図2(C)に示すように、サンプルS1の固定部15、16で固定された対向する2つの辺部S1a、S1bの間隔φが6mmとなる位置まで固定部15を移動させた後、固定部15を逆方向に移動させてサンプルS1の変形を解消させる。
【0054】
図2(A)~(C)に示すように固定部15を移動させることで、サンプルS1を中央部S1cで180°折り畳むことができる。また、サンプルS1の屈曲部S1dが固定部15、16の下端からはみ出さないようにし、以下の条件で折り畳み試験を行い、かつ固定部15が最も固定部16に接近したときの間隔を6mmに制御することで、サンプルS1の対向する2つの辺部S1a、S1bの間隔φを6mmにできる。この場合、屈曲部S1dの外径を6mmとみなす。なお、サンプルS1の厚みは、固定部15、16の間隔(6mm)と比較して充分に小さな値であるため、サンプルS1の折り畳み試験の結果は、サンプルS1の厚みの違いによる影響は受けないとみなすことができる。
(折り畳み条件)
・往復速度:80rpm(回毎分)
・試験ストローク:60mm
・屈曲角度:180°
【0055】
サンプルS1に対し上記折り畳み試験を行うと、折り畳み試験後のサンプルS1に割れまたは破断が生じなかったとしても、屈曲部に折り癖が生じ、またマイクロクラックが生じてしまい、外観不良、具体的には白濁現象やマイクロクラックを起点とした層間剥離(密着不良)が生じるおそれがある。白濁現象の原因の1つには、光学フィルムのいずれかの層の材質である有機化合物の結晶状態が変化することと考えられる。密着不良が局所で生じた場合、温度・湿度の変化によって、層間剥離部に水分が溜まったり、この剥離部に空気が入ることがあるため、白濁が増すおそれがある。近年、ディスプレイは単なる平面ではなく、折り畳んだり、曲面にしたり、多様な3次元デザインが増えている。このため、屈曲部の折り癖やマイクロクラックの抑制は、画像表示装置として用いる上で、極めて重要である。このようなことから、光学フィルム10は、フレキシブル性を有していることが好ましい。本実施形態における「フレキシブル性」とは、上記折り畳み試験後において、割れや破断が生じないことのみならず、折り癖およびマイクロクラックが確認されないことを意味する。したがって、本実施形態における「フレキシブル性」とは、上記折り畳み試験後において、割れまたは破断が生じないことのみを要件とするフレキシブル性とは異なるものである。
【0056】
上記折り癖の観察は、目視で行うものとするが、折り癖の観察の際には、白色照明の明室(800ルクス~2000ルクス)で、屈曲部を透過光および反射光によって満遍なく観察するともに、折り畳んだときに屈曲部における内側となる部分および外側となる部分を両方観察するものとする。上記折り癖の観察は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。
【0057】
上記マイクロクラックの観察は、デジタルマイクロスコープ(デジタル顕微鏡)で行うものとする。デジタルマイクロスコープとしては、例えば、キーエンス株式会社製のVHX-5000が挙げられる。マイクロクラックは、デジタルマイクロスコープの照明としてリング照明を選択するとともに、暗視野および反射光で観察するものとする。具体的には、まず、折り畳み試験後のサンプルをゆっくり広げ、マイクロスコープのステージにテープでサンプルを固定する。このとき、折り癖が強い場合には、観察する領域がなるべく平らになるようにする。ただし、サンプルの中央付近の観察予定領域(屈曲部)は手で触れず、力が加わらない程度とする。そして、折り畳んだときに内側となる部分および外側となる部分を両方観察するものとする。上記マイクロクラックの観察は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。
【0058】
上記折り癖および上記マイクロクラックの観察においては、観察すべき位置が容易に把握できるように、折り畳み試験前のサンプルを耐久試験機の固定部に設置し、1回折り畳んだときに、図3に示されるように、屈曲部S1dにおける折り畳み方向FDと直交する方向に位置する両端S1dに、屈曲部であることを示す目印M1を油性ペンなどで付けておくとよい。また、折り畳み試験後に全く折り癖等が観察されないサンプルの場合は、サンプルを観察位置が不明になるのを防ぐため、折り畳み試験後に耐久試験機から取り外した状態で、屈曲部S1dの上記両端S1dの目印M1同士を結ぶ線M2(図3における点線)を油性ペンなどで引いておいてもよい。そして、折り癖の観察においては、屈曲部S1dの両端S1dの目印M1とこの目印M1同士を結ぶ線M2とで形成される領域である屈曲部S1d全体を目視観察する。またマイクロクラックの観察においては、マイクロスコープ視野範囲(図3における二点鎖線で囲まれる範囲)の中心が屈曲部S1dの中央となるようにマイクロスコープの位置を合わせる。なお、油性ペンなどによる目印は、実測に必要なサンプル領域には記載しないよう注意する。
【0059】
また、サンプルS1に対し上記折り畳み試験を行うと、光透過性基材と第1機能層の間の密着性が低下するおそれがある。このため、上記折り畳み試験後の光学フィルムの屈曲部において、光透過性基材11と第1機能層12の間の界面付近を、デジタルマイクロスコープで観察したとき、光透過性基材11と第1機能層12の界面付近で剥がれ等が観察されないことが好ましい。デジタルマイクロスコープとしては、例えば、キーエンス株式会社製のVHX-5000が挙げられる。
【0060】
光学フィルムに粘着層や接着層を介して偏光板等の他のフィルムが設けられている場合には、粘着層や接着層とともに他のフィルムを剥離してから、分光透過率、YI、全光線透過率、ヘイズ値、鉛筆硬度を測定し、また折り畳み試験を行うものとする。他のフィルムの剥離は、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、光学フィルムに粘着層や接着層を介して他のフィルムが付いた積層体をドライヤーで加熱し、光学フィルムと他のフィルムの界面と思われる部位にカッターの刃先を入れて、ゆっくりと剥離していく。このような加熱と剥離を繰り返すことで、粘着層や接着層および他のフィルムを剥離することができる。なお、このような剥離工程があったとしても、分光透過率等の測定には大きな影響はない。
【0061】
また、上記したように、光学フィルム10の分光透過率、YI、全光線透過率、ヘイズ値、鉛筆硬度を測定する際には、光学フィルム10を上記各大きさに切り出す必要があるが、光学フィルム10の大きさが大きい場合(例えば、ロール状のような場合)には、任意の位置からA5サイズ(148mm×210mm)に切り出した後、各測定項目の大きさに切り出すものとする。例えば、光学フィルム10がロール状になっている場合においては、光学フィルム10のロールから所定の長さを繰り出すとともに、ロールの長手方向に沿って延びる両端部を含む非有効領域ではなく、品質が安定している中心部付近の有効領域から切り出すものとする。また、光学フィルム10の分光透過率、YI、全光線透過率、ヘイズ値、鉛筆硬度を測定する際には、上記装置を用いて測定するが、または光学フィルム10の折り畳み試験を行う際には、上記装置を用いて行うが、上記装置でなくとも、後継機種などの同程度の装置によって測定や折り畳み試験を行ってもよい。
【0062】
光学フィルム10の用途は、特に限定されないが、光学フィルム10の用途としては、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ(PC)、ウェアラブル端末、デジタルサイネージ、テレビジョン、カーナビゲーション等の画像表示装置が挙げられる。また、光学フィルム10は、車載用途にも適している。上記各画像表示装置の形態としては、フォルダブル、ローラブルといったフレキシブル性を必要とする用途にも好ましい。
【0063】
光学フィルム10は、所望の大きさに切り出されていてもよいが、ロール状であってもよい。光学フィルム10が所望の大きさに切り出されている場合、光学フィルムの大きさは、特に制限されず、画像表示装置の表示面の大きさに応じて適宜決定される。具体的には、光学フィルム10の大きさは、例えば、2.8インチ以上500インチ以下となっていてもよい。本明細書における「インチ」とは、光学フィルムが四角形状である場合には対角線の長さを意味し、円形状である場合には直径を意味し、楕円形状である場合には、短径と長径の和の平均値を意味するものとする。ここで、光学フィルムが四角形状である場合、上記インチを求める際の光学フィルムの縦横比は、画像表示装置の表示画面として問題がなければ特に限定されない。例えば、縦:横=1:1、4:3、16:10、16:9、2:1等が挙げられる。ただし、特に、デザイン性に富む車載用途やデジタルサイネージにおいては、このような縦横比に限定されない。なお、例えば、光学フィルム10がロール状になっている場合においては、光学フィルム10のロールから所定の長さを繰り出すとともに、ロールの長手方向に沿って延びる両端部を含む非有効領域ではなく、品質が安定している中心部付近の有効領域から所望の大きさに切り出すものとする。
【0064】
<<<光透過性基材>>>
光透過性基材11は、光透過性を有する基材である。光透過性基材11は、アセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、および(メタ)アクリル系樹脂の少なくともいずれかを含むものである。屋外等ではサングラスを装着して、画像表示装置の表示画像を観察することがあるが、サングラスが偏光サングラスである場合、偏光サングラス越しに表示画像を観察すると、虹むらが発生して、視認性が低下するおそれがある。これは、光透過性基材の面内位相差(面内リタデーション、Re)が高いからであると考えられる。したがって、現在、偏光サングラス越しに表示画像を観察した場合であっても視認性の低下を抑制できることが求められている。これに対し、アセチルセルロース系樹脂や(メタ)アクリル系基材を含む基材であれば、面内位相差は、10nm以下である。シクロオレフィンポリマー系樹脂を含む光透過性基材には、位相差を調整していない基材と、例えばλ/4となるように位相差を調整した基材とがあるが、位相差を調整していない基材の面内位相差は10nm以下であり、また位相差を調整した基材であっても面内位相差は150nm以下である。したがって、アセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、または(メタ)アクリル系樹脂を含む光透過性基材11はいずれも面内位相差が低いので、偏光サングラス越しに表示画像を観察したときの視認性低下を抑制することができる。上記面内位相差は、波長589nmで測定したときの値である。
【0065】
アセチルセルロース系樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース系樹脂、ジアセチルセルロース系樹脂が挙げられる。トリアセチルセルロース系樹脂は、可視光域380~780nmにおいて、平均光透過率を50%以上とすることが可能な樹脂である。トリアセチルセルロース系樹脂の平均光透過率は70%以上、更に85%以上であることが好ましい。
【0066】
なお、トリアセチルセルロース系樹脂としては、純粋なトリアセチルセルロース以外に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートの如くセルロースとエステルを形成する脂肪酸として酢酸以外の成分も併用したものであってもよい。また、これらトリアセチルセルロースには、必要に応じて、ジアセチルセルロース等の他のセルロース低級脂肪酸エステルが添加されていてもよい。
【0067】
シクロオレフィンポリマー系樹脂としては、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂、およびこれらの水素化物等を挙げることができる。これらの中でも、ノルボルネン系樹脂は、透明性と成形性が良好であるため、好適に用いることができる。
【0068】
ノルボルネン系樹脂としては、ノルボルネン構造を有するモノマーの開環重合体もしくはノルボルネン構造を有するモノマーと他のモノマーとの開環共重合体またはそれらの水素化物、ノルボルネン構造を有するモノマーの付加重合体もしくはノルボルネン構造を有するモノマーと他のモノマーとの付加共重合体またはそれらの水素化物等を挙げることができる。
【0069】
シクロオレフィンポリマー系樹脂の市販品としては、例えば、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス(登録商標)」や「ゼオノア(登録商標)」(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト株式会社製の商品名「スミライト(登録商標)FS-1700」、JSR株式会社製の商品名「アートン(登録商標)」(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学株式会社製の商品名「アペル(登録商標)」(環状オレフィン共重合体)、Ticona社製の商品名「Topas(登録商標)」(環状オレフィン共重合体)、日立化成株式会社製の商品名「オプトレッツOZ-1000シリーズ」(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。このようなシクロオレフィンポリマー系樹脂を製膜して、光透過性基材を得ることができる。製膜としては、特に限定されず、溶剤キャスト法や溶融押出法など、公知の製膜方法を用いることができる。また、製膜されたシクロオレフィンポリマー系フィルムも市販されており、これを光透過性基材として用いることもできる。シクロオレフィンポリマー系フィルムとしては、例えば、積水化学株式会社製の商品名「エスシーナ(登録商標)」や「SCA40」、日本ゼオン株式会社の商品名「ゼオノアフィルム(登録商標)」、JSR株式会社製の商品名「アートン(登録商標)フィルム」等が挙げられる。
【0070】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。
【0071】
光透過性基材11の厚みは、特に限定されないが、60μm以下であることが好ましい。光透過性基材11の厚みが60μm以下であれば、薄型化をより図ることができる。光透過性基材11の厚みの下限は、光学フィルム10の機械的強度確保の観点から5μm以上、10μm以上、または15μm以上であることがより好ましい。光透過性基材11の厚みの上限は、更なる薄型化を図る観点から、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、または30μm以下であることがより好ましい。
【0072】
光透過性基材の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、光透過性基材の断面を撮影し、その断面の画像において光透過性基材の厚みを10箇所測定し、その10箇所の厚みの算術平均値を求めることによって求めることができる。なお、走査型電子顕微鏡による撮影は、光透過性基材の厚みに適した倍率にて、光透過性基材と機能層との界面ラインを明確にした上で行うものとする。具体的には、例えば、光透過性基材の厚みが50μmの場合には1000倍、また100μmの場合には500倍のように光透過性基材の厚みによって倍率を適宜調整する。光透過性基材11の厚みのバラツキは、15%以下、10%以下、または7%以下であることが好ましい。走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて光透過性基材の厚みを測定する場合、機能層の膜厚の測定方法と同様の方法により測定できる。ただし、光透過性基材の断面写真を撮影する際の倍率は、100~2万倍とする。
【0073】
光学フィルムにフレキシブル性(例えば、折り畳み性)が求められる場合、光透過性基材や機能層の厚みが厚いと、折り畳み時に屈曲部における光透過性基材や機能層に割れが生じるおそれがあり、また屈曲部における光透過性基材や機能層に折り癖やマイクロクラックが生じてしまうことがある。割れ、折り癖やマイクロクラックが生じると、外観不良、具体的には、白濁現象やクラック起因の密着不良などが生じてしまうおそれがある。このため、光学フィルムをフレキシブル用途に用いる場合には、光透過性基材や機能層の厚み制御や各層間の密着性(材料が影響する化学的結合による密着や、クラックが生じないという物理的な密着)が重要になる。特に、光透過性基材11が、アセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、または(メタ)アクリル系樹脂を含む場合には、厚みによって割れにくさが変わるので、光透過性基材の厚み制御が重要となる。ただし、第2機能層13が内側となるように光学フィルム10を折り畳む(内曲げ)と、第2機能層13が外側となるように光学フィルム10を折り畳む(外曲げ)では、光透過性基材11の好ましい厚みが異なる。
【0074】
(光学フィルムが内曲げで用いられる場合)
光透過性基材11が、例えば、アセチルセルロース系樹脂を含む場合には、光透過性基材11の厚みは、15μm以上60m以下であることが好ましい。光透過性基材の厚みが薄すぎると、折り畳み時に光透過性基材が裂けてしまうおそれがあるが、この光透過性基材11の厚みが15μm以上であれば、折り畳み時に光透過性基材11が裂けることを抑制できる。また光透過性基材11の厚みが60μm以下であれば、折り畳み時の屈曲部における光透過性基材11の割れを抑制でき、また屈曲部における白濁現象を抑制できる。この場合の光透過性基材11の厚みの上限は、更なる折り畳み時の屈曲部の上記割れおよび白濁化を抑制する観点から、45μm以下、40μm以下、35μm以下、特に30μm以下であることが好ましい。
【0075】
光透過性基材11が、例えば、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含む場合には、光透過性基材11の厚みは、5μm以上50μm以下であることが好ましい。この光透過性基材11の厚みが5μm以上であれば、ハンドリング性が良好であり、また50μm以下であれば、折り畳み時に屈曲部における光透過性基材11の割れを抑制でき、また屈曲部における白濁現象を抑制できる。この場合の光透過性基材11の厚みの上限は、更なる折り畳み時に屈曲部の上記割れおよび白濁化を抑制する観点から、45μm以下、40μm以下、特に30μm以下、または18μm以下であることが好ましい。
【0076】
光透過性基材11が、例えば、(メタ)アクリル系樹脂を含む場合には、光透過性基材11の厚みは、15μm以上50μm以下であることが好ましい。この光透過性基材11の厚みが15μm以上であれば、ハンドリング性が良好であり、また50μm以下であれば、折り畳み時の屈曲部における光透過性基材11の割れを抑制でき、また屈曲部における白濁現象を抑制できる。この場合の光透過性基材11の厚みの上限は、更なる折り畳み時の屈曲部の上記割れおよび白濁化を抑制する観点から、45μm以下、40μm以下、特に35μm以下、または30μm以下であることが好ましい。
【0077】
上記した各光透過性基材の厚みが35μm以下の場合には、製造時に光透過性基材11に保護フィルムを貼ると加工適性が向上するので、好ましい。
【0078】
(光学フィルムが外曲げで用いられる場合)
光透過性基材11が、例えば、アセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、または(メタ)アクリル系樹脂を含む場合には、光透過性基材11の厚みは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。この光透過性基材11の厚みが10μm以上であれば、外側に用いるために外部から受ける様々な衝撃を吸収することができ、また50μm以下であれば、折り畳み時に屈曲部における光透過性基材11の割れを抑制でき、また屈曲部における白濁現象を抑制できる。この場合の光透過性基材11の厚みの上限は、45μm以下、または30μm以下であることが好ましい。
【0079】
光透過性基材11としては、光透過性基材11と第1機能層12との密着性の観点から、第1機能層12の形成の際に、第1機能層12の成分(例えば、重合性化合物)が入り込む浸透性基材であってもよいが、寸法安定性の観点から、第1機能層12の成分が入り込まない非浸透性基材を用いることが好ましい。浸透性基材としては、例えば、アセチルセルロース系樹脂や(メタ)アクリル系樹脂等を含む基材が挙げられ、また非浸透性基材としては、シクロオレフィンポリマー系樹脂等を含む基材が挙げられる。
【0080】
光透過性基材11は、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化等のエッチング処理や下塗り処理が施されていてもよい。これらの処理が予め施されていることで、上記光透過性基材11上に形成される機能層等との密着性を向上させることができる。また、第1機能層12等を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄等により、光透過性基材11の表面は、除塵、清浄化されていてもよい。
【0081】
<<<第1機能層>>>
第1機能層12は、光透過性基材11と第2機能層の密着性を向上させる下地層となっている。ただし、第1機能層12は、他の機能を有する層であってもよい。特に、光透過性基材11がシクロオレフィンポリマー系樹脂を含んでいる場合には、光透過性基材11は、第2機能層13と密着しにくいので、第1機能層12を光透過性基材11と第2機能層13の間に配置することが好ましい。第1機能層12は、光透過性基材11に密着している。また、第1機能層12は、光透過性を有している。
【0082】
第1機能層12の膜厚は、0.1μm以上5μm以下となっていることが好ましい。第1機能層12の膜厚が0.1μm以上であれば、第2機能層13との強固な密着性を確保できる。また、第1機能層12の膜厚が5μm以下であれば、所望の鉛筆硬度を維持できるとともに折り曲げ時や湾曲時におけるクラックの発生を抑制できる。第1機能層12の膜厚の下限は、第2機能層13との密着性の観点から、0.3μm以上、0.5μm以上、または1μm以上であることが好ましい。第1機能層12の膜厚が0.5μm以上であれば、生産工程での傷付き防止可能な硬度を得ることができる。第1機能層12の膜厚の上限は、より高い鉛筆硬度を得る観点から、4.5μm以下、4μm以下、または3μm以下であることが好ましい。
【0083】
本実施形態における「第1機能層の膜厚」とは、顕微鏡画像のコントラスト差により光透過性基材と第1機能層との界面ラインを認識でき、また第1機能層と混合層との界面ラインを認識できるので、これらの界面ライン間の距離を意味する。第1機能層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)等を用いて、機能層の断面を撮影し、その断面の画像において第1機能層の膜厚を10箇所測定し、その10箇所の膜厚の算術平均値を求めることによって求めることができる。
【0084】
具体的な断面写真の撮影方法は以下の通りとする。まず、1mm×10mmの大きさに切り出した光学フィルムを包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、このブロックから一般的な切片作製方法によって穴等がない均一な、厚さ70nm~300nm程度の切片を切り出す。切片の作製には、「ウルトラミクロトーム EM UC7」(ライカ マイクロシステムズ株式会社)等を用いる。そして、この穴等がない均一な切片を測定サンプルとする。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、測定サンプルの断面写真を撮影する。上記S-4800を用いて断面写真を撮影する際には、検出器を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流を「10μA」にして断面観察を行う。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら100~10万倍、好ましくは第1機能層の膜厚に応じて1万倍~10万倍で適宜調節する。なお、膜厚の測定ぶれを低減するために、第1機能層の膜厚を極力低倍率で測定することが推奨される。例えば、第1機能層の膜厚が1μm程度の場合には倍率2万倍、0.5μm程度の場合には倍率3万~10万倍が好ましい。さらに、コンデンサレンズ1を「5.0」にし、またW.D.を「8.9mm」にする。
【0085】
第1機能層12のインデンテーション硬さは、50MPa以上600MPa以下であることが好ましい。第1機能層12のインデンテーション硬さが、50MPa以上であれば、所望の鉛筆硬度を得ることができるとともに耐擦傷性の低下を抑制できる。また、第1機能層12のインデンテーション硬さが、600MPa以下であれば、良好な柔軟性を得ることができるとともにチップカットでのクラック発生を抑制できる。本明細書における「インデンテーション硬さ」とは、圧子の負荷から除荷までの荷重-変位曲線から求められる値である。なお、粘着層のような硬さが柔らかい過ぎる層においては、インデンテーション硬さを測定しようとしても、測定不能となることがある。第1機能層12のインデンテーション硬さの下限は、より高い鉛筆硬度および良好な耐擦傷性を得る観点から、70MPa以上、85MPa以上、100MPa以上、または150MPa以上であることがより好ましい。また、第1機能層12のインデンテーション硬さの上限は、優れた柔軟性を得るとともにチップカットでのクラック発生をより抑制する観点から、500MPa以下、450MPa以下、400MPa以下、または350MPa以下であることがより好ましい。
【0086】
インデンテーション硬さ(HIT)は、HYSITRON(ハイジトロン)社製のTI950 TriboIndenterを用いて測定することができる。具体的には、まず、1mm×10mmに切り出した光学フィルムを包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、ナノインデンテーション法での硬度測定に適した測定用サンプルを作製する。測定用サンプルの作製には、「ウルトラミクロトーム EM UC7」(ライカ マイクロシステムズ株式会社)等を用いることができる。次いで、測定サンプルの圧子を押し込む面がステージの載置面と平行となるように測定サンプルをHYSITRON(ハイジトロン)社製のTI950 TriboIndenterのステージに固定する。そして、第1機能層の断面中央の平坦な部分に、荷重制御方法で、最大押し込み荷重が300μNとなるように、荷重速度10μN/秒でバーコビッチ型圧子を、30秒で荷重0μNから300μNまで負荷を加えながら第1機能層に押し込む。ここで、第1機能層の側縁の影響を避けるために、第1機能層の両側端からそれぞれ第1機能層の中央側に少なくとも500nm離れた第1機能層の部分内にバーコビッチ型圧子を押し込むものとする。その後300μNで5秒間保持した後、30秒で300μNから0μNまで除荷する。そして、このときの押し込み荷重F(N)に対応する押し込み深さh(nm)を連続的に測定し、荷重-変位曲線を作成する。作成された荷重-変位曲線からインデンテーション硬さHITを、下記数式(2)のように最大押し込み荷重Fmax(N)を、圧子と第1機能層が接している投影面積A(mm)で除した値により求めることができる。インデンテーション硬さは、10箇所測定して得られた値の算術平均値とする。また、インデンテーション硬さの測定は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。
IT=Fmax/A …(2)
ここで、Aは下記数式(3)によって求められる値である。
=23.96(hmax-0.75(hmax-h)) …(3)
上記数式(3)中、hmaxは最大押し込み深さであり、hはFmaxにおける除荷曲線の接線が横軸(変位)の交点の値である。
【0087】
第1機能層12は、樹脂および紫外線吸収剤を含んでいる。なお、紫外線吸収剤は、第1機能層12および第2機能層13のいずれかに含まれていればよく、第1機能層12に必ずしも含まれていなくともよい。第1機能層12は、樹脂および紫外線吸収剤の他に、重合開始剤やその残渣を含んでいてもよい。
【0088】
<<樹脂>>
第1機能層12に含まれる樹脂としては、重合性化合物の重合物(硬化物)を含むものである。樹脂は、重合性化合物の重合物の他、溶剤乾燥型樹脂や熱硬化性化合物を含んでいてもよい。
【0089】
(重合性化合物)
重合性化合物は、重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。本明細書における、「重合性官能基」とは、重合反応し得る官能基である。重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和基が挙げられる。なお、本明細書における「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」や「メタクリロイル基」を含む意味である。また、重合性化合物を重合する際に照射される電離放射線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。
【0090】
エチレン性不飽和基を1つ有する重合性化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルピロリドン等を挙げることができる。エチレン性不飽和基を2以上有する重合性化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能化合物、又は、上記多官能化合物と(メタ)アクリレート等の反応生成物(例えば多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)等が挙げられる。
【0091】
重合性化合物としては、重合性モノマー、重合性オリゴマー、および/または重合性プレポリマーを適宜調製して用いることができる。
【0092】
(溶剤乾燥型樹脂)
溶剤乾燥型樹脂は、熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂である。溶剤乾燥型樹脂を併用することによって、塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。上記重合性化合物と併用して使用することができる溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0093】
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、またはシリコーン系ゴム等が挙げられる。
【0094】
上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶剤(特に複数のポリマーや重合性化合物を溶解可能な共通溶剤)に可溶であることが好ましい。特に、製膜性、透明性や耐候性の観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0095】
(熱硬化性化合物)
熱硬化性化合物としては、特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0096】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤は、少なくとも紫外線(波長10nm~400nm)を吸収するものである。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収するものであれば、可視光域に最大吸収波長を有していてもよい。紫外線吸収剤においては、波長360nm以上430nm以下の波長域内での最大吸光度は、0.5以上であることが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、インドール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、着色による視認性低下を抑制する観点から、ベンゾトリアゾール系化合物やインドール系化合物が好ましい。
【0097】
第1機能層12が、紫外線吸収剤を含むか否かは、まず、第1機能層12の欠片を採取して、その欠片を赤外分光分析(IR)によって測定し、得られた赤外吸収スペクトルを市販の紫外線吸収剤と比べることによって調べることができる。紫外線吸収剤は、第1機能層12を構成する樹脂中に共重合体として含まれていてもよい。
【0098】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、下記一般式(A)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール(製品名「Tinuvin234」、BASF社製)、2-(5-クロロ-2-ベンゾトリアゾリル)-6-tert-ブチル-p-クレゾール(製品名「Tinuvin326」、BASF社製)等が挙げられる。これらの中でも、分光スペクトルの傾きが大きく、より選択的に紫外線を吸収することができることから、下記一般式(A)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体が好ましい。
【化1】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1~6の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基、あるいは炭素数1~6の直鎖状または分岐鎖状のオキシアルキレン基を表す。
【0099】
上記一般式(A)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体は、第1機能層12を構成する樹脂中に単量体単位として含まれる。また、上記一般式(A)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体は、ベンゾトリアゾール環の2位の窒素原子にセサモールを結合させた化合物からの誘導体であり、ベンゾトリアゾール環のベンゼン部位に重合性2重結合を導入した分子構造を有する。この単量体は、最大吸収波長λmaxは365nm以上であり、波長300nm以上400nm以下の波長域を包括する広い範囲の紫外線吸収スペクトルを有し、400nm付近の長波長域まで紫外線吸収能力を有する。
【0100】
上記セサモール型ベンゾトリアゾール系単量体としては特に制限されないが、具体的な物質名としては、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]エチルメタクリレート、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]エチルアクリレート、3-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]プロピルメタクリレート、3-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]プロピルアクリレート、4-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]ブチルメタクリレート、4-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]ブチルアクリレート、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレート、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルアクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルメタクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルアクリレート、4-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]ブチルメタクリレート、4-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]ブチルアクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルメタクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルアクリレート、2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5カルボキシレート、2-(アクリロイルオキシ)エチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、4-(メタクリロイルオキシ)ブチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、4-(アクリロイルオキシ)ブチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート等を挙げることができる。また、これらセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体は1種類で用いることもできるし、2種類以上を用いることもできる。
【0101】
(インドール系化合物)
インドール系化合物としては、例えば、下記一般式(B)で表される化合物が挙げられる。下記一般式(B)で表される化合物であれば、波長380nm以上400nm以下の波長域の光を吸収することができる。
【化2】
式(B)中、Rは、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基またはアラルキル基を表し、Rは、-CNまたは-COORを表し、ここで、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基またはアラルキル基(ただし、Rがメチル基である場合はエチル基を除く。)を表す。
【0102】
の炭素数は、炭素数1~12とすることが可能である。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、(イソ)ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ドデシル基、ベンジル基等が挙げられる。Rの具体例としては、例えば上記Rで例示した基およびβ-シアノエチル基、β-クロロエチル基、エトキシプロピル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基が挙げられる。ただし、Rがメチル基である場合、Rはエチル基ではない。
【0103】
インドール系化合物としては、オリヱント化学工業株式会社製のBONASORB UA-3911等が挙げられる。
【0104】
上記紫外線吸収剤は、例えば、第1機能層12中に0.05質量%以上50質量%以下で含有されていてもよい。このような範囲で紫外線吸収剤が含有されていることで、紫外線を有効に吸収することができる。なお、上記紫外線吸収剤がセサモール型ベンゾトリアゾール系化合物である場合には、第1機能層12中に0.1質量%以上50質量%以下で含有されていてもよい。
【0105】
第1機能層12は、例えば、重合性化合物および紫外線吸収剤を含む第1機能層用組成物を用いることによって形成することが可能である。第1機能層用組成物は、上記重合性化合物等を含むが、その他、必要に応じて、重合開始剤、溶剤、レベリング等を含んでいてもよい。
【0106】
(重合開始剤)
重合開始剤としては特に限定されず、公知のものを用いることができる。重合開始剤は、1種類であってもよいが、2種類以上用いてもよい。重合開始剤としては、具体例には、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α-アミロキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、例えば、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ-n-ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0107】
重合開始剤としては、上記重合性化合物がラジカル重合性官能基を有する場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のラジカル重合開始剤を単独または混合して用いることが好ましい。ラジカル重合開始剤の中でも、紫外線吸収性能による硬化阻害を抑制する点から、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(例えば、IGM Resins B.V.社製のOmnirad TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(例えば、IGM Resins B.V.社製のOmnirad819)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、IGM Resins B.V.社製のOmnirad184)、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)(DKSHジャパン社製のESACURE ONE)またはこれらの混合物等がより好ましい。
【0108】
また、上記重合性化合物がカチオン重合性官能基を有する場合は、重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等のカチオン重合開始剤を単独または混合物として用いることが好ましい。カチオン重合開始剤の中でも、硬化性に優れる点から、芳香族スルホニウム塩等がより好ましい。
【0109】
また、光透過性基材11がシクロオレフィンポリマー系樹脂を含んでいる場合には、第1機能層12を光透過性基材11に密着させることが重要となる。このような第1機能層12を光透過性基材11に密着させるためには、重合開始剤としてオキシムエステル系化合物を用いることが好ましい。オキシムエステル系化合物の市販品としては、例えば、IRGACURE(登録商標)OXE01、IRGACURE(登録商標)OXE02、IRGACURE(登録商標)OXE03(いずれもBASFジャパン社製)が挙げられる。
【0110】
第1機能層用組成物における上記重合開始剤の含有量は、上記重合性化合物100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。上記重合開始剤の含有量が1質量部以上であれば、第1機能層の硬度が十分となり、また10質量部以下であれば、塗膜の深部まで電離放射線が届くので、内部硬化が促進され、目標とする光学フィルムの表面の硬度(例えば、後述する鉛筆硬度で3B以上)を得ることができる。
【0111】
上記重合開始剤の含有量の下限は2質量部以上であることがより好ましく、上限は8質量部以下であることがより好ましい。上記光重合開始剤の含有量がこの範囲にあることで、膜厚方向に硬度分布が発生せず、均一な硬度になりやすくなる。
【0112】
(溶剤)
溶剤としては、使用する重合性化合物の種類および溶解性に応じて選択して使用することができ、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が例示でき、またこれらの混合溶剤であってもよい。
【0113】
(レベリング剤)
レベリング剤としては、特に限定されないが、フッ素系レベリング剤が好ましい。フッ素系レベリング剤を用いることにより、高いレベリング性により平滑性、リコート性を付与できる。フッ素系レベリング剤の市販品としては、例えば、F-555(DIC株式会社製)、F-568(DIC株式会社製)、フタージェント(登録商標)683(株式会社ネオス製)が挙げられる。
【0114】
第1機能層用組成物中における原料の含有割合(固形分)として特に限定されないが、5質量%以上70質量%以下が好ましく、15質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0115】
第1機能層用組成物の調製方法としては各成分を均一に混合できれば特に限定されず、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を使用して行うことができる。
【0116】
第1機能層用組成物を光透過性基材11上に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の公知の方法が挙げられる。
【0117】
第1機能層用組成物の硬化に用いられる電離放射線源としては、主に190~450nmの波長域に発光ピークを有するものが好ましい。電離放射線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が挙げられる。
【0118】
<<第2機能層>>
第2機能層13は、ハードコート層となっている。ただし、第2機能層13は、他の機能を有する層であってもよい。本実施形態における「ハードコート層」とは、インデンテーション硬さが、第1機能層のインデンテーション硬さよりも大きい層を意味する。第2機能層のインデンテーション硬さも、第1機能層のインデンテーション硬さと同様に求める。
【0119】
第2機能層13のインデンテーション硬さは、75MPa以上1000MPa以下であることが好ましい。第2機能層13のインデンテーション硬さが、75MPa以上であれば、所望の鉛筆硬度を得ることができ、また1000MPa以下であれば、クラック発生を抑制できる。第2機能層13のインデンテーション硬さの下限は、より高い鉛筆硬度を得る観点から、100MPa以上、150MPa以上、または200MPa以上であることがより好ましい。また、第2機能層13のインデンテーション硬さの上限は、クラック発生をより抑制する観点から、900MPa以下、750MPa以下、600MPa以下、または500MPa以下であることがより好ましい。第2機能層13のインデンテーション硬さが600MPa以下であれば、柔軟性に優れた第2機能層13を得ることができる。
【0120】
第2機能層13の膜厚は、0.1μm以上9.8μm以下であることが好ましい。第2機能層13の膜厚が0.1μm以上であれば、所望の鉛筆硬度を確保でき、また第2機能層13の膜厚が9.8μm以下であれば、より薄膜化を図ることができるとともに折り曲げ時や湾曲時におけるクラックの発生を抑制できる。第2機能層13の膜厚の下限は、より高い鉛筆硬度を得る観点から、0.3μm以上、0.5μm以上、または1μm以上であることが好ましい。第2機能層13の膜厚が0.5μm以上であれば、生産工程での傷付き防止可能な高度を得ることができる。第2機能層13の膜厚の上限は、更なる薄型化を図る観点から、8μm以下、5μm以下、4μm以下、または3μm以下であることが好ましい。第2機能層13の膜厚は、第1機能層12と同様の方法によって求めることができる。
【0121】
第2機能層13は、樹脂および紫外線吸収剤を含んでいる。ただし、第1機能層12が紫外線吸収剤を含んでいる場合には、紫外線吸収剤を含まなくともよい。第2機能層13は、さらに光学フィルム10をロール状に巻回したときの光学フィルム10同士の貼り付きを防止するためのブロッキング防止剤を含んでいてもよい。第2機能層13に含まれる樹脂としては、重合性化合物の重合物を含むものである。樹脂は、重合性化合物の重合物の他、溶剤乾燥型樹脂や熱硬化性化合物を含んでいてもよい。
【0122】
第2機能層13中の紫外線吸収剤の濃度は、第1機能層12中の紫外線吸収剤の濃度よりも低くなっていることが好ましい。第2機能層13中の紫外線吸収剤の濃度が第1機能層12中の紫外線吸収剤の濃度よりも低いことにより、紫外線吸収剤のブリードアウトを低減でき、第2機能層13の表面の耐擦傷性をより向上させることができる。
【0123】
第2機能層13を構成する重合性化合物としては、重合性モノマー、重合性オリゴマー、または重合性プレポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して、用いることができる。重合性化合物としては、重合性モノマーと、重合性オリゴマーまたは重合性プレポリマーとの組み合わせが好ましい。
【0124】
重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を含むモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0125】
重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、重合性官能基が3つ(3官能)以上の多官能オリゴマーが好ましい。上記多官能オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0126】
重合性プレポリマーは、重量平均分子量が1万を超えるものであり、重量平均分子量としては1万以上8万以下が好ましく、1万以上4万以下がより好ましい。重量平均分子量が8万を超える場合は、粘度が高いため塗工適性が低下してしまい、得られる光透過性樹脂の外観が悪化するおそれがある。多官能プレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0127】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤は、第1機能層12の欄で説明した紫外線吸収剤と同様の紫外線吸収剤を用いることができるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0128】
第2機能層13は、重合性化合物等を含む第2機能層用組成物を用いることによって形成することが可能である。第2機能層用組成物は、重合性化合物および紫外線吸収剤の他、溶剤乾燥型樹脂、熱硬化性化合物、重合開始剤、溶剤等を含んでいてもよい。また、第2機能層用組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、以下の各種添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、無機粒子、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、着色剤等が挙げられる。
【0129】
第2機能層用組成物は、溶剤乾燥型樹脂、熱硬化性化合物、重合開始剤、溶剤、レベリング剤等は、上記第1機能層用組成物で説明した溶剤乾燥型樹脂、熱硬化性化合物、重合開始剤、溶剤、レベリング剤等と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0130】
第2機能層用組成物中の重合開始剤は、第1機能層用組成物中の重合開始剤と同じものであってもよいが、異なるものであることが好ましい。第2機能層用組成物中の重合開始剤を第1機能層用組成物中の重合開始剤と異なるものであることにより、第1機能層用組成物においては半硬化させやすい重合開始剤を選択し、第2機能層用組成物においては表面硬化性の良い重合開始剤を選択することができる。
【0131】
<<混合層>>
混合層14は、第1機能層12の成分と第2機能層13の成分を含み、第1機能層12および第2機能層13に隣接している。このような混合層14を形成することにより、第1機能層12と第2機能層13との間の密着性を向上させることができる。混合層14が第1機能層12の成分と第2機能層13の成分を含むか否かは、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)によって確認することができる。
【0132】
混合層14が第1機能層12の成分と第2機能層13の成分を含み、かつ第1機能層12および第2機能層13に隣接する層であれば、混合層14の形成方法は、特に限定されない。例えば、混合層14は、第1機能層12の表面に第1機能層12の成分と第2機能層13の成分を含む組成物を塗布することによって形成してもよく、また第1機能層用組成物の塗膜を半硬化した状態で、この塗膜の表面に第2機能層用組成物を塗布することによって形成してもよい。ただし、密着性をより向上させ、かつより薄型化を図るためには、第1機能層用組成物の塗膜を半硬化した状態で、この塗膜の表面に第2機能層用組成物を塗布することによって形成することが好ましい。なお、第1機能層用組成物の後述する第1塗膜21を半硬化した状態で、この第1塗膜21の表面に第2機能層用組成物を塗布することによって混合層を形成する場合、理由は定かではないが、第2機能層用組成物の溶剤が半硬化状態の塗膜に浸透することによって重合性化合物の成分も半硬化状態の後塗膜内に引き込まれて、混合層が形成されると考えられる。
【0133】
混合層14中の第2機能層13の成分の濃度は、第2機能層13から第1機能層12に向けて徐々に低くなっていることが好ましい。混合層14がこのような濃度勾配を有することにより、第1機能層12と第2機能層13の間において強固な密着性を確保できる。このような濃度勾配は、TOF-SIMSによって確認することができる。このような濃度分布を有する混合層14は、第1機能層用組成物の塗膜を半硬化した状態で、この塗膜の表面に第2機能層用組成物を塗布することによって形成できる。
【0134】
第1機能層12、第2機能層13および混合層14の合計膜厚に対する混合層14の膜厚の割合(混合層14の膜厚/(第1機能層12の膜厚+第2機能層13の膜厚+混合層14の膜厚)×100)が、0.6%以上40%以下であることが好ましい。上記割合が0.6%以上であれば、耐久試験前の密着性(初期密着性)が良好となる。一方で、混合層は比較的柔らかいので、上記割合が大きすぎると、光学フィルムが柔らかくなってしまうおそれがある。上記割合が40%以下であれば、光学フィルム10の表面硬度の低下を抑制できる。上記割合の下限は、初期密着性のみならず、耐久試験後の密着性も向上させる観点から、1%以上、3%以上、5%以上、または10%以上であることが好ましく、上記割合の膜厚の上限は、薄型化の観点から、35%以下、30%以下、または20%以下であることが好ましい。
【0135】
混合層14の膜厚は、0.02μm以上3μm以下であることが好ましい。混合層14の膜厚が0.02μm以上であれば、初期密着性が良好となり、また3μm以下であれば、光学フィルム10の表面硬度の低下を抑制できる。混合層14の膜厚が大きいほど、密着性は向上するので、混合層14の膜厚の下限は、初期密着性のみならず、耐久試験後の密着性も向上させる観点から、0.1μm以上、0.2μm以上、または0.4μm以上であることが好ましく、混合層14の膜厚の上限は、光学フィルム10の表面硬度の低下を抑制する観点から、2μm以下または1μm以下であることがより好ましい。混合層14の膜厚は、第1機能層12の半硬化の度合いを調整することによって調整することができる。すなわち、第1機能層12の半硬化の度合いを低くすると、混合層14の膜厚は大きくなり、半硬化の度合いを高くすると、混合層14の膜厚は小さくなる。
【0136】
<<光学フィルムの製造方法>>
光学フィルム10は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、図4(A)に示されるように、光透過性基材11における一方の面11Aに第1機能層用組成物を塗布して、乾燥させて、第1塗膜21を形成する。次いで、図4(B)に示されるように、第1塗膜21に紫外線等の電離放射線を照射して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより第1塗膜21を半硬化させる。本明細書における「半硬化」とは、電離放射線をさらに照射すると硬化が実質的に進行することを意味する。
【0137】
第1塗膜21を半硬化させた後、第1塗膜21の表面に第2機能層用組成物を塗布し、乾燥させると、図5(A)に示されるように、第2塗膜22の他に、第1塗膜21と第2塗膜22の間に第1塗膜21の成分と第2塗膜22の成分を含む混合塗膜23が形成される。
【0138】
次いで、図5(B)に示されるように、第1塗膜21、第2塗膜22および混合塗膜23に紫外線等の電離放射線を照射して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより第1塗膜21、第2塗膜22および混合塗膜23を硬化(例えば、完全硬化)させる。本明細書における「完全硬化」とは、これ以上電離放射線を照射しても硬化が実質的に進行しないことを意味する。これにより、第1機能層12、第2機能層13、および第1機能層12と第2機能層13の間に混合層14が形成されるので、光学フィルム10が得られる。
【0139】
本実施形態によれば、第1機能層12、第2機能層13および混合層14の合計膜厚が、1μm以上10μm以下であるので、薄型化を図ることができる。また、第1機能層12および第2機能層13の少なくともいずれかが紫外線吸収剤を含む場合において、第1機能層12と第2機能層13の間に、第1機能層12および第2機能層13に隣接し、かつ第1機能層12、第2機能層13および混合層14の合計膜厚に対する混合層14の膜厚の割合が0.6%以上40%以下となる混合層14を形成しているので、表面硬度の低下を抑制できるとともに、第1機能層12と第2機能層13の間の密着性を向上させることができる。
【0140】
本実施形態によれば、第1機能層12および第2機能層13の少なくともいずれかが紫外線吸収剤を含む場合において、第1機能層12と第2機能層13の間に、第1機能層12および第2機能層13に隣接し、かつ膜厚が0.02μm以上1μm以下となる混合層14を形成しているので、表面硬度の低下を抑制できるとともに、第1機能層12と第2機能層13の間の密着性を向上させることができる。
【0141】
本実施形態によれば、光透過性基材11が、アセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、または(メタ)アクリル系樹脂を含んでいるので、光透過性基材11の面内位相差Reは高くても150nm程度である。これにより、偏光サングラス越しに表示画像を観察したときの視認性低下を抑制することができる。
【0142】
<<<偏光板>>>
光学フィルム10は、偏光板に組み込んで使用することが可能である。図6は、本実施形態に係る偏光板の概略構成図である。図6に示されるように、偏光板30は、光学フィルム10と、偏光子31と、保護フィルム32とをこの順で備えている。また、偏光板30においては、光学フィルム10の光透過性基材11側に偏光子31が設けられているが、光学フィルムの機能層側に偏光子が設けられていてもよい。
【0143】
光学フィルム10と偏光子31、および偏光子31と保護フィルム32は、例えば、水系接着剤または紫外線硬化性接着剤によって貼り合わせられている。
【0144】
<<偏光子>>
偏光子31は、光透過性基材11における第1機能層12側の面とは反対側の面に設けられている。偏光子31としては、ヨウ素または二色性色素により染色し、一軸延伸させたポリビニルアルコール系樹脂フィルムが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂を鹸化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂は、変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタール等を用いることもできる。
【0145】
<<保護フィルム>>
保護フィルム32としては、例えば、トリアセチルセルロース系フィルムや(メタ)アクリル樹脂フィルム、シクロオレフィンポリマー系フィルム等が挙げられる。
【0146】
<<<画像表示装置>>>
光学フィルム10または偏光板30は、画像表示装置に組み込んで使用することが可能である。図7は、本実施形態に係る画像表示装置の概略構成図である。図7に示される画像表示装置40は、観察者側に向けて、表示素子50と、円偏光板60と、タッチセンサ70と、カバー部材80とをこの順で備えている。表示素子50と円偏光板60の間、円偏光板60とタッチセンサ70の間、タッチセンサ70とカバー部材80との間は、接着層91~93を介して接着されている。本明細書における「接着」とは粘着を含む概念である。
【0147】
<<<表示素子>>>
表示素子50としては、液晶素子、有機発光ダイオード素子(以下、「OLED素子」と称することもある。)、無機発光ダイオード素子、マイクロLED、プラズマ素子等が挙げられる。有機発光ダイオード素子としては、公知の有機発光ダイオード素子を用いることができる。また、液晶表示素子は、タッチパネル機能を素子内に備えたインセルタッチパネル液晶表示素子であってもよい。
【0148】
<<<円偏光板>>>
円偏光板60は、外光反射を抑制する機能を有するので、表示素子としてOLED素子を用いる場合に、円偏光板60は、特に有効である。円偏光板60は、例えば、観察者側に向けて、第1位相差フィルム61(以下、単に「位相差フィルム61」と称することもある。)と、接着層62と、第2位相差フィルム63(以下、単に「位相差フィルム63」と称することもある。)と、接着層64と、偏光板30とを、この順で備えている。
【0149】
円偏光板60においては、光学フィルム10の第2機能層13が第1機能層12よりも観察者側に位置している。このように偏光板30を配置することにより、所望の鉛筆硬度や耐擦傷性を得ることができる。
【0150】
円偏光板60の厚みは、薄型化を図る観点から、100μm以下であることが好ましい。円偏光板60の厚みの下限は、強度低下による加工性の観点から、20μm以上、30μm以上、または50μm以上であることが好ましい。また、円偏光板60の厚みの上限は、95μm以下、90μm以下、80μm以下であることがより好ましい。円偏光板60の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、円偏光板60の断面を撮影し、その断面の画像において円偏光板60の厚みを10箇所測定し、その10箇所の厚みの算術平均値を求めることによって求めることができる。
【0151】
円偏光板60は、チップカット方式やロール・トゥ・パネル方式のいずれの方式によって画像表示装置に組み込んでもよい。チップカット方式は、画像表示装置のサイズに合わせてロール状の円偏光板から所定の大きさの円偏光板を切り出して、接着層を介してガラス等のカバー部材に貼り付ける方式である。また、ロール・トゥ・パネル方式は、画像表示装置の製造ラインにおいてロール状の円偏光板を送り出しながら切断し、接着層を介してガラス等のカバー部材に貼り合わせる方式である。
【0152】
<<第1の位相差フィルム>>
位相差フィルム61としては、ポジティブCプレートまたはλ/4位相差フィルムを用いることができる。
【0153】
<ポジティブCプレート>
ポジティブCプレートは、面内方向の屈折率をnx、nyとし、厚さ方向の屈折率をnzとすると、nx≒ny<nzの関係を満たすフィルムである。ポジティブCプレートを配置することにより、表示画面の法線方向に対して斜め方向から見たときの色味を改善できる。ポジティブCプレートは、例えば、垂直配向した液晶層から構成されていてもよい。
【0154】
<λ/4位相差フィルム>
λ/4位相差フィルムとは、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルムの面内位相差が約1/4となる特性を備えるフィルムである。λ/4位相差フィルムを配置することにより、直線偏光を円偏光に、または円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0155】
λ/4位相差フィルムとしては、正の波長分散性を有するλ/4位相差フィルムや負の波長分散性を有するλ/4位相差フィルムが挙げられる。正の波長分散性を有するλ/4位相差フィルムは、長波長になるほど位相差が小さくなる性質を有するフィルムであり、負の波長分散性を有するλ/4位相差フィルムは、長波長になるほど位相差が大きくなる性質を有するフィルムである。
【0156】
正の波長分散性を有するλ/4位相差フィルムは、延伸倍率を調整しながら樹脂フィルムを延伸することによって得ることができる。λ/4位相差フィルムを得るための樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、シクロオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。負の波長分散性を有するλ/4位相差フィルムは、例えば、ポリカーボネート系樹脂、芳香族構造を有する樹脂によって得ることができる。
【0157】
<<接着層>>
接着層62、64は、重合性化合物を含む液状の電離放射線硬化性接着剤(例えば、OCR:Optically Clear Resin)の硬化物や粘着剤(例えば、OCA:Optical Clear Adhesive)から構成することが可能である。接着層62、64の膜厚は、0.5μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0158】
<<第2の位相差フィルム>>
位相差フィルム61がポジティブCプレートである場合には、位相差フィルム63としては、負の波長分散性(逆波長分散性)を有するλ/4位相差フィルムを用いることができ、また位相差フィルム61がλ/4位相差フィルムである場合には、λ/2位相差フィルムを用いることができる。
【0159】
<負の波長分散性を有するλ/4位相差フィルム>
負の波長分散性を有するλ/4位相差フィルムとしては、上記λ/4位相差フィルムの欄で説明した負の波長分散性を有するλ/4位相差フィルムと同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0160】
<λ/2位相差フィルム>
λ/2位相差フィルムとは、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルムの面内位相差が約1/2となる特性を備えたフィルムである。λ/4位相差フィルムの他にλ/2位相差フィルムを配置することにより、広い波長帯域において円偏光に変換することができる。
【0161】
λ/2位相差フィルムは、延伸倍率を調整しながら樹脂フィルムを延伸することによって得ることができる。λ/2位相差フィルムを得るための樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂等が挙げられる。
【0162】
<<<タッチセンサ>>>
タッチセンサ70としては、公知のタッチセンサを用いることができる。タッチセンサ70の種類としては、特に限定されないが、例えば、静電容量方式のタッチセンサを用いることができる。タッチセンサ70は、円偏光板60とカバー部材80との間に配置されているが、表示素子50と円偏光板60との間に配置されていてもよい。
【0163】
<<<カバー部材>>>
カバー部材80の表面80Aは、画像表示装置40の表面40Aとなっている。カバー部材80は、カバーガラスまたは樹脂からなるカバーフィルムであってもよい。画像表示装置40が、屈曲性を有する場合には、カバー部材80は屈曲性を有するガラスや屈曲性を有する樹脂から構成されていることが好ましい。屈曲性を有する樹脂としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンナフタレート樹脂)、またはこれらの樹脂を2以上混合した混合物等が挙げられる。
【0164】
<<<接着層>>>
接着層91~93は、重合性化合物を含む液状の電離放射線硬化性接着剤(例えば、OCR:Optically Clear Resin)の硬化物や粘着剤(例えば、OCA:Optical Clear Adhesive)から構成することが可能である。
【0165】
OLED素子は、外光等によって劣化するおそれがある。このため、現在、OLED素子を用いた画像表示装置においては、OLED素子の劣化を抑制することが望まれている。また、OLED素子は、ブルーライトと呼ばれる光を発している。ブルーライトは、波長380nm~500nmの波長域の光で紫外線に近い性質を持っており、強いエネルギーを有しているため、角膜や水晶体で吸収されずに網膜に到達することで、網膜の損傷、眼精疲労、睡眠への悪影響等の原因になると言われている。このため、現在、ブルーライトを遮蔽することが望まれている。本実施形態によれば、表示素子50がOLED素子である場合、OLED素子よりも観察者側に紫外線吸収剤を含む第1機能層12を備えているので、第1機能層12により外光のうち紫外線を吸収することができる。これにより、OLED素子の外光による劣化を抑制できる。また、OLED素子から発せられる紫外線を吸収することができるので、ブルーライトを遮蔽できる。
【0166】
本実施形態によれば、表示素子50がOLED素子である場合、OLED素子よりも観察者側にセサモール型ベンゾトリアゾール系化合物およびインドール系化合物の少なくともいずれかを含む第1機能層12を備えているので、第1機能層12により外光のうち紫外線を吸収することができる。これにより、OLED素子の外光による劣化を抑制できるとともに、OLED素子から発せられるブルーライトを遮蔽できる。
【0167】
本実施形態によれば、偏光子31よりも観察者側に紫外線を吸収する紫外線吸収剤を含む第1機能層12を備えているので、表示素子50がOLED素子である場合、OLED素子のみならず、偏光子の外光による劣化を抑制できる。
【0168】
接着層に上記紫外線吸収剤を含ませた場合にも、OLED素子の外光による劣化を抑制できるとともに、ブルーライトを遮蔽できるが、接着層に紫外線吸収剤を含ませると、接着力が低下しやすい。このため、接着層の薄膜化を図ることは困難である。また、円偏光板等の構成によって、接着層の種類を変えることもあるので、接着層の種類毎に紫外線吸収剤を含ませる必要がある。これに対し、本実施形態において、インデンテーション硬さが50MPa以上600MPa以下の第1機能層12に紫外線吸収剤を含ませた場合には、第1機能層12の薄膜化を図ることができる。また、第1機能層12に紫外線吸収剤を含ませているので、円偏光板60等の構成によって接着層の種類が変わったとしても、第1機能層12で対応することができる。
【0169】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る光学フィルムおよび画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施形態に係る光学フィルムの概略構成図であり、図9は、図8の光学フィルムの一部拡大図であり、図10は、面内位相差を測定する位置を特定するためのサンプルの平面図である。図11および図12は、本実施形態に係る光学フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
【0170】
<<<<光学フィルム>>>>
図8に示される光学フィルム100は、光透過性基材101および機能層102を備えている。機能層102は、窒素原子を含む紫外線吸収剤を含んでいる。図8に示される機能層102は、光透過性基材101に隣接しているが、光透過性基材101と機能層102の間には他の機能層が設けられていてもよい。
【0171】
図8に示される光学フィルム100の表面100Aは、機能層102の表面102Aとなっている。ただし、機能層の表面に他の機能層が形成されている場合には、光学フィルムの表面は、他の機能層の表面となる。本明細書における「機能層の表面」とは、機能層における光透過性基材側の面とは反対側の面を意味するものとする。
【0172】
光学フィルム100の厚み(合計厚み)、分光透過率、イエローインデックス、全光線透過率、ヘイズ値、鉛筆硬度等の物性値およびその測定方法、フレキシブル性およびその評価方法、ならびに光学フィルム100の用途および大きさは、光学フィルム10の厚み、分光透過率、イエローインデックス、全光線透過率、ヘイズ値、鉛筆硬度等の物性値およびその測定方法、フレキシブル性およびその評価方法、ならびに光学フィルム10の用途および大きさと同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0173】
<<<光透過性基材>>>
光透過性基材101としては、光透過性を有する基材である。光透過性基材101としては、特に限定されないが、光透過性基材101と機能層102との密着性の観点から、機能層102の形成の際に、機能層102の成分(例えば、重合性化合物)が入り込む浸透性基材であってもよい。
【0174】
光透過性基材を構成材料としては、特に限定されず、例えば、アセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等の光透過性樹脂やこれらの混合物が挙げられる。第1実施形態で説明したように、偏光サングラス越しに表示画像を観察した場合であっても視認性の低下を抑制できることから、アセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂または(メタ)アクリル樹脂が好ましい。また、フレキシブル性の点からポリイミド系樹脂やポリアミド系樹脂がより好ましい。光透過性基材は必要に応じて、可塑剤、紫外線吸收剤、易滑剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0175】
アセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂は、第1実施形態で説明したので、ここでは説明を省略するものとする。
【0176】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)の少なくとも1種を構成成分とする樹脂等が挙げられる。ポリエステル系樹脂を用いた場合、紫外光が照射されると励起されて蛍光を発する性質を有することが知られている。このような蛍光は、表示面の色味に影響を及ぼすことがあったが、光学フィルム10では、上述のように波長380nm以下の光はほぼ遮蔽するものであるため、光透過性基材11にポリエステル系樹脂を用いたとしても、蛍光が生じることを好適に防止することができる。
【0177】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート等が挙げられる。
【0178】
ポリイミド系樹脂は、脂肪族のポリイミド系樹脂であってもよいが、芳香族環を含む芳香族系ポリイミド樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸成分およびジアミン成分の少なくとも一方に芳香族環を含むものである。
【0179】
ポリイミド系樹脂は、その一部にポリアミド構造を含んでいても良い。含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミドのみならず、芳香族ポリアミド(アラミド)を含む概念である。
【0180】
光透過性基材101の厚み(光学フィルム100にフレキシブル性が求められるときの光透過性基材101の厚みを含む)および厚みの測定方法、ならびに表面処理は、光透過性基材11の厚みおよび厚みの測定方法、ならびに表面処理と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。なお、光透過性基材101が、ポリエステル系樹脂を含む場合であって、光学フィルム100にフレキシブル性が求められる場合には、光透過性基材101の厚みは、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含む光透過性基材11の厚みと同様である。
【0181】
光透過性基材101が、ポリエステル系樹脂を含む場合、光透過性基材101内のポリマーが均一である方がフレキシブル性に優れる。光透過性基材101がポリエステル系樹脂を含む場合には、物理的強度を得るために延伸が欠かせないため、ポリマー状態をなるべく均一にするためには、縦横にほぼ同倍率で逐次または同時2軸延伸によって製造するとよい。その結果、従来のポリエステル系樹脂を含む光透過性基材よりも面内位相差が小さいポリエステル系樹脂を含む光透過性基材が得られる。ポリエステル系樹脂を含む光透過性基材における「面内位相差が小さい」とは、ポリエステル系樹脂を含む光透過性基材の厚みが10μm以上90μm以下の範囲内で、面内位相差が1500nm以下であることを意味し、好ましくは1200nm以下、より好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。なお、二軸延伸ポリエステル系樹脂を含む光透過性基材としての物理特性を良好にするには、面内位相差は小さすぎない方が良く、200nm以上、更には400nm以上が好ましい。
【0182】
光透過性基材101が、ポリエステル系樹脂を含む場合、光透過性基材101の面内位相差は、光透過性基材の面内において屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率nx、前記面内において前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率ny、および光透過性基材の厚みt(nm)により、下記数式(4)によって表わされるものである。下記数式(4)より、面内位相差が小さいことで、配向性の程度が低いため折り曲げ耐性を良好にし得る傾向があることが分かる。面内位相差(Re)は、例えば、大塚電子社製の商品名「RETS-100」、王子計測機器社製の商品名「KOBRA-WR」、「PAM-UHR100」により測定できる。
面内位相差(Re)=(nx-ny)×t …(4)
【0183】
RETS-100を用いて上記Reを測定する場合には、以下の手順に従って測定することができる。まず、RETS-100の光源を安定させるため、光源を点灯させてから60分以上放置する。その後、回転検光子法を選択するとともに、θモード(角度方向位相差測定モード)選択する。このθモードを選択することにより、ステージは傾斜回転ステージとなる。
【0184】
次いで、RETS-100に以下の測定条件を入力する。
(測定条件)
・リタデーション測定範囲:回転検光子法
・測定スポット径:φ5mm
・傾斜角度範囲:-40°~40°
・測定波長範囲:400nm~800nm
・サンプル(ポリエチレンテレフタレート)の平均屈折率:1.617
・厚み:SEMや光学顕微鏡で別途測定した厚み
【0185】
次いで、この装置にサンプルを設置せずに、バックグラウンドデータを得る。装置は閉鎖系とし、光源を点灯させる毎にこれを実施する。
【0186】
その後、この装置内のステージ上にサンプルを設置する。サンプルの形状は、どのような形状であってもよく、例えば、長方形状であってもよい。サンプルの大きさは、50mm×50mmであってもよい。サンプルが複数存在する場合には、全て同じ向きで設置する必要がある。例えば、サンプルを全て同じ向きで設置するために予め印を全サンプルに付けておくことが好ましい。
【0187】
サンプルを設置した後、温度23±5℃および相対湿度50±20%の環境下で、XY平面上でステージを360°回転させて、進相軸および遅相軸を測定する。測定終了後、遅相軸を選択する。その後、遅相軸を中心にステージが設定した角度範囲に傾きながら測定が行われ、10°刻みで、設定傾斜角度範囲および設定波長範囲のデータ(Re)が得られる。面内位相差Reは、入射角0°および波長589nmの光で測定したときの値とする。面内位相差Reは、位置が異なる5点で測定する。具体的には、まず、図10に示されるようにサンプルS2の中心A1を通る2本の直交する仮想線IL1、IL2を引く。この仮想線IL1、IL2を引くと、サンプルが4つの区画に分かれる。そして、各区画において中心A1から等距離にある1点、合計4点A2~A4を設定し、中心A1および点A2~A4の合計5点で測定する。そして、5点の測定値中、最大値と最小値を除いた3点の算術平均値を面内位相差Reとする。
【0188】
また、更に物理特性を良好にするには、面内方向の複屈折とともに膜厚方向の複屈折とのバランスも考慮した方がよい。その指標としてはNz係数がある。Nz係数は光透過性基材の内部の結晶性や配向性が影響するものなので、光透過性基材全体の特性に関わっている。Nz係数は、例えばポリエチレンテレフタレートである場合は、2~4が一般的であるが、本発明においては、5以上、更には好ましくは8以上、最も好ましくは10以上である。Nz係数の上限は80程度であり、好ましくは70以下、最も好ましくは50以下である。Nz係数は、光透過性基材の厚み方向の屈折率をnzとしたとき、下記数式(5)によって表わされるものである。なお、下記数式(5)におけるnxおよびnyは、上記数式(4)のnxおよびnyと同様である。
Nz係数=(nz-nx)/(ny-nx) …(5)
【0189】
<<<機能層>>>
図8に示される機能層102は、単層構造となっているが、2以上の多層構造であってもよい。また、機能層102は、ハードコート層として機能する層である。ただし、機能層102は、他の機能を有する層であってもよい。本実施形態における「ハードコート層」とは、インデンテーション硬さが、光透過性基材のインデンテーション硬さよりも大きい層を意味する。
【0190】
機能層102の膜厚は、1μm以上10μm以下となっている。機能層102の膜厚が、この範囲内にあることにより、薄型化を図ることができる。この膜厚の上限は、9μm以下、8μm以下、または7μm以下となっていてもよい。
【0191】
本実施形態における「機能層の膜厚」とは、顕微鏡画像のコントラスト差により光透過性基材と機能層との界面ラインを認識できるので、この界面ラインから機能層の表面までの距離を意味する。機能層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)等を用いて、機能層の断面を撮影し、その断面の画像において機能層の膜厚を10箇所測定し、その10箇所の膜厚の算術平均値を求めることによって求めることができる。具体的な断面写真の撮影方法は、第1実施形態で記載した断面写真の撮影方法と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0192】
機能層102において、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により機能層102の深さ方向D1に二次イオンの強度を測定したとき、機能層102の表面102Aを含む厚さ0.3μmの第1領域102C(図9参照)における紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度IU1に対する機能層102の深さ方向D1に機能層102を二等分する二等分線IL(図9参照)を含む厚さ0.3μmの第2領域102D(図9参照)における紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度IU2の比(IU2/IU1)が1.1以上4.0以下となり、かつ第2領域102Dにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度IU2に対する機能層102の裏面102Bを含む厚さ0.3μmの第3領域102E(図9参照)における紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度IU3の比(IU3/IU2)が1.2以上4.0以下となっている。IU2/IU1が1.1以上であれば、第1領域102Cに含まれる紫外線吸収剤が多すぎないために、表面硬度や耐擦傷性の低下をより抑制できるとともに紫外線吸収剤の析出をより抑制できる。また、IU2/IU1が4.0以下であれば、第1領域102Cと第2領域102Dとの間に極端な紫外線吸収剤の濃度差が出来にくいので、第1領域102Cより紫外線吸収剤が多く含まれている第2領域102Dが柔らかくなりすぎることを抑制でき、表面硬度の低下や耐久試験時における第1領域102Cと第2領域102Dの間の熱収縮差により生じるクラックを抑制できる。IU3/IU2が1.2以上であれば、第2領域102Dに含まれる紫外線吸収剤が多すぎないために、紫外線吸収剤の析出をより抑制できる。IU3/IU2が4.0以下であれば、第2領域102Dと第3領域102Eとの間に極端な紫外線吸収剤の濃度差が出来にくいので、第2領域102Dより紫外線吸収剤が多く含まれている第3領域102Eが柔らかくなりすぎることを抑制でき、表面硬度の低下や耐久試験時における第2領域102Dと第3領域102Eの間の熱収縮差により生じるクラックを抑制できる。IU2/IU1の下限は、1.2以上、1.3以上、または1.4以上であることがより好ましく、上限は、3.5以下、3.0以下、2.5以下、2.0以下、または1.6以下であることがより好ましい。また、IU3/IU2の下限は、1.3以上、1.4以上、1.6以上、または2.0以上であることがより好ましく、上限は、3.5以下、3.2以下、2.8以下、2.6以下、または2.5以下であることがより好ましい。
【0193】
第1領域102Cにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度IU1に対する第3領域102Eにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度IU3の比(IU3/IU1)は、1.5以上6.5以下となっていることが好ましい。IU3/IU1が1.5以上であれば、第1領域102Cに含まれる紫外線吸収剤が多すぎないために、表面硬度や耐擦傷性の低下をより抑制できるとともに紫外線吸収剤の析出をより抑制できる。また、IU3/IU1が6.5以下であれば、第3領域102Eが柔らかくなりすぎることを抑制でき、表面硬度の低下を抑制できる。IU3/IU1の下限は1.8以上、2.0以上、または2.2以上であることがより好ましく、上限は、6.2以下、6.0以下、または5.8以下であることがより好ましい。
【0194】
TOF-SIMSでのデプスプロファイルの横軸は、深さであるが、この深さは機能層のエッチング速度から換算した深さであるので、上記断面写真から求められる機能層の膜厚および各領域の厚さと、デプスプロファイル上での機能層の膜厚および各領域とは必ずしも一致しないこともある。上記「機能層の深さ方向に機能層を二等分する二等分線」は、機能層の深さ方向に機能層の膜厚を二等分する仮想線であり、上記デプスプロファイルから求められる機能層の膜厚に基づいて求められ、また上記「機能層の裏面」は、上記デプスプロファイルにおける光透過性基材由来の二次イオンの強度と紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度の交点とする。また「第1領域の厚さ」、「第2領域の厚さ」、「第3領域の厚さ」も上記デプスプロファイルから求められる厚さとする。また、本明細書における「二次イオンの強度」とは、特に言及しない限り、各領域において深さが異なる少なくとも3箇所で測定された強度の算術平均値とする。また、上記二等分線ILは、深さ方向D1と直交する方向D2(図9参照)に延びるものであり、第2領域102Dは、上記二等分線ILが第2領域102Dの中央に位置するように設定される。
【0195】
上記二次イオン強度の測定は、飛行時間型二次イオン質量分析装置(例えば、ION-TOF社製のTOF.SIMS5)を用いて行うことができる。具体的には、まず、10mm×10mmの大きさに切り出した光学フィルムを、飛行時間型二次イオン質量分析装置の試料室に、一次イオンが機能層の表面に照射されるように設置する。そして、一次イオンを機能層の表面に照射して、第1領域、第2領域、および第3領域における紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度を測定する。なお、窒素原子を含む紫外線吸収剤は窒素原子を含むので、紫外線吸収剤由来の二次イオンとしてCNが検出される。また、窒素原子を含む紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール系化合物である場合には、紫外線吸収剤由来の二次イオンとしてCNやC が検出される。
【0196】
上記TOF.SIMS5を用いて、紫外線吸収剤に由来する二次イオンの強度を測定する際には、例えば、以下の測定条件で行うことができる。なお、測定条件に記載されているようにエッチングイオンとしてArガスクラスターイオンビームを用いているが、Arガスクラスターイオンビームを用いることにより、有機物の構造物において低ダメージのエッチングが可能となる。
・2次イオン極性:負
・質量範囲(m/z):0~3000
・ラスターサイズ:200μm□
・スキャン数:1scan/cycle
・ピクセル数(1辺):128ピクセル
・測定真空度(サンプル導入前):4×10-7Pa以下
・帯電中和:有り
・後段加速:10kV
・1次イオン:Bi ++
・1次イオン加速電圧:30kV
・パルス幅:11.3ns
・バンチング:有り(高質量分解能測定)
・エッチングイオン:Arガスクラスターイオンビーム(Ar-GCIB)
・エッチングイオン加速電圧:20kV
・Arクラスターサイズ(中央値):約1400
【0197】
機能層102において、第1領域102Cにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの最小強度IU1(min)が、第2領域102Dにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの最小強度IU2(min)よりも小さく、かつ第2領域102Dにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの最小強度IU2(min)が、第3領域102Eにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの最小強度IU3(min)よりも小さくなっていることが好ましい。機能層102において、このような関係を有することにより、機能層102の表面102Aから裏面102Bに向けて徐々に紫外線吸収剤が多くなるので、紫外線吸収剤の極端な濃度差が生じることを抑制でき、耐久試験時に機能層102にクラックが生じることをより抑制できる。
【0198】
機能層102においては、第1領域102Cにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの最大強度IU1(max)が、第2領域102Dにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの最小強度IU2(min)よりも小さく、かつ第2領域102Dにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの最大強度IU2(max)が、第3領域102Eにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの最小強度IU3(min)よりも小さくなっていることが好ましい。機能層102において、このような関係を有することにより、機能層102の表面102Aから裏面102Bに向けて徐々に紫外線吸収剤が多くなるので、紫外線吸収剤の極端な濃度差が生じることを抑制でき、耐久試験時に機能層102にクラックが生じることをより抑制できる。
【0199】
機能層102においては、第1領域102Cにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの最小強度IU1(min)が、機能層102における第1領域102Cの光透過性基材11側の境界102C1から裏面102Bまでの第4領域102Fにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの最小強度IU4(min)よりも小さいことが好ましい。機能層102において、このような関係を有することにより、機能層102においては、第1領域102C中の紫外線吸収剤が最も少ないので、紫外線吸収剤の析出、表面硬度の低下、および耐擦傷性の低下をより抑制できる。
【0200】
機能層102は後述するようにフッ素原子含有化合物を含んでいてもよいが、機能層102がフッ素原子含有化合物を含む場合、TOF-SIMSにより測定された第1領域102Cにおけるフッ素原子含有化合物由来の二次イオンの強度IF1が、第2領域102Dおよび第3領域102Eにおけるフッ素原子含有化合物由来の二次イオンのそれぞれの強度IF2、IF3よりも大きくなっていることが好ましい。すなわち、フッ素原子含有化合物は、機能層102の表面102A側(第1領域102C)に偏在している。上記強度IF1が、上記強度IF2、IF3よりも大きくなっていることにより、フッ素原子含有化合物が機能層102の第1領域102Cに多いので、紫外線吸収剤が表面102Aに析出するのを抑制できる。
【0201】
第2領域102Dおよび第3領域102Eにおけるフッ素原子含有化合物由来の二次イオンの強度IF2、IF3に対する第1領域102Cにおけるフッ素原子含有化合物由来の二次イオンの強度IF1の比(IF1/IF2、IF1/IF3)が、それぞれ30以上であることが好ましい。IF1/IF2およびIF1/IF3がそれぞれ30以上であれば、紫外線吸収剤が表面102Aに析出するのをより抑制できる。IF1/IF2およびIF1/IF3の下限は、それぞれ40以上、50以上、60以上、または70以上であることがより好ましい。
【0202】
機能層102は後述するようにケイ素原子含有化合物を含んでいてもよいが、機能層102がケイ素原子含有化合物を含む場合、TOF-SIMSにより測定された第1領域102Cにおけるケイ素原子含有化合物由来の二次イオンの強度IS1が、第2領域102Dおよび第3領域102Eにおけるケイ素原子含有化合物由来の二次イオンのそれぞれの強度IS2、IS3よりも大きくなっていることが好ましい。すなわち、ケイ素原子含有化合物は、機能層102の表面102A側(第1領域102C)に偏在している。上記強度IS1が、上記強度IS2、IS3よりも大きくなっていることにより、ケイ素原子含有化合物が機能層102の第1領域102Cに多いので、紫外線吸収剤が表面102Aに析出するのを抑制できる。
【0203】
第2領域102Dおよび第3領域102Eにおけるケイ素原子含有化合物由来の二次イオンの強度IS2、IS3に対する第1領域102Cにおけるケイ素原子含有化合物由来の二次イオンの強度IS1の比(IS1/IS2、IS1/IS3)が、それぞれ3以上であることが好ましい。IS1/IS2およびIS1/IS3がそれぞれ3以上であれば、紫外線吸収剤が表面102Aに析出するのをより抑制できる。IS1/IS2およびIS1/IS3の下限は、それぞれ5以上、10以上、または15以上であることがより好ましい。
【0204】
TOF-SIMSによるフッ素原子含有化合物由来の二次イオンの強度およびケイ素原子含有化合物由来の二次イオンの強度は、上記紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度と同様の方法によって測定できる。なお、フッ素原子含有化合物はフッ素原子を含むので、フッ素原子含有化合物由来の二次イオンとしてFが検出される。また、ケイ素原子含有化合物はケイ素原子を含むので、ケイ素原子含有化合物由来の二次イオンとしてSiO が検出される。
【0205】
機能層102のインデンテーション硬さは、75MPa以上1000MPa以下であることが好ましい。機能層102のインデンテーション硬さが、75MPa以上であれば、所望の鉛筆硬度を得ることができ、また1000MPa以下であれば、クラック発生を抑制できる。機能層102のインデンテーション硬さの下限は、100MPa以上、150MPa以上、または200MPa以上であることがより好ましい。また、機能層102のインデンテーション硬さの上限は、900MPa以下、750MPa以下、または600MPa以下であることがより好ましい。機能層102のインデンテーション硬さは、第1実施形態に記載した方法によって測定するものとする。
【0206】
機能層102は、樹脂および窒素原子を含む紫外線吸収剤を含んでいる。機能層102は、樹脂および紫外線吸収剤の他に、フッ素原子含有化合物、ケイ素原子含有化合物、重合開始剤を含んでいてもよい。
【0207】
<樹脂>
機能層102に含まれる樹脂としては、重合性化合物の重合物(硬化物)を含むものである。樹脂は、重合性化合物の重合物の他、溶剤乾燥型樹脂や熱硬化性化合物を含んでいてもよい。重合性化合物は、第2機能層13の欄に記載した重合性化合物と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。溶剤乾燥型樹脂や熱硬化性化合物は、第1機能層12の欄に記載した溶剤乾燥型樹脂や熱硬化性化合物と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0208】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤は、第1実施形態に記載した紫外線吸収剤と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0209】
<フッ素原子含有化合物>
フッ素原子含有化合物は、フッ素原子を含んでいる化合物であれば、特に限定されない。フッ素原子含有化合物としては、例えば、フッ素系レベリング剤等が挙げられる。フッ素系レベリング剤を用いることにより、高いレベリング性により平滑性、リコート性を付与できる。フッ素系レベリング剤の市販品としては、例えば、F-555(DIC株式会社製)、F-568(DIC株式会社製)、フタージェント(登録商標)683(株式会社ネオス製)が挙げられる。
【0210】
<ケイ素原子含有化合物>
ケイ素原子含有化合物は、ケイ素原子を含んでいる化合物であれば、特に限定されない。ケイ素原子含有化合物としては、例えば、シリカ粒子やケイ素系レベリング剤等が挙げられる。シリカ粒子を用いる場合、機能層102に易滑性を付与することができる。
【0211】
シリカ粒子の平均粒径は、1nm以上1000nm以下であることが好ましい。シリカ粒子の平均粒径が1nm以上であれば、シリカ粒子を容易に製造することができ、また1000nm以下であれば、易滑性を付与できるとともに、高い透明性を維持できる。シリカ粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて倍率4万倍~20万倍で撮影したシリカ粒子の断面の画像から20個のシリカ粒子の粒径を測定し、20個のシリカ粒子の粒径の算術平均値とする。
【0212】
機能層102は、1種類の組成物を用いて形成してもよいが、2種類以上の組成物を用いて形成することが可能である。2種類以上の組成物を用いて機能層102を形成する場合には、例えば、重合性化合物および窒素原子を含む紫外線吸収剤を含む機能層用第1組成物および重合性化合物を含む機能層用第2組成物を用いて形成してもよい。
【0213】
<機能層用第1組成物>
機能層用第1組成物は、上記重合性化合物および紫外線吸収剤等を含むが、その他、必要に応じて、重合開始剤、溶剤、レベリング等を含んでいてもよい。重合開始剤、溶剤、レベリング剤は、第1実施形態に記載した重合開始剤、溶剤、レベリング剤と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0214】
<機能層用第2組成物>
機能層用第2組成物は、上記重合性化合物等を含むが、その他、上記フッ素原子含有化合物、上記ケイ素原子含有化合物、上記溶剤乾燥型樹脂、上記熱硬化性化合物、重合開始剤、溶剤等を含んでいてもよい。また、機能層用第2組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、以下の各種添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、帯電防止剤、接着性向上剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、着色剤等が挙げられる。
【0215】
機能層用第2組成物中の重合開始剤は、機能層用第1組成物中の重合開始剤と同じものであってもよいが、異なるものであることが好ましい。機能層用第2組成物中の重合開始剤を機能層用第1組成物中の重合開始剤と異なるものであることにより、機能層用第1組成物においては半硬化させやすい重合開始剤を選択し、機能層用第2組成物においては表面硬化性の良い重合開始剤を選択することができる。
【0216】
<<光学フィルムの製造方法>>
光学フィルム100は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、図11(A)に示されるように、光透過性基材101における一方の面101Aに機能層用第1組成物を塗布して、乾燥させて、第1塗膜111を形成する。次いで、図11(B)に示されるように、第1塗膜111に紫外線等の電離放射線を照射して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより第1塗膜111を半硬化させる。
【0217】
第1塗膜111を半硬化させた後、第1塗膜111の表面に機能層用第2組成物を塗布し、乾燥させると、図12(A)に示されるように、第2塗膜112の他に、第1塗膜111と第2塗膜112の間に第1塗膜111の成分と第2塗膜112の成分を含む混合塗膜113が形成される。混合塗膜113は、理由は定かではないが、機能層用第2組成物の溶剤が半硬化状態の第1塗膜111に浸透することによって重合性化合物の成分も半硬化状態の第1塗膜111内に引き込まれて、形成されると考えられる。
【0218】
次いで、図12(B)に示されるように、第1塗膜111、第2塗膜112および混合塗膜113に紫外線等の電離放射線を照射して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより第1塗膜111、第2塗膜112および混合塗膜113を硬化(例えば、完全硬化)させる。ここで、第1塗膜111、第2塗膜112および混合塗膜113を硬化させると、それぞれの界面が消失して、1層の機能層102が形成される。
【0219】
本実施形態によれば、機能層102の膜厚が1μm以上10μm以下であり、かつ機能層102が窒素原子を含む紫外線吸収剤を含む光学フィルム100において、第1領域102Cにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度IU1に対する第2領域102Dにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度IU2の比(IU2/IU1)が1.1以上4.0以下となっているので、機能層102の表面102A付近の紫外線吸収剤が少なくなっている。また、第2領域102Dにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度IU2に対する第3領域102Eにおける紫外線吸収剤由来の二次イオンの強度IU3の比(IU3/IU2)が1.2以上4.0以下となっているので、機能層102の第1領域102C~第3領域102Eにおいて紫外線吸収剤の極端な濃度差が生じることを抑制でき、耐久試験時に機能層102にクラックが生じることを抑制できる。これにより、薄型化を図りつつ、良好な表面硬度、良好な耐擦傷性および良好な耐久性を有する光学フィルム100を得ることができる。なお、本明細書における「良好な表面硬度」とは、少なくとも光学フィルム100の加工時に傷が付かない程度の表面硬度を意味し、また「良好な耐擦傷性」とは、少なくとも光学フィルム100の加工時に少なくとも傷が付かない程度の耐擦傷性を意味する。
【0220】
<<<偏光板および画像表示装置>>>
光学フィルム100は、光学フィルム10と同様に偏光板や画像表示装置に組み込んで使用することが可能である。図13は、本実施形態に係る偏光板の概略構成図であり、図14は、本実施形態に係る画像表示装置の概略構成図である。図13に示される偏光板120や図14に示される画像表示装置130は、光学フィルム100を備えている。なお、図13および図14において、図6および図7と同じ符号が付されている部材は、図6および図7で示した部材と同じものであるので、説明を省略するものとする。
【実施例
【0221】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。なお、文中、「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準とする。
【0222】
<<実施例Aおよび比較例A>>
<実施例A1>
(下地層用組成物1の調製)
200mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、水銀温度計、撹拌装置を取り付け、6-[5-(2-ヒドロキシエチル)-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-オール4.0g(0.013モル)、トルエン40mL、メタクリル酸1.8g(0.021モル)、メタンスルホン酸0.4g(0.004モル)を入れて、110~115℃で4時間還流脱水した。次いで、水30mL、炭酸ナトリウム0.6g(0.006モル)を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、活性炭0.2gを加え、還流撹拌して脱色させた。そして、ろ過した後に、ろ液からトルエン40mLを減圧することによって回収し、イソプロピルアルコール100mLを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール40mLで洗浄した。その後、減圧下40℃で乾燥し、黄色結晶を4.2g得た。この黄色結晶4.2gをイソプロピルアルコールでリパルプ洗浄して、減圧下40℃で乾燥した。これにより、セサモール型ベンゾトリアゾール系化合物として、3.4gの2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]エチルメタクリレートを得た。
【0223】
次いで、四つ口フラスコにジムロート冷却器、水銀温時計、窒素ガス吹き込み管、攪拌装置を取り付け、合成した2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]エチルメタクリレート16質量部、他の単量体としてのメチルメタクリレート(MMA)24質量部、溶剤としてのトルエン20質量部、メチルエチルケトン20質量部、および、重合開始剤としての1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)0.6質量部を入れて、攪拌しながら窒素ガス流量10mL/minで1時間フラスコ内を窒素置換後に、反応液温度90~96℃で10時間還流状態にて重合反応を行った。
【0224】
重合反応終了後、トルエン10質量部、メチルエチルケトン(MEK)10質量部を追加し、セサモール型ベンゾトリアゾール系化合物がMMAに反応結合されたアクリルポリマー1(紫外線吸収剤1)を含む溶液100.6質量部を得た。
【0225】
上記アクリルポリマー1をトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(製品名「A-DCP」、新中村化学工業株式会社製)と固形分質量比60:40で混合し、これに重合開始剤(IGM Resins B.V.社製のOmnirad184およびBASFジャパン社製のIRGACURE(登録商標)OXE01の質量比50:50)4質量部と、レベリング剤(製品名「F-568」、DIC株式会社製)0.2質量部とを添加し、よく攪拌して、下地層用組成物1を調製した。
【0226】
(ハードコート層用組成物1の調製)
上記アクリルポリマー1をジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD DPHA」、日本化薬株式会社製)と固形分質量比45:55で混合し、これに重合開始剤(IGM Resins B.V.社製のOmnirad184およびDKSHジャパン社製のESACURE ONEの質量比50:50)4質量部と、レベリング剤(製品名「F-568」、DIC株式会社製)0.2質量部とを添加し、よく攪拌して、ハードコート層用組成物1を調製した。
【0227】
(光学フィルムの作製)
得られた下地層用組成物1を、ミヤバーにて大きさが210mm×297mm(A4サイズ)および厚みが50μmのシクロオレフィンポリマー系基材(製品名「ゼオノアフィルム(登録商標)ZF14-050」、日本ゼオン株式会社製)の表面に塗布して、第1塗膜を形成した。次いで、形成した第1塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を30秒間流通させることにより第1塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が120mJ/cmになるように照射して第1塗膜を半硬化させた。
【0228】
半硬化させた第1塗膜を形成した後、ミヤバーにて第1塗膜の表面にハードコート層用組成物1を塗布して、第2塗膜を形成した。次いで、形成した第2塗膜に対して、0.5m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させることにより第2塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)にて積算光量が200mJ/cmになるように照射して第1塗膜および第2塗膜を硬化させることにより、第1機能層としての膜厚が1μmの下地層、膜厚が0.4μmの混合層、第2機能層としての膜厚が3μmのハードコート層を形成した。これにより、シクロオレフィンポリマー系基材上に下地層、混合層、およびハードコート層をこの順に備える光学フィルムを得た。
【0229】
下地層の膜厚は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて、下地層の断面を撮影し、その断面の画像において下地層の膜厚を10箇所測定し、その10箇所の膜厚の算術平均値とした。具体的な断面写真の撮影方法は以下の通りとした。まず、1mm×10mmに切り出した光学フィルムを包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、このブロックから一般的な切片作製方法によって穴等がない均一な、厚さ70nm~300nm程度の切片を切り出した。切片の作製には、「ウルトラミクロトーム EM UC7」(ライカ マイクロシステムズ株式会社)等を用いた。そして、この穴等がない均一な切片を測定サンプルとした。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、測定サンプルの断面写真を撮影した。上記S-4800を用いて断面写真を撮影する際には、検出器を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流を「10μA」にして断面観察を行った。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら下地層の膜厚に応じて1万倍~10万倍の範囲内で適宜調節した。さらに、コンデンサレンズを「5.0」にし、またW.D.を「8.9mm」にした。また、混合層およびハードコート層の膜厚も、下地層の膜厚と同様の方法によって測定した。なお、実施例A2~A16および比較例A1~A6においても、実施例A1と同様の手法によって下地層、混合層、ハードコート層の膜厚を測定した。
【0230】
<実施例A2>
実施例A2においては、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)にて積算光量が200mJ/cmになるように紫外線を第1塗膜に照射して第1塗膜を半硬化させて、膜厚が0.04μmの混合層を形成したこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0231】
<実施例A3>
実施例A3においては、積算光量が200mJ/cmになるように紫外線を第1塗膜に照射して第1塗膜を半硬化させて、膜厚が0.2μmの混合層を形成したこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0232】
<実施例A4>
実施例A4においては、下地層の膜厚を1.2μmとしたこと、積算光量が70mJ/cmになるように紫外線を第1塗膜に照射して第1塗膜を半硬化させて、混合層の膜厚を1μmとしたこと、およびハードコート層の膜厚を3.1μmとしたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0233】
<実施例A5>
実施例A5においては、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように第1塗膜に照射して第1塗膜を半硬化させて、混合層の膜厚を0.5μmとしたこと、およびハードコート層の膜厚を8μmとしたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0234】
<実施例A6>
実施例A6においては、紫外線を積算光量が70mJ/cmになるように第1塗膜に照射して第1塗膜を半硬化させて、混合層の膜厚を1μmとしたこと、およびハードコート層の膜厚を0.5μmとしたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0235】
<実施例A7>
実施例A7においては、下地層用組成物1の代わりに、下地層用組成物2を用い、またハードコート層用組成物1の代わりに、ハードコート層用組成物2を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。下地層用組成物2およびハードコート層用組成物2は、以下のようにして調製された。
(下地層用組成物2の調製)
上記アクリルポリマー1をジシクロペンテニルアクリレート(製品名「FA-511AS」、日立化成株式会社製)と固形分質量比60:40で混合し、これに重合開始剤(IGM Resins B.V.社製のOmnirad184およびOmnirad819の質量比50:50)4質量部と、レベリング剤(製品名「F-568」、DIC株式会社製)0.2質量部とを添加し、よく攪拌して、下地層用組成物2を調製した。
【0236】
(ハードコート層用組成物2の調製)
上記アクリルポリマー1をウレタンアクリレート(製品名「ビームセット577」、荒川化学工業株式会社製)と固形分質量比45:55で混合し、これに重合開始剤(IGM Resins B.V.社製のOmnirad184およびOmnirad819の質量比50:50)4質量部と、レベリング剤(製品名「F-568」、DIC株式会社製)0.2質量部とを添加し、よく攪拌して、ハードコート層用組成物2を調製した。
【0237】
<実施例A8>
実施例A8においては、下地層用組成物1の代わりに、下地層用組成物2を用い、またハードコート層用組成物1の代わりに、ハードコート層用組成物2を用いて、膜厚が0.04μmの混合層を形成したこと以外は、実施例A2と同様にして光学フィルムを得た。
【0238】
<実施例A9>
実施例A9においては、下地層用組成物1の代わりに、下地層用組成物2を用い、またハードコート層用組成物1の代わりに、ハードコート層用組成物2を用いて、膜厚が0.2μmの混合層を形成したこと以外は、実施例A3と同様にして光学フィルムを得た。
【0239】
<実施例A10>
実施例A10においては、下地層用組成物1の代わりに、下地層用組成物3を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。下地層用組成物3は、以下のようにして調製された。
(下地層用組成物3の調製)
インドール系化合物(製品名「BONASORB UA-3912」、オリヱント化学工業株式会社製)(紫外線吸収剤2)をジシクロペンテニルアクリレート(製品名「FA-511AS」、日立化成株式会社製)と固形分質量比10:90で混合し、これに重合開始剤(IGM Resins B.V.社製のOmnirad184およびOmnirad819の質量比50:50)4質量部と、レベリング剤(製品名「F-568」、DIC株式会社製)0.2質量部とを添加し、よく攪拌して、下地層用組成物3を調製した。
【0240】
<実施例A11>
実施例A11においては、下地層用組成物1の代わりに、下地層用組成物4を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。下地層用組成物4は、以下のようにして調製された。
(下地層用組成物4の調製)
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(製品名「Tinuvin479」、BASF社製)(紫外線吸収剤3)をジシクロペンテニルアクリレート(製品名「FA-511AS」、日立化成株式会社製)と固形分質量比30:70で混合し、これに重合開始剤(IGM Resins B.V.社製のOmnirad184およびOmnirad819の質量比50:50)4質量部と、レベリング剤(製品名「F-568」、DIC株式会社製)0.2質量部とを添加し、よく攪拌して、下地層用組成物4を調製した。
【0241】
<実施例A12>
実施例A12においては、厚み50μmのシクロオレフィンポリマー系基材(製品名「ゼオノアフィルム(登録商標)ZF14-050」、日本ゼオン株式会社製)の代わりに、厚み50μmのシクロオレフィンポリマー系基材(製品名「ゼオノアフィルム(登録商標)ZF14-050」、日本ゼオン株式会社製)を、面内位相差が100nmとなるよう150℃で延伸することにより作製された厚み25μmのシクロオレフィンポリマー系基材を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0242】
<実施例A13>
実施例A13においては、シクロオレフィンポリマー系基材の代わりに、厚み60μmのトリアセチルセルロース基材(製品名「フジタックTD60UL」、富士フイルム株式会社製)を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0243】
<実施例A14>
実施例A14においては、シクロオレフィンポリマー系基材の代わりに、厚み25μmのトリアセチルセルロース基材(製品名「フジタックTJ25UL」、富士フイルム株式会社製)を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0244】
<実施例A15>
実施例A15においては、シクロオレフィンポリマー系基材の代わりに、厚み40μmのアクリル樹脂基材(製品名「OXIS(登録商標)-ZU(40μm)」、大倉工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0245】
<実施例A16>
実施例A16においては、シクロオレフィンポリマー系基材の代わりに、厚み30μmのアクリル樹脂基材(製品名「OXIS(登録商標)-ZU(30μm)」、大倉工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0246】
<比較例A1>
下地層用組成物1を、ミヤバーにて大きさが210mm×297mm(A4サイズ)および厚みが50μmのシクロオレフィンポリマー系基材(製品名「ゼオノアフィルム(登録商標)ZF14-050」、日本ゼオン株式会社製)の表面に塗布して、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を30秒間流通させることにより第1塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)にて積算光量が400mJ/cmになるように照射して第1塗膜を完全化させた。これにより、膜厚が1μmの下地層を形成した。
【0247】
完全硬化させた第1塗膜を形成した後、ミヤバーにて第1塗膜の表面にハードコート層用組成物1を塗布して、第2塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)にて積算光量が200mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚が3μmのハードコート層を形成した。これにより、シクロオレフィンポリマー系基材上に下地層およびハードコート層をこの順に備える光学フィルムを得た。なお、比較例A1に係る光学フィルムにおいては、混合層は形成されていなかった。
【0248】
<比較例A2>
比較例A2においては、下地層の膜厚を1.2μmとしたこと、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)にて積算光量が300mJ/cmになるように第1塗膜に照射して第1塗膜を半硬化させて、混合層の膜厚を0.01μmとしたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0249】
<比較例A3>
比較例A3においては、下地層の膜厚を1.2μmとしたこと、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)にて積算光量が200mJ/cmになるように第1塗膜に照射して第1塗膜を半硬化させて、混合層の膜厚を0.05μmとしたこと、およびハードコート層の膜厚を8μmとしたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0250】
<比較例A4>
比較例A4においては、紫外線を積算光量が50mJ/cmになるように第1塗膜に照射して第1塗膜を半硬化させて、混合層の膜厚を2.0μmとしたこと、およびハードコート層の膜厚を1.0μmとしたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0251】
<比較例A5>
比較例A5においては、下地層用組成物1の代わりに、下地層用組成物2を用い、またハードコート層用組成物1の代わりに、ハードコート層用組成物2を用いたこと以外は、比較例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0252】
<比較例A6>
比較例A6においては、シクロオレフィンポリマー系基材の代わりに、厚み50μmのポリエチレンテレフタレート基材(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして光学フィルムを得た。
【0253】
<最大吸収波長および波長380nm~500nmの吸光度>
紫外線吸収剤1(アクリルポリマー1)の最大吸収波長λmaxおよび波長380nm~500nmの吸光度を、分光光度計(製品名「UV-2450」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプおよび重水素ランプ)を用いて測定した。紫外線吸収剤1の最大吸収波長λmaxおよび吸光度の測定は、得られた紫外線吸収剤1を含む溶液を減圧乾燥にて脱溶剤した後に、濃度40ppmのクロロホルム溶液とした状態で行った。紫外線吸収剤2、3の最大吸収波長λmaxおよび吸光度の測定は、紫外線吸収剤2、3を濃度40ppmのクロロホルム溶液とした状態で行われた。結果は以下の通りであった。
【表1】
【0254】
<密着性>
実施例A1~A16および比較例A1~A6に係る光学フィルムにおいて、耐久試験を行い、耐久試験前後での密着性を評価した。具体的には、100mm×100mmの大きさに切り出した光学フィルムを耐久試験装置(製品名「恒温恒湿器PL-1KP」、エスペック株式会社製)内に配置して、温度85度および相対湿度85%の条件下で240時間放置する耐久試験を行った。光学フィルムは、欠点(異物の混入)がなく、クラックがなく、皺がなく、汚れがないものであり、また、カールのない平坦な状態で耐久試験装置内に配置された。
【0255】
そして、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、耐久試験前後の密着性を評価した。具体的には、まず、実施例A1~A16および比較例A1~A5に係る光学フィルムにおいて、カッターナイフを用いて、1mm間隔で相互に直交方向に10マス×10マスのグリッド状となるように切り傷を入れた。切り傷はハードコート層や下地層を貫通してシクロオレフィンポリマー系基材に届くよう十分深く入れた。グリッドが形成された硬化したハードコート層の表面に、当該グリッドを全て覆うように粘着テープ(型番「No.405」、ニチバン株式会社製、24mm幅)を貼り付け、貼り付けた粘着テープの一端を掴み、ハードコート層の表面より略垂直方向に保持して瞬間的に引き剥がして、密着性を評価した。評価基準は、以下の通りとした。なお、残存した個数が100である、すなわち剥離による脱落が無かった場合、100/100と表記し、全て脱落したものは0/100と表記した。
A:100/100
B:99/100~50/100
C:0/100~49/100
【0256】
<鉛筆硬度>
実施例A1~A16および比較例A~A6に係る光学フィルムの表面(ハードコート層の表面)における鉛筆硬度を、それぞれ測定した。なお、鉛筆硬度の測定の際には、光学フィルムから50mm×100mmの大きさに切り出したサンプルをガラス板上に折れやシワがないようニチバン株式会社製のセロテープ(登録商標)で固定した状態で、鉛筆硬度試験機(製品名「鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機(電動式)」、株式会社東洋精機製作所製)を用いて、温度23℃および相対湿度50%以下の環境下で、鉛筆(製品名「ユニ」、三菱鉛筆株式会社製)に300gの荷重をかけながら、鉛筆を速度3mm/秒で移動させた。鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験においてサンプルの表面に傷が付かなかった最も高い硬度とする。なお、鉛筆硬度の測定の際には、硬度が異なる鉛筆を複数本用いて行うが、鉛筆1本につき5回鉛筆硬度試験を行い、5回のうち4回以上蛍光灯下でサンプルの表面を透過観察した際にサンプルの表面に傷が視認されなかった場合には、この硬度の鉛筆においてはサンプルの表面に傷が付かなかったと判断する。
【0257】
<視認性評価>
実施例A1~A16および比較例A1~A6に係る光学フィルムを用いて、視認性評価を行った。具体的には、OLED表示装置(製品名「Galaxy SII」、Samsung社製)上に50mm×50mmの大きさに切り出した光学フィルムを配置し、この状態で点灯させて、暗所および明所(OLED表示装置周辺照度400ルクス)にて、偏光サングラス越しに表示画像の観察をそれぞれ行い、虹ムラの有無を以下の基準に従い評価した。観察は10人で行い、最多数の評価を観察結果としている。
A:偏光サングラス越しに虹むらが観察されず、視認性が良好であった。
B:偏光サングラス越しに虹むらが若干観察されたが、視認性は良好であった。
C:偏光サングラス越しに虹むらが強く観察され、視認性が劣っていた。
【0258】
<分光透過率>
実施例A1~A11、A13、A15に係る光学フィルムにおいて、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、波長380nm、400nm、410nm、および440nmにおける分光透過率を測定した。具体的には、50mm×50mmの大きさに切り出した光学フィルムを、透過率を0.5nm刻みにて測定可能の分光光度計(製品名「UV-2450」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプおよび重水素ランプ)内に光学フィルムの基材側が光源側となるように配置した。上記光学フィルムは、欠点(異物の混入)がなく、クラックがなく、皺がなく、汚れがないものであり、また、カールのない平坦な状態で分光光度計に保持された。この状態で、以下の測定条件で、波長380nm、400nm、410nm、および440nmにおいてそれぞれ前後1nmの間で最低5ポイント分の透過率を測定し、その平均値を算出することによって波長380nm、400nm、410nm、および440nmにおける分光透過率を求めた。波長380nm、400nm、410nm、および440nmにおける分光透過率は、3回測定して得られた値の算術平均値とした。
(測定条件)
・波長域:300nm~780nm
・スキャン速度:高速
・スリット幅:2.0
・サンプリング間隔:オート(0.5nm間隔)
・照明:C
・光源:D2およびWI
・視野:2°
・光源切替波長:360nm
・S/R切替:標準
・検出器:PM
・オートゼロ:ベースラインのスキャン後550nmにて実施
【0259】
<イエローインデックス(YI)>
実施例A1~A11、A13、A15に係る光学フィルムのイエローインデックスを測定した。具体的には、まず、50mm×50mmの大きさに切り出した光学フィルムを、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、分光光度計(製品名「UV-2450」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプおよび重水素ランプ)内に光学フィルムの基材側が光源側となるように配置した。光学フィルムは、欠点(異物の混入)がなく、クラックがなく、皺がなく、汚れがないものであり、また、カールのない平坦な状態で分光光度計に保持された。この状態で、波長300nm~780nmの透過率を測定した。そして、UV-2450に接続されたPC上で、上記透過率の測定データを読み込み、計算項目にて「YI」にチェックを入れることによってYIを得た。波長300nm~780nmの透過率の測定条件は、上記波長380nm等における分光透過率の測定条件と同様とした。
【0260】
<全光線透過率測定>
実施例A1~A11、A13、A15に係る光学フィルムにおいて、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、JIS K7361:1997に従って全光線透過率を測定した。全光線透過率は、光学フィルムを50mm×50mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で光透過性基材が光源側となるように設置し、光学フィルム1枚に対して3回測定して得られた値の算術平均値とした。
【0261】
<ヘイズ測定>
実施例A1~A11、A13、A15に係る光学フィルムにおいて、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、JIS K7136:2000に従ってヘイズ値(全ヘイズ値)を測定した。ヘイズ値は、光学フィルムを50mm×50mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で光透過性基材が光源側となるように設置し、光学フィルム1枚に対して3回測定して得られた値の算術平均値とした。
【0262】
<ブルーライトカット(遮蔽)率>
実施例A1~A11、A13およびA15に係る光学フィルムにおいて、ブルーライトカット率(BLカット率)を測定した。具体的には、まず、50mm×50mmの大きさに切り出した光学フィルムを、透過率を0.5nm刻みにて測定可能な分光光度計(製品名「UV-2450」、株式会社島津製作所製、光源:タングステンランプおよび重水素ランプ)内に光学フィルムの基材側が光源側となるように配置した。切り出した光学フィルムは、欠点(異物の混入)がなく、クラックがなく、皺がなく、汚れがないものであり、また、カールのない平坦な状態で分光光度計に保持された。この状態で、分光透過率の測定条件と同様の条件で、波長300nm~780nmにおいてそれぞれ前後1nmの間で最低5ポイント分の透過率を測定した。そして、上記数式(1)からブルーカット率を求めた。なお、ブルーライトカット率は、3回測定して得られた値の算術平均値とした。
【0263】
<耐光性試験>
実施例A1~A11、A13、A15に係る光学フィルムを、OLED表示装置に粘着層を介して貼り付けた状態で、耐光性試験を行い、耐光性試験前後の輝度を測定することによって、OLED表示装置が劣化しているか否かを確認した。まず、50mm×50mmの大きさに切り出した光学フィルムを、粘着層(製品名「パナクリーン(登録商標)PD-S1」、パナック株式会社製)を介して、OLED表示装置(製品名「Galaxy SII」、Samsung社製)に貼り付けた。なお、光学フィルムはハードコート層が光透過性基材よりも観察者側となるように貼り付けられた。これにより、観察者側に向けて、OLED表示装置、粘着層、および光学フィルムをこの順で積層した画像表示装置を得た。
【0264】
そして、OLED表示装置を点灯させて、耐光性試験前の輝度を測定した。輝度は、画像表示装置の表面(光学フィルムの表面)から出射する光の輝度を、画像表示装置の厚み方向から、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ株式会社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。次いで、耐光性試験機(製品名「紫外線フェードメータU48AU」、スガ試験機株式会社製)を用いて、42℃、相対湿度50%の環境下でカーボンアークランプからの光を画像表示装置に50時間照射する耐光性試験を行った。そして、耐光性試験後の画像表示装置を点灯させて、耐光性試験前の画像表示装置の輝度測定と同様の条件で、輝度を測定した。また、同様に、耐光性試験機(製品名「紫外線フェードメータU48AU」、スガ試験機株式会社製)を用いて、42℃、相対湿度50%の環境下でカーボンアークランプからの光を画像表示装置に100時間照射する耐光性試験を行い、耐光性試験後の画像表示装置を点灯させて、耐光性試験前の画像表示装置の輝度測定と同様の条件で、輝度を測定した。
【0265】
測定したこれらの輝度から、耐光性試験前の輝度に対する耐光性試験後の輝度の維持率をそれぞれ求めた。輝度維持率は、輝度維持率(%)をDとし、点灯時における耐光性試験前の画像表示装置の表面の輝度をEとし、点灯時における耐光性試験後の画像表示装置の表面の輝度をFとし、下記式によって求めた。
D=F/E×100
【0266】
そして、得られた輝度維持率から耐光性試験によってOLED表示装置が劣化したか否かを確認した。具体的には、輝度維持率が60%未満である場合には、OLED表示装置が劣化した評価し、輝度維持率が60%以上である場合には、OLED表示装置が劣化していないと評価した。評価基準は以下の通りとした。
A:OLED表示装置の劣化が確認されなかった。
B:OLED表示装置の劣化が確認された。
【0267】
<紫外線吸収剤を含む層のインデンテーション硬さ(HIT)>
実施例A1~A11、A13、A15に係る光学フィルムにおいて、紫外線吸収剤を含む層のインデンテーション硬さを測定した。すなわち、実施例A1~A11、A13、A15においては、紫外線吸収剤1を含むハードコート層のインデンテーション硬さを測定した。インデンテーション硬さ(HIT)は、HYSITRON(ハイジトロン)社製のTI950 TriboIndenterを用いて測定した。具体的には、まず、1mm×10mmに切り出した光学フィルムを包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、ナノインデンテーション法での硬度測定に適した測定用サンプルを作製した。測定用サンプルの作製には、「ウルトラミクロトーム EM UC7」(ライカ マイクロシステムズ株式会社)を用いた。次いで、測定用サンプルの圧子を押し込む面がステージの載置面と平行となるように測定サンプルをHYSITRON(ハイジトロン)社製のTI950 TriboIndenterのステージに固定した。そして、紫外線吸収剤を含むハードコート層の断面中央の平坦な部分に、荷重制御方法で、最大押し込み荷重が300μNとなるように、荷重速度10μN/秒でバーコビッチ型圧子を、30秒で荷重0μNから300μNまで負荷を加えながら紫外線吸収剤を含む層の断面中央部に押し込み、その後300μNで5秒間保持した後、30秒で300μNから0μNまで除荷した。そして、このときの押し込み荷重F(N)に対応する押し込み深さh(nm)を連続的に測定し、荷重-変位曲線を作成した。作成された荷重-変位曲線からインデンテーション硬さHITを、上記式(2)のように最大押し込み荷重Fmax(N)を、圧子と紫外線吸収剤を含む層が接している投影面積A(mm)で除した値により求めた。インデンテーション硬さは、10箇所測定して得られた値の算術平均値とした。なお、Aは上記式(3)によって求められる値であった。
【0268】
<耐擦傷性試験>
実施例A1~A11、A13、A15に係る光学フィルムの表面に対し耐擦傷性試験を行った。具体的には、まず、50mm×50mmの大きさに切り出した光学フィルムの裏面を、膜厚50μmの透明粘着層(屈折率:1.55、製品名「パナクリーン(登録商標)PD-S1」、パナック株式会社製)を介して、大きさ100mm×100mmおよび厚さ2mmのアクリル板(製品名「コモグラス DFA502K」、株式会社クラレ製)に貼り合せた。そして、光学フィルムの表面に対し、♯0000番のスチールウール(製品名「ボンスター」、日本スチールウール株式会社製)を用いて100g/cmの荷重を加えながら10往復擦る耐擦傷性試験を行い、目視により光学フィルムの表面に傷が確認されるか否か観察した。評価結果は、以下の通りとした。
A:傷が確認されなかった。
B:傷が若干確認されたが実用上問題のないレベルであった。
C:傷が明確に確認された。
【0269】
<フレキシブル性評価>
(1)折り畳み試験後の割れ・破断評価
実施例A1、A12~A16に係る光学フィルムにおいて、折り畳み試験を行い、割れおよび破断を評価した。具体的には、まず、光学フィルムから125mm×50mmの長方形状のサンプルを1枚切り出した。サンプルを切り出した後、折り畳み耐久試験機として、U字伸縮試験機(製品名「DLDMLH-FS」、ユアサシステム機器株式会社製)に、このサンプルの短辺(50mm)側を固定部でそれぞれ固定し、図2(C)に示したように対向する2つの辺部の最小の間隔が6mm(屈曲部の外径6mm)となるようにして取り付け、以下の条件で、このサンプルのハードコート層側の面を180°折り畳む試験(ハードコート層が内側となり、基材が外側となるように折り畳む試験)を10万回行った。
(折り畳み条件)
・往復速度:80rpm(回毎分)
・試験ストローク:60mm
・屈曲角度:180°
【0270】
そして、屈曲部に割れまたは破断が生じていないか調べた。評価基準は、以下の通りとした。なお、折り畳み試験前における各光学フィルムの屈曲部となる領域を観察したところ、割れや破断は観察されなかった。評価基準は、以下の通りであった。
(折り畳み性)
A:折り畳み試験後においても、屈曲部に割れまたは破断が生じていなかった。
B:折り畳み試験後において、屈曲部に割れが若干生じていたが、実使用上問題のないレベルであった。
C:折り畳み試験後において、屈曲部に割れまたは破断が生じていた。
【0271】
また、同様に、実施例A1、A12~A16に係る光学フィルムから上記と同様のサンプルを作製し、サンプルの短辺側を固定部でそれぞれ固定し、対向する2つの辺部の最小の間隔φが6mm(屈曲部の外径6mm)となるようにして取り付け、ハードコート層側が内側となるようにサンプルを20万回繰り返し180°折り畳む折り畳み試験を行い、同様にして、折り畳み試験後のサンプルの割れや破断を観察して、上記基準で評価した。さらに、実施例A1、A12~A16に係る光学フィルムから上記と同様のサンプルを作製し、サンプルの短辺側を固定部でそれぞれ固定し、対向する2つの辺部の最小の間隔φが4mmとなるようにして取り付け、ハードコート層側が内側となるようにサンプルを20万回繰り返し180°折り畳む折り畳み試験を行い、同様にして、折り畳み試験後のサンプルの割れや破断を観察して、上記基準で評価した。
【0272】
(2)折り畳み試験後の折り癖評価
実施例A1、A12~A16に係る光学フィルムにおいて、折り畳み試験後の外観を観察して、光学フィルムの屈曲部に折り癖が生じているか評価した。折り畳み試験は、上記折り畳み試験後の割れ・破断評価の欄に記載されている方法((1)最小間隔φ:6mm、折り畳み回数:10万回、(2)最小間隔φ:6mm、折り畳み回数:20万回、(3)最小間隔φ:4mm、折り畳み回数:20万回)と同様の方法によって行われた。折り癖の観察は、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、目視で行った。折り癖の観察の際には、白色照明の明室(800ルクス~2000ルクス)で、屈曲部を透過光および反射光によって満遍なく観察するともに、折り畳んだときに屈曲部における内側であった部分および外側であった部分を両方観察した。折り癖の観察においては、観察すべき位置が容易に把握できるように、折り畳み試験前のサンプルをU字伸縮試験機の固定部に設置し、1回折り畳んだときに、図3に示したように、屈曲部における折り畳み方向に直交する方向に位置する両端に、屈曲部であることを示す目印を油性ペンで付けておいた。また、折り畳み試験後に、折り畳み試験後にU字伸縮試験機から取り外した状態で、屈曲部の上記両端の目印同士を結んだ線を油性ペンで引いておいた。そして、折り癖の観察においては、屈曲部の上記両端の目印とこの目印同士を結ぶ線とで形成される領域である屈曲部全体を目視観察した。なお、折り畳み試験前における各光学フィルムの屈曲部となる領域を観察したところ、折り癖は観察されなかった。評価基準は、以下の通りであった。
A:折り畳み試験後においても、光学フィルムに折り癖が観察されなかった。
B:折り畳み試験後において、光学フィルムに折り癖が若干観察されたが、実使用上問題のないレベルであった。
C:折り畳み試験後において、光学フィルムに折り癖が観察された。
【0273】
(3)折り畳み試験後のマイクロクラック評価
実施例A1、A12~A16に係る光学フィルムにおいて、折り畳み試験後の外観を観察して、光学フィルムの屈曲部にマイクロクラックが生じているか評価した。折り畳み試験は、上記折り畳み試験後の割れ・破断評価の欄に記載されている方法(最小間隔φ:6mm、折り畳み回数:10万回)と同様の方法によって行われた。マイクロクラックの観察は、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、デジタルマイクロスコープ(製品名「VHX-5000」、キーエンス株式会社製)を用いて行った。具体的には、まず、折り畳み試験後のサンプルをゆっくり広げ、マイクロスコープのステージにテープでサンプルを固定した。このとき、折り癖が強い場合には、観察部分がなるべく平らになるようにする。ただし、サンプルの中央付近の観察予定部(屈曲部)は手で触れず、力が加わらない程度する。次いで、折り畳んだときの内側となる部分および外側となる部分を両方観察した。マイクロクラックの観察は、デジタルマイクロスコープの照明としてリング照明を選択し、倍率200倍で、暗視野および反射光で行った。マイクロクラックの観察においては、観察すべき位置が容易に把握できるように、折り畳み試験前のサンプルをU字伸縮試験機の固定部に設置し、1回折り畳んだときに、図3に示したように、屈曲部における折り畳み方向と直交する方向に位置する両端に、屈曲部であることを示す目印を油性ペンで付けておいた。また、折り畳み試験後に、折り畳み試験後にU字伸縮試験機から取り外した状態で、屈曲部の上記両端の目印同士を結んだ線を油性ペンで引いておいた。そして、マイクロクラックの観察においては、マイクロスコープ視野範囲の中心が屈曲部の中央となるようにマイクロスコープの位置を合わせた。なお、折り畳み試験前における各光学フィルムの屈曲部となる領域を観察したところ、マイクロクラックは観察されなかった。評価基準は、以下の通りであった。
(マイクロクラック)
A:折り畳み試験後においても、光学フィルムにマイクロクラックが観察されなかった。
B:折り畳み試験後において、光学フィルムにマイクロクラックが若干観察されたが、実使用上問題のないレベルであった。
C:折り畳み試験後において、光学フィルムにマイクロクラックが観察された。
【0274】
以下、結果を表2~表5に示す。
【表2】
【0275】
【表3】
【0276】
【表4】
【0277】
【表5】
【0278】
表2に示されたように、比較例A1、A2、A5に係る光学フィルムにおいては、耐久試験前であっても、下地層とハードコート層の界面で剥離したので、耐久試験前の密着性(初期密着性)が不良であった。また、比較例A3に係る光学フィルムにおいては、初期密着性は良好であったが、耐久試験後の密着性が不良であった。さらに比較例A4に係る光学フィルムにおいては、鉛筆硬度が劣っており、比較例A6に係る光学フィルムにおいては、視認性評価に劣っていた。これに対し、実施例A1~A16に係る光学フィルムにおいては、耐久試験前においては、耐久試験前の密着性(初期密着性)が良好であった。これは、下地層とハードコート層の間に下地層の成分とハードコート層の成分を含む混合層が形成されているとともに、下地層、混合層およびハードコート層の合計膜厚に対する混合層の膜厚の割合が、0.6%以上であったからであると考えられる。また、実施例A1、A3~A7、A9~A16に係る光学フィルムにおいては、耐久試験前のみならず、耐久試験後の密着性も良好であった。これは、下地層、混合層およびハードコート層の合計膜厚に対する混合層の膜厚の割合が、1%以上であったからであると考えられる。また、実施例A1~A16に係る光学フィルムにおいては、鉛筆硬度に優れていた。これは、下地層、混合層およびハードコート層の合計膜厚に対する混合層の膜厚の割合が、40%以下であったからであると考えられる。また、実施例A1~A16に係る光学フィルムにおいては、視認性評価に優れていた。これは、光透過性基材として、シクロオレフィンポリマー系基材、トリアセチルセルロース基材、またはアクリル樹脂基材を用いていたからであると考えられる。
【0279】
<<実施例Bおよび比較例B>>
<実施例B1>
(ハードコート層用組成物3の調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製)および実施例A1の欄で記載した上記アクリルポリマー1を固形分質量比20:80で混ぜ合わせ、固形分25%まで溶剤(メチルエチルケトンおよびトルエンの質量比80:20)にて希釈して樹脂組成物を調製した。次いで、得られた樹脂組成物160質量部に対し、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製のOmnirad184およびOmnirad819の質量比50:50)4質量部と、レベリング剤(製品名「F568」、DIC株式会社製)0.2質量部とを混ぜ合わせ、よく攪拌して、ハードコート層用組成物3を調製した。
【0280】
(ハードコート層用組成物4の調製)
ウレタンアクリレート系樹脂(製品名「ビームセット577」、荒川化学工業株式会社製)を、固形分50%まで溶剤(メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン、質量比50:50)にて希釈して樹脂組成物を調製した。次いで、得られた樹脂組成物200質量部に対し、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製のOmnirad184)4質量部と、レベリング剤(製品名「F568」、DIC株式会社製)0.2質量部と、シリカナノ粒子(製品名「SIRMIBK-E65」、CIKナノテック株式会社製)3質量部とを混ぜ合わせ、よく攪拌することで、ハードコート層用組成物4を調製した。
【0281】
(光学フィルムの作製)
上記ハードコート層用組成物3を、ミヤバーにて大きさが210mm×297mm(A4サイズ)および厚みが25μmのトリアセチルセルロース系基材(製品名「フジタックTJ25UL」、富士フイルム株式会社製)の表面に塗布して、第1塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を30秒間流通させることにより第1塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が120mJ/cmになるように照射して第1塗膜を半硬化させた。
【0282】
半硬化させた第1塗膜を形成した後、ミヤバーにて第1塗膜の表面にハードコート層用組成物4を塗布して、第2塗膜を形成した。次いで、形成した第2塗膜に対して、0.5m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)にて積算光量が200mJ/cmになるように照射して第1塗膜および第2塗膜を硬化させることにより、硬化した膜厚3μmの第1塗膜および硬化した膜厚3μmの第2塗膜からなる膜厚6μmのハードコート層を形成した。これにより、トリアセチルセルロース系基材上にハードコート層を備える光学フィルムを得た。
【0283】
ハードコート層の膜厚は、実施例A1の欄に記載した下地層の膜厚と同様の方法によって測定するものとする。なお、実施例B2~B11および比較例B1~B6においても、実施例B1と同様の手法によってハードコート層の膜厚を測定した。
【0284】
<実施例B2>
実施例B2においては、ハードコート層用組成物3の代わりに、ハードコート層用組成物5を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして光学フィルムを得た。
【0285】
(ハードコート層用組成物5)
ジシクロペンテニルアクリレート(製品名「FA-511AS」、日立化成株式会社製)および上記アクリルポリマー1を固形分質量比20:80で混ぜ合わせ、固形分25%まで溶剤(メチルエチルケトンおよびトルエンの質量比80:20)にて希釈して樹脂組成物を調製した。次いで、得られた樹脂組成物160質量部に対し、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製のOmnirad184およびOmnirad819の質量比50:50)4質量部と、レベリング剤(製品名「F568」、DIC株式会社製)0.2質量部とを混ぜ合わせ、よく攪拌して、ハードコート層用組成物5を調製した。
【0286】
<実施例B3>
実施例B3においては、膜厚6μmのハードコート層の代わりに、硬化した膜厚1μmの第1塗膜と硬化した膜厚1μmの第2塗膜からなる膜厚2μmのハードコート層を形成したこと以外は、実施例B1と同様にして光学フィルムを得た。
【0287】
<実施例B4>
実施例B4においては、膜厚6μmのハードコート層の代わりに、硬化した膜厚5μmの第1塗膜と硬化した膜厚5μmの第2塗膜からなる膜厚10μmのハードコート層を形成したこと以外は、実施例B1と同様にして光学フィルムを得た。
【0288】
<実施例B5>
実施例B5においては、厚み25μmのトリアセチルセルロース系基材(製品名「フジタックTJ25UL」、富士フイルム株式会社製)の代わりに、厚み60μmのトリアセチルセルロース基材(製品名「フジタックTD60UL」、富士フイルム株式会社製)を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして光学フィルムを得た。
【0289】
<実施例B6>
実施例B6においては、トリアセチルセルロース系基材の代わりに、厚み50μmのシクロオレフィンポリマー系基材(製品名「ゼオノアフィルム(登録商標)ZF14-050」、日本ゼオン株式会社製)を、面内位相差が100nmとなるよう150℃で延伸することにより作製された厚み25μmのシクロオレフィンポリマー系基材を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして光学フィルムを得た。
【0290】
<実施例B7>
実施例B7においては、トリアセチルセルロース系基材の代わりに、厚み50μmのシクロオレフィンポリマー系基材(製品名「ゼオノアフィルム(登録商標)ZF14-050」、日本ゼオン株式会社製)を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして光学フィルムを得た。
【0291】
<実施例B8>
実施例B8においては、トリアセチルセルロース系基材の代わりに、厚み30μmのアクリル樹脂基材(製品名「OXIS(登録商標)-ZU(30μm)」、大倉工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして光学フィルムを得た。
【0292】
<実施例B9>
実施例B9においては、トリアセチルセルロース系基材の代わりに、厚み40μmのアクリル樹脂基材(製品名「OXIS(登録商標)-ZU(40μm)」、大倉工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして光学フィルムを得た。
【0293】
<実施例B10>
実施例B10においては、トリアセチルセルロース系基材の代わりに、以下の方法によって作製された厚み40μmのポリエチレンテレフタレート基材(PET基材、面内位相差Re:600nm、Nz係数:20)を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして光学フィルムを得た。
【0294】
(PET基材の作製)
まず、1kgのPET(融点258℃、吸収中心波長:320nm)と、0.1kgの紫外線吸収剤(2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン)とを、混練機で280℃にて溶融混合し、紫外線吸収剤を含有したペレットを作製した。そのペレットと、融点258℃のPETを単軸押出機に投入し、280℃で溶融混練し、Tダイから押出し、25℃に表面温度を制御したキャストドラム上にキャストしてキャスティングフィルムを得た。キャスティングフィルム中の紫外線吸収剤の量はPET100質量部に対して1質量部であった。
【0295】
得られたキャスティングフィルムを、95℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間400mm(始点が延伸ロールA、終点が延伸ロールBであり、延伸ロールAおよびBは、それぞれ2本のニップロールを有する)の150mmの地点でのフィルム温度が103℃となるように、フィルム両面から乱流が生じるようにラジエーションヒーターにより加熱しながら、フィルムを流れ方向に3.5倍延伸し、その後一旦冷却した。
【0296】
続いて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、フィルム両面のコロナ放電処理面に、ガラス転移温度18℃のポリエステル樹脂、ガラス転移温度82℃のポリエステル樹脂、および平均粒径100nmのシリカ粒子を含む易滑層塗布液をインラインコーティングし、易滑層を形成した。
【0297】
次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、95℃の熱風で予熱後、1段目105℃、2段目140℃の温度でフィルム幅方向に3.8倍延伸した。ここで、横延伸区間を2分割した場合、横延伸区間中間点におけるフィルムの延伸量(計測地点でのフィルム幅-延伸前フィルム幅)は、横延伸区間終了時の延伸量の80%となるように2段階で延伸した。横延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で段階的に180℃から熱処理温度245℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度条件で幅方向に1%の弛緩処理を、さらに100℃まで急冷した後に幅方向に1%の弛緩処理を施し、その後、巻き取り、二軸延伸されたPET基材を得た。
【0298】
<実施例B11>
実施例B11においては、トリアセチルセルロース系基材の代わりに、厚み100μmのポリエチレンテレフタレート基材(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして光学フィルムを得た。
【0299】
<比較例B1>
上記ハードコート層用組成物3を、ミヤバーにて大きさが210mm×297mm(A4サイズ)および厚みが25μmのトリアセチルセルロース系基材(製品名「フジタックTJ25UL」、富士フイルム株式会社製)の表面に塗布して、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を30秒間流通させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)にて積算光量が500mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させた。これにより、トリアセチルセルロース系基材上に膜厚が6μmのハードコート層を備える光学フィルムを得た。
【0300】
<比較例B2>
比較例B2においては、ハードコート層用組成物3の代わりにハードコート層用組成物5を用いたこと以外は、比較例B1と同様にして光学フィルムを得た。
【0301】
<比較例B3>
比較例B3においては、ハードコート層用組成物3の代わりにハードコート層用組成物4を用い、かつハードコート層用組成物4の代わりにハードコート層用組成物3を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして光学フィルムを得た。
【0302】
<比較例B4>
比較例B4においては、第1塗膜を硬化させる際、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)にて積算光量が400mJ/cmになるように照射したこと以外は、実施例B1と同様にして光学フィルムを得た。
【0303】
<比較例B5>
比較例B5においては、ハードコート層用組成物3の代わりにハードコート層用組成物4を用い、かつハードコート層用組成物4の代わりにハードコート層用組成物5を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして光学フィルムを得た。
【0304】
<比較例B6>
まず、以下のハードコート層用組成物6を用意した。
(ハードコート層用組成物6)
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(製品名「A-DCP」、新中村化学工業株式会社製)および上記アクリルポリマー1を固形分質量比20:80で混ぜ合わせ、固形分25%まで溶剤(メチルエチルケトンおよびトルエンの質量比80:20)にて希釈して樹脂組成物を調製した。次いで、得られた樹脂組成物160質量部に対し、重合開始剤(IGM Resins B.V.社製のOmnirad184およびBASFジャパン社製のIRGACURE(登録商標)OXE01の質量比50:50)4質量部と、レベリング剤(製品名「F-568」、DIC株式会社製)0.2質量部とを添加し、よく攪拌して、ハードコート層用組成物6を調製した。
【0305】
ハードコート層用組成物6を用意した後、ハードコート層用組成物6を、ミヤバーにて大きさが210mm×297mm(A4サイズ)および厚みが25μmのトリアセチルセルロース系基材(製品名「フジタックTJ25UL」、富士フイルム株式会社製)の表面に塗布して、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を30秒間流通させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)にて積算光量が400mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させて、硬化した膜厚3μmの第1塗膜を形成した。
【0306】
硬化した第1塗膜を形成した後、第1塗膜の表面に上記ハードコート層用組成物4を塗布して、第2塗膜を形成した。次いで、形成した第2塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を30秒間流通させることにより第2塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)にて積算光量が200mJ/cmになるように照射して第2塗膜を硬化させて、硬化した膜厚3μmの第2塗膜を形成した。これにより、トリアセチルセルロース系基材上に、硬化した第1塗膜および硬化した第2塗膜からなる膜厚が6μmのハードコート層を備える光学フィルムを得た。なお、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて、ハードコート層中に界面が存在しているか観察したところ、第1ハードコート層と第2ハードコート層の間に界面が観察された。
【0307】
<TOF-SIMSによるハードコート層中の成分の強度測定>
実施例B1~B11および比較例B1~B6に係る光学フィルムにおいて、飛行時間型二次イオン質量分析装置(製品名「TOF.SIMS5」、ION-TOF社製)を用いて、ハードコート層中の各成分由来の二次イオンの強度を測定した。具体的には、まず、10mm×10mmの大きさに切り出した光学フィルムを飛行時間型二次イオン質量分析装置の試料室に一次イオンがハードコート層の表面に照射されるように設置した。その後、以下の測定条件で各成分に由来する二次イオンの強度を測定し、デプスプロファイルを得た。そして、このデプスプロファイルから、ハードコート層の深さ方向にハードコート層を二等分する二等分線およびハードコート層の裏面を特定し、ハードコート層の表面を含む厚さ0.3μmの第1領域と、ハードコート層の深さ方向にハードコート層を二等分する二等分線を含む厚さ0.3μmの第2領域と、ハードコート層の裏面を含む厚さ0.3μmの第3領域と、第1領域のトリアセチルセルロース系基材側の境界からハードコート層の裏面までの第4領域とを求めた。そして、第1領域~第3領域における紫外線吸収剤1由来の二次イオンの強度IU1、IU2、IU3、フッ素含有化合物由来の二次イオンの強度IF1、IF2、IF3、およびケイ素含有化合物由来の二次イオンの強度IS1、IS2、IS3を求め、強度比IU2/IU1、IU3/IU2、IU3/IU1、IF1/IF2、IF1/IF3、IS1/IS2、IS1/IS3を求めた。なお、紫外線吸収剤1由来の二次イオンはC とし、アクリル酸エステルや酢酸化合物由来の二次イオンはC とし、フッ素含有化合物由来の二次イオンはFとし、ケイ素含有化合物由来の二次イオンとしてSiO とした。また、窒素を含む有機物由来の二次イオンとしてCNの強度を測定した。また、ハードコート層の裏面は、デプスプロファイルにおけるアクリル酸エステルや酢酸化合物由来の二次イオンであるC と紫外線吸収剤1由来の二次イオンであるC の交点の位置とした。また、第2領域は、二等分線が第2領域の中央に位置するように設定された。
(測定条件)
・2次イオン極性:負
・質量範囲(m/z):0~3000
・ラスターサイズ:200μm□
・スキャン数:1scan/cycle
・ピクセル数(1辺):128ピクセル
・測定真空度(試料導入前):4×10-7Pa以下
・帯電中和:有り
・後段加速:10kV
・1次イオン:Bi ++
・1次イオン加速電圧:30kV
・パルス幅:11.3ns
・バンチング:有り(高質量分解能測定)
・エッチングイオン:Arガスクラスターイオンビーム(Ar-GCIB)
・エッチングイオン加速電圧:20kV
・Arクラスターサイズ(中央値):約1400
【0308】
<鉛筆硬度>
実施例B1~B11および比較例B1~B6に係る光学フィルムの表面(ハードコート層の表面)における鉛筆硬度をそれぞれ測定した。鉛筆硬度試験は、50mm×100mmの大きさに切り出した光学フィルムの表面に対し鉛筆硬度試験機(製品名「鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機(電動式)」、株式会社東洋精機製作所製)を用いて、温度23℃および相対湿度50%以下の環境下で、鉛筆(製品名「ユニ」、三菱鉛筆株式会社製)に300gの荷重を加えながら3mm/秒の移動速度で移動させることにより行うものとする。鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験において光学フィルム10の表面に傷が付かなかった最も高い硬度とした。なお、鉛筆硬度の測定の際には、硬度が異なる鉛筆を複数本用いて行うが、鉛筆1本につき5回鉛筆硬度試験を行い、5回のうち4回以上光学フィルムの表面に傷が付かなかった場合には、この硬度の鉛筆においては光学フィルムの表面に傷が付かなかったと判断した。
【0309】
<耐擦傷性試験>
実施例B1~B11および比較例B1~B6に係る光学フィルムの表面(ハードコート層の表面)において、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、耐擦傷性試験を行った。具体的には、まず、50mm×50mmの大きさに切り出した光学フィルムの表面に対し、♯0000番のスチールウール(製品名「ボンスター」、日本スチールウール株式会社製)を用いて100g/cmの荷重を加えながら10往復擦る耐擦傷性試験を行い、目視により光学フィルムの表面に傷が確認されるか否か観察した。評価結果は、以下の通りとした。
A:傷が確認されなかった。
B:傷が若干確認されたが実使用上問題のないレベルであった。
C:傷が明確に確認された。
【0310】
<耐久試験>
実施例B1~B11および比較例B1~B6に係る光学フィルムにおいて、耐久試験を行った。具体的には、100mm×100mmの大きさに切り出した光学フィルムを耐久試験装置(製品名「恒温恒湿器PL-1KP」、エスペック株式会社製)内に配置して、温度85℃および相対湿度85%の条件下で240時間放置する耐久試験を行った。光学フィルムは、欠点(異物の混入)がなく、クラックがなく、皺がなく、汚れがないものであり、また、カールのない平坦な状態で耐久試験装置内に配置された。
【0311】
耐久試験後、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、ハードコート層の表面に析出物が存在しているか、およびハードコート層にクラックが生じているか評価した。評価基準は、以下の通りとした。
A:析出物の存在およびクラックのいずれも確認されなかった。
B:析出物の存在およびクラックのいずれかが確認された。
C:析出物の存在およびクラックのいずれも確認された。
【0312】
<分光透過率>
実施例B1~B4、B6、B8、B10に係る光学フィルムにおいて、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、波長380nm、400nm、410nm、および440nmにおける分光透過率を、実施例Aの欄に記載された分光透過率と同様の方法および同様の測定条件で測定した。
【0313】
<イエローインデックス(YI)>
実施例B1~B4、B6、B8、B10に係る光学フィルムのイエローインデックスを、実施例Aの欄に記載されたイエローインデックスと同様の方法および同様の測定条件で測定した。
【0314】
<全光線透過率測定>
実施例B1~B4、B6、B8、B10に係る光学フィルムにおいて、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、JIS K7361:1997に従って全光線透過率を測定した。具体的には、全光線透過率は、実施例Aの欄に記載された全光線透過率と同様の方法および同様の測定条件で測定した。
【0315】
<ヘイズ測定>
実施例B1~B4、B6、B8、B10に係る光学フィルムにおいて、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、JIS K7136:2000に従ってヘイズ値(全ヘイズ値)を測定した。具体的には、全光線透過率は、実施例Aの欄に記載されたヘイズ値と同様の方法および同様の測定条件で測定した。
【0316】
<視認性評価>
実施例B1~B4、B6、B8、B10に係る光学フィルムにおいて、視認性評価を行った。具体的には、視認性評価は、実施例Aの欄に記載された視認性評価と同様の方法および同様の基準で評価した。
【0317】
<フレキシブル性評価>
(1)折り畳み試験後の割れ・破断評価
実施例B1、B5~B11に係る光学フィルムにおいて、折り畳み試験を行い、割れおよび破断を評価した。具体的には、折り畳み試験は、実施例Aの折り畳み試験後の割れ・破断評価の欄に記載された折り畳み試験と同様の方法および同様の測定条件で行われた。また、割れ・破断評価は、実施例Aの折り畳み試験後の割れ・破断評価の欄に記載された評価方法および同様の基準で評価した。
【0318】
(2)折り畳み試験後の折り癖評価
実施例B1、B5~B11に係る光学フィルムにおいて、折り畳み試験後の外観を観察して、光学フィルムの屈曲部に折り癖が生じているか評価した。具体的には、折り畳み試験は、実施例Aの折り畳み試験後の折り癖評価の欄に記載された折り畳み試験と同様の方法および同様の測定条件で行われた。また、折り癖評価は、実施例Aの折り畳み試験後の折り癖評価の欄に記載された評価方法および同様の基準で評価した。
【0319】
(3)折り畳み試験後のマイクロクラック評価
実施例B1、B5~B11に係る光学フィルムにおいて、折り畳み試験後の外観を観察して、光学フィルムの屈曲部にマイクロクラックが生じているか評価した。具体的には、折り畳み試験は、実施例Aの折り畳み試験後のマイクロクラック評価の欄に記載された折り畳み試験と同様の方法および同様の測定条件で行われた。また、マイクロクラック評価は、実施例Aの折り畳み試験後のマイクロクラック評価の欄に記載された評価方法および同様の基準で評価した。
【0320】
以下、結果を表6~表9に示す。また、図15に、実施例B1に係る光学フィルムにおける飛行時間型二次イオン質量分析法により測定されたデプスプロファイルを示した。
【表6】
【0321】
【表7】
【0322】
【表8】
【0323】
【表9】
【0324】
表6に示されたように、比較例B1~B6に係る光学フィルムにおいては、IU2/IU1が1.1以上4.0以下の範囲外であり、またはIU3/IU2が1.2以上4.0以下の範囲外であったので、鉛筆硬度、耐擦傷性および耐久性に劣っていた。これに対し、実施例B1~B11に係る光学フィルムにおいては、IU2/IU1が1.1以上4.0以下であり、かつIU3/IU2が1.2以上4.0以下であったので、薄型化を図りつつ、良好な鉛筆硬度、良好な耐擦傷性および良好な耐久性を得ることができた。なお、窒素を含む有機物由来の二次イオンとしてのCNの強度も、C の強度と同様の結果が得られた。また、図15のグラフから、第1領域における紫外線吸収剤1由来の二次イオンの最小強度は、第1領域のトリアセチルセルロース系基材側の境界から裏面までの第4領域における紫外線吸収剤1由来の二次イオンの最小強度よりも小さいことが理解できる。
【符号の説明】
【0325】
10、100…光学フィルム
10A…表面
11、101…光透過性基材
12…第1機能層
13…第2機能層
14…混合層
21…第1塗膜
22…第2塗膜
30…偏光板
31…偏光子
40、130…画像表示装置
50…表示素子
102…機能層

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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