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特許7600530光源装置、プロジェクタおよび機械加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】光源装置、プロジェクタおよび機械加工装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20241210BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20241210BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20241210BHJP
   H01S 5/02212 20210101ALI20241210BHJP
   H01S 5/02257 20210101ALI20241210BHJP
   H01S 5/02315 20210101ALI20241210BHJP
   H01S 5/0239 20210101ALI20241210BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B3/00 A
G02B6/32
H01S5/02212
H01S5/02257
H01S5/02315
H01S5/0239
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020052235
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152567
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】若林 直樹
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/189983(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1617403(CN,A)
【文献】国際公開第2017/119111(WO,A1)
【文献】特開2015-072956(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0257387(US,A1)
【文献】特開2020-024242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
6/30-6/34
6/42-6/43
JDreamIII
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザダイオード素子および該各レーザダイオード素子を収納するパッケージを有する光源と、
前記各レーザダイオード素子から発せられるレーザ光の光路に配置されたコリメータと、
前記コリメータに対して、前記各レーザダイオード素子の光軸方向下流側に配置され、前記レーザ光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズに対して、前記光軸方向下流側に配置された導光体と、
前記コリメータを通過した前記レーザ光のSLOW軸方向のビーム径がFAST軸方向のビーム径に近づくように、前記コリメータと前記集光レンズとの間に配置された拡大光学系と、を備える光源装置において、
前記パッケージを前記SLOW軸及び前記FAST軸方向にに配置した光源装置。
【請求項2】
隣り合う前記レーザダイオード素子同士の中心間距離は、前記FAST軸方向と前記SLOW軸方向において互いに等しく、
前記拡大光学系は、前記コリメータ透過後の前記FAST軸方向のビーム径が、前記パッケージの外径と等しいか、または、前記中心間距離と等しくなるように配置された請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記拡大光学系は、前記拡大光学系透過後の前記SLOW軸方向のビーム径を、前記拡大光学系透過前の前記SLOW軸方向のビーム径の1.5~6.0倍の範囲で拡大する請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記拡大光学系は、前記レーザ光が入射する入射面が凹面を有し、前記レーザ光が出射する出射面が平面で構成された第1レンズと、
前記第1レンズに対して、前記光軸方向下流側に配置され、前記レーザ光が入射する入射面が平面で構成され、前記レーザ光が出射する出射面が凸面を有する第2レンズと、を備える請求項1~3のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記第1レンズは、前記FAST軸方向よりも前記SLOW軸方向にパワーを有するレンズであり、
前記第2レンズは、前記レーザ光を平行光となるように整形するレンズである請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記第2レンズは、該第2レンズを透過後の前記レーザ光の拡がり角を1mm rad以下に設定する請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記コリメータと前記集光レンズとの間に配置され、前記コリメータ透過後の前記FAST軸方向のビーム径を縮小する縮小光学系を備える請求項1~6のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記縮小光学系は、前記レーザ光が入射する入射面が凸面で構成され、前記レーザ光が出射する出射面が平面で構成された縮小用第1レンズと、
前記縮小用第1レンズに対して、前記光軸方向下流側に配置され、前記レーザ光が入射する入射面が凹面で構成され、前記レーザ光が出射する出射面が平面で構成された縮小用第2レンズとを有する請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光源装置を備えるプロジェクタ。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光源装置を備える機械加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、プロジェクタおよび機械加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の半導体レーザ光源から出射された各レーザビームを光ファイバに入射させて1本に合波する合波光学系が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の合波光学系(以下「従来例1の合波光学系」と言う)は、行列状に配置された複数の半導体レーザ光源と、各半導体レーザ光源から出射したレーザビームを平行光とする複数のコリメータレンズと、コリメータレンズを通過したレーザビームを、SLOW軸方向を含む面内およびFAST軸方向を含む面内の一方のみで集光する第1集光レンズ(シリンドリカルレンズ)と、第1集光レンズを通過したレーザビームを、第1集光レンズとともに前記2つの面内の双方で集光する第2集光レンズ(アナモルフィックレンズ)と、第2集光レンズを通過した各レーザビームが入射する光ファイバとで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-163947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合波光学系としては、従来例1の合波光学系の他に、例えば、図7に示すような合波光学系(以下「従来例2の合波光学系」と言う)も考えられる。従来例2の合波光学系は、複数の半導体レーザ光源20と、コリメータレンズ30と、FAST軸側の各レーザビームの幅を縮小する縮小光学系40と、SLOW軸側の各レーザビームの間隔を狭める、すなわち、各レーザビームを光ファイバ60の光軸側に寄せる複数のミラー70と、集光レンズ50と、光ファイバ60とを備える。
【0005】
縮小光学系40は、平凸レンズ401と平凹レンズ402とで構成される。
また、各ミラー70は、SLOW軸方向に沿って間隔を置いて配置される。従来例2の合波光学系の場合、各ミラー70の大きさによっては、その大きさの影響を受けて、SLOW軸側に隣り合う半導体レーザ光源20同士の間隔が広がってしまう。なお、合波光学系の使用用途によっては、半導体レーザ光源20同士の間隔は、広いよりも、狭い方が好ましい場合がある。
【0006】
また、SLOW軸側では、コリメータを通過した後のビーム径(幅)がFAST軸側よりも小さいので、コリメートビームの拡がり角がFAST軸側よりも大きくなる。従って、SLOW軸側では、光ファイバへの入射が不十分(困難)となる。その結果、光ファイバでの出力が低下する。
【0007】
本発明の目的は、レーザダイオード素子同士の間隔をできる限り小さくことができるとともに、SLOW軸方向でのレーザ光の導光体への入射を十分に行うことができる光源装置、プロジェクタおよび機械加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、複数のレーザダイオード素子および該各レーザダイオード素子を収納するパッケージを有する光源と、
前記各レーザダイオード素子から発せられるレーザ光の光路に配置されたコリメータと、
前記コリメータに対して、前記各レーザダイオード素子の光軸方向下流側に配置され、前記レーザ光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズに対して、前記光軸方向下流側に配置された導光体と、
前記コリメータを透過した前記レーザ光のSLOW軸方向のビーム径がFAST軸方向のビーム径に近づくように、前記コリメータと前記集光レンズとの間に配置された拡大光学系と、を備える光源装置に関する。
【0009】
本発明の態様は、上記の光源装置を備えるプロジェクタに関する。
本発明の態様は、上記の光源装置を備える機械加工装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザダイオード素子をできる限り詰めて、すなわち、隙間なく密に配置することができる。これにより、レーザダイオード素子同士の間隔をできる限り小さくことができ、導光体に対する各レーザダイオード素子のレーザ光の入射角を小さく抑えることができる。これにより、各レーザダイオード素子の位置に関わらず、当該レーザダイオード素子から発せられるレーザ光は、導光体に入射し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の光源装置の第1実施形態を示す概略構成図である。
図2図1に示す光源装置が備える光源の縦断面図である。
図3図2中の光源を矢印A方向から見た図である。
図4図1に示す光源装置のSLOW軸側におけるレーザ光の広がり状態を示す図である。
図5】拡大光学系を省略した場合のSLOW軸側におけるレーザ光の広がり状態を示す図である。
図6】本発明の光源装置の第2実施形態を示す概略構成図である。
図7】従来例2の合波光学系の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の光源装置、プロジェクタおよび機械加工装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1図5を参照して、本発明の光源装置、プロジェクタおよび機械加工装置の第1実施形態について説明する。なお、図1の上側の構成図は、レーザ光のFAST軸方向α1と平行な平面視における光源装置の各部の配置構成を示し、図1の下側の構成図は、レーザ光のSLOW軸方向α2と平行な平面視における光源装置の各部の配置構成を示す。また、以下では、説明の都合上、図1図4および図5中の左側を「光軸方向上流側(または左側)」、右側を「光軸方向下流側(または右側)」と言う。また、光軸方向上流側については、単に「上流側」、光軸方向下流側については、単に「下流側」と言うことがある。
【0013】
図1に示す光源装置1は、光軸方向上流側から下流側に向かって順に配置された、光源2と、コリメータ3と、拡大光学系4と、集光レンズ5と、導光体6とを備えている。後述するように、光源装置1は、例えば、プロジェクタや機械加工装置に適用することができる。以下、各部の構成について説明する。
【0014】
光源2は、複数のLDパッケージ21を有する。各LDパッケージ21の構成は、同じであるため、1つのLDパッケージ21の構成について代表的に説明する。
図2に示すように、LDパッケージ21は、レーザダイオード素子(LD素子)22と、フォトダイオード23と、パッケージ24とを有する。
【0015】
レーザダイオード素子22は、レーザ光(半導体レーザ)LBを照射することができる。レーザダイオード素子22は、例えば、活性層(発光層)と、活性層を介して配置されたn型クラッド層およびp型クラッド層とを有する積層体で構成される。活性層の両端面は、それぞれ、反射面となっている。レーザダイオード素子22に順方向に電圧を印加した際、n型クラッド層から活性層に電子が流入するとともに、p型クラッド層から活性層にホールが流入して、活性層内で再結合して発光する。各クラッド層の屈折率が活性層より低いため、光は、活性層内で前記両端面の間で増幅されながら往復する。そして、誘導放出が生じることにより、当該光は、レーザ光LBとして照射される。
【0016】
レーザダイオード素子22(活性層)が発せられたレーザ光LBは、完全な直線光ではなく、回折することにより広がりながら進行していく。また、積層体であるレーザダイオード素子22は、幅方向が厚さ方向よりも大きく形成される。これにより、図3に示すように、レーザ光LBの強度分布(ファーフィールドパターン)は、レーザ光LBのFAST軸方向α1がSLOW軸方向α2よりも大きくなる。
【0017】
パッケージ24は、レーザダイオード素子22とフォトダイオード23とを一括して収納する。パッケージ24は、いわゆるCAN型パッケージであり、ベース241と、キャップ242と、カバーガラス243とを有する。
ベース241は、円盤状をなし、フォトダイオード23が支持される円盤状部244と、円盤状部244から突出して形成され、レーザダイオード素子22が支持される支持部245とを有する。また、円盤状部244は、パッケージ24において、外径が最大に拡径したフランジ部となる。そして、LDパッケージ21を光源装置1での所定箇所に固定する際、円盤状部244でLDパッケージ21を安定して固定することができる。
【0018】
ベース241には、キャップ242が固定されている。キャップ242は、ベース241に支持されたレーザダイオード素子22およびフォトダイオード23を覆う部材である。また、キャップ242には、レーザ光LBが通過する貫通孔246が形成されている。
ベース241およびキャップ242の構成材料としては、特に限定されず、例えば、アルミニウム等の金属材料を用いることができる。
カバーガラス243は、キャップ242の内側から貫通孔246を覆うガラス板である。レーザ光LBは、カバーガラス243を透過することができる。なお、パッケージ24は、カバーガラス243が省略されていてもよい。
【0019】
以上のような構成のLDパッケージ21は、レーザ光LBのFAST軸方向α1に沿って複数行、SLOW軸方向α2に沿って複数列に行列状に配置されている。図1に示すように、本実施形態では、FAST軸方向α1のLDパッケージ21の配置数は3つであり、SLOW軸方向α2のLDパッケージ21の配置数も3つであるが、各方向の配置数については、これに限定されない。また、FAST軸方向α1のLDパッケージ21の配置数と、SLOW軸方向α2のLDパッケージ21の配置数とは、同じに限定されず、異なっていてもよい。
【0020】
また、FAST軸方向α1に隣り合うレーザダイオード素子22同士の中心間距離(ピッチ)P1と、SLOW軸方向α2に隣り合うレーザダイオード素子22同士の中心間距離(ピッチ)P2とは、互いに等しい。図1に示す構成では、FAST軸方向α1に隣り合うレーザダイオード素子22同士、SLOW軸方向α2に隣り合うレーザダイオード素子22同士は、いずれも、互いに接している。この場合、中心間距離P1および中心間距離P2は、前記フランジ部となる円盤状部244の外径φD244に等しくなる。なお、レーザダイオード素子22同士は、互いに離間していてもよい。
【0021】
レーザ光LBの光路上、すなわち、レーザダイオード素子22の光軸上には、光源2から離間してコリメータ3が配置されている。コリメータ3は、複数の円形のレンズ(平凸レンズ)31で構成されている。
各レンズ31は、レーザ光LBが入射する入射面311と、レーザ光LBが出射する出射面312とを有する。入射面311は、平面で構成されている。出射面312は、湾曲した凸面で構成されている。一般的に出射面312は、非球面形状となり、入射面311は、出射面312の形状に合わせて凸面、凹面等になる場合もある。なお、レンズ31の有効径は、外径φD244よりも大きいのが好ましい。
【0022】
また、各レンズ31は、1つずつ、レーザダイオード素子22に臨んで配置されている。また、各レンズ31は、レーザダイオード素子22の光軸が当該レンズ31の中心をとおる位置に配置されている。これにより、各レーザダイオード素子22から発せられたレーザ光LBを、FAST軸方向α1、SLOW軸方向α2のいずれの方向にも平行光とすることができる。なお、コリメータ3は、組み合わせレンズで構成されていてもよい。
【0023】
レーザ光LBの光路上であって、コリメータ3に対して下流側には、集光レンズ5が配置されている。コリメータ3と集光レンズ5とは、互いに離間しており、コリメータ3と集光レンズ5との間に拡大光学系4が配置されている。
集光レンズ5は、各レーザ光LBを導光体6に向けて集光するレンズである。集光レンズ5は、レーザ光LBが入射する入射面51と、レーザ光LBが出射する出射面52とを有する。入射面51は、湾曲した凸面で構成されている。出射面52は、平面で構成されている。なお、集光レンズ5によって集光されたレーザ光LB同士は、図1に示す状態と異なり、互いに重なり合っていてもよい。
【0024】
レーザ光LBの光路上であって、集光レンズ5に対して下流側には、導光体6が配置されている。導光体6は、長尺状をなし、入射面61となる上流側の端面と、出射面62となる下流側の端面とを有する。入射面61には、集光レンズ5でされた複数のレーザ光LBが一括して入射される。このレーザ光LBは、導光体6内を通過して出射面62まで導かれ、当該出射面62から出射することができる。導光体6としては、特に限定されず、例えば、光ファイバ、光導波路等を用いることができる。
【0025】
前述したように、従来例2の合波光学系では、SLOW軸側に隣り合う半導体レーザ光源同士の間隔が広がってしまう。この場合、半導体レーザ光源は、光ファイバの光軸から外側に位置すれば位置するほど、すなわち、光ファイバの光軸から離れれば離れるほど、光ファイバの入射面に対するレーザビームの入射角が大きくなる。そして、その入射角の大きさによっては、レーザビームは、光ファイバの入射面で反射され易くなり、当該入射面に入射することができないことがある。結果、光ファイバの出力が低下する。
【0026】
そこで、光源装置1では、このような不具合が解消されるよう構成されている。以下、この構成および作用について説明する。
図1に示すように、光源装置1は、拡大光学系4を備える。
拡大光学系4の前後では、レーザ光LBは、FAST軸方向α1のビーム径(ビーム幅)が一定に維持され、SLOW軸方向α2のビーム径(ビーム幅)が拡大される。なお、各ビーム径としては、レーザ光LBの強度がピーク値の1/eになる二点間で測定された測定値を用いることができる。
【0027】
すなわち、FAST軸方向α1では、拡大光学系4を透過する前のビーム径Wα1-1は、拡大光学系4を透過した後のビーム径Wα1-2と等しい。一方、SLOW軸方向α2では、拡大光学系4を透過する前のビーム径Wα2-1は、拡大光学系4を透過した後のビーム径Wα2-2となり、当該ビーム径Wα2-2は、ビーム径Wα2-1よりも大きい。また、ビーム径Wα2-2は、ビーム径Wα1-2と等しいのが好ましい。
【0028】
このように、拡大光学系4は、コリメータ3を透過したレーザ光LBのSLOW軸方向α2のビーム径Wα2-1を拡大して、FAST軸方向α1のビーム径Wα1-2に近づけるように、コリメータ3と集光レンズ5との間に配置されている。
拡大光学系4の具体的構成としては、本実施形態では、拡大光学系4は、第1レンズ41と、第2レンズ42とを有する構成となっている。第1レンズ41および第2レンズ42は、それぞれ、SLOW軸方向α2にのみパワーを有するシリンドリカルレンズである。また、第1レンズ41と、第2レンズ42とは、光軸方向上流側から下流側に向かって順に配置されている。
【0029】
第1レンズ41は、コリメータ3から離間して配置されている。第1レンズ41は、レーザ光LBが入射する入射面411と、レーザ光LBが出射する出射面412とを有する。入射面411には、SLOW軸方向α2に沿って連続的に深さが変化するように形成された複数の凹面413を有する。一方、出射面412は、平面で構成されている。各第1レンズ41の光軸は、各レーザダイオード素子22の光軸と一致するように配置されている。このような入射面411および出射面412により、第1レンズ41は、FAST軸方向α1よりもSLOW軸方向α2にパワーを有するシリンドリカルレンズとなる。これにより、レーザ光LBは、FAST軸方向α1では、平行光のままとなり、SLOW軸方向α2では、拡大される。
【0030】
なお、第1レンズ41は、本実施形態では入射面411が凹面413を有し、出射面412が平面で構成されているが、これに限定されず、例えば、出射面412が凹面413を有し、入射面411が平面で構成されていてもよい。
【0031】
第1レンズ41の下流側には、第2レンズ42が第1レンズ41から離間して配置されている。第2レンズ42は、レーザ光LBが入射する入射面421と、レーザ光LBが出射する出射面422とを有する。入射面421は、平面で構成されている。一方、出射面422は、SLOW軸方向α2に沿って連続的に突出高さが変化するように形成された凸面423を有する。各第2レンズ42の光軸は、各レーザダイオード素子22の光軸と一致するように配置されている。このような入射面421および出射面422により、第2レンズ42は、シリンドリカルレンズとなり、SLOW軸方向α2では、レーザ光LBを平行光となるように整形することができる。
【0032】
そして、第1レンズ41および第2レンズ42により、拡大光学系4透過後のSLOW軸方向α2のビーム径Wα2-2を、拡大光学系4透過前のSLOW軸方向α2のビーム径Wα2-1よりも大きく拡大することができる。この拡大範囲は、例えば、1.5倍~6.0倍の範囲であるのがより好ましい。これにより、SLOW軸方向α2のビーム径Wα2-1を、SLOW軸方向α2のビーム径Wα2-2と同等の大きさの、FAST軸方向α1のビーム径Wα1-2に近づけることができる。
【0033】
また、拡大光学系4は、コリメータ3透過後のFAST軸方向α1のビーム径Wα1-1が、パッケージ24の外径φD244と等しいか、または、中心間距離P1と等しくなるように配置されるのが好ましい。なお、前述したように、本実施形態では、FAST軸方向α1に隣り合うレーザダイオード素子22同士は、互いに接しているため、中心間距離P1と外径φD244とは、同じ大きさである。
これにより、光源2では、LDパッケージ21をFAST軸方向α1にできる限り詰めて、すなわち、隙間なく密に(稠密に)配置することができる。また、SLOW軸方向α2でも同様に、密に配置することができる。
【0034】
以上のような構成の拡大光学系4により、LDパッケージ21(レーザダイオード素子22)同士の間隔をできる限り小さくことができる。これにより、各LDパッケージ21を導光体6の光軸にできる限り近づけて配置することができる。そして、導光体6の入射面61に対する各LDパッケージ21のレーザ光LBの入射角を、FAST軸方向α1、SLOW軸方向α2方向のいズレの方向にも、小さく抑えることができる。これにより、各LDパッケージ21の位置に関わらず、当該LDパッケージ21から発せられるレーザ光LBは、導光体6の入射面61に入射し易くなる。そして、FAST軸方向α1についてはもちろんのこと、SLOW軸方向α2におけるレーザ光LBの導光体6への入射を十分に行うことができる(以下、この効果を「入射容易性」と言う)。また、この入射容易性は、LDパッケージ21の配置数が、図1に示す構成よりも増加した場合も同様に維持される。これにより、光源装置1の用途に応じて、導光体6での出力を十分に確保することができる。
【0035】
また、光源装置1は、従来例2の合波光学系で用いられていたミラーを省略することができる。これにより、レーザ光LBの光路長を従来例2の合波光学系よりも短くすることができ、入射容易性が向上する。また、ミラーを省略した分、光源装置1の小型化を図ることができる。
【0036】
前述したように、第2レンズ42は、レーザ光LBを平行光となるように整形するレンズである。レーザ光LBは、第2レンズ42によって平行光となるのが理想であるが、厳密には、図4に示すように、僅かではあるが、拡がり角(発散角)θ1を持って、徐々に拡大していく。
【0037】
これに対し、図5に示すように、拡大光学系4が省略された場合、レーザ光LBの拡がり角(発散角)θ2は、拡がり角θ1よりも大きくなり、図4に示す状態よりも大きく拡大してしまい、好ましくはない。
【0038】
第2レンズ42は、第2レンズ42を透過後のレーザ光LBの拡がり角θ1を1mm rad以下に設定するのが好ましい。これにより、拡がり角θ1による影響(例えば導光体6での合波率低下等)をできる限り抑えることができる。
【0039】
<第2実施形態>
以下、図6を参照して本発明の光源装置、プロジェクタおよび機械加工装置の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、光源装置が縮小光学系を備えること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0040】
図6に示すように、光源装置1は、拡大光学系4(コリメータ3)と集光レンズ5との間に配置された縮小光学系7を備える。縮小光学系7は、拡大光学系4(コリメータ3)透過後のFAST軸方向α1のビーム径Wα1-2を、当該ビーム径Wα1-2よりも小さいビーム径Wα2-3に縮小する。
【0041】
光源装置では、用途に応じて、FAST軸方向α1に沿ったLDパッケージ21の配置数を、図6に示す構成よりも多くしたい場合がある。この場合、縮小光学系7を拡大光学系4と集光レンズ5との間に配置することにより、各LDパッケージ21からのレーザ光LBを集光レンズ5に向かわせて、十分に入射させることができる。
【0042】
縮小光学系7は、縮小用第1レンズ71と、縮小用第2レンズ72とを有する。
縮小用第1レンズ71は、レーザ光LBが入射する入射面711と、レーザ光LBが出射する出射面712とを有する。入射面711は、FAST軸方向α1に沿って連続的に突出高さが変化するように形成された凸面713を有する。凸面713は、集光レンズ5の光軸が当該凸面713の中心をとおる位置に配置されている。一方、出射面712は、平面で構成されている。
【0043】
縮小用第1レンズ71の下流側には、縮小用第2レンズ72が縮小用第1レンズから離間して配置されている。縮小用第2レンズ72は、レーザ光LBが入射する入射面721と、レーザ光LBが出射する出射面722とを有する。入射面721は、FAST軸方向α1に沿って連続的に深さが変化するように形成された凹面723を有する。凹面723も、凸面713と同様に、集光レンズ5の光軸が当該凹面723の中心をとおる位置に配置されている。一方、出射面722は、平面で構成されている。
【0044】
なお、縮小用第2レンズ72は、本実施形態では入射面721が凹面723を有し、出射面722が平面で構成されているが、これに限定されず、例えば、出射面722が凹面413を有し、入射面721が平面で構成されていてもよい。
このような縮小用第1レンズおよび縮小用第2レンズにより、簡単な構成で、ビーム径Wα1-2をビーム径Wα2-3に縮小することができる。
【0045】
<適用例1>
光源装置1の適用例について説明する。
光源装置1は、画像等をスクリーンに投影するプロジェクタに適用することができる。プロジェクタは、光源装置1を備える。この場合、光源装置1は、波長が互いに異なる赤系、緑系および青系のレーザ光LBをそれぞれ照射するよう構成されている。これにより、光源装置1は、カラー画像を投影することができる。
【0046】
<適用例2>
光源装置1の他の適用例について説明する。
光源装置1は、レーザ加工を行う機械加工装置に適用することができる。機械加工装置は、光源装置1を備える。この場合、光源装置1は、波長が互いに異なる、例えば青系のレーザ光LBをそれぞれ照射するよう構成されている。これにより、光源装置1は、例えば、金属板を切断するレーザ加工を行うことができる。
【0047】
以上、本発明の光源装置、プロジェクタおよび機械加工装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、光源装置、プロジェクタおよび機械加工装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0048】
また、本発明の光源装置、プロジェクタおよび機械加工装置は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、拡大光学系4は、前記各実施形態では、第1レンズ41および第2レンズ42を有する構成となっているが、これに限定されず、例えば、拡大光学系4として、アナモルフィックプリズムペアを用いてもよい。
【0049】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0050】
(第1項)一態様に係る光源装置は、
複数のレーザダイオード素子および該各レーザダイオード素子を収納するパッケージを有する光源と、
前記各レーザダイオード素子から発せられるレーザ光の光路に配置されたコリメータと、
前記コリメータに対して、前記各レーザダイオード素子の光軸方向下流側に配置され、前記レーザ光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズに対して、前記光軸方向下流側に配置された導光体と、
前記コリメータを透過した前記レーザ光のSLOW軸方向のビーム径がFAST軸方向のビーム径に近づくように、前記コリメータと前記集光レンズとの間に配置された拡大光学系と、を備える。
【0051】
第1項に記載の光源装置によれば、レーザダイオード素子をできる限り詰めて、すなわち、隙間なく密に配置することができる。これにより、レーザダイオード素子同士の間隔をできる限り小さくことができ、導光体に対する各レーザダイオード素子のレーザ光の入射角を小さく抑えることができる。これにより、各レーザダイオード素子の位置に関わらず、当該レーザダイオード素子から発せられるレーザ光は、導光体に入射し易くなる。
【0052】
(第2項)第1項に記載の光源装置において、
隣り合う前記レーザダイオード素子同士の中心間距離は、前記FAST軸方向と前記SLOW軸方向において互いに等しく、
前記拡大光学系は、前記コリメータ透過後の前記FAST軸方向のビーム径が、前記パッケージの外径と等しいか、または、前記中心間距離と等しくなるように配置された。
【0053】
第2項に記載の光源装置によれば、レーザダイオード素子をできる限り詰めて、すなわち、隙間なく密に配置することができる。
【0054】
(第3項)第1項または第2項に記載の光源装置において、
前記拡大光学系は、前記コリメータ透過後の前記SLOW軸方向のビーム径を、前記コリメータ透過前の前記SLOW軸方向のビーム径の1.5~6.0倍の範囲で拡大する。
【0055】
第3項に記載の光源装置によれば、SLOW軸方向のビーム径Wを、FAST軸方向のビーム径に近づけることができる。
【0056】
(第4項)第1項~第3項のいずれか1項に記載の光源装置において、
前記拡大光学系は、前記レーザ光が入射する入射面が凹面を有し、前記レーザ光が出射する出射面が平面で構成された第1レンズと、
前記第1レンズに対して、前記光軸方向下流側に配置され、前記レーザ光が入射する入射面が平面で構成され、前記レーザ光が出射する出射面が凸面を有する第2レンズと、を備える。
【0057】
第4項に記載の光源装置によれば、例えば、第1レンズは、FAST軸方向よりもSLOW軸方向にパワーを有するレンズとなり、第2レンズは、第1レンズから出射した光を平行光となるように整形するレンズとなる。
【0058】
(第5項)第4項に記載の光源装置において、
前記第1レンズは、前記FAST軸方向よりも前記SLOW軸方向にパワーを有するレンズであり、
前記第2レンズは、前記第1レンズから出射した光を平行光となるように整形するレンズである。
【0059】
第5項に記載の光源装置によれば、簡単な構成で、コリメータを透過したレーザ光のSLOW軸方向のビーム径をFAST軸方向のビーム径に近づくけることができる。
【0060】
(第6項)第5項に記載の光源装置において、
前記第2レンズは、該第2レンズを透過後の前記レーザ光の拡がり角1mm rad以下に設定する。
【0061】
第6項に記載の光源装置によれば、これにより、レーザ光の拡がり角による影響(例えば導光体での合波率低下等)をできる限り抑えることができる。
【0062】
(第7項)第1項~第6項のいずれか1項に記載の光源装置において、
前記コリメータと前記集光レンズとの間に配置され、前記コリメータ透過後の前記FAST軸方向のビーム径を縮小する縮小光学系を備える。
【0063】
光源装置では、用途に応じて、FAST軸方向に沿ったレーザダイオード素子の配置数を増やしたい場合がある。この場合、第7項に記載の光源装置によれば、各レーザダイオード素子からのレーザ光を集光レンズに向かわせて、十分に入射させることができる。
【0064】
(第8項)第7項に記載の光源装置において、
前記縮小光学系は、前記レーザ光が入射する入射面が凸面を有し、前記レーザ光が出射する出射面が平面で構成された縮小用第1レンズと、
前記縮小用第1レンズに対して、前記光軸方向下流側に配置され、前記レーザ光が入射する入射面が凹面を有し、前記レーザ光が出射する出射面が平面で構成された縮小用第2レンズとを有する。
【0065】
第8項に記載の光源装置によれば、簡単な構成で、前記コリメータ透過後のFAST軸方向のビーム径を縮小することができる。
【0066】
(第9項)一態様に係るプロジェクタは、
第1項~第8項のいずれか1項に記載の光源装置を備える。
【0067】
第9項に記載のプロジェクタによれば、レーザダイオード素子をできる限り詰めて、すなわち、隙間なく密に配置することができる。これにより、レーザダイオード素子同士の間隔をできる限り小さくことができ、導光体に対する各レーザダイオード素子のレーザ光の入射角を小さく抑えることができる。これにより、各レーザダイオード素子の位置に関わらず、当該レーザダイオード素子から発せられるレーザ光は、導光体に入射し易くなる。
【0068】
(第10項)一態様に係る機械加工装置は、
第1項~第8項のいずれか1項に記載の光源装置を備える。
【0069】
第10項に記載の機械加工装置によれば、レーザダイオード素子をできる限り詰めて、すなわち、隙間なく密に配置することができる。これにより、レーザダイオード素子同士の間隔をできる限り小さくことができ、導光体に対する各レーザダイオード素子のレーザ光の入射角を小さく抑えることができる。これにより、各レーザダイオード素子の位置に関わらず、当該レーザダイオード素子から発せられるレーザ光は、導光体に入射し易くなる。
【符号の説明】
【0070】
1 光源装置
2 光源
21 LDパッケージ
22 レーザダイオード素子(LD素子)
23 フォトダイオード
24 パッケージ
241 ベース
242 キャップ
243 カバーガラス
244 円盤状部
245 支持部
246 貫通孔
3 コリメータ
31 レンズ
311 入射面
312 出射面
4 拡大光学系
41 第1レンズ
411 入射面
412 出射面
42 第2レンズ
421 入射面
422 出射面
423 凸面
5 集光レンズ
51 入射面
52 出射面
6 導光体
61 入射面
62 出射面
7 縮小光学系
71 縮小用第1レンズ
711 入射面
712 出射面
713 凸面
72 縮小用第2レンズ
721 入射面
722 出射面
723 凹面
20 半導体レーザ光源
30 コリメータレンズ
40 縮小光学系
50 集光レンズ
60 光ファイバ
70 ミラー
φD244 外径
LB レーザ光(半導体レーザ)
P1 中心間距離(ピッチ)
P2 中心間距離(ピッチ)
Wα1-1 ビーム径
Wα1-2 ビーム径
Wα1-3 ビーム径
Wα2-1 ビーム径
Wα2-2 ビーム径
α1 FAST軸方向
α2 SLOW軸方向
θ1 拡がり角(発散角)
θ2 拡がり角(発散角)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7