(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】液体貯留タンクのキャップ、液体貯留タンク
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B41J2/175 133
B41J2/175 141
(21)【出願番号】P 2020060209
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】白野 太一
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193150(JP,A)
【文献】特開2019-081276(JP,A)
【文献】中国実用新案第206357825(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2021/0291536(US,A1)
【文献】特開2016-087850(JP,A)
【文献】特開2017-065085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する液体貯留タンクの液体注入部を閉塞するキャップであって、
樹脂材で構成される樹脂部材と、
ラバー材で構成される弾性部材と、
を備え、
前記樹脂部材は、軸部を有し、
前記弾性部材は、前記樹脂部材に取り付けられ、前記液体注入部の内面に直接接触するもの
であって、前記液体注入部内に差し込まれる弾性部材本体部を有し、
前記軸部は、前記弾性部材本体部に差し込まれ、
前記弾性部材が前記樹脂部材に接触する面積は、
前記弾性部材本体部の内周面と前記軸部の外周面とが接触する面積と、前記弾性部材本体部の先端部と前記軸部の先端部とが接触する部分の面積とを含み、前記弾性部材が前記液体注入部の内面に接触する面積よりも大きいことを特徴とする液体貯留タンクのキャップ。
【請求項2】
前記弾性部材は
、前記弾性部材本体部の側面から突出するウイング
部を備え、
前記樹脂部材は、
前記ウイング部を保持する保持部と、
前記ウイング部を押圧状態で挟持する挟持部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体貯留タンクのキャップ。
【請求項3】
前記弾性部材本体部の先端部は、平滑に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液体貯留タンクのキャップ。
【請求項4】
前記弾性部材本体部の側面部は、平滑に形成されており、
前記弾性部材本体部の側面部が接触する前記液体注入部の内面も、平滑に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の液体貯留タンクのキャップ。
【請求項5】
前記樹脂部材は、ベース部を有し、
前記ベース部は、円形状の端部の一部を直線状に切り欠いた形状をなしていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の液体貯留タンクのキャップ。
【請求項6】
前記樹脂部材は、前記軸部の先端部にテーパ部を有し、
前記軸部が前記液体注入部内に差し込まれた状態において、前記テーパ部は、前記液体注入部よりも内側に位置することを特徴とする請求項1から
5の何れか1項に記載の液体貯留タンクのキャップ。
【請求項7】
前記樹脂部材は、使用者が持つ把持部を有し、
前記把持部は、円柱状に形成されている請求項1から
6の何れか1項に記載の液体貯留タンクのキャップ。
【請求項8】
前記弾性部材本体部の先端部は閉塞されている請求項1から7の何れか1項に記載の液体貯留タンクのキャップ。
【請求項9】
液体を注入するための液体注入部と、
前記液体注入部を閉塞可能である請求項1から8の何れか1項に記載のキャップ
と、
を備える液体貯留タンクであって、
前記液体注入部から前記キャップが取り外されるときに、前記キャップが前記液体注入部の軸方向に対して傾斜することを抑制する傾斜抑制部を備えることを特徴とする液体貯留タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体を貯留する液体貯留タンクの液体注入部を閉塞するキャップ、および、このキャップによって液体注入部を閉塞可能な液体貯留タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばインクなどの液体を貯留する液体貯留タンクを備え、この液体貯留タンクに貯留された液体を消費するインクジェット式プリンタが知られている。この種の液体貯留タンクには液体注入部が設けられており、その液体注入部は、キャップによって密閉状態で閉塞されるようになっている。使用者は、液体貯留タンクにインクを注入する場合には、キャップを液体注入部から取り外し、開放状態の液体注入部を通してインクを液体貯留タンク内に補給する。
【0003】
この種のキャップとして、例えば特許文献1に開示されている構成が考えられている。この特許文献1に開示されているキャップは、樹脂部材と弾性部材とを備えている。樹脂部材は、把持部、本体部、密封部を有している。弾性部材は、樹脂部材の円筒状の密封部の側面に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているキャップにおいては、弾性部材と樹脂部材との接触面積が、液体注入部の内面と弾性部材との接触面積とほぼ同等あるいは完全に同等の面積となる。そのため、キャップを液体貯留タンクの液体注入部から取り外す際に、液体注入部の内面と弾性部材との間の摩擦力が、樹脂部材と弾性部材との間の摩擦力と拮抗あるいは上回ってしまう場合があり、このような場合に、弾性部材が液体注入部側に引っ張られて樹脂部材から外れてしまうおそれがある。
【0006】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂材で構成される樹脂部材と、ラバー材で構成される弾性部材とを備えるキャップについて、当該キャップを液体貯留タンクの液体注入部から取り外す際に、弾性部材が樹脂部材から外れてしまうことを抑制できるようにした構成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る液体貯留タンクのキャップは、液体を貯留する液体貯留タンクの液体注入部を閉塞するキャップであって、樹脂材で構成される樹脂部材と、ラバー材で構成される弾性部材と、を備え、前記弾性部材は、前記樹脂部材に取り付けられ、前記液体注入部の内面に直接接触するものであり、前記弾性部材が前記樹脂部材に接触する面積は、前記弾性部材が前記液体注入部の内面に接触する面積よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
本開示に係る液体貯留タンクのキャップによれば、弾性部材が樹脂部材に接触する面積は、弾性部材が液体注入部の内面に接触する面積よりも大きくなっている。そのため、キャップを液体貯留タンクの液体注入部から取り外す際に、液体注入部の内面と弾性部材との間の摩擦力が、樹脂部材と弾性部材との間の摩擦力と拮抗あるいは上回ってしまうことを回避することができる。よって、キャップを液体貯留タンクの液体注入部から取り外す際に、弾性部材が樹脂部材から外れてしまうことを抑制することができる。
【0009】
本開示に係る液体貯留タンクは、本開示に係るキャップによって液体注入部を閉塞可能な液体貯留タンクであって、前記液体注入部から前記キャップが取り外されるときに、前記キャップが前記液体注入部の軸方向に対して傾斜することを抑制する傾斜抑制部を備えることを特徴とする。
【0010】
本開示に係る液体貯留タンクによれば、液体注入部からキャップが取り外されるときに、キャップが液体注入部の軸方向に対して傾斜することを抑制することができる。よって、キャップを液体貯留タンクの液体注入部から取り外す際に、弾性部材が樹脂部材から外れてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示に係る液体貯留タンクの構成例を概略的に示す縦断側面図
【
図2】本開示に係る液体貯留タンクの液体注入部及びその周辺部分の構成例を拡大して概略的に示す縦断側面図
【
図3】本開示に係るキャップの構成例を概略的に示す分解斜視図(その1)
【
図4】本開示に係るキャップの構成例を概略的に示す分解斜視図(その2)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示のキャップ及び液体貯留タンクに係る一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に例示する実施形態において、キャップを液体注入部から「取り外す」ことは、キャップを液体注入部から「引き抜く」ことと定義することもできる。また、キャップを液体注入部に「取り付ける」ことは、キャップを液体注入部に「圧入する」と定義することもできる。
【0013】
(液体貯留タンクの構成例)
本実施形態の要部の説明に入る前に、本実施形態に係る液体貯留タンクの概略的な構成例について説明する。
図1に例示する液体貯留タンク1は、例えば、図示しないインクジェット式プリンタなどの液体消費装置に搭載されるものであり、当該インクジェット式プリンタが消費する液体、この場合、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどを貯留するタンクである。
【0014】
図1に例示するように、液体貯留タンク1は、その外郭を構成する概ね直方体状のタンク本体部2を備えている。タンク本体部2の内部には、インクが貯留されるインク室3が設けられている。また、液体貯留タンク1は、インク室3内にインクを注入するための開口を有する液体注入部4を備えている。タンク本体部2の前部の上部には傾斜壁5が設けられており、液体注入部4は、この傾斜壁5に設けられている。なお、液体注入部4は、タンク本体部2のうち傾斜壁5以外の壁部、例えば、上壁や側壁に設けられていてもよい。
【0015】
液体注入部4は、傾斜壁5の外面から斜め上方に突出するように設けられている。また、本開示においては、液体注入部4は、円筒形状に形成されている。
【0016】
図2に例示するように、液体注入部4の先端4aは、斜め上方に向かってタンク本体部2の外部に開口している。一方、液体注入部4の基端4bは、斜め下方に向かってインク室3内に開口している。
【0017】
また、液体注入部4は、上下方向に対し非直交、且つ、水平方向よりも上方向となる前上方向に向かって、傾斜壁5から突出している。また、液体注入部4は、傾斜壁5の外面と直交する方向に向かって傾斜壁5から突出している。このように構成される液体注入部4は、斜め上方、即ち、前方且つ上方を向いて開口している。即ち、液体注入部4の開口中心線Lは、上下方向及び前後方向に対して傾斜している。
【0018】
なお、液体注入部4の開口中心線Lは、液体注入部4の先端4aの中心及び液体注入部4の基端4bの中心を繋いだ線であり、その延長線も含む。本開示においては、液体注入部4の開口中心線Lは、当該液体注入部4が傾斜壁5から突出する方向と平行である。
【0019】
上述のように構成される液体貯留タンク1において、液体注入部4は、着脱可能なキャップ100によって密閉状態で閉塞されるようになっている。本開示は、このキャップ100の構成例について創意工夫を施したものである。以下、このキャップ100に係る複数の実施形態について説明する。
【0020】
図3及び
図4にも例示するように、キャップ100は、剛性のある樹脂材で構成される樹脂部材110と、エラストマ、ラバー、シリコンラバー等のラバー材で構成される弾性部材120とを組み合わせた構成となっている。弾性部材120は、樹脂部材110より弾性がある部材である。
【0021】
樹脂部材110は、ベース部111、軸部112、把持部113を一体的に備えている。ベース部111は、樹脂部材110のベース部分を構成するものであり、この場合、ほぼ円形状をなしているが、その円形状の端部の一部にDカット面111aを有している。Dカット面111aは、全体として概ね円形状であるベース部111の端部の一部、この場合、樹脂部材110の軸心を挟んで相互に対向する2か所を直線状に切り欠いた形状をなしている。
【0022】
軸部112は、ベース部111の裏面、つまり、キャップ100が液体注入部4に取り付けられた状態においてタンク本体部2側となる面に設けられている。この場合、軸部112は、ベース部111の裏面の中央部から樹脂部材110の軸心に沿って直線状に延びている。また、軸部112は、円筒状に形成されている。また、軸部112の先端部には、当該軸部112の先端側に向かって徐々に径寸法が短くなるテーパ部112aが設けられている。また、軸部112の先端部には、テーパ部112aよりも内側に位置して平坦部112bが設けられている。平坦部112bは、樹脂部材110の軸心に対して直交する平坦な部分となっている。なお、軸部112は、全体としては円筒状であり、その中心部に円柱状の空間が設けられている。この空間は、ベース部111を貫通し、把持部113内まで延びている。
【0023】
把持部113は、ベース部111の表面、つまり、キャップ100が液体注入部4に取り付けられた状態においてタンク本体部2側とは反対側となる面に設けられている。この場合、把持部113は、ベース部111の表面の中央部から樹脂部材110の軸心に沿って直線状に延びている。把持部113は、全体として円柱状に形成されている。使用者は、この把持部113を手指で摘まむことによって、樹脂部材110、ひいては、キャップ100全体を持って着脱操作を行うことができる。
【0024】
弾性部材120は、弾性部材本体部121及び複数、この場合、2つのウイング部122a,122bを一体的に備えている。弾性部材本体部121は、ほぼ円柱状に形成されており、その中心部に孔部121aを有している。孔部121aは、弾性部材本体部121を軸心方向に貫通しておらず、弾性部材本体部121の基端側を開放しているが、弾性部材本体部121の先端側は開放していない。樹脂部材110の軸部112は、この孔部121a内に差し込まれる。弾性部材本体部121の先端部は、凹凸等が無く、平滑に形成されている。また、弾性部材本体部121の先端部は閉塞されており、従って、孔部121a内に差し込まれた軸部112は、その全体が弾性部材本体部121によって覆われる。
【0025】
また、弾性部材本体部121は、キャップ100が液体注入部4に取り付けられる際には、液体注入部4内に差し込まれて、その外周面が液体注入部4の内周面に直接的に接触する。ここで、弾性部材本体部121の外側面部は、凹凸等が無く、平滑に形成されている。また、弾性部材本体部121の側面部が接触する液体注入部4の内周面も、凹凸等が無く、平滑に形成されている。
【0026】
ウイング部122a,122bは、弾性部材本体部121の基端部の側面において弾性部材120の径方向に沿って矩形状に突出している。また、ウイング部122a,122bは、弾性部材120の軸心を挟んで相互に対向する2か所に設けられている。
【0027】
また、樹脂部材110は、さらに、保持部114及び挟持部115を備えている。保持部114及び挟持部115は、何れも、ベース部111の裏面側に設けられている。即ち、ベース部111の裏面側には、軸部112の基端部の周囲を囲むようにして、複数、この場合、2つの円弧状の壁部116が設けられている。これら壁部116は、軸部112の基端部から所定の隙間を有して配置されており、この隙間に、弾性部材120の一部、この場合、弾性部材本体部121の基端部が嵌め込まれる。
【0028】
そして、保持部114及び挟持部115は、この壁部116の両端部に分かれて設けられている。即ち、保持部114及び挟持部115は、樹脂部材110の軸心を挟んで相互に対向する2か所に分かれて設けられている。保持部114は、2つの壁部116の一端部から樹脂部材110の径方向に沿って延びる複数、この場合、2つの壁部114aと、1つの梁部114bと、を備えている。2つの壁部114aは、所定の間隔を有して離間しており、梁部114bは、これら壁部114aの間に掛け渡されるようにして設けられている。
【0029】
このように構成される保持部114には、2つの壁部114aの間に、弾性部材120のウイング部122a,122bうち何れか一方が嵌め込まれる。また、2つの壁部114aの間に嵌め込まれたウイング部には、梁部114bが引っ掛けられるようにして対向する。これにより、保持部114は、弾性部材120のウイング部122a,122bうち何れか一方を引っ掛けるようにして保持する。なお、保持部114は、梁部114bを2つ以上の複数備える構成としてもよい。
【0030】
挟持部115は、2つの壁部116の他端部から樹脂部材110の径方向に沿って延びる複数、この場合、2つの壁部115aを備えている。2つの壁部115aは、所定の間隔を有して離間している。また、2つの壁部115aの内壁面には、複数の凸部115bが設けられている。
【0031】
このように構成される挟持部115には、2つの壁部115aの間に、弾性部材120のウイング部122a,122bうち何れか他方が嵌め込まれる。また、2つの壁部115aの間に嵌め込まれたウイング部は、その側部が凸部115bによって押し込まれる。これにより、挟持部115は、弾性部材120のウイング部122a,122bうち何れか他方を押圧状態で挟持して保持する。
【0032】
以上のように構成されるキャップ100において、特に
図2に例示するように、弾性部材120は、樹脂部材110に取り付けられることでキャップ100を構成するものであり、キャップ100が液体注入部4に取り付けられた状態において、液体注入部4の内面に直接的に接触する構成要素となっている。そして、本実施形態に係るキャップ100によれば、弾性部材120が樹脂部材110に接触する面積つまり樹脂部材側接触面積S1は、弾性部材120が液体注入部4の内周面に接触する面積つまり液体注入部側接触面積S2よりも大きくなった構成となっている。
【0033】
即ち、本実施形態に係るキャップ100によれば、樹脂部材側接触面積S1は、弾性部材本体部121の内周面と軸部112の外周面とが接触する面積であり、一方、液体注入部側接触面積S2は、弾性部材本体部121の外周面と液体注入部4の内周面とが接触する面積であるが、樹脂部材側接触面積S1が液体注入部側接触面積S2よりも大きくなる構成となっている。
【0034】
なお、樹脂部材側接触面積S1には、さらに、ウイング部122a,122bとベース部111とが接触する部分の面積を含めてもよい。また、樹脂部材側接触面積S1には、さらに、弾性部材本体部121の先端部と軸部112の先端部とが接触する部分の面積を含めてもよい。また、樹脂部材側接触面積S1には、その他、樹脂部材110と弾性部材120とが接触する部分の面積を含めてもよい。このような場合においても、樹脂部材側接触面積S1が液体注入部側接触面積S2よりも大きくなった大小関係が成立する。
【0035】
また、
図2に例示するように、キャップ100が液体注入部4に取り付けられた状態において、換言すれば、樹脂部材110の軸部112が液体注入部4内に差し込まれた状態において、テーパ部112aは、液体注入部4よりも内側つまり液体貯留タンク1の内部側に位置する。
【0036】
また、
図1及び
図2に例示するように、液体貯留タンク1は、液体注入部4よりも前側に位置してガイド壁200を備えている。このガイド壁200は、傾斜抑制部の一例であり、液体注入部4からある程度離間した位置において、この場合、傾斜壁5の前端部から液体注入部4の突出方向に概ね沿うようにして前上方向に向かって延びている。このように構成されるガイド壁200は、液体注入部4からキャップ100が取り外されるときに、当該キャップ100が液体注入部4の軸方向に対して傾斜すること、特に、前側に傾斜することを抑制する。
【0037】
以上に例示したキャップ100によれば、弾性部材120が樹脂部材110に接触する面積S1は、弾性部材120が液体注入部4の内面に接触する面積S2よりも大きくなっている。そのため、キャップ100を液体注入部4から取り外す際に、液体注入部4の内面と弾性部材120との間の摩擦力が、樹脂部材110と弾性部材120との間の摩擦力と拮抗あるいは上回ってしまうことを回避することができる。よって、キャップ100を液体注入部4から取り外す際に、弾性部材120が樹脂部材110から外れてしまうことを抑制することができる。
【0038】
また、キャップ100によれば、弾性部材120は、液体注入部4内に差し込まれる弾性部材本体部121と、弾性部材本体部121の側面から突出するウイング部122a,122bと、を備えている。一方、樹脂部材110は、ウイング部122a,122bのうち何れか一方を引っ掛けるようにして保持する保持部114と、ウイング部122a,122bのうち何れか他方を押圧状態で挟持する挟持部115と、を備えている。この構成によれば、樹脂部材110と弾性部材120との結合を一層強固にすることができ、キャップ100を液体注入部4から取り外す際に、弾性部材120が樹脂部材110から外れてしまうことを一層抑制することができる。
【0039】
なお、挟持部115においては、ウイング部が挟持されているだけなので、キャップ100を液体注入部4から取り外す際に、ウイング部が挟持部115から外れてしまう可能性が懸念される。しかし、保持部114においては、ウイング部が梁部114bに引っ掛けられるようにして保持されている。そのため、仮に挟持部115からウイング部から外れたとしても、保持部114においてはウイング部を引っ掛けるようにして保持することができるので、弾性部材120が樹脂部材110から完全に外れてしまうこと、つまり、弾性部材120が樹脂部材110から分離してしまうことを抑制することができる。
【0040】
また、キャップ100によれば、弾性部材120の先端部、より具体的には、液体注入部4内に差し込まれる弾性部材本体部121の先端部は、平滑に形成されている。ここで、仮に、弾性部材本体部121の先端部に凹部や溝部などが存在すると、その部分に液体貯留タンク1内の液体が付着して滞留してしまうことが懸念される。本実施形態に係るキャップ100によれば、液体貯留タンク1内の液体が弾性部材本体部121の先端部に付着したまま滞留してしまうことを抑制することができ、キャップ100を液体注入部4から取り外す際に、弾性部材本体部121の先端部に付着した液体が飛び跳ねてしまうことを回避することができる。
【0041】
また、キャップ100によれば、弾性部材本体部121の側面部は平滑に形成されており、弾性部材本体部121の側面部が接触する液体注入部4の内周面も平滑に形成されている。この構成によれば、キャップ100が液体注入部4に取り付けられた状態において、弾性部材本体部121の側面部と液体注入部4の内周面とが一層密着した状態を形成することができ、弾性部材120によるシール性の向上を図ることができる。
【0042】
また、キャップ100によれば、樹脂部材110のベース部111は、Dカット面111aを有している。この構成によれば、液体注入部4から取り外したキャップ100をテーブルなどの上に載置したときに、当該キャップ100が転がることを抑制することができ、キャップ100の紛失や落下による破損などを回避することができる。また、万が一、キャップ100が誤飲されたとしても、Dカット面111aにより気道を確保することが期待できる。なお、使用者においては、キャップ100の誤飲が発生しないよう、十分に注意を払うべきである。
【0043】
また、キャップ100は、樹脂部材110の軸部112を弾性部材120の弾性部材本体部121に差し込む構成となっている。この構成によれば、樹脂部材110の軸部112によって弾性部材120の弾性部材本体部121を押し広げることができ、キャップ100が液体注入部4内に差し込まれた状態において、弾性部材本体部121の側周面を液体注入部4の内周面に押し付けるようにしてシール性の向上を図ることができる。なお、孔部121aの開口径は、軸部112の径寸法よりも若干短くするとよい。これにより、確実に軸部112によって弾性部材本体部121を押し広げることができ、シール性の一層の向上を図ることができる。
【0044】
また、キャップ100によれば、樹脂部材110の軸部112が液体注入部4内に差し込まれた状態において、当該軸部112のテーパ部112aは、液体注入部4の基端4bよりもインク室3内側に位置する。この構成によれば、液体注入部4の内周面全体に対し弾性部材本体部121の側周面を接触させることができ、キャップ100によるシール性の一層の向上を図ることができる。また、液体注入部4の内周面全域に対し弾性部材本体部121を均一に接触させることができ、液体注入部4の内周面と弾性部材本体部121の側周面とが接触する全域において均一なシール性を発揮することができる。なお、仮に、軸部112のテーパ部112aが液体注入部4の基端4bよりもインク室3外側に位置する構成では、少なくとも当該テーパ部112aに対応する部分おいて弾性部材本体部121が液体注入部4の内周面に接触することができず、従って、液体注入部4の内周面全域にわたって均一なシール性を発揮することはできない。
【0045】
また、キャップ100によれば、使用者が持つ把持部113が円柱状に形成されている。この構成によれば、使用者は、把持部113を持ってキャップ100を周方向に回転させることは難しく、把持部113を持ってキャップ100を手前側に引き抜くように操作することが促されるようになる。これにより、キャップ100が液体注入部4の軸方向に沿って取り外されること、換言すれば、キャップ100が液体注入部4に対して垂直に取り外されることを促進することができ、キャップ100が取り外される際に弾性部材120に無理な変形が生じてしまうこと、ひいては、弾性部材120に応力が集中して当該弾性部材120が樹脂部材110から外れてしまうことを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る液体貯留タンク1によれば、液体注入部4からキャップ100が取り外されるときに、当該キャップ100が液体注入部4の軸方向に対して傾斜することをガイド壁200によって抑制することができる。よって、キャップ100を液体貯留タンク1の液体注入部4から取り外す際に、弾性部材120が樹脂部材110から外れてしまうことを抑制することができる。
【0047】
なお、本開示は、上述した一実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形や拡張を行うことができる。例えば、キャップ100は、弾性部材120が樹脂部材110に接触する面積を、弾性部材120が液体注入部4の内面に接触する面積よりも大きくできる構成であれば、各部の形状や大きさなどを適宜変更して実施することができる。また、樹脂部材110を構成する樹脂材、弾性部材120を構成するラバー材は、適宜選択して実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
1:液体貯留タンク、4:液体注入部、100:キャップ、110:樹脂部材、120:弾性部材、111:ベース部、112:軸部、112a:テーパ部、113:把持部、114:保持部、115:挟持部、121:弾性部材本体部、122a,122b:ウイング部、200:ガイド壁(傾斜抑制部)