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特許7600534機能性フィルム、偏光板及び画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】機能性フィルム、偏光板及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241210BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241210BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241210BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20241210BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20241210BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241210BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20241210BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241210BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G02F1/1337
G09F9/00 313
H10K50/86
H10K59/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020065418
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162737
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 麻美
(72)【発明者】
【氏名】秋山 圭
(72)【発明者】
【氏名】奥山 健一
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-204083(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186472(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/044859(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/036119(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/135618(WO,A1)
【文献】特開2012-022148(JP,A)
【文献】特開平10-339810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 7/023
G02F 1/1335
G02F 1/13363
G02F 1/1337
G09F 9/00
H10K 50/00-102/20
H05B 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2以上の機能層を含む機能性フィルムであって、
機能層(1)の面内における遅相軸方向の屈折率をnx、面内において遅相軸方向に直交する方向の屈折率をny、機能層(1)の厚み方向の屈折率をnzとしたときにnx>nyの関係を満たし、
機能層(2)が、1種又は2種以上の正の二色性赤外線吸収色素又はその重合体、及び重合性液晶化合物を含む重合性組成物の重合体を含み、
少なくとも当該正の二色性赤外線吸収色素の750nmの入射光に対する吸収軸方向が前記機能層(1)の遅相軸方向と面方向において略直交する機能性フィルム。
【請求項2】
前記機能層(1)が、nx>ny≒nzを満たす請求項1記載の機能性フィルム。
【請求項3】
前記機能層(1)が、nx≒nz>nyを満たす請求項1記載の機能性フィルム。
【請求項4】
前記機能層(2)において、前記重合性液晶化合物のメソゲンの長軸方向が前記機能層(1)の遅相軸方向に直交する方向と略平行の方向であり、前記正の二色性赤外線吸収色素が前記重合性液晶化合物のメソゲンの長軸方向に沿うように配向してなる請求項1~3の何れか1項に記載の機能性フィルム。
【請求項5】
前記機能層(1)の厚み方向と平行な方向からの750nmの波長の光に対する吸光度(I750)と630nmの波長の光に対する吸光度(I630)の比(I750/I630)が3以上である請求項1~4の何れか1項に記載の機能性フィルム。
【請求項6】
少なくとも1つの前記機能層に1種又は2種以上の二色性紫外線吸収色素又はその重合体をさらに含む請求項1~5の何れか1項に記載の機能性フィルム。
【請求項7】
機能性フィルムの450nmの波長の光に対する面内位相差(Re450)、550nmの波長の光に対する面内位相差(Re550)と650nmの波長の光に対する面内位相差(Re650)が、
Re450/Re550<1.0
Re650/Re550>1.0
の関係を共に満たす請求項1~6の何れか1項に記載の機能性フィルム。
【請求項8】
機能層(3)をさらに含み、前記機能層(3)として、ポジティブCプレートの機能層を含む請求項1~7の何れか1項に記載の機能性フィルム。
【請求項9】
機能層(3)をさらに含み、前記機能層(3)として、直線偏光板を含む請求項1~8の何れか1項に記載の機能性フィルム。
【請求項10】
表示素子の光出射面上に、請求項1~9の何れか1項に記載の機能性フィルムを有する画像表示装置。
【請求項11】
前記画像表示装置が有機EL表示装置であり、発光層に金属電極を有する請求項10に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性フィルム、偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子や有機EL素子等は、情報を視覚的に伝達するため、種々の電子機器に用いられている。IPSモード等の液晶表示素子では液晶分子の配向状態に由来する視野角特性を改善する等の目的で、また有機EL素子等では金属電極による外光の反射を低減するため等の目的で、機能性フィルムが使用されている。
【0003】
例えば、IPSモード等の液晶表示装置では、斜め方向からの視野に対するコントラストを高めるために、ポジティブA層とポジティブC層とを組み合わせた位相差層を有する光学フィルムが提案されている。
また、有機EL素子等ではλ/4位相差フィルムと直線偏光板とを組み合わせてなる円偏光板を、外光反射防止のために用いている。
【0004】
このように位相差を有する機能性フィルムは光学素子に不可欠なものとなっている。しかし汎用の機能性フィルムは、可視光領域において長波長で測定した位相差が短波長で測定した位相差より小さくなるという位相差の波長依存性(以下正波長分散性ともいう)を有するため、理想的な位相差の曲線からずれてしまい、入射する光の波長によりその光学的な補償の効果が異なるという問題点があった。
【0005】
これを改善するため長波長での位相差が短波長での位相差より大きくなるという位相差の波長依存性(以下逆波長分散性ともいう)を有する機能性フィルムを用いる方法(特許文献1)等が提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2014/010325号
【文献】WO2019/044859号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発明では逆波長分散性が不十分で機能性フィルムの分散特性が逆波長分散性の理想的な曲線から外れてしまうなどの改善が求められていた。
これを改善するために特許文献2では、特定の構造を有する赤外線吸収色素を組み合わせた材料の開発がなされてきたが、その特性は十分ではなく、1層の機能性フィルムによりそれを解決するため、製造工程が複雑で入手が困難な二色性赤外線吸収色素を必要とするなど、さらなる改良が求められてきた。
【0008】
本発明は、入手容易な成分により製造可能であり、波長分散特性が逆波長分散性の理想的な曲線と一致するかそれに近似した機能性フィルム、偏光板及び画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意研究した結果、後述する機能性フィルムを提供することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
本発明は、以下の機能性フィルム、偏光板及び画像表示装置を提供する。
[1] 少なくとも2以上の機能層を含む機能性フィルムであって、機能層(1)の面内における遅相軸方向の屈折率をnx、面内において遅相軸方向に直交する方向の屈折率をny、機能層(1)の厚み方向の屈折率をnzとしたときにnx>nyの関係を満たし、機能層(2)に1種又は2種以上の二色性赤外線吸収色素又はその重合体を含み、少なくとも当該二色性赤外線吸収色素の750nmの入射光に対する吸収軸方向が前記機能層(1)の遅相軸方向と略直交する機能性フィルム。
[2] 前記機能層(1)が、nx>ny≒nzを満たす[1]記載の機能性フィルム。
[3] 前記機能層(1)が、nx≒nz>nyを満たす[1]記載の機能性フィルム。
[4] 前記機能層(2)が重合性液晶化合物を含む重合性組成物の重合体であり、当該重合性液晶化合物のメソゲンの長軸方向が前記機能層(1)の遅相軸方向に直交する方向と略平行の方向であり、前記二色性色素が正の二色性を示しかつ当該重合性液晶のメソゲンの長軸方向に沿うように配向してなる[1]~[3]の何れか1に記載の機能性フィルム。
[5] 前記機能層(1)の厚み方向と平行な方向からの750nmの波長の光に対する吸光度(I750)と630nmの波長の光に対する吸光度(I630)の比(I750/I630)が3以上である[1]~[4]の何れか1に記載の機能性フィルム。
[6] 少なくとも1つの前記機能層に1種又は2種以上の二色性紫外線吸収色素又はその重合体をさらに含む[1]~[5]の何れか1に記載の機能性フィルム。
[7] 機能性フィルムの450nmの波長の光に対する面内位相差(Re450)、550nmの波長の光に対する面内位相差(Re550)と650nmの波長の光に対する面内位相差(Re650)が、Re450/Re550<1.0、Re650/Re550>1.0の関係を共に満たす[1]~[6]の何れか1に記載の機能性フィルム。
[8] 機能層(3)をさらに含み、前記機能層(3)として、ポジティブCプレートの機能層を含む[1]~[7]の何れか1に記載の機能性フィルム。
[9] 機能層(3)をさらに含み、前記機能層(3)として、直線偏光板を含む[1]~[8]の何れか1に記載の機能性フィルム。
[10] 表示素子の光出射面上に、[1]~[9]の何れか1に記載の機能性フィルムを有する画像表示装置。
[11] 前記画像表示装置が有機EL表示装置であり、発光層に金属電極を有する[10]に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の機能性フィルム、偏光板及び画像表示装置は、入手困難な二色性赤外線吸収色素を用いることなく、優れた逆波長分散性を呈する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】二色性赤外線吸収色素による逆波長分散性を改善する方法を示した模式図である。
図2】正の二色性赤外線吸収色素の概念図である。
図3】1種の二色性赤外線吸収色素又はその重合体で波長分散性を改善する概念図
図4】2種の二色性赤外線吸収色素又はその重合体で波長分散性を改善する概念図
図5】形態1の模式図
図6】二色性紫外吸収色素による逆波長分散性を改善する方法を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。
〔機能性フィルム〕
本発明の機能性フィルムは、2層の機能層によってなっていてもよく、3層以上の機能層を含んでいてもよい。
該機能性フィルムは、2層の機能層である場合には、1層の機能層(1)と、1種又は2種以上の二色性赤外線吸収色素又はその重合体を含む少なくとも1層の機能層(2)を含む。機能層(1)及び機能層(2)の積層順は特に限定されない。また複数の機能層を積層する場合には、接着層を介して接着されていてもよく、少なくとも1層のプラスチックフィルムに重合性の化合物を塗布した後に熱又はエネルギー線により重合して2層のプラスチックフィルムの積層体としてもよい。
【0014】
本発明の機能性フィルムの層構成の例を示す。ただしこれに限定されるわけではない。
【0015】
【表1】
【0016】
表中、ポジAはポジティブAプレートの機能層を表し、ネガAはネガティブAプレートの機能層を表す。
構成(1)は、二色性赤外線吸収色素を含有しないポジティブAプレートである機能層(1)と正の二色性を示す二色性赤外線吸収色素を含有するポジティブAプレートである機能層(2)を組み合わせて逆波長分散性のポジティブAプレートの特性を示し、構成(2)は、二色性赤外線吸収色素を含有しないネガティブAプレートである機能層(1)と正の二色性を示す二色性赤外線吸収色素を含有するポジティブAプレートである機能層(2)を組み合わせて逆波長分散性のネガティブAプレートの特性を示す。
【0017】
図1に示した(A)が逆波長分散性を示すプラスチックフィルムの波長による面内位相差の理想的な曲線であるが、長波長領域に行くにしたがって、面内位相差は大きくなっている。これに対し、(B)は従来のプラスチックフィルムの波長分散性を模式的に表したものであり、特に長波長領域で理想的な曲線との乖離が大きくなっている。本発明では、二色性赤外線吸収色素を用い長波長領域での面内位相差の改善を図り、理想的な曲線に近づけ、逆波長分散性の改善を図っている。
【0018】
逆波長分散性の機能性フィルムは、450nmの波長の光に対する面内位相差(Re450)、550nmの波長の光に対する面内位相差(Re550)と650nmの波長の光に対する面内位相差(Re650)は、Re450/Re550<1.0及びRe650/Re550>1.0の関係を共に満たす。これは可視光線の全域、特に長波長領域(650nm)においても位相差が大きくなることを示している。Re450/Re550は、0.98以下がより好ましく、0.96以下が更に好ましく、0.95以下がより更に好ましい。この値は小さいほど逆波長分散性が大きいため好ましいが、使用する化合物の他の化合物との相溶性や後述する液晶性の観点から0.70以上が好ましく、0.72以上がより好ましく、0.74以上が更に好ましい。Re650/Re550は、1.10以上がより好ましく、1.12以上が更に好ましく、1.14以上がより更に好ましい。この値は大きいほど逆波長分散性が大きいため好ましいが、使用する化合物の他の化合物との相溶性や後述する液晶性の観点から1.30以下が好ましく、1.28以下がより好ましく、1.26以下が更に好ましい。
【0019】
面内位相差(Re)は、例えば、大塚電子社製の商品名「RETS-100」、王子計測機器社製の商品名「KOBRA-WR」により測定できる。
面内位相差(Re)=(nx-ny)×T[nm] (A)
大塚電子社製の商品名「RETS-100」を用いて面内位相差(Re)等を測定する場合には、以下の手順(A1)~(A4)に沿って測定の準備をすることが好ましい。
(A1)まず、RETS-100の光源を安定させるため、光源をつけてから60分以上放置する。その後、回転検光子法を選択するとともに、θモード(角度方向位相差測定およびRth算出のモード)選択する。このθモードを選択することにより、ステージは傾斜回転ステージとなる。
【0020】
(A2)次いで、RETS-100に以下の測定条件を入力する。
[測定条件]
・リタデーション測定範囲:回転検光子法
・測定スポット径:φ5mm
・傾斜角度範囲::-40度から+40度まで10度刻み(但し、Reの測定では0度を選択)
・測定波長範囲:400nm~800nm
・機能性フィルムの平均屈折率(例えば、アクリル樹脂の場合には、平均値1.55とする。)
・厚み:厚みの実測値(SEMや光学顕微鏡で別途測定した厚みを記載する。)
【0021】
(A3)次いで、この装置にサンプルを設置せずに、バックグラウンドデータを得る。装置は閉鎖系とし、光源を点灯させる毎にこれを実施する。
(A4)その後、装置内のステージ上にサンプルを設置して、測定する。なお、機能性フィルムの面内位相差(Re)及び厚み方向の位相差(Rth)は、機能性フィルム上に紫外線吸収層等の他の層を有する状態でも測定し得る。機能性フィルム上に他の層を有する場合、平坦性の高い側の面がステージ側を向くように配置して測定することが好ましい。
【0022】
本発明の逆波長分散性の機能性フィルムは、JIS K7136:2000のヘイズが3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の逆波長分散性の機能性フィルムは、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0023】
[機能層]
本発明における機能層は、強延伸プラスチックフィルム、弱延伸プラスチックフィルム、無延伸プラスチックフィル又は基材に重合性液晶化合物を塗布し配向させた後に重合した重合体であってもよい。本発明における機能層は、機能層(1)、機能層(2)及びその他の機能層(3)である。
本発明の機能性フィルムは、逆波長分散性を示すAプレートの性質を有するものである。
【0024】
[機能層(1)]
機能層(1)は、Aプレートの性質を有しており、面内における遅相軸方向の屈折率をnx、面内において遅相軸方向に直交する方向の屈折率をny、機能層(1)の厚み方向の屈折率をnzとしたときにnx>nyの関係を満たす。
該機能層(1)は面内における屈折率の最も大きい方向が遅相軸方向であり、遅相軸方向の屈折率がnxとなる。
【0025】
nzは機能層(1)の厚み方向の屈折率を表し、遅相軸方向及び遅相軸方向に直交する方向と直交する方向の屈折率となる。
該機能層(1)において、nx>nyであるが、nx>ny≒nz(いわゆるポジティブAプレート)であっても、nx≒nz>ny(いわゆるネガティブAプレート)であってもよく、nx>ny≒nzであることが、該機能層(1)の使用できる技術分野が広い点で好ましい。
【0026】
nx>ny≒nzである機能層(1)及びnx≒nz>nyである機能層(1)は汎用のプラスチックフィルムであってもよく、重合性液晶化合物を用いた機能層であってもよい。
また、機能層(1)は正波長分散性を示していてもよく、逆波長分散性を示していてもよく、フラットな波長分散性を示していてもよいが、入手の容易さの観点からは、汎用のプラスチックフィルムを使用することができるため正波長分散性又はフラットな波長分散性を示すものが好ましく、正波長分散性を示すものが好ましい。
重合性液晶化合物を用いて該機能層(1)を製造するには、nx>ny≒nzであるプラスチックフィルムの場合は、棒状液晶を基板に対して水平のいわゆるホモジニアス配向させた後、配向状態を保ったまま重合させることにより調製でき、nx≒nz>nyであるプラスチックフィルムの場合は、ディスコチック液晶分子を基盤と垂直に配向させるか、又は棒状の重合性液晶化合物の螺旋軸を基盤と水平の方向と略一致させる方向に配向させた後に重合させることにより調製できる。
【0027】
また、本明細書において、略垂直とは、垂直となるよう意図したが、揺らぎ等により垂直からわずかにずれているものも含むことを意味し、具体的には90度±5度以内を意味し、好ましくは90度±3度以内、より好ましくは90度±1度以内であり、略水平とは、水平となるよう意図したが、揺らぎ等により水平からわずかにずれているものも含むことを意味し、具体的には90度±5度以内を意味し、好ましくは90度±3度以内、より好ましくは90度±1度以内である。
【0028】
棒状液晶としては、正波長分散性の重合性液晶化合物及び逆波長分散性の重合性液晶化合物を用いることができる。
【0029】
該機能層(1)の厚みは、延伸によるプラスチックフィルムである場合には、20~200μmであることが好ましく、25~180μmであることが好ましく、30~150μmであることが好ましい。厚みを20μm以上とすることにより、機械的強度を良好にしやすくすることができる。また、厚みを200μm以下とすることにより、薄膜化の要求を満たしやすくすることができる。
【0030】
延伸によるプラスチックフィルムは二軸延伸であることが好ましい。
重合性液晶化合物を基板に塗布して製造する場合には、0.1~5μmが好ましく、0.2~4μmがより好ましく、0.5~3μmがより好ましい。
【0031】
<延伸プラスチックフィルム>
延伸プラスチックフィルムを構成する樹脂成分としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン及び非晶質オレフィン(Cyclo-Olefin-Polymer:COP)等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルは、機械的強度を良好にしやすい点で好ましく、ポリカーボネート、非晶質オレフィンは波長分散を調整しやすい点で好ましい。
【0032】
延伸プラスチックフィルムは、樹脂層を延伸することによって得ることができる。延伸の手法は、逐次二軸延伸及び同時二軸延伸等の二軸延伸、縦一軸延伸等の一軸延伸が挙げられる。
【0033】
二軸延伸プラスチックフィルムは、プラスチックフィルムを構成する成分を含む樹脂層を延伸することによって得ることができる。延伸の手法は、逐次二軸延伸及び同時二軸延伸等の二軸延伸が挙げられる。二軸延伸プラスチックフィルムの中でも二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
【0034】
<ディスコチック液晶>
本発明では、機能層(1)の形成に、ディスコチック液晶性化合物を使用してもよい。ディスコチック液晶性化合物は、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994)等)に記載されている。ディスコチック液晶性化合物の重合については、特開平8-27284号公報に記載がある。
【0035】
ディスコチック液晶性化合物は、重合により固定可能なように、重合性基を有することが好ましい。例えば、ディスコチック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させた構造が考えられるが、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に連結基を有する構造が好ましい。すなわち、重合性基を有するディスコチック液晶性化合物は、下記一般式(D1)で表される化合物であることが好ましい。
【0036】
【化1】
【0037】
式中、AD1はnD1価の円盤状基を表し、RD1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数2~12のアルケニル基又は-SpD1-PD1を表すが、当該アルキル基及びアルケニル基中の1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子により置換されていてもよいが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基及びアルケニル基中の1個又は2個以上の-CH-は-O-、-COO-、-OCO-、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-CH=CH-又は-C≡C-で置換されていてもよいが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよく、SpD1はスペーサー又は単結合を表すがSpD1中の水素原子は-SpD1-PD1で置換されていてもよく、PD1は重合性基を表し、BD1は2価の連結基を表すがBD1中の水素原子は-SpD1-PD1で置換されていてもよく、AD2は2価の環状基を表すがAD2中の水素原子は-SpD1-PD1で置換されていてもよく、nD1は1~20の自然数を表すがAD1の価数と一致し、nD2は0~5の自然数を表すが、同一分子内にRD1、SpD1、PD1、BD1、AD2及び/又はnD2が複数存在する場合には同一であっても異なっていてもよい。
D1は、一般式(AD1-1)~(AD1-16)で表される円盤状基が好ましく、一般式(AD1-1)、(AD1-2)、(AD1-8)及び(AD1-12)で表される円盤状基が更に好ましい。
【0038】
【化2】
【0039】
【化3】
【0040】
【化4】
【0041】
【化5】
【0042】
【化6】
【0043】
(式中、*でBD1と結合しており、Metは2価の金属を表し、式中の水素原子はRD1で置換されていてもよい。)
D1は、RD1は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基又は-SpD1-PD1が好ましく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基又は-SpD1-PD1が更に好ましく、直鎖状であっても分岐していてもよく、当該アルキル基及びアルケニル基中の1個又は2個以上の-CH-は-O-、-COO-又は-OCO-で置換されていてもよい。
SpD1は、炭素原子数1~20のアルキレン基又は単結合であることが好ましく、炭素原子数2~8のアルキレン基又は単結合であることが更に好ましい。
D1は、一般式(PD1-1)~(PD1-9)で表される重合性基が好ましく、一般式(PD1-1)で表される重合性基が更に好ましい。
【0044】
【化7】
【0045】
(式中、*でSpD1と結合しており、Rp1は水素原子又はメチル基を表す。)
D1は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-COO-又は-OCO-CH=CH-が好ましく、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-COO-又は-OCO-CH=CH-が好ましい。
D2は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する2価の基、又は置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環を有する2価の基が好ましく、下記の前記基(a)、基(b)及び基(c)が更に好ましい。
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置換されてもよい。)、
(b) 1,4-フェニレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)及び
(c) ビフェニル-4,4’-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ただし、ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)、
【0046】
からなる群より選ばれる基を表すが、前記基(a)、基(b)及び基(c)中の水素原子は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルキル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニルオキシ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子又は、-SpD1-PD1で置換されていてもよく、
D1は、2~18が好ましく、4、6、8又は12が更に好ましい。
D2は、1~4が好ましく、1又は2が更に好ましい。
分子内に一般式(PD1-1)で表される重合性基を1~20有することが好ましいが、4、6、8又は12個有することが更に好ましい。
【0047】
なお、液晶性化合物のディスコチックネマティック液晶相-固相転移温度は、30~300℃が好ましく、30~170℃が更に好ましい。
【0048】
<正波長分散性の重合性液晶化合物>
本発明において、機能層(1)の形成に、棒状液晶として1種又は2種以上の正波長分散性の重合性液晶化合物を使用してもよい。正波長分散性の重合性液晶化合物を配向させた状態で重合によって固定することがより好ましい。液晶性化合物は、活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有することが好ましく、より好ましくは重合性基を有する。
分子内の重合性基の個数は、好ましくは1~6個、より好ましくは1~3個である。正波長分散性の重合性液晶化合物としては、一般式(L1)で表される化合物が好ましい。
【0049】
【化8】
【0050】
式中、RL1及びRL2はそれぞれ独立して、一般式(D1)におけるRD1と同じ意味を表すが、RL1及びRL2は-SpL1-PL1となってもよいが、SpL1は一般式(D1)におけるSpD1と同じ意味を表し、PL1は一般式(D1)におけるPD1と同じ意味を表し、
L1及びAL2はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する2価の基、又は置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環を有する2価の基が好ましく、下記の前記基(a)、基(b)及び基(c)が更に好ましい。
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置換されてもよい。)、
(b) 1,4-フェニレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)及び
(c) ビフェニル-4,4’-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ただし、ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)、
【0051】
からなる群より選ばれる基を表すが、前記基(a)、基(b)及び基(c)中の水素原子は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルキル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニルオキシ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子又は、-SpD1-PD1で置換されていてもよく、
L1は、一般式(D1)におけるBD1と同じ意味を表し、nL1は1~4の自然数を表すが、2、3又は4が好ましい。
【0052】
一般式(L1)で表される化合物として一般式(L-1)~(L-4)で表される化合物が好ましいが、これに限定されるわけではない。
【0053】
【化9】
【0054】
(式中、PL11及びPL21はそれぞれ独立してPL1と同じ意味を表し、RL21は炭素原子数1~20のアルキル基又は炭素原子数1~20のアルコキシ基を表し、RL3はフッ素原子、塩素原子、炭素原子数1~4のアルキル基又は炭素原子数1~4のアルコキシ基を表し、式中のフェニレン基及びナフタレン-2,6-ジイル基はRL3により置換されていてもよく、nL3及びnL7はそれぞれ独立して2~8の自然数を表し、nL4及びnL6はそれぞれ独立して0又は1を表し、nL5は1又は2を表す。)
【0055】
さらに正波長分散性の重合性液晶化合物は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Makromol.Chem.,192巻、59頁(1991年)、Advanced Materials,5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1-272551号公報、同6-16616号公報、同7-110469号公報、同11-80081号公報、及び特開2001-328973号公報などに記載の化合物を用いることができる。
【0056】
<逆波長分散性を示す液晶性化合物>
本発明において、棒状液晶として1種又は2種以上の逆波長分散性の重合性液晶化合物を使用してもよい。逆波長分散性を示す重合性液晶化合物としては、一般式(R1)で表される化合物が好ましい。
【0057】
【化10】
【0058】
式中、RR1及びRR2はそれぞれ独立して、一般式(D1)におけるRD1と同じ意味を表すが、RR1はPR1-SpR1-であってもよく、RR2は-SpR2-PR2であってもよいが、SpR1及びSpR2はそれぞれ独立して、一般式(D1)におけるSpD1と同じ意味を表し、PR1及びPR2はそれぞれ独立して、一般式(D1)におけるPD1と同じ意味を表し、AR2、AR3、AR4及びAR5はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する2価の基、又は置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環を有する2価の基が好ましく、下記の前記基(a)、基(b)及び基(c)が好ましい。
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置換されてもよい。)、
(b) 1,4-フェニレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)及び
(c) ビフェニル-4,4’-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ただし、ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)、
【0059】
からなる群より選ばれる基を表すが、前記基(a)、基(b)及び基(c)中の水素原子は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルキル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニルオキシ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子又は、-SpD1-PD1で置換されていてもよく、AR1は、一般式(AR1)~(AR7)で表される置換基を表し、
【0060】
【化11】
【0061】
(式中、★でBR1又はBR2と結合し、★★でBR1と結合し、★★★でDR1と結合し、式中の水素原子はRR1により置換されていてもよい。)
R1は、一般式(DR1)で表される置換基を表し、
【0062】
【化12】

(式中、GR1は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表すが、当該アルキル基は無置換であるか又は1つ以上のRR1によって置換されていても良く、
R1は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-NGR2-、-N=CGR2-、-CO-NGR2-、-OCO-NGR2-又は-O-NGR2-を表し、GR2は水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~12のシクロアルキル基、炭素原子数3~12のシクロアルケニル基、炭素原子数6~18の芳香族環状基(当該芳香族炭化水素基の任意の-CH=は-N=に置換されていても良い。)を有する炭素原子数2~30の有機基又は-SpR2-PR2を表し、当該アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基及び芳香族環状基はそれぞれ、無置換であるか又は1つ以上のRR1によって置換されていても良く、当該アルキル基は当該シクロアルキル基又はシクロアルケニル基によって置換されていても良く、当該アルキル基中の1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-SO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良く、当該シクロアルキル基又はシクロアルケニル基中の1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-O-、-CO-、-COO-、-OCO-又は-O-CO-O-に置換されていても良く、KR1は、芳香族炭化水素基を有する炭素原子数2~30の有機基を表すが、当該芳香族炭化水素基の任意の炭素原子はヘテロ原子に置換されていても良く、芳香族炭化水素基は無置換であるか又は1つ以上のRR1によって置換されていても良いが、KR1は、一般式で(KR1)~(KR3)で表される置換基を表し、
【0063】
【化13】
【0064】
(式中、★でJR1と結合する。)
R1、BR2、BR3及びBR4はそれぞれ独立して、一般式(D1)におけるBD1と同じ意味を表し、nR1は1~4の自然数を表すが、2、3又は4が好ましく、nR2及びnR3はそれぞれ独立して、0~4の自然数を表すが、0、1又は2が好ましいが、同一分子中のRR1、RR2、PR1、PR2SpR1、SpR2、AR2、AR3、AR4、AR5、DR1、GR1及び/又はGR2は同一であっても異なっていてもよい。
【0065】
また、逆波長分散性を示す液晶性化合物としては、特開2007-002210号、特開2010-031223号、特開2013-509458号、WO2014/010325号、特開2010-84032及び特開2016-166344等の各特許公報に記載されている化合物を用いてもよい。
【0066】
<重合開始剤>
配向させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定する。固定は重合反応を用いることが好ましく、重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。これらの中でも、光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書参照)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書参照)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書参照)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書参照)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書参照)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書参照)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書参照)が含まれる。
【0067】
重合開始剤の使用量は、位相差層形成用組成物の全固形分に対して0.01~20質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、好ましくは20mJ/cm~2000mJ/cm、より好ましくは100~1000mJ/cmである。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0068】
<界面活性剤>
位相差層形成用組成物は、界面活性剤を含有することが好ましい。また、界面活性剤の中でも、重合性基を有するフッ素系界面活性剤及び重合性基を有するシリコン系界面活性剤より選択される1種以上を選択して用いることが好ましい。
界面活性剤の含有量は、位相差層形成用組成物の全固形分に対して0.01~2.0質量%であることが好ましく、0.1~1.0質量%であることがより好ましい。
【0069】
<溶剤>
位相差層形成用組成物は、通常は溶剤を含有する。
溶剤としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール類(ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等)等が例示でき、これらの混合物であってもよい。
【0070】
位相差層は、例えば、位相差層形成用組成物を塗布、乾燥、硬化することにより形成できる。また、位相差層形成用組成物は、配向膜上に塗布することが好ましい。
【0071】
<その他の添加剤>
本発明において、位相差層形成用組成物は、上記の成分に加え、光学活性化合物、可塑剤、重合性モノマー等を有していてもよい。これらの成分は、液晶性化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
【0072】
<光学活性化合物>
光学活性化合物としては、一般式(Ch1)~(Ch4)で表される化合物が好ましい。
【0073】
【化14】
【0074】
(式中、RCh11、RCh12、RCh13、RCh21、RCh22、RCh31、RCh32及びRCh41はそれぞれ独立して一般式(D1)におけるRD1と同じ意味を表し、ACh11、ACh21、ACh22、ACh31、ACh32及びACh41はそれぞれ独立して一般式(D1)におけるAD1と同じ意味を表し、BCh11、BCh21、BCh22、BCh31、BCh32及びBCh41はそれぞれ独立して一般式(D1)におけるBD1と同じ意味を表し、nCh11、nCh21、nCh22、nCh31、nCh32及びnCh41はそれぞれ独立して0~4の自然数を表すが、0、1又は2が好ましく、nCh12は0~18の自然数を表すが、0、1又は2が好ましく、同一化合物中ACh11、ACh21、ACh22、ACh31、ACh32、ACh41、BCh11、BCh21、BCh22、BCh31、BCh32及び/又はBCh41が複数存在する場合には同一であっても異なっていてもよい。)
【0075】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性又はカチオン重合性の化合物が挙げられ、好ましくは多官能ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶性化合物と共重合性の化合物が好ましい。
これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
ラジカル重合性モノマーはその分子内に二重結合を有していてもよい。分子内に二重結合を有するラジカル重合性モノマーを用いることにより光学フィルムの強度を増加させることができるが、二重結合の数の増加により位相差層形成用組成物の粘度が増加するため、ラジカル重合性モノマー中の二重結合の数は1個以上10個以下であることが好ましく、1個以上8個以下であることが好ましい。
【0076】
ラジカル重合性モノマーとしては、多価アルコールと不飽和脂肪酸とのエステル縮合体であることが好ましい。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールが好ましい。不飽和脂肪酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はイタコン酸が好ましい。
【0077】
重合性モノマーとしては、一般式(P1)で表される化合物が好ましいが、これら化合物に限定されるわけではない。
【0078】
【化15】

式中、RP1は、一般式(D1)におけるRD1と同じ意味を表し、PP1は一般式(D1)におけるPD1と同じ意味を表す。
【0079】
位相差層形成用組成物は重合性モノマーを含有しなくてもよいが、機能層(1)を、棒状液晶をホメオトロピック配向させて形成する際には、垂直配向性を付与させるために含有していることが好ましい。重合性モノマーを含有する場合にはその含有量は、位相差層形成用組成物中の重合性化合物全量の2~50質量%であることが好ましく、3~40質量%であることがさらに好ましい。
【0080】
(位相差層の塗布方法)
位相差層形成用組成物の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0081】
(配向膜)
液晶性化合物は配向膜により配向させてもよい。
配向膜は、位相差層形成用組成物を塗布、乾燥、硬化して位相差層を形成する際に、位相差層内で液晶性化合物を配向させやすくする役割を有する。
なお、位相差層の形成時点で配向膜を有していても、他の部材に位相差層を転写し、かつ、転写時に配向膜が転写されないようにすれば、配向膜を有さない光学積層体を得ることができる。
【0082】
配向膜は、例えば、透明基材上に、配向層形成用組成物を塗布し、配向規制力を付与することにより配向層とすることができる。配向膜形成用組成物は、光二量化型の材料等の従来公知のものから適宜選択して用いることができる。
配向膜に配向規制力を付与する手段は、従来公知のものとすることができ、例えば、ラビング法、光配向法、賦形法などが挙げられる。
配向膜の厚みは、好ましくは1~1,000nmであり、60~300nmがより好ましい。
【0083】
[機能層(2)]
本発明の機能層(2)は、前述機能層(1)とは異なるプラスチックフィルムであり、機能層(1)と組み合わせて、機能層(1)の逆波長分散性を改善するものである。
【0084】
機能性フィルムが逆波長分散性のAプレートのフィルムである場合に機能層(1)はAプレートとなるが、その場合組み合わせる機能層(2)は二色性赤外線吸収色素として1種又は2種以上の非重合性又は重合性の正の二色性を示す二色性赤外線吸収色素を含有し、機能層(1)の遅相軸方向に直交する方向と略平行に赤外線吸収する部位の長軸方向が配向している(構成(1)又は(2))ことが好ましい。
【0085】
この機能層(2)は、重合性液晶化合物を含む重合性組成物の重合体であることが好ましく、図5として記載したように該重合性液晶化合物のメソゲンの長軸方向は前記機能層(1)の遅相軸方向に直交する方向と略平行の方向であることが好ましい。
【0086】
高分子液晶は重合性液晶化合物の重合体であるが、重合性液晶化合物は前述の重合性液晶化合物を用いることができる。重合性液晶化合物は1種のみを用いることもできるが、2種以上を用いることもでき、光学活性化合物をさらに用いることで、螺旋構造を誘起することができる。光学活性化合物としては、汎用の化合物を使用することができ、特に制限されない。
重合性液晶化合物は配向膜により基板に対して水平に配向させることが好ましい。
配向膜は、汎用の水平配向膜を使用することができる。水平配向膜に配向規制力を付与する手段は、従来公知のものとすることができ、例えば、ラビング法、光配向法、賦形法などが挙げられる。
水平配向膜の厚みは、通常、1~1000nmであり、60~300nmが好ましい。
【0087】
[二色性赤外線吸収色素又はその重合体]
本発明における機能性フィルムを構成する機能層(2)は、非重合性の二色性赤外線吸収色素又は重合性基を有する二色性赤外線吸収色素を含む化合物を重合した重合体を含有する。
非重合性の二色性赤外線吸収色素又は重合性基を有する二色性赤外線吸収色素を含む化合物を重合した重合体は、図2に記載したように赤外線吸収する部分構造を有しており、該部分構造はπ電子が共役した構造となっている。π電子が共役した構造は棒状の形状(図2に記載の1)となっているため、赤外線吸収部位の長軸方向と短軸方向を持ち、赤外線吸収部位の長軸方向は短軸方向と比較して赤外線をより吸収するため、赤外線の吸収に関して二色性を示す。
ここで、二色性色素の配向方向と吸収軸の方向が略一致するものが正の二色性を示す二色性赤外線吸収色素であり、二色性色素の配向方向と吸収軸の方向が略直交するものが負の二色性を示す二色性赤外線吸収色素である。なお、図2に図示した化合物は分子の長軸と赤外線の吸収軸が一致しているため正の二色性色素である。
【0088】
この赤外線の吸収軸の方向と赤外線吸収する部分構造の配向状態は略一致するため、プラスチックフィルムにおける、赤外線吸収する部分構造の配向状態は750nmの入射光に対する吸収軸の方向により決定することができる。
【0089】
機能性フィルムは、画像表示装置である液晶表示素子や有機EL素子に用いられるため、二色性赤外線吸収色素又はその重合体は可視光の透過を阻害すると画像の色調の変化や輝度の低下が生じるため、可視光域に強い吸収を有することは好ましくない。このため、1種又は2種以上の二色性赤外線吸収色素を含有するプラスチックフィルムの厚み方向と平行な方向からの750nmの波長の光に対する吸光度(I750)と630nmの波長の光に対する吸光度(I630)の比(I750/I630)及び/又は1種又は2種以上の二色性赤外線吸収色素を含有するプラスチックフィルムの厚み方向と平行な方向からの800nmの波長の光に対する吸光度(I800)と630nmの波長の光に対する吸光度(I630)との比(I800/I630)が3以上であることが好ましく、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、(I800/I630)が5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
また、750nmより長波長側にも半値幅が50nm以下である吸光度のピークがあることが好ましい。本発明において吸光度のピークとは、750~850nmの波長領域での分光吸収スペクトルの吸収極大を示す波長を意味し、複数の吸収極大が存在する場合には、その中で最大の吸光度を示す吸収極大波長を意味する。
【0090】
本発明では、機能性フィルムの逆波長分散性を改善するために非重合性の二色性赤外線吸収色素又は重合性基を有する二色性赤外線吸収色素を含む化合物を重合した重合体を用いる。従来の逆波長分散性を示す重合性液晶化合物を重合した重合物からなるフィルムは、重合性液晶化合物として、液晶性を発現させるメソゲン部分を有し、かつ分子の短軸方向にπ電子の共役系を持つ構造を導入することにより、逆波長分散性を発現させている。
しかし、従来の重合性液晶化合物のみを用いる方法では、図1の(B)で示すように、可視光の長波長領域での理想曲線(A)からのずれが見られた。このため、本発明では可視光域の吸光度が小さく、赤外域に近づくにつれ吸光度が大きくなり、かつ二色性を有する赤外線吸収色素を用いることにより、可視光線の長波長領域の面内位相差を大きくし、波長分散性の理想的な曲線である(A)に近づけることができる。
特に本発明の構成は、Aプレートの特性を有する機能性フィルムを製造するのに有用である。
【0091】
非重合性の二色性赤外線吸収色素又は重合性基を有する二色性赤外線吸収色素を含む化合物を重合した重合体は、1種を用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。図3に図示するように(C)のような波長分散性を有する1種の赤外線吸収色素を用いて波長分散性の理想的な曲線である(A)に近づけることもできるが、図4に示すように(D)や(E)のような波長分散性を有する化合物を組み合わせて、波長分散性の理想的な曲線である(A)に近づけることもできる。
【0092】
本発明において、機能層(1)はnx>nyの関係を満たし、ポジティブAプレート又はネガティブAプレートの特性を有している。この機能性フィルムにおいて可視光線の長波長領域での波長分散性を改善するには、赤外線吸収する部分構造の長軸方向を機能層(1)の遅相軸方向に直交する方向に略水平に配列させることが好ましい。
【0093】
図2に図示した構造を有する化合物を適宜配向させ、必要に応じて重合することにより逆波長分散性を改善する。
【0094】
二色性赤外線吸収色素は、機能層(2)の少なくとも1つに含有しているが、重合性液晶化合物、正の二色性赤外線吸収色素(図2に図示した。)、開始剤及び溶剤を含有する組成物を基材に塗布し、溶剤を留去後、紫外線を照射してプラスチックフィルムとすることが好ましい。正の二色性赤外線吸収色素は重合性の化合物であっても非重合性の化合物であってもよい。
【0095】
この場合において、正の二色性赤外線吸収色素の赤外線の吸収軸は、他の重合性液晶化合物とともに水平配向膜により配向し、その配向方向はプラスチックフィルムの遅相軸方向に直交する方向と略水平な方向となることが逆波長分散性を改善するために好ましい。
遅相軸方向に直交する方向に赤外線吸収軸があることより、逆波長分散性は改善できるため、このようにして製造した機能層(2)は、機能層(1)の遅相軸方向及び厚み方向に対する赤外線の吸収が遅相軸方向に直交する方向と比べて小さいため、効率的に逆波長分散性を改善することができる。例えば特許文献3に記載の発明では、遅相軸方向に直交する方向だけでなく厚み方向にも赤外線の吸収軸があるため効果が打ち消され、逆波長分散性の改善の効率が悪い。これに対し本願のような構成をとる場合、正の二色性赤外線吸収色素の添加量を減少させることができたり、同じ添加量であっても膜厚を薄くできるなどの優れた効果がある。
【0096】
また、二色性赤外線吸収色素は一般的に他の化合物に対する相溶性が低いため、重合性組成物とした際に経時的に析出したり、そもそも必要量が溶解しなかったりする問題があるが、少量の添加で効果を奏する本発明では、これらの問題が生じないか、極めて小さくすることができる。
さらに、本願発明の場合には、二色性赤外線吸収色素として正の二色性化合物を用いることができ、非重合性の二色性赤外線吸収色素であってもよい。非重合性の二色性赤外線吸収色素としては、市販の化合物を用いることができるため、選択の幅が広く、相溶性に問題のない化合物を選択するなどできる。特許文献2記載の発明では負の二色性を有する二色性赤外線吸収色素を必要とするため、入手も困難である。
また、重合性基を有している二色性赤外線吸収色素は他の重合性化合物とともに高分子鎖中に取り込まれるため機能性フィルムの耐久性が増すため好ましい。
【0097】
本発明において、二色性赤外線吸収色素又はその重合体を含む機能層(1)を2層以上含む形態や二色性赤外線吸収色素又はその重合体を含む機能層(2)を複数含む形態も好ましい。
【0098】
赤外線吸収する部分構造は、前述のように二色性を示し赤外線領域に吸収を有していれば特に限定されないが、シアニン骨格、スクアリリウム骨格、ピリリウム骨格、アゾ骨格、アントラキノン骨格、ジチオレン骨格及びジイモニウム骨格等が好ましい。
【0099】
二色性赤外線吸収色素又は重合性基を有する二色性赤外線吸収色素は下記の一般式(IR1)~(IR8)で表される化合物が好ましい。
【0100】
【化16】
【0101】
式中、AIR11は一般式(AIR11-1)~(AIR11-6)で表される置換基を表し、
【0102】
【化17】

(式中、破線の二重結合及び破線の単結合は式中のAIR11が結合している二重結合及び単結合を表し、RIR11及びRIR12はそれぞれ独立して一般式(D1)におけるRD1と同じ意味を表す。)
IR12は一般式(AIR12-1)~(AIR11-16)で表される置換基を表し、
【0103】
【化18】
【0104】
【化19】
【0105】
(式中、破線の単結合は式中のAIR12が結合している単結合を表し、RIR13、RIR14及びRIR15はそれぞれ独立して一般式(D1)におけるRD1と同じ意味を表す。)
IR13は一般式(AIR13-1)~(AIR13-29)で表される置換基を表し、
【0106】
【化20】
【0107】
【化21】
【0108】
【化22】
【0109】
(式中、破線の二重結合は式中のAIR13が結合している二重結合を表し、RIR13、RIR14及びRIR15はそれぞれ独立して一般式(D1)におけるRD1と同じ意味を表す。)
IR11、RIR11、RIR12、RIR13、RIR14及び/又はRIR15が分子内に複数存在する場合には同一であっても異なっていてもよい。
【0110】
【化23】
【0111】
式中、AIR21はAIR12と同じ意味を表し、AIR22はAIR13と同じ意味を表す。
【0112】
【化24】
【0113】
式中、RIR41~RIR45はそれぞれ独立して、一般式(RIR4)で表される置換基を表す。
【0114】
【化25】
【0115】
(式中、RIR48は一般式(D1)におけるRD1と同じ意味を表し、AIR41は置換基を有してもよい芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する2価の基、又は置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環を有する2価の基が好ましく、下記の前記基(a)、基(b)及び基(c)が好ましい。
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置換されてもよい。)、
(b) 1,4-フェニレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)及び
(c) ビフェニル-4,4’-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ただし、ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)、
【0116】
からなる群より選ばれる基を表すが、前記基(a)、基(b)及び基(c)中の水素原子は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルキル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニルオキシ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子又は、-SpD1-PD1で置換されていてもよく、BIR41は一般式(D1)におけるBD1と同じ意味を表し、nIR41は一般式(D1)におけるnD2と同じ意味を表すが、同一分子内にRIR48、AIR41、BIR41及び/又はnIR41が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよく、分子内に存在する異なるBIR41中の水素原子が脱離したラジカル及び/又はRIR48中の水素原子が脱離したラジカルが結合して環状構造となっていてもよい。)
一般式(IR4)で表される化合物としては、一般式(IR4-1)~(IR4-3)で表される化合物が好ましい。
【0117】
【化26】
【0118】
式中、一般式RIR46及びRIR47はそれぞれ独立して一般式(RIR4)で表される置換基を表すが、同一分子内にRIR46及び/又はRIR47が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0119】
【化27】

(式中、RIR48は一般式(D1)におけるRD1と同じ意味を表し、AIR41は置換基を有してもよい芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する2価の基、又は置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環を有する2価の基が好ましく、下記の前記基(a)、基(b)及び基(c)が好ましい。
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置換されてもよい。)、
(b) 1,4-フェニレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)及び
(c) ビフェニル-4,4’-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ただし、ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)、
【0120】
からなる群より選ばれる基を表すが、前記基(a)、基(b)及び基(c)中の水素原子は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルキル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニルオキシ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子又は、-SpD1-PD1で置換されていてもよく、BIR41は一般式(D1)におけるBD1と同じ意味を表し、nIR41は一般式(D1)におけるnD2と同じ意味を表すが、同一分子内にRIR48、AIR41、BIR41及び/又はnIR41が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0121】
【化28】

式中、一般式RIR51及びRIR52はそれぞれ独立して一般式(RIR5)で表される置換基を表す。
【0122】
【化29】
【0123】
(式中、RIR53は一般式(D1)におけるRD1と同じ意味を表し、AIR51は置換基を有してもよい芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する2価の基、又は置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環を有する2価の基が好ましく、下記の前記基(a)、基(b)及び基(c)が好ましい。
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置換されてもよい。)、
(b) 1,4-フェニレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)及び
(c) ビフェニル-4,4’-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ただし、ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)、
【0124】
からなる群より選ばれる基を表すが、前記基(a)、基(b)及び基(c)中の水素原子は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルキル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニルオキシ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子又は、-SpD1-PD1で置換されていてもよく、BIR51は一般式(D1)におけるBD1と同じ意味を表し、nIR51は一般式(D1)におけるnD2と同じ意味を表すが、同一分子内にRIR53、AIR51、BIR51及び/又はnIR51が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0125】
【化30】
【0126】
式中、一般式RIR61~RIR64はそれぞれ独立して一般式(RIR6)で表される置換基を表す。
【0127】
【化31】
【0128】
(式中、RIR65は一般式(D1)におけるRD1と同じ意味を表し、AIR61は置換基を有してもよい芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する2価の基、又は置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環を有する2価の基が好ましく、下記の前記基(a)、基(b)及び基(c)が好ましい。
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置換されてもよい。)、
(b) 1,4-フェニレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)及び
(c) ビフェニル-4,4’-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ただし、ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)、
【0129】
からなる群より選ばれる基を表すが、前記基(a)、基(b)及び基(c)中の水素原子は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルキル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニルオキシ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子又は、-SpD1-PD1で置換されていてもよく、BIR61は一般式(D1)におけるBD1と同じ意味を表し、nIR61は一般式(D1)におけるnD2と同じ意味を表すが、同一分子内にRIR65、AIR61、BIR61及び/又はnIR61が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0130】
【化32】
【0131】
式中、一般式RIR71は一般式(RIR7)で表される置換基を表すが、同一分子内に複数存在するRIR71は同一であっても異なっていてもよい。
【0132】
【化33】
【0133】
(式中、RIR72は一般式(D1)におけるRD1と同じ意味を表し、AIR71は置換基を有してもよい芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する2価の基、又は置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環を有する2価の基が好ましく、下記の前記基(a)、基(b)及び基(c)が好ましい。
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置換されてもよい。)、
(b) 1,4-フェニレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)及び
(c) ビフェニル-4,4’-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ただし、ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)、
【0134】
からなる群より選ばれる基を表すが、前記基(a)、基(b)及び基(c)中の水素原子は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルキル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニルオキシ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子又は、-SpD1-PD1で置換されていてもよく、BIR71は一般式(D1)におけるBD1と同じ意味を表し、nIR71は一般式(D1)におけるnD2と同じ意味を表すが、同一分子内にRIR72、AIR71、BIR71及び/又はnIR71が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0135】
【化34】

式中、一般式RIR81は一般式(RIR8)で表される置換基を表すが、同一分子内に複数存在するRIR81は同一であっても異なっていてもよい。
【0136】
【化35】

(式中、RIR82は一般式(D1)におけるRD1と同じ意味を表し、AIR81は置換基を有してもよい芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する2価の基、又は置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環を有する2価の基が好ましく、下記の前記基(a)、基(b)及び基(c)が好ましい。
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置換されてもよい。)、
(b) 1,4-フェニレン基(ただし、この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)及び
(c) ビフェニル-4,4’-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ただし、ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。)、
【0137】
からなる群より選ばれる基を表すが、前記基(a)、基(b)及び基(c)中の水素原子は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルキル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニル基、ハロゲン原子で置換していてもよい炭素原子数1~12のアルケニルオキシ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子又は、-SpD1-PD1で置換されていてもよく、BIR81は一般式(D1)におけるBD1と同じ意味を表し、nIR81は一般式(D1)におけるnD2と同じ意味を表すが、同一分子内にRIR82、AIR81、BIR81及び/又はnIR81が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0138】
赤外線及び紫外線吸収色素とは異なる重合性化合物の好ましい構造としては、機能層(1)と同様の化合物を用いることができる。
【0139】
[二色性紫外線吸収色素]
本発明では、非重合性の二色性紫外線吸収色素又は重合性基を有する二色性紫外線吸収色素を含む化合物を重合した重合体を用いることにより、可視光の長波長領域の波長分散性を改善するが、二色性紫外線吸収色素又はその重合体をさらに用いることにより短波長領域についても波長分散性を改善し、より逆波長分散性の理想的な曲線に近づけることも好ましい(図6として図示した。)。
【0140】
非重合性の二色性紫外線吸収色素又は重合性基を有する二色性紫外線吸収色素を含む化合物を重合した重合体は紫外線を吸収する構造を有するが、その構造としては、ベンゾオキサジノン骨格、ベンゾトリアゾール骨格、アゾメチン骨格、アゾキシ骨格、シアノビフェニル骨格、シアノフェニルエステル骨格、安息香酸エステル骨格、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、フェニルピリミジン骨格、フェニルジオキサン骨格又はトラン骨格が好ましく、ベンゾオキサジノン骨格、ベンゾトリアゾール骨格、アゾメチン骨格又はアゾキシ骨格が好ましい。
非重合性の二色性紫外線吸収色素又は重合性基を有する二色性紫外線吸収色素を含む化合物を重合した重合体は、紫外線吸収する部分構造を持つ以外の特徴は、非重合性の二色性赤外線吸収色素又は重合性基を有する二色性赤外線吸収色素を含む化合物を重合した重合体と同様であり、紫外線吸収する部分構造の配向や配向方法は赤外線吸収する部分構造と同様の特徴を有するため記載を省略する。
ベンゾオキサジノン骨格、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物としては、一般式(U1)及び(U2)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0141】
【化36】
【0142】
(一般式(U1)及び(U2)中、XU11~XU29はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数2~12のアルケニル基又は一般式(D1)における-SpD1-PD1を表すが、当該アルキル基及びアルケニル基中の1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子又は-SpD1-PD1により置換されていてもよいが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基及びアルケニル基中の1個又は2個以上の-CH-は-O-、-COO-、-OCO-、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-CH=CH-又は-C≡C-で置換されていてもよいが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよく、またXU11~XU29はそれぞれ独立して、一般式(U3)で表される基であってもよいが、BU11は、一般式(D1)におけるBD1又はAD2と同じ意味を表し、一般式(U3)におけるAU31は一般式(D1)におけるAD2と同じ意味を表し、BU31は一般式(D1)におけるBD1と同じ意味を表し、RU31は一般式(D1)におけるRD2と同じ意味を表すが、RU31中の水素原子は-SpD1-PD1により置換されていてもよく、nU31は1~3の自然数を表し、式中にSpD1及び/又はPD1が複数存在する場合には同一であっても、異なっていてもよい。)
より具体的には一般式(U11)~(U21)で表される化合物が好ましい。
【0143】
【化37】
【0144】
(式中、RU11及びRU12はそれぞれ独立して、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数2~12のアルケニル基を表すが、当該アルキル基及びアルケニル基中の1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子又は-SpD1-PD1により置換されていてもよいが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基及びアルケニル基中の1個又は2個以上の-CH-は-O-、-COO-、-OCO-、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-CH=CH-又は-C≡C-で置換されていてもよいが複数存在する場合それらは同一であっても異なっていてもよく、SpD1及びPD1は一般式(D1)におけるSpD1及びPD1と同じ意味を表す。)
【0145】
二色性紫外線吸収色素又はその重合体も画像表示装置に使用されるため、可視光の透過を強く阻害することは好ましくない。このため、1種又は2種以上の二色性紫外線吸収色素を含有するプラスチックフィルムの厚み方向と平行な方向からの350 nmの波長の光に対する吸光度(I350)と420 nmの波長の光に対する吸光度(I420)の比(I350/I420)が10以上であることが好ましく、15以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。また、350 nmより短波長側にも半値幅が50 nm以下である吸光度のピークを有することが好ましい。
【0146】
<機能層(3)>
機能層(3)は前述の機能層(1)及び機能層(2)と異なる層である。機能層(3)としては、偏光板、ポジティブC層、機能層(1)及び機能層(2)を作製する際の基板、配向膜層、ハードコート層、低屈折率層、高屈折率層、防眩層、防汚層、帯電防止層、ガスバリア層、防曇層及び透明導電層等が挙げられる。機能層は、前述したものから選ばれる一つでもよいが、二以上の層を積層したものでもよい。
また、機能層は、前述した機能の二種以上が複合したものであってもよい。すなわち、本明細書において、ハードコート層、低屈折率層、高屈折率層、防眩層、防汚層、帯電防止層、ガスバリア層、防曇層及び透明導電層等の各機能層の表記は、単独の機能を有する機能層のみならず、複合機能を有する機能層を意味するものとする。例えば、ハードコート層は、防汚性ハードコート層、防眩性ハードコート層及び高屈折率ハードコート層等を含む。また、防汚層は、防眩性防汚層及び低屈折率防汚層等を含む。
以下、機能層の代表例である、偏光板、ポジティブC層について具体的に説明する。
【0147】
<偏光板>
本発明の偏光板は、偏光子を有する。
偏光板は、例えば、λ/4位相差板との組み合わせにより反射防止性を付与するために使用される。この場合、画像表示装置上にλ/4位相差板を配置し、λ/4位相差板よりも視認者側に偏光板が配置される。
【0148】
<偏光子>
偏光子としては、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等のシート型偏光子、平行に並べられた多数の金属ワイヤからなるワイヤーグリッド型偏光子、リオトロピック液晶や二色性ゲスト-ホスト材料を塗布した塗布型偏光子、多層薄膜型偏光子等が挙げられる。なお、これらの偏光子は、透過しない偏光成分を反射する機能を備えた反射型偏光子であってもよい。
【0149】
偏光子は、その吸収軸と、上述した手法にしたがって切り出した光学用の二軸延伸プラスチックフィルムのサンプルの任意の1辺とが、略平行又は略垂直となるように配置することが好ましい。略平行とは0度±5度以内であることを意味し、好ましくは0度±3度以内、より好ましくは0度±1度以内である。略垂直とは90度±5度以内であることを意味し、好ましくは90度±3度以内、より好ましくは90度±1度以内である。
【0150】
<ポジティブC層>
液晶表示装置では、機能性フィルムは斜め方向からの視野に対するコントラストを高めるために、ポジティブA層とポジティブC層とを組み合わせた位相差層とすることが好ましい。
【0151】
ポジティブC層は、層面に沿ったX軸方向の屈折率をnx、層面に沿った方向でX軸に直交するY軸方向の屈折率をny、層厚方向の屈折率をnzとしたとき、nz>nx≒nyの関係であるとともに、光軸がz方向となる特徴を有するものである。
例えば、透明基材上に、ポジティブC層を構成する成分及び溶剤を含むポジティブC層形成用インキを塗布、乾燥、硬化等することにより形成することができる。
ポジティブC層形成用インキ中における液晶化合物の含有量としては、特に限定されないが、該インキ中に5質量%以上40質量%以下の割合で含まれていることが好ましく、10質量%以上30質量%以下の割合で含まれていることがより好ましい。液晶化合物の量が5質量%未満であると、透明基材上に多量にインキを塗布する必要があるため、製造し難いとともに、多量の溶剤除去が必要となり、溶剤残存に起因する信頼性の悪化が生じやすい。一方で、40質量%を超えると、その重合性液晶組成物の粘度が高くなりすぎるために、ポジティブC層の作製の作業性が悪くなる。
また、ポジティブC層形成用インキの固形分質量(溶剤を除いた質量)に対する液晶化合物の含有量は、好ましくは75~99.9質量%、より好ましくは80~99質量%、更に好ましくは85~98質量%である。
【0152】
ポジティブC層形成用インキ中には、重合開始剤、レベリング剤及び配向促進剤等を含んでいてもよい。
ポジティブC層の厚みは、付与する位相差値を考慮して適宜調整することができ、通常は0.1~10μm程度である。
ポジティブC層は逆波長分散性を示す層であってもよいが、ポジティブC層と二色性赤外線吸収色素又はその重合体を含有するポジティブC層を組み合わせ、逆波長分散性を示す形態であってもよい。
【0153】
<接着層>
本発明の接着層に使用される粘着剤としては特に限定されず、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。粘着剤には、光学的透明性、適度な濡れ性、凝集性、接着性などの粘着特性、耐候性、耐熱性などに優れることが求められる。さらに吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる画像表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着剤層が求められる。このような観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0154】
粘着剤には、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層であってもよい。
【0155】
本発明の偏光板への上記粘着剤の塗工は、特に限定されず、適宜な方法で行うことができる。例えば、トルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒に、ベースポリマー又はその組成物を溶解又は分散させた10~40質量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で本発明の偏光板上に直接塗工する方法、或いはこの方法に準じ離型性ベースフィルム上に粘着剤層を形成してそれを本発明の偏光板に移着する方法などが挙げられる。
塗工方法は、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等、各種方法が可能であるが、グラビアコートが最も一般的である。
【0156】
粘着剤層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として本発明の偏光板の片面又は両面に設けることもできる。また、両面に設ける場合、本発明の偏光板の表裏において、粘着剤が同一組成である必要はなく、また同一の厚さである必要もない。異なる組成、異なる厚さの粘着剤層とすることもできる。
また、粘着剤層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1μm~500μmであり、5μm~200μmが好ましく、特に10μm~100μmが好ましい。
【0157】
<用途>
本発明の機能性フィルムは、画像表示装置のプラスチックフィルムとして好適に用いることができる。前述したように、液晶表示素子では液晶分子の配向状態に由来する視野角特性を改善する等の目的で、また有機EL素子では金属電極による外光の反射を低減するため等の目的で、使用することができる。
【0158】
液晶表示素子に使用される場合、IPS液晶表示装置(In-plane Switching liquid crystal display;IPS-LCD)が好適である。
【0159】
IPS-LCDでは液晶化合物が電圧のオン-オフにより基板に略平行な平面内で配向状態を変化させる。本発明の機能性フィルムを備えるIPS方式の液晶表示素子では、さらにポジティブAプレートと組み合わせることにより斜めから視認したときの斜め視野角による色変動が抑制される。本発明の機能性フィルムを用いると、広帯域において、斜め視野からの光学補償フィルムとして機能する。
【0160】
この有機EL素子に使用される場合、本発明の機能性フィルムは、有機EL素子の出射面側に配置される外光反射防止フィルムの一部として機能する。本発明の機能性フィルムは、直線偏光させるための偏光子、及び位相差フィルムとともに使用され、いわゆる円偏光板として外光反射防止機能を有するものとなる。位相差フィルムのポジティブAプレートがλ/4位相差層として機能し、これにポジティブCプレートが積層された態様となる。
【実施例
【0161】
1.評価用プラスチックフィルムの調製
1-1.重合性液晶組成物を含有する溶液の調製
実施例1~4並びに比較例1及び2で用いたプラスチックフィルムの調製に用いた組成物の組成を表2まとめた。
【0162】
【表2】
【0163】
1:開始剤としてOmnirad907(IGM Resins B.V.製)を使用した。
【0164】
表2に示すように、重合性液晶化合物として、式(LC1)又は(LC2)で表される化合物を含有し、二色性赤外線吸収色素として式(IR1)~(IR6)で表される化合物を含有し、二色性赤外線吸収色素として式(UV1)又は(UV2)で表される化合物を含有し、さらに開始剤及び溶剤であるシクロヘキサノンを加え、組成物とした。
【0165】
【化38】
【0166】
【化39】
【0167】
【化40】
【0168】
【化41】
【0169】
【化42】
【0170】
【化43】
【0171】
【化44】
【0172】
【化45】
【0173】
【化46】
【0174】
1-2.プラスチックフィルムの作製
プラスチックフィルムは、前記のポジティブAプレート用の重合性液晶組成物である組成物1~2、ポジA組成物(色素組成物)1~9を用い手順1を用いて作製した(表2参照)。
【0175】
手順1 ポジティブAプレートの製造
厚み100μmのPET基材の易接着層のない面に水平配向用の光配向膜を塗布した。続いて、偏光UVを50mJ/cm(波長365nm)照射した後、バーコーターを用いて組成物1を塗布し、表3に示した乾燥温度で60秒乾燥し、その塗布面に300mJ/cm(波長365nm)の紫外線を照射して硬化することで膜厚約2μmの塗膜1を作製した。
組成物1に変えてポジA組成物(色素組成物)1~6を用いる以外は同様にして、ポジA塗膜(色素塗膜)1~6を得た。
【0176】
各塗膜の物性値を表3にまとめた。
【0177】
【表3】
【0178】
2.評価
2-1.面内位相差(Re)
前述の塗膜について、面内位相差を測定した。測定装置は、大塚電子社製の商品名「RETS-100(測定スポット:直径5mm)」を用いた。Reは面内位相差を表し、単位はnmである。
Re450は、波長450nmの、Re550は、波長550nmの、Re650は、波長650nmの面内位相差である。この位相差は、王子計測機器株式会社製、KOBRA-WRにより、波長分散特性の測定モード、傾斜中心軸が進相軸の設定にて測定した。
2-2.吸光度(I)
630は、プラスチックフィルムの厚み方向からの波長630nmの入射光に対する透過光の透過率であり、紫外可視分光光度計「UVPC-2450」((株)島津製作所製)を用いて、波長630nm(I630)及び800nm(I800)の吸光度を測定した。
【0179】
(実施例1~4及び比較例1及び2)
表4に実施例1~10及び比較例1の機能性フィルムの物性値を示す。
【0180】
【表4】
【0181】
<正面色味>
有機EL表示パネルの円偏光板及び円偏光板から視認側に設けられている各層の代わりに、作製した光学積層体を使用して、有機EL表示装置を作製した。得られた有機EL表示装置の電源オフ時の黒画面を、正面から観察し、以下の官能評価にて評価を行った。20人のパネラーにて官能評価を行い、最も人数が多かった結果を採用した。また、最も人数の多い評価が2つ存在した場合には、結果の悪い評価を採用した。
A:赤味を感じない
B:やや赤味を感じるが、実用に耐える
C:赤味が強く、実用に耐えない
【0182】
本発明の実施例1~10は正面色味の評価が赤みを感じないか、感じたとしても十分実用に耐えるものであった。これに対し比較例1では赤みが強くなり、実用に耐えないものとなった。
このように本発明のポジA塗膜を用いることにより、実用的な光学補償が行えることが分かった。
【符号の説明】
【0183】
(A).理想的な逆波長分散性の曲線の概念図
(B).従来化合物を用いた機能性フィルムの波長分散性の曲線の概念図
(C).二色性赤外線吸収色素の吸光度の曲線の概念図
(D).二色性赤外線吸収色素の吸光度の曲線の概念図
(E).二色性赤外線吸収色素の吸光度の曲線の概念図
1.二色性赤外線吸収色素
2.赤外線吸収する部分構造
3.側鎖部及び重合性基を有していてもよいメソゲン部
4.二色性赤外線吸収部位を有する二色性赤外線吸収色素
図1
図2
図3
図4
図5
図6