(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】低脂肪豆乳乳酸発酵物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 11/00 20210101AFI20241210BHJP
A23C 11/10 20210101ALI20241210BHJP
A23L 11/60 20210101ALI20241210BHJP
A23L 11/65 20210101ALI20241210BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20241210BHJP
【FI】
A23L11/00 Z
A23C11/10
A23L2/38 D
(21)【出願番号】P 2020068168
(22)【出願日】2020-04-06
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和人
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-013395(JP,A)
【文献】クックパッド [オンライン], 2017.09.14 [検索日 2024.03.11], インターネット:<URL:https://cookpad.com/recipe/4711024>
【文献】クラシル [オンライン], 2017.10.02 [検索日 2024.03.11], インターネット:<URL:https://www.kurashiru.com/recipes/fe65dc9b-265d-47a2-940c-08e0004bc6cc>
【文献】ママテナ [オンライン], 2018.02.18 [検索日 2024.03.11], インターネット:<URL:https://mama.smt.docomo.ne.jp/article/b/233790/#:~:text=【ダイエット】豆乳に含まれる,効果に期待できます。>
【文献】Ameba [オンライン], 2017.02.20 [検索日 2024.03.11], インターネット:<URL:https://ameblo.jp/manamis-kitchen/entry-12249621816.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 11/00
A23C 11/10
A23L 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質含量2.5重量%以下の低脂肪豆乳に酒粕を添加し、
加圧均質化処理の後に乳酸発酵
、及び/又は脂質含量2.5重量%以下の低脂肪豆乳に酒粕を添加し、乳酸発酵の後に加圧均質化処理を行うことを特徴とする低脂肪豆乳乳酸発酵物の製造方法。
【請求項2】
乳酸発酵した、脂質含量2.5重量%以下の低脂肪豆乳に、酒粕を添加し、加圧均質化処理することを特徴とする低脂肪豆乳乳酸発酵物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低脂肪豆乳乳酸発酵物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「食資源不足」や「環境」といった問題に対する、社会的な危機感が、ますます高まっており、持続可能な世界を目指す取組が進んでいる。
とりわけ、世界的な人口増加により、食料(特に動物性たんぱく源)および水資源が将来不足すると予測されている。
この、人口増加と共に起こる「食資源不足」や「環境」といった社会課題に対し、植物性の食の素材を通じた解決が試みられている。
【0003】
特に、この人類の社会課題に対し、大豆は有効なソリューションの一つであると考えられる。
なぜならば、大豆は寒冷地から熱帯まで幅広い地域において、動物性のたんぱく源に比べ、わずかな肥料、水で、大量に栽培することが可能だからである。
【0004】
従来、大豆は、搾油により得られる大豆油や、大豆を絞って得られる豆乳、更に脱脂大豆から得られる粉末状大豆たんぱくや粒状大豆たんぱく等、様々に加工されて、幅広い用途に利用されている。
一方で、大豆たんぱく質はコレステロールを含まない良質なたんぱく質であり、地球環境負荷は低いものの、青草味、えぐ味などの特有の風味を有するため、その利用が制限されている面もある。
【0005】
また、稲から収穫される米を原料とし、麹による糖化・酵母によるアルコール発酵を経て得られたもろみを圧搾することで、「清酒」と、分離した搾りかすとして「酒粕」が得られる。
「酒粕」中には、米、米麹、酵母に由来した成分である各種アミノ酸類、ビタミン類、有機酸類、タンパク質、各種糖類などの多くの栄養成分、有効成分が含まれている。
しかしながら、酒粕は甘酒、漬物、粕汁、あるいはそのまま食料とする以外では、飼料、肥料として処理されており、食品としての需要・流通が低迷している。
【0006】
一方、酒粕の有効利用を目的に、例えば、特許文献1では、酒粕を原料とした新規な酒粕発酵エキスが、特許文献2では、液化酒粕をデンプン分解酵素処理およびタンパク分解酵素処理と平行して、酵母で発酵させ、次いで、固液分離を行って固体成分を除去することにより得られる酒粕発酵エキスを用いた風味改良剤が、特許文献3では、酒粕由来の成分を有効成分として含有する乳化剤、および脂溶性物質を含む、油脂含有水溶性組成物が、特許文献4では、酒粕由来の成分を有効成分として含有することを特徴とする乳化剤が提案されているが、用途が限定されている。
また、酒粕には100gあたり5.2gと、白米の10倍もの食物繊維が含まれており、ざらつきや、口残りといった食感の点で、食品用途としての利用が敬遠される傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-143766号公報
【文献】特開2016-42818号公報
【文献】特開2012-228228号公報
【文献】特開2011-115160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、植物性の食の素材である、「大豆」と「酒粕」を有効利用し、食品用途としての新たな素材を提供することで、「食資源不足」や「環境」といった社会課題の解決に貢献することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題に対して鋭意研究を行った結果、低脂肪豆乳に酒粕を添加し、乳酸発酵後、加圧均質化処理、又は低脂肪豆乳に酒粕を添加し、加圧均質化処理後、乳酸発酵、あるいは乳酸発酵した低脂肪豆乳に、酒粕を添加し、加圧均質化処理することで、大豆の風味が改善され、動物性の食の素材には無い、コク・うまみを有し、かつ、ざらつきや、口残りが無い、なめらかで口溶けの良い低脂肪豆乳乳酸発酵物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、下記の発明を包含するものである。
(1)脂質含量2.5重量%以下の低脂肪豆乳に酒粕を添加し、乳酸発酵することを特徴とする低脂肪豆乳乳酸発酵物の製造方法。
(2)乳酸発酵の前、及び/又は乳酸発酵の後に加圧均質化処理を行う請求項1記載の低脂肪豆乳乳酸発酵物の製造方法。
(3)乳酸発酵した、脂質含量2.5重量%以下の低脂肪豆乳に、酒粕を添加し、加圧均質化処理することを特徴とする低脂肪豆乳乳酸発酵物の製造方法。
(4)(1)~(3)いずれかに記載の低脂肪豆乳乳酸発酵物を使用することを特徴とする飲料および食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、大豆の風味が改善され、動物性の食の素材には無い、コク・うまみを有し、かつ、ざらつきや、口残りが無い、なめらかで口溶けの良い低脂肪豆乳乳酸発酵物および、これを使用した飲料および食品を提供することができ、「大豆」と「酒粕」の有効利用さらには、「食資源不足」や「環境」の社会課題に対し、植物性の食の素材が有効なソリューションの一つとなり得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
(低脂肪豆乳)
本発明の低脂肪豆乳乳酸発酵物の製造方法において、低脂肪豆乳は、脂質含量が低減された豆乳をいう。
本発明で使用する低脂肪豆乳は、強調表示に則り脂質含量2.5重量%以下、好ましくは2重量%、より好ましくは1.5重量%以下に低減された低脂肪豆乳を用いる。
低脂肪豆乳は、牛乳における低脂肪乳に相当する特長を持った大豆の素材である。
豆乳の低カロリー化の実現は勿論、大豆脂質による風味劣化の低減を可能にしている。
低脂肪豆乳の脂質含量は、該低脂肪豆乳の蛋白質含量に対して、好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下であり、更に好ましくは10重量%以下である。また、本発明の低脂肪豆乳とは、丸大豆や脱脂大豆から水で抽出し、不溶性繊維であるオカラを除去して得られる、豆乳だけでなく、豆乳からオカラを除去せずにオカラを微粉砕したスラリー状のものも含まれ、好ましくはオカラを除去した豆乳が好ましい。
【0014】
(低脂肪豆乳の脂質含量の測定方法)
サンプル(W)をクロロホルム:メタノールが2:1(体積比)の混合溶媒を用い、常圧沸点において30分間抽出された抽出物を無水硫酸ナトリウムで脱水後石油エーテルへ転溶する。
これを遠心分離しエーテル層を重量既知のフラスコ(W1)に採取し、エーテルを留去後、乾燥重量(エーテル留去後のフラスコの重量)(W2)を測定する。
W、W1、W2、およびサンプル(W)の乾物重量(W3)の測定値を用い、以下の式により得られる値を脂質含量(%/dry)とする。
脂質含量(%/dry)=[{(W2-W1)/W×2.5×100}/W3×100(%)]
溶媒抽出装置としてはFOSS社製の「ソックステック」を用いることができる。
上記の測定法は「クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出法」と称するものとする。
【0015】
(低脂肪豆乳の製造方法)
低脂肪豆乳の大豆原料は、丸大豆、半割れ大豆、グリッツ、粉末等の形態のものが挙げられる。
また、大豆原料として、あらかじめ脱脂や減脂されたものを好ましく用いることもできる。
低脂肪豆乳は、公知の製造法を用いて調製することができ、例えば、ヘキサンやエタノール等の溶剤により脱脂して得られた脱脂大豆から水抽出する方法を好ましく使用できる。
水抽出は、一般的な方法を用いることができ、例えば水性媒体を原料大豆に加えて攪拌・磨砕してスラリー状とし、不溶性画分(オカラ)を遠心分離、濾過等により分離し、除去する方法が例示される。
また、丸大豆や減脂大豆を水抽出後、スラリー状態或はオカラの除去後に溶剤抽出や膜処理、又は遠心分離による脱脂操作を行うことによって低脂肪豆乳を得る方法でもよい。
粉末化された低脂肪豆乳を水に溶解して用いることもできる。
水抽出は、大豆原料に対して、好ましくは3重量倍~20重量倍、より好ましくは4重量倍~15重量倍程度の加水をする。
加水倍率は高い方が水溶性成分の抽出率が高まり、分離を良くすることができるが、高過ぎると濃縮が必要となりコストがかかる。
また、抽出処理を2回以上繰り返すと水溶性成分の抽出率をより高めることができる。
抽出温度は、特に限定されない。効率良く蛋白質を抽出するには5℃~98℃で行うことが好ましい。
また、丸大豆を水抽出後、スラリー状態或はオカラの除去後において溶剤抽出や膜処理による脱脂操作を行うことによって低脂肪豆乳を得ることも可能である。
また、特開2012-016348号公報に開示される方法等も利用できる。
即ち、乾物当たりの脂質含量が15重量%以上、NSI(Nitrogen Solubility Index:窒素溶解指数)が20~77の含脂大豆に加水して懸濁液を得、固液分離し、中性脂質および極性脂質を不溶性画分に移行させて除去し、蛋白質および糖質を含む水溶性画分を回収する。
この製法で得られる低脂肪豆乳は、乾物当たりの蛋白質および炭水化物の総含量が80重量%以上であり、脂質含量(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出物量としての含量)が蛋白質含量に対して10重量%未満であるという特徴を有する。
なお、ここでの蛋白質含量とは、ケルダール法により測定した窒素量に6.25の窒素換算係数を乗じた数値を指す。
また、脂質含量の低い豆乳に、脂質含量の高い豆乳や大豆油をブレンドし、脂質含量を調整してもよい。
【0016】
本発明の低脂肪豆乳乳酸発酵物の製造方法は、低脂肪豆乳又は乳酸発酵した低脂肪豆乳に酒粕を添加することを特徴とする。
低脂肪豆乳又は乳酸発酵した低脂肪豆乳に酒粕を添加することにより、動物性の食の素材には無い、コク・うまみを有する低脂肪豆乳乳酸発酵物を得ることができる。
本発明において酒粕とは、酒の製造過程において、原料の米や麹等の発酵物(もろみ)を圧搾した後に残る固形物であり、清酒を製造する際に副生する清酒粕が代表的であるが、清酒粕以外の酒粕としては、みりん粕、蒸留酒粕(焼酎粕等)が挙げられる。
酒粕は、例えば、液状、ペースト状、あるいは乾燥させた固形状、や粉砕した粉末状のものを用いることができる。
本発明においては、低脂肪豆乳又は乳酸発酵した低脂肪豆乳に、酒粕が固形物換算で1~30重量%含まれることが好ましい。
【0017】
本発明の低脂肪豆乳乳酸発酵物の製造方法においては、低脂肪豆乳又は酒粕を添加した低脂肪豆乳を原料とし、乳酸菌等を加えて乳酸発酵行うことを特徴とする。
低脂肪豆乳あるいは酒粕を添加した低脂肪豆乳のいずれの原料でもよいが、酒粕を添加した低脂肪豆乳を乳酸発酵することで、低脂肪豆乳由来の大豆特有の好ましくない風味が改善されるだけではく、酒粕由来の旨味・コクといった好ましい風味を付与しながらも、さらに乳酸発酵により、風味のカドがとれ、より美味しい低脂肪豆乳乳酸発酵物を得ることができる。
【0018】
本発明の製造方法における乳酸発酵で用いる菌は、好ましくは、ラクトバチルス・ブレビス(Lb.brevis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lb.acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lb.casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lb.reuteri)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lb.delbruekii ssp.bulgaricus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lb.plantarum)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lb.buchneri)、ペディオコッカス・アシドラクティシ(Ped.acidilactici)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lb.helveticus)等のラクトバチルス属細菌を用いる。
【0019】
本発明の製造方法における乳酸発酵で用いる菌は、好ましくは、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等のストレプトコッカス属細菌を用いる。
【0020】
本発明の製造方法における乳酸発酵で用いる菌は、好ましくは、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ.ラクチス(Lactococcus lactis ssp.lactis)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ.クレモリス(Lactococcus lactis ssp.cremoris)等のラクトコッカス属細菌を用いる。
【0021】
本発明の製造方法における乳酸発酵で用いる菌は、好ましくは、ロイコノストク属細菌、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)等のエンテロコッカス属細菌を用いる。
本発明の製造方法における乳酸発酵では、上記選ばれる一種又は二種以上の菌を使用することができる。
【0022】
乳酸発酵は、例えば、低脂肪豆乳又は酒粕を添加した低脂肪豆乳を含む原料へ、乳酸菌を添加して行う。
乳酸菌の割合は、発酵原料として、低脂肪豆乳又は酒粕を添加した低脂肪豆乳を含む原料100重量部に対して、好ましくは、0.01重量部~20重量部程度、より好ましくは、0.1重量部~15重量部程度の範囲である。
上記範囲において、乳酸発酵性が良く、貯蔵安定性も良い。
乳酸発酵の温度は、菌種によって適宜設定する。乳酸発酵の温度は、乳酸を効率よく生産させる(乳酸発酵性が良い)という観点から、好ましくは、5℃~50℃程度の範囲であり、より好ましくは、10℃~50℃程度、更に好ましくは、20℃~48℃程度、特に好ましくは、30℃~45℃程度である。例えば、30℃付近で培養する。
乳酸発酵の時間は、菌種によって適宜設定する。
乳酸発酵の時間は、乳酸を効率よく生産させる(乳酸発酵性が良い)という観点から、好ましくは、1時間~30時間程度範囲であり、より好ましくは2時間~20時間程度、更に好ましくは、3時間~15時間程度、特に好ましくは、4時間~8時間程度である。
乳酸発酵は、通常、静置発酵で行われるが、発酵液の温度分布を均一化する目的や菌体の沈殿を制御する目的で緩慢な攪拌を行っても良い。
【0023】
本発明の低脂肪豆乳乳酸発酵物の製造方法は、低脂肪豆乳に酒粕を添加後乳酸発酵の前、及び/又は低脂肪豆乳に酒粕を添加し乳酸発酵の後、又は乳酸発酵した低脂肪豆乳に、酒粕を添加後、加圧均質化処理する。
均質化とは、低脂肪豆乳、および酒粕を十分混合することにより均質にすることであって、低脂肪豆乳や酒粕に含まれるたんぱく質や食物繊維などの粒子を機械的に微細化し、均一な分散状態にすることをいう。
加圧均質化処理は、特に限定されないが、低脂肪豆乳や酒粕に含まれるたんぱく質や食物繊維などの粒子を良好に均質化する観点から、ホモゲナイザーを用いることが好ましい。
加圧均質化処理は、たとえば、3MPa以上30MPa以下の圧力を加えながら、均質化することが好ましく、より好ましくは、5MPa以上25MPa以下である。
【0024】
本発明の低脂肪豆乳乳酸発酵物の製造方法は、必要により殺菌を行う。
殺菌方法は、特に制限されないが、例えば、原料液に高温高圧水もしくは高圧水蒸気を注入するか、または原料液に対し通電によるジュール加熱、高周波(マイクロ波)による加熱などの直接加熱法や、電磁誘導加熱、プレート加熱、掻き取り式熱交換器、湯煎などの間接加熱法を単独でまたは組み合わせる方法が挙げられる。
【0025】
本発明の製造方法で得られた低脂肪豆乳乳酸発酵物は、大豆の風味が改善され、動物性の食の素材には無い、コク・うまみを有し、かつ、ざらつきや、口残りが無い、なめらかで口溶けの良い低脂肪豆乳乳酸発酵物であり、豆乳発酵飲料、豆乳ヨーグルト、豆乳フィリング等の幅広い飲料および食品用途に用いることができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明について実施例を示し、より詳細に説明する。なお、例中の数字は特に断りのない限り、重量基準を意味する。
【0027】
(実施例1)
低脂肪豆乳(「美味投入」不二製油(株)製、固形分:90.2%、蛋白質:5.1%、脂質:0.5%)を80部、市販の酒粕(固形分含量50%)(大関(株)製)を10部、水を10部を混合し、60℃で5分間加熱撹拌した後、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却した。
該調合液に対してラクトバチルス・ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィラスを混合した乳酸菌スターターを0.01%添加して37~40℃で約5時間発酵させた。
発酵後、ホモゲナイザーで5MPaで均質化処理し、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却し、低脂肪豆乳乳酸発酵物を得た。
【0028】
(実施例2)
低脂肪豆乳(「美味投入」不二製油(株)製、固形分:90.2%、蛋白質:5.1%、脂質:0.5%)を80部、市販の酒粕(固形分含量50%)(大関(株)製)を10部、水を10部を混合し、60℃で5分間加熱撹拌した後、ホモゲナイザーで5MPaで均質化処理し、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却した。
該調合液に対してラクトバチルス・ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィラスを混合した乳酸菌スターターを0.01%添加して37~40℃で約5時間発酵させた。
得られた低脂肪豆乳乳酸発酵物のpHは4.8であった。
【0029】
(実施例3)
低脂肪豆乳(「美味投入」不二製油(株)製、固形分:90.2%、蛋白質:5.1%、脂質:0.5%)に対してラクトバチルス・ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィラスを混合した乳酸菌スターターを0.01%添加して37~40℃で約5時間発酵させた。
得られたpHは4.8の乳酸発酵低脂肪豆乳を80部、市販の酒粕(固形分含量50%)(大関(株)製)を10部、水を10部を混合し、60℃で5分間加熱撹拌した後、ホモゲナイザーで5MPaで均質化処理し、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却し、低脂肪豆乳乳酸発酵物を得た。
【0030】
(実施例4)
低脂肪豆乳(「美味投入」不二製油(株)製、固形分:90.2%、蛋白質:5.1%、脂質:0.5%)を65部、市販の酒粕(固形分含量50%)(大関(株)製)を30部、水を5部を混合し、60℃で5分間加熱撹拌した後、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却した。
該調合液に対してラクトバチルス・ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィラスを混合した乳酸菌スターターを0.01%添加して37~40℃で約5時間発酵させた。
発酵後、ホモゲナイザーで5MPaで均質化処理し、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却し、低脂肪豆乳乳酸発酵物を得た。
【0031】
(実施例5)
低脂肪豆乳(「美味投入」不二製油(株)製、固形分:90.2%、蛋白質:5.1%、脂質:0.5%)を80部、市販の酒粕(固形分含量50%)(大関(株)製)を10部、水を10部を混合し、60℃で5分間加熱撹拌した後、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却した。
該調合液に対して乳酸菌スターターとしてストレプトコッカス・サーモフィラスを0.01%添加して37~40℃で約5時間発酵させた。
発酵後、ホモゲナイザーで5MPaで均質化処理し、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却し、低脂肪豆乳乳酸発酵物を得た。
【0032】
(実施例6)
低脂肪豆乳(「美味投入」不二製油(株)製、固形分:90.2%、蛋白質:5.1%、脂質:0.5%)を80部、市販の酒粕(固形分含量50%)(大関(株)製)を10部、水を10部を混合し、60℃で5分間加熱撹拌した後、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却した。
該調合液に対してラクトバチルス・ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィラスを混合した乳酸菌スターターを0.01%添加して37~40℃で約5時間発酵させた。
発酵後、ホモゲナイザーで15MPaで均質化処理し、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却し、低脂肪豆乳乳酸発酵物を得た。
【0033】
(実施例7)
低脂肪豆乳(「美味投入」不二製油(株)製、固形分:90.2%、蛋白質:5.1%、脂質:0.5%)に、豆乳クリーム(不二製油(株)製、固形分:81.0%、蛋白質:5.6%、脂質:12.3%)を加え、脂質2.3%に調整した低脂肪豆乳+豆乳クリームの混合液を80部、市販の酒粕(固形分含量50%)(大関(株)製)を10部、水を10部を混合し、60℃で5分間加熱撹拌した後、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却した。
該調合液に対してラクトバチルス・ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィラスを混合した乳酸菌スターターを0.01%添加して37~40℃で約5時間発酵させた。
発酵後、ホモゲナイザーで5MPaで均質化処理し、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却し、低脂肪豆乳乳酸発酵物を得た。
【0034】
(比較例1)
実施例1で使用した酒粕に代えて、デキストリン5部、水を5部を使用した以外は、実施例1の配合および製法と同様にして、低脂肪豆乳乳酸発酵物を得た。
【0035】
(比較例2)
低脂肪豆乳(「美味投入」不二製油(株)製、固形分:90.2%、蛋白質:5.1%、脂質:0.5%)を80部、市販の酒粕(固形分含量50%)(大関(株)製)を10部、水を10部を混合し、60℃で5分間加熱撹拌した後、ホモゲナイザーで5MPaで均質化処理し、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却し、低脂肪豆乳組成物を得た。
【0036】
(比較例3)
低脂肪豆乳(「美味投入」不二製油(株)製、固形分:90.2%、蛋白質:5.1%、脂質:0.5%)を80部、市販の酒粕(固形分含量50%)(大関(株)製)を10部、水を10部を混合し、60℃で5分間加熱撹拌した後、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却した。
該調合液に対してラクトバチルス・ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィラスを混合した乳酸菌スターターを0.01%添加して37~40℃で約5時間発酵し、低脂肪豆乳組成物を得た。
【0037】
(比較例4)
無調整豆乳(「無調整豆乳」不二製油(株)製、固形分:90.3%、蛋白質:4.4%、脂質:3.0%)を80部、市販の酒粕(固形分含量50%)(大関(株)製)を10部、水を10部を混合し、60℃で5分間加熱撹拌した後、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却した。
該調合液に対してラクトバチルス・ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィラスを混合した乳酸菌スターターを0.01%添加して37~40℃で約5時間発酵させた。
発酵後、ホモゲナイザーで5MPaで均質化処理し、70~80℃で殺菌後24℃まで冷却し、豆乳乳酸発酵物を得た。
【0038】
官能試験では、下記に示す5段階で評価して評点を付け、15名の訓練された専門パネラーによる平均点を評価点とした。
大 豆 臭:弱 い 1~5 強 い 合格基準(2以下が良好)
発 酵 臭:弱 い 1~5 強 い 合格基準(4以上が良好)
旨 味 :弱 い 1~5 強 い 合格基準(4以上が良好)
なめらかさ:ざらつく 1~5 なめらか 合格基準(3以上が良好)
雑 味 :弱 い 1~5 強 い 合格基準(2以下が良好)
実施例1~7および比較例1~4の結果を<表>に示す。
【0039】
【0040】
(実施例8)
実施例1で得られた低脂肪豆乳乳酸発酵物70部に対して、グラニュー糖10部、ペクチン1部、水19部を加えて100部とし、80~90℃で加熱撹拌して殺菌し、次いで2MPaの圧力にてホモゲナイザーで均質化し、冷却して低脂肪豆乳ヨーグルトを得た。
得られた豆乳ヨーグルトは、なめらかなペースト状の物性を示し、かつ乳原料から得られるヨーグルトには無い、独特のコク・うまみを有し、かつ、ざらつきや、口残りが無い、なめらかで口溶けの良い風味であった。
また、水の替わりに「ブルーベリー果汁」などの各種果汁を用いることで、バラエティ豊富な低脂肪豆乳ヨーグルトが提供できる。